修習給付金

修習給付金の課税関係に関する審査請求の理由書

   司法修習生の修習給付金は非課税所得であると主張した更正の請求に対し,とある税務署長から,令和元年12月20日付で,更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知を受けましたから,令和2年2月18日付で,国税不服審判所長に対する審査請求書を提出しました。
   その関係で,審査請求の理由書を以下のとおり貼り付けています(金額の明細を記載している別紙「審査請求人の収支の一覧表」は除いています。)。

第1 事案の概要
   本件は,審査請求人が,大阪地裁配属の第71期司法修習生であることに基づき平成30年中に支給された合計155万7000円の基本給付金(甲22参照)について,司法研修所の公式見解(甲2)に従い,その全額が雑所得の総収入金額に該当することを前提に平成30年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告(以下「本件確定申告」という。)を平成31年2月21日にした後,
   ①基本給付金は学資金に該当し,非課税所得である点で総収入金額に算入すべきではないこと,及び②仮に基本給付金が学資金に該当せずに非課税所得でなかったとしても,通勤交通費のほか,書籍代,名刺代,学習費及び衣服購入費等は基本給付金に係る雑所得の総収入金額から必要経費として控除すべきところ,本件確定申告に際して雑所得の計算上,通勤交通費しか必要経費として控除していなかった点で雑所得の金額が過大になっていることを主張して,◯◯税務署長に対し,平成31年3月20日に更正の請求をした(甲3)ところ,
   ◯◯税務署長から,令和元年12月20日付で,基本給付金は必要経費のない雑所得であることを主たる理由として,更正の請求に対して更正をすべき理由がない旨の通知を受けた(甲1)ため,これを不服として審査請求をしたという事案である。

第2 基本給付金は学資金に該当し,非課税所得である点で総収入金額に算入すべきではないこと
1 学資金としての性質を有すること
(1)ア 修習給付金は,基本給付金,住居給付金及び移転給付金からなるものである(裁判所法67条の2第2項)。
   そして,基本給付金とは,司法修習生がその修習期間中の生活を維持するために必要な費用をいい(裁判所法67条の2第3項),月額13万5000円とされている(司法修習生の修習給付金の給付に関する規則2条1項)。
イ ところで,法務省大臣官房司法法制部の説明によれば,基本給付金の月額は,日弁連が第68期司法修習生を対象に実施した修習実態アンケートにおいて,修習期間中における生活実費が月額9.4万円であり,学資金が月額4.0万円であり,合計の支出が月額約13.5万円であったという司法修習生の生活実態等の事情を総合考慮するなどして決定されたとのことである(甲5末尾1頁及び2頁,並びに甲6)。
   また,基本給付金は,司法修習生の通常の支出のうち,社会保険料,所得税・住民税等,勉強会参加費を除く交際費,奨学金返済費用,教養娯楽費(旅行費・月謝類等。ただし,書籍費を除く。),理美容・嗜好品等,自動車等関係費,仕送り金,家具家電・衣服購入費等まで満たすものとは考えられていない(甲5末尾2頁及び3頁参照)。
   そのため,基本給付金は,修習期間中の最低限の生活費及び教育費に充てるという趣旨で国から司法修習生に支給される金員であるといえる。
(2) 学資金(所得税法9条1項15号)とは,一般に,学術又は技芸を習得するための資金として父兄その他の者から受けるもので,かつ,その目的に使用されるものをいうと国税庁は解釈している(甲4)のであって,学術又は技芸を習得するために直接必要な費用だけが学資金であると国税庁が解釈しているわけではない。
   そのため,学術又は技芸の習得に専念する目的で使用される生活費も学資金に含まれるといえる。
(3) 甲南大学法科大学院は,A種特待生(入学試験にきわめて優秀な成績で合格した者)に対し,学費(授業料及び施設設備費)の全額免除だけでなく,月額15万円もの給付金を支給している(甲7の1・3頁)ところ,その趣旨は生活費及び教育費であると思われる。
   また,令和2年度以降に入学した,住民税非課税世帯又はこれに準ずる世帯に属する国立大学の大学生の場合,一定の条件を満たすことで,授業料及び入学金の全額を免除された上で,日本学生支援機構から学資支給金(いわゆる給付型奨学金)を生活費として支給される予定である(甲7の2)。
   そして,これらのように学費の負担を前提としていない大学院生又は大学生に対して生活費等として支給される奨学金は,学資金として非課税所得であると思われる。
(4) 政府は,令和2年1月現在,今後の目標として,修士課程から博士課程に進学した大学院生のうち約5割が,学内奨学金などで月15万円から20万円の生活費相当額を受給できる状況の実現を目指しているところである(甲8)。
   そして,このような学内奨学金は学資金として非課税所得であると思われる。
(5) 法務省大臣官房司法法制部は,司法修習生の「罷免」は「退学」に対応し,「修習の停止」(司法修習生の身分は保有するが,一定期間修習をさせない処分)は「停学」に対応すると説明している(甲5末尾10頁及び11頁)ことからしても,司法修習生の身分は学生に類似するところがあるといえる。
(6) そのため,学費の負担を前提としていない司法修習生に対して最低限の生活費及び教育費として支給される基本給付金は,学資金としての性質を有するといえる。
2 金額規模等を理由に学資金から除外される理由はないこと
(1) 司法研修所がある埼玉県の,平成29年10月1日改定の最低賃金である時給871円(甲9)で1週間当たり40時間(法定労働時間であることにつき労働基準法32条1項)働いた場合,871円×40時間×30日/7日=14万9314円となるから,月額13万5000円の基本給付金は埼玉県の最低賃金を下回る金額である。
   また,基本給付金の13万5000円という金額は,住居費の支出を伴わない第68期司法修習生の平均的な生活費(甲5末尾4頁)等を参考に設定された金額であるから,担税力がないといえる。
(2) 修習資金の貸与を受けなかった新65期ないし第70期司法修習生が家賃を払って一人暮らしをしていた場合,両親等の扶養義務者から生活費及び教育費という趣旨で月額17万円以上の仕送りを受けていた事案がごく普通にあったと思われる。
   そして,それらの仕送りについて,相続税法21条の3第1項2号の「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」を超えるとして贈与税が課税された事例があるとは思えないことからしても,3万5000円の住居給付金をあわせた月額17万円という修習給付金の金額規模は,「扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品」(所得税法9条1項15号所定の非課税所得)と比べて特に大きいわけではない。
(3) 平成28年度税制改正において所得税法9条1項15号が改正され,通常の給与に加算して受ける学資金が非課税とされた結果,医学生等に対する修学等資金の債務免除益は,通常の給与に加算して受ける学資金に該当するものとしてすべて非課税となった(甲10参照)。
   ところで,兵庫県養成医師制度を利用して兵庫医科大学に進学した場合,6年間で合計4480万円の貸付けを受けられるし,大学を卒業後,医師として9年間,兵庫県が指定する兵庫県内の医師不足地域等の医療機関で勤務した場合,貸与を受けた修学資金の返還を免除される(甲11参照)。
   そのため,4480万円もの修学資金の返還免除に基づく債務免除益であっても,学資金として非課税所得であると思われる。
(4) したがって,基本給付金は,金額規模等(甲5末尾6頁参照)を理由に学資金から除外される理由はないといえる。
3 職業訓練受講給付金が非課税所得であるにもかかわらず,基本給付金が非課税所得でないのは憲法14条1項に違反すること
(1) 職業訓練受講給付金は,雇用保険を受給できない求職者がハローワークの支援指示により公的職業訓練を受講し,訓練期間中に訓練を受けやすくするための給付であり(甲14),租税その他の公課を課されない非課税所得である(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律10条)。
(2) 司法修習は,司法修習生が法曹資格を取得するために国が法律で定めた職業訓練課程であり,高度の専門的実務能力と職業倫理を備えた質の高い法曹を確保するために必須な臨床教育課程として,実際の法律実務活動の中で実施されるものである(東京高裁平成30年5月16日判決(甲12・8頁))。
   また,職業訓練受講給付金(平成21年当時の民主党のマニフェストにおいて,「求職者支援制度」の手当として記載されていたもの)が非課税所得とされた理由は,受給者の最低生活を保障するものであり,公課等を課して給付を減額することは,国の国民に対する最低生活保障の原則に照らして矛盾すると考えられたためであって(甲13),職業訓練の推進という政策的背景が理由とされているわけではない。
   さらに,職業訓練受講給付金及び基本給付金は,職業訓練期間中の生活を支援するという給付目的達成のために必要な最低限の給付である点で共通しているといえる(基本給付金だけでは司法修習生の通常の支出を賄えないことにつき甲5末尾2頁及び3頁参照)。
   そのため,職業訓練受講給付金が非課税所得であるにもかかわらず,司法試験に合格しない限り採用されない司法修習生について,司法修習という職業訓練期間中の生活を支援するための給付である基本給付金が非課税所得でないのは憲法14条1項に違反するといえる。
4 基本給付金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得ではないこと
   所得税法上,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得及び譲渡所得以外の所得で,営利を目的とする継続的行為から生じた所得は,一時所得ではなく雑所得に区分される(最高裁平成29年12月15日判決(甲15))。
   しかし,基本給付金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得ではない。
5 結論
   したがって,大阪国税局課税部個人課税課審査指導係の見解(甲16)と異なり,基本給付金は学資金に該当し,非課税所得である点で総収入金額に算入すべきではないといえる。

第3 仮に基本給付金が非課税所得でないとしても,必要経費として控除していないものがある点で,本件確定申告で申告した雑所得の金額は過大であること
1 雑所得としての基本給付金について必要経費が認められること
(1) 司法修習生は,その修習期間中,その修習に専念しなければならないという修習専念義務を負っている(裁判所法67条2項)し,高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身につけ、裁判官、検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努める義務を負っている(司法修習生に関する規則4条)。
   そして,成績不良であったり,正当な理由なく欠席したりするなど,品位を辱める行状その他の司法修習生たるに適しない非行に当たる事由がある場合,司法修習生を罷免されたり,修習の停止を命じられたりすることとなる(裁判所法68条2項,司法修習生に関する規則17条及び18条)。
   また,司法修習生の罷免理由は公にされていないし,司法修習生のどのような行為が非違行為に該当するかについても公にされていない(甲17)ことからすれば,司法修習生という立場が安定しているとはいえない。
   そのため,司法修習生の義務を守ることで司法修習生という立場を維持して基本給付金を支給してもらうために必要な経費は当然に存在するといえる。
(2) サラリーマン税金訴訟に関する最高裁大法廷昭和60年3月27日判決(甲18)は,給与所得者において自ら負担する必要経費の額が一般に旧所得税法所定の給与所得控除の額を明らかに上回るものと認めることは困難であること等を理由として,給与所得者について必要経費の実額控除を認めず,給与所得控除による概算控除しか認めないことは,必要経費の実額控除が認められている事業所得者等との関係において憲法14条1項に違反しないと判示している。
   また,農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)は,生活費を支給する国の他の事業と重複受給できない点で(甲19の1・2頁及び3頁)生活費に充てることが予定されているところ,当該資金を受給した年に発生した交通費や授業料など研修に要した費用の額がある場合,雑所得の金額の計算上,必要経費として収入金額から控除することが認められている(甲19の2)。
   そのため,司法修習生において自ら負担する必要経費が存在するにもかかわらず,基本給付金について必要経費の控除を一切認めないことは,必要経費の実額控除が認められている他の雑所得者等との関係において憲法14条1項に違反するといえる。
(3) したがって,大阪国税局課税部個人課税課審査指導係の見解(甲16)と異なり,雑所得としての基本給付金について必要経費が認められるといえる。

2 本件確定申告で申告した雑所得の金額は過大であること
(1) 通勤交通費は必要経費であること
ア 実務修習に出席するための通勤交通費について
(ア) 司法修習生は,埼玉県和光市の司法研修所で実施される導入修習が終了した後,実務修習地における分野別実務修習及び選択型実務修習,並びに司法研修所における集合修習を履修することとされている。
   そして,分野別実務修習は,民事裁判修習,刑事裁判修習,検察修習及び弁護修習からなるものであり(ただし,司法修習生ごとに順番は異なる。),それぞれ,配属地における裁判所,検察庁及び弁護修習先の法律事務所に赴いた上で実施される臨床教育過程である。
   また,選択型実務修習は,分野別実務修習において弁護修習をした法律事務所を拠点(ホームグラウンド)とした上で,裁判所,検察庁及び弁護士会で提供される個別修習プログラム等を自ら選択して履修することとされている。
(イ) 司法修習は,最高裁判所がその基本的内容を定め,司法修習生が司法修習を修了しないと法曹資格が与えられないものであるから,司法修習生は,修習過程で用意されているカリキュラムに出席し,その教育内容を全て履修することが本来要請されている(東京高裁平成30年5月16日判決(甲12・8頁及び9頁))のであって,当該カリキュラムへの出席は修習専念義務の中核をなすものである。
   そのため,裁判所,検察庁,弁護修習先の法律事務所及び選択型実務修習の実施場所に出席するために必要となる通勤交通費は,雑所得である基本給付金を得るため直接に要した費用であるといえる。
イ 二回試験の試験会場に出席するための通勤交通費について
   二回試験(正式名称は「司法修習生考試」である。)は裁判所法67条1項に基づく試験であって,二回試験に合格しない限り司法修習を終了できないため,司法修習生が必ず受験する必要がある試験である。
   そのため,二回試験の試験会場である新梅田研修センター(甲21・1頁)に出席するための通勤交通費は,雑所得である基本給付金を得るため直接に要した費用であるといえる。
(2) 書籍代,名刺代,交際費及び衣服購入費等は必要経費であること
   審査請求人は,「高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身につけ、裁判官、検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努めなければならない」司法修習生(司法修習生に関する規則4条)であった。
   そのため,法律書を購入し,これを熟読することで法律に関する理論と実務を身に付ける必要があった。
   また,実務法曹及び法科大学院同窓生との勉強会を含む交流,並びに社会人としての司法修習生にふさわしい服装を心がけることを通じて,弁護士にふさわしい品位と能力を備える必要があった。
   そのため,法律書購入に関する書籍代,名刺代,交際費及び衣服購入費等は,雑所得である基本給付金を生ずべき業務について生じた費用であるといえる。
(3) 審査請求人の雑所得の金額
   前述した事情を考慮すれば,別紙「審査請求人の収支の一覧表」(山中注;本ブログ記事では省略)にあるとおり,審査請求人が支給された基本給付金に係る必要経費は38万8394円であるといえる。
   そのため,仮に基本給付金が非課税所得でないとしても,必要経費として控除していないものがある点で,本件確定申告で申告した雑所得の金額148万2940円(甲3)は過大であって,審査請求人の雑所得の金額は116万8606円を上回らないといえる。

第4 修習専念資金の利息相当額は非課税所得であること
1(1) 修習専念資金とは,司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であって,修習給付金の支給を受けてもなお必要なものをいう(裁判所法67条の3第1項)。
(2) 審査請求人の場合,司法修習生の修習専念資金の貸与等に関する規則3条1項に基づき,毎月10万円を支給されていた(甲23)。
2 修習専念資金は,司法修習生の通常の支出のうち修習給付金では賄われない費用を補填する趣旨を有する金員である(甲5末尾2頁及び3頁参照)から,修習給付金と同様の性格を有するといえる。
   そのため,修習給付金が無利息であること(裁判所法67条の3第1項)に起因する,通常の利率により計算した利息の額に相当する利益(甲16・4頁)は学資金として非課税所得であるといえる。

第5 審査請求人が司法修習生として得たその余の収入は課税対象とはならないこと
1 審査請求人は,大阪地裁配属の第71期司法修習生として,最高裁判所から移転給付金(1回あたり10万8000円)及び旅費を支給されたことがあるし,大阪地裁及び大阪地検から旅費を支給されたことがある(甲24参照)。
2 移転給付金は,司法修習生がその修習に伴い住所又は居所を移転することが必要と認められる場合にその移転について支給されるものである(裁判所法67条の2第5項))から,修習を受けるために移転費用の実費相当額が支給されたものといえる。
   そのため,仮に移転給付金が所得税法9条1項4号の非課税所得に該当しなかったとしても,収入と経費が一致するため,結果として移転給付金は課税対象とはならない(甲16・2頁)。
3 旅費は,交通費,日当及び日額旅費として支給されるものである(国家公務員等の旅費に関する法律6条2項ないし6項及び15項)から,修習を受けるために交通費及び諸雑費の実費相当額が支給されたものといえる。
   そのため,仮に旅費が所得税法9条1項4号の非課税所得に該当しなかったとしても,収入と経費が一致するため,結果として旅費は課税対象とはならない(甲16・2頁)。
4 したがって,審査請求人が司法修習生として得たその余の収入は課税対象とはならないといえる。

第6 結論
   以上のとおり,審査請求人が司法修習生として得た収入はすべて非課税所得であり,又は課税対象とはならないといえるから,審査請求の趣旨記載のとおりの裁決を求める。
以  上

*1 「修習給付金の確定申告に関する記事の一覧」も参照してください。
*2 審査請求書を提出した後に気づきましたが,「県から奨学金の貸与を受けた医学生が医師免許取得後県内の医療機関に一定期間従事することによりその返還及び利息の支払に係る債務を免除された場合の課税関係について」(平成24年3月9日付の名古屋国税局の文書回答事例)には,事前照会者の以下の見解が名古屋国税局によって是認されています(司法修習生の場合,基本給付金13万5000円及び下宿代に相当する住居給付金3万5000円の合計は17万円となります。)。
   本件奨学金1(山中注:9年間,県内医療機関で勤務すれば返還免除となる奨学金)では、入学金及び授業料とは別に毎月10万円の奨学金を貸与することとしていますが、これは、下宿代や通学費用、食費、教科書や医学書の購入費用など、医学生が修学する上で必要と認められる範囲で貸与するものであり、学資金として相当なものと考えています。
*3 以下の情報公開文書を掲載しています。
① 給付型奨学金の非課税措置に関する文部科学省の開示文書(平成28年度及び平成30年度の文書)
② 令和2年4月開始の給付型奨学金は非課税所得であることに関する国税庁の開示文書
→ 文部科学省が開示した,平成30年度の文書と重複しています。

給付型奨学金の非課税措置に関する文部科学省の開示文書(平成28年度及び平成30年度の文書)に含まれている文書です。

修習給付金の課税関係に関する大阪国税局の見解

◯修習給付金の課税関係に関する大阪国税局の見解を示すものとして,大阪国税局課税部個人課税課審査指導係が作成した,「R1.9.4司法修習生が受ける修習給付金に係る課税関係について」の本文は以下のとおりです(反対説については,「修習給付金の課税関係に関する審査請求の理由書」を参照してください。)。

【事案概要】
   当時司法修習生(現・弁護士)であった納税者は修習給付金の給付を受けており、これについて7万円程度の必要経費を控除し雑所得として確定申告書を提出した。その後、当該修
習給付金は学資金にあたり非課税である旨の内容を記載した「事情説明書」及び領収書等を添付した更正の請求書を通知弁護士に委任し提出した。また、「事情説明書」において予備
的主張として修習給付金は必要経費を伴う雑所得である旨主張している。更に、税務署からの求めに応じて「事情説明書(2)」(証拠書類の説明)及び「事情説明書(3)」(追加の証拠書類及び説明並びに旅費及び移転給付金は非課税である旨の追加主張)を追加提出している。
   なお、修習給付金について司法研修所事務局総務課・経理課が発行する「修習給付金案内」のp27において、「修習給付金のうち基本給付金及び住居給付金は、所得税法上の「雑所得」に該当するため、確定申告の対象となります。・・・必要経費として控除することができる経費はありません」と記載がある。
【問題点】
   納税者が主張する司法修習生が支給を受ける給付金が非課税となるか、又は、雑所得の計算上必要経費と認められるものはあるか。
【検討】
   修習給付金は支給目的から①移転給付金②住居給付金③基本給付金に分かれている。

1 修習給付金の非課税該当性について
(1) 移転給付金、旅費及び住居給付金について
ア 移転給付金について
   納税者は、旅費及び移転給付金は国家公務員等の旅費に関する法律(以下、国家公務員等旅費法という。) (同法1条参照)が、司法修習生が二級の職務に相当するとした上で、司法修習生に準用されていることから、司法修習生としての採用は所得税法9①四の就職にあたり、司法修習は同号の職務に当たると言え、所基通9-3に挙げられる運賃や移転料に該当するため非課税である旨主張する。
   これについて所得税法9①四は「給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは脂肪による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの」と定めている。
   これを本件についてみるに、移転給付金は給与でないことは明らかであるが、納税者の主張する国家公務員等旅費法に関する法律が、司法修習生が二級の職務に相当するとした上で司法修習生に準用されている事実はなく、高等長官、地方・家庭所長あて事務総長依命通達(改正平成26年経監第1524号)の「内国旅行の旅費について」において司法修習生が二級の職務に相当するとした記載があり、これにより当該旅費及び移転給付金は国家公務員等旅費法に準じて支給されているものであり、裁判所HPにおいても司法修習生は国家公務員に準じる立場である旨記載がある上、就職と言う字句が表すところは職業に就く、すなわち一般に生計を維持するために行う仕事に従事することを指すことから、司法修習生としての採用は就職と解することはできない。
   ところで、移転給付金は司法修習生がその修習に伴い住所又は居所を移転することが必要と認められる場合に支給するものであり、そうであれば当該給付金は、生活維持のためではなく、修習を受けるために移転費用の実費相当額が支給されるものと観念できることから収入と経費が一致し、結果として課税対象とはならないこととなる。
イ 旅費について
   司法修習について給与支払を受けていない修習生が支給を受ける当該旅費は所法9①四の「給与所得を有する者」に該当せず、転居のための旅行にも当たらないため非課税とはならない。ところで、当該納税者が支給を受ける旅費には交通費、日当、日額旅費等が含まれているのであるが、旅費業務に関する標準マニュアルVer.2-0 (各府省等申合せ2016年12月)において交通費は実際に支出した額、日当は目的地内を巡回するための交通費がおおむね半分を占め(内国旅行においては、鉄道賃等を実費支給し、目的地内巡回交通費相当分の交通費は支給しない)、もう半分は旅行中の昼食や官署への電話代を含み、日額旅費は交通費や日当に代えて長期間の研修、講習、訓練その他これらに類する目的のための旅行について財務大臣がこれを支給することを適当と認めて指定する旅費である旨規定されている。これについて旅費各内容を見るに、これらの支給は所得税法に定める利子所得ないし一時所得のいずれにも該当しない所得であると言えることから、全て雑所得の計算上総収入金額となり、これらに係る支出は実費相当額が支給されたものであると観念できるためその支出した旅費が必要経費となるのであるから結果として所得は発生しないこととなる。
ウ 住居給付金について
   住居給付金について当該納税者は受給していないため所得区分の判断は不要であるが、強いて判断を行うとすれば、毎月定額で支払われ、一時に支払われるものでなく、他の8種の所得のいずれにも該当せず、非課税規定のいずれにも当てはまらないため雑所得であると考えられ、住居費として支出される金額は所法45①一の家事費であり、雑所得の計算上必要経費に算入することはできない。
(2) 基本給付金について
ア 学資金としての性質を有するか
   納税者は、修習給付金について修習専念義務(裁判所法67②、司法修習生に関する規則2条)を負っている修習期間中の生活費及び教育費に充てるために国から支給される金員であって、非課税所得に該当する給付型奨学金と同じようなものといえるから、学資金としての性質を有するといえると主張する。
   しかし、学費の負担を前提としている奨学金と基本給付金(1(1)記載のとおり当該事案の基本給付金以外の課税関係の判断はこれ以上不要であるため、以下基本給付金について述べる。)はその性質が異なる。すなわち、裁判所法67条の2③「基本給付金の額は、司法修習生がその修習期間中の生活を維持するために必要な費用であって、その修習に専念しなければならないことその他の司法修習生の置かれている状況を勘案して最高裁判所が定める額とする。」とあるとおり、基本給付金は生活を維持するために必要な費用を給付する旨定めており、教育費に充てることを目的としている旨の規定はなく、所得税法9条①十五規定の「学資に充てるため給付される金品」にあたると解することはできない。
イ 職業訓練受講給付金が非課税所得であるにもかかわらず、修習給付金が非課税所得ではないのは憲法14条1項に違反するか
   職業訓練受講給付金は、雇用保険を受給できない求職者について職業訓練期間中の生活を支援するための給付で非課税とされている一方で、司法修習という職業訓練期間中の生活を支援するための給付である修習給付金が非課税でないのは平等原則を定めた憲法14条1項に違反するといえると納税者は主張する。
   しかし、職業訓練受講給付金は、失業が長期化するほど就業意欲の減退や職業能力の衰退が進行し、人材の質の劣化及び社会経済の生産性の低下につながることから、こうした状態に陥るのを防ぐために、できるだけ短い失業期間で再就職を可能にすることが雇用対策として不可欠であることから職業訓練を推進しているものであり、このような政策的背景のある職業訓練受講給付金と、修習期間中の生活を維持するための基本給付金ではその給付の趣旨が異なるものであるため、これらの課税上の取り扱いが異なることには合理性があり修習給付金が非課税所得とならないことが憲法14条1項に違反しているとはいえない。
ウ 修習給付金について公租公課禁止規定がないことだけを理由として非課税所得ではないと判断することはできないこと
   犯罪被害者に係る被害回復給付金については公租公課禁止規定がないにも関わらず非課税であるため、同様に修習給付金についても公租公課禁止規定がないことを理由として非課税所得ではないと判断することはできない旨納税者は主張するが、所得税施行令30条1項3号にあるとおり被害回復給付金は「心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金」にあたると考えられるため非課税規定が適用されるものであるのに対し、当該修習給付金は所得税法9条各号及び関連法令等のいずれにも当てはまらないため非課税とは考えられない。
(3) 修習専念資金について
   裁判所法67の3において最高裁判所は司法修習生の修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間無利息で修習専念資金を貸与するものとする定めがあるところ、所法36において経済的利益の価額を収入すべき旨定めており、経済的利益の計算に当たっては所基通36-15(3)にあるとおり通常の利率により計算した利息の額を求める必要がある。
   当該修習専念資金は無利息であることから通常の利率により計算した利息の額に相当する利益は、経済的利益として所得税の課税対象となると考えられる。また、所基通36-49において、使用者が役員又は使用人に対して行う貸付に係る利息相当額については他から借り入れて貸し付けたものである場合を除いて特例基準割合による利率により評価する旨定めているところ、逐条解説において特例基準割合を採用している理由として「①利子税の割合は税法上の基準金利と考えられ、客観性を有すること ②利子税の特例基準割合は現在の超低金利の状況を踏まえて設けられたものであること ③利子税の特例基準割合は、国民にとって最もわかりやすい基準割引率を基準とし、かつ、変動要素をもった利率であること」とある。また、改正税法のすべてによると特例基準割合は、「諸外国の延滞利子が期限内納付のしょうよう等のために市中貸出金利等に一定の割合を上乗せしたものとなっていることを参考としつつ、我が国においては、国民にとって最も明白で分かりやすい公定歩合を基準とし、公定歩合と市中貸出金利等との差及び諸外国で市中貸出金利等に上乗せしている割合を勘案し」としている。
   当該修習専念資金は使用者が役員又は使用人に対して行う貸付には当たらないものの、所基通36-49において特例基準割合を用いて経済的利益を評価する趣旨に照らすと、当該修習専念資金についても特例基準割合を用いて経済的利益を評価することが可能であると考えられる。
   なお、所基通36-28は使用者が役員又は使用人に対し金銭を無利息で貸付けたことに係るその年における利益の合計額が5,000円以下の場合は課税しなくて差し支えない旨規定しているが、当該貸付けは使用者が役員又は使用人に対してするものではないため本通達の適用はない。

2 修習給付金は必要経費を伴う雑所得であるか(予備的主張)
   所得税法37①において、「その年分の・・・雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする。」とあるとおり、雑所得の必要経費と認められるのは、当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年におけるこれらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額である。
   これを本件についてみるに、たとえ修習期間中に書籍購入代金、懇親会費や衣服購入費がかかったとしても、基本給付金は修習期間中の生活を維持するために必要な費用を賄うことを目的として司法修習生という立場であることのみを要件として支給されており、基本給付金の支給を受けるため、つまり、司法修習生という立場であるために当該書籍購入費等の費用を直接に要するとは認められないし、司法修習はこれらの所得を生ずべき業務であると解することはできず、当該書籍購入費等は所得税法45条①一の家事費にあたるものと解される。

* 「修習給付金の確定申告に関する記事の一覧」も参照してください。


司法修習生に対する旅費及び移転給付金について課税関係は発生しないこと

目次
第1 最高裁判所の公式見解
第2 所得税法及び所得税基本通達の条文
1 所得税法の条文
2 所得税基本通達の条文
第3 旅費及び移転給付金の一般的な支給額等
1 旅費(交通費,日当及び日額旅費)
2 移転給付金
第4 旅費及び移転給付金について課税関係は発生しないこと
1 総論
2 所得税法9条1項4号の条文
3 導入修習参加のための旅費及び移転給付金の取扱い
4 導入修習参加のためのものを除く,旅費及び移転給付金の取扱い
第5 関連記事

第1 最高裁判所の公式見解
   最高裁判所としては,司法修習生に対して支給する旅費(交通費及び日当)並びに移転給付金は,実費弁償性があり,雑所得には該当しないと考えているため,源泉徴収をしていません。


第2 所得税法及び所得税基本通達の条文
1 所得税法の条文
   所得税法
9条1項4号は,「給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの」は非課税所得に該当すると定めています。
2 所得税基本通達の条文
   所得税基本通達9-3は,「法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいう」と定めています。

提出書類確認スケジュール(第73期修習給付金)

第3 旅費及び移転給付金の一般的な支給額等
1 旅費(交通費,日当及び日額旅費)
(1) 総論
ア 司法修習生に対して旅費が支給されるケースとしては,①導入修習に参加するために移動する場合,分野別実務修習に参加するために移動する場合,集合修習に参加するために移動する場合及び選択型実務修習に参加するために移動する場合,並びに②実務修習において各種施設の見学等に参加する場合があります。
イ 各種施設の見学等のための近距離の移動の場合には交通費だけが支給され,それ以外の移動の場合には交通費及び日当(①の場合),又は日額旅費(②のうち,全国プログラムに参加する場合)が支給されます。
(2) 交通費
ア 交通費は,原則として,最も経済的な通常の経路及び方法により旅行した場合の旅費により計算された金額で支給されるものです(国家公務員等の旅費に関する法律6条2項ないし5項,及び7条)。
イ 司法修習生に対する交通費の金額は,最も経済的な通常の経路及び方法として鉄道,航空機等を利用した場合において実際に負担した運賃です。
(3) 日当
ア 日当は,1日当たりの定額で支給されるものです(国家公務員等の旅費に関する法律6条6項及び20条)。
   また,旅費業務に関する標準マニュアルVer.2-0(2016年12月の各府省等申合せ)10頁及び11頁によれば,おおむね半額は目的地内を巡回する場合の交通費(「目的地内巡回交通費」といいます。)に充てるものとされ,残り半額は諸雑費(旅行中の昼食代や官署との電話代等)に充てるものとされています。
イ 司法修習生に対する日当の金額は,国家公務員等の旅費に関する法律別表第一に定める日当(二級の職務)の定額1700円の半分となる850円です。
   これは,鉄道賃等を実費支給される関係で,目的地内巡回交通費を支給されないためと思われます(令和2年1月30日付の開示文書参照)。
(4) 日額旅費
ア 日額旅費(国家公務員等の旅費に関する法律26条1項)は,交通費(宿泊先から修習先までの分),宿泊料及び日当に代えて支給されるものです(国家公務員等の旅費に関する法律6条15項参照)。
   また,旅費業務に関する標準マニュアルVer.2-0(2016年12月の各府省等申合せ)16頁によれば,日額旅費には一般業務日額旅費及び研修日額旅費があるところ,司法修習生に対する日額旅費は研修日額旅費(国家公務員等の旅費に関する法律26条1項2号)です。
イ 司法修習生の場合,選択型実務修習(全国プログラム又は自己開拓プログラム)に参加する場合に支給されるものです。
ウ 司法修習生に対する日額旅費の金額は,旅館に宿泊する場合(旅館業法2条2項及び3項の旅館業の用に供する宿泊施設に宿泊する場合),1日当たり5910円であり,下宿その他これに準ずる宿泊施設に宿泊する場合(例えば,旅館業法の許可を受けていないウィークリーマンションや,カプセルホテル,寮,民泊等に宿泊する場合),1日当たり3260円であると思います(研修等の旅行の日額旅費について(平成31年3月15日付の最高裁判所経理局長の通達)参照)。
2 移転給付金
(1)ア 移転給付金は,裁判所法67条の2第5項に基づき,赴任に伴う居住所の移転が行われた場合に支給される旅費(いわゆる引越代)であり,距離区分等に応じた定額を支給されるものであって,国家公務員等に対する移転料(国家公務員等の旅費に関する法律6条9項及び36条)に相当するものです。
   実際,67期ないし70期の司法修習生に対しては,「移転料」という名前で引越代が支給されていました(「司法修習生に対する修習資金等の状況のあらまし」参照)。
イ 国家公務員の場合,着後手当(採用又は転任により居住地の移転が行われた場合に新居住地に到着後の諸雑費に充てるために支給される旅費)を支給される(国家公務員等の旅費に関する法律6条10項及び37条)のに対し,司法修習生の場合,着後手当に相当する手当を支給されません。
   そのため,新居住地に到着後の諸雑費については,基本給付金に対する必要経費として主張できるかもしれません。
(2)ア 司法修習生に対する移転給付金の金額は,国家公務員等の旅費に関する法律23条1項及び別表第二・2項に定める移転料(二級の職務)の半分(赴任の際に扶養親族を移転しない場合に関する同法23条1項2号参照)と同じ額を支給されるものです。
イ 移転給付金の具体的な金額は,移転距離に応じて以下のとおりです(司法修習生の修習給付金の給付に関する規則10条及び別表)。
鉄道          50km未満: 4万6500円
鉄道  50km以上 100km未満: 5万3500円
鉄道 100km以上 300km未満: 6万6000円
鉄道 300km以上 500km未満: 8万1500円
鉄道 500km以上1000km未満:10万8000円
鉄道1000km以上1500km未満:11万3500円
鉄道1500km以上2000km未満:12万1500円
鉄道        2000km以上:14万1000円

第4 旅費及び移転給付金について課税関係は発生しないこと
1 総論
(1)  「修習給付金案内」には,旅費(交通費,日当及び日額旅費),並びに移転給付金について確定申告が必要であるなどとは書いてありません。
   そのため,司法研修所としては,旅費(交通費,日当及び日額旅費),並びに移転給付金について課税関係は発生しないと考えていると思います。
(2) 公務のための旅行について旅費を支給する法律である国家公務員等の旅費に関する法律(同法1条参照)が,司法修習生が二級の職務に相当するとした上で,司法修習生に準用されています(内国旅行の旅費について(昭和61年9月12日付の最高裁判所事務総長依命通達)1(1)及び別表第1)。
   そのため,司法修習生としての採用は所得税法9条1項4号の「就職」に当たり,司法修習生としての司法修習は同号の「職務」に当たると思います。
(3)ア 交通費は,所得税基本通達9-3の「運賃」に該当すると思います。
イ 日当は,所得税基本通達9-3の「運賃等の支出」に該当すると思います。
ウ 研修日額旅費は,所得税基本通達9-3の「運賃,宿泊料等の支出」に該当すると思います。
エ 移転給付金は,国家公務員等に対する移転料と同趣旨で支給されるものですから,所得税基本通達9-3の「移転料」に該当すると思います。
(4) 司法修習生に対する旅費及び移転給付金は,その金額規模からすれば,所得税基本通達9-3「その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品」に該当すると思います(旅費につき令和元年11月25日付の理由説明書,移転給付金につき令和元年12月9日付の理由説明書参照)。
2 所得税法9条1項4号の条文
所得税法9条は柱書で「次に掲げる所得については、所得税を課さない。」と定めていますところ,同条1項4号は以下のとおりです。
 給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの
3 導入修習参加のための旅費及び移転給付金の取扱い
   導入修習参加のための旅費(交通費及び日当)並びに移転給付金は,「就職をした者が就職に伴う転居のための旅行をした場合」に支給されるお金ですし,所得税法9条1項4号の条文上,「給与所得を有する者」に支給したものに限定されているわけではありませんから,所得税法9条1項4号に基づき非課税所得であると思います。
4 導入修習参加のためのものを除く,旅費及び移転給付金の取扱い
(1) 旅費
   司法修習生は「給与所得を有する者」に該当しないとはいえ,司法修習生に対する交通費及び日当(導入修習参加のためのものを除く。)並びに日額旅費は,給与所得を有する他の裁判所職員と同じように,国家公務員等の旅費に関する法律等に準じて支給されるものです(「内国旅行の旅費について」(昭和61年9月12日付の最高裁判所事務総長の依命通達)参照)から,所得税法9条1項4号類推適用に基づき非課税所得になると思います。
(2) 移転給付金
   司法修習生は「給与所得を有する者」に該当しないとはいえ,司法修習生に対する移転給付金(導入修習参加のためのものを除く。)は,国家公務員等に対する移転料と同趣旨で支給されるものですから,所得税法9条1項4号類推適用に基づき非課税所得になると思います。
5 大阪国税局の見解
   司法修習生としての採用は就職ではないため,所得税法9条1項4号の適用はないものの,旅費及び移転給付金については,収入と経費が一致し,結果として課税対象とはならないとしています(「修習給付金の課税関係に関する大阪国税局の見解」参照)。

第5 関連記事
① 修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い
② 司法修習生の司法修習に関する事務便覧
③ 司法修習生の旅費に関する文書

修習給付金制度を創設した平成29年の裁判所法改正法に関する,参議院法務委員会における国会答弁資料

○参議院法務委員会の会議録のうち,平成29年4月13日開催分及び同月18日開催分を掲載しています。
○以下のとおり参議院法務委員会における国会答弁資料を掲載しています(衆議院法務委員会における国会答弁資料も参照してください。)。
1 平成29年4月18日の,元榮太一郎参議院議員(自民党)の以下の質問に対するもの
① 修習給付金制度の導入に至った理由及びその背景について,法務当局に問う。
② 今回の制度設計に当たり,どのような検討により,基本給付金を月額13.5万円,住居給付金を月額3.5万円とする制度としたのか,給費制下の支給額と比較して低いのではないか,法務当局に問う。
③ 今回新たな給付制度を導入しつつ,貸与制を併存させる理由は何か,貸与制の内容日打て見直しをするのか,法務当局に問う。
④ 現行貸与制下の司法修習生に対して救済措置を講ずるべきではないか,法務当局に問う。
⑤ 基本給付金の額を検討するに当たって,修習期間中の交通費は考慮されたのか,法務当局に問う。
⑥ 法曹資格取得までの期間を短縮するため,法科大学院修了前に司法試験の受験を可能とし,4月から司法修習を開始できるようにすべきと考えるが,法務当局の見解を問う。
⑦ 司法修習期間が1年間と短期間である中,懲戒的措置として戒告を設ける意味はあるのか,法務当局に問う。
⑧ 今後とも,法曹の魅力を高め,法曹人材を確保するための不断の検討を続けるべきではないか,法務大臣の所見を問う。

2 平成29年4月18日の有田芳生参議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 本改正法案の立法目的は何か,法務大臣に問う。
② 本改正法案により,法曹志望者は増えるのか,法務当局に問う。
③ 司法試験出願者数の推移について,法務当局に問う。
④ 法曹志望者が減少した理由について,どのように考えるか,法務当局に問う。
⑤ 法科大学院の課程を修了したことを要件とする現行司法試験の受験資格を見直すべきではないか,法務当局に問う。
⑥ 法科大学院修了者の司法試験合格率が,予備試験合格者の司法試験合格率より大幅に低いのは,司法試験法第5条違反ではないか,法務当局に問う。
⑦ 有為な法曹人材の確保に向けた法務大臣の決意を問う。

3 平成29年4月18日の,真山勇一参議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 各種の「子どもの人気職業ランキング」等で法曹関係者の人気下落が著しいが,この点につき,法務大臣の見解を問う。
② 小学生や中学生に対し法曹の魅力を伝える努力をすべきではないか,法務当局に問う。
③ 司法修習制度が存在する理由及び司法修習生に対し修習専念義務が課されている理由について,法務当局に問う。
④ 給費制から貸与制に移行した理由について,法務当局に問う。
⑤ 登録5年目の弁護士の平均的な所得額はどうなっているか,法務当局に問う。
⑥ 登録5年目の弁護士の所得状況に照らし,貸与金の返還義務の負担の軽重についてどのように考えるか,法務大臣の見解を問う。
⑦ 現行の貸与制下の司法修習生に対して救済的措置を講ずるべきではないか,法務大臣の所見を問う。
⑧ 現行の貸与制下の司法修習生に対する救済的措置の是非について検討したことがあるか,法務当局に問う。
⑨ 現行の貸与制下で司法修習を終えて弁護士となった者による独立開業を支援すべきではないか,法務当局の見解を問う。

4 平成29年4月18日の,佐々木さやか参議院議員(公明党)の以下の質問に対するもの

① 修習給付金創設の趣旨及び背景について,法務当局に問う。
② 修習給付金と給費制下における給費の性格や金額の違いについて,法務当局に問う。
③ 法曹有資格者の活動領域の拡大に今後も努めるべきではないか,法務当局に問う。
④ 今回の改正で,修習の停止及び戒告の制度を設けた理由について,法務当局に問う。
⑤ 改正後の裁判所法第68条第1項で,心身の故障等を罷免事由として明記した理由について,法務当局に問う。
⑥ 修習給付金を受け取って法曹となった者の社会貢献活動の在り方についてどのように考えるか,法務大臣の見解を問う。

5 平成29年4月18日の東徹参議院議員(日本維新の会)の以下の質問に対するもの
① 弁護士会は強制加入団体であると言われているが,それに違いはないか,法務当局に問う。
② 弁護士会のような強制加入団体では,政治的中立性を確保することが極めて重要であると考えるが,法務大臣の見解を問う。
③ 弁護士会において,政治的中立性が適切に確保されるため,どのような対策が行われているのか,それが効果的であるのか,法務当局に問う。
④ 今後,法曹をどこまで増やす必要があるのか議論がある中で,なぜ法曹志望者を確保するために給付金制度が必要となるのか,法務大臣の見解を問う。
⑤ 貸与制を導入した理由について,法務当局に問う。
⑥ 司法修習生に対する経済的支援策として,修習給付金制度以外の選択肢を検討しなかったのか,法務当局に問う。
⑦ 昨年12月に法曹三者間において修習給付金制度の内容について確認がされたが,なぜ法曹三者で確認したのか,法務当局の見解を問う。
⑧ なぜ,弁護士等の養成課程において司法修習が必要なのか,法務大臣の見解を問う。
⑨ 修習給付金制度の創設により,国の財政的負担が増大することから,裁判所法を改正して司法修習の期間を短縮すべきではないか,法務当局の見解を問う。

6 平成29年4月18日の,山添拓参議院議員(日本共産党)の以下の質問に対するもの

① 質の高い法曹を輩出する理由についてどのように考えているか,法務大臣の見解を問う。
② 本改正法案は,貸与制に移行したことで法曹志望者の減少に拍車がかかったという反省を踏まえて提出したものか,法務大臣の見解を問う。
③ 給費制下の支給金額及び貸与制下の貸与額は,修習専念義務の下,司法修習生が修習生活を送る上で必要な額であるという前提で制度設計がなされていたのか,法務当局に問う。
④ どのような検討により,基本給付金を月額13.5万円,住居給付金を月額3.5万円とする制度としたのか,法務当局に問う。
⑤ 貸与制を併存させる理由について,法務当局に問う。
⑥ 本改正法案は,修習給付金だけでは生活できない司法修習生がいるという前提で制度設計されたものか,法務大臣の認識を問う。
⑦ 現行貸与制下の司法修習生の救済について,法務大臣の見解を問う。

7 平成29年4月18日の,糸数慶子参議院議員(沖縄社会大衆党)の以下の質問に対するもの
① 平成29年司法試験出願者数について,法務当局に問う。
② 平成18年(2006年)以降の司法試験出願者数の推移について,法務当局に問う。
③ 法曹志望者の減少の要因について,法務当局に問う。
④ 国選弁護人を10年間担っているある弁護士の方が「法曹を養成する段階では充分な国費を投入することがまずもって求められている。」と述べているが,法曹養成の重要性について,法務大臣の見解を問う。
⑤ 現行貸与制下の司法修習生を救済する必要性があるのではないか,法務大臣の見解を問う。

8 平成29年4月18日の,山口和之参議院議員(無所属)の以下の質問に対するもの

① 本改正法案で「修習の停止」及び「戒告」を新たに設ける趣旨は何か,また,これらはどのような効果を持つ処分か,法務当局に問う。
② 裁判所法で規定されている司法修習制度の目的と意義についてどのように考えるか,法務当局に問う。
③ 司法修習を経ずに弁護士となるルートとして,どのようなものがあるか,また,そのようなルートを経て弁護士になった者と,司法修習を経て弁護士となった者とでは,その資格等に違いがあるか,法務当局に問う。
④ 司法試験合格者のうち,かつては新司法試験組より旧司法試験組の方が,現在は法科大学院組より予備試験組の方が,就職に有利な扱いを受けていると聞くが,法科大学院を経た者が低い評価を受ける原因をどのように考えるか,法務当局に問う。
⑤ 今後,法科大学院改革を含む法曹養成制度改革にどのように取り組んでいくのか,法務大臣の決意を問う。

修習給付金制度を創設した平成29年の裁判所法改正法に関する,衆議院法務委員会における国会答弁資料

○衆議院法務委員会の会議録のうち,平成29年3月21日開催分同月22日開催分同月24日開催分及び同月31日開催分を掲載しています。
○以下のとおり衆議院法務委員会における国会答弁資料を掲載しています(参議院法務委員会における国会答弁資料も参照してください。)。

1 平成29年3月21日の,安藤裕衆議院議員(自民党)の以下の質問に対するもの
① 司法修習生に対する経済的支援が給費制から貸与制に変わった理由,そして,今回,給付金制度を新設した理由について,法務当局に問う。
② 課税関係について,なぜ給費制下の給与所得から,給付金は雑所得に変わるのか,年金や健康保険は国民年金や国民健康保険ということだが,これもなぜ給費制下の取扱いと変わるのか,法務当局に問う。
③ 大学の給付型奨学金も今国会で法案が提出されているが,司法修習生で奨学金と修習資金の両方の貸与を受けるとかなりの負債を負うことになる。65期から70期までの司法修習生の救済策について,法務当局に問う。
④ 法曹志望者の減少理由をどのように考えているか,法務当局に問う。
⑤ 弁護士になっても就職できない,また収入が低いという減少が現れており,それが有為な法曹人材の確保のため,今後法務省としてどのように取り組むのか,法務大臣に問う。

2 平成29年3月21日の,國重徹衆議院議員(公明党)の以下の質問に対するもの
① 修習給付金制度の導入の理由について法務当局に問う。
② 平成27年6月の法曹養成制度改革推進会議決定に基づき修習給付金制度の制度設計を担った法務省では,どのような検討により,基本給付金を月額13.5万円,住居給付金を月額3.5万円とする制度設計をしたのか,法務当局に問う。
③ 今後の修習給付金の金額水準の見直しの在り方につき,制度設計を担った法務省としてはどのように考えているのか,法務当局に問う。
④ 修習給付金について,給付型奨学金等とは異なり,司法修習生に一律に支払う理由につき,法務当局に問う。
⑤ 司法修習生の懲戒的措置に関する規程の整備として,罷免以外に修習の停止及び戒告を設ける理由につき,法務当局に問う。
⑥ 修習停止の期間中に修習給付金は支給されるのか,法務当局に問う。
⑦ 昨年12月の法務省,最高裁判所及び日本弁護士連合会の確認にある「修習の成果の社会還元を推進するための手当て」に関する検討状況につき,法務当局に問う。
⑧ 法曹志望者が大幅に減少している中,今後の法曹養成制度の改革に向けた決意につき,法務大臣に問う。

3 平成29年3月22日の,井出庸生衆議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 司法修習生の実務修習地についてどのように決まるのか,希望は通るのか,法務大臣に問う。
② 司法修習生の修習先に応じた経済的負担を把握するため,司法修習生の経済的負担につき,アンケートなどの実態調査はしているのか,法務大臣に問う。
③ ①実家から修習先へ通勤できる修習生,②従来の居住地から引っ越しをすることなく修習地に通勤できる修習生,③実家問うから修習先への通勤が不可能で,新たに住居を確保することを迫られる修習生の割合は過去5年でそれぞれどの程度か,法務大臣に問う。
④ 住居費に応じた司法修習生に対する経済的支援はどの程度あり,実体としてどれほどの住宅補助の役割を果たしているのか,法務大臣に問う。
⑤ 司法修習生は,司法修習において,罪刑法定主義や刑法の謙抑主義を改めて学ぶのか,法務大臣に問う。
⑥ 国際法,国際人権法,国際刑事法については,司法修習でどのような形でどのくらいの時間をかけて学ぶのか,法務大臣に問う。
⑦ 将来の司法を担う人材である司法修習生が,激変する国際法,国際人権法,国際刑事法を学ぶ大切さにつき,法務大臣の所見を問う。
⑧ 司法修習において,双罰性についての考え方,日本の裁判例などは教えるのか,法務大臣に問う。
⑨ 司法修習において,国際法と国内法との優先順位,国際法の実効性についてどう教えるのか,法務大臣に問う。

4 平成29年3月22日の,逢坂誠二衆議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 法曹志望者の減少の要因と解決策につき,法務大臣に問う。
② 司法試験制度の抜本的な見直しにつき,法務大臣に問う。
③ 修習給付金制度の創設は歓迎すべきことだが,修習給付金制度の課題をどのように考えているか,法務大臣に問う。
④ 修習給付金の金額は適切であると考えるか,法務大臣の所見を問う。
⑤ 修習給付金の税務上の取扱いにつき,法務大臣に問う。
⑥ 司法修習生の社会保険の取扱いにつき,法務大臣に問う。
⑦ 司法修習修了者の社会貢献の在り方につき,法務大臣に問う。
⑧ 現行貸与制と修習給付金制度との制度間の不公平につき,法務大臣に問う。

5 平成29年3月22日の,階猛衆議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 裁判所法改正法案の立法目的は何か,法務大臣に問う。
② 同改正法案で立法目的は達せられるのか,法務大臣に問う。
③ 立法目的を達するために,同改正法案以外に他の選択肢を検討したのか,法務大臣に問う。
④ 司法試験受験資格を見直すべきではないか,法務大臣に問う。
⑤ 予備試験合格者の司法試験合格率が法科大学院修了者の司法試験合格率を上回り続ける理由について,法務大臣に問う。

6 平成29年3月22日の,松浪健太衆議院議員(日本維新の会)の以下の質問に対するもの
① 法曹志望者の減少の要因につき,どのように考えているか,法務当局に問う。
② 弁護士の収入について,平成23年の調査と平成28年の調査を比較して所得中央値が半減した理由は何か,法務当局に問う。
③ 法科大学院出身者である弁護士の平均年収について,法務当局に問う。
④ 法曹人口増大が,弁護士の収入など弁護士の需給バランスに与えた影響について,法務当局に問う。
⑤ 平成28年司法試験について,予備試験合格による受験資格者と法科大学院修了による受験資格者のそれぞれの司法試験合格率について,法務当局に問う。

7 平成29年3月22日の,藤野保史衆議院銀(日本共産党)の以下の質問に対するもの
① 修習給付金制度創設の意義について,法務大臣の所見を問う。
② 今回の制度設計をした法務省では,どのような検討により,基本給付金を月額13.5万円,住居給付金を月額3.5万円とする制度としたのか,法務当局に問う。
③ 現行の貸与制下の司法修習生に不公平が生じているが,貸与制下の司法修習生に対する経済的措置や救済措置を講ずべきではないか,法務大臣の所見を問う。
④ 司法修習生に対する懲戒的措置の整備により,司法修習生による自主的な法曹としての識見を高めるための諸活動を萎縮させることにならないか,法務大臣の所見を問う。
⑤ 戦前と異なり,一元的な法曹養成である現行の司法修習を行うことの意義について,法務当局に問う。

8 平成29年3月31日の,階猛衆議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 修習給付金を支給する制度を導入した上で,現行制度を維持した場合,来年の司法試験の受験者数は増えるのか,法務大臣の所見を問う。
② 法科大学院修了者の司法試験合格率が予備試験合格者の司法試験合格率より著しく低いことからすれば,予備試験は法科大学院修了者と同等の学識を有することを判定するという司法試験法第5条に照らし,法科大学院は,本来,法科大学院を修了すべきでない者を修了させていることになるのではないか,法務大臣の所見を問う。
③ 法科大学院の修了認定を厳しくし,司法試験法第5条のとおりに法科大学院を修了すべき者に法科大学院修了資格を付与していれば,司法試験受験者は,現在よりもっと減少するのではないか,法務大臣の所見を問う。
④ 仮に,来年も司法試験の受験者数が減少した場合,合格者数1,500人以上という目的は達成できるのか,法務大臣の所見を問う。
⑤ 3月22日の質問時に,私の「まず司法試験の受験資格を見直すことだ」という質問に対し,大臣は「委員のご指摘を踏まえて,検討をしていくプロセスを用意すれば,それはそれで非常に大きな前進になるのではないか」と答弁したが,検討していくプロセスとは具体的に何か,法務大臣の所見を問う。
⑥ 3月22日の質問時に,私が示した法学部に在籍する学生に対する法曹志望に関するアンケートにつき,大臣は「こういう精緻な資料を何枚かいただいてこの話に臨んだことは,私は残念ながら初めてだ」と答弁したが,肝心なデータを部下から得ていないのは,法務省の組織の在り方として問題ではないか,法務大臣の所見を問う。
⑦ 法曹志願者を量的にも質的にも高めていくためには,修習給付金を支給する制度の復活だけでなく,司法試験の受験資格の見直しが不可欠ではないか,法務大臣の所見を問う。

9 平成29年3月31日の,今野智博衆議院議員(自民党)の以下の質問に対するもの
① 修習給付金制度の意義と,基本給付金を司法修習生全員に一律に支給する制度とした理由について,法務当局に問う。
② これまでの貸与世代の修習生について,何らかの救済策を講じるべきではないか,法務当局に問う。
③ 法曹志望者の確保のため,弁護士が行政庁や企業などで活躍分野を広げる取組が重要と考えるが,法曹有資格者の活動領域の拡大にどのように取り組むのか,法務大臣に問う。

10 平成29年3月31日の,山尾志桜里衆議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 「谷間の世代」である現行貸与制下の司法修習生の人数と全法曹人口につき,法務大臣に問う。
② 法曹志望者の減少の理由につき,法務大臣に問う。
③ 「谷間の世代」である現行貸与制下の司法修習生に対して救済措置を講じない理由につき,法務大臣に問う。
④ 法務省としては,どのような検討の結果,現行貸与制下の司法修習生に対して救済措置を講じないこととしたのか,これまでの検討状況の詳細につき,法務大臣に問う。
⑤ 現行貸与制下の司法修習生に対する救済措置を講ずるか否かにつき,法曹養成制度改革連絡協議会で検討されたのか,法務大臣に問う。
⑥ 法曹養成制度改革連絡協議会の議事録が非公開とされている理由は何か,法務大臣に問う。
⑦ (最高裁判所が説明する)予算規模からすれば,現行貸与制下の司法修習生に対して救済措置を講ずるべきではないか,法務大臣の所見を問う。
⑧ 昨年12月に法曹三者間で確認された「修習の成果の社会還元」とは何か,法務大臣に問う。
⑨ 「修習の成果の社会還元」と弁護士自治との関係につき,法務大臣に問う。

11 平成29年3月31日の,國重徹衆議院議員(公明党)の以下の質問に対するもの
① 司法試験の合格者について,年間3,000人目標を撤回し,年間1,500人程度とした理由は何か,法務当局に問う。
② 司法修習終了後の弁護士未登録者数の状況は,最近どのような傾向にあるか,法務当局に問う。
③ 法曹有資格者の活動領域の拡大について,法務省としても,取組をバックアップしていくべきではないか,法務当局に問う。

生活保護受給者と,修習給付金及び修習専念資金との比較

目次
1 生活保護受給者の権利及び義務
2 生活保護に基づく支給の種類
3 生活保護で支給される金額の例
4 修習給付金及び修習専念資金との比較
5 関連記事

1 生活保護受給者の権利及び義務
大阪府門真市HPの「生活保護受給者の権利と義務」(リンク切れ)によれば,以下のとおりです。
(1) 生活保護受給者の権利
① 不利益変更の禁止(生活保護法56条)
   正当な理由なく、保護費を減らされたり保護を受けられなくなったりするなどの不利益を受けることはありません。
② 公課及び差押えの禁止(生活保護法57条及び58条)
   保護により支給された金品には、税金をかけられたり、差し押さえられたりすることはありません。
(2) 生活保護受給者の義務
① 譲渡禁止(生活保護法59条)
   保護を受ける権利を他人に譲り渡すことはできません。
② 生活上の義務(生活保護法60条)
   常に能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図り、その他生活の維持、向上に努めなければなりません。
③ 届出の義務(生活保護法61条)
   世帯に収入があったときや世帯員の状況に変化があったときは、福祉事務所へすみやかに、正しく届け出なければなりません。
④ 指示等に従う義務(生活保護法62条)
   福祉事務所が最低生活の保障と生活の向上や自立のために必要な指導・指示をしたときは、これに従わなければなりません。

2 生活保護に基づく支給の種類
(1) 生活保護受給者の場合,以下のように,生活を営む上で必要な各種費用に対応して扶助が支給されます(厚生労働省HPの「生活保護制度」参照)。
① 生活扶助:日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱費等)
② 住宅扶助:アパート等の家賃
③ 教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費
④ 医療扶助:医療サービスの費用
⑤ 介護扶助:介護サービスの費用
⑥ 出産扶助:出産費用
⑦ 生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用
⑧ 葬祭扶助:葬祭費用
(2) 生活保護受給者の場合,居住移転の自由に対する制約はありませんし,働いて得た収入のうち,必要経費及び基礎控除額等を差し引いた分は手元に残ります。

3 生活保護で支給される金額の例
(1)   生活保護で支給される金額は,1級地1,1級地2,2級地1,2級地2,3級地1,3級地2の6段階となりますところ,例えば, 東京都特別区,横浜市,さいたま市,大阪市,京都市,神戸市及び名古屋市は1級地1に該当します。
   そして,平成28年4月現在, 1級地1に居住する3人世帯(夫婦子1人)(33歳,29歳,4歳)の場合,生活扶助として16万110円が支給され,住宅扶助として最大6万9800円が支給されますから,合計22万9910円となります(厚生労働省社会・援護局保護課の,平成28年5月27日付の「生活保護制度の概要等について」右下13頁(PDF15頁)参照)。
(2) 布施弘幸行政書士事務所HPの「生活保護 金額 自動計算」を使えば,都道府県,市町村,世帯構成等を入力することで,生活保護費を計算することができます。

4 修習給付金及び修習専念資金との比較
(1) 33歳の司法修習生,29歳の専業主婦及び4歳の子供という家族構成の場合,毎月17万円の修習給付金(うち,住居給付金は毎月3万5000円),及び毎月12万5000円の修習専念資金(うち,2万5000円は扶養加算)の合計29万5000円を支給してもらえます。
(2) 扶養家族のいない,神戸地裁配属の71期司法修習生の場合,最大で,平成30年分所得税が7万7100円となり,平成31年度住民税が16万2000円となり,平成31年度国民健康保険料は24万4160円となります(「修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い」参照)から,ひと月当たりの負担額は,48万3260円÷12月=4万272円となります。
   これに対して生活保護受給者の場合,国民年金保険料を支払う必要がありませんし,自分で医療費を支払う必要がありませんし,所得税,住民税及び国民健康保険料を支払う必要はありません。
   そのため,夫婦で3万2680円の国民年金保険料(平成30年度の金額です。日本年金機構HPの「国民年金保険料」参照)及び医療費の自己負担をも考慮すれば,最大で毎月22万9910円を支給してもらえる,東京23区における3人暮らしの生活保護受給世帯の方が手取り額が多いかもしれません。
(2) 生活保護受給者の場合,支給された生活保護費を返還する必要はないのに対し,司法修習生の場合,貸与された修習専念資金を返還する必要があります。

5 関連記事
 修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い
・ 修習給付金の課税関係に関する大阪国税局の見解
 司法修習生に対する旅費及び移転給付金について課税関係は発生しないこと
 司法修習生の旅費に関する文書
 修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い
・ 司法修習生の給費制と修習給付金制度との比較等

修習給付金と最低賃金等との比較

1(1)  平成30年12月1日発効の,埼玉県最低賃金は時給898円です(埼玉県HPの「埼玉県の最低賃金・最低工賃」,及び埼玉労働局HPの「埼玉県の最低賃金」参照)。
   そのため,埼玉県において最低賃金で1日8時間働いた場合の30日分の給料は,898円×40時間×30日/7日(約171時間)=15万3943円となります。
(2) 司法修習が労働に該当するとした場合,月額13万5000円の修習給付金(1月の労働時間を171時間とした場合,時給は789円)は,埼玉県の最低賃金を下回ることとなります。
(3) 厚生労働省HP「地域別最低賃金の全国一覧」に,地域別最低賃金の最新版のほか,平成14年度以降の地域別最低賃金改定状況が載っています。

2 最低賃金法4条2項は,「最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。」と定めています。

3 ガベージニュースHPの「アルバイトの時給動向をグラフ化してみる(2017年)(最新)」 によれば,パート・アルバイト募集時平均時給(三大都市圏)は,986円(2015年12月)→1006円(2016年12月)→1030円(2017年12月)→1058円(2018年12月)という風に推移しています。

4(1) 公益財団法人国際研修協力機構(略称は「JITCO」です。)HPの「研修生・技能実習生の講習手当・研修手当・賃金情報について」によれば,平成21年度の調査では,技能実習生の全業種平均給与額は14.3万円でした。
(2) 法務省HPに以下のデータが載っています。
① 平成28年における留学生の日本企業等への就職状況について(平成29年11月 7日付)
② 平成29年における留学生の日本企業等への就職状況について(平成30年10月10日付)

5 厚生労働省HPの「青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)について」には,以下のパンフレットが掲載されています。
① ハローワークでは労働関係法令違反があった事業所の新卒求人は受け付けません!
→ 平成28年3月1日以降の取扱いであり,労働基準法,最低賃金法,男女雇用機会均等法及び育児介護休業法に関する規定が対象です。
② 労働関係法令違反があった事業所を新卒者などに紹介しないでください

6 残業ゼロのIT企業AXIA社長ブログ「顧客の要求に安易に無償対応しないことの大切さ」に,「ビジネスの場では仕事の対価は「お金」です。これは当たり前の事実です。いや、仕事の対価は達成感だとか、自身の成長だとか、ブラック感満載のことを言うのはやめてください。もちろんそういうものも仕事で得られることではありますが、それも対価としてのお金をきちんともらってはじめて成立するものです。」などと書いてあります。

7(1) 最低賃金で働いた場合,給与所得控除として一定の必要経費が認められますし,給与所得である点で確定申告をする必要がないです。
(2) 司法研修所の公式見解によれば,修習給付金の場合,必要経費が認められませんし,雑所得である点で確定申告をする必要があります。
(3) 「修習給付金の確定申告に関する記事の一覧」も参照してください。

8 全般的な話については,「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」を参照して下さい。


法務省作成の,令和元年6月18日の参議院文教科学委員会の国会答弁資料

修習給付金の確定申告に関する記事の一覧

1 修習給付金の確定申告に関する記事の一覧は以下のとおりです。
(公式見解等)
・ 修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い
・ 修習給付金の課税関係に関する大阪国税局の見解
・ 司法修習生に対する旅費及び移転給付金について課税関係は発生しないこと
・ 司法修習生の旅費に関する文書
・ 修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い
・ 司法修習生の給費制と修習給付金制度との比較等
・ 修習給付金制度を創設した平成29年の裁判所法改正法に関する,衆議院法務委員会における国会答弁資料
・ 修習給付金制度を創設した平成29年の裁判所法改正法に関する,参議院法務委員会における国会答弁資料
・ 司法修習終了翌年の確定申告
(公式見解に反対する見解)
・ 修習給付金は非課税所得であると仮定した場合の取扱い
→ 修習給付金は学資金(所得税法9条1項15号)に該当する可能性があります。
・ 修習給付金は必要経費を伴う雑所得であると仮定した場合の取扱い
・ 修習給付金の税務上の取扱いについて争う方法等
・ 修習給付金の課税関係に関する審査請求の理由書



2 72期司法修習生向けの修習給付金案内29頁には「修習給付金の支給及び修習専念資金の貸与については,司法修習生に対し個別の支払通知書書等等は発行しません。各種手続に必要がある場合には,最高裁判所ウェブサイトに掲載されている交付日一覧や振込を受けた金融機関の預貯金通帳等を利用してください。」と書いてあります。
   つまり,修習給付金等が入金される預貯金通帳については,そのコピーを税務署その他の関係先に提出する必要が出てくることがあります(例えば,修習給付金の確定申告に関して更正の請求をした場合)から,修習給付金とは関係のない入出金を税務署その他の関係先に知られたくない場合,修習給付金等の入金専用の預貯金口座を作成しておいた方がいいです。


3(1) 修習給付金全般の話については,「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」を参照してください。
(2) 法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年6月26日法律第44号)に関する国会審議においても,修習給付金のことが取り上げられました(「平成31年3月提出の,法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律等の一部を改正する法律案の説明資料」参照)。



 

修習給付金の税務上の取扱いについて争う方法等

目次
第1 修習給付金の税務上の取扱いについて争いたい場合の流れ
1 所得税関係
2 住民税及び国民健康保険料関係
第2 取消訴訟の管轄裁判所等
第3 修習給付金に関する司法研修所の公式見解が絶対ではないと思われること
第4 国税不服審判所及び税理士関係の資料
第5 その他

第1 修習給付金の税務上の取扱いについて争いたい場合の流れ
1 所得税関係
(1) 修習給付金が必要経費を伴う雑所得であることを前提として,平成31年3月15日(金)の法定申告期限までに確定申告をする(所得税法120条1項柱書)。
・ 所得税の納税地は,原則として,確定申告書を提出する際の自分の住所地です(所得税法15条1号)から,自分の住所地を所轄する税務署長(国税通則法21条1項)に確定申告書を提出する必要があります。
・ 確定申告書は,国税庁HPの「確定申告書等作成コーナー」で作成できます。
・ 修習給付金が非課税所得であることを前提として確定申告をした場合,更正の請求の理由(国税通則法23条1項各号)がないため,更正の請求ができません。
・ 確定申告書を税務署に郵送した場合,発送した日を提出日とみなしてもらえます(国税通則法22条)。
・ 確定申告書を提出する際,①マイナンバーの記載及び②本人確認書類の提示又は写しの添付が必要となります(国税庁HPの「確定申告が間違っていたとき」参照)。
・ 通知弁護士が確定申告の税務代理をする場合,(a)委任状(通知弁護士の場合,記載事項が異なるために税務代理権限証書を使いにくいですし,私の経験では,適宜の書式の委任状でも税務署に受理してもらえます。),(b)税理士業務開始通知受領書のコピー及び(c)納税者本人のマイナンバーの記載がある住民票(本人の記載だけでいいですし,本籍地の記載も不要です。)を添付すればいいのであって,納税者本人の運転免許証のコピーといった本人確認書類は不要です(国税庁HPの「本人確認に関するFAQ」のQ1-6参照)。
・ 国税庁HPに「国税局長に通知を行った弁護士」が載っています。
(2) 平成31年3月15日(金)の法定申告期限が過ぎた直後,税務署長に対し,修習給付金は学資金として非課税所得に該当するし,少なくともより多くの必要経費を伴う雑所得であることを前提に,所得税及び復興特別所得税について更正の請求をする。
・ 更正の請求書は,国税庁HPの「確定申告書等作成コーナー」の「新規に更正の請求書・修正申告書を作成する」(直接のリンクを張れませんが,リンク先の最下部にあります。)で作成できます。
   また,国税庁HPの「[手続名]所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」には「取引の記録に基づき請求の理由の基礎となる事実を記載した書類を1部提出してください。」と書いてあるほか,「平成 年分所得税及び復興特別所得税の更正の請求書・書き方【平成29年分以降用】(PDF/1,136KB)」等が載っています。
・ 松本寿一税理士事務所HP「所得税の更正の請求書 平成29年分」等の記載例が載っています。
・ 更正の請求自体は,法定申告期限から5年以内であれば可能です(国税通則法23条1項)。
   そのため,他の元司法修習生が提起した審査請求又は取消訴訟の結果を待った上で,更正の請求をすることもできます。
・ 法定申告期限内に更正の請求書を提出した場合,正しい計算に基づいて作成した新たな確定申告書を提出してくれと税務署にいわれるだけで終わるかもしれません(所得税基本通達120-4参照)。
   ただし,例年,国税庁HPの「確定申告書等作成コーナー」で更正の請求書を作成できるようになるのは法定申告期限が経過した直後です。
・ 更正の請求書を提出する際,①マイナンバーの記載及び②本人確認書類の提示又は写しの添付が必要となります(国税庁HPの「確定申告が間違っていたとき」参照)。
・ 国税通則法23条3項は「更正の請求をしようとする者は、その請求に係る更正前の課税標準等又は税額等、当該更正後の課税標準等又は税額等、その更正の請求をする理由、当該請求をするに至つた事情の詳細その他参考となるべき事項を記載した更正請求書を税務署長に提出しなければならない。」と定めています。
・ 「更正の請求」の処理件数は,31万2000件(平成25年度),36万7000件(平成26年度),37万8000件(平成27年度),40万件(平成28年度),41万3000件(平成29年度)というように推移し,「更正の請求」の3ヶ月以内の処理件数割合は,平成29年度でいえば,98.1%です(財務省HPの平成29年度国税庁実績評価書「実績目標(小)1-1(税務行政の適正な執行)(PDF:466KB)」のPDF2頁(末尾20頁)参照)。
・ 更正の請求が認められた場合における還付加算金(平成31年分の利率は1.6%であることにつき国税庁HPの「延滞税の割合」参照)は,①更正の請求があつた日の翌日から起算して三月を経過する日と②当該更正があった日の翌日から起算して一月を経過する日とのいずれか早い日を起算日として発生します(国税通則法58条1項2号)。
(3) 「更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の通知書」(国税通則法23条4項)を税務署長が出した場合,税務署長に対する再調査の請求(国税通則法81条)で決定が覆ることはありえないと思われることにかんがみ,3か月以内に国税不服審判所長に対する審査請求をする(審査請求前置につき国税通則法115条1項)。

・ 国税不服審判所HP「不服申立手続等」が参考になります。
・ 国税不服審判所HP「提出書類一覧」には,「審査請求書」用紙,「審査請求書」の書き方,「審査請求書作成・提出時のセルフチェックシート」用紙,「代理人の選任(解任)届出書」用紙等が載っています。
・ 国税不服審判所は,国税通則法の一部を改正する法律(昭和45年3月28日法律第8号)に基づき,昭和45年5月1日に設置されました。
・ 国税不服審判所は,国税庁の「特別の機関」(国家行政組織法8条の3)であり,東京(霞が関)にある本部のほか,全国に12箇所の支部(札幌,仙台,関東信越,東京,金沢,名古屋,大阪,広島,高松,福岡,熊本,沖縄)及び7箇所の支所(新潟,長野,横浜,静岡,京都,神戸,岡山)があります(支部につき国税通則法78条3項参照)。
・ 審査請求は,正副各1通の審査請求書を原処分庁の管轄区域を管轄又は分掌する国税不服審判所の支部に提出することで行います(国税通則法施行規則12条1項参照)。
   例えば,兵庫県内の税務署長が原処分庁である場合,大阪国税不服審判所に審査請求書を提出することとなります。
・ 審査請求は,審査請求に係る処分をした税務署長を経由してすることもできます。この場合,審査請求書は原処分庁としての税務署長に提出すればいいです(国税通則法88条1項)。
・ 平成28年4月以降,白色申告者であっても直接,国税不服審判所長(国税通則法78条2項)に対する審査請求ができるようになりました。
・ 審査請求人等の審理関係人(国税通則法92条の2)は,原則として,職権収集証拠も含めて証拠書類の閲覧謄写ができます(国税通則法97条の3)。
   ただし,担当審判官が,審査請求人又は関係人その他参考人に対して行った質問の供述調書の閲覧謄写は認められていません(国税通則法97条の3第1項中,97条1項の2号だけが引用され,1号は除外されています。)。
・ 審査請求人は,担当審判官(主担当の審判官)との面談(「請求人面談」といいます。)ができますし,口頭意見陳述の申立て(国税通則法95条の2)をすれば,原処分庁の担当者が出席する場において,担当審判官の許可を得て,処分の内容や理由などについて原処分庁に質問することができます(国税不服審判所HPの「Q)口頭で意見を陳述できるの?」,及び「口頭意見陳述の申立てをされた方へ」参照)。
・ 国税不服審判所長は,担当審判官及び通常2人の参加審判官(国税通則法94条1項参照)の合議による議決(過半数の意見によることにつき国税通則法施行令36条)に基づき,法令解釈の統一性が確保されているか,文書表現は適正かなどの審査を行った上で,裁決を出します(国税通則法98条4項)。
   ただし,権限の委任等を定める国税通則法113条・国税通則法施行令38条1項で明記されているわけではありませんが,内部的には,支部の首席国税審判官(国税通則法78条4項)に裁決権が委任されています(国税不服審判所における行政文書の決裁委任及び発信者名義等の取扱規則8条1号)。
・ 国税審判官(任命資格につき国税通則法施行令31条)は,国税不服審判所長に対してされた審査請求に係る事件の調査及び審理を行ない,国税審判官は,国税審判官の命を受け,その事務を整理します(国税通則法79条2項)。
   ただし,国税審判官のうち国税不服審判所長の指名する者は,国税審判官の職務を行うことができますが,担当審判官になることはできません(国税通則法79条3項)。
・ 国税審査官は,国税審判官の命を受けて,その事務を整理します(国税不服審判所組織規則3条2項)。
・ 税務署長等は,国税不服審判所長の裁決を不服として訴訟を提起することはできません(国税通則法102条1項参照)し,国税不服審判所の裁決は,税務署長等が行った処分より審査請求人にとって不利益となることはありません(国税通則法98条3項ただし書)。
・ 国税不服審判所長は,国税庁長官通達に示された法令解釈と異なる解釈により裁決をすることができます(国税通則法99条参照)。
   この場合,国税不服審判所長が自らその権限を行使することとなります(国税通則法施行令38条2項,並びに国税不服審判所における行政文書の決裁委任及び発信者名義等の取扱規則4条1号)。
・ 国税不服審判所は,税務署長の処分が不当であることを理由に取り消すことがあります(国税不服審判所平成22年12月1日裁決参照)。
・ 国税不服審判所長の裁決は,審査請求人に裁決書の謄本が送達された時にその効力が生じる(国税通則法98条3項)のであって,裁判所の判決と異なり言渡しはありませんから,ある日突然,裁決書が送られてきて結果を知ることとなります。
・ 国税庁HPの「平成29年度における審査請求の概要」(平成30年6月)によれば,平成29年度に終結した2475件の審査請求につき,取下げが247件であり,却下が186件,棄却が1840件,認容が202件(うち,全部認容が54件,一部認容が148件)であり,認容割合は8.2%であり,1年以内処理件数割合は99.2%です。
・ 国税庁HPの「平成30年度における審査請求の概要」(令和元年6月)によれば,平成30年度に終結した2923件の審査請求につき,取下げが261件であり,却下が136件,棄却が2310件,認容が216件(うち,全部認容が139件,一部認容が77件)であり,認容割合は7.4%であり,1年以内処理件数割合は99.5%です。
(4) 国税不服審判所長が棄却裁決(国税通則法98条2項)又は一部取消しの裁決(国税通則法98条3項)を出した場合,地方裁判所に対し,6か月以内に更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求訴訟を提起する。
・ この場合,被告は国であり,処分行政庁(行政事件訴訟法11条4項1号)は税務署長となり,法務大臣が被告の代表者となります(国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律(法務大臣権限法)1条)。
・ 国税不服審判所長に対する審査請求をした日の翌日から起算して3ヶ月を経過しても裁決が出ない場合,裁決が出る前であっても,取消訴訟を提起できます(国税通則法115条1項1号)。
・ 取消訴訟を提起した場合において,必要経費又は損金の額の存在その他これに類する自己に有利な事実につき課税処分の基礎とされた事実と異なる旨を主張しようとするときは,相手方当事者である国が当該課税処分の基礎となった事実を主張した日以後遅滞なくその異なる事実を具体的に主張し,併せてその事実を証明すべき証拠の申出をしなければなりません(国税通則法116条1項本文)。
   また,申告納税の所得税にあっては,納税義務者においていったん申告書を提出した以上,その申告書に記載された所得金額が真実の所得金額に反するものであるとの主張・立証がない限り,その確定申告にかかる所得金額をもって正当なものと認められます(最高裁昭和39年2月7日判決)。
・ 国税庁HPの「平成29年度における訴訟の概要」(平成30年6月付)によれば,平成29年度に終結した210件の訴訟につき,取下げ等が18件,却下が17件,棄却が154件,国の敗訴が21件(うち,一部敗訴が8件,全部敗訴が2件)であり,国の敗訴率は10%です。
・ 国税庁HPの「平成30年度における訴訟の概要」(令和元年6月付)によれば,平成30年度に終結した199件の訴訟につき,取下げ等が16件,却下が10件,棄却が145件,国の敗訴が6件(うち,一部敗訴が3件,全部敗訴が3件)であり,国の敗訴率は3.4%です。
・ 相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するものについては非課税とする所得税法9条1項15号(現在の所得税法9条1項16号)に関する最高裁平成22年7月6日判決の事案では,長崎税務署長の平成16年6月23日付の再更正処分の取消しが求められました。
   そして,長崎地裁平成18年11月7日判決(第一審判決)は納税者勝訴であり,福岡高裁平成19年10月25日判決(控訴審判決)は納税者逆転敗訴であり,最高裁平成22年7月6日判決で最終的に納税者が勝訴しました。
2 住民税及び国民健康保険料関係
(1) 住民税の課税標準は所得税の課税標準と連動しています(道府県民税につき地方税法32条2項,市町村民税につき地方税法313条2項)。
   また,国民健康保険料の所得割額の賦課基準は住民税の課税標準と連動しています(国民健康保険法81条・国民健康保険法施行令29条の7第2項第4号及び同条第3項第4号)。
   そのため,所得税について減額更正が認められた場合,これと連動して住民税及び国民健康保険料について減額の賦課決定がされますから,住民税及び国民健康保険料独自の不服申立て手続をとる必要は原則としてありません。
(2) 住民税及び国民健康保険税に関する減額の賦課決定は過去5年分についてできる(地方税法17条の5第4項)ものの,国民健康保険料に関する減額の賦課決定は過去2年分についてしかできません(国民健康保険法110条の2)。
   そのため,取消訴訟の請求認容判決を待っていたのであれば,平成33年7月を過ぎてしまう可能性が高いことにかんがみ,平成31年度国民健康保険料の賦課決定に対し,納入通知書等の受領日から3ヶ月以内に都道府県の国民健康保険審査会(国民健康保険法92条)に対する審査請求(国民健康保険法91条)をした方がいいかもしれません(審査請求前置につき国民健康保険法103条)。
(3) 所得税及び住民税の課税標準との関係で修習給付金が雑所得のままであるのに対し,国民健康保険料の所得割額の賦課基準との関係で修習給付金が非課税所得になるというのが理論上ありうるかどうかは不明です。

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第2 取消訴訟の管轄裁判所等
1 兵庫県内の税務署長が処分行政庁となる場合,以下の地方裁判所に取消訴訟を提起できます。
① 東京地裁
・ 被告となる国の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所です(行政事件訴訟法12条1項)。
・ 国の普通裁判籍は,訴訟について国を代表する官庁の所在地により定まります(民事訴訟法4条6項)ところ,「訴訟について国を代表する官庁」は法務大臣です(国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律(法務大臣権限法)1条)。
   そのため,国の普通裁判籍は東京都千代田区にあることとなります。
② 神戸地裁
・ 処分をした行政庁(兵庫県内の税務署長)の所在地を管轄する裁判所です(行政事件訴訟法12条1項)。
③ 大阪地裁
・ 原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所(原告が神戸市在住の場合,大阪高裁となります。)の所在地を管轄する地方裁判所です(行政事件訴訟法12条4項の「特定管轄裁判所」です。)。
2 取消訴訟は行政訴訟の一部であります(行政事件訴訟法3条2項参照)ところ,地裁支部は行政訴訟を取り扱っていません(地方裁判所及び家庭裁判所支部設置規則1条2項)。
そのため,地裁本庁に取消訴訟を提起する必要があります。
3 東京地裁に取消訴訟を提起した場合,2民,3民,38民又は51民に係属し,大阪地裁に取消訴訟を提起した場合,2民又は7民に係属し,神戸地裁に取消訴訟を提起した場合,2民に係属します。

第3 修習給付金に関する司法研修所の公式見解が絶対ではないと思われること
1(1) 司法修習生研修委託費(略称は「司法修習委託金」です。)は,弁護士会において司法修習生の弁護実務修習の指導に要する経費に充てることをその使途とするものです。
(2) 予算の示達の場面において,司法研修所ひいては最高裁判所が,司法修習委託金を消費税の課税対象と考えていなかったようにもうかがえることは,司法修習委託金が消費税の課税対象となることを妨げるものではありません(大阪高裁平成24年3月16日判決(判例秘書))。
   また,東京高裁平成26年6月25日判決(平成26年度法務年鑑162頁ないし164頁)も,司法修習委託金は消費税の課税対象であると判断しています。
2(1) 平成30年8月23日付の司法行政文書不開示通知書によれば,「最高裁判所が修習給付金について必要経費として控除することができる経費があるかどうかを検討した際に作成し,又は取得した文書」は存在しません。
(2) 平成30年9月26日付の最高裁判所事務総長の理由説明書によれば,「司法研修所では,修習給付金のうち基本給付金及び住居給付金について,必要経費として控除することができる費用が存在するか検討したが,この検討内容については,文書を作成するほどの複雑な内容のものではなかったことから,文書を作成していない」とのことです。
3 そのため,修習給付金に関する司法研修所の公式見解が絶対ではないと思います。

第4 国税不服審判所及び税理士関係の資料
1 国税不服審判所関係の資料
① 国税不服審判所定員細則(平成25年7月現在)
② 国税不服審判所事務分掌規則(平成25年7月現在)
→ 国税通則法78条5項・国税不服審判所組織令3条・国税不服審判所組織規則8条に基づいて定められた訓令です。
③ 国税不服審判所事務分掌細則(平成30年8月現在)
④ 国税不服審判所における行政文書の決裁委任及び発信者名義等の取扱規則(平成30年8月現在)
⑤ 担当審判官等の指定等(審査事務提要からの抜粋)
⑥ 国税審判官(特定任期付職員)の面接試験実施要領(平成30年1月15日及び同月16日実施分)
⑦ 国税不服審判所の役割・組織(令和元年7月29日新任審判官等研修)
⑧ 国税不服審判所の支部の支所に派遣する国税審判官等の定数について(昭和45年5月1日付の通知)
2 税理士関係の資料

① 税理士事務提要(平成25年6月現在)1/2及び2/2
② 税理士法事務取扱規程(平成25年7月現在)
③ 税理士法聴聞事務取扱規程(平成25年7月現在)
④ 税理士関係事務について(平成14年10月30日付の大阪国税局の事務運営指針)
⑤ 税務相談事務に係る基本的な対応について(平成20年9月24日付の大阪国税局の事務運営指針)
3 その他の資料
① 課税関係訴訟事務処理要領(平成20年6月23日付の国税庁の事務運営指針(平成26年6月30日最終改正))
② 質問応答記録書作成の手引(平成29年6月の国税庁課税総括課作成の文書)1/42/43/44/4

第5 その他
1 東弁リブラ2009年2月号「租税争訟における弁護士の役割」が載っています。
2 岡山大学学術成果リポジトリ「弁護士のキャリアと国税審判官のお仕事」が載っています。

修習給付金は必要経費を伴う雑所得であると仮定した場合の取扱い

目次
第1 総論

第2 必要経費に関する一般論等
1 必要経費に関する一般論
2 所得税基本通達の条文
3 最高裁大法廷昭和60年3月27日判決の判示
第3 必要経費に算入できそうな項目,及び給与所得者の特定支出控除
1 必要経費に算入できそうな項目
2 給与所得者の特定支出控除
3 東京高裁平成24年9月19日判決の取扱い
第4 雑所得の場合,必要経費に関する領収書を残しておけば足りること
第5 平成31年度の税金及び国民健康保険料は安くなること等
第6 その他

第1 総論
1 司法修習生が修習専念義務を果たして修習給付金を支給してもらうために必要な経費(所得税法35条2項2号)は当然に存在すると思います。
2 サラリーマン税金訴訟に関する最高裁大法廷昭和60年3月27日判決は,給与所得者において自ら負担する必要経費の額が一般に旧所得税法所定の給与所得控除の額を明らかに上回るものと認めることは困難であること等を理由として,給与所得者について必要経費の実額控除を認めず,給与所得控除による概算控除しか認めないことは,必要経費の実額控除が認められている事業所得者等との関係において憲法14条1項に違反しないと判示しています。
   そのため,司法修習生において自ら負担する必要経費が存在するにもかかわらず,修習給付金について必要経費の控除を一切認めないことは,必要経費の実額控除が認められている他の雑所得者等との関係において憲法14条1項に違反すると思います。
3 国税庁において雑所得に該当すると判断された訓練・生活支援給付金につき,必要経費の有無については言及されていません。
4 平成30年7月9日付の国税庁長官心得の行政文書不開示決定通知書によれば,司法修習生に対する修習給付金に関する税務上の取扱いが書いてある文書は国税庁に存在しません。
5 したがって,修習給付金について必要経費として控除することができる経費は存在しないとする司法研修所の公式見解は不当であると個人的に思います。

第2 必要経費に関する一般論等
1 必要経費に関する一般論
(1) 不動産所得,事業所得,山林所得又は雑所得の金額を計算する上で必要経費に算入できる金額は,一般論としては以下のとおりです(所得税法37条1項参照)。
① 総収入金額に対応する売上原価
② その総収入金額を得るために直接要した費用の額
・ ①及び②は個別対応の必要経費です。
③ その年に生じた販売費、一般管理費,その他業務上の費用の額
・ ③は期間対応の必要経費です。
・ 償却費以外の費用については,12月31日現在で債務の確定しているものに限られます。
(2) 個人事業の場合,家事(生活)上の費用と事業上の経費とが混在していることが多いところ,事業又は業務上必要な経費は「必要経費」として,収入金額から控除されます。
   しかし,例えば,以下に掲げる家事費や家事関連費等は所得の処分と考えられ,必要経費として控除することはできません(所得税法45条1項各号)。
① 家事費(所得税法45条1項1号・所得税法施行令96条)
・ 例えば,自己又は家族の生活費や交際費,医療費,住宅費です。
② 家事関連費(所得税法45条1項1号・所得税法施行令96条)(例外あり)
・ 例えば,店舗兼住宅に係る地代,家賃,火災保険料,水道光熱費です。
③ 租税公課(所得税法45条1項2号ないし5号・所得税法施行令97条)
・ 例えば,個人を対象として課税される所得税,住民税です。
④ 罰金及び科料並びに過料(所得税法45条1項6号)
⑤ 損害賠償金(生活上の損害賠償金,業務上の故意又は重大な過失による損害賠償金)(所得税法45条1項7号・所得税法施行令98条)
(3) 家事関連費について,所得税法では,家事関連費の主たる部分が不動産所得,事業所得,山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明らかに区分することができる場合,その部分に相当する経費に限り,必要経費に算入できるものとされており,区分できない場合,雑所得については必要経費に算入できません(所得税法45条1項1号・所得税法施行令96条1号)。
(4) 青色申告者については,家事関連費のうち,その備付けの帳簿記録によって,その年分の不動産所得,事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分の金額も必要経費に算入できます(所得税法施行令96条2号)ものの,雑所得についてこのような定めはありません。
(5) 必要経費に関する一般論は,税大講本「所得税法」(平成30年度版)に基づいて記載しています。
2 所得税基本通達の条文
(1) 所得税基本通達45-1(主たる部分の判定等)は以下のとおりです。
   令第96条第1号《家事関連費》に規定する「主たる部分」又は同条第2号に規定する「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」は、業務の内容、経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案して判定する。
(2) 所得税基本通達45-2(業務の遂行上必要な部分)は以下のとおりです。
   令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。
3 最高裁大法廷昭和60年3月27日判決の判示
   サラリーマン税金訴訟に関する最高裁大法廷昭和60年3月27日判決が,「給与所得者が勤務に関連して費用の支出をする場合であつても、各自の性格その他の主観的事情を反映して支出形態、金額を異にし、収入金額との関連性が間接的かつ不明確とならざるを得ず、必要経費と家事上の経費又はこれに関連する経費との明瞭な区分が困難であるのが一般である。」とか,「各自の主観的事情や立証技術の巧拙によつてかえつて租税負担の不公平をもたらすおそれもなしとしない。」などと判示しているとおり,必要経費に該当する家事関連費の範囲を明確に判断するのは困難です。

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第3 必要経費に算入できそうな項目,及び給与所得者の特定支出控除
1 必要経費に算入できそうな項目
   修習給付金に関する雑所得を計算する上で,必要経費に算入できる項目は以下のとおりと思います。
   なお,括弧内の金額は,「裁判所法の一部を改正する法律案【説明資料】」(平成29年1月付の,法務省大臣官房司法法制部の文書)「修習給付金及び修習専念資金の金額について」に書いてある金額です。
(1) 争いなく算入できそうな項目
① 実務修習地や司法研修所に赴くための旅費
・ そもそも非課税項目です(所得税法9条1項4号参照)が,同額が旅費として支給されるため,課税関係は発生しません。
② 配属先の裁判所,検察庁及び法律事務所並びに司法研修所に通所するための日々の交通費
③ 導入修習,分野別実務修習,集合修習及び選択型実務修習に参加するための引越代
・ 大阪高裁管内のA班の71期司法修習生の場合,移転給付金は合計4回支給されます(1回あたり4万6500円(鉄道50km未満の場合)から14万1000円(鉄道2000km以上の場合)までです。)。
   そして,移転給付金は非課税項目である(所得税法9条1項4号参照)とはいえ,引越代のうち,移転給付金を超過する部分については必要経費になると思います。
(2) 算入できるかどうか微妙な項目
① 導入修習,実務修習及び集合修習における家賃
・ 少なくとも修習専念義務等を履行するために必要な家事関連費に該当すると思われますものの,修習専念義務等を守って修習給付金を得るために必要であり,かつ,その必要である家賃部分を明らかに区分することができるかどうかがよく分かりません。
   ただし,実務修習地で新たに部屋を借りた場合,家賃の全部が修習給付金を得るために必要な費用といえるかもしれません。
② その他の交通費(日々の交通費込みで約0.9万円)
③ 情報通信費(約0.9万円)
④ 学習費(約1.0万円)
⑤ 書籍代(約0.8万円)
⑥ OA機器購入費(約1.2万円)
⑦ 勉強会参加費(約1.0万円)
・ ②ないし⑦の全部が,修習給付金を得るために必要な費用であるとはいえないと思います。
(3) 算入できなさそうな項目
① 食費(約4.0万円)
② 水道光熱費(約1.0万円)
③ 就職活動費(約1.1万円)
・ 法律事務所への就職活動は,修習給付金を得るために必要な費用ではないと思います。
④ 諸雑費(医療費,衣服費等)(約1.5万円)
⑤ 社会保険料(約1.6万円)
・ 社会保険料控除の対象になります(所得税法74条)。
⑥ 所得税・住民税等(約0.5万円)
⑦ 勉強会参加費を除く交際費(約1.7万円)
⑧ 奨学金返済費用(約0.6万円)
⑨ 教養娯楽費(旅行費・月謝類等。ただし,書籍費を除く。)(約1.5万円)
⑩ 理美容・嗜好品等(約1.4万円)
⑪ 自動車等関係費(約0.7万円)
⑫ 仕送り金(約0.3万円)
⑬ 家具家電・衣服購入費等(約1.9万円)
・ ⑤ないし⑬の費用(合計10.2万円)は,月額10万円の修習専念資金で対応することが想定されています。
(4) 新たに部屋を借りた際の敷金等
   実務修習地で新たに部屋を借りた際の敷金,礼金,不動産仲介手数料,火災保険料,鍵交換費用等は平成29年12月までに支出されていると思いますから,平成30年中の雑所得に係る必要経費にはなりません。
2 給与所得者の特定支出控除
(1) 給与所得者が以下の①ないし⑥の特定支出をした場合,給与等の支払者(例えば,勤務先)の証明を得ること等を条件に,その年の特定支出の額の合計額が,その年中の給与所得控除額の2分の1を超えた場合,確定申告によりその超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができるという「給与所得者の特定支出控除」があります(昭和62年9月25日法律第96号による改正後の所得税法57条の2)。
   例えば,給与収入が180万円である場合,給与所得控除額は180万円×40%=72万円ですから,①ないし⑥の特定支出のうち,36万円を超える部分の金額が,給与所得控除とは別に認められる必要経費となります。
① 通勤費
・ 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出です。
② 転居費
・ 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出です。
③ 研修費
・ 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出です。
④ 資格取得費
・ 職務に直接必要な資格を取得するための支出です。
・ 平成25年分以後は,弁護士,公認会計士,税理士等の資格取得費も特定支出の対象となります。
⑤ 帰宅旅費
・ 単身赴任等の場合で,その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出です。
⑥ 勤務必要経費(⑥の経費の上限は65万円です。)
・ (a)図書費(書籍,定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用),(b)衣服費(制服,事務服,作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用)及び(c)交際費等(交際費,接待費その他の費用で,給与等の支払者の得意先,仕入先その他職務上関係のある者に対する接待,供応,贈答その他これらに類する行為のための支出)です。
(2) 修習給付金に関する必要経費を判断する際,給与所得者の特定支出控除に関する定めが考慮される可能性が高いと思います。
3 東京高裁平成24年9月19日判決の取扱い
(1) 東京高裁平成24年9月19日判決は,ある支出が事業所得の金額の計算上必要経費として控除されるためには,当該支出が事業所得を生ずべき業務の遂行上必要であることを要するが,その支出が事業の業務と直接関係を持つことは必要ではないと判示し,その根拠として,①当該支出が事業の業務と直接関係を持つことを求めると解する根拠がないこと,②「直接」という文言の意味も明らかでないこと,③所得税法施行令96条1号が,家事関連費のうち必要経費に算入することができるものについて,その支出の主たる部分が「事業所得を・・・生ずべき業務の遂行上必要」であることを要すると規定していることを挙げています(平成24年12月21日付の上告受理申立て理由書15頁及び16頁)。
(2) 国の上告受理申立ては,最高裁平成26年1月17日決定により不受理とされました(国税庁HPの「最高裁不受理事件の意義とその影響」参照)。
   しかし,国税庁は,本件判決はあくまで事例判断であり,「事業所得の金額の計算上必要経費に算入される支出の取扱いが変更されるものではない 」という見解を出しているみたいです(Profession Journal「弁護士の必要経費訴訟からみた「個人事業者における必要経費」の判定をめぐる考察 」参照)。

第4 雑所得の場合,必要経費に関する領収書を残しておけば足りること
   不動産所得,事業所得又は山林所得の場合,収支内訳書(所得税法施行規則47条の3第1項)を確定申告書に添付する必要があります(所得税法120条6項)し,平成26年1月1日以降の所得については,白色申告であっても記帳義務があります(所得税法232条1項)。
   しかし,雑所得の場合,収支内訳書を確定申告書に添付する必要はありませんし,記帳義務はありませんから,税務調査に備えて必要経費に関する領収書を残しておけば足ります。

第5 平成31年度の税金及び国民健康保険料は安くなること等
1(1) 修習給付金について必要経費が存在することを前提に確定申告をした場合,雑所得の金額を相当減らせる結果,司法研修所の公式見解と比べると,平成31年度の税金及び国民健康保険料は安くなります。
(2) 給与収入が180万円以下である場合,給与所得控除額は給与収入の40%(ただし,最低額は65万円)であること(所得税法28条3項1号)にかんがみ,修習給付金に関する必要経費率の目安は40%であるかも知れません。
2 平成30年度の神戸市の計算式を前提とした場合,1人世帯である場合の国民健康保険料(被保険者均等割額及び世帯別平等割額)は,雑所得の金額が83万円以下であれば2割軽減となり,60万5000円以下であれば5割軽減となり,33万円以下であれば7割軽減となります(国民健康保険法81条・国民健康保険法施行令29条の7第5項3号参照)。
3 後日の税務調査において修習給付金について必要経費が存在するとする主張が認められなかった場合,事後的に税金及び国民健康保険料が増えますから,リスクがないわけではありません。
   しかし,ある程度の税金及び国民健康保険料は支払うわけですから,修習給付金が非課税所得であることを前提に雑所得が0円であるとして確定申告をした場合と比べると,税務調査を受ける可能性はかなり小さいと思います。
4 一人世帯において平成30年分の雑所得が57万円以下となる場合,令和元年7月から令和2年6月までの国民年金保険料について,住所地の市役所等又は年金事務所に国民年金保険料免除・納付猶予申請書を提出することで,全額免除を受けることができます(国民年金法90条1項1号・国民年金法施行令6条の7)。

第6 その他
   全般的な話については,「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」を参照して下さい。

修習給付金は非課税所得であると仮定した場合の取扱い

目次
第1 非課税所得としての学資金等

第2 修習給付金は,非課税所得としての学資金に該当する可能性があること等
1 学資金としての性質を有すると思われること
2 金額規模等を理由に学資金から除外される理由はないと思われること
3 修習給付金は給与その他対価の性質を有するものではないこと
4 職業訓練受講給付金が非課税所得であるにもかかわらず,修習給付金が非課税所得でないのは憲法14条1項に違反すると思われること
5 修習給付金について公租公課禁止規定がないことだけを理由として非課税所得ではないと判断することはできないこと
6 訓練・生活支援給付金が雑所得であると国税庁が判断していたことを理由に,修習給付金が雑所得であると判断することは不当であると思われること
7 修習給付金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得ではないこと
8 小括
第3 修習給付金が非課税所得であると仮定した場合の,平成31年度の税金及び国民健康保険料の試算の合計等
第4 注意書き
1 修習給付金が非課税所得であることを前提とした確定申告は大きなリスクを伴うこと
2 国民健康保険について税方式が採用されている場合の取扱い
3 税金及び国民健康保険料は自己破産における非免責債権に該当すること
第5 その他

第1 非課税所得としての学資金等
   ①学資に充てるため給付される金品(給与その他対価の性質を有するものを除く。)(いわゆる「学資金」です。)及び②扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品は,社会政策的配慮(担税力)に基づき,非課税所得とされています(所得税法9条1項15号)。

第2 修習給付金は,非課税所得としての学資金に該当する可能性があること等
1 学資金としての性質を有すると思われること
   修習給付金は,修習専念義務(裁判所法67条2項,司法修習生に関する規則2条)を負っている修習期間中の生活費及び教育費に充てるために国から司法修習生に支給される金員であって,非課税所得に該当する給付型奨学金と同じようなものといい得ますから,学資金としての性質を有すると思います。
2 金額規模等を理由に学資金から除外される理由はないと思われること
(1) 司法研修所がある埼玉県の最低賃金871円(平成29年10月1日からの金額)で1週間について40時間(法定労働時間であることにつき労働基準法32条1項)働いた場合,871円×40時間×30日/7日=14万9314円となりますから,月額13万5000円の基本給付金は埼玉県の最低賃金を下回る金額です(厚生労働省HPに「地域別最低賃金の全国一覧」が載っています。)。
   また,基本給付金の13万5000円という金額は,住居費の支出を伴わない68期司法修習生の平均的な生活費等を参考に設定された金額ですから,担税力がありません。
(2) 住居給付金の3万5000円という金額は,生活保護制度における住宅扶助額の全国平均(平成27年の単身世帯につき3万4542円)等を参考に設定された金額であって(「平成29年3月22日の衆議院法務委員会における,井手庸生衆議院議員(民進党)に対する国会答弁資料」の想定8問参照),司法修習生の配属場所である都道府県庁所在地及び東京都立川市における住宅扶助額の平均ですらありませんから,担税力がありません。
   例えば,全国的に住宅扶助基準額が見直された平成27年7月1日以降の,神戸市の単身世帯の住宅扶助基準額は4万円です。
(3) 法科大学院の中には,成績優秀者に対し,授業料の全額又は半額相当額の奨学金等を支給しているところがありますところ,当該奨学金は学資金として非課税所得であると思います。
   特に,甲南大学法科大学院は,A種特待生(入学試験にきわめて優秀な成績で合格した者)に対し,学費免除だけでなく,月額15万円もの給付金を支給しているみたいです(甲南大学法科大学院HP「学費・学費減免」参照)が,当該給付金も学資金として非課税所得であると思います。
(4) 修習資金の貸与を受けなかった新65期ないし70期司法修習生が家賃を払って一人暮らしをしていた場合,両親等の扶養義務者から生活費及び教育費という趣旨で月額17万円以上の仕送りを受けていた事案がごく普通にあったと思われます。
   そして,それらの仕送りについて贈与税が課税された事例があるとは思えないことからしても,月額17万円という金額規模は,扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品(非課税所得)と比べて特に大きいわけではありません。
(5) 平成28年度税制改正において所得税法9条1項15号が改正されて「通常の給与に加算して受ける学資金」が非課税とされた結果,医学生等に対する修学等資金の債務免除益は,通常の給与に加算して受ける学資金に該当するものとしてすべて非課税となりました。
   ところで,兵庫県医師養成制度を利用して兵庫医科大学に進学した場合,6年間で合計4480万円(うち,生活費は130万円×6年間=780万円)の貸付けを受けられますし,大学を卒業後,医師として9年間,兵庫県が指定するへき地の病院,診療所等において勤務した場合,貸与を受けた修学資金の返還を免除されます。
   そのため,4480万円もの修学資金の返還免除に基づく債務免除益であっても,学資金として非課税となると思われます(医学生に対する6年間の奨学金1069万6800円の返還免除に基づく債務免除益が学資金として非課税となることにつき名古屋国税局の文書回答事例参照)。
(6) そのため,修習給付金は,金額規模等を理由に学資金から除外される理由はないと思います。
(7) 国税庁は,法務省との担当者協議において,修習給付金の金額規模等から,学資金と直ちに解するには難しい面があるのではないかという指摘をしていたみたいです(「修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い」参照)。
   そのため,国税庁としては,修習給付金は金額規模を理由として学資金に該当しないと考えているのかもしれません。
3 修習給付金は給与その他対価の性質を有するものではないこと
(1) 最高裁昭和56年4月24日判決は,「給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない。」と判示しています。
   また,平成28年度(最情)答申第26号(平成28年9月1日答申)は,「司法修習生は国の事務を担当するものでない」と判示しています。
   ところで,最高裁判所事務総局総務局が作成した裁判所法逐条解説(昭和44年6月30日発行)(法曹の養成に関するフォーラム第4回会議(平成23年8月4日開催)資料6に含まれています。)397頁には,「修習は、国に対する勤務ないし給付の性質をもつものではなく、むしろ自己の向上のためになされるものであるから、修習の対価として給与を受けるということは、意味をなさない。」と書いてあります。
   つまり,最高裁判所は,現行65期で終了した給費制時代から,司法修習生の給料は役務の提供等の対価としての性質を有しないと説明していました。
   そのため,修習給付金は給与その他対価の性質を有するものではないことになります。
(2) 国税庁は,法務省との担当者協議において,「修習給付金は労務提供の対価ではなく(給与とは明らかに性質の異なるものと整理されている。),司法修習生の任用関係を雇用契約類似と整理することも容易ではない」という指摘をしていたみたいです(「修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い」参照)。
4 職業訓練受講給付金が非課税所得であるにもかかわらず,修習給付金が非課税所得でないのは憲法14条1項に違反すると思われること
(1) 法令上の「給付金」のうち,公租公課禁止規定を有するものの名称については以下のものがあります(「「修習給付金(仮称)」の名称について」参照)。
① 犯罪被害者等給付金(犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律),特定B型肝炎ウイルス感染者給付金(特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法)のように,その支給の客体に着目した名称
② 職業訓練受講給付金(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律),育児休業給付金(雇用保険法)のように,支給対象者が置かれた状況に着目した名称
③ 老齢年金生活者支援給付金(年金生活者支援給付金の支給に関する法律)のように,その支給目的に着目した名称
(2) ①の給付金は,犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律18条,特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法20条に基づき非課税所得です。
   ②の給付金は,職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律10条,雇用保険法12条に基づき非課税所得です。
   ③の給付金は,年金生活者支援給付金の支給に関する法律33条に基づき非課税所得です。
(3) 様々な給付金の中でも,職業訓練受講給付金は,雇用保険を受給できない求職者について,職業訓練期間中の生活を支援するための給付です(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律2条の他,厚生労働省HPの「職業訓練受講給付金(求職者支援制度)」参照)。
   ところで,東京高裁平成30年5月16日判決(判例秘書)は,「司法修習は,司法修習生が法曹資格を取得するために国が法律で定めた職業訓練課程であり,高度の専門的実務能力と職業倫理を備えた質の高い法曹を確保するために必須な臨床教育課程として,実際の法律実務活動の中で実施される」と判示しています。
   そのため,職業訓練受講給付金が非課税所得であるにもかかわらず,司法試験に合格しない限り採用されない司法修習生について,司法修習という職業訓練期間中の生活を支援するための給付である修習給付金が非課税所得でないのは,平等原則を定めた憲法14条1項に違反すると思います。
5 修習給付金について公租公課禁止規定がないことだけを理由として非課税所得ではないと判断することはできないこと
   被害回復給付金(犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律)については,公租公課禁止規定がありません。
   しかし,犯人に対する損害賠償請求権等の請求権は,被害回復給付金の支給を受けた額の分だけ消滅する(法務省HPの「被害回復給付金支給制度 Q&A 」のQ25参照)ことから,被害回復給付金の受給は,犯罪被害にあった自分のお金の一部を取り戻すことを意味するのであって,新たに所得を得るわけではない点で,非課税所得であると考えられています(結論につき,Internet 会計事務所HP「被害回復給付金 支給申請手続き始まる」参照)。
   また,平成31年2月19日付の法務省大臣官房秘書課情報公開係の文書によれば,被害回復給付金について公租公課禁止規定を設けなかった理由が分かる文書は存在しませんし,修習給付金について公租公課禁止規定を設けなかった理由が分かる文書に該当するものは以下の①ないし③の文書しかないとのことですが,以下の①ないし③の文書はいずれも法律案の作成経緯に関する文書ではありません。
① 平成29年3月21日(火)衆議院法務委員会 安藤裕議員への答弁資料
② 平成29年3月22日(水)衆議院法務委員会 逢坂誠二議員への答弁資料
③ 「「修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱いについて」の説明資料」
   さらに,71期以降の司法修習生に対する修習給付金が非課税所得又は雑所得に該当するかどうかに関する法務省と国税庁の協議文書は存在しません(平成29年8月29日付の行政文書不開示決定通知書参照)。
   そのため,修習給付金について公租公課禁止規定がないことだけを理由として非課税所得ではないと判断することはできません。
6 訓練・生活支援給付金が雑所得であると国税庁が判断していたことを理由に,修習給付金が雑所得であると判断することは不当であると思われること

(1) 訓練・生活支援給付金は,平成21年7月末に開始した緊急人材育成支援事業による職業訓練等を受講する者に支給されていました。
   これは,職業訓練の期間中,被扶養者を有しない者については月額10万円,被扶養者を有する者については月額12万円を支給するというものであり,平成23年10月以降,求職者支援制度に基づく職業訓練受講給付金となっています。
(2) 国税庁課税部審理室長は,厚生労働省職業能力開発局能力開発課長に対し,平成22年1月27日付の文書回答において,訓練・生活支援給付金は,訓練期間中における生活保障や円滑な訓練受講に資するために支給されるものであること等にかんがみ,雑所得であると回答しています。
   しかし,訓練・生活支援給付金の後継制度である職業訓練受講給付金は非課税所得であることからすれば,訓練・生活支援給付金が雑所得であると国税庁が判断していたことを理由に,修習給付金が雑所得であると判断することは不当であると思います。
7 修習給付金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得ではないこと
   所得税法上,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得及び譲渡所得以外の所得で,営利を目的とする継続的行為から生じた所得は,一時所得ではなく雑所得に区分されます(最高裁平成29年12月15日判決)。
   しかし,修習給付金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得ではありません。
8 小括
   よって,修習給付金は,非課税所得としての学資金に該当する可能性があります。

第3 修習給付金が非課税所得であると仮定した場合の,平成31年度の税金及び国民健康保険料の試算の合計等
1 修習給付金が非課税所得であることを前提に雑所得が0円であるとして確定申告をした場合,平成30年分所得税及び平成31年度の住民税は0円となります。
2 住民税非課税世帯となりますから,高額療養費支給制度における自己負担限度額(69歳以下の場合)が1ヶ月あたり3万5400円となります。
3(1) 平成30年度の神戸市の計算式を前提とした場合,平成31年度の国民健康保険料は,医療分1万4600円,後期高齢者支援金分4730円の合計1万9330円となります(被保険者均等割額及び世帯別平等割額について7割軽減が適用されます。)。
   神戸市HPからダウンロードできる国民健康保険料計算シート(エクセル)を使えば簡単に計算できます。
(2) 修習給付金が非課税所得であることを前提として所得税又は住民税の確定申告をしなかった場合,市区町村において所得の判定ができないため,被保険者均等割額及び世帯別平等割額について7割軽減が適用されません。
4 所得税の控除対象扶養親族から外れませんし,配偶者控除の適用があることとなります。
   ただし,修習資金の貸与を受けた新65期ないし70期司法修習生の場合と同様に,健康保険及び厚生年金保険の扶養親族からは外れたままになります。
5 一人世帯である場合,平成31年7月から平成32年6月までの国民年金保険料について,住所地の市役所等又は年金事務所に国民年金保険料免除・納付猶予申請書を提出することで,全額免除を受けることができます。

第4 注意書き
1 修習給付金が非課税所得であることを前提とした確定申告は大きなリスクを伴うこと
(1) 後日の税務調査において修習給付金が非課税所得であるとする主張が認められなかった場合,所得税に対する5%又は10%の過少申告加算税(国税通則法65条)のほか,延滞税(国税通則法60条)又は延滞金(地方税法321条の2等及び国民健康保険法79条3項)を付加した税金及び国民健康保険料の支払を求められることとなります。
   また,平成23年12月2日法律第114号による国税通則法改正により,税務署長による増額更正は法定申告期限から5年間可能となりました(国税通則法70条1項1号)から,平成30年分所得税の増額更正は平成36年3月まで可能です。
   さらに,住民税の増額の賦課決定は原則として法定納期限から3年間可能であり(地方税法17条の5第1項),所得税について更正があった場合,法定納期限から5年間可能です(地方税法17条の6第3項1号)。
   そして,平成31年度の税金を全く支払わず,かつ,平成31年度の国民健康保険料を2万円程度しか支払わない場合,税務調査を受ける可能性が否定できない点で,修習給付金が非課税所得であることを前提とした確定申告は大きなリスクを伴いますから,不服申立てにおいて主張した方が安全です。
(2) 平成30年における,所得税に対する延滞税及び住民税に対する延滞金の利率は年8.9%(平成30年の特例基準割合1.6%+7.3%)です(租税特別措置法94条及び地方税法附則3条の2)。
(3)ア 平成27年度以降の国民健康保険料の賦課決定は,当該年度における最初の保険料の納期(通常は7月です。)の翌日から起算して2年を経過した日以後はすることができません(平成26年6月25日法律第83号による改正後の国民健康保険法110条の2)。
   また,期間制限の特例を定める地方税法17条の6第3項に相当する条文は,国民健康保険法にはありません。
   そのため,平成31年度国民健康保険料に関する増額又は減額の賦課決定は,平成33年7月までしかできません。
イ 税務署長が修習給付金について雑所得であるとして増額更正をした場合,国税不服審判所長に対する審査請求及び地方裁判所に対する取消訴訟が可能でありますところ,係争中である場合,国民健康保険料に関する増額の賦課決定はされないかもしれません。
   そのため,増額の賦課決定がされないまま,国民健康保険料の賦課決定の期間制限が過ぎるかもしれません。
(4) 申告納税方式による国税(国税通則法16条1項1号)に関して,納税申告書の提出があった場合に税務署長が行うのが更正(国税通則法24条)であり,納税申告書の提出がない場合に税務署長が行うのが決定(国税通則法25条)です。
   賦課課税方式による国税(国税通則法16条1項2号)に関して税務署長が行うのが賦課決定(国税通則法32条)です。
2 国民健康保険について税方式が採用されている場合の取扱い
   地方自治体によっては,国民健康保険について税方式が採用されています(国民健康保険法76条1項ただし書)。
   この場合,国民健康保険税の増額の賦課決定は原則として法定納期限から3年間可能であり(地方税法17条の5第3項), 所得税について更正があった場合,法定納期限から5年間可能です(地方税法17条の6第3項1号)。
3 税金及び国民健康保険料は自己破産における非免責債権に該当すること
   税金だけでなく,国民健康保険料も租税等の請求権(破産法97条4号)に該当します(国民健康保険法79条の2「法律で定める歳入」・地方自治法231条の3第3項「地方税の滞納処分の例」・地方税法331条6項「国税徴収法に規定する滞納処分の例」参照)。
   そのため,税金及び国民健康保険料は自己破産における非免責債権に該当します(破産法253条1項1号)から,免責許可決定が確定したとしても支払う必要があります。

第5 その他
   全般的な話については,司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」を参照して下さい。

修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い

目次
第1 司法研修所の公式見解

1 修習給付金案内の記載
2 支給された基本給付金及び住居給付金の全額が雑所得となること等
第2 平成30年中に支給される基本給付金及び住居給付金の合計
1 平成30年中に支給される基本給付金の金額
2 平成30年中に支給される住居給付金の金額
3 平成30年に支給される基本給付金及び住居給付金の合計
第3 平成30年分所得税及び平成31年度住民税の試算の合計
1 基礎控除しか適用されないと仮定した場合の試算
2 復興特別所得税,所得税及び住民税の補足説明
3 所得税及び住民税の試算の合計
第4 平成31年度国民健康保険料の試算
1 国民健康保険料の試算
2 その他の情報
第5 平成31年度の税金及び国民健康保険料の試算の合計
第6 他の雑損失との損益通算は可能であること等
1 他の雑損失との損益通算は可能であること
2 税務調査で否認される可能性があること
第7 弁護士登録関係費用は開業費(繰延資産の一種です。)になると思われること
1 弁護士登録関係費用
2 弁護士登録関係費用は開業費に該当すると思われること
3 開業費の計上方法等
4 法律書等の書籍代及び勉強会参加費の取扱い
第8 旅費及び移転給付金は非課税所得であると思われること
1 総論
2 導入修習参加のための旅費及び移転給付金の取扱い
3 導入修習参加のためのものを除く,旅費及び移転給付金の取扱い
第9 修習1年目に支給される基本給付金13万5000円については,原則として確定申告をする必要がないこと
1 一般論として,確定申告が必要なケース
2 初回の基本給付金13万5000円について確定申告をする必要がない場合の具体例
3 修習専念資金の貸与は関係がないこと
第10 修習給付金に関して存在しない文書
第11 関連記事


第1 司法研修所の公式見解
1 修習給付金案内の記載
   司法研修所事務局が作成した「修習給付金案内(71期)」に含まれる「所得税等の取扱い」には以下の記載があります(修習給付金案内(72期)にも同趣旨の記載があります。)。

◎所得税・住民税
   修習給付金のうち基本給付金及び住居給付金は,所得税法上の「雑所得」に該当するため,確定申告の対象となります。
   特に,2年目(平成30年分)については,大多数の方が確定申告をしなければならないと予想されます。詳細は,税務署に問い合わせるなどして確認してください。
(注)(1) 源泉徴収は行われません。
(2) 必要経費として控除することができる経費はありません。
   また,基本給付金及び住居給付金は,所得税のほか,住民税の課税対象になります。
   詳細は,各市区町村のウェブサイトを参照するなどして確認してください。

2 支給された基本給付金及び住居給付金の全額が雑所得となること等
(1) 司法研修所の公式見解によれば,修習給付金は雑所得に該当するだけでなく,必要経費として控除することができる経費は存在しないこととなります。
   そのため,支給された基本給付金及び住居給付金の全額が雑所得となりますから,司法修習生に採用された年の翌年(71期司法修習生の場合,平成30年)については,所得税の控除対象扶養親族から外れますし,配偶者控除の適用はないこととなります。
(2) 給与所得者の場合,住宅手当は給与所得として課税対象です(国税庁HPのタックスアンサー(よくある税の質問)「No.2508 給与所得となるもの」参照)。
   また,住宅手当は社会保険料を計算する際の標準報酬月額に含まれます(日本年金機構HPの「厚生年金保険の保険料」,及び全国健康保険協会HPの「標準報酬月額の決め方」参照)。

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第2 平成30年中に支給される基本給付金及び住居給付金の合計
1 平成30年中に支給される基本給付金の金額
(1) 71期司法修習生の場合,基本給付金は,初回の支給日は平成29年12月15日であり,2回目の支給日は平成30年1月15日であり,13回目の支給日(最後)は修習終了日である同年12月12日です。
   そのため,平成30年中に支給される基本給付金は12回分となり,最後の支給分は日割り計算となります。
(2) 平成30年中に支給される基本給付金は,
13万5000円×11回分(2回目ないし12回目の支給分)
+13万5000円×16日/30日(日割り計算となった13回目の支給分算)
= 148万5000円+7万2000円
= 155万7000円となります。
(3) 修習終了日は毎年,二回試験の不合格発表日の翌日の水曜日となっています。
   また,司法修習生の修習終了は,修習終了日に開催される最高裁判所裁判官会議(毎週水曜日開催)の報告事項になっています(司法修習生に関する規則16条)。
2 平成30年中に支給される住居給付金の金額
(1) 大阪高裁管内のA班の71期司法修習生の場合,導入修習及び集合修習において通常は司法研修所の寮に居住しますところ,その期間(①平成29年11月27日~12月26日の1か月分,②平成30年8月14日~同月26日の日割り計算分及び③同月27日~9月26日の1か月分)については,実務修習地で空家賃を支払っていたとしても,住居給付金は支給されません。
   そのため,実務修習地で部屋を借りている大阪高裁管内のA班の71期司法修習生の場合,2回目(事実上の初回)の支給日は平成30年2月15日となり,12回目(事実上の10回目)の支給日は修習終了日である同年12月12日となり,13回目(事実上の11回目)の支給日(最後)は平成31年1月15日となります。
(2) 以上の事情を前提とした場合,平成30年中に支給される住居給付金は,
3万5000円×10回分
-3万5000円×13日/31日(9回目(事実上の8回目)となる平成30年9月18日の不支給分の日割り計算)
= 35万円-1万4677円
= 33万5323円であると思います。

3 平成30年に支給される基本給付金及び住居給付金の合計
   155万7000円+33万5323円=189万2323円であり,この金額がそのまま雑所得の金額となります。

第3 平成30年分所得税及び平成31年度住民税の試算の合計
1 基礎控除しか適用されないと仮定した場合の試算
   生命保険料控除,社会保険料控除等が適用されず,基礎控除しか適用されないと仮定した場合の試算は以下のとおりです。
① 平成30年分所得税の試算
(189万2000円-38万円)×5%(所得税率)×1.021(復興特別所得税の加算)= 7万7187円→7万7100円
② 平成31年度住民税(神戸市在住の場合)の試算
(189万2000円-33万円)×10%(所得割)+5800円(均等割)
= 16万2000円
2 復興特別所得税,所得税及び住民税の補足説明
(1) 復興特別所得税は,平成25年分ないし平成49年分の所得税の2.1%です(東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(復興財源確保法)13条)。
(2) 所得税及び住民税では,課税標準額から1000円未満が切り捨てとなり,納税確定額から100円未満が切り捨てとなります(所得税につき国税通則法118条1項及び119条1項,住民税につき地方税法20条の4の2)。
(3) 個人住民税所得割の税率の内訳につき,平成29年度までは市民税が6%,県民税が4%でした。
   また,平成29年度に政令指定都市に係る県費負担教職員の給与負担事務が道府県から政令指定都市へ事務移譲されたことに伴い(平成26年6月4日法律第51号による改正後の市町村立学校職員給与負担法1条及び2条参照),政令指定都市の場合,平成30年度からは市民税が8%,道府県民税が2%となりました(平成29年度は,経過措置として,個人住民税所得割のうち税率2%相当分が道府県から政令指定都市へ交付されました。)。
(4) 5800円の均等割額の内訳は,神戸市の市民税が3500円であり,兵庫県の県民税が2300円です。
   なお,個人住民税の均等割の標準税率は,市町村民税が3000円であり(地方税法310条),道府県民税が1000円です(地方税法38条)。

3 所得税及び住民税の試算の合計
   平成30年分所得税及び平成31年度住民税の試算の合計は,最大で23万9100円となります。
   ただし,平成30年度の国民年金保険料,国民健康保険料等について社会保険料控除の適用を申請した場合,これよりも税金は安くなります。

第4 平成31年度国民健康保険料の試算
1 国民健康保険料の試算
(1) 国民健康保険料(介護分)の負担がない39歳以下の人が神戸市で1人世帯として国民健康保険に加入した場合,平成30年度算定用所得額は189万2000円-33万円=156万2000円となりますから,具体的な金額は以下のとおりとなります。
① 国民健康保険料(医療分)
156万2000円×8.17%(所得割額)+3万710円(被保険者均等割額)+2万1360円(世帯別平等割額)=17万9680円
② 国民健康保険料(後期高齢者支援金分)
156万2000円×3.11%(所得割額)+1万1670円(被保険者均等割額)+8110円(世帯別平等割額)-3870円(緩和措置)=6万4480円
(2) 国民健康保険の算定用所得額を計算する場合,前年の総所得金額から控除されるのは基礎控除33万円(地方税法314条の2第2項)だけです(国民健康保険法81条・国民健康保険法施行令29条の7第2項第4号及び同条第3項第4号「基礎控除後の総所得金額等」参照)。
   つまり,社会保険料控除等のその他の所得控除は適用されないということです。
(3) 平成30年度の神戸市の計算式を前提とした場合,平成31年度国民健康保険料は最大で24万4160円となります。
2 その他の情報
(1) 国民健康保険HPに以下の記事があります。
① 年収別の国民健康保険料【全国平均】
② 主要都市の保険料を比較しよう
→ 平成31年度で言えば,一番安いのが長野県の37万5100円であり,一番高いのが兵庫県の56万5800円です。
(2) 国民健康保険計算機HPを使えば,自治体を選択した後,「年齢区分」及び「その他収入」(受領した基本給付金及び住居給付金の合計額です。)を入力することで,国民健康保険料を計算することができます。

第5 平成31年度の税金及び国民健康保険料の試算の合計
   最大で23万9100円+24万4160円=48万3260円となります。


法務省作成の,令和元年6月18日の参議院文教科学委員会の国会答弁資料

第6 他の雑損失との損益通算は可能であること等
1 他の雑損失との損益通算は可能であること
(1) 所得税法35条2項2号は,雑所得の金額について,「その年中の雑所得(公的年金等に係るものを除く。)に係る総収入金額から必要経費を控除した金額」と定めています。
   そのため,雑所得内で利益と損失がある場合には損益通算をすることができます。
(2) 修習給付金に基づく雑所得と,採点バイト等に基づく雑損失(バイト収入から書籍代等の必要経費を控除したことによる損失)との間で損益通算をすることはできます。
   そのため,修習給付金に関する税金及び国民健康保険料を減らしたい場合,兼職許可を受けて採点バイト等を行い,雑損失を計上した方がいいかもしれません。
2 税務調査で否認される可能性があること
   採点バイト等に基づく雑損失の計上については,税務調査(国税通則法74条の2ないし74条の13の2参照)で否認される可能性はあります。

第7 弁護士登録関係費用は開業費(繰延資産の一種です。)になると思われること
1 弁護士登録関係費用
(1) 弁護士登録関係費用として少なくとも以下の費用が必ず発生しますし,入会先の単位弁護士会ごとに別途,費用が発生します。
① 登録免許税6万円
・ 登録免許税法別表第一の「三十二 人の資格の登録若しくは認定又は技能証明」の「(三) 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第八条(弁護士の登録)の弁護士の登録」に基づくものです。
② 日弁連登録料1万円
・ 日弁連会則23条1項1号括弧書きに基づくものです。
③ 登録月の日弁連の会費
・ 平成30年6月以降,日弁連会費が6200円であり(日弁連会則95条2項),日弁連特別会費(日弁連会則95条の3)が4200円です。
(2) 大阪弁護士会で弁護士登録をする場合,大阪弁護士会の入会金として3万円,登録月の大阪弁護士会の会費として7000円を支払う必要があります(月額6000円の会館特別会費の徴収月を入会後3年を経過する月としてもらった場合)。
   また,大阪弁護士会に入会してから4年以内に会館負担金会費40万円を支払う必要があります。
(3) 東京弁護士会HP等に,弁護士登録時の必要費用等が詳しく書いてあります。
(4) 弁護士会の会費は司法修習終了後の経過年数等によって異なります。
2 弁護士登録関係費用は開業費に該当すると思われること
(1) 弁護士登録関係費用については,所得税法2条1項20号(繰延資産の意義)・所得税法施行令7条(繰延資産の範囲)1項3号ホの「イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用」に該当するものとして,弁護士業の開業費(繰延資産の一種です。)として必要経費になると思います所得税基本通達2-29の4参照)。
(2) 所得税基本通達2-29の4は以下のとおりです。
   同業者団体等(社交団体を除く。)に対して支出した加入金(その構成員としての地位を他に譲渡することができることとなっている場合における加入金及び出資の性質を有する加入金を除く。)は、令第7条第1項第3号ホに掲げる費用に該当するものとする。
3 開業費の計上方法等
(1) 開業費については,開業日に一括で計上し,その内訳が分かる領収書等を保管しておけばいいです(色々ぶろぐ「個人事業主の開業費の仕訳方法(国税局に確認済み) 」参照)。
(2) 弁護士業の開業日は弁護士登録をした日以後になると思われますところ,事業所得があるとは限らない勤務弁護士となった日と,事業所得を生ずべき弁護士業を開業した日は異なると思います。
   そのため,修習終了直後の12月に弁護士登録をした場合であっても,即独又は軒弁でない限り,開業日は翌年1月以降になることが多いと思います。
(3) 開業日を翌年1月以降とした場合,開業費は翌年1月以降に計上することとなります。
(4) 開業日は,個人事業の開業・廃業等届出書(いわゆる「開業届」です。)に記載する日付でありますところ,開業届については,国税庁HPの「[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続」に書式が載っています。
(5) 開業費について任意償却を選択した場合,好きなタイミングで自由に償却(=費用計上)することが可能です色々ぶろぐ「開業費の償却方法(任意償却を活用して節税)」参照)。
4 法律書等の書籍代及び勉強会参加費の取扱い
   繰延資産の一種としての開業費とは,不動産所得,事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいいます(所得税法施行令7条1項1号)。
   そのため,法律書等の書籍代及び勉強会参加費は,弁護士業の開業準備のために特別に支出する費用に該当するとまではいえない場合,開業費に該当しないこととなります。

第8 旅費及び移転給付金について課税関係は発生しないこと
 総論
(1)  「修習給付金案内」には,旅費(交通費,日当及び日額旅費),並びに移転給付金について確定申告が必要であるなどとは書いてありません。
   そのため,司法研修所としては,旅費(交通費,日当及び日額旅費),並びに移転給付金は非課税所得であると考えていると思います。
(2) 公務のための旅行について旅費を支給する法律である国家公務員等の旅費に関する法律(同法1条参照)が,司法修習生が二級の職務に相当するとした上で,司法修習生に準用されています(内国旅行の旅費について(昭和61年9月12日付の最高裁判所事務総長依命通達)1(1)及び別表第1)。
   そのため,司法修習生としての採用は所得税法9条1項4号の「就職」に当たり,司法修習生としての司法修習は同号の「職務」に当たると思います。
(3)ア 交通費は,所得税基本通達9-3の「運賃」に該当すると思います。
イ 日当は,所得税基本通達9-3の「運賃等の支出」に該当すると思います。
ウ 研修日額旅費は,所得税基本通達9-3の「運賃,宿泊料等の支出」に該当すると思います。
エ 移転給付金は,国家公務員等に対する移転料と同趣旨で支給されるものですから,所得税基本通達9-3の「移転料」に該当すると思います。
(4) 司法修習生に対する旅費及び移転給付金は,その金額規模からすれば,所得税基本通達9-3の「その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品」に該当すると思います(旅費につき令和元年11月25日付の理由説明書参照)。
(5) 大阪国税局としては,司法修習生としての採用は就職ではないため,所得税法9条1項4号の適用はないものの,旅費及び移転給付金については,収入と経費が一致し,結果として課税対象とはならないとしています(「修習給付金の課税関係に関する大阪国税局の見解」参照)。
2 導入修習参加のための旅費及び移転給付金の取扱い
   導入修習参加のための旅費(交通費及び日当)並びに移転給付金は,「就職をした者が就職に伴う転居のための旅行をした場合」に支給されるお金ですし,所得税法9条1項4号の条文上,「給与所得を有する者」に支給したものに限定されているわけではありませんから,所得税法9条1項4号に基づき非課税所得であると思います。
3 導入修習参加のためのものを除く,旅費及び移転給付金の取扱い
(1) 旅費
   司法修習生は「給与所得を有する者」に該当しないとはいえ,司法修習生に対する交通費及び日当(導入修習参加のためのものを除く。)並びに日額旅費は,給与所得を有する他の裁判所職員と同じように,国家公務員等の旅費に関する法律等に準じて支給されるものです(「内国旅行の旅費について」’(昭和61年9月12日付の最高裁判所事務総長の依命通達)参照)から,所得税法9条1項4号類推適用に基づき非課税所得になると思います。
(2) 移転給付金
   司法修習生は「給与所得を有する者」に該当しないとはいえ,司法修習生に対する移転給付金(導入修習参加のためのものを除く。)は,国家公務員等に対する移転料と同趣旨で支給されるものですから,所得税法9条1項4号類推適用に基づき非課税所得になると思います。

提出書類確認スケジュール(第73期修習給付金)



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第9 修習1年目に支給される基本給付金13万5000円については,原則として確定申告をする必要がないこと
1 一般論として,確定申告が必要なケース
   国税庁HPの「確定申告が必要な方」には以下の記載があります(ナンバリングは変えています。)。
① 給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える
② 給与を2か所以上から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える
※ 給与所得の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除及び基礎控除を除く。)を差し引いた残りの金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円以下の方は、申告は不要です。
2 初回の基本給付金13万5000円について確定申告をする必要がない場合の具体例
(1) 賃貸アパート経営に基づく不動産所得等がないことを前提とすれば,導入修習中の12月に支給される初回の基本給付金13万5000円について確定申告をする必要がない場合の具体例は以下のとおりとなります。
①の具体例
   司法修習生になった年に会社員をしていたものの,アルバイトはしていなかったため,1箇所だけの給与所得しかない場合
②の具体例
   司法修習生になった年に会社員をしたり,アルバイトをしたりしていて,2箇所以上の給与所得があるものの,会社員としての給与所得については源泉徴収及び年末調整をされていて,かつ,アルバイト代については6万5000円以下である場合
(2) 初回の住居給付金3万5000円が支給されるのは司法修習生に採用された年(修習2年目)の翌年1月ですから,修習1年目の確定申告とは関係がないです。
3 修習専念資金の貸与は関係がないこと
   修習専念資金は借金であって,所得ではありませんから,修習専念資金の貸与を受けていることを理由に確定申告義務が発生することはありません。

第10 修習給付金に関して存在しない文書
1(1) 平成30年8月23日付の司法行政文書不開示通知書によれば,「最高裁判所が修習給付金について必要経費として控除することができる経費があるかどうかを検討した際に作成し,又は取得した文書」は存在しません。
(2) 平成30年9月26日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には以下の記載があります。
   司法研修所では,修習給付金のうち基本給付金及び住居給付金について,必要経費として控除することができる費用が存在するか検討したが, この検討内容については,文書を作成するほどの複雑な内容のものではなかったことから,文書を作成していない。
   なお, この検討結果については,司法修習生に配布した「修習給付金案内」に記載している。
2(1) 平成31年3月1日付の司法行政文書不開示通知書によれば,「修習給付金に関する所得税及び住民税,並びに健康保険の取扱いについて,最高裁判所が自ら税務署,健康保険組合,市区町村等に問い合わせをした上で,その結果を司法修習生に伝えようとしない理由が分かる文書」は存在しません。
(2) 平成31年3月25日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には以下の記載があります。
   修習給付金に関する所得税及び住民税並びに健康保険の取扱いについては,修習給付金制度導入時に,所要の調査,検討を行った上で,司法修習生に周知すべき内容としては「修習給付金案内」に記載した内容とすることが相当であると判断し,現に「修習給付金案内」を配布して周知したものであるが,周知すべき内容の検討のために文書を作成することまではしていないため,個々の調査の結果を司法修習生に周知するか否かの理由を記載した文書も作成又は取得していない。

第11 関連記事
① 修習給付金は非課税所得であると仮定した場合の取扱い
② 修習給付金は必要経費を伴う雑所得であると仮定した場合の取扱い
③ 修習給付金の税務上の取扱いについて争う方法等
④ 司法修習終了翌年の確定申告
⑤ 修習給付金の確定申告に関する記事の一覧
⑥ 司法修習生に対する旅費及び移転給付金は非課税所得であると思われること
⑦ 日本弁護士国民年金基金
⑧ 個人型確定拠出年金(iDeCo)
⑨ 弁護士の社会保険

修習給付金制度等に関する規則案についての司法研修所事務局長の説明

染谷武宣司法研修所事務局長は,平成29年7月12日の第33回司法修習委員会において以下の説明をしています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。

1 先般の通常国会において,法曹人材確保の充実・強化の推進等を図るために,司法修習生に対し修習給付金を支給する制度の創設などを行うことを内容とする裁判所法のー部を改正する法律が成立し,今年11月1日から施行されることになった。
   これを受け,最高裁判所では,関連する最高裁判所規則の制定あるいは改正の作業を行ってきた。本日は,改正法と規則案の概要について御説明をし,現時点での規則案について御意見をお聞きしたい。

2(1) まず,裁判所法改正の概要から御説明する。今回の法改正は大きく分けて修習給付金制度の創設と司法修習生に対する懲戒に関する規定の整備の二つを内容とするものである。
(2)   修習給付金制度創設の目的,立法理由について,国会で答弁されたところを若干紹介すると,近年,法曹志望者が大幅に減少しており,新たな時代に対応した質の高い法曹を多数輩出していくためにも,法曹志望者を確保していくということが喫緊の課題になっており,特に,法学部生に対する法曹志望に関するアンケート調査でも,貸与制も含めた法曹になるための経済的負担というところが不安要素のーつとして現れていて,平成27年6月の法曹養成制度改革推進会議決定においても,司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討することが求められたことから,今般,法曹人材確保の充実・強化の推進等を図るために修習給付金制度が創設されたということである。
(3) 修習給付金は,修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間において支給されるものである。
具体的には,司法修習生全員にー律に支給される基本給付金,自ら居住するために住宅を借り受けて家賃を支払っている場合に支給される住居給付金,修習に伴って住所又は居所を移転する必要が認められる場合に支給される移転給付金の3種類からなる。
   これらの給付金の額は最高裁判所が定めるとされており,これから御説明する規則案で具体的な金額を定めているが,同金額は立法の立案過程の段階から念頭に置かれて議論が進んできたものであり,国会でもその旨答弁されたところである。
(4) なお,現行の貸与制については,この修習給付金制度の創設に伴い,貸与額を見直した上で併存させることになった。
   また,裁判所法改正により,名称が従前の修習資金から修習専念資金と変更された。

3 続いて,懲戒に関する規定の整備について御説明する。
これは,品位を辱める行状その他の司法修習生たるに適しない事由が認められる場合に,現在は罷免しか定められていないところ,これに加えて,修習の停止又は戒告の処分をすることができるようにするという内容である。
   それらの処分に該当する事由等については最高裁判所が定めるとされており,これも後ほど規則案のところで御説明する。
   今回の裁判所法改正に伴う最高裁判所規則の制定・改正としては,修習給付金関係で新規の規則を制定するほか,現行のニつの規則,貸与の関係の規則と司法修習生に関する規則をー部改正することとしている。

4(1) まず,司法修習生の修習給付金の給付に関する規則案から御説明する。
   この規則は,修習給付金の額,支給要件,支給手続等を定めている。
   現時点での具体的な条文案については,資料64を御覧いただきたい。
(2) 基本給付金の額については,2条1項のとおり,月額13万5000円を支給することとしている。
   月額といっても,正確には,修習開始日から原則 1か月ずつの期間を取っていき,これを給付期間と呼び,このーつの給付期間ごとに13万5000円ということになる。
   1か月に満たない最後の給付期間や,後ほど御説明する修習停止の期間については,その部分を控除して日割計算で支給額を計算することになる。
(3) 住居給付金については,4条2項で月額3万5000円を支給することとしている。
   先ほど御説明した基本給付金と同様に,日割計算になる場合があるほか,4条3項各号にも日割計算になる期間が定められている。
   特に,導入修習あるいは集合修習の期間中に司法研修所の寮あるいは自宅等に居住した場合には,この期間については.住居給付金は支給されないこととなる。
(4) 移転給付金については,10条,別表になるが,最高裁判所の定める路程,簡単にいえば距離に応じた定額を支給することとしており,具体的な支給額は別表で定めるという関係になる。
   そして,具体的な距離の取り方については,採用時に住んでいた場所を管轄する地方裁判所と司法研修所との間,あるいは司法研修所と実務修習を行う地方裁判所との間を基準として計算することを予定している。
   そして,住居給付金と移転給付金については,法律が定める要件を備えた司法修習生が届け出ると,これに基づいて支給されるという仕組になっている。

5 続いて,司法修習生に関する規則の一部改正案について御説明する。これは,法改正で司法修習生に対する懲戒に関する規定が整備されたことに伴い, 関連する最高裁判所規則を改正するというものである。
   改正後の裁判所法68条が,成績不良,心身の故障等の事由による罷免を定めた1項と,司法修習生たるに適しない非行に当たる事由による罷免,修習の停止,戒告を規定した2項に分けられたことを受け,それぞれの事由を,司法修習生に関する規則,資料66の17条1項,2項で定めることとしている。
   それに加え,新設される修習の停止について, 18条で,停止の期間を1 日以上20日以下とし,停止を命ぜられた司法修習生はその停止の期間中は修習をすることができず,また,修習給付金,具体的には基本給付金と住居給付金の給付を受けることができないと定めている。

6 最後に,司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則のー部改正について, 資料66を御覧いただきたい。
修習給付金制度の創設に伴い,現在23万円である貸与の基本額を月額10万円に変更すること,基本額からの増減については,扶養家族がある場合の2万5000円の加算のみ維持し,現行の貸与制における住居を賃借している場合の増額,基本額未満の貸与を廃止することとなる。
   なお,住宅を借りている場合の加算は住居給付金で賄われることとなる。

7 以上が最高裁判所規則案の概要である。いずれの規則も改正裁判所法と同じく本年11月1日の施行を予定している。

*1 同日の司法修習委員会議事録31頁には「修習給付金制度等に関する規則案については,委員会で議論した結果,現時点での規則案のとおり制定ないし改正することが相当である。」と書いてあります。
*2 「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」も参照してください。

司法修習生の給費制と修習給付金制度との比較等

1   司法修習生の給費制が実施されていた現行65期までの司法修習生の場合
(1)   司法修習生の取扱いは以下のとおりです(平成25年12月17日開催の第5回法曹養成制度改革顧問会議の資料3-1「司法修習生に対する支給等一覧」参照)。

① 月額20万4200円(新64期の場合)の給料,地域手当,扶養手当等を支給されており,給与所得として給与所得控除が適用されました。
② 裁判所共済組合の組合員として各種の給付を受けることができました。
③ 実務修習中,通勤手当,住居手当及び寒冷地手当を支給されていました。
④ 集合修習中,通勤手当,住居手当及び日額旅費を支給されていました。
(2)   弁護士になってからの2年間,裁判所共済組合の任意継続組合員として,引き続き短期給付及び福祉事業を受けることができました(共済組合の任意継続組合員の意義につき,文部科学省共済組合HPの「退職後の医療」参照)。
(3)ア 裁判所共済組合への加入実績に基づき,公務員厚生年金から老齢厚生年金を支給してもらえます。
  私のねんきん定期便によれば,59期徳島修習(1年6月の修習)(調整手当→地域手当は0%)で扶養手当をもらっていなかった私の場合,公務員厚生年金からの老齢厚生年金は年額2万7407円です。
イ 平成27年10月1日,共済年金は厚生年金に統合された結果,公務員厚生年金となりました(外部HPの「共済年金は厚生年金に統一されます」参照)。 
ウ 平成28年7月27日発表の平成27年簡易生命表の概況によれば, 平成27年現在,30歳男性の平均余命は51.46年であり(平均で81.46歳まで生きるということ。),30歳女性の平均余命は57.51年です(平均で87.51歳まで生きるということ。)。
  65歳から老齢厚生年金を受給できますから, 男性であれば平均で16.46年間,女性であれば平均で22.51年間,公務員厚生年金から老齢厚生年金を受給できることとなります。
エ 今後の年金の状況については,厚生労働省HPの「いっしょに検証!公的年金」にある,「財政検証結果レポート」(発表年は平成16年,平成21年及び平成26年)が非常に参考になります。
(4) 給与所得である点で確定申告をする必要がありませんでした。


法務省作成の,令和元年6月18日の参議院文教科学委員会の国会答弁資料

2 司法修習生の修習給付金が実施される71期以降の司法修習生の場合
(1)   司法修習生の取扱いは以下のとおりです。

① 月額13万5000円の基本給付金,月額3万5000円の住居給付金及び引越のための移転給付金は出ますものの,基本給付金及び住居給付金については雑所得として課税の対象となりますし,地域手当及び扶養手当はありません。
② 修習給付金は給与ではない点で裁判所共済組合の組合員となることはできません(国家公務員共済組合法2条1項1号・国家公務員共済組合法施行令2条2項4号「国及び行政執行法人から給与を受けない者」参照)から国民年金及び国民健康保険となります。
③ 実務修習中,通勤手当は出ませんから交通費は自腹になりますし,寒冷地手当は出ませんから寒冷地の実務修習地における暖房代等は自腹になります。
④ 集合修習中,通勤手当及び日額旅費は出ませんから交通費は自腹になります。
(2)   弁護士になってからの2年間,裁判所共済組合の任意継続組合員となることはできません。
(3) 裁判所共済組合への加入実績がありませんから,公務員厚生年金から老齢厚生年金を支給してもらうことはできません。
(4) 雑所得である点で確定申告をする必要がありますし,司法研修所の公式見解によれば必要経費がありませんから,その分,所得税及び住民税が高くなります。


3 給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧等
(1) 平成25年1月30日開催の第8回法曹養成制度検討会議の資料3「法曹養成課程における経済的支援について」の資料14(PDF77頁,末尾73頁)に,給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧表が載っています。 

(2)   新64期司法修習生の場合,毎月20万4200円の給与を支給されていたほか,諸手当として以下のものがありました。
① 扶養手当
   配偶者につき1万3000円,配偶者以外の扶養親族一人につき6500円等

② 住居手当
   家賃額に応じて2万7000円を限度に支給

③ 通勤手当
   交通機関等の利用者について一ヶ月あたり5万5000円を限度に支給

   自転車等の使用者について使用距離に応じて2000円~2万4500円を支給
④ 地域手当
   支給対象地域で修習を行う者について,給与月額等に,修習地の区分に応じた割合(3%~18%)を乗じて得た額を支給

⑤ 寒冷地手当
   支給対象地域で修習を行う者について,11月から3月までの間,修習地の区分等に応じて7360円~2万6380円を支給

⑥ 期末手当
   年間で,給与月額等の2.6月分を支給

⑦ 勤勉手当
   年間で,給与月額等の1.29月分を支給

4 他の公的な研修制度の取扱い
   平成25年1月30日開催の第8回法曹養成制度検討会議の資料3「法曹養成課程における経済的支援について」の資料15(PDF79頁,末尾75頁)によれば,他の公的な研修制度の取扱いは以下のとおりです。

① 防衛大学校
   陸上・海上・航空の各自衛隊の幹部自衛官となる者の教育訓練を目的としており,身分は防衛省職員であり,終了後は自衛隊に勤務し,学生手当等が支給され,期間は4年です。

② 防衛医科大学校
   医師である幹部自衛官となるべき者の教育訓練を目的としており,身分は防衛省職員であり,終了後は自衛隊に勤務し,学生手当等が支給され,期間は6年です。

③ 税務大学校
   税務職員に対する必要な研修等を目的としており,身分は税務職員であり,終了後は引き続き税務職員として勤務し,給与が支給され,期間は個々の研修によります。

④ 警察大学校
   上級幹部に対して必要な知識,技能,指導能力及び管理能力を習得させるための教養等を目的としており,身分は警察官であり,終了後は引き続き警察官として勤務し,給与が支給され,期間は個々の教養課程によります。

⑤ 航空大学校
    航空機の操縦士の教育訓練を目的としており,身分は学生(非公務員)であり,終了後は民間企業等への就職等であり,給与等の支給はなく,期間は2年です。

5 決算検査報告における指摘
(1) 平成2年度決算検査報告における裁判所に対する指摘事項(旅費の経理が適正を欠くと認められるもの)には以下の記載があります。
1 旅費支給の概要
 東京、水戸、宇都宮、広島、福岡各地方裁判所及び宇都宮、福岡両家庭裁判所において、平成2年度に、職員の公務出張に対し総額131,059,553円の旅費を支払っている。
2 検査の結果
 上記の旅費について検査したところ、管内支部との事務打合せ等を用務とする近距離の出張について、日帰りの出張を1泊2日に付増ししたり、精算の事務手続を適切に行わなかったりしていたものが1,585件、同様に1泊2日の出張を2泊3日にしていたものが35件、計1,620件あった。この支払が適正を欠いていた旅費の合計額は19,731,250円である。
 なお、この旅費の金額については、3年11月末までに全額国庫に返納された。
 これを裁判所別に示すと次のとおりである。
(2) 平成17年度決算検査報告における裁判所に対する指摘事項(自動車等を使用して通勤する職員等に対する通勤手当の認定等を適切に行い、適正な支給額となるよう改善させたもの)の「検査の結果」には以下の記載があります。
 検査の結果、次のような事態となっていた。
 各裁判所において17年度に支給した自動車等に係る通勤手当のうち、職員等2,072人に係る通勤手当について、一般的に利用することができる経路のうち最短の経路を検討せず、職員等が届け出た経路や計測距離をそのまま用いていたり、地図の縮尺を誤って計測距離を求めていたりなどしていたため、経路や計測距離の認定が適切に行われていなかった。
 そこで、改めて正しい経路及び計測距離により通勤手当を算定すると、最高裁判所ほか79裁判所(注) (17年度の支給人数5,543人、これに対する通勤手当支給額3億4738万余円)の398人に係る通勤手当については、自動車等の使用距離区分が下位の区分に該当することとなり、この結果、17年度において9,135,570円、遡って検査した13年度から16年度までの間において18,274,008円、計27,409,578円が過大に支給されていた。
 また、前記のとおり、通勤手当の支給要件を具備しているかなどについて事後確認を行うこととされているのに、ほとんどの裁判所では、自動車等を使用して通勤する職員等について経路等の事後確認が十分行われていなかった。
 以上のように、法令等で定められた認定及び事後確認が適切に行われておらず、自動車等に係る通勤手当が過大に支給されており、改善の必要があると認められた。

6 その他
(1) 平成16年12月3日の日弁連会長談話(第161回臨時国会の終了にあたって)には以下の記載があります。
   本日、第161回臨時国会が会期満了により終了した。今国会において審議された司法制度改革に関連する法案のうち「裁判外紛争解決手続の利用の促進等に関する法律案(ADR法案)」及び「裁判所法の一部を改正する法律案(司法修習生への給費制廃止)」の2法案は可決成立し、「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案(弁護士報酬の敗訴者負担制度)」は廃案となった。今臨時国会は、司法制度改革推進本部の設置期限が平成16年11月末とされたその最終の国会であり、今次司法制度改革における立法は基本的に完了した。
(2) 「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」も参照して下さい。

月額3万5000円の住居給付金の根拠

1 平成29年3月22日の,井出庸生衆議院議員(民進党)に対する国会答弁資料7頁に以下の記載があることから,月額3万5000円の住居給付金は,生活保護法における単身世帯の住居扶助額に合わせたのだと思います。

・ 司法修習生が住宅を借り受け,家賃を支払っている場合には,住居給付金として月額3.5万円を支給することを予定。
   この金額は,法曹人材確保の充実・強化の推進を図るという制度の導入理由のほか,ほかの給付制度との比較(注),司法修習生の生活実態その他の諸般の事情を総合考慮して決定したものである。
(注)生活保護法における単身世帯の住居扶助額の全国平均は月額3万4,542円。
   なお,国家公務員については,一般職の職員の給与に関する法律に基づき,住居手当については,月額2万7,000円を上限として支給される。

2 生活保護の総合情報サイトに「各都道府県別住宅扶助上限額」(平成27年7月改正後のもの)が載っています。

3 「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」も参照して下さい。