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生活保護と修習給付金・修習専念資金の比較―同一世帯・同一時点での試算(AI作成)

第1 比較の前提と結論

1 基準日,世帯及び地域

本記事は,令和8年8月29日現在の生活保護,修習給付金及び修習専念資金を比較するものである。
金額例は,33歳の司法修習生,29歳の配偶者及び4歳の子の3人世帯が,新宿区で賃貸住宅に居住する場合を想定する。

生活保護については,令和8年4月の1級地-1の生活扶助基準と,令和7年10月1日現在の新宿区の住宅扶助基準を用いる。
住宅扶助は,実際の家賃が3人世帯の上限額である月額6万9800円に達すると仮定する。

2 月額だけで優劣を決められないこと

生活保護は,世帯の最低生活費から認定収入を差し引いた不足額を補う制度である。
これに対し,修習給付金は司法修習生本人への返還不要の給付であり,修習専念資金は申請による無利息の貸付けである。

本件の仮定では,生活保護の最低生活費の上限例は月額23万3390円,住居給付金の要件も満たす場合の修習給付金は月額17万円,扶養親族があり貸与額の変更を申請した場合の修習専念資金は月額12万5000円である。
もっとも,生活保護の金額は実際の支給額ではなく,修習専念資金は後に返還する借入金であるため,三つの数字をそのまま「手取り額」として並べることはできない。

第2 生活保護の算定方法

1 世帯単位の差額支給

生活保護法4条は,利用できる資産,能力その他あらゆるものを最低限度の生活の維持のために活用することを保護の要件としている。
同法8条は,厚生労働大臣の定める基準によって測定した需要と,被保護者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度で保護を行うものとしている。

したがって,生活保護の基準額は,その世帯へ当然に全額が支給される定額ではない。
世帯の最低生活費を算定した上で,収入認定された金額を差し引き,不足する差額が保護費となる。

2 生活扶助,住宅扶助及び医療扶助

生活保護法11条は,生活扶助,教育扶助,住宅扶助,医療扶助,介護扶助,出産扶助,生業扶助及び葬祭扶助の8種類を定めている。
本記事の月額比較で中心となるのは,日常生活費に対応する生活扶助と,実際に支払う家賃等に対応する住宅扶助である。

住宅扶助は,地域及び世帯人数に応じた上限額の範囲で,必要な実費を基礎として算定される。
そのため,家賃が上限額より低い場合に,上限額との差額が自由に使える現金として支給されるわけではない。

医療扶助の対象となる医療サービスについては,費用が原則として指定医療機関へ直接支払われ,本人負担はない。
ただし,医療扶助の対象外となる費用まで一律に免除されるわけではない。

3 届出と返還等

被保護者は,収入,生計その他世帯構成に変動があったときは,生活保護法61条により,速やかに保護の実施機関等へ届け出なければならない。
修習給付金又は修習専念資金を受けた場合も,受領の事実を伝え,生活保護上の取扱いを確認する必要がある。

適法に受給した通常の保護費は貸付金ではないため,原則として返済する性質のものではない。
もっとも,後に利用可能となった資力がある場合の生活保護法63条の返還や,不実の申請その他不正な手段による受給についての同法78条の徴収等は別である。

第3 修習給付金と修習専念資金

1 基本給付金及び住居給付金

裁判所法67条の2は,修習給付金を基本給付金,住居給付金及び移転給付金の3種類としている。
最高裁判所の案内によれば,基本給付金は一給付期間につき13万5000円である。

住居給付金は,自ら居住するため住宅を借り受け,家賃を支払い,所定の届出をした場合に,一給付期間につき3万5000円が支給される。
寮,自宅等に居住する一定の期間や,日割計算の対象となる期間もあるため,全ての司法修習生が毎月17万円を受け取るわけではない。

2 修習専念資金の申請,保証及び返還

裁判所法67条の3に基づく修習専念資金は,修習給付金を受けてもなお必要な資金を,申請により無利息で借りる制度である。
最高裁判所の貸与制の概要によれば,基本額は一貸与単位期間につき10万円であり,扶養親族を有して貸与額の変更を希望する場合は12万5000円となる。

貸与を受けるには,自然人2人による人的保証又は最高裁判所が指定する金融機関による機関保証が必要である。
返還は,原則として修習終了後5年間据え置き,その後10年間の年賦によって行う。

災害,傷病その他の事情による返還猶予や,死亡又は精神若しくは身体の障害による免除の制度はあるが,所定の要件を満たす場合に限られる。
したがって,修習専念資金は,返還不要の給付として家計を比較することはできない。

第4 3人世帯の現行基準による試算

1 生活扶助の計算

厚生労働省の令和8年4月の計算例に従い,1級地-1の第1類基準額は,33歳と29歳が各4万6930円,4歳が4万4580円となる。
この合計13万8440円に3人世帯の逓減率0.7500を乗じると,10万3830円となる。

第2類基準額4万4730円,1人当たり1500円の特例加算4500円及び経過的加算340円を加えると,基準生活費は15万3400円となる。
さらに,4歳の子に係る児童養育加算1万190円を加えると,生活扶助に関する月額は16万3590円となる。

2 住宅扶助を含む最低生活費の上限例

新宿区の生活保護基準額表では,1級地-1の3人から5人までの住宅扶助上限額は月額6万9800円である。
実際の家賃がこの上限額に達すると仮定すると,本件世帯の最低生活費の上限例は月額23万3390円となる。

表1 本件3人世帯の最低生活費の試算
区分計算月額
第1類(4万6930円×2人+4万4580円)×0.750010万3830円
第2類3人世帯の基準額4万4730円
特例加算1500円×3人4500円
経過的加算170円×2人340円
基準生活費第1類+第2類+特例加算+経過的加算15万3400円
児童養育加算4歳の児童1人1万190円
住宅扶助新宿区の3人世帯の上限額まで6万9800円
合計認定収入を差し引く前の上限例23万3390円

この23万3390円は,医療扶助等を含む全ての経済的利益を現金換算した額ではなく,その世帯へ必ず振り込まれる金額でもない。
実際の保護費は,認定収入,実家賃,個別の加算及び医療等の必要によって異なる。

3 三制度の比較

表2 同一時点・同一世帯を前提とする制度比較
項目生活保護修習給付金修習専念資金
本件の月額例最低生活費の上限例23万3390円から認定収入を控除基本13万5000円+住居3万5000円=17万円12万5000円
対象単位世帯司法修習生本人司法修習生本人
法的性質必要に応じた扶助返還不要の給付申請による無利息貸付け
住宅費実家賃等に応じて上限内で算定自ら賃借し家賃を負担する等の要件を満たす場合に定額給付住居費を理由とする別枠の加算はない
返還通常の保護費は貸付けではないが,63条返還・78条徴収等がある通常は返還不要原則として返還義務がある

住居給付金の要件と,扶養親族に関する貸与額変更の要件をいずれも満たす場合,月の入金額は17万円と12万5000円の合計29万5000円となり得る。
ただし,このうち12万5000円は債務であり,返還不要の給付は17万円である。

第5 税,社会保険及び医療を比較するときの注意

1 生活保護について

生活保護法57条により,保護金品自体には公課を課すことができない。
もっとも,生活保護受給者の別の所得まで一律に所得税が課されないという意味ではない。

地方税法24条の5及び295条は,生活扶助を受けている者に対する個人住民税の非課税を定めている。
国民健康保険法6条9号は,生活保護法による保護を受けている世帯に属する者について,保護停止中等を除き,国民健康保険の被保険者から除外している。

国民年金法89条による国民年金保険料の法定免除は,生活扶助その他政令で定める援助を受けていることを要件とする。
受けている扶助の種類及び必要な届出を確認せずに,生活保護受給者であれば全て免除されると一般化することはできない。

2 修習給付金について

修習給付金の課税及び司法修習生の社会保険料は,所得控除,世帯構成,自治体,年度及び加入状況によって異なる。
そのため,本記事では,旧年度の単身者について計算された所得税,住民税又は国民健康保険料を,本件3人世帯の比較へ転用しない。

税務上の取扱い及び社会保険の詳細は,第7の関連記事に委ねる。
税引後の手取り額を比較する場合は,同じ年分,同じ自治体,同じ世帯構成及び同じ所得控除を固定して別に計算する必要がある。

第6 司法修習生世帯と生活保護の収入認定

1 金額比較だけでは受給の可否を決められないこと

司法修習生又はその世帯が生活に困窮している場合であっても,生活保護の要否は,世帯全体の資産,能力,収入及び他法他施策を踏まえて個別に判断される。
修習給付金を受けていることを理由に申請そのものができないと一律にいうことも,本件の最低生活費全額を受け取れると一律にいうこともできない。

2 公表資料で確認できた範囲

令和8年8月29日までに確認した厚生労働省及び自治体の公表資料では,修習給付金及び修習専念資金を名指しして,生活保護上の収入又は資産としての取扱いを示した資料を確認できなかった。
一般の貸付資金についても,生活保護法による保護の実施要領上,収入認定から除外されるのは,自立更生のための使途,事前承認及び実際の目的使用等の要件を満たす場合である。

したがって,修習給付金又は修習専念資金を受ける予定がある場合は,その名称,金額,支給又は貸与の根拠,入金時期,使途及び返還条件を示して,管轄の福祉事務所へ個別に確認すべきである。
特に,修習専念資金が借入金であるという一事だけから,生活保護上も当然に収入認定されないと判断することはできない。

第7 比較の結論と関連記事

1 比較の結論

生活保護は,世帯の最低生活を不足額の範囲で補う制度である。
修習給付金は司法修習生本人への返還不要の給付であり,修習専念資金は返還義務を伴う無利息の貸付けである。

本件の数字だけを見て,生活保護世帯又は司法修習生世帯のいずれが常に多くの手取りを得るとは結論付けられない。
比較するときは,最低生活費と実支給額,現金給付と現物給付,返還不要の給付と借入金をそれぞれ分ける必要がある。

2 関連記事

修習給付金の課税,必要経費及び裁判例については,修習給付金の税務上の取扱い―司法研修所の案内,裁判例及び確定申告(AIリライト)で整理している。
国民健康保険,国民年金及び税務の詳細については,修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い(AIリライト)を参照されたい。

給費制,貸与制及び修習給付金制度の沿革については,司法修習生の給費制・貸与制・修習給付金制度の比較(AIリライト)で整理している。
本記事は,同一世帯及び同一時点における生活保護との金額比較に対象を絞るものである。

第8 出典・参考資料

1 法令

生活保護法(昭和25年法律第144号)4条,8条,10条,11条,15条,34条,57条,61条,63条及び78条。
裁判所法(昭和22年法律第59号)67条の2及び67条の3。
国民年金法(昭和34年法律第141号)89条。
国民健康保険法(昭和33年法律第192号)6条9号。
地方税法(昭和25年法律第226号)24条の5及び295条。

2 行政基準及び制度資料

厚生労働省「生活保護制度」
厚生労働省「生活保護の申請は国民の権利です」(令和8年4月基準額計算例)1頁~2頁。
新宿区「生活保護基準額表」(令和7年10月1日)2頁。
厚生労働省「生活保護法による保護の実施要領について」

3 裁判所の制度資料

最高裁判所「司法修習生の修習給付金について」
最高裁判所「司法修習生に対する修習専念資金の貸与制の概要(第71期以降)」
最高裁判所「これから司法修習生になる方,司法修習中の方へ」