司法修習生の給費制と修習給付金制度との比較等

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1   司法修習生の給費制が実施されていた現行65期までの司法修習生の場合
(1)   司法修習生の取扱いは以下のとおりです(平成25年12月17日開催の第5回法曹養成制度改革顧問会議の資料3-1「司法修習生に対する支給等一覧」参照)。

① 月額20万4200円(新64期の場合)の給料,地域手当,扶養手当等を支給されており,給与所得として給与所得控除が適用されました。
② 裁判所共済組合の組合員として各種の給付を受けることができました。
③ 実務修習中,通勤手当,住居手当及び寒冷地手当を支給されていました。
④ 集合修習中,通勤手当,住居手当及び日額旅費を支給されていました。
(2)   弁護士になってからの2年間,裁判所共済組合の任意継続組合員として,引き続き短期給付及び福祉事業を受けることができました(共済組合の任意継続組合員の意義につき,文部科学省共済組合HPの「退職後の医療」参照)。
(3)ア 裁判所共済組合への加入実績に基づき,公務員厚生年金から老齢厚生年金を支給してもらえます。
  私のねんきん定期便によれば,59期徳島修習(1年6月の修習)(調整手当→地域手当は0%)で扶養手当をもらっていなかった私の場合,公務員厚生年金からの老齢厚生年金は年額2万7407円です。
イ 平成27年10月1日,共済年金は厚生年金に統合された結果,公務員厚生年金となりました(外部HPの「共済年金は厚生年金に統一されます」参照)。 
ウ 平成28年7月27日発表の平成27年簡易生命表の概況によれば, 平成27年現在,30歳男性の平均余命は51.46年であり(平均で81.46歳まで生きるということ。),30歳女性の平均余命は57.51年です(平均で87.51歳まで生きるということ。)。
  65歳から老齢厚生年金を受給できますから, 男性であれば平均で16.46年間,女性であれば平均で22.51年間,公務員厚生年金から老齢厚生年金を受給できることとなります。
エ 今後の年金の状況については,厚生労働省HPの「いっしょに検証!公的年金」にある,「財政検証結果レポート」(発表年は平成16年,平成21年及び平成26年)が非常に参考になります。
(4) 給与所得である点で確定申告をする必要がありませんでした。


法務省作成の,令和元年6月18日の参議院文教科学委員会の国会答弁資料

2 司法修習生の修習給付金が実施される71期以降の司法修習生の場合
(1)   司法修習生の取扱いは以下のとおりです。

① 月額13万5000円の基本給付金,月額3万5000円の住居給付金及び引越のための移転給付金は出ますものの,基本給付金及び住居給付金については雑所得として課税の対象となりますし,地域手当及び扶養手当はありません。
② 修習給付金は給与ではない点で裁判所共済組合の組合員となることはできません(国家公務員共済組合法2条1項1号・国家公務員共済組合法施行令2条2項4号「国及び行政執行法人から給与を受けない者」参照)から国民年金及び国民健康保険となります。
③ 実務修習中,通勤手当は出ませんから交通費は自腹になりますし,寒冷地手当は出ませんから寒冷地の実務修習地における暖房代等は自腹になります。
④ 集合修習中,通勤手当及び日額旅費は出ませんから交通費は自腹になります。
(2)   弁護士になってからの2年間,裁判所共済組合の任意継続組合員となることはできません。
(3) 裁判所共済組合への加入実績がありませんから,公務員厚生年金から老齢厚生年金を支給してもらうことはできません。
(4) 雑所得である点で確定申告をする必要がありますし,司法研修所の公式見解によれば必要経費がありませんから,その分,所得税及び住民税が高くなります。


3 給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧等
(1) 平成25年1月30日開催の第8回法曹養成制度検討会議の資料3「法曹養成課程における経済的支援について」の資料14(PDF77頁,末尾73頁)に,給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧表が載っています。 

(2)   新64期司法修習生の場合,毎月20万4200円の給与を支給されていたほか,諸手当として以下のものがありました。
① 扶養手当
   配偶者につき1万3000円,配偶者以外の扶養親族一人につき6500円等

② 住居手当
   家賃額に応じて2万7000円を限度に支給

③ 通勤手当
   交通機関等の利用者について一ヶ月あたり5万5000円を限度に支給

   自転車等の使用者について使用距離に応じて2000円~2万4500円を支給
④ 地域手当
   支給対象地域で修習を行う者について,給与月額等に,修習地の区分に応じた割合(3%~18%)を乗じて得た額を支給

⑤ 寒冷地手当
   支給対象地域で修習を行う者について,11月から3月までの間,修習地の区分等に応じて7360円~2万6380円を支給

⑥ 期末手当
   年間で,給与月額等の2.6月分を支給

⑦ 勤勉手当
   年間で,給与月額等の1.29月分を支給

4 他の公的な研修制度の取扱い
   平成25年1月30日開催の第8回法曹養成制度検討会議の資料3「法曹養成課程における経済的支援について」の資料15(PDF79頁,末尾75頁)によれば,他の公的な研修制度の取扱いは以下のとおりです。

① 防衛大学校
   陸上・海上・航空の各自衛隊の幹部自衛官となる者の教育訓練を目的としており,身分は防衛省職員であり,終了後は自衛隊に勤務し,学生手当等が支給され,期間は4年です。

② 防衛医科大学校
   医師である幹部自衛官となるべき者の教育訓練を目的としており,身分は防衛省職員であり,終了後は自衛隊に勤務し,学生手当等が支給され,期間は6年です。

③ 税務大学校
   税務職員に対する必要な研修等を目的としており,身分は税務職員であり,終了後は引き続き税務職員として勤務し,給与が支給され,期間は個々の研修によります。

④ 警察大学校
   上級幹部に対して必要な知識,技能,指導能力及び管理能力を習得させるための教養等を目的としており,身分は警察官であり,終了後は引き続き警察官として勤務し,給与が支給され,期間は個々の教養課程によります。

⑤ 航空大学校
    航空機の操縦士の教育訓練を目的としており,身分は学生(非公務員)であり,終了後は民間企業等への就職等であり,給与等の支給はなく,期間は2年です。

5 決算検査報告における指摘
(1) 平成2年度決算検査報告における裁判所に対する指摘事項(旅費の経理が適正を欠くと認められるもの)には以下の記載があります。
1 旅費支給の概要
 東京、水戸、宇都宮、広島、福岡各地方裁判所及び宇都宮、福岡両家庭裁判所において、平成2年度に、職員の公務出張に対し総額131,059,553円の旅費を支払っている。
2 検査の結果
 上記の旅費について検査したところ、管内支部との事務打合せ等を用務とする近距離の出張について、日帰りの出張を1泊2日に付増ししたり、精算の事務手続を適切に行わなかったりしていたものが1,585件、同様に1泊2日の出張を2泊3日にしていたものが35件、計1,620件あった。この支払が適正を欠いていた旅費の合計額は19,731,250円である。
 なお、この旅費の金額については、3年11月末までに全額国庫に返納された。
 これを裁判所別に示すと次のとおりである。
(2) 平成17年度決算検査報告における裁判所に対する指摘事項(自動車等を使用して通勤する職員等に対する通勤手当の認定等を適切に行い、適正な支給額となるよう改善させたもの)の「検査の結果」には以下の記載があります。
 検査の結果、次のような事態となっていた。
 各裁判所において17年度に支給した自動車等に係る通勤手当のうち、職員等2,072人に係る通勤手当について、一般的に利用することができる経路のうち最短の経路を検討せず、職員等が届け出た経路や計測距離をそのまま用いていたり、地図の縮尺を誤って計測距離を求めていたりなどしていたため、経路や計測距離の認定が適切に行われていなかった。
 そこで、改めて正しい経路及び計測距離により通勤手当を算定すると、最高裁判所ほか79裁判所(注) (17年度の支給人数5,543人、これに対する通勤手当支給額3億4738万余円)の398人に係る通勤手当については、自動車等の使用距離区分が下位の区分に該当することとなり、この結果、17年度において9,135,570円、遡って検査した13年度から16年度までの間において18,274,008円、計27,409,578円が過大に支給されていた。
 また、前記のとおり、通勤手当の支給要件を具備しているかなどについて事後確認を行うこととされているのに、ほとんどの裁判所では、自動車等を使用して通勤する職員等について経路等の事後確認が十分行われていなかった。
 以上のように、法令等で定められた認定及び事後確認が適切に行われておらず、自動車等に係る通勤手当が過大に支給されており、改善の必要があると認められた。

6 その他
(1) 平成16年12月3日の日弁連会長談話(第161回臨時国会の終了にあたって)には以下の記載があります。
   本日、第161回臨時国会が会期満了により終了した。今国会において審議された司法制度改革に関連する法案のうち「裁判外紛争解決手続の利用の促進等に関する法律案(ADR法案)」及び「裁判所法の一部を改正する法律案(司法修習生への給費制廃止)」の2法案は可決成立し、「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案(弁護士報酬の敗訴者負担制度)」は廃案となった。今臨時国会は、司法制度改革推進本部の設置期限が平成16年11月末とされたその最終の国会であり、今次司法制度改革における立法は基本的に完了した。
(2) 「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」も参照して下さい。

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