修習資金の返還の猶予

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1 総論
(1) 修習資金の返還猶予事由
ア 以下の場合,修習資金の返還を猶予してもらえます(裁判所法67条の2第3項前段)。

① 災害,傷病その他やむを得ない理由により返還が困難となったとき
② 修習資金を返還することが経済的に困難であるとき
イ ②につき,具体的には,返還期限前1年間(修習資金貸与要綱20条1項)について,(a)奨学金等の返済を控除した後の給与収入が300万円以下である場合,又は(b)奨学金等の返済を控除した後の事業所得が200万円以下である場合をいいます(司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則7条の2)。
(2) 修習資金の返還猶予の手続等
ア 修習資金の返還猶予のための申請は毎年行う必要があります(修習資金貸与要綱28条3項及び4項)。
イ 修習資金の返還猶予は最大で5年間です(修習資金貸与要綱28条5項)。
ウ 修習資金の返還猶予基準を事後的に満たさなくなった場合(例えば,学金の返済を控除した後の事業所得が200万円を超えた場合),それまでの猶予分とあわせて修習資金を返還しなければならないと思います。
(3) 返還期限の猶予申請における添付資料の例
   裁判所HPの「ガイド~据置期間・返還期間中の手続について~」の「第6 返還期限の猶予について」には,以下の記載があります。
※ 添付資料の例は次のとおりです。
ア 災害の場合
被災証明書等,所得証明書等,申述書
イ 傷病の場合
診断書等,所得証明書等,申述書
ウ 事故の場合
事故証明等,所得証明書等,申述書
エ 経済的に困難な場合
・ 給与所得者
給与証明書(又は所得証明書),申述書
借入金の返還がある場合には,借入れの目的や返還の事実が分かる契約書,領収書等
・ 給与所得者以外の者
確定申告書(控え)(又は所得証明書),申述書
借入金の返還がある場合には,借入れの目的や返還の事実がわかる契約書,領収書等
(4) その他
ア 修習資金の返還を猶予してもらう場合,国の債権の管理等に関する法律26条の例外として,担保を提供したり,利息を支払ったりする必要はありません(裁判所法67条の2第3項後段)。

イ 修習資金貸与要綱は,司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則12条に基づくものと思います。
ウ 「司法修習生の修習資金貸与制」も参照して下さい。


2 平成24年の裁判所法改正
(1)ア   平成24年8月3日法律第54号による改正前の裁判所法67条の2第3項は以下のとおりです。

   最高裁判所は、修習資金の貸与を受けた者が災害、傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となつたときは、その返還の期限を猶予することができる。この場合においては、国の債権の管理等に関する法律 (昭和三十一年法律第百十四号)第二十六条 の規定は、適用しない。
イ 平成24年8月3日法律第54号による改正前の裁判所法67条の2第3項は以下のとおりであり,赤字部分が追加されました。
   最高裁判所は、修習資金の貸与を受けた者が災害、傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となつたとき、又は修習資金の貸与を受けた者について修習資金を返還することが経済的に困難である事由として最高裁判所の定める事由があるときは、その返還の期限を猶予することができる。この場合においては、国の債権の管理等に関する法律 (昭和三十一年法律第百十四号)第二十六条 の規定は、適用しない。
(2) 平成24年8月3日法律第54号は,裁判所法附則5項として以下の条文を追加しました。
   第六十七条の二第一項の修習資金の貸与については、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律(平成十四年法律第百三十九号)附則第二条の規定による法曹の養成に関する制度についての検討において、司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点から、法曹の養成における司法修習生の修習の位置付けを踏まえつつ、検討が行われるべきものとする。

3 関係条文
(1)   司法修習生の修習専念資金の貸与等に関する規則(平成21年10月30日最高裁判所規則第10号)
(法第六十七条の二第三項に規定する最高裁判所の定める事由)
第七条の二 法第六十七条の二第三項に規定する最高裁判所の定める事由は、次に掲げるものとする。

一 修習資金の貸与を受けた者が給与所得(俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう。)以外の所得を有しない者(次号において「給与所得者」という。)である場合において、当該者の最高裁判所の定める期間における収入金額(法科大学院(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十九条第二項に規定する専門職大学院であって、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするものをいう。)における修学のための借入金(最高裁判所の定めるものを除く。次号において単に「借入金」という。)を当該期間中に返還したときは、その返還額を控除した残額)が三百万円以下であること(当該者について次条第二項第二号から第五号までに掲げる事由のいずれかが生じたときを除く。)。
二 修習資金の貸与を受けた者が給与所得者以外の者である場合において、当該者の前号に規定する期間における総収入金額(借入金を当該期間中に返還したときは、その返還額を控除した残額)から必要経費を控除した残額が二百万円以下であること(当該者について次条第二項第二号から第五号までに掲げる事由のいずれかが生じたときを除く。)。 
(2) 修習資金貸与要綱
(規則第7条の2に規定する最高裁判所の定める期間等)
第20条 規則第7条の2第1号に規定する最高裁判所の定める期間は,猶予を受けようとする修習資金の返還の期限前1年間とする。
2 規則第7条の2第1号に規定する最高裁判所の定めるものは,配偶者又は3親等内の親族からの借入金とする。 

(返還期限の猶予の手続)
第28条 法第67条の2第3項の規定による修習資金の返還の期限の猶予の申請は,別紙様式第8による返還期限猶予申請書を最高裁判所に提出してするものとする。

2 前項の返還期限猶予申請書には,災害,傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となったことを証する資料又は規則第7条の2各号に掲げる事由のいずれかがあることを証する資料を添付しなければならない。
3 第1項に規定する猶予の期間は,1年以内で当該猶予に係る事由(当該事由が規則第7条の2各号に掲げる事由である場合には,同条各号に掲げる事由に相当する事由。以下この条において同じ。)が継続すると見込まれる期間とする。
4 前項の猶予の期間が終了するときに当該猶予に係る事由が継続していると認められる場合には,再度第1項の規定による申請をすることにより,当該猶予の期間の延長をすることができるものとし,当該延長をすることができる期間は,1年以内で当該猶予に係る事由が継続すると見込まれる期間とする。
5 前2項の規定による猶予の期間は,通じて5年を超えることができない。
6 最高裁判所の歳入徴収官は,第1項に規定する猶予をする場合には,当該猶予を申請した者,被貸与者及びその保証人に対し,その旨及び当該猶予後の返還の期限を通知するものとする。

7 第1項に規定する猶予をされた被貸与者は,その者について次に掲げる事由のいずれかが生じた場合には,第3項から第5項までの規定にかかわらず,最高裁判所の歳入徴収官の請求に基づき,その指定する日までに,返還未済額の全部を返還しなければならない。
一 規則第6条第4号に掲げる事由が生じたとき。
二 規則第8条第1項第4号又は第2項各号に掲げる事由が生じたとき。
三 最高裁判所に提出した書類に虚偽の事実を記載したことにより第1項に規定する猶予を受けたことが判明したとき。
四 国の不利益にその財産を隠し,損ない,若しくは処分したとき,又はこれらのおそれがあると認められたとき。
五 虚偽に債務を負担する行為をしたとき。
六 次項の規定による求めに応じなかったとき。
8 最高裁判所は,第1項に規定する猶予をした被貸与者に対し,当該猶予の期間中,当該猶予に係る事由が継続していることを確認するために必要な資料の提出を求めることができる。 

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