修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い

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目次
第1 司法研修所の公式見解

1 修習給付金案内の記載
2 支給された基本給付金及び住居給付金の全額が雑所得となること等
第2 平成30年中に支給される基本給付金及び住居給付金の合計
1 平成30年中に支給される基本給付金の金額
2 平成30年中に支給される住居給付金の金額
3 平成30年に支給される基本給付金及び住居給付金の合計
第3 平成30年分所得税及び平成31年度住民税の試算の合計
1 基礎控除しか適用されないと仮定した場合の試算
2 復興特別所得税,所得税及び住民税の補足説明
3 所得税及び住民税の試算の合計
第4 平成31年度国民健康保険料の試算
1 国民健康保険料の試算
2 その他の情報
第5 平成31年度の税金及び国民健康保険料の試算の合計
第6 他の雑損失との損益通算は可能であること等
1 他の雑損失との損益通算は可能であること
2 税務調査で否認される可能性があること
第7 弁護士登録関係費用は開業費(繰延資産の一種です。)になると思われること
1 弁護士登録関係費用
2 弁護士登録関係費用は開業費に該当すると思われること
3 開業費の計上方法等
4 法律書等の書籍代及び勉強会参加費の取扱い
第8 旅費及び移転給付金は非課税所得であると思われること
1 所得税法及び所得税基本通達の条文
2 旅費及び移転給付金の一般的な支給額等
3 旅費及び移転給付金は非課税所得であると思われること
第9 修習1年目に支給される基本給付金13万5000円については,原則として確定申告をする必要がないこと
1 一般論として,確定申告が必要なケース
2 初回の基本給付金13万5000円について確定申告をする必要がない場合の具体例
3 修習専念資金の貸与は関係がないこと
第10 修習給付金に関して存在しない文書
第11 関連記事


第1 司法研修所の公式見解
1 修習給付金案内の記載
   司法研修所事務局が作成した「修習給付金案内(71期)」に含まれる「所得税等の取扱い」には以下の記載があります(修習給付金案内(72期)にも同趣旨の記載があります。)。

◎所得税・住民税
   修習給付金のうち基本給付金及び住居給付金は,所得税法上の「雑所得」に該当するため,確定申告の対象となります。
   特に,2年目(平成30年分)については,大多数の方が確定申告をしなければならないと予想されます。詳細は,税務署に問い合わせるなどして確認してください。
(注)(1) 源泉徴収は行われません。
(2) 必要経費として控除することができる経費はありません。
   また,基本給付金及び住居給付金は,所得税のほか,住民税の課税対象になります。
   詳細は,各市区町村のウェブサイトを参照するなどして確認してください。

2 支給された基本給付金及び住居給付金の全額が雑所得となること等
(1) 司法研修所の公式見解によれば,修習給付金は雑所得に該当するだけでなく,必要経費として控除することができる経費は存在しないこととなります。
   そのため,支給された基本給付金及び住居給付金の全額が雑所得となりますから,司法修習生に採用された年の翌年(71期司法修習生の場合,平成30年)については,所得税の控除対象扶養親族から外れますし,配偶者控除の適用はないこととなります。
(2) 給与所得者の場合,住宅手当は給与所得として課税対象です(国税庁HPのタックスアンサー(よくある税の質問)「No.2508 給与所得となるもの」参照)。
   また,住宅手当は社会保険料を計算する際の標準報酬月額に含まれます(日本年金機構HPの「厚生年金保険の保険料」,及び全国健康保険協会HPの「標準報酬月額の決め方」参照)。

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第2 平成30年中に支給される基本給付金及び住居給付金の合計
1 平成30年中に支給される基本給付金の金額
(1) 71期司法修習生の場合,基本給付金は,初回の支給日は平成29年12月15日であり,2回目の支給日は平成30年1月15日であり,13回目の支給日(最後)は修習終了日である同年12月12日です。
   そのため,平成30年中に支給される基本給付金は12回分となり,最後の支給分は日割り計算となります。
(2) 平成30年中に支給される基本給付金は,
13万5000円×11回分(2回目ないし12回目の支給分)
+13万5000円×16日/30日(日割り計算となった13回目の支給分算)
= 148万5000円+7万2000円
= 155万7000円となります。
(3) 修習終了日は毎年,二回試験の不合格発表日の翌日の水曜日となっています。
   また,司法修習生の修習終了は,修習終了日に開催される最高裁判所裁判官会議(毎週水曜日開催)の報告事項になっています(司法修習生に関する規則16条)。
2 平成30年中に支給される住居給付金の金額
(1) 大阪高裁管内のA班の71期司法修習生の場合,導入修習及び集合修習において通常は司法研修所の寮に居住しますところ,その期間(①平成29年11月27日~12月26日の1か月分,②平成30年8月14日~同月26日の日割り計算分及び③同月27日~9月26日の1か月分)については,実務修習地で空家賃を支払っていたとしても,住居給付金は支給されません。
   そのため,実務修習地で部屋を借りている大阪高裁管内のA班の71期司法修習生の場合,2回目(事実上の初回)の支給日は平成30年2月15日となり,12回目(事実上の10回目)の支給日は修習終了日である同年12月12日となり,13回目(事実上の11回目)の支給日(最後)は平成31年1月15日となります。
(2) 以上の事情を前提とした場合,平成30年中に支給される住居給付金は,
3万5000円×10回分
-3万5000円×13日/31日(9回目(事実上の8回目)となる平成30年9月18日の不支給分の日割り計算)
= 35万円-1万4677円
= 33万5323円であると思います。

3 平成30年に支給される基本給付金及び住居給付金の合計
   155万7000円+33万5323円=189万2323円であり,この金額がそのまま雑所得の金額となります。

第3 平成30年分所得税及び平成31年度住民税の試算の合計
1 基礎控除しか適用されないと仮定した場合の試算
   生命保険料控除,社会保険料控除等が適用されず,基礎控除しか適用されないと仮定した場合の試算は以下のとおりです。
① 平成30年分所得税の試算
(189万2000円-38万円)×5%(所得税率)×1.021(復興特別所得税の加算)= 7万7187円→7万7100円
② 平成31年度住民税(神戸市在住の場合)の試算
(189万2000円-33万円)×10%(所得割)+5800円(均等割)
= 16万2000円
2 復興特別所得税,所得税及び住民税の補足説明
(1) 復興特別所得税は,平成25年分ないし平成49年分の所得税の2.1%です(東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(復興財源確保法)13条)。
(2) 所得税及び住民税では,課税標準額から1000円未満が切り捨てとなり,納税確定額から100円未満が切り捨てとなります(所得税につき国税通則法118条1項及び119条1項,住民税につき地方税法20条の4の2)。
(3) 個人住民税所得割の税率の内訳につき,平成29年度までは市民税が6%,県民税が4%でした。
   また,平成29年度に政令指定都市に係る県費負担教職員の給与負担事務が道府県から政令指定都市へ事務移譲されたことに伴い(平成26年6月4日法律第51号による改正後の市町村立学校職員給与負担法1条及び2条参照),政令指定都市の場合,平成30年度からは市民税が8%,道府県民税が2%となりました(平成29年度は,経過措置として,個人住民税所得割のうち税率2%相当分が道府県から政令指定都市へ交付されました。)。
(4) 5800円の均等割額の内訳は,神戸市の市民税が3500円であり,兵庫県の県民税が2300円です。
   なお,個人住民税の均等割の標準税率は,市町村民税が3000円であり(地方税法310条),道府県民税が1000円です(地方税法38条)。

3 所得税及び住民税の試算の合計
   平成30年分所得税及び平成31年度住民税の試算の合計は,最大で23万9100円となります。
   ただし,平成30年度の国民年金保険料,国民健康保険料等について社会保険料控除の適用を申請した場合,これよりも税金は安くなります。

第4 平成31年度国民健康保険料の試算
1 国民健康保険料の試算
(1) 国民健康保険料(介護分)の負担がない39歳以下の人が神戸市で1人世帯として国民健康保険に加入した場合,平成30年度算定用所得額は189万2000円-33万円=156万2000円となりますから,具体的な金額は以下のとおりとなります。
① 国民健康保険料(医療分)
156万2000円×8.17%(所得割額)+3万710円(被保険者均等割額)+2万1360円(世帯別平等割額)=17万9680円
② 国民健康保険料(後期高齢者支援金分)
156万2000円×3.11%(所得割額)+1万1670円(被保険者均等割額)+8110円(世帯別平等割額)-3870円(緩和措置)=6万4480円
(2) 国民健康保険の算定用所得額を計算する場合,前年の総所得金額から控除されるのは基礎控除33万円(地方税法314条の2第2項)だけです(国民健康保険法81条・国民健康保険法施行令29条の7第2項第4号及び同条第3項第4号「基礎控除後の総所得金額等」参照)。
   つまり,社会保険料控除等のその他の所得控除は適用されないということです。
(3) 平成30年度の神戸市の計算式を前提とした場合,平成31年度国民健康保険料は最大で24万4160円となります。
2 その他の情報
(1) 国民健康保険HPに以下の記事があります。
① 年収別の国民健康保険料【全国平均】
② 主要都市の保険料を比較しよう
→ 平成31年度で言えば,一番安いのが長野県の37万5100円であり,一番高いのが兵庫県の56万5800円です。
(2) 国民健康保険計算機HPを使えば,自治体を選択した後,「年齢区分」及び「その他収入」(受領した基本給付金及び住居給付金の合計額です。)を入力することで,国民健康保険料を計算することができます。

第5 平成31年度の税金及び国民健康保険料の試算の合計
   最大で23万9100円+24万4160円=48万3260円となります。


法務省作成の,令和元年6月18日の参議院文教科学委員会の国会答弁資料

第6 他の雑損失との損益通算は可能であること等
1 他の雑損失との損益通算は可能であること
(1) 所得税法35条2項2号は,雑所得の金額について,「その年中の雑所得(公的年金等に係るものを除く。)に係る総収入金額から必要経費を控除した金額」と定めています。
   そのため,雑所得内で利益と損失がある場合には損益通算をすることができます。
(2) 修習給付金に基づく雑所得と,採点バイト等に基づく雑損失(バイト収入から書籍代等の必要経費を控除したことによる損失)との間で損益通算をすることはできます。
   そのため,修習給付金に関する税金及び国民健康保険料を減らしたい場合,兼職許可を受けて採点バイト等を行い,雑損失を計上した方がいいかもしれません。
2 税務調査で否認される可能性があること
   採点バイト等に基づく雑損失の計上については,税務調査(国税通則法74条の2ないし74条の13の2参照)で否認される可能性はあります。


* 楽天カードは,満18歳以上の人であれば,主婦,アルバイト,パート,学生でも作成できます。

第7 弁護士登録関係費用は開業費(繰延資産の一種です。)になると思われること
1 弁護士登録関係費用
(1) 弁護士登録関係費用として少なくとも以下の費用が必ず発生しますし,入会先の単位弁護士会ごとに別途,費用が発生します。
① 登録免許税6万円
・ 登録免許税法別表第一の「三十二 人の資格の登録若しくは認定又は技能証明」の「(三) 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第八条(弁護士の登録)の弁護士の登録」に基づくものです。
② 日弁連登録料1万円
・ 日弁連会則23条1項1号括弧書きに基づくものです。
③ 登録月の日弁連の会費
・ 平成30年6月以降,日弁連会費が6200円であり(日弁連会則95条2項),日弁連特別会費(日弁連会則95条の3)が4200円です。
(2) 大阪弁護士会で弁護士登録をする場合,大阪弁護士会の入会金として3万円,登録月の大阪弁護士会の会費として7000円を支払う必要があります(月額6000円の会館特別会費の徴収月を入会後3年を経過する月としてもらった場合)。
   また,大阪弁護士会に入会してから4年以内に会館負担金会費40万円を支払う必要があります。
(3) 東京弁護士会HP等に,弁護士登録時の必要費用等が詳しく書いてあります。
(4) 弁護士会の会費は司法修習終了後の経過年数等によって異なります。
2 弁護士登録関係費用は開業費に該当すると思われること
(1) 弁護士登録関係費用については,所得税法2条1項20号(繰延資産の意義)・所得税法施行令7条(繰延資産の範囲)1項3号ホの「イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用」に該当するものとして,弁護士業の開業費(繰延資産の一種です。)として必要経費になると思います所得税基本通達2-29の4参照)。
(2) 所得税基本通達2-29の4は以下のとおりです。
   同業者団体等(社交団体を除く。)に対して支出した加入金(その構成員としての地位を他に譲渡することができることとなっている場合における加入金及び出資の性質を有する加入金を除く。)は、令第7条第1項第3号ホに掲げる費用に該当するものとする。
3 開業費の計上方法等
(1) 開業費については,開業日に一括で計上し,その内訳が分かる領収書等を保管しておけばいいです(色々ぶろぐ「個人事業主の開業費の仕訳方法(国税局に確認済み) 」参照)。
(2) 弁護士業の開業日は弁護士登録をした日以後になると思われますところ,事業所得があるとは限らない勤務弁護士となった日と,事業所得を生ずべき弁護士業を開業した日は異なると思います。
   そのため,修習終了直後の12月に弁護士登録をした場合であっても,即独又は軒弁でない限り,開業日は翌年1月以降になることが多いと思います。
(3) 開業日を翌年1月以降とした場合,開業費は翌年1月以降に計上することとなります。
(4) 開業日は,個人事業の開業・廃業等届出書(いわゆる「開業届」です。)に記載する日付でありますところ,開業届については,国税庁HPの「[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続」に書式が載っています。
(5) 開業費について任意償却を選択した場合,好きなタイミングで自由に償却(=費用計上)することが可能です色々ぶろぐ「開業費の償却方法(任意償却を活用して節税)」参照)。
4 法律書等の書籍代及び勉強会参加費の取扱い
   繰延資産の一種としての開業費とは,不動産所得,事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいいます(所得税法施行令7条1項1号)。
   そのため,法律書等の書籍代及び勉強会参加費は,弁護士業の開業準備のために特別に支出する費用に該当するとまではいえない場合,開業費に該当しないこととなります。

第8 旅費及び移転給付金は非課税所得であると思われること
1 所得税法及び所得税基本通達の条文
(1) 所得税法9条1項4号は,「給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの」は非課税所得に該当すると定めています。
(2) 所得税基本通達9-3は,「法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいう」と定めています。
2 旅費及び移転給付金の一般的な支給額等
(1) 旅費(交通費,日当及び日額旅費)
ア 交通費
(ア) 交通費は,原則として,最も経済的な通常の経路及び方法により旅行した場合の旅費により計算された金額で支給されるものです(国家公務員等の旅費に関する法律6条2項ないし5項,及び7条)。
(イ) 司法修習生の場合,①導入修習に参加するために移動する場合,分野別実務修習に参加するために移動する場合,集合修習に参加するために移動する場合及び選択型実務修習に参加するために移動する場合,並びに②実務修習において各種施設の見学等に参加する場合に支給されるものです。
(ウ) 司法修習生に対する交通費の金額は,最も経済的な通常の経路及び方法として鉄道,航空機等を利用した場合において実際に負担した運賃です。
イ 日当
(ア) 日当は,1日当たりの定額で支給されるものです(国家公務員等の旅費に関する法律6条6項及び20条)。
   また,旅費業務に関する標準マニュアルVer.2-0(2016年12月の各府省等申合せ)10頁及び11頁によれば,おおむね半額は目的地内を巡回する場合の交通費に充てるものとされ,残り半額は諸雑費(旅行中の昼食代や官署との電話代等)に充てるものとされています。
(イ) 司法修習生の場合,以下の旅費が支給されます。
① 導入修習に参加するために移動する場合(招集旅費)
② 分野別実務修習に参加するために移動する場合(帰任旅費)
③ 実務修習中の見学等のために移動する場合(実務修習旅費)
③ 集合修習に参加するために移動する場合(帰任旅費)
④ 選択型実務修習に参加するために移動する場合(選択型実務修習旅費)
(ウ) 司法修習生に対する日当の金額は,1日当たり850円であって,これは,国家公務員等の旅費に関する法律別表第一に定める日当(二級の職務)の定額1700円の半分です。
ウ 日額旅費
(ア) 日額旅費(国家公務員等の旅費に関する法律26条1項)は,交通費(宿泊先から修習先までの分),宿泊料及び日当に代えて支給されるものです(国家公務員等の旅費に関する法律6条15項参照)。
   また,旅費業務に関する標準マニュアルVer.2-0(2016年12月の各府省等申合せ)16頁によれば,日額旅費には一般業務日額旅費及び研修日額旅費があるところ,司法修習生に対する日額旅費は研修日額旅費(国家公務員等の旅費に関する法律26条1項2号)です。
(イ) 司法修習生の場合,選択型実務修習(全国プログラム又は自己開拓プログラム)に参加する場合に支給されるものです。
(ウ) 司法修習生に対する日額旅費の金額は,旅館に宿泊する場合(旅館業法2条2項及び3項の旅館業の用に供する宿泊施設に宿泊する場合),1日当たり5910円であり,下宿その他これに準ずる宿泊施設に宿泊する場合(例えば,旅館業法の許可を受けていないウィークリーマンションや,カプセルホテル,寮,民泊等に宿泊する場合),1日当たり3260円であると思います(研修等の旅行の日額旅費について(平成31年3月15日付の最高裁判所経理局長の通達)参照)。
(2) 移転給付金
ア(ア) 移転給付金は,裁判所法67条の2第5項に基づき,赴任に伴う居住所の移転が行われた場合に支給される旅費(いわゆる引越代)であり,距離区分等に応じた定額を支給されるものであって,国家公務員等に対する移転料(国家公務員等の旅費に関する法律6条9項及び36条)に相当するものです。
   実際,67期ないし70期の司法修習生に対しては,「移転料」という名前で引越代が支給されていました(「司法修習生に対する修習資金等の状況のあらまし」参照)。
(イ) 国家公務員の場合,着後手当(採用又は転任により居住地の移転が行われた場合に新居住地に到着後の諸雑費に充てるために支給される旅費)を支給される(国家公務員等の旅費に関する法律6条10項及び37条)のに対し,司法修習生の場合,着後手当に相当する手当を支給されません。
   そのため,新居住地に到着後の諸雑費については,基本給付金に対する必要経費として主張できるかもしれません。
イ(ア) 司法修習生に対する移転給付金の金額は,国家公務員等の旅費に関する法律23条1項及び別表第二・2項に定める移転料(二級の職務)の半分(赴任の際に扶養親族を移転しない場合に関する同法23条1項2号参照)と同じ額を支給されるものです。
(イ) 移転給付金の具体的な金額は,移転距離に応じて以下のとおりです(司法修習生の修習給付金の給付に関する規則10条及び別表)。
鉄道          50km未満: 4万6500円
鉄道  50km以上 100km未満: 5万3500円
鉄道 100km以上 300km未満: 6万6000円
鉄道 300km以上 500km未満: 8万1500円
鉄道 500km以上1000km未満:10万8000円
鉄道1000km以上1500km未満:11万3500円
鉄道1500km以上2000km未満:12万1500円
鉄道        2000km以上:14万1000円
3 旅費及び移転給付金は非課税所得であると思われること
(1) 総論
ア  「修習給付金案内」には,旅費(交通費,日当及び日額旅費),並びに移転給付金について確定申告が必要であるなどとは書いてありません。
   そのため,司法研修所としては,旅費(交通費,日当及び日額旅費),並びに移転給付金は非課税所得であると考えていると思います。
イ 公務のための旅行について旅費を支給する法律である国家公務員等の旅費に関する法律(同法1条参照)が,司法修習生が二級の職務に相当するとした上で,司法修習生に準用されています(内国旅行の旅費について(昭和61年9月12日付の最高裁判所事務総長依命通達)1(1)及び別表第1)。
   そのため,司法修習生としての採用は所得税法9条1項4号の「就職」に当たり,司法修習生としての司法修習は同号の「職務」に当たると思います。
ウ(ア) 交通費は,所得税基本通達9-3の「運賃」に該当すると思います。
(イ) 日当は,所得税基本通達9-3の「運賃等の支出」に該当すると思います。
(ウ) 研修日額旅費は,所得税基本通達9-3の「運賃,宿泊料等の支出」に該当すると思います。
(エ) 移転給付金は,国家公務員等に対する移転料と同趣旨で支給されるものですから,所得税基本通達9-3の「移転料」に該当すると思います。
エ 司法修習生に対する旅費及び移転給付金は,その金額規模からすれば,所得税基本通達9-3の「その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品」に該当すると思います(旅費につき令和元年11月25日付の理由説明書参照)。
(2) 導入修習参加のための旅費及び移転給付金の取扱い
   導入修習参加のための旅費(交通費及び日当)並びに移転給付金は,「就職をした者が就職に伴う転居のための旅行をした場合」に支給されるお金ですし,所得税法9条1項4号の条文上,「給与所得を有する者」に支給したものに限定されているわけではありませんから,所得税法9条1項4号に基づき非課税所得であると思います。
(3) 導入修習参加のためのものを除く,旅費及び移転給付金の取扱い
ア 旅費
   司法修習生は「給与所得を有する者」に該当しないとはいえ,司法修習生に対する交通費及び日当(導入修習参加のためのものを除く。)並びに日額旅費は,給与所得を有する他の裁判所職員と同じように,国家公務員等の旅費に関する法律等に準じて支給されるものです(「内国旅行の旅費について」’(昭和61年9月12日付の最高裁判所事務総長の依命通達)参照)から,所得税法9条1項4号類推適用に基づき非課税所得になると思います。
イ 移転給付金
   司法修習生は「給与所得を有する者」に該当しないとはいえ,司法修習生に対する移転給付金(導入修習参加のためのものを除く。)は,国家公務員等に対する移転料と同趣旨で支給されるものですから,所得税法9条1項4号類推適用に基づき非課税所得になると思います。

提出書類確認スケジュール(第73期修習給付金)


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第9 修習1年目に支給される基本給付金13万5000円については,原則として確定申告をする必要がないこと
1 一般論として,確定申告が必要なケース
   国税庁HPの「確定申告が必要な方」には以下の記載があります(ナンバリングは変えています。)。
① 給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える
② 給与を2か所以上から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える
※ 給与所得の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除及び基礎控除を除く。)を差し引いた残りの金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円以下の方は、申告は不要です。
2 初回の基本給付金13万5000円について確定申告をする必要がない場合の具体例
(1) 賃貸アパート経営に基づく不動産所得等がないことを前提とすれば,導入修習中の12月に支給される初回の基本給付金13万5000円について確定申告をする必要がない場合の具体例は以下のとおりとなります。
①の具体例
   司法修習生になった年に会社員をしていたものの,アルバイトはしていなかったため,1箇所だけの給与所得しかない場合
②の具体例
   司法修習生になった年に会社員をしたり,アルバイトをしたりしていて,2箇所以上の給与所得があるものの,会社員としての給与所得については源泉徴収及び年末調整をされていて,かつ,アルバイト代については6万5000円以下である場合
(2) 初回の住居給付金3万5000円が支給されるのは司法修習生に採用された年(修習2年目)の翌年1月ですから,修習1年目の確定申告とは関係がないです。
3 修習専念資金の貸与は関係がないこと
   修習専念資金は借金であって,所得ではありませんから,修習専念資金の貸与を受けていることを理由に確定申告義務が発生することはありません。

第10 修習給付金に関して存在しない文書
1(1) 平成30年8月23日付の司法行政文書不開示通知書によれば,「最高裁判所が修習給付金について必要経費として控除することができる経費があるかどうかを検討した際に作成し,又は取得した文書」は存在しません。
(2) 平成30年9月26日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には以下の記載があります。
   司法研修所では,修習給付金のうち基本給付金及び住居給付金について,必要経費として控除することができる費用が存在するか検討したが, この検討内容については,文書を作成するほどの複雑な内容のものではなかったことから,文書を作成していない。
   なお, この検討結果については,司法修習生に配布した「修習給付金案内」に記載している。
2(1) 平成31年3月1日付の司法行政文書不開示通知書によれば,「修習給付金に関する所得税及び住民税,並びに健康保険の取扱いについて,最高裁判所が自ら税務署,健康保険組合,市区町村等に問い合わせをした上で,その結果を司法修習生に伝えようとしない理由が分かる文書」は存在しません。
(2) 平成31年3月25日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には以下の記載があります。
   修習給付金に関する所得税及び住民税並びに健康保険の取扱いについては,修習給付金制度導入時に,所要の調査,検討を行った上で,司法修習生に周知すべき内容としては「修習給付金案内」に記載した内容とすることが相当であると判断し,現に「修習給付金案内」を配布して周知したものであるが,周知すべき内容の検討のために文書を作成することまではしていないため,個々の調査の結果を司法修習生に周知するか否かの理由を記載した文書も作成又は取得していない。

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