◯本ブログ記事は,書記官等の事務処理の誤りに伴い国費を支出する場合の基本的な考え方等について(平成31年4月16日付の最高裁判所経理局の事務連絡)をAIで解説したものです。
◯「(AI作成)更正決定等に伴い国費を支出する場合の裁判所の考え方」も参照してください。
目次
第1 はじめに―司法の信頼と事務処理の正確性
第2 任意賠償等に関する基本的な考え方
1 国家賠償法上の責任と任意賠償の要件
2 裁判所内部における意思決定の類型化
第3 予納郵便切手及び保管金の管理と国費による補填
1 予納郵便切手の法的性格と保管・返還義務
2 保管金の管理と損害賠償の方法
第4 地裁及び家裁の判断で処理可能な定型的な類型
1 郵便切手及び収入印紙の亡失・損傷への対応
2 書類の誤送達に関する詳細な支出基準
3 内容物の誤りや送達方法の瑕疵への対応
4 過貼付及び誤送付書類の回収費用の取扱い
第5 高裁の意見を求めるべき高度な判断類型
1 非定型的な事務処理による余剰費用の発生
2 官報公告・BIT掲載・登記嘱託の誤り
第6 実務運用上の留意点と事件進行への影響
1 国費負担検討と事件進行の切り離し
2 最高裁判所への報告体制
第7 結びに代えて―弁護士の皆様への実務的助言
第1 はじめに―司法の信頼と事務処理の正確性
裁判所という組織において,書記官をはじめとする職員の事務処理は,極めて高い正確性が求められます。しかしながら,人間が介在する以上,稀に事務処理上の過誤が生じることは避けられません。
そのような際,皆様が予納された切手や保管金が無駄に費消されてしまった場合,裁判所はどのように責任を取り,どのように国費をもって補填しているのか。これは実務家として非常に気になるところではないでしょうか。本日は,平成31年4月16日付で最高裁判所経理局から発出された事務連絡に基づき,その「舞台裏」にある基準を詳解いたします。
裁判所の内部基準を知ることは,トラブル発生時の迅速な対応や,依頼人への正確な説明につながります。本稿では,実務的な視点から解説を加えていきます。
第2 任意賠償等に関する基本的な考え方
1 国家賠償法上の責任と任意賠償の要件
裁判所職員が職務上の行為において,本来なすべき事務を怠り,あるいは誤った行為をして第三者に損害を与えた場合,国家賠償法上の賠償責任が生じます。通常,国家に対する損害賠償は訴訟を通じて確定させますが,定型的なミスについては,あえて訴訟を経ることなく,裁判所が自発的に賠償を行う「任意賠償」という仕組みがあります。
本件文書によれば,任意賠償を行うための要件は次の3点に集約されます。
第一に,当該行為について職員の過失が明らかであることです。
第二に,当該行為による損害の額が客観的に確定していることです。
第三に,被害者が任意賠償を求めることが確実であることです。
これら3つの条件が満たされた場合,裁判所は和解的な解決として,国費からの支出を認めます。これは,国民の利便性と司法行政の信頼維持を両立させるための合理的な運用と言えます。
2 裁判所内部における意思決定の類型化
事務処理のミスが生じるたびに最高裁判所の判断を仰いでいては,現場の対応が遅れてしまいます。そこで本件文書では,現場の地裁や家裁の判断で即座に処理できる類型と,高裁の意見を聴取すべき類型を明確に分けています。
この類型化により,軽微かつ明白なミスについては,書記官や事務局の判断で迅速に切手の補填や金銭賠償が行えるようになっています。
第3 予納郵便切手及び保管金の管理と国費による補填
1 予納郵便切手の法的性格と保管・返還義務
皆様が訴訟提起時等に予納される郵便切手は,民事訴訟費用等に関する法律という会計法令の特則に基づいています。裁判所は,これを適切に管理し,目的に従って使用し,余剰があれば返還する法的義務を負っています。
裁判所内部では,「予納郵便切手の取扱いに関する規程」が適用され,厳格な管理が行われています。もし,書記官の過失によってこの切手が無駄にされた場合,それは本来の目的外の費消となります。この場合,国家賠償法上の損害賠償権が発生したものとして,国費による補填が行われるのです。
2 保管金の管理と損害賠償の方法
保管金についても同様の考え方が適用されます。保管金は現金として会計法令に基づき管理されます。書記官のミスによって保管金が無駄に費消された場合,納付者に対して金銭で賠償することが原則となります。
ただし,面白い運用として,直接納付者に現金を渡すのではなく,郵便局や印刷局といったサービス提供者に対して,裁判所が直接国費で支払う方法も認められています。これにより,当事者の手を煩わせることなく,実質的な原状回復を図ることが可能となっています。
第4 地裁及び家裁の判断で処理可能な定型的な類型
1 郵便切手及び収入印紙の亡失・損傷への対応
裁判所が預かった切手や印紙を,書記官が紛失したり,誤って破いてしまったりした場合です。原因が相手方にない限り,職員の過失の有無を問わず,直ちに裁判庁費という国費で同額の切手等を購入し,補填します。
誤って消印を押してしまった場合も,法律上は「損傷」と同等に扱われ,同様の補填がなされます。これは,裁判所の保管責任を厳格に捉えた結果です。
2 書類の誤送達に関する詳細な支出基準
実務で最も発生しやすいのが,宛先の書き間違い等による誤送達です。本件文書では,以下のようなケースを地裁・家裁の判断で国費負担できるものとして列挙しています。
(1) 宛先の誤記
住所,氏名,会社名などの単純な記載ミスです。これにより正しく届かなかった場合,誤送達に要した費用と同額の切手が国費で補填されます。
(2) 届出事項の看過
送達場所の届出や住所変更届,あるいは弁護士事務所の移転通知が提出されているにもかかわらず,これを見落として旧住所に送ってしまった場合です。
(3) 法令上の特殊な送達ルールの失念
民事訴訟法104条3項による送達場所固定効を見落として別の場所に送った場合や,被収容者への送達で刑事施設の長を名宛人にしなかった場合などが含まれます。
また,「嘱託回送不可」や「本人渡し」といった付記を忘れたことで送達が完遂できなかった場合も,国費負担の対象となります。
3 内容物の誤りや送達方法の瑕疵への対応
(1) 封入書類の取り違え
被告宛の書類を原告に送ってしまった,あるいは呼出状の期日を書き間違えたといったケースです。内容物の不備によって送達が無効となる場合は,その費用を国費で負担します。
特筆すべきは,空の封筒を送ってしまったという,一見あり得ないようなミスも明確に規定されている点です。あらゆる事態を想定して基準が作られていることがわかります。
(2) 送達方法の選択ミス
特別送達に付すべきものを普通郵便で送った場合や,既に送達済みであるにもかかわらず,重複して送達を行ってしまった場合です。これらも無効な送達として,国費による賠償の対象となります。
4 過貼付及び誤送付書類の回収費用の取扱い
(1) 郵便切手の過貼付
書記官が郵便料金を計算し間違え,必要以上に多くの切手を貼ってしまった場合です。この過貼り分も国費で補填されます。ただし,郵便法に基づき郵便局から還付を受けられる場合は,裁判所が速やかに還付手続きを行うこととされています。
(2) 誤送付書類の回収費用
誤って他人の書類を送ってしまった場合,それを回収するための郵送費用は,司法行政上の事務として当然に国費から支出されます。これは当事者の損害賠償というより,裁判所自らの後始末として処理されるものです。
第5 高裁の意見を求めるべき高度な判断類型
1 非定型的な事務処理による余剰費用の発生
地裁・家裁だけでは判断できず,上級庁である高裁の判断を仰ぐべきケースがあります。その代表例が,「本来一括で送るべき書類を別々に送ったために,余計な郵送料がかかった」というようなケースです。
この場合,高裁は「一括で送ることが法令上の義務か」,あるいは「そうしないことが過失と言えるほど一般的な事務慣行か」という観点から,慎重に過失の有無を判断します。差額分が賠償の対象となります。
2 官報公告・BIT掲載・登記嘱託の誤り
執行や破産の実務に関わる非常に重要な類型です。
(1) 嘱託書類の送付ミス
登記嘱託書を管轄違いの法務局に送ってしまった場合です。送り直しの費用だけでなく,間違って送られた法務局が,返送用切手を使って書類を戻してきた場合,その切手代も国費で補填されます。
(2) 公告内容の誤記
官報の掲載内容にミスがあり,訂正公告ややり直しが必要になった場合です。この際,損害額の算定は「実際にかかった全費用」から「正しい手続きに本来要したはずの費用」を差し引いて算出されます。
例えば,やり直し費用が当初の掲載費と同額であれば,やり直し分を国費で賄うことで,当事者の負担をゼロにします。
(3) 掲載中止の通知漏れ
競売事件の取下げがあったにもかかわらず,BIT(不動産競売物件情報サイト)への掲載中止を忘れ,余計な掲載料が発生してしまった場合です。これは裁判所の不作為による過失であり,発生した掲載料は国費で賠償されます。
(4) 重複公告や分離公告
同じ公告を二度出してしまった場合や,同時に出すべき2つの公告(例えば破産廃止と免責許可)を別々に出してしまった場合です。これらにより生じた余剰な費用は,国費負担の対象となります。
第6 実務運用上の留意点と事件進行への影響
1 国費負担検討と事件進行の切り離し
ここが皆様に最もお伝えしたい点です。裁判所の内部で「これは国費で出せるミスか」を検討している間,事件を止めても良いのかという問題があります。
本件文書の結論は明確です。「国費負担の可否の検討結果は,事件の進行に何ら影響するものではない」としています。
したがって,ミスによって切手代が不足し,次の手続きが進められない場合,原則として当事者に対して追納を求めることになります。後日,国費負担が認められた段階で,精算されるという流れになります。
ただし,裁判体の判断により,検討が終わるまで手続きを一時留保することも運用上はあり得ます。もし皆様の受任案件でこのような事態が生じた際は,この基準を念頭に,書記官と協議されるのがよろしいでしょう。
2 最高裁判所への報告体制
地裁や高裁で行われた国費支出は,定期的に最高裁判所へ報告されます。これは,どのようなミスが全国で起きているかを統計的に把握し,マニュアルの改訂や職員教育に役立てるためです。
司法行政という観点からは,単なる金の支払いにとどまらず,組織としての再発防止に繋げることが究極の目的となっています。
第7 結びに代えて―弁護士の皆様への実務的助言
事務処理の過誤は,あってはならないことですが,起こり得る現実です。今回ご紹介した基準は,いわば裁判所の「誠実さの裏付け」でもあります。
書記官からミスを告げられた際,感情的にならずに「本件は事務連絡に基づく国費補填の対象になりますか」と冷静に問いかけることで,円滑な解決が図れることも多いはずです。
また,依頼人に対しては,「裁判所のミスではありますが,法に基づき適切に費用は補填されます。事件の進行にも大きな支障はありません」と説明することで,司法全体への不信感を最小限に食い止めることができます。
本稿が,皆様のプロフェッショナルな実務を支える一助となれば幸いです。
司法の適正な運用は,裁判所と弁護士の相互理解の上に成り立っています。今後も,このような実務に直結する内部基準の透明化に努めてまいりたいと考えております。