労働関係

職業安定法及び採用活動に関するメモ書き

目次
第1 職業安定法に関するメモ書き
1 職業紹介事業の許可制
2 ハローワークインターネットサービス
3 社員紹介制度
4 職業紹介事業に係る法令・指針
5 その他
第2 採用活動に関するメモ書き
1 公正な採用選考
2 求職者等の個人情報の取得制限
3 その他
第3 関連記事その他

1 職業紹介事業の許可制
(1) 求人及び求職の申込みを受け,求人者と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんするという意味での職業紹介事業(職業安定法4条1項)を営むためには,管轄都道府県労働局を経由して,厚生労働大臣の許可を受ける必要があります(職業安定法30条1項及び33条1項の他,厚生労働省HPの「職業紹介事業制度の概要」参照)。
(2) 職業安定法4条1項(成立時の職業安定法5条1項)の「雇用関係」とは,必ずしも厳格に民法623条の意義に解すべきものではなく,広く社会通念上被用者が有形無形の経済的利益を得て一定の条件の下に使用者に対し肉体的,精神的労務を供給する関係にあれば足ります(最高裁昭和29年3月11日判決)。

NBL1241の倉重公太朗ほか「採用分野における法務・人事の共創(下)」は、採用選考時のSNS裏垢チェックや当該チェック結果に基づく内定取消の法的問題点(個情法、職安法等)について考察されており良い。上・下とも労働実務家必読としたい。

— そらまめ (@sollamame) June 13, 2023

2 ハローワークインターネットサービス
・ ハローワークインターネットサービスには,「仕事をお探しの方へのサービスのご案内」及び「事業主の方へのサービスのご案内」とかが載っています。

3 社員紹介制度
(1) 社員紹介制度と労働基準法6条及び職業安定法40条との関係については,BUSINESS LAWYERS HPの「社員紹介制度における法的な問題はどこにあるか」が参考になります。
(2)    単発で社員候補者を紹介した社員に対し,就業規則に基づく賃金等として支払うのであれば,問題ありません。

4 職業紹介事業に係る法令・指針
・ 厚生労働省HPの「職業紹介事業に係る法令・指針」には以下の資料が掲載されています。
① 職業安定法

(続きを読む...)

総括安全衛生管理者,安全管理者,衛生管理者及び産業医並びに安全衛生推進者及び衛生推進者

目次
1 総論
2 総括安全衛生管理者,安全管理者,衛生管理者及び産業医
3 安全衛生推進者及び衛生推進者
4 労働安全コンサルタント試験及び労働衛生コンサルタント試験の試験区分
5 関連記事その他

1 総論
(1) 総括安全衛生管理者等は選任が必要な状態になった日から14日以内に選任し,かつ,労基署に報告する必要がありますところ,厚生労働省HPに「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告」が載っています。
(2) 安全衛生推進者及び衛生推進者については労基署への報告義務はないものの,選任が必要な状態になった日から14日以内に選任する必要があります(労働安全衛生法施行規則12条の3第1項1号)。

2 総括安全衛生管理者,安全管理者,衛生管理者及び産業医
(1) 総括安全衛生管理者(労働安全衛生法10条)は,建設業,運送業等については100人以上の事業場で必要となり,製造業等については300人以上の事業場で必要となり,その他の業種では1000人以上の事業場で必要となります(労働安全衛生法施行令2条)ところ,当該事業場においてその事業の実施を実質的統括管理する権限及び責任を有する者(例えば,支店長及び工場長)から選任する必要があります。
(2) 安全管理者(労働安全衛生法11条)は,50人以上の事業場で必要となりますし,建設業等については300人以上の事業場で専任の安全管理者が必要となります(労働安全衛生法施行令3条)ところ,産業安全に関する実務経験又は労働安全コンサルタントの資格が必要になります。
    また,新たに安全管理者を選任する場合,従来の学歴と実務経験に加え,厚生労働大臣が定める安全管理者選任時研修を修了している必要があります(労働安全衛生法施行規則5条)。
(3) 衛生管理者(労働安全衛生法12条)は,50人以上の事業場で必要となります(労働安全衛生法施行令4条)ところ,衛生管理者免許,衛生工学衛生管理者免許,医師,歯科医師,労働衛生コンサルタント等の資格が必要になります。
    なお,製造業,運送業等の衛生管理者については第二種衛生管理者免許では足りません。
(4) 産業医(労働安全衛生法13条)は,50人以上の事業場で必要となります(労働安全衛生法施行令5条)ところ,医師であることに加え,労働衛生コンサルタント試験(試験区分は保健衛生)に合格していること等が必要になります。
(5) 東京労働局HPの「共通 3 「総括安全衛生管理者」 「安全管理者」 「衛生管理者」 「産業医」のあらまし」が参考になります。

3 安全衛生推進者及び衛生推進者
(1) 安全衛生推進者又は衛生推進者(労働安全衛生法12条の2)は,10人以上の事業場で必要となります(労働安全衛生法施行規則12条の2)ところ,労働安全コンサルタント又は労働衛生コンサルタント等でない限り,事業場に専属の者を選任する必要があります(労働安全衛生法施行規則12条の3第1項)し,関係労働者に氏名を周知させる必要があります(労働安全衛生法施行規則12条の4)。
(2) 建設業,運送業,製造業,自動車整備業等の業種の場合,安全衛生推進者が必要となり,その他の業種の場合,衛生推進者が必要となります。
(3) 安全衛生推進者及び衛生推進者は,都道府県労働局長の登録を受けたもの(例えば,公益社団法人労務管理教育センター)が行う講習(安全衛生推進者養成講習及び衛生推進者養成講習)の修了者でもなることができます。

4 労働安全コンサルタント試験及び労働衛生コンサルタント試験の試験区分
(1) 労働安全コンサルタント試験の試験区分は機械,電気,化学,土木及び建築です。
(2) 労働衛生コンサルタント試験の試験区分は保健衛生及び労働衛生工学です。

弊所武内による法律事務所アルシエンのコンセプト解説【勤務弁護士に求めるものは売上でも受任率でもなくパートナーを時間的に楽にしてくれること】を公開しました。アソシエイトに期待するのは売上ではないという話をしています。https://t.co/rGymIzwwLq

(続きを読む...)

公益通報制度に関するメモ書き

目次
1 総論
2 令和4年6月1日施行の改正公益通者保護法の概要
3 消費者庁の指針に関するパブコメへの意見
4 消費者庁の指針及びその解説
5 消費者庁が指針に関して内閣法制局に説明していた内容
6 公益通報制度に関する弁護士会の懲戒事例
7 関連記事その他

1 総論
(1) 公益通報者保護法(平成16年6月18日法律第122号)は平成18年4月1日に施行されました。
(2) 公益通報者保護制度は,国民生活の安心や安全を脅かすことになる事業者の法令違反の発生と被害の防止を図る観点から,公益のために事業者の法令違反行為を通報した事業者内部の労働者に対する解雇等の不利益な取扱いを禁止するものです(厚生労働省HPの「公益通報者の保護」参照)。
(3) 消費者庁消費者制度課が令和2年2月及び3月に内閣法制局に提出した,公益通報者保護法の一部を改正する法律案に関する説明資料及び用例集を掲載しています。

公益通報者保護法の一部を改正する法律案 説明資料(令和2年3月の消費者庁消費者制度課の文書)を掲載しています。https://t.co/ENpSNqvJHE pic.twitter.com/kvozqSsC8Y

— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) March 19, 2023

2 令和4年6月1日施行の改正公益通者保護法の概要
(1) 令和4年6月1日に改正公益通報者保護法が施行された結果,例えば,以下のとおり取扱いが変わりました(消費者庁HPの「公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号)」参照)。
① 常時使用する労働者の数が300人を超える事業者は,内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備等(窓口設置,調査,是正措置等)を義務付けられることになりました(法11条1項及び2項)。
② 公益通報対応業務従事者は,通報者を特定させる情報について刑事罰(30万円以下の罰金)を伴う守秘義務を負うことになりました(法12条及び21条)。
③ 退職後1年以内の労働者のほか,役員も公益通報者として保護されることになりました(法2条1項1号及び4号参照)。
④ 公益通報に伴う損害賠償責任が免除されることになりました(法7条)。
・ 通報先が事業者内部(法律事務所等を含む。)である場合,通報対象事実が生じ,又はまさに生じようとしていると思料する場合であれば,損害賠償責任が免除されます。
・ 通報先が行政機関又はその他の事業者外部(例えば,報道機関及び消費者団体)の場合,一定の保護要件を満たす必要があります。
(2) 東弁リブラ2022年10月号の「どう変わった?公益通報者保護法-改正による実務への影響-」には,公益通報対応業務従事者の守秘義務を履行する上での留意点等が書いてあります。

3 消費者庁の指針に関するパブコメへの意見
(1) E-GOVパブリック・コメントの「「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(案)」等に関する意見募集の結果について」の「寄せられた意見の概要」18頁ないし24頁記載の意見は,公益通報制度の問題点を詳しく記載したものになっています。
(2) 上記のパブコメに寄せられたコメントは196件でありますところ,項目別の件数としては,①従事者として定めなければならない者の範囲が23件,②公益通報対応業務における利益相反の排除に関する措置が21件,③公益通報対応業務の実施に関する措置が20件,④労働者及び役員並びに退職者に対する教育・周知に関する措置が20件,⑤内部公益通報受付窓口の設置等が18件,⑥範囲外共有等の防止に関する措置が12件となっています(デロイトトーマツHPの「第1回 11条指針の公表~パブリックコメントに見る社会の関心事~」参照)。

(続きを読む...)

高年齢者雇用安定法に関するメモ書き

目次
1 総論
2 定年引き上げの経緯
3 高年齢者雇用継続給付の最大給付率
4 継続雇用
5 役職定年
6 関連記事その他

1 総論
(1) 中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法(昭和46年5月25日法律第68号)は,昭和61年4月30日法律第43号によって,「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」という名前に変わりました。
(2) HRドクターHPに「高齢者の雇用延長|継続雇用制度における再雇用制度と勤務延長制度の違いとは?」が載っています。

2 定年引き上げの経緯
・ 定年引き上げの経緯は以下のとおりです。
① 昭和61年10月1日に60歳定年が努力義務となりました。
② 平成2年10月1日に65歳までの再雇用が努力義務となりました。
③ 平成10年4月1日に60歳定年が義務となりました。
④ 平成12年10月1日に65歳までの高年齢者雇用確保措置が努力義務となりました。
⑤ 平成18年4月1日に高年齢者雇用確保措置が義務化となりました(当初は62歳までであり,平成25年4月以降は65歳までとなりました。)。
⑥ 平成25年4月1日に継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みが廃止されました(ただし,労使協定がある場合,令和7年度までの間,継続雇用制度の対象者を限定できます。)。
⑦ 令和3年4月1日に70歳までの高年齢者就業確保措置が努力義務となりました(厚生労働省HPの「シニア世代の“仕事力”を引き出す―改正高年齢者雇用安定法が4月から施行―」参照)。

3 高年齢者雇用継続給付の最大給付率
・ タヨログの「【2025年4月施行】雇用保険法に基づく高年齢雇用継続給付の縮小により、企業が受ける影響とは?」には「現行では高年齢者の60歳〜65歳までの賃金が60歳到達時の61%以下になった場合、減少額の15%相当額が該当の被保険者に支給されます。2025年4月以降は、雇用保険から給付される高年齢者雇用継続給付の最大給付率が15%から10%に引き下げられることが決定しました。」と書いてあります。

4 継続雇用
(1) 最高裁平成24年11月29日判決は,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条2項所定の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準に基づく再雇用の制度を導入した事業主とその従業員との間に,当該制度に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係の存続が認められた事例です。
(2) 福岡高裁平成29年9月7日判決(判例秘書掲載)は,高年齢者雇用安定法の趣旨に反する事業主の行為,例えば,再雇用について,極めて不合理であって,労働者である高年齢者の希望・期待に著しく反し,到底受け入れがたいような労働条件を提示する行為は,継続雇用制度の導入の趣旨に反した違法性を有するものであり,事業主の負う高年齢者雇用確保措置を講じる義務の反射的効果として65歳まで安定的雇用を享受できるという法的保護に値する利益を侵害する不法行為となり得るとされた例です。
    結論として,時給が半分以下となり,月額賃金が約4分の1となったことについて,100万円の慰謝料の支払を命じました。

(続きを読む...)

男女雇用機会均等法に関するメモ書き

目次
1 総論
2 昭和61年3月31日以前の女性保護
3 募集・採用,配置・昇進についての差別解消
4 深夜業の解禁
5 坑内労働の解禁
6 セクハラ等の防止
7 セクハラ等に関する判例
8 妊娠・出産等を理由とした不利益取扱いの禁止
9 女性労働者に対する積極的差別解消措置
10 国際婦人年
11 女子差別撤廃条約
12 関連記事その他

1 総論
(1) 男女雇用機会均等法は,勤労婦人福祉法(昭和47年7月1日法律第113号)の一部改正により成立しました(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律(昭和60年6月1日法律第45号)参照)。
(2) 男女雇用機会均等法制定後の大きな改正法は以下のとおりです。
① 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律(平成9年6月18日法律第92号)
→ 原則として平成11年4月1日施行でした。
② 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律(平成18年6月21日法律第82号)
→ 原則として平成19年4月1日施行でした。
(3) 男女雇用機会均等法の制定当初の名称は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」でしたが,平成11年4月1日以降は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」となっています。
(4) ①勤労婦人福祉法が施行された昭和47年7月1日以降は「勤労婦人」という表現であり,②男女雇用機会均等法が施行された昭和61年4月1日以降は「女子労働者」という表現であり,③改正男女雇用機会均等法が施行された平成11年4月1日以降は「女性労働者」という表現になっています。

2 昭和61年3月31日以前の女性保護
(1) 男女雇用機会均等法は昭和61年4月1日に施行されましたところ,それ以前の女性保護は以下のとおりでした(厚生労働省HPの「男女雇用機会均等法の変遷」参照)。
① 残業:原則として1日2時間,週6時間,1年150時間まで
② 深夜業(夜10時から昼5時まで):原則禁止。一部の業務のみOK
③ 危険有害業務:ボイラー,クレーン等の取扱い,5メートル以上の高所作業,深さ5メートル以上の穴の中の作業その他の禁止
④ 帰郷旅費支給の義務付け

(続きを読む...)

残業代請求訴訟における仮執行宣言に基づく仮払い後の取扱い

目次
第1 仮払い日以降の遅延損害金は発生しないこと
1 「解除条件付きの弁済」という考え方
2 請求異議訴訟における取扱い
第2 源泉徴収のタイミングは「仮払い日」であること
1 所得の認識時期に関する最高裁の考え方
2 民事上の効力発生日との関係
3 従業員の逆転敗訴が確定した場合の処理
第3 源泉徴収の対象
1 総論
2 残業代の元本(給与所得)
3 遅延損害金(雑所得)
4 付加金(一時所得)
第4 未払残業代を「賞与」として源泉徴収することについて
1 原則的な取扱い
2 実務上許容される取扱い
3 従業員との関係で留意点
4 源泉徴収税額に関する合意が成立しなかった場合の対応
第5 賞与としての源泉徴収の方法
1 計算の前提
2 具体的な計算ステップ(前月の給与支払がない場合)
3 具体的な計算例
第6 その他

* 本ブログ記事はAIの出力内容をベースとしたものです。

第1 仮払い日以降の遅延損害金は発生しないこと

結論として、仮執行宣言付判決に基づく支払(以下「仮払い」という。)が元本に充当される以降、その充当された元本に対する仮払い日以降の遅延損害金は発生しないと解される。

(続きを読む...)

時間外労働,休日労働及び深夜労働並びに残業代請求

目次
第1 総論
第2 労働基準法上の労働時間の意義
第3 労働時間の管理
第4 36協定
第5 時間外労働
第6 休日労働
第7 深夜労働
第8 割増賃金の基礎となる賃金
第9 管理監督者
第10 残業代請求
第11 固定残業代
第12 歩合給と残業代
第13 関連記事その他

第1 総論
1 使用者は,労働者に時間外労働,休日労働,深夜労働を行わせた場合,法令で定める割増率以上の率で算定した割増賃金を支払う必要があります(時間外労働又は休日労働につき労働基準法37条1項・労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(平成6年1月4日政令第5号),深夜労働につき労働基準法37条4項。)。
2(1) 割増賃金率は時間外労働が25%以上(1か月60時間を超える時間外労働については50%以上),休日労働が35%以上,深夜労働が25%以上です。
(2) 休日労働の割増賃金が35%となったのは平成6年4月1日です。
(3) 1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金が50%となったのは平成22年4月1日です(厚生労働省HPの「労働基準法の一部改正法が成立~平成22年4月1日から施行されます~」参照)。
3 割増賃金は,1時間当たりの賃金額×時間外労働,休日労働又は深夜労働を行わせた時間数×割増賃金率で計算されます。
4 残業時間の削減方法につき,社会保険労務士はなだ事務所HPの「ノー残業の労務管理術」が参考になります。
5(1) 平成11年3月31日までは,女性労働者については原則として,一定の時間を超える時間外労働のほか,休日労働及び深夜労働が禁止されていましたが,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律(平成9年6月18日法律第92号)により,これらの制限が撤廃されました。
(2) やまがた労働情報HPに,「3.労働時間などに係る女性保護規定について」が載っています。

第2 労働基準法上の労働時間の意義
1 労働基準法32条の労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,右の労働時間に該当するか否かは,労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって,労働契約,就業規則,労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではありません(三菱重工業長崎造船所事件に関する最高裁平成12年3月9日判決)。
2(1) 大星ビル管理事件に関する最高裁平成14年2月28日判決は,ビル管理会社の従業員が従事する泊り勤務の間に設定されている連続7時間ないし9時間の仮眠時間が労働基準法上の労働時間に当たるとされた事例です。
(2) 大林ファシリティーズ事件に関する最高裁平成19年10月19日判決はマンションの住み込み管理員が所定労働時間の前後の一定の時間に断続的な業務に従事していた場合において,上記一定の時間が,管理員室の隣の居室に居て実作業に従事していない時間を含めて労働基準法上の労働時間に当たるとされた事例です。

(続きを読む...)

従業員の健康診断

目次
1 健康診断の実施
2 雇入時の健康診断
3 定期健康診断
4 健康診断実施後の措置
5 健康診断を受けている間の賃金
6 関連記事その他

1 総論
(1) 労働者を雇い入れた場合,事業主は健康診断を行う必要があります(労働安全衛生法66条・労働安全衛生規則43条)。
(2) 事業主は,1年以内ごとに1回,労働者の健康診断を行う必要があります(労働安全衛生法66条・労働安全衛生規則44条)。
(3) RELO総務人事タイムズHPに「健康診断の代行業者を活用する。業務負担軽減に役立つ代行業者3社」が載っています。

2 雇入時の健康診断
(1) 栃木労働局HPの「定期健康診断等について」には以下の記載があります。
 パート・アルバイトについても、次の1~3までのいずれかに該当し、かつ1週間の所定労働時間が同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上であるときは、健康診断を実施する必要があります。
 なお、4分の3未満であっても、1週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の概ね2分の1以上であるときは、健康診断を実施することが望ましいとされています。
1. 雇用期間の定めのない者
2. 雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年以上(注)使用される予定の者
3. 雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年以上(注)引き続き使用されている者
(注)特定業務従事者(深夜業、有機溶剤等有害業務従事者)にあっては6ヶ月以上 
(2) 例えば,「雇入れ時健康診断 大阪市」でグーグル検索すれば,大阪市内で雇入れ時健康診断を実施している医療機関を調べることができます。

3 定期健康診断
(1) 定期健康診断の項目は以下の11項目です(労働安全衛生規則44条1項のほか,BeHealthの「健康診断の義務(実施・負担・把握・報告・保管)について」参照)。
(調査事項)
一 既往歴及び業務歴の調査
(検査事項)
二 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
三 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査

(続きを読む...)

同一労働同一賃金

目次
1 総論
2 同一労働同一賃金に関する最高裁判例
3 無期雇用フルタイム労働者は同一労働同一賃金の対象外であること
4 派遣労働者の同一労働同一賃金
5 福利厚生施設の利用の機会の付与
6 関連記事その他

1 総論
(1) 令和2年4月1日の同一労働同一賃金の導入は,①同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と②非正規雇用労働者(有期雇用労働者,パートタイム労働者及び派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すものであります(厚生労働省の「同一労働同一賃金特集ページ」参照)。
(2)ア ①正規雇用労働者と非正規雇用労働者の業務内容に違いがあれば,違いに応じた賃金を支払うというのが均衡待遇であり,②「職務内容」並びに「職務内容及び配置の変更の範囲」の2点で同じ業務内容であれば同じ賃金を支払うというのが均等待遇です(株式会社夢テクノロジーHPの「人事担当者が知っておきたい同一労働同一賃金:均等待遇と均衡待遇」参照)。
イ ①均衡待遇は,平成25年4月1日施行の労働契約法20条(有期雇用労働者を対象としたもの)及び平成27年4月1日施行の改正パートタイム労働法8条(短時間労働者を対象としたもの)で定められるようになりました。
    ②均等待遇は,平成20年4月1日施行の改正パートタイム労働法9条(短時間労働者を対象としたもの)で定められるようになりました。
ウ 独立行政法人日本スポーツ振興センターが被告となった東京地裁令和3年1月21日判決(判例秘書掲載)では,令和2年4月1日施行のパートタイム・有期雇用労働法8条(不合理な待遇の禁止)は旧労働契約法20条の内容を明確にして統合したものであるから. 同条に関する当事者の主張をパートタイム・有期雇用労働法8条の主張と整理した上で、判断されています。
エ 派遣労働者と派遣先の通常の労働者とに係る均等待遇を定めた改正労働者派遣法30条の3第2項は令和2年4月1日に施行されました。

賞与と同一労働同一賃金の問題は大阪医科薬科大学事件(最判R2.10.23)以降、基幹業務じゃない、異動もない等、「だって人材活用面が違うやん?」という説明が定着しつつありまして。あと正社員登用制度があって「区分が固定的でない」ってことも、よくポイントとして機能しております(大阪地判R5.6.8)。

— 弁護士リチャードソン (@Richaso_Law) October 19, 2023

2 同一労働同一賃金に関する最高裁判例
(1)ア 労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止を定めたものであり,令和2年4月1日以降のパートタイム・有期雇用労働法8条に相当する条文です。)に基づく同一労働同一賃金に関する最高裁判例としては以下のものがあります(東京都労働相談情報センターHPの「2-2-2 同一労働・同一賃金をめぐる最高裁判所判例」参照)。
① 最高裁平成30年6月1日判決(ハマキョウレックス事件)
→ 原告はドライバーとして働く有期雇用労働者であり,通勤手当,皆勤手当,休職手当,作業手当及び無事故手当を支給しない待遇差は不合理であるとされました。
② 最高裁平成30年6月1日判決(長澤運輸事件)
→ 原告は定年後に再雇用された嘱託乗務員であり,精勤手当及び時間外手当を支給しない待遇差は不合理であるとされました。
③ 最高裁令和2年10月13日判決(大阪医科大学事件)
→ 原告はアルバイト職員であり,賞与のほか,私傷病による欠勤中の賃金を支給しない待遇差は不合理ではないとされました。
④ 最高裁令和2年10月13日判決(メトロコマース事件)
→ 原告は有期労働契約社員であり,退職金を支給しない待遇差は不合理ではないとされました。
⑤ 最高裁令和2年10月15日判決(日本郵便事件。東京,大阪及び佐賀があります。)

(続きを読む...)

職場におけるハラスメント防止に関するメモ書き

目次
1 総論
2 パワハラ関係
3 パワハラに関する懲戒処分の最高裁判例
4 関連記事その他

1 総論
(1) 職場におけるパワーハラスメントとは,職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって,②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより,③労働者の就業環境が害されるものであり,①から③までの要素を全て満たすものをいいます(厚生労働省HPの「2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!」参照)。
(2) 職場で発生しやすいハラスメントとしては,セクシュアルハラスメント(セクハラ),パワーハラスメント(パワハラ),マタニティハラスメント(マタハラ),アルコールハラスメント(アルハラ)及び時短ハラスメント(ジタハラ)があります(弁護士法人ALG&Associates HPの「職場でのハラスメントを防止するために取るべき対応策」参照)。

パワの方は仕事との絡みがあるからまだ言い訳が聞きやすいんやけど、セクの方は基本職場に必要ない行為やからフォローしにくい。
しかも、迎合的言動にすぎないってことで同意も同意誤信の弁解も通りにくい。
当職に言わせると、職場の異性に手を出すってのは自殺行為に等しい。 https://t.co/6NtlZ3kNZJ

— 弁護士A (@NOlHT1yemE0873v) September 4, 2024

以前は

裁判所の周囲に
お手頃な定食屋、ちょこっと引っかけられる角打ち的なお店もあった

①昼休みが1時間→45分化
②コロナでの飲み会文化衰退
③パワハラセクハラ気にして課や係、支部での職員同士の楽しい飲み会淘汰で

ほとんど閑古鳥に

さみしい時代

昔はアフター 5の裁判所職員も楽しかった

(続きを読む...)

年次有給休暇に関するメモ書き

目次
第1 総論
1 年次有給休暇の付与
2 時季指定権及び時季変更権
3 不利益取扱いの禁止
第2 労働者の時季指定権
1 総論
2 労働者の時季指定権の限界
3 その他
第3 使用者の時季指定義務及び計画年休
1 使用者の時季指定義務
2 年次有給休暇の計画的付与
3 その他
第4 使用者の時季変更権
1 総論
2 勤務割による勤務体制が取られている場合の時季変更権
3 使用者の時季指定権行使を適法とした最高裁判例
第5 年次有給休暇の賃金及び買取
1 年次有給休暇の賃金
2 年次有給休暇の買取
第6 年次有給休暇と休業補償給付及び傷病手当金との関係
1 年次有給休暇と休業補償給付との関係
2 年次有給休暇と傷病手当金との関係
第7 関連記事その他

第1 総論
1 年次有給休暇の付与
(1) 雇入れの日から6か月間継続勤務し,全労働日の8割以上出勤した労働者に対しては最低10日の年次有給休暇を与える必要があります(労働基準法39条1項)。
(2) 通常の労働者の年次有給休暇の日数は、その後、勤続年数が1年増すごとに所定の日数を加えた年次有給休暇を付与しなければならないのであって,勤続6年半以上の場合,毎年20日の年次有給休暇を与える必要があります(労働基準法39条2項)。 
2 時季指定権及び時季変更権

(続きを読む...)

有期労働契約に関するメモ書き

目次
1 契約期間中の解雇等
2 無期転換ルール
3 雇い止め
4 有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準
5 関連記事その他

1 契約期間中の解雇等
(1) 使用者は,有期労働契約について,やむを得ない事由がある場合でなければ,その契約期間が満了するまでの間において,労働者を解雇することはできません(労働契約法17条1項)。
(2) 使用者は,有期労働契約について,その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして,必要以上に短い期間を定めることにより,その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければなりません(労働契約法17条2項)。

なんとなく有期契約の方が辞めてもらいやすい、とかいう雰囲気があるかもですが、「更新の期待が出ている事案」では、辞めてもらうためのハードルは全然下がらないのです。まして期間途中の解雇となると、「やむを得ない事由」が必要なので、ハードルはかえって高くなるのです(労契法17条1項)(続く)。

— 弁護士リチャードソン (@Richaso_Law) July 7, 2023

2 無期転換ルール
(1) 無期転換ルール(労働契約法18条)とは,同一の使用者との間で,有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに,労働者の申込みによって無期労働契約に転換されるルールです。
(2) 厚生労働省HPに有期契約労働者の無期転換サポートサイト~無期転換を円滑にサポートします~が載っています。

3 雇い止め
(1) パート,アルバイト,契約社員及び派遣社員等の有期労働契約者のうち,以下のいずれかに当たる場合,労働契約法19条に基づく雇い止め法理が適用されます(jinjer Blogの「労働契約法19条に定められた「雇止め法理の法定化」とは?」参照)。
① 過去に反復更新された有期労働契約で,その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの
② 労働者において,有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの
(2) 厚生労働省HPの「有期労働契約の新しいルールができました 労働契約法改正のあらまし」に,「参考3 雇止めに関するこれまでの裁判例の傾向」が載っています(リンク先のPDF16頁)。

社内暴力事案でも経緯、内容、傷害の程度、事件後の反省や再発可能性の程度を考慮して解雇無効とする例があります。本件のような有期契約の場合は期間中は雇用を継続することが原則とされ、途中の解雇は特にハードルが高いです。

以下もご参照下さい。https://t.co/aBmCRO3cm5 https://t.co/yAj7H7AGwh

— 弁護士 西川暢春 弁護士法人咲くやこの花法律事務所 新刊『問題社員トラブル円満解決の実践的手法』 (@nobunobuno) June 18, 2023

(続きを読む...)

労働安全衛生法に関するメモ書き

目次
1 労働安全衛生法の概要
2 労働者の労働時間の状況の把握義務
3 労働災害防止計画
4 その他

第2 労働安全衛生法に関するメモ書き
1 労働安全衛生法の概要
    厚生労働省HPの「安全・衛生」には「労働安全衛生法の概要」として以下の記載があります。
・ 事業場における安全衛生管理体制の確立
 総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医等の選任
 安全委員会、衛生委員会等の設置
・ 事業場における労働災害防止のための具体的措置
 危害防止基準:機械、作業、環境等による危険に対する措置の実施
 安全衛生教育:雇入れ時、危険有害業務就業時に実施
 就業制限 :クレーンの運転等特定の危険業務は有資格者の配置が必要
 作業環境測定:有害業務を行う屋内作業場等において実施
 健康診断 :一般健康診断、有害業務従事者に対する特殊健康診断等を定期的に実施
・ 国による労働災害防止計画の策定
 厚生労働大臣は、労働災害を減少させるために国が重点的に取り組む事項を定めた中期計画を策定。
※ 労働安全衛生法のほか、労働安全衛生分野の法律として、じん肺法や作業環境測定法がある。
2 労働者の労働時間の状況の把握義務
(1) 平成31年4月1日以降,事業者は,タイムカードによる記録,パソコン等の電子計算機の使用時間の記録その他の適切な方法により,労働者の労働時間の状況を把握しなければならなくなりました(労働安全衛生法66条の8の3及び労働安全衛生規則52条の7の3のほか,労務SEARCHの「【社労士監修】労働時間の把握が義務化!企業の管理方法や罰則は?」参照)。
(2)ア 厚生労働省HPの「働き方改革関連法により2019年4月1日から「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されます」の6頁及び7頁に,平成31年4月1日以降に実施すべき具体的な勤務時間の把握方法が書いてあります。
イ 厚生労働省HPの「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について」(平成30年12月28日付の厚生労働省労働基準局長の通知)8頁ないし11頁に,労働時間の状況の把握に関する問答が載っています。
(3) 労務事情2022年11月1日号に「〈Q&A〉労働時間管理に関する実務対応」及び「〈Q&A〉自動車管理に関する法的留意点」が載っています。
(4)ア 最高裁平成26年1月24日判決は,募集型の企画旅行における添乗員の業務につき,労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとされた事例です。
イ 最高裁令和6年4月16日判決は, 外国人の技能実習に係る監理団体の指導員が事業場外で従事した業務につき,労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例です(つまり,「労働時間を算定し難いとき」に当たる可能性があるということです。)。

意識高く「自分で仕事を生み出す」と言う人のほとんどは、実際には余計な仕事・やらなくてもいい仕事を無限に量産して自己満足してるだけで、大して利益に貢献してないように見えます。どちらかというと、価値があるのは「仕事を減らすこと」「3人でやっていた仕事を1人で回せるようにすること」です。

(続きを読む...)

労働協約

目次
第1 総論
第2 労働協約の有効期間
第3 労働協約の規範的部分及び債務的部分
第4 労働協約の規範的効力の限界
第5 労働協約の拡張的効力
第6 ユニオン・ショップ協定
第7 就業規則と一体となった労働協約
第8 労使協定と労働協約の違い
第9 関連記事その他

第1 総論
1 労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は,書面に作成し,両当事者が署名し,又は記名押印することによってその効力を生じます(労働組合法14条)。
2(1) 労使間の合意文書の表題が「覚書」,「了解事項」等の名称であっても,労働組合法14条に該当すれば,労働協約となります。
(2) 団体交渉議事録であっても労使双方が署名したものであれば,その内容によっては労働協約と解されることがあります。

第2 労働協約の有効期間
1 労働協約には,3年を超える有効期間の定めをすることができませんし(労働組合法15条1項),3年を超える有効期間の定めをした労働契約は,3年の有効期間を定めた労働協約とみなされます(労働組合法15条2項)。
2 有効期間の定めがない労働協約は,90日前に予告することで解約できます(労働組合法15条3項及び4項)。

第3 労働協約の規範的部分及び債務的部分
1(1) 労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準は労働協約の規範的部分といいますところ,この部分に違反する労働契約の部分は無効となります(労働組合法16条)。
(2) 労働協約の規範的部分としては,賃金(額の決定・支払方法,定期・臨時の昇給,賞与),退職金,労働時間,休日・休暇,安全衛生,職場環境,災害補償,服務規律,人事異動,昇進,休職,解雇,定年制,福利厚生,職業訓練などを定めた部分があります(労働組合対策室HPの「労働協約 規範的効力と債務的効力」参照)。
(3) 以下の理由に基づき,個別の労働契約において労働協約の定める労働条件を上回ることは許されないと解されています(ユニオン対策に強い弁護士による無料相談HPの「労働協約の内容よりも労働者に有利な個別契約を締結することはできますか?」参照)。
① 労働基準法13条が「基準に達しない労働条件」と定めているのと異なり,労働組合法は16条は「基準に違反する労働契約の部分」と定めていること
② 企業別に締結されることが多い日本の労働協約は,労働条件を直接設定することを意図している場合が多いこと
③ 個別の労働契約において労働協約の定める労働条件を上回ることが認められた場合,使用者は,厄介な組合員に対し,労働協約で定めた労働条件よりも有利な労働条件を提示するなどして労働組合の弱体化を図る可能性があること
2 労働組合と使用者の関係を定めた部分を労働協約の債務的部分といいますところ,労働協約の債務的部分としては,非組合員の範囲,ユニオンショップ,便宜供与(在籍専従・組合事務所・掲示板・組合休暇など),労使協議制,団体交渉のルール(委任禁止事項・団体交渉の時間なと),平和条項(労働協約の有効期間中に労働協約に定める事項の改廃を目的とした争議行為を行わないという条項)などを定めた部分があります(労働組合対策室HPの「労働協約 規範的効力と債務的効力」参照)。

第4 労働協約の規範的効力の限界

(続きを読む...)

「労働者性」の判断基準

目次
1 労働基準法における「労働者性」の判断基準
2 労働組合法における「労働者性」の判断基準等
3 労災保険法における「労働者性」の判断事例
4 在宅勤務者が雇用保険の被保険者となる場合
5 関連記事その他

1 労働基準法における「労働者性」の判断基準
(1) 労働基準法における「労働者性」の判断基準の概要は以下のとおりです(業務委託契約書の達人HPの「労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)(昭和60年12月19日)とは」参照)。
ア 「使用従属性」に関する判断基準
① 「指揮監督下の労働」であること
a. 仕事の依頼,業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
b. 業務遂行上の指揮監督の有無
c. 拘束性の有無
d. 代替性の有無(指揮監督関係を補強する要素)
② 「報酬の労務対償性」があること
イ 「労働者性」の判断を補強する要素
① 事業者性の有無
② 専属性の程度
(2)ア  最高裁平成8年11月28日判決は,車の持込み運転手が労働基準法及び労災保険法上の労働者に当たらないとされた事例であり,最高裁平成19年6月28日判決は,作業場を持たずに1人で工務店の大工仕事に従事する形態で稼働していた大工が労働基準法及び労働者災害補償保険法上の労働者に当たらないとされた事例です。
イ 最高裁平成17年6月3日判決(関西医科大学事件)は,臨床研修として病院において研修プログラムに従い臨床研修指導医の指導の下に医療行為等に従事する医師は,病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り労働基準法上の労働者に当たるとされた事例です。
(3)ア 一人親方建設業共済会HPに載ってある「労働基準法研究会労働契約等法制部会 労働者性検討専門部会報告 」(平成8年3月)には,建設業手間請け従事者及び芸能関係者について,労働者性の判断基準が書いてあります。
イ 社会保険労務士法人大野事務所HPの「労働基準法における「労働者性」の判断基準」では,「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(令和3年3月26日)」(略称は「フリーランスガイドライン」です。)で示された考え方が図解されています。
(4) 未払い残業代請求の法律相談(2022年9月20日付)261頁には「労蟇法上の労働者に該当すると判断されるリスクが相当程度あると考えられる場合には,業務従事者の労働時間の長さを確認又は推知することができる資料を収集,確保しておくことが必要となります。」と書いてあります。

マニュアルって一部の職人気質の人には馬鹿にされがちだけど、毎回コンスタントにパフォーマンスを発揮するにはマニュアルはむしろ必要不可欠。

むしろ、マニュアルを作らずに経験や勘だけを頼りに活動する方が、パフォーマンスがブレるという点で、顧客に対して不誠実とすら言えるかもしれない。

— ついぶる (@harvey61616) April 13, 2022

(続きを読む...)

労働者派遣法に関するメモ書き

目次
1 労働者派遣法の沿革
2 労働者派遣の禁止業務
3 労働者供給事業の原則禁止
4 労働者派遣契約
5 紹介予定派遣
6 厚生労働省HPの説明
7 労働者派遣と在籍型出向との差異
8 関連記事その他

1 労働者派遣法の沿革
・ ①労働者派遣法が施行された昭和61年当時,労働者派遣業の対象業務は専門知識が必要な13業務(ただし,施行後直ちに3業務が追加されて16業務)とされていて,②平成8年に10業務が追加されて26業務となり,③平成11年に対象業務が原則として自由化され(「対象業務のネガティブリスト化」といいます。),④平成16年に製造業務への派遣解禁及び派遣期間の延長があり,⑤平成24年に日雇い派遣の原則禁止があり,⑥平成27年に派遣期間の上限の3年統一及び労働者派遣事業の許可制への統一があり,⑦令和2年に同一労働同一賃金が導入があり,⑧令和3年に派遣労働者への説明義務の強化がありました(アデコHPの「労働者派遣法とは? 改正の歴史や罰則まで押さえるべきポイントをまとめて解説」参照)。

2 労働者派遣の禁止業務
(1) 労働者派遣の禁止業務としては,港湾運送業務,建設業務,警備業務があり(労働者派遣法4条1項),労働者派遣の原則禁止業務としては病院等における医療関連業務があります(労働者派遣法施行令2条)。
(2) 厚生労働省HPの「労働者派遣事業を行うことができない業務は・・・」には「2 その他労働者派遣事業ができない業務等」として以下の記載があります。
◯ 次の業務は、当該業務について定める各法令の趣旨から、労働者派遣事業を行うことはできません。
① 弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士の業務
② 公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士の業務(それぞれ一部の業務を除きます。)
③ 建築士事務所の管理建築士の業務
◯ 人事労務管理関係のうち、派遣先において団体交渉又は労働基準法に規定する協定の締結等のための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務は、法第25条の趣旨に照らして行うことはできません。
◯ 同盟罷業(ストライキ)若しくは作業所閉鎖(ロックアウト)中又は争議行為が発生しており、同盟罷業や作業書閉鎖に至るおそれの多い事業所への新たな労働者派遣を行ってはなりません。(法第24条、職業安定法第20条)
◯ 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者派遣をすることはできません。(法第58条)

3 労働者供給事業の原則禁止との関係
(1) リクルートスタッフィングHPの「労働者派遣法①|わかりやすく解説「派遣法」の歴史【前編1986〜2004】」には「強制的な労働や搾取が横行した人材ビジネス」として以下の記載があります。
    江戸時代から戦前までの労働者供給は「人貸し」「組請負」などと呼ばれ、供給業者による労働者の不当な支配が伴っていました。雇用関係や責任所在が曖昧だったため、劣悪な労働環境や供給元による賃金の搾取(いわゆるピンハネ)といった問題が蔓延します。これらの問題を受け、戦後1947年に公布された職業安定法第44条により、「労働者供給事業」は原則として禁止されるに至りました。
(2) 大阪労働局HPの「労働者派遣事業の概要」には以下の記載があります。
    労働者派遣事業は、昭和61年の労働者派遣法の施行に伴い改正される前の職業安定法第44条によって労働組合が厚生労働大臣の許可を受けて無料で行う場合を除き、全面的に禁止されていた労働者供給事業(下図 i. 参照)の中から、供給元と労働者との間に雇用関係があり、供給先と労働者との間に指揮命令関係しか生じさせないような形態を取り出し、種々の規制の下に適法に行えることとしたものです。

(続きを読む...)

労働者名簿,賃金台帳及び記録の保存

目次
1 労働者名簿
2 賃金台帳
3 記録の保存
4 関連記事その他

1 労働者名簿
(1) 使用者は,各事業場ごとに労働者名簿を各労働者について調製し、労働者の氏名,生年月日,履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければなりませんし(労働基準法107条1項),記入すべき事項に変更があった場合,遅滞なく訂正しなければなりません(労働基準法107条2項)。
(2)ア 労働基準法施行規則53条1項によれば,労働者名簿には労働者の氏名,生年月日及び履歴のほか,以下の事項を記載しなければなりません。
① 性別
② 住所
③ 従事する業務の種類
④ 雇入の年月日
⑤ 退職の年月日及びその事由(退職の事由が解雇の場合にあっては,その理由を含む。)
⑥ 死亡の年月日及びその原因
イ 常時30人未満の労働者を使用する事業においては,従事する業務の種類を記入することを要しません(労働基準法施行規則53条2項)。

2 賃金台帳
(1) 使用者は,各事業場ごとに賃金台帳を調製し,賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければなりません(労働基準法108条)。
(2)ア 労働基準法施行規則54条1項によれば,賃金台帳には労働者各人別は以下の事項を記入しなければなりません。
① 氏名
② 性別
③ 賃金計算期間
④ 労働日数
⑤ 労働時間数
⑥ 延長した労働時間数,休日労働時間数及び深夜労働時間数
⑦ 基本給,手当その他賃金の種類ごとにその額
⑧ 労働基準法24条1項によって賃金の一部を控除した場合には,その額
イ 延長した労働時間数,休日労働時間数及び深夜労働時間数については,就業規則に基づいて算定する労働時間数をもってこれに代えることができます(労働基準法施行規則54条1項)。
(3) 賃金台帳の様式は,労働基準法施行規則55条及び様式第20号によって定められています(厚生労働省HPの「労働基準法関係主要様式」参照)。

(続きを読む...)

労働保険に関するメモ書き

目次
1 総論
2 労働保険料の納付
3 労働保険の成立手続
4 労災保険の利用と事業主との関係
5 労災保険に関するメモ書き
6 事業主側の雇用保険に関するメモ書き
7 雇用保険資格喪失手続に関するメモ書き
8 労働者側の雇用保険に関するメモ書き
8の2 失業保険の受給期間の延長
9 労働保険事務組合
10 雇用調整助成金
11 自由と正義2022年9月号の「労働事件と雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金保険」,及びその訂正記事
12 労働保険料の計算サイト
13 関連記事その他

1 総論
(1) 労働保険は労働者災害補償保険(労災保険)及び雇用保険とを総称した言葉です。
(2) 保険給付は労災保険と雇用保険で別個に行われているものの,保険料の納付等については一体のものとして取り扱われています。
(3) 被災労働者に100%の過失がある場合であっても,重過失がない限り,労災保険を利用することができます(労災保険法12条の2の2参照)。
(4) 労働災害に該当する場合,健康保険を使用できません(厚生労働省HPの「「労災かくし」は犯罪です。」参照)。

2 労働保険料の納付
(1) 労働保険の保険料は,年度当初に概算で申告・納付し翌年度の当初に確定申告の上精算することになっており,事業主としては,毎年6月1日から7月10日までの間に,前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を併せて申告・納付することになっていますところ,これを「労働保険の年度更新」といいます(厚生労働省HPの「労働保険料の申告・納付」参照)。
(2) 概算保険料額が40万円以上の場合,又は労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合,原則として労働保険料の納付を3回に分割することができます(厚生労働省HPの「労働保険料の申告・納付」参照)。
(3) 労働保険料等の口座振替納付とは,事業主が,労働保険料や石綿健康被害救済法に基づく一般拠出金の納付について,口座を開設している金融機関に口座振替納付の申込みをすることで,届出のあった口座から金融機関が労働保険料及び一般拠出金を引き落とし,国庫へ振り替えることにより,納付するものです(厚生労働省HPの「労働保険料等の口座振替納付」参照)。
(4) 労働保険料に関する勘定科目としては,法定福利費,預り金及び前払費用がありますところ,労働保険料について当初から法定福利費として計上した場合,預り金勘定を使う必要はありません(マネーフォワードクラウド給与の「労働保険料の仕訳の仕方」参照)。

3 労働保険の成立手続
(1) 一元適用事業の場合,以下のとおり労働保険の成立手続を行う必要があります(厚生労働省HPの「労働保険の成立手続」参照)。

(続きを読む...)

就業規則に関するメモ書き

目次
1 総論
2 就業規則の記載事項
2の2 福利厚生と就業規則
3 就業規則の作成手続
4 就業規則の周知及びその法的効果
5 就業規則に基づく懲戒
6 就業規則の変更
7 就業規則で定める基準に達しない労働条件
8 公序良俗違反で就業規則が無効となった事例
9 賞与の支給日に関する就業規則の記載
10 関連記事その他

1 総論
(1) 就業規則は,労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関すること,職場内の規律などについて定めた職場における規則集です(厚生労働省HPの「就業規則を作成しましょう」参照)。
(2) 常時10人以上の労働者を使用する事業場が就業規則を作成し,又は変更する場合,所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります(労働基準法89条柱書)。
(3) 就業規則の一括届出制度は,一括して届け出る本社の就業規則と本社以外の事業場の就業規則が同じ内容であるものに限り利用できます(東京労働局HPの「就業規則一括届出制度」参照)。
(4)ア 賃金規程及び育児介護休業規程のように就業規則に関連するものについても労基署への届出義務があります。
イ みらいコンサルティンググループHPの「相談室Q&A」には「就業規則とは別に定めている規程であっても、就業規則の記載事項に関する規程については、就業規則の一部として届け出をする必要がある」と書いてあります。

2 就業規則の記載事項
(1) 就業規則の絶対的記載事項は以下のとおりです。
① 始業及び終業の時刻,休憩時間,休日,休暇,就業時転換に関する事項
② 賃金の決定,計算及び支払の方法,賃金の締め切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
③ 退職に関する事項(解雇事由を含む。)
(2) 就業規則の相対的記載事項は以下のとおりです。
① 退職手当について,適用される労働者の範囲,決定,計算及び支払の方法並びに支払の時期に関する事項
② 臨時の賃金及び最低賃金額に関する事項
③ 食費、作業用品その他の労働者の負担に関する事項
④ 安全及び衛生に関する事項

(続きを読む...)

労働基準法に関するメモ書き

目次
1 労働条件通知書
2 賃金の減額
3 労働者の賃金請求権の消滅時効期間の延長
4 法定4帳簿
5 賃金支払の5原則
6 解雇
7 解約権留保付雇用契約
8 働き方改革
9 最高裁判所の平成25年度労働実務研究会の結果概要
10 関連記事その他

1 労働条件通知書
(1)ア 使用者は,労働契約の締結に際し,労働者に対して賃金,労働時間その他の労働条件を明示しなければならない(労働基準法15条1項)ところ,厚生労働省HPに「労働条件通知書」が載っています。
イ 労働条件通知書の絶対的記載事項及び相対的記載事項は労働基準法施行規則5条1項で定められています。
(2)ア 平成31年4月1日,労働者の希望があるような場合,FAX,電子メール又はSNSメッセージにより労働条件を通知できるようになりました(労働基準法施行規則5条4項のほか,厚生労働省HPの「平成31年4月から、労働条件の明示がFAX・メール・SNS等でもできるようになります」参照)。
イ 令和6年4月1日,以下の事項が労働条件明示事項に追加されます(厚生労働省HPの「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」参照)。
① 就業場所・業務の変更の範囲
② 更新上限(通算契約期間又は更新回数の上限)の有無と内容
③ 無期転換申込機会及び無期転換後の労働条件
(3) NTTコムオンラインの「給与明細の電子化 労働条件通知書の電子化で業務効率アップ」には以下の記載があります。
    時間や手間をなるべくかけないように工夫し、「労働条件通知書兼雇用契約書」を作成する企業もあります。基本は労働条件通知書で作成し、書類の項目の1つに「そのほか」を設けるのです。「そのほか」の項目には、「社会保険の加入状況」「雇用保険の適用の有無」、そのほかに必要な事項の記載を加えます。さらに、日付や住所、名前などの署名欄スペースも作成して、雇用契約書としての役割も兼ねる書類にします。
(4) 労働政策研究・研修機構HPの「福利厚生と労働法上の諸問題」には以下の記載があります。
    労働契約の締結にあたり, 使用者が労働者に対して明示を義務づけられる労働条件については福利厚生を含めない限定的な取扱いがなされている (同法 15 条, 同法施行規則 (労基則) 5 条)
(中略)
    就業規則その他で支給条件等が定められた福利厚生については, 明示事項のどれかに該当すれば (例えば, 研修補助は 「職業訓練に関する事項」,永年勤続表彰金は 「表彰及び制裁に関する事項」) ,これに含めて明示されるべきことになろう。 また,後述のとおり福利厚生 (給付) でも支給基準が明確で賃金として扱われるもののうち, 住宅手当や家族手当等のように毎月 1 回以上一定期日に支払われる手当 (労基法 24 条 2 項本文参照) は賃金に含めて書面で明示すべき取扱いがされている (平成 11・3・31 基発 168 号) 。 しかし, それ以外の福利厚生については明示の必要はなく, 明示された場合でも明示の内容と事実とが異なっていても,労基法 15 条 2 項による労働契約の即時解除はできないと解される (昭和 23・11・27 基収 3514 号) 。

来年の4月から労働条件明示事項に就業場所・業務の「変更の範囲」が追加されるわけですが、狭くすると異動命令が制限されるし、広くすると均等均衡待遇に寄っていくという、詰め将棋なわけでございます。こちら、その従業員の人材活用の仕組みに沿って、キッチリ、シッカリ考えて明示せねばですな。 pic.twitter.com/Fxq68jr8RA

— 弁護士リチャードソン (@Richaso_Law) April 6, 2023

(続きを読む...)