メインコンテンツへスキップ

裁判所の文書管理・情報公開

大川原化工機事件の担当裁判官が分かる文書はなぜ不開示か――裁判所の存否応答拒否(AI作成)

目次

第1 何が不開示になったのか第2 裁判所が文書の存否を答えない仕組み1 司法行政文書と事件記録2 存否応答拒否と個人識別情報第3 最初の不開示と令和6年の答申1 申出と原判断2 匿名の答申と事件を結び付ける資料3 委員会が原判断を妥当とした理由第4 令和7年の再申出と令和8年の諮問1 再申出から審議まで2 報道機関の取材への対応をどう評価したか第5 保釈請求や担当裁判官が公開資料で分かることとの関係第6 関連PDFで分かること1 裁判所の開示手続をたどる資料2 国賠判決・検察の対応をたどる資料第7 類例と関連記事第8 出典
第1 何が不開示になったのか

大川原化工機事件で,逮捕状,勾留状,勾留延長及び保釈請求の各手続を担当した裁判官の氏名が分かる文書について,東京地裁は,文書があるかどうかを明らかにしないで不開示とした。
東京地裁が答えなかったのは,開示を申し出た文書の存否そのものである。
文書の存否を答えると明らかになるとされたのは,特定の被告人に対して逮捕状が請求された事実や,勾留,勾留延長及び保釈の各請求がされた事実の有無である。 東京地裁の不開示通知書,最高裁判所事務総長の理由説明書

本記事では,令和3年から令和8年までの開示申出,苦情申出,諮問及び答申の資料に基づき,裁判所が文書の存否を答えない仕組みと,事件に関する公開資料との関係を整理する(令和8年11月6日時点)。

第2 裁判所が文書の存否を答えない仕組み
1 司法行政文書と事件記録

裁判所の司法行政文書の開示は,最高裁判所の取扱要綱に基づいて行われる。
行政機関情報公開法は裁判所に直接適用されないが,要綱記第2は,同法5条の不開示情報に相当する情報を不開示の基準としている。
事件記録のように裁判事務に関して保有している文書は,原則として司法行政文書の開示の対象にならず,事件記録の閲覧・謄写はそれぞれの法律が定める手続による。 取扱要綱1~2頁,裁判所の手続案内

2 存否応答拒否と個人識別情報

要綱記第5は,開示の申出があった司法行政文書が存在しているか否かを答えるだけで不開示情報を開示することとなるときは,その存否を明らかにしないで開示しないことができると定めている。
行政機関に対する開示請求については,情報公開法8条が同じ構造の規定を置いている。
本件の申出は,事件を特定した上で各雑事件の担当裁判官が分かる文書を求めたものであったため,存否を答えることによって被告人に関するどの事実が分かるかが問題になった。 取扱要綱記第5,行政機関情報公開法5条1号・8条,令和5年度(情)答申第37号の第6

文書の一部を伏せて開示する部分開示は要綱記第3に,公益上特に必要がある場合の開示は記第4に定められている。
存否応答拒否の通知からは,申出文書を裁判所が保有しているかどうかは分からない。 取扱要綱記第3~5

第3 最初の不開示と令和6年の答申
1 申出と原判断

令和3年12月9日付けの開示申出は,令和4年に2回補正された。
東京地裁所長は,令和5年5月25日,対象文書の存否を答えることは,公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがある情報(情報公開法5条1号後段に相当)を開示することとなるとして,その存否を明らかにしないで不開示とした。
「既済事件一覧表」は,申出の対象文書の例として申出書に挙げられたものである。 東京地裁の令和5年5月25日付け不開示通知書

2 匿名の答申と事件を結び付ける資料

令和5年7月24日付けの諮問は,令和5年度(情)諮問第22号である。
同年7月31日付けの諮問番号通知には,対象となった外為法違反被告事件の2つの起訴日が示されている。
令和6年1月31日付けの答申書の写しの送付状は,同じ諮問に対して同月24日に令和5年度(情)答申第37号がされたことを示している。
裁判所のウェブサイトに掲載された答申は罪名と起訴日を匿名化しているため,事件との対応はこの通知と送付状で確認できる。 諮問番号通知・理由説明書,答申書の写しの送付状と答申書,裁判所のウェブサイトの答申

3 委員会が原判断を妥当とした理由

最高裁判所事務総長の理由説明は,存否を答えると被告人に対する身柄拘束の事実の有無という機微な情報が明らかになるとして,情報公開法5条1号後段に相当するとした。
委員会は,存否を答えることは当該被告人の逮捕状の請求,勾留,勾留延長及び保釈の各請求に関する事実の有無を明らかにすることと同様の結果を生じさせるとして,同号に規定する個人識別情報に相当すると判断し,原判断を妥当とした。 答申第4及び第6

(続きを読む...)大川原化工機事件の担当裁判官が分かる文書はなぜ不開示か――裁判所の存否応答拒否(AI作成)

検察審査会の議決要旨のウェブ掲載―法改正と令和8年の機能改修契約(AI作成)

目次

第1 議決要旨をウェブサイトに掲載するための改修契約第2 605万円の契約に含まれる2つの改修第3 検察審査会法40条の改正との関係第4 議決要旨と議決書全文・事件記録は区別する第5 掲載情報を調べる際の注意点と関連資料第6 出典
第1 議決要旨をウェブサイトに掲載するための改修契約

検察審査会の議決の要旨を,裁判所ウェブサイトに掲載するための機能改修が契約されている。
最高裁判所とキャップジェミニ株式会社との令和8年6月30日付契約に添付された仕様書は,議決要旨の掲載機能を追加することを業務の目的の一つに挙げている。
これにより,掲載機能の整備が具体的な調達の対象になったことが分かる。

ただし,機能の整備を発注したことと,実際に公開を開始したことは別である。
契約書から分かる内容と,法律が定める公表の仕組みを分けて整理する。

第2 605万円の契約に含まれる2つの改修

契約金額は消費税を含めて605万円である。
契約書PDFの9頁にある仕様書は,検察審査会の議決要旨の掲載機能と,判例集・裁判集のデジタル化に対応する裁判例検索の機能改修を,同じ業務の対象としている。
したがって,605万円を議決要旨の掲載だけの費用と説明することはできない。

仕様書が定める作業期間の終期は,令和8年10月30日である。
別紙には要件定義,設計・開発,結合テスト,操作マニュアルの作成,リリース作業等に関する記載があるが,黒塗りされた部分もあり,利用者向け画面の詳細までは読み取れない。
この期限だけから,機能の公開日や検収完了日を特定することもできない。
以上の契約内容は,令和8年6月30日付契約書の2頁,9頁及び15頁~20頁による。

第3 検察審査会法40条の改正との関係

令和7年法律第39号による検察審査会法40条の改正は,議決要旨の公表方法に関係している。
改正規定は,7日間,法務省令で定める方法により,不特定多数の者が議決の要旨を閲覧できる状態に置くことを定める。
これとともに,事務局での書面の掲示又は事務局に設置した電子計算機の画面による閲覧の仕組みも定めている。

この条文は,単に事務局の掲示を電子画面へ置き換える部分と,不特定多数の者が閲覧できる状態に置く部分とを分けて読む必要がある。
今回の契約では,裁判所ウェブサイトへの掲載機能が整備対象になっている。
もっとも,法律の条文自体は具体的な方法を法務省令に委ねており,契約書だけで法令の施行日や適用対象が決まるわけではない。

同法の施行日は,令和9年3月31日までの間において政令で定める日とされている(附則1条本文)。
e-Gov法令検索では,令和8年11月4日時点で,改正後の40条は未施行の規定として掲載されている。

改正法附則9条2項は,改正後の40条を施行日以後にされた議決に適用し,施行日前にされた議決については従前の例によるとしている。
そのため,新しい仕組みが整備されることから,過去の議決要旨がすべて遡ってウェブ公開されると考えることはできない。
条文と経過措置は,情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律の第4条並びに附則1条及び9条2項を参照されたい。

第4 議決要旨と議決書全文・事件記録は区別する

掲載機能の対象として仕様書に書かれているのは,議決の要旨である。
要旨の掲載機能が設けられることは,議決書全文,会議録,審査事件の記録が一括して公開されることを意味しない。

(続きを読む...)検察審査会の議決要旨のウェブ掲載―法改正と令和8年の機能改修契約(AI作成)

ガバメントAI「源内」の回答は行政文書か―個人利用・組織共有と情報公開(AI作成)

目次

第1 源内の回答がすべて同じ扱いになるわけではない第2 行政文書の法律上の定義第3 源内基準が説明している個人利用と組織共有1 職員個人の利用にとどまる場合2 業務のために共有した場合第4 学習に使わないこととログの保有は別である第5 行政文書に当たることと全部開示は別である第6 組織が決めておきたいこと第7 一次資料
第1 源内の回答がすべて同じ扱いになるわけではない

行政機関の職員が生成AIを使った場合,その回答は情報公開請求の対象になるのか。
結論は,AIが生成したという理由だけで一律に決まるものではない。
誰が何のために作成・取得し,どのように共有・利用され,行政機関が保有しているかを確かめる必要がある。

本記事は,令和8年10月20日制定の源内基準と,行政機関の保有する情報の公開に関する法律を基に,行政文書への該当性と開示の可否を分けて説明するものである。
国会や裁判所の文書公開制度を,この法律だけで説明するものではない。

第2 行政文書の法律上の定義

行政機関情報公開法2条2項は,職員が職務上作成・取得した文書等のうち,組織的に用いるものとして行政機関が保有するものを行政文書とし,電磁的記録も対象に含めている。
同項には除外規定もあるため,職員の端末に何かが存在するという一点だけで,対象文書であると断定することはできない。
AIの出力についても,この要件に即して具体的な状態を検討することになる。

例えば,職員が個人的な試行のために受け取った回答と,担当課内で検討資料として共有した回答とでは,組織的利用の判断に関わる事情が異なる。
正式な決裁を終えたかどうかだけに着目し,検討段階の資料を一律に対象外とするのも適切ではない。

第3 源内基準が説明している個人利用と組織共有
1 職員個人の利用にとどまる場合

源内基準の1-6(印刷20頁・PDF22頁)は,職員が個人として管理し,個人の利用にとどまる回答等について,通常は組織的に用いるものに当たらず,行政文書には該当しないという整理を示している。
ここで大切なのは,個人としての管理と利用にとどまるという条件である。
AIが作ったから行政文書ではない,という説明ではない。

2 業務のために共有した場合

同じ箇所は,業務上の必要から回答等を同僚に共有し,共有フォルダーやチャンネル等に保存して利用する場合には,行政文書となり得ることも示している。
チャット画面の外に出したかどうかだけでなく,共有先,利用目的,組織としての取扱いを確認する必要がある。

源内基準は,デジタル庁が提供する源内の利用・運用に関する説明である。
行政文書の法的な範囲を独自に変更するものではなく,他のシステムについても,まず法律上の要件から判断する必要がある。

第4 学習に使わないこととログの保有は別である

源内基準には,入力・出力をモデルの学習に利用しないことに関する説明がある。
他方,同基準の3-4(印刷29頁以下)には,認証,利用者,機能,利用日時,モデル,入力・出力等に関するログを,必要な範囲で収集・保存する取扱いも示されている。
したがって,学習に利用しないという説明から,入力・出力の記録自体が存在しないと推定することはできない。

もっとも,保存されるログがあるということと,特定の請求対象に対応する記録が現に残っていることも別である。
具体的な請求を検討する際には,利用時期,対象業務,記録の種類,保存先,保存期間,保有する機関を絞ることが有用である。
これは請求対象を特定するための実務上の提案であり,すべてのプロンプトやログが必ず行政文書となり,永久に保存されるという意味ではない。

(続きを読む...)ガバメントAI「源内」の回答は行政文書か―個人利用・組織共有と情報公開(AI作成)

裁判官の研究会の講師名・講演録は開示されるか―情報公開・個人情報保護審査委員会の答申4件(令和3年度~令和8年度)(AI作成)

目次

第1 本記事の概要第2 裁判所の司法行政文書の開示と答申1 取扱要綱による開示と苦情2 不開示の判断の枠組み第3 答申4件の一覧第4 外部講師の肩書・氏名1 個人識別情報に当たるとされた2 「事業を営む個人」との主張は退けられた3 著書名と講義の動画第5 話題事項とテーマの詳細1 話題事項の提出理由2 見出しの行は開示すべきとされた例第6 講演録とレジュメ1 講師の担当事件に触れた部分2 講師への意見照会3 一覧文書との違い第7 有料の判例情報サービスの論考は開示手続の対象外第8 開示を求める側の実務上の留意点第9 出典
第1 本記事の概要

本記事は,最高裁判所,司法研修所及び東京地方裁判所で裁判官を対象に行われた研究会・勉強会について,講師の氏名,話題事項,講演録及び講義の動画がどこまで開示されるかを,最高裁判所の情報公開・個人情報保護審査委員会の答申4件から整理するものである。
基準日は令和8年10月25日である。

扱う答申は,令和8年度(最情)答申第9号(労働基本・実務研究会),令和7年度(情)答申第108号(東京地方裁判所の「労働問題の研究者とのクロストーク」),令和7年度(最情)答申第51号(行政基礎研究会・行政実務研究会)及び令和3年度(最情)答申第2号(生活保護基準引下げの事案を含む研究会)である。
外部講師の氏名は,いずれの答申でも行政機関情報公開法5条1号の個人識別情報に相当するとして,不開示が妥当とされた。
話題事項の提出理由や,講演録のうち講師の担当事件に触れた部分も,同条6号の支障を理由に不開示が妥当とされた。
他方で,話題事項の見出しの行は開示すべきとした答申(令和7年度(情)答申第108号)もある。

裁判官研修の全体像は裁判官研修実施計画で,答申の調べ方は情報公開の答申を調査・引用する方法―公表答申書,頁番号,判断主体及び射程の確認で説明している。

第2 裁判所の司法行政文書の開示と答申
1 取扱要綱による開示と苦情

裁判所の司法行政文書の開示は,「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱」(以下「取扱要綱」という。)に基づいて行われている。
令和8年度(最情)答申第9号によれば,取扱要綱記第2に定める開示の申出に対する判断について,取扱要綱記第11の1に定める苦情が申し出られると,取扱要綱記第11の3に定める諮問がされる。
この諮問に対して判断を示すのが,情報公開・個人情報保護審査委員会の答申である。

2 不開示の判断の枠組み

答申は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「行政機関情報公開法」という。)5条の各号に定める不開示情報に「相当する」かどうかという形で判断している。
本記事の答申で問題になったのは,個人識別情報(5条1号),法人等の正当な利益を害するおそれがある情報(5条2号イ)及び事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(5条6号)である。

第3 答申4件の一覧
答申答申日対象となった研究会等委員会の結論令和8年度(最情)答申第9号令和8年4月30日最高裁判所又は司法研修所で平成31年4月から令和6年3月までに行われた労働事件等に関する勉強会・研究会一部不開示の原判断は妥当令和7年度(情)答申第108号令和8年3月9日東京地方裁判所で令和2年4月から令和6年3月までに行われた労働事件等に関する勉強会・研究会原判断は妥当だが,話題事項の見出しの行は開示すべき令和7年度(最情)答申第51号令和8年1月16日司法研修所の行政基礎研究会及び行政実務研究会(令和6年9月24日から同月26日まで)一部不開示は妥当,全部不開示は結論において妥当令和3年度(最情)答申第2号令和3年5月20日平成26年度行政基礎研究会Ⅰ及び同年度行政実務研究会の講演録・レジュメ苦情の対象部分を不開示とした原判断は妥当
第4 外部講師の肩書・氏名
1 個人識別情報に当たるとされた

令和8年度(最情)答申第9号は,外部講師の肩書及び氏名について,「これらの情報は法5条1号に規定する個人識別情報に相当し、同号ただし書イからハまでに掲げる情報に該当する事情は認められない。」とした。
令和7年度(情)答申第108号と令和7年度(最情)答申第51号も,講師の肩書及び氏名について同じ判断をしている。

2 「事業を営む個人」との主張は退けられた

令和8年度(最情)答申第9号の苦情申出人は,講師は著名な労働法又は労働問題等の研究者で,著作物の執筆や講演活動を事業として行っているから,講師の肩書及び氏名は「事業を営む個人の当該事業に関する情報」に当たると主張した。
最高裁判所事務総長は,外部講師は機関に所属する研究者等であって「事業を営む個人」に当たらないと説明した。
委員会は,「見分結果を踏まえても本件不開示部分1及び4が「事業を営む個人の当該事業に関する情報」に該当するとは認められない。」とした。

令和7年度(情)答申第108号でも同じ主張が退けられている。
同答申では,クロストークは100名を超える裁判官が参加できるから5条1号ただし書イに当たるとの主張もあったが,事務総長は,限られた者を対象として開催された非公開のものであると説明し,委員会も,ただし書イからハまでに掲げる情報に該当する事情は認められないとした。

3 著書名と講義の動画

(続きを読む...)裁判官の研究会の講師名・講演録は開示されるか―情報公開・個人情報保護審査委員会の答申4件(令和3年度~令和8年度)(AI作成)

公用車の情報公開―車種・車検証・契約書の開示と警備上の不開示(AI作成)

目次

第1 公用車の情報は一律に非公開ではない1 最高裁判所長官車と法務大臣車の違い2 本記事の原資料第2 裁判所の開示申出と情報公開法を区別する1 裁判所は行政機関情報公開法の対象機関に含まれない2 通知書にある「不開示情報に相当する」の意味第3 長官車の開示例で分かる部分開示1 車検証の車両番号等2 契約書の代表者印影第4 法務大臣車に関する答申第286号1 何が争われたか2 法務省の説明と審査会の判断3 結論は5条4号であり,6号の判断はしていない第5 開示資料を調べる際に整理する項目1 文書と項目を具体的にする2 不存在と内容の不開示を分ける第6 関連記事
第1 公用車の情報は一律に非公開ではない
1 最高裁判所長官車と法務大臣車の違い

最高裁判所長官車については,令和元年の開示により,車種・取得価格・取得年月日,車検証の一部,売買契約書の一部等が明らかになった。
一方,法務大臣車の契約書・車検証をめぐる令和2年度(行情)答申第286号では,車種を特定し得る情報や装備・仕様に関する情報について,より広い範囲の不開示が妥当とされた。

両者を比べるときは,対象機関,利用者の職責,対象文書,不開示とされた具体的な項目を分けて読む必要がある。
公用車であるという理由だけで,すべて開示又はすべて不開示になるわけではない。

2 本記事の原資料

最高裁判所長官車の情報提供資料・車検証(令和元年6月21日付け通知を含む):
https://yamanaka-bengoshi.jp/wp-content/uploads/2019/06/最高裁判所長官の公用車の調達価格,調達時期及び車種が分かる文書,並びに車検証.pdf

最高裁判所長官車の売買契約書(令和元年9月18日付け開示通知を含む):
https://yamanaka-bengoshi.jp/wp-content/uploads/2019/09/最高裁判所長官の公用車に関する売買契約書(平成25年12月24日付).pdf

令和2年度(行情)答申第286号(令和2年9月29日):
https://www.soumu.go.jp/main_content/000708563.pdf

第2 裁判所の開示申出と情報公開法を区別する
1 裁判所は行政機関情報公開法の対象機関に含まれない

裁判所の公式案内は,裁判所が行政機関情報公開法の対象機関に含まれないことを明記したうえで,司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱に基づく手続を案内している。
裁判所の開示申出を,同法に基づく行政機関への開示請求と同一の手続として説明するのは正確ではない。

司法行政文書の開示手続(裁判所公式):
https://www.courts.go.jp/about/jouhoukoukai_kojinjouhouhogo/sihougyouseibunsyokaijitetuduki/index.html

2 通知書にある「不開示情報に相当する」の意味

長官車の車検証に関する開示通知書(PDF実頁3頁)は,車両番号等について,行政機関情報公開法5条4号・6号に定める不開示情報に相当すると説明している。
ここでは「同法が裁判所に直接適用された」と書き換えず,裁判所の通知書が示した基準と理由として読む。

裁判所の開示に関する取消訴訟と処分性は,別の記事で扱っている。
https://yamanaka-bengoshi.jp/2018/01/14/hukaiji/

第3 長官車の開示例で分かる部分開示
1 車検証の車両番号等

長官車の通知書は,車両番号等について,公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれと,警備上の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれを示している。
開示された車検証には黒塗り部分がある一方,車名,型式,乗車定員,寸法,重量等を読める部分もある。

この開示例は,当該通知時点の当該文書についての取扱いである。

(続きを読む...)公用車の情報公開―車種・車検証・契約書の開示と警備上の不開示(AI作成)

裁判所の所持品検査に関する情報公開―検査方法・免除者・契約書の不開示(AI作成)

目次

第1 所持品検査について何が開示されるか第2 大阪高裁の検査案内に関する不開示答申第3 他庁や団体が公表した情報がある場合第4 民間警備業者との契約書の一部不開示第5 全国集計と各庁の公開案内の違い第6 文書の不存在と検査の法的根拠第7 開示資料を調べる際の確認事項第8 関連記事第9 出典
第1 所持品検査について何が開示されるか

裁判所の所持品検査に関する文書は,すべてが開示されるわけでも,すべてが不開示となるわけでもない。
来庁者向けに公開されている案内と,具体的な検査方法・検査除外者・警備体制を記載した文書を区別する必要がある。
本記事では,情報公開・個人情報保護審査委員会の公表答申を中心に,どの文書のどの部分について判断されたのかを整理する。

ここで扱うのは,裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱に基づく開示申出と苦情申出の事例である。
答申に行政機関情報公開法5条の規定が現れるのは,その不開示情報に相当するかが検討されているためであり,行政機関に対する同法上の開示請求・審査請求と手続を混同すべきではない。
また,答申は判決ではなく,理由説明書はそれ自体が委員会の最終判断を示す文書でもない。

入庁時の持込禁止物,検査への協力及び配慮の申出については,裁判所の所持品検査―持ち込み禁止物・検査の流れ・拒否した場合の扱い(AI作成)を参照されたい。

第2 大阪高裁の検査案内に関する不開示答申

令和元年度(情)答申第18号(令和元年12月20日)は,大阪高等・地方・簡易裁判所庁舎の入庁検査について,近畿弁護士会連合会及び大阪弁護士会に通知した平成29年12月12日付文書の一部不開示を妥当とした。
対象はこの特定の通知文書であり,あらゆる裁判所のあらゆる検査案内を不開示とする判断ではない。

委員会は,文書の見分により,不開示部分が入庁検査の実施時間帯や方法,所持品検査の使用機器及び検査除外者に関する事項であると認めた。
その上で,公にすると検査の妨害等を企てられ,危険物の持込み等により裁判所利用者等の生命・身体に危険が及ぶおそれがあり,適正な警備事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとして,行政機関情報公開法5条6号の不開示情報に相当すると判断した。
この判断は公表答申書4頁~5頁に記載されている。

同答申の1頁~2頁には苦情申出人の主張が,2頁~3頁には最高裁判所事務総長の説明が記載されている。
これらを引用する場合は,誰の主張・説明なのかを示し,委員会自身の判断と区別する必要がある。

第3 他庁や団体が公表した情報がある場合

この事例で苦情申出人は,入口の観察で分かること,他の地方裁判所の委員会議事概要や概算要求書等に機器が記載されていること,対象文書が黒塗りのない状態で特定団体のホームページに掲載されていることなどを主張した。
委員会は,観察によって得られる情報からは本件庁舎の運用が推測されるにとどまり,他庁等の公表情報からも,規模や構造等が異なる本件庁舎の運用が明らかになるとはいえないとした。

団体のホームページへの掲載についても,委員会は,仮に掲載されていてもその団体自身の判断によるもので,裁判所が組織として公にしたものではないことを踏まえ,情報の流通拡大がなお警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれにつながるという最高裁判所事務総長の説明を不合理とはいえないとした。
したがって,「どこかで閲覧できる」という事情だけで,本件での不開示事由が当然に消えると判断されたわけではない。
これは本件文書についての判断であり,第三者が公表した情報は常に不開示になるという一般命題でもない。

平成31年3月12日付理由説明書及び令和元年10月4日付補充理由説明書は,この審議において最高裁判所事務総長が提出した説明資料である。
補充理由説明書には,それまで安全が脅かされる事態が発生していないからといって,今後も発生のおそれがないとはいえないとの説明がある。
この記載は事務総長の説明として扱い,正式答申における委員会の判断は4頁~5頁に戻って確認する必要がある。

第4 民間警備業者との契約書の一部不開示

平成30年度(情)答申第1号(平成30年6月15日)は,札幌高裁が所持品検査の実施に関して民間業者と締結した平成29年4月3日付契約書の一部不開示を妥当とした。
平成30年度(情)答申第2号(平成30年7月20日)は,大阪高裁が入庁検査の実施に関して民間業者と締結した契約書の一部不開示を妥当とした。

両答申とも,委員会は対象文書を見分し,不開示部分に警備業務の具体的内容や警備体制が記載されていることを認めた。

(続きを読む...)裁判所の所持品検査に関する情報公開―検査方法・免除者・契約書の不開示(AI作成)

判決要旨を弁護士が受け取るには―申出時期,便宜供与,静岡地裁令和7年11月27日判決,保存及び情報公開(AI作成)

目次
第1 結論
第2 判決要旨の法的位置付け
第3 申出の時期及び申出事項
第4 静岡地裁令和7年11月27日判決
第5 保存及び司法行政文書開示の限界
第6 入手後の使い方
第7 一次資料及び関連記事

第1 結論
1 裁判所が報道機関向けの判決要旨を作成している事件では,民事事件の当事者又は刑事事件の訴訟関係人その他その事件に密接な関係を有する者が,要望により同じ要旨の交付を受けることがあります。
2 ただし,交付は司法行政上の便宜供与であり,報道機関にも当事者等にも,当然の交付請求権があるとは確認できません。作成の有無,交付先,部数,交付時期及び方法は事件ごとに異なります。
3 必要な場合は,判決言渡しの直前ではなく,作成の可能性が分かった段階で,担当部又は総務課に,立場,利用目的,希望部数,希望時期及び個人情報処理の方法を具体的に伝えるのが実務的です。
4 正式な裁判内容は判決書に記載されます。判決要旨は判決書そのものではなく,情報公開手続で後から必ず取得できる資料でもありません。

第2 判決要旨の法的位置付け
1 広報ハンドブック(令和2年3月版)は,報道機関が言渡し後の短時間で正確な記事を作るため,裁判所が要旨又は骨子を提供する便宜供与を説明しています。
2 令和7年度(情)答申第95号は,判決要旨が主として迅速かつ正確な報道のために報道機関へ交付されるものである一方,事件との特別な関係性に照らし,民事事件の当事者又は刑事事件の訴訟関係人等にも,要望を受けて便宜供与として交付されることがあると認定しました。
3 同答申は,報道機関への交付と当事者等への交付が常に連動するわけではないとも説明しています。報道機関に交付されたから当事者等にも当然に交付される,またはその逆であるとは限りません。

第3 申出の時期及び申出事項
1 申出時期
・ 言渡し直前では作成,仮名処理,部数及び裁判体との調整が間に合わないことがあります。著名事件,長時間の判決言渡し又は複雑・長大な判決が予想される場合は,判決期日が指定された後,できるだけ早く相談します。
2 申出先
・ 事件担当部と総務課のどちらが窓口かは庁により異なり得ます。まず担当書記官に,判決要旨の作成予定の有無を断定的に求めるのではなく,交付申出の窓口及び期限を確認するのが安全です。
3 明示する事項
・ 事件番号及び事件名
・ 当事者,代理人,弁護人その他の事件との関係
・ 判決要旨を必要とする理由
・ 希望部数

(続きを読む...)判決要旨を弁護士が受け取るには―申出時期,便宜供与,静岡地裁令和7年11月27日判決,保存及び情報公開(AI作成)

大阪高裁民事部「執務上の留意事項(集約版)」から学ぶ民事訴訟の事故防止(AI作成)

目次第1 資料の位置付けと限界第2 事件・当事者・代理権第3 提出・申出・採否・取調べ第4 期日後の調書・目録第5 送達・期限第6 判決・和解調書を債務名義として点検する第7 秘匿情報・個人番号第8 家事事件の別事件資料第9 紙手続からmintsへの読み替え第10 弁護士向けチェックリスト第11 根拠・資料レベル第12 関連記事

大阪高等裁判所民事部の「執務上の留意事項(集約版)」には,事件表示,送達,証拠目録,調書,判決書及び家事事件の記録などについて,裁判所内部で経験された事務上の事故と確認事項がまとめられています。本記事は,その記載を弁護士側の事故防止策へ読み替えます。ただし,同文書は法令,最高裁判所規則又は裁判例ではなく,掲載PDFの取得経路・真正も本記事作成時点では独立に確認していません。したがって,文書の記載,法的根拠及び本記事の実務提案を区別します。2026年9月16日現在の内容です。

第1 資料の位置付けと限界

対象資料は,平成30年度から令和4年度までの「執務上の留意事項」を集約した,令和6年3月の大阪高等裁判所民事部の文書と表示されています。各項目は,裁判所の内部事務における留意点を示したものであり,当事者又は代理人の手続上の権利義務を直接定めるものではありません。

本記事では,情報の性質を次のように分けます。

法令で確認できる事項―民事訴訟法,民事訴訟規則等に根拠があるもの。
資料の記載―対象資料が過去の事故又は留意事項として述べるもの。
本記事の実務提案―資料の記載から弁護士側の確認工程を導いたもの。
未確認事項―個別の裁判例,現在の全国統一運用又は掲載PDFの来歴について一次資料の確認が終わっていないもの。

第2 事件・当事者・代理権

訴状,答弁書,委任状,登記事項証明書及び裁判所から届いた書面を横断して,次の事項を照合します。

裁判所,部係,事件番号及び事件名
当事者の氏名・名称,住所,本店所在地及び法人番号
代表者の資格,役職及び変更の有無
代理人の委任範囲,復代理及び特別授権の要否
送達場所及び送達受取人

同姓同名,法人の商号変更,合併,代表者変更又は関連事件がある場合には,「名称が似ている」ことを照合の根拠にせず,事件番号と登記事項等の客観的識別子を用います。

第3 提出・申出・採否・取調べ

証拠ファイル又は写しを提出したことと,期日で証拠申出がされ,裁判所が採否を判断し,実際に証拠調べが行われたことは別です。代理人側の管理表には,少なくとも次の欄を分けて設けるのが安全です。

提出日,提出先及び提出方法
相手方への直送又は閲覧可能性

(続きを読む...)大阪高裁民事部「執務上の留意事項(集約版)」から学ぶ民事訴訟の事故防止(AI作成)

最高裁判所裁判官会議議事録の不開示範囲-令和8年度(最情)答申第14号(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 答申の結論3 答申の制度上の位置付け第2 裁判所の情報公開制度との関係1 行政機関情報公開法の直接適用ではないこと2 本件がたどった手続第3 不開示が維持された情報とその根拠1 全40文書の署名及び印影2 栄典事務に関する事項3 裁判官に関する人事関係事項4 裁判官の昇給に関する事項5 特定事件に関する事項6 簡易裁判所判事候補者選考に関する事項7 簡易裁判所判事任命名簿の現職欄8 採用,再採用及び候補者の指名に関する事項9 司法修習生考試に関する事項10 司法修習生採用候補者の総数第4 実務上の含意1 公表慣行の有無は職名ごとに検討されること2 人数だけでも不開示となり得ること3 苦情申出の審査対象は原判断の当否であること第5 本答申から確認できないこと第6 関連記事第7 出典・参考資料1 答申2 制度・法令

最高裁判所の裁判官会議の議事録は,開示の申出があっても全部が開示されるわけではない。
令和8年度(最情)答申第14号は,令和5年度の議事録40文書について,情報の種類ごとに不開示の当否を検討している。

第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

本記事は,最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の令和8年度(最情)答申第14号(令和8年7月13日答申)を対象とし,その判断の枠組みを整理するものである。
答申の原文と,本記事が引用する各リンク先は,令和8年9月9日を基準に確認した。

2 答申の結論

同答申の件名は「特定年度の最高裁判所の裁判官会議の議事録の一部不開示の判断に関する件」である。
令和5年度の最高裁判所裁判官会議議事録について,最高裁判所事務総長が別紙記載の40文書を対象文書として特定し,その一部を不開示とした判断を,委員会は妥当とした。

同答申は,議事録の全体を不開示としたものではない。
不開示部分を情報の種類ごとに区分し,行政機関情報公開法5条1号,2号イ,6号柱書き又は同号ニに規定する不開示情報に相当するかを,それぞれ検討している。

3 答申の制度上の位置付け

本答申は,最高裁判所の判決又は決定ではなく,最高裁判所に置かれた情報公開・個人情報保護審査委員会の答申である。
苦情が申し出られた場合に最高裁判所が同委員会に諮問し,その答申を尊重して対応する仕組みであるから,裁判例と同じ意味で先例として引用することはできない。

諮問日は令和7年12月4日(令和7年度(最情)諮問第43号),答申日は令和8年7月13日である。
原判断は令和7年7月22日付けでされ,委員会は令和8年3月23日に対象文書を見分した上,同年4月17日,5月22日及び6月19日に審議している。

第2 裁判所の情報公開制度との関係
1 行政機関情報公開法の直接適用ではないこと

裁判所は行政機関情報公開法の対象機関ではなく,司法行政文書の開示は,最高裁判所が定めた裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱に基づいて行われる。
そのため答申も,不開示部分が行政機関情報公開法5条各号の不開示情報に「相当する」かという形で判断しており,同法を直接適用したものではない。

2 本件がたどった手続

本件の開示の申出は取扱要綱記第2に定めるものである。
原判断に対する苦情の申出は同記第11の1に,委員会への諮問は同記第11の3に基づく(司法行政文書開示手続参照)。

第3 不開示が維持された情報とその根拠
1 全40文書の署名及び印影

別紙記載1から40までの各文書について,最高裁判所長官及び秘書課長の署名及び印影が,法5条1号に規定する個人識別情報に相当するとされた。
同じく裁判官会議議事録の署名及び印影を法5条1号に該当するとした先例として,平成30年度(最情)答申第32号(平成30年9月21日答申)がある。

平成30年度第32号の第6・1は,対象議事録の署名・印影の固有の形状に文書の真正を示す認証的機能があり,公にすると偽造・悪用等の支障が生じるおそれがあるという説明を,不合理とはいえないと判断した。これに対し,令和8年度第14号の第6・1は,対象40文書の署名・印影が個人識別情報に相当し,ただし書に該当する事情は認められないと述べており,認証的機能や偽造の理由を詳述していない。両答申の理由付けは区別して読む必要がある。

これは裁判所職員の氏名や署名を一律に不開示とする判断ではない。行政機関との比較も,制度と対象文書の機能を確認した上で行う必要がある。具体的な比較は,情報公開で公務員の氏名の不開示を争う方法で整理している。

(続きを読む...)最高裁判所裁判官会議議事録の不開示範囲-令和8年度(最情)答申第14号(AI作成)

裁判所の「不存在」答申の読み方―未作成・非保有・一部開示の区別(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論1 対象と調査の基準日2 最初に確認すべき結論3 答申の制度上の位置付け第2 「不存在」に含まれる四つの経過1 対象文書を作成又は取得していない場合2 探索しても申出時に保有していない場合3 作成後に廃棄され,申出時には保有していない場合4 一部の文書を特定し,残部だけ保有していない場合第3 原答申を読む順序1 申出文書の範囲を確定する2 原判断の説明と委員会の判断を分ける3 探索の対象,方法及び時点を確認する4 件名索引は入口として使う第4 代表例の対照表1 同じ修習日誌でも保有主体で経過が違う2 存否応答拒否は「不存在」の認定ではない第5 文書作成義務との関係1 現行の管理通達2 個別答申との対応第6 関連する資料第7 出典・参考資料1 現行制度・管理資料2 情報公開答申

最高裁判所の情報公開答申で用いられる「不存在」は,申出対象の文書が一度も作成されなかったことだけを意味する表示ではない。
原答申を読むと,未作成・未取得,申出時の非保有,作成後の廃棄,一部の文書を特定した上での残部非保有という異なる経過が含まれている。

第1 この記事の対象と結論
1 対象と調査の基準日

本記事は,最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会が公表した,裁判所の司法行政文書の開示に関する答申の読み方を説明するものである。
第2以下の従来例と制度の整理は令和8年9月9日を基準とし,令和8年10月15日に修習日誌に関する令和元年度・令和5年度の答申を補足した。

同じ文書名でも,保有主体,対象期間及び非保有の理由が異なることがある。
文書の内容を開示しないこと,文書を保有していないこと及び存否を答えないことは分けて読む必要がある。

2 最初に確認すべき結論

答申の件名に「不存在」又は「不存在等」とあっても,その表示だけから,対象情報が一度も文書化されなかったとは判断できない。
申出文書の定義,原判断の理由,探索の対象と方法,作成後の廃棄の有無,別の文書を特定又は開示しているかを原答申本文で確認する必要がある。

3 答申の制度上の位置付け

最高裁判所の司法行政文書開示手続は,行政機関情報公開法ではなく,最高裁判所の取扱要綱に基づく制度である。
開示申出を受けた裁判所は文書を探索し,全部開示,全部不開示又は一部不開示の判断を通知する。

最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会は,平成27年7月1日に設置された外部有識者3人による諮問機関である。
不開示等の判断に対する苦情が申し出られた場合,最高裁判所は同委員会に諮問し,答申を尊重して苦情申出への判断を行うため,答申は判決又は決定とは異なる。

第2 「不存在」に含まれる四つの経過
1 対象文書を作成又は取得していない場合

第1は,申出で特定された種類の文書を作成又は取得していないと説明された場合である。
平成27年度(最情)答申第7号は,視察基本日程案の作成に用いる事務処理要領等について,視察ごとに個別に検討しており,そのような文書を作成又は取得していないとした原判断を妥当とした。

2 探索しても申出時に保有していない場合

第2は,申出を受けて関係するファイルや部署を探索したものの,対象文書が見当たらず,申出時に保有していないと判断された場合である。
平成29年度(最情)答申第47号では,昭和46年4月の司法修習生罷免に係る裁判官会議議事録について,関係ファイルと部署の探索に加え,委員会も昭和44年から昭和48年までのファイルを見分したが,該当議事録は確認されなかった。

この類型で答申が直接示すのは,確認された探索の範囲で申出時の保有が認められないということである。
それだけで,過去の全時点における文書の不存在まで証明されたことにはならない。

3 作成後に廃棄され,申出時には保有していない場合

第3は,関係する文書が過去に作成されたことはうかがえるが,申出時までに廃棄されていた場合である。
平成30年度(最情)答申第40号は,記録謄写業務に公募制を採用した経緯が分かる文書について,平成22年より前の通達改正記録は廃棄され,保有する記録等を探索しても対象文書が見当たらなかったとの説明を踏まえた。

この場合の「不存在」は,当初から文書が作成されなかったことではなく,開示申出の時点で対象文書を保有していないことを示す。

(続きを読む...)裁判所の「不存在」答申の読み方―未作成・非保有・一部開示の区別(AI作成)

判例情報の公開に関する裁判所の説明(平成12年)と司法制度改革審議会意見書(平成13年)とその後の展開(AI作成)

司法(裁判所)が保有する判例・判決情報をどこまで公開するかは,平成11年から平成13年にかけての司法制度改革の中で正面から議論されました。この記事では,平成12年6月13日の第22回司法制度改革審議会で裁判所が示した「司法に関する情報提供・公開の在り方」と,平成13年6月12日の司法制度改革審議会意見書の該当部分を原文で紹介し,そのうえで,裁判所ウェブサイトの裁判例検索の拡張,民事訴訟手続のIT化,民事裁判情報の活用の促進に関する法律(令和7年法律第49号)まで,その後の展開を原典リンク付きで整理します。前半(第2・第3)は当時の資料そのもの,後半(第4)はその後の制度化という構成です。なお,制度の状況は令和8年(2026年)7月時点のものです。

目次

第1 この記事で扱う資料と範囲
第2 平成12年6月13日・第22回司法制度改革審議会での裁判所の説明

1 資料の位置づけ(名称・提出主体・提出日)
2 「3 司法に関する情報提供・公開の在り方」の原文

第3 平成13年6月12日・司法制度改革審議会意見書

1 資料の位置づけ
2 「Ⅳ 国民的基盤の確立 3 司法に関する情報公開の推進」の原文

第4 その後の展開―判例・判決情報の公開はどう進んだか

1 裁判所ウェブサイトの裁判例検索の拡張
2 民事訴訟手続のIT化(令和4年法律第48号)
3 民事裁判情報の活用の促進に関する法律(令和7年法律第49号)
4 当時の説明と現在の到達点の対照

出典

第1 この記事で扱う資料と範囲
取り上げるのは,次の2つの公的資料です。いずれも司法制度改革審議会(平成11年7月発足,平成13年7月まで)に関係する文書で,判例・判決情報の公開について当時の考え方を示しています。

(続きを読む...)判例情報の公開に関する裁判所の説明(平成12年)と司法制度改革審議会意見書(平成13年)とその後の展開(AI作成)

行政機関等に対する情報公開請求の基礎——対象外の書類,審査会,情報公開訴訟,公文書管理法(AI作成)

国の行政機関や独立行政法人等に対する情報公開請求について,根拠となる法律,請求できない書類,不開示決定を争う二つの方法,行政文書の「保有」の立証及び公文書管理法との関係を,条文と最高裁判例,政府の公表資料に当たって整理する。Teamsその他の業務システム内の電磁的記録も行政文書になり得ること,開示請求後の保存期間延長及び不存在とされた場合の探索範囲についても扱う。個別の事件処理の手引ではなく,制度の仕組みと一次資料への入口をまとめた解説である。AIで作成した本記事は2026年9月時点の法令及び公表資料に基づく。

目次

第1 行政機関等に対する情報公開請求の基本

1 対象となる機関と根拠法
2 制度の全体像と施行状況を確認できる総務省の資料

第2 刑事訴訟法53条の2による情報公開法の適用除外

1 「訴訟に関する書類」として適用対象外となること
2 不起訴記録と「訴訟に関する書類」の保管者

第3 不開示決定に対する不服申立てと審査会

1 審査会への諮問と答申
2 審査会のインカメラ審理
3 答申選・活動概況などの参照資料
4 個別答申の原文と判断主体を確認すること
5 審査請求人の手続上の権利と意見書
6 存否応答拒否(行政機関情報公開法8条)

第4 情報公開請求訴訟

1 取消訴訟とインカメラ審理の不存在

(続きを読む...)行政機関等に対する情報公開請求の基礎——対象外の書類,審査会,情報公開訴訟,公文書管理法(AI作成)

裁判事務に関する文書の意義―司法行政文書・裁判文書との違いと国立公文書館への移管(AI作成)

目次

第1 裁判所の事務と文書の区分

1 裁判事務と司法行政事務
2 裁判文書と司法行政文書

第2 「裁判事務に関する文書」の範囲

1 審査委員会が示した定義
2 事件記録・事件書類に限られないこと

第3 司法行政文書の開示請求との関係

1 開示手続の対象は司法行政文書に限られること
2 開示手続の対象外とされた裁判事務に関する文書の例

第4 国立公文書館への移管との関係

1 移管の対象は裁判文書と司法行政文書に限られること
2 移管の経路は内閣総理大臣を経由すること
3 平成28年度答申第24号が示した移管方法の取決めの不存在

出典

(続きを読む...)裁判事務に関する文書の意義―司法行政文書・裁判文書との違いと国立公文書館への移管(AI作成)

司法行政文書の書き方(9訂)の解説(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象資料2 結論第2 9訂の位置付けと主な改訂点1 令和6年12月の改訂2 宛名及び発信者名3 裁判所外字第3 対象となる文書と対象外の文書1 司法行政文書2 裁判事務に関する文書との区別第4 文書作成の目的と分量の決め方1 意思決定過程と事務の実績を跡付ける2 読み手が理解して行動できる文章第5 配字,文書番号及び日付1 文書の種類により配字が異なる2 文書番号と日付第6 用字用語の読み方1 複数の準則を組み合わせている2 「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」第7 弁護士実務での使い方1 裁判所から届く文書の位置付けを読む2 司法行政文書開示で対象を特定する3 弁護士の提出書面へ機械的に転用しない第8 一次資料の確認範囲第9 出典
第1 この記事の対象と結論
1 対象資料

本記事は,司法行政文書の書き方(9訂)(令和6年12月,最高裁判所事務総局秘書課)の本文を確認し,対象,改訂点及び弁護士実務での読み方を整理するものである。
あわせて,司法行政文書の書き方(9訂)も参照されたい。

2 結論

同書は,裁判所内部の司法行政事務に関する文書の作成を扱う手引である。
訴状,準備書面その他の裁判事務に関する提出書面の様式を直接定めるものではない。
そのため,裁判所へ提出する書面に当然に適用される規範としてではなく,裁判所内部の文書がどのような目的及び準則で作られているかを読む資料として位置付ける必要がある。

第2 9訂の位置付けと主な改訂点
1 令和6年12月の改訂

「司法行政文書の書き方(9訂)」は,令和4年12月の8訂から約2年後に改訂されたものである。
はしがきは,主な改訂点として,次の4点を挙げている。
①宛名及び発信者名に関する記載を現行の規範に合わせたこと
②文例の宛名及び発信者名を整理したこと
③付録から廃止通達を削除し,新しい参考通達等を加えたこと
④裁判所外字を使用しない体裁としたこと

2 宛名及び発信者名

令和6年2月22日付け最高裁秘書第395号事務総長依命通達を踏まえ,宛名及び発信者名は,法律等の規定により氏名が必要な場合又は文書の様式・内容その他の事情から氏名を記載することが相当な場合を除き,官職名のみを記載するものとされている。

氏名を記載することが相当な場合の例として,同書は,次の3つを挙げている。
①表彰状,祝辞・挨拶等の儀礼上必要なもの
②外部向けで氏名の記載を要するもの
③特に個人として責任の所在を明らかにすべきもの

「官職名だけ」という原則だけでなく,例外の類型まで読む必要がある。

3 裁判所外字

はしがきは,令和6年7月3日付けデジタル基盤管理官事務連絡が,司法行政事務でも裁判所外字の使用を控えることが望ましいとの考えを示したことを,改訂の背景として挙げている。
9訂自体も,裁判所外字を使用しない体裁とされた。

これに伴い,環境依存文字である括弧付きの数字(「(1)」等)も使用しない体裁とされたが,はしがきは,環境依存文字の使用を控えるよう推奨する趣旨ではないと明記している。
裁判所外字の扱いと,環境依存文字一般の扱いを同一視しないことが重要である。

第3 対象となる文書と対象外の文書

(続きを読む...)司法行政文書の書き方(9訂)の解説(AI作成)

司法行政文書の書き方(9訂)

目次
1 司法行政文書の書き方
2 司法行政文書の形式
3 関連記事その他

* 「(AI作成)司法行政文書の書き方(9訂)の解説」も参照してください。
1 司法行政文書の書き方
・ 司法行政文書の書き方(9訂)(令和6年12月の最高裁判所事務総局秘書課の文書)を掲載していますところ,その中身は以下のとおりです。
(1) 本文
(2) 文例
(3) 付録
・ 司法行政文書の用紙規格及び左横書きについて(平成6年9月1日付の最高裁事務総長の依命通達)
→ 略称は「左横書き通達」です。
・ 司法行政文書の用紙規格及び左横書き実施要領について(平成6年9月1日付の最高裁秘書課長の通達)
→ 略称は「左横書き実施要領」です。
・ 司法行政文書の宛名及び発信者名について(令和6年2月22日付の最高裁事務総長の依命通達)
→ 略称は「宛名及び発信者名通達」です。
・ 司法行政文書におけるよう音及び促音の表記について(昭和63年12月5日付の最高裁秘書課長の通知)
→ 略称は「よう音通知」です。
・ 外来語・外国語の取扱い及び姓名のローマ字表記について(平成13年1月30日付の最高裁秘書課長の通知)
→ 略称は「外来語通知」です。
・ 司法行政文書の宛名等に関する事務処理上の留意事項について(令和6年3月26日付の最高裁秘書課長の事務連絡)
・ 常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)
・ 現代仮名遣い(昭和61年内閣告示第1号)
・ 送り仮名の付け方(昭和48年内閣告示第2号)
・ 外来語の表記(平成3年内閣告示第2号)
・ 公用文における漢字使用等について(平成22年11月30日内閣訓令第1号)
・ 公用文作成の考え方(令和4年1月7日付の文化審議会の建議)
・ 法令における漢字使用等について(平成22年11月30日付の内閣法制局長官の文書)
・ ローマ字のつづり方(昭和29年内閣告示第1号)

(続きを読む...)司法行政文書の書き方(9訂)

最高裁及び法務省から国会への情報提供文書

目次
1 最高裁から衆議院への情報提供文書
2 最高裁から参議院への情報提供文書
3 法務省から参議院への情報提供文書
4 関連記事その他

1 最高裁から衆議院への情報提供文書
(1) 衆議院調査局の依頼文書
令和4年1月の依頼,令和5年1月の依頼,令和6年1月の依頼,
令和7年1月の依頼,令和8年1月の依頼,
* 「委員会決議及び附帯決議の対処状況に関する情報提供について(令和8年1月9日付の衆議院調査局の依頼)」といったファイル名です。
(2) 最高裁からの情報提供文書
令和4年1月の依頼関係,令和5年1月の依頼関係,令和6年1月の依頼関係,
令和7年1月の依頼関係,令和8年1月の依頼関係,
* 「委員会決議及び附帯決議の対処状況に関する,衆議院調査局に対する最高裁の情報提供文書(令和8年1月9日付けの依頼に対するもの)」といったファイル名です。

2 最高裁から参議院への情報提供文書
(1) 参議院法務委員会調査室の資料要求文書
令和4年1月の依頼,令和5年1月の依頼,令和6年1月の依頼,
令和7年1月の依頼,令和8年2月の依頼,
* 「令和8年度予算案関係資料要求(裁判所関係)(令和8年2月16日付の参議院法務委員会調査室の依頼)」といったファイル名です。
(2) 最高裁からの情報提供文書(附帯決議への対処状況を含む。)
令和4年1月の依頼関係,令和5年1月の依頼関係
令和6年1月の依頼関係,令和7年1月の依頼関係
* 「令和8年度予算案関係資料要求(裁判所関係)(令和8年2月16日付の参議院法務委員会調査室の依頼)に基づいて参議院法務委員会に提供した文書」といったファイル名です。

3 法務省から参議院への情報提供文書
(1) 参議院法務委員会調査室の審査要求文書
令和4年1月の依頼,令和5年1月の依頼,令和6年1月の依頼,
令和7年1月の依頼,令和8年2月の依頼,

(続きを読む...)最高裁及び法務省から国会への情報提供文書

プライバシー保護をめぐる裁判所の情報公開・判例・文書管理――最高裁令和2年10月9日判決と司法行政文書開示の判断例(リライト)

AIで作成したこの記事は,「プライバシー保護」を切り口に,裁判所が関与する三つの場面――①司法行政文書の開示請求で不開示とされた判断例,②家庭裁判所調査官の論文・書籍の公表とプライバシー侵害が争われた最高裁令和2年10月9日判決,③裁判官・裁判所職員の文書廃棄義務と家庭裁判所調査官の職業倫理――を,最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の答申,判決文,申合せ・通達といった原典へのリンクとともに整理したものです。個別の法律相談や訴訟手続の手引ではなく,制度と資料の所在を確認するための記事です。

本記事は令和2年10月10日に公開したものに,その後の少年法改正や関係する裁判の経過等を加筆しています。インターネット検索の結果に関する記載は,いずれも公開当時(令和2年10月10日)の状況です。

第1 プライバシー保護に関する司法行政文書開示手続の判断例

1 松山市の20代女性の誤認逮捕に関する文書――逮捕状を出した裁判官の氏名の不開示

(1) 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の答申
(2) 誤認逮捕の事実自体は松山地裁・愛媛県警により公表されていること

2 勾留延長却下に対する準抗告を退けた理由の要旨に関する文書の不開示

(1) 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の答申
(2) 東京地裁が準抗告棄却の理由を公表した経緯

第2 プライバシー保護に関する最高裁令和2年10月9日判決

1 事案の概要

(1) 当事者と請求の内容
(2) 保護事件から論文・書籍の公表に至る経過
(3) 論文・書籍に含まれたプライバシー情報

(続きを読む...)プライバシー保護をめぐる裁判所の情報公開・判例・文書管理――最高裁令和2年10月9日判決と司法行政文書開示の判断例(リライト)

裁判官の訴追請求に関する文書の不開示―最高裁が受領した文書の事例

目次

第1 この不開示事例の対象と読み方第2 理由説明書の記載第3 制度の概要と訴追請求の方法

第1 この不開示事例の対象と読み方

本記事は,裁判官の訴追請求事案について,最高裁判所が訴追委員会から受領した特定の文書に関する不開示判断の理由を紹介する。根拠資料は,令和元年7月26日付の理由説明書である。

以下の説明は,当該開示申出に係る文書についてのものであり,訴追請求に関するあらゆる文書が常に全部不開示となると一般化するものではない。また,この資料だけから当該裁判官が不訴追になったかどうかを判断することもできない。

第2 理由説明書の記載
1 令和元年7月26日付の理由説明書の「2 理由」欄に以下の記載があります。

(1) 開示申出の内容
   裁判官に対する訴追請求事案について,裁判官訴追委員会から受領した文書(直近の事例に関するもの)
(2) 原判断機関としての最高裁判所の判断内容
   最高裁判所は, (1)の開示の申出に対し, 6月24日付けで不開示の判断(以下「原判断」という。)を行った。
(3) 最高裁判所の考え方及びその理由
ア 本件申出に係る文書には,氏名等が記載されており, これらの情報は,行政機関情報公開法(以下「法」という。)第5条第1号に規定する個人識別
情報に相当する。
イ また,本件申出に係る文書には,裁判官訴追委員会(以下「委員会」という。)が具体的な訴追事案に関して審議,決定するために必要な資料収集の
一環として行う調査に係る文書についての情報が記載されているが,かかる情報を含む委員会の議事は全て非公開とされ,例外は設けられていない(裁
判官弾劾法第10条第3項) 。
   これを前提とすると,調査に係る文書についての情報を公にすると,収集の対象となった資料名及び非公開である訴追事案の審議方法の一端が明らかになり,その情報を知った者に無用な憶測を生じさせ,委員会への不当な働き掛けがなされる等,委員会における率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあることに加え,委員会が行う審議の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから,本件申出に係る文書は,全体として法第5条第5号及び同条第6号に定める不開示情報に相当することから,不開示とした。
ウ よって,原判断は相当である。

2 「岡口基一裁判官に対する分限裁判」も参照してください。
第3 制度の概要と訴追請求の方法

訴追委員会の調査と弾劾裁判所の裁判の違いは,弾劾裁判とは―裁判官を罷免する仕組み・手続・過去の事例で説明している。書面を提出する場合は,裁判官の訴追請求状の書き方及び訴追委員会の公式FAQを参照されたい。

岡口基一判事のなりすましツイッターアカウントに関する文書の存否を明らかにすることはできないこと

1 岡口基一判事のなりすましツイッターアカウントに関する文書の存否を明らかにすることはできないとする,令和元年7月12日付の理由説明書の「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」には以下の記載があります。
ア 本件申出に係る文書は,裁判官を含む裁判所職員である可能性のある者の私的領域における活動についての文書であり,そのような文書の作成,取得等の目的や方法は様々であり得るものであって,必ずしも人事管理のためだけに保有するものとはいえないものの,仮に裁判所職員であった場合,裁判所職員の私的領域における活動については,その内容次第では服務規律に違反するものとなり得ることから,人事上の措置等に関する文書となり得る性質を有するものである。そのような性質を有する文書の保有の有無を明らかにすると,人事上の措置の必要性から作成,取得,管理,保存される文書の存否や内容を推認ないし憶測させることになり,人事管理に係る事務に関与する判断権者及び職員に対し,文書の作成,取得,管理,保存について好ましくない影響が生ずる等,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある(法第5条第6号二,平成31年度(情)答申第4号参照) 。
    なお,苦情申出人は,本件ツイッターアカウントが岡口基一判事のなりすましを名乗っていることなどから,裁判官の言動そのものと異なると主張するが,裁判官を含む裁判所職員である可能性のある者の私的領域における活動についての文書であることには変わりがないから,上記の主張は理由がない。
イ よって,裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱記第5に基づき,当該文書の存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相
当である。

2 「岡口基一裁判官に対する分限裁判」も参照してください。

司法行政文書の開示申出で第三者情報がある場合の意見聴取と苦情申出(AIリライト)

第1 まず区別すべき制度1 裁判所への申出は情報公開法上の開示請求ではない2 第三者は裁判所と開示申出人以外の者である3 開示申出人自身の個人情報は別手続である第2 第三者への意見聴取が行われる場面1 第三者情報があるだけで直ちに照会されるわけではない2 対象は第三者が作成した文書に限られない3 現行の意見聴取は適宜の方法で行われる第3 反対意見が提出された後の取扱い1 第三者の反対意見は開示を阻止する拒否権ではない2 開示まで少なくとも2週間を置く3 第三者へ直ちに通知される事項第4 第三者による苦情の申出1 開示判断に対して最高裁判所へ申し出る2 開示前の苦情申出で実施は停止する3 審査委員会の答申と最高裁判所の判断第5 情報公開法13条との関係1 情報公開法13条は行政機関の第三者手続を定める2 情報公開法13条と裁判所の制度では第三者の範囲を分ける3 下級裁判所から国の中央機関等への連絡第6 開示に関する三つの期間を混同しない1 開示又は不開示の通知は原則30日以内である2 実施方法等申出書は開示通知後原則30日以内である3 反対意見がある場合の2週間は別の期間である第7 答申例にみる第三者意見の扱い1 令和2年度(最情)答申第31号の事案2 第三者の反対だけで結論は決まらない第8 平成29年版手引を参照するときの注意1 旧手引は当時の運用を知るための資料である2 旧資料を引用するときは基準時点を明示する第9 出典・参考資料1 根拠規程・法令2 裁判所の案内及び答申3 文献4 関連記事

本記事は,裁判所に対する司法行政文書の開示申出について,対象文書に第三者に関する情報が記録されている場合の現行の取扱いを説明するものである。
調査の基準日は令和8年9月9日であり,同日までに公表された裁判所の取扱要綱,実施細目及び案内ページ並びに現行の情報公開法を確認した。

先に結論を示すと,第三者情報があるだけで常に意見聴取が行われるわけではなく,その情報が不開示情報に当たるか疑義があるときに意見を求める取扱いである。
第三者が反対しても当然に不開示となるわけではないが,裁判所が開示すると判断した場合には,第三者の苦情申出の機会を確保するための通知と待機期間が設けられている。

第1 まず区別すべき制度
1 裁判所への申出は情報公開法上の開示請求ではない

裁判所は行政機関の保有する情報の公開に関する法律の適用対象ではない。
司法行政文書の開示は,最高裁判所が定めた「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱」に基づく独自の開示申出制度として行われる。

ただし,取扱要綱は情報公開法の趣旨を踏まえており,不開示情報についても情報公開法5条所定の不開示情報に相当する情報を基準としている。
したがって,情報公開法は重要な参照対象であるが,裁判所の手続に同法13条が直接適用されるわけではない。

司法行政文書の範囲及び開示申出全体の流れは「裁判所の情報公開――通達・司法行政文書の開示手続と判決情報の公開(AIリライト)」で説明している。

2 第三者は裁判所と開示申出人以外の者である

取扱要綱第9の1は,裁判所及び開示申出人以外の者を「第三者」と定義している。
個人及び民間法人だけでなく,他の国の機関,地方公共団体その他の団体も,裁判所及び当該開示申出人以外であれば第三者となり得る。

問題となるのは,第三者の氏名や名称が記載されているかだけではない。
第三者の権利利益,信用,事業活動,提供した情報その他の第三者に関する情報が記録されている場合が対象となる。

3 開示申出人自身の個人情報は別手続である

司法行政文書開示手続では,開示申出人自身の情報であっても,個人に関する情報は原則として開示されない。
自己の個人情報の開示を求める場合は,司法行政文書開示手続ではなく,裁判所の「保有個人情報開示手続」を利用する必要がある。

第2 第三者への意見聴取が行われる場面
1 第三者情報があるだけで直ちに照会されるわけではない

取扱要綱第9の1によれば,意見聴取が行われるのは,開示申出の対象文書に第三者情報が記録され,かつ,その情報が不開示情報に該当するか否かについて疑義がある場合である。
第三者情報が含まれていても,開示又は不開示の判断が明らかである場合まで一律に意見聴取を行う旨は定められていない。

意見聴取は,第三者に開示の可否を決めさせる手続ではない。
裁判所が不開示情報該当性を判断するために,文書の作成経緯,情報の性質,公表状況及び開示によって生じる具体的な支障等について第三者の説明を得る手続である。

2 対象は第三者が作成した文書に限られない

意見聴取の対象となり得るのは,第三者が作成名義人となっている文書に限られない。
裁判所が作成した通知,報告書又は内部検討資料に第三者情報が記録されている場合も,不開示情報該当性に疑義があれば意見聴取の対象となり得る。

逆に,文書の作成者が第三者であるという形式だけで結論は決まらない。
開示単位となる情報の内容を確認し,情報公開法5条の各不開示情報に相当するかを個別に検討する必要がある。

3 現行の意見聴取は適宜の方法で行われる

現行の実施細目は,第三者に対し,対象となる司法行政文書の名称並びに意見書の提出先及び提出期限を通知し,適宜の方法によって意見を聴くものとしている。
平成29年版の手引で使われていた旧別紙様式第4又は第5が,現在も意見聴取の必須様式であるわけではない。

意見を求められた第三者は,単に「開示に反対する」と述べるだけでなく,どの記載部分が,どの不開示情報に相当し,開示によってどのような支障又は権利利益の侵害が生じるのかを具体的に示すことが重要である。
既に公表された情報であっても,公表範囲,公表時期,現在の入手可能性及び対象文書に付加された未公表情報を分けて説明する必要がある。

第3 反対意見が提出された後の取扱い
1 第三者の反対意見は開示を阻止する拒否権ではない

第三者から開示に反対する意見が提出されても,裁判所がその意見に拘束されるわけではない。
裁判所は,第三者の説明を考慮した上で,不開示情報該当性を自ら判断する。

その結果,全部開示,一部開示又は全部不開示のいずれもあり得る。
第三者が文書を作成したこと,情報提供時に非公表を希望したこと又は開示に反対したことだけで,直ちに不開示となるものではない。

2 開示まで少なくとも2週間を置く

第三者が反対意見を提出したにもかかわらず裁判所が開示すると判断した場合,開示申出人へ開示通知を発送した日と開示実施日との間に少なくとも2週間を置かなければならない。
この期間は,第三者が開示判断に対する苦情を申し出る機会を実質的に確保するためのものである。

2週間は開示までの上限ではなく,最低限の待機期間である。
開示実施前に第三者から適法な苦情の申出があれば,後記のとおり,最高裁判所が原判断の当否を判断するまで開示は実施されない。

(続きを読む...)司法行政文書の開示申出で第三者情報がある場合の意見聴取と苦情申出(AIリライト)

裁判官の記録紛失に関して作成し,又は取得した文書は全部が不開示情報であること

目次
1 裁判官の記録紛失に関して作成し,又は取得した文書は全部が不開示情報であること
2 関連記事

1 裁判官の記録紛失に関して作成し,又は取得した文書は全部が不開示情報であること
(1) 平成31年3月8日付の名古屋地裁の司法行政文書不開示通知書によれば,「伊藤達也判事補が平成30年9月29日又は同月30日にタクシーに乗車した結果,民事事件の記録等を紛失したことに関して作成し,又は取得した文書」は,全体として不開示情報に該当するそうです。
(2) 令和元年6月13日付の理由説明書には,「最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 本件開示申出に係る文書は,特定の裁判官が事件記録等を紛失した件に関して作成し,又は取得した文書であるところ, 当該文書には行政機関情報公開法(以下「法」という。)第5条第1号に相当する個人識別情報が記載されている。また, 当該文書の中には,公になると,法人等の具体的な業務に関する情報が明らかとなるなど,法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの法人等に対する調査結果などが記載されたものがある(法第5条第2号イ) 。
   加えて,一般的に,事件記録を紛失した場合には,人事上の措置を検討する蓋然性が高く,事件記録の紛失に関する調査等に係る文書に記載された情報は,全てが一体として人事上の措置を検討する資料となり得る。このため,当該文書の内容を一部でも明らかにすると,人事上の措置の検討に関する調査手法及び調査結果等が明らかとなり,関係者等から正確な事実関係が確認できなくなるなど,今後の人事管理に支障を及ぼすおそれがある(法第5条第6号二) 。
イ さらに, 当該文書の中に,公になると,報道機関における取材活動の内容が明らかになる等,個々の報道機関の取材活動の存在,取材源の秘匿を基本原則とする報道機関と裁判所との信頼関係を大きく損なうおそれがある情報が全て一体として記載された文書があり, この文書に記載された情報を一部でも公にすると,裁判所の広報事務の遂行を困難にする可能性がある(法第5条第6号柱書) 。
ウ よって, 当該文書に記載されている情報は,全体として法第5条第1号,第2号イ並びに第6号柱書及び同号二に定める不開示情報に相当する。
エ なお,同判事補が平成30年9月29日又は同月30日にタクシーに乗車した結果,民事事件の記録等を紛失した事実は報道されているが,同事実に関して裁判所から何らかの対応をした場合でも,報道機関の責任において当該報道がされたにとどまるのであって,裁判所が上記事実について報道機関に対応したからといって,裁判所として公表したと整理することはできない。
オ 以上より,全体として不開示と.した原判断は相当である。

2 関連記事
・ 裁判官の記録紛失に基づく分限裁判

司法修習生による情報の取扱いや紛失時の確認事項については,司法修習生の情報セキュリティ対策を参照されたい。

令和2年5月26日の衆議院法務委員会の国会答弁資料(検察官の「訓告」処分について,平成29年から令和元年までの3年間について確認したところ,年間平均3~4件であった。)を添付しています。 pic.twitter.com/GIpWVZVoVo

— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) August 8, 2020

裁判所の情報公開――通達・司法行政文書の開示手続と判決情報の公開(AIリライト)

裁判所の情報公開は,行政機関の情報公開とは別の仕組みで運用されています。裁判所は行政機関情報公開法の対象機関ではなく,その保有する「司法行政文書」の開示は,最高裁判所が定める内部規程(要綱・運用要領・通達等)に基づいて行われます。他方,判決そのものの公開は,憲法の裁判公開の原則や自由権規約,判決情報のオープンデータ化という別の制度によって支えられています。

この記事は,裁判所の情報公開に関する通達・要綱等を一覧できるようにまとめたうえで,実務上よく問題になる論点――判決書のうち法解釈を示した部分の取扱い,裁判・判決の公開の原則,判決情報の提供とオープンデータ化,最高裁判所規則や文書内容の真否調査の扱い,期日簿の提供――を,最高裁判所の情報公開・個人情報保護審査委員会の答申,最高裁判例,公的資料に即して整理するものです(最終更新:令和8年10月7日)。

目次

第1 裁判所の情報公開制度の枠組み第2 裁判所の情報公開に関する通達等1 掲載している要綱・運用要領・手引等2 最高裁判所通達通知回答集の目次3 通達の法的性質4 裁判統計数値の文書開示と司法行政上の便宜供与第3 判決書のうち法解釈を示した部分は不開示情報とされていること1 裁判書は司法行政文書開示手続の対象ではないこと2 法解釈を示した部分の不開示(犬の所有権事件の答申)3 なぜ不開示になるのか――個人識別型と部分開示の限界第4 裁判の公開と判決の公開の原則1 自由権規約14条1項による判決公開の保障2 憲法上の裁判公開原則と最高裁判例3 判決を書くことの意義4 自由権規約は不開示情報の範囲を定めるものではないこと第5 判決情報の提供とオープンデータ化1 司法制度改革審議会意見書(平成13年)2 民事司法制度改革の推進と取りまとめ(令和2年・令和3年)3 民事裁判情報の活用の促進に関する法律(令和7年)第6 訴訟記録全部の閲覧等制限と裁判書1 岡部喜代子裁判官の補足意見(最決平成29年1月31日)2 閲覧等制限の抗告審(東京高決平成27年9月11日)第7 最高裁判所規則は開示手続の対象とする必要がないとされていること第8 文書内容の真否の調査は義務付けられていないこと第9 裁判所の期日簿・開廷表の提供1 司法記者への期日簿の提供2 開廷表の掲示(下級裁判所事務処理規則)第10 関連する答申・資料1 事件番号の公表慣行(令和元年度(行情)答申第583号)2 情報公開法5条6号の該当性(最判令和4年5月17日)3 関連資料・関連記事4 開示手続及び文書管理の掲載資料出典第1 裁判所の情報公開制度の枠組み

裁判所は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(行政機関情報公開法)の対象機関ではありません。裁判所が保有する文書のうち,司法行政に関する事務のために用いる「司法行政文書」については,最高裁判所が定める「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱」等の内部規程に基づき,何人でも開示を求めることができます。

開示・不開示の判断に不服がある場合は,最高裁判所に対して苦情を申し出ることができ,最高裁判所の情報公開・個人情報保護審査委員会への諮問を経て答申が出されます。以下で引用する「(情)答申」「(最情)答申」は,この審査委員会の答申です。行政機関を相手方とする情報公開(総務省の情報公開・個人情報保護審査会の「(行情)答申」)とは,根拠も判断機関も異なります。

他方,訴訟記録や判決原本そのものの閲覧・謄写は,情報公開の制度ではなく,民事訴訟法・刑事訴訟法・刑事確定訴訟記録法など,事件記録の閲覧に関する各法令の手続によります。裁判の公開(憲法82条)や判決情報の提供は,情報公開手続とはさらに別のレイヤーの問題です。この記事では,これらを区別しながら整理します。

第2 裁判所の情報公開に関する通達等1 掲載している要綱・運用要領・手引等

裁判所の司法行政文書の開示手続の実際を定める規程類として,以下の文書を掲載しています。いずれも情報公開請求により開示を受けた文書です。

裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱(平成27年7月1日からの実施分)情報公開に関する運用要領(平成27年7月1日版)裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱の実施の細目について(平成27年4月6日付の最高裁判所事務総長通達)司法行政文書開示手続の手引(平成29年3月21日版)――第一部・総論編,第二部・各論編,別紙1~別紙26及び参考資料司法行政文書の開示に伴う開示文書の謄写の取扱いについて(平成22年10月19日付の最高裁判所事務総局秘書課と司法協会総務部の申合せ)2 最高裁判所通達通知回答集の目次

最高裁判所が発した通達・通知・回答をまとめた「最高裁判所通達通知回答集」の目次を掲載しています。

令和5年4月現在――1/2,2/2令和3年7月現在平成31年3月現在3 通達の法的性質

通達は,上級行政機関が関係下級行政機関に対してその職務権限の行使を指揮し,職務に関して命令するために発するものであり,行政組織内部における命令にすぎません。したがって,下級行政機関は通達に拘束されますが,一般の国民が直接これに拘束されるわけではなく,通達の内容が国民の権利義務に関連する場合でも同じです。この考え方は,元号制定の差止め等が争われた東京地裁令和2年10月5日判決でも確認されています。その先例として,最高裁昭和43年12月24日判決(墓地埋葬通達事件,民集22巻13号3147頁)や,最高裁平成24年2月9日判決(民集66巻2号183頁)が挙げられます。

裁判所の司法行政文書の開示に関する要綱・通達も,これと同じく行政組織内部の準則です。開示・不開示の当否は,これらの内部準則の適用として判断され,最終的には審査委員会の答申や裁判所の判断によって統制されます。参考として,取扱要綱の改正の概要(令和4年7月1日実施分)に関するX投稿を掲載しています。

4 裁判統計数値の文書開示と司法行政上の便宜供与

裁判統計数値を調べる場合は,まず裁判所の司法統計年報一覧等の公表資料を確認します。
全国の年報と,ブログ掲載の年別・本庁支部別等のPDFの使い分けは,司法統計年報の探し方と読み方及び最高裁判所が作成している事件数データを参照してください。

平成29年3月21日版の司法行政文書開示手続の手引・第二部各論編35~36頁(PDF2~3頁)の「SSDBS,司法統計年報」は,文書開示手続と,司法行政上の便宜供与として統計情報を提供する方法を区別しています。
どちらの方法によるかは情報提供を求める者の意思によるとし,SSDBSから抽出可能な統計数値についての対応を説明しています。
これは平成29年版の手引に記載された取扱いです。

同手引は,文書開示手続による場合の条件設定・集計・紙への印字と,適宜な方式で情報を提供する便宜供与を説明しています。
また,販売を目的として発行された司法統計年報という出版物自体は,開示対象の司法行政文書には該当しないと考えられる旨を説明しています。
ウェブ上の公表年報の閲覧と,内部システムからの情報提供の申出は分けて考える必要があります。

同手引は,抽出数値から事件や個人が特定されるおそれがある場合や,抽出情報に事件番号・事件名・終局日等の事件情報が含まれる場合には,不開示情報の有無を検討する必要があるともしています。
「統計数値だから常に開示される」とは説明できません。
実際の申出では,対象期間,裁判所,事件分類,新受・既済等の区分,単位及び希望する情報を具体化し,現在の案内と窓口で取扱いを確認してください。

第3 判決書のうち法解釈を示した部分は不開示情報とされていること1 裁判書は司法行政文書開示手続の対象ではないこと

判決や決定などの裁判書の閲覧等は,民事訴訟法・刑事訴訟法・刑事確定訴訟記録法等の法令が定める手続によるべきものです。したがって,裁判所が裁判書を司法行政文書として保有していない限り,裁判書は司法行政文書開示手続の対象になりません。令和元年度(情)答申第12号(令和元年8月23日答申)がこの点を示しています。

2 法解釈を示した部分の不開示(犬の所有権事件の答申)

裁判所が裁判書を司法行政文書として保有している場合であっても,その中身がすべて開示されるわけではありません。ある民事事件の第1審判決・控訴審判決について,法5条1号(個人に関する情報)の該当性が問題となったのが,令和2年度(情)答申第37号です(46期の岡口基一裁判官が平成30年5月17日頃にツイートで紹介した,犬の所有権に関する事件の裁判書に関するものです。開示に至った経緯は,東京高裁の開示通知書に関するX投稿で確認できます)。

この答申は,苦情申出人が明らかに不開示情報に当たらないと主張した,①判決のうち法解釈を示した部分,②犬の犬種等を記載した物件目録・写真,③担当裁判官の氏名について,いずれも開示すべきものとは認めませんでした。理由は次のとおりです。

①法解釈を示した部分は,公にされると,特定の訴訟当事者間の民事訴訟の事実関係・主張内容や勝敗を分けた原因を推知されるおそれがあり,法5条1号の個人識別情報に当たる。②物件目録・写真は,公にされると返還請求の対象となった犬を特定されるおそれがある。③不開示とされたのは裁判官の署名であり,署名はその形状が文書の真正を示す認証的機能を持つため,公にされると偽造など悪用を誘発して個人の権利利益が害されるおそれがある(記名とは区別される)。

判決書の法解釈部分が司法行政文書開示手続では不開示となる点は,裁判所が法律雑誌社等へ裁判書の写しを提供している取扱いとは別の問題です(この点に関するX投稿)。

3 なぜ不開示になるのか――個人識別型と部分開示の限界

判決の「法解釈を示した部分」まで個人識別情報に含まれ得るのは,日本の情報公開法制が採用する「個人識別型」の考え方に由来します。情報公開法5条1号は,プライバシー侵害のおそれがある情報に限って不開示とする「プライバシー保護型」ではなく,特定の個人を識別できる情報を原則として不開示とする「個人識別型」を採っています。そして,ここでいう「特定の個人を識別することができるもの」の範囲は,氏名等の記述の部分だけでなく,氏名等により識別される特定の個人情報の全体に及ぶと解されています(総務省行政管理局編『詳解 情報公開法』46頁,宇賀克也『新・情報公開法の逐条解説〔第7版〕』有斐閣・第5条)。特定の当事者を識別できる判決書は,法解釈の説示を含めて全体が「その個人に関する情報」を構成し得るため,これを一体として不開示とする余地が生じます。

もっとも,これは部分開示(6条2項)の限界の問題でもあります。情報を一体不可分のものとして扱う「情報単位論(独立一体説)」を徹底すると部分開示の余地が狭まりますが,最高裁はこれを抑制する方向を示しています。最高裁平成19年4月17日判決(裁判集民事224号97頁)の藤田宙靖裁判官の補足意見は,情報は最小単位から包括的な情報に至るまで重層構造を成すとして,どの位相を開示に値する情報とみるかを行政機関が一律に決めることは想定されていないと述べます。最高裁平成30年1月19日判決(裁判集民事258号1頁)の山本庸幸裁判官の意見も,いわゆる独立一体的情報論について,一体と捉える情報の範囲が論者によって異なること,個々の情報の関連を十分に考慮できないこと,不開示の範囲が無用に広がるおそれがあることを指摘しています。平成19年判決は愛知県公文書公開条例に関する事案,平成30年判決は情報公開法に関する事案で,いずれも個別意見ですが,法廷意見の水準でも,最高裁令和7年6月3日判決(民集79巻4号1389頁)が,表形式の行政文書の「備考」欄に記録された情報について,合理的に区切られた範囲ごとに不開示情報該当性を判断すべきであったとして,欄ごとに一体的に判断した原審の判断を違法としました(詳しくは「情報単位論と最高裁令和7年6月3日判決」を参照してください。)。これらは判決書そのものの開示を扱ったものではありませんが,判決書のどの範囲を不開示とすべきかを考える際の基本的な視点になります。

第4 裁判の公開と判決の公開の原則1 自由権規約14条1項による判決公開の保障

市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)14条1項は,公正な公開審理を受ける権利を定めるとともに,判決の公開について,「刑事訴訟又は他の訴訟において言い渡される判決は,少年の利益のために必要がある場合又は当該手続が夫婦間の争い若しくは児童の後見に関するものである場合を除くほか,公開する。」と定めています(外務省公定訳)。審理自体を非公開にできる場合を限定的に認めつつ,判決の言渡しは原則として公開すべきものとしている点に特色があります。

自由権規約委員会の一般的意見32(2007年採択)の第29項も,裁判が非公開とされた場合でも,基本的な事実認定・証拠・法律上の理由付けを含む判決は,少年の利益のために必要がある場合等の例外を除いて公開されなければならないとしています(日本弁護士連合会訳)。

2 憲法上の裁判公開原則と最高裁判例

憲法上も,裁判の公開は基本原則です。最高裁大法廷平成元年3月8日判決(レペタ事件,民集43巻2号89頁)は,裁判の対審及び判決を公開の法廷で行うべきことを定める憲法82条1項の趣旨について,裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し,ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとすることにあると述べています。

また,最高裁大法廷昭和35年7月6日決定(民集14巻9号1657頁)は,性質上純然たる訴訟事件について,憲法所定の例外を除き公開の法廷における対審・判決によらずに終局的に権利義務の存否を確定する裁判をすることは,憲法82条に違反し,裁判を受ける権利を定める憲法32条の趣旨も没却すると判示しています。

公開の前提として,法令の内容が国民に知られる状態に置かれることも要請されます。最高裁大法廷昭和32年12月28日判決(刑集11巻14号3461頁)は,成文の法令が国民に対して現実に拘束力を及ぼすためには,その内容が国民の知りうべき状態に置かれることが前提要件であるとしており,これは近代民主国家における法治主義の要請だと述べています。

3 判決を書くことの意義

判決書を作成する意義については,実務上,複数の目的が挙げられてきました。司法研修所民事裁判教官室編『民裁教官室だより(10)』は,『民事判決起案の手引』を引きつつ,①訴訟当事者に判決内容を知らせ上訴の機会を与えること,②上級審の再審査のために認定事実・理由を明らかにすること,③一般国民に対して具体的事件の判断を通じて法規範を明らかにし裁判の公正を保障すること,④裁判官が自己の判断を客観視し再検討する契機とすること,を判決書作成の目的として説明しています。

最高裁判所判事も同趣旨を述べています。司法の窓第86号(令和3年5月)「15のいす」(最高裁判所判事 小池裕)は,裁判所が公開の法廷で審理し,判決という合理的な検証が可能なかたちで公権的判断を示すことは,民主主義国家において重要な意義があると述べています(下級裁判所判例集に掲載する裁判例の選別基準等に関する不開示通知書のX投稿もあわせて掲載しています)。

4 自由権規約は不開示情報の範囲を定めるものではないこと

もっとも,裁判が公開されていることと,情報公開制度において判決情報が当然に開示されることとは,直ちには結び付きません。令和3年度(情)答申第6号(令和3年5月20日答申)は,自由権規約14条1項は裁判手続の公開等に関する規定であり,情報公開法制における不開示情報の範囲を定めたものではないとして,同項を根拠に開示を求める主張を採用しませんでした。裁判の公開(憲法・条約)と,情報公開手続における開示・不開示(情報公開法制)とは,別のレイヤーの問題であることに注意が必要です。

なお,最高裁大法廷令和3年6月23日決定における宮崎裕子・宇賀克也両裁判官の反対意見は,条約が締約国に対して法的拘束力のある文言で義務を定めている場合には,その義務は行政府・立法府・司法府を拘束すると述べています(憲法98条2項)。条約の国内的効力に関する一般論として参考になります。

第5 判決情報の提供とオープンデータ化1 司法制度改革審議会意見書(平成13年)

平成13年6月12日付の司法制度改革審議会意見書は,「Ⅳ 国民的基盤の確立」の「3.司法に関する情報公開の推進」において,判例情報の提供が,司法の透明性向上や説明責任の明確化にとどまらず,紛争の予防・早期解決にも資すると述べました。そのうえで,裁判所は,特に判例情報について,先例的価値の乏しいものを除き,プライバシー等に配慮しつつインターネット等を活用して全面的に公開・提供していくべきだとしています。

2 民事司法制度改革の推進と取りまとめ(令和2年・令和3年)

その後,民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議が令和2年3月10日に取りまとめた「民事司法制度改革の推進について」は,民事判決情報を,紛争の当事者だけでなく社会全体で共有・活用すべき重要な資産と位置づけました。そのうえで,将来的なAIによる紛争解決支援の可能性なども踏まえ,現状では先例性の高い事件や社会的関心の高い事件等の一部に限られている民事判決情報の提供を,より広く国民に提供すべきものとしています。

これを受け,民事判決のオープンデータ化検討PT(日弁連法務研究財団)が令和3年3月25日に「民事判決情報のオープンデータ化に向けた取りまとめ」を公表しました。この取りまとめは,民事判決情報を国民や社会全体で共有すべき公共財と位置づけ,これをデータベース化して広く利用に供することが,司法の透明性の向上,行動規範・紛争解決指針の提示,紛争解決手続に関するAI研究の基盤形成にもつながり得るとしています。その具体化のため,同財団に事業の在り方や仮名処理の在り方等に関するワーキンググループが設置されました。

3 民事裁判情報の活用の促進に関する法律(令和7年)

この議論は,その後,立法として結実しました。法務省の民事判決情報データベース化検討会が報告書を取りまとめ(令和6年7月29日),これを踏まえて「民事裁判情報の活用の促進に関する法律」(令和7年法律第49号)が令和7年5月に成立・公布されました。

この法律は,裁判所から提供される民事・行政の判決情報を,法務大臣が指定する法人(情報管理機関)が集約し,氏名・住所等を仮名化・マスキングしたうえで,判例データベース事業者等に提供する仕組みを設けるものです。中核部分の施行は公布から2年以内の政令で定める日とされており,本格的な運用開始はその後になる見込みです(この記事の更新時点では,指定法人はまだ指定されていません)。

その技術的な前提として,民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)による民事裁判のIT化があります。判決書の電子的作成や訴訟記録の電子化が,判決情報のデータベース化を支える基盤になります。

第6 訴訟記録全部の閲覧等制限と裁判書1 岡部喜代子裁判官の補足意見(最決平成29年1月31日)

判決情報の公開と表裏の関係にあるのが,訴訟記録の閲覧等制限です。最高裁平成29年1月31日決定(民集71巻1号63頁)と同日にされた閲覧等制限決定(最高裁平成27年(マ)第153号・第154号)には,裁判長であった岡部喜代子裁判官の補足意見が付されています。

その要旨は次のとおりです。民事訴訟法92条1項1号は,訴訟記録中に当事者の私生活についての重大な秘密が記載された部分に限って,閲覧等の請求をすることができる者を制限するものです。したがって,秘密記載部分が訴訟記録の一部に限られるのに,その限定をせずに訴訟記録全部について閲覧等をできる者を当事者に限る決定をすることは,同号に反して許されません。とりわけ裁判書は,当事者以外の第三者にとって判断理由の正確性を理解するための代替困難な手段であるため,裁判書を秘密記載部分に含めることには,裁判の公正を担保する観点から慎重な配慮が求められると述べています(最高裁判所判例解説(担当は51期の高原知明)に関する記事もあわせて参照してください)。

2 閲覧等制限の抗告審(東京高決平成27年9月11日)

閲覧等制限の申立てに対する裁判に不服がある場合は,即時抗告により争われ,抗告審は決定で判断します。東京高裁平成27年9月11日決定(裁判長は34期の浜秀樹。判例秘書に登載。裁判所ウェブサイト未掲載)は,既に報道機関による報道やインターネット上の記事の掲載等によって事件が広く知れ渡っている事案において,第三者による訴訟記録の閲覧等の状況を,閲覧等制限申立ての当否を検討するに当たっての一事情として考慮することは相当であると判断しました。第三者が既に記録を閲覧していることは,その他の第三者による閲覧等を制限する必要がないとする理由にはならないという抗告人の主張は,採用されませんでした。

関連して,裁判所が無断で法律雑誌社等に民事事件の裁判書を提供することを差し止めるために,事件当事者が取り得る方法に関する文書(東京地裁の不開示通知書に関するX投稿)も掲載しています。

第7 最高裁判所規則は開示手続の対象とする必要がないとされていること

最高裁判所規則は,官報により公布されて広く周知が図られているうえ,そのすべてが『現行日本法規』(法務省大臣官房司法法制部編)という法令集によって入手可能です。そのため,最高裁判所規則は司法行政文書開示手続の対象とする必要はないとされています(平成28年度(最情)答申第39号,平成28年12月2日答申)。

なお『現行日本法規』は,令和3年6月時点で全100巻142冊であり,株式会社ぎょうせいから販売されています(巻冊数・価格は時点により変わり得ます)。

第8 文書内容の真否の調査は義務付けられていないこと

情報公開の実務では,開示請求を受けた職員が,請求に係る全文書の内容の真否まで調査する義務があるのかが問題になることがあります。最高裁平成18年4月20日判決(裁判集民事220号165頁)は,地方公共団体の情報公開について,開示の可否は原則として一定期間内に決定しなければならないと定められていることや,多数の文書を一括して開示請求することも予定されていることからすれば,一般に,担当職員が請求に係る全文書の内容の真否を調査することは義務付けられておらず,文書の記載内容に基づいて迅速に開示等の決定を行うことが予定されていると判示しています。

文書管理の側面では,開示請求の対象になり得ると判断された短期保有文書について,ファイルによる管理を行うこととする運用も示されています(下図は,文書事務における知識付与のためのツールの改訂版〔平成31年3月7日付の配布文書〕からの抜粋です)。

一元的な文書管理システムの教材からの抜粋(短期保有文書のファイル管理)第9 裁判所の期日簿・開廷表の提供1 司法記者への期日簿の提供

裁判所の期日簿は,司法記者に提供されています。司法記者は,どの事件が係属し,いつどの裁判があるかを,裁判所の期日簿(開廷表)で把握しています。この点は,東弁リブラ2012年9月号「座談会 司法記者は語る」や,東弁リブラ2015年9月号「座談会 続・司法記者は語る」で,記者自身の言葉として語られています。

2 開廷表の掲示(下級裁判所事務処理規則)

下級裁判所事務処理規則9条1項本文は,「開廷の日割は,各裁判所が,毎年あらかじめ,これを定め,庁内の公衆の見やすい場所に掲示しなければならない。」と定めています(ただし書で,簡易裁判所については司法行政事務を掌理する裁判官が定めるとされています)。開廷表の備付けに関する文書として,最高裁の理由説明書に関するX投稿も掲載しています。

第10 関連する答申・資料1 事件番号の公表慣行(令和元年度(行情)答申第583号)

一連の訴訟事件において,審級や種類ごとに複数の事件番号が付されている場合,その一部の事件番号が分かれば当該事件を特定することができると考えられます。令和元年度(行情)答申第583号(令和2年3月6日答申。総務省情報公開・個人情報保護審査会)は,裁判所ウェブサイトに掲載されている事件番号に公表慣行が認められる場合には,他の審級等に関する事件番号についても公表慣行があるとしています。

2 情報公開法5条6号の該当性(最判令和4年5月17日)

最高裁令和4年5月17日判決(裁判集民事267号53頁)は,預託法違反及び景品表示法違反に係る調査の結果に関する情報が,情報公開法5条6号イ所定の不開示情報に該当しないとした原審の判断に違法があるとされた事例です。行政機関の情報公開における不開示情報の範囲を検討するうえで参考になります。

3 関連資料・関連記事

以下の開示文書・資料もあわせて掲載しています。

司法行政文書の開示手続における事件番号の取扱いについて(令和6年1月30日付の最高裁秘書課参事官の事務連絡)情報公開法に係る主な答申等について(令和4年4月)事件記録等の閲覧等に関する事務の取扱いについて(平成9年8月20日付の最高裁判所総務局長通達)

関連する記事として,次のものも参照してください。

プライバシー保護に関する,司法行政文書開示手続の判断例及び最高裁令和2年10月9日判決開示請求の対象となった司法行政文書に第三者に関する情報が記録されている場合の取扱い裁判所の情報公開に関する統計文書司法に関する情報公開の推進(平成13年6月12日付の司法制度改革審議会意見書)裁判所の不開示決定は司法審査の対象とならないこと国立公文書館への移管司法行政文書に関する文書管理裁判文書の文書管理に関する規程及び通達民事事件の裁判文書に関する文書管理最高裁判所裁判官会議議事録の不開示範囲-令和8年度(最情)答申第14号情報単位論と最高裁令和7年6月3日判決4 開示手続及び文書管理の掲載資料

司法行政文書開示手続の手引(平成29年3月21日版)

一元的な文書管理システム教材の改訂版(令和2年3月24日付の配布文書)

文書事務における知識付与を行うためのツールの改訂版(平成31年3月7日付の配布文書)

上記は,それぞれの作成・改訂時点の資料である。現在の開示申出を行う際には,裁判所が掲載する最新の要綱・案内も確認する必要がある。

出典法令・条約日本国憲法(32条,82条,98条2項)――e-Gov法令検索市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)14条1項――外務省公定訳自由権規約委員会・一般的意見32(2007年)第29項――日本弁護士連合会訳下級裁判所事務処理規則9条――裁判所ウェブサイト掲載規則民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)民事裁判情報の活用の促進に関する法律(令和7年法律第49号)――e-Gov法令検索裁判例最高裁大法廷昭和32年12月28日判決(刑集11巻14号3461頁,法令の公布)最高裁大法廷昭和35年7月6日決定(民集14巻9号1657頁,純然たる訴訟事件)最高裁昭和43年12月24日判決(民集22巻13号3147頁,墓地埋葬通達事件)最高裁大法廷平成元年3月8日判決(民集43巻2号89頁,レペタ事件)最高裁平成18年4月20日判決(裁判集民事220号165頁,真否調査義務)最高裁平成19年4月17日判決(裁判集民事224号97頁,藤田宙靖裁判官補足意見)最高裁平成24年2月9日判決(民集66巻2号183頁,通達)最高裁平成29年1月31日決定(民集71巻1号63頁,岡部喜代子裁判官補足意見)最高裁平成30年1月19日判決(裁判集民事258号1頁,山本庸幸裁判官意見)最高裁令和7年6月3日判決(民集79巻4号1389頁,表形式の文書の部分開示)最高裁大法廷令和3年6月23日決定(裁判所ウェブサイト,宮崎裕子・宇賀克也裁判官反対意見)最高裁令和4年5月17日判決(裁判集民事267号53頁,情報公開法5条6号)東京地裁令和2年10月5日判決(元号制定差止請求事件,通達の法的性質)東京高裁平成27年9月11日決定(判例秘書登載。裁判所ウェブサイト未掲載)公文書・答申・資料最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会答申――令和元年度(情)第12号,令和2年度(情)第37号,令和3年度(情)第6号,平成28年度(最情)第39号総務省情報公開・個人情報保護審査会答申――令和元年度(行情)第583号司法制度改革審議会意見書(平成13年6月12日)民事司法制度改革の推進について(令和2年3月10日,民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議)民事判決情報のオープンデータ化に向けた取りまとめ(令和3年3月25日,日弁連法務研究財団)民事判決情報データベース化検討会報告書(令和6年7月29日,法務省)司法の窓第86号「15のいす」(令和3年5月)文献宇賀克也『新・情報公開法の逐条解説〔第7版〕』(有斐閣,2016年)総務省行政管理局編『詳解 情報公開法』(財務省印刷局,2001年)46頁司法研修所民事裁判教官室編『民裁教官室だより(10)』東京弁護士会『LIBRA』2012年9月号・2015年9月号(座談会「司法記者は語る」ほか)

カルロス・ゴーンの刑事手続に関する文書は個人識別情報として不開示情報であること

目次
1 被疑者カルロス・ゴーンの身柄拘束及び接見禁止決定は個人識別情報として不開示情報であること
2 被疑者カルロス・ゴーンの勾留理由開示に関する文書は個人識別情報として不開示情報であること
3 被告人カルロス・ゴーンに関する保釈請求及び準抗告は個人識別情報として不開示情報であること
4 被疑者カルロス・ゴーンが平成31年4月4日に再逮捕されたことは個人識別情報として不開示情報であること
5 被疑者カルロス・ゴーンの刑事事件に関して,平成30年12月21日頃に東京地裁が公表した文書は個人識別情報に該当すること
6 関連記事その他

1 被疑者カルロス・ゴーンの身柄拘束及び接見禁止決定は個人識別情報として不開示情報であること
(1) 平成31年3月15日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 申出人が,原判断庁に対し,上記(1)の文書(以下「本件文書」という。)の開示を求めたのに対し,原判断庁は,上記(2)のとおり不開示とした。これに対し,申出人は,被疑者カルロス・ゴーンに関する身柄拘束及び接見禁止決定は,東京地方裁判所又は東京地方検察庁によって公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨の主張をして本件苦情を申し出た。
イ 本件開示申出の内容からすれば,本件文書の存否を明らかにすると,特定の個人の身柄拘束及び接見禁止決定の事実の有無が公になる。この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
    この点について,苦情申出人は, 当該特定の個人の身柄拘束及び接見禁止決定は,東京地方裁判所又は東京地方検察庁によって公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨主張する。しかし, 当該特定の個人の身柄拘束及び接見禁止決定に関する報道は,報道機関の責任において当該報道がされたものであり,それをもって,上記情報が「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とはいえない。
ウ そうすると,本件文書につき,その存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相当である。
(2) 本件文書は,「被疑者カルロス・ゴーンの身柄拘束及び接見禁止決定に関与している裁判官の氏名が分かる文書」です。

検察修習終わったので言えなかった不満ぶちまけとくと、検察全面接見禁止撃ちすぎ。
捜査序盤で口裏合わせのルートがわからないからとりあえず全面禁止でとなるのはわからないでもないが、捜査が進展して人物関係図がわかってきたら、「こいつとの接見だけ禁止すればいいな」ってのが見えてくるやん。

— 綿月@貸与金手続 (@iwatatatat) June 10, 2025
2 被疑者カルロス・ゴーンの勾留理由開示に関する文書は個人識別情報として不開示情報であること
(1) 平成31年3月15日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 申出人が,原判断庁に対し,上記(1)の文書(以下「本件文書」という。)の開示を求めたのに対し,原判断庁は,上記(2)のとおり不開示とした。これに対し, 申出人は, 「被疑者カルロス・ゴーンに関する勾留理由開示公判は,東京地裁又は東京地検によって公にされている事実であるから,法5条1号に定める不開示情報に相当しない。」との主張をして本件苦情を申し出た。
イ 本件開示申出の内容からすれば,本件文書の存否を明らかにすると,特定の個人の勾留理由開示公判に関する事実の有無が公になる。この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
    この点について,苦情申出人は, 当該特定の個人の勾留理由開示公判は,東京地方裁判所又は東京地方検察庁によって公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨主張する。しかし, 当該特定の個人の勾留理由開示公判に関する報道は,報道機関の責任において当該報道がされたものであり,それをもって,上記情報が「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とはいえない。
ウ そうすると,本件文書につき,その存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相当である。
(2) 本件文書は,「平成31年1月8日にあったカルロス・ゴーンの勾留理由開示公判に関して,東京地裁事務局が作成し,又は取得した文書(大使館職員等に対する傍聴席の優先割当に関する文書を含むものの,一般の傍聴者から回収した裁判所傍聴券は除く。)」です。

3 被告人カルロス・ゴーンに関する保釈請求及び準抗告は個人識別情報として不開示情報であること
(1) 平成31年3月15日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 申出人が,原判断庁に対し,上記(1)の文書(以下「本件文書」という。)の開示を求めたのに対し,原判断庁は,上記(2)のとおり不開示とした。これに対し, 申出人は, 「被告人カルロス・ゴーンに関する保釈請求及び準抗告は,東京地裁又は東京地検によって公にされている事実であるから,法5条1号に定める不開示情報に相当しない。」との主張をして本件苦情を申し出た。
イ 本件開示申出の内容からすれば,本件文書の存否を明らかにすると,特定の個人の保釈請求及び準抗告の事実の有無が公になる。この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
   この点について,苦情申出人は,当該特定の個人の保釈請求及び準抗告は,東京地方裁判所又は東京地方検察庁によって公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨主張する。しかし, 当該特定の個人の保釈請求及び準抗告に関する報道は,報道機関の責任において当該報道がされたものであり,それをもって,上記情報が「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とはいえない。
ウ そうすると,本件文書につき,その存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相'当である。

(続きを読む...)カルロス・ゴーンの刑事手続に関する文書は個人識別情報として不開示情報であること

司法行政文書に関する文書管理(AIリライト)

目次

第1 司法行政文書の範囲と法的な位置付け

1 司法行政文書の定義

2 行政文書及び裁判文書との違い

第2 司法行政文書の管理体制

1 管理の根拠となる通達等

2 総括文書管理者等

第3 文書の作成,閲覧及び保存

1 文書の作成義務

2 閲覧及び借出し

3 保存期間

第4 ファイル管理簿,移管及び廃棄

(続きを読む...)司法行政文書に関する文書管理(AIリライト)

民事訴訟記録の管理・閲覧・保存期間(AIリライト)

目次

第1 民事訴訟記録は令和8年5月21日を境に取扱いが分かれる
第2 裁判文書・訴訟記録・事件記録・事件書類の区別

1 「裁判文書」と訴訟記録
2 保存制度上の事件記録と事件書類
3 司法行政文書との区別

第3 事件の受付,訴訟記録の作成及び係属中の管理

1 新法適用事件の電磁的訴訟記録
2 紙書類の受付と三分類による編成
3 保管,貸出し,送付及び移送

第4 訴訟記録の閲覧,謄写・複写及び秘匿

1 非電磁的訴訟記録
2 電磁的訴訟記録
3 申請先と各裁判所の運用
4 秘密保護と住所・氏名等の秘匿

第5 調書・判決書の作成と和解等電子調書の送達

1 判決書と電子調書
2 新法適用事件では和解等電子調書が送達されること

第6 事件完結後の保存裁判所と保存期間

(続きを読む...)民事訴訟記録の管理・閲覧・保存期間(AIリライト)

最高裁判所の庁舎情報が不開示とされる理由―裁判官等への襲撃リスクと警備上の判断(AIリライト)

目次
第1 最高裁判所裁判官室等の写真が不開示とされた理由
第2 最高裁判所庁舎の平面図が一部不開示とされた理由
第3 事務総局の局課館長と各門の入構方法
第4 公開済みの情報があっても開示されるとは限らないこと
第5 司法行政文書の開示を申し出る場合の留意点
第6 関連記事

最高裁判所庁舎の写真,平面図,各門の入構方法は,どこまで公開されるのでしょうか。

情報公開・個人情報保護審査委員会の答申では,最高裁判所裁判官,首席調査官及び事務総局幹部への襲撃や,庁舎の警備事務に支障が生じるおそれが,不開示判断の理由として挙げられています。

ただし,本記事でいう「襲撃の対象となるおそれが高い」とは,情報を公開した場合の警備上の危険に関する評価です。

実際の襲撃発生率を統計的に示したものではありません。

第1 最高裁判所裁判官室等の写真が不開示とされた理由

平成29年度(最情)答申第27号は,最高裁判所長官室,最高裁判所判事室及び最高裁判所首席調査官室の写真を一部不開示とした判断を妥当としました。

写真を公開すると,各室の位置や構造が明らかになります。

答申は,最高裁判所長官,最高裁判所判事及び首席調査官について「襲撃の対象となるおそれが高い」とする最高裁判所事務総長の説明を不合理ではないとし,写真の公開によって庁舎管理事務や警備事務に支障が生じるおそれを認めました。

判事室の一部が別のウェブサイトの写真に写っているとの主張もありました。

しかし,答申は,背景として室内のごく一部が写っているだけであり,位置や構造を示す写真とは異なると判断しています。

第2 最高裁判所庁舎の平面図が一部不開示とされた理由

平成28年度(最情)答申第48号は,最高裁判所庁舎の地下2階から5階までの平面図について,一部を不開示とした判断を妥当としました。

同答申は,庁舎全体を一律に非公開としたものではありません。

法廷,待合室,記録閲覧室など,事件当事者,傍聴人や見学者の出入りが予定されている部分は開示対象とされました。

これに対し,最高裁判所判事室や事務総局の中枢部分など,一般の来庁者の出入りが想定されていない部分は,公開すると警備事務の適正な遂行に支障が生じるおそれがあるとして,不開示とされました。

つまり,一般に公開されている区域と,警備上保護する必要のある区域とを分けて判断しています。

第3 事務総局の局課館長と各門の入構方法

令和元年度(最情)答申第59号は,最高裁判所の正門,東門,西門及び南門の利用資格者が分かる文書について,各門の具体的な入構方法を不開示とした判断を妥当としました。

最高裁判所事務総長は,最高裁判所判事や事務総局の各局課館長が重大な職務を担うことから,襲撃の対象となるおそれが高く,庁舎全体に高度なセキュリティを確保する必要があると説明しました。

この原判断は令和元年5月23日付けで,最高裁判所事務総長の理由説明書は同年6月13日に委員会に収受されています。
当時の最高裁判所事務総長は,平成28年4月から令和元年9月まで在任した今崎幸彦(現在の最高裁判所長官)でした。

答申は,各門の具体的な入構方法を公開すると警備レベルの低下を招き,警備事務の適正な遂行に支障が生じるとの説明を不合理ではないとしています。

第4 公開済みの情報があっても開示されるとは限らないこと

(続きを読む...)最高裁判所の庁舎情報が不開示とされる理由―裁判官等への襲撃リスクと警備上の判断(AIリライト)

ハンセン病患者の裁判に関する謝罪の記者会見

1   平成28年4月25日のハンセン病患者の裁判に関する謝罪の記者会見に際して作成し,又は取得した文書のうち,裁判所HPに掲載されているもの以外は,同月27日までに廃棄されました(平成28年度(最情)答申第33号(平成28年10月24日答申))。

2 答申には以下の記載があります。なお,本件開示申出文書というのは,平成28年4月25日のハンセン病患者の裁判に関する謝罪の記者会見に際して作成し,又は取得した文書のことです。
   最高裁判所事務総長は,本件開示申出文書に該当する可能性がある文書としては,①記者会見の日時・場所等を記載した文書,②取材の集合時間・注意事項等を記載した文書,③配布資料があったとした上で,①及び②については,いずれも報道機関に配布することでその目的を果たすことから,報道機関に配布するための部数しか作成しておらず,報道機関等からの問合せがあった際に確認するための控えについても,記者会見終了時点において,事務処理上使用することが予定されておらず,保有する必要がないため,短期保有文書として随時廃棄しており,本件開示申出の時点において存在しないと説明している。
   そこで検討すると,①及び②の文書は,いずれも記者会見の準備のための事務に用いられるものであると考えられるから,その内容が軽微かつ簡易な司法行政文書であるということができる。そうすると,これらについて,保存期間を1年以上にする必要がない短期保有文書として扱っていることは,前記1の各通達に沿った取扱いであり,相当である。そして,①及び②の文書が上記のような文書であることからすると,記者会見の日の2日後である本件開示申出の時点において,①及び②の文書が,いずれも廃棄済みであって存在しないとする説明は合理的であり,これを覆すに足りる事情はない。したがって,これらはいずれも廃棄済みであると認められる。
  また,③の配布資料については,いずれも裁判所ウェブサイトに掲載されたものであるとする最高裁判所事務総長の説明が不合理であるとする事情も見当たらない。したがって,本件開示申出の内容に照らすと,これは,本件開示申出文書に当たらないと認められる。

* 自由と正義2021年8月号の「ひと筆」として,「ハンセン病訴訟から学んだもの」(筆者は大分県弁護士会の徳田靖之弁護士)が載っています。

憲法週間における最高裁判所判事の視察(AIリライト)

毎年5月の憲法週間には,最高裁判所の判事が全国各地の下級裁判所を視察している。
本記事は,この視察の仕組みと,視察の日程・関係文書がどのように作成され,廃棄され,又は開示されているかを,情報公開請求で得た最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の答申や不開示通知書等の一次資料に基づいて整理し,あわせて視察の実態に関する当事者の証言・見解を紹介するものである。
特定の事件処理や法律相談を目的とするものではない。

目次

第1 総論——憲法週間における最高裁判所判事の視察

1 視察の概要
2 視察日程の作成に関する文書

第2 視察日程・関係文書の情報公開上の取扱い

1 最高裁判所が受領した文書の廃棄
2 視察先の下級裁判所における文書の廃棄
3 水戸地裁の視察日程等についての部分開示判断
4 短期保有文書としての取扱い

第3 視察時の概況説明資料の取扱い

1 高等裁判所が提供する概況説明資料の位置づけ
2 大阪高裁の説明資料の廃棄

第4 視察の実態に関する証言・見解

1 元裁判所職員による説明
2 田原睦夫弁護士による説明

(続きを読む...)憲法週間における最高裁判所判事の視察(AIリライト)

裁判文書及び司法行政文書がA4判・横書きとなった時期(AIリライト)

目次

第1 結論と時系列

第2 裁判所の事件記録に関する文書

1 平成13年1月1日からの取扱い
2 旧民事訴訟規則と様式の法的性質
3 移行当時の標準的な書式
4 平成29年の判決書の標準設定
5 平成13年より前の横書き文書
6 令和8年5月21日以後の民事訴訟

第3 司法行政文書

1 昭和61年1月1日の左横書き化
2 平成7年1月1日のA列化
3 実際の文書に現れた変化

第4 読点の変更

第5 関連資料

第6 出典

1 公文書・歴史資料
2 文献

(続きを読む...)裁判文書及び司法行政文書がA4判・横書きとなった時期(AIリライト)

司法行政文書の国立公文書館への移管(AIリライト)

第1 総論――移管の法的根拠

1 公文書管理法14条による移管の仕組み
2 平成21年8月5日の申合せと公文書管理法附則3条
3 「司法行政文書」と「裁判事務に関する文書」との違い

第2 実務レベルの申合せ

1 令和6年1月30日の申合せへの全部改正
2 移管すべき司法行政文書の範囲
3 移管の手続

第3 移管すべき司法行政文書の類型
第4 司法行政文書に関する公文書等移管計画
第5 移管の実績
第6 移管された文書の利用
第7 関連資料及び関連記事
出典・参考資料

法令
公文書・行政資料
統計・データ
文献

(続きを読む...)司法行政文書の国立公文書館への移管(AIリライト)

裁判関連文書は国立公文書館への移管が予定されていないこと

本記事でいう裁判関連文書は,事件記録には当たらないが裁判に密接に関連し,裁判部で管理されている申合せ等の文書を指す。
平成28年度(最情)答申第24号は,そのような文書の内閣総理大臣への移管方法について,最高裁判所が内閣府と取り交わした文書を保有していないとした判断を妥当としたものである。

不存在とされたのは移管方法を取り決めた文書であり,裁判関連の内部資料が一切存在しないという判断ではない。
また,判決原本や司法行政文書を含む裁判所の文書全般について,移管が行われていないという意味でもない。

〇平成28年度(最情)答申第24号(平成28年7月15日答申)における最高裁判所事務総長の理由説明書には以下の記載があります(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
1 裁判所は,公文書等の管理に関する法律附則4条の規定による改正前の国立公文書館法15条1項の規定に基づき,内閣総理大臣と協議して定めるところにより,裁判所の保管に係る歴史資料として重要な公文書等の適切な保存のために必要な措置を講じ,その措置として,内閣総理大臣に対して裁判所の保管に係る歴史資料として重要な公文書等を移管している。
2 上記「歴史資料として重要な公文書等」については,平成21年8月5日付け内閣総理大臣・最高裁判所長官申合せ「歴史資料として重要な公文書等の適切な保存のために必要な措置について」及び平成25年6月14日付け内閣府大臣官房長・最高裁判所事務総局秘書課長・同総務局長申合せ「歴史資料として重要な公文書等の適切な保存のために必要な措置について(平成21年8月5日内閣総理大臣・最高裁判所長官申合せ)の実施について」(以下「本件各申合せ」という。)によって申合せがされ,最高裁判所は,本件各申合せに係る文書を保有している。
   裁判所から内閣総理大臣に移管する「歴史資料として重要な公文書等」の範囲は,本件各申合せにより,歴史資料として重要な判決書等の裁判文書並びに裁判所の過去の主要な活動を跡づけるために必要な,司法行政に係る重要な政策等裁判所の運営上の重要な事項に係る意思決定及びその意思決定に至るまでの審議,検討又は協議の過程及びその決定に基づく施策の遂行過程が記録された司法行政文書であるとされている。
3 本件開示申出書記載の「事件記録に該当しないものの,裁判に密接に関連する文書」とは,裁判に密接に関連する事項について,裁判官等が申合せを行った結果を記載し,裁判所の裁判部において管理している文書等を意味するものと理解されるが,そのような文書は,上記記載の「歴史資料として重要な公文書等」に当たらないので,本件各申合せは本件開示申出文書ではない。
   また,その他の文書の移管方法について,最高裁判所と内閣府との間で取り交わした文書は存在せず,したがって,「事件記録に該当しないものの,裁判に密接に関連する文書」の移管方法に係る文書も存在しない。

以上は,平成28年7月15日答申の理由説明書に記載された当時の説明である。
同答申の結論と判断理由は,答申書の第1及び第6(PDF1頁・3頁~4頁)に記載されている。

その後,令和6年1月30日の実施申合せ及び移管手続に関する申合せが,それぞれ平成25年6月14日付けの同名申合せを廃止して新たな取扱いを定めた。
実施申合せは,裁判文書と司法行政文書の移管を別々に規定し,民事事件の判決原本等の対象と除外事由を定めている。
このため,平成28年答申の紹介と,現在の移管対象・移管計画の説明は区別して読む必要がある。

関連資料:令和6年1月30日付け実施申合せ,同日付け移管手続申合せ。

関連記事:裁判事務に関する文書の意義,司法行政文書の国立公文書館への移管,民事事件の判決原本の国立公文書館への移管。

(続きを読む...)裁判関連文書は国立公文書館への移管が予定されていないこと

民事事件の判決原本の国立公文書館への移管(AIリライト)

第1 判決原本の永久保存原則とその起点
第2 判決原本廃棄方針の撤回と国立十大学法学部への一時保管(平成6・7年)
第3 国立公文書館への移管の実現(平成12年度〜23年度)
第4 移管された判決原本の目録公開と学術的な活用
第5 保存期間満了後の民事判決書等の継続的な移管
第6 令和の記録廃棄問題と特別保存の枠組みの全面改正
第7 国立公文書館の今後の体制と移管範囲の拡大に向けた議論
出典

民事事件の判決原本は,戦前から一貫して永久保存の対象とされてきたが,平成4年の規程改正によって一時は50年で廃棄される方針に転換され,これに反対する保存運動を経て,現在は国立公文書館へ移管される仕組みが確立している。この記事では,判決原本の永久保存原則がどのように維持・変更され,どのような経路で国立公文書館に移管されるに至ったかを,制定年月日・法令番号とともに時系列で整理する。あわせて,令和に入って発覚した裁判記録の大量廃棄問題が,この移管の枠組みそのものにどのような影響を及ぼしたかについても扱う。

第1 判決原本の永久保存原則とその起点

裁判所が作成する判決原本を永久に保存するという考え方は,昭和になって生まれたものではない。明治18年10月24日の大審院並裁判所書類保存規程(司法省丁第21号達)の段階で,既に民事・刑事の判決の言渡書及び命令書は永久保存とされ,事件記録本体だけが有期保存とされていた。この規程は大正7年の民刑訴訟記録保存規程(司法省法務局庶第7号訓令)によって全面改定されたが,本案に関する判決の原本を永久保存とする原則自体は引き継がれ,同規程40条には史料又は後日の参考となる重要な事件記録を保存期間満了後も保存する旨の規定も置かれていた。これらの規程の詳細な条文・保存期間及び当時の裁判所名称の変遷については,戦前の裁判文書の保存で扱っている。

最高裁判所は,昭和29年1月1日,事件記録等保存規程(昭和28年12月5日最高裁判所規程第9号)を施行した。同規程の下でも,民事事件の判決原本は引き続き永久保存とされている。

最高裁判所は,昭和40年1月1日,事件記録等保存規程(昭和39年12月12日最高裁判所規程第8号)を施行した。この規程でも,民事事件の判決原本は引き続き永久保存とされた。もっとも,同規程9条2項は「記録又は事件書類で史料又は参考記録となるべきものは,保存期間満了の後も保存しなければならない」として,史料としての特別保存義務を明文で定めていたにもかかわらず,この規定はほとんど適用されなかった。この運用の消極性は,後に見るとおり,令和に入ってから重要な裁判記録の廃棄が相次いで発覚する遠因となった。

第2 判決原本廃棄方針の撤回と国立十大学法学部への一時保管(平成6・7年)

最高裁判所は,平成4年1月23日,事件記録等保存規程を改正し,平成6年1月1日以降,判決確定から50年を経過した判決原本(=昭和18年12月31日までに確定した判決原本)を随時廃棄することを決定した。その例外として,事件記録等保存規程の運用について(平成4年2月7日付の最高裁判所事務総長の依命通達)をもって,特別保存に付するものの運用の基準が定められた。

しかし,判決原本の廃棄を憂慮する国立大学法学部教授等がこれに反対する運動を起こした。中心となったのは林屋礼二・東北大学名誉教授を代表とする有志の団体で,8高裁所在地の国立大学法学部が分担してその管内の判決原本を一時的に保管するという構想が示された。この運動には,日本学術会議や日本弁護士連合会からの要望も加わり,最高裁判所への働きかけが続けられた結果,平成5年12月,まさに廃棄が始まる直前のタイミングで,最高裁判所は当面の廃棄を見合わせ,国立十大学法学部への移管を決定するに至った。

その結果,平成6年から平成7年にかけて,高等裁判所所在地の10の国立大学法学部(北海道大学,東北大学,東京大学,名古屋大学,大阪大学,岡山大学,広島大学,香川大学,九州大学及び熊本大学)に移管作業が実施され,各大学で一時保管されることとなった。移管された簿冊は約36,000冊余り,厚さにして約2,200メートル,宅配便の箱に換算すると約6,500箱という規模であった。この保存運動の過程では,議員立法による解決を検討する国会議員の動きや,読売新聞(平成8年8月9日付社説)・朝日新聞(平成8年8月20日付社説)による社説での後押しもあったことが,運動の当事者であった青山善充・元東京大学教授の回顧録に記されている。

(続きを読む...)民事事件の判決原本の国立公文書館への移管(AIリライト)

裁判所の情報公開に関する統計文書

目次
第1 総論
第2 毎月の統計文書
第3 毎年の統計文書
1 令和5年度以降の文書
2 平成27年度から令和4年度までの文書
第4 関連記事その他

第1 総論
1 司法行政文書とは,裁判所の職員が職務上作成し,又は取得した司法行政事務に関する文書,図画及び電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)であって,裁判所の職員が組織的に用いるものとして,裁判所が保有しているものをいいます(「司法行政文書の管理について」(平成24年12月6日付の最高裁判所事務総長通達)第1.2(1))。
2 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会が設置された平成27年7月1日,現在の方式での統計文書が作成されるようになりました。

第2 毎月の統計文書
   「司法行政文書開示申出に関する統計」を以下のとおり掲載しています(「司法行政文書開示申出に関する統計(令和7年4月分~同年6月分)」といったファイル名です。)。
・ 令和 7年第4期報告分(令和 7年10月分~同年12月分)
・ 令和 7年第3期報告分(令和 7年 7月分~同年 9月分)
・ 令和 7年第2期報告分(令和 7年 4月分~同年 6月分)
・ 令和 7年第1期報告分(令和 7年 1月分~同年 3月分)
・ 令和 6年第4期報告分(令和 6年10月分~同年12月分)
・ 令和 6年第3期報告分(令和 6年 7月分~同年 9月分)
・ 令和 6年第2期報告分(令和 6年 4月分~同年 6月分)
・ 令和 6年第1期報告分(令和 6年 1月分~同年 3月分)
・ 令和 5年第4期報告分(令和 5年10月分~同年12月分)
・ 令和 5年第3期報告分(令和 5年 7月分~同年 9月分)
・ 令和 5年第2期報告分(令和 5年 4月分~同年 6月分)
・ 令和 5年第1期報告分(令和 5年 1月分~同年 3月分)
・ 令和 4年第4期報告分(令和 4年10月分~同年12月分)
・ 令和 4年第3期報告分(令和 4年 7月分~同年 9月分)
・ 令和 4年第2期報告分(令和 4年 4月分~同年 6月分)
・ 令和 4年第1期報告分(令和 4年 1月分~同年 3月分)

(続きを読む...)裁判所の情報公開に関する統計文書

最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の答申

1 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の答申につき,以下のとおり分類して私のブログで紹介しています。
(1) 最高裁判所の司法行政文書
① 最高裁判所が作成又は取得していないとされた司法行政文書
② 最高裁判所が直ちに廃棄しているとされた司法行政文書
③ 不開示事由に該当するとされた最高裁判所の司法行政文書
④ 司法行政文書開示請求の対象とならないとされた最高裁判所の文書
(2) 下級裁判所の司法行政文書
① 下級裁判所が作成又は取得していないとされた司法行政文書
② 下級裁判所が直ちに廃棄しているとされた司法行政文書
③ 不開示事由に該当するとされた下級裁判所の司法行政文書
④ 司法行政文書開示請求の対象とならないとされた下級裁判所の司法行政文書

2 最高裁平成26年7月14日判決は,「ある時点において当該行政機関の職員が当該行政文書を作成し,又は取得したことが立証された場合において,不開示決定時においても当該行政機関が当該行政文書を保有していたことを直接立証することができないときに,これを推認することができるか否かについては,当該行政文書の内容や性質,その作成又は取得の経緯や上記決定時までの期間,その保管の体制や状況等に応じて,その可否を個別具体的に検討すべきもの」と判示しています。

3 以下の資料も参照してください。
① 司法行政文書の管理について(通達)(平成24年12月6日付の最高裁判所事務総長通達)
→ 「職員は,文書管理者の指示に従い,裁判所における経緯も含めた意思決定に至る過程及び裁判所の事務の実績を合理的に跡付け,又は検証することができるよう,処理に係る事案が軽微なものである場合を除き,司法行政文書を作成しなければならない。」などと書いてあります。
② 公文書管理法に対する,平成21年6月23日付の参議院内閣委員会の付帯決議
→ 「軽微性を理由とした文書の不作成が恣意的に行われないようにするとともに、文書の組織共用性の解釈を柔軟なものとし、作成後、時間を経過した文書が不必要に廃棄されないようにすること。」などと書いてあります。
③ 情報公開法に係る主な答申等について(平成31年3月)
→ 総務省行政管理局情報公開・個人情報保護推進室が作成したものです。

4 以下の記事も参照してください。
① 裁判所の情報公開
② PKO日報問題に関する特別防衛監察結果報告で示された,行政文書管理及び情報公開業務の改善策
→ 「不存在とした開示請求について、開示請求手続と関係のない立場の組織により、情報公開業務の検査等を実施するなど、チェック機能の強化を図る必要がある。」などと書いてあります。

5(1) 総務省HPに,平成16年3月10日付の「勧告及び要望書」が載っています。
日弁連人権擁護委員会が平成15年12月付で作成した,裁判所行政情報開示人権救済申立事件調査報告書(いわゆるロッキード事件において最高裁宣明書が出された件に関する文書の開示を求めたもの。)が含まれています。
(2) 国立国会図書館HPの「調査と情報」に,「行政機関における文書管理-国の説明責務に係る論点と改善方策-」(平成30年2月27日発行の998号)が載っています。

(続きを読む...)最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の答申

司法行政文書開示請求の対象とならないとされた下級裁判所の司法行政文書

司法行政文書開示手続の対象外とされること,文書を保有していないこと,文書はあるが不開示情報が含まれることは,区別して読む必要があります。
本記事は,下級裁判所の文書について裁判事務に関する文書に当たるとして開示手続の対象外とされた答申例を紹介するものであり,同種の資料が全国で一律に存在しないという意味ではありません。

裁判部で専ら裁判事務のために用いられる文書については,作成・取得の目的と実際の管理状況が問題となります。
平成28年度(情)答申第7号及び平成30年度(情)答申第24号は,事務局等が司法行政事務を処理する目的で取得した事実がないことも確認しています。
これらは事務局が取得すれば必ず全部開示されると判断した事例ではなく,そのような取得の有無も区別して検討した事例です。

関連する答申:平成28年度(情)答申第7号(平成28年9月1日答申),平成30年度(情)答申第24号(平成31年3月15日答申)。
○行政機関の場合,行政文書該当性については,対象となる文書に係る具体的・客観的状況に基づいて判断すべきものであり,行政機関内部における一般的な取扱いや,行政機関の職員の主観的な認識といった事情により,その判断が左右されるものではありません(内閣法制局長官の国会答弁資料に関する平成28年度(行情)答申第646号(平成29年1月17日答申)9頁)。
これらの答申を読むときは,文書の名称だけでなく,どの事務のために作成・取得され,裁判部と事務局等のどちらがどの目的で管理しているかを確認する必要があります。
裁判所職員の主観的な認識だけで区分が決まるという一般則を,これらの答申から導くことはできません。
〇刑事裁判における公判前整理手続の場合,警察官が私費で購入したノートに記載し,一時期自宅に持ち帰っていた取調べメモについても証拠開示を命じられることがあります(最高裁平成20年9月30日決定参照)。
以下の第2例では,原判断は文書を作成・取得していないとして不開示としましたが,平成27年度(情)答申第4号は,仮に文書が存在しても司法行政文書開示手続の対象とならないとして,原判断を結論において妥当としています。
答申が文書の存否を確定した場合と,存否にかかわらず開示手続の対象外とした場合を混同しないことが必要です。

○最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会によれば,下級裁判所の以下の文書は司法行政文書開示請求の対象とならないそうです。

1 弁護士が後見人として一定以上の財産を預かる場合,不正をチェックするために別の弁護士を「後見監督人」として付ける運用の基準を定めた文書(平成27年度(情)答申第3号(平成28年3月8日答申))
→ 「(1) 取扱要綱記第2本文は,「裁判所は,その保有する司法行政文書の開示の申出があった場合は,何人に対しても,当該司法行政文書を開示するものとする。」と定め,取扱要綱記第1は,「この取扱要綱において「司法行政文書」とは,裁判所の職員が職務上作成し,又は取得した司法行政事務に関する文書,図画及び電磁的記録(略)であって,裁判所の職員が組織的に用いるものとして,裁判所が保有しているものをいう。」と定めている。そして,司法行政文書には,裁判事務に関する文書は含まれず,裁判事務に関する文書には,裁判に密接に関連する事項について,裁判官等が申合せを行った結果を記載し,裁判所の裁判部において管理している文書が含まれると解される。
(2) そこで,本件開示申出文書について検討すると,本件開示申出文書について,最高裁判所事務総長は,後見監督人の選任等に係る個々の事件処理の参
考とするために,当該裁判に密接に関連する事項について東京家庭裁判所の複数の裁判官等が申合せを行った結果を記載した文書であることから,司法行政文書には該当しないと説明する。後見監督人の選任は,家庭裁判所が行う審判事項であり,その法律上の要件は「必要があると認めるとき」とされているにすぎないから(民法849条,家事事件手続法39条参照),後見監督人の選任に係る運用の基準は,家庭裁判所が行う後見監督人選任の審判という裁判に密接に関連する事項に係るものといえ,この点に関する上記説明は合理的である。
また,最高裁判所事務総長は,本件開示申出文書は,東京家庭裁判所及び立川支部の裁判部である家事部で管理していると説明するところ,上記のような本件開示申出文書の性質に照らすと,この点に関する説明も合理的である。
そうすると,本件開示申出文書は,裁判所の職員が作成したものではあるが,裁判事務に関する文書であるということができるから,取扱要綱記第1にいう「司法行政事務に関する文書」には当たらないというべきであり,その結果,本件開示申出文書は,取扱要綱記第2本文に定める司法行政文書の開示の手続の対象となる司法行政文書には該当しないのであって,同手続の対象とはならない文書であると認められる。」そうです。

2 ①破産管財人の報酬を決定する基準が書いてある文書,及び②破産管財人の報酬の目安が分かる文書(平成27年度(情)答申第4号(平成28年3月8日答申))
→ 「最高裁判所事務総長は,本件各開示申出文書が存在するとすれば,それらは,破産事件における破産管財人の報酬決定を行う際の基準又は目安について記載された文書であるから,個々の破産事件の処理の参考とするために,裁判事項ないし裁判に密接に関連する事項について複数の裁判官等が申合せを行った結果などを記載したものであるから,専ら裁判事務に関して作成された文書であって,司法行政事務に関して作成された司法行政文書ではないと説明する。破産管財人の報酬の額は,個別の事件ごとに,当該事件の破産管財人につき,その都度裁判所が定めるものであるから(破産法87条1項参照),破産管財人の報酬決定の基準やその目安は,破産管財人の報酬決定という裁判に密接に関連する事項に係るものといえ,この点に関する上記説明は合理的である。
また,最高裁判所事務総長は,神戸地方裁判所において司法行政事務を所掌する事務局に所属する職員がこれらの文書を取得したこともないと説明するところ,上記のような本件各開示申出文書の性質に照らすと,この点に関する説明も合理的である。
そうすると,本件各開示申出文書は,裁判所の職員が作成したものではあるが,裁判事務に関する文書であるということができるから,取扱要綱記第1にいう「司法行政事務に関する文書」には当たらないというべきであり,その結果,本件各開示申出文書は,取扱要綱記第2本文に定める司法行政文書の開示の手続となる司法行政文書には該当しないのであって,同手続の対象とはならない文書であると認められる。」そうです。

3  成年後見人の選任に関して,東京家庭裁判所が特定の団体らとの間で取り交わしている文書(平成27年度(情)答申第5号(平成28年3月8日答申))

(続きを読む...)司法行政文書開示請求の対象とならないとされた下級裁判所の司法行政文書

不開示事由に該当するとされた下級裁判所の司法行政文書

○最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会によれば,以下の司法行政文書には不開示情報が含まれています。
○行政機関情報公開法6条2項は,「開示請求に係る行政文書に前条第一号の情報(特定の個人を識別することができるものに限る。)が記録されている場合において、当該情報のうち、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、公にしても、個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは、当該部分を除いた部分は、同号の情報に含まれないものとみなして、前項の規定を適用する。」と定めており,その意義につき,最高裁平成19年4月17日判決の裁判官藤田宙靖の補足意見が参考になります。

下級裁判所の入庁検査の案内文書,検査除外者,民間警備業者との契約書及び全国集計資料についての不開示事例は,裁判所の所持品検査に関する情報公開―検査方法・免除者・契約書の不開示(AI作成)で,対象文書,判断主体及び判断の範囲を分けて整理しています。

1 「東京地裁が,平成28年1月までに,60代の女性書記官を1ヶ月の停職処分にした際に作成し,又は取得した文書」のうち,被処分者の氏名等(平成28年度(情)答申第6号(平成28年9月1日答申))
→ 「原判断庁が本件各対象文書のうち不開示としたのは,①被処分者の氏名,②級号俸,③事件番号,④刑事裁判との関係欄の年月日,⑤具体的な事件に係る期日の月日,⑥事件当事者の呼称,⑦書証番号,⑧被処分者による行為の月日(同人が自己の事務の誤りに気付いたり,認識した月日を含む。)及び⑨被処分者が誤って作成した期日呼出状に記載された期日の年月日の情報(以下「本件不開示情報」という。)である。
本件各対象文書記載の情報(文書2の書式に相当する情報を除く。)は,全体として被処分者を識別することができることとなる情報(法5条1号)に相当する情報であるが,そのうち本件不開示情報以外の情報は,「懲戒処分の公表指針」に従って,報道機関を通じて公表した情報であることから,慣行として公にされる情報(法5条1号イ)に相当する情報であり,本件不開示情報は,同号ただし書イ,ロ及びハのいずれにも相当しない情報である。さらに,本件不開示情報のうち,上記②及び④を除く情報は,事件当事者を識別することができることとなる情報若しくは個人の権利利益を害するおそれのある情報(法5条1号)又は法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報(法5条2号イ)に相当する情報である。」そうです。

2 平成28年5月27日の,小池裕最高裁判所判事の水戸地方裁判所視察に関する視察日程案,視察日程細目(平成28年度(情)答申第14号(平成28年10月24日答申))
→ 「最高裁判所は,司法権及び司法行政権の最高機関であるから,最高裁判所判事が要人として犯罪行為等の標的となることは否定できない。そして,憲法週間における最高裁判所判事による下級裁判所の視察が毎年行われるものであることも考慮すると,視察の際の日程等の詳細が公になると,それを蓄積して移動手段や日程等の傾向を分析され,今後の視察の行動を予測されるなどして,犯罪行為等の実行に利用されるおそれがある」そうです。

3 特定の裁判官の退官願のうち,作成年月日,当該裁判官の署名及び押印並びに退官願の理由を記載した部分(平成28年度(情)答申第20号(平成29年2月24日答申))
→ 「本件対象文書を作成した年月日及び退官を願い出る理由については,官報等により公表されているものではないから,法5条1号ただし書イに相当するものではない」そうです。

4 特定裁判官が有報酬兼業として自分名義の著作を販売することを許可してもらうために,東京高等裁判所との間で授受した文書(平成28年度(情)答申第24号(平成29年3月17日答申))
→ 「裁判所法52条2号は,裁判官は,在任中,最高裁判所の許可のある場合を除いて,報酬のある他の職務に従事することができない旨規定しているから,特定の裁判官が報酬のある他の職務に従事することの許可を求めた文書の存否を答えることは,当該裁判官が報酬のある他の職務に従事し,又は従事しようとしている事実の有無に係る情報を明らかにすることと同様の結果を生じるものと認められる。
そして,特定の裁判官が報酬のある他の職務に従事し,又は従事しようとしているか否かという情報は,当該裁判官の個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名等により当該裁判官という特定の個人を識別することができるものに当たると認められる。そして,当該情報は,法5条1号ただし書イに規定する法令の規定により又は慣習として公にされ,又は公にすることが予定されている情報であるとは認められないし,同ハに規定する当該裁判官の職務遂行に係る情報であるとも認められない。したがって,当該情報は,法5条1号の不開示情報に相当すると認められる。
この点について,苦情申出人は,当該裁判官が,自分名義の著作を販売していることを自身のツイッターで宣伝していることをもって,慣行として公にされている情報であると主張するが,苦情申出人が主張するような事実をもって当該裁判官が申出に係る許可を受けたか否かに係る情報が,慣行として公にされているとは認められない。さらに,他に裁判官が報酬のある他の職務に従事し,又は従事しようとしているか否かを公表する慣行があると認めるに足りる事情はない。したがって,苦情申出人の上記主張は失当である。」そうです。

5 岡口喜一裁判官に対する厳重注意に関する文書(平成29年度(情)答申第2号(平成29年4月28日答申))
→ 「本件注意は,下級裁判所事務処理規則21条に基づくものであり,同条は,「高等裁判所長官(略)は,所属の裁判所の監督に服する裁判所職員に対し,事務の取扱及び行状について注意を与えることができる。」と規定している。
上記の最高裁判所事務総長の説明及び口頭説明の結果を踏まえるならば,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意は,事務の取扱いや行状についての改善を目的として行うものであって,懲戒処分のような制裁的実質を含んだ処分とは異なるものであると判断される。
そして,裁判官については,憲法上その独立が強く保障されており,懲戒処分も,裁判官分限法に基づく分限裁判によって行われることとされていて(裁判所法48条,49条参照),下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意がされたとしても,そのことにより,当該裁判官に具体的な不利益が課されることは,予定されていない。また,裁判官の懲戒である分限裁判が確定したときは,官報に掲載して公告されることとされている(裁判官の分限事件手続規則9条)のに対し,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意は,公表が予定されていない。
下級裁判所事務処理規則21条に基づく裁判官に対する注意が上記のような性質のものであることからすると,その運用自体が裁判官の個人的事情に関わる機微なものであるというべきであり,その手続きについては,当該裁判官の行状等の改善に対する実効性を確保する目的で,適切な時期に効果的な形でされるべきであるという観点等から慎重であるべきものと認められる。したがって,司法行政手続の中でその運用においてどのような手続がとられるのか,文書が作成されるのか,作成されるとしてどのような文書が作成,管理,保存されるのかなどについて,本来,これを公にすると,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意という人事管理に係る事務に関与する判断権者及び職員に対し,文書の作成,管理,保存について好ましくない影響が生ずる等,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
そうすると,本件については,本件対象文書の存否を答えるだけで,上記のような人事管理に係る事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある情報を開示することになるというべきであり,当該情報は,法5条6号ニに規定する不開示情報に相当する情報であるから,原判断においては,取扱要綱記第5に基づき,本件対象文書の存否を明らかにしないで不開示とすべきであったと認められる。」そうです。
→ 東京高裁長官が下級裁判所事務処理規則21条に基づき注意を与える際の事務手続が分かる文書が存在しないことは,平成29年3月23日付の司法行政文書不開示通知書によって明らかにされています。

6 名古屋高裁がマスコミに提供した,名古屋高裁平成28年11月28日判決(被告人は藤井浩人美濃加茂市長)の判決要旨(平成29年度(情)答申第4号(平成29年5月25日答申))

(続きを読む...)不開示事由に該当するとされた下級裁判所の司法行政文書

下級裁判所の司法行政文書―短期保有・廃棄・不存在に関する答申(AIリライト)

目次第1 この記事の対象と読み方第2 従来の答申例第3 千葉地方裁判所の修習日誌第4 現行規則による確認事項
第1 この記事の対象と読み方
本記事は,下級裁判所の司法行政文書について,個別の情報公開答申で廃棄済み又は非保有とされた事例を紹介するものである。
答申は,特定の裁判所,対象文書及び開示申出に関する判断であり,全国の裁判所が同種文書を現在も一律に直ちに廃棄するという意味ではない。

修習日誌に関する補足は令和6年3月21日の答申を,現在の管理規則は令和8年3月4日改正・同年4月1日実施の公表通達を基にしている。
過去の廃棄に関する説明と現行の保存・廃棄要件は分けて読む必要がある。

○最高裁平成26年7月14日判決によれば,行政機関の情報公開の場合,ある時点において当該行政機関の職員が当該行政文書を作成し,又は取得したことが立証された場合において,不開示決定時においても当該行政機関が当該行政文書を保有していたことを直接立証することができないときに,これを推認することができるか否かについては,当該行政文書の内容や性質,その作成又は取得の経緯や上記決定時までの期間,その保管の体制や状況等に応じて,その可否を個別具体的に検討すべきものとされています。
○最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会が公表した答申には,次の個別事例がある。

以下は,委員会が各事案の説明を踏まえ,開示申出時の廃棄済み又は非保有の判断を妥当とした例である。
廃棄までの期間や,組織的に保有する文書に当たるかは,それぞれの用途と保有状況によって異なる。

第2 従来の答申例
1 神戸地裁における,①視察の日時時刻,発着地,事項,配車,乗員,随行の秘書官等の詳細が記載されている基本日程及び詳細日程,③最高裁判所判事との座談会の出席者名簿及び座談会席図,④庁内巡視の順序が分かる文書並びに⑤最高裁判所判事との懇親会の出席者名簿(平成27年度(情)答申第2号(平成28年2月18日答申))→  「苦情申出人が存在するはずであると主張する①から⑤までの文書のうち②の文書以外の文書については,その標題や最高裁判所事務総長の説明に照らすと,最高裁判所判事の視察に関する具体的な日程,出席者及び巡視の流れを記載した当該視察の際に必要となるものといえるが,その後にわたって意思決定に至る過程や事務の実績を検証するために必要とされる内容のものではないといえるから,神戸地方裁判所においてはこれらを内容が軽微かつ簡易なものとして,短期保有文書として扱っていたとする最高裁判所事務総長の説明に不合理な点はない。そして,これらの文書の内容に照らせば,視察日から2か月近くが経過した本件開示申出の時点で廃棄していたとの取扱いは,事務処理上必要な期間が満了したときに廃棄されたものとして,上記各通達の定めに従ったものであるといえ,他にこれらの文書の存在をうかがわせるような事情はない。」そうです。

2  平成28年1月1日の神戸地裁所長交代時の引継書(添付書類を含む。)(平成28年度(情)答申第4号(平成28年7月15日答申))→ 「最高裁判所事務総長は,現在の神戸地方裁判所長に確認したところ,事務の引継ぎに際しては,メモ程度のものは作成されたが,それは,現所長が前所長から受け取り,読んだ後,必要がなくなったので,1週間程度で廃棄したとのことであったとし,所長の事務の引継ぎの性質に照らすと,これは合理的であると説明する。
上記の説明は,神戸地方裁判所長の事務の引継ぎに際して作成されたメモは,引継ぎを受けた現所長個人の責任で保有し,その個人にとって必要な限度で利用した上で廃棄したというものと解されるのであり,このことは,所長の事務の引継ぎという事務の内容に照らして,不合理なものとは認められない。
」そうです。

3 直近に開催された,首席家庭裁判所調査官協議会及び家事事件担当裁判官等協議会に関する配付資料(平成28年度(情)答申第5号(平成28年7月15日答申))→ 「最高裁判所事務総長は,本件各開示申出文書が短期保有文書として随時廃棄して差支えない文書であり,既に廃棄されているとする原判断庁の説明は合理的であると説明する。本件各開示申出文書は,いずれも,東京高等裁判所で開催された協議会の配付資料で,最高裁判所から東京高等裁判所を通じて協議員に対して協議の参考として配布された文書であるというのであるから,その用途は,協議員が協議の参考にするに止まり,東京高等裁判所においてこれに基づく事務等が予定されているものとは認められない。そうすると,協議会が終了すれば,東京高等裁判所において保有する必要性がなくなるものであるということができるから,東京高等裁判所において,これらについて,保存期間を1年以上にする必要がない短期保有文書として扱っていることは,前記1の各通達に沿った取扱いであり,相当である。以上によれば,本件開示申出の時点において,本件各開示申出文書が,いずれも廃棄済みであって存在しないとする原判断庁の説明は合理的であり,これを覆すに足りる事情はない。
この点につき,苦情申出人は,平成25年2月改訂のJ・NETポータル民事情報データベース操作マニュアル<一般ユーザ編>に,平成19年度の協議会資料が存在するような記載部分があることをもって,本件各開示申出文書が存在すると主張するが,上記の記載は,本件各開示対象文書に係る協議会とは全く別の年度に開催された協議会に関するものである上,マニュアル上の記載が実際の文書の存在を推認させるものでないことはいうまでもないのであるから,採用の限りでない。」そうです。

4 東京地裁立川支部長が東京地裁本庁に定期的に送付している,支部の状況報告に関する書面(平成28年度(情)答申第12号(平成28年10月24日答申))→ ①幹部連絡会の報告資料(月に一度行われる幹部連絡会において,支部長が所長に対して支部の状況を口頭報告する際に使用する補助資料)及び②裁判官会議終了後に行われる概況説明の資料(所長や支部長らが出席する裁判官会議終了後,出席者らが参加し,各部署から口頭で行われる概況説明の際に使用する補助資料)につき,
「上記(1)の説明によれば,資料の配布等の庶務を担当する部署では文書1及び文書2のいずれについても会議又は説明の終了後に廃棄をしたというのであるところ,上記(1)のとおり,幹部連絡会及び概況説明が,いずれも通達等に開催根拠がなく,組織的意思決定を予定していないものであることからすれば,文書1及び文書2について,そのように取り扱っていることは合理的である。したがって,当該部署において保有していた文書1及び文書2は,いずれも廃棄済みであると認められる。
また,上記(1)の説明によれば,文書1及び文書2の配布を受けた参加者は,手持ち資料として持ち帰ることはあっても,その保有又は処分については,参加者個人の自由な判断に委ねられていたというのであり,上記のとおりの幹部連絡会及び概況説明の性質に照らせば,当該説明も合理的であるといえるから,参加者が本件開示申出の時点で文書1又は文書2を保有していたとしても,それは,東京地方裁判所が組織的に用いるものとして保有しているものではなく,司法行政文書を保有していることにはならないことは明らかである。」そうです。

5 東京高裁が,平成30年1月10日にエレベーターの使用中止を決定した際に作成した文書(決裁文書及び裁判所内の回覧文書を含む。)(平成30年度(情)答申第15号(平成31年1月18日答申))
→ 「最高裁判所事務総長の上記説明によれば,本件開示申出文書に該当する文書として,管理職員から職員へ口頭で周知するために,その内容を記載した文書が作成されたが,当該文書は,エレベーター使用停止の措置について,管理職員から職員に対して口頭で周知を行うに当たり,その内容を正確に伝える目的に基づく短期保有文書であり,職員へ口頭で周知したことによりその目的が達成され,事務処理上保有しておく必要がなくなったことから廃棄したとのことであり,本件開示申出の内容に照らして検討しても,このような説明の内容が不合理とはいえない。」そうです。

(続きを読む...)下級裁判所の司法行政文書―短期保有・廃棄・不存在に関する答申(AIリライト)

下級裁判所が作成又は取得していないとされた司法行政文書

○裁判所の職員は,文書管理者の指示に従い,裁判所における経緯も含めた意思決定に至る過程及び裁判所の事務の実績を合理的に跡付け,又は検証することができるよう,処理に係る事案が軽微なものである場合を除き,司法行政文書を作成しなければなりません(「司法行政文書の管理について(通達)」(平成24年12月6日付の最高裁判所事務総長通達)第3.1。なお,公文書等の管理に関する法律4条参照)。
○最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会によれば,以下の文書は下級裁判所が作成又は取得していないそうです。

1 ①広島高等裁判所長官の事務引継書,及び②広島高等裁判所長官が交代した場合,どこに挨拶回りをすることになっているかが分かる文書(平成28年度(情)答申第8号(平成28年10月11日答申))
→ ①の文書につき,
「高等裁判所長官が行う事務の内容からすれば,その具体的な内容については,当該高等裁判所の職員から説明を受けることがふさわしいものが少なくないと考えられ,また,そのような説明によって事務を処理することで支障が生じるような事情もうかがわれない。そうすると,高等裁判所長官の交代に伴い事務引継書を作成することを予定するような定めはなく,他に,事務引継書が作成されていることをうかがわせる具体的な事情がないことも併せ考慮すれば,上記の説明は,合理的であるということができ,広島高等裁判所において,本件開示申出文書1を保有していないものと認められる。」そうです。

2 ①東京高等裁判所長官の事務引継書,及び②東京高等裁判所長官が交代した場合,どこに挨拶回りをすることになっているかが分かる文書(平成28年度(情)答申第9号(平成28年10月11日答申))
→ ①の文書につき,
「最高裁判所事務総長は,東京高等裁判所長官の交代時においては,後任者が最高裁判所事務総長であったところ,最高裁判所と東京高等裁判所の各庁舎は近接した場所に位置しているため,事務引継ぎは前任者から後任者へ口頭で行われ,事務引継書を作成していないと説明する。
前任者と最高裁判所事務総長であった後任者とが口頭で事務の引継ぎを行うことができたとする上記説明は,最高裁判所と東京高等裁判所の地理的関係に照らせば不合理とはいえない。また,高等裁判所長官が行う事務の内容からすれば,具体的な事務については,当該高等裁判所の職員から補充の説明を受けることがふさわしいものが少なくないとも考えられ,それにより事務に支障が生じるような事情もうかがわれない。
そうすると,高等裁判所長官の交代に伴い事務引継書を作成することを予定するような定めはなく,他に,事務引継書が作成されていることをうかがわせる具体的な事情がないことも併せ考慮すれば,本件開示申出文書1を作成していないとする上記説明は,合理的であるということができ,東京高等裁判所において,本件開示申出文書1を保有していないものと認められる。」そうです。

3 東京高等裁判所管内の裁判官の期別名簿(平成28年度(情)答申第10号(平成28年10月11日答申))
→ 「最高裁判所事務総長は,本件開示申出文書について,東京高等裁判所管内の裁判官を修習期ごとに並べた名簿と特定すべきと説明するところ,本件開示申出に係る申出書の記載に照らし,上記の特定は合理的である。
そして,同説明によれば,東京高等裁判所において本件開示申出文書は作成し,又は取得しておらず,事務処理上その必要もないとのことであるところ,当該説明が不合理であるとする事情もうかがわれない。」そうです。

4 交通の分野において,大阪地裁を中心とし,京都,神戸等の裁判所の専門部が平成27年度に集まり,情報交換を行った際に,神戸地裁が作成し,又は取得した文書(情報交換に際しての配付資料を含む。)(平成28年度(情)答申第16号(平成28年12月2日答申))
→ 「最高裁判所事務総長の説明及び本件対象文書の見分の結果を併せると,本件協議会は,京都地方裁判所,神戸地方裁判所及び大阪地方裁判所の民事交通損害賠償事件担当裁判官が出席して,本件懇談会は,大阪高等裁判所管内の地方裁判所の民事交通事件担当裁判官が出席して,いずれも民事交通事件に関する裁判事務の在り方等について協議することを目的とする会合であると認められるから,その配布資料が存在したとしても,その内容は裁判事務に関するものであると推察され,神戸地方裁判所の事務局において司法行政文書として保有する必要のあるものではないと考えられる。この点について,委員会庶務に調査させたところ,これらの会合の配布資料については,主催する大阪地方裁判所の裁判官から,他の裁判所の出席裁判官に宛てて直接送付されたとのことであり,上記のとおりのこれらの会合の性質に照らせば,そのような手続が踏まれたことも合理的といえる。」そうです。

5 東京高裁が平成28年6月21日付で岡口基一裁判官を口頭注意処分した際に作成した文書(平成29年度(情)答申第1号(平成29年4月28日答申))
→  「本件注意は,憲法及び裁判所法により身分が保障された裁判官に対するものであることや,当該裁判官の特定の行状に関してその改善を求める内容のものであって,当該裁判官個人の私的な事柄に関するものであること等を考慮すると,本件注意の意思決定の過程において文書が作成されなかったとしても,不合理とはいえず,他に本件開示申出文書が存在することをうかがわせる事情はない。」そうです。

6 東京高裁長官が下級裁判所事務処理規則21条に基づき注意を与える際の事務手続が分かる文書(平成29年度(情)答申第7号(平成29年7月24日答申))
→ 「下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意は,事務の取扱いや行状についての改善を目的として行うものであって,懲戒処分のような制裁的な効果を伴わない措置であると解されるし,同条によれば,高等裁判所においては,専ら高等裁判所長官の責任において注意の要否やその態様等を決することが予定されており,注意の方法や文書の作成の要否等に関する定めはない。」そうです。

7 平成29年度中に実施された,東京家裁専門部・集中部と,東京三弁護士会との間の懇談会における配布資料及び懇談結果を記載した文書(平成30年度(情)答申第12号(平成30年12月21日答申))
→ 「最高裁判所事務総長の上記説明及び当委員会庶務を通じて確認した結果によれば,平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間,本件申出に係る専門部又は集中部と東京三弁護士会又は東京の各弁護士会との間で懇談会を開催していないとのことであり,このような説明の内容が不合理とはいえない。」そうです。

8 平成29年度中に実施された,東京地裁専門部・集中部と,東京三弁護士会との間の懇談会における配布資料及び懇談結果を記載した文書(平成30年度(情)答申第13号(平成30年12月21日答申))

(続きを読む...)下級裁判所が作成又は取得していないとされた司法行政文書

司法行政文書開示請求の対象とならないとされた最高裁判所の文書

○行政機関の場合,行政文書該当性については,対象となる文書に係る具体的・客観的状況に基づいて判断すべきものであり,行政機関内部における一般的な取扱いや,行政機関の職員の主観的な認識といった事情により,その判断が左右されるものではありません(内閣法制局長官の国会答弁資料に関する平成28年度(行情)答申第646号(平成29年1月17日答申)9頁)。
これに対して司法行政文書の場合,裁判所内部における一般的な取扱いや,裁判所職員の主観的な認識といった事情により,司法行政文書に該当するかどうかの判断が左右されている気がします。
〇刑事裁判における公判前整理手続の場合,警察官が私費で購入したノートに記載し,一時期自宅に持ち帰っていた取調べメモについても証拠開示を命じられることがあります(最高裁平成20年9月30日決定参照)。
○最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会によれば,最高裁判所の以下の文書は司法行政文書開示請求の対象とならないそうです。

1 憲法週間における最高裁判所判事の視察に際して受領した各高等裁判所及びその管内に関する概況説明資料(平成28年度(最情)答申第19号(平成28年6月28日答申))
→ 「最高裁判所事務総長は,最高裁判所判事が憲法週間に各地の裁判所を視察する際には,視察を受ける裁判所において,当該裁判所の事件動向等のほか,所在する都道府県の地域性及び特色について説明を受けていると聞いているが,最高裁判所事務総局において,当該説明に際して使用される資料の提出を求めてはおらず,当該文書を取得していないと説明するところ,最高裁判所事務総局が,上記資料を利用し,又はこれを保存する必要性はうかがわれないから,上記説明は合理的であると認められる。」そうです。

2 ①最高裁判所事務総長の事務引継書,及び②最高裁判所事務総長が交代した場合,どこに挨拶回りをすることになっているかが分かる文書(平成28年度(最情)答申第27号(平成28年9月1日答申))
→ ①の文書につき
「事務総長の説明によれば,事務総長の交代に当たり,事務引継書を組織的に作成することを予定するような定めはなく,それを作成するか否かは前任者個人の判断に委ねられているとのことである。また,実際に作成されたメモも,前任者個人の判断で作成されて直接後任者に交付され,あくまで個人の手持ち資料として後任者限りで使用及び保管がされているとのことである。
上記の説明を踏まえると,当該メモの作成・利用・保存・廃棄については,そのいずれの過程においても組織としての関与は何ら存在せず,事務総長個人の便宜的判断に委ねられているものと認められるのであって,たとえ事務総長が当該メモをたまたま廃棄せずに保有していたとしても,そのことのみをもって,最高裁判所の職員が組織的に用いるものとして最高裁判所が保有しているものということはできず,当該メモは,取扱要綱記第1に定める司法行政文書に当たらないと認められる。」そうです。
→ ②の文書につき
「事務総長が交代した場合に,どこに挨拶回りをするかについては,何ら定めはなく,そもそも挨拶は儀礼上のものにすぎないと考えられることからすると,一般的にその役職に応じた挨拶回り先として想定されるところがあったとしても,実際にどこに挨拶に行くかについては,個々の事務総長の意向によるとする説明が不合理とはいえない。」そうです。

3 新任の最高裁判所判事が着任したときの事務手続について書いてある文書(平成28年度(最情)答申第38号(平成28年12月2日答申))
→ 「最高裁判所事務総長は,本件開示申出文書に当たり得るものとして,認証式及び就任行事に関する事務手続を記載した文書と考えたとのことであるが,本件開示申出に係る申出書及び最高裁判所事務総局職員による開示申出人からの電話聴取の内容から,上記の解釈は妥当であると考えられる。
そして,最高裁判所事務総長の説明によれば,認証式については,それを実施する宮内庁から取得した文書も,最高裁判所事務総局が作成した文書もないとのことである。また,就任行事の実施に係る内容やスケジュールの確定は,担当部署の職員が口頭での確認により行っており,他の部署との連絡も口頭又は電話で行っていて,就任行事に関する事務手続について,担当係員が個人的にメモを作ることはあっても,司法行政文書は作成していないとのことである。最高裁判所判事についての認証式及び就任行事に関する事務手続は,これらの行事が滞りなく行われることを目的とするものであると考えられることからすると,事務手続に関して司法行政文書を作成していなかったとしても不合理とはいえず,これらを作成していたことをうかがわせる事情は見当たらない。」そうです。

4 最高裁判所規則(平成28年度(最情)答申第39号(平成28年12月2日答申))
→  「最高裁判所規則は,憲法77条1項の規則制定権に基づき,最高裁判所裁判官会議の議決により訴訟に関する手続,弁護士,裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について定められるものである(裁判所法12条1項参照)。これは,議決後,官報により公布することとされているから(裁判所公文方式規則2条),これにより広く周知が図られている。また,最高裁判所規則の条文については,不特定多数の者に販売することを目的として発行されている法令集等により容易に入手が可能である。それにもかかわらず,これを司法行政文書の開示手続の対象とした場合,図書館代わりの利用など当該手続を設けた趣旨に合致しない利用が見込まれるから,当該手続の対象とする必要はないというべきである。」そうです。
・ 内閣府情報公開・個人情報保護審査会の平成26年度(行情)答申第74号(平成26年6月5日答申)が参照されたみたいです。
また,総務省情報公開・個人情報保護審査会の平成29年度(行情)答申第124号(平成29年6月28日答申)も同趣旨の答申をしています。
・ 現行日本法規は税込みで27万円します(ぎょうせいオンラインの「現行日本法規」参照)し,大阪弁護士会の図書室には置いてありません。
また,法務年鑑(平成27年)81頁によれば,現行日本法規の編成は, 本文50編100巻(125冊),索引3巻,旧法令改廃経過1巻,主要旧法令5巻,参照条文索引3巻及び法定刑一覧一覧の刑113巻(138冊)となっています。
平成27年中に発行した追録は,第10592号から第10891号までの300追録107,622頁です。

5 最高裁判所の各小法廷の審議期日表(平成30年度(最情)答申第45号(平成30年11月16日答申))
→ 「最高裁判所事務総長の上記説明によれば,本件開示申出文書は,審議事件について,審議期日及び審議期日における審議順序が決まった後に,裁判手続である審議及びその準備のために作成されているものであって,司法行政事務の用に供されるものではないとのことであり,本件開示申出文書の性質に照らして,このような説明の内容が不合理とはいえない。」そうです。

(続きを読む...)司法行政文書開示請求の対象とならないとされた最高裁判所の文書

最高裁判所の司法行政文書に関する不開示等の答申42件-平成27年度から平成31年度答申第7号まで(AIリライト)

第1 この記事の対象と読み方1 対象範囲と基準日2 「不開示等」の意味第2 司法行政文書開示制度の法的枠組み1 情報公開法の直接適用ではないこと2 開示原則と不開示情報3 審査委員会と答申の位置付け第3 平成27年度の答申3件第4 平成28年度の答申7件第5 平成29年度の答申5件第6 平成30年度の答申22件第7 平成31年度の答申5件第8 42件に現れた主な不開示理由1 個人識別情報2 人事,採用,試験及び修習の事務3 庁舎警備,情報セキュリティ及び国際関係4 一部開示,存否応答拒否及び不存在の区別第9 部分開示に関する最高裁判例1 最高裁平成19年4月17日第三小法廷判決2 最高裁令和7年6月3日第三小法廷判決第10 平成31年度以後の答申への導線第11 関連記事第12 出典・参考資料1 法令・要綱2 裁判所の公式ページ・答申3 裁判例
第1 この記事の対象と読み方
1 対象範囲と基準日

本記事は,最高裁判所が開示の申出を受けた司法行政文書に関する答申のうち,従前から収録してきた平成27年度から平成31年度(令和元年度)(最情)答申第7号までの42件を整理したものである。
調査の基準日は令和8年9月9日,一覧の資料対象期間は平成27年度から平成31年度答申第7号までであり,行政機関の保有する情報の公開に関する法律は同基準日に施行されている条文を確認した。

収録件数は,平成27年度3件,平成28年度7件,平成29年度5件,平成30年度22件及び平成31年度5件の合計42件である。
この42件は,各年度の答申全件ではなく,当該期間の不開示,一部不開示,存否応答拒否等を知るための収録例である。
平成31年度答申第8号以後を含む年度別の公表答申は,最高裁判所の情報公開・個人情報保護審査委員会の年度別索引から確認できる。

個別答申を他の事件へ援用するときは,対象情報,判断主体及び不開示事由の一致を確認する必要がある。
情報公開の答申を調査・引用する方法及び情報公開で公務員の氏名の不開示を争う方法では,公表答申書の読み方と,開示・不開示方向の答申を比較する方法を整理している。

2 「不開示等」の意味

表の「結果」は,審査委員会が最高裁判所事務総長の原判断をどのように評価したかを示す。
「全部不開示を妥当」と「一部不開示を妥当」のほか,文書の存在の有無に答えること自体が不開示情報を明らかにする「存否応答拒否」,作成又は取得していないことを理由とする不開示,従前の不開示範囲の一部を開示すべきであるとする答申が含まれる。

したがって,ここに掲げた対象名は,必ずしも当該文書の存在や全体の不開示を意味しない。
特に,存否応答拒否の事例から文書の存在を推論することはできない。

第2 司法行政文書開示制度の法的枠組み
1 情報公開法の直接適用ではないこと

裁判所は,「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」の対象ではなく,同法の直接適用はない。
裁判所は,同法の趣旨を踏まえた「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱」を定め,これに基づいて司法行政文書を開示している。

取扱要綱第1の「司法行政文書」は,裁判所の職員が職務上作成し,又は取得した司法行政事務に関する文書,図画及び電磁的記録であって,組織的に用いるものとして裁判所が保有するものである。
事件記録のような裁判事務に関して保有する文書は,原則としてこの開示手続の対象ではない。

2 開示原則と不開示情報

取扱要綱第2は司法行政文書の開示を原則とし,法令に別段の定めがあるとき,又は情報公開法5条の不開示情報に相当する情報が記録されているときを例外とする。
表の答申では,個人識別情報,人事管理,試験・研修,庁舎警備,情報セキュリティ,国際的信頼関係等への支障のおそれが問題となっている。

取扱要綱第3は,不開示情報が記録された部分を容易に区分して除けるときの部分開示を定める。
同要綱第5は,文書が存在するか否かを答えるだけで不開示情報を開示することになるときは,存否を明らかにしないで開示しないことができるとする。

3 審査委員会と答申の位置付け

情報公開・個人情報保護審査委員会は,平成27年7月1日に最高裁判所に設置された諮問機関であり,外部有識者3人で構成される。
同委員会は,最高裁判所の諮問に応じ,全国の裁判所による司法行政文書又は保有個人情報の開示・不開示等の判断を調査審議して答申を行う。

答申は裁判や判決ではなく,苦情申出に対する最高裁判所の判断そのものでもない。
裁判所の司法行政文書開示手続によれば,最高裁判所は同委員会の答申を尊重して苦情申出に対する判断を行う。

第3 平成27年度の答申3件

平成27年度は,所長会同,裁判官の転勤内示及び後見監督に関する3件である。
それぞれ,外部との信頼関係,人事管理の機密性,又は後見監督の実効性への支障のおそれが理由とされた。

通番答申(答申日)対象結果主な理由
1平成27年度(最情)答申第1号(平成27年12月25日)高等裁判所長官,地方裁判所長及び家庭裁判所長会同の文書一部不開示を妥当外部団体への評価等を公にすると,信頼関係が損なわれ,裁判所の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある
2平成27年度(最情)答申第5号(平成28年2月22日)裁判官の転勤の内示時期の目安が分かる文書全部不開示を妥当異動への不当な働き掛け等により,公正かつ円滑な人事の確保に支障が生じるおそれがある
3平成27年度(最情)答申第6号(平成28年2月23日)「これからの後見監督の在り方について(参考資料)」の監督区分等一部不開示を妥当監督方法等が分析され,不正又はその隠蔽を容易にし,後見監督事務に支障を及ぼすおそれがある

第4 平成28年度の答申7件

平成28年度は,司法修習生考試,情報セキュリティ,裁判官の昇給及び庁舎警備等に関する7件である。
ホワイトリストに関する答申は存否応答拒否であり,文書の存在を認定したものではない。

(続きを読む...)最高裁判所の司法行政文書に関する不開示等の答申42件-平成27年度から平成31年度答申第7号まで(AIリライト)

最高裁判所の司法行政文書-短期保有・廃棄・不存在に関する答申12件(AIリライト)

第1 この記事の対象と答申の読み方第2 答申12件の整理1 短期保有文書として廃棄済みとされた例2 一部保有・一部廃棄とされた例3 未作成・交付済み・所在不明とされた例第3 現行の短期保有文書の管理1 保存期間を1年未満とできる文書2 短期保有でも直ちに廃棄するとは限らない3 開示申出等があった文書の保存期間延長第4 近時の答申による補足1 途中段階の文書とファイル管理簿2 別の開示申出による保存と作成・廃棄不明第5 令和6年度の文書管理状況第6 関連記事第7 出典・参考資料1 司法行政文書の管理・開示に関する資料2 答申・裁判例・統計
第1 この記事の対象と答申の読み方

この記事は,最高裁判所が保有する司法行政文書について,平成27年度から平成30年度までに出された情報公開・個人情報保護審査委員会の答申12件を整理したものです。
基準日は令和8年9月9日であり,現行の文書管理ルールと近時の答申も併せて確認しています。

12件の答申には,短期保有文書として事務処理上必要な期間の経過後に廃棄したとされたものだけでなく,文書を作成していなかったもの,執筆者に交付済みで最高裁判所が保有していなかったもの,探索しても見当たらず過去の取扱いも不明であったものが含まれます。
したがって,これらを一括して「最高裁判所が直ちに廃棄している文書」と理解するのは正確ではありません。

裁判所の司法行政文書の開示は,情報公開法が直接適用される手続ではなく,裁判所が定めた司法行政文書開示手続によって行われます。
不開示等の判断に不服がある場合の苦情申出については,最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会が諮問を受けて答申を行います。

第2 答申12件の整理

次の表では,旧記事が取り上げていた12件を,答申が実際に認定した理由に即して整理しています。
答申年月日は各答申書の冒頭記載によります。

番号答申開示申出の対象答申が認めた保有状況・理由

1平成27年度(最情)答申第4号(平成28年2月18日)報道発表資料並びに判決要旨・骨子等の配布物報道機関への配布分又は庁内周知分とその余部であり,短期保有文書として随時廃棄したとの説明を認めた。
2平成28年度(最情)答申第23号(平成28年7月15日)最高裁判所及び下級裁判所ごとの女性裁判官数全国の合計数は内閣府作成資料で情報提供し,裁判所別の文書は作成していないとした。データ提供用文書の廃棄は仮定的な補足であり,現実に直ちに廃棄したとの認定ではない。
3平成28年度(最情)答申第31号(平成28年10月24日)憲法週間における最高裁判所判事の視察日程等視察基本日程,詳細日程,出席者名簿等は,平成28年5月16日,17日又は19日の視察終了後に必要期間が満了して廃棄したとの説明を認めた。
4平成28年度(最情)答申第33号(平成28年10月24日)ハンセン病患者の裁判に関する記者会見の根拠資料日時・場所の記載文書と記者会見の進行又はメモは,会見後2日以内に廃棄したとの説明を認めた。他方,配布資料は公表済みの調査報告書等であり,開示申出の対象外とした。
5平成28年度(最情)答申第34号(平成28年12月2日)高等裁判所長官事務打合せに関する配布資料通達,開催通知,進行予定及び配布資料の計24文書を特定した。別紙6及び12から24まで以外の文書は打合せ後に廃棄し,前年度資料は作成していないとの説明を認めた。
6平成28年度(最情)答申第37号(平成28年12月2日)最高裁判所調査官室が判例時報への投稿用に作成した統計メモ執筆者の要望に応じて作成されたメモは執筆者に交付済みであり,最高裁判所は保有していないとの説明を認めた。
7平成29年度(最情)答申第7号(平成29年6月9日)第70期司法修習生の導入修習に関する週間日程表平成28年12月12日以降の4文書は開示し,同月9日以前の週間日程表は各週の経過後に必要期間が過ぎたため廃棄したとの説明を認めた。
8平成29年度(最情)答申第8号(平成29年6月9日)第69期司法修習生A班の週間日程表平成28年11月14日から16日までの文書は開示し,同月13日以前の週間日程表は当該週の経過後に必要期間が過ぎたため廃棄したとの説明を認めた。
9平成29年度(最情)答申第72号(平成30年3月23日)司法修習生の配属換えに関して作成又は取得した文書依頼,通知,同意書等を対象文書として特定し,その一部を不開示とした。対象文書以外の文書は配属換え手続の終了後に廃棄したとの説明を認めた。
10平成30年度(最情)答申第15号(平成30年6月15日)平成28年の裁判官・裁判所職員の懲戒処分等について発表の有無が分かる文書紙の文書だけでなくデータも含め,事務処理上必要な期間の満了後に廃棄したとの説明を認めた。
11平成30年度(最情)答申第46号(平成30年11月16日)裁判官が所持する裁判書の写し等の廃棄に関する申合せの作成経緯照会,回答及び報告の10文書を特定した。これら以外の協議文書は申合せの作成後に不要となり廃棄したとの説明を認めた。
12平成30年度(最情)答申第70号(平成31年2月22日)第40期から第48期までの司法修習開始時点の司法修習生配属現員表探索しても見当たらなかった。現行基準の保存期間は30年であるが,当時の保存期間は不明であり,保存期間経過後又は用済み後に廃棄されたものと考えられるとの説明を認めた。

1 短期保有文書として廃棄済みとされた例

第1号,第3号,第4号,第7号,第8号及び第10号は,対象文書又はその一部について,短期保有文書として必要期間の満了後に廃棄したとの説明が認められた例です。

(続きを読む...)最高裁判所の司法行政文書-短期保有・廃棄・不存在に関する答申12件(AIリライト)

最高裁判所が作成又は取得していないとされた司法行政文書

○裁判所の職員は,文書管理者の指示に従い,裁判所における経緯も含めた意思決定に至る過程及び裁判所の事務の実績を合理的に跡付け,又は検証することができるよう,処理に係る事案が軽微なものである場合を除き,司法行政文書を作成しなければなりません(「司法行政文書の管理について(通達)」(平成24年12月6日付の最高裁判所事務総長通達)第3.1。なお,公文書等の管理に関する法律4条参照)。
○最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会によれば,以下の司法行政文書は最高裁判所が作成又は取得していないそうです。

1 最高裁秘書課が視察基本日程(案)を作成する際に使用している事務処理要領その他これに類する文書(平成27年度(最情)答申第7号(平成28年2月23日答申))
→ 「最高裁判所事務総長の説明によれば,視察基本日程(案)は,秘書課で作成又は確認をしているが,その作成又は確認は,その都度個別に検討して行っており,およそ事務処理要領等を作成する必要はなく,それを用いなくても事務処理に支障は生じないというのであるところ,事務視察が,視察者,視察先,視察の時期等によってその内容が異なるものであり,視察基本日程(案)に記載すべき日時や視察内容等の具体的な内容も,個別の視察に応じてその都度検討すべきものであることは容易に想像できるところであるから,上記の説明は合理的であるということができる。」そうです。

2 平成27年4月の人事異動に際して,全国の裁判官(簡裁判事は除く。)の希望勤務地を取りまとめた文書(平成27年度(最情)答申第8号(平成28年2月23日答申))
→ 「本件開示申出文書は,平成27年4月の人事異動に際して,全国の裁判官(簡易裁判所判事は除く。)の希望勤務地を取りまとめた文書であるところ,最高裁判所事務総長の説明によれば,全国の裁判官は,他に転任する場合の任地希望等をカードに記載して,最高裁判所事務総局人事局長に提出するとのことである。
そうすると,人事局においては,各裁判官がカードに記載した任地希望を把握していることになるが,同説明によれば,人事局が人事異動計画の原案の立案等をする際には,各カードを個別に確認すれば足り,その記載内容を集計する必要はなく,現にその集計は行っていないというのである。人事異動事務が,任地希望を一つの考慮要素としつつも他の要素を含めて総合的に勘案して個別に検討すべき性質の事務であることに照らせば,上記説明に不合理な点は見当たらない。」そうです。

3 下級裁判所裁判官指名諮問委員会における,年度ごとの重点審議者の数が分かる文書(平成15年度以降の分)(平成27年度(最情)答申第10号(平成28年3月23日答申))
→ 「下級裁判所裁判官指名諮問委員会は,下級裁判所裁判官指名諮問委員会規則(平成15年2月26日最高裁判所規則第6号)に基づき設置され,裁判官,検察官,弁護士及び学識経験のある者のうちから最高裁判所が任命した11人の委員で組織される委員会(同規則5条,6条)であり,最高裁判所の諮問に応じて,下級裁判所裁判官として任命されるべき者を裁判所法40条1項の規定により指名することの適否その他同項の規定による指名に関する事項を審議すること等の事務をつかさどるものである(同規則2条)。最高裁判所事務総長の説明によれば,重点審議者とは,同委員会において実質的な審議を行うため,多数の指名候補者の中から,指名の適否について慎重な判断を要する者として振り分けられたものであるところ,同委員会における審議が,上記のとおり,最高裁判所の諮問に応じて,下級裁判所裁判官として任命されるべき者を指名することの適否等についてされるものであることからすると,重点審議者は,各諮問に応じ,審議対象となった者の中から,個別具体的な事情により振り分けられるものであり,その数を調整する必要があるとは認められない。また,上記の説明を前提にすると,下級裁判所裁判官指名諮問委員会において各重点審議者に係る指名の適否についての審議が終了すれば,当該諮問に係る審議対象者のうち何人が重点審議者に振り分けられたかという情報は,同委員会においても,また,その庶務を処理する最高裁判所事務総局総務局においても,その後の事務を遂行する上で必要なものではなくなるというのが合理的である。
以上を総合すると,諮問ごとの重点審議者の数という情報をその後の事務処理上保有する必要性は認められず,したがって,年度ごとの重点審議者の数を集計した文書を保有すべき事情も認められない。」そうです。

4 ①平成26年中に終結した,民事事件及び行政事件の上告事件及び上告受理申立事件について,小法廷ごとに,持ち回り審議事件と審議室審議事件の事件数が分かる文書,及び②平成26年中に終結した,民事事件及び行政事件の上告事件及び上告受理申立事件について,小法廷ごとに,調書決定(民事訴訟規則50条の2)で終結した事件数が分かる文書(平成28年度(最情)答申第2号(平成28年4月14日答申))
→ 「最高裁判所事務総長の説明によれば,持ち回り審議と期日審議の事件の数及び調書決定で終結した事件の数は,いずれも,最高裁判所における事件管理システムには入力項目がなく,統計報告の対象ともされていないのであって,他にこれらに係る事件数は把握していないから,本件各開示申出文書はいずれも作成し,又は保有していないとのことである。
そこで検討すると,最高裁判所事務総長から提出された資料を見分した結果によれば,事件管理システムの入力画面には,個々の事件が持ち回り審議又は期日審議のいずれの方法で行われたかについてや,調書決定で終結したか否かについての入力項目がないことが認められるから,事件管理システムから持ち回り審議の事件の数,期日審議の事件の数及び調書決定で終結した事件の数を把握することはできないと認められる。また,これらの事件の数は,いずれも統計報告の対象ともされていないことが認められ,他に,これらの事件の数を把握する方法があることはうかがわれない。」そうです。

5 ①司法修習生の兼業許可の具体的基準を定めた文書,及び②司法修習生の実務修習庁会を決定する基準が書いてある文書(平成28年度(最情)答申第3号(平成28年4月14日答申))
→ ①の文書につき,
「司法修習生は,その修習期間中,その修習に専念しなければならないこととされ(裁判所法67条2項),最高裁判所の許可を受けなければ,他の職業に就き,若しくは財産上の利益を目的とする業務を行うこと,すなわち兼職や兼業をすることができないものとされ(規則2条),修習専念義務が課されている。また,最高裁判所は,司法修習生の行状がその品位を辱めるものと認めるときその他司法修習生について最高裁判所の定める事由があると認めるときは,その司法修習生を罷免することができる(同法68条)とされており,司法修習生には品位保持義務が課されている。
さらに,司法修習生は,修習にあたって知った秘密を漏らしてはならない(規則3条)とされ,高い識見と円満な常識を養い,法律に関する理論と実務を身につけ,裁判官,検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努めなければならない(規則4条)とされているから,司法修習生は,その地位の性質上,当然に中立公正性を保持しなければならないということができる。
そうすると,司法修習生から兼業の許可の申請を受けた最高裁判所としては,司法修習の性質上,その兼業の内容等が,上記のような裁判所法又は規則に定められた修習専念義務,品位保持義務及び中立公正性に抵触しないか否かを判断する必要があるということができ,これらが一種の基準となっていると解することができる一方,それ以上の詳細な具体的な基準を作成することは,兼業許可の制度の運用を硬直化することになりかねないとも考えられる。
また,最高裁判所の職員の口頭説明の結果によれば,平成25年度の司法修習生及び平成26年度の司法修習生についての兼業許可については,上記の裁判所法又は規則上の義務等を考慮して個別に判断する方法で運用されているところ,その許否の判断は適切に行われていると認められる。」そうです。
→ ②の文書につき,
「最高裁判所事務総長は,司法修習生の実務修習庁会については,希望及び具体的事情を勘案して決定しており,基準を定めていないと説明するところ,司法修習生の実務修習庁会の決定事務が,基準を定めなければできない性質のものであるとは認められず,他にその基準が存在することをうかがわせる事情も見当たらない。苦情申出人が主張する司法修習生の人数や予算も,基準の存在を基礎づけるものとはいえない。」そうです。

6 ①平成27年度予算における,裁判官の号別定数が分かる文書,②下級裁判所における指定職相当の裁判官2567人の内訳が分かる文書及び③下級裁判所におけるその他の裁判官1160人の内訳が分かる文書(平成28年度(最情)答申第4号(平成28年4月14日答申))
→ ①の文書につき,
「裁判所職員については,本件対象文書である「平成26年度一般会計予算」の「裁判所職員予算定員及び俸給額表」に級別内訳が記載されているところ,これは,裁判所職員臨時措置法において準用する一般職の職員の給与に関する法律第8条により,予算の範囲内で,職務の級の定数を設定し,又は改定することができ,その定数の範囲内で,職務の級を決定することとされていて,これに基づき級別定数が定められていることによるものと解される。

(続きを読む...)最高裁判所が作成又は取得していないとされた司法行政文書

検察審査会の情報公開――検察審査会行政文書の開示,苦情の申出及び審査委員会の答申(AIリライト)

目次

第1 検察審査会の情報公開の基本的な枠組み

1 検察審査会は情報公開法の適用対象ではない
2 根拠は最高裁判所の通達から全検察審査会の申合せへ移った

第2 開示の対象となる文書と対象外の文書

1 検察審査会行政文書の定義
2 審査事件の審査活動に関する文書は開示手続の対象とならない
3 議決要旨の掲示に関する答申と公表方法の改正
4 会議録には開示対象になるものとならないものがある

第3 開示の申出の手続

1 申出から通知まで
2 開示の実施方法

第4 不服がある場合の苦情の申出

1 検察審査会情報公開・個人情報保護審査委員会
2 苦情の申出の期間と流れ
3 議決の適否自体は行政事件訴訟で争うことができないこと

(続きを読む...)検察審査会の情報公開――検察審査会行政文書の開示,苦情の申出及び審査委員会の答申(AIリライト)

岡口基一裁判官に関する司法行政文書―最高裁が不開示・不存在とした文書の記録(平成29年〜平成31年)(AIリライト)

AIでリライトしたこの記事は,岡口基一裁判官(46期)のツイート,分限裁判その他に関して作成又は取得されたとされる裁判所の司法行政文書について,開示を申し出た人に対し最高裁判所が示した「不開示」(存否を明らかにしない対応を含む。)又は「不存在」の判断を,最高裁判所事務総長の理由説明書及び情報公開・個人情報保護審査委員会の答申の原典に当たりながら整理したものです。個々の判断の対象文書,法的根拠及び原典へのリンクを一覧できるようにしています。

取り上げるのは平成29年(2017年)から平成31年(2019年)にかけての開示申出に対する判断です。岡口氏はその後,令和6年(2024年)4月3日に裁判官弾劾裁判所の判決で罷免されましたが,本記事はそれ以前の情報公開をめぐる記録であり,罷免に至る経緯自体は関連記事に譲ります。

目次

第1 この記事について

1 対象・情報源と記事の現在時点
2 岡口基一裁判官をめぐる経緯(平成28年〜令和6年)
3 「開示しない」三つの類型―不開示・存否応答拒否・不存在

第2 開示されなかった文書の一覧
第3 不開示(存否応答拒否を含む。)とされた文書

1 ツイートへの抗議に関して作成・取得した文書
2 下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意の有無
3 東京高裁長官等と岡口判事との会話に関する文書
4 「分限裁判の記録」ブログに関して作成・取得した文書
5 ツイート内容を印刷した文書
6 分限裁判の審問期日に関して作成・取得した文書
7 分限事件担当の最高裁調査官氏名文書の「備考」欄

第4 不存在とされた文書

1 平成28年6月21日の口頭注意の際に作成した文書
2 ツイッター投稿に関し東京高裁が作成した全文書

(続きを読む...)岡口基一裁判官に関する司法行政文書―最高裁が不開示・不存在とした文書の記録(平成29年〜平成31年)(AIリライト)

司法に関する情報公開の推進(平成13年6月12日付の司法制度改革審議会意見書)

・ 司法情報公開を含む司法制度改革審議会意見書の主要提言の実現状況については,「司法制度改革審議会意見書の実現状況―実現した改革と実現しなかった目標(AI作成)」参照。

○平成13年6月12日付の司法制度改革審議会意見書の「Ⅳ 国民的基盤の確立」には以下の記載があります。

3. 司法に関する情報公開の推進

裁判所、検察庁、弁護士会における情報公開・提供を推進すべきである。

    最高裁判所、法務省及び弁護士会(日本弁護士連合会、単位弁護士会)においては、従前から、それぞれホームページを開設するなどして、各種情報を提供しているところである。さらに、本年4月1日、行政庁(検察庁を含む。)の情報公開制度が発足したことに伴い、裁判所においても、その保有する司法行政文書について、内部規定を定め、これに準じた情報の公開を行うこととした。また、日本弁護士連合会においても、業務、財務、懲戒手続、専門分野その他弁護士に関わる情報等に関する情報公開・提供の拡充について検討しているところである。
    既述のように、司法の様々な場面において国民の参加を拡充する前提としても、司法の国民に対する透明性を向上させ、説明責任を明確化することが不可欠である。このような見地から、裁判所、検察庁、弁護士会においては、情報公開・提供を引き続き推進すべきである。

判例情報をプライバシー等へ配慮しつつインターネット・ホームページ等を活用して全面的に公開し提供すべきである。

    裁判所においては、従来、先例的価値のある判例情報については、最高裁判所及び高等裁判所の判例集のほか、知的財産権などの特定の分野についての判例集の編集刊行を行ってきた。また、民間の判例雑誌、データベース等によっても、判例情報の提供がなされている。個々の事件の判決については、民事訴訟法上誰でも閲覧が可能であり、利害関係人については謄写も可能である。
    さらに、判例情報への国民の迅速かつ容易なアクセスを可能にするため、最高裁判所では、平成9年にホームページを開設し、現在、(i)最近の主要な最高裁判所の判決全文、(ii)東京高等・地方裁判所及び大阪高等・地方裁判所を中心とした下級裁判所の知的財産権関係訴訟の判決全文を速報していることに加え、(iii)過去の下級裁判所の知的財産権関係訴訟に関する裁判例をデータベースにより公開している。
    判例情報の提供により、裁判所による紛争解決の先例・基準を広く国民に示すことは、司法の国民に対する透明性を向上させ、説明責任を明確化するというにとどまらず、紛争の予防・早期解決にも資するものである。
    裁判所は、判例情報、訴訟の進行に関する情報を含む司法全般に関する情報の公開を推進していく一環として、特に判例情報については、先例的価値の乏しいものを除き、プライバシー等へ配慮しつつインターネット・ホームページ等を活用して全面的に公開し提供していくべきである。

司法に関する情報提供・公開の在り方に関する平成12年6月当時の裁判所の説明

○最高裁判所が平成12年6月13日開催の第22回司法制度改革審議会配付資料として提出した,「国民がより利用しやすい司法の実現」及び「国民の期待に応える民事司法の在り方」に関する裁判所の意見8頁及び9頁には,以下の記載があります。
判決データを全てデータベースに保存して,外部からの閲覧・謄写の請求にも迅速に対応できるようにするという話はどうなったのかしら?という気がします。

3 司法に関する情報提供・公開の在り方
   先例的価値のある判例情報を積極的に公開していくことは紛争防止や解決にとって重要であると考えている。従来,先例的価値のある判例情報について,最高裁判所及び高等裁判所の判例集のほか,下級裁判所については,知的財産権などの特定の分野についての判例集の編集刊行を行ってきたが,国民のニーズに応え,迅速かつ容易な判例情報へのアクセスを可能にするため,平成9年にホームページをインターネット上に開設して,①最近の主要な最高裁の判決全文,②東京高地裁及び大阪高地裁を中心とした下級裁判所の知的財産権訴訟の判決全文を速報している(最高裁のホームページにはこれまで70万件近いアクセスがある。)。さらに,裁判所は,民間の判例雑誌社やマスコミからの依頼に対し,広く判例情報を提供しており,民間の判例雑誌という媒体で下級裁判所を含めた判例情報の提供がされているところ(判例時報,判例タイムズがそれぞれ年間700件から800件)であり,また,民間においても,各種のデータベース(判例マスター,判例体系データベース)が開発,販売されているところである。
また,事件情報として,個々の事件の判決へのアクセスについては,民事訴訟法でだれでも閲覧が可能であり,利害関係人であれば謄写も可能である。
裁判所としては,判例情報に対する国民のニーズの高まりに対応して,インターネットを活用するなど,今後とも,先例的価値のある判例情報について即時的確に公開していきたい。具体的には,最高裁及び高裁の判例について,過去に判例集に登載されたもののデータベースを構築し,これを公開していく準備を進めているところである。さらに,下級裁判所の判例情報の公開については,地裁の民事事件だけでも年間10数万件に及ぶ多数の下級裁判所の判決の中から,先例的価値のある重要なものをいかにして選別していくか,民間の判例雑誌等との役割分担をどう考えるのかという問題はあるが,少なくとも,国民のニーズが大きいと思われる一定の分野の下級裁判所の判決については,データベースを構築し,順次ホームページ上で公開していくことが必要ではないかと考えている。さらに,裁判所内部におけるOA化を推進することにより,将来的には,各庁ごとに判決データをすべてデータベースに保存していくことを考えており,これにより,検索等が容易化することから,外部からの閲覧,謄写の請求にも迅速に対応できることとなる。更に進んで,このデータベースへのアクセスを広く許すことについては,プライバシー(例えば,人事訴訟事件)や営業秘密を侵害しないか,謄写を利害関係人に限る現行法に抵触しないか,多数の判決を重要なものとそうでないものを未選別のままに公開することが利用者にとってかえって不便ではないかなどの検討すべき問題があると考えている。

最高裁判所,司法研修所及び裁判所職員総合研修所の標準文書保存期間基準

○最高裁判所,司法研修所及び裁判所職員総合研修所の標準文書保存期間基準を以下のとおり掲載しています。司法行政文書の具体例及びその保存期間等が書いてあります。
○「裁判所の文書管理」及び「最高裁判所事務総局等の組織」も参照して下さい。

1 最高裁判所裁判部の標準文書保存期間基準
① 第一訟廷事務室(平成27年3月13日)
② 第二訟廷事務室(平成26年4月1日)

2 最高裁判所事務総局の課の標準文書保存期間基準
① 秘書課(平成27年7月3日)
② 広報課
③ 情報政策課(平成27年5月13日)

3 最高裁判所事務総局の局のうち,官房三局の標準文書保存期間基準
① 総務局第一課(平成27年4月30日)
② 総務局第二課(平成26年4月1日)
③ 総務局第三課(平成27年6月10日)
④ 人事局給与課
⑤ 人事局任用課(平成27年3月27日)
⑥ 人事局職員管理官室
⑦ 人事局能率課
⑧ 人事局公平課
⑨ 人事局調査課(平成27年3月13日)
⑩ 経理局総務課(平成27年3月10日)
⑪ 経理局主計課(平成27年3月5日)
⑫ 経理局営繕課(平成27年3月5日)

(続きを読む...)最高裁判所,司法研修所及び裁判所職員総合研修所の標準文書保存期間基準

裁判所の不開示決定は取消訴訟の対象になるか―司法行政文書の開示と処分性(AIリライト)

裁判所が保有する司法行政文書の開示を求めたところ不開示とされた場合,その不開示決定を取消訴訟で争うことができるかを整理します。結論として,裁判所の不開示決定は行政事件訴訟法上の「処分」に当たらず,取消訴訟の対象となりません。本稿では,その理由(処分性の意義,情報公開法上の「行政機関」の範囲,開示の根拠となる内部規範)を東京地方裁判所平成22年12月10日判決に即して説明し,あわせて,あえて提訴した場合に生じる手続上の帰結(口頭弁論を経ない却下,判決言渡期日の告知の要否)と,衆議院・参議院の事務局の不開示決定についても取り上げます。現行法令はe-Gov法令検索で,裁判例は裁判所ウェブサイト等で確認しています(確認日・2026年7月18日)。

目次

第1 裁判所の不開示決定に処分性がないこと

1 抗告訴訟の対象となる「処分」の意義
2 裁判所は情報公開法上の「行政機関」に含まれないこと
3 司法行政文書の開示は要綱・依命通達という内部規範に基づくこと
4 東京地方裁判所平成22年12月10日判決の判断

第2 不開示決定を争う訴えの手続上の帰結

1 口頭弁論を経ずに却下判決が下される場合(民事訴訟法140条)
2 訴状・判決正本の送達を要しない場合
3 判決言渡期日を事前に告知されない場合(民事訴訟規則156条ただし書)

(1) 口頭弁論を経ない却下判決の場合
(2) 訴え却下を是認する控訴棄却判決の場合

第3 議院(国会)事務局の不開示決定

1 衆議院・参議院の情報公開が内規に基づくこと
2 取消訴訟の可否と苦情の申出

(続きを読む...)裁判所の不開示決定は取消訴訟の対象になるか―司法行政文書の開示と処分性(AIリライト)

判決要旨は誰に交付されるか―広報ハンドブック,平成28年・平成29年の事務連絡,美濃加茂市長事件及び情報公開答申(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と基準日第2 判決要旨の性格と取扱いの変遷1 広報ハンドブックの記載の変化2 平成28年12月20日付事務連絡3 平成29年7月25日付事務連絡4 経過の一覧第3 美濃加茂市長事件の判決要旨と司法行政文書の開示1 事件の経過と判決要旨の交付をめぐる指摘2 名古屋高裁の不開示通知と最高裁の理由説明書3 平成29年度(情)答申第4号4 令和7年度(情)答申第95号による区別第4 関連記事第5 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 司法行政文書・答申4 その他の資料
第1 この記事の対象と基準日

この記事は,裁判所が報道機関向けに作成する「判決要旨」について,平成28年から平成29年にかけて作成・公表された司法行政上の資料(広報ハンドブック,事務連絡,司法行政文書の不開示通知及び情報公開・個人情報保護審査委員会の答申)を整理するものである。
調査の基準日は令和8年9月18日である。
高等裁判所及び最高裁判所における刑事訴訟事件の終局区分別既済人員(平成12年から令和7年まで)と,控訴審の破棄自判に関する最高裁判例は,刑事控訴審・上告審の終局区分別統計―平成12年~令和7年の破棄・棄却の推移と控訴審の破棄自判に関する最高裁判例(AI作成)で扱っている。

判決要旨の交付を申し出る際の現在の実務,申出先及び受領後の扱いは,判決要旨を弁護士が受け取るには―申出時期,便宜供与,静岡地裁令和7年11月27日判決,保存及び情報公開(AI作成)で扱っている。
広報ハンドブック(令和2年3月版)の「6-4 判決要旨等」の全文は,報道機関向けの判決要旨とは―裁判所が配る要旨・骨子の作成手順,分量の目安及び交付先(広報ハンドブック6-4)(AI作成)に掲載している。
この記事は,その前提となった資料の内容と経過を確認するための記事として位置付ける。

判決要旨は正式な判決書そのものではない。
上訴の判断では,判決要旨だけでなく,主文,正式な判決書及び上訴期間を別に確認する必要がある。

第2 判決要旨の性格と取扱いの変遷
1 広報ハンドブックの記載の変化
(1) 平成25年4月版

最高裁判所事務総局広報課の「広報ハンドブック(平成25年4月版)」の「6-4 判決要旨等」には,「要旨・骨子は,速報性が要求される報道機関の利用のために裁判部に特別に作成してもらったものであり,そのような報道機関以外に提供することは基本的に予定されていない。」との記載があった。
同じ箇所には続けて,要旨・骨子も裁判所の広報業務の一環として作成された司法行政文書であり,司法行政文書の開示の対象になり得るものとして扱う必要がある旨が記載されていた。
この記載は「基本的に予定されていない」という表現であり,報道機関以外への提供を禁止する文言ではなかった。

(2) 令和2年3月版

「広報ハンドブック(令和2年3月版)」55頁~57頁の「6-4 判決要旨等」では,判決要旨は速報性が要求される報道機関の利用のために特別に作成したものであるとしつつ,刑事訴訟事件では訴訟関係人から判決要旨の交付を求められることがあるとされた。
そのような場合には,裁判体の意見を踏まえ,司法行政上の便宜供与として,当該訴訟関係人に対し,報道機関交付用の判決要旨を交付することが相当であると記載されている。
同版は,判決要旨等が司法行政文書の開示の対象になり得ることにも引き続き触れている。

同版の該当箇所の全文は,報道機関向けの判決要旨とは―裁判所が配る要旨・骨子の作成手順,分量の目安及び交付先(広報ハンドブック6-4)(AI作成)に掲載している。
広報ハンドブックは裁判所職員向けの司法行政上の参考資料であり,訴訟法上の交付請求権を定める法令ではない。

判決要旨の性格については,裁判所の判決要旨は外部に出してもよいように手を加えたものであり,報道とは異なり正確であるとの評価を述べる次のX投稿もある。

裁判所のいう「判決要旨」は、裁判所が外部に出してもよいように判決の内容を削る方向で手を加えたもの。マスコミの報道と異なって「要約不相当」がありえず、非常に正確。クソ長くて読みにくく、webメディアとしては「読まれない」リスクがあるが、ハフポスが全文を載せたのは非常に価値のある試み。 https://t.co/FNcT4wpZHL

— らめーん (@shouwarame) September 4, 2021

2 平成28年12月20日付事務連絡
(1) 訴訟関係人への交付を相当とした内容

最高裁判所事務総局広報課長及び刑事局第二課長は,平成28年12月20日付で,高等裁判所事務局長及び地方裁判所事務局長に宛てて,事務連絡「訴訟関係人に対する刑事訴訟事件の判決要旨の交付について」を発出した。
同事務連絡は,刑事訴訟事件では,判決書原本の作成が判決宣告後になり判決書謄本の交付に時間を要する場合などに,訴訟関係人から判決要旨の交付を求められることがあるとしている。
その場合には,事務局において,裁判体の意見を踏まえ,司法行政上の便宜供与として,当該訴訟関係人に報道機関交付用の判決要旨を交付することが相当であると考えられるとしている。

(続きを読む...)判決要旨は誰に交付されるか―広報ハンドブック,平成28年・平成29年の事務連絡,美濃加茂市長事件及び情報公開答申(AI作成)