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裁判事務に関する文書の意義―司法行政文書・裁判文書との違いと国立公文書館への移管(AI作成)

裁判所が扱う文書は,「裁判事務に関する文書」と「司法行政文書」とに分かれ,このうち歴史的に重要なものが国立公文書館へ移管されます。
AIで作成したこの記事では,「裁判事務に関する文書」がどのようなものを指すか,それが「司法行政文書」及び「裁判文書」とどのように区別されるか,そして司法行政文書の開示請求や国立公文書館への移管との関係でどう扱われるかを,最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の答申と最高裁判所事務総局職員による解説をもとに整理します。現行の司法行政文書開示及び公文書管理の枠組みを前提とし,内容は2026年7月時点で確認したものです。

第1 裁判所の事務と文書の区分

裁判所の事務は,「裁判事務」と「司法行政事務」とに区別されます。この区別が,裁判所で作成・取得される文書の区分の出発点になります。最高裁判所事務総局の職員による解説は,この区別を次のように説明しています。

1 裁判事務と司法行政事務

裁判事務とは,裁判所が本来の使命である「裁判」を行う事務をいいます。裁判所法3条1項は,裁判所が「一切の法律上の争訟を裁判し,その他法律において特に定める権限を有する」と定めており,これに関する事務が裁判事務に当たります。

これに対し司法行政事務とは,裁判所という組織が「裁判」を行うために必要な人的態勢及び物的設備を供給・維持し,裁判事務が円滑・効率的に行われるよう図ることを主たる内容とする事務をいいます。人事,会計,庁舎管理,統計,広報などがこれに当たります。

2 裁判文書と司法行政文書

この事務の区別を,裁判所で作成される文書に当てはめると,裁判事務において作成される文書と,司法行政事務において作成される文書とに分かれます。前者を「裁判文書」と呼び,後者の「司法行政文書」と区別します。

司法行政文書は,人事・会計・組織などに関するもので,行政府省が保有している文書と類似しているものが多いといえます。これに対し裁判文書は,判決書や事件記録のように,行政府省の文書とは性質が全く異なる点に特色があります。次に述べるとおり,情報公開(開示請求)の場面では,このうち司法行政文書だけが開示手続の対象となります。

第2 「裁判事務に関する文書」の範囲

司法行政文書の開示請求の場面では,「裁判事務に関する文書」という概念が用いられます。これは第1で述べた「裁判文書」とほぼ重なる概念ですが,最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の答申は,その範囲を判決書や事件記録よりも広くとらえています。

1 審査委員会が示した定義

審査委員会は,司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱にいう「司法行政文書」(裁判所の職員が職務上作成し,又は取得した司法行政事務に関する文書等であって,裁判所の職員が組織的に用いるものとして裁判所が保有しているもの)には裁判事務に関する文書は含まれないとした上で,裁判事務に関する文書の範囲について次のように述べています。

裁判事務に関する文書には,事件記録や事件書類(事件に関する書類で記録から分離されたもの)に限られず,専ら裁判事務のために用いるものとして作成し,又は取得した文書で,裁判所の裁判部において管理しているものが含まれると解するのが相当である。

(平成27年度(情)答申第5号・平成28年3月8日答申)

2 事件記録・事件書類に限られないこと

この定義の要点は,裁判事務に関する文書が,個々の事件の「事件記録」や「事件書類」に限られない点にあります。裁判所の職員が作成又は取得した文書であっても,専ら裁判事務のために用いるものとして裁判部(裁判官が属する部門)で管理している文書であれば,司法行政文書ではなく,裁判事務に関する文書に当たります。

この定義が示された平成27年度(情)答申第5号の事案では,成年後見人の選任に関して東京家庭裁判所が外部の団体との間で取り交わしていた文書(後見人候補者名簿を含む。)が問題となりました。審査委員会は,これらが後見人選任の審判という裁判事務のために家庭裁判所の裁判部が取得し,裁判部で管理している文書であるとして,司法行政文書には当たらないと判断しています。裁判所が外部から取得した名簿のような文書であっても,用いられる目的と管理する部門によっては裁判事務に関する文書になり得るということです。

第3 司法行政文書の開示請求との関係

1 開示手続の対象は司法行政文書に限られること

裁判所に対する情報公開は,行政機関に対する情報公開法とは別に,最高裁判所が定める「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱」に基づいて運用されています。同要綱による開示手続の対象は司法行政文書に限られ,裁判事務に関する文書は司法行政文書ではないため,開示手続の対象になりません。

そのため,ある文書が裁判事務に関する文書に当たると判断されると,その文書は開示手続の対象外(不開示)とされます。裁判事務に関する文書のうち事件記録・事件書類そのものについては,別途,民事訴訟法や刑事訴訟法などが定める記録の閲覧・謄写の制度によって取り扱われます。

2 開示手続の対象外とされた裁判事務に関する文書の例

審査委員会は,次のような文書について,裁判事務に関する文書に当たり司法行政文書の開示手続の対象とならないと判断しています。いずれも裁判所の裁判部で用いられ又は管理されている文書である点が共通します。

答申(答申日)対象となった文書
平成27年度(情)答申第3号
(平成28年3月8日)
弁護士が後見人の場合に別の弁護士を後見監督人として付ける運用の基準を定めた文書(東京家庭裁判所)
平成27年度(情)答申第4号
(平成28年3月8日)
破産管財人の報酬を決定する基準・目安が分かる文書(神戸地方裁判所。文書は不存在とされた事案)
平成27年度(情)答申第5号
(平成28年3月8日)
成年後見人の選任に関して外部の団体との間で取り交わした文書(後見人候補者名簿を含む。東京家庭裁判所)
平成28年度(情)答申第7号
(平成28年9月1日)
民事第21部の事務処理要領(東京地方裁判所)
平成30年度(情)答申第24号
(平成31年3月15日)
本人死亡後の後見等監督に関する運用が書いてある文書(東京家庭裁判所)
平成31年度(情)答申第2号
(平成31年4月19日)
特定の裁判官を戒告の懲戒処分とした際に作成・取得した文書(名古屋高等裁判所)

これらの答申の全文は,最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会のウェブページから確認できます。下級裁判所の司法行政文書に関する答申の整理は,司法行政文書開示請求の対象とならないとされた下級裁判所の司法行政文書も参照してください。

第4 国立公文書館への移管との関係

1 移管の対象は裁判文書と司法行政文書に限られること

裁判所が保有する歴史的に重要な文書は,保存期間の満了後,国立公文書館へ移管されます。最高裁判所事務総局の職員による解説「裁判所が保有する歴史公文書の移管」(国立公文書館『アーカイブズ』第38号40頁。平成21年8月5日の申合せを紹介したもの)によれば,移管の対象となるのは,次の2種類の文書です。

  1. 歴史資料として重要な判決書等の裁判文書
  2. 裁判所の過去の主要な活動を跡づけるために必要な,司法行政に係る重要な政策等裁判所の運営上の重要な事項に係る意思決定及びその過程等が記録された司法行政文書

行政府省では移管されるのは行政文書(司法行政文書に相当するもの)ですが,裁判所の場合は判決書等の裁判文書も移管される点に特色があります。ここでいう裁判文書とは,裁判事務に関して作成される文書であり,「事件記録」と「事件書類」とがあります。民事事件の判決原本は,記録から分離された「事件書類」に当たり,事件記録よりも長い期間保存された上で移管の対象とされます(同解説当時,事件記録の保存期間は5年,民事事件の判決原本は50年と説明されています。記録の保存及び特別保存の運用は令和5年5月の最高裁判所事務総局の調査報告書等を経て見直されているため,現行の取扱いは事件記録等保存規程を確認してください。)。民事事件の判決原本の移管については,民事事件の判決原本の国立公文書館への移管で詳しく取り上げています。

2 移管の経路は内閣総理大臣を経由すること

移管の法的な枠組みは,公文書等の管理に関する法律14条に定められています。同条は,行政機関を除く国の機関について,次のように定めています。

  • 国の機関は,内閣総理大臣と協議して定めるところにより,保有する歴史公文書等の適切な保存のために必要な措置を講ずる(1項)。
  • 内閣総理大臣は,その協議による定めに基づき,国立公文書館において保存する必要があると認める場合には,当該国の機関との合意により,その移管を受けることができる(2項)。この場合,あらかじめ国立公文書館の意見を聴くことができる(3項)。
  • 内閣総理大臣は,移管を受けた歴史公文書等を国立公文書館の設置する公文書館に移管する(4項)。

最高裁判所はこの「国の機関」に当たると解されます。したがって,最高裁判所が協議し,文書を移管する相手方は,法令上は内閣総理大臣であり,国立公文書館ではありません。裁判所から内閣総理大臣に移管された文書が,内閣総理大臣によって国立公文書館へ移管される,という二段階の経路になります。この点は審査委員会も,裁判所の歴史公文書等の移管方法は内閣総理大臣との間で協議することになっていて国立公文書館との間で協議することにはなっていないとして,最高裁判所が国立公文書館との間で移管方法に関する文書を取り交わした事実はないと判断しています(平成28年度(最情)答申第18号・平成28年6月28日答申)。

この移管は,平成21年8月5日付けの内閣総理大臣・最高裁判所長官申合せ「歴史資料として重要な公文書等の適切な保存のために必要な措置について」及び平成25年6月14日付けの実施・移管手続に関する各申合せに基づいて行われています。司法行政文書の移管の枠組みは,司法行政文書の国立公文書館への移管で整理しています。

3 事件記録・事件書類に当たらない裁判事務に関する文書は移管されないこと

以上を整理すると,移管の対象となる裁判文書は,判決書等の「事件記録」及び「事件書類」です。他方,第2で述べたとおり,裁判事務に関する文書には,事件記録・事件書類に当たらないもの(例えば,裁判官等が裁判事務に関して申合せを行った結果を記載し,裁判部で管理している文書)も含まれます。

このような文書は,移管の対象である「裁判文書」(事件記録・事件書類)には当たりません。また,司法行政文書にも当たりません。審査委員会は,事件記録に該当しないものの裁判に密接に関連する文書について,「司法行政事務に関する文書ではないのであるから,司法行政文書に該当しないことは明らかである」と述べ,これらが移管すべき「歴史資料として重要な公文書等」(判決書等の裁判文書及び重要な政策等に係る司法行政文書)に当たらないと判断しています(平成28年度(最情)答申第24号・平成28年7月15日答申)。

審査委員会は,別の答申でも,このような文書は専ら裁判所の裁判部において作成・保管されるものであり,その内容は個別の裁判における審理及び判断の作用と密接に関連する場合が少なくないため,司法行政の作用である通達等によって一律に管理方法を規律することは裁判の独立との関係で相当でない,という趣旨を述べています(平成28年度(最情)答申第21号・平成28年7月15日答申)。

したがって,裁判事務に関する文書のうち,事件記録・事件書類に当たらないものは,裁判文書にも司法行政文書にも該当しないため,国立公文書館への移管の対象とはなりません。裁判関連の文書と国立公文書館への移管の関係については,裁判関連文書は国立公文書館への移管が予定されていないことも参照してください。

出典

法令

公文書・答申

  • 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会 答申等の一覧
  • 平成27年度(情)答申第5号(平成28年3月8日) 答申書PDF
  • 平成27年度(情)答申第3号(平成28年3月8日) 答申書PDF
  • 平成27年度(情)答申第4号(平成28年3月8日) 答申書PDF
  • 平成28年度(情)答申第7号(平成28年9月1日) 答申書PDF
  • 平成28年度(最情)答申第18号(平成28年6月28日) 答申書PDF
  • 平成28年度(最情)答申第21号(平成28年7月15日) 答申書PDF
  • 平成28年度(最情)答申第24号(平成28年7月15日) 答申書PDF
  • 平成30年度(情)答申第24号(平成31年3月15日) 答申書PDF
  • 平成31年度(情)答申第2号(平成31年4月19日) 答申書PDF

文献

  • 長谷川久美・有井広光「裁判所が保有する歴史公文書の移管」国立公文書館『アーカイブズ』第38号40頁(2010年) PDF

ウェブ資料

  • 国立公文書館デジタル展示「公文書の世界 25.司法文書の移管(2)―裁判文書(司法府より)」 ページ