1 昭和29年1月1日の,事件記録等保存規程の施行
2 昭和40年1月1日の,事件記録等保存規程の施行
3 平成6年及び平成7年の,国立大学法学部への移管作業
4 平成12年度からの民事判決原本の国立公文書館への移管作業
5 保存期間満了後の民事事件の判決書等の国立公文書館への移管
6 国立公文書館への移管作業に関する細目
7 国立公文書館への裁判文書の運搬
8 関連記事その他
(1) 最高裁判所は,昭和29年1月1日,事件記録等保存規程(昭和28年12月5日最高裁判所規程第9号)を施行しました。
(2) 民事事件の判決原本は引き続き永久保存とされました。
2 昭和40年1月1日の,事件記録等保存規程の施行
(1) 最高裁判所は,昭和40年1月1日,事件記録等保存規程(昭和39年12月12日最高裁判所規程第8号)を施行しました。
民事事件の判決原本は引き続き永久保存とされました。
(2) 事件記録等保存規程9条2項は,「記録又は事件書類で史料又は参考記録となるべきものは,保存期間満了の後も保存しなければならない」として,史料等としての特別保存義務を特に定めたにもかかわらず,ほとんど適用されませんでした。
3 平成6年及び平成7年の,国立大学法学部への移管作業
(1)ア 最高裁判所は,平成4年1月23日,事件記録等保存規程を改正し,平成6年1月1日以降,判決確定から50年を経過した判決原本(=昭和18年12月31日までに確定した判決原本)を随時,廃棄することを決定し,その例外として,事件記録等保存規程の運用について(平成4年2月7日付の最高裁判所事務総長の依命通達)をもって,特別保存に付するものの運用の基準を明らかにしました。
しかし,判決原本の廃棄を憂慮する国立大学法学部教授等による「判決原本の会」等から最高裁判所に対して廃棄見直しの要望が行われ,平成5年12月,判決原本の一時保管に応じても良いする国立大学法学部が現れたことを踏まえて,判決原本の廃棄を見合わせることとなりました。
その結果,平成6年から平成7年にかけて高等裁判所所在地の10の国立大学法学部に移管作業が実施され,そこで一時保管されることとなりました(国立公文書館HPの「24.司法文書の移管(1)-民事判決原本(国立大学より)」,及び東弁リブラ2021年4月号の「記録を救おう!-歴史的記録としての民事訴訟記録の保存-」参照)。
イ 判決原本を一時保管した国立大学は,北海道大学,東北大学,東京大学,名古屋大学,大阪大学,岡山大学,広島大学,香川大学,九州大学及び熊本大学でした。
(2) 最高裁総務局・人事局各課長,参事官を囲む座談会(平成6年6月3日開催)において以下の発言がありました(全国裁判所書記官協議会会報第127号)。
平成四年一月二三日、事件記録等保存規程の一部が改正され、永久保存とされていた判決原本の保存期間が五〇年とされました。また、平成四年二月七日付最高裁総三第八号事務総長依命通達「事件記録等保存規程の運用について」において、五〇年を超えて保存されている判決原本を直ちに廃棄することはせず、平成六年一月一日以降に廃棄を行うこととになりました。判決原本の永久保存を廃止したのは、多くの裁判所において保存期間五〇年を経過した判決原本が相当の分量になり(保存期間五〇年を経過した判決原本の厚さは、例えば、東京地裁、大阪地裁では、百数十メートルに及んでいる。)、記録庫が狭隘になったこと等の理由によります。
4 平成12年度からの民事判決原本の国立公文書館への移管作業
(1) 国立公文書館法(平成11年6月23日法律第79号)の成立を契機として,国立公文書館への移管を念頭に置いて,国立公文書館,国立大学及び日弁連の関係三者間で協議が行われました。
その結果,平成12年5月31日,段階的に総理府の国立公文書館へ移管することについて三者間での合意が成立しました。
(2) この合意を受けて,内閣総理大臣官房審議官と文部省高等教育局長とが共同で,平成12年9月26日,「国立大学が保管する民事判決原本の総理府(国立公文書館)への移管及び受入れに関する取扱方針」を定めました。
この取扱方針では,平成12年度から12か年計画で民事判決原本の移管を行うというスケジュールが定められました。
(3) 国立公文書館は,平成23年3月4日までに3万6624冊の民事判決原本を受け入れたことにより,当該文書の移管は完了しました(国立公文書館HPの「国立大学からの民事判決原本の移管完了について-民事判決原本利用のための手引-」参照)。
(4) 国立公文書館は,平成23年7月8日,昭和18年までの民事判決原本の目録を公開し,国立公文書館デジタルアーカイブからの検索が可能となりました(国立公文書館HPの「国立大学から民事判決原本の移管がすべて完了。目録公開される。」参照)。
5 保存期間満了後の民事事件の判決書等の国立公文書館への移管
(1) 最高裁判所長官及び内閣総理大臣は,平成21年8月5日,「歴史資料として重要な公文書等の適切な保存のために必要な措置について」という申合せをしました(改正前の国立公文書館法15条1項参照)。
これにより,歴史資料として重要な判決書等の裁判文書について保存期間が満了した場合,国立公文書館に移管されることとなりました(国立公文書館HPの「司法府から国立公文書館への公文書の移管について」参照)。
(2) 「歴史資料として重要な公文書等(裁判文書)移管計画について」(平成22年2月1日付の内閣総理大臣通知)に基づき,最高裁判所全国の下級裁判所は,国立公文書館に対し,平成21年度において,明治8年から昭和30年12月31日までに完結した最高裁判所所蔵の民事判決原本及び事件記録等保存規程9条2項に基づき「特別保存」とされていた事件記録を移管しました(国立公文書館HPの「24.司法文書の移管(2)-裁判文書(司法府より)」参照)。
(3)ア 「歴史資料として重要な公文書等(裁判文書)移管計画について」(平成25年6月26日付の内閣総理大臣通知)に基づき,最高裁判所及び全国の下級裁判所は,国立公文書館に対し,平成25年度から平成29年度にかけて,昭和37年12月31日までに完結した民事判決原本及び事件記録等保存規程9条2項に基づき「特別保存」とされていた事件記録を移管しました。
イ 「歴史資料として重要な公文書等(裁判文書)移管計画について」(平成29年11月21日付の内閣総理大臣通知)に基づき,最高裁判所及び全国の下級裁判所は,国立公文書館に対し,平成30年度から令和4年度にかけて,保存終了の日が平成29年12月31日以前の民事判決原本等を移管する予定です。
愛媛玉串料訴訟の訴訟記録が松山地裁で発見されたのは、国立公文書館への引き継ぎのための作業の中でのことだったという。 https://t.co/W8YPfaTXMV
— 奥山俊宏 (@okuyamatoshi) June 18, 2021
6 国立公文書館への移管作業に関する細目
(1)ア 内閣府大臣官房長及び最高裁判所事務総局秘書課長及び総務局長は,平成25年6月14日,「歴史資料として重要な公文書等の適切な保存のために必要な措置について(平成21年8月5日内閣総理大臣・最高裁判所長官申合せ)の実施について」という申合せをしました(公文書管理法14条1項参照)。
イ 当該申合せでは,保存期間が満了した以下の裁判文書が原則として国立公文書館に移管されることとなりました。
① 民事事件の判決の原本及びその附属書類であって,保存規程第4条に規定する保存期間が満了したもの
② 民事事件の事件記録及び事件書類(判決の原本及びその附属書類を除く。)であって,保存規程第4条に規定する保存期間が満了し,かつ,保存期間の満了の後も保存規程第9条第2項の規定に基づき資料又は参考資料となるべきものとして保存されているもの
③ 裁判所法(昭和22年法律第59号)の施行の日(昭和22年5月3日)前に備え付けられた裁判所の事件に関する事項を登載する帳簿及び諸票であって,裁判所の定める保存期間が満了したもの
(2) 内閣府大臣官房公文書管理課長及び最高裁判所事務総局秘書課長及び総務局第一課長は,平成25年6月14日,「歴史資料として重要な公文書等の内閣総理大臣への移管手続について」という申合せをしました。
7 国立公文書館への裁判文書の運搬
・ 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)130頁には,「国立公文書館への裁判文書の運搬費」として以下の記載があります。
<要求要旨>
平成21年8月5日に,内閣総理大臣(内閣府)と最高裁判所長官との間で,裁判所の保管に係る歴史資料として重要な公文書等を国立公文書館に移管するとの申合せを締結した。この申合せに基づき,下級裁判所等において保管している裁判文書のうち歴史資料として重要なものについて,国立公文書館に移管するために必要な運搬費を要求する。
<実施計画>
平成21年度から平成24年度までの間は昭和30年までに既済となった事件,平成25年度から平成29年度までの間は昭和37年までに既済となった事件に係る裁判文書のうち歴史資料として重要なものについて,国立公文書館に移管した。
平成30年度以降は,昭和42年までに既済となった事件に係る裁判文書のうち国立公文書館に移管することが適当なものを令和4年度までに順次移管する予定である。移管文書は梱包資材を用いて梱包の上,郵送等により国立公文書館つくば分館に送付する。令和4年度の裁判文書の移管簿冊数は,約4100冊程度を予定している。
8 関連記事その他
(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 保存期間の満了後も事実上保存されている事件記録等の処理について(平成28年7月20日付の最高裁判所総務局第三課長の事務連絡)
・ 民事事件の事件記録及び事件書類に関する特別保存の運用について(令和2年2月18日付の東京地裁運用要領)
・ 事件記録等の2項特別保存に関する運用例について(令和2年3月9日付の最高裁判所総務局長の通知)
(2) 自由と正義1997年1月号の「司法資料の保存・利用について」には、民事司法資料及び刑事司法資料の保存・利用のことが書いてあります。
(3) 東弁リブラ2021年4月号に「記録を救おう!-歴史的記録としての民事訴訟記録の保存-」が載っています。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 謄写業者,及び確定した刑事記録の保管場所
・ 加害者の刑事裁判の判決が確定した後の,起訴事件の刑事記録の入手方法
・ 司法行政文書の国立公文書館への移管
・ 公文書管理に関する経緯,公文書館に関連する法律及び国立公文書館