目次
第1 バイクの物損を分けて整理する第2 修理見積書を読む前の資料1 事故前の状態を示す2 事故後の全体像を撮影する第3 バイク固有の修理箇所1 操舵・前輪周辺2 フレーム・後輪・駆動系3 接触損傷と滑走損傷第4 相当修理費と経済的全損1 修理費の必要性・相当性2 修理費と事故時価額を比較する3 残存価値と処分第5 カスタム部品と付属品1 本体と分けた一覧を作る2 購入額がそのまま損害額になるとは限らない第6 ヘルメット・プロテクター・着衣1 証拠として先に保存する2 事故時の価値を示す3 通信機器その他の携行品第7 レッカー・保管・代替交通費1 レッカー代と保管料2 代車料等第8 請求資料の作り方1 損害品一覧2 相手方へ確認を求める前に処分しない3 損害額が不明でも資料を尽くす第9 出典及び関連記事1 法令2 実務資料3 関連記事
第1 バイクの物損を分けて整理する
バイク事故の物損は,①バイク本体の修理費,②経済的全損の場合の車両時価額,③カスタム部品・付属品,④ヘルメット・プロテクター・着衣等の装備品,⑤レッカー・保管等の付随費用に分けて整理する。
購入価格又は修理見積額をそのまま請求額とするのではなく,事故による損傷か,必要で相当な修理か,事故直前の価値はいくらかを項目ごとに立証する。バイクは転倒後に路面を滑走するため,四輪車との最初の接触損傷と,路面との二次接触による損傷を分ける必要がある。
過失割合,すり抜け,非接触転倒及び証拠保全の全体像は,交通事故でバイクが関係する場合で整理する。
本記事は,バイク本体・部品・装備品が現存し,修理見積書,写真又は市場資料を収集できる通常の物損整理を中心に扱う。事故車を既に処分し,修理見積書もない場合の代替資料,机上推計,私的査定報告書及び民事訴訟法248条については,事故車を処分済みで修理見積書がない場合の物損立証で説明している。
第2 修理見積書を読む前の資料
1 事故前の状態を示す
車名,型式,初度登録年,車台番号,走行距離,車検・点検記録,事故歴,整備歴及び事故前の写真を揃える。中古で購入した場合は,売買契約書,注文書及び納車時の状態記録を保存する。
事故前から存在した傷,錆,消耗又は不具合と,事故で生じた損傷を区別する。事故前の状態が分かる写真が少ない場合でも,点検記録,整備工場の作業履歴,販売店の掲載写真及びツーリング時の写真が役立つことがある。
2 事故後の全体像を撮影する
バイク全体を前後左右及び斜めから撮影し,転倒方向,接触面及び部品相互の位置関係が分かるようにする。損傷箇所だけの接写では,事故との対応又は車体全体への影響が分かりにくい。
修理工場へ搬入する前に,接触痕,擦過痕,液漏れ,タイヤ,ホイール,ハンドル,レバー,ステップ,マフラー,エンジンケース,タンク,カウル及びフレーム周辺を撮影する。分解後に初めて判明した損傷は,部品名と位置が分かる工程写真を残す。
第3 バイク固有の修理箇所
1 操舵・前輪周辺
フロントフォーク,ステアリングステム,トップブリッジ,ホイール,アクスル,ブレーキディスク及びハンドル周辺は,見た目の傷だけでなく,曲がり,ねじれ,芯ずれ又は作動不良を確認する。測定した場合は,測定箇所,基準値,測定方法及び結果を記録する。
「転倒したからフォーク一式を交換する」「外観上傷が少ないから交換は不要である」という結論だけでは足りない。メーカー整備書,部品の測定結果,試運転結果及び修理工場の説明を対応させる。
2 フレーム・後輪・駆動系
フレーム,ヘッドパイプ,スイングアーム,リアホイール,チェーン・スプロケット又はシャフトドライブの損傷は,走行安定性に関係する。基準寸法又は測定記録がないまま「フレーム修正」「全交換」とする見積りは,必要性と範囲を照会する。
エンジンケース,ラジエータ,冷却系,排気系及び電装品についても,事故直後の作動状況,警告表示,液漏れ及び診断結果を記録する。転倒後に走行を継続したことによる損傷が疑われる場合は,事故による直接損傷と分けて検討する。
3 接触損傷と滑走損傷
相手車両との接触痕は,塗料付着,線状痕,凹損又は部品の変形として残ることがある。転倒後の滑走損傷は,カウル,エンジンガード,レバー,バーエンド,ステップ,マフラー及び衣類等に同じ側で連続して現れることがある。
ただし,痕跡だけから事故態様を断定せず,車体の向き,路面痕,破片の位置,映像及び相手車両の損傷と照合する。
第4 相当修理費と経済的全損
1 修理費の必要性・相当性
修理見積書は,部品番号,数量,部品単価,脱着・交換・調整の別,工数,時間単価,塗装又は外注作業を確認する。複数箇所の作業で重複する脱着工程が二重に計上されていないかも点検する。
未修理でも,相当な修理費が損害として認められる余地はある。他方,事故と無関係な既存損傷,性能回復を超える改良又は重複作業は,事故による損害から区別される。修理済みの場合は,見積書だけでなく請求書,作業明細及び工程写真も保存する。
交通事故の車両修理見積書の読み方では,部品,工数,骨格修理及び工程資料の一般的な確認方法を説明している。
2 修理費と事故時価額を比較する
修理費が,事故直前の車両時価額と買換えに通常必要な費用の合計を上回る場合,経済的全損が問題となる。車両時価額は,原則として同種同等の中古車を取得するために必要な価格を基礎に検討する。