政府保障事業及び無保険車傷害特約

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目次
1 政府保障事業
2 無保険車傷害保険
3 関連記事

1 政府保障事業
(1) 政府保障事業は,以下のような事故により,自賠責保険又は自賠責共済からの保険金の支払を受けられない被害者を救済するための制度です。
① ひき逃げ事故
② 泥棒運転(盗難車)による事故
③ 自賠責保険,自賠責共済が付保されていない自動車による事故
(2) 平成19年4月1日以降に発生した交通事故については,自賠責と同じ基準で重過失減額が行われています。
(3)ア 政府保障事業を利用した場合,①健康保険や労災保険等の社会保険から給付を受けるべきときは,それらの社会保険から実際には給付を受けていなくともその金額を控除した分しか支払を受けることができませんし,②自賠責保険の被害者請求よりも時間がかかります(弁護士法人心名古屋法律事務所HPの「政府保障事業について」参照)。
イ おとなの自動車保険HPの「ひき逃げされたら、私はどうなるの?」によれば,ひき逃げ事故で平均4カ月程度,無保険事故で7カ月前後の期間がかかるとのことです。
(4) 自動車損害賠償保障法72条1項後段の規定による損害のてん補額の算定に当たり,被害者の過失をしんしゃくすべき場合であって,国民健康保険法58条1項の規定による葬祭費の支給額を控除すべきときは,被害者に生じた現実の損害の額から過失割合による減額をし,その残額からこれを控除します(最高裁平成17年6月2日判決)。
(5) 令和2年度(行個)答申第49号(令和2年7月14日答申)には以下の記載があります。
ア 政府保障事業とは,交通事故において,ひき逃げされて相手の車が不明の場合や,自賠責保険(共済)をつけていない自動車(無保険車)が加害車両となった場合,負傷したり死亡したりした被害者は,基本的に自賠責保険(共済)では救済されないことから,政府に保障を請求することができる制度のことである。
イ 被害者は受付事務を行う損害保険会社に保障を請求する。被害者が受けた損害を国(国土交通省)が加害者に代わっててん補するが,請求できるのは被害者のみであり,加害者から請求はできない。
ウ 事故状況や損害額については自動車損害賠償保障法77条1項の規定に基づき交通事故の損害額調査に係る業務を保険会社等へ委託しており,保険会社等はさらに損害保険料率算出機構(本件事故当時は自動車保険料率算定会)へ調査委託している。
エ 損害保険料率算出機構にて調査を行った後,調査結果と調査書類が国土交通省に送付され,同省において,支払額の審査,決定を行う。この決定をもって,損害保険会社を通じて請求者にてん補金が支払われる。国はてん補金を被害者に支払った後,加害者に求償することとなる。
オ 実況見分調書等の事件記録は,調査の必要性に応じて損害保険料率算出機構が事故を処理した警察署,検察庁等へ照会し,事件記録の閲覧が可能であるとの回答があったものについては,検察庁等に赴き閲覧謄写することにより入手し,これを処分庁が業務上入手しているものである。本件実況見分調書の写しについては,当時における入手手続に係る規程等は確認できないが,当時の自動車保険料率算定会職員が事件を担当する検察庁において閲覧謄写し,それを処分庁が業務上入手したものであると確認している。 
(6) 以下の資料を掲載しています。
・ 自動車損害賠償保障事業委託業務実施の手引き(平成27年10月)
→ ひき逃げ事故及び無保険事故に対する政府保障事業に関する業務委託(自動車損害賠償保障法施行令22条参照)及び自動車損害賠償保障事業業務委託契約準則のマニュアルです。

2 無保険車傷害特約
(1)ア 無保険車傷害特約に加入していた場合において後遺障害が残ったときは,政府保障事業とは別に保険金を支払ってもらうことができます。
イ 無保険車傷害特約から入通院の治療費,慰謝料及び休業損害を支払ってもらうことはできません。
(2)ア 被保険者及びその家族は,他の車に搭乗中又は歩行中に無保険車との交通事故又はひき逃げ事故にあったときでも無保険車傷害特約の支払対象となります(保険スクエア バン!HP「無保険車傷害保険(特約)とは|補償対象や人身傷害補償保険との違いを解説」参照)
    そのため,以下のいずれかの場合,無保険車傷害特約から保険金を支払ってもらえます(そんぽ協会HPの「問13 無保険車傷害保険は、どのような保険ですか。」参照)。
① 人身傷害保険から保険金の支払いを受けることができない場合
② 自賠責保険と無保険車傷害保険の保険金額の合計額が、人身傷害保険の保険金額より多い場合
イ 人身傷害保険の支払条件を満たしている場合(例えば,歩行中も支払対象になっている場合),ひき逃げ事故についても人身傷害補償保険からの支払があります(三井ダイレクト損保HPの「ひき逃げにあった場合の自動車保険の補償」参照)。
(3) 令和3年版 犯罪白書「3 ひき逃げ事件」には,「全検挙率は,平成16年には25.9%を記録したが,翌年から上昇し続けており,令和2年は70.2%であった。死亡事故に限ると,検挙率は,おおむね90%を超える高水準で推移している。」と書いてあります。
(4) 自家用自動車総合保険契約の記名被保険者の子が,胎児であった時に発生した交通事故により出生後に傷害を生じ,その結果,後遺障害が残存した場合には,当該子又はその父母は,当該傷害及び後遺障害によってそれぞれが被った損害について,同契約の無保険車傷害条項が被保険者として定める「記名被保険者の同居の親族」に生じた傷害及び後遺障害による損害に準ずるものとして,同条項に基づく保険金の請求をすることができます(最高裁平成18年3月28日判決)。

3 関連記事
・ 自賠責保険の支払基準
・ 「自動車損害賠償保障法及び関係政省令の改正等に伴う事務の実施細目について」と題する,国土交通省自動車交通局保障課長の通知(平成14年3月11日付)
・ 昭和48年9月1日付の,日本損害保険協会及び日弁連交通事故相談センターの覚書(交通事故損害賠償に関するもの)
・ 損益相殺
・ 東京地裁民事第27部(交通部)
・ 弁護士費用特約

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