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整骨院・接骨院と交通事故の施術費―柔道整復師・健康保険・広告規制(AIリライト)

整骨院又は接骨院を利用するときは,柔道整復師の業務範囲,健康保険の給付範囲及び交通事故の損害賠償を分けて考える必要がある。
健康保険の対象外であっても直ちに施術自体が禁止されるわけではなく,反対に,自費で施術を受けたからといって交通事故の相手方に全額を請求できるとも限らない。

本記事では,現行の法令・厚生労働省通知,裁判実務書及び医学文献に基づき,整骨院・接骨院に関する基本事項を整理する。

第1 整骨院・接骨院と柔道整復師

1 法令上の名称

柔道整復師法は,柔道整復を業として行う場所を「施術所」と呼んでいる。
「整骨院」及び「接骨院」は一般に用いられる名称であるが,法令上の施設類型は施術所である。

柔道整復を業として行えるのは,厚生労働大臣の免許を受けた柔道整復師である(柔道整復師法2条1項,15条)。
柔道整復師は医師ではなく,法令上の権限,健康保険の給付及び作成できる証明書の範囲も医療機関とは異なる。

2 開設者と施術者は別の概念であること

柔道整復師法は,柔道整復を行う者と施術所の開設者を区別している。
施術所の開設者は開設後10日以内に都道府県知事へ届け出る必要があるが,開設者自身が常に柔道整復師であるとは限らない(同法19条)。

もっとも,実際に柔道整復を業として行う者には柔道整復師免許が必要である。
健康保険の受領委任を扱う施術所では,開設者とは別に,取扱規程に基づく施術管理者が置かれる場合がある。

第2 柔道整復師の業務範囲

1 柔道整復師が行う施術

柔道整復は,打撲,捻挫,挫傷,脱臼及び骨折等に対し,外科手術や薬品の投与によらずに回復を図る施術である。
柔道整復師法16条は,柔道整復師が外科手術を行い,薬品を投与し,又はその指示をすることを禁止している。

したがって,柔道整復師は,医師のように疾病を診断し,処方箋を交付し,注射又は手術を行うことはできない。
施術所で作成される施術証明書・施術費明細書は施術内容及び費用を示す資料であり,医師の診断書とは役割が異なる。

2 骨折・脱臼と医師の同意

柔道整復師が脱臼又は骨折の患部に施術をするときは,応急手当の場合を除き,医師の同意を得なければならない(柔道整復師法17条)。
これは法律上の業務範囲に関する同意であり,後記第5の交通事故損害賠償において施術費の必要性を裏付ける医師の指示・同意とは,場面を区別する必要がある。

骨折又は脱臼が疑われる場合は,画像検査を含む医学的評価が必要となることがあるため,まず医療機関を受診することが重要である。

3 診断・投薬・エックス線撮影との違い

柔道整復師は,エックス線を人体に照射することを業として行うことができない。
最高裁昭和58年7月14日第一小法廷判決・昭和57年(あ)第122号・刑集37巻6号880頁は,柔道整復師が骨折・脱臼等の施術前後の判断のために行う場合であっても,法令による放射線照射の規制対象から除外されないとした。

外傷後に強い痛み,しびれ,脱力,歩行困難,意識障害その他の神経症状がある場合は,施術所だけで経過を見るのではなく,速やかに医療機関で診察を受けるべきである。

第3 整骨院・接骨院で健康保険を使える範囲

1 療養費の支給対象

厚生労働省の患者向け案内によれば,柔道整復の健康保険は,外傷性が明らかな骨折,脱臼,打撲及び捻挫等を対象とする。
骨折及び脱臼については,応急手当の場合を除き,医師の同意が必要である。

負傷の原因,発生日及び負傷部位は,療養費の支給対象を判断する基礎となる。
患者は,施術所に説明した内容と療養費支給申請書の負傷原因が一致しているかを確認する必要がある。

2 支給対象外となる場合

単なる肩こり,筋肉疲労,慰安目的の施術,疾病による痛み等は,柔道整復療養費の支給対象ではない。
「支給対象外であること」と「施術を受けること自体が違法であること」は同じではないが,外傷でない症状を外傷として請求するなどの虚偽請求は,返還,受領委任の取扱中止その他の法的問題を生じ得る。

また,同一の負傷について医療機関で治療を受けている期間は,原則として柔道整復の療養費を重ねて受給できない。
これは同一負傷に関する保険給付の重複制限であり,「同じ日に整形外科と整骨院の両方を受診することが一律に禁止される」という意味ではない。異なる負傷,自費施術又は交通事故の損害賠償は,それぞれ別に検討する必要がある。

3 施術料金は一律ではないこと

柔道整復療養費は,初検料,再検料,施療料,後療料,施術部位数,施術期間及び施術頻度等に応じて算定される。
そのため,健康保険を使った場合の施術費又は自己負担額を「1回につき一定額」と説明することはできない。

厚生労働省の療養費改定資料には,令和8年7月1日から適用される算定基準及び長期・高頻度施術の取扱いが掲載されている。
金額や逓減の要件は改定されるため,個別の請求については施術時点の通知を確認する必要がある。

第4 受領委任と患者が確認すべき事項

1 償還払いと受領委任

柔道整復の療養費は,本来,患者が施術費の全額を支払い,後から保険者に請求する償還払いである。
もっとも,実務では,患者が一部負担金相当額を施術所に支払い,残額の受領を柔道整復師に委任する受領委任が広く利用されている。

受領委任は,保険医療機関における療養の給付そのものではなく,療養費の例外的な支払方法である。
施術所が受領委任を扱っているか,保険者が当該施術所との受領委任を認めているかは,利用前に確認する必要がある。

2 療養費支給申請書の記載

厚生労働省の受領委任取扱規程及び令和8年7月1日施行の一部改正によれば,療養費支給申請書は月単位で作成され,患者は原則として被保険者の住所,氏名及び委任年月日を自筆する。
自筆できない場合には,柔道整復師による代筆と患者のぼ印等について別の取扱いが定められており,通常の押印が一律の要件となっているわけではない。

患者は,施術日,施術部位,負傷原因及び金額を確認した上で記載すべきであり,内容が空欄の申請書にあらかじめ署名すべきではない。
申請内容と実際の施術が違う場合は,その場で訂正を求める必要がある。

3 資格確認・領収証・施術明細

受領委任を扱う施術所では,マイナ保険証,資格確認書等による資格確認が行われる。
従来の健康保険証だけを前提とする案内は,現在の資格確認方法を十分に表していない。

施術所は患者から一部負担金の支払を受けたときに領収証を交付し,患者から求められた場合には施術明細を交付する取扱いとなっている。
患者は,領収証,施術明細及び申請内容を保管し,保険者から照会があった場合には実際の通院日と施術内容に基づいて回答すべきである。

第5 交通事故における整骨院の施術費

1 健康保険と損害賠償は判断枠組みが異なること

交通事故の加害者又は任意保険会社に柔道整復の施術費を請求するときは,健康保険の療養費とは別に,事故と相当因果関係のある「必要かつ相当な費用」であることが問題となる。
自賠責保険の支払基準も,免許を有する柔道整復師等の施術費を「必要かつ妥当な実費」としている。

任意保険会社が施術所へ直接支払った事実は重要な経過資料であるが,後の民事訴訟で全額の法的相当性が当然に確定するわけではない。
反対に,任意保険会社が一括対応を打ち切ったことだけで,その後の施術が直ちに不要になるわけでもない。

2 施術費を判断する5つの要素

交通事故の裁判実務では,柔道整復の施術費について,おおむね次の5要素が検討される。

  • ① 施術の必要性―受傷内容及び症状から施術を行う必要があったか
  • ② 施術の有効性―施術によって疼痛又は機能が改善したか
  • ③ 施術内容の合理性―症状に対応した施術内容であったか
  • ④ 施術期間の相当性―症状及び経過に照らして期間が長すぎないか
  • ⑤ 施術費の相当性―単価,頻度及び総額が相当であったか

これらは相互に関連する。
例えば,施術直後の一時的な軽快だけでなく,経時的に機能改善が見られたか,頻回施術を続ける医学的又は施術上の理由が記録されているか,費用が施術内容に見合うかが問題となる。

3 医師の指示・同意の位置付け

捻挫等の施術費を交通事故の損害として請求する場面では,医師の指示・同意は施術の必要性及び有効性を裏付ける有力な事情であるが,常に法律上の絶対要件となるわけではない。
他方,医師が施術の存在を事後に知っていた,あるいは積極的に反対しなかったというだけの事情は,施術開始前の明示の指示と同じ重みを持たない。

施術所への通院を希望するときは,まず医療機関で傷病名,神経学的所見及び画像検査の要否について評価を受け,医師に施術の併用を伝えることが望ましい。
医師と施術者の評価又は方針が食い違う場合は,自己判断で一方を伏せるのではなく,症状と施術内容を双方に正確に伝える必要がある。

4 施術期間・頻度・金額

「事故から6か月」などの期間が実務上の一つの目安として挙げられることはあるが,法律上の上限ではない。
施術期間は,傷害の程度,症状の推移,施術効果,医師の評価及び社会生活上の事情等により個別に判断される。

同様に,「週3回」などの固定的な通院頻度が法律又は医学上推奨されているわけではない。
症状が改善しているかを定期的に評価し,必要性を説明できない高頻度施術を漫然と継続しないことが重要である。

施術費は,1回当たりの一律の平均額で判断されない。
全額が相当でない場合には,健康保険の療養費基準を参考に相当額を算定する方法又は総額の一定割合だけを認める方法が用いられることがある。

5 施術費を裏付ける資料

施術費を請求する場合,少なくとも次の資料を保管しておくことが望ましい。

  • ① 事故直後からの診療録,診断書及び画像検査資料
  • ② 医師に施術の併用を伝えたことが分かる診療録等
  • ③ 施術録,施術証明書・施術費明細書及び領収証
  • ④ 施術日,症状,日常生活上の支障及び施術後の変化を記録した資料
  • ⑤ 任意保険会社との連絡記録及び既払額が分かる資料

通院回数だけを増やしても,施術の必要性又は有効性の立証にはならない。
初診時から症状,所見,施術計画及び反応が一貫して記録されていることが,後の紛争を減らす上で重要である。

第6 交通事故後の医療機関受診とむち打ち症

1 最初に医療機関を受診する意味

交通事故後は,軽い痛みに見えても,骨折,脱臼,神経損傷その他の傷害を除外する必要がある。
医師は,問診,身体診察及び必要な画像検査に基づいて傷病を評価し,投薬,注射,手術又は医学的リハビリテーションの要否を判断する。

事故から初診までの期間が長いと,事故と症状との関係について争いが生じやすくなる。
もっとも,受診が遅れた事情が合理的に説明できる場合もあるため,遅れだけで因果関係が当然に否定されるわけではない。

2 症状の出現時期と回復経過には幅があること

むち打ち関連障害では,事故直後に症状が出る例が多い一方,翌日以後に痛みその他の症状が明確になる例もある。
また,早期に改善する群だけでなく,軽度の症状が持続する群及び中等度以上の症状が長く続く群も報告されており,全員が同じ経過をたどるわけではない。

初期の強い疼痛及び機能障害,不安,心的外傷後ストレス症状等は,回復の遅れと関連することがある。
一方,一般的な画像所見だけで症状の強さ又は将来の経過を説明できない場合もあるため,画像,診察所見,症状及び生活上の支障を総合して評価する必要がある。

3 通院頻度を固定的に考えないこと

頸部痛又はむち打ち関連障害に対する運動療法を支持する診療ガイドラインは多いが,徒手療法,マッサージ,鍼,物理療法等の推奨は一様ではなく,研究の確実性にも限界がある。
特定の曜日又は週当たり回数を全員に当てはめる根拠はない。

通院頻度及び施術内容は,症状,急性期か慢性期か,禁忌の有無,施術への反応及び医療機関との役割分担を踏まえて決めるべきである。
改善が乏しい場合又は新たな神経症状が出た場合は,同じ施術を続けるだけでなく,医療機関で再評価を受ける必要がある。

4 転院と診療記録の連続性

転院自体が不適切であるとは限らず,専門性,通院可能性,治療方針又は信頼関係等から転院が合理的な場合がある。
ただし,理由の説明なく短期間に多数の医療機関を転々とすると,症状の推移及び事故との関係を評価しにくくなることがある。

転院するときは,紹介状,画像データ及び検査結果を引き継ぎ,従前の症状,治療内容及び転院理由を新しい医師に正確に説明することが望ましい。

第7 柔道整復師・施術所の統計と養成

1 令和6年末の統計

厚生労働省の令和6年衛生行政報告例によれば,令和6年末の就業柔道整復師は78,666人であり,令和4年末より1,034人増加した。
同年末の柔道整復の施術所は50,924か所であり,令和4年末より8か所増加した。

ここでいう柔道整復師数は就業者数であり,免許登録者の累計ではない。
統計を引用するときは,調査時点と集計対象を明示する必要がある。

2 第34回柔道整復師国家試験

令和8年3月1日に実施された第34回柔道整復師国家試験は,受験者4,434人,合格者3,170人,合格率71.5%であった。
試験結果は毎年変わるため,過去の合格率を現在の状況として扱うべきではない。

3 養成施設指定をめぐる福岡地裁判決

福岡地裁平成10年8月27日判決は,柔道整復師養成施設の指定申請に対する厚生大臣の拒否処分を取り消した。
同判決は,法令に具体的な根拠のない需給調整による指定拒否の適法性を検討したものである。

もっとも,この判決がその後の養成施設数又は柔道整復師数の増加を直接もたらしたと断定するには,判決後の行政運用を示す別の資料が必要である。

第8 整骨院・接骨院の広告規制

1 柔道整復師法24条と広告ガイドライン

柔道整復師の業務又は施術所に関する広告は,柔道整復師法24条により,広告できる事項が制限されている。
厚生労働省は令和7年2月18日にあはき・柔整広告ガイドラインを公表し,広告可能事項,虚偽・誇大表示,比較優良広告,体験談及びビフォーアフター写真等の考え方を示した。

「必ず治る」,「どのような症状でも保険が使える」,「地域で最も優れている」などの表示は,法令上の業務範囲又は合理的根拠を超えるおそれがある。
広告の目的が患者の誘引にある場合,媒体の名称だけで規制を免れるものではない。

2 ウェブサイト・SNSの表示

施術所のウェブサイトは,患者が自ら検索して閲覧するだけであれば,直ちに広告に当たらない場合がある。
しかし,検索連動型広告,SNS広告,バナー広告等から誘導されるページや,実質的に患者を誘引する表示は,広告として扱われることがある。

広告に該当しないウェブサイトであっても,虚偽表示又は誇大表示が許されるわけではない。
施術効果,安全性,料金,保険適用又は資格については,患者が誤認しない表示にする必要がある。

3 名称と保険取扱いの表示

広告ガイドラインは,柔道整復の施術所の名称例として「接骨院」を示している。
他方,「整骨院」という名称は同ガイドラインが適切な名称として示す例には含まれていないため,新規の名称又は広告を検討するときは最新の行政指導を確認すべきである。

「健康保険取扱い」と表示する場合も,外傷性の負傷等に対象が限られること,骨折・脱臼には原則として医師の同意が必要であることを患者が誤解しないようにする必要がある。

第9 あん摩・はり・きゅう・整体・カイロプラクティック

1 あん摩・はり・きゅうの健康保険

あん摩・マッサージ・指圧,はり及びきゅうは,柔道整復とは別の資格制度及び療養費制度に服する。
健康保険による療養費は,対象となる疾病又は症状が定められ,原則として医師の同意書又は診断書が必要となる。

したがって,柔道整復の健康保険対象を,あん摩,はり又はきゅうにそのまま当てはめることはできない。

2 整体・カイロプラクティックの資格上の位置付け

日本には,「整体」又は「カイロプラクティック」という施術方法自体についての国家資格制度はない。
もっとも,個々の施術者が医師,柔道整復師,あん摩マッサージ指圧師その他の国家資格を別に保有している場合があるため,施術方法に国家資格制度がないことと,施術者が何の資格も有しないことは区別する必要がある。

資格の有無だけで施術の必要性,安全性又は交通事故との相当因果関係が当然に決まるわけではない。
施術内容,禁忌,費用及び健康被害が生じた場合の対応を事前に確認することが重要である。

3 脊椎への徒手的操作と安全上の注意

厚生労働省の平成3年6月28日付け医事第58号通知は,悪性腫瘍,出血性疾患,感染症,骨折等,徒手調整が適さない疾患に注意し,頸椎に対する急激な回転伸展操作を加える施術を行わないよう求めている。

医学的知見に照らせば,脊椎への徒手的操作では,一過性の痛み,頭痛又はめまい等が報告されている一方,重篤な血管系事象との因果関係及び正確な発生頻度には不確実性がある。
「絶対に安全」又は「必ず危険」と単純化せず,禁忌の確認,説明及び異常時の医療機関受診を徹底する必要がある。

激しい頭痛,めまい,物が二重に見える,ろれつが回らない,しびれ,脱力又は歩行障害等が施術中又は施術後に生じた場合は,直ちに施術を中止し,救急を含む医療機関を受診すべきである。

第10 関連資料

1 交通事故と柔道整復に関する関連記事

第11 出典

1 法令・行政資料・裁判例

2 書籍

  • ① 加藤新太郎・谷口園恵編『裁判官が説く民事裁判実務の重要論点[交通損害賠償編]』第一法規,2021年,204頁~209頁
  • ② 公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準2018年版下巻(講演録編)』2018年,27頁~36頁
  • ③ 公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準2026年版上巻(基準編)』2026年,4頁~6頁
  • ④ 江口保夫・江口美葆子・古笛恵子『交通事故における医療費・施術費問題〔第3版〕』保険毎日新聞社,2019年,168頁~175頁
  • ⑤ 小野裕樹『被害者側弁護士のための交通賠償法実務』日本評論社,2025年,308頁~309頁
  • ⑥ 『医師と損保のためのわかりやすい交通事故外傷ガイドQ&A整形外科編』保険毎日新聞社,2024年,176頁~179頁
  • ⑦ 河野茂光編『交通外傷 メカニズムから診療まで』名古屋大学出版会,2020年

3 医学資料