目次第1 この記事の対象と結論(法務省とは関係のない独自の予想)第2 本記事独自の評価項目の示し方と重み付けの基準1 評価項目の示し方2 5段階の重み付けの基準第3 本問の概要第4 本記事が独自に予想した評価項目と重み(法務省の資料ではない)1 設問1(不作為についての審査請求)2 設問2(Bの原告適格)3 設問3(時点②の入所措置の要件)4 設問3(時点③の措置解除の要件)5 答案全体6 重みの分布第5 模範解答1 答案の前提と表記2 答案3 本記事独自の予想に基づく解説第6 関連記事1 前年度の同じ科目の模範解答2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事3 同じ年度の主要7科目の模範解答第7 出典及び確認状態1 公式資料2 法令3 裁判例4 確認状態第1 この記事の対象と結論(法務省とは関係のない独自の予想)
本記事の評価項目,重み付け,解説及び模範解答は,山中弁護士ブログが問題文と判例から独自に作成した予想であり,法務省とは関係がない。法務省が公表した資料や,今後公表される出題の趣旨,採点実感,採点基準及び配点を示すものでもない。
本記事は,令和8年司法試験の論文式試験のうち,公法系科目第2問(行政法)を対象として,答案に求められると本記事が独自に予想した評価項目を問題文と判例から抽出し,5段階で重み付けをした上で,それらの評価項目を満たす模範解答を示すものである。
令和8年の「出題の趣旨」及び「採点実感」は,本記事の作成時点(令和8年9月29日)では公表されておらず,本記事はこれらを読まずに作成している。評価項目と重みは,いずれも本記事の予想であり,法務省の資料に基づくものではない。
本問は,同居する子(養護者)から十分な食事を与えられないおそれがあるとされた75歳の高齢者について,市が老人福祉法11条1項2号に基づき特別養護老人ホームへの入所措置(本件入所措置)を採った事案で,隣の市の法務担当職員から相談を受けた法律事務所の若手弁護士の立場から,〔設問1〕要綱に基づく緊急一時保護の申請への不応答が行政不服審査法3条の「行政庁の不作為」に当たるか,〔設問2〕養護者である子に本件入所措置の取消訴訟の原告適格が認められるか,〔設問3〕子が提起した国家賠償請求訴訟で,措置の時点の要件(困難性要件・補充性要件)と,その後の措置解除の要件について,双方がどのような主張・反論をするかを検討させるものである。配点割合は20:30:50である。
本記事が独自に予想した評価項目は44項目であり,重み5(設問又は会議録が明示に検討を求め,かつ答案の骨格を成す事項)に当たるのは,要綱の法的性格と老人福祉法11条が申請の仕組みを設定しているか(設問1),最高裁判例の原告適格の判断枠組みと,児童福祉法の親権者との比較及び高齢者虐待防止法14条の評価(設問2),困難性要件と虐待の有無(設問3の時点②),並びに解除の要件の特定と誓約書等の事情の変化をめぐる双方の主張(設問3の時点③)の10項目である。
第5の模範解答は,設問1では審査請求は不適法,設問2ではBの原告適格は否定されるとの結論を採り,設問3では,時点②の要件は満たされていたが,時点③では困難性要件が満たされなくなっていたと評価される余地が大きいとした。答案は,論文式答案で広く使われてきた型(問題提起,規範の定立,当てはめ及び結論の順に書く型)で示し,その後に本記事独自の予想に基づく解説を付けている。
第2 本記事独自の評価項目の示し方と重み付けの基準1 評価項目の示し方
評価項目は,設問の指示,法律事務所の会議録で弁護士H・I及び職員Gが検討を求めた事項,問題文に置かれた具体的な事実,関係法令の資料及び参照すべきと考えられる判例から抜き出し,一つの項目に一つの判定対象だけを入れ,答案に何が書かれていれば満たすのかが分かる形にした。
各項目には,手掛かりとなる問題文の箇所を問題冊子の頁(公法系科目の問題冊子の第2問部分の頁番号)で示し,関係する判例・条文を示した。判例は,最大判平成17年12月7日(小田急線連続立体交差事業認可取消訴訟),最判平成15年9月4日(労災就学援護費不支給処分取消訴訟),大阪高判平成13年6月21日(ホームヘルパー派遣決定処分取消等請求控訴事件),最判平成22年6月3日及び最判平成5年3月11日である。
評価項目を作る順序は,まず設問が指定する立場,求める成果物及び検討範囲を固定し,求められる法的効果又は救済から,条文又は規範,理由,具体的な当てはめ及び結論という主たる法的経路を逆算する,というものである。論点名が想起できるかではなく,答案が設問に答えて結論まで到達できるかを基準にした。
問題文に相反する事実が置かれている場合は,有利な事実と不利な事実を対にして評価する。主たる理由,代替構成,補強事情及び設問上の除外事項を区別し,「書くことが少ない」という理由だけで設問外の論点を加えない。
判例は,事件名又は結論を挙げるだけでなく,本問で使う判断枠組み,規範の理由,考慮要素又は法的効果を特定し,本件との共通点・相違点と射程を示すものとした。
予想評価項目の作り方と読み方の詳細は,司法試験論文式の予想評価項目の作り方と読み方―公式資料公表前の問題文・法令・判例による5段階評価(AI作成)にまとめた。
2 5段階の重み付けの基準
重みは,問題文と判例から本記事が予想したものであり,法務省の配点ではない。出題の趣旨及び採点実感が公表された後には,これらと照合して見直す必要がある。
①重み5:設問又は会議録が明示に検討を求め,かつ答案の骨格を成す事項
②重み4:会議録が示唆する事項,又は最も近い判例の中核の命題に当たる事項
③重み3:問題文の具体的な事実から導かれる中核の理由付け
④重み2:補強の事項,又は典型的な誤りになると予想される事項
⑤重み1:設問の限定の遵守など,控えめな事項
重みは,答案で費やす文字数とは一致しない。短く書ける条文上の出発点でも,欠くと結論又は救済に至る法的経路が崩れるなら重く,具体的な当てはめに長い記載を要しても,個々の補強事情まで自動的に重み5になるわけではない。
各項目を読む際には,必須,累積,代替,補強又は除外のどの機能を持つかを区別する。重み5の数を前年度又は他科目に合わせるための調整はせず,その項目を欠くと設問への応答又は主たる法的経路が崩れるかを項目ごとに判断した。
第3 本問の概要
A(75歳)は,判断能力に問題はないが両腕の機能に障害があり,要介護3の認定を受け,子Bの手助けで介護サービス契約を締結して居宅サービスを利用していた。Bは約10年間,Aと同居して介護していた。
Aは令和7年11月20日に意識障害で緊急搬送され,低ナトリウム血症と診断された。同年12月10日,担当医はAとBに,Aには尿に塩分が出やすい症状があるが普通の食事なら問題はなく,原因は自宅での食事と思われると説明し,塩分を控え目にしているというBに対し,塩分を控えすぎた食事の危険を改めて説明した。退院後の同月25日,Aは介護支援専門員に,塩分の少ない食事が変わらず時々めまいがすると話し,その手助けで,C市の高齢者緊急一時保護事業実施要綱(本件要綱)に基づく一時保護を申請したが,福祉事務所長は応答しなかった(時点①)。
令和8年1月5日の血液検査で,Aの血中ナトリウム値は直ちに意識障害が生じる程度ではないが正常値より低く,再発のおそれが指摘されたため,Bは翌6日にAを入院させた。7日には高齢者虐待防止法7条1項の通報があり,担当職員は,自宅療養が続けば生命に重大な危険が生じるおそれがあるとの報告書を提出した。8日,福祉事務所長は,老人福祉法11条1項2号に基づき,AをE園に入所させる措置(本件入所措置)を採り,Bも同日これを知った(時点②)。23日,C市はBに月額5万1800円の負担金額決定を通知した。
Aは入所後に体調が回復した。Bは3月10日に適切な居宅介護と栄養指導を約束して退所を求めたが,Aは帰宅に迷っていると述べ,C市は13日に拒否した。Bは6月15日,施設入所の希望には協力し,居宅介護の場合も定期的な血液検査と数値低下時の直ちの入院・入所を行うとの誓約書を提出したが,Aの受け答えはしっかりせず一貫性を欠き,C市は,Aの認知面の能力低下の可能性とB以外に契約を手助けできる者がいないことを理由に退所させなかった。Bは7月6日,負担金相当額の賠償を求めて国家賠償請求訴訟(本件訴訟)を提起した(時点③)。
設問は,隣のF市の職員G,弁護士H及び若手弁護士Iの会議録を踏まえ,弁護士Iの立場で,〔設問1〕時点①以降の不応答について不作為の審査請求がされた場合の適法性を「行政庁の不作為」の該当性に絞って,〔設問2〕時点②でのBの取消訴訟の原告適格を,〔設問3〕時点②の措置の要件と時点③の解除の要件について,本件訴訟でのBの主張とC市の反論を,それぞれ検討させる。
第4 本記事が独自に予想した評価項目と重み(法務省の資料ではない)1 設問1(不作為についての審査請求)番号評価項目重み問題文の手掛かり判例・条文1「行政庁の不作為」の定義(法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないこと)から,本件保護申請が「法令に基づく申請」に当たるかが争点であることを特定する53頁(設問1),5頁(弁護士Hの発言)行政不服審査法3条2「法令に基づく申請」の意義を,法令の明文又はその解釈により申請権が認められ,行政庁が諾否の応答義務を負う行為として示す45頁(弁護士Hの発言)行政不服審査法3条,行政手続法2条1号・3号3本件要綱が法令の委任に基づかない行政内部の定めであり,申請・審査・決定通知の規定(8条・9条)だけでは法令上の申請権が生じないことを示す55頁(弁護士Iの発言),10頁(本件要綱8条・9条)本件要綱8条~10条4緊急一時保護も老人福祉法11条の入所措置の一つであることを前提に,同条が申請の仕組みを設定しているかを検討する55頁(弁護士I・Hの発言)老人福祉法11条1項511条1項の文言(「必要に応じて」「採らなければならない」)から,市町村の職権による措置の仕組みであることを示す47頁(老人福祉法11条)老人福祉法11条1項6同法に措置の申請の規定がないこと(施設設置認可の申請,12条の解除の「申出」,生活保護法7条の申請保護の原則との対比)を示す37頁~8頁(老人福祉法12条)老人福祉法12条・15条6項,生活保護法7条7高齢者虐待防止法9条の通報・届出が職権発動の端緒にとどまることを示す29頁(高齢者虐待防止法9条2項)高齢者虐待防止法9条8本件要綱の申請・決定通知の構造から申請権を肯定する立場を取り上げ,法律が給付の仕組みを予定していた労災就学援護費判決との違いを示す310頁(本件要綱)最判平成15年9月4日9結論として,不応答は「行政庁の不作為」に当たらず,審査請求は不適法であるとする43頁(設問1)行政不服審査法3条10設問の限定(「行政庁の不作為」の該当性に絞る)を守り,審査請求先や期間等に立ち入らない13頁(設問1)行政不服審査法4条2 設問2(Bの原告適格)番号評価項目重み問題文の手掛かり判例・条文11Bが本件入所措置の名宛人ではないことから,「法律上の利益を有する者」への該当性が問題となることを示す44頁(設問2),5頁(弁護士Iの発言)行政事件訴訟法9条1項12「法律上の利益を有する者」の意義(自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者,個別的利益としての保護)を判例に即して示す55頁(弁護士Iの発言)最大判平成17年12月7日13第三者の原告適格の判断における考慮事項(根拠法令の趣旨・目的,目的を共通にする関係法令,利益の内容・性質)を示す45頁~6頁(弁護士Hの発言)行政事件訴訟法9条2項14本件入所措置によりB自身の権利が制限されるかを,Bの主張(約10年間の同居・介護関係の断絶)と対比して検討する32頁(Bの介護),6頁(弁護士Hの発言)老人福祉法11条15児童福祉法27条4項(親権者の意に反する措置の禁止)・28条1項(家庭裁判所の承認)と比較し,親権者の場合との違いを示す55頁~6頁(弁護士Hの発言),10頁(児童福祉法)児童福祉法27条4項・28条1項16高齢者の子である養護者には親権に相当する監護権がなく,老人福祉法11条・12条も養護者の同意や意見聴取を定めていないことを示す46頁(弁護士Hの発言),7頁(老人福祉法12条)老人福祉法11条・12条17老人福祉法5条の4が「養護者」を福祉の措置の対象に掲げることをB側の根拠として取り上げ,その意味を評価する37頁(老人福祉法5条の4)老人福祉法5条の4・10条の418高齢者虐待防止法14条(及び1条・6条)の養護者支援の規定をB側の根拠として取り上げ,それだけでは原告適格を基礎付けにくい理由を示す56頁(弁護士Hの発言),8頁~9頁(同法1条・6条・14条)高齢者虐待防止法1条・6条・14条19高齢者虐待防止法が,生命又は身体に重大な危険が生じている高齢者について,一時的な保護のための迅速な措置(養護者との分離を含む。)を予定していること(9条2項)を示す39頁(同法9条2項)高齢者虐待防止法9条2項20老人福祉法28条の費用徴収(扶養義務者)による財産上の利益を検討し,別個の負担金額決定によること,時点②では決定がないことを評価する33頁(負担金額決定),8頁(老人福祉法28条)老人福祉法28条1項21結論として,Bの原告適格を否定する(肯定する場合も,上記の根拠を踏まえた理由付けを示す)44頁(設問2)行政事件訴訟法9条3 設問3(時点②の入所措置の要件)番号評価項目重み問題文の手掛かり判例・条文22本件訴訟が国家賠償請求訴訟であり,取消判決を経ずに本件入所措置の違法を主張できることを示す23頁(本件訴訟),5頁(職員Gの発言)最判平成22年6月3日23国家賠償法上の違法の判断枠組み(職務上通常尽くすべき注意義務)をC市の反論として位置付ける23頁(本件訴訟)国家賠償法1条1項,最判平成5年3月11日24老人福祉法11条1項2号の要件を分解し,年齢と常時の介護の必要性は満たすと簡潔に処理した上で,困難性要件と補充性要件を争点として特定する45頁(弁護士Hの発言),6頁(職員Gの発言)老人福祉法11条1項2号25要件の判断に裁量があるかについて,C市の主張(「認めるとき」,専門的・緊急的判断)とBの主張(居所を公権的に定める措置の重大性)を示す37頁(老人福祉法11条)老人福祉法11条1項2号26困難性要件が居宅に虐待がある場合に満たされるとの手掛かりから,虐待(高齢者虐待防止法2条4項1号ロ)の有無を争点とする56頁(弁護士Hの発言),8頁(同法2条4項)高齢者虐待防止法2条4項1号ロ27Bの主張として,「塩分控え目のものを十分」食べさせていたこと,尿に塩分が出やすい症状,1月5日の数値の程度,1月6日の入院,在宅の支援体制及び時点②で入院中であったことを挙げる42頁(事実関係)高齢者虐待防止法2条4項1号ロ28C市の反論として,12月10日の医師の説明後も食事が改められなかったこと,12月25日のめまい,1月5日の数値と再発のおそれ,1月7日の報告書を挙げ,虐待は客観的に判断すべきとする42頁(事実関係)高齢者虐待防止法2条4項1号ロ・9条2項29補充性要件の意義(自ら介護老人福祉施設等と入所契約を締結することが困難な場合等)を示す46頁(弁護士Hの発言)老人福祉法11条1項2号30Bの主張として,Aの判断能力に問題がないこと,Bの手助けによる介護サービス契約の実績,介護支援専門員の手助けによる申請,要介護3で介護老人福祉施設に入所し得ることを挙げる42頁(事実関係)介護保険法8条22項・27項,同法施行規則17条の931C市の反論として,両腕の障害で契約はBの手助けに依存していたこと,Bに虐待のおそれがあること,生命の危険と「迅速」な保護の要請を挙げる42頁~3頁(事実関係),9頁(同法9条2項)高齢者虐待防止法9条2項32虐待の事実又はそのおそれの有無によって補充性要件の充足が左右されるという連動を示す36頁(弁護士Hの発言)老人福祉法11条1項2号33C市の判断(担当職員の報告書に依拠し,自ら契約することも困難と判断したこと)に対し,判断過程の不合理をBの予備的主張として示す22頁~3頁(1月8日の判断)老人福祉法11条1項2号4 設問3(時点③の措置解除の要件)番号評価項目重み問題文の手掛かり判例・条文34老人福祉法12条が解除の手続を定めるにすぎないことを示し,措置の継続は11条1項2号の要件の存続を前提とし,一方の要件でも満たされなくなれば解除すべきであるとして解除の要件を特定する56頁(弁護士Hの発言),7頁~8頁(同法12条)老人福祉法11条1項2号・12条,同法施行規則6条35時点②の事実関係と,その後時点③までの事実の変化を区別して整理する43頁(事実関係),6頁(弁護士Hの発言)老人福祉法11条1項2号36Bの主張として,Aの回復,原因が食事にあったこと,3月10日の約束,6月15日の誓約書(定期的な血液検査,数値低下時の直ちの入院又は入所)から,困難性要件が消滅したとする53頁(事実関係)老人福祉法11条1項2号37C市が3月13日に「確実であるとはいえない」として拒否したことを,要件の存続ではなく安全の確実性を求める誤った基準として指摘する33頁(事実関係)老人福祉法11条1項2号38Bの主張として,施設入所への協力の誓約と,契約能力に問題があれば後見開始等の審判請求ができることから,補充性要件も消滅したとする33頁(誓約書),9頁(同法9条2項)老人福祉法32条39C市の反論として,医師の説明後も改善しなかった経緯,約束・誓約の実効性の欠如,Aの認知面の能力低下と要介護状態の重度化の可能性から,困難性要件が存続するとする53頁(事実関係)老人福祉法11条1項2号40C市の反論として,Aが自ら契約することは困難であり,B以外に契約を手助けできる者がおらず,Bに代理権もないことから,補充性要件が存続するとする43頁(事実関係)老人福祉法11条1項2号41Aの意思(3月11日の「迷っている」,6月16日の「帰宅してもよい」と受け答えの不一貫)を双方の立場から評価する33頁(事実関係)老人福祉法12条5 答案全体番号評価項目重み問題文の手掛かり判例・条文42設問の配点割合(20:30:50)に応じて分量を配分する22頁(配点)―43設問3で,Bの主張とC市の反論を要件ごとに対にして示す34頁(設問3)―44設問1と設問2の追加的な事実関係を別個独立のものとして扱う13頁(本文末尾)―6 重みの分布
44項目の内訳は,重み5が10項目,重み4が15項目,重み3が12項目,重み2が5項目,重み1が2項目であり,重みの合計は158点である。
重み5の10項目(番号1・3・4・12・15・18・26・34・36・39)は,設問1については会議録で弁護士Hが注意を促した要綱の法的性格と老人福祉法11条の申請の仕組み,設問2については弁護士Hが検討を求めた判断枠組み,児童虐待の場合との比較及び高齢者虐待防止法14条,設問3については弁護士Hが示した困難性要件と虐待の関係,解除の要件の特定及び時点③までの事情の変化をめぐる双方の主張である。
設問ごとの重みの合計は,設問1が36点,設問2が43点,設問3が73点であり,問題文の配点割合(20:30:50)とおおむね対応するようにした。
第5 模範解答1 答案の前提と表記
以下の答案は,第4の評価項目を満たすように作成したものであり,弁護士Iの立場で,令和8年1月1日現在において施行されている法令及び問題文の各時点の法令と,それまでに言い渡された判例を前提にしている。
答案は,旧司法試験の時代から論文式答案で広く使われてきた型によっている。
見出しを「1」「(1)」「ア」の順に下げ,論点ごとに,問題提起(「〜が問題となる。」),規範の定立(「思うに,〜。よって,〜と解する。」),当てはめ及び結論(「よって」「したがって」)の順に書き,反対の立場は「確かに,〜。しかし,〜。」の形で取り上げ,最後に「以上」と書く型である。
もっとも,本問は会議録で検討の方向がかなり示されており,設問3は双方の主張・反論を問うものであるから,規範の論証は争いの中心に絞り,問題文の事実を評価する当てはめに多くの字数を割いた。
答案の括弧書きで示した判例は,裁判所ウェブサイトの判決全文で判示を確認したものに限った。
「判例同旨」は判例と同じ規範によるもの,「参照」は事案が異なるが判示の考え方を参考にしたものを示す。
字数は見出しを含めて4,197字である。
令和8年司法試験のCBT方式の論文式試験では,答案は1頁23行,1行当たり最大30文字で,必須科目は1問につき8頁(184行)が上限である(法務省「令和8年司法試験に関するQ&A」Q73)。この答案は,1文ごとに段落を改めて改行し,1行30字で折り返すと184行となり,8頁の上限をちょうど使い切る分量にした。設問ごとの行数は,設問1が38行,設問2が55行,設問3が91行である。
2 答案
1 設問1について
(1) Aの本件要綱に基づく一時保護の申請(以下「本件保護申請」という。)への不応答は,「行政庁の不作為」(行政不服審査法3条)に当たるか。
同条は,不作為を「法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないこと」と定義する。
そこで,本件保護申請が「法令に基づく申請」に当たるかが問題となる。
思うに,同条の審査請求は,応答義務を怠る行政庁から申請者を救済する制度である。
よって,「法令に基づく申請」とは,法令の明文又は解釈により申請権が認められ,行政庁が諾否の応答義務を負うものをいうと解する(行政手続法2条3号参照)。
(2)ア 本件要綱は,申請(8条),審査及び決定通知(9条)を定める。
しかし,要綱は法令の委任に基づかない行政内部の定めであり,私人に対する法的拘束力を持たない。
したがって,本件要綱だけでは法令上の申請権は生じない。
イ では,老人福祉法11条の解釈により申請権が認められないか。
緊急一時保護も,法的には同条の入所措置の一つである。
同条1項は「必要に応じて,次の措置を採らなければならない」と定め,市町村が職権で措置を採る仕組みである。
同法は施設設置認可の「申請」(15条6項)を定める一方,措置には申請の規定を置かず,本人の意思が現れるのは解除の「申出」(12条ただし書)のみである。
これは,保護を「申請に基いて」開始する生活保護法7条と対照的である。
高齢者虐待防止法9条の通報・届出も,職権発動の端緒にすぎない。
確かに,要綱の申請手続に基づく給付の決定を処分とした判例がある(最判平成15年9月4日)。
しかし,同判決は法律自体が給付の仕組みを予定していた事案であり,根拠法が職権による措置を定める本件とは異なる。
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