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平成18年司法試験公法系科目第2問(行政法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した26項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

平成18年司法試験の論文式試験・公法系科目第2問(行政法)は,市町村合併後の市長による建築基準法42条2項の道路(2項道路)の一括指定と,市の担当課長による個別の通路についての2項道路該当性の回答を題材に,訴訟方法の選択とそれに結び付く本案の主張,及び国家賠償請求の組立てを問う問題である。
出題の趣旨によれば,本問は,問題文と資料から具体的事実関係と法令の趣旨を読み取る能力を主眼とし,行政訴訟に関する知識を踏まえた適切な訴訟方法の選択と本案の主張の整合的な展開,国家賠償法上の基礎的な知識を踏まえた主張の組立てを試すものである。

この記事は,法務省の出題の趣旨と,考査委員が採点後の所見を述べた公法系科目のヒアリングの概要を基に26の評価項目を設け,そのうち8項目を重み5とした。
評価項目と重みは本記事独自の整理であり,法務省の採点基準や配点を示すものではない。

項目内容
対象平成18年新司法試験論文式試験・公法系科目第2問(行政法)
問題文論文式試験問題集[公法系科目](9~18頁の第2問・資料1~4)
試験日・答案の基準平成18年5月20日(公法系科目の論文式試験)。相談の時点は平成17年9月,法42条2項の基準時は昭和25年である。
出題の趣旨平成18年新司法試験論文式試験問題出題趣旨(2~3頁の公法系科目〔第2問〕)
採点実感新司法試験考査委員(公法系科目)に対するヒアリングの概要(2~7頁のうち行政法の部分)
評価項目26項目。重み5は8項目,重みの合計は108。
主な裁判例最高裁平成14年1月17日第一小法廷判決(一括指定の方法による2項道路の指定と抗告訴訟の対象)
答案の分量4931字(答案部分の見出しを含み,空白及び改行を除く。)
資料確認日令和8年11月7日

本稿の答案は,本件通路を本件長方形部分から分けて評価し,本件通路に接道を依存するのはEの家屋だけであるから立ち並びの要件を欠くとして,新甲川市を被告とする本件通路についての2項道路の指定処分の不存在確認の訴えを第一に選ぶ。
新細則による一括指定自体の無効確認と公法上の当事者訴訟も比較し,国家賠償請求では,市長Mの一括指定と担当課長Gの回答を分けて,職務上の義務違反,過失,損害及び因果関係を論じる。

重み5の8項目は,訴えの対象と形式を決める番号4・5・8・9,本件通路の評価の単位と立ち並びの要件に関する番号14・15,照会回答の公権力の行使該当性とGの職務上の義務に関する番号19・22である。
第3に事実関係と設問の要求,第4に評価項目と重み,第5に答案と解説,第7に出典を置く。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

評価項目は,出題の趣旨と採点実感の指摘を,答案の記載から判定できる単位に言い換えた本記事独自の基準である。
表の番号は記事全体で通している。
出題の趣旨欄・採点実感欄は,法務省が公表したPDFの頁と,関連する記載の要旨である。
平成18年の論文式試験については,法務省の論文式試験結果の公表ページに出題の趣旨が掲載されているが,採点実感等に関する意見は掲載されていない。
公法系科目の考査委員が採点後に述べた所見は,司法試験委員会第29回会議(平成18年9月20日)の議事要旨とともに「新司法試験考査委員(公法系科目)に対するヒアリングの概要」として公表されているので,採点実感欄はその行政法の部分の頁と要旨を示す。
一方の資料に対応する記載がない場合は「記載なし」,一般的な指摘や関連する記述から導く場合は「間接」と表示する。
「〔注意〕」は誤りを避けるための項目を,「〔条件〕」は特定の構成を採る場合に限り適用する項目を示し,その構成を採らない答案に重ねて求めるものではない。

2 5段階の重み付けの基準

重み判断基準
5その設問の判断を大きく分ける核心
4結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ
3通常押さえる法的処理・事情の評価
2論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意
1補充的な引用・記述範囲の確認

重みとその合計は本記事独自の整理であり,法務省の配点,採点基準又は得点の目安を示すものではない。
条件付きの項目も重みの分布と合計に含める。

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

○○県乙山町は,平成15年4月1日に,建築主事を置く甲川市と合併した(合併後の市を新甲川市という。)。
合併前の旧乙山町には,幅員4メートル未満2.7メートル以上の道で一定の形態のものを2項道路として一括指定する○○県の細則が適用されていたが,旧甲川市の細則は,戦前からの入り組んだ町並みに配慮して幅員を1.8メートル以上と定めていた。
合併後の市長選挙で当選したMは,旧甲川市の細則と同じ幅員等の要件による2項道路の指定に関する新甲川市建築基準法施行細則(新細則)を制定し,平成15年6月1日に公布した。
新細則は適用地域を限定しておらず,地元新聞は,Mが選挙で旧乙山町の有力者の支持を取り付けるために指定基準の緩和を約束していたと証言する関係者がいるとの解説記事を掲載した。

Aは,旧乙山町の区域内に家屋とその敷地を所有するほか,隣人Eのための幅員2.0~2.2メートルの通路(本件通路)がある台形状の土地(本件通路部分)を所有している。
本件通路部分は,従来から2項道路と認識されてきた東西に延びる幅員3.6メートルの本件長方形部分の東端に直角に接続している。
昭和25年の時点で既に存在していた5軒のうち,A・Bの家屋の敷地は直接に公道に接し,C・Dの家屋の敷地は本件長方形部分に接してこれを経由して公道へとつながり,Eの家屋の敷地だけが本件通路と本件長方形部分を経由して公道へとつながっている。

AとEは,Aの土地の一部(本件売却予定部分)の価格を不動産鑑定会社Fの鑑定結果に基づいて決めることに合意し,Aは手付金200万円を受領した。
平成17年5月,Fの職員が新甲川市の建築指導課に本件通路が2項道路に該当するかを照会したところ,担当課長Gは,課員に現地を見分させ関係資料を調査させた上,本件長方形部分と本件通路を一体として判断しても,本件通路だけで判断しても2項道路に該当するとの判断を得て,同年6月にその旨をFに伝えた。
Aは市に不満を述べたが市の立場は変わらず,相続税の納付期日が迫っていることなどから市の見解を前提としてEと売買契約を結ばざるを得ないとも考え,同年9月初めに弁護士に相談した。

2 設問が求めること

設問立場・対象指定・除外到達点
1若手弁護士L(主任の弁護士Kへの報告)本件通路が2項道路に該当しないことを訴訟で確定させる。一括指定の取消訴訟の出訴期間は経過している(資料2)。提起すべき訴訟と,その訴訟でする主張を示す。
2同じ立場土地の価格評価の下落による損害の賠償を市に求める。だれのどのような行為に着目し,どのような主張をすべきかを示す。

第4 評価項目と重み

1 設問1 訴訟の選択と本案の主張

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1要件を満たす道に建築制限等が直接生じることを理由に,一括指定の処分性を認める。42頁。一括指定の処分性記載なし
2一括指定の取消訴訟について,資料2が与えた出訴期間経過の前提を維持する。32頁。出訴期間の経過(資料に明示)7頁。取消訴訟の出訴期間が切れていることは問題文に書いてある
3Gの照会回答に独自の法的効果がないことを説明し,その取消しを主たる手段にしない。4間接(2頁。各訴訟形態にふさわしい本案の主張)5頁。処分を見つけて取消訴訟に結び付ける解法にとらわれた答案が多い
4〔条件〕設問1で新細則による一括指定自体の効力を争う場合に,個別の該当性に関する主張とは分けて,その無効確認と無効を基礎付ける事情を示す。52頁。一括指定の無効確認訴訟等6~7頁。行訴法の改正を踏まえた他の可能性,無効確認訴訟では特別の無効事由の主張が必要
5〔条件〕本件通路に一括指定の効果が及ばないと主張する場合に,新細則自体が有効でも法定の要件を欠く道には指定の効果が及ばないことから,処分の不存在確認を構成する。5間接(2頁。規則を前提とした2項道路該当性についての抗告訴訟等の可能性)記載なし
6Aの所有地に及ぶ建築制限と取引上の現実の支障を示して,行訴法36条の法律上の利益を基礎付ける。42頁。行訴法36条の原告適格要件の当てはめ記載なし
7〔条件〕処分の無効等確認の訴えを用いる場合に,現在の法律関係に関する訴え等で同じ目的を達し得るかを,確認の対象,時期及び判決の効果から比較する。4間接(2頁。行訴法36条と複数の訴訟形態の検討)3頁。オーソドックスな訴訟で最大限の効果を上げる実務的な能力
8新甲川市を相手に,セットバック義務の不存在等の具体的な公法上の法律関係を確認する当事者訴訟の可否を検討する。52頁。セットバック義務不存在確認等の公法上の当事者訴訟6頁。行訴法の改正もあり他にも色々な可能性がある
9〔注意〕個別の通路についての2項道路該当性の判断の誤りを,一括指定自体の無効確認訴訟の本案の主張にすり替えない。52頁。職員の判断の誤りの主張は一括指定処分の無効確認訴訟では失当記載なし
10〔条件〕一括指定自体を争う場合に,Aの所有権・既存の利用への影響を具体化し,規制目的や既存不適格の扱いに照らして財産権・既得の権利の侵害を論じる。42頁。規則自体が財産権ないし既得の権利を侵害しないか記載なし
11〔条件〕一括指定自体を争う場合に,安全と既存の利用の保護を調和させる法42条2項の趣旨から,一律の緩和が委任の範囲を超えるかを論じる。42頁。2項道路制度の趣旨に照らした委任の範囲記載なし
12〔条件〕一括指定自体を争う場合に,旧甲川市と旧乙山町の相違を根拠に,新細則の制定で公正な考慮が尽くされたかを論じる。42頁。旧市町それぞれの特殊事情への公正な考慮記載なし
13法定の基準時と現在を分け,現況の通路の幅員と県・新市の下限の関係を評価する。3間接(2頁。資料の記載を用いた主張)記載なし
14本件通路と本件長方形部分の形状及び接道・利用の機能から,別々の道として扱う主張を立てる。52頁。独立した二つの通路を一体ととらえた判断の適否記載なし
15法42条2項の制度趣旨に即して,立ち並びに算入する建築物の範囲を理由付きで示す。52頁。「立ち並んでいる」という要件の充足判断の適否記載なし
16A・B,C・D,Eの接道経路をそれぞれ区別し,本件通路に依存する建築物の数を示す。4間接(2頁。資料から論点を読み取ること)記載なし

2 設問2 国家賠償

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
17Mの一括指定とGの回答を個別に特定し,新甲川市を相手に国家賠償法1条1項による賠償を求める。43頁。市長の規則制定行為と職員の回答への国家賠償法1条の当てはめ2頁。国家賠償法の基礎的な知識を踏まえ的確な主張を組み立てる力を試す趣旨
18Mが特定行政庁として行った一括指定を,国家賠償法1条1項の公権力の行使に当たる公務員の職務上の行為と位置付ける。33頁。市長の規則制定行為への当てはめ記載なし
19照会回答が処分性を欠いても,建築規制を所管する行政機関の職務上の回答として公権力の行使に含まれ得る理由を示す。53頁。職員による回答行為の「公権力の行使」該当性(評価に差が生ずるポイント)記載なし
20Mの指定について,Aとの関係で考慮すべき指定の利益・負担と目的に照らし,職務上の義務違反を具体的に論じる。4間接(3頁。市長の規則制定行為への諸要件の当てはめ)3頁。注意義務を正面から論じている答案が少ない
21Mが地域事情・所有者への負担を認識し,又は調査により認識し得たかを,選挙関係の証言と客観資料を分けて論じる。3間接(3頁。故意過失の当てはめ)3頁。各要件に即して考えること,過失認定へのアプローチ
22Gが取引に使われ得る公的回答をする場面で,調査・法適用・伝達についてAとの関係で負う職務上の義務を具体化する。53頁。違法性を資料の記載から具体的に理由付けること3頁。注意義務を正面から論じている答案が少ない
23Gが行わせた現地・資料の調査と一体・別個の両方の検討を踏まえ,回避できた具体的な誤りがあったかを論じる。43頁。故意過失を資料の記載から具体的に理由付けること3頁。過失認定へのアプローチ
24〔条件〕Mの指定を財産損害の原因として主張する場合に,指定が当該通路に及ぶ場合の規制による評価の低下と,指定が及ばない場合を区別する。4間接(3頁。市長の規則制定行為への諸要件の当てはめ)記載なし
25Gの回答がFの鑑定を通じてA・E間の価格形成に影響したことを,適正な回答の場合と比較して示す。4間接(3頁。職員の回答への諸要件の当てはめ)記載なし
26評価額の下落と現実の損害を区別し,売却・価値減少の立証と反事実の価格差を具体化する。4間接(3頁。損害の要件の当てはめ)記載なし

3 重みの分布

26項目の内訳は,重み5が8項目,重み4が14項目,重み3が4項目,重み2が0項目,重み1が0項目であり,重みの合計は108点である。
設問別には,設問1が16項目・68点,設問2が10項目・40点である。
問題文の配点は第2問全体で100点であり,設問ごとの配点は示されていない。

重み5の8項目は,次のとおりである。
①番号4・5・8は,一括指定自体の無効確認,本件通路についての指定の不存在確認及びセットバック義務の不存在確認の当事者訴訟という,何をどの訴えで争うかを決める項目であり,出題の趣旨は抗告訴訟と公法上の当事者訴訟の可能性の検討を求めている(2頁)。
②番号9は,個別の通路についての判断の誤りを一括指定自体の無効確認の理由にしないという,訴訟形態と本案の主張の対応の核心である。
③番号14・15は,独立した二つの通路を一体ととらえた判断と,「立ち並んでいる」という要件の充足判断の適否という,出題の趣旨が資料から読み取ることを求める本案の論点である(2頁)。
④番号19は,出題の趣旨が評価に差が生ずるポイントとして挙げる,職員による回答行為の「公権力の行使」該当性である(3頁)。
⑤番号22は,Gの回答の違法性を基礎付ける職務上の義務の具体化であり,採点実感は,国賠法の問題について正面から注意義務を論じている答案が少なかったとしている(3頁)。

主要な理由付けと当てはめは重み4に,出訴期間経過の前提(番号2),幅員と基準時の評価(番号13),市長の行為の公権力の行使該当性(番号18)及び市長の故意過失(番号21)は重み3に整理した。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

答案は,平成18年5月20日の試験当時を基準とし,問題文の資料4に掲げられた建築基準法を「法」と略す。
行政事件訴訟法は,平成16年法律第84号による改正後のものによる。
設問1は本件通路に指定の効果が生じていないとの主張を軸にし,指定が及ぶ場合の無効確認は別に論じる。

2 答案

第1 設問1

1 提起すべき訴訟

Aは,新甲川市を被告として,本件通路につき新細則による建築基準法42条2項の道路指定処分が存在しないことの確認を求めるべきである(行政事件訴訟法3条4項,36条,38条1項,11条1項)。

法42条2項は,法第3章の適用時に現に建築物が立ち並ぶ幅員4メートル未満の道のうち,特定行政庁が指定したものを同条1項の道路とみなす。
指定により,接道義務(43条1項)を充足し得る一方,中心線から水平距離2メートルの線が道路境界とみなされ,道路内の建築等が制限される(44条1項)。
既存建築物が直ちに除却されるわけではないが,増改築等の際には原則として既存不適格の適用除外が外れ,後退が必要になる(3条2項・3項)。
一括指定でも,条件に合致する個々の道にこの具体的な規制が直接及ぶから,抗告訴訟の対象となる処分に当たる(最判平成14年1月17日)。
合併後は建築主事を置く新市の市長Mが特定行政庁である(2条32号)。

新細則による指定の取消訴訟は,資料2のとおり出訴期間が経過している。
Gが平成17年6月にFへ伝えたのは,新細則に照らした該当性の判断であり,回答自体は建築制限を設定しない。
Aの申入れ後の見解維持も,新たな処分や出訴期間の再起算をもたらさない。

Aの主張は,新細則による一括指定が存在しても,本件通路は法律上の要件を欠くため,この通路を対象とする指定の効果は発生していないというものである。
一般的な一括指定の取消しや,指定効果が及ぶことを前提とした無効確認とは対象が異なる。
後者は,新細則による指定が本件通路に及ぶと仮定して,その効力を争う別の構成である。

Aは本件通路及び隣接地の所有者であり,市の見解によればこれらに具体的な建築制限が及び,現にその見解が進行中の売買交渉と鑑定に影響しているから,確認を求める法律上の利益がある。
A自身の増改築等の予定は示されず,確認申請への拒否や是正命令を待つのは現時点の紛争に間に合わない。
Eに対する建築確認も未発生で,後日の取消訴訟ではAの原告適格や,Eの建築計画に限った判断となることが問題となる。
Eとの民事訴訟で価格や通行関係を争っても,市との間の建築規制の根拠は確定しない。

行訴法4条の公法上の当事者訴訟として,市に対し,本件通路が2項道路であることを前提とするセットバック義務がないことの確認を求める方法も考えられる。
現に市が規制の適用を主張し,取引に具体的な支障があるので,現在の法律関係を確定する利益がある。
ただし,36条は現在の法律関係に関する訴えで目的を達し得ないことを求める。
これを比較するには,確認の対象と判決の効果を見なければならない。
本件では,特定の建築計画や建築制限の一部分に争いが限定されず,種々の規制の共通の前提である当該通路への指定の存否自体が争われている。
個々の規制上の地位を確認するより,その原因となる指定の不存在を市との間で直接確認する方が紛争解決に適切であり,市の関係行政庁も判決に拘束される(同法38条1項,33条1項)。
したがって不存在確認を第一に選ぶ。
他方,建築制限を受けない公法上の地位の確認でも同じ目的を達し得ると判断される場合には,当事者訴訟による確認を選ぶ。
いずれの判決によっても,Eの私法上の通行関係が当然に変更されるものではない。

2 本件通路についての主張

第一に,2項道路該当性を判断する道の単位は,形状だけでなく,沿道敷地が公道と連絡する機能に即して決めるべきである。
市は,両部分が途切れず,Eの公道への経路として連続する点を指摘し得る。
しかし,本件通路は,南北約6メートルの本件通路部分にある幅員2.0~2.2メートルの枝道であるのに対し,本件長方形部分は長さ約35メートル,幅員3.6メートルで東西に延び,両者は直角に接続する。
C・Dは長方形部分だけで公道に至り,その先の本件通路を必要とするのはEだけである。
通行経路の連続だけで,沿道敷地の接道を支える機能の差は消えない。
したがって,本件通路を長方形部分から分けて評価すべきである。
分筆や所有関係は,この区別を決めるものではない。

第二に,法42条2項の「建築物が立ち並んでいる」は,当該道が法上の道路と扱われなければ接道義務を満たし得ない建築物が複数あることを要すると主張すべきである。
同項は,交通・避難・防火・衛生上の安全を確保するための接道規制と,基準時に既に形成されていた土地利用の保護を調整する例外である。
市のように沿道に位置する建物を広く数えると,既に別経路で接道要件を満たす敷地の存在を根拠として,道路敷や隣接地の所有者に新たな負担を課すことになる。
昭和25年の時点に存在した5軒のうち,A・Bの建物の敷地は公道に2メートル以上接し,C・Dの建物の敷地は2項道路として扱われてきた本件長方形部分に2メートル以上接する。
A・Dの建物が本件通路に近接するというだけでは足りず,この道に頼るのはEの1軒である。
よって,本件通路には法定の立ち並びがなく,一括指定の効果が及ばない。

現況の通路の幅員は県細則の下限2.7メートルに達しないが,新細則の下限1.8メートル以上である。
筆の幅は通路の実際の幅と同一ではなく,また昭和25年の現存状況と平成15年の指定時点も別である。
仮に市の主張どおり幅員の条件を満たすとしても,それによって法の立ち並び要件が補われることはない。
基準時の現況は旧図面や写真等によって確認する。

3 一括指定自体を争う場合

市が主張するように本件通路が法及び細則の対象に含まれるとすれば,Aは市を被告に,この通路に係る一括指定の無効確認を検討する。
Aは,父の代からEに生活道路としての利用を認めてきたのに,基準の緩和によって売却予定地を含む自己の土地の利用と処分価値が新たに制約され,財産権(憲法29条)及び従前の利用への信頼が害されると主張できる。
もっとも,県基準が将来も維持される既得権があるとはいえない。
交通・避難等の安全と既存利用を調整する公共目的や,現状の建築物が直ちに除却されない点も考慮する。

また,旧乙山町には区画整理済みの地域が多い。
市は,従前の基準で救済されない沿道敷地の実情と,指定を受ける道路敷・隣接地の負担を調べ,旧甲川市との違いを公正に考慮すべきであった。
新市全域に1.8メートル基準を及ぼしたことが,調査に裏付けられない一律の緩和で,法42条2項が既存利用の保護と安全を調整させるために委ねた範囲を超えると主張し得る。
ただし,市域全体の整備の遅れに対応する合理的な政策なら,基準統一だけから違法とはいえず,まして無効とするには原則として重大かつ明白な瑕疵を基礎付ける必要がある。
Gによる道路単位や立ち並びの判断の誤りは,規則による指定自体の無効事由ではなく,本件通路に指定が及んでいないとの主張に用いる。

第2 設問2

1 請求の根拠

Aは新甲川市に対し,国家賠償法1条1項に基づいて損害賠償を求める。
着目すべきは,特定行政庁であるMが新細則により行った一括指定と,建築指導課長GがFに行った該当性の回答である。
Mの指定は市の公務員による権限行使である。
Gの回答は新たな法的効果を生じさせないが,市が建築規制を実施する職務の一環として,所管課がその規制の適用について公的な見解を示したものである。
私人と同じ立場で提供した情報とは性質が異なり,国賠法上の公権力の行使に含まれると主張できる。
国賠請求の目的は金銭賠償であり,一括指定の取消しや無効確認を先に得る必要はない。
もっとも,客観的な法令違反又は該当性判断の誤りだけで賠償責任が決まるものではない。
Aとの関係で各公務員が負う職務上の義務,その違反についての故意又は過失,損害及び因果関係を行為ごとに主張する必要がある。

2 Mの一括指定

法42条2項は対象となる道の法定要件を定めつつ,地域の整備状況や既存の土地利用に応じて,指定をどこまで行うかの政策的判断を特定行政庁に委ねている。
Mは,緩和により接道を確保する利益と,指定により道路敷や隣接地が受ける利用制約を,同項の目的に照らして調査し,合理的に比較する職務上の義務を負うと主張する。

旧甲川市では戦前からの入り組んだ町並みが残り緩和の必要があるのに対し,旧乙山町には区画整理された地域が多く,従来は下限2.7メートルであった。
旧乙山町でも一律に緩和すれば,既存利用の救済が必要な範囲を超え,それまで規制されなかった所有者に負担を及ぼすおそれがある。
暫定合意は従前の取扱いを永久に維持するものではないが,地域の違いを再検討すべき事情である。
Aは,必要性の調査を欠いたまま旧甲川市の基準を流用した,又は特定の賃貸人の利益や選挙上の支持を重視し,旧乙山町の整備状況や負担を軽視したのであれば,目的を逸脱し,又は判断過程が不合理であると主張すべきである。
地域別に維持する方法や個別指定を比較し,制定資料や議事記録等によって考慮の欠落と故意・過失を具体化する。

市は,新市域全体の整備の遅れと接道機会の確保,基準の統一による公平を理由として反論できる。
受益者が市長を支持したことや選挙で政策を約束したこと自体から,直ちに不当な目的は推認できない。
新聞記事は調査の端緒であり,Mが特定の支持者を利するために判断をゆがめたことを裏付ける必要がある。

本件通路が指定要件を欠くなら,新細則自体は本件通路に法的制限を生じさせない。
したがって,Mの指定による法的制限を損害の原因とする請求は,新細則が本件通路に及ぶ場合に備えた主張とし,適切な指定であれば生じなかった利用制限による価格差を示す。

3 Gの回答

Aは,市の担当課が特定通路について公式に照会を受け,取引の関係者の判断に用いられ得る回答をする以上,Gは,合理的な調査に基づき法定要件を適切に適用し,その結果を誤解のないように伝える注意義務をAとの関係でも負うと主張する。
Fが両当事者の依頼を受けた鑑定会社であり,市の回答が規制の有無を左右する前提情報として利用される点が重要である。
照会時にGに何が伝わっていたかは,Fの説明や照会記録で立証する。

Gは現地調査と資料調査をさせており,調査を全くしなかった事案ではない。
問題は,長方形部分との一体性を根拠付ける事情や,昭和25年の各建物の接道経路を確かめ,E以外の家屋が本件通路を必要としないことを十分に検討したかである。
Aは,この区別をせずに外形上の近接と幅員を重視し,確定できない点を留保せずに該当すると回答したのであれば,職務上の義務に反すると主張する。
もっとも,Gは一体・別個双方の構成を検討した。
市からは,条文解釈に合理的な異論があり,必要な調査をしたとの反論が予想される。
結論の違いを挙げるだけでなく,Gが通常の調査・検討により別の接道経路を把握し,誤った断定を避けられたことを具体的に示して過失を基礎付ける必要がある。

4 損害及び因果関係

Gについては,回答がなければ又は適正な回答であれば,Fは2項道路による制限を価格に織り込まず,AがEとの価格合意に従って得られる額はより高かったと主張する。
A・EはFの鑑定を価格決定の基礎にすることを合意しており,FやEが介在するだけで因果関係は切れない。
納税期限と手付金受領は,Aが低い価格を前提に取引を進めざるを得ない事情となる。
他方,Mの指定が有効に及ぶならGの正確な回答でも同じ規制が鑑定に反映されるため,その限りでGの回答による価格差は生じない。

価格評価の低下と現実の損害は分ける。
取引が実行されるなら,規制又は誤回答のない場合に合理的に得られた価格と実際の取引価格の差を,Fの評価内訳や比較鑑定,契約関係資料等で示す。
現時点で確定価格・契約の履行は明らかでなく,手付200万円を損害額とすることもできない。
売却前に主張するなら,Aの財産価値に現実に生じた減少を特定する必要がある。
Eへの従来の通路使用承認等は,規制又は誤回答のない場合の価格にも影響し得るから,その影響と市の各行為による下落を分ける。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案の第1の1は処分性,訴えの対象と訴訟の選択(番号1~9)に,第1の2は幅員,道の単位及び立ち並び(番号13~16)に,第1の3は一括指定自体を争う場合の主張(番号4・9~12)に対応する。
第2の1~4は番号17~26に対応し,重み3の番号18・21は,それぞれ第2の1の市長の権限行使と第2の2の故意・過失の検討で扱っている。
出訴期間経過の前提(番号2)は第1の1で,幅員と基準時の評価(番号13)は第1の2で扱っている。

番号重み評価項目答案の該当箇所・留保
14要件を満たす道に建築制限等が直接生じることを理由に,一括指定の処分性を認める。第1の1の指定の効果
34Gの照会回答に独自の法的効果がないことを説明し,その取消しを主たる手段にしない。第1の1のGの回答
45〔条件〕設問1で新細則による一括指定自体の効力を争う場合に,個別の該当性に関する主張とは分けて,その無効確認と無効を基礎付ける事情を示す。第1の3の冒頭と末尾。無効の成立は留保する。
55〔条件〕本件通路に一括指定の効果が及ばないと主張する場合に,新細則自体が有効でも法定の要件を欠く道には指定の効果が及ばないことから,処分の不存在確認を構成する。第1の1の請求と第1の2の結論
64Aの所有地に及ぶ建築制限と取引上の現実の支障を示して,行訴法36条の法律上の利益を基礎付ける。第1の1のAの法律上の利益
74〔条件〕処分の無効等確認の訴えを用いる場合に,現在の法律関係に関する訴え等で同じ目的を達し得るかを,確認の対象,時期及び判決の効果から比較する。第1の1の比較
85新甲川市を相手に,セットバック義務の不存在等の具体的な公法上の法律関係を確認する当事者訴訟の可否を検討する。第1の1のセットバック義務の不存在確認
95〔注意〕個別の通路についての2項道路該当性の判断の誤りを,一括指定自体の無効確認訴訟の本案の主張にすり替えない。第1の3の末尾
104〔条件〕一括指定自体を争う場合に,Aの所有権・既存の利用への影響を具体化し,規制目的や既存不適格の扱いに照らして財産権・既得の権利の侵害を論じる。第1の3の第1段落。無効の成立は留保する。
114〔条件〕一括指定自体を争う場合に,安全と既存の利用の保護を調和させる法42条2項の趣旨から,一律の緩和が委任の範囲を超えるかを論じる。第1の3の第2段落。無効の成立は留保する。
124〔条件〕一括指定自体を争う場合に,旧甲川市と旧乙山町の相違を根拠に,新細則の制定で公正な考慮が尽くされたかを論じる。第1の3の第2段落。無効の成立は留保する。
145本件通路と本件長方形部分の形状及び接道・利用の機能から,別々の道として扱う主張を立てる。第1の2の第一
155法42条2項の制度趣旨に即して,立ち並びに算入する建築物の範囲を理由付きで示す。第1の2の第二の規範
164A・B,C・D,Eの接道経路をそれぞれ区別し,本件通路に依存する建築物の数を示す。第1の2の第二の家屋ごとの評価
174Mの一括指定とGの回答を個別に特定し,新甲川市を相手に国家賠償法1条1項による賠償を求める。第2の1
195照会回答が処分性を欠いても,建築規制を所管する行政機関の職務上の回答として公権力の行使に含まれ得る理由を示す。第2の1のGの回答
204Mの指定について,Aとの関係で考慮すべき指定の利益・負担と目的に照らし,職務上の義務違反を具体的に論じる。第2の2の第1~3段落
225Gが取引に使われ得る公的回答をする場面で,調査・法適用・伝達についてAとの関係で負う職務上の義務を具体化する。第2の3の注意義務
234Gが行わせた現地・資料の調査と一体・別個の両方の検討を踏まえ,回避できた具体的な誤りがあったかを論じる。第2の3の回避可能性
244〔条件〕Mの指定を財産損害の原因として主張する場合に,指定が当該通路に及ぶ場合の規制による評価の低下と,指定が及ばない場合を区別する。第2の2の末尾
254Gの回答がFの鑑定を通じてA・E間の価格形成に影響したことを,適正な回答の場合と比較して示す。第2の4の第1段落
264評価額の下落と現実の損害を区別し,売却・価値減少の立証と反事実の価格差を具体化する。第2の4の第2段落

(2) 設問1

出題の趣旨は,2項道路の一括指定に処分性は認められるが出訴期間が経過していることを前提に,いかなる形態の抗告訴訟が考えられるか(一括指定の無効確認訴訟等),セットバック義務不存在確認等の公法上の当事者訴訟は可能かなどを検討し,各訴訟形態にふさわしい本案の主張の可能性を検討することを求めている(2頁)。
答案は,市長の一括指定が新たに建築制限を生じさせる効果と,Gの回答が既存の指定への該当性の判断を伝えたにとどまることを分け,本件通路についての指定の不存在確認,セットバック義務の不存在確認及び一括指定の無効確認の目的と条件を区別した(番号1~9)。
最高裁平成14年1月17日第一小法廷判決は,一括指定の方法による2項道路の指定も抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとした上で,通路部分について告示による2項道路の指定の不存在確認を求める訴えを,行政事件訴訟法3条4項にいう処分の存否の確認を求める抗告訴訟であり,同法36条の要件を満たすものとした。
答案が本件通路についての指定の不存在確認を第一に選んだのは,この判示に沿うものである。

本案の主張について,出題の趣旨は,規則自体の違法性(財産権ないし既得の権利の侵害,委任の範囲,旧市町の特殊事情への公正な考慮)と,職員の回答が独立した二つの通路を一体ととらえた点及び「立ち並んでいる」という要件を充足していると判断した点の適否を挙げ,職員の判断の誤りを一括指定処分の無効確認訴訟で主張することは失当であるとしている(2頁)。
答案は,規則自体の違法性を一括指定自体を争う場合の主張とし(番号10~12),本件通路については,道の単位と立ち並びの要件をそれぞれ論じ,5軒の接道経路を分けて説明した(番号13~16)。
採点実感では,行政法の考査委員が,処分を見つけて取消訴訟に結び付けるという一つの解法にとらわれ,今の判例から見れば処分性が到底認められない事実について長々と書く答案が非常に多かったと述べている(5頁)。
どの事実を指すかは示されていないが,本問ではGの回答の取消しを主たる手段としないこと(番号3)がこれに対応すると考えられる。

(3) 設問2

出題の趣旨は,国家賠償法1条の諸要件の意義を正確にとらえ,市長の規則制定行為と,2項道路該当性についての照会に対する職員の回答に具体的に当てはめることを求め,職員による回答行為の「公権力の行使」該当性,故意過失・違法性等を資料の記載から一定程度具体的に理由付けることができているかが評価に差が生ずるポイントになるとしている(3頁)。
採点実感では,設問2は設問1に比べて記述の厚みに欠ける答案が多く(2頁),国賠法の問題について正面から注意義務を論じている答案が少なかったとされ,過失認定についても少なくともどのようにアプローチするかの教育が必要であるとの指摘がある(3頁)。

答案は,Gの回答を建築規制を所管する行政機関の職務上の回答として公権力の行使に結び付け(番号17~19),MとGについて職務上の義務とその違反及び故意・過失を具体化した(番号20~23)。
指定によって法的に利用が制限された場合と,回答によって鑑定の前提が変わった場合を分け,実際の価格差や価値の減少の立証に接続している(番号24~26)。
国家賠償の請求について,あらかじめ処分の取消し又は無効確認の判決を得る必要がないことは,最高裁昭和36年4月21日第二小法廷判決の判示による。

(4) 答案の弱点と扱わなかった事項

Aの売却価格と損害額を確定できる事実は与えられていない。
幅員の基準時の資料,Gが照会時に知り得た取引の事情及びMの政策決定時の資料の内容によって,違法性,過失及び因果関係の評価は変わり得る。
不存在確認を選ぶ結論は一つの構成であり,当事者訴訟で同じ目的を達し得ると判断される場合には,行訴法36条の補充性の判断が変わる。
私法上の通行権やEの建築確認自体の適法性は,設問の到達点に含めていない。

第6 関連記事

1 同じ年度の司法試験の記事

①平成18年司法試験公法系科目第1問(憲法)の模範解答と評価項目
②平成18年司法試験民事系科目第1問(商法)の模範解答と評価項目
③平成18年司法試験民事系科目第2問(民法・民事訴訟法)の模範解答と評価項目
④平成18年司法試験刑事系科目第1問(刑法)の模範解答と評価項目
⑤平成18年司法試験刑事系科目第2問(刑事訴訟法)の模範解答と評価項目
⑥平成18年度旧司法試験論文式試験の模範答案

同年度の他の問題は,平成18年新司法試験試験問題で,出題の趣旨は,平成18年新司法試験論文式試験結果で確認できる。

2 同じ科目の別の年度の記事

①平成19年司法試験公法系科目第2問(行政法)の模範解答と評価項目
②平成20年司法試験公法系科目第2問(行政法)の模範解答と評価項目
③平成21年司法試験公法系科目第2問(行政法)の模範解答と評価項目
④平成22年司法試験公法系第2問(行政法)の模範解答と評価項目
⑤平成23年司法試験公法系第2問(行政法)の模範解答と評価項目
⑥令和7年度司法試験公法系第2問の模範解答と評価項目

3 本問の論点に関連する山中弁護士ブログの記事

①私道をめぐる法律関係―通行権・2項道路・掘削・駐車・税金(AIリライト)
②司法試験の出題法令の基準日―平成18年以降の年度別六法リンク(AI作成)

第7 出典

1 公式資料

①法務省「論文式試験問題集[公法系科目]」(平成18年新司法試験)(9~18頁の第2問・資料1~4)
②法務省「平成18年新司法試験論文式試験問題出題趣旨」(2~3頁の公法系科目〔第2問〕)
③法務省「新司法試験考査委員(公法系科目)に対するヒアリングの概要」(2~7頁のうち行政法の部分。司法試験委員会第29回会議(平成18年9月20日)の議事要旨とともに掲載)
④法務省「平成18年新司法試験実施予定表」(平成17年11月8日司法試験委員会決定の試験日程。論文式試験の公法系科目の実施日)

2 法令

①建築基準法2条32号,3条2項・3項,42条~44条は,問題文の資料4に掲げられた試験当時の条文による。
②行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)の制定時の条文(衆議院)及び行政事件訴訟法の一部を改正する法律(平成16年法律第84号)(衆議院)(3条4項,4条,11条1項,33条1項,36条及び38条1項)
③国家賠償法(e-Gov法令検索)(1条1項)
④日本国憲法(e-Gov法令検索)(29条)

3 裁判例

①最高裁平成14年1月17日第一小法廷判決(平成10年(行ヒ)第49号,民集56巻1号1頁):告示により一定の条件に合致する道を一括して指定する方法でされた2項道路の指定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとし,通路部分についての指定の不存在確認を求める訴えは行政事件訴訟法3条4項の抗告訴訟であり同法36条の要件を満たすとした。
②大阪高裁平成14年10月16日判決(平成14年(行コ)第11号):上記①の差戻後の控訴審判決であり,当該通路は告示所定の幅員の要件を充足していなかったから指定があったとはいえないとして,指定処分の不存在確認の請求(予備的請求)を認容した第一審判決に対する控訴を棄却した。
③最高裁昭和36年4月21日第二小法廷判決(昭和35年(オ)第248号,民集15巻4号850頁):行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては,あらかじめ当該行政処分につき取消し又は無効確認の判決を得なければならないものではないと判示した。
④最高裁昭和34年9月22日第三小法廷判決(昭和32年(オ)第252号,民集13巻11号1426頁):行政処分の無効原因の主張としては,処分の要件の存在を肯定する処分庁の認定に重大明白な誤認があることを具体的事実に基づいて主張すべきであるとした。

4 留意事項

出題の趣旨は2~3頁の公法系科目〔第2問〕の部分を,採点実感は考査委員に対するヒアリングの概要の2~7頁のうち行政法の部分を,評価項目の根拠とした。
平成18年の論文式試験については,法務省の論文式試験結果の公表ページに採点実感等に関する意見が掲載されておらず,採点実感欄に示した答案の傾向は,司法試験委員会のヒアリングにおける考査委員の所感である。
上記②の大阪高裁判決は,問題文が引用する最高裁判決の事案の帰結を示すものであり,その事実関係は本問の事実認定に用いていない。
評価項目,重み,答案の結論及び出題の趣旨の具体化は本記事独自の分析であり,法務省が一つの結論を指定したものではない。