第1 この記事の対象と結論
平成18年司法試験の論文式試験・刑事系科目第2問(刑事訴訟法)は,銀行での強盗致傷事件の直後に公園で発見された甲に対する捜査と,共犯者とされた乙の公判を素材とする事例である。
出題の趣旨によれば,設問1は職務質問・所持品検査等の可否,これに伴う有形力行使の限界及び逮捕に伴う無令状捜索・差押えの可否を,設問2は犯行計画を記載したメモについて,共謀を立証するための要証事実の選定と伝聞法則の適用の有無を問うものである。
この記事は,法務省の出題の趣旨と,考査委員が採点実感等を述べた刑事系科目のヒアリングの概要を基に15の評価項目を設け,そのうち6項目を重み5とした。
評価項目と重みは本記事独自の整理であり,法務省の採点基準や配点を示すものではない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 平成18年新司法試験論文式試験・刑事系科目第2問(刑事訴訟法) |
| 問題文 | 論文式試験問題集[刑事系科目](PDF6~9頁の第2問) |
| 試験日・答案の基準 | 平成18年5月23日(刑事系科目の論文式試験)。答案は試験当時の法令による。 |
| 出題の趣旨 | 平成18年新司法試験論文式試験問題出題趣旨(PDF5頁の刑事系科目〔第2問〕) |
| 採点実感 | 新司法試験考査委員(刑事系科目)に対するヒアリングの概要(PDF3~5頁の刑事訴訟法) |
| 主な事項 | 職務質問,所持品検査,有形力の行使,公務執行妨害による現行犯逮捕,逮捕に伴う無令状の捜索・差押え,伝聞法則,違法収集証拠排除法則 |
| 評価項目 | 15項目。重み5は6項目,重みの合計は63。 |
| 主な裁判例 | 任意捜査における有形力の行使について,最高裁昭和51年3月16日第三小法廷決定。職務質問に付随する所持品検査について,最高裁昭和53年6月20日第三小法廷判決。違法な手続により押収された証拠物の証拠能力について,最高裁昭和53年9月7日第一小法廷判決。 |
| 答案の分量 | 4944字(空白及び改行を除き,見出しを含む。) |
| 法令の基準 | 試験当時の刑事訴訟法,警察官職務執行法及び刑法による。 |
| 資料の確認日 | 令和8年11月7日 |
本稿の答案は,甲に対する職務質問の開始・継続,バッグの外側からの所持品検査,降車した甲の前に立った制止及び甲の腕をつかんだ措置を適法とし,公務執行妨害による現行犯逮捕も適法と評価する。
他方,公務執行妨害の被疑事実との関連を欠くバッグの開披,車内の捜索及び強盗致傷に関係する物の差押えは違法とする。
設問2では,メモを共同で犯行計画を具体化した行為として用いる限り伝聞法則に抵触しないとした上で,押収手続の違法が重大であるとして,違法収集証拠としてメモの証拠能力を否定する。
重み5の6項目は,有形力の行使の限界(番号3),所持品検査の根拠と限界(番号4),無令状の捜索と差押えの区別(番号7),逮捕被疑事実から見た捜索の必要性(番号9),立証事項に応じた伝聞該当性の判断(番号11)及び押収手続を違法とする場合の証拠排除(番号14)である。
第3に事実関係と設問の要求,第4に評価項目と重み,第5に答案と解説,第7に出典を置く。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
評価項目は,出題の趣旨と採点実感の指摘を,答案の記載から判定できる単位に言い換えた本稿独自の基準である。
表の番号は記事全体で通している。
出題の趣旨・採点実感の欄は,法務省が公表したPDFの頁と,関連する記載の要旨である。
平成18年の刑事系科目では,採点実感等は司法試験委員会第29回(平成18年9月20日)の考査委員に対するヒアリングの概要として公表されているので,採点実感欄はその刑事訴訟法部分の頁と要旨を示す。
刑事訴訟法担当の考査委員の発言は,出題意図の説明と採点の実感の両方を含むので,出題意図の説明に当たる箇所はその旨を付記した。
一方の資料に対応する記載がない場合は「記載なし」,一般的な指摘から導く場合は「間接」と表示する。
採用する構成によって評価する項目が異なる場合は,【適用条件】を付けた。
例えば,設問1でメモの押収手続を適法とする構成を採る場合には,押収手続の違法を前提とする番号14・15は評価の対象としない。
2 5段階の重み付けの基準
| 重み | 判断基準 |
|---|---|
| 5 | その設問の判断を大きく分ける核心 |
| 4 | 結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ |
| 3 | 通常押さえる法的処理・事情の評価 |
| 2 | 論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意 |
| 1 | 補充的な引用・記述範囲の確認 |
重みとその合計は本記事独自の整理であり,法務省の配点,採点基準又は得点の目安を示すものではない。
条件付きの項目も重みの分布と合計に含める。
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
平成18年1月24日午後2時55分頃,刺身包丁を持ち目出し帽をかぶった男がA銀行B支店に押し入り,一万円札100枚の札束18束を奪った上,追い掛けた従業員Vの左腕を刺身包丁で刺し,上が白・下がシルバーのツートンカラーの普通乗用自動車で逃走した。
犯人は,上着の両袖側面に3本の白線の入った紺色のジャージ上下を着ており,車のナンバーは0703であった。
同日午後3時25分頃,X巡査とY警部補は,銀行から直線距離で約5キロメートル離れたJ公園内で,同じ配色でナンバーに0703を含む車と,同じジャージを着て運転席に乗っていた甲を発見した。
甲は免許証の提示や住所・氏名の質問に応じず,助手席の茶色ボストンバッグについて質問されると落ち着きをなくし,バッグの中を見せるよう再三求められても応じなかった。
午後3時40分頃までに,更に6名の警察官が応援に駆け付けた。
午後4時10分頃,甲がバッグを抱えて降車すると,警察官4名が甲の前に立ちはだかった。
Y警部補は,バッグを触らせてほしいとの求めに甲が何も答えなかったので,バッグを外側から触り,札束と考えても矛盾しない形状の物が多数入っている感触を得た上で,署への同行を求めたが,甲は答えなかった。
甲がX巡査とY警部補の間をすり抜けて逃げようとし,X巡査が甲の左腕をつかむと,甲はこれを振り払ってX巡査の顔面を殴り,午後4時20分,公務執行妨害の現行犯人として逮捕された。
逮捕後,警察官はバッグのファスナーを開けて札束,刺身包丁,携帯電話及びメモを発見し,車内からも目出し帽と軍手を発見して,午後4時30分,これらを逮捕に伴って差し押さえた。
メモの上半分には,J公園東出口付近に×印を付けた地図と「乙、車の中で待ってる」の記載があり,下半分には決行の日時,名前が分かる物を持って行かないこと,盗んだ車を使うこと及び取った金を半分ずつ分けることが書かれていた。
手書きの文字は甲の筆跡と判明し,乙方からはメモの記載どおりの筆圧痕の残るレポート用紙が差し押さえられた。
強盗致傷の共謀を否認する乙の公判で,証人となった甲は,乙が地図と×印を書き,甲が乙の目の前で各記載を書き入れたと供述した。
2 設問が求めること
| 設問 | 対象 | 前提・範囲 | 答案の到達点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 事例の2及び3に記載された警察官らの捜査 | 各供述の内容は信用できるものとする。問題点を挙げ,事実を摘示して論じる。事例の4(送致・勾留・起訴)は対象外。 | 職務質問から差押え・引致までの各措置の適法性 |
| 2 | 乙の強盗致傷被告事件で,共謀を立証するための証拠として証拠調べ請求されたメモ | 問題点を挙げ,事実を摘示して論じる。 | メモの証拠能力 |
第4 評価項目と重み
1 設問1 職務質問から逮捕に伴う捜索・差押えまで
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 強盗致傷を疑う相当な理由を,事件からの時間・距離,車の特徴と甲の服装の一致に結び付けて示す。 | 4 | PDF5頁。職務質問等の可否について,要件の解釈と該当する事実を検討すること | PDF5頁。警職法の挙動不審の要件に当たる具体的事実を丁寧に提示して当てはめる答案が比較的多かったこと |
| 2 | 職務質問を続ける必要性と,質問の時間・人員・具体的方法が甲の退去の自由に与えた制約を比較する。 | 3 | 間接(PDF5頁。職務質問等の可否の要件解釈と該当事実) | 間接(PDF4頁。事実関係から法解釈にとって意味のある事実を抽出し,要件該当性を検討すること) |
| 3 | 4人の立ちはだかりとXの腕の把持を区別し,質問のための制止と同行の強制の境界を具体的な事実から判断する。 | 5 | PDF5頁。職務質問等に伴う有形力行使の限界 | 間接(PDF3頁。捜査における任意手段・強制手段の法的規律の基本を試したとの出題意図の説明) |
| 4 | 承諾を欠く所持品検査を許し得る理由と限界を,口頭の質問との関係,職務質問の実効性,任意手段であることから説明する。 | 5 | PDF5頁。所持品検査等の可否と,手続・制度の趣旨に関する正確な理解 | PDF4頁。条文に規定のない所持品検査が許される論理と,判例が必要性・緊急性・法益の均衡を求める理由の説明。判例の文言を記述するだけの答案が比較的多かったこと |
| 5 | Yの外側からの接触について,沈黙と同意を区別し,凶器使用や嫌疑の具体性と接触の侵襲の程度を比較する。 | 4 | PDF5頁。所持品検査等の可否の要件解釈と該当事実 | PDF4頁。判例の論理を内在的に理解した上での,具体的な事例への丁寧な当てはめ |
| 6 | Xの職務の適法性を踏まえ,公務執行妨害の現行性と逮捕の必要性を逮捕時の事実で判断する。 | 3 | 間接(PDF5頁。逮捕に伴う無令状捜索・差押えの可否の前提) | 記載なし |
| 7 | 開披・車内捜索と物の差押えを別個の強制処分として把握し,無令状例外の必要性を制度趣旨と条文から説明する。 | 5 | PDF5頁。逮捕に伴う無令状捜索・差押えの可否と,制度の趣旨に関する正確な理解 | PDF4~5頁。捜索と差押えを別個の強制処分として分け,制度趣旨から首尾一貫して論じる作業が不十分な答案があったこと |
| 8 | バッグと車について,各場所が逮捕と時間的・場所的に接着するかをそれぞれ判断する。 | 4 | PDF5頁。逮捕に伴う無令状捜索・差押えの要件解釈と該当事実 | PDF5頁。「逮捕の現場」の文言の解釈と具体的事例への当てはめ |
| 9 | 公務執行妨害の被疑事実からバッグ開披・車内捜索の必要性を判定し,強盗致傷の嫌疑や後で見つかった物と区別する。 | 5 | PDF5頁。逮捕に伴う無令状捜索・差押えの要件解釈と該当事実 | PDF5頁。「必要があるとき」の文言の解釈と具体的事例への当てはめ |
| 10 | 差し押さえた各物の逮捕被疑事実との関連性を吟味し,バッグの一時的分離や別事件についての処分と区別する。 | 4 | PDF5頁。逮捕に伴う無令状捜索・差押えの可否 | PDF4~5頁。捜索と差押えを別個の強制処分として分けて考えること |
2 設問2 メモの証拠能力
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 11 | 伝聞該当性の判断を,乙の共謀を立証する際にその記載で直接証明しようとする事項と,供述内容の真実性への依存で行う。 | 5 | PDF5頁。「共謀」を立証するための要証事実(立証事項)の選定と,要証事実との関係における伝聞法則の適用の有無 | PDF3頁。メモの使い方(要証事実・立証事項の設定の仕方)によって伝聞法則との関係がどうなるかを問うたとの出題意図の説明 |
| 12 | 乙の地図・×印と甲の書込みについて,作成場面と行為者を区別し,具体的な共同計画への意思の連絡を推認する経路を示す。 | 4 | PDF5頁。本件メモの作成状況と記載の法的意味 | PDF3頁。犯行計画を記載したメモを用いて共謀をどのように立証するかを問うたとの出題意図の説明 |
| 13 | 甲の書込みの内容が真実であることを前提にする用法では,乙の事件で甲が被告人以外の者であることを踏まえ,伝聞例外の可否を示す。【適用条件】記載内容の真実性に依存する用法を論じるとき | 3 | 間接(PDF5頁。要証事実との関係における伝聞法則の適用の有無) | 間接(PDF3頁。メモの使い方と伝聞法則との関係についての出題意図の説明) |
| 14 | メモの押収を違法とする場合,違法の重大性と将来の違法捜査抑止という基準を分けて証拠能力を判断する。【適用条件】設問1でメモの押収手続を違法とするとき | 5 | PDF5頁。押収手続を違法と評価する場合の違法収集証拠排除法則の適用の当否 | 記載なし |
| 15 | 排除の当てはめで,高度の強盗致傷嫌疑等と,制圧後に別事件の物を無令状で探索した態様を比較する。【適用条件】設問1でメモの押収手続を違法とするとき | 4 | PDF5頁。違法収集証拠排除法則の適用の当否と,事例中の具体的な事実関係の指摘 | 記載なし |
3 重みの分布
15項目の内訳は,重み5が6項目,重み4が6項目,重み3が3項目,重み2が0項目,重み1が0項目であり,重みの合計は63点である。
設問別では,設問1が10項目・42点,設問2が5項目・21点である。
問題文は第2問全体の配点(100点)だけを示しており,設問ごとの配点の割合は示していない。
設問1の重み5(番号3・4・7・9)は,有形力の行使の限界,所持品検査の根拠と限界,無令状の捜索と差押えの区別及び逮捕被疑事実から見た捜索の必要性である。
設問2の重み5(番号11・14)は,立証事項に応じた伝聞該当性の判断と,押収手続を違法とする場合の違法収集証拠排除法則の適用である。
採点実感が不足を指摘した,所持品検査が許される論理と判例の要件の理由の説明,捜索と差押えを区別した上での「逮捕の現場」「必要があるとき」の解釈は,重み5又は重み4に整理した。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
答案は,試験当時(平成18年5月23日)の刑事訴訟法,警察官職務執行法及び刑法により,設問ごとに規範,事実の評価及び結論を示す。
各供述の内容は信用できるものとする問題文の前提に従う。
「警職法」は警察官職務執行法,「刑訴法」は刑事訴訟法を指し,刑事訴訟法の条文は条番号だけで示すことがある。
設問1ではバッグの開披・車内捜索・差押えを違法とする構成を採り,設問2ではその構成を前提に違法収集証拠排除法則を適用する。
答案は空白及び改行を除いて4944字(見出しを含む。)である。
2 答案
第1 設問1
1 職務質問の開始及び継続
警職法2条1項は,挙動その他周囲の事情から合理的に判断して犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がある者を停止させて質問することを認める。
事件発生から約30分,銀行から約5キロメートルの公園に,配色と番号の数字部分が一致する車があり,運転席の甲のジャージも色と袖の白線まで一致した。
顔や年齢が判明していなかったことを考慮しても,Xらが甲に免許証の提示を求め,氏名等を尋ねたことは,身元と事件との関係を確認する職務質問として適法である。
既に甲が開けていた窓から助手席のバッグを見ることも,車内に立ち入らず外から見える物の観察にとどまる。
同条3項により,職務質問は身柄拘束や答弁の強要を許さない。
有形力の行使だけで強制処分になるわけではないが,意思を制圧して身体等を制約し目的を実現する措置には特別の根拠を要する(最決昭和51年3月16日参照)。
実効的な停止のため,嫌疑の程度,事案の重大性・緊急性,制約の程度に照らし,必要かつ相当な限度で短時間の制止等を行い得る。
本件では,甲が氏名等を答えず,犯人の持っていたものと同様のバッグについて動揺したことから,確認を続ける必要があった。
ただし,応援6人が来てからも質問開始後約45分まで任意の開示要請を繰り返したことは,人数・時間の点で負担が大きい。
開披を拒むこと自体を拘束の根拠にはできない。
もっとも,その間に甲を取り囲んで退去を封じたり,答弁を強制したりした具体的事情は示されていない。
要請の継続だけで違法な留め置きとは認め難い。
甲がバッグを抱えて降車した段階で,4人が前に立ったことは移動を制限するが,凶器使用を伴う強盗致傷の直後で,同一車両・服装・バッグがそろい,身元の確認もできない。
Yが横に立った事実もあるが,退路を完全に封じた事情までは示されていない。
降車から逮捕まで約10分の間に別の措置も続き,進路遮断の継続時間は明らかでない。
現場で移動の目的を確かめるのに必要な限度の制止と評価し,適法と考える。
2 バッグの外側からの検査
所持品検査に明文はないが,質問対象者が携える物と嫌疑との関係は口頭の質問に密接に関わり,言葉だけでは得られない確認を補うため,警職法2条1項による職務質問の付随措置となり得る。
職務質問が任意手段である以上,原則として承諾を得る。
ただし犯罪の予防・鎮圧等の警察責務を果たすには,承諾が得られなくても直ちに確認すべき場合がある。
捜索に至らず強制にわたらない範囲で,必要性・緊急性,私的領域への侵害と保護される公共の利益を衡量して相当なときに限り許される(最判昭和53年6月20日)。
Yの問いに甲が答えなかったことは承諾を意味しない。
本件では,服装・車の特徴に加え,身長・体格も一致し,甲が離れようとしている。
バッグには奪われた札束や使用した包丁が入っている可能性があり,安全確保と迅速な嫌疑確認の必要性は高い。
甲の手から取り上げたりファスナーを開けたりせず外側から触れたにとどまり,内容物の形状の概略を知る程度である。
バッグへの関心に対する拒否の態度を考慮しても,Yの措置は許容される。
3 同行要請,腕の把持及び現行犯逮捕
Yの発言は質問場所の変更を求めたものである。
警職法2条2項による同行要求には,現場での質問が本人に不利又は交通の妨害となる事情が要るが,公園でその事情は具体的に示されていない。
もっとも,嫌疑が具体化した強盗致傷の任意捜査として,刑訴法198条1項に基づき出頭を求めることはできる。
返事がない以上承諾はなく,連行は許されない。
直後のXの腕の把持は実力の行使である。
同行要請直後であり,それを実力で実現しようとしたとみる余地がある。
しかし,甲は顔色が変わり,耳が赤くなった直後に,Xらの間をすり抜けようとした。
X自身が確認した車・服装・バッグの特徴に,事件への言及に対する甲の反応とすり抜けが加わった。
札束様の感触を得たのはYであり,Xへの伝達は示されていない。
Xは片手で甲の一方の腕を取ったのであり,その段階で連行を始めた事情はない。
逃走を一時止めて現場での質問を続けるための短い措置とみれば,警職法2条1項・3項の限度内である。
ただし,同行を強いる意図で退去を長く封じたと評価するなら違法である。
甲がXの把持を振り払った後,顔面を強く殴ったのは,適法に職務を執行するXに対する暴行である(刑法95条1項)。
Yは直後に逮捕を告げており,刑訴法212条1項・213条の現行犯逮捕の要件を満たす。
甲が身元を明らかにせず,逃走しようとし,強い暴行に及んだことから,身柄確保の必要もある。
激しく抵抗した甲を5人で押さえ,片腕に抱え込んでいたバッグを引き離すことは,抵抗を排除し逮捕を実効化するため相当である。
バッグの一時的な分離と,内容を見ることや占有を継続することは別に検討を要する。
腕の把持が違法なら公務執行妨害の前提を欠く。
強盗致傷については,誰何後の逃走と逃走車等の一致から準現行犯逮捕(212条2項4号)の余地はあるが,犯行を終えてから間がないことが明らかであるとの同項本文の要件につき,時間・場所の近接性や発見後の経過を慎重に判断すべきである。
開披で判明した所持品はその判断に遡及して使えない。
本件の逮捕は公務執行妨害を理由に行われた。
4 バッグの開披,車内捜索及び差押え
ファスナーを開けて内部を探索し,車内を調べることは捜索であり,物件の占有を取得・継続する差押えとともに令状を要するのが原則である(憲法35条,刑訴法197条1項ただし書・218条1項)。
刑訴法220条1項2号・3項は適法な逮捕に際し必要なとき,逮捕の現場で無令状の捜索・差押えを許す。
バッグは逮捕時に甲が抱えていた物であり,直後の開披は逮捕と時間的・場所的に接着する。
車は甲が降車した場所で,警察官との応対・降車・制圧は同じ停車場所の付近で連続したと読める。
こう解する限り車も現場に含まれ,約10分以内の一連の処分は時間的にも接着する。
現場では逮捕被疑事実の証拠の所在を合理的に見込めることを根拠とする立場でも,証拠の散逸を防ぐ緊急性を重視する立場でも,場所と時間が近いことだけで無関係な物を探索・保全する理由は生じない。
222条1項が準用する102条,99条1項にも照らし,捜索にはその事件の証拠等を探す必要が,差押えには各物件との関連性が要る。
本件の逮捕被疑事実はXに対する素手の殴打である。
バッグは抵抗時に抱えられていたが,殴打に用いられておらず,札束,刺身包丁,携帯電話及びメモをその事件の証拠とする事情はない。
車の助手席下を調べて発見した目出し帽・軍手にも関係はない。
バッグ自体は逮捕時の抵抗の態様に関係し得るが,対象の公務執行妨害は逮捕前の殴打である。
仮に一連の経過を示す関連性を認めても,現場で形状や所持の状況を記録でき,バッグそのものを保全すべき事情は乏しい。
包丁の危険への対応も,甲を制圧してバッグを引き離した段階で,さらに開披して証拠を探す理由にはならない。
したがって,開披,車内捜索及び列挙された物の差押えはいずれも違法である。
他の事件の証拠を適法な捜索中に発見したとしても,その発見だけで差押えの権限は生じない。
強盗致傷について別に令状を得るのが原則であり,仮に同事件で緊急逮捕の要件があっても,その理由の告知と直ちに令状を請求する手続(210条)が実際にとられていない。
後の発見物で先の捜索を正当化することはできない。
甲はバッグを手放すまいと抵抗したから,遺留・任意提出による領置(221条)にも当たらない。
5 引致及び取調べ
公務執行妨害の嫌疑と身柄確保の必要性はそれ自体として認められ,警察が強盗致傷も捜査していたことだけから,現行犯逮捕や引致を違法とはできない。
甲は逮捕約30分後に司法警察員Zへ引致され,弁解の機会を与えられた(刑訴法216条,203条1項)。
取調べに当たっては供述拒否権の告知を要する(198条2項)。
告知の有無は事例に記載がない。
別件の拘束を利用して強盗致傷につき実質的な強制取調べをすることは許されないが,本件でZが取り調べたのは公務執行妨害で,甲が自発的に強盗の供述を始め上申書を提出した。
強盗について供述を強制した事情はなく,その受領を違法とはいえない。
第2 設問2
1 違法収集証拠としての排除
メモは前記の違法な捜索・差押えにより直接得られた物である。
令状主義の精神を没却するような重大な違法があり,将来の違法捜査を抑制する見地から証拠として許容するのが相当でない場合に排除する(最判昭和53年9月7日)。
本件には強盗致傷の高度の嫌疑があり,バッグも逮捕現場に存在した。
しかし,Xらは公務執行妨害で甲を制圧した後,その事件との関連を欠くバッグの内部に立ち入り,車内も捜索して強盗致傷に関係する物を一括して差し押さえた。
メモは適法な処分に偶然付随して見えた物ではなく,閉じたバッグの開披によって初めて発見された。
令状請求ができない切迫した事情も,制圧後の段階では示されていない。
被告人が甲でなく乙でも,このような別事件の逮捕を用いた無令状捜索の成果を共犯者の公判で利用させれば,その捜査を抑止できない。
乙方で後に得た筆圧痕は別の証拠であり,原メモを押収した手続の瑕疵を治癒しない。
したがって,重大な違法があり,抑止のためメモの証拠能力を否定すべきである。
2 伝聞該当性
仮に収集過程による排除をしない場合,究極の要証事実は乙と甲の強盗致傷の共謀である。
メモで直接立証する事項は,共同で計画を具体化する行為があったこと,又はメモに書かれた事実が真実であることなど,立証の仕方によって異なる。
刑訴法320条1項が制限するのは,原供述者の知覚,記憶,叙述等の正確性を公判で吟味できないまま,法廷外の供述内容が真実であることを前提に用いる場合である。
メモの現物の存在だけで伝聞性が決まるものではなく,具体的な立証の経路による。
甲は公判で,乙が自宅で逃走経路と合流地点の×印を描き,甲がその場で「乙、車の中で待ってる」と記し,指示に応じて実行日・身元秘匿・盗難車使用を記し,分配の申出を承諾して半分ずつと書いた,と証言した。
この公判供述により各人の行為,作成の順序,相手に示された状況を立証できる。
甲の筆跡の鑑定と乙方に残る筆圧痕も作成状況を推認させる。
筆圧痕だけで乙が地図を書いたことや同意したことが証明されるわけではない。
地図と×印は,地理的正確さを証明するためでなく,乙が逃走・合流の具体案を図示して甲に示した行為として使える。
待機,実行日,身元秘匿,車及び分配の記載は,実際に乙が待機した,盗難車を使った,分配したなどの事実を証明するためではなく,甲が乙とやりとりしながら計画を具体化し,承諾した場面で作成した物として用いる。
各記載の存在と作成の経緯を,甲の公判証言,筆跡鑑定や筆圧痕等の裏付けと組み合わせれば,意思の連絡を推認できる。
指示・提案・承諾の発言も,それがされたこと自体に意味がある限り非伝聞である。
この限度で,メモは伝聞法則には抵触しない。
これに対し,記載を作成場面から切り離し,甲の法廷外の記述が正しいことを前提に,乙が待機する役割を引き受けていたことや,甲乙間で分配の合意が既にあったことを証明する用法なら伝聞となる。
犯行当日に予定が実行されたことを立証する場合に限られない。
乙の事件で甲は被告人以外の者であり,私的なメモにつき321条1項3号によるには供述不能,不可欠性,特信情況が要る。
甲は出廷して供述しており,供述不能ではない。
さらに乙の法廷外供述を内容の真実のため用いるなら,乙の供述の層も別に検討を要する。
甲の公判証言が乙の供述をその意味で含む場合には324条1項が322条を準用するが,メモの甲の記述の層はそれによって通過しない。
同意(326条)の事実も示されていない。
以上より,共同作成の事実を立証する用法は伝聞法則に抵触しない。
本答案の採る押収違法の構成では,違法収集証拠としてメモの証拠能力を否定する。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
答案の第1の1~3は職務質問から現行犯逮捕まで(番号1~6),第1の4は無令状の捜索と差押え(番号7~10)に対応する。
第2の1は違法収集証拠の排除(番号14・15),第2の2はメモの立証事項と伝聞(番号11~13)に対応する。
重み5・4の項目及び条件付きの項目と,答案の該当箇所は次のとおりである。
| 番号 | 重み | 評価項目 | 答案の該当箇所・留保 |
|---|---|---|---|
| 1 | 4 | 強盗致傷を疑う相当な理由を,事件からの時間・距離,車の特徴と甲の服装の一致に結び付けて示す。 | 第1の1冒頭 |
| 3 | 5 | 4人の立ちはだかりとXの腕の把持を区別し,質問のための制止と同行の強制の境界を具体的な事実から判断する。 | 第1の1・3 |
| 4 | 5 | 承諾を欠く所持品検査を許し得る理由と限界を,口頭の質問との関係,職務質問の実効性,任意手段であることから説明する。 | 第1の2第1段落 |
| 5 | 4 | Yの外側からの接触について,沈黙と同意を区別し,凶器使用や嫌疑の具体性と接触の侵襲の程度を比較する。 | 第1の2第1~2段落 |
| 7 | 5 | 開披・車内捜索と物の差押えを別個の強制処分として把握し,無令状例外の必要性を制度趣旨と条文から説明する。 | 第1の4第1~2段落 |
| 8 | 4 | バッグと車について,各場所が逮捕と時間的・場所的に接着するかをそれぞれ判断する。 | 第1の4第2段落 |
| 9 | 5 | 公務執行妨害の被疑事実からバッグ開披・車内捜索の必要性を判定し,強盗致傷の嫌疑や後で見つかった物と区別する。 | 第1の4第2~3段落 |
| 10 | 4 | 差し押さえた各物の逮捕被疑事実との関連性を吟味し,バッグの一時的分離や別事件についての処分と区別する。 | 第1の3・4 |
| 11 | 5 | 伝聞該当性の判断を,乙の共謀を立証する際にその記載で直接証明しようとする事項と,供述内容の真実性への依存で行う。 | 第2の2冒頭 |
| 12 | 4 | 乙の地図・×印と甲の書込みについて,作成場面と行為者を区別し,具体的な共同計画への意思の連絡を推認する経路を示す。 | 第2の2第2~3段落 |
| 13 | 3 | 甲の書込みの内容が真実であることを前提にする用法では,乙の事件で甲が被告人以外の者であることを踏まえ,伝聞例外の可否を示す。【適用条件】記載内容の真実性に依存する用法を論じるとき | 第2の2第4段落。記載内容の真実性に依存する用法を論じる場合 |
| 14 | 5 | メモの押収を違法とする場合,違法の重大性と将来の違法捜査抑止という基準を分けて証拠能力を判断する。【適用条件】設問1でメモの押収手続を違法とするとき | 第2の1。押収手続を違法とする場合 |
| 15 | 4 | 排除の当てはめで,高度の強盗致傷嫌疑等と,制圧後に別事件の物を無令状で探索した態様を比較する。【適用条件】設問1でメモの押収手続を違法とするとき | 第2の1。押収手続を違法とする場合 |
(2) 設問1
出題の趣旨(PDF5頁)は,職務質問・所持品検査等の可否,これに伴う有形力行使の限界及び逮捕に伴う無令状捜索・差押えの可否について,刑事訴訟法等が定める手続・制度の趣旨に関する正確な理解を踏まえて,要件の解釈と該当する事実を検討することを求めている。
採点実感(PDF4~5頁)は,所持品検査について判例の文言を記述するだけで,条文に規定のない所持品検査が許される論理や,判例が必要性・緊急性・法益の均衡を求める理由を説明しない答案が比較的多かったことと,捜索と差押えを別個の強制処分として分けた上で「逮捕の現場」「必要があるとき」の文言を解釈する作業が不十分な答案があったことを指摘している。
答案では,質問の開始と約45分間の経過,4人の立ちはだかり,外側からの接触及び腕の把持を分けて評価した(番号1~6)。
逮捕の現場の近くに物があることは別事件の証拠を探す根拠とならないと考え,開披・車内捜索と,個々の物を差し押さえる必要とを別に検討した(番号7~10)。
これは本問の事実に対する本記事の評価である。
最高裁昭和51年3月16日決定は,酒酔い運転の疑いが濃厚な被疑者を同意を得て警察署に任意同行し,呼気検査に応じるよう説得していたところ,被疑者が急に退室しようとしたため左手首をつかんだ行為を,任意捜査において許容される限度内の有形力の行使とした事案であり,本問では同行の同意がないことを別に評価した。
最高裁昭和53年6月20日判決は,猟銃と登山用ナイフを使用した銀行強盗の容疑が濃厚な者について,承諾のないまま施錠されていないバッグのチャックを開けて内部を一べつした行為を,所持品検査として許容される限度内とした事案である。
同判決は,甲を逮捕して制圧した後の証拠の探索にそのまま当てはまるものではない。
(3) 設問2
出題の趣旨(PDF5頁)は,本件メモがどのような状況で作成され,その記載にどのような法的意味があるかに留意しつつ,「共謀」を立証するために考えられる要証事実(立証事項)を選定し,要証事実との関係で伝聞法則の適用の有無を検討することを求め,設問1で押収手続を違法と評価する場合には違法収集証拠排除法則の適用の当否も検討が必要であるとしている。
ヒアリングでも,刑事訴訟法担当の考査委員が,メモの使い方,すなわち要証事実・立証事項の設定の仕方によって伝聞法則との関係がどうなるかを問うたと出題意図を説明している(PDF3頁)。
答案は,乙の地図・×印の記入と甲の書込みを,共同で犯行計画を具体化した行為として用いる経路と,乙が待機役を引き受けていたこと等を記載内容が真実であるとして用いる経路とに分けた(番号11~13)。
押収手続を違法とする構成では,令状主義に照らした違法の程度と,この種の捜査を抑止する必要性を別に評価した(番号14・15)。
証拠排除の結論は本記事の事例評価である。
最高裁昭和53年9月7日判決は,所持品検査として許容される限度をわずかに超えて上衣の内ポケットに手を差し入れ,取り出して押収した証拠物について,違法の程度等から証拠能力を肯定した事案である。
本問では,別事件の物証を得るための探索が,甲を制圧した後にも及んだ点を重く見た。
(4) 答案の弱点と扱わなかった事項
車が逮捕の現場に含まれるとの判断は,降車と制圧が同じ停車場所の付近で連続したという読み方に基づく。
腕の把持が同行を強いるものだと評価される場合には,公務執行妨害による逮捕の前提が変わる。
逮捕後のバッグの開披を職務質問に付随する所持品検査として説明する構成や,強盗致傷による準現行犯逮捕を前提とする構成は,答案では採っていない。
筆圧痕の残るレポート用紙や甲の公判供述それ自体の証拠能力は,設問2の対象から外した。
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⑥平成18年度旧司法試験論文式試験の模範答案―憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法の全12問と出題趣旨を踏まえた解説(AI作成)
同年度の他の問題は,平成18年新司法試験試験問題で,出題の趣旨は,平成18年新司法試験論文式試験結果で確認できる。
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第7 出典
1 公式資料
①法務省「論文式試験問題集[刑事系科目]」(平成18年新司法試験)(PDF6~9頁の第2問)
②法務省「平成18年新司法試験論文式試験問題出題趣旨」(PDF5頁の刑事系科目〔第2問〕)
③法務省「新司法試験考査委員(刑事系科目)に対するヒアリングの概要」(PDF3~5頁の刑事訴訟法。司法試験委員会第29回(平成18年9月20日)の配布資料として掲載)
④法務省「平成18年新司法試験の実施日程の変更について」(平成17年11月8日司法試験委員会決定。PDF1頁の試験日程)
2 法令
①刑事訴訟法(e-Gov法令検索)(99条,102条,197条,198条,203条,210条,212条,213条,216条,218条,220条~222条,320条~322条,324条及び326条)
②警察官職務執行法(e-Gov法令検索)(2条)
③刑法(e-Gov法令検索)(95条1項)
④日本国憲法(e-Gov法令検索)(35条)
⑤刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成18年法律第36号)(衆議院)
e-Gov法令検索のリンクは現行の条文であり,答案は試験当時の条文による。
刑事訴訟法の条文は,平成18年法律第36号までの改正を反映した法務省の刑事訴訟法(第一編第二編)の対訳の日本語欄によった。
同法律による刑事訴訟法の改正は461条だけであり,答案が用いる条文には及ばない。
刑法95条1項は,同法律(平成18年5月28日施行)による罰金刑の追加の前の規定であり,試験当時の法定刑は3年以下の懲役又は禁錮であった(答案は同項の構成要件だけを用いる)。
答案が用いる警察官職務執行法2条1項~3項は,e-Gov法令検索が収録する最も古い版(平成18年12月23日施行)と現行の版とで同じ文言である。
3 裁判例
①最高裁昭和51年3月16日第三小法廷決定(昭和50年(あ)第146号,刑集30巻2号187頁):任意捜査における有形力の行使は,個人の意思を制圧し,身体,住居,財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段にわたらない限り,必要性,緊急性なども考慮した上,具体的状況の下で相当と認められる限度において許容されるとした。
②最高裁昭和53年6月20日第三小法廷判決(昭和52年(あ)第1435号,刑集32巻4号670頁):職務質問に付随して行う所持品検査は,所持人の承諾を得てその限度で行うのが原則であるが,捜索に至らない程度の行為は,強制にわたらない限り,所持品検査の必要性,緊急性,これによって侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し,具体的状況の下で相当と認められる限度で許容される場合があるとした。
③最高裁昭和53年9月7日第一小法廷判決(昭和51年(あ)第865号,刑集32巻6号1672頁):証拠物の押収等の手続に,憲法35条及びこれを受けた刑訴法218条1項等の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法があり,これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合には,その証拠能力は否定されるとした上で,事案の証拠物については証拠能力を肯定した。
4 留意事項
出題の趣旨はPDF5頁の刑事系科目〔第2問〕の部分を,採点実感はヒアリングの概要のPDF3~5頁の刑事訴訟法の部分を,評価項目の根拠とした。
平成18年の刑事系科目の採点実感等は,司法試験委員会第29回の議事要旨・配布資料に掲載された考査委員に対するヒアリングの概要として公表されている。
刑事訴訟法担当の考査委員は,その発言が基本的に個人の考えであり,作問の過程と採点に際しての委員間の協議を踏まえたものであること,また,自らは一部の答案を採点したにすぎないことを述べており,採点実感欄に示した答案の傾向は考査委員の所感である。
評価項目,重み,答案の結論及び出題の趣旨の具体化は本記事独自の分析であり,法務省が一つの結論を指定したものではない。