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平成21年司法試験刑事系科目第2問(刑事訴訟法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した20項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

平成21年司法試験論文式試験の刑事系科目第2問(刑事訴訟法)を扱う。
設問1は捜索差押えに伴う4種類の写真撮影の適法性,設問2は犯行再現実験を記録した実況見分調書の証拠能力を問う。

項目内容
対象平成21年司法試験論文式試験・刑事系科目第2問(刑事訴訟法)
問題文PDF5~9頁の第2問と資料1・2
基準時平成21年5月17日(論文式試験の刑事系科目の試験日)
出題の趣旨PDF7~8頁の刑事系科目第2問
採点実感PDF21~22頁の刑事訴訟法部分
評価項目(本記事独自)20項目(重み5は3項目,重みの合計は80)
主要判例最高裁平成17年9月27日決定(刑集59巻7号753頁)。警察署での再現と本問の現場実験との違いを検討する。
答案の分量4,082字(改行を除く)
試験後の法改正試験当時の法令を基準とし,後の電磁的記録に関する改正等は答案の根拠にしていない。

設問1では,①と④の撮影を適法とし,②は事件に関連する箇所の撮影を認める一方,全頁の撮影まで行った点は相当性を欠くと考える。
③の全頁撮影は違法と考える。
設問2では,検察官が示した実行可能性を証明するため,Pの観察記録と一体の写真を,刑訴法321条3項の要件が満たされる場合に証拠とすることができると考える。

重み5の項目は,番号1(令状主義),番号2(撮影の法的性質),番号17(実行可能性と犯行事実の区別)である。
全項目は第4に,模範解答と評価項目との対応は第5に掲載する。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

出題の趣旨と採点実感のうち第2問に関する記述から,答案で確認できる単位を抽出した。
各項目には資料の位置を掲げ,具体的な理由付けは各項目と答案との対応に示す。
表の「間接」は,資料の一般的な記述を本問に当てはめたものである。

2 5段階の重み付けの基準

重み判断基準
5その設問の判断を大きく分ける核心
4結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ
3通常押さえる法的処理・事情の評価
2論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意
1補充的な引用・記述範囲の確認

重みは本記事独自の整理であり,法務省が公表した採点基準や配点を示すものではない。
「注意」は誤りを避けるための項目で,別建ての減点とするものではない。
条件付きの項目は,示された構成を採る場合に限って参照する。

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

警察は,殺人・死体遺棄事件につき,T社事務所の捜索差押許可状を執行した。
壁の文字の消し跡,A名義のX・Y銀行の通帳,同じ引出しにあったパスポート等を撮影し,X銀行の通帳だけを差し押さえた。
その後,甲の立会いの下で実験車両が海中に転落する経過を再現する実験を行い,写真と甲の説明を含む実況見分調書を作成した。

2 設問が求めること

設問対象指定・仮定到達点
1写真①~④の各撮影資料1の供述は信用でき,捜索差押許可状は適法に発付されたものとする。撮影対象,目的,範囲を区別し,各撮影の適否を示す。
2実況見分調書検察官の立証趣旨と弁護人の理解が異なり,弁護人は不同意の意見を述べた。実質的な要証事実を定め,各部分の証拠能力とその条件を示す。

第4 評価項目と重み

1 設問1

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1令状主義の趣旨を,憲法35条による屋内・私的領域の保護と司法による事前の対象限定に結び付ける。5PDF7頁・設問1・令状主義PDF22頁・設問1・憲法35条
2捜索・差押えと検証の目的・機能を区別し,令状執行中の写真撮影がどの法的根拠で許され得るかを論じる。任意捜査の許否だけで処理しない。5PDF7頁・設問1・218条1項PDF21頁・採点方針・設問1
3付随処分説では222条1項・111条1項前段を示し,証拠価値の保存又は執行の適法性の担保に必要で相当な範囲を画する。(付随処分説を採る場合)4PDF7頁・設問1・付随処分PDF22頁・設問1・必要な処分の限界
4本来的効力説を採る場合,令状記載の対象と捜索・差押えの機能から撮影の根拠と限界を説明する。(本来的効力説を採る場合)4PDF7頁・設問1・本来的効力説PDF22頁・設問1・法的性質(間接)
5全撮影を一括して必要な処分と扱わず,各対象の令状該当性と撮影の必要性・相当性を個別に検討する。(注意)4PDF7頁・設問1・①~④の順序PDF22頁・設問1・111条を当然適用する答案
6写真①の消し跡を,資料1の1月11日の電話,翌夜の計画及びM埠頭と結び付け,本件関連のメモに相当するかを判断する。4PDF7頁・設問1・写真①PDF22頁・設問1・供述調書からの事実抽出
7写真①につき,壁を取り外す場合と記載部分の限定撮影を比べ,証拠を保存しながら処分を受ける者の不利益を抑える理由を示す。4PDF7頁・設問1・写真①PDF22頁・設問1・事実の法的意味(間接)
8写真②・③につき,A名義やBの発言と,乙のパスポート等及び銀行届出印に似たA印の保管を比較し,管理・使用主体を推認する。4PDF7~8頁・設問1・写真②③PDF22頁・設問1・事実抽出(間接)
9X通帳の出金日・30万円・書込みを,翌日の乙から甲への30万円と照合し,報酬原資との関連を評価する。4PDF8頁・設問1・写真②PDF22頁・設問1・報酬原資
10写真②について,鉛筆書きの現状を固定し,発見時に記載が存在したことを後で検証できる必要性を示す。4PDF8頁・設問1・発見時からの記載PDF22頁・設問1・後から捜査機関が書いたのではないこと
11写真②について,差押えの可否と全印字頁を撮影する相当性を分け,Bの抗議,他頁の取引情報,限定撮影・現物差押えを比較する。3PDF7~8頁・設問1・対象性と撮影の必要性PDF22頁・設問1・事実の法的意味(間接)
12Y通帳は同名義でも,定期入金・生活費・不定期出金・書込みの有無をXと比較し,事件関連性を個別に判断する。4PDF7~8頁・設問1・写真②③PDF22頁・設問1・被疑事実との関連性
13写真③の全頁撮影を,現物を差し押さえなかったことと区別し,保存の目的と情報取得の範囲から判断する。3PDF7~8頁・設問1・写真③の個別判断PDF22頁・設問1・写真ごとの事実分析(間接)
14写真④のパスポート等が令状に列挙された差押対象物に当たらないことを確認する。3PDF8頁・設問1・写真④PDF22頁・設問1・対象ごとの法的性質(間接)
15写真④について,乙の実質管理を示しX通帳の差押えの適法性を事後に検証できるようにする必要性と,名義等に絞る相当性を論じる。4PDF8頁・設問1・適法性担保PDF22頁・設問1・個別事実の意味(間接)

2 設問2

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
16不同意を踏まえ,立証趣旨と実質的な要証事実の関係から伝聞該当性を判定する。4PDF8頁・設問2・立証趣旨と不同意PDF21~22頁・設問2・要証事実
17犯行の再現と物理的実行可能性を区別し,本件で検察官の立証趣旨が独自の意味を持つことを具体的に論じる。説明なく要証事実を実際の犯行へ置き換えない。5PDF8頁・設問2・判例事案との違いPDF22頁・設問2・検察官の立証趣旨の意味
18同型車,同重量人形,下り勾配,前輪落下後の停止,バンパー操作,損傷位置を,甲の過去の供述の真実性を経ない推認に結び付ける。4PDF8頁・設問2・現場環境と物理的可能性PDF22頁・設問2・具体的事実に基づく分析
19実況見分調書のPの観察・記録部分について321条3項の適用関係と,Pの証人尋問・真正作成の供述の要件を示す。4PDF8頁・設問2・321条3項PDF21頁・設問2・例外規定の要件
20犯行事実を直接立証する使い方では,再現者甲の過去の供述を含む部分につき321条3項だけで足りず,322条1項も問題になると対比する。4PDF8頁・設問2・犯行再現判例PDF22頁・設問2・判例の前提との違い

3 重みの分布

重み項目数番号
531・2・17
4143~10・12・15・16・18・19・20
3311・13・14
20なし
10なし

合計は20項目で,重みの合計は80である。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

答案中の「法」は刑事訴訟法である。
設問1は撮影を必要な付随処分として検討する。
設問2は本件実験による物理的な実行可能性を主位の要証事実とする。

2 答案

第1 設問1

1 写真撮影の根拠

憲法35条の令状主義は,私的領域への立入りや証拠の取得を,司法審査を経た対象・範囲に限ることにより,捜査機関による恣意的な侵害を防ぐ。
本件の捜索差押許可状(刑訴法218条1項,219条1項)は,甲の殺人・死体遺棄事件につきT社事務所を捜索し,本件に関連する預金通帳,メモ等を差し押さえることを許す。
令状は適法に発付されており,Pらは,代表者乙と連絡が取れないため,Bを事務所の看守者又はこれに代わる者とみて,捜索の開始前にBに令状を示した(222条1項,110条,114条2項参照)。

捜索は対象物を発見する処分,差押えは物の占有を取得して保全する処分である。
対象の形状や記載を観察して記録する撮影は,対象を認識してその状態を固定する点で,独立の証拠収集として行えば検証の性質を有する。
撮影を捜索・差押えの本来的効力に含める考え方もあるが,令状が許した対象を越えて,室内の私的な情報を自由に記録する権限まで与えられたとは解せない。
他方,執行に伴い発見した物の証拠価値を保存し,又は差押えの適法性を事後に検証できるようにするための撮影は,222条1項,111条1項前段の必要な処分となり得る。
まず対象物が令状の差押対象に当たるかを判断し,その上で,目的に照らした撮影の必要性と,対象・範囲・方法の相当性を検討する。
差押対象外の物については,適法な差押えの対象性や執行状況を記録するため必要で,対象・範囲・方法も相当な場合に限り撮影できる。

2 写真①

令状はメモ等の探索を許しており,電話台の上のカレンダーを取り外す行為は,書き込み等を探索する方法として相当である。
露出した消し跡の「1/12」と「フトウ」は,甲が11日夜に乙へ翌夜M埠頭で事故に見せかけると伝えた事実と対応し,乙の関与をうかがわせる。
判読できない一字を「M」と確定することはできないものの,そのことは保全の必要性を否定しない。
文字跡はコンクリート壁にあり,壁の一部を壊して現物を差し押さえることは事務所側の不利益が大きく,書き写すだけでは消し跡の形状を正確に保存できない。
約30センチメートルから記載部分を撮る方法は,壁を損傷せず,撮影範囲も限定されている。
捜索中に発見した,事件に関連するメモに相当する記載の証拠価値を失わせないための必要な処分として,①は適法である。

3 写真②・③

事務所内のレターケースは通帳等を収納し得る。
発見時に3段目の使用者は不明で,Bも分からないと答えた。
Aが単独で管理する施錠された私物入れであるなどの事情は与えられていない。
引出しを開け,発見した通帳の名義・記載を調べ,同じ引出しの物品を確認して実質的な管理関係を判断することは,事務所の捜索と対象物の識別として許される。
発見後に名義がAと分かっただけで,その探索が遡って令状の範囲外となるものではない。

X通帳は預金通帳として令状記載の類型に当たる。
同じ引出しには乙名義の旅券,乙の名刺と乙宛てのはがき,銀行届出印と似たAの印鑑があり,乙がA名義で口座を管理していた可能性がある。
Bは撮影時にAの通帳だと抗議したが,名義やBの認識のみで実質管理は決まらない。
甲は乙から1月15日に現金30万円を受領したと供述しており,その前日にカードで出された同額の現金とその右横の「→T.K」は,日付,金額及び甲の氏名に対応し得る点で,報酬の原資を示す具体的な関連がある。
現物は差押えの対象となる。

「→T.K」は鉛筆書きであり,差押えの後に書き足されたとの争いが生じ得る。
発見後引き続き事務所の机上でX通帳の表紙と当該取引・書込みの箇所を撮影すれば,その通帳の同一性と,書込みが発見時から存在したことを後で確かめられる。
この目的は現物の差押えだけでは達し難く,該当箇所の撮影は相当である。
Bが抗議したため承諾を根拠とすることはできないが,適法な付随処分に承諾を要しない。
もっとも,他頁に書込みはなく,全印字頁を撮影すれば,事件との関係が具体的に示されない取引まで記録することになる。
取引の推移が資金の出所を裏付ける可能性があるとしても,具体的に関係する取引を選んで撮影する方法があり,現物も確保する。
Bの抗議に反して全取引を直ちに別個の記録へ複製する必要性は示されていない。
よって②は関係部分の撮影は適法であるが,全頁に広げた点で相当性を欠く。

Y通帳は同じ引出しにあり,A名義で乙の管理の可能性がある点は共通する。
しかしT社からの定期入金,光熱水道費の定期出金などは日常の資金管理を示し,多数の現金出金のうち,1月15日の30万円又は翌日の20万円の支払に対応する具体的な日付・額の取引は示されず,甲との関係を示す書込みもない。
Yの表紙などに限った記録がX通帳と同じ保管場所・管理関係を示す必要があれば,X通帳の差押手続を記録する目的で検討の余地がある。
しかし,それはYの取引内容全体を記録する理由にならない。
差し押さえなかったことだけで結論を出すべきではないが,事実上取引情報全部を取得する③を,適法な差押えの代替又は他の差押物件の証拠価値の固定として正当化できない。
私的な財務情報を広く取得する独立の検証に当たり得る上,任意捜査と構成してもその範囲は過大である。
③は違法である。

4 写真④

旅券,名刺,はがき,印鑑はそれ自体が令状記載の差押物件に当たらない。
しかし,X通帳と同じ引出しに乙名義の書類とAの銀行届出印と似た印鑑が保管されていたことは,A名義のX通帳を乙が実質的に管理していたとの推認に資する。
引出し全体の写真だけでは,これらの名義や刻印は十分に固定できない。
そこで同じ引出しから取り出した旅券の名義の頁,名刺,はがきのあて名,印鑑の刻印を記録して元の物は取得しなかった。
名刺10枚等の複数の同種物を撮る点には必要性に疑問もあるが,異なる種類の乙の所持品とA名の印鑑が同じ引出しにまとめて置かれていたことを示す点に意味があり,はがき本文や旅券の他頁には及んでいない。
こうして乙による管理を裏付けることは,A名義のX通帳が令状にいう本件に関連する預金通帳に当たることを後で検証し,差押手続の適法性を担保する。
撮影はその目的に必要な箇所に限られており,④は適法である。

第2 設問2

1 要証事実と伝聞

弁護人が不同意なので,326条による証拠採用はできない。
そこで,320条1項の伝聞法則の適用を,実質的な要証事実と調書の各部分について判断する。
検察官の立証趣旨である「被告人が本件車両を海中に沈めることができたこと」という物理的な実行可能性と,弁護人が考える「被告人が本件車両を海中に沈めて死体遺棄したこと」という犯行事実とは異なる。
立証趣旨が実行可能性とされていても,再現内容が過去の事実として真実であることに依存して初めて証拠としての意味を持つ場合は,実質上は犯行事実の立証になる。
最高裁平成17年9月27日決定は,警察署での実演が再現者の供述内容を明らかにするためのものであったことから,実質的な要証事実を犯行事実と捉えた。
本件は,次のとおり,現場での物理的な実験結果自体が独立の意味を持つ。

2 実行可能性を証明する場合

2月3日のM埠頭の下り勾配で,本件車両と同一型式・同じオートマチック仕様の軽自動車にVと同重量の人形を載せた。
5メートル程度の位置からサイドブレーキを解除してドライブレンジに入れると車は動き,前輪が落ちて車底部が岸壁に当たり停止した。
後部バンパーを持ち上げて重心を移すと海中に転落し,引揚げ後には本件車両と同位置の損傷が観察された。
甲が自らこの操作を実行して結果を生じさせたのであれば,甲の過去の行為についての説明の真実性を前提とせず,類似条件で甲が本件車両を転落させ得たことを推認できる。
現場・実験条件が犯行時と完全に同じかや傷の一致の意味は,推認の強さに関わる。

Pの観察結果をPの公判外の記載で立証する点は伝聞である。
実況見分は任意処分としての検証に相当するから,その結果を記載した調書について321条3項により,作成者Pが公判期日に証人として尋問を受け,真正に作成したことを供述すれば,経過・結果の記載及びこれと一体の写真を採用できる。
Pの署名押印だけでは足りない。
写真に写った甲の実演は,実験時にどのような操作が行われたかを示す限度で用い得る。
甲が指をさしている写真は,実験車両の停止位置を示す限りで参照できる。
「私は,このように」との説明により犯行時の状況を認定する必要はない。
車の停止・転落・傷についての説明も,Pの観察記録と写真で確認できる実験時の状況を指し示す限度で用い,甲の説明文自体の真実性には依拠しない。
本件の立証趣旨では,甲の過去の供述の真実性を用いる必要がなく,甲の供述について322条1項の要件を重ねる必要はない。

3 犯行事実の立証との対比

犯行時の行為そのものを証明するために,甲がどこに車を止め,どのようにVを移動させ,ブレーキやバンパーを操作したかを表す説明や再現動作を使うなら,その内容の真実性が問題となる。
Pの観察記録について321条3項の要件を充たすだけでは足りず,甲の過去の供述について322条1項の要件も問題となる。
とりわけ,Pが録取した甲の説明文については,Pの署名押印はあっても甲の署名又は押印が示されておらず,当該部分を犯行事実の証明に用いることはできない。
再現動作を機械的に記録した写真には署名押印は不要であるが,過去の供述として使う限り,不利益な事実の承認等の要件及び任意性の吟味は残る。

以上より,本件調書は,Pが公判で真正作成を供述するなど321条3項の要件を満たした場合,検察官の設定した物理的な実行可能性の立証に必要な観察記録と一体の写真の範囲で証拠とすることができる。
実行可能性は他の証拠と併せて犯行の推認に用い得るが,甲の表現内容をそのまま犯行時の事実として認定するには,前記の伝聞例外の要件が別に必要である。

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案第1の1は第4の番号1~5,同2は番号6~7,同3は番号8~13,同4は番号14~15に対応する。
答案第2の1~3は番号16~20に対応する。

次表は,重み5・4の項目と条件付きの項目を,第4と同じ文言で示す。

番号重み評価項目答案の該当箇所・留保
15令状主義の趣旨を,憲法35条による屋内・私的領域の保護と司法による事前の対象限定に結び付ける。答案第1の1。憲法35条と対象限定。
25捜索・差押えと検証の目的・機能を区別し,令状執行中の写真撮影がどの法的根拠で許され得るかを論じる。任意捜査の許否だけで処理しない。答案第1の1。
34付随処分説では222条1項・111条1項前段を示し,証拠価値の保存又は執行の適法性の担保に必要で相当な範囲を画する。(付随処分説を採る場合)答案第1の1。証拠価値の保全と適法性の担保。
44本来的効力説を採る場合,令状記載の対象と捜索・差押えの機能から撮影の根拠と限界を説明する。(本来的効力説を採る場合)本答案は付随処分説を採り,第1の1で本来的効力説を採らない理由を示す。
54全撮影を一括して必要な処分と扱わず,各対象の令状該当性と撮影の必要性・相当性を個別に検討する。(注意)答案第1の2~4。
64写真①の消し跡を,資料1の1月11日の電話,翌夜の計画及びM埠頭と結び付け,本件関連のメモに相当するかを判断する。答案第1の2。
74写真①につき,壁を取り外す場合と記載部分の限定撮影を比べ,証拠を保存しながら処分を受ける者の不利益を抑える理由を示す。答案第1の2。
84写真②・③につき,A名義やBの発言と,乙のパスポート等及び銀行届出印に似たA印の保管を比較し,管理・使用主体を推認する。答案第1の3。
94X通帳の出金日・30万円・書込みを,翌日の乙から甲への30万円と照合し,報酬原資との関連を評価する。答案第1の3。
104写真②について,鉛筆書きの現状を固定し,発見時に記載が存在したことを後で検証できる必要性を示す。答案第1の3。鉛筆書きと後記入の争い。
124Y通帳は同名義でも,定期入金・生活費・不定期出金・書込みの有無をXと比較し,事件関連性を個別に判断する。答案第1の3。
154写真④について,乙の実質管理を示しX通帳の差押えの適法性を事後に検証できるようにする必要性と,名義等に絞る相当性を論じる。答案第1の4。管理主体の記録と差押手続の検証。
164不同意を踏まえ,立証趣旨と実質的な要証事実の関係から伝聞該当性を判定する。答案第2の1。
175犯行の再現と物理的実行可能性を区別し,本件で検察官の立証趣旨が独自の意味を持つことを具体的に論じる。説明なく要証事実を実際の犯行へ置き換えない。答案第2の1~3。実験の独自の意味と用途の限定。
184同型車,同重量人形,下り勾配,前輪落下後の停止,バンパー操作,損傷位置を,甲の過去の供述の真実性を経ない推認に結び付ける。答案第2の2。
194実況見分調書のPの観察・記録部分について321条3項の適用関係と,Pの証人尋問・真正作成の供述の要件を示す。答案第2の2。
204犯行事実を直接立証する使い方では,再現者甲の過去の供述を含む部分につき321条3項だけで足りず,322条1項も問題になると対比する。答案第2の3。

(2) 設問1 令状の対象と写真撮影の限界

出題の趣旨は,まず令状主義の意義と趣旨に立ち帰り,撮影が捜索差押えの執行に伴う処分として許される根拠と限界を論じるよう求めている。
採点実感は,単に任意捜査として許されるかという観点からのみ論じる答案と,各撮影を111条の「必要な処分」として当然に許されるとのみ論じる答案を挙げている。
答案は憲法35条から出発し,独立の検証と付随処分を分け,令状の対象性を確認した上で各撮影の必要性と相当性を検討した(番号1~5)。

①は壁に残った文字跡をメモに相当する情報として扱い,壁の一部を取り外すよりも侵害の小さい撮影で保全する(番号6・7)。
②は前日の同額の出金と甲への支払を結び付け,鉛筆の書込みが当初から存在したと後で検証できることを撮影の理由に挙げている。
全頁撮影を過大とする結論は,現物の差押えと限定撮影が可能だったことを踏まえた本記事の判断である(番号8~11)。

③は,通帳の名義が同じでも,Yの取引内容に報酬支払との具体的な接点が見当たらないことを踏まえている(番号12・13)。
④は,乙の名義等と通帳が同じ引出しにあったことを記録し,通帳が令状の対象だったことを後から検証できるようにする撮影と評価した(番号14・15)。

(3) 設問2 再現実験の要証事実

出題の趣旨と採点実感は,犯行再現が問題となった判例を踏まえながら,本問の実験がそれ自体として何を証明できるかを問うている。
出題の趣旨は,本件を,甲が供述するような犯行態様が現場の客観的な環境との関係で物理的に可能かが正に問題になる事案と理解できるとしている。
同型車を現場で操作したところ,車はいったん止まり,バンパーを持ち上げた後に転落し,本件車両と同じ位置に損傷が確認された。
この経過は,甲が犯行時に同じことをしたと信じるかどうかにかかわらず,甲がこの方法を実行できたことを推認させる(番号16~18)。

Pの観察・記録を証拠とするには,Pの証人尋問と真正作成の供述が必要である。
甲の実演を実験時に起きたこととして用いる限り,甲の過去の供述の真実性を用いる必要はない。
過去の犯行を認定するために使うときは,甲の供述についても別途伝聞例外の要件が問題となる(番号19・20)。

(4) 答案の弱点と扱わなかった事項

X通帳については,他の取引の並びが報酬の原資を示すという具体的理由があれば,撮影すべき範囲の評価は変わり得る。
資料2に掲げられた差押対象と,発見場所・管理者を記録する必要性の両方を示すことが大切である。
設問1は撮影の適法性を問うため,個々の写真の証拠排除は扱わない。
設問2では実験結果と一体の記録を中心にし,犯行事実の立証を目的とする場合の個別の伝聞例外は対比にとどめた。

第6 関連記事

1 他年度の同科目

令和8年度司法試験刑事系第2問の参考答案と予想される評価項目
令和7年度司法試験刑事系第2問の模範解答と評価項目
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平成23年司法試験刑事系第2問(刑事訴訟法)の模範解答と評価項目
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2 平成21年司法試験の他の問題

平成21年司法試験公法系科目第1問(憲法)の模範解答と評価項目
平成21年司法試験公法系科目第2問(行政法)の模範解答と評価項目
平成21年司法試験民事系科目第1問(民事訴訟法)の模範解答と評価項目
平成21年司法試験民事系科目第2問(民法・商法)の模範解答と評価項目
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3 本問の論点に関連する記事

実況見分調書の写真と説明の証拠能力―再現供述・真正作成・署名押印の確認手順

第7 出典

1 法務省の一次資料

平成21年新司法試験試験問題・論文式試験(刑事系科目) PDF5~9頁の第2問と資料1・2。

平成21年新司法試験論文式試験問題出題趣旨 PDF7~8頁の刑事系科目第2問。

平成21年新司法試験の採点実感等に関する意見(刑事訴訟法) PDF21~22頁。

平成21年新司法試験の実施日程等について(平成20年7月25日司法試験委員会決定) 論文式試験の刑事系科目は平成21年5月17日。

2 法令

日本国憲法 35条。

刑事訴訟法(平成18年法律第36号による改正時の日本語条文。日本法令外国語訳データベース) 110条,111条,114条,218条,219条,222条,320条,321条,322条,326条。
試験日までのその後の改正は国立国会図書館の日本法令索引による。

3 裁判例

最高裁平成17年9月27日第二小法廷決定(平成17年(あ)第684号,刑集59巻7号753頁)は,捜査官が被害者や被疑者の供述内容を明確にすることを主たる目的として被害・犯行状況を再現させた結果を記録した実況見分調書等について,実質においては再現されたとおりの犯罪事実の存在が要証事実になるとし,刑訴法321条3項の要件に加え,再現者が被告人である場合には同法322条1項の要件を満たす必要があるとした。

判例の規範を本問に当てはめた判断と,各項目の重みは本記事の分析である。