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実況見分調書の写真と説明の証拠能力―再現供述・真正作成・署名押印の確認手順(AI作成)

実況見分調書の証拠意見を検討するときは,写真,写真下の説明文,捜査官の観察結果を区別し,それぞれによって何を証明しようとしているかを確認する必要がある。
作成した捜査官の証言があれば調書の全てを証拠にできる,あるいは写真なら常に伝聞法則の対象外である,という判断は適切ではない。

本記事は,令和8年10月4日に確認した刑事訴訟法と,最高裁の再現写真に関する決定を基に,紙の実況見分調書及び添付写真を検討する手順を整理するものである。
電子的に作成された調書や録音録画記録媒体には,媒体・手続に応じた規定の確認が必要である。

第1 最初に証拠の部分と要証事実を対応させる

1 立証趣旨の名称だけで判断しない

証拠の名称が「実況見分調書」や「写真撮影報告書」であることから,適用条文は決まらない。
「被害再現状況」という立証趣旨であっても,再現されたとおりの犯罪が過去に起きたことを証明するために用いられるなら,再現者の記憶や表現の正確さが問題となる。

最高裁平成17年9月27日第二小法廷決定・平成17年(あ)第684号は,被害・犯行状況の再現を記録した書証について,立証趣旨の表示にかかわらず,実質的な要証事実から証拠能力を判断した。
この決定を検討するときも,再現写真であるという形式だけで結論を選ばず,何を認定するための資料かを先に確定することが重要である。

2 一冊の調書を一つの供述として扱わない

少なくとも,①捜査官が直接見た状況,②写真が記録した外形,③再現者が動作で表した内容,④再現者の発言を文字にした部分を区別する。
同じ写真の下に,位置や撮影順序を示す説明と,過去の犯行経過を述べる供述が混在する場合には,文章の部分ごとの用法も確認する。

検討する部分先に確定する問い
捜査官の観察・測定何を直接見分し,誰がその結果を記録したか
添付写真その場の外形を示すのか,過去の事実についての再現供述を示すのか
再現者の動作動作によって,どの過去の出来事を伝えようとしているか
写真下の説明文写真の対象を特定する説明か,内容の真実性を立証するための供述録取か

この区分は記録を読むための確認方法であり,部分を分類しただけで証拠能力が認められるわけではない。
各部分について,次の条文上の要件と記録上の事実を対応させる必要がある。

第2 作成捜査官と再現者の要件を別々に確認する

1 捜査官による記録の真正作成

刑事訴訟法321条3項は,捜査官の検証結果を記載した書面について,その供述者が公判期日に証人として尋問を受け,真正に作成されたことを供述した場合の証拠能力を定めている。
前記最高裁決定も,再現を記録した実況見分調書等について,同項所定の要件を必要とした。

ここでは,作成者の特定,見分・撮影・記録の経過,公判での証人尋問及び真正作成の供述を確認する。
調書に捜査官の署名があることと,公判で同項の要件が満たされていることは区別しなければならない。

2 再現者による過去の事実の供述

捜査官が記録を正確に作成したとしても,再現された内容が過去の出来事と一致することまで,その捜査官の観察だけで保証されるわけではない。
前記最高裁決定は,刑事訴訟法326条の同意が得られない場合,再現者の供述録取部分及び写真について,再現者が被告人以外の者なら同法321条1項2号又は3号,被告人なら同法322条1項の要件も必要とした。

被告人以外の者については,検察官面前の供述を記録したものか,それ以外の供述を記録したものかを確認する。
321条1項3号による場合には,供述不能のほか,犯罪事実の存否の証明に欠くことができないこと及び特に信用すべき情況も問題となる。
別に検察官面前調書が提出されていることから,再現調書の供述部分にも同じ要件が満たされるとはいえない。

被告人の供述については,322条1項に従い,不利益な事実の承認又は特に信用すべき情況の要件を確認する。
不利益な事実の承認について任意にされたものでない疑いがある場合の制限と,325条による任意性の調査も区別して確認する必要がある。

第3 写真と文字部分で署名押印の扱いが異なる

1 再現写真の署名押印が不要でも,他の要件は残る

前記最高裁決定は,写真の撮影・現像等が機械的な操作で行われることから,再現写真については再現者の署名押印を不要とした。
これは,写真が表す再現供述について,供述不能や任意性等の要件まで不要としたものではない。
また,捜査官による見分記録としての321条3項の要件も別に確認しなければならない。

写真の正確さを確認する際には,撮影対象,撮影順序,添付写真と原記録の対応を調べる。
その確認と,撮影された再現内容を過去の犯罪事実の認定に用いるための伝聞例外の検討を分けることが重要である。

2 文字による供述録取部分を写真と一括しない

321条1項及び322条1項の紙の供述録取書については,条文に定める供述者の署名又は押印を確認する。
同じ調書の写真部分について署名押印が不要であるからといって,写真下の供述録取部分まで同じ扱いになるわけではない。

前記最高裁決定の原文2頁~3頁は,署名押印のない供述録取部分と写真部分を分けて判断している。
実務でも,署名欄があるかという形式だけでなく,その署名又は押印が,誰のどの供述録取部分に対応するものかを原本等で確認する必要がある。

第4 証拠意見を記録の部分ごとに具体化する

1 確認表に残す事項

証拠意見の検討では,次の事項を証拠番号,頁及び写真番号に対応させて記録すると,書面全体の判断と一部の判断を混同しにくい。
これは条文上の新たな要件を設けるものではなく,記録の見落としを減らすための確認方法である。

確認事項記録する内容
対象の特定証拠番号,調書の頁,写真番号,説明文の該当行
情報の由来作成捜査官,再現者,役を演じた者と,誰の説明に基づく動作か
実質的な要証事実現場の形状,再現時の外形,過去の犯罪事実等,認定したい事実
同意の範囲全体か特定部分か,用途の限定を含むか,相当性判断の対象
同意がない場合の要件321条3項と,再現者に応じた321条1項又は322条1項の要件
形式・任意性供述者の署名又は押印の対応範囲,再現・供述の任意性
不足する確認未確認の事実,確認先,確認できるまでの証拠意見

2 部分同意や用途の限定を曖昧にしない

刑事訴訟法326条は,同意のほか,書面の作成又は供述時の情況を考慮した相当性の判断を必要としている。
部分同意を検討する場合には,同意する箇所と同意しない箇所を,頁や写真番号等で区別して示すことが必要である。
「写真には同意する」とだけ述べると,現場の形状を示すための利用と,再現された過去の犯罪事実を示すための利用との区別が不明確になり得る。

作成者に対する尋問事項も,見分・撮影の経過と,再現者への指示や説明の記録方法を分けて準備する。
証拠能力を争う理由と,仮に採用されても再現内容の信用性や推認の強さを争う理由を,証拠意見と主張の中で区別しておくことが重要である。

第5 証拠能力と証明力を最後まで区別する

証拠として採用できることと,その証拠から過去の犯罪事実を認定できることは別の問題である。
撮影条件,再現までの時間,指示の内容,原供述との一致・不一致等は,検討対象に応じて証明力にも関わる。
写真が鮮明であるというだけで,再現者の記憶や再現内容の信用性まで高いとはいえない。

前記最高裁決定は,証拠能力を欠く部分を含めて書証全体を採用したことを違法とした一方,その部分を除いた他の証拠により認定できるとして,結論への影響を否定した。
したがって,採用の適否と,違法が判決に及ぼす影響も分けて検討する必要がある。

第6 関連記事・出典

① 刑事裁判の書証の証拠能力―伝聞法則・供述調書・同意書面の判断順序
② 捜査報告書に書かれた警察官の意見・説明の証拠能力

① 刑事訴訟法(e-Gov法令検索):320条,321条1項・3項,322条1項,325条,326条。令和8年10月4日に現在施行の条文を確認した。
② 最高裁平成17年9月27日第二小法廷決定・平成17年(あ)第684号,刑集59巻7号753頁:決定原文1頁~3頁。要証事実,供述録取と再現写真の要件,署名押印及び違法の影響に関する判断。