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知的財産・著作権

海外サイト運営者に記事・データ利用の停止を求めるとき―相手の特定,管轄,送達,証拠収集と執行(AI作成)

目次第1 提訴前に相手・送達先・財産を確認する第2 誰に何を請求するのか1 公開表示から法人・住所を確かめる2 請求と証拠を分ける第3 日本の管轄と準拠法1 日本の裁判所で訴えられるか2 日本の裁判所でも適用法は別に決まる第4 訴状等の外国送達1 条約・受領国の条件を確認する2 送達できない場合第5 国外の証拠を取得する第6 停止・回収の実効性を調べる第7 相手国が判明した後の確認票第8 出典と関連記事
第1 提訴前に相手・送達先・財産を確認する

記事・データの無断利用が疑われる場合,外国のサーバーを使っていることと,請求相手が外国に所在することは別である。
運営者,契約上のサービス提供法人,取得・配信をした者,モデル開発者,ホスティング事業者,CDN及び日本子会社を区別する。
本記事は,令和8年10月4日に確認した日本法とハーグ送達条約に基づく一般的な手順を示し,特定国での手続を確定するものではない。

確認の順序は,①責任を負う相手方,②請求根拠と対象行為,③裁判管轄と準拠法,④送達,⑤証拠収集,⑥判決後の停止・回収である。
ただし,財産の所在と外国での執行可能性は,判決を得た後に初めて調べるのではなく,提訴前に費用と実効性を検討する。
以下の整理方法は本記事の実務上の提案であり,各国の裁判所の統一的な書式ではない。

第2 誰に何を請求するのか
1 公開表示から法人・住所を確かめる

利用規約,プライバシーポリシー,問い合わせ先,契約書及び公開登記情報を対応させる。
ページに表示された管理者と法的な運営主体が同一か,住所が現在の送達先として使えるかは別に確認する。
日本語での提供,外国IP,ドメイン登録先又は開発に使ったAI製品の本拠地だけで,相手方の国を決めてはならない。

日本子会社があっても,親会社の行為について当然に責任を負い,又は親会社への訴状を受領する権限を有するとは限らない。
国内の適法な送達先又は代理人があるかは,民事訴訟法103条等に沿って確認する。
相手が国内主体であると確認できた場合には,外国サーバーの存在だけを理由に外国送達を選ばない。

2 請求と証拠を分ける

著作権侵害では,自分の権利,保護対象,相手の複製・公衆送信・翻案等と,許諾・権利制限の適用を検討する。
契約違反,一般不法行為及び不正競争も,それぞれ成立要件に対応させる。
ホスティング事業者への削除申告と運営者への損害賠償請求は,同じ相手・同じ根拠で当然に行えるものではない。

第3 日本の管轄と準拠法
1 日本の裁判所で訴えられるか

民事訴訟法3条の3第5号は,日本において事業を行う者に対する訴えについて,日本での業務との関係を要する。
同条8号の不法行為に関する訴えでは,行為地・結果発生地と,外国での行為による国内の結果の通常予見可能性が問題となる。
同条3号による財産所在地の管轄は,金銭支払請求について差押可能な国内財産等を要し,著しく低額の財産は除かれる。

日本から閲覧できることだけで必ず日本の管轄が生じると扱わず,日本向けの事業,問題行為,被害及び国内財産を具体化する。
同法3条の9の特別の事情による却下も,証拠の所在,当事者の負担等に応じて検討する。
利用規約の裁判所指定も,合意の当事者と対象となる紛争の範囲を確認し,規約に同意していない権利者の侵害請求に当然に及ぶとは考えない。

2 日本の裁判所でも適用法は別に決まる

一般不法行為では,法の適用に関する通則法17条の結果発生地法と予見可能性,20条の明らかにより密接な関係,22条の日本法による制限等を確認する。

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AI処理の著作権を工程とログから確認する―30条の4・47条の5とRAGの実務(AI作成)

目次第1 「AIに使った」を具体的な行為に分ける第2 先に対象と工程を確定する1 判決本文と民間の付加情報2 工程別の台帳第3 30条の4の確認事項1 非享受目的と必要な限度2 権利者の利益を不当に害する場合3 出力から目的を検討する際の注意第4 47条の5の確認事項1 結果提供に付随する軽微利用2 準備行為の複製は表示量と同じではない3 政省令とrobots.txt4 出所と人格権第5 ログから分かることと分からないこと1 アクセス記録だけでは学習を証明できない2 RAGと学習を結び付ける記録第6 照会・訴訟で対象を限定する第7 出典・関連記事と未確認事項
第1 「AIに使った」を具体的な行為に分ける

記事やデータがAIサービスで利用されているように見えても,学習に使ったのか,検索時に参照したのか,利用者が直接入力したのかは,画面だけでは分からない場合がある。
適法性の確認では,対象著作物,主体,処理場所,時点,目的,利用量及び表示方法を工程ごとに対応させる。
本記事は,令和8年10月4日に確認した現行法令及び文化庁の資料に基づき,仕様書とログから確認する事項を示す一般的な実務解説である。

文化審議会の「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)は解釈の参考となる行政資料であり,個別事件について裁判所を拘束するものではない。
以下の記録方法は本記事の提案であり,全ての事業者に同じログ項目の保存義務があるという説明ではない。
依頼者の秘密,個人情報及び第三者の著作物を含む実ログは,必要な範囲とアクセス権限を定めて扱う。

第2 先に対象と工程を確定する
1 判決本文と民間の付加情報

著作権法13条の対象となる判決等と,民間の要旨,解説,分類又はDBの構成を分ける。
単なる事実の抽出と,創作的な文章を複製・翻案する処理も同じではない。
判決本文が権利の目的とならないことから,民間DB全体の取得又はその利用規約上の制限まで判断を省略しない。

2 工程別の台帳

①取得:元URL,取得版,取得日時,経路,認証・規約及び取得者。
②加工・保存:OCR,分割,重複除去,保存先,保存量,原文の残存及び保持期間。
③学習:データ集合の版,投入ジョブ,対象モデル,追加学習・評価の区別及び利用目的。
④RAG:検索用DBの版,検索結果,採用した文書・断片及びプロンプトへの挿入内容。
⑤生成・表示:モデル・版,指示,会話履歴,検索設定,出力原文,表示対象及び出典。
⑥削除・終了:キャッシュ,ログ,バックアップ及び学習済みモデルに残るもの。

各行に,著作権上の根拠と契約上の根拠,処理主体及び国を記載する。
日本法の権利制限が検討できることから,国外で行われる全ての処理も適法であるとはいえない。
サービス名又はモデル名だけで,どの法人がどの国で対象行為をしたかを確定しない。

第3 30条の4の確認事項
1 非享受目的と必要な限度

同法30条の4は,著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し,又は他人に享受させることを目的としない場合に,必要と認められる限度で利用できるとする。
情報解析は例示されているが,「AI学習」「検索精度向上」という名称だけで非享受目的が確定するわけではない。
営利・非営利という区分だけでも結論は決まらず,実際にどの目的でどの情報をどう処理するかを確認する。

元の創作的表現を回答として提供する目的が併存する場合は,同条の適用が否定され得る。
一方,RAGという構成だけで一律に享受目的があるとすることもできず,創作的表現の出力を目的としない情報解析等を具体的に検討する。

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データベースを模倣されたときの立証―創作性・依拠性・一般不法行為・不正競争の分け方(AI作成)

目次第1 保護対象と相手の行為を対応させる第2 創作性を具体化する資料1 情報の選択と体系的な構成2 通常の項目と独自の関係付けを分ける3 制作履歴と権利帰属第3 国内裁判例から分かること1 構成の共通部分を検討した旅行業DB事件2 抽象的な工夫の説明では足りない顧客DB事件3 パッケージと蓄積後のDBを区別したeBASE事件第4 依拠性と保護対象の共通性を別に対比する1 参照した証拠が示す範囲2 対照表の作り方第5 一般不法行為と不正競争を検討する1 著作権による独占と別の利益2 営業秘密・限定提供データの要件3 契約・負荷・虚偽表示第6 請求と証拠収集を設計する第7 関連記事と調査範囲
第1 保護対象と相手の行為を対応させる

データベースの情報が他のサービスで使われている場合は,まず,何を保護しようとしているのかを特定する必要がある。
個々の事実,独自の文章,情報の選択,分類・関係付け,契約上の利用制限,営業秘密又は限定提供データは,それぞれ成立要件も請求方法も異なる。
収集に長年を費やしたという事情だけでは,これら全てを排他的に利用できる権利が生じるわけではない。

本記事は,令和8年10月4日に確認した現行法令と裁判所公表の判決本文に基づく一般的な実務解説である。
特定のウェブサイトによる模倣又は不正取得を認定するものではなく,以下の保存・対照表の作成方法は本記事の実務上の提案である。
相手が参照したという証拠と,保護される構成・表現を利用したという証拠を区別することが,請求を過度に広げないためにも重要となる。

第2 創作性を具体化する資料
1 情報の選択と体系的な構成

著作権法2条1項10号の3は,情報の集合物で,情報を電子計算機で検索できるように体系的に構成したものをデータベースと定義する。
同法12条の2が保護するのは,そのうち情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するものである。
検索できることと著作物であることは別であり,件数,開発費,処理速度又は情報の正確性だけを創作性の説明に置き換えることはできない。

選択については,選べた情報の母集団,採用・除外の基準,実際の選定結果及び基準を変えた履歴を示す。
体系的な構成については,項目の組合せ,分類階層,テーブル間の関係,実データ及び検索結果をそろえ,別の構成も可能であった中でどのような選択をしたかを説明する。
全件収録を目指すDBであっても構成に創作性がある可能性はあるが,「独自の工夫がある」という説明だけでは具体的な保護範囲は分からない。

2 通常の項目と独自の関係付けを分ける

氏名,日付,住所等の一般的な項目,ありふれた並び順,形式の統一又は重複除去は,それだけで創作的な構成となるとは限らない。
関連人物を示す仕組みであれば,どの期間の重なりを採り,どの関係を除外し,どの組合せを表示するかという具体的な構成と実際の情報集合を検討する。
ただし,計算方法というアイデア,プログラムの表現,その結果として構成されたDBは別の対象であり,機能が同じという理由だけでDBの複製を認定しない。

3 制作履歴と権利帰属

設計書,元データ,版ごとの構造,分類の改訂理由,試作版,原稿,公開履歴及び外注契約を保存する。
Gitの最初のコミット日時は,その時に記録されたことの資料であって,制作開始日又は最初の公開日を当然に証明するものではない。
追跡対象外のファイル,移行前の版,復元した資料も区別し,相手による利用時点の構成を再現できるようにする。

自社のサーバーにDBがあることだけで,その著作権が自社に帰属するとは限らない。
外注,共同制作,職務著作,譲渡及び利用許諾を確認し,誰のどの権利について請求できるかを定める。
AIが関与した文章についても,人の創作的な加筆・編集を具体的に確認する。

第3 国内裁判例から分かること
1 構成の共通部分を検討した旅行業DB事件

知財高裁平成28年1月19日判決(平成26年(ネ)第10038号)は,旅行業向けDBの具体的なテーブル,フィールド及び関係付けを検討した。

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量産実用品のデザインはどこまで著作権で保護されるか-最高裁判決とトリップトラップ(AI作成)

目次第1 量産実用品のデザインに著作権が認められる条件第2 最高裁が示した保護基準とその理由1 創作性と「美術の範囲」を区別する2 機能と別個の表現を観念上把握できるか3 芸術的価値と美術工芸品の留保第3 トリップトラップの新旧判決を分けて読む1 令和8年最高裁が著作物性を否定した事件2 平成27年知財高裁の著作物性肯定と非侵害の結論第4 保護される表現を特定した後の侵害判断1 分離して把握できる部分にも創作性が必要である2 機能やアイデアの一致と具体的表現の一致3 権利帰属・利用行為・許諾を確認する第5 意匠権・不正競争防止法・契約との役割分担1 意匠登録による保護2 不正競争防止法の異なる保護根拠3 委託契約の対象と権利処理第6 商品開発と模倣対応で最初に確認する資料1 当事者ごとに手元の資料から確認する2 追加調査へ進む条件第7 出典1 法令2 裁判例
第1 量産実用品のデザインに著作権が認められる条件

家具や食器などの量産実用品は,独自に創作した美しいデザインというだけで,当然に著作権法の保護を受けるわけではない。
最高裁第二小法廷令和8年4月24日判決(令和7年(受)第356号)は,機能に由来する構成とは観念上別個に,創作的な表現として把握できる全体又は部分を保護する基準を示した。

量産品のすべてが保護対象から外れるわけではなく,付加された絵画・彫刻等や,一定の場合の商品全体にも保護が及び得る。
ただし,著作物として保護されることと,似た商品の製造販売が著作権侵害になることは,別の問題である。

本記事は,令和8年10月4日現在の日本法を基準とし,量産実用品の形状等の著作物性,トリップトラップの新旧判決及び他の保護制度との違いを説明する。
建築,外国法の詳細及び個別商品の侵害判断は対象とせず,商品開発と模倣対応の確認点を必要な範囲で扱う。

第2 最高裁が示した保護基準とその理由
1 創作性と「美術の範囲」を区別する
(1) 著作権法の定義

著作権法2条1項1号は,著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義している。
同条2項は美術の著作物に美術工芸品を含め,同法10条1項4号は絵画,版画,彫刻その他の美術の著作物を例示している。

実用品に美的な表現を用いる問題は,応用美術の問題として論じられてきた。
今回の最高裁判決は,そのうち「量産されて日常生活の中で実用に供されることが予定されている物品」を量産実用品とし,形状,模様,色彩又はこれらの結合を対象としたものである。

(2) 量産実用品に創作性があるだけでは足りない理由

最高裁は,量産実用品の形状等が創作的な表現であることから,直ちに「美術の範囲」に属する著作物とする解釈を採らなかった。
理由として挙げたのは,意匠法との役割分担と,商品利用に及ぼす影響である。

意匠権は設定登録によって発生し,現行法では原則として出願日から25年で存続期間が満了する。
これに対し,著作者人格権と著作権の享有に方式の履行は必要なく,個人の著作物の著作権は原則として著作者の死後70年まで存続し,著作者人格権の保護もある。

最高裁は,量産実用品の形状等を著作権で広く保護すると,意匠登録を受けずに長期間かつ広範な保護を受けられる可能性があり,意匠制度の存在意義や商品の利用を損なうおそれがあると説明した。
ただし,意匠には関連意匠や旧出願の経過措置,著作権には法人著作等の別の期間規定があるため,具体的権利の存続期間は個別に確認することになる。

2 機能と別個の表現を観念上把握できるか

最高裁判決3頁は,次の判断基準を示している。

「量産実用品の全体又は部分における形状等が、観念上、機能に由来する構成とは別個に、思想又は感情の創作的な表現として把握することができるものである場合には、当該量産実用品の全体又は部分は、著作権法2条1項1号にいう著作物のうち、美術の範囲に属するものに当たるというべきである。」

(1) 付加された絵画・彫刻等

最高裁は,単なる模様や表面加工の域を超える装飾が付され,その付加部分が機能と関連せず,観念上別個の絵画や彫刻として把握できる場合を挙げている。
この場合は,美術の著作物が実用品に付加されたものとして,その付加部分に保護が及ぶ。

説明用の仮定として,容器に独自の絵画を印刷する場合,絵画の表現と容器の実用的な形状は分けて検討することになる。
絵画が保護されても容器の形状全体が当然に保護されるわけではなく,反対に,実用品に付されたことだけで絵画の保護が失われるわけでもない。

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自サイトの記事・データを他サイトに利用されたとき―著作権,出典表示,流入減少の立証と初動対応(AI作成)

目次第1 最初に分けるべき三つの問題第2 何が利用されたのかを特定する1 事実・法令・判決と独自の文章を分ける2 編集物・データベースとしての保護3 権利者と許諾の範囲第3 利用の方法ごとに判断する1 リンクと転載は別である2 出典表示だけでは引用にならない3 AI要約・学習・検索用取得を一括しない第4 連絡する前に保存する証拠1 両サイトの同じ時点・版を保存する2 対照表と運営主体の確認第5 流入減少の原因と損害を分けて立証する1 競合登場後の減少だけでは原因が決まらない2 引用・評価・訪問・受任は別の指標である3 差止めと損害賠償で必要な検討は異なる第6 権利侵害が明確でない場合の検討1 収集の労力だけを独占権に置き換えない2 契約・不正競争・アクセス方法を別に確認する第7 求める対応を決め,限定して連絡する1 訂正・表示改善・許諾・削除の選択2 最初の連絡に記載する内容3 運営者への請求と検索結果の対応第8 弁護士への相談時にそろえる資料第9 関連記事第10 出典と調査範囲
第1 最初に分けるべき三つの問題

自サイトの記事やデータが他サイトに掲載されていると分かった場合は,①どの権利についてどの行為が問題になるか,②自サイトへの流入や事業にどのような影響があるか,③訂正,出典表示,許諾交渉,削除又は法的手続のどれを求めるかを分けて検討する必要がある。
出典が記載されていることは転載の許諾を意味せず,アクセス数が減ったことも,それだけで著作権侵害を意味しない。

本記事は,ウェブサイト運営者とその相談を受ける弁護士が,第三者利用を発見した段階で事実・権利・証拠を整理するためのものである。
令和8年10月4日に確認した著作権法,文化庁の説明,裁判所公表の判決及びGoogle公式文書を基に,初動で検討する事項を示す。
証拠の保存順序や観測方法は,本記事における実務上の提案であり,裁判所が定めた統一的なチェックリストではない。

第2 何が利用されたのかを特定する
1 事実・法令・判決と独自の文章を分ける

著作権法2条1項1号は,著作物について,思想又は感情の創作的な表現を要件としている。
人名,所属先,年月日その他の単なる事実やデータと,執筆者が作成した解説,論評,図表又は写真は,保護の判断を分けなければならない。
文化庁の利用案内も,単なる事実・データ,アイデア及びありふれた表現を著作物から区別している。

同法13条は,法令,所定の公的機関が発する告示・訓令・通達等,裁判所の判決・決定・命令・審判等を権利の目的から除いている。
判決本文を掲載したサイトが,その判決本文自体について独占的な著作権を取得するわけではない。
他方,民間の執筆者による判例解説,要旨,論点の比較又は独自の図表は別に検討する必要がある。

「官公庁の文書だから全て自由に転載できる」とまとめることもできない。
同条の対象となる文書か,別に創作性のある写真・地図・説明資料等か,第三者の著作物が含まれるか,公開サイトの利用条件がどうなっているかを確認する。
情報公開で取得したこと,PDF化又はOCRをしたこと,取得に費用がかかったことだけでは,元の情報全体について新しい著作権が生じるものではない。

2 編集物・データベースとしての保護

同法12条は,素材の選択又は配列に創作性がある編集物を,12条の2は,情報の選択又は体系的な構成に創作性があるデータベースを保護する。
個別の事実が保護されない場合でも,集合物の選択・構成が別に保護されることはあり得る。
しかし,収録件数,収集期間又は投下費用が大きいことだけで,創作性を満たすと決めることはできない。

請求を検討するときは,選択した対象,項目,分類,関係付け及び構成のうち,どこに独自性があり,相手サイトがそのどの部分を利用したのかを具体化する。
全体又は一部の取り込みについても,件数だけでなく,創作性のある部分が共通するかを比較する。
個別の事実を公的資料から独自に収集した可能性と,自サイトの構成を取り込んだ可能性を分けて調べる必要がある。

創作性の説明には,利用時点の情報集合,採否基準,項目・分類・関係図,実際の検索結果及び制作履歴をそろえる。
一般的な項目,年月順の並び又は正規化と,独自の選択・構成を分け,参照を示す出典リンクや特徴的な誤りとは別に評価する。
国内裁判例と対照表の作り方は,データベースを模倣されたときの立証で詳しく扱う。

3 権利者と許諾の範囲

自サイトに掲載した文章や画像でも,外部執筆者,撮影者又は資料提供者が権利を有する場合がある。

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図面・ノウハウ・生産データを無償で求められたとき―知財取引指針と契約・証拠の実務(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論第2 何を求められているかを分ける1 完成品と関連情報は同じではない2 開示・利用許諾・譲渡を分ける第3 優越的地位の濫用を検討する資料1 取引関係から拒否の難しさを確認する2 無償であることと不当であることを区別する第4 提供前に契約と現場を整える1 NDAを締結しても開示範囲は別に決める2 工場見学と継続データ取得を具体化する3 既存技術と新たな成果を混同しない第5 要請を受けたときの初動と証拠第6 提供済みの図面・ノウハウ等を取り戻し,使用を止める1 契約に基づく請求と不正競争の請求を分ける2 判決から分かる保護の範囲と限界3 差止め・廃棄と緊急の仮処分4 損害賠償と訴訟前に確保する証拠第7 提供情報がAIへ組み込まれた場合の停止・削除と仮処分1 原データ,検索用データ,モデルを別々に特定する2 著作権のモデル廃棄と,契約・営業秘密の救済を分ける3 請求文言と暫定措置は実行できる単位にする4 学習の事実と保全の必要性を別々に疎明する第8 出典・確認範囲と関連記事
第1 この記事の対象と結論

製品を発注したことと,受注者の図面,製造ノウハウ,機械の稼働データまで自由に利用できることは,別の問題である。
令和8年6月24日に公正取引委員会,中小企業庁及び特許庁が公表した知財取引指針は,特許権等だけでなく,成果物の作成過程で生じるノウハウやデータも対象にしている。

無償提供の要請があるだけで,直ちに優越的地位の濫用になるわけではない。
取引上の優越,正当な理由の有無,提供を受け入れざるを得ない事情及び正常な商慣習に照らした不利益を確認する必要がある。
本記事は令和8年10月3日を基準とし,同指針と契約書ひな形を用いて,提供前の交渉と証拠保全の手順を説明する。

第2 何を求められているかを分ける
1 完成品と関連情報は同じではない

納入対象の完成品,完成品の仕様確認に必要な資料,加工可能な設計データ,製造工程,試作過程の中間成果物,継続取得する生産データを区分する。
「図面一式」「関連資料全部」という表現では,納入物の確認に必要な情報と,第三者への転注や発注者の内製化に使える情報との境界が消えてしまう。

指針16頁~19頁は設計図面,工場見学及び産業データを別々に取り上げ,44頁~45頁は契約に含まれない中間成果物等の無償提供を扱っている。
完成品を納めた後に追加で求められたものも,当初の注文内容,対価及び利用目的と照合する。

2 開示・利用許諾・譲渡を分ける

情報を見せること,特定目的に利用させること,第三者へ提供させること,知的財産権を移転することを,それぞれ独立した合意事項にする。
データについては,一律に「所有権が誰にあるか」だけで処理せず,取得,アクセス,複製,分析,再提供及び派生データの利用権限を具体化する。

指針28頁~34頁は,成果物の取引対価と関連する知的財産権等の対価の明確化,ライセンスと譲渡等の選択を示している。
対価を別欄に記載していないことだけで違法と判断するのではなく,実際の利用範囲が何であり,その価値が価格に反映されているかを確認する。

第3 優越的地位の濫用を検討する資料
1 取引関係から拒否の難しさを確認する

指針4頁~5頁に沿い,売上の取引依存度,相手方の市場における地位,取引先を変更できる可能性,専用設備への投資等の具体的事情を整理する。
大企業と中小企業という規模の差だけで結論を出さず,代替顧客の獲得に要する期間や,取引を失った場合の事業への影響を資料で示す。

提供要請に対し,受注者が対価又は範囲の協議を求めた経過,取引終了・発注減少を示唆された内容,契約ひな形の変更を拒まれた理由を残す。
取引終了を明示的に告げられた場合だけに限定せず,継続取引への影響を懸念して受け入れざるを得なかった事情を確認する。

2 無償であることと不当であることを区別する

指針14頁の注記は,商品販売に付随して当然に提供され,その価値が商品価格に既に反映されている利益について,無償提供の形式だけで問題になるものではないと説明している。
他方,監査・安全確保を掲げていても,目的に必要な範囲を超えて配合比率や加工条件を要求し,内製化等に用いる場合には,目的の表示だけでは足りない。

取適法又はフリーランス法についても,それぞれの適用対象取引に該当するかを先に確認する。
独占禁止法の優越的地位の濫用の要件と,これらの法律の対象要件・禁止行為を一つにまとめてはならない。

第4 提供前に契約と現場を整える

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パソコンを操作するAIで動画・ゲーム・3Dモデルを請け負う副業の法律問題―著作権,不正競争防止法,素材の利用規約,メールアドレスの取得及びフリーランス法(AI作成)

目次第1 この記事の対象1 取り上げる四つの副業の型2 パソコンを操作するAIの位置付け第2 動画編集を請け負う場合1 AIが自分で探してきた素材の権利2 完成した動画の権利と納品第3 既存の有名ゲームに似せたゲームを作る場合1 似せてよい部分と似せてはいけない部分2 作品名やキャラクター名をAIに指示する危険3 名称,ロゴ及び商品の外観第4 写真から3Dモデルや内見動画を作る場合1 建物そのものを3Dにすること2 物件写真を素材にすること3 写真から3Dプリント用データを作ること第5 ゲームでメールアドレスを集める場合1 個人情報保護法2 特定電子メール法第6 受注する個人の契約上の立場1 依頼どおりに作っても責任を負う場合2 フリーランス法と取適法3 仲介サイトとAIサービスの利用規約第7 受注前の確認事項第8 関連記事第9 出典1 法令2 裁判例3 所管行政機関等の資料4 事業者の公表資料・利用規約(令和8年10月1日確認)第10 別の機会に掘り下げる点
第1 この記事の対象
1 取り上げる四つの副業の型

令和8年9月には,パソコンの画面を見ながらアプリを操作する生成AIが公表され,これを使って動画編集,ブラウザゲームの制作,3Dモデルの制作を請け負う副業を勧める動画も公開されている。
本記事は,そのような公開動画の一つで紹介された次の四つの型を素材にして,受注する個人が契約前に確かめるべき法律上の論点を整理するものである。

①撮影素材をAIに渡し,動画編集アプリでカット,テロップ,差し込み素材の追加まで行わせる動画編集
②有名な既存ゲームに似せたゲームをAIに作らせる制作
③不動産サイトの物件写真から家の3Dモデルとバーチャル内見動画を作る制作,写真から3Dプリント用データを作る制作
④短時間で遊べるブラウザゲームを作り,遊んだ人にメールアドレスを登録してもらって商品の販売につなげる集客

本記事は令和8年10月1日時点の公開資料に基づく。
副業の勧誘そのもの(無料相談会から有料サポート契約へ進む流れ)の法律問題は,別記事の「AIで稼げる」副業の勧誘と契約トラブルで扱う。

2 パソコンを操作するAIの位置付け

OpenAIは,令和8年9月3日,GPT‑6 Astraを発表した。
同社の発表(OpenAI「GPT‑6 Astra:新世代の応答性能」)は,Astraがオンラインフォームへの入力,CRMの顧客レコードの更新,Webサイトの作成とその動作確認,ソフトウェアのインストールとテスト等を行えると説明し,作例としてゲーム開発,Blenderモデル,Unreal Engineのウォークスルー等を挙げている。

同じ発表は,安全性の確認によって作業が一時停止されることがあり,ChatGPT又はCodexでは続行の前に操作の確認を求められることがあるとし,Enterprise(法人向けプラン)では管理者が有効にするまで既定で利用できない状態にしていると説明している。
AIが自分でアプリを操作できるようになっても,何を作り,何を素材に使い,誰に渡すかを決めるのは利用者である。
以下で扱う権利侵害や契約上の責任は,AIの性能が上がったことで軽くなるものではない。

第2 動画編集を請け負う場合
1 AIが自分で探してきた素材の権利
(1) 他人の著作物である素材

AIが編集の途中でロゴ,画像,効果音,音楽を自分で探して差し込んだ場合でも,その素材に他人の著作権があれば,複製(著作権法21条)や,完成した動画を配信・投稿すること(同法23条1項の公衆送信)に権利者の許諾が要る。
素材を集めたのがAIであることは,許諾が要らない理由にならない。

(2) 編集アプリが用意している素材

編集アプリが用意している素材にも条件がある。
例えば,CapCutの利用規約(日本語版。令和8年4月15日最終更新)は,テンプレート,ステッカー,効果音等を同社のコンテンツとし,その商用利用の可否を別の素材ライセンス契約に委ねている。
同社の素材ライセンス契約(Materials License Agreement。英語版。令和8年1月22日最終更新)は,非商用に限る素材を一つでも含めた作品は非商用の範囲でしか使えないとし,一般の音楽ライブラリを個人・非商用の利用に限っている。
依頼主の会社の宣伝動画を作る仕事は商用利用に当たるので,AIが差し込んだ素材を一つずつ,出所とライセンスの条件で確かめる必要がある。

2 完成した動画の権利と納品
(1) 編集した動画が著作物になるか

撮影素材の選択,カットの配列,テロップの入れ方に創作性があれば,編集された動画は映画の著作物(著作権法10条1項7号)になり得る。

(続きを読む...)パソコンを操作するAIで動画・ゲーム・3Dモデルを請け負う副業の法律問題―著作権,不正競争防止法,素材の利用規約,メールアドレスの取得及びフリーランス法(AI作成)

医薬用途発明の進歩性と予測できない顕著な効果―最高裁令和元年8月27日判決(AI作成)

目次

第1 結論第2 進歩性と有利な効果の位置づけ1 特許法29条2項2 現在の特許庁審査基準第3 最高裁令和元年8月27日判決1 事件の概要2 原審の判断3 最高裁の判断第4 判断枠組みを実務に落とす1 比較対象を固定する2 非予測性と顕著性を分ける3 基準時を優先日に固定する4 構成容易性と効果を混同しない第5 主張立証のチェックリスト第6 出願・審判・訴訟での使い分け第7 出典と資料の確認状況1 一次資料・行政一次資料2 専門誌目次で所在を確認した評釈3 判例秘書
第1 結論

医薬用途発明の進歩性における「予測できない顕著な効果」は,構造の異なる他の化合物が同程度の効果を示していたという理由だけで否定できない。優先日当時,本願発明の構成が奏すると当業者に予測できた効果の範囲を定め,実際の効果がその範囲を超えるかを検討する必要がある。

最高裁令和元年8月27日第三小法廷判決は,進歩性を最終的に肯定したのではなく,原審の効果判断が不十分であるとして破棄差戻しとした判決である。実務では,構成の容易想到性と効果の顕著性を混同せず,比較対象,基準時及び推認過程を証拠に即して示すことが重要である。

第2 進歩性と有利な効果の位置づけ

1 特許法29条2項

特許法29条2項は,特許出願前に当業者が先行技術に基づいて容易に発明できたときは,特許を受けられないと定める。進歩性判断では,主引用発明と本願発明の相違点を認定し,当業者がその相違点に容易に到達できたかを検討する。

2 現在の特許庁審査基準

特許・実用新案審査基準「第Ⅲ部第2章 新規性・進歩性」は,引用発明と比較した有利な効果が,異質で予測できない場合,又は同質でも際立って優れ,予測できない場合には,進歩性を肯定する方向に働く有力な事情になると説明する。同基準は,最高裁令和元年8月27日判決を参考判決として明示している。

ただし,有利な効果があっても,容易想到性の論理付けが十分である場合に常に進歩性が肯定されるわけではない。効果は進歩性判断の一要素として,発明の構成,先行技術及び技術常識と一体で評価される。

第3 最高裁令和元年8月27日判決

1 事件の概要

最高裁令和元年8月27日第三小法廷判決(平成30年(行ヒ)第69号)は,「アレルギー性眼疾患を処置するためのドキセピン誘導体を含有する局所的眼科用処方物」に関する特許無効審判の審決取消訴訟である。

本件発明は,公知の化合物を,ヒト結膜肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑制する用途に適用する医薬用途発明であった。先行する審決取消判決により,この用途への適用自体は容易に想到できたとの判断が確定していた。その後,予測できない顕著な効果の有無が争点となった。

2 原審の判断

原審は,優先日当時,本件化合物とは異なる複数の化合物が70%から90%程度の高いヒスタミン遊離抑制率を示すことなどを考慮し,本件発明の効果は予測できる範囲を超えて顕著とはいえないとした。

3 最高裁の判断

最高裁は,他の各化合物が本件化合物と構造を異にし,引用発明にも引用例2にも関係しないことを重視した。構造の異なる他の化合物に同程度の効果が知られていたことだけから,本件化合物の効果の程度を当業者が予測できたとはいえないとした。

原審は,優先日当時,本件発明の構成が奏するものとして当業者が予測できた効果は何か,実際の効果がその予測範囲を超える顕著なものかという観点から十分に検討していなかった。そのため,最高裁は原判決を破棄し,顕著な効果の有無等を更に審理させるため知的財産高等裁判所へ差し戻した。

第4 判断枠組みを実務に落とす

1 比較対象を固定する

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自己の著作権を会社へ低額譲渡したときの所得税―長期譲渡所得・時価課税・契約実務(AI作成)

目次

第1 結論と検討の順序
第2 譲渡所得か,事業所得・雑所得か
第3 自己の著作に係る著作権は長期譲渡所得
第4 法人への低額譲渡と時価課税
第5 数字で確認する総所得金額への算入額
第6 契約書・時価・申告資料の確認表
第7 射程と別途検討する課税関係
第8 一次資料と関連記事

第1 結論と検討の順序

著作者である個人が,自分で創作した著作物の著作権を会社へ一回限り譲渡する場合,通常の利用許諾料と区別して,まず著作権という資産の譲渡所得に当たるかを調べる。譲渡所得に当たるなら,自己の著作に係る著作権は,保有期間が5年以内でも長期譲渡所得に区分される。

会社への対価が時価の2分の1未満なら,所得税法59条1項2号・同法施行令169条により,譲渡者の譲渡所得は原則として時価で譲渡したものとして計算する。さらに,長期譲渡所得の金額を求めた後,総所得金額へ算入する段階でその2分の1を用いる。「長期譲渡所得の金額」と「総所得金額に加える額」は異なる。

以下は個人の所得税を中心とする整理であり,個別契約の権利範囲,時価,取得費及び他の譲渡所得の有無で結論・金額が変わる。

第2 譲渡所得か,事業所得・雑所得か

国税庁は,著作権を譲渡所得の対象となる資産の一つとして挙げている。ただし,著作権が関係する収入をすべて譲渡所得とすることはできない。顧客に著作物の利用を継続的に許諾して受け取る対価と,著作権そのものを移転して受け取る対価は,まず契約の内容で分ける。

また,所得税法33条2項は,棚卸資産の譲渡や営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生じる所得などを譲渡所得から除く。創作物・権利を商品として反復販売する事業では,一件ごとに「著作権」と名付けても譲渡所得と即断できない。事業の取引形態,譲渡頻度,制作・販売の方法及び会計処理を確認する。

第3 自己の著作に係る著作権は長期譲渡所得

総合課税の譲渡所得は,原則として保有期間5年以内の資産を短期,5年超の資産を長期に分ける。しかし,所得税法33条3項1号は一定の資産を短期の範囲から除き,同法施行令82条1号は「自己の著作に係る著作権」をその対象にする。その結果,同条3項2号により,自己の著作に係る著作権の譲渡所得は保有期間を問わず長期譲渡所得となる。国税庁タックスアンサーNo.3152も同じ区分を示す。

適用前に,譲渡者自身が著作者であること,譲渡対象がその著作に係る著作権であることを確認する。共同制作,職務上の創作,過去の譲渡又は第三者から取得した権利が混在する場合には,契約・制作記録をたどり,権利ごとの帰属を確定する必要がある。

第4 法人への低額譲渡と時価課税

所得税法59条1項2号は,譲渡所得の基因となる資産を法人へ著しく低い価額で譲渡した場合を規定する。同法施行令169条の基準は,対価が譲渡時の時価の2分の1に満たないこと。この基準に当たるときは,実際に受け取った金額に時価との差額を別の所得として足すのではなく,譲渡による収入金額を時価とみなして譲渡所得を計算する。

例えば時価400万円,対価100万円なら,半額200万円を下回る。収入金額は100万円ではなく400万円である。時価と対価の比較には,金銭以外の経済的利益も対価に含まれ得ることに留意する(所得税基本通達59-2)。

対価が時価の2分の1以上なら59条1項2号は適用されない。ただし,所得税基本通達59-3は,同族会社等の行為又は計算が所得税法157条の要件を満たす場合を別に挙げる。「半額以上なら税務上必ず安全」という意味にはならない。

第5 数字で確認する総所得金額への算入額

次の例は,譲渡者が自ら著作した著作権を会社へ一回譲渡し,その年に他の総合課税の譲渡所得はなく,取得費と譲渡費用がいずれも0円であると仮定する。

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職務発明の二重譲渡が発覚したときの権利回復――出願中の確認請求、登録後の特許法74条移転請求と無効審決(AI作成)

目次第1 まず確認すべき結論第2 発明完成から出願までの権利帰属第3 出願前の二重譲渡と出願の先後第4 出願中に争う場合の請求と手続第5 登録後に争う場合の74条移転請求第6 無効審決の確定と移転請求の競合第7 実務で保存・照合する資料第8 出典と裁判例の射程
第1 まず確認すべき結論

従業者の職務発明が二重譲渡された疑いがあるときは、発明完成時の権利者、各譲渡の成立時期、出願の先後、審査・登録の段階を先に確定する。出願中に特許を受ける権利を争う場面と、設定登録後に特許権の移転を請求する場面では、請求の対象と根拠が異なる。

特許法34条1項は出願前の承継について出願を第三者への対抗要件とする。一方、特許法74条1項は、冒認又は共同出願違反により既に特許がされた場合に、真の権利者が特許権者に移転を請求する制度である。先に譲渡を受けたという事実だけで74条の請求が当然に認められるわけではない。誰が誰に対して権利取得を主張できるかを、34条の段階で検討する必要がある。

以下は一般的な手順である。実際の事件では、発明完成日、適用される職務発明規程の版、出願番号、特許原簿、包袋及び各契約書の原本を確認する。

第2 発明完成から出願までの権利帰属

発明をした者は特許を受けることができ、その権利は移転できる(特許法29条1項、33条1項)。職務発明では、契約・勤務規則等があらかじめ使用者に特許を受ける権利を取得させると定めた場合、権利は発生時から使用者に帰属する(35条3項)。

特許庁の職務発明制度に関するQ&A第9問は、会社が取得する旨の通知が発明者に到達した時に権利を取得する規程を、発明時からの原始帰属の定めに当たらない例とする。したがって、規程が発生時帰属型か通知時承継型かで、従業者が第三者へ譲渡できた時点が変わる。発明の完成後に規程を改めたときも、完成時に適用される版を特定する。

使用者の法定通常実施権(35条1項)と特許を受ける権利の帰属、従業者への相当の利益(35条4項以下)は別の問題である。使用者の通常実施権だけから、その使用者を出願人又は特許権者とは扱えない。規程の読み方は職務発明を従業員が第三者へ譲渡した場合でも整理した。

第3 出願前の二重譲渡と出願の先後

同じ特許を受ける権利が二人に譲渡された場合、特許出願前の承継は、承継人が出願しなければ第三者に対抗できない(34条1項)。譲渡契約の締結日が早いだけでは、後の譲受人への対抗が完了しない。両譲受人の出願日時を、願書の提出記録に基づいて比較する。

もっとも、先に出願した譲受人が背信的悪意者である場合まで、出願の先後だけで決着するとは限らない。知財高裁平成22年2月24日判決(平成21年(ネ)第10017号)は、先の譲受人の存在や秘密情報をめぐる具体的事情を踏まえ、後の譲受人を背信的悪意者と評価した。単に先行譲渡を知っていたという抽象的な主張では足りず、秘密保持関係、取得・利用の経緯、出願への働き掛けなどを証拠で示す必要がある。

この平成22年判決は、発明完成が現行35条3項の原始帰属規定の施行前で、相手方の出願が審査中だった事案である。現行法の原始帰属の成否や、74条に基づく登録後の移転請求を直接判示したものとして使わない。

第4 出願中に争う場合の請求と手続

出願中は、争いの対象が原則として特許を受ける権利である。前記平成22年判決が認容したのも、この権利を有することの確認請求であった。請求者は発明者・承継・対抗関係を示し、相手方の出願の処理状況を追う必要がある。

出願後に特許を受ける権利を承継した場合は、34条4項の届出によって効力が生じる。特許庁は出願人名義変更の案内で、出願中の名義変更と登録後の権利移転を別の手続として示している。出願前の譲渡を34条1項により対抗する局面と、出願後の承継の効力を34条4項により生じさせる局面を取り違えない。

確認請求が認められても、それだけで特許庁の願書上の出願人名義や特許原簿が自動的に変わると断定できない。判決主文、出願の係属状況、必要な届出・補正・審査手続を個別に確認する。相手方の出願が特許査定・設定登録へ進んだときは、次節の救済を検討する。

第5 登録後に争う場合の74条移転請求

特許が、共同出願違反又は特許を受ける権利のない者による出願についてされた場合、特許を受ける権利を有する者は、特許権者に特許権の移転を請求できる(特許法74条1項。共同出願について38条、冒認について49条7号・123条1項6号も参照)。

74条1項の請求に基づいて移転の登録があると、その特許権は初めから登録を受けた者に帰属していたものとみなされる(同条2項)。ただし、提訴又は勝訴だけで移転登録が済むわけではない。判決の確定、登録申請と特許原簿の確認を分けて管理する。第三者の実施については、善意の一定の権利者等に通常実施権を認める79条の2の要件も確認する。

二重譲渡の場合、請求者が先の譲受人であっても、34条1項の対抗関係で相手方に優先できなければ、その相手方の登録を直ちに冒認と評価できない。発明の同一性、共有持分、登録名義及び相手方の取得経緯を特許原簿・包袋・契約書と照合する。

第6 無効審決の確定と移転請求の競合

特許を無効にすることと、その特許権を真の権利者へ移すことは、救済の結果が異なる。知財高裁令和6年1月22日判決では、第一審が特許法74条1項による移転登録請求を一部認容したが、控訴中に同じ特許の無効審決が確定した。控訴審は、特許法125条により特許権は初めから存在しなかったものとみなされ、移転を請求すべき特許権が失われたとして、その請求を棄却した。

この令和6年判決は職務発明の二重譲渡の判断例ではない。移転請求と無効審判が並行するとき、無効審決の確定が移転の対象そのものに影響することを示す資料として参照する。判決は、予告登録の有無も特許権の消長に影響しないと述べた。紛争開始時には、無効審判の請求・審決・取消訴訟の期限と移転訴訟の進行を一つの表で管理する。

第7 実務で保存・照合する資料

①研究ノート・実験データ・会議記録から発明完成日、発明者及び発明の内容を確定する。
②完成時の雇用契約、職務発明規程と各改訂版、従業者への周知資料をそろえる。
③発明届、会社の取得決定、通知の到達記録、相当の利益に関する資料を保存する。
④各譲渡契約、譲渡証書、対価、秘密保持契約及び交渉記録を時系列化する。
⑤各出願の願書、提出日時、出願番号、包袋、名義変更届及び拒絶・査定の書類を照合する。
⑥登録後は特許原簿、登録日、移転登録の申請資料、無効審判・審決取消訴訟の書類を確認する。

一覧表には「発明完成→譲渡1→譲渡2→取得通知→出願1→出願2→査定→設定登録→無効審決」の各日付を入れる。日付のない推測は事実として記さず、確認待ちと表示する。

第8 出典と裁判例の射程

条文はe-Gov法令検索「特許法」29条、33条、34条、35条、38条、49条、74条、79条の2、123条及び125条を確認した。手続については特許庁の職務発明制度に関するQ&A、出願人名義変更の案内及び移転登録の案内を参照した。

裁判例は知財高裁平成22年2月24日判決(出願中の権利確認と背信的悪意者)及び知財高裁令和6年1月22日判決(74条移転請求と無効審決確定)を区別して用いた。前者から登録後の74条請求の結論を、後者から職務発明の二重譲渡の結論を直接導いていない。

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原作小説を映像化・商品化するときの許諾先と契約条項――原作者・制作会社・画像制作者・出演者の権利確認(AI作成)

目次第1 最初に「何を」「どこで」「どう使うか」を固定する第2 権利者を一枚の表にする第3 原作と映像の二層を確認する第4 「映像化の許諾」と「商品化の許諾」を契約で分ける第5 制作会社・画像制作者・出演者の確認第6 弁護士が受任時に集める資料と判断順序第7 出典と確認の限界

原作小説をドラマにする許諾を得ても、その場面画像を商品パッケージやTシャツに使う許諾まで得たとは限らない。
原作、脚本、映像、宣伝写真、人物画及び出演者の肖像について、利用する素材と行為ごとに権利の根拠を確認する必要がある。
本記事は一般的な契約確認の手順を示すものであり、個々の作品の権利帰属や許諾範囲は、契約書・制作記録・使用画像を見なければ確定できない。

第1 最初に「何を」「どこで」「どう使うか」を固定する

商品化の相談では、「キャラクターを使いたい」だけでは許諾先を特定できない。
小説の文章、脚本の台詞、ドラマの一場面を切り出した静止画、宣伝用の写真、新たに描く人物画、俳優の氏名・容貌、作品のロゴを、それぞれ別の素材として列挙する。
印刷して販売するのか、広告動画に組み込むのか、SNSスタンプとして配信するのかも決める。

次に、完成見本と元になった画像を並べ、出典、制作日、制作担当者、契約書、許諾メール、素材番号を記録する。
抽象的な人物設定と、特定の文章・画面・写真に現れた創作的表現を混同しないことが出発点となる。
この区別の詳細は小説の登場人物をTシャツ・SNSスタンプに使えるかで検討した。

第2 権利者を一枚の表にする
素材・行為最初に確かめる相手と資料見落としやすい点原作小説の映画化・脚色原作の現在の著作権者、出版契約、映画化契約出版社が当然に映画化権や商品化権を持つとはいえない。相続・譲渡・管理委託も確認する。脚本・台詞・独自の美術脚本家、美術制作者、制作会社との契約原作以外の新たな創作的表現が重なる。制作費の支払だけで権利移転を断定しない。完成したドラマ・映画の画面映画製作者、原作権利者、制作・配給契約著作権法16条・29条に基づく映画の権利帰属と、原作者の28条の権利を分ける。宣伝用の写真・描き起こした絵写真家・イラストレーターの契約、使用元の画面映像作品の利用許諾だけで、別に作られた写真・絵の利用を許諾できるとは限らない。俳優の氏名・容貌出演者・所属先との出演契約、広告・商品化同意著作権の処理とは別に、肖像・パブリシティと契約上の利用範囲を確認する。作品名・ロゴ・商品表示商標登録、ロゴ制作者との契約、表示の使用実態著作権の許諾だけでは商標等の問題は解消しない。

映画の著作者について、著作権法16条は制作、監督、演出、撮影、美術等を担当し、映画の全体的形成に創作的に寄与した者を定める。
同法29条1項の要件を満たす場合、映画の著作権は映画製作者に帰属する。
ただし、原作小説や脚本など映画の素材になった著作物の権利まで、映画製作者に一括して移るという規定ではない。
職務著作、譲渡、相続、制作委託その他の具体的事情によっても権利者は変わるため、肩書だけで決めない。

第3 原作と映像の二層を確認する

著作権法2条1項11号は、翻訳、脚色、映画化その他の翻案によって創作した著作物を二次的著作物とする。
原作小説の創作的表現を取り込んだドラマは二次的著作物となり得る。
同法28条により、原著作物の著作者は、二次的著作物の利用について、二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を有する。

最高裁平成13年10月25日判決(キャンディ・キャンディ事件)は、原作を基に制作された漫画の利用について原作者の28条上の権利を認めた。
知財高裁令和7年9月24日判決(令和6年(ネ)第10007号)は、「木枯し紋次郎」のテレビ作品に現れた具体的な人物画像と商品図柄を対比して、権利侵害を認めた。
同判決は、抽象的な人物の名前や設定だけで結論を出したものではない。また、原作と無関係な新しい場面だけを利用した場合の28条の射程を一般的に決めたものでもない。

したがって、映像化後の商品化では、原作者側と映像側の双方について権利処理を検討する。
ただし、具体的な商品の図柄がどの作品のどの表現を利用したか、原作と映像の関係、依拠性、許諾済みの範囲を確かめずに「必ず双方の許諾が必要」と断定することも避ける。

第4 「映像化の許諾」と「商品化の許諾」を契約で分ける

文化庁の誰でもできる著作権契約マニュアルは、利用許諾では契約に定めた利用方法・条件の範囲だけ利用でき、第三者への再許諾にはその旨の定めが必要であると説明する。
原作をドラマ化する契約の文言から、第三者が静止画を複製し、商品に印刷・販売し、販売サイトで画像を配信する権限まで導けるかを別々に読む。

許諾を得る場合は、対象となる作品・話数・場面・画像を別紙で特定し、少なくとも次を明記する。

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令和8年度司法試験知的財産法第2問の参考答案と予想される評価項目―著作権法の教育利用・二次的著作物をめぐる32項目と5段階の重み付け(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論第2 評価項目と重みの見方1 評価項目の性質2 5段階の重み第3 問題の概要第4 本記事が独自に予想した32の評価項目1 共通の前提と設問1・行為①2 設問1・行為②3 設問2・行為③4 設問2・行為④と全体5 重みの分布第5 参考答案1 答案の前提2 答案3 結論が分かれる箇所の補足第6 公開答案との比較第7 出典及び確認状態1 公式問題・法令2 裁判例3 公開答案と資料の限界
第1 この記事の対象と結論

本記事は、法務省掲載の令和8年司法試験問題のうち、選択科目・知的財産法第2問だけを対象とする。
問題冊子の22頁にある設問1・設問2について、著作権法上の主張、反論、判断及び差止めの範囲を検討する。

以下の評価項目、重み及び参考答案は、問題文、条文、裁判例並びに公開答案との比較を踏まえた本記事独自の予想である。
法務省の出題の趣旨、採点実感又は実際の配点を示すものではない。
令和8年9月30日の作成時点で、これらの公式講評は未公表として扱い、参照していない。
本記事の答案は、令和8年の出題の趣旨及び採点実感を踏まえたものではないため、「模範解答」ではなく「参考答案」と呼ぶ。

結論の中心は、①数行の翻訳・投影では教育機関の例外を当然には使えないが、適切な文法解説のための引用は成立し得ること、②数段落を配る到達度確認テストには著作権法36条の適用が難しいこと、③ドラマの新規場面にも原作者の28条上の権利が及ぶという有力な解釈があること、④人物設定・名称とドラマの具体的な映像表現を区別することにある。
③④は反対説と事実評価によって結論が動くため、理由を示した上で判断する。

第2 評価項目と重みの見方
1 評価項目の性質

32項目は、採点基準の推定値ではなく、答案で検討すべきと予想される判断事項である。
一項目につき一つの判定対象を置き、問題冊子22頁の事実、条文又は裁判例との対応を示した。
設問の配点は第2問全体で50点であるが、下の重みを合計して50点に換算してはならない。

2 5段階の重み

①重み5は、設問の中心的な対立点を処理する事項である。
②重み4は、結論を左右する法的な経路又は重要な反論である。
③重み3は、問題文の個別事実を用いる主要な当てはめである。
④重み2は、判断を補強し、誤答を防ぐ事項である。
⑤重み1は、答案の射程を整える事項である。

第3 問題の概要

小説家Xの短編小説Pには、孤独な高校教師Aが登場し、Aは長髪、丸眼鏡、長身、常に袴という姿で記述される。
設問1では、退職教師Y1らが、公民館の一室を借りた日本語教室で、小説の数行を英訳して原文・訳文を投影し、数段落を抜き出した文法クイズを最後に全員へ配布する。
教室は登録すれば誰でも参加でき、毎回5~10人が集まり、各人から会場費200円を集める。

設問2では、Xの許諾を受けたテレビ局B社がPをドラマQにし、原作に登場しない女性の表情を大写しにした場面でQを終える。
B社の許諾を受けたY2社は、その場面のスクリーンショットをTシャツに印刷・販売し、ドラマで俳優が演じるAの外見をイラスト化したスタンプ画像Rをオンライン販売する。
Xは、①から④の各行為の差止めを求めたい。

第4 本記事が独自に予想した32の評価項目
1 共通の前提と設問1・行為①

(続きを読む...)令和8年度司法試験知的財産法第2問の参考答案と予想される評価項目―著作権法の教育利用・二次的著作物をめぐる32項目と5段階の重み付け(AI作成)

令和8年度司法試験知的財産法第1問の参考答案と予想される評価項目―出題の趣旨・採点実感の公表前に問題文・判例から予想した37項目と5段階の重み付け(AI作成)

目次第1 対象と結論第2 本記事独自の評価項目と重みの付け方第3 問題文の骨格第4 予想される評価項目(法務省の資料ではない)1 共通の前提2 設問1――職務発明と特許権移転請求3 設問2――文言侵害、均等、サポート要件、各請求第5 参考答案1 答案の前提2 答案3 答案の読み方第6 公開答案・再現答案との照合第7 関連記事第8 出典と確認状態第1 対象と結論

この記事は、令和8年司法試験論文式試験問題・知的財産法第1問(問題冊子20~21頁)のうち、特許法の第1問だけを対象とする。令和8年9月30日時点で、同年度の出題の趣旨と採点実感は公表されていない。以下の評価項目、重み、解説、答案は、問題文、法令、裁判例と公開再現答案を照合して独自に作成した予想であり、法務省の採点基準・配点を示すものではない。本記事の答案は、令和8年の出題の趣旨及び採点実感を踏まえたものではないため、「模範解答」ではなく「参考答案」と呼ぶ。

設問1の結論は、X2社が特許法74条1項に基づく特許権の移転登録を請求することは考えられるが、提示された事実だけでは認められない、というものである。職務発明規程は通知時の承継を定め、発明時の原始帰属を定めていないため、ZからX2社への先行譲渡は有効である。しかし、同じ権利についてX1社が先に出願しており、X2社は先行譲渡を対抗できない。X1社を背信的悪意者とする具体的事実もない。

設問2の結論は、Y製品の製造販売の停止、廃棄、損害賠償はいずれも認められない、というものである。分子量599は「600以上」に文言上含まれない。均等論では境界の非本質性を肯定する余地があるが、任意の整数値600で下限を明示した外形から、第5要件の意識的除外等を認めるのが有力である。さらに、明細書の実験結果だけで請求項の下限付近を支えられるかというサポート要件上の問題がある。ただし、第5要件とサポート要件の個別の結論は、出題の趣旨が未公表の段階では本記事の推論である。

第2 本記事独自の評価項目と重みの付け方

評価項目の重みは、令和8年度司法試験・主要7科目の参考答案と予想評価項目で用いた5段階の判断基準に沿って、本問の具体的事実から独立に判定した。重み5は設問が明示的に問う答案の核心、4は問題文の手掛かりや近接裁判例の中核、3は具体的事実から導く重要な理由付け、2は補足又は典型的な誤りとの区別、1は限定的な指示遵守を示す。数字は配点ではなく、本記事が予想する相対的重要度である。主要7科目の一覧は選択科目を含まないため、その件数や各段階の割合に本問を機械的に合わせていない。同じ結論に至っても、反対説を正確に示して事実に即して評価した答案は、十分に評価され得る。

設問1と設問2は独立している。設問1でX2社の移転請求を否定したことを、設問2でX1社の権利帰属を省略する理由と取り違えない。また、設問1では無効審判請求、設問2では損害額の検討が不要とされている。

第3 問題文の骨格時点・事実意味ZがX1社の指示による研究で発明を完成職務発明。発生時の特許を受ける権利の帰属が問題となる。X1社の規程は「承継すると決定し、通知した時点で承継」特許法35条3項の発生時帰属と、通知による事後承継を区別する。通知前にZがX2社へ譲渡し、その後X1社が承継通知同一の特許を受ける権利の二重譲渡・対抗関係が生じる。X1社が先に出願し、X2社の同一請求項の後願が拒絶特許法34条1項と39条1項の役割を区別する。請求項は樹脂A~Dの少なくとも1種と吸収剤の分子量600以上Y製品のA・Cは樹脂要件を満たすが、599が数値要件を満たすか問題となる。明細書には558の失敗と656の成功だけが記載され、600は任意均等論の本質的部分・意識的除外、サポート要件の検討材料となる。登録は令和5年8月25日、公報発行は11月10日、Y社は10月23日以降に製造販売差止め、廃棄、損害賠償及び過失推定の時期を区別する。第4 予想される評価項目(法務省の資料ではない)1 共通の前提№評価項目重み問題文の手掛かり・根拠1二つの設問を独立の法律関係として扱う421頁の独立指示2発明、譲渡、通知、二つの出願、登録、実施、公報発行の順序を取り違えない220~21頁の時系列3設問1の無効審判請求と設問2の損害額を論じない1各設問の末尾4請求の根拠、相手方の反論、再反論、各請求の結論を対応させる2各設問の文言2 設問1――職務発明と特許権移転請求№評価項目重み問題文の手掛かり・根拠5X1社の業務範囲とZの現在の職務から職務発明と評価する420頁・特許法35条1項6発明完成時にZに特許を受ける権利が生じることを出発点とする420頁・29条1項、33条1項7X1社の法定通常実施権を、権利そのものの帰属と区別する235条1項835条3項の「発生した時から使用者に帰属」の要件を示す420頁の職務発明規程9本件の「通知した時点で承継」は事後承継であり、発明完成時に遡る原始帰属ではないと論じる520頁の規程の文言・特許庁資料10通知前にZが有した権利のX2社への譲渡を有効と評価する320頁の譲渡時期・33条1項11一方的な規程策定・事前関与の欠如と、相当の利益の合理性を、権利帰属と分けて論じる420頁の「事前関与はなかった」・35条4~7項12X2社への先行譲渡とX1社への後行承継を二重譲渡と把握する520頁の譲渡・通知の順序13出願前の承継は承継人の特許出願がなければ第三者に対抗できないと示す534条1項14X1社の出願が先である事実を対抗関係に当てはめる320頁の二つの出願15後願が拒絶された39条1項の結果を、34条1項の対抗要件と混同しない220頁の後願拒絶16先願者が背信的悪意者なら出願の先後だけで保護されない可能性を検討する4知財高判平成22年2月24日17X1社が先行譲渡を知っていた事実や不当取得の事実がないことを評価する320頁の事実全体18真の権利者による74条1項の移転登録請求と、登録後の2項の効果を示す520頁・74条1・2項19X2社の請求を否定しつつ、背信性が立証された場合は結論が変わり得ることを示す320~21頁・34条1項、74条3 設問2――文言侵害、均等、サポート要件、各請求№評価項目重み問題文の手掛かり・根拠20設定登録日から特許権が生じ、Y社の製造販売が業としての実施に当たると示す320頁・66条1項、68条、2条3項1号21停止を100条1項、廃棄を同条2項、賠償を民法709条に位置付ける421頁の請求内容22樹脂A及びCが「少なくとも1種」を満たすと読む320頁の請求項とY製品23分子量599は600以上に含まれず、文言侵害を否定する520頁・70条1・2項24作用効果の同一性や近接値を理由に、600という下限を丸めたり「程度」と読んだりしない2知財高判令和7年3月4日25ボールスプライン事件最判の均等5要件を正確に示す5最判平成10年2月24日26600の任意性、558の失敗・656の成功、599の同効を第1要件の本質的部分に当てはめる520頁・知財高判令和7年3月4日27599への置換後も本件発明と同じ作用効果を生む事実を第2要件に当てはめる320頁のX1社の分析28対象製品の製造等の時点において599への置換が容易かを第3要件として検討する2均等論第3要件29599の構成が出願時の公知技術等に当たるとの事実は示されていないと指摘する2均等論第4要件30任意に整数の下限600を選んだ外形と、599を含む記載が可能だった点を第5要件に当てはめる520頁・知財高判令和7年3月4日31「思い付いた別構成を単に書かなかった」だけでは除外といえない平成29年最判と本件を区別する4最判平成29年3月24日32出願時の明細書と技術常識から請求項の範囲で課題解決を認識できるかを検討する5558・656のみの実験・36条6項1号33サポート要件違反の判断を無効審判の結論と混同せず、104条の3第1項の抗弁と結び付ける436条6項1号、123条1項4号、104条の334下限を599にする訂正は権利範囲拡張、上げればY製品を捕捉できないと整理する2126条6項・訂正の効果35公報発行前でも登録後の実施には103条の過失推定が及び得ると示す3登録8月25日、実施10月23日、公報11月10日36文言・均等・無効の抗弁を踏まえ、差止め、廃棄、賠償のそれぞれについて結論を示す521頁の三つの請求37設問の指示どおり損害額の算定には進まない121頁の末尾

重み5が10項目、4が9項目、3が8項目、2が8項目、1が2項目で、重みの合計は128である。これは本記事の整理用の数字であり、50点満点の配点に換算したものではない。重み5には、①35条3項と通知時承継の区別、②34条1項と74条の接続、③599と600の文言解釈、④均等第1・第5要件、⑤サポート要件、⑥三つの請求の帰結を置いた。条文の提示と個別事実への当てはめ、補足的な誤読防止はそれぞれの役割に応じて4以下に区別した。

第5 参考答案1 答案の前提

以下は設問1・2を合わせて1問分、1行最大30文字・全92行に収めた答案である。見出し・空白を含む本文は2,645字で、選択科目の上限(4頁、1頁23行、1行30字)内に収まる。改行は答案入力時の行数を想定したものである。法令は令和8年の試験時点、裁判例はそれまでに言い渡されたものを前提とする。

2 答案第1 設問1
1 X2社は、特許法74条1項に基づき、X1社に本件特許権
の移転登録を求める。同条は、特許を受ける権利を有する者が、
無権利者への特許を取り戻す制度である。移転登録がされれば、
権利は設定登録日に遡り請求者に帰属したものとみなされる(同
条2項)。X2社がX1社に優先する権利者かが問題となる。
2 本件発明は、樹脂の研究開発を業とするX1社の業務範囲に
属し、社長の指示によるZの現在の職務に属する職務発明である。
発明者Zに特許を受ける権利が発生するが、使用者X1社には法
定通常実施権がある(同法29条1項、35条1項)。契約、勤務
規則等があらかじめ使用者に権利を取得させると定めれば、権利は
発生時から使用者に帰属する(同条3項)。X1社は、開示済みの
職務発明規程により原始取得した、ゆえにZからの譲渡は無効だと
反論し得る。しかし、規程は取得の可否を事後に検討し、承継の決
定をZに通知した時に承継する旨を明記する。発生時帰属を定めた
ものではない。あらかじめ使用者へ取得させる約束と、完成後に使
用者が取得を選択する約束は法的段階が違う。発明完成時の権利者
はZであり、通知前のX2社への譲渡は当事者間では有効である。
3 規程は一方的に策定されたが、勤務規則による職務発明
の予約承継は許される。Zも開示された規程を知っていた。
策定への事前関与がないだけで承継規程は無効とならず、X1社の
通知時承継も直ちには否定できない。相当の利益の定めがあれば、
協議等の欠如はその給付の合理性及び額に作用し得るが、権利帰属
と混同してはならない(同条4~7項)。本件には相当の利益を定
めた基準や支払額の記載もないから、その合理性を断定できない。
4 Zは同じ権利を先にX2社、後にX1社へ譲った。先の譲
渡だけで第三者に勝てるわけではない。出願前の権利承継は、
承継人が特許出願をしなければ第三者に対抗できない(同法34
条1項)。X1社は後の譲受人としてX2社と対抗関係に立つ。
先に出願したのはX1社であり、X2社の後願は拒絶された。

(続きを読む...)令和8年度司法試験知的財産法第1問の参考答案と予想される評価項目―出題の趣旨・採点実感の公表前に問題文・判例から予想した37項目と5段階の重み付け(AI作成)

小説の登場人物をTシャツ・SNSスタンプに使えるか――キャラクター,翻案権及び二次的著作物の新規部分(AI作成)

目次

第1 結論
第2 抽象的なキャラクターと具体的表現を分ける
第3 小説から映画・漫画になった場合
第4 キャンディ・キャンディ事件と28条
第5 「二次的著作物の新規部分」なら自由か
第6 Tシャツ・SNSスタンプ・場面画像の検討
第7 著作権以外の権利
第8 商品化前のチェックリスト
第9 出典・確認範囲

第1 結論

小説の登場人物について、性格、役割、口癖、人物関係等を抽象化した「キャラクター」自体は、直ちに独立の著作物になるわけではない。もっとも、小説の具体的な文章表現、漫画の絵、映画の映像・台詞等をTシャツやSNSスタンプに再製すれば、複製権、翻案権、公衆送信権等の侵害になり得る。

小説を原著作物として漫画・映画が二次的著作物に当たる場合、原著作者は著作権法28条により、二次的著作物の利用について二次的著作物の著作者と同一の種類の権利を有する。二次的著作物で新たに付加された外見や場面だから原著作者の権利が当然に及ばない、と単純に切り分けることはできない。

第2 抽象的なキャラクターと具体的表現を分ける

最高裁平成9年7月17日判決(ポパイ事件)は、漫画の登場人物のいわゆるキャラクターは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、それ自体は思想又は感情を創作的に表現したものとはいえないとした。

したがって、「無口な渡世人」「眼帯をした海賊」「魔法学校に通う少年」といった抽象的設定だけを利用することと、特定作品の絵、文章、衣装、構図、台詞及び組合せを再現することは区別する。名前だけの利用も著作権侵害にならない場合が多いが、ロゴとしての図案、商標、不正競争防止法上の商品等表示その他の権利は別に検討する。

著作権侵害では、アイデア又は抽象的特徴の共通ではなく、既存作品の創作的表現に依拠し、その表現上の本質的特徴を直接感得できるかが中心となる。

第3 小説から映画・漫画になった場合

著作権法2条1項11号は、二次的著作物を、著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化その他翻案することにより創作した著作物と定義する。小説を漫画化・映画化した作品は、原作の創作的表現を維持しつつ新たな表現を加えた二次的著作物になり得る。

映画監督、脚本家、美術担当者、漫画家等は、新たに創作した表現について権利を取得し得る。他方、二次的著作物の創作・利用には原著作者の権利処理も必要である。著作権法28条は、二次的著作物の原著作物の著作者が、その二次的著作物の利用について、二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有すると定める。

したがって、映画の場面画像を商品化する場合、映画製作者側の権利だけでなく、原作小説の著作者の28条上の権利も問題になり得る。

第4 キャンディ・キャンディ事件と28条

最高裁平成13年10月25日判決(キャンディ・キャンディ事件)は、連載漫画が原作原稿を原著作物とする二次的著作物であることを前提に、原作者が著作権法28条により、その漫画の利用について漫画家と同一の種類の権利を有するとした。

この判決の重要点は、漫画の絵が漫画家の創作した新たな表現であっても、二次的著作物である漫画の利用について、原作者の28条上の権利を否定しなかったことにある。原作文章に登場人物の顔の細部が書かれていないというだけで、漫画の商品化を原作者の権利から切り離すことはできない。

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公民館の自主講座で小説を翻訳・投影・配布できるか――著作権法35条・36条・38条・47条の6(AI作成)

目次

第1 結論
第2 公民館と「公民館を借りる自主グループ」は別である
第3 35条が使える場合
第4 36条の試験問題としての利用
第5 38条の非営利・無料の上映等
第6 翻訳と47条の6
第7 投影・配布・オンライン送信を分ける
第8 実施前のチェックリスト
第9 出典・確認範囲

第1 結論

市立公民館が組織的・継続的に行う非営利の自主講座であれば、著作権法35条の「学校その他の教育機関」に当たり、授業の過程で必要な限度の複製・公衆送信等が認められる余地がある。これに対し、市民の読書会やサークルが公民館の一室を借りて活動するだけなら、会場が公民館であることから直ちに35条の教育機関になるわけではない。

小説の翻訳、スクリーン投影、紙の配布、クイズへの利用及びオンライン送信は、それぞれ27条、22条の2、21条、36条及び23条の問題である。非営利・無料だから一括して自由になるのではない。35条、36条、38条及び47条の6の要件を、利用行為ごとに分ける必要がある。

第2 公民館と「公民館を借りる自主グループ」は別である

文化庁の「改正著作権法第35条運用指針」は、学校その他の教育機関を、組織的・継続的に教育活動を営む非営利の機関とし、公民館、博物館、図書館、生涯学習センター等を対象例に挙げる。他方、営利を目的として設置された塾、予備校、文化センター、企業内研修施設等は対象外とする。

重要なのは、誰が講座を設置・運営し、教育課程、講師、受講者及び会場を管理しているかである。市又は公民館が主催し、継続的な教育活動として位置付ける講座と、私的団体が公民館を単に会場として借りる集会は区別する。

会費又は200円程度の会場費を集めているかだけでは決まらない。営利性は一事情であるが、非営利であることだけで35条の「教育機関」になるわけではない。

第3 35条が使える場合

著作権法35条1項は、営利を目的として設置されたものを除く学校その他の教育機関で、教育を担任する者及び授業を受ける者が、授業の過程で必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、又は公衆送信等することを認める。ただし、著作物の種類・用途、複製部数、利用態様等に照らし、著作権者の利益を不当に害する場合は除かれる。

公民館の正規の講座が教育機関の授業に当たるとしても、小説1冊の全文を毎回配布する、市販教材の購入に代えて全員分を複製する、受講者以外も閲覧できるウェブサイトへ掲載するなど、権利者の市場と競合する利用は許されにくい。

必要性と分量は、講座の目的、対象箇所、受講者数、利用期間、アクセス制限及び市販物の入手可能性から判断する。出所を明示することは重要であるが、出所を示せば35条の限度を超えてもよいわけではない。

第4 36条の試験問題としての利用

著作権法36条1項は、公表された著作物を、入学試験その他の学識技能に関する試験又は検定の問題として、目的上必要な限度で複製・公衆送信することを認める。ただし、著作権者の利益を不当に害する場合は除かれ、営利目的の利用者には通常の使用料相当額の補償金支払義務がある。

講座の理解度を確認する簡単なクイズが、同条の「試験又は検定」に当たるとは限らない。裁判例は、試験の公正な実施のため、どの著作物を問題に利用するかを事前に秘密にする必要があり、そのため事前許諾が困難であることを重視する。

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数値限定発明の境界値を下回る製品は特許侵害か――「700以上」と699.91848判決,均等論及びサポート要件(AI作成)

目次

第1 結論
第2 「700以上」と699.91848が争われた判決
第3 文言侵害は数値の丸めでは決まらない
第4 均等論の第1要件・第2要件・第5要件
第5 サポート要件との関係
第6 登録後・公報発行前の実施と損害賠償
第7 数値限定発明を検討する手順
第8 出典・確認範囲

第1 結論

特許請求の範囲が「分子量700以上」と定めているとき、測定値が699.91848の製品は、通常の数学的な丸め方では700と表示できるとしても、それだけで文言上「700以上」に含まれるわけではない。知的財産高等裁判所令和7年3月4日判決(令和6年(ネ)第10026号)は、700未満の数値を文言侵害に含めず、均等侵害についても第5要件を満たさないとして特許権侵害を否定した。

もっとも、境界値をわずかに下回れば常に非侵害になるわけでもない。①請求項の数値の意味、②明細書の測定方法・有効数字・実施例、③作用効果、④出願経過、⑤均等論の5要件、⑥サポート要件等の無効理由を、別々に検討する必要がある。

第2 「700以上」と699.91848が争われた判決

知財高裁令和7年3月4日判決は、紫外線吸収剤(UVA)の分子量を「700以上」とする構成要件について、被告製品のUVAの分子量が699.91848であった事案を扱った。

判決は、構成要件の「分子量700以上」は、その文言どおり700以上であることを求め、699.91848は700未満であるから文言充足を否定した。侵害判断で問題になるのは、商品のラベル表示又は便宜上の丸め値ではなく、請求項を明細書及び図面も参酌して解釈した結果と、採用すべき測定方法による対象製品の値である。

同判決は均等論の第1要件を満たすと判断したが、第5要件を満たさないとして均等侵害を否定した。特に第5要件では、出願人が請求項に小数点以下を付けず「700以上」と記載したことなどから、700未満の構成を特許請求の範囲から客観的・外形的に除外したと評価した。

第3 文言侵害は数値の丸めでは決まらない

特許法70条1項は、特許発明の技術的範囲を特許請求の範囲の記載に基づいて定めるとし、同条2項は明細書及び図面を考慮して用語の意義を解釈すると定める。したがって、数値限定発明では少なくとも次を確認する。

①請求項が整数、小数又は範囲でどのように記載されているか。
②明細書が測定装置、試料調製、測定条件、誤差及び有効数字を定めているか。
③実施例・比較例が境界値をどのように扱っているか。
④出願経過で数値範囲を補正し、又は境界外の構成を区別したか。
⑤当業者が請求項の数値をどの精度で理解するか。

測定誤差があることと、請求項の境界値を丸めてよいことは同じではない。測定方法が複数あり結果が変わるときは、まずクレーム解釈として採用すべき測定方法を確定し、その方法による立証値が境界内かを判断する。

第4 均等論の第1要件・第2要件・第5要件

最高裁平成10年2月24日判決(ボールスプライン事件)は、文言上の相違があっても、①相違部分が本質的部分でないこと、②置換しても目的を達成し同一の作用効果を奏すること、③置換が対象製品の製造時等に容易想到であること、④対象製品等が出願時の公知技術と同一又は容易推考でないこと、⑤意識的除外等の特段の事情がないことという要件の下で均等侵害を認め得るとした。

同判決が原判決を破棄して差し戻したのは、原審が置換可能性及び置換容易性を中心に判断し、対象製品が出願時の公知技術と同一又は当業者が容易に推考できたものかという第4要件を十分に検討しないまま結論を出したためである。均等論は五要件の一部を満たせば足りるものではなく、各要件に対応する主張、証拠、反証及び判断を一つずつ確認する必要がある。

699.91848判決は、請求項の分子量700以上という限定について、第1要件を満たすと判断した。他方、第5要件を満たさないため、その他の均等要件について判断するまでもなく均等侵害を否定した。境界値に近いことや作用効果の同一性だけから、第2要件を裁判所が認定したものと読むことはできない。

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職務発明を従業員が第三者へ譲渡した場合――原始帰属,予約承継,二重譲渡及び特許権移転登録請求(AI作成)

目次

第1 結論
第2 職務発明でも原則は従業者に権利が発生する
第3 35条3項の原始帰属と通知時承継の違い
第4 出願前の二重譲渡と34条1項
第5 背信的悪意者と先願者の扱い
第6 冒認出願・登録後の移転請求
第7 会社・従業者・譲受人が保存すべき証拠
第8 出典・確認範囲

第1 結論

従業者が完成した職務発明について、会社の職務発明規程が「会社が取得すると決定して通知した時に承継する」と定める場合、その規程は、特許法35条3項の「発明完成時から会社に原始帰属する」定めとは異なる。発明完成時には従業者に特許を受ける権利が発生し、会社の決定・通知によって会社へ移転する承継型の規程と解される。

従業者が通知前又は通知後に同じ権利を第三者へ譲渡し、会社と第三者の双方が権利を主張する場合は、①発明完成時の規程、②会社への承継時期、③第三者への譲渡時期、④誰が先に出願したか、⑤第三者が背信的悪意者か、⑥既に特許登録がされたかを時系列で分ける。出願前の特許を受ける権利の承継は、原則として承継人が出願しなければ第三者に対抗できない(特許法34条1項)。

第2 職務発明でも原則は従業者に権利が発生する

特許法29条1項は発明をした者が特許を受けることができるとし、33条1項は特許を受ける権利を移転できると定める。職務発明であっても、35条3項の原始帰属を定める契約・勤務規則等がない限り、特許を受ける権利は発明者である従業者に発生する。

使用者は、職務発明について特許を受ける権利を従業者から承継しなかった場合でも、その従業者又は承継人が取得した特許権について通常実施権を有する(35条1項)。しかし、通常実施権があることと、会社が特許権者であることは別である。

また、発明者であることと権利者であることも別である。従業者が発明者でありながら会社が特許を受ける権利を保有することも、第三者が適法に権利を承継して出願人になることもある。

第3 35条3項の原始帰属と通知時承継の違い

特許法35条3項は、職務発明について、契約、勤務規則その他の定めにより「あらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたとき」は、特許を受ける権利が発生した時から使用者等に帰属すると定める。典型的には、「従業者がした職務発明について、特許を受ける権利は、その発生した時から会社に帰属する」という規程である。

これに対し、特許庁の職務発明制度に関するQ&Aは、「会社が職務発明に係る権利を取得する旨を発明者に通知したときは、会社は当該通知の到達時に取得する」という規程を、35条3項の原始帰属の定めに当たらない例として明示する。この規程では、会社は通知の到達によって従業者から権利を承継する。

両者の違いは、従業者が第三者へ譲渡した場合に重大である。原始帰属型なら、発明完成時から会社が権利者であり、従業者は原則として第三者へ有効に譲渡できない。承継型なら、会社への承継前には従業者が権利者であり、会社と第三者との優劣が34条1項等の問題になる。

職務発明の発明者性と相当の利益については、職務発明の発明者は誰か――上司の指示,実験担当者,共同発明者及び相当の利益(AI作成)で整理している。

第4 出願前の二重譲渡と34条1項

特許法34条1項は、特許出願前における特許を受ける権利の承継は、承継人が特許出願をしなければ第三者に対抗できないと定める。登記ではなく、出願が対抗要件になる。

承継型の職務発明規程の下で、従業者が同じ特許を受ける権利を会社と第三者に二重に譲渡した場合、両者の契約日又は通知日だけで優劣が決まるわけではない。原則として、承継人として先に出願した者が、他方に対して権利取得を主張できる。

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過去問・入試問題の解説を販売・配信してよいか―塾のテスト問題のライブ解説事件,国語テスト事件及び著作権法36条の射程(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 結論第2 試験問題の著作権1 問題文と問題の組み立て2 題材の文章の権利は別に残る3 著作物にならない問題もある第3 問題文を載せずに解説する場合1 塾のテスト問題のライブ解説事件(東京地裁令和元年5月15日判決)2 控訴審(知財高裁令和元年11月25日判決)3 生徒が持ってきた問題を使うとき4 他の解説を参考にして自分の解説を書くとき5 塾名・テスト名の表示と一般不法行為(東京地裁平成30年5月11日判決・知財高裁平成30年12月6日判決)6 自由競争の範囲を逸脱するとされた例(将棋の棋譜の配信事件)第4 問題文を載せる場合1 著作権法36条は過去問集には使えない2 引用として載せることも難しい3 塾・予備校での配布(35条・30条)4 問題を複製した教材の裁判例5 過去問を再現しただけの部分は保護されにくい6 英文や古文の全訳を載せる場合7 公民館の自主講座(35条・38条・47条の6)第5 試験の実施者の利用条件1 大学入試センター(大学入学共通テスト)2 京都大学の例3 法務省(司法試験・予備試験)4 資格試験・検定の実施団体第6 場面別の確認表第7 関連記事第8 出典1 法令2 裁判例(裁判所HP掲載)3 裁判例(判例秘書で確認)4 試験の実施者の資料5 国会会議録
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

この記事は,大学入試・中学入試・資格試験の過去問について,解答や解説を作って販売し,動画で配信し,又は塾の教材に使うことが著作権侵害になるかを扱う。
法令は令和8年9月28日にe-Gov法令検索(法令API)で著作権法の現行条文を確認し,裁判例は裁判所HPの裁判例検索と判例秘書で判決本文を確認した。
大学・独立行政法人・法務省の利用条件は,同日に各機関のウェブサイトで確認した内容である。

弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」には,過去問の解答販売,問題文の転載,塾での利用などについての相談と回答が100件以上蓄積されている。
もっとも,過去問や試験問題を扱った裁判例を示した回答は見当たらなかった。
この記事では,実際に争われた裁判例を軸に,場面ごとの結論を整理する。

2 結論
(1) 問題文を載せず,掲載ページにリンクして解答・解説する場合

試験実施者その他の権利者が適法に過去問を公開しているウェブページに通常の方法でリンクを設定し,ブログには問題文,設問,選択肢,図表等を表示せず,自分の言葉で作成した解答又は解説だけを掲載する場合は,原則として,問題の複製又は翻案には当たらない。
通常のリンクは,リンク先の所在を示すものであり,リンク先の問題文を自分のブログ上に複製するものではない。
中学受験塾のテスト問題をライブ配信で解説した他の塾に対する請求は,東京地裁と知財高裁のいずれでも棄却された(第3)。
塾名やテスト名を「○○マンスリーテスト解説」のように表示することも,解説の対象を示すにとどまる限り,不正競争防止法違反にも一般不法行為にもならないとされた(控訴審も一般不法行為を否定)。
ただし,解答の中で問題文を実質的に再現した場合や,他人の解答・解説の創作的表現を利用した場合は,別途,複製権又は翻案権の侵害が問題となり得る。また,他人が費用を投下して得た情報をそのまま逐次提供してその営業と競合するような態様では,著作物でなくても不法行為が認められた例がある(第3の6)。

(2) 問題文を載せる場合

問題文そのものを載せる場合は,原則として権利者の許諾が要る。
著作権法36条(試験問題としての複製等)は,これから実施する試験の出題のための規定であり,過去問集,市販の問題集,教材への掲載には使えない(第4の1)。
引用(32条1項)も,問題文を問題として出題する形では主従関係を欠くので通りにくい(第4の2)。
塾・予備校は営利目的で設置されているので,学校の授業のための複製を認める35条も使えない(第4の3)。
英文や古文の全訳を公開・販売することも,題材の文章の翻訳に当たる(第4の6)。

(3) 利用条件の確認

大学入試センター,京都大学,法務省,資格試験の実施団体などは,試験問題の利用条件をウェブサイトで公表している。
問題文を使うときは,まずその利用条件を確かめる(第5)。

第2 試験問題の著作権
1 問題文と問題の組み立て

著作権法2条1項1号は,著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定めている。
文章で出題される問題は,作成者の個性が表れていれば言語の著作物になる。

これとは別に,著作権法12条1項は「編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。」と定めている。

(続きを読む...)過去問・入試問題の解説を販売・配信してよいか―塾のテスト問題のライブ解説事件,国語テスト事件及び著作権法36条の射程(AI作成)

北朝鮮映画事件―ベルヌ条約,未承認国及び著作権法6条3号(AI作成)

目次

第1 結論と本記事の射程
第2 北朝鮮映画事件の事案と結論

1 放送の内容
2 原告の請求
3 最高裁の結論

第3 著作権法6条の三つの保護経路

1 三つの保護経路
2 本判決で否定された範囲

第4 ベルヌ条約と未承認国

1 WIPOの締約国情報
2 未承認国との条約関係
3 日本と北朝鮮への当てはめ

第5 一般不法行為による保護

1 最高裁の判断枠組み
2 本件への当てはめと判決の射程
3 後続裁判例

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他人の文章や講演を要約してブログ・SNSに載せると著作権侵害か―翻案,要約引用,公開の演説及び時事の事件の報道(AI作成)

目次第1 この記事の対象と確認の方法1 対象と結論の要旨2 確認の方法と資料の性質第2 要約は何の権利の問題になるか1 著作物と翻案2 ブログ・SNSへの掲載と公衆送信権第3 利用者の反論1―そもそも類似していない1 表現上の本質的な特徴を直接感得できるか2 約1万字を1000字程度にした要約3 アニメや映画の内容を文章で説明した記事が翻案とされた刑事事件第4 利用者の反論2―引用(32条1項)1 条文と判断の枠組み2 要約による引用3 出所の明示(48条)第5 利用者の反論3―公開の演説(40条1項)1 40条1項の要件2 裁判手続の陳述と未陳述の書面第6 利用者の反論4―時事の事件の報道(41条)1 41条の要件と要約2 報道に当たるかを判断した裁判例3 設例への当てはめ第7 削除請求と損害賠償の根拠1 削除請求(差止請求)2 損害賠償第8 動画を歪めて表示するソフトと著作者人格権1 問題となる権利2 ときめきメモリアル事件と請求の相手方3 名誉回復等の措置(115条)第9 実務のチェックリスト1 要約を載せる前の確認2 削除請求を受けたとき3 権利者として削除を求めるとき第10 関連記事第11 出典1 法令2 裁判例3 法務省の資料4 その他
第1 この記事の対象と確認の方法
1 対象と結論の要旨
(1) 取り上げる場面

他人の書籍,論文,新聞記事,講演,セミナー又は動画の内容を要約して,自分のブログ,SNS,社内報又は研修資料に載せることは多い。
本記事は,このような要約の掲載が著作権侵害になるかを,権利者の主張と利用者の反論に分けて整理し,削除請求と損害賠償の根拠を示す。
あわせて,動画を歪めて表示するソフトの提供と著作者人格権の問題を短く扱う。

(2) 結論の要旨

①原文の表現上の本質的な特徴を直接感得できるほど詳しい要約は,翻案に当たり得る。
②そのような要約をブログ等に載せることは,二次的著作物の公衆送信であり,原著作者が著作権法28条を介して有する公衆送信権(23条1項)の問題となる。
③要約が短く,事実やアイデアだけが原文と共通するにとどまるときは,翻案に当たらない。
④引用(32条1項)に伴う利用として47条の6第1項2号が挙げるのは翻訳だけであり,要約による引用が許されるかは解釈に委ねられているが,原文の趣旨に忠実な要約による引用を認めた下級審裁判例(東京地裁平成10年10月30日判決)がある。
⑤公開の政治上の演説(40条1項)と時事の事件の報道(41条)は,要件が限られており,一般の講演や記事の紹介に広く使える規定ではない。
⑥権利者は,差止請求(112条)として削除を求め,故意又は過失があれば損害賠償(民法709条,著作権法114条)を求めることができる。
⑦アニメや映画の内容を文章で詳しく説明したウェブサイトの記事が翻案に当たり引用にも当たらないとして,運営会社の代表者に有罪判決が言い渡された下級審裁判例(東京地裁令和8年4月16日判決)もある。

2 確認の方法と資料の性質
(1) 確認日と確認した資料

令和8年9月26日に,e-Gov法令検索の法令APIで著作権法の現行条文と施行前の改正を確認し,裁判所HPの裁判例検索で裁判例の書誌と判決全文を確認した。
裁判所HPに掲載されていない裁判例は,判例データベース(判例秘書)で判決本文を確認したものに限り,事件番号と判例秘書の判例番号を付けて取り上げた。
また,法務省HPに掲載されている令和7年司法試験論文式試験の選択科目(知的財産法)第2問の問題,出題の趣旨及び採点実感を読んだ。
以下で「採点実感」「出題の趣旨」の頁を示すときは,いずれも各PDFに印刷された頁である。

(2) 司法試験の資料の位置付け

出題の趣旨と採点実感は,司法試験考査委員が答案に何を期待したかを示す資料であり,判例でも行政解釈でもない。
本記事では,論点の並べ方と見落としやすい点を知るために用い,結論の根拠には条文と裁判例を用いる。

令和7年司法試験の設例では,政治家を目指すAが約1万字の文章Pを早朝の駅前広場で披露し,その様子を撮影した映像を編集した動画Qを自己のウェブサイトに掲載した。
個人ブロガーBは,動画Qが注目を集めていることを紹介する投稿に,文章Pを1000字程度に要約した文章P’と,これを批判する3000字程度の文章を載せた。
プログラマーCは,インターネット上の動画ファイルを視聴するとその映像が変容して表示される再生ソフトRを公開しており,自己のウェブサイトで再生ソフトRを用いて動画Qを見るよう書き込み,多くの人がこれを用いて動画Qを視聴した(問題21頁)。

(3) 施行前の改正

e-Gov法令検索の改正履歴によれば,著作権法には,確認日の時点で施行されていない改正が三つ登録されている。
令和9年4月1日に施行予定の学校教育法等の一部を改正する法律(令和8年法律第37号)による改正後の本文では,47条の6第1項3号から33条の3第1項が除かれ,48条1項1号と20条2項1号の引用する条項も変わる。

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特許無効を争う三つの手続―無効審判・審決取消訴訟・侵害訴訟の無効の抗弁(AI作成)

目次

第1 三つの手続の違い第2 特許無効審判第3 審決取消訴訟第4 侵害訴訟における無効の抗弁第5 訂正請求・訂正審判との関係第6 並行手続と中止第7 無効理由と証拠の作り方第8 手続選択のチェックリスト第9 調査範囲と限界第10 関連記事第11 出典・参考資料
第1 三つの手続の違い

特許の有効性を争う手続として,特許庁の特許無効審判,その審決に対する知的財産高等裁判所の審決取消訴訟,特許権侵害訴訟における特許法104条の3の無効の抗弁がある。機関,目的,結果の効力及び提出できる主張の範囲が異なるため,「どこでも同じ無効理由を主張すればよい」と考えてはならない。

本記事は,令和8年9月25日現在の法令,特許庁・裁判所の公表資料及び裁判例本文に基づく。

手続判断機関主な目的結果
特許無効審判特許庁審判部特許を対世的に無効とする審決を求める。無効審決が確定すれば原則として特許権は初めから存在しなかったものとみなされる。
審決取消訴訟知的財産高等裁判所特許庁の審決の違法を審査し,取り消す。取消判決確定後,特許庁で再度審理する。裁判所が自ら無効審決をする手続ではない。
無効の抗弁侵害訴訟の裁判所当該侵害訴訟で特許権の行使を制限する。請求棄却等につながるが,判決だけで特許登録が対世的に消滅するわけではない。

第2 特許無効審判

特許法123条は,特許が新規性・進歩性等の特許要件に違反してされた場合,記載要件を満たさない場合,冒認その他の法定事由がある場合に,無効審判を請求できることを定める。請求人適格は条文上の「利害関係人」等の要件を無効理由ごとに確認する。

請求書では,無効を求める請求項,無効理由,事実及び証拠を具体的に特定する。進歩性を争う場合,主引用発明,副引用発明,周知技術,技術常識,組合せの動機付け,阻害要因及び予測困難な効果を区別する。複数の引用例を並べるだけでは,どの構成をどの証拠から導くのかが不明になる。

無効審決が確定すると,特許法125条により,原則として特許権は初めから存在しなかったものとみなされる。確定審決後の再請求制限は同法167条の当事者・参加人,同一の事実及び同一の証拠という要件を確認する。

第3 審決取消訴訟

特許無効審判の審決に対する訴えは知的財産高等裁判所の専属管轄であり,審決の謄本送達日から30日以内という出訴期間を確認する。裁判所は審決の違法性を審理し,取消判決が確定したときは,行政事件訴訟法33条及び特許法181条に沿って特許庁が再度審理する。

最高裁昭和51年3月10日大法廷判決は,審判で審理判断されなかった公知事実との対比における無効原因を,審決取消訴訟で新たに主張することを許さないとした。もっとも,審判で審理された無効原因について,その判断の当否を明らかにする補充的な主張・証拠まで一律に排除されるわけではない。新しい証拠を提出できるかは,証拠が新しいかだけでなく,別個の無効原因を持ち込むことになるかで判断する。

特許権が共有に係る場合は,審判の当事者と訴訟の当事者を分けて考える。共有者が共有に係る権利について審判を請求するときは,共有者の全員が共同して請求しなければならず(特許法132条3項),共有に係る特許権について特許権者に対し審判を請求するときは,共有者の全員を被請求人としなければならない(同条2項)。

他方,取消訴訟については,最高裁平成14年3月25日判決(平成13年(行ヒ)第154号,民集56巻3号574頁)が,特許異議の申立てに基づく特許取消決定の取消訴訟を特許権の共有者の一人が単独で提起できるとし,最高裁平成14年2月22日判決(平成13年(行ヒ)第142号,民集56巻2号348頁)も,商標登録の無効審決の取消訴訟について,商標権の共有者の一人による単独の提起を認めた。これに対し,最高裁平成7年3月7日判決(平成6年(行ツ)第83号,民集49巻3号944頁)は,実用新案登録を受ける権利の共有者が拒絶査定不服審判の請求不成立審決に対して提起する取消訴訟を,固有必要的共同訴訟とした。

特許無効審決の取消訴訟は,権利が成立した後の共有に関する点で前二者に近く,共有者の一人が単独で提起できると考えられる。もっとも,出訴期間は30日と短いため,共有者間で審決送達後の対応を事前に取り決め,共同で提起するか単独で提起するかを早期に決めておくのが安全である。

第4 侵害訴訟における無効の抗弁

特許法104条の3は,特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるとき,特許権者は相手方に対して権利を行使できないと定める。被告は無効審判を請求していなくても抗弁を提出できる。

この判断は当該訴訟における権利行使を制限するものであり,特許登録を対世的に消滅させる無効審決とは異なる。差止めを将来にわたり安定して排除したい,第三者との関係でも特許を消滅させたい,又は侵害訴訟が終わっても無効判断を得る必要がある場合は,無効審判を併用する意味がある。

裁判所は,当事者の審理を不当に遅延させる目的でされた無効の抗弁を却下できる。侵害論の進行に合わせ,主引用例,対比表,技術説明及び証拠を早期に整える。

第5 訂正請求・訂正審判との関係

特許権者は,無効審判の中で特許法134条の2の訂正請求を行うことがある。訂正は,特許請求の範囲の減縮,誤記・誤訳の訂正,明瞭でない記載の釈明等の法定目的に限られ,新規事項の追加や実質的な拡張・変更は許されない。

訂正には承諾を要する者がある。特許権者は,専用実施権者又は質権者があるときは,これらの者の承諾を得た場合に限り訂正審判を請求でき(特許法127条),無効審判における訂正の請求にも同条が準用される(同法134条の2第9項)。令和3年法律第42号による改正前は,職務発明に基づく通常実施権者及び許諾による通常実施権者(同法35条1項,77条4項,78条1項)の承諾も必要とされていたが,同改正により,令和4年4月1日から通常実施権者は承諾を要する者から外れた。同日前にした訂正の請求及び訂正審判の請求については,なお従前の例による(同改正法附則2条9項)。

そのため,改正前の解説で「通常実施権者の承諾が必要」とされている記述を,現在の案件へそのまま当てはめることはできない。専用実施権や質権が設定されている特許では,訂正への協力をライセンス契約・担保権設定契約で定めておくかを検討する。

侵害訴訟で無効の抗弁を受けた場合も,現在の請求項だけでなく,訂正後の請求項が無効理由を解消するか,かつ被告製品・方法が訂正後も技術的範囲に属するかを同時に検討する。訂正の請求・審判をいつ行えるかは,無効審判・審決取消訴訟の進行段階によって制限されるため,答弁・反論の前に手続日程を確認する。

第6 並行手続と中止

同じ特許について無効審判と侵害訴訟が並行することがある。特許法168条は,審判手続又は訴訟手続の中止及び裁判所・特許庁間の通知を定めるが,一方の手続を開始すれば他方が当然に停止するわけではない。

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著作権全部譲渡後の改変と著作者人格権―著作権法20条・59条・61条(AI作成)

目次

第1 結論の要旨第2 著作権と著作者人格権を分ける第3 著作権法61条の譲渡範囲第4 同一性保持権と改変第5 不行使合意,第三者及び著作者の死後1 不行使合意と利用主体2 著作者が死亡した後の人格的利益第6 契約作成と証拠保存第7 差止め・損害賠償・原状回復第8 確認済みと未確認の境界第9 関連記事第10 出典・参考資料
第1 結論の要旨

著作権を全部譲渡しても,著作者人格権は譲渡できない。したがって,譲受人が作品を改変できるかは,財産権の帰属だけでなく,著作権法20条,59条及び61条,著作者の同意・不行使合意,譲渡時に予定された利用の範囲から判断する。

本記事は令和8年9月24日現在の法令と法務省公式資料を確認して作成した。公式資料が示す解釈方向は裁判例と同じ引用強度ではない。

第2 著作権と著作者人格権を分ける

著作権は,複製権,上映権,公衆送信権,翻案権等の財産的な権利であり,譲渡できる。他方,公表権,氏名表示権と同一性保持権は著作者人格権であり,著作権法59条により著作者の一身に専属し,譲渡できない。

確認対象主な条文契約での確認財産権の帰属61条譲渡対象,地域,期間,対価,再譲渡・再許諾改変の可否20条改変の目的,種類,範囲,媒体,事前確認著作者人格権59条不行使合意の対象行為,期間,利用主体,承継
第3 著作権法61条の譲渡範囲

著作権法61条2項は,著作権譲渡契約で27条の翻訳権・翻案権等又は28条の二次的著作物の利用に関する原著作者の権利を特掲しないとき,譲渡人に留保されたと推定する。「著作権をすべて譲渡する」とだけ書くと,後の翻案・二次利用で紛争になる。

第4 同一性保持権と改変

同法20条1項は,著作者に,その著作物と題号の同一性を保持し,その意に反して改変,切除その他の改変を受けない権利を与える。2項は学校教育の目的上やむを得ない改変,建築物の増改築,プログラムの利用上必要な改変,その他著作物の性質並びに利用の目的及び態様に照らしやむを得ない改変を例外とする。

著作権全部譲渡時に通常予定された改変は,59条の人格権不譲渡性と61条の財産権全部譲渡の趣旨をどう調整するかが問題となる。令和3年司法試験の公式資料は,譲渡事実から改変が「意に反する」かを解釈することを重視する。ただし,これは裁判例ではないため,契約時の説明,利用目的,対価,改変可能性に関する交渉記録を保存する。

第5 不行使合意,第三者及び著作者の死後1 不行使合意と利用主体

著作者人格権は譲渡できないため,実務では不行使合意が用いられる。しかし,不行使合意は基本的に契約当事者間の債権関係である。子会社,委託先,配信プラットフォーム,販売先又は二次取得者が当然に援用できるとは限らない。どの者が,どの利用で,どの種類の改変を行うかを明示する。

2 著作者が死亡した後の人格的利益

著作権法60条は,著作者が死亡した後も,著作者が存していれば著作者人格権の侵害となるべき行為を原則として禁止する。ただし,行為の性質・程度,社会的事情の変動その他により著作者の意を害しないと認められる場合は例外となる。

同法116条は,60条違反の行為又はそのおそれがある場合について,一定の遺族等に差止め及び名誉回復等の請求を認める。著作者の死亡によって改変上のリスクが当然に消滅するわけではないため,譲受人は,生前の利用目的・意思・契約記録,改変の性質・程度及び遺言による請求権者の指定を確認する必要がある。

第6 契約作成と証拠保存著作物と著作者を特定する。原始的な著作権者,職務著作,共同著作の有無を確認する。譲渡する支分権と27条・28条の特掲を書く。予定する改変,媒体,期間,地域,後続版を例示する。不行使合意の対象行為と利用主体を限定する。ラフ,納品版,改変版,指示,確認,対価と利用目的を保存する。
第7 差止め・損害賠償・原状回復

侵害がある場合,著作者は差止め,損害賠償,名誉声望回復等を検討する。利用停止の緊急性があるときは仮処分も問題となる。譲受人側は,改変の必要性,同意・不行使合意,20条2項の例外,著作者の意思と契約目的を資料で示す。

第8 確認済みと未確認の境界

確認済みは,著作権法20条,59条,60条,61条及び116条の現行条文と,令和3年司法試験の問題・出題の趣旨・採点実感である。著作権全部譲渡後の改変を同じ事実関係で直接判断した最高裁判例の有無・射程は,判例秘書の網羅的検索を本記事で実施していないため未確認である。

第9 関連記事

製品デザインの制作委託では,譲渡対象の形状等が著作物として保護されるかを先に確認する。量産実用品の著作物性と契約による権利処理の関係は,量産実用品のデザインはどこまで著作権で保護されるか-最高裁判決とトリップトラップ(AI作成)で説明している。

特許保証と知財紛争の責任転嫁―発注者指定の設計では誰が責任を負うか(AI作成)も参照されたい。

第10 出典・参考資料

①e-Gov法令検索「著作権法」20条,59条~61条,112条~116条
②令和3年司法試験問題(選択科目PDF掲載ページ)
③令和3年司法試験の結果(論文式試験出題の趣旨PDF掲載ページ)
④令和3年司法試験の採点実感(選択科目PDF掲載ページ)

修理・再生品は特許権侵害になるか―消尽,新たな生産,交換部品及び間接侵害(AI作成)

目次

第1 修理と再生品の結論第2 特許権の消尽第3 修理か「新たな生産」か1 最高裁の判断枠組み2 加工・部品交換で確認する事項第4 インクタンク事件第5 交換部品の供給と間接侵害第6 直接侵害・間接侵害・消尽を混同しない第7 事業者が保存すべき資料第8 契約・表示・競争法との関係第9 実務チェックリスト第10 関連記事第11 出典・参考資料
第1 修理と再生品の結論

適法に購入した特許製品を使用し,通常の修理をして再販売する行為には,原則として消尽した特許権の効力は及ばない。他方,加工又は部品交換によって元の製品と同一性を欠く特許製品を新たに製造したと評価される場合,特許権者は権利を行使できる。

「修理」「再生」「リファービッシュ」「リサイクル」という表示だけでは結論は出ない。対象製品,特許請求項,加工前の状態,交換部品の機能・価値・耐用期間,加工の程度,取引実情及び再販売方法を対応させる必要がある。

第2 特許権の消尽

特許法68条は,特許権者が業として特許発明を実施する権利を専有すると定める。他方,特許権者又は許諾を受けた実施権者が日本国内で特許製品を譲渡した場合,その製品について特許権は目的を達成して消尽し,特許権者は当該製品の使用・譲渡等を原則として差し止められないというのが最高裁判例である。

消尽は,製品の流通のたびに許諾を必要とすると取引の安全を害する一方,特許権者には最初の譲渡時に対価確保の機会があることを基礎とする。ただし,消尽するのは譲渡された当該製品についてであり,新たな特許製品の生産まで自由にするものではない。

第3 修理か「新たな生産」か
1 最高裁の判断枠組み

最高裁平成19年11月8日判決(インクタンク事件)は,加工・部材交換により元の特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたと認められるときは,特許権者が権利を行使できるとした。

その判断では,①製品の属性,②特許発明の内容,③加工・部材交換の態様,④取引の実情等を総合考慮する。単一の部品を交換したか,製品価格の何割かという一つの数字だけで決める枠組みではない。

2 加工・部品交換で確認する事項
考慮領域確認事項製品の属性機能,構造,材質,用途,耐用期間及び通常の使用態様発明の内容請求項の構成,作用効果,加工後に再形成される技術的特徴加工の態様加工前の消耗・破損状態,加工の内容・程度,品質管理交換部品耐用期間,技術的機能,経済的価値及び製品全体との関係取引実情修理市場,純正・再生品の表示,価格,保証,回収・再流通の実態
第4 インクタンク事件

同判決の事案では,使用済みインクタンクを回収し,内部を洗浄し,インクを再充填するための加工をして再販売していた。最高裁は,製品の状態,発明の内容及び加工の態様等から,新たな製造に当たるとして特許権行使を認めた。

この結論を「消耗品への再充填は常に侵害」と一般化してはならない。最高裁は製品属性から取引実情までの総合考慮を示しており,別製品では,通常交換される消耗部品か,製品本体の寿命が残るか,加工が発明の技術的特徴を再形成するか等によって評価が変わり得る。

第5 交換部品の供給と間接侵害

修理業者が完成品を新たに生産したかという直接侵害の問題と,部品供給者が間接侵害責任を負うかは別である。直接侵害が成立せず,特許法101条1号の専用品型にも当たらないときでも,同条2号を順に検討する。
もっとも,1号・2号はいずれも,物の発明について「その物の生産に用いる物」を対象とする。同じ特許について部品供給者の間接侵害を問うには,その部品が,特許製品の新たな製造(生産)と評価される加工又は交換に用いられることが前提となる。
また,直接の実施行為が「業として」の要件を欠く等の理由で直接侵害とならない場合に間接侵害が成立するかは見解が分かれるから,直接侵害を否定した理由を特定して検討する。

1号は,物の発明について,その物の生産にのみ用いる物の業としての生産・譲渡等を対象とする。「のみ」については,単に想定可能な他用途ではなく,経済的,商業的又は実用的な非侵害用途があるかを問う。

2号は,広く一般に流通している物を除き,その物の生産に用いる物であって発明による課題の解決に不可欠なものを,その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら,業として生産・譲渡等する行為を対象とする。警告書到達や訴え提起等により主観的要件が充足した時点の前後を分け,充足前の販売数量を間接侵害の損害に自動的に入れない。

また,部品の一部が適法な修理や非侵害製品にも使用されるなら,その数量は,直接に損害が発生しないこと又は特許法102条2項の推定覆滅の事由として実証する。客先別,用途別,警告前後別の販売記録が重要である。

第6 直接侵害・間接侵害・消尽を混同しない
問題対象行為主な確認直接侵害特許製品の生産・使用・譲渡等請求項の全構成要件,業としての行為,地域消尽適法に譲渡された個別製品の使用・再譲渡等適法な初回譲渡と,新たな生産の有無間接侵害専用品・不可欠品の生産・譲渡等特許法101条の各号,汎用品,知情,用途

修理行為が新たな生産に当たらない場合でも,部品供給に別の特許が及ぶことはあり得る。逆に,部品が101条に該当しないことだけで,完成した再生品の直接侵害が否定されるわけではない。

第7 事業者が保存すべき資料
対象製品の型番,製造番号,入手経路及び最初の譲渡地域対象特許の登録原簿,請求項,明細書,存続期間及び実施許諾加工前後の写真,分解図,工程表,交換部品表及び重量・価格交換部品の耐用期間,通常交換性,技術的機能及び他用途品質検査,性能比較,安全性,保証及び事故対応純正品・再生品・修理品であることの表示,広告及び販売資料回収,保管,国外加工,輸入,再販売及び廃棄の時系列
第8 契約・表示・競争法との関係

特許権侵害が成立しない場合でも,修理制限条項,保証条件,営業秘密,不正競争防止法,商標表示,製造物責任又は景品表示法が問題となり得る。純正品と誤認させる表示,品質保証の出所を混同させる表示及び安全性に関する不正確な表示は,消尽とは別に検討する。

(続きを読む...)修理・再生品は特許権侵害になるか―消尽,新たな生産,交換部品及び間接侵害(AI作成)

訴訟資料に著作物を利用する場合の著作権―複製・mints提出・引用・事件外共有を分ける(AI作成)

目次
第1 結論―一つの資料を五つの行為に分ける
第2 著作物・権利者・入手経路を確認する
第3 裁判手続のための複製
第4 mints提出と公衆送信等
第5 引用として利用する場合
第6 鑑定書・意見書と画像
第7 事件外共有・広報・研修への転用
第8 提出前チェックリスト
第9 関連記事
第10 出典と調査範囲

第1 結論―一つの資料を五つの行為に分ける

訴状、準備書面、証拠説明書、鑑定書又は意見書に他人の論文、写真、図面、ウェブ画面等を使う場合、「裁判だから自由に使える」と一括してはいけない。少なくとも、①資料を取得する、②紙又はPDFへ複製する、③裁判所・相手方へ提出又は送信する、④法廷で表示する、⑤事件外で依頼者・関係者・研修参加者等へ共有する、という行為を分ける。

著作権法41条の2は裁判手続に必要な利用を認める重要な規定であるが、必要な限度と著作権者の利益を不当に害しないことが条件である。違法に入手した資料の取得を適法化したり、事件外の公表・二次利用を当然に許したりする規定ではない。

第2 著作物・権利者・入手経路を確認する
確認事項具体例
著作物性論文本文、写真、図表、設計図、地図、ソフト画面の創作的表現
保護されない部分単なる事実、法令、裁判所の判決そのもの、ありふれた短文
権利者著作者、勤務先、出版社、写真提供者、共同著作者
利用行為複製、公衆送信、上映・口述、譲渡、翻案
入手経路正規購入、契約DB、依頼者提供、公開ウェブ、第三者からの流出
契約条件データベース利用規約、ライセンス、秘密保持、個人情報

著作権法上利用できる場合でも、契約上の利用制限、営業秘密、個人情報、プライバシー、訴訟記録の閲覧等制限は別に検討する。

第3 裁判手続のための複製

著作権法41条の2第1項は、裁判手続のために必要と認められる場合、必要と認められる限度で著作物を複製できる旨を定める。ただし、著作物の種類・用途、複製部数・態様等に照らして著作権者の利益を不当に害する場合は除かれる。

「必要」は、争点との関連性だけでなく、全文が必要か該当頁で足りるか、カラー高精細画像が必要か、提出部数が適切かという範囲にも及ぶ。証明対象、立証趣旨、必要部分を先に書き出すと、過剰な複製を避けやすい。

裁判手続のための複製は、資料を適法に取得する権利まで与えるものではない。ID・パスワードの不正使用、アクセス制御の回避、秘密情報の不正取得等は別問題である。

第4 mints提出と公衆送信等

(続きを読む...)訴訟資料に著作物を利用する場合の著作権―複製・mints提出・引用・事件外共有を分ける(AI作成)

共同著作物・二次的著作物の権利行使―単独差止め・損害賠償・原著作者の権利(AI作成)

目次第1 共同著作物・共有著作権・二次的著作物を分ける第2 共同著作物と分離可能な共同制作第3 共有著作権の利用許諾と権利行使第4 侵害に対する単独の差止め・損害賠償第5 二次的著作物と原著作者の権利第6 誰が誰に何を請求できるか第7 契約・証拠のチェックリスト第8 一次資料と確認範囲
第1 共同著作物・共有著作権・二次的著作物を分ける

複数人が制作に関与した作品では、「共同で作った」という日常語だけで権利関係を決めることはできない。少なくとも、①各人の創作的寄与を分離して利用できない共同著作物、②分離可能な複数の著作物を組み合わせた作品、③一つの著作権が譲渡・相続等により共有となった場合、④既存著作物を翻訳・編曲・変形・脚色等した二次的著作物を区別する。

この区別によって、誰の同意が必要か、誰が単独で差止め又は損害賠償を請求できるか、原著作者の権利がどこまで及ぶかが変わる。

第2 共同著作物と分離可能な共同制作

著作権法2条1項12号は、共同著作物を、二人以上の者が共同して創作した著作物であって、各人の寄与を分離して個別的に利用できないものと定義する。文化庁の令和8年度著作権テキストは、分担部分を決めずに共同で執筆し、各人の創作部分を明確に区別できない場合を例に挙げる。

これに対し、第1章はA、第2章はBというように各人の寄与が分離して利用できる場合、書籍全体に別の編集著作物性が成立する余地はあっても、各章は当然には共同著作物にならない。漫画について、ストーリー、ネーム、人物画及び背景を複数人が担当した場合も、創作過程、相互依存性及び各寄与の分離利用可能性を事実に即して判断する。

企画、資金提供、資料提供、一般的な指示又は校正だけでは、直ちに共同著作者になるとは限らない。作品の表現形成に創作的に寄与したか、その寄与が一つの作品として共同化されたかを確認する。

第3 共有著作権の利用許諾と権利行使

著作権が共有に属する場合、各共有者は、他の共有者の同意がなければ持分を譲渡し、又は質権を設定できない(法65条1項)。共有著作権は共有者全員の合意によらなければ行使できず、各共有者は正当な理由がない限り合意の成立を妨げることができない(同条2項・3項)。

ここでいう権利行使は、第三者に複製・公衆送信・翻案等を許諾する場面を含む。過半数で足りる会社法上の意思決定と混同してはならない。共同制作契約では、利用許諾の窓口、承認手続、拒否できる正当理由、収益配分、二次利用、改変、権利譲渡、死亡・連絡不能時の取扱いを定める必要がある。

第4 侵害に対する単独の差止め・損害賠償

全員一致が必要な利用許諾と、侵害者に対する権利保全は別である。著作権法117条1項は、共同著作物の各著作者又は各著作権者が、他の著作者又は他の著作権者の同意を得ないで、112条の規定による請求(差止請求)をし、又はその著作権の侵害に係る自己の持分に対する損害の賠償若しくは自己の持分に応じた不当利得の返還を請求できると定め、同条2項は、これを共有に係る著作権又は著作隣接権の侵害に準用する。持分による限定が付くのは損害賠償と不当利得返還であり、差止請求は持分に限られない。

差止めは法112条に基づき、侵害の停止・予防及び侵害物等の廃棄その他必要な措置が問題となる。損害賠償では、故意・過失、損害及び因果関係を原則として立証し、法114条の損害額推定等を検討する。共有者が単独で請求できる損害額は、原則として自己の持分に対応する範囲である。

共同著作物の著作者人格権は、著作者全員の合意によらなければ行使できず、各著作者は、信義に反して合意の成立を妨げることができない(法64条1項・2項)。もっとも、64条が全員の合意を求めるのは著作者人格権の行使(公表や改変への同意等)である。第三者による著作者人格権の侵害に対しては、各著作者が、117条1項により、他の著作者の同意を得ないで112条の差止請求をすることができる。財産権である共有著作権の行使(65条)と共同著作物の著作者人格権の行使(64条)は規律が異なるが、侵害に対する単独の差止請求は、いずれも117条1項による。

第5 二次的著作物と原著作者の権利

二次的著作物とは、既存著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化その他の方法で創作した著作物である。二次的著作物の著作者は、新たに加えた創作的表現について著作権を取得するが、原著作物の表現についてまで独占権を取得するものではない。

著作権法28条により、原著作物の著作者は、二次的著作物の利用について、二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。したがって、二次的著作物を第三者が複製・公衆送信等する場合、二次的著作物側の権利処理だけでなく、原著作者側の権利処理も必要となり得る。

最高裁平成13年10月25日判決(キャンディ・キャンディ事件)は、連載漫画が原作原稿の二次的著作物であることを前提に、原作者が漫画の利用について28条により漫画家と同一の種類の権利を有するとした。漫画家が新たに描いた人物画であっても、原作に同一の絵がないという理由だけで原作者の28条上の権利から切り離すことはできない。

したがって、「二次的著作物のうち新たに加えた部分には原著作者の権利が当然に及ばない」と一般化するのは正確でない。二次的著作物として一体的に利用しているのか、それとも既存作品の具体的表現に依拠せず、抽象的な人物類型又は題材だけから別個独立に創作した作品なのかを区別する。

最高裁平成9年7月17日判決(ポパイ事件)は、具体的な漫画表現から昇華した抽象的なキャラクター自体を独立の著作物とは認めなかった。他方、近時の裁判例は、小説を原作とする映像作品で付加された外見的特徴を含む利用についても、映像作品が原作の二次的著作物である以上、原作者の28条上の権利が問題になるとしている。

Tシャツ、SNSスタンプ、映画の場面画像等への利用は、小説の登場人物をTシャツ・SNSスタンプに使えるか――キャラクター,翻案権及び二次的著作物の新規部分(AI作成)で整理する。

第6 誰が誰に何を請求できるか

権利行使を検討するときは、作品単位ではなく、対象行為ごとに次の順で整理する。

①侵害された表現は、共同著作物、各人の分離可能な著作物又は二次的著作物のどこに属するか
②その表現について著作者・著作権者・共有者・原著作者は誰か
③複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻案等のどの支分権が問題か
④侵害行為は継続中又は再発のおそれがあり、差止めの対象となるか
⑤既に終了した行為について損害賠償又は不当利得返還が可能か
⑥請求者が単独で請求できる範囲か、共同著作者全員の合意が必要か

物の引渡しや作品データの譲渡が終わっている場合でも、複製物の販売、掲載又は配信が続いていれば差止めの余地がある。他方、問題となる侵害行為が既に終了し、反復のおそれもない場合は、差止めではなく損害賠償等が中心となる。被告ごと、行為ごと、時点ごとに救済を分ける。

第7 契約・証拠のチェックリスト

共同制作開始時には、①創作担当、②成果物の単位、③著作者表示、④著作権の帰属・持分、⑤利用許諾の窓口、⑥翻案・改変・商品化、⑦第三者素材、⑧原データ・制作履歴、⑨報酬・収益配分、⑩侵害対応費用、⑪離脱・死亡・連絡不能時及び⑫紛争解決を文書化する。

紛争時には、草稿、レイヤー付きデータ、コミット履歴、電子メール、チャット、録音、作業日時、使用機材、素材入手先、契約書、請求書及び公表履歴を保存する。完成物だけでは、誰がどの表現を創作し、寄与を分離利用できるかを立証できないことがある。

第8 一次資料と確認範囲

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非享受目的の著作物利用はどこまで許されるか――複製,上映,著作権法30条の4及び49条1項2号(AI作成)

目次

第1 結論第2 行為を複製と上映に分ける第3 著作権法30条の4の要件第4 上映権と「公に」の要件第5 目的外使用と49条1項2号第6 実務上の確認表第7 AI学習等との関係第8 関連記事第9 出典と確認範囲

第1 結論

著作物を試験、解析又は技術開発のために端末へ記録し、その後に人へ見せた場合は、全体を一つの「利用」として扱わず、少なくとも①端末への記録という複製、②画面での再生という上映、③その後の目的変更を分けて検討する。

非享受目的の複製が著作権法30条の4で許されても、その複製物を後に鑑賞のために利用すると、同法49条1項2号により複製を行ったものとみなされ得る。30条の4を一度満たせば、その複製物を後の目的で自由に使えるわけではない。

第2 行為を複製と上映に分ける

著作権法21条は複製権、22条の2は上映権を定める。映像等をタブレット、サーバー又は記録媒体へ保存する行為は複製として検討し、保存された映像を画面で再生する行為は上映として検討する。

同じ端末を使う一連の行為でも、支分権、要件及び権利制限規定は同じとは限らない。行為ごとに「誰が、いつ、どの著作物を、どの方法で、何人に、何の目的で利用したか」を表にする。

第3 著作権法30条の4の要件

著作権法30条の4は、著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し、又は他人に享受させることを目的としない場合に、必要と認められる限度で、方法を問わず著作物を利用できると定める。

確認すべき要件は、①利用時の目的が非享受目的か、②利用がその目的に必要な限度か、③著作物の種類・用途と利用態様に照らして著作権者の利益を不当に害しないか、である。文化庁は、技術開発の試験、情報解析、人の知覚による認識を伴わない電子計算機処理等を例示している。

名称だけで判断せず、実際に人が表現内容を鑑賞することが予定されていたかを確認する。非享受目的と鑑賞目的が併存する場合には、30条の4が適用されないことがある。

第4 上映権と「公に」の要件

上映権は、著作物を公に上映する権利である。そこで再生行為については、まず「公に」に当たるかを検討する。著作権法2条5項は、「公衆」に特定かつ多数の者を含むと定める。

少人数であれば常に公衆でないとはいえず、参加者の特定性、人数、相互の人的結合、利用主体との関係及び利用の継続性を具体的に確認する。複製が適法であっても、上映が別に権利侵害となる可能性がある。

第5 目的外使用と49条1項2号

著作権法49条1項2号は、30条の4の適用を受けて作成された複製物を用い、その著作物の思想又は感情を享受し、又は他人に享受させる目的で利用した者を、21条の複製を行ったものとみなす。

したがって、試験・解析用に適法に保存したファイルを、その後、説明会、顧客へのデモ、職員の鑑賞又は宣伝等へ転用する場合は、当初の複製だけでなく目的外使用を再確認する。別の権利制限規定、許諾又は引用等の要件が満たされるかも行為別に検討する。

第6 実務上の確認表
行為主な権利主な確認事項
端末・サーバーへの保存複製権非享受目的、必要限度、権利者利益への不当な害
画面・プロジェクターでの再生上映権公衆性、参加者、場所、目的
保存物の後日の転用49条のみなし複製、利用態様に応じた支分権当初目的からの変更、許諾又は別の権利制限

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製造方法で特定された物の特許(PBPクレーム)―権利範囲・明確性・侵害立証(AI作成)

目次第1 PBPクレームとは何か第2 平成27年最高裁判決の二つのルール1 権利範囲は物の構造・特性等で捉える2 明確性には不可能・非実際的事情を要する3 知財高裁「無洗米」事件が示した補足4 千葉補足意見と山本意見第3 出願・審査段階の実務第4 侵害訴訟で確認する事項第5 無効主張・訂正と契約実務第6 証拠収集のチェックリスト第7 一次資料と確認状況
第1 PBPクレームとは何か

プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(PBPクレーム)とは,物の発明に係る請求項に,その物の製造方法が記載されている請求項をいう。
例えば,「工程A及び工程Bを経て得られる物X」のように,物を構造又は特性だけで表現せず,製造工程を用いて特定する場合である。

PBPクレームでは,①特許権の効力が工程A・Bで実際に製造された物だけに及ぶのか,②製造方法の異なる同一物にも及ぶのか,③そもそも請求項が明確性要件を満たすのかが問題となる。
「物の発明」と「物を生産する方法の発明」は別のカテゴリーであるため,請求項の文言だけでなく,発明のカテゴリーを最初に固定する必要がある。

第2 平成27年最高裁判決の二つのルール
1 権利範囲は物の構造・特性等で捉える

最高裁平成27年6月5日第二小法廷判決(平成24年(受)第1204号,民集69巻4号700頁)は,物の発明について特許がされている場合,その特許権の効力は,当該物と構造,特性等が同一である物であれば,製造方法にかかわらず及ぶとした。
したがって,PBPクレームの技術的範囲は,原則として,請求項に記載された製造方法で実際に製造された物だけに限定されない。

侵害判断では,被疑侵害品がどの工程で製造されたかだけを見るのではなく,特許請求項が特定する物と,被疑侵害品の構造・特性等が同一かを検討する。
製造工程の相違は無関係になるという意味ではなく,構造・特性の同一性又は相違を推認する証拠として重要になることがある。

2 明確性には不可能・非実際的事情を要する

最高裁平成27年6月5日第二小法廷判決(平成24年(受)第2658号,民集69巻4号904頁)は,PBPクレームに係る発明の要旨も,製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として認定するとした。
その上で,物の発明に係る請求項へ製造方法を記載したものが特許法36条6項2号の明確性要件に適合するのは,出願時において,当該物を構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られるとした。

このため,PBPクレームは,権利範囲を製造方法に限定して明確にする便利な書き方ではない。
広い物同一説によって権利範囲を捉える一方,第三者の予測可能性を確保するため,請求項の明確性を厳格に審査するという組合せで理解すべきである。

3 知財高裁「無洗米」事件が示した補足

知財高裁平成29年12月21日判決(平成29年(行ケ)第10083号)は,最高裁平成27年判決の不可能・非実際的事情を確認した上で,請求項に製造方法が記載されていても,請求項,明細書,図面及び技術常識から,その方法が表す物の構造又は特性を一義的に明確に理解でき,第三者の利益が不当に害されない場合には,明確性要件に反しないと判断した。

もっとも,製造方法を書けば不可能・非実際的事情がなくても常に許されるという一般的な例外を示したものではない。問題となる文言が実質的に物の構造・特性を明確に表しているか,それとも製造方法によって物を特定しているため構造・特性の範囲が不明確かを,請求項ごとに確認する必要がある。出願実務では,最高裁判決と特許庁の現行審査運用を前提に,PBP該当性と不可能・非実際的事情の資料をなお準備すべきである。

4 千葉補足意見と山本意見

平成27年の2判決には,いずれも千葉勝美裁判官の補足意見と山本庸幸裁判官の意見が付されている。

千葉裁判官の補足意見は,平成16年の特許法改正で104条の3が創設され,無効の抗弁の前提となる発明の要旨認定と特許発明の技術的範囲の確定とが同一の訴訟手続で審理されるようになったことから,両場面におけるPBPクレームの解釈,処理の基本的な枠組みは統一的に捉えるべきであるとする。
また,米国では侵害の場面でPBPクレームの範囲を製造方法に限定する判断が示されていることに触れ,最高裁の判断枠組みがこれと異なる面を持つことを述べている。

山本裁判官の意見は,差戻しには賛成しつつ理由を異にし,平成6年の特許法改正の経緯からすれば,特許請求の範囲に何を記載するかは基本的に特許出願人の自由な選択に委ねられているとする。
その上で,PBPクレームであることなどの手続的な事項を根拠に不明確として拒絶・無効理由とすることには慎重であるべきとし,技術的範囲については,出願の経緯等からこれを限定的に解釈する可能性を審理すべきであるとしている。
PBPクレームの明確性や技術的範囲を争う側は,多数意見に加えて両裁判官の個別意見の論理も確認しておくとよい。

第3 出願・審査段階の実務

出願時には,まず,問題となる文言が本当にPBPクレームに当たるかを確認する。
特許庁は,「溶接部」「焼結体」「PEG化されたタンパク質」等のように,製造を想起させる表現であっても,技術常識上,物の構造又は特性を表す用語として定着している場合や,単に状態を示して構造又は特性を特定しているにすぎない場合があることを示している。

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固定カメラ映像・編集映像の著作物性――撮影の工夫,シーンの選択・配列及び類似映像(AI作成)

目次

第1 結論
第2 固定カメラだから当然に著作物でないとは限らない
第3 原映像と編集映像を分ける
第4 創作性を基礎付ける具体的な選択
第5 同じ場所・画角・順序で別に撮影した映像
第6 誰が著作者・権利者になるか
第7 主張し得る権利と請求
第8 撮影・編集時に保存する資料
第9 関連記事
第10 出典

第1 結論

固定カメラで自動撮影した映像であっても、直ちに著作物性が否定されるわけではない。しかし、希少な対象が映ったこと、撮影に長時間を要したこと、機材が高価であったこと又は商業的価値が高いことだけでは、著作権法上の創作性を基礎付けない。

最初に、撮影場所、カメラ位置・角度、画角、レンズ、光、撮影開始時期等について撮影者の個性が表れているかを確認する。次に、長時間の原映像から特定のシーンを選び、長さを決め、時系列と異なる順序で配置した編集映像について、選択・配列・映像の変化に別個の創作性があるかを確認する。原映像と編集映像は、著作物性、著作者、保護される表現及び侵害判断が異なり得る。

第2 固定カメラだから当然に著作物でないとは限らない

著作権法2条1項1号は、著作物を、思想又は感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものと定義する。同法10条1項7号は映画の著作物、同項8号は写真の著作物を例示する。

文化庁の令和2年著作権法改正資料は、写り込みに関する説明の中で、創作性が認められない行為の例として固定カメラでの撮影を挙げる。この記載は、固定カメラ映像の全てに著作物性がないという一律の判断ではない。撮影前に表現上の選択がされた事案と、記録目的で機械的・定型的に設置された事案を区別する必要がある。

写真について、知的財産高等裁判所令和元年12月26日判決は、構図、陰影、画角、焦点位置及びシャッターチャンス等の工夫に個性が表れ得ることを示している。動画でも、撮影者が選択できた事項と、対象の偶然の動き又は撮影機器が自動的に決めた事項を分ける。

第3 原映像と編集映像を分ける
対象主な創作性の候補侵害判断で比較するもの
長時間の原映像撮影場所、位置、角度、画角、レンズ、光、撮影時期その他の撮影設計実際の映像表現、フレーム又は連続部分
原映像から抜き出した静止画元フレームの構図等に加え、どの瞬間・範囲を切り出したか切り出された具体的画像
短く編集した映像シーンの選択、各シーンの長さ、順序、接続、音、字幕、速度等選択・配列による映像の展開と個々の創作的部分

東京高等裁判所平成16年7月26日判決(平成14年(ネ)第6311号)は、連続映像について、各映像自体の創作性だけでなく、その組合せ・配列により表現される映像の変化も保護対象となり得るとした。したがって、原映像の著作物性が弱い又は争われる場合でも、編集映像の選択・配列に独立した創作性が認められる可能性がある。

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職務発明の発明者は誰か――上司の指示,実験担当者,共同発明者及び相当の利益(AI作成)

目次

第1 結論
第2 発明者、権利者及び職務上の役職は別である
第3 発明者を判断する基本枠組み
第4 上司、実験担当者及び共同研究者をどう区別するか
第5 共同発明者の判断
第6 出願後に発明者表示を訂正する手続
第7 職務発明規程と相当の利益
第8 紛争時に保存・確認する資料
第9 出典

第1 結論

職務発明の発明者は、部長、研究責任者、実験担当者又は特許出願書類の発明者欄に記載された者という形式だけでは決まらない。まず特許請求の範囲と明細書から発明の特徴的部分を特定し、その特徴的部分について、誰が技術的課題と解決手段を着想し、又はその着想を実施可能な程度まで具体化する創作活動に関与したかを確認する。

一般的な研究テーマを与えただけの管理者、決められた条件で機械的に実験しただけの補助者、資金・設備を提供しただけの後援者は、通常、それだけでは発明者にならない。他方、上司であっても具体的な解決手段を着想し、部下と一体的・連続的に具体化した場合は、共同発明者になり得る。実験担当者も、実験を通じて予想外の課題を発見し、条件・構成を創作的に選択して発明を完成させた場合には、発明者又は共同発明者になり得る。

第2 発明者、権利者及び職務上の役職は別である

特許法2条1項は、発明を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義する。発明者は、この技術的思想の創作を行った自然人である。

これに対し、特許を受ける権利又は特許権は、契約、勤務規則、譲渡その他の原因により会社等へ帰属し得る。したがって、次の三つを分ける必要がある。

区分判断対象主な資料
発明者技術的思想の創作に現実に関与した自然人研究ノート、実験計画、メール、会議資料、発明届
特許を受ける権利・特許権の帰属者発明時の帰属条項、譲渡、共同研究契約等職務発明規程、雇用契約、譲渡証書、共同研究契約
出願書類の発明者表示願書に記載された氏名願書、手続補正書、宣誓書、変更理由書

願書の発明者欄は重要な資料であるが、その記載だけで実体上の発明者性が創設されたり、創作に関与していない者が発明者になったりするわけではない。

第3 発明者を判断する基本枠組み

東京地方裁判所平成19年10月30日判決(平成17年(ワ)第1238号)は、特許請求の範囲を基準とし、明細書の発明の詳細な説明も参酌して技術的思想を把握した上で、その創作に具体的に貢献・加担したかを検討するとした。

知的財産高等裁判所平成27年3月25日判決(平成25年(ネ)第10100号)は、発明の特徴的部分を当業者が実施できる程度まで具体的・客観的なものとして構成する創作活動に関与した者を発明者と捉えている。

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出版取次の本がAI学習に使われたら―日販・Anthropic報道,譲渡権の消尽,再販契約及び米国Bartz事件の裁判資料(AI作成)

目次第1 本記事の結論1 結論2 基準日と資料の性質第2 報道された事実1 朝日新聞の報道2 日経ビジネスの報道第3 米国の裁判資料で確認できること1 Bartz事件と封印解除2 社内会議メモに記載された「Nippan Japan」3 日本語書籍の書誌の取込み4 他の取次・書店との取引5 裁判資料から分からないこと第4 米国の裁判所の判断1 フェアユース命令の三つの区分2 和解の範囲第5 日本法の論点―本を売ること1 譲渡権の消尽2 出版社と取次の取引契約3 再販売価格維持契約第6 日本法の論点―スキャンと学習1 準拠法2 日本で行われた場合の著作権法30条の43 私的使用の複製(30条1項)との違い第7 当事者ごとの実務1 出版社2 取次・書店3 AI事業者第8 まとめ第9 出典1 法令2 裁判例3 米国の裁判資料4 公的資料5 報道6 関連記事
第1 本記事の結論
1 結論

令和8年9月18日,出版取次大手の日販グループが米国のAI開発企業Anthropic社に大量の書籍を販売していたとして,日本書籍出版協会(書協)が日販に事実確認を求める書面を送ったと報じられた。
報道の根拠となった米国の裁判資料を確認すると,Anthropic社の社内会議メモに「Nippan Japan」との書籍購入契約が令和6年11月21日に締結された旨の記載がある。
他方で,購入した冊数,単価,金額及び書籍の種類は黒塗りであり,日販にどのような用途が告げられていたかも,裁判資料からは分からない。

日本法の観点からは,次の3点を分けて考える必要がある。
①出版社が流通に置いた本を取次が転売すること自体は,譲渡権の消尽(著作権法26条の2第2項1号)により,著作権の問題になりにくい。
②転売先・用途・価格をめぐる問題は,出版社と取次の間の取引契約と再販売価格維持契約の問題であり,契約書の条項によって結論が変わる。
③購入した本の裁断・スキャンと学習は,それが行われた国の著作権法で判断されるのが原則であり,米国で行われたのであれば米国法(フェアユース)の問題になる。

米国の連邦地裁は,購入した紙の本を裁断・スキャンして電子化した行為をフェアユースと判断し,その後の15億ドルの和解も,購入した本のスキャンによる学習を対象外としている。
したがって,「本を買ってスキャンし,学習に使う」という経路は,米国では法的に閉じられていない。
出版社がこの経路に対応するには,取引契約での転売先・用途の定めと,AI学習用のライセンス市場の形成という,契約と市場の手段によることになる。

2 基準日と資料の性質

本記事は,令和8年9月19日現在の公開資料に基づく。
法令の条文は同日にe-Gov法令検索で確認した現行条文により,日本の裁判例は裁判所ウェブサイトで実在と該当箇所を確認したものを用い,関連する裁判例の有無は判例秘書でも検索した。
米国の裁判資料は,裁判記録を再公開するCourtListenerのPDFで本文を確認したものであり,PACERの認証済み写しではない。

朝日新聞と日経ビジネスの記事は,いずれも有料部分がある。
朝日新聞の記事は,Yahoo!ニュースに転載された全文で内容を確認したが,日経ビジネスの記事は有料部分を確認していない。
書協の書面と日販の回答書は公表されておらず,本記事は報道の記載によっている。

本記事の作成には,本件の当事者であるAnthropic社の生成AIを用いている。
そのため,裁判資料と報道の記載に即して記述し,いずれかの当事者に有利又は不利な評価を加えないよう注意した。

第2 報道された事実
1 朝日新聞の報道

朝日新聞(令和8年9月18日)によれば,書協は日販に対し,Anthropic社に渡った書籍に加盟出版社の発行物が含まれていたか,含まれていた場合の詳細,出版社の了承なく海外業者に大量販売した場合の法的整合性等の説明を求めた。
あわせて,AI学習を目的とする書籍の新たな販売の取りやめと,AI学習目的の書籍供給についての考え方の表明も求めたとされる。

同記事は,作家らがAnthropic社を訴えた米国の著作権侵害訴訟の裁判資料に,日販とみられる「Nippan Japan」の記述が複数回登場すると報じている。
日販は同紙の取材に対し,個別取引については取引の有無を含めて回答を差し控えるとした上で,「AI企業の学習向け用途と認識したうえで販売した事実はない」などと回答したとされる。

令和8年9月19日現在,書協と日販の各ウェブサイトに,本件に関する発表は見当たらない。

2 日経ビジネスの報道

(続きを読む...)出版取次の本がAI学習に使われたら―日販・Anthropic報道,譲渡権の消尽,再販契約及び米国Bartz事件の裁判資料(AI作成)

判例データベースを法律事務所の生成AI・RAGに使えるか―判決本文・判例要旨・利用規約の分け方(AI作成)

第1 本記事の対象と結論

1 検討対象
2 結論

第2 法律情報を構成する四つのデータ層

1 裁判所の判決,決定,命令及び審判
2 裁判所が付した書誌情報及び編集
3 民間の判例要旨,解説,headnote及び分類体系
4 データベース全体の選択又は体系的構成

第3 日本の著作権法で確認する規定

1 著作権法13条
2 著作権法12条の2
3 著作権法30条の4
4 著作権法47条の5

第4 利用行為を六つに分けること

1 閲覧及び検索
2 ダウンロード,OCR及びローカル保存
3 RAG及び埋込みベクトル化
4 事前学習,追加学習及び評価
5 回答,要約,引用及び公開
6 ログ,バックアップ及び契約終了後の残存物

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Google Maps・Google Earth・Street Viewを資料・ブログ・動画で使う条件-印刷,埋込み,スクリーンショット及び広告(AI作成)

目次第1 結論1 三つの製品を同じルールで扱わない2 迷ったときの安全な順序第2 最初に確認する法的な層1 日本の著作権法とGoogleの利用条件を分ける2 Googleの「fair use」という説明を日本法の引用と混同しない3 利用時点の版と証拠を保存する第3 媒体別の早見整理1 印刷資料2 ウェブサイト及びアプリ3 デジタル広告及びSNS4 テレビ,映画及びオンライン動画第4 Google Mapsの具体的な使い方1 法律事務所内の検討資料及び依頼者向け資料2 事務所案内,セミナーチラシ及び名刺3 スクリーンショットへの書込み第5 Google Earth及び衛星画像の注意点1 研究・教育と営業・販売促進を分ける2 衛星表示をGoogle Mapsの通常地図と同一視しない3 3Dモデルその他の派生利用をしない第6 Street Viewの注意点1 印刷及びスクリーンショットは禁止されている2 ウェブでは埋込み又はAPIを使う3 人物・住居・車両等のプライバシーを別に確認する第7 裁判資料及び法律事務所での利用例1 準備書面・証拠説明資料へ場所を示す場合2 講演資料及び配布レジュメ3 法律事務所ブログ及びSNS第8 帰属表示と画像加工1 表示中のGoogle及び第三者提供者を残す2 切除・隠蔽・末尾への移動をしない3 APIでは新しいGoogle Maps表示要件を確認する第9 掲載・配布前のチェックリスト1 対象と媒体2 取得・加工・帰属表示3 内容の正確性と第三者権利第10 確認結果の位置付け1 確認できたこと2 確認していないこと第11 関連する山中弁護士ブログの記事1 リンク・埋込みと著作権2 資料作成一般の権利処理第12 出典1 Googleの公式条件2 日本法の一次資料・公的資料
第1 結論
1 三つの製品を同じルールで扱わない

Google Maps,Google Earth及びStreet Viewは,いずれも地理情報を表示するサービスであるが,Googleが公表する利用条件は同じではない.
弁護士が準備書面,証拠説明資料,依頼者向け資料,講演資料,ブログ,SNS又は動画で地図画像を使うときは,①製品,②通常地図・航空写真・衛星画像・Street Viewの別,③印刷・ウェブ・動画等の媒体,④商業又は販売促進目的,⑤埋込み・リンク・スクリーンショット・APIの別,⑥表示される帰属表示を固定して判断する必要がある.

Googleの現行Geo Guidelinesを大づかみに整理すると,Google Mapsは一定の印刷,ウェブ埋込み及び非販売促進のオンライン動画で利用しやすい一方,Google Earthは商業又は販売促進目的での利用が強く制限され,Street Viewは印刷利用及びスクリーンショットの切出しが認められていない.
「Googleの地図だから使える」,「出典を書けば足りる」,「裁判資料だから自由に使える」という一括判断はできない.

2 迷ったときの安全な順序

場所又は経路を知らせるだけなら,第一にGoogle Mapsへの通常のリンク又はGoogleが提供する埋込み機能を検討する.
紙面では短縮リンク又はQRコードでGoogle Mapsの場所へ誘導する方法も,Googleが許容例として挙げている.

画像が本当に必要な場合は,Google Mapsの通常地図を基本とし,利用目的に必要な範囲でスクリーンショット又はGoogle提供機能を使い,画面に表示されたGoogle及び第三者データ提供者の帰属表示を残す.
Google Earth又は衛星画像は商業・販売促進用途かを先に確認し,Street Viewは画像を切り出さず,ウェブでは埋込み又はAPI,映像では端末上の製品をそのまま操作する場面に限定する.

本記事は令和8年9月16日現在のGoogle公式ページ及び日本の著作権法を基準にしている.
Googleの規約及びガイドラインは変更され得るため,実際の利用直前に対象製品,媒体及び表示中の帰属表示を再確認する必要がある.

第2 最初に確認する法的な層
1 日本の著作権法とGoogleの利用条件を分ける

著作権法10条1項6号は,地図及び学術的な性質を有する図面,図表,模型その他の図形の著作物を例示している.
地理上の位置,道路の存在,距離その他の事実それ自体と,情報の取捨選択,縮尺,記号,配色,注記,写真又は画像の表現は分けて考える必要がある.

スクリーンショットの保存又は印刷は複製権,ブログ掲載は公衆送信権,加工又は大幅な描き替えは翻案権又は同一性保持権との関係が問題となり得る.
引用その他の権利制限が成立する場合はあるが,画像を装飾又はアイキャッチとして置くことは,説明・批評・検証のための引用であるとの説明が難しい.

これに対し,GoogleのGeo Guidelines,Google Maps追加利用規約,Google Earth追加利用規約及びGoogle Maps Platformの規約・技術文書は,Googleが提供する製品を利用する際の許諾・契約・運用条件である.
日本法上の権利制限規定とGoogleの条件は別の層であり,一方の確認だけで他方の問題がなくなるわけではない.

2 Googleの「fair use」という説明を日本法の引用と混同しない

GoogleのGeo Guidelinesは,米国法上のfair useその他の各国の類似概念により利用できる場合があると説明し,Google自身はfair useに該当するか判断できないとしている.
日本で利用する場合は,この記載自体が著作権法32条の引用を認めるものではない.

引用を根拠とするときは,公表された著作物であること,公正な慣行に合致すること,引用目的上正当な範囲であること,本文と引用部分を明確に区別すること,自分の説明が実質的な本体であること及び著作権法48条による出所明示を確認する.
契約への同意,APIの利用条件,技術的制限及び帰属表示は,法定引用とは別に検討する.

3 利用時点の版と証拠を保存する

令和8年9月16日確認時点で,Google Maps End User Additional Terms of Serviceは令和8年1月27日最終更新,Google Earth End User Additional Terms of Serviceは令和7年6月4日最終更新と表示されている.
Geo Guidelinesには媒体別の具体例があり,Google Maps Platformのサービス別条件及びAPIの表示要件は別ページで更新されている.

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ウェブ上のリンク・YouTube・X埋込みと著作権―リツイート最高裁判決を含む(AI作成)

目次第1 リンク・埋込み・転載を分けて検討する第2 操作と権利の対応第3 YouTube・Xの公式埋込み機能1 現在のXの表示を確認する方法第4 リツイート最高裁判決1 事案と多数意見2 補足意見・反対意見との区別3 判決を一般化しすぎない4 大阪地裁平成25年6月20日判決との違い第5 スクリーンショットと引用第6 公開前の確認と関連記事第7 出典
第1 リンク・埋込み・転載を分けて検討する

ウェブ記事に他人の資料を紹介する際は,URLへの通常のリンク,公式プレーヤー等による埋込み,画像や文章を自分のサーバーへ保存して公開する転載を区別する必要がある。
技術的な操作が異なる以上,著作権法上の評価も同じとは限らない。
本記事は,日本法上の基本的な区別と,最高裁令和2年7月21日第三小法廷判決の射程を説明する。

第2 操作と権利の対応

操作
主な確認事項

文字の通常リンク
リンク先,紹介文,違法な利用への関与の有無

公式機能による埋込み
投稿元の権限,サービス条件,画面上の表示態様

画像を保存して再掲載
複製・公衆送信についての許諾又は権利制限

スクリーンショットの掲載
写り込んだ著作物,引用の要件,氏名・プライバシー

著作権法21条は複製権を,23条は公衆送信権等を定める。
単にリンクであるという呼称だけで,何も複製していない,又はいかなる責任も生じないと判断してはならない。
画像の保存場所,表示の仕組み及び自分が行った操作を確認することが出発点となる。

第3 YouTube・Xの公式埋込み機能

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ファイル共有ソフトの不適切な利用による著作権侵害-BitTorrentの自動アップロード,発信者情報開示及び意見照会への対応(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 先に確認すべき結論第2 ダウンロードと自動アップロードの法的な違い1 BitTorrent方式で同時に生じ得る送受信2 アップロード側で問題となる公衆送信権3 ダウンロード側で問題となる複製権第3 民事責任,刑事責任及び期間制限1 差止めと損害賠償2 刑事責任3 損害賠償請求権の消滅時効第4 発信者情報開示と意見照会1 開示要件と手続2 意見照会書の意味3 不同意回答だけでは開示を止めない第5 裁判例が示す判断の分岐1 責任の対象と損害期間2 開示で争われる通信と証拠第6 意見照会書を受け取った側の初動1 新たな共有の停止と証拠の保全2 事実関係を時系列で確認する3 回答方針を決める第7 権利者側の立証と調査の停止基準1 最低限そろえるべき証拠の連鎖2 追加調査を止めて判断に移る基準第8 家庭及び事業者の再発防止1 家庭での再発防止2 事業者での再発防止第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 所管行政機関の解説・Q&A4 民間協議会のガイドライン及び書式
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

本記事は,BitTorrent方式のファイル共有ソフトを利用した後,インターネット接続事業者から発信者情報開示に関する意見照会書を受け取った加入者を主な対象とし,令和8年9月14日現在の法令及び公開裁判例に基づいて説明するものである。
BitTorrentは通信方式であって,その利用自体が直ちに違法となるわけではないが,著作権者の許諾を得ない著作物の取得及び共有には民事上又は刑事上の責任が生じ得る。

2 先に確認すべき結論

BitTorrent方式では,ファイルの断片を他の参加者から受信する一方で,既に受信した断片を他の参加者へ送信できる状態になることがある。
そのため,本人がダウンロードだけをしたつもりでも,ソフトの設定及び稼働状況によっては,著作権法上の複製に加えて,送信可能化又は自動公衆送信が問題となる。

意見照会書を受け取った場合,直ちに同意又は不同意の結論だけを返すのではなく,対象作品,日時,IPアドレス,ポート番号,ファイルの識別情報,契約者と実際の利用者との関係及び端末の状態を確認する必要がある。
単に開示に同意しないと回答しても,法律上の開示要件が満たされると裁判所が判断すれば,発信者情報が開示されることがある。

第2 ダウンロードと自動アップロードの法的な違い
1 BitTorrent方式で同時に生じ得る送受信

BitTorrent方式では,一つの完成ファイルを単一の送信元から受け取るのではなく,複数の参加者間で分割されたデータを交換して完成させる仕組みが一般的である。
利用者の端末が受信済みのデータを他の参加者へ送信できる状態に置かれれば,受信行為と送信側の行為を分けて検討しなければならない。

もっとも,ソフトの名称,インストール歴又はインターネット契約者であるという事実だけで,特定作品についての送信可能化及び自動公衆送信が当然に証明されるものではない。
問題となる作品の同一性,観測された通信の内容,観測日時,IPアドレスと契約者の対応,利用端末及び実際の利用者を証拠に即して確認する必要がある。

2 アップロード側で問題となる公衆送信権

著作権法23条は,著作者がその著作物について公衆送信を行う権利を専有し,自動公衆送信の場合には送信可能化を含むものとしている。
著作権者の許諾なく作品のデータを不特定又は多数の参加者が取得できる状態に置き,実際に他の参加者へ送信した場合には,この権利の侵害が問題となる。

家庭内で見るために取得したという目的は,アップロード側の公衆送信を当然に適法化するものではない。
私的使用のための複製に関する例外と,不特定又は多数の者に向けた送信に関する権利は,分けて判断する必要がある。

3 ダウンロード側で問題となる複製権

著作権法21条は複製権を定め,同法30条1項本文は個人的又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲で使用するための複製を一定範囲で認めている。
しかし,同項3号及び4号は,違法に自動公衆送信された録音又は録画をその事実を知りながらデジタル方式で複製する場合や,それ以外の著作物について違法な自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製をその事実を知りながら行う場合を,私的使用の例外から除外している。

録音又は録画以外の著作物については,著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合や,軽微な部分の複製に関する除外も定められているため,著作物の種類,取得部分及び認識を確認する必要がある。
文化庁の令和2年改正著作権法Q&Aも,違法にアップロードされたことを知らないダウンロード等まで一律に規制するものではないと説明している。

第3 民事責任,刑事責任及び期間制限
1 差止めと損害賠償

著作権者は,著作権法112条に基づき,侵害の停止若しくは予防又はそのために必要な措置を請求できる場合がある。
また,故意又は過失によって権利を侵害し損害を生じさせた場合には,民法709条に基づく損害賠償責任が問題となり,損害額については著作権法114条の算定規定及び同法114条の5の相当な損害額の認定に関する規定が適用され得る。

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AI生成画像・動画を法律事務所サイトで使う際の注意点-AI生成表示,弁護士広告,著作権・肖像権,守秘及び制作記録(AI作成)

第1 結論1 AI生成表示だけでは足りない2 五つの確認層第2 AI生成であることの表示1 通常の法律事務所サイトと表示義務2 表示するかは誤認リスクから決める3 表示文例と表示場所第3 弁護士広告としての確認1 画像と文章を一体として見る2 架空の人物・相談場面・解決場面3 広告内容を裏付ける記録第4 著作権の確認1 入力素材と生成指示2 出力とウェブ公開3 AI生成物を自ら保護できるか4 サービス規約の商用利用許可第5 肖像権・パブリシティ権の確認1 写真だけでなく識別できる似姿にも注意する2 架空の人物という指示だけでは足りない3 著名人の顧客吸引力を広告に使わない第6 守秘義務・個人情報の確認1 実在事件の事実を入力しない2 利用規約・データフロー・設定を確認する3 外部制作者にも同じ基準を適用する第7 制作記録と来歴情報1 保存する制作記録2 電子透かし・来歴情報の限界3 公開後の差替えと事故対応第8 掲載前後の実務チェック1 生成前2 掲載前3 掲載後第9 関連する記事1 肖像・パブリシティ・AI証拠2 個人情報・生成AI契約第10 出典1 法令・国会資料2 裁判例3 政府の指針・注意喚起4 職能団体の規程・委員会資料・技術資料
第1 結論
1 AI生成表示だけでは足りない

法律事務所がAI生成画像又はAI生成動画をウェブサイトに掲載するときは,「AIで作った」と表示するだけでは足りない。
表示は閲覧者の誤認を減らす一つの手段であるが,第三者の著作権・肖像権を消滅させず,弁護士広告の不正確な印象を正当化せず,守秘義務違反を治癒するものでもない。

実務では,①入力素材,②生成結果,③広告全体の印象,④守秘・個人情報,⑤制作記録を別々に確認し,最後に一つの掲載判断へ統合する必要がある。
特に,実写と見分けにくい人物画像又は動画は,架空の人物であっても,実在する依頼者,職員,弁護士,裁判所又は取扱実績を撮影したものと受け取られないかを確認すべきである。

本記事は,令和8年9月9日現在の日本法及び公表資料に基づく一般的な整理である。
個別の画像・動画,利用規約,広告文言及び掲載ページの構成によって結論は変わり得る。

2 五つの確認層
確認層主な確認事項表示だけでは解決しない理由
入力素材参照画像,写真,ロゴ,文章,プロンプトの権原無断入力又は類似物を作る目的の入力が問題になり得る
生成結果既存著作物との類似性・依拠性,実在人との識別可能性AI生成であることは侵害判断の免責事由ではない
弁護士広告実在の職員・依頼者・取扱実績・結果との誤認広告は画像,見出し,本文,配置を含む全体の印象で受け取られる
守秘・個人情報事件情報,依頼者情報,入力後の保存・学習・再利用公開画像が架空でも,制作時の入力で秘密が外部処理され得る
制作記録規約,プロンプト,候補,編集,承認,掲載版表示の正確性,権利確認及び差替え理由を後から説明する必要がある

第2 AI生成であることの表示
1 通常の法律事務所サイトと表示義務

本記事で確認したAI法及び人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針は,通常の法律事務所サイトに掲載する全てのAI生成画像・動画について,一律の可視表示義務又は統一文言を定めているわけではない。
もっとも,同指針は,透明性,アカウンタビリティ,プライバシー・個人情報及び知的財産への配慮を掲げ,AIの用途とリスクの影響度に応じた対応を求めている。

経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は,AI利用者に対し,関係する者の性質に応じた合理的な範囲で,適正な利用方法を含む情報を平易かつアクセスしやすい形で提供することを掲げている。
ただし,これは法律事務所サイトの全てのAI生成画像・動画について,特定の文言又は表示場所を一律に定める法令ではない。

他方,表示義務が特定の場面で法制化される例もある。
令和8年法律第58号は,選挙運動又は一定期間の落選運動に使うインターネット上の文書図画について,社会通念上軽微な改変又は実写と誤認されるおそれのないものを除き,AIを利用して作成・改変した画像又は映像である旨の表示を求め,令和9年3月1日から施行される。

したがって,「日本法にはAI生成表示の義務がない」と一般化するのは正確でない。
通常の法律事務所サイトでは,法令の適用範囲に加え,利用するサービス・媒体の規約,広告の文脈及び閲覧者の誤認可能性を確認して表示方法を決める必要がある。

海外向けにサービスを提供し,又は海外事業者の生成サービスを調達する場合は,日本の表示規律だけでは判断できない。
EUでは提供者の機械可読の表示と利用者によるディープフェイク等の開示が別の義務であり,中国の表示弁法では可視表示とファイルメタデータを分けて定めている。
また,EUの既存システムに関する経過措置は50条2項の提供者の義務についてのものであり,50条全体が延期されたものではない。
これらの主体・適用日・例外と韓国等の制度は,別稿「EU・アジア主要法域のAI規制を比較―適用日,生成表示,事業者の役割と日本企業の対応」で,令和8年10月5日現在の法令・公式資料に即して整理している。

2 表示するかは誤認リスクから決める

表示の必要性は,AIの利用割合だけでなく,画像又は動画が伝える意味から判断するのが適切である。
実在の依頼者の体験,実際の相談風景,実在する職員,実際の裁判所,現実の解決結果又は現実の報道映像と受け取られる可能性が高いほど,画像又は動画に近接した可視表示を置く必要性が高い。

反対に,抽象的な背景模様,明らかな図解又は現実の場面と誤認されにくい装飾まで,同じ長さの注記を一律に付ける必要性は低いことがある。
ただし,表示を省略する判断をした場合も,制作記録にはAI利用の有無,利用範囲及び省略理由を残すことが望ましい。

3 表示文例と表示場所

全体をAIで生成した写実的な画像又は動画には,例えば次の表示が考えられる。
これは法定文言ではなく,実在の人物・事件・施設であるとの誤認を減らすための表示例である。

※この画像(動画)は生成AIを利用して作成したイメージであり,実在の依頼者,相談者,事件又は裁判所を示すものではない。

実写素材をAIで重要な程度に加工した場合には,例えば次のように,加工であることを示す。
実在人物の写真を用いたときは,この注記とは別に,撮影・加工・公開の同意範囲を確認する必要がある。

※この画像(動画)は生成AIを利用して加工したイメージである。

表示は,画像直下のキャプション又は動画プレーヤーの直近など,閲覧時に気付きやすい場所へ置くのが望ましい。
画像のalt属性,ファイル名又は来歴メタデータだけでは,通常の閲覧者が表示を認識できないことがある。

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スキャン代行は著作権侵害になるか-自炊代行訴訟の確定判決と,許諾なしにできる範囲(AI作成)

第1 この記事の対象と結論1 対象と調査の基準日2 結論3 三つの類型を分けて考える第2 自炊代行訴訟で何が判断されたか1 三つの判決と確定までの経過2 東京地方裁判所平成25年9月30日判決(1) 事業の内容(2) 訴訟前の経緯(3) 複製の主体についての判断(4) 複製物の数は増えていないという主張(5) 結論3 東京地方裁判所平成25年10月30日判決4 知的財産高等裁判所平成26年10月22日判決(1) 判断の枠組みが第一審と異なる(2) 著作権法30条1項の趣旨についての判示(3) 控訴人の主張が排斥された理由(4) 裁判体と判決要旨の誤記5 第一審と控訴審で理由づけが異なる意味第3 誰が責任を負い,何を請求されるか1 差止めの主文は作品を特定したもの2 損害は弁護士費用相当額である3 代表者個人も責任を負う4 刑事責任と親告罪5 依頼した側はどうなるか6 期間制限第4 許諾なしにできる範囲1 自分でスキャンする2 仕事のための複製と他の権利制限3 そもそも著作物でない書類4 保護期間が満了した著作物5 図書館等における複製6 店舗設置型と著作権法30条1項1号7 著作権者の許諾を得る第5 実務上の確認手順1 書籍の電子化を業者に頼みたいという相談を受けたとき2 事務書類の電子化を外注するとき3 利用規約では回避できない第6 残る論点第7 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 所管行政機関の資料4 審議会に提出された関係団体の意見
第1 この記事の対象と結論
1 対象と調査の基準日

この記事は,紙の書籍又は書類を第三者の事業者に預けてスキャンさせ,電子ファイルを受け取る行為(スキャン代行)について,日本の著作権法上どのような評価を受けるかを扱う。
調査の基準日は令和8年9月7日であり,法令の条文は同日現在のe-Gov法令検索で確認した現行条文による。
裁判例は,同日に裁判所ウェブサイトで実在及び全文を確認したものを用いる。
電子帳簿保存法上のスキャナ保存の要件,個人情報保護法上の委託先監督義務及び秘密保持契約上の問題は扱わない。
生成AIの学習のための複製(著作権法30条の4)は主題としないが,第6で,書籍の裁断・スキャンがAI学習の目的で行われる場合との違いに触れる。

2 結論

書籍のスキャン代行は,著作権者の許諾がなければ複製権(著作権法21条)の侵害となる。
これは,東京地方裁判所平成25年9月30日判決,東京地方裁判所平成25年10月30日判決及び知的財産高等裁判所平成26年10月22日判決が一致して判断したところであり,控訴審判決は上告受理申立てが不受理となって確定している。

依頼者が私的使用の目的であっても,この結論は変わらない。
私的使用のための複製を認める著作権法30条1項は,①個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とすること,及び②その使用する者が複製すること,という二つを要件とする。
スキャン代行では複製の主体が事業者であるところ,事業者は営利目的で不特定多数の顧客へ納品するために複製しているから①を欠き,電子ファイルを私的に使用するのは依頼者であって事業者ではないから②も欠く。

自炊代行訴訟が直接判断したのは,利用者の所有する書籍を事業者が裁断・スキャンして電子ファイルを納品する商業サービスであり,許諾なしにできる利用一般を網羅したものではない。
本記事で扱う主要な例としては,自分で私的使用のためにスキャンする場合,対象がそもそも著作物でない場合,保護期間が満了している場合及び著作権法31条の要件を満たす図書館等の複製がある。
仕事のための複製は私的使用に当たらないが,そのことから直ちに常に許諾が必要になるのではなく,対象と利用目的に応じて,他の権利制限,利用規約又は個別許諾を確認する必要がある。

3 三つの類型を分けて考える

「スキャン代行」という同じ語で呼ばれるサービスには,法的な検討事項が異なる三つの類型が含まれている。
同じ語が,書籍の電子化を指して使われることも,事務書類の電子化を指して使われることもある。
どの類型の話をしているのかを最初に確定しないと,判決の射程を誤ることになる。

第一は,利用者が所有する書籍を業者へ送り,業者が裁断してスキャンし電子ファイルを納品する類型であり,いわゆる自炊代行である。
判決が集積しているのはこの類型であって,本記事の第2及び第3は主にこれを扱う。

第二は,企業が保有する契約書,請求書,図面,カルテ等の事務書類を業者へ委託して電子化する類型である。
対象文書に著作物性がなければ著作権法上の問題は生じないが,購読している新聞,購入した書籍,学術論文,規格票等が混在すると別の評価になる。

第三は,店舗に裁断機とスキャナーを設置し,客が自ら作業する類型である。
この類型を直接扱った裁判例は,裁判所ウェブサイトで確認した範囲では見当たらないが,第4の6で述べるとおり別の条文上の論点がある。

第2 自炊代行訴訟で何が判断されたか
1 三つの判決と確定までの経過

小説家,漫画家又は漫画原作者である7名が原告となり,複数のスキャン事業者を被告として提起した訴訟について,東京地方裁判所で二つの判決が言い渡された。

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米国政府はAI学習を「合法」としたのか―OpenAI著作権訴訟と取得・学習・出力の違い(AI作成)

第1 本記事の結論

第2 米国政府意見書の位置付け

1 裁判所の判断ではないこと

2 意見書が主として扱う範囲

第3 取得・保管・学習・出力を分ける理由

1 四つの段階

2 アクセス許可と著作権処理も同じではないこと

第4 米国政府が主張するフェアユース

1 四つの考慮要素

2 学習は高度に変容的であるとの主張

3 市場への影響を狭く捉える主張

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米国チャプター11と知的財産ライセンス――ライセンサー・ライセンシー別の§365対応(AI作成)

目次第1 結論第2 §365の基本構造1 未履行契約であること2 引受け,拒絶及び譲渡第3 債務者がライセンサーである場合1 §365(n)の対象2 ライセンシーの選択3 商標ライセンスとMission Product判決4 SaaS及びソフトウェアの限界第4 債務者がライセンシーである場合1 §365(c)(1)の制限2 仮想テストと実際テスト第5 契約当事者別の実務対応1 ライセンシーの対応2 ライセンサーの対応3 契約締結時の共通チェック第6 主要裁判例第7 本記事の範囲と限界第8 出典1 法令2 裁判例3 実務解説・関連資料

第1 結論

米国のチャプター11で知的財産ライセンスを検討するときは,債務者がライセンサーであるのか,ライセンシーであるのかを最初に分ける必要がある。
その上で,①破産申立て時に未履行契約であったか,②対象が「知的財産」の法定定義に入るか,③契約と適用される非破産法がどの権利を残すか,④事件がどの巡回区で係属するかを確認することになる。

債務者の立場
中心となる条文
第一の確認事項

ライセンサー
11 U.S.C. §365(a),(g),(n)
拒絶後にライセンシーが使用権を維持できるか

ライセンシー
11 U.S.C. §365(b),(c),(f)
契約の引受け又は譲渡にライセンサーの同意が必要か

債務者がライセンサーである場合,特許,著作権,営業秘密等のライセンシーは,拒絶による契約違反を理由に終了を選ぶか,所定の支払と権利放棄を伴って破産申立て直前の契約上の権利を維持するかを§365(n)に基づき選択できる。
ただし,§365(n)は継続的な開発,保守,クラウド運用又はデータ移行を一般的に保証する制度ではない。

商標は11 U.S.C. §101(35A)の「知的財産」に列挙されていないため,§365(n)の法定保護にそのまま入るとはいえない。
もっとも,連邦最高裁のMission Product Holdings, Inc. v. Tempnology, LLC,587 U.S. 370 (2019)は,拒絶の効果を破産外の契約違反と同様に扱い,拒絶だけで既に付与された商標使用権を消滅させることはできないとした。

債務者がライセンシーである場合,契約の引受けにはデフォルトの治癒,金銭損失の補償及び将来の履行に関する十分な保証が問題となる。
さらに,適用される非破産法が第三者への履行又は第三者からの履行の受領を相手方に強いることを許さず,相手方が同意しないときは,§365(c)(1)が引受け又は譲渡を制限する。

第2 §365の基本構造
1 未履行契約であること

11 U.S.C. §365(a)の引受け又は拒絶の対象は「executory contract」である。
連邦破産法典に一般定義はないが,Mission Product判決は,当事者双方に少なくとも一定の履行が残っている契約と説明している。

ライセンスという名称だけで未履行性が決まるわけではない。
In re Exide Technologies,607 F.3d 957 (3d Cir. 2010)とIn re Interstate Bakeries Corp.,751 F.3d 955 (8th Cir. 2014) (en banc)は,資産譲渡取引に組み込まれた永久的・ロイヤルティ無料の独占的商標ライセンスにつき,統合された取引全体と残存する重要な義務を検討し,未履行契約ではないと判断した。

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生成AIの学習データ契約とクリエイターへの対価還元――著作権法30条の4との関係(AI作成)

第1 著作権法30条の4と有償契約は両立すること

1 30条の4は「許諾が必要か」を定める規定であること
2 有償契約は「何を取引するか」を定めること
3 データ提供者への支払とクリエイターへの分配は別であること

第2 事前学習,追加学習及びRAGで30条の4の判断が異なること

1 事前学習でもただし書の検討が残ること
2 追加学習は出力目的を確認すること
3 RAGはデータベース構築と回答表示を分けること
4 裁判例は目的を利用実態から判断していること

第3 学習データ契約に独立した価値がある理由

1 権利処理済みデータと利用可能なデータは同じではないこと
2 判決本文と民間の判例要旨・分類体系を分けること
3 データの量より品質が価値になる場面があること
4 学習以外の利用を束ねないこと

第4 クリエイターへの対価還元を契約で設計する方法

1 対価モデルには異なる長所と限界があること
2 分配条項は支払条項から独立させること
3 企業公表例は分配方法の違いを示すこと

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robots.txtで生成AI学習・AI要約を拒否できるか――技術的効果と著作権法上の限界(AI作成)

第1 robots.txtだけでは生成AIによる利用を全面的に拒否できない
第2 robots.txtの技術的な効力

1 Robots Exclusion Protocolが定めるもの
2 拒否の対象は取得であり,利用目的は事業者ごとに異なる
3 過去の取得や別経路のデータには遡及しない

第3 主要事業者では学習用と検索・要約用の設定が異なる
第4 AI要約を拒否するときは検索表示への影響を分けて考える

1 Google-Extendedを拒否してもAI Overviewsは止まらない
2 クロール拒否とインデックス・表示拒否は同じではない

第5 日本の著作権法30条の4とrobots.txt

1 AI学習は情報解析として同条の対象になり得る
2 robots.txtの拒否だけで同条の適用は外れない
3 解析用データベースの市場と結び付く場合は評価が変わり得る
4 文化庁資料は重要な行政資料であるが判決ではない
5 47条の5の所在検索では政省令の基準も確認する

第6 EU法の機械可読な権利留保との違い
第7 個人情報保護法は著作権法とは別に検討する
第8 サイト運営者が目的別に行うべき対応

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法律書デジタル図書館をめぐる著作権・出版権侵害訴訟―公開資料から考える法的論点と主張立証(AI作成)

本ブログ記事は主としてAIで作成したものです。

本稿は、2026年7月14日までに公表された当事者のプレスリリース、法令、文化庁資料及び関係者協議会のガイドラインを基礎としています。同日現在、訴状、答弁書その他の詳細な訴訟資料や判決は、公表資料から確認できていません。以下の「想定論点」及び当事者の主張に関する記載には、公開資料からの分析・予測が含まれます。

第1 はじめに
第2 本件訴訟の概要と背景
第3 公開資料から想定される法的論点
想定論点1:被告図書館は、著作権法第31条の権利制限の主体となる「図書館等」に該当するか。
想定論点2:被告図書館の公衆送信事業は、「営利を目的としない事業」といえるか。
想定論点3:被告図書館の公衆送信は、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当しないか。
想定論点4:送信対象は「図書館資料」といえるか。送信に先立つ複製及び出版権との関係はどうなるか。
想定論点5:被告図書館は、「特定図書館等」として求められる運用体制を具備しているか。
第4 実務上の主張立証と手続選択
第5 総括
第6 参照資料

* 文化庁HPの「著作権法の一部を改正する法律 御説明資料(条文入り)」7頁ないし14頁に「② 図書館等による図書館資料のメール送信等」(2023年6月1日施行部分)に関する解説が載っています。
第1 はじめに
2025年10月15日、中山信弘東京大学名誉教授をはじめとする有志の著作権者並びに著作権法80条1項2号に基づく出版権者である第一法規株式会社及び株式会社商事法務は、一般社団法人法律書デジタル図書館(以下「被告図書館」といいます。)に対し、著作権及び出版権の侵害を理由として、サービスの差止めと損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に提起しました。株式会社有斐閣は、第一法規及び商事法務と共同でこの訴訟に関するプレスリリースを公表していますが、同リリースが表示する原告には含まれていません。

本件は、令和3年の著作権法改正によって創設された「図書館等公衆送信サービス」の制度趣旨や適用範囲の解釈が問われる、施行後の先例として注目される訴訟です。

本稿では、公開されている資料と現行法令を基礎として、当事者が公表した事実・見解と、公開資料から想定される法的論点とを区別しながら、双方の主張立証上の課題を検討します。
第2 本件訴訟の概要と背景
本件訴訟の根底には、令和3年改正著作権法で認められた図書館等による著作物の一部分の公衆送信(いわゆるメール送信やFAX送信)を可能とする権利制限規定(著作権法31条2項)の解釈があります。この制度は、利用者の調査研究を支援するため、図書館に来館せずとも資料の一部を入手できるという利便性の向上を目的としていますが、同時に、著作権者や出版権者の経済的利益を不当に害することのないよう、厳格な要件が課されています。

原告側の共同プレスリリースは、被告図書館のサービスが同制度の要件を満たさず、権利者の許諾を得ない大量の法律書・法律雑誌の複製及び公衆送信に当たるとの見解を示しています。これは原告側が公表した主張であり、訴訟において証拠により確定した事実ではありません。

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