第1 結論1 AI生成表示だけでは足りない2 五つの確認層第2 AI生成であることの表示1 通常の法律事務所サイトと表示義務2 表示するかは誤認リスクから決める3 表示文例と表示場所第3 弁護士広告としての確認1 画像と文章を一体として見る2 架空の人物・相談場面・解決場面3 広告内容を裏付ける記録第4 著作権の確認1 入力素材と生成指示2 出力とウェブ公開3 AI生成物を自ら保護できるか4 サービス規約の商用利用許可第5 肖像権・パブリシティ権の確認1 写真だけでなく識別できる似姿にも注意する2 架空の人物という指示だけでは足りない3 著名人の顧客吸引力を広告に使わない第6 守秘義務・個人情報の確認1 実在事件の事実を入力しない2 利用規約・データフロー・設定を確認する3 外部制作者にも同じ基準を適用する第7 制作記録と来歴情報1 保存する制作記録2 電子透かし・来歴情報の限界3 公開後の差替えと事故対応第8 掲載前後の実務チェック1 生成前2 掲載前3 掲載後第9 関連する記事1 肖像・パブリシティ・AI証拠2 個人情報・生成AI契約第10 出典1 法令・国会資料2 裁判例3 政府の指針・注意喚起4 職能団体の規程・委員会資料・技術資料
第1 結論
1 AI生成表示だけでは足りない
法律事務所がAI生成画像又はAI生成動画をウェブサイトに掲載するときは,「AIで作った」と表示するだけでは足りない。
表示は閲覧者の誤認を減らす一つの手段であるが,第三者の著作権・肖像権を消滅させず,弁護士広告の不正確な印象を正当化せず,守秘義務違反を治癒するものでもない。
実務では,①入力素材,②生成結果,③広告全体の印象,④守秘・個人情報,⑤制作記録を別々に確認し,最後に一つの掲載判断へ統合する必要がある。
特に,実写と見分けにくい人物画像又は動画は,架空の人物であっても,実在する依頼者,職員,弁護士,裁判所又は取扱実績を撮影したものと受け取られないかを確認すべきである。
本記事は,令和8年9月9日現在の日本法及び公表資料に基づく一般的な整理である。
個別の画像・動画,利用規約,広告文言及び掲載ページの構成によって結論は変わり得る。
2 五つの確認層
確認層主な確認事項表示だけでは解決しない理由
入力素材参照画像,写真,ロゴ,文章,プロンプトの権原無断入力又は類似物を作る目的の入力が問題になり得る
生成結果既存著作物との類似性・依拠性,実在人との識別可能性AI生成であることは侵害判断の免責事由ではない
弁護士広告実在の職員・依頼者・取扱実績・結果との誤認広告は画像,見出し,本文,配置を含む全体の印象で受け取られる
守秘・個人情報事件情報,依頼者情報,入力後の保存・学習・再利用公開画像が架空でも,制作時の入力で秘密が外部処理され得る
制作記録規約,プロンプト,候補,編集,承認,掲載版表示の正確性,権利確認及び差替え理由を後から説明する必要がある
第2 AI生成であることの表示
1 通常の法律事務所サイトと表示義務
本記事で確認したAI法及び人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針は,通常の法律事務所サイトに掲載する全てのAI生成画像・動画について,一律の可視表示義務又は統一文言を定めているわけではない。
もっとも,同指針は,透明性,アカウンタビリティ,プライバシー・個人情報及び知的財産への配慮を掲げ,AIの用途とリスクの影響度に応じた対応を求めている。
経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は,AI利用者に対し,関係する者の性質に応じた合理的な範囲で,適正な利用方法を含む情報を平易かつアクセスしやすい形で提供することを掲げている。
ただし,これは法律事務所サイトの全てのAI生成画像・動画について,特定の文言又は表示場所を一律に定める法令ではない。
他方,表示義務が特定の場面で法制化される例もある。
令和8年法律第58号は,選挙運動又は一定期間の落選運動に使うインターネット上の文書図画について,社会通念上軽微な改変又は実写と誤認されるおそれのないものを除き,AIを利用して作成・改変した画像又は映像である旨の表示を求め,令和9年3月1日から施行される。
したがって,「日本法にはAI生成表示の義務がない」と一般化するのは正確でない。
通常の法律事務所サイトでは,法令の適用範囲に加え,利用するサービス・媒体の規約,広告の文脈及び閲覧者の誤認可能性を確認して表示方法を決める必要がある。
2 表示するかは誤認リスクから決める
表示の必要性は,AIの利用割合だけでなく,画像又は動画が伝える意味から判断するのが適切である。
実在の依頼者の体験,実際の相談風景,実在する職員,実際の裁判所,現実の解決結果又は現実の報道映像と受け取られる可能性が高いほど,画像又は動画に近接した可視表示を置く必要性が高い。
反対に,抽象的な背景模様,明らかな図解又は現実の場面と誤認されにくい装飾まで,同じ長さの注記を一律に付ける必要性は低いことがある。
ただし,表示を省略する判断をした場合も,制作記録にはAI利用の有無,利用範囲及び省略理由を残すことが望ましい。
3 表示文例と表示場所
全体をAIで生成した写実的な画像又は動画には,例えば次の表示が考えられる。
これは法定文言ではなく,実在の人物・事件・施設であるとの誤認を減らすための表示例である。
※この画像(動画)は生成AIを利用して作成したイメージであり,実在の依頼者,相談者,事件又は裁判所を示すものではない。
実写素材をAIで重要な程度に加工した場合には,例えば次のように,加工であることを示す。
実在人物の写真を用いたときは,この注記とは別に,撮影・加工・公開の同意範囲を確認する必要がある。
※この画像(動画)は生成AIを利用して加工したイメージである。
表示は,画像直下のキャプション又は動画プレーヤーの直近など,閲覧時に気付きやすい場所へ置くのが望ましい。
画像のalt属性,ファイル名又は来歴メタデータだけでは,通常の閲覧者が表示を認識できないことがある。
第3 弁護士広告としての確認
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