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AI処理の著作権を工程とログから確認する―30条の4・47条の5とRAGの実務(AI作成)

第1 「AIに使った」を具体的な行為に分ける

記事やデータがAIサービスで利用されているように見えても,学習に使ったのか,検索時に参照したのか,利用者が直接入力したのかは,画面だけでは分からない場合がある。
適法性の確認では,対象著作物,主体,処理場所,時点,目的,利用量及び表示方法を工程ごとに対応させる。
本記事は,令和8年10月4日に確認した現行法令及び文化庁の資料に基づき,仕様書とログから確認する事項を示す一般的な実務解説である。

文化審議会の「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)は解釈の参考となる行政資料であり,個別事件について裁判所を拘束するものではない。
以下の記録方法は本記事の提案であり,全ての事業者に同じログ項目の保存義務があるという説明ではない。
依頼者の秘密,個人情報及び第三者の著作物を含む実ログは,必要な範囲とアクセス権限を定めて扱う。

第2 先に対象と工程を確定する

1 判決本文と民間の付加情報

著作権法13条の対象となる判決等と,民間の要旨,解説,分類又はDBの構成を分ける。
単なる事実の抽出と,創作的な文章を複製・翻案する処理も同じではない。
判決本文が権利の目的とならないことから,民間DB全体の取得又はその利用規約上の制限まで判断を省略しない。

2 工程別の台帳

①取得:元URL,取得版,取得日時,経路,認証・規約及び取得者。
②加工・保存:OCR,分割,重複除去,保存先,保存量,原文の残存及び保持期間。
③学習:データ集合の版,投入ジョブ,対象モデル,追加学習・評価の区別及び利用目的。
④RAG:検索用DBの版,検索結果,採用した文書・断片及びプロンプトへの挿入内容。
⑤生成・表示:モデル・版,指示,会話履歴,検索設定,出力原文,表示対象及び出典。
⑥削除・終了:キャッシュ,ログ,バックアップ及び学習済みモデルに残るもの。

各行に,著作権上の根拠と契約上の根拠,処理主体及び国を記載する。
日本法の権利制限が検討できることから,国外で行われる全ての処理も適法であるとはいえない。
サービス名又はモデル名だけで,どの法人がどの国で対象行為をしたかを確定しない。

第3 30条の4の確認事項

1 非享受目的と必要な限度

同法30条の4は,著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し,又は他人に享受させることを目的としない場合に,必要と認められる限度で利用できるとする。
情報解析は例示されているが,「AI学習」「検索精度向上」という名称だけで非享受目的が確定するわけではない。
営利・非営利という区分だけでも結論は決まらず,実際にどの目的でどの情報をどう処理するかを確認する。

元の創作的表現を回答として提供する目的が併存する場合は,同条の適用が否定され得る。
一方,RAGという構成だけで一律に享受目的があるとすることもできず,創作的表現の出力を目的としない情報解析等を具体的に検討する。
要約という名称でも,事実を抽出しているのか,元の表現の本質的特徴を残して利用しているのかを分ける。

2 権利者の利益を不当に害する場合

同条ただし書は,著作物の種類及び用途並びに利用態様に照らし,著作権者の利益を不当に害する場合を除く。
情報解析用の創作性あるDBの販売,具体的な将来の提供計画,商品と取得データの関係,市場代替性及びアクセス制限等を確認する。
単に「将来販売したい」と述べたことや,転載禁止の表示だけから,全ての利用についてただし書が成立するとは扱わない。

3 出力から目的を検討する際の注意

類似した出力が一度出たことは,対象データが学習に含まれたこと又は学習時の目的を単独で確定する証拠ではない。
利用者の入力,RAG,第三者転載等の別経路,再現頻度,意図的な追加学習,サービスの用途及び抑止措置を併せて検討する。
逆に,ある試行で原文が出なかったことも,取得・保存又は学習段階の適法性を証明するものではない。

第4 47条の5の確認事項

1 結果提供に付随する軽微利用

同法47条の5第1項は,著作物の所在等の検索又は情報解析等の一定の行為を行い,その結果の提供に付随して軽微な利用をする場合を対象とする。
必要な限度,利用する割合・量,表示の精度等から軽微といえるか,公表等された対象か,権利者の利益を不当に害しないか等を確認する。
違法に公表されたことを知っている場合の除外もあり,「リンク付き」「500字以内」だけで適用される一律の基準はない。

記事の全文又は主要部分を読ませること自体がサービスの目的となっている場合は,情報処理の結果提供に「付随」しているかも問題となる。
検索・解析の成果と,その説明のために利用する表現を分け,元記事の閲覧を代替する程度を確認する。
同条が使えない場合にも,許諾又は引用等の別の根拠があるかは,その要件に沿って検討する。

2 準備行為の複製は表示量と同じではない

同条2項は,第1項による軽微利用の準備のための複製等を,必要と認められる限度で認める。
準備用の複製そのものを第1項の表示と同じ軽微量に限る規定ではない。
したがって大量保存という外形だけで適法・違法を決めず,予定する結果提供が第1項に適合するか,準備との関係,必要性,ただし書及び準備行為の基準を確認する。

3 政省令とrobots.txt

著作権法施行令7条の4及び同施行規則4条の4・4条の5も確認する必要がある。
業として結果を提供する場合には,法令の解釈を踏まえた事前の取組及び問い合わせ先の合理的な明示等が問題となる。
準備のために作成した複製物には,漏えい防止等の措置についての基準もある。

送信元識別符号の検索結果を提供する類型では,アクセスを制限した情報の収集に必要な承諾や,一般の慣行に従ったrobots.txt・HTMLによる収集禁止に係る情報を提供しないことが基準となる。
この所在検索についての基準を,あらゆるAI処理を一律に拒否できる規定と説明してはならない。
30条の4についての反対意思表示の評価と,47条の5に関係する政省令の基準を分けて確認する。

4 出所と人格権

出所明示は同法48条の適用条件に従って確認し,リンクがあることを軽微利用の要件の代わりにしない。
同法50条により,権利制限規定は著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない。
著作者名の表示や改変についても,問題となる権利と具体的な表示態様を別に検討する。

第5 ログから分かることと分からないこと

1 アクセス記録だけでは学習を証明できない

アクセスログは,対象URLへの要求,時点,応答,転送量等を調べる端緒となる。
User-agentの名乗りやIPだけで取得主体を確定せず,配信網,プロキシ,共有アドレス及び公式に検証できる情報も確認する。
取得要求があったこと,本文が渡ったこと,保存したこと,学習したこと及び回答に使ったことは,別々の立証事項である。

記録がない場合も,記録対象の経路,稼働期間,容量上限,保存期間,ローテーション,時刻ずれ及び削除履歴を確認する。
APIだけを記録するログは通常のHTML取得を捕捉しない場合があり,その欠落から取得自体がなかったと断定できない。
投稿者の管理ログ,サイトへのアクセスログ及びAI処理ログについても,目的と保存範囲を取り違えない。

2 RAGと学習を結び付ける記録

RAGでは,検索要求,検索結果の文書ID,採用断片,実際のプロンプト及び生成結果を,共通の処理番号と時刻で対応させる。
学習では,データ集合の版・対象ファイルと,実際の投入ジョブ及びモデルの版を対応させる。
データ置場にファイルがあるだけでは投入済みとは限らず,ベクトルDBへの登録を基盤モデルの学習と同一視しない。

原文,設定,ログは必要な範囲で原本を保存し,取得者,取得方法,時刻,ハッシュ及び閲覧権限を記録する。
検証の再試行は原本を上書きせず別に保存し,出力の違いと変更した条件を対応させる。
モデルの更新等により完全な再現ができない場合は,その限界も記録する。

第6 照会・訴訟で対象を限定する

事業者への照会では,対象URL・ファイル,期間,取得経路,保存・加工,RAG又は学習への投入,表示用途及び保持・削除を分けて質問する。
事業者の一般的な仕様説明と,対象データについての実際の処理記録を区別する。
「参照していない」という回答も,検索,学習,保存又は回答生成のどの工程を否定しているかを確認する。

訴訟では,著作権法114条の3の書類等の提出又は民事訴訟法220条以下の文書提出等を検討する。
同法234条の証拠保全は,後の証拠使用が困難となる事情に応じた手続であり,広範な事前調査を無条件に認める制度ではない。
技術的な全工程の確認を常に必要とするわけではなく,確認済み事実からの法的な推認と,なお未確認の内部処理を明示して主張を設計する。

第7 出典・関連記事と未確認事項

法令は,著作権法30条の4,47条の5,48条,50条及び114条の3,施行令7条の4,施行規則4条の4・4条の5を確認した。
行政資料は,前掲の令和6年3月15日資料と,文化庁「柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方」(平成31年。特に本文51頁~53頁,56頁)を参照した。
旧資料の条番号・文言と現行法令に違いがあれば,現行法令を優先する。

判例データベースを法律事務所の生成AI・RAGに使えるか及びrobots.txtで生成AI学習・AI要約を拒否できるかも参照されたい。
本記事では,特定サービスのモデル,実際のプロンプト,学習データ集合又は処理ログを確認したものではない。
個別案件への適用には,対象となる版と実際の仕様・ログ,契約及び処理国の確認が必要である。