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税務

農地を生前贈与して納税猶予を受けた後に贈与者が死亡したとき――相続税のみなし相続と,民法上はあくまで生前贈与であること(AI作成)

目次第1 結論第2 農地等の贈与税の納税猶予1 制度の骨格2 対象から除かれる農地3 猶予の継続と届出4 猶予が打ち切られる場合第3 贈与者が死亡したとき1 相続により取得したものとみなす2 課税価格に算入する価額3 相続税の納税猶予へ引き継ぐ場合4 税務上の扱いと民法上の扱いの対照第4 民法上はあくまで生前贈与である1 所有権が移転した時期2 遺留分の基礎財産での扱い3 減殺又は負担の順序4 遺産分割の対象にならない5 特別受益としての持戻し第5 相続人が複数いる場合に起きること1 推定相続人の一人に集中する制度であること2 他の相続人との調整第6 実務で起きる取り違え第7 確認する資料第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 公的資料
第1 結論

農家では,後継者へ農地を生前に贈与し,租税特別措置法70条の4の贈与税の納税猶予を受けていることがある。
この制度の下では,贈与者が死亡したときに,その農地が相続税の課税対象に取り込まれる。

ここで,税務上の扱いと民法上の扱いがねじれる。
租税特別措置法70条の5第1項は,贈与者が死亡した場合に,受贈者が当該農地等を「その贈与者から相続…により取得したものとみなす」と定めている。
しかし,これは相続税の課税関係についてのみなし規定であって,民法上の性質を贈与から遺贈へ変えるものではない。
当該農地は,贈与の時に受贈者へ移転しており,相続開始の時に被相続人が有していた財産ではない。

この区別を誤ると,①遺産分割の対象に入れてしまう,②遺留分の場面で遺贈として扱い,減殺又は負担の順序を誤る,③相続開始時の価額に引き直す作業を落とす,という誤りが生じる。
本記事では,制度の骨格を条文で押さえた上で,民法上の扱いとの違いを整理する。

第2 農地等の贈与税の納税猶予
1 制度の骨格

租税特別措置法70条の4第1項は,農業を営む個人(贈与者)が,その農業の用に供している農地の全部及び採草放牧地のうち政令で定める部分並びに準農地のうち政令で定める部分を,「当該贈与者の推定相続人で政令で定める者のうちの一人の者に贈与した場合」について定めている。

この場合,受贈者の贈与の日の属する年分の贈与税のうち,当該農地等の価額に対応する部分(納税猶予分の贈与税額)に相当する贈与税については,「当該年分の贈与税の申告書の提出期限までに当該納税猶予分の贈与税額に相当する担保を提供した場合に限り,…当該贈与者の死亡の日まで,その納税を猶予する。」

要点は次のとおりである。
①贈与の相手方は推定相続人の一人に限られる。
②農地は全部を,採草放牧地及び準農地は政令で定める部分を贈与する。
③期限内申告と担保の提供が要件である。
④猶予の終期は,原則として贈与者の死亡の日である。
⑤贈与者が既にこの制度の適用に係る贈与をしている場合は,重ねて適用を受けられない。

2 対象から除かれる農地

同項のかっこ書は,特定市街化区域農地等に該当するものを対象から除いている。
また,農地法32条1項又は33条1項の利用意向調査に係るもののうち政令で定めるものも除かれる。

そのため,市街化区域内の農地については,この制度の適用を受けていないことがある。
相続の場面で農地が出てきたときは,所在地が市街化区域かどうかを先に確認する。

「特定市街化区域農地等」は,租税特別措置法70条の4第2項3号が定義している。
同号は,「都市計画法第七条第一項に規定する市街化区域内に所在する農地又は採草放牧地で,平成三年一月一日において次に掲げる区域内に所在するもの(都市営農農地等を除く。)をいう。」とし,イからハまでに,①都の区域(特別区の存する区域に限る。),②首都圏,近畿圏又は中部圏内にある地方自治法上の指定都市の区域,③その他の市でその区域の全部又は一部が既成市街地,近郊整備地帯,既成都市区域,近郊整備区域又は都市整備区域内にあるものの区域を掲げている。

すなわち,市街化区域内の農地が常に除かれるのではなく,三大都市圏の特定の区域内にあるものが除かれる。
それ以外の市町村の市街化区域内の農地は,「特定市街化区域農地等」に当たらない。

さらに,同項4号の「都市営農農地等」は,「特定市街化区域農地等」から除かれている。

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貸付用不動産・不動産小口化商品の相続税評価の見直し――国税庁の通達案(令和8年9月18日)と令和9年以後の相続・贈与(AI作成)

目次第1 この記事が扱う対象と時点1 対象とする見直し2 調査基準日と資料の段階第2 見直しに至る経緯1 国税庁が示した評価額と取引価額の開き2 令和8年度税制改正大綱3 通達案の公表と意見募集第3 課税時期前5年以内に取得等した貸付用不動産1 対象となる貸付用不動産2 評価の方法3 対象から除かれるもの4 同族会社の株式の純資産価額との関係第4 不動産小口化商品(特定小口化商品)1 対象となる権利2 評価の方法第5 適用時期と贈与・購入の関係1 令和9年1月1日以後の相続,遺贈又は贈与2 令和8年中の贈与――加算は贈与の時の価額3 令和8年中の購入――相続が令和9年以後なら対象4 相続時精算課税の基礎控除110万円第6 総則6項との関係1 通達案の対象外でも総則6項は残る2 相続直前の不動産取得に関する裁判例3 旧租税特別措置法69条の4との比較第7 相談の際に確認する事項第8 出典1 法令2 通達・通達案3 裁判例4 税制改正大綱・政府税制調査会の資料
第1 この記事が扱う対象と時点
1 対象とする見直し

この記事は,賃貸マンション等の貸付用不動産と,不動産小口化商品について,相続税・贈与税の評価方法を見直す国税庁の法令解釈通達案「貸付用不動産の評価について(案)」を扱う。
見直しの中心は,①課税時期前5年以内に取得・新築した貸付用不動産と,②不動産特定共同事業契約等による不動産小口化商品を,路線価等による評価ではなく,原則として課税時期における通常の取引価額で評価することにある。
通達案は,令和9年1月1日以後に相続,遺贈又は贈与により取得した財産の評価に適用するとしている。

2 調査基準日と資料の段階

本記事は,令和8年9月19日時点で,e-Govのパブリックコメント(案件番号410080055)に掲載された通達案・概要・実施要領,財務省の令和8年度税制改正大綱,政府税制調査会の資料及び議事録,e-Gov法令検索の相続税法・租税特別措置法・不動産特定共同事業法,裁判所ウェブサイトの裁判例を確認して作成した。
通達案は,国税庁が令和8年9月18日に意見募集を始めたものであり,募集期間は同年10月18日までである。
確定した通達ではないから,意見募集の結果によって文言が変わる可能性がある。
特に,経過措置の基準日となる「通達制定日」は,通達案では「令和8年●月●日」と空欄になっている。

第2 見直しに至る経緯
1 国税庁が示した評価額と取引価額の開き
(1) 一棟賃貸マンションの駆け込み取得の事例

国税庁は,令和7年11月13日の政府税制調査会「経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合」に,説明資料「財産評価を巡る諸問題」を提出した。
同資料5頁の事例②は,被相続人が相続開始の約2年8か月前に主宰法人から22億円を借り入れ,一棟賃貸マンションを21.0億円で購入したものである。
このマンションの通達評価額は4.2億円で,取得価額の約5分の1(資料の表記では「4.99倍」)にとどまり,相続税額は12.3億円から4.4億円に減ったとされている。
同資料7頁は,相続開始前の駆け込み取得の事例では,かい離が「3倍超(中央値)」であったとしている。

(2) 不動産小口化商品の贈与の事例

同資料6頁の事例③は,68歳の贈与者が不動産小口化商品(信託受益権)を3,000万円で購入し,約5か月後に9歳の受贈者に贈与した事例である。
通達評価額は480万円で,受贈者は贈与後にこれを取得価額とほぼ同額で売却して現金化したとされている。
同資料9頁は,不動産小口化商品の贈与事例3件を挙げ,評価額の減少割合を▲82.8%,▲83.8%,▲78.2%としている。
同会合の議事録によれば,国税庁の担当者は,事例②の評価額について「約80%減」と説明している(議事録7頁)。
いわゆる「8割減」は,これらの個別事例の数値であり,貸付用不動産全体の平均値として示されたものではない。

2 令和8年度税制改正大綱

令和7年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱は,資産課税の「相続税等の財産評価の適正化」として,「相続税法の時価主義の下、貸付用不動産の市場価格と相続税評価額との乖離の実態を踏まえ、その取引実態等を考慮し、次の見直しを行う。」とした(大綱52頁)。
大綱は,被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産と,不動産特定共同事業契約又は信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産について,課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するとした。
また,大綱は,この改正を「通達に定める日」と書いており,法律の改正ではなく通達で行うことを前提としている。

3 通達案の公表と意見募集

国税庁は,令和8年9月18日,「貸付用不動産の評価について」の法令解釈通達(案)を公表し,意見募集を始めた。

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親の土地を子に使用貸借して賃料を子の所得にできるか―大阪地裁令和3年4月22日判決と大阪高裁令和4年7月20日判決(AI作成)

目次第1 親の土地の賃料を子へ移す方法と裁判所の判断第2 所得の帰属を決める所得税法12条1 実質所得者課税の原則2 所得税基本通達12-1第3 大阪地裁令和3年4月22日判決は子らの所得とした1 事案2 使用貸借は成立したとした3 子らは形式上も実質上も収益を享受しているとした第4 大阪高裁令和4年7月20日判決は親の所得とした1 使用貸借の成立は認めた2 子らを単なる名義人とした理由第5 両判決の分かれ目と,同じ方法が否認されやすい事情1 民法上の帰属を基準にするか,収益の支配を見るか2 控訴審の判断で重視された事情第6 既に同じ方法を取っている場合の手続と期間1 親に対する更正と加算税2 子が申告していた賃料の更正の請求3 契約をどうするか第7 出典1 法令・通達2 裁判例
第1 親の土地の賃料を子へ移す方法と裁判所の判断

親が所有する駐車場用地を子に無償で貸し(使用貸借),子が賃貸人となって第三者から賃料を受け取る形にすれば,賃料は子の不動産所得になるのか。
同じ事案について,大阪地裁令和3年4月22日判決は子らの所得と判断し,控訴審の大阪高裁令和4年7月20日判決は親の所得と判断した。

結論が分かれたのは,使用貸借が成立したかどうかではない。
控訴審も使用貸借の成立は認めた上で,子らは所得税法12条の「単なる名義人」に当たるとした。
相続税対策と所得税の節税を目的として,親の存命中は所有権を親に残したまま賃料だけを子へ移す方法は,控訴審の判断に従えば,親の所得として課税されることになる。

本記事は,令和8年9月19日を基準に,両判決の全文と所得税法12条を基に,判断の分かれ目と,同じ方法を取っている場合に確認すべき事項を説明する。
親族間の土地の貸し借りと贈与税・相続税の評価は親族間で土地を使わせる場合の課税-使用貸借と相当の地代で,地代の水準から使用貸借と賃貸借を見分ける方法は使用貸借と賃貸借の区別-固定資産税程度の支払,相場より安い地代・家賃は賃料かで扱っている。

第2 所得の帰属を決める所得税法12条
1 実質所得者課税の原則

所得税法12条は,次のとおり定める。
「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。」

この規定は,見出しのとおり実質所得者課税の原則と呼ばれる。
問題になるのは,収益の法律上の帰属者(本件では賃貸人となった子)が「単なる名義人」に当たるかどうかである。

2 所得税基本通達12-1

国税庁の所得税基本通達12-1は,同条の適用について次のように定める。
「法第12条の適用上、資産から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その収益の基因となる資産の真実の権利者がだれであるかにより判定すべきであるが、それが明らかでない場合には、その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する。」

通達は国税庁長官が職員に示す法令解釈であり,裁判所を拘束するものではない。
後記のとおり,第一審は使用借主を「真実の権利者」とみてこの通達を当てはめ,控訴審は同じ通達を所有者に帰属させる方向で引用した。

第3 大阪地裁令和3年4月22日判決は子らの所得とした
1 事案

親は大阪府枚方市に多数の不動産を所有し,平成16年頃から4筆の土地を駐車場として賃貸していた。
駐車場の賃貸借契約の事務と賃料の受領は,管理会社2社に報酬を払って委託していた。
平成25年11月以降,長男が親の意向を受けて税理士法人に不動産の節税対策と相続税対策を相談した。

平成26年1月25日付けで,親と長男,親と長女の間でそれぞれ「使用貸借契約書」と題する契約書が作られた。
契約書には,期間を平成26年2月1日から10年間とし,子が固定資産税等の相当額を親に支払うこと,親の承諾により転貸できることが記載されていた。
同日,土地上のアスファルト舗装等を子に贈与する契約も結ばれ,平成26年2月以降の駐車場の賃料は子らの口座に振り込まれるようになった。

税務署長は,平成26年分の駐車場の賃料は親に帰属するとして,親に対し所得税等の増額更正処分と過少申告加算税の賦課決定処分をした。
親がその取消しを求めたのが本件である。

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会社法の株式価格決定と相続税評価の違い――DCF法,非流動性ディスカウント及び最高裁決定(AI作成)

目次第1 会社法の株式価格決定と相続税評価の違い――この記事の対象と時点第2 場面ごとに異なる非上場株式の「時価」1 条文上の文言の違い2 場面ごとの比較3 評価の目的が違えば数値も違う第3 会社法の価格決定で使われる評価方法1 DCF法・収益還元法・純資産法・配当還元法2 DCF法が主流となった経過3 複数の手法を併用した決定例4 プロラタ価値を明示した横浜地裁の決定第4 非流動性ディスカウントをめぐる最高裁の二つの決定1 最高裁平成27年3月26日決定――組織再編の買取請求では不可2 最高裁令和5年5月24日決定――譲渡制限株式の売買価格では可3 二つの決定の違い――「非上場株式は常に30%減」とはいえない4 公開買付け後のキャッシュアウトと評価通達6項第5 相続税評価と会社法の価格決定の距離1 通達評価は「一定の割り切った評価」2 国税庁案が会社法の考え方に近づく面3 なお異なる面第6 実務上の使い分け――相続税評価額をそのまま使えない場面1 遺産分割と代償金2 財産分与3 譲渡制限株式の売買価格決定と株式買取請求第7 関連記事第8 出典1 法令2 裁判例3 有識者会議の資料
第1 会社法の株式価格決定と相続税評価の違い――この記事の対象と時点

同じ非上場株式であっても,相続税評価と会社法上の価格決定とでは,評価の目的,方法及びディスカウントの扱いが異なる。
相続税評価は,大量の申告を法定の期限内に処理するため,財産評価基本通達の定める方式で画一的に評価するものであり,国税庁自身が「一定の割り切った評価」と位置付けている(第6回資料11頁)。
これに対し会社法上の価格決定は,譲渡制限株式の売買価格や反対株主の買取価格について,裁判所が制度の趣旨に従い個別の事情を考慮して定めるものであり,DCF法等の評価手法の選択も,非流動性ディスカウントの可否も,手続の種類と算定過程に応じて判断される。

この記事は,令和8年9月19日現在で公表されている資料に基づき,会社法上の株式価格決定と相続税評価の違いを,条文,最高裁決定及び下級審の決定例に即して整理するものである。
素材は,国税庁の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の第1回から第6回までの会議資料,第5回までの議事要旨及び第5回当日机上配付資料「取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」であり,第6回会議の議事要旨はこの記事の作成時点で公表されていない。
有識者会議で示されている見直し案は国税庁事務局のたたき台であり,決定したものではない。
骨子自身も,評価水準・税負担の在り方等を含め「最終的には税制改正プロセスにおいて決定いただく」としている(骨子1頁)。

有識者会議の経緯と論点の全体は,親記事である取引相場のない株式の評価に関する有識者会議にまとめており,この記事はその第8「会社法における株式価格の決定との距離」を独立させて掘り下げたものである。

第2 場面ごとに異なる非上場株式の「時価」
1 条文上の文言の違い

相続税法22条は,「相続,遺贈又は贈与により取得した財産の価額は,当該財産の取得の時における時価により」と定めるだけで,評価の方法は財産評価基本通達に委ねられている。
これに対し会社法は,場面ごとに裁判所が価格を決定する手続を置いている。
譲渡制限株式の譲渡を会社が承認しなかった場合の買取りについて,会社法144条2項は株式会社又は譲渡等承認請求者が通知の日から20日以内に「裁判所に対し,売買価格の決定の申立てをすることができる」とし,同条3項は,裁判所は「譲渡等承認請求の時における株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならない」と定める。
吸収合併等に反対する株主は,会社法785条1項により「自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができ」,協議が調わないときは同法786条2項により裁判所に価格の決定の申立てをすることができる。
全部取得条項付種類株式の取得については,会社法172条1項が,反対株主等は裁判所に対し「取得の価格の決定の申立てをすることができる」と定めている。

2 場面ごとの比較

非上場株式の価額が問題となる主な場面を整理すると,次のとおりである。

場面根拠評価の目的・方法相続税・贈与税相続税法22条,財産評価基本通達大量の申告を期限内に処理するための画一的評価。類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式等の通達の方式による所得税・法人税所得税基本通達・法人税基本通達第4回資料8頁によれば,課税上弊害がない限り評価通達に準じて評価する譲渡制限株式の売買価格会社法144条2項・3項譲渡を希望する株主の投下資本回収の保障。裁判所が資産状態その他一切の事情を考慮して定める組織再編の反対株主の買取請求会社法785条1項・786条2項退出を選択した株主への企業価値の適切な分配。「公正な価格」全部取得条項付種類株式の取得価格会社法172条1項一般に公正と認められる手続による公開買付けの後に同額で取得した場合は,特段の事情がない限り公開買付価格と同額M&A(相対取引)当事者間の合意交渉で決まる価格であり,交換価値を反映しているとは限らない遺産分割・遺留分・財産分与民法等当事者間の公平。相続税評価額は当然には基準とならない(第6参照)

所得税・法人税の行は,第4回資料8頁が「相続税法,所得税法,法人税法のいずれにおいても『時価』は『客観的交換価値』と解されており,時価の概念という点においては共通するものの,課税の目的に応じ,所得税基本通達及び法人税基本通達において,課税上弊害がない限り,評価通達に準じて評価する旨定められている」と記載していることによる。
M&Aの行は,東京高等裁判所令和6年8月28日判決(令和6年(行コ)第36号。裁判所ホームページ未掲載であり,判例秘書で全文を確認した。)が,M&Aが行われる場合には高度な経営判断や双方の交渉の結果等により売買代金が決定されるのであって,売買代金が交換価値を反映しているとは限らないと述べていることによる。

3 評価の目的が違えば数値も違う

評価の目的が違えば評価額が違うことは,有識者会議でも前提とされている。
第4回会議では,委員から「目的によって評価が異なるのは一般的な考え方であり,会社法の裁判例や,M&Aの事例を,相続や贈与の時の評価の参考とするような,目的が違うものを並べて参考とすることには違和感がある」との意見が出ている(第4回議事要旨12頁)。
第4回資料8頁も,委員の意見の整理として「会社法やM&A価格との乖離を根拠に通達の見直しを論ずることには慎重であるべき」との意見を掲げている。
他方,事務局は,昭和30年代に作られた考え方が評価理論の進歩や社会経済情勢の変化の中で置き去りにされ,評価額圧縮スキームを跋扈させる温床となった側面があるとし,「進歩を遂げた会社法やM&Aの考え方を参考にしながら見直していくことが必要」と説明している(第4回議事要旨6頁)。
会社法の価格決定実務は,相続税評価の「正解」ではなく,見直しの方向を考える際の参照点という位置付けである。

第3 会社法の価格決定で使われる評価方法
1 DCF法・収益還元法・純資産法・配当還元法

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国税庁が例示した非上場株式の評価額圧縮スキーム8類型――会社規模の操作,配当還元株主の作出及びオペレーティング・リース(AI作成)

目次第1 国税庁が例示した評価額圧縮スキーム8類型とは――この記事の対象と時点1 結論2 記事の性質と基準日第2 評価額圧縮スキーム8類型の一覧1 8類型の一覧表2 表の読み方第3 5つの型に分けた現行通達上の仕組み1 本記事の分類2 会社規模・評価会社区分の操作3 配当還元方式の対象の作出4 比準要素の引下げ5 純資産・評価差額の人為的変動6 評価時点の数値を下げる行為第4 財産評価基本通達6項(総則6項)との関係1 総則6項の適用件数2 経済産業省・中小企業庁の意見書がいう「14件」3 判断の枠組みと近時の例第5 見直し案での対応1 類型ごとの対応案2 会社規模の操作と配当還元方式3 利益操作とグループ法人4 資産管理会社と3年以内取得の不動産第6 実務上の注意1 既に実行したスキームの見直し2 総則6項のリスク3 事業承継税制との関係第7 関連記事第8 出典1 通達2 有識者会議の資料3 行政機関の意見書4 裁判例・裁決
第1 国税庁が例示した評価額圧縮スキーム8類型とは――この記事の対象と時点
1 結論

国税庁は,令和8年7月3日の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」第4回会議の資料の別添2に,取引相場のない株式(非上場株式)の相続税・贈与税の評価額を圧縮するスキームの事例を8類型掲げた(第4回資料32頁~39頁)。
その中身は,会社規模や評価会社の区分を人為的に動かすもの,配当還元方式で評価される株主を作り出すもの,オペレーティング・リース等で利益や純資産を一時的に下げるもの,債務や評価差額を膨らませるもの,通達上の期間の経過を待つものに分けられ,資料が示す圧縮額は評価額で最大100億円,割合で最大約98%である。
国税庁は,こうした事例への対応を,財産評価基本通達6項による個別の課税処分から,評価方法そのものの見直しへ移そうとしている。

2 記事の性質と基準日

この記事は,令和8年9月19日現在で国税庁が公表している第1回から第6回までの会議資料,第5回までの議事要旨及び第5回の当日机上配付資料「取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」に基づく。
第6回会議(令和8年9月16日)の議事要旨は,この記事の作成時点で公表されていない。

この記事は節税方法の解説ではない。
各事例の仕組みは,国税庁がどのような行為を問題視しているかを理解するのに必要な範囲でだけ紹介する。
別添2の事例は,資料自身が「事例を簡略化したもの」と題しているとおり(第4回資料31頁),制度の見直しを検討するために当局が示した例示である。
ここに挙げられた行為が当然に違法となるわけではなく,当然に財産評価基本通達6項の対象となるわけでもない。

また,後記第5の見直し案は,いずれも国税庁事務局が有識者会議に示したたたき台であり,決定したものではない。
骨子自身が「見直し内容のほか,評価水準・税負担の在り方等も含め,最終的には税制改正プロセスにおいて決定いただく」としている(骨子1頁)。
会議全体の経緯は,親記事の取引相場のない株式の評価に関する有識者会議にまとめている。

第2 評価額圧縮スキーム8類型の一覧
1 8類型の一覧表

第4回資料別添2の8事例を,資料の記載どおりにまとめると次のとおりである。

事例(第4回資料の頁)仕組みの要点資料が示す圧縮額又は割合①子会社の会社規模操作(32頁)上場株式を現物出資して設立した会社の傘下の子会社に,買収した会社の従業員を転籍させて中会社から大会社(類似業種比準方式)へ変え,その子会社へ上場株式を寄附する評価額▲100億円,税額▲55億円②配当還元方式を利用できる株主の作出(33頁)持株会社化の際に無議決権株式を大量に発行し,議決権を後継者に集約した上で,孫を「中心的な同族株主以外の同族株主」として配当還元価額で贈与する評価額▲19億円,税額▲10億円(原則的評価方式の2.2%の額)③会社規模操作(純資産価額方式から類似業種比準方式へ)(34頁)事業会社は海外子会社からの配当による資金の吸上げで,持株会社は事業会社からの借入れで,それぞれ株式等保有特定会社の判定を外し,持株会社は吸収分割で管理部門と従業員を承継して小会社から大会社へ変わる評価額▲20億円,税額▲10億円④循環貸付と評価差額の作出(35頁)純資産価額方式で評価される持株会社と子会社との間で現金の寄附と借入れを循環させて持株会社の債務を膨らませ,さらに孫会社への債権の寄附で評価差額を作り出す評価額▲65億円,税額▲35億円⑤オペレーティング・リース(36頁)借入れで中古航空機を取得してリースし,翌期の多額の減価償却で利益と純資産が減った時点で株式を贈与し,リース終了後の売却益で回復させる評価額▲10億円,税額▲5億円⑥株主構成の操作(37頁)資産管理会社の株主を創業家と上場会社の元役員等に分散させ,どのグループも議決権の15%以上を持たない会社にして,全株式を配当還元方式で評価させる評価額約98%減(原則的評価方式の2%程度)⑦第三者の一時的な介在(38頁)同族関係にない第三者に株式の6割を配当還元価額で売却し,残りを子へ贈与した後,会社が第三者の株式を配当還元価額で自己株式として取得する評価額約60%減(贈与の評価額が200株分の80株分)⑧貸付用不動産の3年経過(39頁)持株会社が借入れで約10億円の貸付用不動産を購入し,取得後3年以内の取引価額評価の期間を過ぎた4年6か月後に株式を子へ贈与する評価額▲5.4億円,税額▲3.0億円
2 表の読み方

圧縮額は資料の記載であり,①から⑤及び⑧は評価額と税額の減少額で,⑥と⑦は割合で示されている。
⑦の約60%減は,甲が保有する200株のうち子へ贈与するのが80株となるため,贈与の評価額がスキーム前の5分の2(80株/200株)になることによる(第4回資料38頁)。
⑧の5.4億円は,貸付用不動産の取得価額約10億円と相続税評価額約4.6億円の差額であり,資料は持株会社の株式を「評価額0円として子へ贈与」すると記載している(同資料39頁)。
第4回議事要旨10頁~11頁は,事務局がこれらの事例を順に紹介したことを記録している。

第3 5つの型に分けた現行通達上の仕組み
1 本記事の分類

ここでは,8事例を,現行の財産評価基本通達のどの定めを利用しているかという観点から,次の5つの型に分ける。
この分類は本記事によるものであり,資料が示した分類ではない。
一つの事例が複数の型にまたがることがある。

(続きを読む...)国税庁が例示した非上場株式の評価額圧縮スキーム8類型――会社規模の操作,配当還元株主の作出及びオペレーティング・リース(AI作成)

配当還元方式の見直し案――少数株主の判定の3%基準,親族の範囲の縮小及び従業員持株会の固定価格評価(AI作成)

目次第1 配当還元方式の見直し案とは――この記事の対象と時点第2 現行の配当還元方式1 配当還元方式が適用される株主(財産評価基本通達188)2 配当還元価額の算式(財産評価基本通達188-2)3 還元率10%と2円50銭の意味第3 配当還元方式の見直しが検討される理由1 会計検査院が指摘した還元率10%2 市場平均収益率から見た還元率3 株主構成の操作による評価額の圧縮第4 配当還元方式の見直し案の内容1 同族関係者の「親族」の範囲の縮小2 3%基準――議決権保有割合と株式保有割合を用いる判定3 委任・代理契約のある者と一時的所有目的の者の除外4 計算方法の簡素化5 最低配当2円50銭と還元率をめぐる意見第5 従業員持株会の株式の固定価格評価1 第6回資料が示した案2 参考とされた最高裁平成21年2月17日判決第6 配当還元方式の見直しの実務への影響1 少数株主の相続・贈与2 親族の範囲の縮小は評価額を下げる方向にも働く3 現行のスキームへの依拠4 従業員持株会の規約の点検第7 関連記事第8 出典1 法令・通達2 裁判例3 有識者会議の資料4 公的資料5 関連記事
第1 配当還元方式の見直し案とは――この記事の対象と時点

国税庁は,取引相場のない株式(非上場株式)の相続税・贈与税の評価について,配当還元方式を廃止せずに「特別の例外的措置」として残した上で,適用される少数株主の範囲を絞り込む案を示している。
その柱は,①同族関係者の判定に用いる親族の範囲を配偶者,直系血族,兄弟姉妹及び1親等の姻族に狭めること,②議決権保有割合と株式保有割合を用いる3%基準に改めること,③前所有者と委任・代理契約を結んでいる者や一時的所有を目的とする者を除外すること,④計算を受取配当金と還元率によるものに簡素化することである。
あわせて,一定の要件を満たす従業員持株会の株式を固定価格で評価する案も示されている。

これらは,国税庁の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」で事務局が示したたたき台であり,通達改正が決まったものではない。
第5回会議(令和8年8月20日)の当日机上配付資料「取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」は,冒頭で「評価水準・税負担の在り方等も含め,最終的には税制改正プロセスにおいて決定いただく」としている(骨子1頁)。
また,第6回資料1頁は,配当還元方式(少数株主)を第7回会議以降の想定論点に位置付けており,議論はまだ途中である。

この記事は,令和8年9月19日現在で公表されている第5回までの議事要旨と第6回までの会議資料に基づき,配当還元方式に関する見直し案を整理するものである。
第6回会議の議事要旨は,この記事の作成時点で公表されていない。
会議全体の経緯と論点は,親記事の取引相場のない株式の評価に関する有識者会議にまとめている。

第2 現行の配当還元方式
1 配当還元方式が適用される株主(財産評価基本通達188)

取引相場のない株式は,株主の区分に応じて,同族株主等が取得した株式は原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式等)で,それ以外の少数株主等が取得した株式は特例的評価方式である配当還元方式で評価される(第1回資料1頁)。
配当還元方式が適用される「同族株主以外の株主等が取得した株式」は,財産評価基本通達188が次の4つに分けて定めている。

区分会社の状況配当還元方式の対象となる株主(1)同族株主のいる会社同族株主以外の株主(2)中心的な同族株主のいる会社中心的な同族株主以外の同族株主で,株式取得後の議決権が5%未満の者(役員及び法定申告期限までに役員となる者を除く)(3)同族株主のいない会社株主の1人及びその同族関係者の議決権の合計が15%未満である株主(4)中心的な株主がおり,同族株主のいない会社議決権の合計が15%以上のグループに属するが,株式取得後の議決権が5%未満の者(役員等を除く)

ここでいう「同族株主」とは,株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が議決権総数の30%以上(最も多いグループの議決権が50%超である会社では50%超)である場合のその株主及び同族関係者をいう(通達188(1))。
「同族関係者」は,法人税法施行令4条の「特殊の関係のある個人又は法人」とされている(同)。
「中心的な同族株主」は,同族株主の1人並びにその配偶者,直系血族,兄弟姉妹及び1親等の姻族の有する議決権の合計数が25%以上である場合のその株主をいう(通達188(2))。

評価明細書(第1表の1)でどのように判定するかは,取引相場のない株式(出資)の評価明細書の書き方で解説している。
議決権の数え方は種類株式があると変わる(通達188-5)ので,無議決権株式等がある会社については種類株式の相続税評価も参照されたい。

2 配当還元価額の算式(財産評価基本通達188-2)

財産評価基本通達188-2は,配当還元価額を次の算式で計算すると定めている。

(その株式に係る年配当金額)÷10%×(その株式の1株当たりの資本金等の額)÷50円

「年配当金額」は,通達183(1)の1株当たりの配当金額,すなわち直前期末以前2年間の剰余金の配当金額(将来毎期継続することが予想できない特別配当・記念配当等を除く。)の合計額の2分の1を,資本金等の額を50円で除した株数で割った金額である(通達183(1))。
そして,通達188-2は,年配当金額が「2円50銭未満のもの及び無配のものにあっては2円50銭とする」と定め,算定した金額が原則的評価方式による価額を超える場合は原則的評価方式の価額によるとしている。
同項の注は,年配当金額が「1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額」であるため,1株当たりの資本金等の額の50円に対する倍数を乗じることに留意するよう求めている。

たとえば,1株当たりの資本金等の額が500円(50円の10倍)で,資本金等の額50円当たりの年配当金額が5円であれば,配当還元価額は5円÷10%×10=500円となる。
無配であれば年配当金額は2円50銭とされ,2円50銭÷10%×10=250円となる(本記事の試算)。

3 還元率10%と2円50銭の意味

(続きを読む...)配当還元方式の見直し案――少数株主の判定の3%基準,親族の範囲の縮小及び従業員持株会の固定価格評価(AI作成)

資産管理会社の株式評価の見直し案――特定の評価会社の再編,純資産価額方式及び20%評価減の廃止(AI作成)

目次第1 この記事が扱う対象と時点第2 現行の特定の評価会社と資産管理会社の株式評価1 財産評価基本通達189が定める6つの区分2 資産構成の変動を無視する定め3 純資産価額方式の算式と20%評価減第3 見直し案における特定の評価会社の4類型1 純資産価額方式は特定の評価会社の評価方式へ2 第6回資料が示した4類型3 現行の区分との対応第4 資産管理会社の形式基準1 資産管理会社の定義2 事業承継税制の資産保有型会社・資産運用型会社3 判定方法の変更――帳簿価額で判定し,時価に洗い替えない4 検討中の修正点5 不動産賃貸業と「財産を法人に入れただけの会社」第5 純資産価額方式そのものの見直し1 純資産価額方式の三つの位置付け2 退職給付引当金を負債とする方向3 20%評価減の廃止案4 評価差額に対する法人税額等相当額(38%)5 純資産価額による頭打ちの要否6 第7回以降に残された論点第6 資産管理会社のオーナーにとっての実務上の注意1 現時点では現行通達で評価する2 特定会社の判定を外す対策の意味が変わり得る3 組織再編直後の会社・開業間もない会社4 生前贈与の計画第7 関連記事第8 出典1 法令・通達2 有識者会議の資料3 裁判例
第1 この記事が扱う対象と時点

令和8年9月16日の第6回「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」で,国税庁事務局は,現行の土地保有特定会社と株式等保有特定会社を「資産管理会社」に整理統合し,事業承継税制の資産保有型会社・資産運用型会社を参考にした形式基準により帳簿価額で判定した上で,純資産価額方式で評価する案を示した(第6回資料20頁)。
あわせて,純資産価額方式そのものについても,退職給付引当金を負債とする方向や,議決権割合50%以下の同族株主グループに属する株主等の20%評価減を「廃止せざるを得ないのではないか」とする考え方が示されている(第5回当日机上配付資料8頁)。
いずれも国税庁事務局のたたき台であり,決定した改正ではない。

本記事は,有識者会議の資料のうち,特定の評価会社,資産管理会社及び純資産価額方式に関する部分を取り上げ,現行の財産評価基本通達と対比して整理するものである。
基準日は令和8年9月19日現在であり,第6回会議の議事要旨は本記事の作成時点で公表されていない。
第5回の当日机上配付資料「取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」(以下「骨子」という。)は,見直し内容のほか評価水準・税負担の在り方等も含め「最終的には税制改正プロセスにおいて決定いただく」としている(骨子1頁)。
本記事で紹介する基準や割合は,いずれも今後変わり得る。

有識者会議の全体像は,親記事の取引相場のない株式の評価に関する有識者会議で扱っている。

第2 現行の特定の評価会社と資産管理会社の株式評価
1 財産評価基本通達189が定める6つの区分

現行の財産評価基本通達189は,「特定の評価会社の株式」を,評価会社の資産の保有状況,営業の状態等に応じて定めた会社の株式とし,次の6区分を置いている。
各区分の評価方法は,同通達189-2から189-6までが定めている。

区分(通達189)判定の要点評価方法(1)比準要素数1の会社配当・利益・簿価純資産の3要素のうちいずれか2が0で,かつ直前々期末基準でもいずれか2以上が0純資産価額(納税義務者の選択でL=0.25の併用方式)(2)株式等保有特定会社相続税評価額による総資産価額に占める株式等の価額の割合が50%以上純資産価額(選択によりS1+S2方式)(3)土地保有特定会社土地保有割合が,大会社等は70%以上,中会社等は90%以上純資産価額(4)開業後3年未満の会社等開業後3年未満,又は3要素がいずれも0純資産価額(5)開業前又は休業中の会社開業前又は休業中純資産価額(6)清算中の会社清算中清算分配見込額の複利現価

株式等保有特定会社の判定について,通達189(2)は,課税時期において評価会社の有する各資産を「この通達に定めるところにより評価した価額の合計額」のうちに占める株式,出資及び新株予約権付社債の価額の合計額の割合が50%以上である会社としている。
土地保有特定会社の判定も,同(3)が,各資産を「この通達の定めるところにより評価した価額の合計額」のうちに占める土地等の価額の合計額の割合(土地保有割合)で行うとしている。
つまり,現行の判定は帳簿価額ではなく相続税評価額で行う。

2 資産構成の変動を無視する定め

通達189は,株式等保有特定会社又は土地保有特定会社に該当するかどうかを判定する場合において,「課税時期前において合理的な理由もなく評価会社の資産構成に変動があり,その変動が次の(2)又は(3)に該当する評価会社と判定されることを免れるためのものと認められるときは,その変動はなかったものとして当該判定を行うものとする」と定めている。
比率基準による判定を外す行動を,現行通達自体が想定している。

3 純資産価額方式の算式と20%評価減

財産評価基本通達185本文は,1株当たりの純資産価額を,各資産の相続税評価額の合計額から各負債の金額及び評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除し,発行済株式数で除して計算するとしている。
その際,評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地等・家屋等は,課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。

評価差額に対する法人税額等に相当する金額について,通達186-2は,相続税評価額による純資産価額と帳簿価額による純資産価額の差額に「38%」を乗じて計算すると定めている。
この割合は,令和8年の改正(令8課評2-28外)で防衛特別法人税の創設を受けて37%から38%に改められたものであり,国税庁の改正説明によれば,令和8年4月1日以後に相続,遺贈又は贈与により取得した取引相場のない株式等の評価に適用される。
計算手順は取引相場のない株式(出資)の評価明細書の書き方で整理している。

通達185ただし書は,株式の取得者とその同族関係者の有する議決権の合計数が評価会社の議決権総数の50%以下である場合には,中会社・小会社の算式で用いる1株当たりの純資産価額に「100分の80を乗じて計算した金額とする」と定めている。
この20%評価減は,比準要素数1の会社(通達189-2),株式等保有特定会社(同189-3),土地保有特定会社及び開業後3年未満の会社等(同189-4)の純資産価額にも及ぶ。
他方,開業前又は休業中の会社(同189-5)には,ただし書の準用がない。

(続きを読む...)資産管理会社の株式評価の見直し案――特定の評価会社の再編,純資産価額方式及び20%評価減の廃止(AI作成)

類似業種比準方式は廃止されるのか――有識者会議の論点と会社法の価格決定で使われない理由(AI作成)

目次第1 この記事が扱う対象と時点1 類似業種比準方式は廃止されるのか(結論)2 第4回から第6回までの経過第2 現行の類似業種比準方式の仕組み1 類似業種比準方式の算式と比準要素2 しんしゃく割合と会社規模第3 類似業種比準方式の見直しが俎上に載った理由1 会計検査院の指摘と国税庁の再検証2 配当という比準要素の機能不全3 しんしゃく率の導入と比重の変更第4 類似業種比準方式の廃止・格下げをめぐる賛否1 廃止を支持する論拠2 維持又は限定的な見直しを求める論拠3 非経常的な損失の扱い4 昭和58年度税制改正答申の読み方の対立第5 会社法の価格決定で類似業種比準方式が使われない理由1 京都地決昭和62年5月18日を最後に見当たらない2 会社法の価格決定で用いられる評価方法3 税務評価と私法上の価格の目的の違い第6 株価上昇局面での再検証をめぐる対立1 日本商工会議所の再調査要求2 事務局の反論と数値第7 今後の見通しと実務上の注意1 決定前のたたき台であること2 類似業種比準方式を前提とした計画の点検3 事業承継税制の期限第8 関連記事第9 出典1 法令・通達2 有識者会議の資料3 裁判例4 その他の公的資料
第1 この記事が扱う対象と時点
1 類似業種比準方式は廃止されるのか(結論)

令和8年9月19日現在,取引相場のない株式の評価に用いる類似業種比準方式の廃止は決定していない。
ただし,国税庁は,令和8年8月20日の第5回「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」で,会社の規模区分と,類似業種比準方式・純資産価額方式による評価体系を廃止し,残余利益方式(インカムアプローチ)へ評価方式を原則一本化するたたき台を示している。
このたたき台は,見直し内容のほか評価水準・税負担の在り方も含めて「最終的には税制改正プロセスにおいて決定いただく」と自ら書いており,廃止の有無と時期は今後の税制改正の過程で決まる。

本記事は,令和8年9月19日現在で国税庁が公表している第1回から第6回までの会議資料,第1回から第5回までの議事要旨,日本商工会議所の委員提出意見書及び第5回会議の当日机上配付資料「取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」のうち,類似業種比準方式の存廃に関係する部分を読んで整理するものである。
第6回会議(令和8年9月16日)の議事要旨は作成中であり,会議での発言は第5回議事要旨までしか確認できない。
生成AIを用いて公表資料を通読し,数値と発言を原資料の該当頁と照合した上で構成した。
会議全体の経過と論点の一覧は,取引相場のない株式の評価に関する有識者会議で整理している。

2 第4回から第6回までの経過

類似業種比準方式の扱いは,第4回と第5回の間で段階が変わっている。
第4回会議(令和8年7月3日)では,国税庁事務局が,報道で「類似業種比準方式は廃止する」と断定的に書かれていることを懸念した委員に対し,「類似業種比準方式を廃止するということを現時点で決定しているわけではない」と答えている(第4回議事要旨3頁)。
同じ回の終わりには,委員から有識者会議として合意や方向性が決まったわけではないという理解でよいかと問われた座長が,「現時点で評価方式を一本化するであるとか,類似業種方式を廃止するといった合意はない」とした上で,議論を進めるために事務局にたたき台を示してもらうという認識を述べている(同25頁)。

これを受けて第5回で示されたのが,国税庁事務局のたたき台である。
したがって,第5回以降の資料は「事務局の考え方」であって,有識者会議の合意でも,通達改正でもない。
経過をまとめると,次のとおりである。

時点資料類似業種比準方式についての記載第4回(令和8年7月3日)第4回資料16頁「今後の類似業種比準方式の在り方をどう考えるか」と委員に意見を求める第4回(同日)第4回議事要旨3頁・25頁事務局は廃止を決定していないと説明し,座長は一本化・廃止の合意はないと確認第5回(令和8年8月20日)第5回資料1頁「類似業種比準方式を存置することは困難ではないか?」第5回(同日)骨子1頁「類似業種比準方式と純資産価額方式に基づく評価体系を廃止し,評価方式を原則一本化」第6回(令和8年9月16日)第6回資料11頁類似業種比準方式には理論的な根拠や実証的な裏付けがなく,他分野でも徐々に使われなくなってきたと整理

骨子1頁は,冒頭で「抜本的に評価体系の見直しを行うことが考えられる」とした上で,「その1」として「規模に応じた評価体系の廃止と評価方式の一本化」を掲げており,類似業種比準方式だけを単独で廃止するという書き方ではなく,規模区分と二つの方式を組み合わせた現行の体系全体を廃止するという書き方になっている。

第2 現行の類似業種比準方式の仕組み
1 類似業種比準方式の算式と比準要素
(1) 財産評価基本通達180の算式

財産評価基本通達180は,類似業種比準価額を,「類似業種の株価並びに1株当たりの配当金額、年利益金額及び純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)を基とし」て計算した金額と定めている。
算式は,A×{(Ⓑ/B+Ⓒ/C+Ⓓ/D)÷3}×0.7である。
Aは類似業種の株価,Ⓑ・Ⓒ・Ⓓは評価会社の1株当たりの配当金額・利益金額・純資産価額(帳簿価額によって計算した金額),B・C・Dは課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの配当金額・年利益金額・純資産価額である。
Ⓑ・Ⓒ・Ⓓは,1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額として計算する(同項(1)の注)。

(2) 比準要素の計算期間

同通達183によれば,配当金額は直前期末以前2年間の平均であり,特別配当・記念配当等で将来毎期継続することが予想できない金額を除く。
利益金額は直前期末以前1年間の法人税の課税所得金額を基に計算し,「固定資産売却益、保険差益等の非経常的な利益の金額を除く」とされ,納税義務者の選択により直前期末以前2年間の平均によることもできる。
純資産価額は,直前期末の資本金等の額と利益積立金額に相当する金額の合計額による。

(続きを読む...)類似業種比準方式は廃止されるのか――有識者会議の論点と会社法の価格決定で使われない理由(AI作成)

非上場株式の相続税評価は見直しでどれだけ上がるか――国税庁の1,378社試算と会社規模別の増減(AI作成)

目次第1 この記事が扱う対象と時点第2 国税庁の1,378社試算の対象と前提1 試算の対象2 試算の前提と資料の注記第3 会社規模別の評価額の増減1 現行の申告評価額の中央値に対する増減2 純資産価額を100とした評価水準3 現行の申告評価額以下となる会社の割合第4 現行の評価水準が会社規模で違う理由1 会計検査院の指摘と国税庁の再検証2 規模区分が評価額を分ける仕組み3 規模区分の廃止が大会社の評価額を大きく動かす理由第5 国税庁の試算を読むときの注意点1 中央値の比較であって個々の会社の予測ではない2 還元率・しんしゃく率は仮定であり,次回以降に議論される3 子会社株式等の個別調整は反映されていない4 日本商工会議所の「2倍から5倍近く」とは直接比べない5 経済産業省・中小企業庁の批判第6 自社の評価額がどうなるかを考える手掛かり1 ROEと還元率の関係2 上がりやすい会社と下がりやすい会社3 事業承継税制の期限との関係第7 関連記事第8 出典1 法令・通達2 有識者会議の資料3 その他の公的資料
第1 この記事が扱う対象と時点

国税庁の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」第6回(令和8年9月16日)の資料によれば,残余利益方式による評価額は,現行の申告評価額の中央値と比べて,大会社で+50.3%~+114.7%,中会社で▲1.9%~+40.2%,小会社で▲31.6%~▲1.9%となる(第6回資料9頁)。
この幅は,しんしゃく率を0.7から1.0まで動かした場合のものであり,還元率8%,加算期間5年という前提も含めて,いずれも試算のための仮定値である。
つまり,見直しによって評価額が上がるのは主に大会社であり,小会社の中央値はむしろ下がる,というのが国税庁自身の試算の示す方向である。

本記事は,この1,378社の試算を中心に,試算の前提,会社規模別の増減,現行の評価水準が規模によって違う理由,試算を読むときの注意点を整理するものである。
基準日は令和8年9月19日現在であり,第6回会議の議事要旨はこの時点で公表されていない。
有識者会議の全体像と第1回から第6回までの経過は,親記事である取引相場のない株式の評価に関する有識者会議で扱っている。

見直しは,国税庁事務局がたたき台として示した段階にとどまり,決定されたものではない。
第5回会議の当日机上配付資料「取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」自身が,「評価水準・税負担の在り方等も含め、最終的には税制改正プロセスにおいて決定いただく」と書いている(第5回机上配付資料1頁)。
したがって,本記事の数値は「国税庁案をある仮定の下で当てはめるとこうなる」という目安であり,改正後の評価額を示すものではない。

第2 国税庁の1,378社試算の対象と前提
1 試算の対象

試算の対象は,令和2年分から令和5年分までの相続税及び贈与税の申告のうち,取得した財産に取引相場のない株式がある申告の中から無作為に抽出した評価会社のうち,類似業種比準価額及び純資産価額の両方を算出している評価会社である(第6回資料9頁)。
資料は,これを「会計検査院及び国税庁が実施した実態把握の対象申告データ(4年間分)」と説明している(同頁)。
会計検査院が検査した令和2年分・令和3年分と,国税庁が独自に実態把握した令和4年分・令和5年分を合わせたものである(第1回資料4頁・6頁)。

会社規模別の内訳とROE(自己資本利益率)の中央値は,次のとおりである(第6回資料9頁)。

区分社数ROEの中央値全体1,378社1.8%大会社128社3.9%中会社820社2.1%小会社430社0.6%

大会社・中会社・小会社の社数を足すと1,378社になる。
対象の約6割は中会社であり,大会社は約9%にとどまる(本記事の計算では,大会社9.3%,中会社59.5%,小会社31.2%)。

2 試算の前提と資料の注記

試算の前提として資料が明記しているのは,次の3点である(第6回資料9頁の注記)。
①残余利益方式の評価額は,加算期間5年,還元率8%と仮定したこと
②申告における類似業種比準方式の算出に用いる1株当たりの配当金額(Ⓑ),利益金額(Ⓒ)及び純資産価額(Ⓓ)を使用したこと
③完全子会社株式の修正等の個別調整事項は考慮していないこと

②は見落としやすいが重要である。
国税庁案の算式は,課税時期前5年の正常利益の平均を年利益金額とし(第6回資料6頁・8頁),直前期末の簿価純資産に5年分の残余利益の割引現在価値を加えて,しんしゃく率を掛けるものである(同資料7頁・8頁)。
これに対し試算は,現行の申告書に記載された類似業種比準方式の比準要素を流用している。
したがって,試算は,法人税申告書の数値を基に5年平均の利益を用いる国税庁案の算式どおりに計算したものではなく,手元の申告データで近似したものと理解すべきである。

残余利益方式の算式そのもの,還元率及びしんしゃく率の意味は,姉妹記事の残余利益方式とはで扱う。

(続きを読む...)非上場株式の相続税評価は見直しでどれだけ上がるか――国税庁の1,378社試算と会社規模別の増減(AI作成)

残余利益方式とは――国税庁案の算式(簿価純資産+5年分の残余利益×しんしゃく率)と計算例(AI作成)

目次第1 残余利益方式とは何か――この記事の対象と時点第2 残余利益モデルの考え方1 残余利益とクリーンサープラス関係2 配当還元モデル・DCF法との比較第3 国税庁案の残余利益方式の算式1 算式の全体2 直前期末の純資産価額(D′0)は法人税法上の簿価3 年利益金額と年配当金額4 還元率(re)5 加算期間を5年とする理由6 ターミナルバリューを加算しない理由7 しんしゃく率8 子会社株式と従業員持株会株式第4 国税庁が示した計算例1 計算例①(年利益金額1,000万円・年配当金額200万円)2 計算例②(年利益金額500万円・年配当金額100万円)3 利益ゼロ・無配の会社の水準――「事実上の評価減効果」第5 算式から読み取れる性質(本記事の試算)1 内部留保が多いほど評価額が下がる2 ROEと還元率の関係3 5年での打切りとしんしゃく率の意味第6 残された論点1 減損・利益操作・役員報酬2 子会社・持株会・純資産価額による頭打ち第7 関連記事第8 出典1 法令2 有識者会議の資料3 関連記事
第1 残余利益方式とは何か――この記事の対象と時点

残余利益方式とは,取引相場のない株式(非上場株式)の相続税評価について,国税庁が有識者会議に示している新しい評価方式の案である。
直前期末の法人税法上の簿価純資産に,将来5年分の残余利益(利益から株主が通常期待する収益を差し引いた超過収益)の現在価値を加え,その合計にしんしゃく率を乗じて評価額を求める。
これは国税庁事務局のたたき台であり,採用が決まったものではない。

国税庁の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」は,令和8年8月20日の第5回会議で,規模区分と類似業種比準方式・純資産価額方式による現行の評価体系を廃止し,原則的評価方式を残余利益方式に一本化する見直しの骨子を示した(第5回当日机上配付資料「取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」1頁)。
続く令和8年9月16日の第6回会議では,残余利益方式の算式,加算期間及び計算例が具体的に示された(第6回資料6頁~8頁・26頁~27頁)。
もっとも,骨子自身が「評価水準・税負担の在り方等も含め,最終的には税制改正プロセスにおいて決定いただく」と明記しており(骨子1頁),還元率やしんしゃく率の値も決まっていない。
国税庁は,収益力の高い会社ほど評価額が高くなるのは相続税法22条の「時価」として自然であり,事業承継への配慮は政策税制で行うべきとの立場である(第5回議事要旨3頁~4頁)。

この記事は,令和8年9月19日現在で公表されている第5回までの議事要旨と第6回までの会議資料に基づき,残余利益方式の考え方,国税庁案の算式及び資料の計算例を整理し,算式から読み取れる性質を試算で確かめるものである。
第6回会議の議事要旨は,この記事の作成時点で公表されていない。
会議全体の経緯と論点は,親記事である取引相場のない株式の評価に関する有識者会議にまとめている。
現行の評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式)の全体像は遺産相続における非上場株式の評価方法を参照されたい。

第2 残余利益モデルの考え方
1 残余利益とクリーンサープラス関係

残余利益とは,ある期の利益から,期首の純資産に株主が通常期待する収益率(資本コスト)を乗じた額を差し引いたものである。
第6回資料8頁は,これを,利益から前期の簿価純資産に期待収益率を乗じた額を差し引いたものとして表し,差し引く部分を「株主が通常期待する収益=企業が株主に払うべきコスト」と説明している。
残余利益がプラスであれば,企業は株主の期待を上回る利益を上げていることになる(同頁)。

残余利益モデルは,株式の価値を「期首の純資産+将来の残余利益の現在価値の合計」として求める。
この計算の前提となるのがクリーンサープラス関係であり,第6回資料5頁は,これを「期首の自己資本から期末の自己資本への変化額が,会社の株主との間の資本取引を除いて,すべて損益計算書によって説明されている関係」と説明している。
国税庁案では「前期末の純資産価額+年利益金額-年配当金額=当期末の純資産価額」という形で用いられる(同資料7頁)。

2 配当還元モデル・DCF法との比較

第3回会議で櫻井久勝委員は,インカム・アプローチの3モデル(配当割引モデル・割引キャッシュフローモデル・残余利益モデル)は将来の予測が正しい限り理論上は同じ評価額に到達するとした上で,実践的な観点から残余利益モデルが優れていると報告した(親記事の紹介による)。
国税庁は,第5回資料1頁で3つの方式を次のように比較している。

項目配当還元方式DCF法残余利益方式適用ができない企業配当を操作している企業,配当をゼロに抑制している企業等成長期(スタートアップ等)の企業,設備投資等によりFCFがマイナスの企業特には見あたらない予測期間以降の残存価値相対的に最も大きい相対的に大きい明らかに小さい(現時点の保有資産を評価するため,将来予測への依存が小さい)将来予測の難易度配当の時期は裁量的に決定できるため予測は困難FCFの予測は困難将来利益の予測は比較的容易(過去の実績から一定の予測可能)

骨子は,これを受けて「適用可能範囲・将来予測への依存度・執行可能性の観点から『残余利益モデル』を採用」するとしている(骨子1頁)。
残余利益方式では直前期末の簿価純資産が評価額の大部分を占めるため,将来予測の誤差の影響が相対的に小さいというのが国税庁の説明である。

第6回資料11頁は,類似業種比準方式には「理論的な根拠や実証的な裏付けがなく,他分野でも徐々に使われなくなってきた」とし,学術上の理論的根拠を持つ残余利益モデルに税務上の評価としての一定の修正を加えた方式への見直しは「現行制度に比べて,より合理的な評価方法への見直しであると考える」と位置付けている。
類似業種比準方式の見直しの行方は,類似業種比準方式は廃止されるのかで扱う。

第3 国税庁案の残余利益方式の算式

(続きを読む...)残余利益方式とは――国税庁案の算式(簿価純資産+5年分の残余利益×しんしゃく率)と計算例(AI作成)

経済産業省・中小企業庁の「取引相場のない株式の評価」見直し意見――令和8年9月16日の意見書と令和9年度税制改正要望(AI作成)

目次第1 この記事が扱う対象と時点1 意見書の要旨2 意見書の作成名義と位置付け3 基準日と資料の範囲第2 意見書が前提とする見直しの背景1 意見書による背景の整理2 会計検査院の指摘の読み方3 「過去10年間で14件」の出所第3 令和9年度税制改正要望の文言第4 意見書の二つの柱1 影響の分析と丁寧な議論2 国の政策的方向性との関係第5 有識者会議での議論との対応関係1 国税庁事務局の立場2 日本商工会議所の主張3 三者の主張の対比第6 今後の見通しと実務上の注意1 評価水準は税制改正プロセスで決まる2 事業承継税制の特例措置の期限3 意見書を読むときの注意第7 出典1 法令2 経済産業省・中小企業庁の資料3 有識者会議の資料4 その他の公的資料
第1 この記事が扱う対象と時点
1 意見書の要旨

経済産業省・中小企業庁は,令和8年9月16日付けの「『取引相場のない株式の評価』見直しに係る意見」において,国税庁の有識者会議で進められている非上場株式の相続税評価の見直しについて,影響の分析を尽くした丁寧な議論を求め,政府の政策の方向性に逆行する見直しとならないよう要望した。
意見書は,現在の見直し案が資産規模の大きい企業,収益性の高い企業及び子会社を保有する企業の評価額を大幅に増大させ,事業承継と成長投資を妨げるおそれがあるとし,これを「政府の政策の方向性に逆行するものであると言わざるを得ない」と述べている(意見書3頁)。
見直しに反対すると述べているのではなく,現行の評価方式の枠内でとり得る対応の検討と,業種や経営状況に応じた具体的な試算・検証を求める内容である。

2 意見書の作成名義と位置付け

意見書の作成名義は,経済産業省,中小企業庁,経済産業政策局及びイノベーション・環境局であり,本文は3頁である(中小企業庁ウェブサイト掲載のPDF)。
日付の令和8年9月16日は,国税庁の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の第6回会議の開催日と同じである。
同会議の委員は研究者,日本商工会議所,日本税理士会連合会及び実務家から成り,中小企業庁は全国商工会連合会とともにオブザーバーとして参加している(国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」委員名簿)。
つまり,意見書は会議の委員の提出資料ではなく,会議の外から所管官庁が示した意見である。
意見書の構成は,前文(見直しの背景と税制改正要望),「(1)評価額の変動による事業承継への影響について,業種や経営状況等に応じた,個別具体的なケース別,類型別及びマクロでの分析・試算を示し,拙速ではなく丁寧に検証・議論すべき」及び「(2)国の政策的方向性に逆行するような見直しとならないこと」の三つに分かれる。

3 基準日と資料の範囲

この記事は,令和8年9月19日現在で公表されている資料に基づく。
有識者会議の資料は第6回まで,議事要旨は第5回まで公表されており,第6回の議事要旨は国税庁の会議ページで「作成中」とされている。
したがって,意見書が第6回会議でどのように扱われたか,委員や事務局がどう応じたかは,この記事の作成時点では確認できない。

有識者会議で議論されている見直しは,国税庁事務局のたたき台の段階であり,決定されたものではない。
第5回会議の当日机上配付資料「取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」自身が,「評価水準・税負担の在り方等も含め,最終的には税制改正プロセスにおいて決定いただく」としている(骨子1頁)。
会議全体の経緯と論点は,親記事である取引相場のない株式の評価に関する有識者会議にまとめている。

第2 意見書が前提とする見直しの背景
1 意見書による背景の整理

意見書は,見直しの背景を二つに整理している。
第1は,会計検査院の令和5年度決算検査報告における指摘であり,意見書は,その趣旨を「類似業種比準方式では,特に規模の大きい企業ほど申告時の株式の評価額(対純資産価額)が相対的に低く算定される傾向があり,異なる規模区分間で株式の評価の公平性が必ずしも確保されているとは言えない」旨の指摘として要約している。
第2は,「現行の評価体系が各種租税回避スキームの温床となっているとの国税庁の認識」である(いずれも意見書1頁)。
第2の点は,第4回会議で事務局が,見直しは現在の評価方法の枠組みが「各種租税回避スキームの温床」となっている状況を踏まえたものであり,「あくまで評価の適正化を目的としており,全体として相続税の増税を目的で行うものではない」と回答したことと対応する(第4回議事要旨2頁~3頁)。

2 会計検査院の指摘の読み方

意見書は,会計検査院の報告について,「異なる規模区分間の公平性に関する課題が指摘されているが,規模区分に応じて異なる評価方式を定めることや,現行の類似業種比準方式そのものが不適切であるとまでは指摘されていないものと認識している」と述べる(意見書1頁)。
この読み方を,会計検査院の報告の原文と照らし合わせる。

報告の所見は,各評価方式の間で評価額にかい離が生じていることにより,「類似業種比準価額を適用する割合がより高くなる規模の大きな区分の会社ほど評価額が相対的に低く算定されることになり,この状況は評価通達の改正等の影響により拡大したと思料される」とする。
その上で,「取引相場のない株式では各評価方式による評価額が同水準となることが必ずしも予定されていないことを考慮したとしてもなお」,異なる規模区分の株式を取得した者の間で「株式の評価の公平性が必ずしも確保されているとはいえないと思料される」と述べる。

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損害賠償金の遅延損害金に税金はかかるか―雑所得となる場合と非課税となる場合(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象2 結論第2 遅延損害金の法的性質1 民法419条の損害賠償2 税務上問題になる点第3 非課税所得を定める条文と国税庁の資料1 所得税法9条1項18号2 所得税法施行令30条3 国税庁の通達・タックスアンサー第4 国税不服審判所平成22年4月22日裁決1 事案の概要2 賃金相当額の損害賠償金に係る遅延損害金は雑所得3 弁護士費用賠償金とその遅延損害金は非課税4 この裁決が判断していないこと第5 交通事故の慰謝料・休業損害等に係る遅延損害金1 元本の扱いは国税庁資料で確認できる2 遅延損害金の扱いを明示した国税庁資料は見当たらない3 考え方が分かれ得る理由4 実務上の留意点第6 雑所得となる場合の申告と源泉徴収1 雑所得の金額と年分2 確定申告が不要な場合(所得税法121条)3 源泉徴収はされないのが通常である第7 法人・個人事業者が受け取る場合第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例・裁決3 公的資料4 文献
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象

本記事は,個人が不法行為に基づく損害賠償金とともに遅延損害金の支払を受けた場合に,その遅延損害金に所得税がかかるかを説明する。
調査基準日は令和8年9月19日であり,法令はe-Gov法令検索の現行条文,国税庁の通達・質疑応答事例・タックスアンサー,国税不服審判所の公表裁決並びに裁判所HP及び国税庁の税務訴訟資料で確認した裁判例の範囲で書く。
遅延損害金がいつから発生するか,利率が年3%か年5%かといった民法上の論点は扱わず,関連記事へ送る。

損害賠償金の課税関係は,元本部分と遅延損害金部分を分けて考える必要がある。
元本が非課税であることと,遅延損害金が非課税であることは,別々に検討される問題だからである。

2 結論

結論は次のとおりである。
①賃金相当額の損害賠償金のように,元本そのものが本来の所得や得べかりし利益の補塡として非課税所得に当たらない場合,その遅延損害金は雑所得に当たるとされた(国税不服審判所平成22年4月22日裁決)。
②同じ裁決は,不法行為と相当因果関係のある弁護士費用の賠償金とその遅延損害金は,支出を余儀なくされた弁護士費用という財産的損害を補塡するものとして,所得税法施行令30条2号の非課税所得に当たるとした。
③国税庁の質疑応答事例も,懲戒処分の取消しに伴って支払われる給与差額に付された遅延損害金を,支払われた日の属する年分の雑所得としている。
④交通事故の慰謝料,治療費,休業損害,逸失利益等の元本が非課税であることは,所得税法9条1項18号,同法施行令30条1号及び国税庁のタックスアンサー(No.1700・No.1705)で確認できる。
⑤しかし,それらの元本に係る遅延損害金が非課税か雑所得かを明示した国税庁の通達,質疑応答事例又はタックスアンサーは,本記事の調査では見当たらなかった。
⑥上記の裁決も,心身に加えられた損害の賠償金に係る遅延損害金については判断していない。
⑦資産に加えられた損害(商品先物取引の勧誘による損失)の賠償金については,元本を非課税所得としつつ,その遅延損害金を雑所得とした裁判例がある(大分地裁平成21年7月6日判決及びその控訴審の福岡高裁平成22年10月12日判決)が,心身に加えられた損害の賠償金に係る遅延損害金を判断したものではない。
⑧したがって,交通事故の慰謝料等に係る遅延損害金は,非課税と考える方向と雑所得と考える方向の双方があり得る論点であり,本記事では結論を断定しない。
⑨遅延損害金が雑所得となる場合,通常は支払の際に源泉徴収されないため,受け取った本人が確定申告の要否を判断する。
⑩給与等の収入金額が2,000万円以下で,1か所から給与を受け,その全部について源泉徴収又は年末調整がされる給与所得者は,給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であれば,所得税の確定申告は原則として不要である(所得税法121条1項1号)。
⑪法人が受け取る遅延損害金は,法人税法上の益金の額に算入される。

第2 遅延損害金の法的性質
1 民法419条の損害賠償

遅延損害金は,金銭債務の履行が遅れたことによる損害賠償である。
民法419条1項は,「金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。」と定めている。
同条2項により,債権者は損害の証明を要しない。

不法行為に基づく損害賠償債務は,催告を要せず,損害の発生と同時に遅滞に陥る(最高裁判所第三小法廷昭和37年9月4日判決(昭和34年(オ)第117号,民集16巻9号1834頁))。
したがって,交通事故の損害賠償金を事故から数年後に受け取る場合,元本とは別に相当額の遅延損害金が付くことがある。
起算日の詳細は不法行為・交通事故の遅延損害金はいつから発生するか,利率は遅延損害金の利率は年3%か年5%かで説明している。

2 税務上問題になる点

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相続税の障害者控除―対象となる相続人,特別障害者の範囲,85歳までの年数の計算,扶養義務者からの控除及び所得税との違い(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象と基準日2 結論の要旨第2 障害者控除の仕組み1 条文と控除額2 障害者と特別障害者の定義第3 控除を受けられる人1 財産を取得した時に日本国内に住所がある人2 法定相続人であること3 財産を取得した時に障害者であること第4 障害者・特別障害者の範囲1 一般障害者2 特別障害者3 手帳の交付を受けていない場合4 成年被後見人5 要介護認定だけでは対象にならない第5 所得税の障害者控除との違い1 常に就床を要し,複雑な介護を要する者2 所得税で障害者控除を受けていたことの意味第6 控除額の計算1 本人の控除額2 引き切れない額は扶養義務者から控除する3 過去の相続で障害者控除を受けていた場合第7 申告と遺産分割の実務1 申告で確認する資料2 遺産分割との関係第8 出典1 法令2 通達3 国税庁の解説・文書回答
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象と基準日

本記事は,相続人に障害者がいる場合に相続税額から差し引かれる障害者控除(相続税法19条の4)について,対象となる人,障害者と特別障害者の範囲,控除額の計算,控除しきれない額の扱い及び所得税の障害者控除との違いを,条文,政令,通達及び国税庁の公表資料に基づいて整理するものであり,AIを用いて作成した。
法令は令和8年9月17日時点でe-Gov法令検索に掲載されている現行条文により,通達及び国税庁の資料は同日に国税庁ウェブサイトで確認した内容による。
計算例は,条文の定めに当てはめた本記事の試算であり,国税庁が示した例ではない。

2 結論の要旨

相続税の障害者控除は,一定の要件を満たす障害者である相続人の相続税額から,85歳に達するまでの年数に応じた金額を差し引く制度である。
①控除額は,85歳に達するまでの年数1年につき10万円,特別障害者であれば20万円であり,1年未満の端数は1年に切り上げる。
②対象は,相続又は遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所がある人に限られ,放棄がなかったものとした場合の法定相続人でなければならない。
③成年被後見人のように精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人は,特別障害者に当たる。
④本人の相続税額から引き切れない控除額は,その人の扶養義務者の相続税額から差し引く。
⑤「常に就床を要し、複雑な介護を要する者」は,所得税では認定がなくても特別障害者とされるが,相続税では市町村長等の認定を受けていることが要件となるため,所得税で障害者控除を受けていたことだけで相続税の要件を満たすとは限らない。

第2 障害者控除の仕組み
1 条文と控除額
(1) 相続税法19条の4第1項

相続税法19条の4第1項は,「相続又は遺贈により財産を取得した者(第一条の三第一項第二号から第四号までの規定に該当する者を除く。)が当該相続又は遺贈に係る被相続人の前条第一項に規定する相続人に該当し、かつ、障害者である場合には、その者については、第十五条から前条までの規定により算出した金額から十万円(その者が特別障害者である場合には、二十万円)にその者が八十五歳に達するまでの年数(当該年数が一年未満であるとき、又はこれに一年未満の端数があるときは、これを一年とする。)を乗じて算出した金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。」と定めている。
国税庁の「相続税の申告のしかた(令和7年分用)」は,年数を「相続開始の日からその人が満85歳に達するまでの年数」と説明している。

(2) 控除の順序

条文は,相続税法15条から19条の3までの規定により算出した金額から障害者控除額を差し引くとしている。
19条の2は配偶者に対する相続税額の軽減,19条の3は未成年者控除であるから,障害者控除は,これらの規定を適用した後の各人の相続税額から差し引くことになる。
配偶者の税額軽減の計算方法は,相続税における配偶者の税額の軽減で説明している。

2 障害者と特別障害者の定義

相続税法19条の4第2項は,障害者を「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者、失明者その他の精神又は身体に障害がある者で政令で定めるもの」とし,特別障害者を「同項の障害者のうち精神又は身体に重度の障害がある者で政令で定めるもの」としている。
これを受けた相続税法施行令4条の4は,所得税法施行令10条の障害者及び特別障害者の範囲を大部分でそのまま引用しつつ,後記第5で述べる点で異なる定めを置いている。

第3 控除を受けられる人
1 財産を取得した時に日本国内に住所がある人

障害者控除の条文は,相続税法1条の3第1項2号から4号までに該当する者を除いている。
そのため,控除を受けられるのは,同項1号に当たる者,すなわち相続又は遺贈により財産を取得した時に日本国内に住所を有する者に限られる。
国税庁のタックスアンサーも,対象者を「相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある人(一時居住者で、かつ、被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)」としている。

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法人版事業承継税制の特例措置の期限――特例承継計画は令和9年9月30日,贈与・相続は同年12月31日まで(AI作成)

目次第1 この記事が扱う対象と時点1 対象とする制度2 調査基準日と資料第2 特例措置の概要1 一般措置との違い2 相続の「80%」の意味3 対象は議決権に制限のない株式に限られる4 対象となる会社は中小企業者に限られる第3 特例措置の三つの期限1 特例承継計画の提出期限――令和9年9月30日2 贈与・相続の期限――令和9年12月31日3 認定申請と申告の期限4 個人版事業承継税制の期限第4 延長の経緯と期限後の扱い1 計画の提出期限だけが1年6月延びた2 令和10年以降の扱い第5 猶予を受けた後に残る義務と免除1 猶予税額を納付することになる場合2 雇用確保要件3 免除される場合と贈与者の死亡第6 株式の評価見直しの動きとの関係1 猶予税額は株式の価額で決まる2 国税庁の有識者会議で示された方向3 期限と評価見直しを並べて考えるときの視点第7 出典1 法令2 国税庁・中小企業庁の資料3 税制改正大綱4 評価見直しに関する資料
第1 この記事が扱う対象と時点
1 対象とする制度

この記事は,非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除の特例(いわゆる法人版事業承継税制の特例措置)の期限を扱う。
特例措置は,租税特別措置法70条の7の5(贈与)及び70条の7の6(相続)に定められ,平成30年度税制改正で10年間の時限措置として設けられた。
期限は,特例承継計画の提出期限,贈与・相続の期限,都道府県知事の認定申請の期限の三つが別々に定められており,令和8年度改正で延びたのは特例承継計画の提出期限だけである。
個人事業者の事業用資産を対象とする個人版事業承継税制については,期限の違いに触れるにとどめる。

2 調査基準日と資料

本記事は,令和8年9月17日時点で,e-Gov法令検索に掲載された租税特別措置法,中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下「円滑化法」という。)及び同法施行規則(以下「円滑化規則」という。)の条文,中小企業庁及び国税庁の公表資料を確認して作成した。
国税庁の説明資料は「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし」(令和8年7月)を,中小企業庁の資料は申請マニュアル第1章(令和8年6月改訂版)及び「特例承継計画に関する指導及び助言を行う機関における事務について」(令和8年4月改訂版)を用いた。
本記事は制度の期限と構造を説明するものであり,個別の会社が特例措置の要件を満たすか,どの時期に承継するのが有利かは,株主構成,財務内容及び後継者の状況によって異なる。

第2 特例措置の概要
1 一般措置との違い

法人版事業承継税制には,一般措置と,平成30年度改正で設けられた特例措置がある。
国税庁のあらまし資料上1頁の比較表によれば,主な違いは次のとおりである。

項目特例措置一般措置事前の計画策定等特例承継計画の提出(平成30年4月1日から令和9年9月30日まで)不要適用期限平成30年1月1日から令和9年12月31日までの贈与・相続等なし対象株数全株式総株式数の最大3分の2まで納税猶予割合100%贈与100%,相続80%承継パターン複数の株主から最大3人の後継者複数の株主から1人の後継者雇用確保要件弾力化承継後5年間平均8割の雇用維持が必要事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除ありなし

一般措置の対象株式について,租税特別措置法70条の7の2第1項は「発行済株式又は出資(議決権に制限のない株式又は出資に限る。)の総数又は総額の三分の二に達するまでの部分」に限ると定めているが,特例措置の70条の7の6第1項にはこの限定がない。
後継者の人数についても,特例措置の条文は「二人又は三人までに限る。」とし(70条の7の5第2項6号,70条の7の6第2項7号),一般措置は「一の者に限る。」としている(70条の7の2第2項3号)。

2 相続の「80%」の意味

一般措置の相続で猶予されるのは,対象株式の価額を課税価格とみなして計算した相続税額から,価額の100分の20を課税価格とみなして計算した相続税額を控除した残額である(租税特別措置法70条の7の2第2項5号)。
相続税は累進税率であるから,この計算による猶予額は,相続税額の80%と一致するとは限らない。
特例措置の相続では,この控除の定めがなく,対象株式の価額を課税価格とみなして計算した相続税額そのものが猶予額となる(同法70条の7の6第2項8号)。

3 対象は議決権に制限のない株式に限られる

特例措置の対象となる株式は,条文上,議決権に制限のない株式等に限られる。
事業承継の設計で無議決権株式を後継者以外の相続人に取得させる方法を併用する場合,その無議決権株式は納税猶予の対象にならない。
種類株式の相続税評価については,種類株式の相続税評価で扱っている。

4 対象となる会社は中小企業者に限られる

特例措置の対象となる会社は,円滑化法2条に規定する「中小企業者」のうち,同法の認定を受けた会社である(租税特別措置法70条の7の5第2項1号)。
円滑化法2条1号は,製造業その他の業種について「資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人」と定め,卸売業は資本金1億円以下又は従業員100人以下,サービス業は資本金5000万円以下又は従業員100人以下,小売業は資本金5000万円以下又は従業員50人以下の会社としている(同条2号から4号まで。政令で定める業種は同条5号による。)。
資本金の基準と従業員数の基準は,どちらか一方を満たせば足りるので,資本金が基準を超えていても従業員数が基準以下であれば中小企業者に当たる。

(続きを読む...)法人版事業承継税制の特例措置の期限――特例承継計画は令和9年9月30日,贈与・相続は同年12月31日まで(AI作成)

種類株式の相続税評価――配当優先の無議決権株式・社債類似株式・拒否権付株式と国税庁の取扱い(AI作成)

目次第1 この記事が扱う対象と時点1 対象とする株式と税目2 調査基準日と資料第2 会社法上の種類株式1 内容の異なる9つの事項2 株主ごとの異なる取扱い3 導入の手続4 議決権制限株式の発行数の制限第3 評価の前提となる考え方1 議決権の有無は原則として評価額に影響しない2 株主区分は議決権で判定する第4 国税庁の文書回答が示す三つの類型1 文書回答の位置付け2 配当優先の無議決権株式3 社債類似株式4 拒否権付株式第5 三つの類型以外の株式と裁判例1 国税庁の公表資料で確認できない類型2 上場会社が発行した非上場の優先株式3 裁判例と公表裁決第6 評価見直しの議論と実務上の注意1 有識者会議で示された見直しの案2 設計の段階で確認すること第7 出典1 法令・通達2 国税庁の文書回答・情報・質疑応答事例3 公表裁決・裁判例の検索4 中小企業庁の資料5 評価見直しに関する資料
第1 この記事が扱う対象と時点
1 対象とする株式と税目

この記事は,非上場会社が発行する種類株式を相続,遺贈又は贈与により取得した場合に,相続税・贈与税の計算上その株式をどのように評価するかを扱う。
中心となるのは,国税庁が平成19年に文書回答で評価方法を示した三つの類型,すなわち配当優先の無議決権株式,社債類似株式及び拒否権付株式である。
それ以外の種類株式と,非公開会社が定款で定める株主ごとの異なる取扱い(いわゆる属人的株式)については,国税庁の公表資料で確認できる範囲を示す。
会社法上の価格決定や遺産分割における株式の評価は,相続税評価とは別の問題である。

2 調査基準日と資料

本記事は,令和8年9月17日時点で,e-Gov法令検索に掲載された会社法の条文,国税庁の財産評価基本通達,文書回答事例,情報及び質疑応答事例,中小企業庁の公表資料並びに国税庁の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の資料を確認して作成した。
裁判例は裁判所ウェブサイトの裁判例検索で,公表裁決は国税不服審判所の公表裁決事例で確認した。
個別の会社の株式の評価額は,株主構成,議決権の数,配当の実績及び財務内容によって異なる。

第2 会社法上の種類株式
1 内容の異なる9つの事項

会社法108条1項は,「株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。」と定めている。
その事項は,①剰余金の配当,②残余財産の分配,③株主総会において議決権を行使することができる事項,④譲渡による取得に会社の承認を要すること,⑤株主が会社に取得を請求できること,⑥一定の事由が生じたことを条件に会社が取得できること,⑦株主総会の決議によって会社が全部を取得すること,⑧株主総会等の決議のほか種類株主総会の決議を必要とすること,⑨種類株主総会において取締役又は監査役を選任することである。
同項ただし書により,指名委員会等設置会社及び公開会社は,⑨の定めがある種類の株式を発行することができない。
種類株式を発行するには,同条2項により,内容と発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。

2 株主ごとの異なる取扱い

会社法109条2項は,「公開会社でない株式会社は、第百五条第一項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。」と定めている。
対象となる権利は,剰余金の配当を受ける権利,残余財産の分配を受ける権利及び株主総会における議決権である(同法105条1項各号)。
この定めがある株式は,同法109条3項により,会社法の一部の規定の適用については内容の異なる種類の株式とみなされる。
中小企業庁の事業承継ガイドライン(第3版)資料上105頁は,「「株主ごとの異なる取扱い」は種類株式と異なって登記されないため、外部からその存在や内容を知られることがないという特徴がある。」と説明している。

3 導入の手続

会社の成立後に種類株式を設けるには,株主総会の決議による定款の変更が必要であり(会社法466条),その決議は特別決議である(同法309条2項11号)。
発行する各種類の株式の内容は登記事項である(同法911条3項7号)。
既に発行した普通株式を種類株式に変える場合について,事業承継ガイドライン(第3版)資料上106頁は,「登記実務上、当該株主との合意と、他の株主の利益を害するおそれがある場合には当該他の株主の同意が必要であるという取扱いである。」としている。

4 議決権制限株式の発行数の制限

会社法115条は,議決権制限株式の数が発行済株式の総数の2分の1を超えるに至ったときに,2分の1以下にするための措置をとらなければならないと定めている。
この規律は「種類株式発行会社が公開会社である場合」に限られるから,公開会社でない中小企業には及ばない。

第3 評価の前提となる考え方

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財産評価基本通達6項(総則6項)の適用――最高裁令和4年判決の枠組みと不動産・株式の事例(AI作成)

目次第1 この記事が扱う対象と時点1 対象とする論点2 調査基準日と資料第2 相続税法22条と財産評価基本通達1 時価と通達の関係2 通達6項の文言第3 最高裁令和4年4月19日判決1 事案の概要2 判断の枠組み3 当てはめ4 相続直前に不動産を取得した下級審の事例第4 取引相場のない株式の事例1 国税不服審判所令和6年3月25日裁決2 配当と新株発行により評価額を下げた事案3 売却交渉中の相続で国側が敗訴した事案第5 適用の実情と国税庁の説明1 適用件数2 謙抑的な運用3 居住用の区分所有財産の評価との関係4 「貸付用不動産の評価について(案)」との関係第6 事例から読み取れる判断の要素第7 出典1 法令・通達2 裁判例・裁決3 国税庁の資料
第1 この記事が扱う対象と時点
1 対象とする論点

この記事は,財産評価基本通達6(いわゆる総則6項)により,課税庁が通達の定める方法によらずに財産を評価する場合の判断枠組みを扱う。
中心となるのは,不動産の事案で判断枠組みを示した最高裁令和4年4月19日判決及び相続直前に不動産を取得した下級審の事例と,その後に取引相場のない株式について判断した裁決・裁判例である。
納税者が通達の定める方法による評価額より低い評価を求める場面は,本記事の対象外とする。

2 調査基準日と資料

本記事は,令和8年9月17日時点で,e-Gov法令検索の相続税法,国税庁の財産評価基本通達及び公表資料,裁判所ウェブサイトの裁判例,国税庁「税務訴訟資料」,国税不服審判所の公表裁決事例を確認して作成した。
裁判所ウェブサイトに掲載されていない判決は,判例秘書及び国税庁「税務訴訟資料」で確認した。
個別の事案で通達6項が適用されるかどうかは,取引の経緯,評価額と時価の差,税負担の軽減の程度及びそれを裏付ける記録によって異なる。

第2 相続税法22条と財産評価基本通達
1 時価と通達の関係

相続税法22条は,相続等により取得した財産の価額は「当該財産の取得の時における時価により」と定めるだけで,評価の方法を定めていない。
財産評価基本通達1の(2)は,時価を「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」とし,「その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。」としている。
課税実務はこの通達に従って行われているが,最高裁令和4年4月19日判決は,評価通達について「上級行政機関が下級行政機関の職務権限の行使を指揮するために発した通達にすぎず、これが国民に対し直接の法的効力を有するというべき根拠は見当たらない。」と述べている。
通達の法的性質一般は,通達の法的性質・拘束力と争い方で扱っている。

2 通達6項の文言

財産評価基本通達6は,「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と定めている。
最高裁令和4年判決の事案では,札幌国税局長からの上申を受けた国税庁長官が,平成28年3月10日付けで,通達の定めによらず他の合理的な方法によって評価するよう指示している。
国税庁のウェブサイトの通達,事務運営指針及び財産評価に関する情報の各一覧には,通達6項の適用基準を定めた公表物は見当たらない。

第3 最高裁令和4年4月19日判決
1 事案の概要

最高裁令和4年4月19日第三小法廷判決(令和2年(行ヒ)第283号,民集76巻4号411頁)は,被相続人が借入れにより購入した賃貸用不動産の評価が争われた事案である。
原審は東京高裁令和2年6月24日判決(令和元年(行コ)第239号),第一審は東京地裁令和元年8月27日判決(平成29年(行ウ)第539号)である。
判決が認定した主な数字は,次のとおりである。

事実判決の認定甲不動産平成21年1月に6億3000万円を借り入れ,8億3700万円で購入乙不動産平成21年12月に合計4億2500万円を借り入れ,5億5000万円で購入相続開始平成24年6月17日(被相続人は94歳)通達評価額甲不動産2億0004万1474円,乙不動産1億3366万4767円申告課税価格の合計額2826万1000円,基礎控除により相続税の総額0円鑑定評価額甲不動産7億5400万円,乙不動産5億1900万円更正処分課税価格の合計額8億8874万9000円,相続税の総額2億4049万8600円

判決によれば,購入・借入れがなければ課税価格の合計額は6億円を超えるものであり,乙不動産は相続開始の翌年に5億1500万円で売却されている。

2 判断の枠組み

判決は,まず相続税法22条との関係について,同条の時価は客観的な交換価値をいうとし,課税庁の評価額が客観的な交換価値としての時価を上回らない限り同条に違反しないとした。
その上で,平等原則について,「課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、たとえ当該価額が客観的な交換価値としての時価を上回らないとしても、合理的な理由がない限り、上記の平等原則に違反するものとして違法というべきである。」と述べた。

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「1億円の壁」の追加所得税とは――租税特別措置法41条の19の令和8年改正と自社株・不動産売却への影響(AI作成)

目次第1 この記事が扱う対象と時点1 対象とする制度と調査基準日2 「1億円の壁」と本特例の関係第2 本特例の仕組み1 追加の所得税額の計算式2 基準所得金額に含まれる所得3 基準所得税額と復興特別所得税第3 令和8年改正の内容1 控除額と税率の見直し2 適用開始は令和9年分から3 令和9年分以後の復興特別所得税と防衛特別所得税4 暗号資産の譲渡益の算入第4 追加税額の試算1 分離課税の所得だけがある場合2 試算の前提と限界第5 追加税額が問題となる場面1 M&A・事業承継による自社株式の譲渡2 不動産の売却3 離婚に伴う財産分与4 限定承認によるみなし譲渡5 相続後の換価第6 所得がどの年分になるか1 譲渡所得の収入すべき時期2 予定納税額の減額申請第7 裁判例及び裁決の状況第8 出典・参考資料1 法令2 国会提出法案・閣議決定3 財務省・国税庁の説明資料及び通達4 裁判例・裁決の検索
第1 この記事が扱う対象と時点
1 対象とする制度と調査基準日
(1) 対象とする制度

この記事は,租税特別措置法41条の19が定める「特定の基準所得金額の課税の特例」を扱う。
国税庁は,この制度を「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」と呼んでいる。
いわゆる「1億円の壁」への対応として令和5年度税制改正で設けられ,令和8年度税制改正で対象と税率が見直された。
記事の中心は,見直しの内容,適用が始まる年分及び弁護士業務で問題となる場面である。

(2) 調査基準日と改正の時点

本記事は,令和8年9月16日時点で,e-Gov法令検索に掲載された現行条文及び施行前の改正後条文,財務省及び国税庁の公表資料を確認して作成した。
改正法は,令和8年3月31日に公布された所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)である。
e-Gov法令検索では,本特例の控除額と税率を改める改正後の条文は令和9年1月1日施行の版として掲載されており,令和8年9月16日時点では施行前である。
本記事は税額の計算方法を条文と公表資料に基づいて説明するものであり,個別の申告額は,所得の構成,所得控除及び税額控除によって変わる。

2 「1億円の壁」と本特例の関係
(1) 所得が大きくなると負担率が下がる理由

給与所得や事業所得は累進税率の総合課税であるのに対し,株式等の譲渡所得と土地建物等の長期譲渡所得は,他の所得と区分して所得税15%を課す分離課税である(租税特別措置法31条1項,37条の10第1項)。
分離課税の所得の割合が大きいほど所得全体のうち税率15%で課税される部分が増えるため,合計所得金額が一定の水準を超えると,所得税の負担率がかえって下がることがある。
財務省のパンフレット「令和8年度 税制改正」4頁(PDF6頁)の図も,実際の申告実績データに基づく所得税負担率が,合計所得金額の増加につれて途中から下がる形を示している。

(2) 令和5年度改正による導入

国税庁の制度説明によれば,本特例は令和5年度税制改正で導入され,令和7年分の所得税等の確定申告から始まった。
国税庁は,導入時の対象を「おおむね平均的な水準として30億円を超える高い所得」と説明している。
すなわち,令和7年分及び令和8年分の本特例は,年に数十億円規模の所得がある人を主な対象とする制度であった。
令和8年度改正は,この対象の水準を大きく引き下げるものである。

第2 本特例の仕組み
1 追加の所得税額の計算式
(1) 現行の条文

現行の租税特別措置法41条の19第1項は,次のとおり定めている。
「個人でその者のその年分の基準所得金額が三億三千万円を超えるもの(第四項において「特例対象者」という。)については、当該超える部分の金額の百分の二十二・五に相当する金額からその年分の基準所得税額を控除した金額に相当する所得税を課する。」
計算式にすると,追加の所得税額=(基準所得金額-3億3000万円)×22.5%-基準所得税額であり,計算結果が0以下であれば追加の所得税は生じない。

(2) 判定の順序

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被相続人の生前申告書は相続人が単独で閲覧できるか-全相続人の委任状と準確定申告との違い(AI作成)

目次

最初に区別する三つの類型
類型別の閲覧範囲と委任状
被相続人の生前申告書の必要書類
準確定申告書の必要書類
相続税申告書の必要書類
状況別チェックリスト
窓口申請とオンライン取得の違い
一次資料と確認範囲

1 最初に区別する三つの類型

被相続人が生前に提出した申告書について、共同相続人の一人が、自分だけの権限で閲覧することはできない。
もっとも、一人だけで税務署へ行くことは可能であり、その場合は、来署しない相続人全員の委任状及び印鑑証明を持参する必要がある。
相続人が一人だけの場合は、その相続人が単独で申請できる。

これに対し、共同提出された準確定申告書は、共同提出者の一人だけでも申告書全体を閲覧できる。
この違いを理解するため、①被相続人の生前申告書、②共同相続人が提出した準確定申告書、③相続人等が提出した相続税申告書を区別する必要がある(令和8年9月16日確認)。

「被相続人の申告書」と一括りにすると、必要書類を誤りやすくなる。まず、次のどの書類を見たいのかを確定する。

被相続人が生前に提出した申告書(所得税、消費税等)
相続人が提出した準確定申告書(被相続人の死亡年分の所得税等)
相続人等が提出した相続税申告書

準確定申告の制度・期限については、準確定申告の期限・必要書類・e-Tax-相続税との違い(AI作成)も参照してください。

2 類型別の閲覧範囲と委任状

対象共同提出の有無閲覧範囲・委任状の考え方

被相続人の生前申告書―相続人が一人だけの場合は、その相続人が単独で申請できる。相続人が複数いる場合、一人だけで来署することはできるが、自分だけの権限では閲覧できない。来署しない相続人全員の委任状及び印鑑証明が必要である。相続放棄者については、放棄を証する書面を提出すれば、その者の委任は不要である。

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e-Taxの誤送信・訂正手続-利用者識別番号・年分・税目・申告内容(AI作成)

このページの要点 e-Taxの誤送信は、①受信通知のエラーの有無、②誤りの種類、③申告期限の前後、④納付・還付・振替納税の処理状況で対応が変わります。「正しいデータをもう一度送れば常に終わり」ではありません。まず証拠を保存し、下記フローで切り分けてください(2026年9月16日確認)。

目次

最初の5分で保存するもの
誤送信の基本判定フロー
誤った税務署へ送信した場合
利用者識別番号・年分・税目を誤った場合
申告内容を誤った場合
税目・手続別の訂正方法
納付・還付・振替納税が絡む場合
税務署へ伝える事項と記録様式
一次資料と確認範囲

1 最初の5分で保存するもの

訂正操作を始める前に、次の資料を保存してください。誤送信の事実、時刻、対象者及び税額処理を後から再現できる状態を作ることが先です。

受信通知(エラー情報を含む)
送信した申告・申請データ及び帳票PDF
受付番号、送信日時及び送信先税務署
使用した16桁の利用者識別番号と、その名義人
税目、年分・課税期間・事業年度、申告区分
納付額、還付額、納付方法、振替納税の依頼状況
メッセージボックスの通知、処理状況
税務署・ヘルプデスクとの通話日時、担当部署、回答要旨

個人番号、利用者識別番号、口座情報等を含む記録は、依頼者ごとに分離し、誤送信先の名義人のメッセージボックスを権限なく閲覧しないでください。

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申告書等閲覧サービスの委任状と写真撮影-弁護士代理の記載例(AI作成)

このページの要点 申告書等閲覧サービスを弁護士が代理利用する場合は、閲覧申請書だけでなく、委任事項を特定した委任状、委任者の印鑑登録証明書(発行後30日以内)、弁護士本人の身分証明書等が必要です。写真撮影をするなら、委任状にも写真撮影を認める旨を明記するのが安全です。以下は、国税庁の現行様式・事務運営指針を基にした記載例です(2026年9月16日確認)。

目次

申告書等閲覧サービスの位置付け
弁護士が持参する書類
委任状の具体的な記載例
閲覧申請書の具体的な記載例
写真撮影の条件と実務上の注意
窓口へ行く前のチェックリスト
一次資料と確認範囲

1 申告書等閲覧サービスの位置付け

申告書等閲覧サービスは、納税者が過去に提出した申告書等を、税務署の窓口で閲覧するための行政サービスです。法律上の情報公開請求や個人情報開示請求そのものではありません。

利用目的は、今後の申告書の作成、過去の申告事実・提出年月日の確認、申告書・給付金申請書等の内容確認などに限られます。銀行や地方公共団体から求められた「税務署の受付印がある控え」を取得するだけの目的には利用できません。また、税務署は原則としてコピーを交付せず、閲覧、書き写し又は条件付きの写真撮影によって内容を確認します。

全体像は、収受日付印廃止後の申告書提出証明と申告書等閲覧サービス-弁護士代理・相続人・e-Tax(AI作成)も参照してください。

2 弁護士が持参する書類

書類等実務上の確認点

申告書等閲覧申請書納税者、税目、年分・事業年度、対象書類、利用目的及び写真撮影の有無を特定します。
委任状(国税庁様式1-2)代理人、委任目的、税目、年分等、対象書類、書き写し又は写真撮影の別を具体的に記載します。
委任者の印鑑登録証明書閲覧申請日前30日以内に発行されたもの。委任状には登録印を押します。
弁護士の本人確認書類弁護士会発行の身分証明書。これを提示できない場合は、弁護士記章に加えて運転免許証等が必要です。
対象を特定するメモ所轄税務署、納税地、税目、年分・課税期間・事業年度、原始申告・修正申告等の別、添付書類名を整理します。

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収受日付印廃止後の申告書提出証明と申告書等閲覧サービス-弁護士代理・相続人・e-Tax(AI作成)

第1 この記事の対象と結論第2 収受日付印廃止後の提出時の証拠1 令和7年1月から収受日付印は押されない2 提出方法別に残す資料3 郵送時の提出日の判定第3 e-Taxの受信通知と提出事実の確認1 受信通知により確認できる事項2 提出・納付・還付は別に確認する3 利用者識別番号の取り違え等が疑われる場合第4 過去の申告書を確認する四つの方法1 制度の比較2 申告書等情報取得サービス3 保有個人情報開示請求と納税証明書第5 申告書等閲覧サービス1 制度の性質と利用目的2 対象書類・場所・所要時間3 写真撮影・コピー・原本証明第6 弁護士代理と相続人による閲覧1 存命の納税者の代理2 死亡した納税者の申告書3 写真撮影と補助者第7 弁護士事務所の実務チェックリスト1 申告書を提出するとき2 過去の申告書を確認するとき3 進行を止めて確認すべき場合第8 令和5年分確定申告期の大阪国税局文書1 文書から読み取れる当時の運用2 根拠として用いる際の限界第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令2 国税庁・e-Taxの公表資料3 当時の運用を示す資料
第1 この記事の対象と結論

この記事は,令和8年9月16日現在の法令及び国税庁の公表資料に基づき,収受日付印廃止後に申告書を提出した事実をどのように残すか,過去の申告書をどの制度で確認するか,弁護士が代理人として閲覧するときに何を準備するかを整理するものである。

結論として,提出時には後日の閲覧制度に頼るのではなく,e-Taxであれば受信通知と送信データ,郵送であれば申告書の写しと追跡可能な送付記録,窓口提出であれば提出直前の控えを保存するのが基本である。
過去の申告内容が必要になった場合は,本人がオンラインで取得できる「申告書等情報取得サービス」,税務署で確認する「申告書等閲覧サービス」,保有個人情報開示請求及び納税証明書を,目的に応じて使い分ける必要がある。

第2 収受日付印廃止後の提出時の証拠
1 令和7年1月から収受日付印は押されない

国税庁は,令和7年1月から,税務署等の窓口及び郵送で提出された申告書等の控えに収受日付印を押さない取扱いとしている(国税庁「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」)。
したがって,押印済みの控えを提出証明として将来取得できるという前提で事務を組み立てることはできない。

当分の間,窓口又は郵送で申告書等を提出した者が希望するときは,提出年月日及び税務署名等が記載されたリーフレットを交付する運用が案内されている。ただし,リーフレットは提出書類の名称,税目,課税期間又は記載内容を個別に証明するものではないため,申告書の写し及び送付記録を別に保存する必要がある。

2 提出方法別に残す資料
提出方法直ちに保存する資料注意点
e-Tax受信通知,受付日時・受付番号,送信データ,帳票イメージ,エラー情報送信操作,受付完了,添付書類の到達及び納付完了は同じ意味ではない。
郵便又は信書便提出した申告書一式の写し,封入物一覧,追跡番号,発送日・到達日の記録申告書は「信書」であり,宅配便等の荷物扱いで送付しない。
税務署窓口提出直前の申告書一式の写し,提出日・提出先・担当窓口の記録,希望した場合のリーフレット控えへの収受日付印は押されない。リーフレットだけでは提出内容を特定できない。

依頼者から提出を受任した場合は,税務署へ送った版をPDFで確定し,ファイル名,作成日時,提出先,税目,対象年分,添付書類,提出経路及び到達確認方法を案件記録に残すのがよい。

3 郵送時の提出日の判定

国税庁タックスアンサーNo.2036によれば,納税申告書が郵便又は信書便により提出された場合は,通信日付印により表示された日が提出日とみなされる。郵便又は信書便以外の方法で税務署へ送付した場合は,税務署に到達した日が提出日となる。
期限管理では,単に発送したという依頼者の記憶ではなく,どの送付手段を用い,いつ差し出し,どの書類を封入したかを確認する必要がある。

第3 e-Taxの受信通知と提出事実の確認
1 受信通知により確認できる事項

e-Taxで申告等データを送信すると,メッセージボックスの受信通知に受付日時,受付番号,申告・申請の名称及びエラー情報等が表示される。所得税の確定申告書等については,氏名又は名称,受付番号及び受付日時等が表示された受信通知と送信した申告書等のデータを組み合わせて保存することが,提出事実と提出内容の対応を示す基本となる。

電子申告等証明書の請求を利用できる場合もあるが,請求対象及び利用目的を確認する必要がある。受信通知だけを保存して申告書データを失う,または申告書PDFだけを保存して受信通知を失うという分断を避けるべきである。

2 提出・納付・還付は別に確認する

申告書が受け付けられたことは,税額が納付されたこと又は還付金の支払手続が完了したことを意味しない。納付については選択した納付方法の決済結果及び口座の出金を,還付についてはe-Taxの「還付金処理状況確認」等を別に確認する。

国税庁は,確定申告期の還付金について,書面申告ではおおむね1か月から1か月半程度,自宅等からのe-Taxではおおむね3週間程度を処理期間の目安として案内している。ただし,申告内容や添付書類の確認を要する場合,複数回提出した場合などはこの目安より時間を要することがある(国税庁「税金の還付」)。

3 利用者識別番号の取り違え等が疑われる場合

別人又は別法人の利用者識別番号で送信した疑い,重複した利用者識別番号を取得した疑い,提出先・税目・課税期間の誤り又は受信通知のエラーがある場合は,送信データ,受信通知,操作日時,利用したソフト及び関係者の説明を保全し,所轄税務署へ処理方法を確認する。
原因を確認しないまま同じ操作を繰り返すと,複数の申告データが残り,どの申告を有効なものとして扱うべきかが分かりにくくなる。

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建物の標準的な建築価額表は実際の建築費とどこまで一致するか(AI作成)

目次第1 個別建物の一致率を示す表ではない第2 標準的な建築価額は何を計算した金額か第3 予定単価と実施単価の差を示す統計1 令和6年分の調査対象と単価補正率2 この数値を個別建物へ読み替えられない理由第4 税務上の利用と実額との照合1 表を使う場合と使わない場合2 東京地裁が認めた按分方法としての合理性3 個別の実額と比べるときの条件第5 関連記事第6 出典1 国税庁の申告案内・解説資料2 国土交通省の統計・統計解説3 裁判例
第1 個別建物の一致率を示す表ではない

国税庁の「建物の標準的な建築価額表」は,建築年と構造に応じた全国の工事費予定額を基礎とする表である。
個々の建物について,完成後の支払額と何%一致するかを示した精度検証の結果ではない(国税庁の表,注1・注2)。

予定額と実施額の違いを知る参考として,国土交通省の建築工事費調査がある。
令和6年分の層別単価補正率を百分率に直すと,実施単価が予定単価を約7.86%~13.14%上回る数値となるが,これは国税庁の表の個別建物に対する誤差率ではない。
本記事では,令和8年9月14日を基準に,この数値の意味と,譲渡所得の計算における表の位置付けを説明する(国土交通省「建築工事費調査の概要(令和6年分)」,PDF3頁)。

第2 標準的な建築価額は何を計算した金額か

表の単価は,国土交通省の建築着工統計にある構造別の工事費予定額を,床面積の合計で割って算出される。
完成後の工事費の平均ではなく,また,各建物の単価を単純平均した数字でもない(国税庁の表,注1)。

例えば,令和5年建築の木造・木骨モルタル造の欄は,1㎡当たり204.1千円である。
床面積100㎡の建物を仮定すれば,表による計算額は20万4100円×100㎡=2041万円となるが,これはその建物に実際に2041万円を支払ったことを証明するものではない。
この単独表の最終掲載年は,令和8年9月14日の確認時点では令和5年であり,現在の新築見積額を直接示す数字として読むこともできない。

国税庁の計算表では,建築年に対応する単価に床面積を掛け,購入時に中古建物であった場合は,建築から購入までに減価した額を差し引く。
さらに,譲渡所得の計算に用いる建物の取得費は,こうして求めた取得価額から売却時までの償却費相当額を差し引くため,表の単価を掛けた金額と売却時の取得費を区別することになる(令和7年分「譲渡所得の申告のしかた」参考2,冊子29頁・PDF1頁)。

第3 予定単価と実施単価の差を示す統計
1 令和6年分の調査対象と単価補正率

国土交通省の建築工事費調査は,着工時に把握した建築物について,完成後の工事実施額と床面積を調べるものである。
令和6年分では調査票を9369棟に郵送して6443棟から回収し,審査・照会を経て,完成建築物5942棟と中止・未着工155棟を集計している(調査結果の公表,調査概要,PDF1頁~2頁)。

次の表は,同調査が公表する単価補正率と,それを「予定単価に対して何%高いか」に換算したものである。
右端の数値は,(単価補正率-1)×100により本記事で計算し,小数第3位を四捨五入した(調査概要PDF3頁)。

調査の層単価補正率予定単価に対する上昇率木造・1億円未満1.081078.11%木造・1億円以上1.098049.80%非木造・1億円未満1.1285012.85%非木造・1億円以上20億円未満1.1313513.14%非木造・20億円以上1.078617.86%

木造の20億円以上の層は回収数が少ないため,1億円以上20億円未満の層と統合されている。
また,調査概要は,中止・未着工を含む調査データの工事費予定額と工事実施額について,それぞれ対応する床面積の合計で割った単価を求め,実施単価を予定単価で割って補正率を算出すると説明している(同PDF2頁~3頁)。

2 この数値を個別建物へ読み替えられない理由
(1) 集計単価の差と個別建物の誤差

単価補正率は,金額と床面積をそれぞれ合計して求めた単価の比率である。
各建物の誤差率の平均,誤差の最大値・最小値,又は一定の誤差内に収まる建物の割合ではなく,個々の建物が同じ程度だけ高くなることを示すものでもない。
したがって,上表の約7.86%~13.14%を「この範囲に誤差が収まる」という意味で用いることはできない。

(2) 対象年と構造区分の違い

(続きを読む...)建物の標準的な建築価額表は実際の建築費とどこまで一致するか(AI作成)

準確定申告-4か月の期限・必要書類・書き方・e-Taxと相続税(AI作成)

第1 準確定申告の対象と最初に確認する事項1 準確定申告とは2 最初に四つの日付と資料を固定する第2 準確定申告が必要な場合と還付だけを受ける場合1 申告要否は被相続人の所得から判定する2 給与所得者について確認する基準3 公的年金等の受給者について確認する基準4 申告義務がなくても還付申告はできる第3 4か月の期限と二年分の申告が必要となる場合1 期限は相続開始を知った日の翌日から4か月以内である2 前年分と死亡年分の両方が対象となる場合がある3 期限を過ぎた場合は放置しない第4 申告する人,複数の相続人及び提出先1 相続人には包括受遺者を含む2 相続人等が複数いる場合3 提出先は被相続人の死亡当時の納税地である第5 必要書類と書き方1 提出書類と計算資料を区別する2 所得控除は死亡日までの支払と死亡日の現況で判定する3 申告書と付表を作る順序第6 書面提出とe-Taxの違い1 確定申告書等作成コーナーでは作成できない2 e-Taxで提出する書類と認証3 提出方法を決める基準第7 令和8年分の準確定申告に固有の注意1 令和8年11月30日以前に提出する場合2 令和8年12月1日以後にe-Taxで提出する場合第8 還付金・納付税額と相続税の関係1 準確定申告の還付金は相続財産になる2 準確定申告の納付税額は債務控除の対象となり得る3 4か月と10か月を一つの工程表で管理する第9 実務上の確認手順1 申告までの六段階2 早期に専門家へ確認する場面第10 関連記事第11 出典・参考資料1 法令2 所管行政機関の解説・Q&A・運用資料3 関連記事第1 準確定申告の対象と最初に確認する事項

1 準確定申告とは

準確定申告とは,所得税の確定申告をすべき人が死亡した場合に,相続人等が被相続人に代わって行う所得税の申告である。
死亡年分については,その年の1月1日から死亡日までに確定した所得金額と税額を計算する。

本記事は,令和8年9月7日現在の日本法を前提として,国内に居住していた人が死亡した場合の所得税及び復興特別所得税を扱う。
消費税の申告,国外転出時課税,非居住者の国際税務及び相続税額の具体的計算は対象外である。

2 最初に四つの日付と資料を固定する

準確定申告の作業では,①死亡日,②各相続人が相続開始を知った日,③被相続人が前年分の確定申告書を提出済みかどうか,④被相続人の死亡当時の納税地を最初に確認する。
期限と対象年分はこの四点によって決まり,提出先も相続人の住所地ではなく,被相続人の死亡当時の納税地を基準に決まる。

次に,給与・年金・事業・不動産・配当・譲渡等の収入資料,源泉徴収税額,予定納税額及び控除資料を集める。
死亡したという事実だけで申告義務が生じるわけではないため,被相続人について通常の確定申告義務があったかを計算できる資料が必要である。

第2 準確定申告が必要な場合と還付だけを受ける場合

1 申告要否は被相続人の所得から判定する

所得税法120条の確定申告義務が被相続人に生じる場合は,相続人等が準確定申告をしなければならない。
事業所得,不動産所得,譲渡所得等があるだけで常に申告義務が生じるわけではなく,各種所得,所得控除,税額控除,源泉徴収税額及び予定納税額を通じて判定する必要がある。

2 給与所得者について確認する基準

国税庁の「給与所得者で確定申告が必要な人」によれば,給与収入が2000万円を超える場合,1か所から源泉徴収対象の給与を受けていて給与・退職所得以外の所得金額が20万円を超える場合,2か所以上から給与を受けて一定の基準を超える場合等は確定申告が必要となる。
20万円の基準は収入金額ではなく,原則として必要経費等を反映した所得金額で判定する。

死亡によって退職した給与所得者は,年の中途でも年末調整の対象となることがある。
したがって,給与所得者については,勤務先から交付された源泉徴収票で年末調整の有無と源泉徴収税額を確認した上で,他の所得を合算して申告要否を判断する。

3 公的年金等の受給者について確認する基準

公的年金等の収入金額が400万円以下で,その全部が源泉徴収の対象となり,公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合は,所得税の確定申告を要しない制度がある。
ただし,源泉徴収の対象とならない一定の外国年金を受給している場合はこの制度を利用できず,所得税の申告が不要でも住民税の申告が必要となることがあるため,年金額だけで一律に判断できない。

4 申告義務がなくても還付申告はできる

源泉徴収税額又は予定納税額が計算上の所得税額を上回るときは,申告義務がなくても還付を受けるための申告ができる。
所得税法125条2項には,同条1項のような4か月の期限が規定されていない。

国税庁の「還付申告」は,一般の還付申告を対象年の翌年1月1日から5年間提出できると説明している。
もっとも,期限内申告が適用要件となる青色申告特別控除等もあるため,還付見込みであっても4か月以内に申告内容を確認するのが安全である。

第3 4か月の期限と二年分の申告が必要となる場合

1 期限は相続開始を知った日の翌日から4か月以内である

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税務調査に関するメモ書き-事前通知,帳簿データ,質問応答記録書及びAI活用(AI作成)

第1 この記事の対象第2 税務調査と行政指導の区別1 連絡の法的な位置付けを先に確認する2 帳簿と申告の元の状態を保全する第3 事前通知と無予告調査1 実地調査の事前通知2 事前通知をしない場合3 通知範囲以外の確認と反面調査第4 質問検査権とその限界1 質問,検査及び提示・提出要求2 罰則と理解・協力による運用3 職業上の秘密と帳簿書類の留置き第5 帳簿・電子データの提示と提出1 電磁的記録の提示・提出方法2 提出範囲と再現性3 摘要欄と消費税の帳簿記載事項第6 質問応答記録書への対応1 署名・押印と質問への答弁を分ける2 記録内容を一文ずつ確認する第7 国税庁によるAI利用の公表範囲1 予測AIは調査選定を支援する2 生成AIは令和8年度中の利用開始予定である3 個別の判定語やモデル仕様は公表されていない第8 調査終了時の手続1 更正等を要しない場合と要する場合2 新たな情報による再度の質問検査第9 調査手続と後の争い1 質問検査で得た資料の刑事手続での利用2 調査手続の瑕疵と課税処分の取消し第10 関連記事第11 出典・参考資料1 法令2 裁判例・行政裁決3 所管行政機関の解説・Q&A・運用資料
第1 この記事の対象

本記事は,令和8年9月6日を調査基準日として,所得税,法人税,地方法人税及び消費税に関する通常の税務調査を中心に整理するものである。
国税犯則調査の強制処分,個別の税額計算及び不服申立ての具体的な期限は扱わない。

本文は,e-Gov法令検索,裁判所ウェブサイト,国税不服審判所及び国税庁の公表資料を照合し,その探索・整理と文章作成にAIを利用したものである。
予定納税,国税の納付方法,電子帳簿保存制度そのもの,記帳代行及び給与計算は税務調査と検索意図が異なるため,本記事では説明しない。

第2 税務調査と行政指導の区別
1 連絡の法的な位置付けを先に確認する

国税庁の税務調査手続に関するFAQ問2は,特定の納税者の税額等を認定する目的で質問検査等を行って申告内容を確認する「調査」と,自発的な見直しや修正申告を求める行政指導を区別している。
同FAQによれば,担当者は具体的な手続に入る前に,調査と行政指導のいずれに当たるかを明示する運用である。

行政手続法35条1項は,行政指導をする者に,その相手方に対して当該行政指導の趣旨・内容及び責任者を明確に示すことを求めている。他方,国税通則法74条の14第2項は,国税に関する行政指導について,行政手続法35条3項の書面交付規定及び同法36条を適用しないと定める。したがって,口頭の行政指導であっても趣旨・内容・責任者を確認して記録すべきであるが,行政指導の書面が常に法的に交付されると一般化することはできない。

連絡を受けたときは,①担当官署・部署・氏名・連絡先,②調査か行政指導か,③対象税目・期間・目的,④求められた資料・データ・期限・提出方法,⑤税務代理人への連絡の有無を記録するのがよい。
これは国税庁が列挙した法定様式ではなく,本記事が事実関係の取り違えを避けるために示す初動の整理である。

2 帳簿と申告の元の状態を保全する

事前通知又は行政指導を受けた後に,実在しない取引資料を作り,帳簿を事実と異なる内容に書き換え,又は応答対象の記録を削除してはならない。
申告又は記帳の誤りに気付いた場合は,元データを保全した上で,誤りの内容,発見日,根拠資料及び修正内容を別に記録するのが安全である。

第3 事前通知と無予告調査
1 実地調査の事前通知

国税通則法74条の9第1項は,実地調査で質問検査等を行う場合,原則として,あらかじめ納税義務者と税務代理人に次の事項を通知するものとしている。
①調査開始日時,②調査場所,③調査目的,④対象税目,⑤対象期間,⑥対象となる帳簿書類その他の物件,⑦そのほか調査の適正かつ円滑な実施に必要な政令事項である。

国税庁FAQ問12・問13によれば,通知は原則として電話による口頭通知であり,何日前という一律の法定期間はない。
同法74条の9第2項とFAQ問16・問17によれば,日時又は場所について合理的な理由があるときは協議の対象となり,申出は口頭でも差し支えない。

2 事前通知をしない場合

国税通則法74条の10は,申告内容,過去の調査結果,事業内容その他の保有情報に照らし,事前通知によって違法又は不当な行為が容易になり,正確な税額把握が困難になるおそれ,又は調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合,事前通知を要しないと定める。
無予告であることと,国税犯則調査として令状に基づく強制処分が行われることは同じではない。

国税庁FAQ問20・問21は,事前通知がない場合でも,運用上は臨場後速やかに対象税目・期間・目的等を説明するとしている。
事前通知をしなかったこと自体は不服申立ての対象となる処分ではない,というのが同FAQの説明である。

3 通知範囲以外の確認と反面調査

国税通則法74条の9第4項は,調査により通知事項以外の非違が疑われた場合に,その事項について質問検査等を行うことを妨げない。
国税庁FAQ問9も,通知対象年度の申告内容を確認するために必要であれば,資産の取得年度等の帳簿書類を求める場合があると説明している。

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小規模宅地等の特例-貸付事業用宅地等の三年要件と例外(AI作成)

第1 三年要件は土地の所有期間を問うものではない第2 特定貸付事業の例外と五棟十室基準第3 相続による承継と購入・贈与の違い1 相続取得した宅地等を新規供用として扱わない特則2 先代の特定貸付事業の期間を後継者の期間とみなす特則3 売主の貸付歴と,贈与に関する留保第4 空室・建替え・再開発と貸付けの継続1 空室期間の短さだけでは判断できない2 建替え前後の継続と追加敷地3 再開発による中断を扱った東京国税局の文書回答第5 買換えで特定貸付事業が途切れる場合第6 経過措置と相続後の要件1 平成30年改正の経過措置は適用期間が限られる2 事業の承継・保有と申告を別に確認する第7 適用判断のために整理する資料第8 出典・参考資料1 法令2 国税庁の通達・解釈運用資料3 裁決4 個別執筆者による解説
第1 三年要件は土地の所有期間を問うものではない

貸付事業用宅地等の三年要件は,土地を三年間所有していなければ適用できないという要件ではない。
原則として問題になるのは,その宅地等が相続開始前三年以内に新たに貸付事業の用に供されたかであり,三年を超えて継続している特定貸付事業や,相続による承継には別の取扱いがある。
本記事は,令和8年9月4日を基準として,この原則と例外,空室・建替え・買換えがある場合の判定を説明する。

租税特別措置法69条の4第3項4号は,相続開始前三年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等を,原則として貸付事業用宅地等から除外している。
長年所有していた土地でも,貸付けを始めたのが最近であれば,この制限が問題になる。
登記上の取得日だけでなく,誰が,いつから,その宅地等を貸付事業に使っていたかを確認することになる。

以下では,建物又は構築物の敷地であることなどの基本要件を満たす宅地等を前提に,三年要件と主な例外の関係を整理する。
以下は三年制限についての整理であり,相続後の事業継続・保有など,他の要件の充足を前提とする。

貸付けの状況
三年制限との関係

三年を超えて引き続き貸付けに供している
事業的規模に達しない貸付けでも対象となり得る

三年以内に新たに貸付けを始めた
原則として対象外。ただし,特定貸付事業の例外や相続特則を確認する

三年を超えて特定貸付事業を継続し,その事業に新たな宅地等を追加した
追加した宅地等の貸付期間が三年以内でも対象となり得る

最近の相続で取得し,貸付けを継続している
相続取得した宅地等に関する特則を別途検討する

貸付事業用宅地等だけを選択する場合の限度面積は200㎡,減額割合は50%である。
減額するのは宅地等の課税価格への算入額であって,相続税額そのものが半分になるわけではなく,他の小規模宅地等と併用する場合には限度面積の調整がある(同条第1項・第2項)。

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弁護士登録初年度の確定申告-給与・弁護士報酬・源泉徴収票・必要経費(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と確認時点1 本記事が扱う場面2 個人弁護士を前提とすること第2 最初に給与と弁護士報酬を分ける1 給与として受け取る金員2 個人名義で受け取る弁護士報酬第3 弁護士報酬と源泉徴収税額の集計1 源泉徴収は必要経費ではないこと2 支払者ごとに照合すること3 報酬と消費税等の区分第4 売上げを計上する年と預り金1 未収報酬も確認すること2 実費及び預り金を売上げと混同しないこと第5 必要経費と開業前後の支出1 必要経費の基本2 登録費用及び開業費第6 申告前の実務チェックリスト1 収入資料2 経費及び申告区分第7 関連記事第8 出典

第1 本記事の対象と確認時点

1 本記事が扱う場面

本記事は,弁護士登録をした最初の暦年に,法律事務所等からの給与と個人名義の弁護士報酬が併存する場合の所得区分,源泉徴収及び必要経費を,令和8年9月2日現在の公表資料に基づいて整理するものである。
司法修習給付金を含む司法修習終了年全体の申告は,「司法修習終了翌年の確定申告―修習給付金・給与・弁護士報酬(AIリライト)」を参照されたい。

2 個人弁護士を前提とすること

本記事は,自然人である弁護士の確定申告を対象とする。
弁護士法人の収入及び経費は法人税等の問題となるため,個人弁護士の申告と混同してはならない。

第2 最初に給与と弁護士報酬を分ける

1 給与として受け取る金員

雇用契約等に基づき,勤務時間,勤務場所及び業務遂行について使用者の指揮命令を受けて支給される給与は,給与所得として申告する。
年の途中で勤務先が変わった場合又は退職後に独立した場合も,その年中の全ての勤務先から給与所得の源泉徴収票を集める必要がある。

給与所得の源泉徴収票は,現在,確定申告書への添付又は提示を要しないが,給与収入,源泉徴収税額及び社会保険料等を正確に入力するため保管すべき資料である。
前職分が年末調整に含まれているか,未済であるかも確認する必要がある。

2 個人名義で受け取る弁護士報酬

自己の計算と危険において独立性をもって継続的に行う弁護士業務の報酬は,通常,事業所得の総収入金額として整理される。
もっとも,給与か報酬かは契約書又は振込名義だけで決まるものではなく,指揮命令,勤務場所,報酬の定め方,費用負担その他の実態により判断する必要がある。

勤務先から給与を受けながら個人事件又は国選事件の報酬も受け取った場合は,給与所得と事業所得を区分して同じ確定申告書へ記載する。

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弁護士の独立開業時の税務手続-開業届・青色申告・消費税・インボイス(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と確認時点1 本記事が扱う範囲2 弁護士会上の独立と税務上の開業日を区別すること第2 開業時に最初に決める事項1 事業の形態と納税地2 帳簿と請求書を開業日から整えること第3 個人事業の開業届1 令和8年から提出期限が変わったこと2 提出方法と保存第4 青色申告の承認申請1 提出期限2 控除額と記帳方法第5 従業員等へ給与を支払う場合1 給与支払事務所等の開設届出2 源泉所得税及び納期の特例第6 消費税とインボイスの選択1 新規開業時の原則と例外2 インボイス登録の効果3 請求書と源泉徴収の関係第7 最初の確定申告と地方税1 所得税の確定申告2 消費税,住民税及び個人事業税3 独立した年の予定納税第8 開業時のチェックリスト1 開業前後に確認する事項第9 関連記事第10 出典

第1 本記事の対象と確認時点

1 本記事が扱う範囲

本記事は,個人弁護士が独立開業するときに検討すべき所得税,源泉所得税,消費税,インボイス及び地方税の主な手続を,令和8年9月2日現在の公表資料に基づいて整理するものである。
弁護士法人を設立する場合の法人税,登記及び社会保険の手続は対象外である。

2 弁護士会上の独立と税務上の開業日を区別すること

所属事務所の変更日,事務所登録日,賃貸借契約日及び税務上の事業開始日は,必ずしも同じ日になるとは限らない。
開業日は,自己の計算と危険において継続的に業務を開始した実態を踏まえて決め,最初の受任,広告,設備購入,事務所使用開始その他の資料と整合させる必要がある。

第2 開業時に最初に決める事項

1 事業の形態と納税地

個人事業として開業するのか,弁護士法人を設立するのか,共同事務所で経費を分担するのかを最初に区別する。
個人事業の場合は,納税地,事務所所在地,屋号,開業日及び事業内容を整理し,所轄税務署を確認する。

共同事務所の賃料,人件費,複合機代その他の共通経費は,誰が契約者となり,誰が立替払いをし,どの基準で負担するかを文書化するのが望ましい。
依頼者から受け取る預り金は売上げと区分し,事業用口座,預り金口座及び私用口座を可能な範囲で分ける必要がある。

2 帳簿と請求書を開業日から整えること

青色申告の特別控除又は消費税の仕入税額控除を適切に検討するには,後日まとめて復元するのではなく,開業日から帳簿及び証憑を保存することが重要である。
請求書番号,事件又は顧客の管理番号,報酬,消費税等,源泉徴収税額,実費及び預り金を対応させると,確定申告時の照合が容易になる。

守秘義務の対象となる事件情報を会計ソフト又は外部サービスへ入力するときは,税務上必要な記録と事件情報を分け,サービスの権限,保存場所及び委託先を確認する必要がある。

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取引相場のない株式(出資)の評価明細書の書き方―令和8年様式の第1表から第7表の3まで(AI作成)

第1 令和8年様式の対象と表番号

1 令和8年様式を使う取得日と提出方法

2 令和8年様式には第8表がないこと

3 この記事が扱う株式と出資の範囲

第2 作成前に集める資料と実際の作成順序

1 各表に必要となる基礎資料

2 表番号順ではない実際の作成順序

3 単位,端数処理及び転記の共通ルール

第3 第1表及び第2表による評価方式の判定

1 第1表の1―取得後の株主,議決権及び株主グループ

2 第1表の2―少数株主判定,会社規模及びLの割合

3 第2表―特定の評価会社に当たるか

第4 一般の評価会社で使う第3表から第5表

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未分割遺産の分割後にする相続税の更正の請求―4か月の期限・要件・裁判例(AI作成)

第1 未分割遺産に関する更正の請求とは何か

1 未分割のまま申告した相続税を分割後に調整する制度

2 最初に4か月の期限を確認する必要がある

第2 相続税法55条・31条・32条・35条の関係

1 相続税法55条による未分割時の計算

2 分割後の減額・増額を処理する三つの経路

3 更正の請求が認められるための五つの確認事項

第3 「分割」と4か月の起算点

1 協議・調停・審判ごとに基準日が異なる

2 一部分割及び取得しないことの確定も対象になり得る

第4 分割後に直せる評価と直せない誤り

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相続税における配偶者の税額の軽減――計算方法,申告要件,未分割遺産及び隠蔽仮装(AI作成)

目次

第1 配偶者の税額の軽減の仕組み

1 制度の概要
2 対象となる配偶者

第2 軽減額の計算方法

1 基本となる計算式
2 1億6000万円と法定相続分の関係
3 法定相続分を超えて取得した場合

第3 適用を受けるための申告

1 税額が0円になる場合の申告
2 申告書への記載と添付書類
3 当初申告要件の廃止と更正の請求

第4 申告期限までに遺産が分割されていない場合

1 未分割財産には直ちに適用されないこと
2 分割見込書と3年以内の分割
3 3年を超える場合の承認申請
4 裁判例が示す期限管理

第5 一部分割,分割のやり直し及び配偶者死亡の問題

1 一部分割がされた場合

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個人事業主の死亡後に従業員へ支払う退職金と相続税の債務控除(AI作成)

目次

第1 結論と本記事の対象

1 支払っただけでは債務控除にならない

2 事業廃止と事業承継で結論が分かれる

第2 相続税法上の判定枠組み

1 相続開始の際に現に存在する確実な債務

2 実際に債務を負担する者

3 退職金請求権の発生根拠

第3 事実関係別の取扱い

1 事業を廃止し,従業員を解雇した場合

2 相続人が事業を承継し,従業員が継続勤務する場合

3 従業員であった相続人が事業主となる場合

4 規程がない場合及び功労加算がある場合

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国税不服審判所――組織,審査請求手続,裁決の効力及び裁判例(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 対象と基準時

2 主な結論

第2 国税不服審判所の法的位置付け

1 国税庁に置かれる特別の機関

2 国税庁長官がした処分との区別

3 行政部内の最終判断

第3 協議団から国税不服審判所への沿革

1 協議団の設置と審判所の発足

2 昭和45年の国会附帯決議

3 平成28年施行の制度改正

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成年被後見人に未納相続税がある場合の延納・納税の猶予・換価の猶予(AIリライト)

第1 本記事が扱う場面と手続選択

1 成年被後見人に未納相続税がある場合

2 検討する順序

第2 最初に相続税法上の延納を確認する

1 延納の要件

2 法定申告期限を過ぎても延納申請が可能な場合

3 物納及び特定物納との関係

第3 病気又は負傷を理由とする納税の猶予

1 成年被後見人であることだけでは足りない

2 必要となる立証資料

3 申請時期と許可判断

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取引相場のない株式の評価に関する有識者会議――国税庁が示した見直しの骨格と論点(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 検討の対象と時点
2 会議の構成と開催状況
3 公表資料の一覧

第2 見直しの契機となった数値

1 会計検査院の令和5年度決算検査報告
2 国税庁による再検証
3 国税庁が示したかい離の要因

第3 現行の評価方式と条文上の根拠

1 相続税法22条と財産評価基本通達
2 株主の区分と会社の規模による評価体系
3 純資産価額から控除する法人税額等相当額

第4 当局が示した見直しの骨格

1 「当局として御意見いただきたい事項」6項目
2 残余利益モデルという候補3 第5回資料が示した見直しの方向性4 残余利益方式(簿価純資産ベース)の設計イメージ5 第6回資料が示した算式,試算及び特定の評価会社

第5 委員の間で見解が分かれている論点

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米国株の配当金にかかる二重課税を解消し,税金の還付を受ける方法(AI作成)

米国株式の配当は,米国と日本の双方で源泉徴収を受けるため,そのままでは同一の所得に二重に課税される。
この重複を解消する中心的な手段は,確定申告により外国税額控除を適用し,米国で課された税を日本の所得税,復興特別所得税及び住民税から控除することである。
本記事は,個人が国内の証券会社を通じて米国の上場株式(現物)を保有する場合を対象として,二重課税の生じ方,外国税額控除の要件と限度額,申告方式の選択,投資信託との取扱いの相違及び確定申告の実務上の留意点を,現行法令及び行政資料に即して整理する。
目次

第1 米国株配当の二重課税が生じる仕組み

1 米国側の源泉徴収と日米租税条約による限度税率
2 日本側の課税と特定口座における課税ベース

第2 外国税額控除による二重課税の解消

1 所得税からの控除と控除限度額
2 復興特別所得税及び住民税からの控除・控除順序・繰越し
3 配当控除が米国株には適用されないこと

第3 申告方式の選択

1 申告不要・総合課税・申告分離課税の分岐
2 住民税の課税方式の一本化

第4 投資信託・上場投資信託と個別株の取扱いの相違
第5 確定申告の実務と依頼者対応

1 確定申告の要否と必要書類
2 NISA口座では米国源泉税を回収できないこと

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従業員持株会における株式譲渡価格の税務上の取扱い(AI作成)

◯本ブログ記事は専らAIで作成したものです。
目次

第1 結論と検討の順序

1 結論

(1) 持株会価格と税務上の時価は別の概念であること
(2) 最初に当事者と株式の流れを確定すること

2 本記事の射程

(1) 一般論であること
(2) 基準日を固定して検討すること

第2 従業員持株会の法的構造と納税義務者

1 民法上の組合として運営される場合

(1) 会員による共同保有
(2) 退会時の取引の実質

2 人格のない社団等と扱われる余地

(1) 名称ではなく実態による判定

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貸倒損失の計上基準(AI作成)

◯本記事は,法人税及び消費税における貸倒損失(貸倒れ)の計上基準を,弁護士の実務目線(債権回収,債権放棄,破産・清算,税務争訟)からAIで整理したものです。個別事案の判断は,必ず最新の法令・通達及び顧問税理士の確認を経てください。

目次

第1 はじめに──なぜ「計上基準」が問題になるのか
1 貸倒れは「いつ・いくら」を落とせるかが争いになる
2 根拠条文は法人税法22条3項3号
第2 貸倒損失の3類型と適用順位
1 3類型の全体像
2 適用順位の考え方
(1) 法的消滅の有無による分岐
(2) 個別評価金銭債権の貸倒引当金との関係
第3 法律上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-1)
1 4つの事実類型
2 「損金経理が不要」であることの意味
3 書面による債務免除(9-6-1(4))の3要件
(1) 債務超過の状態が相当期間継続
(2) 弁済を受けられないこと(時価ベースで判定)
(3) 書面により明らかにすること(内容証明に限らない)
第4 事実上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-2)
1 3つの要件(全額回収不能・損金経理・担保処分後)
2 一部貸倒れが認められない理由(法人税法33条)
3 保証債務・求償権の取扱い
第5 形式上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-3)
1 売掛債権に限定・備忘価額を残す

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自損事故の人身傷害死亡保険金と相続税―最高裁令和7年10月30日判決の射程(AI作成)

目次

第1 結論

1 最高裁判決は相続税非課税を判断していない
2 現在公表されている課税上の取扱い

第2 最高裁令和7年10月30日判決の内容

1 自損事故と相続放棄が問題となった事案
2 最高裁が示した二つの判断

(1) 死亡保険金請求権は被保険者の相続財産に属する
(2) 近親者の存在は死亡保険金額を減少させない

3 判決の射程は本件約款の解釈である

第3 平成11年国税庁回答の課税基準

1 照会本文と回答本文を一体で読む必要がある
2 保険金を二つの部分に分けて判定する

(1) 損害賠償金の性格を有する金額
(2) 損害賠償金として認められる金額を控除した残額

3 自損事故では損害賠償金部分が通常存在しない

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東京国税局の考査課情報及び情報公開事務整理簿(AI作成)

第1 この記事の対象第2 東京国税局考査課の所掌と考査課情報1 考査課の所掌2 考査課情報の性質と保存期間第3 考査課情報の年度別資料1 令和2年分から令和7年分まで2 OB税理士との会合に関する個別資料3 非行とスマートフォンに関する個別資料第4 OB税理士との会合に関する取扱いの変遷1 各資料が示す変遷2 令和7年分で再確認された主な取扱い3 資料を読む際の留意点第5 情報公開事務整理簿1 情報公開事務整理簿の意味2 年度別の情報公開事務整理簿3 税務署分が付された年度4 保存期間と公表資料の限界第6 行政文書開示請求の手続1 開示請求と決定期限2 請求方法と手数料第7 行政文書の取扱い及び研修資料1 行政文書の取扱いに関する資料2 確定申告期の審理事務研修資料第8 関連資料第9 出典1 法令2 国税庁の公表資料3 本記事に掲載した東京国税局関係資料
第1 この記事の対象

この記事は,東京国税局の「考査課情報」と「情報公開事務整理簿」について,令和8年9月7日現在で確認できた公開資料を年度別に整理するものである。
考査課情報は職員向けの不祥事防止その他の注意喚起資料であり,情報公開事務整理簿は開示請求の受付及び処理の経過を記録した行政文書であるため,両者は性質が異なる。

考査課情報については令和2年分から令和7年分までを,情報公開事務整理簿については平成24年度分,平成30年度分及び令和元年度分から令和7年度分までを掲載する。
平成25年度分から平成29年度分までの情報公開事務整理簿及び令和8年分の考査課情報は確認できなかったが,これは文書が存在しないことを意味しない。

第2 東京国税局考査課の所掌と考査課情報
1 考査課の所掌

財務省組織規則453条は,東京国税局総務部に考査課を置くものとしている。
同規則456条3号及び4号並びに457条によれば,考査課は,国税局所属職員についての職務上必要な身分上の調査並びに表彰及び儀式を所掌する。

2 考査課情報の性質と保存期間

掲載資料の上欄では,考査課情報は「情報通信類」とされている。
国税庁標準文書保存期間基準は,情報通信その他これらに類するものを暦年で管理し,保存期間を3年としている。

したがって,本記事の年別表示は各資料に記載された年分に従う。
ただし,本記事が保有しているPDFの範囲を示すものであり,その年に作成された考査課情報をすべて収録していると断定するものではない。

第3 考査課情報の年度別資料
1 令和2年分から令和7年分まで

①令和2年分(13頁)
②令和3年分(21頁)
③令和4年分(7頁)
④令和5年分(23頁)
⑤令和6年分(34頁)
⑥令和7年分(13頁)

令和7年分は,令和7年1月の第1号から同年12月の第12号までを収録している。
令和7年4月の第6号は,OB税理士との会合に関する注意点を改めて説明し,令和6年7月の第8号も参照するよう求めている。

2 OB税理士との会合に関する個別資料

①令和元年6月・第128号「OB税理士との会合の自粛等について」(4頁)
②令和3年7月・第145号「OB税理士との会合について」(5頁)
③令和5年6月・第164号「OB税理士との会合について【新ガイドライン】」(6頁)
④令和6年7月・第8号「OB税理士との会合について【新ガイドライン】」(10頁)

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通達の法的性質・拘束力と争い方-最高裁判例を中心に(AI作成)

第1 通達の意味と法的性質1 通達は通常,行政組織内部の命令である2 国民と裁判所を直接拘束する法規ではない3 名称ではなく根拠・内容・効果を確認する第2 通達が関わる場合の争い方と主要判例1 争う対象を先に特定する2 通達自体の取消し-最高裁昭和43年12月24日判決3 通達に基づく課税と個別決定-最高裁昭和33年判決・平成15年判決4 将来処分の差止めと公法上の確認-最高裁平成24年2月9日判決5 信義則と平等原則-最高裁平成19年2月6日判決・令和4年4月19日判決6 違法な通達と国家賠償-最高裁平成19年11月1日判決第3 通達と行政手続法1 審査基準・処分基準・行政指導指針に当たる場合2 意見公募手続の対象と例外第4 裁判所内部の規則・規程・通達等1 最高裁判所規則と司法行政上の監督2 裁判所内部の通達・通知・事務連絡第5 個別の通達を確認する順序1 原文と根拠法令を確認する2 不利益を生じさせる行為を特定する第6 関連記事第7 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 裁判所内部資料4 文献
第1 通達の意味と法的性質
1 通達は通常,行政組織内部の命令である

国家行政組織法14条2項は,各省大臣,各委員会及び各庁の長官が,所掌事務について命令又は示達をするため,所管の諸機関及び職員に対して訓令又は通達を発することができると定めている。
通達は,通常,上級行政機関が下級行政機関又はその職員に対して,法令の解釈,事務の取扱い又は行政運営の方針を示す行政組織内部の命令である。
もっとも,同法は省及びその外局について定めるものであり,内閣府に置かれる委員会及び庁については,内閣府設置法(平成11年法律第89号)58条7項が同じ趣旨を定めている。
例えば警察庁は,警察法(昭和29年法律第162号)15条により国家公安委員会に置かれ,同委員会は内閣府設置法64条により内閣府に置かれる委員会であるから,警察庁長官が通達を発する根拠は内閣府設置法58条7項である。
警察庁の通達がどこに,どのような形で掲載されているかは,別の記事である警察庁の通達の調べ方で扱っている。

本記事は,令和8年9月7日現在の法令,裁判所ウェブサイト掲載判例及び公開資料をAIで照合し,通達の法的性質と権利救済の関係を整理したものである。
個別の通達については,発出権限,名宛人,根拠法令,内容及び通達に基づいて実際に行われる行為を別々に確認する必要がある。

2 国民と裁判所を直接拘束する法規ではない

最高裁昭和43年12月24日第三小法廷判決(昭和39年(行ツ)第87号,民集22巻13号3147頁)は,通達は原則として法規の性質を持たず,関係機関及び職員に対する行政組織内部の命令にすぎないとした。
そのため,一般の国民は通達に直接拘束されず,裁判所も通達に示された法令解釈に拘束されない。

通達に反する行政処分であるという事情だけで,その処分の効力が左右されるわけでもない。
裁判所は,通達とは異なる法令解釈を採り,通達に定める取扱いが法令に反するときは,その違法を独自に判断できる。

3 名称ではなく根拠・内容・効果を確認する

「通達」という名称が付されていても,その名称だけで国民に対する法的効果又は取消訴訟の対象性が決まるわけではない。
反対に,通知,要領,基準又は指針という名称であっても,法令上の根拠と内容によっては,個別の処分又は行政手続法上の基準として重要な意味を持つ。

判断の順序は,①誰が誰に発出したか,②どの法令と権限に基づくか,③国民の権利義務を直接変える内容か,④後続する処分又は決定があるか,⑤行政実務でどのように反復適用されているか,の順が分かりやすい。
事実上の影響が大きいことは重要な事情であるが,それだけで直ちに通達自体が法規又は行政処分となるものではない。

第2 通達が関わる場合の争い方と主要判例
1 争う対象を先に特定する

通達に不利益を感じる場合でも,訴訟で何を対象とするかは一つではない。
通達自体,通達に基づく個別処分,将来予定される処分,公法上の法律関係又は違法な取扱いによる損害を区別する必要がある。

通達が関わる場合の主な争い方
争う対象主な訴訟類型又は法的統制中心となる確認事項
通達自体処分取消しの訴え国民の権利義務に直接具体的な法律上の影響を及ぼすか通達に基づく個別の処分又は決定取消訴訟等個別行為が行政事件訴訟法上の処分に当たるか,根拠法令に適合するか将来予定される処分差止めの訴え重大な損害を生ずるおそれと,他に適当な方法がないことが認められるか行政処分以外の継続的な不利益公法上の法律関係に関する確認の訴え確認対象が明確であり,現実の危険に対する有効適切な争訟方法であるか違法な通達又は取扱いによる損害国家賠償請求公務員の職務上の注意義務違反,違法性,故意又は過失及び損害が認められるか

2 通達自体の取消し-最高裁昭和43年12月24日判決

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個人事業税とは-弁護士(第三種事業)の税率・事業主控除・確定申告時の申告要否(AIリライト)

目次第1 個人事業税とは1 課税対象となる事業と弁護士業の区分2 税率と事業主控除第2 所得税の確定申告をしていれば個人事業税の申告は不要であること第3 個人事業税額の計算と納付後の扱い1 事業主控除の月割額と自動計算ツール2 納付した個人事業税は必要経費に算入できること出典
第1 個人事業税とは
1 課税対象となる事業と弁護士業の区分

個人事業税は,都道府県内に事務所又は事業所を設けて,地方税法72条の2第3項が定める第一種事業,第二種事業又は第三種事業のいずれかを営む個人に課される都道府県税である。同条第8項は物品販売業,不動産貸付業,製造業等37業種を第一種事業と定め,第9項は畜産業,水産業,薪炭製造業の3業種を第二種事業と定め,第10項は医業,弁護士業,税理士業,公認会計士業等30業種を第三種事業と定めている。弁護士業は同項8号に掲げられており,第三種事業に区分される。

2 税率と事業主控除

個人事業税の額は,事業所得等から必要経費及び各種控除を差し引いた課税標準額に,事業区分ごとの税率を乗じて算出する(地方税法72条の49の17)。標準税率は,第一種事業が5%,第二種事業が4%であり,第三種事業も原則5%であるが,あん摩・マッサージ又は指圧,はり,きゅう,柔道整復その他の医業に類する事業及び装蹄師業に限り3%とされている。弁護士業は第三種事業のうち5%の対象業種であるから,弁護士は,事業所得の金額から事業主控除額290万円を控除した金額の5%を,個人事業税として納付することになる。

事業主控除額は,事業を行った期間が1年に満たない場合には月割りとなる(地方税法72条の49の14)。また,所得税の青色申告特別控除額は,個人事業税の課税標準の計算上考慮されないため,所得税の確定申告書に記載された事業所得の金額(青色申告特別控除後の金額)に青色申告特別控除額を加算した,いわば青色申告特別控除前の所得金額を基準に,事業主控除額290万円を超えるかどうかを判断することになる。個人事業税の対象業種一覧及び税率は,大阪府「個人事業税」のページ及び東京都主税局「個人事業税」のページにも一覧表の形で掲載されている。

第2 所得税の確定申告をしていれば個人事業税の申告は不要であること

個人事業税の納税義務者は,原則として,当該年度の初日の属する年の3月15日までに,前年中の事業の所得等を,事務所又は事業所所在地の都道府県税事務所(東京都の場合は都税事務所・支庁)に申告しなければならない(地方税法72条の55第1項)。もっとも,当該納税義務者が前年分の所得税の確定申告書又は個人住民税の申告書を提出した場合には,当該申告書が提出された日に個人事業税の申告があったものとみなされる(同法72条の55の2第1項)。この点について,東京都主税局「個人事業税」のページは次のとおり案内している。

個人で事業を営んでいる方は、毎年3月15日までに前年中の事業の所得などを、都税事務所(都税支所)・支庁に申告することになっています。ただし、所得税の確定申告や住民税の申告をした方は個人の事業税の申告をする必要はありません。この場合には、それぞれの申告書の「事業税に関する事項」欄に必要事項を記入してください。

なお、上記に関わらず年の中途で事業を廃止した場合は、所得税の確定申告や住民税の申告とは別に、廃止の日から1か月以内(死亡による廃止の場合は4か月以内)に個人の事業税の申告をしなければなりません。

したがって,所得税の確定申告又は住民税の申告を行っている個人事業主は,個人事業税について別途の申告書を提出する必要はなく,各申告書の「事業税に関する事項」欄に必要事項を記載すれば足りる。ただし,年の中途で事業を廃止した場合は,所得税の確定申告や住民税の申告とは別に,廃止の日から1か月以内(納税義務者の死亡による廃止の場合は4か月以内)に,個人事業税の申告をしなければならない点に注意を要する。

第3 個人事業税額の計算と納付後の扱い
1 事業主控除の月割額と自動計算ツール

事業を行った期間が1年に満たない場合の事業主控除額は,290万円に事業を行った月数を乗じて12で除した金額となり(地方税法72条の49の14第2項),1か月に満たない端数は1か月として計算する(同条第3項)。月数ごとの事業主控除額は,次のとおりである。

事業を行った月数事業主控除額

1か月242,000円
2か月484,000円
3か月725,000円
4か月967,000円
5か月1,209,000円
6か月1,450,000円
7か月1,692,000円
8か月1,934,000円
9か月2,175,000円
10か月2,417,000円
11か月2,659,000円

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開業届・青色申告承認申請書・青色事業専従者給与届-違いと期限(AI作成)

目次

第1 3種類の書類の違い1 本記事の対象2 対象・期限・効果の一覧第2 個人事業の開業・廃業等届出書1 対象となる事実2 現在の提出期限3 開業届と所得区分の関係第3 所得税の青色申告承認申請書1 対象者と提出期限2 令和8年分までの主な効果3 少額減価償却資産の特例4 令和9年分以後の青色申告特別控除第4 青色事業専従者給与に関する届出書1 親族への給与に関する原則と例外2 届出期限と必要経費になる範囲3 届出内容を変更する場合4 所得税法56条に関する最高裁判例第5 給与を支払う場合等の追加手続1 開業時の条件別チェック2 弁護士が独立開業する場合第6 間違えやすい点1 3種類の書類は一括の届出ではないこと2 青色申告者でなくても記帳が必要であること3 期限内提出と実際の処理を分けて確認すること第7 関連記事第8 出典1 法令2 所管行政機関の解説・手続案内3 裁判例
第1 3種類の書類の違い
1 本記事の対象

本記事は,令和8年9月7日現在,個人が事業を始めるときに関係する「個人事業の開業・廃業等届出書」,「所得税の青色申告承認申請書」及び「青色事業専従者給与に関する届出書」の役割,提出期限及び効果を説明するものである。
これらは相互に代用できず,青色申告を選ぶか,生計を一にする親族へ給与を支払うかによって必要な書類が変わる。

2 対象・期限・効果の一覧

3種類の書類の基本的な違いは,次のとおりである。

書類主な対象主な提出期限主な効果
個人事業の開業・廃業等届出書事業所得,不動産所得又は山林所得を生ずべき事業を新たに開始した人事業開始等の事実があった日の属する年分の所得税の確定申告期限まで事業を開始した事実等を税務署へ届け出る所得税の青色申告承認申請書青色申告の承認を受けたい人原則として青色申告をしようとする年の3月15日まで。ただし,その年の1月16日以後に業務を開始した場合は開始日から2か月以内承認後,青色申告書を提出できる青色事業専従者給与に関する届出書生計を一にする親族への給与を青色事業専従者給与として必要経費に算入したい青色申告者原則として適用を受ける年の3月15日まで。ただし,その年の1月16日以後に開業し,又は新たに専従者がいることとなった場合はその日から2か月以内届出内容に従って実際に支払った相当な給与について,必要経費算入の前提を満たす

提出期限が土曜日,日曜日又は祝日等に当たる場合は,原則としてその翌日が期限となる。
相続による事業承継には青色申告承認申請の特則があるため,通常の開業と同じ期限で処理しないことが必要である。

第2 個人事業の開業・廃業等届出書
1 対象となる事実

開業届の正式名称は,「個人事業の開業・廃業等届出書」である。
所得税法229条は,国内で不動産所得,事業所得又は山林所得を生ずべき事業を新たに開始した場合のほか,当該事業の事務所等を設け,移転し,又は廃止した場合などを届出の対象としている。

国税庁の「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」には,書式,記載要領,提出先及び提出方法が掲載されている。
提出先は原則として納税地を所轄する税務署長であり,e-Taxのほか,書面の持参又は送付による提出もできる。

2 現在の提出期限

現在の提出期限は,事業開始等の事実があった日の属する年分の所得税の確定申告期限までである。
開業の日から1か月以内とする旧い説明は,現在の新規開業についての提出期限を示すものではない。

開業届の期限と青色申告承認申請書の期限は同じではない。
例えば,その年の1月16日以後に開業して同年分から青色申告を希望する場合,青色申告承認申請書は原則として開業日から2か月以内であるため,開業届より先に期限が来ることがある。

3 開業届と所得区分の関係

開業届を提出したことだけで,その活動から生ずる所得が当然に事業所得となるわけではない。
国税庁の所得税基本通達35-2は,事業所得に当たるかどうかを,その所得を得るための活動が社会通念上事業と称するに至る程度で行われているかどうかによって判定するとしている。

同通達は,帳簿書類の保存がない場合について業務に係る雑所得とする取扱いを示しているが,帳簿を保存していることだけで事業所得になるとは定めていない。
開業届,帳簿保存及び所得区分の判定は,それぞれ別の問題である。

第3 所得税の青色申告承認申請書

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福利厚生費の税務上の取扱い-給与・交際費との区分と食事・社員旅行の基準(AI作成)

目次

第1 福利厚生費を判断する二つの軸1 本記事の対象2 給与課税と交際費等を別々に判定する第2 給与として課税しない福利厚生の基本的な考え方1 現物給付でも給与になり得る2 対象者の範囲と社会通念上の相当性3 現金支給と選択可能な給付第3 食事の支給と月額7,500円の基準1 令和8年4月1日以後の二つの要件2 要件を外れたときは会社負担額全体が給与となる3 現金による食事補助と時間外勤務の食事第4 従業員レクリエーション旅行1 旅行の内容を総合して判断する2 参加割合50%は絶対的な要件ではない3 一人当たり10万円という一律の上限は示されていない4 高額な旅行を給与とした裁決及び裁判例第5 記念品,慶弔金,福利厚生施設及び研修費1 創業記念品と永年勤続表彰2 福利厚生施設と研修費3 慶弔金及び見舞金第6 福利厚生費と交際費等との区分1 従業員を対象とする社内行事2 委託先従業員等を含む場合3 「感謝の集い」を交際費等としなかった裁判例第7 福利厚生費として扱えない場合の税務上の分岐1 給与となる場合の源泉徴収2 交際費等又は役員給与となる場合第8 支給前後に確認しておく資料1 制度設計の段階2 支出項目ごとの記録第9 出典・参考資料1 法令2 所管行政機関の通達・解説・Q&A3 裁判例・裁決4 関連記事
第1 福利厚生費を判断する二つの軸
1 本記事の対象

本記事は,令和8年9月6日現在の公表資料に基づき,会社が役員又は従業員のために支出する食事,レクリエーション旅行,記念品,慶弔金,福利厚生施設及び研修費を主な対象とする。
福利厚生費に含まれ得る支出を網羅するものではなく,個々の支出について給与課税又は交際費等の問題が生じる場面を中心に整理する。

2 給与課税と交際費等を別々に判定する

福利厚生費の税務上の取扱いには,①役員又は従業員が受けた利益を給与として課税するかという所得税の問題と,②会社の支出が交際費等に当たるかという法人税の問題がある。
会社が帳簿上「福利厚生費」としたことだけでいずれの結論も決まらず,受益者,支給方法,対象者の範囲,目的,金額及び内容をそれぞれの基準に当てはめる必要がある。

役員又は従業員が雇用関係等に基づいて受ける金銭以外の経済的利益も,所得税法28条及び36条による給与所得の対象となり得る。
他方,租税特別措置法関係通達61の4(1)-1は,福利厚生費及び給与等の性質を有するものを交際費等に含まれないものとしており,給与に当たることと交際費等に当たることは同じ判定ではない。

第2 給与として課税しない福利厚生の基本的な考え方
1 現物給付でも給与になり得る

会社が費用を直接支払い,従業員が現金を受け取らない場合でも,従業員が自己のための物品又はサービスを無償又は低額で受ければ経済的利益が生じ得る。
福利厚生という目的があることだけで直ちに非課税になるのではなく,法令及び所得税基本通達が定める非課税の取扱いに該当するかを確認することになる。

2 対象者の範囲と社会通念上の相当性

所得税基本通達36-29及び36-30は,福利厚生施設の利用又は社会通念上一般的なレクリエーション行事について,一定の場合に課税しなくて差し支えないとしている。
経済的利益が著しく多額である場合,役員だけを対象とする場合又は私的な利益の性質が強い場合には,この取扱いから外れる可能性が高くなる。

職種,勤務地,勤続年数その他の合理的な基準による区分が直ちに否定されるわけではないが,一部の者だけを恣意的に優遇する支給とは区別する必要がある。
対象者,除外理由及び支給基準をあらかじめ明確にすることは,その区分が合理的であるかを後に確認する資料となる。

3 現金支給と選択可能な給付

現金は受給者が自由に処分できるため,現物による福利厚生と同じ非課税の取扱いを当然には受けない。
レクリエーション行事に参加しなかった者への代替金,記念品に代わる現金又は現金との選択が可能な旅行は,給与課税の対象となる取扱いが示されている。

商品券その他の換金性の高い給付も,単に名称を「記念品」又は「福利厚生」とするだけでは足りない。
給付の方法を設計するときは,現物の内容だけでなく,現金選択の有無及び不参加者への取扱いも確認する必要がある。

第3 食事の支給と月額7,500円の基準
1 令和8年4月1日以後の二つの要件

国税庁タックスアンサーNo.2594によれば,令和8年4月1日以後,役員又は使用人に支給する食事が給与として課税されないためには,①本人が食事の価額の半分以上を負担し,かつ,②食事の価額から本人負担額を控除した会社負担額が1か月当たり7,500円以下であることが必要である。
7,500円以下かどうかは消費税及び地方消費税を除いた金額で判定し,10円未満の端数は切り捨てる。

食事の価額は,弁当等を購入して支給する場合には業者への購入額であり,社員食堂で会社が調理する場合には材料費及び調味料等の直接費の合計額である。
会社負担額だけを見ず,食事の価額と本人負担割合の双方を計算する必要がある。

(続きを読む...)福利厚生費の税務上の取扱い-給与・交際費との区分と食事・社員旅行の基準(AI作成)

国税実務の基礎-税務調査,予定納税,納付方法及び電子帳簿保存(AIリライト)

第1 この記事の対象第2 税務調査1 税務調査と行政指導2 質問検査権と「任意」の意味3 事前通知と無予告調査4 調査終了時の手続5 本ブログ掲載資料と詳説記事第3 予定納税1 対象者と予定納税基準額2 通知と二回の納付3 予定納税額の減額申請4 確定申告での精算第4 国税の納付方法1 選択できる納付手段2 スマホアプリ納付3 納期限と納付記録第5 電子帳簿等保存制度1 三つの区分2 電子取引データの保存3 オンライン購入の領収書4 税務調査に備えた確認第6 関連記事第7 出典・参考資料1 法令2 国税庁資料
第1 この記事の対象

本記事は,所得税,法人税,地方法人税及び消費税等について,税務調査の基本手続,個人の所得税の予定納税,国税の納付手段並びに電子取引データの保存を横断的に確認するための案内記事である。
調査の基準日は令和8年9月9日であり,法令は同日施行法令,国税庁資料は同日までに確認できた最新版を基準としている。

税額計算,記帳代行,給与計算,資本金別の税制上の取扱い及び個別の不服申立ては,制度と検索意図が異なるため扱わない。
税務調査の詳しい準備と対応は,税務調査に関するメモ書き-事前通知,帳簿データ,質問応答記録書及びAI活用(AI作成)で説明している。

第2 税務調査
1 税務調査と行政指導

国税庁は,特定の納税者の課税標準等又は税額等を認定する目的で質問検査等を行い,申告内容を確認するものを「調査」と説明している。
これに対し,申告書の計算誤り,転記誤り又は記載漏れ等について自発的な見直しを求め,必要に応じて修正申告書の提出を要請する連絡は,行政指導として行われることがある。

税務署から連絡を受けた場合は,まず調査と行政指導のいずれであるか,対象税目及び対象期間を確認する必要がある。
両者は手続上の位置付けが異なるためである。

2 質問検査権と「任意」の意味

国税通則法74条の2は,所得税,法人税,地方法人税及び消費税等の調査について,質問,帳簿書類その他の物件の検査並びに物件の提示又は提出の要求を定めている。
通常の税務調査は令状による直接強制を伴う犯則調査ではないが,同法128条は,正当な理由のない不答弁,虚偽答弁,検査の拒否等について罰則を定めている。

したがって,通常の税務調査が「任意調査」と呼ばれることは,適法な質問検査に自由に応じなくてよいことを意味しない。
他方,質問検査等の権限は犯罪捜査のために認められたものではないと同法74条の8が定めており,行政調査と犯則調査又は刑事捜査は区別する必要がある。

3 事前通知と無予告調査

実地の調査を行う場合,国税通則法74条の9により,原則として調査開始日時,場所,目的,対象税目,対象期間及び対象となる帳簿書類等が事前に通知される。
通知された日時又は場所について合理的な理由を付して変更を求めたときは,税務署長等は協議するよう努めるものとされている。

もっとも,事前通知により違法又は不当な行為を容易にし,正確な税額等の把握を困難にするおそれその他調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合は,同法74条の10により事前通知をしないことがある。
無予告で職員が来訪した場合も,身分証明書,調査の根拠,対象税目及び対象期間を確認し,その場で判断できない事項は税理士等へ連絡して対応を整理するのが実務的である。

4 調査終了時の手続

国税通則法74条の11によれば,更正決定等をすべきと認められない場合は,その時点でその旨が書面により通知される。
更正決定等をすべきと認める場合は,調査結果の内容及び理由が説明され,修正申告又は期限後申告が勧奨されることがある。

修正申告は納税者自身の申告であるため,その修正申告自体に不服申立てをすることはできないが,更正の請求をすることができる旨の説明と書面交付が予定されている。
提出前に,増差税額,加算税,対象年分,事実認定及び法令適用を確認することが重要である。

5 本ブログ掲載資料と詳説記事

本ブログには,税務調査とその周辺手続を確認するための次の開示文書等を掲載している。

調査における法律的知識(わかりやすくマンガで解説!!)(平成27年6月の東京国税局課税第二部法人課税課の文書)質問応答記録書作成の手引(平成29年6月の国税庁課税総括課作成の文書)税務官署から事件記録等の閲覧謄写の要請があった場合の取扱いについて(平成3年10月31日付の最高裁判所総務局長の事務連絡)

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eLTAX(エルタックス)の使い方-PCdesk・電子納付・令和9年改正(AI作成)

第1 eLTAXの意味とこの記事の対象1 この記事の基準日と対象2 eLTAXとe-Taxの違い3 地方公共団体への共通窓口第2 PCdeskの種類と事前準備1 DL版,WEB版,SP版及びPCdesk Next2 利用者ID,電子証明書及び提出先の登録3 動作環境と保存すべき情報第3 eLTAXによる電子申告1 主な対象手続2 個人住民税の電子申告3 給与支払報告書の電子提出義務第4 給与支払報告書と源泉徴収票1 令和8年9月までの電子的提出の一元化2 令和9年1月1日以後のみなし提出3 30枚基準との関係第5 電子納付とeL-QR1 共通納税と地方税お支払サイト2 支払方法,手数料及び領収証書3 ダイレクト方式の事前登録4 納付完了の確認第6 令和8年9月のシステム更改1 サービス停止期間2 更改後の利用時間とログイン3 地方税以外の地方公金第7 申告・納付時の実務上の注意1 期限,受付結果及び控えを別々に確認する2 公式サイトとソフトウェアの最新版を確認する3 不審なメール等に注意する第8 主な沿革と関連記事1 主な沿革2 関連記事第9 出典1 法令2 行政機関等の資料3 関連記事
第1 eLTAXの意味とこの記事の対象
1 この記事の基準日と対象

この記事は,令和8年9月6日現在の公表資料に基づき,地方税ポータルシステムであるeLTAXの基本,PCdeskの使い分け,電子申告及び電子納付の要点を整理するものである。
令和8年9月24日に予定されるシステム更改と,令和9年1月1日以後の給与支払報告書及び源泉徴収票の取扱いも扱う。

eLTAXで利用できる手続,使用するソフトウェア及び利用時間は,税目,提出先の地方公共団体及び手続時期によって異なる。
実際に申告又は納付をするときは,納期限だけでなく,eLTAXの最新のお知らせ,対象手続及びメンテナンス予定を確認する必要がある。

2 eLTAXとe-Taxの違い

eLTAXの用語集によれば,eLTAXは,地方税に関する手続をインターネットで電子的に行うシステムである。
これに対し,e-Taxは,所得税,法人税,消費税その他の国税に関する申告,納税及び申請・届出等を扱う。

名称が似ていても,利用者ID,画面,対象税目及び受信通知の確認場所は同一ではない。
法人税の国税部分はe-Tax,法人都道府県民税及び法人市町村民税はeLTAXというように,一つの決算又は給与事務で両方を使うことがある。

3 地方公共団体への共通窓口

地方税共同機構がeLTAXを運営している。
紙であれば提出先ごとに手続をする場面でも,eLTAXでは電子的な一つの窓口から複数の地方公共団体へデータを送信できることが重要な特徴である。

ただし,一つの利用者IDを取得すれば,すべての提出先及び税目が自動的に利用可能になるわけではない。
利用届出後に提出先又は手続情報の追加が必要となる場合があるため,申告書を作り始める前に登録状況を確認する必要がある。

第2 PCdeskの種類と事前準備
1 DL版,WEB版,SP版及びPCdesk Next

PCdeskの案内では,利用目的に応じて複数の方式が用意されている。
令和8年9月6日現在の基本的な役割は,次のとおりである。

① PCdesk(DL版)は,Windowsパソコンにインストールして電子申告データの作成・送信,メッセージ照会及び共通納税等を行うソフトウェアである。
② PCdesk(WEB版)は,ブラウザから利用届出,申請・届出,利用者情報の変更,メッセージ照会及び共通納税等を行う方式である。
③ PCdesk(SP版)は,スマートフォンから一部のメッセージを確認する方式であり,DL版又はWEB版と同じ範囲の申告機能を備えるものではない。
④ PCdesk Nextは,DL版又はWEB版では作成・送信できない税目又は手続の一部を扱う別のブラウザサービスである。

どの方式でも同じ手続ができるわけではないため,「eLTAXにログインできること」と「目的の申告書を作成・送信できること」を区別しなければならない。
市販の税務・会計ソフトウェアを使う場合も,対象税目,帳票,送信結果の確認方法及び令和8年9月更改への対応状況を製品ごとに確認する必要がある。

2 利用者ID,電子証明書及び提出先の登録

初めて利用する場合は,PCdesk(WEB版)から利用届出を提出して利用者IDを取得する。
その後,暗証番号,連絡先,提出先・手続情報及び電子証明書など,利用する機能に応じた設定を行う。

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人身傷害保険金に税金はかかるか―死亡・後遺障害・医療保険金の課税関係(AIリライト)

目次

第1 人身傷害保険金の課税関係の結論

1 最初に区別する4つの事項

第2 死亡保険金の課税関係

1 保険金総額から損害賠償金として認められる額を除く

(1) 通常の二者間事故
(2) 同乗者事故及び親族間事故

2 国税庁の公表取扱いでは保険料負担者によって税目が決まる
3 人身傷害定額給付金及び搭乗者傷害死亡保険金
4 みなし相続財産となる死亡保険金の非課税限度額

第3 後遺障害保険金・医療保険金等の課税関係

1 負傷した被保険者が受け取る保険金は原則として非課税である
2 負傷者と受取人が異なる場合
3 医療費控除及び必要経費との関係
4 後遺障害保険金の未払分を相続人が受け取る場合

第4 最高裁令和7年10月30日判決と税務上の取扱い

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国税庁の法令解釈通達・事務運営指針・文書回答事例・質疑応答事例(AIリライト)

第1 国税庁が公表する情報の全体像

1 法令等ページの区分

2 法令と行政内部の文書を分ける理由

第2 法令解釈通達と事務運営指針

1 法的根拠と平成10年の分類変更

2 両者の違い

3 現行の通達を確認する方法

第3 通達の法的効力と最高裁判例

1 納税者と裁判所を直接拘束しないこと

2 最高裁判例の展開

(1) 最高裁昭和33年3月28日判決

(2) 最高裁昭和43年12月24日判決

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前期損益修正-会計上の誤謬訂正と税務上の年度帰属(AI作成)

目次

第1 前期損益修正を四つに分ける1 最初の四区分第2 会計上の処理1 過去の誤謬は修正再表示する2 見積り変更と後発的事由は過去の誤謬ではない3 会社計算規則に科目名が残ることの意味第3 税務上の処理1 申告当時から処理が誤っていた場合2 後日の解除,取消し又は返品等3 会計上の遡及処理と税務申告の関係4 更正の請求の期限第4 年度帰属を示す裁判例等1 後日の契約解除を当期の損失とした裁判例2 TFK事件とクラヴィス事件3 実際の収入と後の貸倒れを区別した最高裁判例第5 実務上の確認順序第6 関連記事第7 出典・参考資料1 法令・会計基準2 国税庁資料・通達3 裁判例・裁決4 文献5 関連記事

前期損益修正という言葉は,前期以前に関係する損益を当期に処理する場面を広く指して使われることがある。
しかし,会計上の過去の誤謬を訂正する問題と,法人税の過年度申告を直す問題は同一ではない。
さらに,過去の判断は当時の情報に照らして正しかったものの見積りの基礎が後に変わった場合や,契約の解除,取消し,返品又は債権の貸倒れが後に生じた場合も区別する必要がある。

本記事は,令和8年9月7日現在の法令,会計基準,国税庁資料及び公表裁判例を基準として,法人の決算と法人税を中心に整理するものである。
具体的な処理は,採用する会計基準,金額の重要性,申告年度,確定決算の内容及び後発的事由の証拠によって異なるため,個別案件では会計・税務の専門家による確認が必要である。

第1 前期損益修正を四つに分ける
1 最初の四区分

検討の出発点は,判明した差額を次の四つに分けることである。
①決算時に利用できた情報の不使用又は誤用による過去の誤謬
②新しい情報による会計上の見積りの変更
③当初は正しく処理した取引について後に生じた解除,取消し,返品,値引き又は貸倒れ
④法令の適用,収益・費用の年度帰属又は税額計算を誤った税務申告

①では会計上の修正再表示が問題となり,②は原則として変更した期間以後の会計処理となる。
③は後発的事由が生じた当期の損益となることが多く,④では修正申告又は更正の請求の要否を検討する。
帳簿上の仕訳名だけで結論を出さず,いつ,どの事実が存在し,決算時にどの情報を利用できたかを先に確定すべきである。

第2 会計上の処理
1 過去の誤謬は修正再表示する

企業会計基準第24号4項8号は,財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったこと又は誤用したことによる誤りを「誤謬」と定義する。
同項11号の「修正再表示」は,過去の財務諸表における誤謬の訂正を財務諸表に反映することをいう。
同基準21項により,過去の財務諸表における誤謬が発見された場合は,原則として修正再表示を行い,表示期間より前の累積的影響額を最も古い表示期間の期首の資産,負債及び純資産に反映する。

したがって,同基準を適用する企業について,過去の誤謬を発見したというだけで,その全額を当期の特別損失又は特別利益に計上するのが現在の原則ではない。
もっとも,重要性が乏しく修正再表示をしない誤謬は,内容に応じて当期の営業損益又は営業外損益に含める取扱いが示されており,重要性の判断を抜きに一律の処理をすることもできない。
既に公表した財務諸表自体の訂正期間及び訂正方法は,金融商品取引法その他の各開示制度によって別に判定する。

2 見積り変更と後発的事由は過去の誤謬ではない

企業会計基準第24号4項7号は,新たに入手可能となった情報に基づいて過去の見積りを変更することを「会計上の見積りの変更」と定義する。
同基準17項によれば,見積りの変更は,変更期間だけに影響するときは当該期間に,将来の期間にも影響するときは将来にわたって会計処理する。
決算時の情報に基づく見積りが合理的であったのに,その後の事情によって回収見込額等が変わった場合は,後知恵で過去の誤謬に置き換えてはならない。

契約が後に解除された場合や,商品が後に返品された場合も,解除又は返品の事実が当初から存在した誤りなのか,当初の処理後に新しく生じた事実なのかを区別する必要がある。
この区別は,会計処理だけでなく,後記の税務上の年度帰属にも直結する。

3 会社計算規則に科目名が残ることの意味

会社計算規則88条1項3号及び2項は,特別利益の例として前期損益修正益を,特別損失の例として前期損益修正損を掲げている。
もっとも,この表示科目が法令上残っていることは,企業会計基準第24号が過去の誤謬について定める修正再表示を排除するものではない。
どの財務報告制度と会計基準が適用されるかを確定し,誤謬の重要性を判定した上で,表示科目の可否を検討する必要がある。

第3 税務上の処理
1 申告当時から処理が誤っていた場合

法人税法22条は,各事業年度の益金と損金により所得金額を計算し,4項において,別段の定めがあるものを除き,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算する旨を定める。
同法22条の2は,資産の販売等に係る収益の計上時期と収益額を定めている。
過年度の売上げを単純に計上し忘れた場合や,法令上その年度に損金算入できない額を控除した場合は,後の年度の前期損益修正だけで税務申告の誤りが解消するわけではない。

申告税額が過少であれば,国税通則法19条に基づく修正申告を検討する。
申告税額が過大であるなど同法23条1項の要件を満たす場合は,更正の請求を検討する。
会計上の修正再表示をしたという事実だけで税務上の過年度所得が自動的に変わるのではなく,対象年度の申告が税法に従っていたかを年度ごとに判定する必要がある。

2 後日の解除,取消し又は返品等

法人税基本通達2-2-16は,前事業年度以前に益金算入した取引について,当事業年度に契約の解除,取消し又は返品等が生じた場合,その事実に基づく損失額を当事業年度の損金に算入する取扱いを示す。
これは,当初の収益計上が正しかったにもかかわらず,後に新しい事実が生じた場面の年度帰属である。
当初から売上げが存在しなかった場合や,単なる記帳漏れを当期に振り替える場面とは異なる。

収益額が値引き等で変動する可能性を当初から見積もる場面については,法人税法22条の2及び法人税法施行令18条の2の適用関係も確認する必要がある。
すべての値引きや返金を通達2-2-16だけで処理できるわけではなく,当初の収益額の算定に反映すべき変動対価か,後に生じた解除等かを分けて検討する。

3 会計上の遡及処理と税務申告の関係

国税庁の「法人が『会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準』を適用した場合の税務処理について(情報)」は,会計上の遡及処理を行った場合の税務処理を事例形式で示している。
同資料の問5は,過年度に減価償却費の計上を失念したものの税務申告では償却限度額まで損金算入していた事例について,修正再表示後も課税所得に影響せず,当期の利益剰余金と法人税申告書別表五(一)との関係を調整することを示す。
同資料の問7は,過年度の売上計上漏れについて,会計上は修正再表示を行い,税務上は過年度の修正申告を行う例を示す。

このように,会計上の修正再表示,帳簿の利益剰余金,法人税申告書の別表調整及び修正申告・更正の請求は,別々に確認しなければならない。
一つの仕訳で会計と税務の双方が完結すると考えると,対象年度や別表五(一)の利益積立金額の連続性を誤るおそれがある。

4 更正の請求の期限

国税庁の法人税に係る更正の請求手続によれば,国税通則法23条1項による通常の更正の請求は,原則として法定申告期限から5年以内である。
同条2項の後発的事由に基づく更正の請求は,原則として所定の事実が生じた日の翌日から2月以内である。
ただし,後発的事由に関する期間内に請求したことと,過年度の申告税額が税法上過大であることとは別の要件であり,期間内であれば当然に減額更正されるわけではない。

第4 年度帰属を示す裁判例等
1 後日の契約解除を当期の損失とした裁判例

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源泉徴収票,法定調書合計表及び給与支払報告書に関するメモ書き(AIリライト)

目次

0 総論
1 年末調整に際して給与所得の源泉徴収票を作成する場合
2 従業員が年の途中に退職した場合
3 源泉徴収票等の作成と提出の手引
4 法定調書合計表
5 給与支払報告書及び源泉徴収票の電子的提出の一元化とみなし提出
6 給与支払報告書の訂正
7 給与所得及び退職所得の源泉徴収票の計算サイト
8 関連記事その他

0 総論

国税庁ホームページのタックスアンサーNo.7400「法定調書の提出義務者」によれば,法定調書とは,所得税法,相続税法,租税特別措置法及び内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律の規定により,税務署への提出が義務付けられている資料をいう。給与所得の源泉徴収票は,この法定調書の一種であり,給与等の支払者が受給者ごとに作成し,一定範囲のものを所轄税務署へ提出するとともに,税務署への提出の要否にかかわらずすべての受給者本人に交付しなければならない書類である(所得税法226条1項)。

給与支払報告書は,記載内容が源泉徴収票とほぼ同一であるものの,市区町村(受給者の住所地)に提出するための書類であり,税務署提出用の法定調書合計表とは別の手続として整理されている。法定調書合計表は,給与所得の源泉徴収票をはじめとする複数種類の法定調書の提出状況を取りまとめて所轄税務署に提出する書類である。以下では,これらの作成・提出の実務を,令和7年度税制改正による源泉徴収票様式の改正まで含めて整理する。

1 年末調整に際して給与所得の源泉徴収票を作成する場合

従業員に給与等を支払った場合,給与所得の源泉徴収票を給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表と一緒に,翌年1月31日までに支払者の所轄税務署に提出する必要がある。令和8年12月31日以前に提出すべき給与所得の源泉徴収票の提出範囲は,年末調整をした受給者について,①法人の役員(現に役員をしていなくても,その年中に役員であった者を含む。相談役,顧問その他これらに類する方も含まれる。)はその年中の給与等の支払金額が150万円を超えるもの,②弁護士,司法書士,税理士等はその年中の給与等の支払金額が250万円を超えるもの,③これら以外の者はその年中の給与等の支払金額が500万円を超えるものに限られる(年末調整をしなかった受給者については別途の提出範囲が定められている。国税庁ホームページのタックスアンサーNo.7411「「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等」参照)。令和9年1月1日以後に提出すべきものからは提出範囲が拡大され,年末調整の有無や役員等の区分にかかわらず,年の中途で退職した人の給与等の支払金額が30万円以下である場合を除き,すべての受給者分が税務署への提出対象となる。ただし,後記5のみなし提出の特例を適用する場合は,給与所得の源泉徴収票及びその合計表を税務署へ別途提出する必要はない(所得税法226条6項,所得税法施行規則93条2項・95条の3)。

ただし,この税務署への提出範囲に該当するかどうかにかかわらず,給与等を支払ったすべての受給者(国内に住所又は1年以上居所を有する居住者である外国人従業員を含む。)に対しては,その年の翌年1月31日まで(年の中途で退職した受給者については,退職の日以後1か月以内)に,給与所得の源泉徴収票を交付する必要がある(所得税法226条1項)。この交付又は提出の義務に違反し,正当な理由なく源泉徴収票をその提出期限までに税務署長に提出せず,又は交付の期限までに支払を受ける者に交付しない場合(偽りの記載をして提出し,又は交付した場合を含む。)は,1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処せられる(所得税法242条5号,6号)。

市区町村に対しては,給与支払報告書(総括表)1枚及び給与支払報告書(個人別明細書)1枚を,翌年1月31日までに提出する必要がある。ビズ研HPに「【令和4年版】源泉徴収票・給与支払報告書テンプレート(無料・登録不要)」が掲載されている。大阪市の提出案内も,給与支払報告書(総括表)1枚及び個人別明細書1人につき1枚としている(大阪市「給与支払報告書について」参照)。

2 従業員が年の途中に退職した場合

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従業員から特別徴収した住民税に関するメモ書き(AIリライト)

目次

第1 特別徴収制度の総論

1 制度の趣旨

2 法的根拠となる条文

3 特別徴収の対象となる従業員の範囲と年度途中の切替え

4 森林環境税との一体徴収

5 特別徴収の対象外にできる場合

第2 特別徴収税額の通知及び納入

1 通知の時期と方法

2 電子データによる通知の受け取り

3 納入の期限

第3 特別徴収税額の納期の特例

第4 従業員が退職等をした場合の取扱い

1 給与所得者異動届出書の提出

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