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税務

食品消費税1%法案と契約・価格表示・請求書―食品事業者の準備(AI作成)

目次

第1 食品事業者が準備すべきこと第2 税率の変更と契約価格の変更を分ける1 契約書・見積書で確認する項目2 価格条項だけでなく,取引時期も確認する第3 定期便・通販では,令和9年1月1日前の条件を確認する1 定期供給契約による予約販売2 通信販売第4 総額表示の特例は,値札と実際の精算を分けて考える1 特例の期間と条件2 表示とレジ処理の食い違いを防ぐ第5 請求書・帳簿・返品を切替え前後で点検する1 月締めの請求書2 切替え前の売上げの返品第6 担当者と期限を決めて準備する第7 参照資料
第1 食品事業者が準備すべきこと

食品消費税1%法案への対応では,税率マスターの変更だけでなく,取引先との価格の合意,定期便・通販の経過取扱い,店頭表示,請求書及び返品処理を一緒に点検する必要がある。

本記事は,令和8年10月9日に閣議決定され,第222回国会に提出された政府法案と国税庁の公表資料を前提にした準備の解説である。法案提出,成立,公布及び施行は別の段階であり,以下の特例を現在利用できる制度として扱ってはならない。実施に当たっては成立した法律とその後の国税庁資料を確認する必要がある。

政府案は,令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間,対象となる飲食料品の消費税率を地方消費税と合わせて1%とする内容である。現在の標準税率10%,軽減税率8%と区別する。対象品目や法案全体は,食品消費税1%法案の解説を参照されたい。

第2 税率の変更と契約価格の変更を分ける
1 契約書・見積書で確認する項目

税率が1%になる場合の税額計算と,売買代金をいくらとするかは,それぞれ確認すべき事項である。取引先への説明では,税込の総額,本体価格,適用税率,適用を切り替える取引及び変更の合意内容を明確にしておく必要がある。

例えば,本体価格1000円を維持する前提なら,税込価格は8%で1080円,1%で1010円となる。税込1080円の合意をそのまま維持する案は,本体価格を維持する案とは異なる。税率変更だけを理由に契約価格の扱いまで一律に決めつけず,価格条項と変更手続を読んで取引先と確認するのが実務上の準備となる。

確認する資料確認する内容基本契約・個別契約税込総額か,税抜価格に税額を加える約束か。税率変更時の調整条項があるか。見積書・注文書適用する価格の期間,納品日,送料等の区分及び注文の承諾内容。価格改定の合意書新価格,適用開始日,対象商品,既受注分への適用及び相手方の承諾記録。定期便・通販の条件旧税率の経過取扱いの対象か。1%を前提とする条件を定めたか。
2 価格条項だけでなく,取引時期も確認する

国税庁Q&Aの問1-3は,原則として飲食料品を譲渡した時期で適用税率を判定することを説明している。注文日や請求書の発行日だけで税率を決めてはならない。

同Q&Aの問1-4では,売手が出荷日,買手が検収日を継続して用いている取引について,買手は売手の適用した税率によるインボイスを基に仕入税額控除の計算を行うとされている。税率が不明な場合には相手方へ確認する。境界日の取引について,出荷記録,納品記録,検収記録及びインボイスを結び付けて保存しておくことが望ましい。

第3 定期便・通販では,令和9年1月1日前の条件を確認する
1 定期供給契約による予約販売

政府案と国税庁Q&Aの問1-6には,一定の取引に引下げ前の8%を適用する経過取扱いが示されている。対象なら任意に1%を選択する取扱いではない。

定期供給契約による予約販売については,令和9年1月1日前に締結した,不特定多数の者に対する定期的な継続供給契約に基づき,令和9年4月1日前に受領した対価に係る飲食料品を同日以後に譲渡する場合が対象とされる。ただし,1%への引下げを前提とした契約は除かれる。

単に「契約が古い」という理由だけでは足りない。契約締結日,対価の受領日,供給時期及び税率変更に関する契約内容を確認する必要がある。

2 通信販売

通信販売については,令和9年1月1日前に販売条件を提示し,又は提示する準備を完了した場合に,令和9年4月1日前に申込みを受け,同日以後に飲食料品を譲渡する取引が対象とされる。1%への引下げを前提とした販売条件は除かれる。

国税庁Q&Aは,ウェブサイト,電子メール及び電話等による申込みも扱い,訪問等による対面での販売条件の提示や申込みはこの通信販売から除くと説明している。カタログの印刷完了も,提示する準備が完了した場合の例とされている。

残しておく記録確認する理由条件の旧版・新版と改訂日令和9年1月1日前の条件と,1%を前提とした変更の有無を確認するため。カタログの印刷記録・ウェブ掲載記録条件の提示又はその準備が完了した日を確認するため。申込受付・決済・出荷の記録申込日,対価受領日,譲渡日を混同しないため。変更通知・相手方の承諾記録税率変更を反映した契約内容と価格の扱いを確認するため。

定期便の契約や通販条件に1%を前提とする内容を設ける場合は,国税庁Q&Aの具体例と照合する必要がある。既存条件のまま経過取扱いに該当する取引と,条件変更後の取引を一括して処理しない。

第4 総額表示の特例は,値札と実際の精算を分けて考える
1 特例の期間と条件

総額表示は,課税事業者が消費者に対し,あらかじめ価格を表示する場合の税込価格の表示義務である。国税庁Q&Aの問3-9は,税率の切替え時に直ちに表示を変更することが困難な事情があり,誤認防止措置を講じる場合に限り,次の表示を認める特例を説明している。

表示する期間特例で認める税込表示令和9年2月1日~3月31日引下げ後の1%に基づく税込価格。令和9年4月1日~5月31日引下げ前の8%に基づく税込価格。令和11年2月1日~3月31日引下げ終了後の8%に基づく税込価格。令和11年4月1日~5月31日引下げ期間中の1%に基づく税込価格。

これは表示に関する特例である。表示されている旧税率を理由に,実際の取引にも旧税率を適用する制度ではない。また,税抜価格だけ,又は税抜価格に「+税」と付記するだけの表示を認める特例でもない。

2 表示とレジ処理の食い違いを防ぐ

国税庁Q&Aは,夜間の値札の貼替えだけでは対応できない場合や,カタログ・商品パッケージに価格が印刷されている場合を,困難な事情の例としている。値札を貼り替えたのに,具体的な事情もなく旧税率の表示を続ける例は区別されている。

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名義預金を生前に解消するには―元の口座に戻す場合と贈与する場合の違い(AI作成)

目次

第1 名義預金の解消は,現在の持ち主の確認から始める1 口座を動かす前に三つの場合を分ける2 税務上の帰属と銀行での払戻手続を分ける第2 親の財産のままなら,返還の経緯を記録する1 返還と新たな贈与を区別する2 返還額とその根拠を残す第3 今から子等へ贈与するなら,新しい贈与として整理する1 過去の積立日と贈与の取得時期は同じとは限らない2 契約書・管理・税務申告を一致させる3 110万円は口座ごとの枠ではない第4 既に贈与済みの場合と未成年者の場合1 既に子の財産なら,親への送金を単なる返還と決めない2 未成年者の財産管理と親の財産管理は異なる第5 解消しても,過去の申告の問題は別に残る第6 出典と確認資料
第1 名義預金の解消は,現在の持ち主の確認から始める
1 口座を動かす前に三つの場合を分ける

子や配偶者の名義で預金を積み立ててきた人が,名義預金を生前に整理する場合,最初に確認するのは「いま誰の財産なのか」である。口座名義と実質的な財産の帰属が一致していない預金については,名義人に戻してもらう場合と,新たに名義人へ贈与する場合とで意味が異なる。

第一に,贈与が成立しておらず,出資した親等の財産のままである場合がある。第二に,過去に有効な贈与があり,既に子等の財産になっている場合がある。第三に,親の資金,子の給与,お祝い金等が混在していて,一括した結論を出せない場合がある。

親が出資したこと,通帳を保管していること又は口座名義が子であることの一つだけでは決まらない。贈与の合意,入金の経緯,管理の目的,収益の帰属及び実際の使用を併せて確認する。判定の裁判例と資料は,名義預金の判断基準・生前贈与との違い・相続税と遺産分割で詳しく説明している。

2 税務上の帰属と銀行での払戻手続を分ける

税務上「親の財産である」と判断できることと,親が子名義の口座から自由に払い戻せることとは同じではない。預金契約上の権利者,手続をする人の権限及び銀行が求める本人確認資料を別に確認する必要がある。

口座名義を親から子,又は子から親へ変更すれば解決するとも限らない。口座の扱いと送金・払戻しの方法は,当該金融機関に事情を説明して確認する。他人の本人確認情報を使って本人になりすます方法や,無断で払戻す方法を採るべきではない。

第2 親の財産のままなら,返還の経緯を記録する
1 返還と新たな贈与を区別する

名義人が単に親の財産を管理していたのであれば,その財産を親へ返還すること自体は,子の固有財産を親へ無償で与える場合とは異なる。しかし,「名義預金を戻す」と振込摘要に書くだけで税務上の結論が決まるわけではない。

相続税法9条は,対価を支払わずに利益を受けた場合等のみなし贈与を定めている。誰の財産が,誰に,どのような原因で移ったかを確認することが出発点となる。

国税不服審判所令和3年7月12日裁決は,妻名義の口座等への入金について,夫の財産がそのまま管理されていたと評価し,妻への贈与と同様の経済的利益の移転を認めなかった。これは個別の事実認定であり,夫婦間又は親子間の送金がすべて非課税になるという意味ではない。

2 返還額とその根拠を残す

返還する前に,口座開設日,入金日,入金元,残高,利息,払戻し,送金先及び管理者を一覧にする。通帳・取引履歴の原資料,贈与に関する連絡,既存の契約書及び過去の申告書も保存する。

返還の記録には,何を誰の財産と判断したか,その資料,返還する額,実際の送金日及び送金先を記載する。現在の確認書を作る場合は,作成日と過去の事実を区別し,資料から確認できない点を確定事項として書かない。この一覧や確認書は法定様式ではなく,後日の説明のための実務上の整理方法である。

親の資金と子の固有資金が混在しているときは,残高全額を機械的に親へ戻さない。給与,お祝い金及び成立済みの贈与等を取引ごとに確認する。利息や運用収益の帰属が争われる場合も,元本の帰属だけで処理を終えず,個別に検討する必要がある。

第3 今から子等へ贈与するなら,新しい贈与として整理する
1 過去の積立日と贈与の取得時期は同じとは限らない

民法549条によれば,贈与は無償で財産を与える意思表示と相手方の受諾により効力を生ずる。子に知らせず親が積み立てただけの預金について,後から子に渡すことにした場合,過去の各入金時に贈与が成立していたと当然に扱うことはできない。

例えば,親の財産のまま積み立てられた500万円を,現在,新たな合意に基づいて一括して子へ贈与する場合,過去に毎年100万円ずつ入金していたという事情だけで,5年分の基礎控除に分けることはできない。

国税庁「贈与を受ける財産の取得の時期」は,原則として,口頭による贈与は履行時,書面による贈与は契約の効力発生時と説明している。通帳を渡す日だけで一律に判断せず,合意内容と履行を確認する。過去の日付へ遡らせた契約書や,事実と異なる申告資料を作成してはならない。

2 契約書・管理・税務申告を一致させる

贈与する場合は,対象となる金額又は財産,贈与者,受贈者,合意日,効力発生時期及び履行方法を明確にする。契約書は合意の証拠となるが,作成しただけで,過去の名義預金が当初から贈与済みであったことになるわけではない。

名義人が自分の財産として管理できる状態を整え,送金又は引渡しの記録を残す。贈与後も親が自分の資金として自由に引き出して使う運用では,説明が矛盾する。一方,子が受け取った財産を貯蓄すること自体は妨げられず,贈与の成立を示すために使い切る必要もない。

3 110万円は口座ごとの枠ではない

暦年課税の基礎控除110万円は,受贈者がその年に暦年課税の対象として受けた贈与財産の合計額について適用される。銀行ごと,入金ごと又は贈与者ごとの枠ではない。父母等の複数人から贈与を受けた場合も合算して確認する(国税庁No.4402,租税特別措置法70条の2の4)。

相続時精算課税を選択済み,又はこれから選択する場合は,暦年課税と別に,届出・控除・申告及び相続時の計算を確認する。110万円以下だから何の手続も不要とは限らない。贈与が有効でも相続税への加算が問題になることがあるため,生前贈与加算と名義預金の違いも参照されたい。

第4 既に贈与済みの場合と未成年者の場合

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RSUの日本課税と確定申告―権利取得日,株式売却,配当と外国税額控除(AI作成)

目次

第1 RSUは,付与・株式取得・売却を分けて確認する1 確認する日付2 ストックオプションや譲渡制限付株式との違い第2 課税時期は,報酬契約上の権利取得を確認する1 所得税法36条と現金以外の報酬2 東京高裁平成28年5月25日判決3 東京高裁平成28年4月14日判決と公表裁決第3 給与所得の金額,円換算と申告資料1 株数,時価,為替相場をそろえる2 税金相当額の株式控除・売却を確認する3 年末調整と確定申告第4 取得後の売却と配当は別に計算する1 売却代金の全額が利益になるわけではない2 配当と,株式交付前の配当相当額3 取得後の値下がりと給与課税第5 外国税額控除,海外勤務と財産報告1 外国税が引かれていても,全額を控除できるとは限らない2 海外勤務・帰国・非永住者の場合3 年末の保有と国外転出第6 相談・申告時に保存する資料1 報酬契約と権利取得の資料2 金額と納税の資料3 勤務・居住の資料第7 主要な根拠資料
第1 RSUは,付与・株式取得・売却を分けて確認する

RSU(Restricted Stock Unit,制限株式ユニット)は,一定の勤務継続等の条件を満たした従業員に,将来,株式等を交付する株式報酬の仕組みである。ただし,その名称だけで日本の課税時期や所得区分を決めることはできない。報酬プラン,付与契約及び実際の交付方法を読む必要がある。

本記事は,日本の居住者である従業員が外国の親会社等から株式報酬を受ける場合を中心に,申告前に確認すべき事項を説明する。勤務の対価である株式報酬については,株式を売っていなくても給与所得の問題が生じ得る。取得後の売却や配当は,その給与所得とは分けて計算する。

1 確認する日付

付与日(grant),勤務条件等の充足日(vesting),株式への転換・決済日(conversion・settlement),証券口座への実際の移管日,売却日を分けて記録する。会社やプランによって用語の意味が異なり,複数の日が一致する場合もある。

特に,vestingと表示された後にも失権・取消条件が残るのか,株式の引渡しを確定的に請求できるのはいつか,株主としての権利をいつ取得するのかを確認する。「vestingと書かれている日が,どのプランでも必ず日本の課税日になる」という処理は避けるべきである。

2 ストックオプションや譲渡制限付株式との違い

ストックオプションは,定められた価格で株式を取得する権利である。RSUの株式報酬に,税制適格ストックオプションの課税繰延べをそのまま適用できるわけではない。ストックオプションの所得税―税制適格・非適格の区別も参照されたい。

また,実際の株式を先に交付する譲渡制限付株式と,将来の株式交付を約するユニットは区別する。所得税法施行令84条の特定譲渡制限付株式等には,法令上の要件と譲渡制限解除時の評価の定めがある。社内の売却禁止期間があるという理由だけで,この特例に該当するとはいえない。

第2 課税時期は,報酬契約上の権利取得を確認する
1 所得税法36条と現金以外の報酬

所得税法28条は給与所得を定め,36条は現金以外の物・権利・経済的利益による収入と,その取得又は享受時の価額を定めている。現金が銀行口座に入っていないことや,株式をまだ売却していないことだけで,給与所得の計上を先送りできるわけではない。

確認するのは,報酬の原因となる権利がいつ確定するかである。契約に残る条件,株式引渡請求権,転換の通知及び移管の手続を照合し,取引画面の日付だけで判断しないことが重要である。

2 東京高裁平成28年5月25日判決

国税庁公表の判決本文では,外国法人のストック・ユニットが平成20年9月8日に株式へ転換した事案について,給与等の収入すべき日が問題となった。

裁判所は,当該プラン・報酬証書と通知の内容を検討し,転換日が報酬の支払日・株式の引渡日であり,従業員が同日以降に株式の引渡しを求められることを重視した。口座への後日の移管は事務手続上の連絡であり,グループの従業員取引ポリシーによる売却制限も,この事案の権利取得日の判断を変更しないとした。

この判決から学ぶべきことは,口座への移管日や売却可能日を一律に課税日とすることの危険である。異なる条件のRSUにも,判決中の「転換日」という名称だけを当てはめるべきではない。

3 東京高裁平成28年4月14日判決と公表裁決

東京高裁平成28年4月14日判決も,転換と現実の引渡しを区別し,当該事案で採用された株式の終値とTTMによる円換算を合理的とした。納税者が選んだ評価方法であれば当然に認められる,という判断ではない。

国税不服審判所平成24年2月10日裁決(公表抄)でも,vesting後に転換前の取消条件が残る仕組み,転換後の株主としての地位及び口座振替の事務手続が検討されている。裁決は個別の行政上の判断であり,裁判所の判決と同じものとして扱わない。

これらの資料は,それぞれの報酬条件と平成20年の取引に関する判断である。現在の個別プランに当てはめる際には,現行法令と契約条件を改めて確認する必要がある。

第3 給与所得の金額,円換算と申告資料
1 株数,時価,為替相場をそろえる

勤務の対価として株式を取得する場合は,課税時期に対応する株数,株価,円換算の根拠をそろえる。会社が示した外貨額,報酬明細,証券会社の画面及び日本の申告書の金額を照合し,日付や通貨の違いを説明できるようにする。

外貨建取引については,所得税法57条の3の円換算の定めも確認する。前記平成28年4月14日判決の終値・TTMに関する判断は重要であるが,異なる制度や取引について,会社の画面に表示された価格・換算額を無条件で転記してよいという意味ではない。

2 税金相当額の株式控除・売却を確認する

会社が交付株数の一部を税金相当額として控除したり,株式を売却して納税資金を確保したりすることがある。入庫した純株数だけを機械的に給与収入に用いず,報酬の総額,控除・売却された株数,その法的処理,税の支払先及び給与明細への計上を確認する。

「tax withholding」と表示されていても,どの国の,誰の税が支払われたかが不明なままでは,日本の源泉徴収税額として申告できるとは判断できない。会社・税務担当者から,徴収税目,納税国及び本人に帰属する税額の資料を取得する。

3 年末調整と確定申告

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海外移住・海外在住者への贈与と相続で問題となる国外転出時課税―対象資産,納税管理人と納税猶予(AI作成)

目次

第1 売っていない株式にも所得税が生じ得る第2 対象者と対象資産を判定する1 1億円以上と国内居住期間の要件2 株式,投資信託,匿名組合持分と未決済取引3 評価日と資料第3 海外移住する本人の申告と納税管理人第4 海外在住者へ贈与する場合第5 海外在住者が相続・遺贈で取得する場合第6 納税猶予は免税ではない1 原則5年,延長により最長10年2 毎年の届出,資産移転と利子税3 帰国時の取消しも自動ではない第7 弁護士・税理士が初動で共有する事項第8 一次資料
第1 売っていない株式にも所得税が生じ得る

国外転出時課税は,一定の居住者が国外転出をする場合に,所有する有価証券等を譲渡したものとみなし,含み益に所得税を課す制度である。
対象となる株式を実際に売却していなくても申告と納税が必要となり得るため,移住前に資産と期限を確認する必要がある。

同じ仕組みは,一定の居住者から非居住者へ対象資産を贈与し,又は相続・遺贈によって移転する場合にも設けられている。贈与者又は被相続人本人が海外へ移住しなくても,検討が必要になる点が重要である。
これは,出国時に航空券等を通じて徴収される国際観光旅客税とは別の制度である。

第2 対象者と対象資産を判定する
1 1億円以上と国内居住期間の要件

所得税法60条の2・60条の3は,対象資産の価額等の合計額が1億円以上であることと,原則として直前10年以内に国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年を超えることを要件としている。
1億円は含み益の金額ではなく,対象資産の価額等の合計額で判定する。ちょうど1億円の場合も対象となり得る。

在留資格による期間除外があるため,国内居住年数を単純に合算してはならない。出入国管理法別表第一の上欄の在留資格で在留した期間や,別表第二の在留資格で在留した平成27年6月30日以前の期間について,法令・経過措置を確認する必要がある。
相続税・贈与税の納税義務者の判定とは異なる要件であり,国籍,住所履歴及び在留資格をそれぞれ整理すべきである。

2 株式,投資信託,匿名組合持分と未決済取引

対象資産は,有価証券,匿名組合契約の出資持分,未決済の信用取引・発行日取引及び未決済のデリバティブ取引である。国内保有か国外保有かだけで対象を限定しない。
預金や不動産の価額を,この制度の1億円判定にそのまま加えるものではない。他方,非上場株式も確認対象であり,「証券会社の口座には1億円ない」という理由だけで判定を終えてはならない。

NISA口座内の上場株式等も,対象資産の価額の判定から当然に除外されるわけではない。国税庁のFAQは,譲渡による所得が非課税となる一定の有価証券も対象資産に含むと説明している。1億円の判定と,実際に課税される所得の計算を分ける必要がある。
株式報酬に係る一定の有価証券には対象外となるものがあるため,ストック・オプションや譲渡制限付株式は契約内容と法令上の要件を確認する。

3 評価日と資料

国外転出日以後に申告する場合と,転出前に申告する場合では,評価時点が異なる。転出前に申告する場合には,原則として転出予定日の3か月前の価額等を用いる仕組みがある。
その後に取得した資産の扱いも含め,対象資産の明細を作成し,非上場株式の評価,取得価額,為替換算及び未決済取引の損益を確認する。申告直前に残高証明書だけを集める方法では,取得費や評価日の資料が不足し得る。

第3 海外移住する本人の申告と納税管理人

国外転出の時までに納税管理人の届出をした場合は,転出した年分の確定申告期限までに,通常の所得と国外転出時課税による所得を含めて申告・納税する。
納税管理人を届け出ずに転出する場合は,国外転出の時までに,その年の1月1日から転出時までの所得について準確定申告と納税を行う必要がある。
納税管理人を決めるのが転出後でよいと考えていると,申告期限と納税猶予の選択に影響する。

納税管理人は,申告書の提出や税務署との手続を担うための制度である。委任したことだけで本人の納税義務が免除されるわけではなく,連絡方法,資料の受渡し及び継続届出の担当も決めておくべきである。

第4 海外在住者へ贈与する場合

一定の居住者が非居住者へ対象資産を贈与すると,贈与対象資産を贈与時に譲渡したものとみなして,贈与者の所得税を計算する。
対象者かどうかの1億円判定は,贈与する部分だけでなく,贈与者が所有等している対象資産全体について行う。少額の株式贈与であっても,贈与者の資産全体によって適用が問題となる。

贈与者は,贈与した年分の確定申告期限までに,この所得を他の所得と併せて申告・納税する必要がある。
受贈者の贈与税は別に判定する。海外在住の子へ日本株を贈与する場面では,「子の贈与税だけ」を検討するのでは足りない。

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海外送金に税金はかかるか―自己資金,贈与,貸付返済と国外財産調書・CRS(AI作成)

目次

第1 送金と課税原因を分ける1 自己資金の移動2 所得の受領,贈与,貸付返済第2 居住者・非居住者と非永住者1 国籍や滞在日数だけで決めない2 非永住者の国外所得と送金第3 金融機関の国外送金等調書と本人の申告第4 国外財産調書と財産債務調書1 国外財産調書の金額・時点・期限2 外国株式の所在地を税目間で流用しない3 財産債務調書は別の制度第5 CRSと税務署からの照会第6 相談時にそろえる資料第7 根拠資料
第1 送金と課税原因を分ける

海外から日本へ,又は日本から海外へ送金したという事実だけで,送金額の全額に所得税又は贈与税が課されるわけではない。
確認すべきなのは,誰の財産を,何の原因で,誰に移したかである。過去に形成した自己資金の移動,給与や配当の受領,親族への贈与及び貸付金の返済では,課税の対象と確認資料が異なる。

本記事は個人の送金を対象に,日本の税金と財産報告の確認順序を説明する。法人の取引,外国の送金規制及び各国の課税は,別に検討する必要がある。

1 自己資金の移動

本人が実質的に所有する海外預金を本人の国内口座へ移しただけであれば,その移動そのものによって新たな所得を得たとはいえない。
ただし,送金元の預金が未申告の給与,配当又は資産売却代金から形成されていた場合は,その所得が生じた年の申告を確認する。外貨の円転等による為替差損益の判定も,預金元本の移動とは別問題である。
口座名義が同じことだけで結論を出さず,実際の資金拠出者と帰属も確認すべきである。

2 所得の受領,贈与,貸付返済

給与,配当,事業収入又は資産売却代金を送金で受け取った場合には,送金という形式ではなく,その所得の種類,発生時期及び日本の課税範囲を確認する。
親族から返還義務のない資金を受け取る場合は贈与税の検討が必要となり得る。他方,実際に存在する貸付金の元本返済は,元本部分と利息部分を分けて扱う。

親族間で「貸付け」と説明していても,返済能力や返済の実態がなければ,税務上は贈与として扱われる場合がある。国税庁は,無利子貸付けによる利益や,「ある時払いの催促なし」といった貸付けにも注意を求めている。
送金後に借用書だけを作るのではなく,当初の合意,返済計画,返済履歴及び資金使途を保存することが重要である。民事上の返還請求と消滅時効については,返済期限を決めていない貸金・親族間の貸付けの消滅時効はいつから進行するかも参照されたい。

第2 居住者・非居住者と非永住者
1 国籍や滞在日数だけで決めない

所得税法2条・7条は,居住者,非永住者及び非居住者に応じて課税範囲を定めている。居住者は,国内に住所を有し,又は現在まで引き続き1年以上居所を有する個人である。
住所は生活の本拠として事実関係から判断する。日本国籍があること,住民票を残したこと,又は一年の滞在日数の一つだけで判定を終えてはならない。二国に居住者とされる場合には,適用される租税条約も確認する。

非永住者は,居住者のうち,日本国籍を有せず,過去10年以内に国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいう。「永住者」という在留資格の有無だけで決まる区分ではない。

2 非永住者の国外所得と送金

非永住者については,国外源泉所得以外の所得のほか,国外源泉所得のうち国内で支払われ,又は国外から送金されたものが課税範囲に入る。
このため,「昔の貯金を送ったから常に非課税」とは限らない。国外源泉所得がある年の送金については,所得税法施行令17条の送金に関する計算も確認する必要がある。
所得の発生年,国内外の支払場所,送金額及び預金の形成過程を整理し,非永住者以外の居住者と同じ説明で処理しないことが重要である。

第3 金融機関の国外送金等調書と本人の申告

国外送金等調書法4条と同法施行令8条は,金融機関等が提出する国外送金等調書を定めている。送金又は受領の金額が100万円を超える場合が基準となる。
これは金融機関側の報告制度であり,100万円を超えたこと自体を理由に所得税又は贈与税が発生する制度ではない。反対に,100万円以下であれば,本来課税される給与,配当又は贈与について申告不要となるわけでもない。
本人の確定申告,贈与税申告及び財産報告の要否は,それぞれの要件で判定する必要がある。

金融機関から求められる本人確認,送金目的及び資金の出所の確認には,送金の実態を説明できる資料を用意する。金融機関が送金を受け付けたことも,税務申告が適正であることの証明にはならない。

第4 国外財産調書と財産債務調書
1 国外財産調書の金額・時点・期限

(続きを読む...)海外送金に税金はかかるか―自己資金,贈与,貸付返済と国外財産調書・CRS(AI作成)

租税条約の相互協議と国内救済―二重課税の相談で確保する期限・資料・合意後の手続(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論第2 相互協議の位置付けと条約の確認1 税務当局間で解決を図る手続2 国籍だけで入口を決めない第3 申立ての期限を別々に確保する1 相互協議の期限2 国内救済の期限第4 事前相談に持参する資料と担当1 課税・取引・主張を同じ資料で説明する2 連携と記録の実務例第5 納税と合意後の実施を忘れない1 申立てと納税・猶予を分ける2 合意内容と国内手続を照合する3 源泉徴収・地方税・外国での還付第6 判断済みの事項と未解決の事項を分ける1 国内の判断が既にある場合2 外国の源泉課税を受けた相談の進め方第7 関連記事と出典1 関連記事2 出典と確認範囲
第1 この記事の対象と結論

外国で追加課税を受け,日本でも同じ所得に課税されている場合,税額の計算に加え,どの手続で,いつまでに,何を求めるかを整理する必要がある。本記事は,企業の経理・法務担当者,税理士及び弁護士が,租税条約の規定に適合しない課税について初動を検討するためのものである。基準日は令和8年10月10日である。

相互協議の申立て,国内の不服申立て・訴訟,納税・猶予は別々に確認する。相互協議の結果を待つ間に国内の期限が当然に延びると考えてはならない。また,合意が成立しても,必要な更正・還付の手続が自動的に全て終わるわけではない。

最初に,課税した国,納税者,税目,対象所得,課税年度,通知を受けた日及び既に行った救済手続を一枚にまとめる。その上で,条約の適用と各手続の期限を照合するのが実務上の出発点となる。

第2 相互協議の位置付けと条約の確認
1 税務当局間で解決を図る手続

国税庁の相互協議ガイダンスQ1-1~3によれば,相互協議(MAP)は,租税条約に基づき,締約国等の税務当局間で,条約の規定に適合しない課税等の解決を図る協議手続である。納税者が相手国を直接訴える裁判ではない。条約があっても両国の課税の扱いが食い違い,二重課税が残る場合がある。

本記事は,既に行われた課税又は行われると認められる課税についての相談を扱う。将来の移転価格等の事前確認(APA)に係る相互協議とは,準備する資料と手続の段階を分ける。

2 国籍だけで入口を決めない

日本国籍がある,外国で税を払った,又は条約の署名があるという事実だけで,申立ての可否は決まらない。適用される租税条約,居住者等の地位,対象税目・所得・期間,相互協議規定及び申立先を確認する。条約の改正議定書やBEPS防止措置実施条約による修正も点検する。

租税条約等実施特例法施行省令12条は,条約に適合しない課税を受け,又は受けるに至ると認める場合の申立書と添付書類を定めている。国内法と条約の入口を併せて確認する必要がある。個々の条約を調べず,全ての国で同じ申立先・期限が使えるとはしない。

外交的保護では,国籍国が個人の被害について他国の国家責任を援用する。これに対し,相互協議は租税条約に定められた救済経路である。外交的保護の国内救済完了の考え方を,相互協議にそのまま移して「訴訟を終えるまで申立てできない」と考えることはできない。

第3 申立ての期限を別々に確保する
1 相互協議の期限

国税庁Q2-9は,OECDモデル租税条約では,条約に適合しない課税に係る措置の最初の通知の日から3年以内とされている一方,個々の条約によって異なると説明している。3年を全ての租税条約の一律期限にしない。適用条約の原文で期間と起算点を確かめ,通知書・受領日を保存する。

2 国内救済の期限

日本の国税の不服申立てについて,国税通則法77条1項は,原則として,処分を知った日(通知を受けた場合はその受領日)の翌日から3か月という期間を定める。再調査の請求後の審査請求,同条3項の処分日からの期間,正当な理由の例外及び特別な処分の期限は別に点検する。取消訴訟もその固有の期限と不服申立て前置の要否を確認する。

国税庁の事務運営指針第2・3の注2は,不服申立て又は訴訟を行っているかどうかにかかわらず,相互協議の申立てができると説明している。両方の経路を利用する場合は,片方の申立てを他方の期限保全の代わりにしない。

第4 事前相談に持参する資料と担当
1 課税・取引・主張を同じ資料で説明する

国税庁の事務運営指針第2・6に沿って,課税通知等,取引と課税の事実関係,条約に適合しないと考える理由,対象年度,不服申立書・訴状等を整理する。相手国でも申立てをしている場合は,その資料も確認する。外国語資料には日本語訳を付ける。

契約書,請求書,送金記録,税の納付証明,申告書,居住者等の地位を示す資料と,双方の当局に出した説明を対応させる。国税庁Q1-8は,両国への説明の著しい食い違いや重要資料の未提出が円滑な解決を妨げることを指摘している。

資料がそろうのを待って期限を失わないよう,申立期限と不足資料を分け,早期に国税庁相互協議室の事前相談を利用する。相談した事実を正式申立ての代わりとせず,必要書類と提出方法を確認する。

2 連携と記録の実務例

担当の分け方は受任範囲に応じて決める。次は法律上の専属業務を網羅する表ではなく,連携のための確認例である。

担当・場面確認・共有する事項経理・税務担当課税年度,税額,納付・申告状況,証憑及び条約の適用資料を整理する。法的救済の担当国内不服申立て・訴訟の期限,主張,既存の判断,和解・取下げの影響を確認する。現地の専門家相手国の申立期限,訴訟・和解と相互協議の関係及び現地の還付手続を確認する。

各担当の期限表を一本にまとめ,誰が申立書を提出し,誰が不足資料と当局からの連絡を管理するかを決める。国ごとの説明内容を変える場合は,理由と根拠を共有してから提出する。

第5 納税と合意後の実施を忘れない
1 申立てと納税・猶予を分ける

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決算賞与の支給日在籍要件と税務―退職者への支給義務,未払賞与の損金算入及び源泉徴収(AI作成)

目次

第1 支給条件と税務上の計上条件を一緒に確認する第2 退職者への賞与支給義務をどう判断するか1 賞与の具体的な根拠と通知の意味2 在籍要件の合理性と個別の適用第3 使用人賞与の損金算入時期1 支給予定日が到来した賞与2 翌期1か月以内に支払う決算賞与3 その他の賞与第4 社員の収入年分と会社の源泉徴収時期第5 通知を出す前と決算・支払時の確認第6 関連記事と出典1 関連記事2 法令・行政資料と確認範囲
第1 支給条件と税務上の計上条件を一緒に確認する

決算前に社員へ賞与の金額を知らせ,翌期に支払う場合,支給日に在籍する社員だけに払うという条件があると,翌期1か月以内に支払う方法で通知年度の損金に算入するための通知要件を満たさない。労働法上の支給条件として在籍要件を設けることと,法人税上の通知要件を満たすことは,別の問題である。
人事担当が作った賞与規程と,経理担当が使う支給通知書が食い違うと,退職者との支給紛争と申告上の誤りが同時に生じる。人事・経理・決裁者は,支給対象者,金額,条件,支給予定日,決算日及び実際の支払日を同じ資料で確認する必要がある。
本稿は令和8年10月10日に確認した法令・国税庁の説明を基準とし,一般の使用人に対する賞与を中心に扱う。役員としての職務に対する賞与は,役員給与の損金算入要件も別途問題となる。

第2 退職者への賞与支給義務をどう判断するか
1 賞与の具体的な根拠と通知の意味

賞与は,評価対象期間に働いたという一点だけで,予定額全額の請求権が当然に生じるものではない。就業規則,労働協約,個別合意,確立した慣行等から,支給対象者,計算方法,金額決定手続及び在籍条件を確認する。
金額を記載したメールでも,「見込額」「最終査定で変更」「支給日在籍者に限る」という留保がある場合と,条件を付けず確定額を支払う個別合意が成立している場合とでは意味が異なる。文書の表題だけで判断せず,規程と通知文面を合わせて読む。

2 在籍要件の合理性と個別の適用

厚生労働省の大和銀行事件の紹介によれば,支給日に在籍する者だけに賞与を払う従来の慣行を就業規則に明文化した事案で,最高裁昭和57年10月7日判決は,その内容の合理性を認め,支給日前に退職した者の請求を認めなかった。この紹介から,退職・解雇・死亡の全事案で不支給が有効になると一般化することはできない。
任意退職,定年,整理解雇,懲戒解雇,死亡では,退職日を選べるか,雇用終了の原因,賞与制度の目的及び例外条項が異なる。規定自体の合理性と,その人への適用を分けて検討する。解雇の有効性が争われている場合には,支給日の在籍という前提も確定していない。
茨城労働局の相談資料は,支給が遅れた場合の支給予定日と現実の支払日の区別にも注意を促している。会社が支払を遅らせた後,その間に退職したことだけを理由に,予定日に在籍していた者の権利が失われたと扱うことは避けるべきである。
在籍要件を外すと税務上有利になるとしても,税務担当だけで既存の労働条件を変更してはならない。規程の変更,個別合意,労使手続及び周知の要否を,変更内容に応じて検討する。

第3 使用人賞与の損金算入時期
1 支給予定日が到来した賞与

法人税法施行令72条の3第1号は,労働協約又は就業規則で定められた支給予定日が到来し,使用人に支給額を通知し,所定の年度に損金経理した賞与について,支給予定日と通知日のうち遅い日の属する事業年度に算入する扱いを定めている。支給予定日,通知及び経理の条件をそれぞれ確認する。

2 翌期1か月以内に支払う決算賞与

同条第2号の方法では,①各人別に,同時期に支給を受ける全使用人へ金額を通知すること,②通知した全使用人へ,通知年度終了日の翌日から1か月以内に通知どおりの金額を支払うこと,③通知年度に損金経理することが必要である。
国税庁の法人税基本通達9-2-43は,支給日に在職する使用人だけに払う条件付きの支給額通知について,「支給額の通知には該当しない」としている。この通知要件は,同条第2号イの要件である。未払賞与を計上したことや,支払までが1か月以内だったことだけで足りるわけではない。
例えば3月決算法人が3月25日に各人へ金額を通知し,4月20日に支払う計画でも,通知に「4月20日在籍者のみ」との条件があれば,第2号の方法で3月期の損金にできる通知とは扱われない。これは退職者分の金額だけの問題ではなく,同時期の賞与の通知・支払要件全体を点検する契機となる。
計算式だけの周知では,各人別の具体額を通知したかが不明確になる。対象者別の確定額,通知日,到達を確認できる記録,退職者への扱い及び実際の振込額を残す。

3 その他の賞与

第1号・第2号の方法に当たらない賞与は,同条第3号により,支払った日の属する事業年度に損金算入する。条件付き通知が第2号を満たさないからといって,支払後も永久に損金にできないという意味ではない。

第4 社員の収入年分と会社の源泉徴収時期

給与所得の収入すべき時期と,会社が源泉徴収する時期も分ける。所得税基本通達36-9は,支給日が定められた一般の給与等について,その支給日を収入すべき時期としている。他方,所得税法183条1項は源泉徴収について「その支払の際」と定める。
国税庁は,給与等が未払の場合,原則として実際に払う際に源泉徴収すると説明している。会社側の未払計上年度,社員側の収入年分,実際の支払日及び源泉徴収時期が常に一致すると考えてはならない。
ただし,具体的な支給額・請求権の存否自体が未確定な見込通知を,確定した給与と同様に扱うこともできない。後の合意・判決で賞与の支払が決まった場合は,元の支給義務を確認したものか,新たに支給内容を定めたものか等を資料で確認して年分を判断する。
役員賞与には,支払確定後1年を経過しても未払の場合の源泉徴収のみなし規定がある。一般社員の未払賞与の説明を,役員賞与へそのまま適用しない。

第5 通知を出す前と決算・支払時の確認

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債務引受けを伴う事業譲渡―否認リスクと消費税の対価をどう分けるか(AI作成)

目次

第1 現金の入金額だけでは二つの判断をできない第2 先に契約と資金の流れを確定する1 売主の債務が本当に消えるか2 現金・引受債務・取得資産を別欄にする第3 否認では他の債権者の共同引当財産を見る1 現金と債務引受額の合計が時価でも安全とは限らない2 担保と代替案を比較する第4 相当価格の譲渡と代金弁済を分ける1 売却自体の否認と弁済の否認2 本旨弁済の意思を当然に隠匿等の意思としない第5 消費税では金銭以外の対価も確認する1 現金1000万円だけを課税対価と決めない2 土地・建物・在庫等の対価を合理的に分ける第6 契約締結前に弁護士と税理士が共有する資料1 同じ資料から異なる問いに答える2 契約を固める前に相談する条件第7 関連記事と出典1 関連記事2 確認した根拠と適用範囲
第1 現金の入金額だけでは二つの判断をできない

資金繰りが悪化した会社の事業を譲り受けるとき、「現金1000万円を支払い、銀行借入金3000万円を引き受ける」という取引が提案されることがある。弁護士と税理士は、契約上の対価総額、売主に残る責任財産、売主が受ける経済的利益を、それぞれ確認する必要がある。

破産法の否認では、特定の銀行以外の債権者が引き当てにできる財産が減ったかが問題となる。一方、消費税では、課税資産の譲渡の対価に金銭以外の経済的利益が含まれるかを判断する。同じ取引で、債務引受けを含む税務上の対価を検討しながら、他の債権者に対する詐害性も認められる可能性がある。

本記事は、令和8年10月10日に確認した現行法令と国税庁の公表取扱いに基づき、国内で法人が事業用資産を譲渡する場面の確認順序を示す。個別の税額、納税義務、仕入税額控除又は法人税上の処理は、取引日と契約・資産の内容を踏まえて別に判定する。

第2 先に契約と資金の流れを確定する
1 売主の債務が本当に消えるか

免責的債務引受けでは、引受人が元の債務と同一内容の債務を負担し、元の債務者が免れる。併存的債務引受けでは、引受人が元の債務者と連帯して同一内容の債務を負担する。これは民法470条・472条の区別である。

売主と買主が「借入金を引き受ける」と合意しただけで、銀行に対する売主の債務が必ず消滅するわけではない。弁護士は、契約当事者、銀行の承諾・通知、効力発生条件、担保と保証の扱いを確認する。買主が売主との関係で支払を約束する履行引受けも、銀行に対する免責の有無と分けて整理する。

2 現金・引受債務・取得資産を別欄にする

契約締結前に、譲渡する店舗・設備・在庫・土地・建物・営業権等の範囲と価格、現金支払額、引受対象債務、支払先、効力発生日を一つの資料で照合することを勧める。

銀行へ直接送金する方式でも、売主の代金債権を弁済に充てるのか、買主が自分の債務を履行するのか、売主の債務を免れさせる対価なのかによって意味が違う。通帳の入金額、会計上の仕訳又は契約名だけから法的効果を決めない。

第3 否認では他の債権者の共同引当財産を見る
1 現金と債務引受額の合計が時価でも安全とは限らない

破産法160条1項は、担保供与・債務消滅行為を除く、破産債権者を害する行為の否認を定めている。財産を譲渡する行為については、行為時期、債権者への不利益、売主と受益者の認識を検討する。

令和6年司法試験の採点実感2~3頁は、倒産法第1問設問3②について、価値4000万円の事業を現金1000万円と銀行債務3000万円の引受けを組み合わせて譲渡した場合を扱う。全体では資産と負債が同額減ったように見えても、引受対象の銀行以外の債権者にとって責任財産の引当てが減る点を検討すべきとしている。

したがって、「1000万円+3000万円=4000万円だから時価取引であり否認されない」という説明では足りない。銀行に対する債務の減少と、他の一般債権者のために残る資産を別々に比較する必要がある。

2 担保と代替案を比較する

銀行が譲渡資産に担保を持ち、もともとその資産から優先弁済を受けられた場合には、無担保の銀行だけを優遇する場合と共同引当財産の評価が異なり得る。担保対象、担保残高、実際の売却見込額、処分費用及び担保外の資産を確認する。

弁護士と財務担当者は、譲渡前後の一般債権者への配当見込み、事業継続価値、第三者への売却可能性、代金の管理方法を比較することが望ましい。入札や第三者評価は検討資料となるが、それだけで否認の全要件を消すものではない。

なお、採点実感は、この設問の詐害性の検討では免責的・重畳的債務引受けを区別する必要はないとしている。これは試験の検討対象に即した説明であり、実際の契約で債務引受けの類型や効力を確認しなくてよいという意味ではない。

第4 相当価格の譲渡と代金弁済を分ける
1 売却自体の否認と弁済の否認

事業を時価で売り、その代金を特定の債権者へ返済した場合には、事業譲渡と返済を別の行為として検討する。相当な対価を得た処分には破産法161条が、既存債務の弁済には同法162条が、それぞれ問題となる。

161条1項は、財産の種類変更によって隠匿等の処分のおそれが現に生じたこと、売主の隠匿等処分意思、相手方の認識をすべて要求する。代金を現金で得たことや、後に特定債権者へ支払ったことだけで、全要件が満たされるとはいえない。

2 本旨弁済の意思を当然に隠匿等の意思としない

前記採点実感2頁は、期限の到来した債務について、本来の内容に従って弁済する意思は、原則として隠匿等処分意思と同視できないとする。他方、弁済先が破産会社の取締役という事情にも配慮して検討することを求めている。

この説明から「内部者への返済であれば売却自体も必ず否認される」という結論は出ない。弁済先、期限、資金使途の合意、代表者の認識及び他の債権者への影響を検討し、売却と弁済のどちらを対象とするのかを明示する必要がある。試験の公式解説は論点を示す資料であり、個別事件を拘束する判決ではない。

第5 消費税では金銭以外の対価も確認する
1 現金1000万円だけを課税対価と決めない

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競争者との取引を理由とする供給停止・取引妨害への対応―独占禁止法,証拠保全,損害賠償と税務(AI作成)

目次

第1 供給停止の通知を受けたときに整理すること第2 直接妨害された商品と,競争が弱まる市場を分ける第3 互換性・安全性の説明は,根拠と説明先を確かめる第4 証拠を残し,事業継続と損害の調査を進める第5 公取委への申告,差止め,損害賠償を選ぶ第6 和解金の受領・支払・消費税を別々に判定する第7 相談・和解協議に持参する資料と関連記事
第1 供給停止の通知を受けたときに整理すること

「他社の商品を扱うなら供給を止める」「他社製装置では当社の商品を使えない」と告げられた場合は,通知の内容,実際の供給状況及び妨げられた取引を分けて記録する。競争者の商品を扱う販売店,購入する顧客,新規参入企業では,被害の内容も求める対応も異なる。

まず,誰が誰に,どの商品・役務について,どの条件を示したのかを図にする。卸売業者への圧力と,その先の購入者への説明を混ぜず,日時,担当者,対象地域,取引数量及び期間を対応させる。契約書に競争者との取引禁止が書かれていなくても,供給停止の通知が相手方の行動を事実上拘束したかを確認する。

供給継続が必要な場合は,契約上の義務,代替調達の可否及び事業停止の切迫性も並行して調べる。既存契約に基づく履行請求と独占禁止法上の請求は,それぞれの根拠と要件を整理する。供給拒絶の外形だけで違法性が決まるわけではなく,供給能力,信用不安,安全性等の具体的事情も必要となる。

第2 直接妨害された商品と,競争が弱まる市場を分ける

例えば,消耗品を販売する企業が,その競争者の新型装置について「使えない」と購入予定者に説明した場合を考える。調べる対象は,装置の商談が断念されたという直接の影響と,その装置を通じた消耗品の販売拡大が妨げられたという影響の双方である。

消耗品の市場への影響を説明するだけでは,装置の取引に対する妨害の検討が抜ける。一方,装置の一商談が失われたことだけで,消耗品市場の競争が実質的に制限されたとまではいえない。商品ごとの顧客,代替品,販売経路及び失われた機会を記録し,両者をつなぐ事情を示す。

不公正な取引方法の一般指定14項は,自己と国内で競争関係にある他の事業者とその取引相手との取引を不当に妨害する行為を対象とする。行為者が妨害された装置を販売していないという理由だけで検討を終えず,他の商品での競争関係,妨害された取引及び手段の不当性を確認する。

競争者との取引をしないことを条件とする取引は一般指定11項,その他の活動制限は同12項なども候補となる。排除型私的独占については,独占禁止法2条5項・3条の競争の実質的制限を別に検討する。不公正な取引方法と私的独占の要件を同じものとして扱わない。

第3 互換性・安全性の説明は,根拠と説明先を確かめる

物理的な認証ロック等により使えなくした場合と,実際の互換性を確認せずに「使えない」と説明して導入をためらわせた場合では,必要な証拠が異なる。後者では,説明時点の仕様,確認試験の有無,試験条件,対象機種及び説明先への影響を調べる。「安全のため」という言葉だけで合理性を認めず,逆に試験未実施だけで説明が虚偽だったと決めつけない。

公正取引委員会の令和2年3月12日公表資料は,日本メジフィジックスについて,地域別価格での競争者との取引に対する供給停止の意思表示,特定自動投与装置を使用できないとの根拠不明確な説明及び競争者の商品を買う医療機関への当日配送拒否を,違反の疑いがある行為として示している。

この事例では,装置の確認試験結果を医療機関へ通知する措置等を含む確約計画が認定された。ただし,確約認定は独占禁止法違反を認定したものではない。個別企業についての違反断定や損害賠償責任の認定に置き換えず,説明の根拠と,説明を受けた顧客の判断を調べる際の参考とする。

第4 証拠を残し,事業継続と損害の調査を進める

通知書,電子メール,チャット,価格表,注文書,回答,見積書及び仕様書は,日時・送信者・添付資料との対応を保って保存する。口頭説明は,その直後に内容を記録し,可能であれば認識を確認する文書を送る。取引先から提供を受ける資料は,提供の権限,秘密保持及び提出できる範囲も確認する。

社内では,次の資料を営業,技術,経理及び法務で共有すると調査が進めやすい。

① 供給停止の通知と,実際に拒否・遅延された注文の一覧
② 中止された商談,顧客の説明,契約成立の見込みを示す記録
③ 代替調達の照会,回答,納期,追加費用及び供給能力
④ 互換性・安全性の仕様,試験記録,事故情報及び説明資料
⑤ 商品別・顧客別の売上,原価,利益及び行為前後の実績

損害額の試算では,失われた売上全額を当然に逸失利益としない。取引が成立した見込み,得られたはずの利益,販売しなかったことで支出を免れた費用,代替取引,行為以外の減収原因を確認する。装置の売上と消耗品の将来利益を請求する場合は,予測の根拠と重複計上の有無を点検する。代替調達等による損害拡大の防止も記録しておく。

第5 公取委への申告,差止め,損害賠償を選ぶ

独占禁止法45条に基づく公取委への報告は,競争上の問題について行政の調査を求める経路である。被害の回復に向けた民事上の手続は,これと区別して準備する。

同法24条の差止請求は,8条5号又は19条違反による利益侵害又はそのおそれと,著しい損害又はそのおそれを要する。3条の私的独占違反だけから24条の差止めを導くことはできない。供給不能で事業が止まる時期,代替の限界,顧客流出及び求める停止・予防措置を具体化する。

同法25条・26条の損害賠償は無過失責任を定める一方,裁判上の主張には所定の排除措置命令又は納付命令の確定が必要である。確約認定をこの命令確定と同視しない。民法709条による請求は,故意・過失,権利又は法律上保護される利益の侵害,損害及び因果関係を別途検討する。行政の判断を待つかどうかと,民事請求の時効管理も,請求根拠ごとに確認する。

第6 和解金の受領・支払・消費税を別々に判定する

法人が損害賠償金を受ける場合,法人税基本通達2-1-43は,原則として支払を受けるべきことが確定した事業年度の益金に算入し,実際に支払を受けた年度の益金とする経理も認めている。合意・判決・入金の日時と経理処理を確認し,紛争中だから一律に計上不要とは扱わない。

同通達の注記は,損害の発生した年度の損失と,保険金又は共済金で補填される部分の関係を示している。営業機会を失ったという主張だけで,未実現の売上をそのまま税務上の損失に計上することはできない。民事上の逸失利益の計算と,帳簿上発生した費用・資産損失の処理を分ける。

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相続したゴルフ会員権を売却するときの税務―取得費の引継ぎ,名義書換料及び損益通算(AI作成)

目次

第1 相続税評価額で取得費を置き換えない第2 被相続人の資料と相続人の支出を合わせて確認する第3 名義書換料を認めた最高裁判決の射程第4 所得の計算と損失の通算を二段階にする第5 売却前の確認順序第6 関連記事と根拠の範囲

親が買ったゴルフ会員権を相続して売却するとき,相続税評価額,親の購入代金,相続人の名義書換料及び売却時の手取額は,それぞれ役割の異なる数字である。個人が通常の相続によって取得した会員権を売却する場面について,令和8年10月10日に確認した法令,最高裁判決及び国税庁資料に基づいて整理する。

第1 相続税評価額で取得費を置き換えない

所得税法60条1項は,通常の相続や贈与によって取得した資産の売却について,「その者が引き続きこれを所有していたものとみなす」と定める。相続によって,その時の評価額で新たに購入したものとして計算する制度ではない。

被相続人の取得費と取得時期を引き継ぐため,相続した時の評価額より安く売却しても,元の取得費が低ければ譲渡益が生じ得る。相続税の評価と,売却時の所得税計算を別の表へ記録する方がよい。限定承認に係る相続は同項の通常の引継ぎから除かれるため,限定承認と税金を参照されたい。

第2 被相続人の資料と相続人の支出を合わせて確認する

被相続人の購入契約,入会時の明細,名義書換料,仲介手数料及び支払記録を集める。その上で,相続人が承継のために支出した金額と,売却のための支出を分ける。相続人が買ったわけではないという理由だけで,親の購入資料を不要としない。

所得税法38条1項は取得費を,資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の合計額とする。請求書の名称だけではなく,その支出が権利取得のために必要だったか,売却に直接対応するか,保有中の支出かを検討する必要がある。

会員権の種類,承継条件,名義変更の要否及び費用負担は,会則と個別契約で確認する。相続人が自ら会員となってから売却する場合と,相続関係を証明して第三者への売却を進める場合とで,必要な手続・支払が同じとは限らない。

第3 名義書換料を認めた最高裁判決の射程

最高裁平成17年2月1日第三小法廷判決は,父からゴルフ会員権の贈与を受けた子が,名義書換手数料を支払い,その後会員権を売却した事案である。相続そのものの事案ではない。

最高裁は,所得税法60条1項の趣旨を増加益への課税の繰延べと捉え,贈与の際の権利取得に必要な付随費用を無視する扱いを否定した。受贈者が会員権を取得するために支払った当該手数料を取得費に含めた。

相続の場合も,60条1項による取得費の引継ぎだけを理由として,相続人の付随費用を一律に除外する考え方は採れない。他方,相続後に支出した金額がすべて取得費となるわけでもない。名義書換料の支払者,支払目的,会則上の効果,承継との関係及び領収書をそろえて判断する。

同判決が譲渡時の売却手数料ではなく,贈与時の取得付随費用を扱ったことにも注意する。不動産の相続登記費用等との比較は,相続した不動産を売却したときの譲渡所得を参照されたい。

第4 所得の計算と損失の通算を二段階にする

国税庁No.3158は,ゴルフ会員権の売却益を原則として総合課税の譲渡所得とし,取得費と譲渡費用を控除した上で,保有期間に応じた計算を示している。営利目的で継続して売買する場合は,事業所得又は雑所得の問題となり,同じ計算を機械的に使わない。

取得費に名義書換料を含められるかという問題と,計算した譲渡損失を給与等から差し引けるかという問題は別である。取得費の認定に成功しても,損益通算ができるとは限らない。

現行の所得税法69条2項及び62条1項と施行令178条は,生活に通常必要でない資産の損失を制限する。主として趣味・娯楽等のために持つ会員権について,No.3158は給与所得等との損益通算を原則として認めないと説明している。取引先との利用があったという事情だけで,当然に制限を外せるとはしない。

平成17年の最高裁判決は平成9年分の課税を扱っている。そこで譲渡損失が認められたという結論を,現在の給与との通算へそのまま移すことはできない。過去の判決による取得費の解釈と,売却年に適用される損失制限を分ける必要がある。

第5 売却前の確認順序

①会員権証書,会則,相続関係資料及び相続人間の取得者を確認する。
②被相続人の取得日,購入代金と付随費用を証憑に結び付ける。
③相続人の名義書換料等を,取得,維持又は売却のどの段階の支出かに区分する。
④売却契約,売却代金,仲介手数料及び入金明細をそろえる。
⑤譲渡所得の区分・金額と,損益通算の可否を別々に判定する。
⑥申告が必要となる場合の資料と担当を,売却前に決める。

弁護士は承継権限,会則,遺産分割及び売買条件を,税理士は所得区分,取得費,保有期間及び損益通算を照合する運用が有用である。これは専門職連携の提案であり,会則や事実が異なる全案件への一律の結論ではない。

ゴルフ場の経営破綻等で預託金債権や施設利用権の内容が変わった場合は,売った権利と元の会員権の同一性から確認する。通常の相続・売却の計算だけで完結させない。

第6 関連記事と根拠の範囲

令和6年司法試験租税法第2問の模範解答と評価項目は,相続時の名義書換料と,娯楽目的の会員権の損益通算を別設問で扱っている。試験答案の検討順序を確認するための案内である。

(続きを読む...)相続したゴルフ会員権を売却するときの税務―取得費の引継ぎ,名義書換料及び損益通算(AI作成)

陸上風力発電設備の固定資産税特例―地域脱炭素化促進事業の認定,FIT・FIP認定と取得時期(AI作成)

目次

第1 計画認定と固定資産税の特例は別に確認する第2 対象となる陸上風力設備の確認順序1 再エネ特措法の認定発電設備であるか2 どの計画の設備として記載されているか3 取得時期が特例の期間内にあるか第3 軽減される割合と期間1 3分の2は課税標準に乗じる割合である2 取得期間と3年度分の適用期間を区別する第4 申告前にそろえる資料1 認定関係の資料2 資産と日付の資料第5 工事開始の条件と税務の条件を工程に組み込む第6 出典と確認範囲第7 関連記事

陸上風力発電設備の固定資産税特例を検討するときは,地域脱炭素化促進事業計画の認定だけで判断せず,発電設備の認定,計画への記載,取得期間及び課税する自治体の条例を確認する必要がある。本記事は令和8年10月10日現在の制度を扱い,事業者,弁護士及び税理士が同じ設備と日付を確認するための手順を示す。

第1 計画認定と固定資産税の特例は別に確認する

地域脱炭素化促進事業計画の認定は,温対法に基づく事業計画の認定である。関係機関との協議・同意を経た場合に許認可の特例を利用できるが,そのことと税務上の課税標準の特例を受けられることは別の判断である。

地方税法附則15条24項3号イ(2)は,対象となる風力設備について,認定地域脱炭素化促進事業計画に「整備する旨が記載された設備」と定める。単に促進区域内にあることや,事業者が別の設備について認定を受けていることだけでは足りない。地方税法(令和8年10月1日施行版)の附則15条24項を確認する。

事業計画に記載された設備の所在地,種類,規模と,取得して償却資産申告に載せる設備を照合することが出発点となる。弁護士が確認した計画認定の資料と,税理士が確認する資産台帳を設備単位でつなぐことが実務上の要点である。

第2 対象となる陸上風力設備の確認順序
1 再エネ特措法の認定発電設備であるか

同項2号及び3号イの「特定風力発電設備」は,風力を電気に変換する設備のうち,再エネ特措法上の認定発電設備に限られる。環境省の制度資料もFIT・FIP認定を要件として示している。温対法の認定通知だけでなく,発電事業計画の認定通知,設備ID及び変更認定の内容を照合する。環境省の固定資産税特例資料の1頁を参照する。

2 どの計画の設備として記載されているか

陸上風力の対象として,温対法の認定地域脱炭素化促進事業計画に記載された設備のほか,農山漁村再エネ法の認定設備整備計画に記載された設備がある(地方税法附則15条24項3号イ(3))。本記事は前者を中心に扱う。両方の計画の認定が常に必要という意味ではない。

認定後に所在地,設備構成,出力又は事業者を変更した場合には,現在有効な認定計画と実物の一致を確認する。認定があったという過去の事実だけで判断せず,変更認定や届出を含む資料をそろえる。

3 取得時期が特例の期間内にあるか

対象は,令和8年4月1日から令和11年3月31日までの間に新たに取得された設備である。契約締結日,代金支払日,納入日,検収日及び事業供用日を一覧にし,取得時期の判断を裏付ける契約書・請求書・検収資料を残す。これらの日付が異なる場合は,契約の日付だけで適用期間内と決めない。

令和8年3月31日以前に取得した設備へ,新しい制度の条件をそのまま当てはめることもできない。取得した時期の法令と経過措置を別に確認する。

第3 軽減される割合と期間
1 3分の2は課税標準に乗じる割合である

地方税法附則15条24項3号は,3分の2を参酌し,2分の1以上6分の5以下の範囲で市町村の条例が割合を定める仕組みである。したがって,全国一律に3分の2と断定せず,設備を課税する自治体の条例を確認する。同法389条の適用を受ける資産については,同号の括弧書が3分の2と定めている。

「3分の2」は通常の課税標準となるべき価格に乗じる割合であり,税額の3分の2が減るという意味ではない。条例の割合が3分の2で,他の条件が同じという計算例では,価格3,000万円に対して課税標準は2,000万円になる。実際の税額は税率その他の条件も確認して計算する。

償却資産の通常の課税標準について,地方税法349条の2は「賦課期日における当該償却資産の価格で償却資産課税台帳に登録されたもの」と定める。購入代金へ機械的に特例割合を掛けた金額を,毎年の申告・課税額と同一視しない。

2 取得期間と3年度分の適用期間を区別する

特例は,その設備に新たに固定資産税が課されることとなった年度から3年度分に限られる。取得期間の終期と,個々の設備について特例を受ける最後の年度は別の問題である。

例えば,令和8年中に取得し,令和9年度から新たに課税される設備で他の要件も満たす場合,対象となるのは令和9・10・11年度の3年度分である。認定日から3年間,契約日から3年間又は永久の免税という説明にしない。

第4 申告前にそろえる資料
1 認定関係の資料

① 温対法の認定通知書と認定計画の設備記載部分
② 認定条件,変更認定通知書及び変更届出の記録
③ FIT・FIPに係る認定通知書,設備ID及び変更内容
④ 所在地,出力及び設備構成を確認できる図面・仕様書

2 資産と日付の資料

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売買契約を解除した後の所得税―原状回復,未収代金の貸倒れ,違約金と更正の請求(AI作成)

目次

第1 解除,回収不能及び貸倒れを分ける1 本記事の対象と判断の順序2 最初に分ける四つの場面第2 当初の収入計上と手付金1 代金の未払いだけで当初の申告を誤りとしない2 手付金の受領と売買代金への充当を区別する第3 解除の効力と原状回復の実行を確かめる1 解除合意書だけで還付を決めない2 原状回復を資料で追えるようにする第4 更正の請求の根拠と期限1 通常の請求と後発的事由の請求2 回収不能等についての所得税の特例3 事業債権の貸倒れは損失の年分を確認する第5 違約金,返還利息及び差引精算1 違約金という名称だけで非課税又は一時所得としない2 返還額と新たな利益を相殺しても区分を残す第6 弁護士と税理士が共有する資料と期限1 合意前に同じ時系列と金額内訳を使う2 請求の担当者と提出完了を確かめる第7 関連記事第8 出典と確認範囲1 法令2 国税庁の公表解釈
第1 解除,回収不能及び貸倒れを分ける
1 本記事の対象と判断の順序

個人が資産を売却した後,買主が代金を支払わなくなった場合,売主は契約を解除するか,代金請求を続けるかを検討する。税務では,未払いになったという事実だけで,過去の譲渡所得が消えるわけではない。
契約の効力,資産・代金の返還,所得の種類,回収不能となった時期及び申告の年分を分けて確認する必要がある。

本記事は,令和8年10月10日に確認した法令と国税庁の公表解釈に基づき,主に個人の非事業用資産の売却を扱う。事業債権及び法人の処理との違いも示すが,具体的な税額計算や消費税・不動産取得税等を網羅するものではない。
土地・建物の譲渡所得は,原則として租税特別措置法による分離課税の対象である。司法試験の設例で租税特別措置法の適用を除外した計算を,実際の不動産取引にそのまま用いることはできない。

2 最初に分ける四つの場面

①個人の非事業用資産の売買を解除し,資産と代金を返して原状に戻す場面。過去の課税の基礎となった譲渡の成果が失われたか,過年度の所得・税額を改める根拠があるかを検討する。
②契約を維持したまま,個人の非事業用資産の未収代金が回収不能になった場面。所得税法64条1項の要件に沿って,回収不能額に対応する所得を検討する。
③個人の事業に係る売掛金等が貸し倒れた場面。原則として所得税法51条2項により,損失が生じた年分の必要経費を検討する。
④法人の過年度の取引が後に解除された場面。法人税基本通達2-2-16等による当事業年度の損金処理を検討し,個人の譲渡所得の処理と同一視しない。

第2 当初の収入計上と手付金
1 代金の未払いだけで当初の申告を誤りとしない

所得税法36条1項は,原則としてその年に収入すべき金額を収入金額とする。契約,引渡し,登記及び権利の確定を確認し,現金が入った日だけで収入計上を決めない。
資産の譲渡について,所得税基本通達36-12は引渡しの日を基準とし,納税者が契約の効力発生日で申告した場合の取扱いも認める。この行政上の取扱いを踏まえ,当初の申告で採用した時期とその裏付けを確認する。

例えば,資産を引き渡して売買代金債権が確定していた場合,その後に買主の資力が悪化したことと,当初から収入が存在しなかったことは別である。まず当初の計上が適法だったかを確かめ,その後の解除又は回収不能の処理へ進む。

2 手付金の受領と売買代金への充当を区別する

手付金を受け取ったことだけで,最終的に譲渡所得又は一時所得のいずれになるかが確定するとは限らない。売買が履行されて代金に充当された金額と,手付解除等により売主が取得する金額を分ける。
民法557条の手付解除は,相手方が履行に着手するまでの制度である。債務不履行解除と契約上の違約金を,同条の手付解除として処理してはならない。

第3 解除の効力と原状回復の実行を確かめる
1 解除合意書だけで還付を決めない

民法545条は,解除権を行使した場合の原状回復義務を定める。金銭には受領時からの利息,金銭以外の物には所定の果実の返還が問題となり,解除によって損害賠償請求が妨げられるわけではない。
税務上は,解除という表題だけでなく,解除原因,効力発生日,実際の返還及び売主に残る経済的利益を確認する。

解除権の行使,合意解除,取り消し得る行為の取消し,無効な行為の清算及び実質的な再売買では,民事上の根拠と税務上の適用条項が異なり得る。当事者が過去に遡ると合意したことだけで,過年度の税額が自動的に減るとはいえない。

2 原状回復を資料で追えるようにする

不動産では,解除通知と到達記録又は署名済み合意書,登記の回復資料,引渡し・鍵の返還記録,代金返還の振込記録を対応させる。解除時に他の権利者がいる場合や,資産の一部しか戻っていない場合は,その権利関係と残存利益も確認する。
代金返還と違約金を相殺したときは,振込額だけを資料にせず,返還義務額,違約金債権額,相殺の根拠及び差引支払額を別紙で示す。

これらは,過年度の譲渡の経済的成果が失われたことと,別に取得した利益を説明するための資料である。資料がそろうこと自体が減額更正の要件を満たす保証にはならず,適用条項と申告税額への影響を別に検討する。

第4 更正の請求の根拠と期限

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勤務条件付き奨学金・従業員の学費は非課税か―返還免除,通常給与への加算及び源泉徴収の確認(AI作成)

目次

第1 学資金の使途と非課税の条件を分ける第2 通常の給与を学資金へ付け替えない第3 貸与・返済免除・返済支援は別々に確認する1 使用者が貸与した奨学金の免除2 他の団体の奨学金返済を支援する場合第4 貸与者・雇用者・免除時点を記録する第5 制度設計と免除決定で残す資料第6 過大な源泉徴収をしていた場合第7 資料の位置付け

奨学金を一定期間の勤務によって免除する制度では,「勤務の対価だから必ず課税」「授業料だから必ず非課税」のいずれも判断の出発点として十分ではない。会社・病院の人事,経理,法務と税理士が確認すべき条件を,令和8年10月10日に確認した法令及び国税庁資料に基づいて整理する。

第1 学資金の使途と非課税の条件を分ける

所得税法9条1項15号は,「学資に充てるため給付される金品」を非課税所得としつつ,給与その他対価の性質を有する給付について複雑な除外と例外を置いている。支出の名称だけでなく,誰が,誰の学資のために,どの関係に基づいて給付するのかを確定する必要がある。

給与所得者が使用者から受ける場合には,通常の給与への加算か,役員又は一定の親族等の学資かを順に確認する。勤務条件が付いていることだけで,この例外の検討を終えてはならない。

第2 通常の給与を学資金へ付け替えない

国税庁No.2588及び所得税基本通達9-14は,通常の給与へ上乗せして支給する学資金と,本来支払う給与を減らして学資金という名目へ置き換える給付を区別している。後者は非課税にならない。

制度導入前後の給与規程,雇用契約,給与明細及び賞与算定を照合し,学費支援のために通常給与を減額していないかを確認する。授業料の領収書があるだけでは,給与の付け替えを否定する証拠として十分ではない。

法人では,役員本人の学資や,役員・使用人と特別の関係にある者の学資が除外の問題となる。個人事業者についても別の除外がある。所得税法施行令29条と制度対象者の属性を照合する。No.2588には特別関係者自身も使用人で,その者だけを対象としない場合の取扱いがあるが,親族が従業員であれば無条件で非課税という意味ではない。

第3 貸与・返済免除・返済支援は別々に確認する
1 使用者が貸与した奨学金の免除

国税庁の従業員に貸与した奨学金の返済免除に関する質疑応答は,資格取得に必要な授業料等を会社が学校へ直接払い込み,一定期間の勤務によって返済を免除する制度を扱っている。役員を除く従業員を対象とし,給与を減額しないという事実関係の下で,免除益の非課税を認めている。

現金を新たに手渡す場合だけが学資金となるわけではない。学資に使われた貸与金の返済免除も検討対象となる。ただし,生活費や他の借入れの返済等が混在する制度へ,この結論をそのまま移すことはできない。

2 他の団体の奨学金返済を支援する場合

奨学金返済に充てる給付に関する国税庁の質疑応答は,学資に使われた奨学金について,県が貸与財団へ直接送金し,債務残高を超えない支援を扱っている。資金の使途と返済への充当が確保された事例として読むべきであり,本人に自由に使える現金を支給する全制度の非課税を保証する資料ではない。

制度の名称よりも,元の借入れが何に使われ,誰へ送金され,残高と照合できるかが重要である。県の制度,会社の福利厚生,採用時の一時金を同じ給付として処理しない。

第4 貸与者・雇用者・免除時点を記録する

学生時代の貸与,入社,資格取得,勤務期間の満了及び免除決定を,一つの時系列へ記録する。貸与した者と雇用した者が同じか,免除時に誰の給与所得者であるかも確認する。給与その他対価の性質の有無と,使用者からの学資金についての非課税条件を別々に検討するためである。

県が複数の医療機関での勤務を条件とする制度については,名古屋国税局の文書回答資料に,貸与した県自身の下での勤務を条件としない点などが説明されている。この資料の別紙には照会者の見解も含まれるため,病院が自ら貸与する制度と事実関係を比較して用いる。

貸与時の雇用関係だけ,又は免除時の勤務条件だけを一つ抜き出して判断せず,適用年分の条文と実際の契約を組み合わせる必要がある。

第5 制度設計と免除決定で残す資料

人事は,対象資格・学校・対象者,給与との関係及び勤務条件を規程と個別契約へ記録する。経理は,学校への送金,領収書,貸与元帳,返済残高,免除額及び給与台帳を対応させる。法務と税理士は,給付の性質,対象者の属性,免除時の事情及び非課税判断の根拠を確認する。

免除を決定する前に,①学資への実際の使用,②通常給与への加算,③役員・親族等の除外,④貸与者と雇用者の関係,⑤免除の効力発生日と額を確認する運用が有用である。これは本記事の運用提案であり,国税庁が一律に指定した社内手続ではない。

退職時の返還条項,賃金からの控除及び労働契約上の有効性は,税務上の非課税とは別に検討する。税務署が非課税の取扱いを示しても,契約全体の有効性まで認めたことにはならない。

第6 過大な源泉徴収をしていた場合

非課税の給付から誤って税額を控除した場合は,支払者と受給者との精算,支払者から国への誤納額還付,受給者本人の年分の所得税を分ける。詳しくは源泉所得税に関するメモ書きを参照されたい。

給与所得の非課税判断と民事上の請求先を検討する例として,令和6年司法試験租税法第2問の模範解答と評価項目がある。同記事は試験指定の当時法を扱い,本記事は現在の制度設計・事実確認を扱う。

第7 資料の位置付け

法令の根拠は所得税法9条1項15号及び施行令29条,行政解釈は所得税基本通達9-14・9-15と上記国税庁資料である。No.2588の表示基準日は令和8年4月1日,2件の質疑応答の表示基準日は令和7年8月1日である。照会事例の事実条件を外した一般化は避け,対象年分・契約・使途・対象者に変更があれば改めて判断する。

海外取引の未回収代金―準拠法・時効・仲裁と貸倒処理を分けて確認する(AI作成)

目次

第1 対象と最初に確認すること第2 契約の準拠法と請求期限1 三つの条項を別々に読む2 物品売買ではCISGも確認する3 日本の時効ルールをそのまま当てはめない第3 日本で訴えられるかと,回収できるか第4 仲裁合意と外国での期限保全1 仲裁条項と請求相手を確認する2 外国仲裁地に日本の仲裁法29条を直接適用しない第5 法人税の貸倒損失は別に判定する1 三つの類型と必要な事実2 期間経過や仲裁条項だけで貸倒れとしない第6 輸出取引の消費税と専門家への資料共有1 輸出免税取引は貸倒れ控除の対象外2 期限と回収見通しを経理にも共有する第7 関連記事第8 根拠資料
第1 対象と最初に確認すること

本記事は,海外の取引先から売掛金等を回収できない日本の法人について,法務担当者・経理担当者が弁護士及び税理士と検討する際の確認事項を整理するものである。外国法の具体的な時効期間や,個別債権の損金算入可否を一律に示すものではない。法令等の確認日は令和8年10月10日である。

最初に,①どの国の法により,いつまでに,どこへ請求するか,②相手の資産や担保から回収できるか,③日本の法人税・消費税でどの時期にどう処理するかを分ける。決算処理の検討中にも請求期限は進むため,期限の確認と保全を先行させ,回収調査と税務検討を並行して進める。

第2 契約の準拠法と請求期限
1 三つの条項を別々に読む

契約書では,主契約に適用する法の条項,紛争を裁判と仲裁のどちらで解決するかを定める条項,及び仲裁合意自体の準拠法を確認する。「日本法を適用する」と書いてあることから,日本の裁判所に訴えられると結論付けてはならない。

日本の裁判所で契約の準拠法を判断する場合,法の適用に関する通則法7条は当事者の選択を出発点とする。選択がない場合には,同法8条により最も密接な関係のある地の法を検討し,特徴的な給付をする当事者の常居所地法等についての推定も確認する。外国の裁判所で同じ判断方法が採用されるとは限らない。

契約書だけでなく,発注書,承諾メール,約款の版,変更合意,請求書,納品・検収記録も揃える。契約が成立した日,支払期日,分割払い,期限延長の合意,最後の支払い及び債務の承認を時系列にする。

2 物品売買ではCISGも確認する

国際的な物品売買では,国際物品売買契約に関する国際連合条約(CISG)の適用も確認する。異なる締約国に営業所を置く当事者間の売買などが対象となり,条約には適用除外や当事者による排除の規定がある(1条~6条)。主契約の準拠法を日本法としただけで,当然に条約を排除したと扱わない。

売買に適用されるルールを確かめることと,債権の消滅時効を判断することは区別する。国際売買だからといって,すべての争点をCISGだけで解決できるわけではない。

3 日本の時効ルールをそのまま当てはめない

契約上の債権の消滅時効は,その債権に適用される法を踏まえて検討する。日本民法の期間,催告,承認,訴え提起の効果を,外国法が適用される債権にそのまま当てはめない。期間の起算点,時効と権利失効の区別,援用の要否,請求の通知方法,どの手続が期限を保全するかを確認する。

外国の弁護士には,「時効は何年か」だけでなく,資料に基づく最も早い期限と,その期限までに完了すべき手続を確認する。日本で内容証明郵便を発送したことや,日本で訴えを提起したことが,外国法上の期限保全にも有効であるとは限らない。

第3 日本で訴えられるかと,回収できるか

日本の裁判所の国際裁判管轄は,民事訴訟法3条の2以下により検討する。契約上の義務の履行地,日本の営業所の業務との関係,日本での事業と請求との関係,管轄合意等を確認する。相手が日本に営業所を持つという事実だけで,海外の本店との取引について管轄が認められるとは限らない。

管轄が認められることと,判決に基づいて回収できることも別である。相手の資産所在地,担保・保証,先順位の権利,倒産手続の有無,外国で日本の判決を承認・執行できるか,及び費用・期間を調べる。日本での管轄判断については,同法3条の9の特別の事情による訴えの却下も検討対象となる。

回収方針を決める前に,登記・信用情報,資産調査,担保評価,現地専門家の見積りを集める。費用が高いという理由だけで法的請求を断念した場合と,債権全額を回収できないことが客観的に明らかな場合は,同じではない。

第4 仲裁合意と外国での期限保全
1 仲裁条項と請求相手を確認する

仲裁条項がある場合は,仲裁地,仲裁機関,規則,言語,対象となる紛争,仲裁合意の当事者,及びその準拠法を確認する。主契約の準拠法と仲裁合意の準拠法は,同じ結論になる場合でも別の検討事項である。

最高裁平成9年9月4日判決は,旧法例の下で仲裁合意の準拠法を検討し,会社との契約にある仲裁条項について,代表者に対する詐欺の不法行為請求にも及ぶと判断した事例である。この事例から,代表者を被告として不法行為請求をすれば必ず仲裁を避けられるとはいえない。一方,すべての仲裁条項が代表者への請求に当然に及ぶと一般化することもできない。

現行仲裁法14条1項は,仲裁合意の対象となる民事紛争について,適時の被告の申立てがあれば,合意の無効等の例外を除き訴えを却下する仕組みを定める。先に裁判を起こせば回収が進むとは限らない。

2 外国仲裁地に日本の仲裁法29条を直接適用しない

仲裁法29条は,仲裁手続の開始と,手続における請求の時効に関する効力を定める。しかし,同条の属する章は,仲裁法3条1項により,原則として仲裁地が日本国内にある場合に適用される。外国仲裁地の場合にも適用される同条2項の例外に,29条は含まれていない。

したがって,外国を仲裁地とする仲裁については,日本法を主契約の準拠法にしたことだけを根拠として29条を直接適用せず,債権の準拠法,仲裁地法及び仲裁規則に照らして期限保全の方法と効果を確認する。申立て,費用納付,相手への通知等のどの行為が必要かを確認し,受付・送達等の証拠を残す。

第5 法人税の貸倒損失は別に判定する
1 三つの類型と必要な事実

国税庁の法人税基本通達9-6-1~9-6-3は,貸倒損失を検討する際の重要な基準である。次の表は確認の入口であり,各類型の要件を省略して適用する趣旨ではない。

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入札しない卸業者も談合の当事者になるか―商流・情報調整,課徴金及び法人税務(AI作成)

目次

第1 入札資格ではなく,合意と実際の商流を調べる1 直接の入札者だけが問題になるわけではない2 本町化学工業事件の東京高裁判決3 販売業者の責任も別に判断する第2 課徴金は利益ではなく,法定の算定基礎から計算する1 卸売差益と売上額を取り違えない2 旧法の卸売業の率を流用しない3 主導的役割の要件を事実と対応させる第3 離脱の意思と,調整が止まった事実を残す第4 法人税務では課徴金と損害賠償金を分ける1 課徴金と延滞金は損金不算入2 損害賠償金は計上年度も確認する第5 関連記事第6 出典と基準時

入札資格がなく,自社で入札していない卸業者でも,供給予定者や価格を調整し,必ず自社を通して商品を販売する取決めに参加していれば,入札談合の当事者として責任を問われ得る。卸売差益が小さいことは,課徴金を差益だけで計算できる理由にはならない。本記事は,会社の法務・営業・経理担当者と,その会社を支援する弁護士・税理士が確認する事項を整理する。

第1 入札資格ではなく,合意と実際の商流を調べる
1 直接の入札者だけが問題になるわけではない

独占禁止法2条6項の不当な取引制限は,事業者が共同して相互の事業活動を拘束し,公共の利益に反して一定の取引分野の競争を実質的に制限することをいう。同法3条はこれを禁止している。契約書への署名や,競争者同士の直接の会合だけで判断するものではない。第三者を通じた意思の連絡や,供給予定者を決めて他社が協力する仕組みも検討対象になる。

卸業者については,情報を誰から集め,誰へ伝え,受注希望の重複を誰が調整したかを調べる。さらに,メーカーが落札業者へ直接販売できたのか,必ず卸業者を経由する取決めがあったのか,卸業者自身がどの販売条件に従っていたかを確認する。売上げや利益を得たという事実だけで,共同の合意への参加を認定することはできない。

通常の仕入れ,価格改定通知の受領,又は公取委への資料提供だけで,卸業者が合意の参加者になるものではない。受注希望や価格方針を他社へ伝え,共通方針の了解を取り付け,又は商流の調整に従ったかを,役割ごとに確認する。本記事の判決は活性炭の供給調整に関するものであり,別の価格カルテル疑惑における卸業者の関与を認定する資料ではない。

2 本町化学工業事件の東京高裁判決

東京高裁令和6年10月16日判決(令和4年(行コ)第283号)は,活性炭の供給調整に関する卸業者の控訴を棄却した。判決は,受注者の決定と卸業者を経由する商流の取決めを含めて検討し,その卸業者が基本合意の対象となる取引の一部を自ら行っていたことを重視している(第3の2(1)~(5))。

この事件では,メーカーが受注者へ直接供給するか,卸業者を介して供給するかという選択も制限されていた。判決は,受注者へ供給する取引段階では卸業者とメーカーの競争関係を認めている。したがって,「入札者でない」「メーカーと同業でない」という説明だけでは足りず,どの取引段階の競争が制限されたかを調べる必要がある。

また,メーカーの供給力が強くても,卸業者が情報を一元管理し,希望の集約,予定者の提案・調整,了解の取得等を行った事情から,単なる連絡役やメーカーの手足との主張は退けられた。あらゆる仲介・取次行為を違法とする判決ではない。合意の内容と各社の関与を個別に確認することが必要である。

3 販売業者の責任も別に判断する

販売業者についても,入札名義と法人格だけで共同の合意への参加を決めない。独立して顧客や価格を決めていたのか,調整の内容を認識して他社との歩調を合わせたのか,単に指定価格を提出して一定率の手数料を受けていたのかを区別する。「指示に従った」という説明も,当然の免責理由にはならない。メール,価格承認の履歴,取引契約,請求書を照合することが有用である。

第2 課徴金は利益ではなく,法定の算定基礎から計算する
1 卸売差益と売上額を取り違えない

対価に係る入札談合等は,独占禁止法7条の2の課徴金対象となる。基本となるのは,対象商品・役務について法令に従って算定する実行期間の売上額又は購入額等である。粗利益や営業利益に率を掛ける制度ではない。密接関連業務の対価や,供給しないこと等に関して得た財産上の利益が問題になる場合もある。

例えば,課徴金の算定対象となる卸業者自身の売上額が10億円で,基本率10%,主導的役割による割増のみが適用され,減免等がないという前提なら,10億円×10%×1.5=1億5000万円となる。売上額の対象範囲,控除,期間,適用率は先に確定する必要があり,企業の総売上げに機械的に掛けるものではない。

2 旧法の卸売業の率を流用しない

公正取引委員会の課徴金制度の説明では,不当な取引制限の算定率は10%,違反事業者及びグループ会社が全て中小企業に当たる場合は4%とされている。卸売業という業種だけで,旧制度の低い算定率を当てはめない。古い事件には経過措置が関係するため,行為期間と適用法を確認する。

同説明では,繰返し又は主導的役割の場合はそれぞれ1.5倍,両方がある場合は2倍とされている。二つの1.5を掛けて2.25倍とするものではない。

3 主導的役割の要件を事実と対応させる

現行の独占禁止法7条の3第2項は,他社の求めに応じた継続的な価格・取引相手等の指定(2号)と,違反行為を容易にする重要な行為の類型(3号)等を定めている。3号ロは,自己の取引だけの指定を除き,他社の違反行為の実行としての事業活動について指定する行為を扱う。調整役という肩書だけで割増を決めず,指定の対象,継続性,情報の集中,調整の内容を条文に沿って検討する。

前記高裁判決の割増の判断は,旧法7条の2第8項2号に関するものである(第3の2(6))。旧条文の番号や課徴金率を現行案件へそのまま置き換えることはできない。

第3 離脱の意思と,調整が止まった事実を残す

一度だけ独自価格で入札したことと,基本合意から離脱したことは同じではない。弁護士は,離脱の意思が他の参加者へ明確に伝わったか,その後の受注・価格決定が独立しているかを時系列で確認する。一社が離脱しても,残りの参加者の取決めが当然に終わるわけではない。

会社の初動としては,法務責任者と弁護士の下で,問題となる情報交換・価格指示を停止し,既存のメール,チャット,入札表,契約書,請求書,価格決裁記録を保存することが有用である。離脱の通知方法と内容は,公正取引委員会への報告・課徴金減免制度の検討も含め,速やかに弁護士と決める。競争者と証拠の扱いや説明内容を相談したり,通知と称して今後の入札価格を伝えたりしない。

これは実務上の対応案である。個々の事案の終期は,通知の存在だけでなく,合意による拘束と競争制限的活動が実際に解消したかによって判断する。立入検査があった日を自動的に終期とすることもできない。

第4 法人税務では課徴金と損害賠償金を分ける
1 課徴金と延滞金は損金不算入

法人税法55条5項3号により,内国法人が納付する独占禁止法の課徴金及び延滞金は損金不算入となる。会計で費用計上した場合でも,法人税申告では加算調整が必要になる。粗利益が小さかったことや,課徴金の支払資金を借入れたことによって,課徴金自体が損金になるわけではない。

(続きを読む...)入札しない卸業者も談合の当事者になるか―商流・情報調整,課徴金及び法人税務(AI作成)

特許ライセンスの数量超過が判明したとき―許諾範囲,消尽,追加実施料及び和解金の消費税(AI作成)

目次

第1 数量超過で最初に確認すること第2 許諾範囲・支払義務・契約終了を分ける第3 転売先と消尽をどう検討するか第4 数量を把握し,出荷判断を記録する第5 超過分を精算するときの合意事項第6 実施料・侵害賠償・和解金と消費税第7 弁護士と税理士が共有する資料第8 関連記事第9 出典・適用範囲
第1 数量超過で最初に確認すること

「年1,000個まで」の特許ライセンスについて,1,100個の販売が判明した場合を考える。これは説明用の例であり,法定の数量基準ではない。超過分の実施料を支払えば販売を続けられるのか,転売先の販売まで差止めの対象になるのか,精算金に消費税を含めるのかは,それぞれ別に確認する必要がある。

まず契約原文・変更合意・数量記録を集め,対象製品と期間を特定する。許諾範囲が不明なまま追加出荷を決めず,法務,事業部,経理で暫定方針と決裁者を定める。以下の管理方法は実務上の提案であり,すべての契約に同じ法定手続があるという意味ではない。

第2 許諾範囲・支払義務・契約終了を分ける

特許法78条2項は,通常実施権者の実施を,法律の規定又は設定行為で定めた範囲内で認める。契約では,対象特許,製品,生産・使用・譲渡等の行為,地域,期間,当事者と再許諾の可否を確認する。

数量条項が,許諾する実施の範囲を画する条項なのか,販売報告・実施料計算・最低保証等の債務を定める条項なのかを読む。見出しだけでなく,超過時の追加許諾,料金変更,出荷停止,解除等の条項と交渉経緯も対応させる。「数量違反なら必ず侵害」「契約違反だから特許侵害にはならない」のいずれも,一律の結論にはできない。

実施料の不払いについても,支払債務の不履行と許諾の存否を分ける。催告,解除の要件,通知の到達及び効力発生日を確認し,支払期日の翌日から全製品が当然に無許諾になると扱わない。解除前に適法に流通へ置かれた製品と,終了後に新たに生産・販売する製品も区別する。

第3 転売先と消尽をどう検討するか

最高裁平成9年7月1日判決(BBS事件)は,特許権者又は許諾を受けた実施権者による国内譲渡と,その製品のその後の使用・譲渡等に関する消尽を示している。流通の自由と,特許権者に対価を確保する機会があることが理由である。ただし,同判決は,数量制限を超えたライセンシーの販売を直接判断した事件ではない。

数量制限に関する紛争では,最初の譲渡が許諾された範囲内か,数量条項を特許権に基づく制限として扱うべきかを検討する。転売先が契約を知らなかったことだけで,差止めを当然に排除できるとは考えない。他方,実施料が実際に未回収であることだけを理由に,既に適法に譲渡された製品の消尽を否定するのも適切ではない。

製造番号,ロット,出荷日,販売先及び返品を照合し,争われる超過分と通常の許諾品を識別する。買主への説明・返金・補償の契約問題は,特許権の効力とは別に検討する。国外で最初に販売された製品にはBBS事件の別の判断枠組みがあるため,国内の数量管理だけで輸入の可否を決めない。

第4 数量を把握し,出荷判断を記録する

締結時に数量の数え方を決める。生産数,出荷数,売上計上数又は販売数のどれか,対象年度の開始日,関連会社・委託工場の数量,無償サンプル,不良品,返品及び再販売を含むかを明記する。同じ1個を二重計上しない仕組みと,報告資料の原本への参照を用意する。

事業部・製造部は,製造番号又はロットと月別数量,出荷予定,返品記録を集計する。契約担当は,上限に近づく前の警告値と報告日を決め,追加許諾の承認者・代替担当を登録する。法務は,契約の版,超過の原因,許諾の解釈,停止・条件変更・追加許諾の選択肢を整理する。経理は,販売報告と請求済み実施料を照合し,未払額と超過分の候補額を分ける。決裁者は,追加出荷の条件,権利者への申入れ担当及び次の確認期限を記録する。

超過発覚後は原データと変更履歴を保全し,数字だけを帳尻合わせしない。停止範囲は契約・特許・製品ごとに判断し,会社全体の販売を当然に止めるという運用にしない。

第5 超過分を精算するときの合意事項

精算の合意では,対象特許・請求項,製品,期間,数量及び金額計算を別紙で対応させる。過去の超過分についての紛争解決,今後の追加許諾,既存在庫の販売猶予,取引先に流通した製品の扱いを区別する。

追加金の支払だけで,過去の侵害主張の放棄,将来の販売許諾及び第三者の販売保護まで合意したことにはならない。合意書には,誰のどの行為について請求を清算するか,権利者が第三者に対してどう対応するか,効力発生日,未払実施料,報告・監査と終了後義務を具体化する。

例えば「対象期間に販売した別紙記載の超過製品について追加実施を許諾する」案と,「侵害の有無について双方の主張を維持しつつ,特定の請求を金銭で解決する」案は,同じものではない。目的に合わせて合意内容を選び,過去の帳票や契約の日付を事実と異なる日に書き換えない。

第6 実施料・侵害賠償・和解金と消費税

ここでは,日本国内の事業者間で,日本の特許の実施許諾又はその紛争を精算する通常の取引を想定する。消費税法2条2項は,資産の貸付けに「資産に係る権利の設定」を含める。消費税法基本通達5-4-1も,特許権等に係る実施権・使用権の設定を例示する。国内の事業として対価を得て行う実施許諾は,原則として消費税の課税取引として検討する(同法2条・4条)。

さらに,消費税法基本通達5-2-5は,実質が対価となる損害賠償金の例として「無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金」を挙げる。国税庁No.6257も特許権等の侵害賠償を課税対象の例として説明している。したがって,特許侵害に係る支払を単に「損害賠償金」「解決金」と記載して,消費税の対象外と処理することはできない。

和解案では,未払実施料,追加許諾の対価,過去の侵害に係る賠償,独立した他の損害及び費用を,実際の合意と計算根拠に沿って分ける。どの項目が何の対価かを確認し,混合する和解金を全額一括で課税又は不課税と決めない。当事者が内訳に名称を付けるだけで税務当局の判断を拘束できるわけでもない。

合意前に,税込・税別,消費税相当額の負担,支払総額,請求書等の交付担当・期限を税理士と確認する。受領者の納税義務・登録と,支払者の仕入税額控除の要件は別問題であり,登録番号の記載だけで控除可能額を決めない。国外の権利・非居住者・外国法人を含む場合は,国内外判定,源泉徴収及び租税条約を追加検討する必要があり,本節の結論をそのまま当てはめない。

第7 弁護士と税理士が共有する資料

弁護士は,特許の対象・許諾範囲,契約違反と侵害の主張,解除・変更の効力,清算する請求及び第三者の扱いを整理する。税理士は,その事実関係と実際の支払内容を踏まえ,消費税区分,所得税・法人税の計上時期,支払側の費用処理及び必要な証憑を検討する。消費税の課税取引であることだけで,支払側の法人税上の即時損金算入まで決まるものではない。

原契約,別紙,変更合意,交渉記録,解除・催告通知と到達記録対象特許・請求項,実施の地域・期間・当事者と権利者数量の原データ,製造番号・ロット,出荷・返品・在庫と転売先の記録請求済み実施料,入出金,元の税区分・仕訳及び申告済み期間和解案の支払内訳,算定表,追加許諾の内容と効力発生日税込・税別の合意,請求書等の交付,計算・説明・再確認の担当と期限

税務の確認を支払後まで延期せず,双方が合意する前に同じ資料で判断する。紛争の解決,許諾の確保及び税引後の資金負担を,一枚の精算メモで説明できる状態にすることが有用である。

第8 関連記事

修理・再生品は特許権侵害になるか―消尽,新たな生産,交換部品及び間接侵害(AI作成)

示談金・解決金・和解金に税金はかかるか―名目ではなく補填対象・所得区分・権利確定時期で判断する(AI作成)

令和6年度司法試験知的財産法第1問の模範解答と評価項目(AI作成)(数量制限と消尽を扱う試験問題。試験上の評価と個別契約の実務判断は区別する。)

第9 出典・適用範囲

法令・行政資料は令和8年10月10日に確認した。国税庁No.6257の本文表示は令和8年4月1日現在法令等である。以下の判決は消尽の一般的な根拠として参照し,数量超過のすべての場合の結論を示す先例とは扱っていない。契約文言,許諾経緯,製品の流通及び支払内容によって個別の結論は変わる。

①特許法68条,78条,100条
②最高裁第三小法廷平成9年7月1日判決(平成7年(オ)第1988号,民集51巻6号2299頁。国内譲渡の理由は4~5頁)
③消費税法2条・4条
④消費税法基本通達5-4-1(実施権等の設定)
⑤消費税法基本通達5-2-5(損害賠償金)
⑥国税庁No.6257「損害賠償金」

投資詐欺・金銭不祥事の被害と税務―損失,返金・自主補償,利息及び貸倒れの区別(AI作成)

目次

第1 被害の損失と,回収した金銭を別々に判定する1 本記事の対象と結論2 まず資料から金額を分解する第2 詐欺被害は当然に雑損控除になるわけではない1 詐欺と盗難・横領の違い2 対象資産と補填額も確認する第3 貸付元本の回収不能と,未収利息を分ける1 個人の事業債権と雑所得の基因となる資産2 既に所得に計上した未収入金の回収不能第4 返金・賠償・自主補償の税務をどう分けるか1 元本返還と所得の取得は別である2 個人が受け取る損害補填3 約定利息・遅延損害金・費用補填第5 法人の損失,賠償債権及び貸倒れ第6 補償合意前と申告前に確認する順序1 弁護士と税理士で同じ内訳を使う2 確定と入金を区別する第7 消費税と所得税・法人税を分ける第8 根拠資料と適用上の限界
第1 被害の損失と,回収した金銭を別々に判定する
1 本記事の対象と結論

投資や金銭貸付けの勧誘を受けて送金し,元本が戻らなくなった場合に,損失を税務上控除できるか,後に受け取った返金・賠償・会社の自主補償をどう扱うかを整理する。
対象は主として日本の居住者個人と内国法人であり,法令の確認基準日は令和8年10月10日である。

「被害だから控除できる」「補償金だから非課税」「振込額が元本以下だから所得はない」という判断では足りない。
①誰の資金か,②何の取引か,③どの損失か,④何を補う入金か,⑤どの年分・事業年度かを分ける。
被害者個人の所得控除と,被害法人の損金算入も同じ制度ではない。

2 まず資料から金額を分解する

送金元本,返還された元本,運用益・利息として受け取った額,未回収残高,賠償・補償の認定額,遅延損害金及び費用補填を別欄にする。
契約書,勧誘文面,入出金明細,認定通知,補償合意書,金額計算書及び過年度の申告書をそろえる。

相手が「配当」と呼んだ金銭が,本当に投資収益なのか,元本の返還なのかを確認する。
返金の民事上の充当と税務上の所得区分についても,名目だけで決めない。

第2 詐欺被害は当然に雑損控除になるわけではない
1 詐欺と盗難・横領の違い

所得税法72条の雑損控除は,対象資産に災害,盗難又は横領による損失が生じた場合の制度である。
国税庁は詐欺による損失の質疑及びNo.1110で,詐欺・恐喝の損失は対象外と説明している。

捜査機関への相談や告訴をしたことだけで控除要件が満たされるわけではない。
他方,記事や会社発表で「詐取」「横領」等の言葉が使われているだけで個々の取引を分類せず,誰がどの権限で金銭を受領・保管し,どのように処分したかを確認する。

2 対象資産と補填額も確認する

盗難・横領であっても,資産の所有者,事業用資産等との区別及び補填額の確認が必要である。
雑損控除の計算では,保険金・損害賠償金等によって補填される部分を除く。
損失の全額控除と補填額を控除しない処理を重ねない。

この説明は損失の控除に関するものであり,受け取った補償金の課税・非課税を直接決めるものではない。

第3 貸付元本の回収不能と,未収利息を分ける
1 個人の事業債権と雑所得の基因となる資産

所得税法51条2項は,不動産所得・事業所得・山林所得を生ずべき事業の遂行上生じた貸付金等の貸倒れを扱う。
個人が私的に貸した金銭へ,事業の貸倒れの規律をそのまま移さない。

同条4項は,雑所得等を生ずべき業務の用に供され,又はその所得の基因となる資産の損失について,所定の除外と補填額を確認した上で,当該年分の該当所得の金額を限度とする必要経費算入を定める。
適用には,取引の実質,所得との関係,回収不能となった時期と根拠を確認する必要がある。

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ノーベル賞の賞金に税金はかかるか―所得税法9条1項13号ホの非課税,経済学賞の例外,沿革及び受け取った後の税金(AI作成)

目次

第1 この記事の要点第2 ノーベル賞の賞金を非課税とする規定1 所得税法9条1項13号の条文2 非課税となる範囲3 住民税も課されない4 確定申告は要るか5 日本の居住者でない受賞者6 賞状・メダル,ノーベル講演及び受賞後の講演料第3 経済学賞は非課税の対象外1 経済学賞の賞金を出すのはスウェーデン国立銀行2 ホにもヘの指定にも当たらない3 課税される場合の所得の種類第4 非課税の規定ができるまでの経緯1 昭和24年の湯川秀樹博士の受賞と議員提案2 昭和25年の改正と告示による指定3 昭和43年の川端康成氏の受賞と文学賞の扱い4 昭和44年の法定化と昭和48年の現在の形5 平成2年の「芸術」の追加と令和7年のアーベル賞の指定第5 ノーベル賞以外の賞との比較1 財務大臣の指定を受けている賞2 指定を受けていない賞の賞金3 オリンピック・パラリンピックの報奨金第6 賞金を受け取った後の税金1 寄附したときの寄附金控除2 国外の口座に置いたまま年を越すとき3 家族への贈与と相続4 メダルを売却したとき・寄贈したとき第7 米国の取扱いとの比較第8 関連記事第9 出典1 法令2 告示・官報・行政資料3 国会会議録4 ノーベル財団の公表資料5 報道6 裁判例
第1 この記事の要点

本記事は,ノーベル賞の賞金に日本の所得税及び住民税がかかるか,経済学賞はどう扱われるか,非課税の規定がどのような経緯でできたか,及び賞金を受け取った後に寄附・贈与・相続をしたときの税金を整理するものである。
令和8年10月10日現在の法令,財務省告示及びノーベル財団の公表資料に基づいて記載している。

要点は,次のとおりである。
①ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品は,所得税法9条1項13号ホにより所得税が課されない。
②個人住民税の所得割は所得税法の例により所得を計算するから,ノーベル賞の賞金は住民税の課税標準にも入らないと考えられる。
③経済学賞(アルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞)の賞金はスウェーデン国立銀行が支払うものであり,同号ホの「ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品」に当たらず,財務大臣の指定(昭和44年大蔵省告示第96号)にも含まれていないから,日本の居住者が受け取れば課税対象になると考えられる。
④非課税の扱いは,昭和24年の湯川秀樹博士の受賞を契機とし,昭和43年の川端康成氏の文学賞受賞で文学が学術に当たるかが国会で問題となったことを経て,昭和44年の改正でノーベル賞の賞金を法律に明記する形になった。
⑤令和7年12月26日財務省告示第334号により,アーベル賞(ノルウェー科学文学アカデミーから交付される金品)が令和7年分以後の非課税の指定に加わった。
⑥非課税は所得税の話であり,受け取った賞金を家族に贈与すれば贈与税,死亡時に残っていれば相続税の対象となる。
⑦非課税所得は寄附金控除の上限(総所得金額等の40%)の計算の母数に入らないから,賞金の全額を寄附しても,他の所得が少なければ控除できる額は限られる。
⑧非課税なのはノーベル賞として交付される金品の受領までであり,受賞後に国内で受け取る講演料は課税対象となり,メダルを売却すれば譲渡所得,大学・博物館等の法人に寄贈すれば原則としてみなし譲渡の対象となる。

第2 ノーベル賞の賞金を非課税とする規定
1 所得税法9条1項13号の条文

所得税法9条1項は,「次に掲げる所得については,所得税を課さない。」と定め,その13号で「次に掲げる年金又は金品」を挙げている。
同号の内容は,次のとおりである(e-Gov法令検索で令和8年10月1日施行時点の条文を確認した。)。
イ 文化功労者年金法3条1項の規定による年金
ロ 日本学士院から恩賜賞又は日本学士院賞として交付される金品
ハ 日本芸術院から恩賜賞又は日本芸術院賞として交付される金品
ニ 学術若しくは芸術に関する顕著な貢献を表彰するものとして又は顕著な価値がある学術に関する研究を奨励するものとして国,地方公共団体又は財務大臣の指定する団体若しくは基金から交付される金品(給与その他対価の性質を有するものを除く。)で財務大臣の指定するもの
ホ ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品
ヘ 外国,国際機関,国際団体又は財務大臣の指定する外国の団体若しくは基金から交付される金品でイからホまでに掲げる年金又は金品に類するもの(給与その他対価の性質を有するものを除く。)のうち財務大臣の指定するもの

ニとヘは,財務大臣が個別に賞を指定して初めて非課税になる仕組みである。
これに対し,ホはノーベル賞だけを名指しして法律で直接非課税としており,財務大臣の指定を要しない。

2 非課税となる範囲

ホの文言は「ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品」であるから,賞金だけでなく,ノーベル賞として交付されるメダル等の物品も含むと読むのが自然である。
共同受賞の場合は,各受賞者が受け取る持分がそれぞれ非課税となる。
例えば,令和8年(2026年)のノーベル化学賞は,フランスのアンリ・カガン氏と東京理科大学の硤合憲三名誉教授の共同受賞であり,ノーベル財団の発表では,賞金1200万スウェーデン・クローナを2人で均等に分けるとされている。
参考までに,財務大臣が公示した令和8年10月中に適用される裁定外国為替相場(1スウェーデン・クローネ=17円)で換算すると,1200万クローナは2億0400万円,その半分は1億0200万円となるが,実際に受け取る円貨の額は送金時の為替相場等によって異なる。

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修正申告と加算税―行政指導,調査通知及び更正予知の前後で何が変わるか(AI作成)

目次

第1 この記事が扱う判断1 税額の誤りと加算税の判断を分ける2 修正申告をする前に記録を残す第2 行政指導と調査は連絡方法だけでは分からない1 担当者に位置付けを確認する2 実地調査以外の調査もある第3 修正申告の時期と過少申告加算税1 通知前と通知後を区別する2 更正予知を具体的な事実から検討する第4 正当な理由と重加算税は別の検討である1 正当な理由の位置付け2 本税・加算税・延滞税を分ける第5 修正申告,更正及び不服申立て1 修正申告の勧奨に応じる前に確認する2 争う対象を取り違えない第6 弁護士・税理士が共有する記録第7 出典
第1 この記事が扱う判断
1 税額の誤りと加算税の判断を分ける

税務署から申告内容の確認を受けたとき,まず連絡の位置付け,求められている事項及び期限を確認する必要がある。
修正すべき税額があること,過少申告加算税が課されること,重加算税が課されることは,それぞれ要件が異なる。
「自主的に修正するから加算税はない」「電話だけだから調査ではない」という判断は適切ではない。

本記事は,令和8年10月10日を基準日とし,期限内申告をした納税者の修正申告と過少申告加算税を中心に,行政指導,調査通知及び更正予知を整理する。
期限後申告と無申告加算税,源泉徴収の不納付加算税,個別の税額計算は別に確認する必要がある。

2 修正申告をする前に記録を残す

税務署の連絡日,担当部署・氏名,対象税目・期間,説明内容,求められた資料及び回答期限を記録する。
法的な評価が争われる場合には,帳簿,契約書,証憑及び申告時の資料の元の状態を保全し,指摘事項と納税者の見解を分けることが重要である。

申告の誤りを直すことと,過去の記録を事実と異なる内容へ書き換えることは同じではない。
修正の内容,発見日,根拠及び計算を別に残し,税理士・弁護士と共有するのがよい。

第2 行政指導と調査は連絡方法だけでは分からない
1 担当者に位置付けを確認する

国税庁FAQ問2は,課税標準等又は税額等を認定する目的で質問検査等を行う調査と,自発的な見直しや修正申告を求める行政指導を区別している。
同FAQは,具体的な手続に入る前に,いずれに当たるかを納税者へ明示する運用を説明している。

行政指導に基づく自主的な修正について,同FAQは過少申告加算税を賦課しない旨を説明しているが,延滞税が必要となる場合はある。
当初申告が期限後申告である場合の無申告加算税とは区別する必要がある。

2 実地調査以外の調査もある

FAQ問22は,税務署へ来署して申告内容を確認するなど,実地調査以外の調査を明示している。
この場合,法令上の事前通知は求められていないが,連絡の際などに対象税目・課税期間・目的等を説明する運用である。

国税通則法74条の9の実地調査の事前通知と,同法65条6項の調査通知に関する判断を,電話,訪問又は郵便という方法だけで代用してはならない。
通知内容と実際に行われた質問・確認を具体的に検討する必要がある。

第3 修正申告の時期と過少申告加算税
1 通知前と通知後を区別する

国税通則法65条6項は,修正申告が調査により更正があるべきことを予知してされたものではなく,かつ,所定の調査通知前に行われた場合には,同条1項を適用しないと定める。
「更正予知前」であることだけを確認して,調査通知の有無を省略してはならない。

調査通知後であっても,更正予知によらない修正申告には,同条1項の通常の場合とは異なる割合が定められている。
次の表は,同条1項・2項・6項に関する基本的な区分であり,すべての加重・特例を含む最終税額表ではない。

(続きを読む...)修正申告と加算税―行政指導,調査通知及び更正予知の前後で何が変わるか(AI作成)

中小M&Aの売却代金と役員退職金―支払義務,後払い,税務と手取り額の確認(AI作成)

目次

第1 「総額」で合意する前に支払の内訳を決める1 株式代金と退職金を別々に確認する2 額面・支払確実性・税務を同じ資料で検討する第2 会社の支払義務と必要な決議1 買主との約束と会社の決議は別である2 契約書例の「速やかに」を具体化する第3 後払い・分割払い・価格調整の危険1 支配権を渡した後の回収を考える2 アーンアウトと補償による控除第4 法人側の退職給与の税務1 損金算入の時期2 退職の実態と金額の相当性第5 受給者の退職所得と株式譲渡所得1 退職所得の2分の1計算には例外がある2 源泉徴収と実際の手取り3 株式の売却代金には別の計算がある第6 契約・税務・資金の確認を一枚にまとめる1 確認表の項目2 弁護士と税理士へ同じ資料を渡す第7 出典と関連記事
第1 「総額」で合意する前に支払の内訳を決める
1 株式代金と退職金を別々に確認する

中小企業のオーナーが株式を売却して退任する取引では,株式代金,役員退職金,役員借入金の返済等を合計して条件が提示されることがある。
しかし,受取人が同じでも,支払義務者,支払原資,必要な決議,税務及び支払時期は同じではない。

まず,株式代金は株主と買主の売買の対価,役員退職金は会社と役員との関係に基づく支払として区別する。
役員借入金の返済では,会社が役員に実際に負う債務とその残高を確認する。
事業譲渡では通常,事業の対価の受取人は譲渡会社となるため,株主個人への株式代金と混同しない。

2 額面・支払確実性・税務を同じ資料で検討する

本記事は,株式を売却して退任する個人オーナーと,その会社・買主を主な対象とする。
中小M&Aガイドライン第3版,各種契約書等サンプル(令和7年12月15日時点版)のうち株式譲渡契約書サンプル,会社法及び国税庁資料を用い,支払条件と税務確認の接点を説明する。

「売却総額」だけで判断せず,支払義務者ごとの額面,税・手数料,実際の入金時期,後払いの条件及び保証解除を確認する。
税務上の区分は名称だけで定まらず,株式の価値,退職の実態,勤務期間及び支給額の相当性を裏付ける資料が必要である。

株式代金の受領,役員退職金の支払及び経営者保証の解除は,それぞれ別に完了を確認する。
代金が入金されても,会社の借入金についての保証が解除されたことにはならず,保証の解除には金融機関の判断が必要である。
クロージングと同時の解除又は返済・借換えを実行の条件に組み込むかを,代金・退職金の支払条件と合わせて検討する。
保証が残る危険は,手取り額の試算に含める税・手数料とは別の確認項目として管理する。
具体的な手順は,中小M&Aで経営者保証を残さないためにの第3・2で整理している。

第2 会社の支払義務と必要な決議
1 買主との約束と会社の決議は別である

株式会社の取締役の報酬等について,会社法361条1項は,定款に定めがないときは株主総会の決議により額等を定めるとする。
退職慰労金を設ける際は,定款,退職慰労金規程,必要な決議,具体額又は算定方法,決定を委任する範囲及び支払条件を確認する。
指名委員会等設置会社等では,機関設計に応じた手続も確認する。

買主が「買収後に会社から支払わせる」と約束したことだけで,必要な会社の決議や支払の手続が済んだと扱わない。
会社自身の支払義務と,買主が決議・支払を実現する契約上の義務を分けて設計する。
支払が実現しない場合の請求先と救済も確認する。

2 契約書例の「速やかに」を具体化する

中小企業庁の上記株式譲渡契約書サンプルの第11条(サンプル集の通し頁20頁)は,買主が対象会社をして,実行後速やかに退職慰労金の承認決議を行わせ,指定口座へ支払わせる例を示す。
会社による必要な源泉徴収も規定している。

実際の取引では,決議日,支払日,金額,送金先,振込手数料,源泉徴収,支払原資及び支払を確認する書面を明確にする。

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家族・資産・会社が絡む相談の整理方法―弁護士と税理士が共有する関係図・資産表・判断事項(AI作成)

目次

第1 最初に依頼者と相談の目的を確認する1 家族と会社を一人の依頼者として扱わない2 利益相反と情報共有を先に点検する第2 関係図には所有・経営・債務のつながりを書く1 人の関係と財産の関係を分ける2 株式の金額と経営の支配を分ける第3 資産表には時価・税務評価・現金の動きを分けて記載する1 一つの評価額をすべての判断に使わない2 親・子・会社・ほかの相続人の負担を比較する第4 弁護士と税理士の連携事項を一枚にまとめる1 担当範囲と判断の前提を明示する2 資料の共有範囲を決める第5 選択肢を比べ,実行後の確認まで予定する1 結論を急がず,現状維持も比較する2 引継ぎと実行後の点検を残す第6 関連記事第7 出典
第1 最初に依頼者と相談の目的を確認する

相続対策や事業承継では,家族が所有する土地,会社の建物,親子間の貸付け,会社の株式などが一つの相談に現れる。
税額だけを比較すると,会社の資金不足や親の生活資金,ほかの相続人との対立を見落とすことがある。

相談の入口では,誰の依頼を受け,誰の財産について,何をいつまでに決めるのかを整理する必要がある。
本記事では,弁護士と税理士が連携する際の関係図,資産表及び判断事項のまとめ方を示す。
以下の表は相談を整理するための実務上の提案であり,法定の様式ではなく,特定の節税方法の適否を判断するものでもない。

1 家族と会社を一人の依頼者として扱わない

親,子,会社及びほかの相続人は,利害が一致する場面もあれば,異なる場面もある。
会社の利益を増やす方法が,親の生活資金を減らすこともある。
社長個人と会社も区別して,委任契約の相手,費用の支払者,説明を受ける人及び最終判断をする人を確認する。

例えば,親の賃貸建物を子の会社へ売る相談であれば,親が売主であり,会社が買主となる。
子が両者の連絡窓口となっても,親本人の希望と会社の意思決定を,子の説明だけで同一視してはならない。

2 利益相反と情報共有を先に点検する

弁護士職務基本規程27条・28条には,職務を行えない事件や一定の同意が問題となる事件について規定がある。
家族全員の同意があれば,どのような案件でも共同で受任できるというものではない。
既存の顧問関係,受任前の相談,関係者間の対立及び各条の条件を個別に確認する。

受任範囲を決める前に,関係者全員の資料を一括して受け取り,共有してしまうことも避ける。
家族共通の説明資料と,個別の相談で得た秘密を区別し,共有できない情報がある場合には,その制約を踏まえて連携方法を決める。

第2 関係図には所有・経営・債務のつながりを書く
1 人の関係と財産の関係を分ける

家族の続柄だけでなく,土地・建物の所有者,会社の株主・役員,借入人・保証人及び貸付先を図に記載する。
登記事項証明書,株主名簿,契約書,借入明細などで確認し,口頭説明だけの事項には「未確認」と付記する。

関係確認する資料・事項相談で確認する理由家族・相続続柄,既存の遺言,希望する承継者財産を受け取る人と説明が必要な人を把握する所有・利用不動産登記,賃貸借・使用貸借,利用実態所有者と収益・費用の負担者を区別する経営・議決権株主名簿,定款,役員,議決権の状況財産移転後に誰が経営判断をするか確認する債権・債務借入・貸付・保証・担保の資料資産額だけでは見えない負担と資金流出を把握する
2 株式の金額と経営の支配を分ける

株式の評価額が低く見える場合でも,議決権や役員選任に関わる重要な財産となり得る。
株式を誰が取得するか,経営に参加しない家族へどのような財産を配分するか,納税や代償金の資金をどこから用意するかを,別々の判断事項として整理する。

会社形態,定款,株式の種類,譲渡制限その他の事情によって必要な手続は異なる。
関係図は手続の結論を出す資料ではなく,確認すべき論点を見つける入口である。

第3 資産表には時価・税務評価・現金の動きを分けて記載する

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租税条約を適用する前に確かめる5つのこと―署名と発効,適用開始日,BEPS防止措置実施条約,終了通告及び届出書(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 結論第2 署名だけでは条約を適用できない1 署名・批准・発効の関係2 署名済み・未発効の条約の例第3 発効日と適用開始日を分ける第4 BEPS防止措置実施条約による修正を確かめる1 両方の国が選んだ条約・規定だけが修正される2 適用開始の時期3 統合条文と留保・通告の一覧の使い方第5 終了通告と脱退を確かめる1 租税条約の終了2 BEPS防止措置実施条約からの脱退3 終了・脱退の規定がない条約との違い第6 届出書の提出時期と還付請求第7 実務の確認表第8 関連記事第9 出典1 財務省2 法令・条約3 確認状態
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

本記事は,非居住者・外国法人への支払や,外国から日本へ来た人の給与等について,租税条約による軽減・免除を検討する税理士・弁護士の実務を念頭に,条約の条文の中身に入る前に確かめておくべき事項を整理するものである。

基準日は令和8年(2026年)10月10日である。
各国との租税条約の署名日・発効日は財務省「我が国の租税条約等の一覧」(2026年6月26日現在)により,BEPS防止措置実施条約の締約国等は財務省「BEPS防止措置実施条約に関する資料」(2026年5月6日現在の記載)による。
最新の状況は,案件ごとに財務省のページで確かめる必要がある。

2 結論

租税条約を使う前に,少なくとも次の5点を確かめる。

①その条約が署名されただけでなく,発効しているか
②発効していても,問題の所得・課税期間に適用が始まっているか(発効日と適用開始日は違う)
③BEPS防止措置実施条約によって条文が修正されていないか(修正は,両方の国が選んだ場合に限られる)
④終了の通告がされていないか(終了の効果が生じる日も条約で決まる)
⑤源泉徴収の軽減・免除を受けるための届出書を,期限までに出しているか(出していなければ還付請求で取り戻す)

これらは,条約の適用関係を条約の条文と国際法の一般的な規則(条約法に関するウィーン条約)に沿って確かめる作業であり,条約上の軽減税率や免税要件の検討より先に行う。

第2 署名だけでは条約を適用できない
1 署名・批准・発効の関係

条約に拘束されることについての国の同意は,国の代表者が批准を条件として署名した場合には,批准により表明される(条約法に関するウィーン条約14条1項(c))。
租税条約も,多くは批准(又は国会の承認と外交上の公文の交換)を経て発効する。
例えば,日米租税条約(2003年11月6日署名)30条1は,「この条約は,批准されなければならない」とし,批准書の交換の日に効力を生ずると定めている。

署名から発効までの間,署名した国は,当事国とならない意図を明らかにする時まで,条約の趣旨及び目的を失わせることとなるような行為を行わない義務を負う(条約法に関するウィーン条約18条(a))。
もっとも,これは国と国との間の義務であり,署名されたことによって,その条約が定める軽減税率や免税の規定が納税者に適用されるようになるわけではない(本記事の理解である。)。

2 署名済み・未発効の条約の例

財務省「我が国の租税条約等の一覧」(2026年6月26日現在)には,署名日だけが記載され,発効日が「未発効」とされている条約がある。

①アルゼンチンとの原条約は,2019年6月27日に署名されたが,発効日は「未発効」とされている。
②フィリピンとの新条約は,2026年5月28日に署名されたが,発効日は「未発効」とされ,1980年に発効した原条約と2008年に発効した改正議定書が併せて掲載されている。

報道や財務省の署名のお知らせで新条約を知っても,発効するまでは,その新しい規定を前提に源泉徴収を軽減したり申告したりすることはできない。
フィリピンのように旧条約がある国では,新条約の発効までは旧条約(改正議定書による改正後のもの)で確かめることになる。

第3 発効日と適用開始日を分ける

条約が発効しても,その日から全ての所得に適用されるとは限らない。

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ストライキ不参加者への慰労金・弁当代は不当労働行為か―支配介入・不利益取扱い,救済命令の限界及び給与課税(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論1 対象とする場面2 結論の要旨第2 ストライキ中の操業継続と,事後の慰労金の支給は別の問題である第3 支配介入(労働組合法7条3号)に当たるか1 判断の枠組み2 支配介入を認めた例3 判断に使われる事情第4 不利益取扱い(労働組合法7条1号)に当たるか第5 労働委員会が命じる救済とその限界1 命令例2 救済命令の裁量とその限界3 申立ての期間第6 支給した金銭の課税(給与課税と源泉徴収)1 現金の「弁当代」は原則として給与になる2 残業時の食事の非課税と,深夜勤務の夜食代の例外3 実務上の対応第7 会社・組合が確認すべき事項1 会社側2 組合側第8 関連記事第9 出典1 法令・通達等2 裁判例・労働委員会命令3 司法試験の公式資料4 確認状態
第1 この記事の対象と結論
1 対象とする場面

労働組合がストライキを行った日に,非組合員や応援の従業員が代わりに働き,業務が深夜に及ぶことがある。
その後,会社が感謝の気持ちとして,当日働いた従業員に慰労金や「弁当代」を配ることは珍しくない。
本記事は,この支給が労働組合法7条の不当労働行為(1号の不利益取扱い,3号の支配介入)に当たるか,労働委員会がどのような救済を命じ得るか,及び支給した金銭が所得税法上どう課税されるかを,労働委員会命令・裁判例と国税庁の通達等に基づいて整理するものである。
法令・通達は令和8年10月10日時点のものを確認している。

2 結論の要旨

①ストライキ中も操業を続けるための対策を講じることは使用者の自由であるが,ストライキの代替勤務に就いた者だけに後日特別な金員を支給することは,争議行為の効果を減殺し,今後の争議行為をけん制するものとして,支配介入と評価されることがある。
②支配介入に当たるかは,支給の名目・時期・方法・金額・前例の有無,時間外割増賃金との関係,同時期の使用者の言動等を総合して判断される。
③不利益取扱いに当たるかは命令例でも結論が分かれ,支給基準が組合活動と無関係に引かれているか(組合員でない者にも支給対象外の者がいるか)が分かれ目になる。
④救済としては,ポストノーティスや,今後の同種の支給を禁じる不作為命令のほか,ストライキ参加者への金銭の支払を命じた例もある。
⑤税務上は,「弁当代」の名目でも,現金で一律に支給すれば原則として給与として課税され,源泉徴収の対象となる。

第2 ストライキ中の操業継続と,事後の慰労金の支給は別の問題である

最高裁平成4年10月2日判決(集民166号1頁,御國ハイヤー事件)は,ストライキの本質は労働者が労務の提供をしないことにあるとした上で,使用者はストライキの期間中であっても業務の遂行を停止しなければならないものではなく,操業を継続するために必要とする対抗措置を採ることができると述べている。
したがって,非組合員や管理職で操業を続けること,応援の従業員に時間外勤務を命じること自体は,原則として問題とならない。

他方,ストライキが終わった後に,代わりに働いた従業員だけに特別な金員を配ることは,操業の継続そのものではない。
中央労働委員会平成17年9月7日命令(東日本旅客鉄道(千葉動労褒賞金)事件)は,会社がストライキによる影響を最小限に抑えるために対策を講じることは自由であるとしつつ,代替の臨時勤務に就いた者に褒賞金等を支給して会社の方針に協力した者を優遇することは,ストライキの権利行使の効果を減殺するものといわざるを得ないとした。
同命令は,支給がストライキの終了後であっても,今後のストライキに対する抑止力となり得ることも理由に挙げている。

第3 支配介入(労働組合法7条3号)に当たるか
1 判断の枠組み

労働組合法7条3号は,労働者が労働組合を結成し,若しくは運営することを支配し,若しくはこれに介入することを不当労働行為として禁止している。
最高裁昭和29年5月28日判決(民集8巻5号990頁,山岡内燃機事件)は,客観的に組合活動に対する非難と組合活動を理由とする不利益取扱いの暗示とを含む発言により組合の運営に影響を及ぼした事実がある以上,発言者に主観的な認識や目的がなかったとしても,組合の運営に対する介入があったものと解するのが相当であるとした。
慰労金の支給でも,会社が組合を弱めるつもりはなかったと述べるだけでは足りず,支給の客観的な意味が問われる。

2 支配介入を認めた例

青森県地方労働委員会平成3年7月10日命令(陸奥製菓事件)は,冬期一時金をめぐる24時間ストライキの当日に勤務した従業員のうち75名に対し,後日,取締役生産部長が現金入りの封筒(感謝金。1人当たり2,000円又は1,000円)を手渡した事案である。
会社は,深夜まで働いた従業員への感謝であり,金額も弁当代相当額にすぎないと主張した。
しかし,命令は,ストライキ時の時間外労働には時間外割増賃金が支払われていたこと,時間外労働をした従業員に割増賃金以外の金員を支給した前例がないこと,ストライキの翌日に社長が組合を誹謗・中傷し社長名の文書で抗議したことを併せ考えて,会社の主張を採用せず,不利益取扱い(1号)と支配介入(3号)に当たると認定した。
会社は社長個人の行為であるとも主張したが,命令は,原資の出所いかんにかかわらず会社の行為とみなさざるを得ないとした。

東日本旅客鉄道(千葉動労褒賞金)事件では,ストライキの当日及びその前後に臨時の勤務に就いた社員に1日3,000円又は5,000円の褒賞金が支給された。

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民事再生の再生計画案が否決されたとき―再生手続廃止の確定前後の破産手続への移行,給料・租税・開始前借入れの扱い及び再度の再生手続開始の申立て(AI作成)

目次

第1 この記事の対象第2 否決から再生手続廃止の決定まで1 否決されると職権で廃止決定がされる2 可決要件と棄権の効果3 書面投票では続行期日がなく,決議に付した後は修正できない第3 廃止決定の確定前後と破産手続への移行1 廃止決定は確定するまで効力を生じない2 確定前にできること3 確定後は「職権で開始することができる」第4 破産手続に移った後の調整1 否認・相殺禁止の基準時2 共益債権は財団債権となる3 給料の財団債権の範囲は「再生手続開始前3月間」に読み替わる4 租税は「破産手続開始当時」を基準に財団債権かどうかが決まる5 再生債権の届出を破産債権の届出として扱う決定第5 再度の再生手続開始の申立て1 禁止規定はなく,25条3号・4号で判断する2 判断の視点第6 実務上の確認事項1 再生債務者の代理人2 債権者・スポンサー・労働者側3 税理士第7 関連記事第8 出典
第1 この記事の対象

本記事は,法人の通常再生で再生計画案が否決されたときに,その後の手続がどう進むかを,民事再生法及び破産法の条文に沿って整理するものである。
扱うのは,①否決から再生手続廃止の決定まで,②廃止決定の確定前と確定後の破産手続への移行(いわゆる牽連破産),③破産手続に移った後の給料・租税・開始前借入れ等の扱い,④廃止後の再度の再生手続開始の申立てである。

条文は,令和8年10月時点でe-Gov法令検索に掲載されている民事再生法及び破産法により確認した(本記事で引用した条文は,令和7年1月1日時点の版と文言が同じであることも確認している。)。
本記事の素材は,令和7年司法試験の倒産法第2問の検討の過程で確かめた条文である。

第2 否決から再生手続廃止の決定まで
1 否決されると職権で廃止決定がされる

再生計画案が否決されたときは,裁判所は,職権で,再生手続廃止の決定をしなければならない(民事再生法191条3号)。
同号は,債権者集会の続行期日が定められた場合に,所定の期間内に可決されないときも廃止事由としている。

2 可決要件と棄権の効果

再生計画案の可決には,次の二つの同意がいずれも必要である(民事再生法172条の3第1項)。
①議決権者(債権者集会に出席し,又は書面等投票をしたものに限る。)の過半数の同意
②議決権者の議決権の総額の2分の1以上の議決権を有する者の同意

①の頭数は,出席又は投票をした議決権者を分母とするが,②の金額は,議決権者全体の議決権の総額を分母とする。
そのため,投票を棄権した債権者は,①の分母からは外れるが,②では同意に数えられないまま分母に残り,結果として反対と同じ方向に働く。
反対する債権者の比率が2分の1に届かなくても,棄権が多ければ②を満たさずに否決されることがある。

3 書面投票では続行期日がなく,決議に付した後は修正できない

議決権行使の方法は,裁判所が,再生計画案を決議に付する旨の決定の中で,①債権者集会の期日で行使する方法,②書面等投票による方法,③議決権者が①②のいずれかを選ぶ方法のどれかに定める(民事再生法169条2項)。
債権者集会の続行期日の制度(同法172条の5第1項)は,①又は③が定められた場合に限られる。
②の書面等投票だけの方法で否決されたときは,続行期日で再び可決を目指すことはできない。

また,再生計画案は,裁判所の許可を得て修正できるが,決議に付する旨の決定がされた後は修正できない(民事再生法167条)。
書面投票の結果を見てから条件を改めることはできないので,再生債務者の代理人としては,計画案を提出して決議の方法について裁判所と協議する段階で,主要債権者の賛否の見込みと,否決された場合に続行期日を使えるかを比べておく必要がある。

第3 廃止決定の確定前後と破産手続への移行
1 廃止決定は確定するまで効力を生じない

再生手続廃止の決定は,確定しなければその効力を生じない(民事再生法195条5項)。
廃止決定は公告され(同条1項),即時抗告ができ(同条2項),公告があった場合の即時抗告期間は,公告が効力を生じた日(官報に掲載された日の翌日)から2週間である(同法9条,10条1項・2項)。

確定するまでは再生手続が続いているので,原則として,破産手続開始の申立てはできない(民事再生法39条1項)。
同項は再生手続開始の申立ても禁じているから,前の再生手続の廃止決定が確定する前に再度の再生手続開始の申立てをすることもできない(第5参照)。

2 確定前にできること

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外国企業に雇われて日本で働く人の労働紛争―管轄条項の効力(民訴法3条の7第6項),準拠法と日本の強行規定(通則法12条),国外払い給与の確定申告(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論の要約1 対象とする場面2 結論の要約第2 どこの国の裁判所に訴えることができるか1 労務の提供の地による管轄2 外国の裁判所だけを指定する管轄条項の効力3 特別の事情による却下第3 どの国の法律が適用されるか1 準拠法条項があっても日本の強行規定が適用される場合2 労務を提供すべき地の判断3 どの規定が「特定の強行規定」に当たるか4 意思表示をしないと適用されない5 不法行為として請求する場合第4 税務の注意点1 国外払いの給与と確定申告2 損害賠償金・保険金は非課税になり得る第5 相談を受けたときの確認事項第6 関連記事第7 出典1 法令2 行政資料3 司法試験の公式資料
第1 この記事の対象と結論の要約
1 対象とする場面

本記事は,外国の会社に雇われて日本で働いている人(外国の本社から日本へ赴任している人,日本に住んで外国の会社の業務を遠隔で行っている人等)と,その雇主との間で,賃金,解雇,労働災害,安全配慮義務等をめぐる紛争が起きた場合に,①どこの国の裁判所に訴えることができるか,②どの国の法律が適用されるか,③給与や損害賠償金の税務をどう扱うか,を整理するものである。
雇用契約書には,「一切の紛争は本国の裁判所で解決する」という管轄条項や,「準拠法は本国法とする」という準拠法条項が置かれていることが多いが,日本の民事訴訟法と法の適用に関する通則法は,労働者を守るための特則を置いている。
本記事は令和8年10月10日現在の法令によっている。

2 結論の要約

①労働者から雇主への訴えは,労務の提供の地が日本国内にあれば,日本の裁判所に提起することができる(民事訴訟法3条の4第2項)。
②雇用契約の締結時に定めた「本国の裁判所でだけ裁判をする」という条項は,将来の個別労働関係民事紛争を対象とする合意であり,労働契約の終了時の合意であるか,労働者自身がその合意に基づいて合意された国で訴えるか,雇主から訴えられた労働者がその合意を援用する場合でない限り,効力を有しない(同法3条の7第6項)。
③準拠法条項で外国法が選ばれていても,労働者が,その労働契約に最も密接な関係がある地の法(日本で継続して働いていれば,通常は日本法と推定される。)の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を雇主に表示すれば,その強行規定も適用される(法の適用に関する通則法12条1項・2項)。
もっとも,表示をしなければ適用されないので,訴状等で適用を求める規定を特定して主張することが重要である。
④日本の居住者が,源泉徴収義務のない者から給与の支払を受けている場合は,確定申告が必要になる(国税庁タックスアンサーNo.1900)。
心身に加えられた損害についての損害賠償金は,どの国の法律に基づいて支払われるかにかかわらず,所得税の非課税規定の対象になり得る(所得税法9条1項18号,同法施行令30条1号)。

第2 どこの国の裁判所に訴えることができるか
1 労務の提供の地による管轄

民事訴訟法3条の4第2項は,「労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争」(個別労働関係民事紛争)に関する労働者からの事業主に対する訴えは,「労務の提供の地(その地が定まっていない場合にあっては、労働者を雇い入れた事業所の所在地)」が日本国内にあるときは,日本の裁判所に提起することができると定めている。
外国の会社が日本に事務所や営業所を持っていなくても,この規定によって日本の裁判所に訴えることができる。
管轄の有無は,訴えの提起の時を標準として判断される(同法3条の12)。

労働者が日本で継続して働いていれば,短期間の海外出張があっても,労務の提供の地は日本にあると考えるのが自然である。
また,日本に住んで,外国にあるシステムや外国の顧客の業務を遠隔で行っている場合も,条文に明示の定めはないが,労務を現実に提供しているのは労働者が働いている日本であると考えられる。
逆に,外国で働いている人が日本の顧客のために遠隔で仕事をしているだけなら,労務の提供の地が日本にあるとはいいにくい。

なお,雇主から労働者に対する訴えには,契約上の債務の履行地等による管轄の規定(同法3条の3)が適用されない(同法3条の4第3項)。
雇主が労働者を訴えるときは,原則として,労働者の住所地の国の裁判所によることになる(同法3条の2第1項)。

2 外国の裁判所だけを指定する管轄条項の効力

民事訴訟法3条の7は,当事者が合意によりいずれの国の裁判所に訴えを提起できるかを定めることを認めているが,同条6項は,「将来において生ずる個別労働関係民事紛争を対象とする」合意は,次のいずれかの場合に限って効力を有するとしている。
①労働契約の終了の時にされた合意であって,その時における労務の提供の地がある国の裁判所に訴えを提起することができる旨を定めたもの(その国の裁判所にのみ訴えを提起できる旨の合意は,原則として,他の国の裁判所にも訴えを提起することを妨げない旨の合意とみなされる。)
②労働者が当該合意に基づき合意された国の裁判所に訴えを提起したとき,又は事業主が日本若しくは外国の裁判所に訴えを提起した場合において,労働者が当該合意を援用したとき

したがって,雇用契約の締結時に置かれた「一切の紛争は本国の裁判所で解決し,他の国の裁判所では裁判をしない」という条項は,労働者が日本の裁判所に訴えた場合には,雇主がこれを援用しても効力がなく,日本の管轄は否定されない。
令和7年司法試験の国際関係法(私法系)第1問は,まさにこの場面を出題しており,出題の趣旨は,労働契約の終了時の合意でなく,労働者が合意された国の裁判所に訴えを提起したものでもないから,同項1号・2号のいずれの要件も満たさず,合意の効力は認められないとしている。

なお,同条は平成23年法律第36号による改正で設けられた規定であり,同法の附則2条2項により,その施行前にされた合意には適用されない。

(続きを読む...)外国企業に雇われて日本で働く人の労働紛争―管轄条項の効力(民訴法3条の7第6項),準拠法と日本の強行規定(通則法12条),国外払い給与の確定申告(AI作成)

移住支援金・定住奨励金は何所得か―一時所得と雑所得の分かれ目,起業支援金及び非課税となる助成金(AI作成)

目次

第1 この記事の要点第2 所得区分の枠組み1 非課税規定を先に確認する2 一時所得の要件と雑所得第3 一括支給の移住支援金と起業支援金1 移住支援金は一時所得2 起業支援金は事業所得等の総収入金額第4 複数年にわたる定住奨励金・給付金1 東京国税局の文書回答(定住奨励金)2 国税庁の質疑応答事例(複数回支給の給付金)3 毎年申請する場合も継続的といえるか第5 実務での確認手順第6 関連記事第7 出典
第1 この記事の要点

地方公共団体から個人に支給される移住支援金,定住奨励金その他の給付金は,名称が似ていても,所得税法上の扱いは支給の仕組みによって異なる。
国税庁の公表資料を並べると,次のように整理できる。

①一括で支給される移住支援金は,一時所得とされた(国税庁の文書回答,平成31年4月10日)。
②取得の翌年度以降に毎年申請し,最高7年間交付される定住奨励金は,継続的に交付を受けるものとして雑所得とされた(東京国税局の文書回答,平成25年10月31日)。
③一度の認定で複数回支給される給付金は,継続的に生ずる所得として雑所得とされた(国税庁の質疑応答事例)。
④起業に要した経費を補助する起業支援金は,個人の場合,事業所得等の総収入金額に算入するとされた(①の文書回答)。
⑤医療費の助成を目的とする助成金のように,非課税とされるものもある(国税庁の質疑応答事例)。

一時所得になれば,50万円の特別控除と2分の1課税によって税負担が軽くなるが,雑所得になれば,必要経費がない限り全額が総所得金額に算入される。
本記事は,令和8年10月10日時点の法令と国税庁の公表資料に基づいている。

第2 所得区分の枠組み
1 非課税規定を先に確認する

所得税法は,所得の発生原因を問わず課税することを原則とし,非課税とされるものを9条等で個別に定めている。
地方公共団体の給付金一般を非課税とする規定はないが,給付の目的によっては,既存の非課税規定に当たることがある。

国税庁の質疑応答事例「地方公共団体が支給する少子化対策のための助成金等の所得税法上の取扱い」は,市が条例等に基づいて支給する不妊治療費の助成金と子の医療費の助成金を,所得税法施行令30条1号の保険金・給付金に類するものとして,非課税所得として扱うとしている(所得税法9条1項18号)。
同事例は,医療費控除の計算では,その助成金の額を医療費から控除するとしている。

給付の目的に着目した非課税規定としては,所得税法9条1項13号もあり,ノーベル賞の賞金や財務大臣が指定した学術賞・芸術賞の賞金は所得税が課されない。
その範囲と経緯は,ノーベル賞の賞金に税金はかかるかで整理している。

2 一時所得の要件と雑所得

非課税に当たらない給付金は,利子所得から譲渡所得までの各所得に当たるかを検討した上で,一時所得(所得税法34条1項)か雑所得(同法35条1項)かを判断することになる。

一時所得は,①利子所得から譲渡所得までの所得以外の所得のうち,②営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の,③一時の所得で,④労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものである(所得税法34条1項)。
いずれにも当たらない所得が雑所得である(同法35条1項)。

一時所得の金額は,総収入金額からその収入を得るために支出した金額を控除し,さらに特別控除額(最高50万円)を控除した金額であり(所得税法34条2項・3項),その2分の1が総所得金額に算入される(同法22条2項2号)。
雑所得(公的年金等以外)の金額は,総収入金額から必要経費を控除した金額である(同法35条2項2号)。

地方公共団体の給付金では,②と④は問題になりにくく,③の「一時の所得」に当たるかが分かれ目になることが多い。

第3 一括支給の移住支援金と起業支援金
1 移住支援金は一時所得

内閣府地方創生推進事務局長の照会に対する国税庁課税部審理室長の文書回答(平成31年4月10日)は,東京23区から東京圏外等へ移住して一定の中小企業等に就業した人等に対し,都道府県と市町村が共同で支給する移住支援金(単身で最大60万円,世帯で最大100万円,一括の定額渡し切り)について,照会者の見解のとおりで差し支えないと回答している。

照会者の見解は,移住支援金は,利子所得から譲渡所得までの所得のいずれにも当たらず,支給の対象から官公庁に新規就業した者が除かれていることから給与所得にも当たらず,営利を目的とする継続的行為から生じたものではなく,役務又は資産の譲渡の対価としての性質もないとともに,一時に支給されるものであるから,一時所得に当たるというものである。

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災害で自家用車や家財が損害を受けたときの所得税―雑損控除,「生活に通常必要でない資産」及び災害減免法の選択(AI作成)

目次

第1 この記事の要点第2 雑損控除の要件と控除額1 対象となる資産と所有者2 損害の原因3 控除額の計算4 他の所得控除との順序と繰越し第3 「生活に通常必要でない資産」との分かれ目1 生活に通常必要でない資産に当たるときの扱い2 施行令178条1項の読み方3 自家用車はどう判断されるか第4 災害減免法との選択第5 弁護士・税理士の実務での確認手順第6 関連記事第7 出典
第1 この記事の要点

豪雨,地震,火災等の災害で,自家用車,家財,住宅等が損害を受けたときは,所得税の確定申告で損失を考慮できる場合がある。
ただし,損害を受けた資産が「生活に通常必要でない資産」(所得税法62条1項,所得税法施行令178条1項)に当たるか否かで,使える制度が根本的に異なる。

当たらない資産(生活に通常必要な資産)の損失は,雑損控除(所得税法72条)として総所得金額等から控除でき,控除しきれない部分は翌年以後に繰り越すことができる。
これに対し,生活に通常必要でない資産(別荘,ゴルフ会員権,1個又は1組の価額が30万円を超える貴金属・書画・骨とう等)の損失は,雑損控除の対象から除かれ,損失を受けた年分又はその翌年分の譲渡所得の金額の計算上控除すべき金額とみなされるにとどまる(所得税法62条1項)。
給与所得しかない人が生活に通常必要でない資産の損失を受けても,譲渡所得がなければ,税額は減らない。

住宅や家財に大きな損害を受けたときは,雑損控除に代えて,災害被害者に対する租税の減免,徴収猶予等に関する法律(以下「災害減免法」という。)による所得税の軽減免除を選ぶこともできる。
自家用車は,使用の目的や状況によって「生活に通常必要」かどうかが分かれる資産であり,令和7年司法試験の租税法第1問でも,この判断が正面から問われた。

本記事は,令和8年10月10日時点の法令と国税庁の公表資料に基づいている。
税額の計算は個別の事情で大きく変わるので,実際の申告では,損害額の資料をそろえた上で,雑損控除と災害減免法の両方を試算して比べる必要がある。

第2 雑損控除の要件と控除額
1 対象となる資産と所有者

雑損控除の対象は,納税者本人のほか,納税者と生計を一にする配偶者その他の親族で,その年分の総所得金額等が一定額以下の人が所有する資産である(所得税法72条1項,所得税法施行令205条)。
この一定額は,令和7年分は58万円以下であり,令和8年分は62万円以下とされている(国税庁タックスアンサーNo.1110)。

対象から除かれるのは,生活に通常必要でない資産(所得税法62条1項)と,棚卸資産や事業用固定資産等の被災事業用資産(同法70条3項)である(同法72条1項括弧書き)。
事業用の資産の損失は,雑損控除ではなく,事業所得等の必要経費の問題になる(同法51条)。

2 損害の原因

雑損控除の対象となる損害の原因は,災害,盗難及び横領に限られる(所得税法72条1項)。
「災害」は,震災,風水害,火災その他政令で定める災害であり(同法2条1項27号),政令は,冷害,雪害,干害,落雷,噴火その他の自然現象の異変による災害,鉱害,火薬類の爆発その他の人為による異常な災害,害虫,害獣その他の生物による異常な災害を定めている(所得税法施行令9条)。

国税庁は,詐欺や恐喝による損失は雑損控除の対象にならないと説明している(国税庁タックスアンサーNo.1110)。
また,自家用車同士の衝突のような通常の交通事故による損傷は,上記の自然現象の異変や人為による異常な災害には当たりにくく,相手方への損害賠償請求や車両保険で回復を図るのが基本になる。

3 控除額の計算

雑損控除の額は,次の①と②のいずれか多い方の金額である(所得税法72条1項各号,国税庁タックスアンサーNo.1110)。
①(損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-総所得金額等×10%
②(災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円

損害金額は,損害を受けた時の直前におけるその資産の価額(時価)を基礎として計算する(所得税法施行令206条3項)。
自家用車のように使用や期間の経過により減価する資産は,取得価額から非業務用資産として計算した減価償却費累積額相当額を控除した金額を基礎として計算することもできる(同項1号)。

災害等関連支出には,災害により滅失・損壊した資産の取壊し又は除去のための支出(廃車の費用等),土砂等の障害物の除去のための支出,原状回復のための支出等が含まれる(所得税法施行令206条1項)。
保険金,損害賠償金等で補塡される部分は,損失の金額から除かれる(所得税法72条1項)。

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株主優待・懸賞の賞品は何所得か―配当所得・一時所得・雑所得の区別,収入の時期,会社員の確定申告及び賞品を出す会社の源泉徴収(AI作成)

目次

第1 この記事の要点第2 株主優待の所得区分1 配当所得の範囲2 最高裁昭和35年10月7日判決3 所得税基本通達24-1と24-24 一時所得ではなく雑所得になる理由5 法人税法の側の判例との違い第3 懸賞・キャンペーンの賞品の所得区分1 一時所得の要件と計算2 役務の対価かどうか3 勤務先の懸賞に役員・従業員が当選した場合第4 収入として計上する年分1 収入すべき時期の考え方2 換金・処分ができる券3 譲渡できず,利用期間が後に始まる券第5 会社員の確定申告と住民税の申告1 所得税の確定申告を要しない場合2 20万円は所得金額で判定する3 医療費控除等のために申告するとき4 住民税の申告は別である第6 賞品を出す会社の源泉徴収1 広告宣伝のための賞金2 税額と賞品の評価3 会社の損金算入第7 関連記事第8 出典1 法令2 通達・国税庁の公表資料3 裁判例4 確認状態
第1 この記事の要点

本記事は,個人が会社から受け取る株主優待(宿泊券・乗車券・自社製品の割引等)と,懸賞・キャンペーンの賞品(旅行券・商品券・物品等)について,所得税法上の所得の種類,収入として計上する年分,給与所得者の確定申告と住民税の申告の要否,及び賞品を出す会社の源泉徴収を整理するものである。
令和8年10月10日現在の法令及び国税庁の公表資料に基づいて記載している。

要点は,次のとおりである。
①株主優待は,株主の地位に基づいて受ける利益であっても,会社の利益の有無にかかわらず交付されるものは配当所得に当たらず,原則として雑所得になる(最高裁昭和35年10月7日判決,所得税基本通達24-2)。
②懸賞・キャンペーンの賞品は,偶然の当選によるもので役務の対価でなければ,一時所得になる(所得税法34条1項,所得税基本通達34-1(1))。
③懸賞の賞品でも,主催者に対する役務の対価又はこれに付随して受けるもの,勤務先の役員・従業員としての立場に基づいて受けるものは,雑所得又は給与所得になり得る。
④収入の年分は,換金・処分ができる券なら受け取った年であり,譲渡できず,利用できる期間がまだ始まっていない券は,利用できる状態になった年以後に実現したと考えるのが自然である。
⑤1か所から給与を受けて年末調整を受けた会社員は,給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下なら所得税の確定申告を要しないが,住民税の申告は別に必要となることがあり,医療費控除等のために確定申告をするときは20万円以下の所得も申告する。
⑥会社が広告宣伝のために賞として支払う金品は,1回50万円を超える部分について源泉徴収の対象となるが,旅行その他の役務の提供で金品と選択できないものは除かれる。

第2 株主優待の所得区分
1 配当所得の範囲

所得税法24条1項は,配当所得を,法人から受ける「剰余金の配当」,「利益の配当」,「剰余金の分配」等に係る所得と定めている。
同項は,「剰余金の配当」から資本剰余金の額の減少に伴うもの等を除いており,所得税法は,会社法の下でも資本と利益を区別し,損益計算上の利益の株主への分配を配当所得として扱っていると読むことができる。

2 最高裁昭和35年10月7日判決

最高裁昭和35年10月7日判決(民集14巻12号2420頁)は,所得税法上の利益配当の観念は商法が前提とする取引社会における利益配当の観念(損益計算上の利益を株金額の出資に対し株主に支払うもの)と同じであるとした。
その上で,いわゆる蛸配当や株主平等の原則に反する配当のように商法上不適法な配当であっても所得税法上の利益配当に含まれるとしつつ,株主相互金融会社の株主優待金は,損益計算上利益の有無にかかわらず支払われるものであって,取引社会における利益配当と同一性質のものとは認め難いとして,利益配当に当たらないとした。

この判決からすると,株主優待が配当所得に当たるかは,株主総会の決議を経たかどうかや株主平等に適うかどうかではなく,会社の利益を出資に対する見返りとして分配するものかどうかで判断することになる。

3 所得税基本通達24-1と24-2

所得税基本通達24-1は,剰余金の配当等には,法人が株主等に対しその株主等である地位に基づいて供与した経済的な利益が含まれるとする。
他方,所得税基本通達24-2は,株主等である地位に基づいて供与した経済的な利益であっても,法人の利益の有無にかかわらず供与することとしている次のようなものは,法人が剰余金又は利益の処分として取り扱わない限り,配当等に含まれないとしている。
①旅客運送業を営む法人の株主優待乗車券等
②映画・演劇等の興行業を営む法人の株主優待入場券等
③ホテル・旅館業等を営む法人の株主優待施設利用券等
④法人が自己の製品等の値引販売を行うことにより供与する利益
⑤法人が創業記念・増資記念等に際して交付する記念品

同通達の注は,これらの利益で個人の株主等が受けるものは雑所得に該当し,配当控除の対象とならないとしている。

4 一時所得ではなく雑所得になる理由

一時所得は,営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の「一時の所得」で,役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものである(所得税法34条1項)。

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土壌汚染地の相続税評価と浄化・改善費用―区域の種類,最も合理的な措置,求償権及び対策費用の税務(AI作成)

目次

第1 この記事の要点1 対象と結論2 前提第2 土壌汚染地として評価する土地第3 評価の算式第4 浄化・改善費用の見積り―「最も合理的と認められる措置」と土壌汚染対策法1 国税庁の情報が示す基準2 要措置区域の場合3 形質変更時要届出区域の場合4 自然由来の汚染の場合5 見積りの点検第5 費用が確定している場合と,汚染原因者に対する権利1 浄化・改善費用の額が確定している場合2 汚染原因者に対する求償権3 損害賠償請求権第6 汚染土壌対策費用の所得税・法人税第7 実務上の確認事項第8 関連記事第9 出典及び確認状態
第1 この記事の要点
1 対象と結論

本記事は,相続税・贈与税の申告で土壌汚染地をどう評価するかについて,国税庁の「土壌汚染地等の評価の考え方について(情報)」(令和6年6月21日,資産評価企画官情報第3号・資産課税課情報第11号)と土壌汚染対策法の条文を突き合わせて整理するものである。
国税庁の情報は,課税実務の取扱いを整理した資料であり,法令や通達そのものではない。

土壌汚染地の価額は,汚染がないものとした場合の価額から,浄化・改善費用に相当する金額,使用収益制限による減価に相当する金額及び心理的要因による減価に相当する金額を控除して求める(原価方式)。
このうち実務上の争点になりやすいのは浄化・改善費用であり,国税庁の情報は,見積額を「課税時期において最も合理的と認められる措置」に基づいて算定し,その地域の標準的な土地利用の実現に必要な範囲に限るとしている。

土壌汚染対策法は,汚染の存在そのものではなく,汚染による人の健康被害の防止を目的とし,区域の種類によって求める措置が大きく異なる。
そのため,汚染が判明した土地について,掘削除去(汚染土壌を掘り取って搬出する方法)の見積額をそのまま控除額にする前に,区域の種類と法が求める措置を確かめる必要がある。
本記事では,あわせて,費用が確定している場合の債務控除,汚染原因者に対する求償権・損害賠償請求権の計上及び汚染土壌対策費用の所得税・法人税の扱いを説明する。

2 前提

本記事の基準日は令和8年10月10日である。
土壌汚染対策法とその施行令・施行規則は,e-Gov法令検索の現行版(令和8年7月1日施行の改正後の版)で確認した。
この改正で変わったのは権限の委任先の名称(法63条)等であり,本記事で引用する条文の内容は,令和7年7月時点の版と同じである。

第2 土壌汚染地として評価する土地

国税庁の情報によれば,土壌汚染地として評価する土地は,課税時期において,特定有害物質による汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないと認められる土地である(情報2頁)。
次の3点に注意する。

①汚染の可能性があるという潜在的な段階では,土壌汚染地として評価することはできない。
②土壌汚染の調査・対策が義務付けられているかどうかを問わない。
③要措置区域又は形質変更時要届出区域に指定されていれば,基準に適合しないことが明らかであるから,いずれも土壌汚染地に当たる。

区域に指定されているかどうかは,都道府県知事(政令で定める市では市長)が調製する台帳で確かめる。
台帳は,正当な理由がなければ閲覧を拒めないとされている(土壌汚染対策法15条3項)。
台帳には,形質変更時要届出区域のうち汚染が専ら自然に由来する区域(自然由来特例区域)等であるかどうかも記載される(同法施行規則58条5項)。

区域の種類は,次のとおり,健康被害が生ずるおそれの有無で分かれる。
要措置区域は,土壌の汚染状態が基準に適合せず,かつ,健康被害が生じ,又は生ずるおそれがあるものとして政令で定める基準に該当する土地である(同法6条1項)。
形質変更時要届出区域は,基準に適合しないが,その政令の基準には該当しない土地である(同法11条1項)。
政令の基準は,地下水を経由する摂取については周辺に飲用井戸等の取水口があるかどうか,土壌の直接摂取については土壌含有量基準に適合せず人が立ち入ることができる土地かどうかで判断される(同法施行令5条1号,同法施行規則30条)。

第3 評価の算式

国税庁の情報は,土壌汚染地の価額を次の算式で求めるとしている(情報4頁)。

項目内容汚染がないものとした場合の価額汚染がないものとして路線価等に基づき評価した価額浄化・改善費用に相当する金額土壌汚染の除去措置又は封じ込め等の措置に係る費用(所有者等の負担に属さないものを除く。)の見積額の80%相当額使用収益制限による減価に相当する金額封じ込め等の措置を実施した場合に,その機能を維持するための利用制限から生ずる減価。個別に検討する心理的要因による減価に相当する金額汚染の存在による心理的な嫌悪感から生ずる減価(スティグマ)。基本的には考慮しない土壌汚染地の価額汚染がないものとした場合の価額から,上の3つを控除した金額

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失踪宣告と相続・相続税―死亡とみなされる時点,相続人の変動,申告期限,取消し及び外国が関わる場合(AI作成)

目次

第1 この記事の対象第2 失踪の宣告の要件と死亡とみなされる時点1 普通失踪と危難失踪2 死亡とみなされるのは審判の日ではない3 手続の概要第3 相続への影響1 相続は死亡とみなされる時点で開始する2 他の相続との先後で相続人が変わる第4 相続税の申告期限と財産の評価1 申告期限は審判の確定を知った日から数える2 財産は相続開始の時の価額で評価する3 失踪の宣告・取消しによる相続人の異動と更正の請求第5 失踪の宣告の取消し第6 外国が関わる場合1 日本の裁判所が失踪の宣告をすることができる場合2 死亡とみなされる時点と相続・婚姻への影響3 失踪の宣告の取消しの管轄4 外国の裁判所がした失踪の宣告5 不在者財産管理を選ぶ場合第7 最初に確認すること第8 関連記事第9 出典1 法令2 通達・公的資料
第1 この記事の対象

本記事は,家族が行方不明となって生死が分からない場合に家庭裁判所がする失踪の宣告(民法30条)について,相続と相続税の実務で問題となる点を整理するものである。

失踪の宣告では,死亡したものとみなされる時点が審判の日ではなく過去の時点になる。
そのため,誰が相続人になるか,相続税の申告期限がいつから進むか,財産をいつの価額で評価するかの判断が,通常の死亡の場合と異なる。

行方不明者が外国籍である場合や外国に住んでいた場合には,日本の裁判所が失踪の宣告をすることができる範囲が限られることがあり,外国の裁判所がした失踪の宣告を日本でどう扱うかも問題となる。

条文はe-Gov法令検索の現行条文(令和8年10月時点)で,通達は国税庁ホームページの相続税法基本通達で確認した。

第2 失踪の宣告の要件と死亡とみなされる時点
1 普通失踪と危難失踪

不在者の生死が7年間明らかでないときは,家庭裁判所は,利害関係人の請求により,失踪の宣告をすることができる(民法30条1項)。
戦地に臨んだ者,沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が,戦争が止んだ後,船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないときも,同様である(同条2項)。

2 死亡とみなされるのは審判の日ではない

普通失踪の宣告を受けた者は7年の期間が満了した時に,危難失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に,死亡したものとみなされる(民法31条)。
審判は申立てから公告等を経てされるため,死亡したものとみなされる日は,審判の日や戸籍に記載される日より前になる。

失踪の宣告の裁判が確定したときは,その裁判を請求した者が,裁判が確定した日から10日以内に,裁判の謄本を添付して届け出なければならない(戸籍法94条,63条1項)。
この届書には,民法31条の規定によって死亡したとみなされる日も記載する(戸籍法94条)。

3 手続の概要

失踪の宣告の審判事件は,不在者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する(家事事件手続法148条1項)。
家庭裁判所は,申立てがあったこと,不在者は一定の期間までに生存の届出をすべきこと,届出がないときは失踪の宣告がされること,及び不在者の生死を知る者は一定の期間までに届出をすべきことを公告する(同条3項)。
その期間は,普通失踪では3か月,危難失踪では1か月を下ってはならず,期間が経過しなければ失踪の宣告の審判をすることができない(同項)。
失踪の宣告の審判は,不在者に告知することを要しない(同条4項)。

第3 相続への影響
1 相続は死亡とみなされる時点で開始する

相続は,死亡によって開始する(民法882条)。
失踪の宣告を受けた者の相続は,民法31条により死亡したものとみなされる時点で開始し,相続人の範囲や相続分もその時点を基準に判断する。

2 他の相続との先後で相続人が変わる

行方不明者自身が,親などの相続人となるべき立場にある場合には,死亡したものとみなされる時点と,その親の死亡の時点との先後によって結論が変わる。

例えば,子Aが行方不明となってから12年後に親Cが死亡した場合,Aについて普通失踪の宣告がされると,Aは行方不明となってから7年が満了した時に死亡したものとみなされ,Cより先に死亡したことになる。
この場合,AはCの相続人とならず,Aの子がAを代襲してCの相続人となる(民法887条2項)。
Aに子その他の直系卑属がいなければ,Aの系統からはCの相続人が出ないことになる(同条3項参照)。

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税務調査への回答書と税務意見書の作り方―税目・年分・事実・証拠・法令・計算及び留保の整理(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論第2 最初に三つの文書を区別する1 税務調査への回答書2 税務意見書3 税理士法33条の2の添付書面第3 作成前に固定する事項1 手続の段階を確認する2 納税者・税目・期間・取引を一行で示す3 質問と回答の対応を固定する第4 事実・証拠・推認・未確認を分ける1 確認できた事実2 依頼者又は担当者の説明3 資料からの推認4 未確認事項と追加確認方法第5 法令・通達・判例等の階層を示す1 適用時点の法令を最初に確認する2 法令と通達を同列に扱わない3 判例・裁決の射程を限定する第6 計算を再現できる形で示す1 入力値と根拠資料を対応させる2 主位計算と代替計算を分ける3 税額以外の効果を忘れない第7 税務調査への回答書の組立て1 冒頭2 回答本文3 提出資料一覧4 調査結果の説明後第8 税務意見書の組立て1 依頼事項と結論の要旨2 前提事実と資料一覧3 争点ごとの規範と当てはめ4 計算・選択肢・次の行動5 留保と更新履歴第9 弁護士と税理士の共同作業第10 提出前の確認事項第11 関連記事第12 一次資料と確認状態
第1 この記事の対象と結論

税務調査で提出する回答書と、依頼者又は担当者に示す税務意見書は、どちらも税法上の結論を書く文書である。しかし、宛先、目的、前提となる事実、求める判断及び提出後の効果が異なる。調査担当者への回答書は、質問又は指摘に対して、納税者の認識と根拠資料を記録に残す文書である。税務意見書は、複数の法的構成、計算結果、証拠上の強弱及び未確認事項を示し、依頼者の判断に資する文書である。

両者に共通する基本は、①納税者、税目、課税期間及び対象取引を最初に固定し、②確認できた事実、資料からの推認、依頼者の説明及び未確認事項を分け、③法令、通達、裁判例・裁決及び二次資料の順序を示し、④計算過程と代替計算を再現できる形で残し、⑤断定できない点には確認方法又は留保を付けることである。

本記事の文書構成は、法令で定められた様式ではなく、国税庁の税務調査手続に関するFAQ、事務運営指針、税理士法上の書面添付・意見聴取制度及び現行法令を踏まえた実務上の整理である。個別事件では、調査か行政指導か、質問検査権に基づく提示・提出の求めか、修正申告の勧奨後か、更正等の処分後かによって、文書の目的と期限を組み替える必要がある。

第2 最初に三つの文書を区別する
1 税務調査への回答書

税務調査への回答書は、調査担当者からの質問、資料提出の求め又は調査結果の説明に対し、納税者又は税務代理人の認識を整理して伝えるための文書である。すべての回答を書面で提出しなければならないという一般的な法定様式があるわけではない。口頭回答で足りる事項、資料自体を示す事項及び書面で誤解を防ぐべき事項を分ける必要がある。

回答書には、質問の範囲を超える推測、未確認の数字又は不要な個人情報を広く書かない。他方で、争点となる取引の経緯、契約、入出金、会計処理及び申告処理を断片的に答えると、同じ事実について回答が食い違うおそれがある。質問、回答、根拠資料、回答日及び回答者を対応させることが重要である。

2 税務意見書

税務意見書は、申告前の処理方針、税務調査への対応、修正申告の要否、不服申立て又は訴訟の見通し等について、事実と法令を結び付けて判断材料を示す文書である。結論だけでなく、前提事実、採用しなかった見解、金額への影響及び追加確認事項を示す点に意味がある。

意見書の結論は、資料が増えれば変わり得る。したがって、「現時点で確認した資料の範囲」「この事実を前提とする」「別の事実が確認された場合の結論」を明示し、将来の証拠と現在の判断を混同しないようにする。

3 税理士法33条の2の添付書面

税理士法33条の2の計算事項等記載書面又は審査事項等記載書面は、任意に作成する調査回答書や一般的な意見書とは別の法定制度である。税理士が申告書をどのように計算・整理・審査したか等を所定の様式に具体的に記載し、申告書に添付する。国税庁は、申告審理、準備調査及び調査の要否判断にこの書面を活用するとしている。

同書面が添付され、所定の要件を満たす場合には、税理士法35条に基づく調査通知前の意見聴取が問題となる。ただし、事前通知を要しない調査では意見聴取が行われず、添付書面があること自体で調査が行われないことが保証されるわけでもない。通常の回答書を「33条の2書面」と呼んだり、一般的な税務意見書に同制度の効果が当然に生じると扱ったりしてはならない。

第3 作成前に固定する事項
1 手続の段階を確認する

最初に、税務署等からの連絡が、税務調査か行政指導かを確認する。国税庁の一般納税者向けFAQは、申告内容を確認して課税標準等又は税額等を認定する目的で質問検査等を行うものを調査とし、自発的な見直しを求める行政指導と区別している。また、担当者は具体的な手続に入る前に、いずれに当たるかを明示するとしている。

次に、事前通知前、調査中、調査結果の説明後、修正申告の勧奨後、更正等の処分後のどの段階かを固定する。調査中の事実説明と、処分後の不服申立ての主張書面では、対象、期限及び立証責任の検討が異なる。

2 納税者・税目・期間・取引を一行で示す

回答書又は意見書の冒頭に、少なくとも次の事項を一行又は短い段落で示す。

①納税者の氏名又は法人名

②対象税目

③年分又は事業年度・課税期間

④対象となる取引、勘定科目又は申告項目

⑤文書の目的と宛先

例えば、法人税と消費税、代表者個人の所得税及び源泉所得税が同じ取引から問題になることがある。納税者、税目又は期間を省略すると、ある税目の結論を別の税目にもそのまま適用する誤りが生じやすい。

3 質問と回答の対応を固定する

調査回答書では、担当者の質問を要約し過ぎず、質問日、質問者、質問内容及び回答期限を記録する。質問が口頭であれば、理解した質問を回答書の冒頭に示し、「質問の趣旨を上記のとおり理解した」と記載する方法がある。質問の前提が異なるときは、結論を答える前に前提の相違を明示する。

第4 事実・証拠・推認・未確認を分ける

(続きを読む...)税務調査への回答書と税務意見書の作り方―税目・年分・事実・証拠・法令・計算及び留保の整理(AI作成)

弁護士・税理士が緊急時に残す意思決定記録―爆破予告,サイバー事故及び電子申告障害(AI作成)

目次

第1 緊急時の記録は経過表だけでは足りない第2 事案ごとに初動の目的を定める1 爆破予告では安全確保と警察への連絡を先行させる2 サイバー事故では封じ込めと証拠保全を両立させる3 電子申告障害では期限と代替手段を記録する第3 意思決定記録に残す項目1 事実,伝聞,推認及び未確認を分ける2 選択肢,権限者及び理由を残す第4 原資料と後日の再構成を分ける1 メール,チャット,録音及びログを関連付ける2 後日の聴取で補った部分を明示する第5 弁護士・税理士の業務記録としての注意点1 秘密保持と外部提供の範囲を確認する2 税務判断と税理士法上の帳簿を混同しない第6 AI議事録は意思決定記録そのものではない第7 実務用チェックリスト1 初動時2 判断時3 収束後第8 出典と確認範囲1 一次資料2 二次資料と未確認事項
第1 緊急時の記録は経過表だけでは足りない

爆破予告,サイバー事故又は電子申告障害が発生した場合,最初に優先すべきことは,人の安全,事故の拡大防止,証拠保全及び期限対応である。
もっとも,事後に対応の相当性を説明するためには,「何時に何をしたか」という経過だけでなく,その時点で確認できた事実,選択肢,権限者,判断理由,通知,実行結果及び未解決事項を残す必要がある。
後日の記憶で補った部分は,当時作成した記録と区別する。

本記事でいう意思決定記録は,警察,監督官庁又は依頼者への報告書そのものではない。
原資料を保全しつつ,誰がどの情報に基づき,どの選択肢から何を決めたかを,後から検証できる形にした内部記録である。

第2 事案ごとに初動の目的を定める
1 爆破予告では安全確保と警察への連絡を先行させる

警察庁は,インターネット上で爆破予告等を発見した場合は最寄りの警察署等へ通報し,緊急の対応を要する場合は110番通報するよう案内している。
同庁は,被害対象となった施設について,警戒・検索,避難又は行事中止等の措置が必要となることがあるとも説明している。

施設側の記録には,少なくとも,予告の原文・URL・受信時刻,対象場所と予告時刻,警察への連絡時刻と回答,捜索・避難・中止等の選択肢,決定権者,決定理由,来場者・関係者への通知方法及び安全確認の結果を残す。
警察の指示と施設側の自主判断を混同しないことも重要である。

東京大学は,令和8年5月祭について,爆破予告を受け,五月祭常任委員会が警察と協議し,来場者等の安全を確保できないと判断して中止を決定したと公表している。
この公式発表からは中止の事実と大枠の理由を確認できるが,当時検討された全選択肢,権限分担及び通知記録の全部まで確認できるわけではない。
東京大学新聞の事後報道は記録の必要性を考える端緒になるものの,開示決定通知,請求書及び検索範囲の原資料を得ないまま,文書不存在又は対応の違法性を断定してはならない。

2 サイバー事故では封じ込めと証拠保全を両立させる

サイバー事故では,端末の隔離,外部接続の制限,認証情報の変更等により被害拡大を防ぐ一方,ログ,メール,端末イメージその他の調査資料を失わないようにする。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の中小企業向け資料は,対応体制,連絡先,初動対応及び再発防止を平時から整理する必要性を示している。

個人情報保護委員会の資料は,漏えい等の原因・範囲を明らかにする際,ログ等の有無が調査可能性を左右し得ることを示している。
復旧を急ぐためにログを上書きしたり,疑わしいファイルを直ちに削除したりすると,侵入経路,影響範囲及び通知対象の確認が難しくなる。
技術担当者の作業記録と,事務所又は法人としての意思決定記録を相互に参照できるようにする。

3 電子申告障害では期限と代替手段を記録する

電子申告に障害が生じた場合,エラー画面,発生時刻,対象税目・年分,利用者識別番号,送信ファイルの版,受付結果及びe-Taxの稼働状況を保存する。
同時に,復旧待ち,別端末・別回線,書面提出その他の代替手段と,それぞれの期限・負担を検討する。

国税庁は,国税庁のシステムが申告期限直前に利用できない場合でも,期限延長の対象・期間・手続は国税庁の告示等によって定まること,対象外の場合には個別延長の申請が問題となることを案内している。
障害があれば当然に期限が延びると扱わず,国税庁の障害情報,法令・告示及び個別事案の資料を確認する。

第3 意思決定記録に残す項目
1 事実,伝聞,推認及び未確認を分ける

受け取った情報には,情報源,取得時刻及び原資料への参照を付ける。

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事業用車両の交通事故の会計・税務―修理費,保険金,全損・除却,休車損害及び消費税(AI作成)

目次

第1 結論第2 事故ごとに資料と勘定を分ける1 損害明細を相殺しない2 時点を一本の時系列にする第3 修理費か資本的支出か1 原状回復は修繕費が出発点となる2 保険金額と修理費区分は連動しない第4 法人が受け取る保険金・賠償金1 収入と費用を別に計上する2 保険差益の圧縮記帳は自動ではない第5 個人事業者が受け取る保険金・賠償金1 車両そのものの損害と事業収入の補填を分ける2 家事使用部分を区分する第6 全損,除却及び残存車両1 帳簿価額と事故時価額は別の数字である2 代替車両の取得は別取引である第7 休車損害と代替車両費1 民事上の損害額を資料で立証する2 所得課税と消費税を混同しない第8 消費税の判定1 通常の損害賠償金・保険金は課税対象外である2 修理・購入は別に課税仕入れを判定する3 名目ではなく実質で判断する第9 決算・申告前の確認事項第10 根拠資料と確認範囲
第1 結論

事業用車両の交通事故では,受け取った金銭と支出した金銭を差額だけで処理せず,民事上の損害項目,会計上の取引,法人税又は所得税,消費税を分けて確認する必要がある。同じ保険金・損害賠償金でも,法人か個人事業者か,車両そのものの損害か休車による減収かによって所得課税の取扱いが異なる。また,損害賠償金が消費税の対象外であっても,修理代や代替車両の購入は別の課税仕入れとなり得る。

最初に,次の事項を確定する。

1 車両の所有者,使用者及び保険契約者は誰か。
2 法人所有,個人事業用,リース又は私有車の業務使用のいずれか。
3 修理可能か,経済的全損か,廃車・売却・保険会社への引渡しのどれか。
4 支払金が修理費,車両損害,休車損害,代車費用その他のどの項目に対応するか。
5 事故日,修理完了日,保険金額の確定日,入金日,除却日及び買換日がいつか。
6 消費税の課税事業者か,原則課税か簡易課税か,事業供用割合はいくらか。

会計仕訳は契約,所有関係,決算期及び採用する会計方針によって変わるため,本記事では判断の順序と税務上の確認点を整理する。

第2 事故ごとに資料と勘定を分ける
1 損害明細を相殺しない

保険会社が修理工場へ直接支払った場合や,修理費と車両保険金が同額であった場合でも,取引が存在しなかったことにはならない。修理契約の当事者,請求書の宛名,修理代金,保険金又は賠償金の支払先,自己負担額を確認し,総額で記録できる資料を残す。

相手方から一括金を受領した場合は,示談書又は支払明細に基づき,車両修理費,車両時価額,レッカー・保管費,代車料,休車損害,積荷損害等に区分する。項目の性質が分からないまま「雑収入」又は「修繕費」の差額だけを計上すると,所得課税と消費税の判定を誤りやすい。

2 時点を一本の時系列にする

事故日と入金日だけでなく,修理の発注日・完了日・請求書発行日,保険会社が支払額を確定した日,廃車・抹消登録日,残存車両の売却・引渡日及び代替車両の取得・事業供用日を記録する。決算日をまたぐ場合は,未収入金,未払金,固定資産の使用停止及び除却の時期を個別に検討する。

事故受付票,修理見積書,保険会社の認定明細,示談書,入金通知,請求書,振込記録,車検証,固定資産台帳,抹消登録・売却資料及び買換車両の契約書を同じ事故番号で保存する。

第3 修理費か資本的支出か
1 原状回復は修繕費が出発点となる

法人税基本通達7―8―1及び7―8―2は,固定資産の通常の維持管理又は原状回復のための支出と,使用可能期間を延長させ,又は価値を増加させる支出を区分している。事故前の状態へ戻すための板金,塗装又は同等部品への交換は,通常は修繕費を検討する出発点となる。他方,事故を機に性能の高い設備を追加し,又は耐久性・価値を明らかに高める部分は,資本的支出となる可能性がある。

「事故修理」という名称だけで全額を修繕費にできるわけではない。修理見積書を工事項目・部品ごとに分け,原状回復部分,性能向上部分,定期整備・消耗品交換及び事故と無関係な不具合の修理を区分する。

2 保険金額と修理費区分は連動しない

保険会社が修理費全額を認定したことは,その全額が税務上の修繕費になることを意味しない。保険契約上の査定と,税務上の資本的支出・修繕費の判定は目的が異なる。逆に,保険会社が一部しか支払わなかったことだけで,残額が必要経費又は損金にならないとも限らない。

修理後の車両について,取得価額へ加算した部分,費用処理した部分,自己負担額及び保険金・賠償金を別々に記録する。消費税についても,保険金との差額ではなく,修理サービスの対価と請求書を基礎に判定する。

第4 法人が受け取る保険金・賠償金
1 収入と費用を別に計上する

法人が受け取る車両保険金又は損害賠償金は,原則として益金・収益の側で認識し,修理費,除却損,代替車両の取得費等は別に処理する。入金額と支出額を相殺した差額だけを記録しない。

保険金の受領が決算日後でも,決算日前に金額が確定している場合などは,収益計上時期の検討が必要となる。保険会社の認定通知,合意書,支払通知及び入金日を保存し,事故発生だけで金額が未確定の段階と,権利・金額が確定した段階を区別する。

2 保険差益の圧縮記帳は自動ではない

(続きを読む...)事業用車両の交通事故の会計・税務―修理費,保険金,全損・除却,休車損害及び消費税(AI作成)

国税庁の税務統計の読み方―民間給与・会社・申告所得税の標本調査と税務調査事績(AI作成)

目次

第1 はじめに第2 最初に区別すべき4つの公表物1 行政記録の全数集計2 3つの標本調査3 税務調査等の事績4 調査年・事業年度・事務年度第3 3つの標本調査の母集団と集計単位1 民間給与実態統計調査2 会社標本調査3 申告所得税標本調査第4 重複と反復をどう考えるか1 同じ年の中の重複2 年をまたぐ反復第5 抽出率と選択効果は別の問題である1 標本調査の不均等な抽出2 税務調査の選定3 1件当たり金額の分母第6 弁護士・税理士が引用する際の確認手順1 資料名と表番号を固定する2 母集団と除外対象を書く3 集計単位と重複可能性を書く4 推計値と実数を分ける5 選択後の割合を母集団に外挿しない6 個別事件への当てはめは別に行う第7 関連する当ブログの記事第8 国税庁の一次資料
第1 はじめに

国税庁が公表する統計には、申告・課税などの行政記録を集計したもの、標本を抽出して全体を推計したもの、税務調査等の実績を集計したものがある。いずれも有用であるが、同じ「件数」「割合」「1件当たり」といった表現でも、母集団、集計単位、抽出方法及び分母が異なる。

特に、民間給与実態統計調査、会社標本調査及び申告所得税標本調査は、名称に「標本調査」を含む一方、税務調査事績は、調査対象として選定された納税者等に対する実地調査又は簡易な接触の結果である。後者を納税者全体の無作為標本とみなすことはできない。

本記事では、国税庁の一次資料に基づき、これらの統計について、①誰又は何が母集団であるか、②1行又は1件が何を表すか、③同じ人・会社が複数回現れ得るか、④選択の仕組みが数値の意味にどう影響するかを整理する。個別の統計表を引用する前に、その数値が答えられる問いと答えられない問いを切り分けることが目的である。

第2 最初に区別すべき4つの公表物
1 行政記録の全数集計

国税庁の「統計情報」には、徴税、申告所得税、源泉所得税、法人税、相続税、消費税等の申告・課税事績を集計した統計年報などがある。これらは、対象となる行政記録を集計したものであり、標本から母集団を推計する標本調査とは性質が異なる。

ただし、全数集計であっても、「日本にいるすべての人」又は「すべての事業者」を意味するとは限らない。申告書、課税、源泉徴収義務者など、各表が対象とする行政記録の範囲が、そのまま母集団の範囲になる。

2 3つの標本調査

民間給与実態統計調査は、民間事業所の給与所得者を対象として、給与階級別分布等を明らかにする調査である。会社標本調査は、国内の普通法人のうち所定の範囲を対象として、資本金階級別・業種別の実態等を明らかにする調査である。申告所得税標本調査は、申告所得税の納税者を対象として、所得者別・所得種類別の構成等を明らかにする調査である。

いずれも層化等により標本を抽出するが、抽出率は一律ではない。規模の大きい層を全数抽出とし、それ以外の層について異なる抽出率を用いることがある。そのため、単純な標本件数と推計された全体件数を混同してはならない。

3 税務調査等の事績

法人税等又は所得税・消費税の調査事績は、実地調査や簡易な接触を実施した件数、そのうち申告漏れ等が把握された件数、追徴税額等を集計したものである。調査対象は、申告内容、資料情報、過去の調査状況などを踏まえ、調査必要度を考慮して選定される。

したがって、「実地調査1件当たりの申告漏れ所得金額」や「調査した件数のうち非違があった割合」は、選定された案件に条件付けられた数値である。これを納税者全体の申告漏れ率又は平均申告漏れ額と読み替えることはできない。

4 調査年・事業年度・事務年度

公表資料の期間も統一されていない。民間給与実態統計調査は暦年の給与、会社標本調査は一定期間内に終了した事業年度、税務調査事績は原則として7月から翌年6月までの事務年度を基礎とする。異なる資料を比較するときは、表題の「令和6年分」「令和6年度」「令和6事務年度」が同じ期間を意味しないことに注意を要する。

第3 3つの標本調査の母集団と集計単位
調査主な母集団主な集計単位範囲を読む際の注意民間給与実態統計調査年末現在の民間事業所の給与所得者給与所得者官公庁職員、日雇労働者その他の所定の者を含まない。複数の勤務先から給与を得た人は複数人として集計され得る。会社標本調査活動中の国内普通法人のうち所定の範囲事業年度同一法人に対象期間中に終了する事業年度が複数あれば、それぞれ対象になり得る。申告所得税標本調査申告所得税の納税者納税者集計対象は、所定の時点までに申告し、申告納税額がある者であり、還付申告者や申告納税額のない者を含まない。
1 民間給与実態統計調査

民間給与実態統計調査の給与所得者は、原則として調査年の12月31日現在で民間事業所に勤務する給与所得者であり、所得税の納税の有無を問わない。一方、官公庁等の職員、日々雇い入れられる者、給与所得者の全員について所得税を源泉徴収する必要のない事業所の従事者等は対象外である。

標本は、事業所を抽出し、その事業所に所属する給与所得者を調べる二段抽出である。年間給与額が2000万円を超える者等について全数を調査する層が設けられ、その他の標本については抽出率及び回答率に応じた推計が行われる。

同一人が年中に複数の事業所に勤務し、それぞれから給与の支払を受けた場合、各事業所の給与所得者として複数人に数えられ得る。このため、同調査の「給与所得者数」や平均給与を、直ちに個人単位の就業者数又は一人の年間総収入と同一視することはできない。

2 会社標本調査

会社標本調査は、会社企業を資本金階級等により層化して抽出する。大規模法人や連結・グループ通算に関係する法人等には全数抽出となる層があり、その他の層には抽出率に応じた標本調査が用いられる。集計値は、標本法人の数値に標本抽出率の逆数に相当する係数を乗じるなどして推計される。

集計単位は、法人そのものではなく、対象期間内に終了した事業年度を基本とする。同一法人に対象期間中に終了した事業年度が2つ以上ある場合には、それぞれが調査対象となり得る。この性質を踏まえずに「法人数」と読み替えると、集計対象を誤るおそれがある。

また、利益計上法人と欠損法人の所得金額等は事業年度ごとに区分される一方、法人数の区分には、対象期間中に利益計上事業年度が1つでもあるかという別の取扱いがある。表の注記を確認し、金額の分類基準と会社数の分類基準を分けて読む必要がある。

3 申告所得税標本調査

申告所得税標本調査の対象は、個人の所得税の確定申告をしたすべての人ではない。所定の集計時点までに申告した者のうち、申告納税額がある者を母集団とするため、還付申告者及び申告納税額のない者は含まれない。

所得者の種類や所得階級等に応じて標本を抽出し、抽出率に応じて母集団を推計する。高額所得の層などで全数抽出が行われる場合がある。したがって、標本数の大小だけから、その層の母集団に占める割合又は推計精度を判断することはできない。

(続きを読む...)国税庁の税務統計の読み方―民間給与・会社・申告所得税の標本調査と税務調査事績(AI作成)

更正の請求に返事がないとき―未処理,理由がない旨の通知,裁決の遅延を分ける(AI作成)

目次

第1 最初に,どの段階で止まっているかを確認する第2 提出した更正の請求が確認できるか1 更正の請求と,職権更正を求める相談を分ける2 提出内容と到達の証拠を対応させる第3 税務署長の応答と行政手続法の適用関係1 国税通則法23条4項を出発点とする2 行政手続法7条をそのまま根拠としない第4 処分がない場合の不作為に対する救済1 不作為についての審査請求は,国税庁長官への手続である2 裁判所に求める結果も区別する第5 理由がない旨の通知を受けた場合第6 再調査の決定・審査請求の裁決が遅れている場合1 最初の更正請求の放置とは,適用規定が異なる2 裁決を待たずに原処分の取消訴訟を提起する場合第7 税理士と弁護士の引継ぎ及び納付資金第8 関連記事及び出典
第1 最初に,どの段階で止まっているかを確認する

更正の請求を提出したのに返事がない場合と,更正をすべき理由がない旨の通知を受けた場合,さらにその通知を争う審査請求の裁決を待っている場合では,根拠条文,提出先及び争う対象が異なる。
更正の請求と審査請求を混同し,「3か月待てば認められる」「すべて国税不服審判所へ申し立てればよい」と説明することはできない。

本記事は,令和8年10月9日に確認した現行法と国税庁等の公的資料に基づき,国税の更正の請求について整理する。地方税,税額計算の個別論点及び更正の請求期間の全例外は扱わない。

現在の状態中心となる規定・手続更正の請求にまだ処分がない国税通則法23条4項。不作為についての審査請求は行政不服審査法による。更正をすべき理由がない旨の通知を受けた通知処分を対象とする再調査の請求又は審査請求,その後の取消訴訟を検討する。再調査の請求の決定又は審査請求の裁決がない不服申立て手続内の不作為の除外と,国税通則法75条4項・115条の別の仕組みを確認する。
第2 提出した更正の請求が確認できるか
1 更正の請求と,職権更正を求める相談を分ける

国税通則法23条は,税額等の計算に誤りがある場合等の更正の請求を定める。請求の要件・期間,請求書に記載する事項及び提出先を確認する必要がある。
一般には法定申告期限から5年以内という規定があるが,個別税法の特則,後発的理由による請求及び対象年分を確認せずに期限を断定してはならない。

税務署への問い合わせ,還付を求めるメール又は職権による是正の要望が,すべて法令に基づく更正の請求に当たるわけではない。何を,誰が,どの税目・期間について,どの根拠で提出したかを確定する。

2 提出内容と到達の証拠を対応させる

請求書と添付資料の提出版,対象となる申告書,更正前後の計算,請求理由を裏付ける証憑,提出先及び日付を保存する。電子提出ではe-Taxの受信通知と提出データを対応させ,添付資料を別送した場合はその到達も確認する。
電話で催促した記録だけでは,請求の内容と到達の双方を示せない場合がある。

返送された場合には,形式上の不足の指摘なのか,請求を拒否する通知なのか,別の手続の案内なのかを確認する。受け取った文書,封筒,提出版及びその後の補足資料を残し,元の請求を取り下げた事実の有無も確認する。

第3 税務署長の応答と行政手続法の適用関係
1 国税通則法23条4項を出発点とする

同項は,更正の請求があった場合,税務署長が請求に係る課税標準等又は税額等について調査し,更正をするか,更正をすべき理由がない旨を請求者に通知することを定める。
請求書を受け取ったという事実と,請求どおりの税額に変更する義務があることは別である。求める更正を裏付ける事実・税法上の根拠・計算を示す必要がある。

2 行政手続法7条をそのまま根拠としない

国税通則法74条の14第1項は,通常の国税処分について行政手続法第2章・第3章の多くを適用除外とし,8条及び14条の理由提示を除外対象から外している。酒税法第2章の免許関係には別の取扱いがある。
更正の請求を,一般の許認可申請と同じ理由で行政手続法7条の審査開始義務や6条の標準処理期間に直接結び付けてはならない。

第1項の除外と,行政指導についての同条2項の除外は範囲が異なる。税務署からの追加資料の依頼や取下げに関する働きかけは,その法的性質と適用規定を確認する必要がある。

第4 処分がない場合の不作為に対する救済
1 不作為についての審査請求は,国税庁長官への手続である

行政不服審査法3条は,法令に基づく申請から相当期間が経過したのに処分がない場合,申請者による不作為についての審査請求を認める。更正の請求も,このような申請に含まれる。
税務署長等の不作為については,同法4条に基づく提出先を確認する。国税庁の手続案内H5-3は,税務署長,国税局長又は国税庁長官の不作為について,国税庁長官に提出する手続を示している。

これは,既にされた国税処分を国税不服審判所長への審査請求で争う手続とは異なる。審査請求書(不作為用)の書き方も,更正の請求を記載例に挙げ,申請の内容,趣旨・理由及び添付資料の記載を案内している。

相当期間が経過したかは,請求内容,調査の必要性,資料の提出・補足,税務署の説明及び実際の処理経過を踏まえて検討する。請求から一律3か月が法定の回答期限になるわけではない。
行政不服審査法49条による不作為の違法・不当の宣言と一定の処分を命じる仕組みも,請求どおりの更正が自動的に認められる制度ではない。

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出向者給与負担金の税務―消費税・法人税・退職金負担金の確認事項(AI作成)

目次第1 契約の実態を確定してから税務処理を決める第2 消費税の取扱い1 出向者給与負担金には消費税の課税関係が生じない2 人材派遣の対価は課税対象である第3 法人税上の給与負担金1 出向先の使用人として勤務する場合2 出向先で役員となる場合3 実際の給与を超える負担金に注意する第4 退職金負担金の取扱い1 負担金を支出する三つの時期2 定年退職後も出向先で勤務を続ける場合3 合理的な計算根拠を残す第5 契約書・請求書・会計資料の確認事項第6 関連記事第7 出典・参考資料
第1 契約の実態を確定してから税務処理を決める

出向者給与負担金の税務は,請求書の名称だけで決めることができない。
最初に,出向元との雇用関係を維持しながら出向先でも雇用関係に基づいて勤務する在籍出向なのか,人材派遣会社による役務提供なのか,出向先による直接雇用なのかを区別する必要がある。

国税庁のタックスアンサーは,出向を,出向者が出向元との雇用関係を維持しながら,出向先との間でも雇用関係に基づいて勤務する形態としている。
これに対し,人材派遣では,派遣された使用人の雇用関係は派遣元との間にだけ存在し,派遣先は派遣元から役務の提供を受ける。

したがって,定年後に出向先が本人を直接雇用し,出向元との雇用関係が終了する場合は,定年前と同じ職場で働いても,定年後の金銭負担を当然に「出向者給与負担金」と処理することはできない。
再雇用後も出向元が雇用主として賃金を支払い,在籍出向を継続するのかを,労働契約と出向契約の双方から確認する必要がある。

第2 消費税の取扱い
1 出向者給与負担金には消費税の課税関係が生じない

国税庁のタックスアンサーNo.6475は,在籍出向について,①出向元が給与全額を支払い,全部又は一部を出向先へ請求する方法,②出向先が給与全額を支払い,全部又は一部を出向元へ請求する方法,③出向元と出向先が給与の一部ずつを支払う方法のいずれでも,出向者に対して給与を支給したものとして取り扱い,給与負担金には消費税の課税関係が生じないとしている。

これは,出向先が出向元から課税役務を購入するのではなく,出向先との雇用関係に基づく給与を負担するという整理による。
請求書に「出向料」「業務委託料」等の名称を付けただけで実態は変わらないため,契約書,指揮命令,給与計算及び負担額の算定根拠を一致させる必要がある。

2 人材派遣の対価は課税対象である

人材派遣は,派遣元が派遣先へ役務を提供する取引であるため,派遣元が受け取る派遣料金は課税売上げとなり,派遣先では原則として課税仕入れとなる。
出向と派遣では消費税の結論が逆になるため,名目だけを出向にするのではなく,雇用関係と事業の実態に基づいて区別する必要がある。

第3 法人税上の給与負担金
1 出向先の使用人として勤務する場合

国税庁のタックスアンサーNo.5245は,出向元が出向者へ給与を支給し,出向先が退職給与を除く給与相当額を給与負担金として出向元へ支出した場合,その負担金を出向先における出向者への給与として取り扱うとしている。
出向者が出向先において使用人である場合は,その給与負担金は,原則として出向先の使用人給与として損金の額に算入される。

給与負担金の月額,賞与の取扱い,社会保険料の事業主負担分,通勤費その他の付随費用をどこまで含めるかは,出向契約で明確にする。
出向元が実際に負担した給与等と出向先の負担額を照合できる明細を保存し,毎月の請求額が契約上の算式と一致するようにする必要がある。

2 出向先で役員となる場合

出向者が出向先で役員となる場合は,給与負担金にも法人税法34条の役員給与に関する規制が及ぶ。
国税庁は,①給与負担金の額について,出向先の株主総会,社員総会又はこれらに準ずるものの決議があること,②出向契約等で出向期間及び給与負担金の額があらかじめ定められていることを示している。

出向元での肩書が使用人であっても,出向先で取締役等に就任する場合は,使用人給与と同じ処理を機械的に続けるべきではない。
出向先の機関決定,出向契約の定め,定期同額給与又は事前確定届出給与等の該当性を個別に確認する必要がある。

3 実際の給与を超える負担金に注意する

出向先が支出した給与負担金が,出向元が出向者に支給する給与額を超える場合,超過部分は給与負担金としての性格を当然には有しない。
国税庁は,超過に合理的な理由がなく,適正な金額の範囲内でない場合は,出向元に対する寄附金として取り扱うとしている。

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破産手続開始後の相続放棄と破産法238条――相続不動産の売却・登記・税務(AI作成)

目次

第1 問題と結論1 本記事が扱う時系列2 結論の要旨第2 破産法238条の効力1 破産財団に対する相対的な限定承認効2 破産管財人が放棄の効力を認める場合3 破産財団は相続財産法人ではない第3 破産管財人による分別管理と売却1 破産法242条による分別管理2 不動産の任意売却と裁判所の許可3 後順位相続人の放棄第4 相続不動産の登記1 登記で現れる二つの法律関係2 事前照会のための二つの候補案3 法務局に示す資料4 類似例は同一事案ではない第5 税務及び会計の確認1 破産財団を別の納税主体としない2 個人の譲渡所得と強制換価手続の非課税3 破産法上の限定承認効と所得税法59条4 消費税と取得費・譲渡費用第6 実務チェックリスト第7 資料の裏付けと限界1 一次資料で確認した事項2 一次資料の裏付けが得られていない事項出典・参考資料
第1 問題と結論

1 本記事が扱う時系列

本記事は,被相続人の死亡,相続人の破産手続開始決定,その相続人による相続放棄の順にできごとが生じた場合を扱う。
具体的には,破産手続開始決定前に相続が始まり,決定後に破産者が家庭裁判所で相続放棄をした場合である。

この時系列では,民法上の相続放棄の効力だけで結論を出すことができない。
破産法238条が相続放棄の効力を破産財団との関係で修正し,同法242条が破産管財人に相続財産の分別管理及び処分を求めているからである。

2 結論の要旨

第1に,破産手続開始決定後の相続放棄は,破産財団に対しては限定承認の効力を有するにとどまる。
そのため,破産管財人が放棄の効力を認める手続をとらない限り,相続財産の換価価値を破産手続の外へ出すことはできない。

第2に,この効果は破産財団との関係に限られる。
破産財団が民法951条の相続財産法人になるわけではなく,破産管財人が当然に相続財産清算人の地位を取得するわけでもない。

第3に,相続不動産の任意売却には破産法78条2項1号の裁判所の許可が必要であり,売却後の登記は事案ごとに管轄法務局と事前協議すべきである。
公刊資料の範囲では,この時系列と完全に一致する登記先例を確認できなかったため,本記事の登記申請の構成は確定的な先例ではなく,事前照会のための候補案として示す。

第2 破産法238条の効力

1 破産財団に対する相対的な限定承認効

破産法238条1項は,破産手続開始決定前に破産者のために相続が始まり,破産者が開始決定後に単純承認又は相続放棄をした場合,それぞれ破産財団に対しては限定承認の効力を有するとする。
相続財産が債務超過であるときの単純承認と,資産超過であるときの相続放棄のどちらによっても,破産債権者の配当原資が害されないようにする趣旨である。

ここで重要なのは,条文が「破産財団に対しては」と限定していることである。
民法939条による相続放棄の一般的効果を全面的に否定するのではなく,破産手続の配当原資との関係でのみ,限定承認と同様に扱うものである。

2 破産管財人が放棄の効力を認める場合

破産法238条2項は,破産管財人が相続放棄の効力を認めることを許している。
この場合,破産管財人は,相続放棄があったことを知った時から3か月以内に,その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

したがって,当該相続財産を換価する前に,破産管財人が同項の申述をしたか,その申述が受理されたか,受理の審判が確定したかを確認する必要がある。
この点は,破産者本人の相続放棄申述受理証明書だけでは判断できない。

3 破産財団は相続財産法人ではない

国税庁が公開する名古屋高裁金沢支部平成20年6月16日判決(平成19年(行コ)第17号)は,破産法238条1項は破産手続との関係で限定承認と同様の効力を付与するものにすぎず,破産財団を法人とするものではないと判示した。
破産者は財産の帰属主体たる地位を失わず,破産管財人は管理処分権を専属的に行使するという区別である。

他方,民法951条は,相続人のあることが明らかでないときに相続財産が法人となることを定めている。
これは破産法238条とは根拠も要件も異なる制度であり,両者を同一視してはならない。

第3 破産管財人による分別管理と売却

1 破産法242条による分別管理

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株式交換の反対株主に支払われる株式買取代金の税務―みなし配当,譲渡所得及び収入時期(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論第2 最初に会社法上の当事者を確定する1 完全子会社の反対株主2 完全親会社の反対株主とは区別する第3 通常の株式交換に関する課税繰延べとの関係1 完全親法人等の株式を受け取る場合2 反対株主への買取代金は全体判定から除かれる第4 買取代金を二つの所得に分ける1 みなし配当となる部分2 株式等の譲渡所得等となる部分3 例示第5 収入すべき時期1 原則は株式交換の効力発生日2 協議成立日又は裁判所の決定日第6 上場株式であった場合の注意第7 弁護士・司法書士・税理士の実務分担1 弁護士実務2 司法書士実務3 税理士実務第8 証拠・資料のチェックリスト第9 一次資料と資料の限界
第1 この記事の対象と結論

この記事は,株式交換完全子会社の個人株主が会社法785条に基づく株式買取請求をし,発行法人である完全子会社から金銭の支払を受ける場合の所得税上の取扱いを扱う。

通常の株式交換で完全親法人等の株式だけを受け取る株主には,一定の要件の下で所得税法57条の4による課税繰延べがある。他方,反対株主が買取請求によって発行法人へ自己の株式を買い取らせ,金銭を受け取る場合は,交付金銭の全額を単純な株式売却代金として処理するのではなく,みなし配当となる部分と株式等の譲渡所得等の収入金額となる部分に分ける必要がある。

収入時期は原則として株式交換の効力発生日であるが,国税局の文書回答は,価格が後日の協議で決まった場合は協議成立日,裁判所の決定で決まった場合は決定日を収入時期として差し支えないとしている。ただし,この文書回答は平成23年の個別照会に対するものであり,当時の税率や制度説明を現在の申告へそのまま使うことはできない。

第2 最初に会社法上の当事者を確定する
1 完全子会社の反対株主

会社法785条の株式買取請求では,株式交換完全子会社の反対株主が,自己の株式を発行法人である完全子会社に買い取らせる。買取りの効力は株式交換の効力発生日に生じる(会社法786条5項)。

この場面では発行法人が自己株式を取得するため,所得税法25条1項のみなし配当と株式等の譲渡所得等の区分が問題となる。

2 完全親会社の反対株主とは区別する

会社法797条は,株式交換完全親会社の反対株主の買取請求を定める。最高裁令和8年9月30日決定はこの完全親会社側の価格決定を扱ったものである。

完全親会社側と完全子会社側では,誰が誰の株式を取得するかという法的構造が異なる。大阪国税局の平成23年文書回答は完全子会社側の会社法785条の事例であり,最高裁令和8年決定の当事者へ結論をそのまま移すことはできない。

第3 通常の株式交換に関する課税繰延べとの関係
1 完全親法人等の株式を受け取る場合

国税庁タックスアンサーNo.1526によれば,居住者が旧株を株式交換完全親法人へ譲渡し,完全親法人又はこれと完全支配関係にある法人の株式だけを受け取る一定の株式交換では,その旧株の譲渡がなかったものとみなされる。課税を永久に免除するのではなく,受け取った株式へ旧株の取得価額を引き継ぐ課税繰延べである。

2 反対株主への買取代金は全体判定から除かれる

同タックスアンサーは,株式交換の際に株式以外の資産が交付されないという要件を説明するに当たり,反対株主の買取請求に基づいて支払われる金銭等を除外している。したがって,一部の反対株主へ買取代金を支払ったことだけで,他の株主に係る株式交換全体が直ちに課税繰延べの対象外となるわけではない。

しかし,この除外は,買取請求をした反対株主本人が受け取る金銭まで非課税又は繰延べになるという意味ではない。組織再編全体の要件判定と,金銭を受け取る個々の反対株主の課税を分けて考える必要がある。

第4 買取代金を二つの所得に分ける
1 みなし配当となる部分

発行法人が自己株式を取得し,株主へ金銭を交付した場合,交付金銭のうち,その株式に対応する資本金等の額を超える部分は,所得税法25条1項により配当等とみなされ得る。

大阪国税局の文書回答は,株式交換に反対する個人株主から完全子会社が自己株式を買い取る場合について,株式に対応する連結個別資本金等の額を超える部分を配当等とみなし,それ以外の部分を株式等の譲渡所得等の収入金額とする見解を示した。現行法では用語や参照条文の改正を確認した上で,対象株式に対応する資本金等の額を計算する必要がある。

2 株式等の譲渡所得等となる部分

交付金銭からみなし配当部分を除いた残額が,株式等の譲渡所得等の収入金額となる。譲渡所得等の金額は,この収入金額から取得費及び譲渡費用を控除して計算する。

したがって,裁判所が定めた買取価格と取得費との差額を全て譲渡益とする計算は適切でない場合がある。まずみなし配当部分を切り分け,残部について取得費を対応させる順序で検討する。

3 例示

例えば,買取代金が1000万円で,対象株式に対応する資本金等の額が200万円であると仮定すると,800万円がみなし配当部分となり,残る200万円が株式等の譲渡所得等の収入金額となる。さらに旧株の取得費を譲渡所得等の計算で控除する。

これは構造を示す単純な例である。実際には,資本金等の額の計算,株式数,取得費,口座区分,非居住者該当性,源泉徴収,住民税及び法人株主の場合の取扱いを個別に確認する必要がある。

第5 収入すべき時期
1 原則は株式交換の効力発生日

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領収書がない支出の税務と証拠保存―必要経費・損金,インボイス,カード明細及び出金伝票(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論第2 所得税の必要経費と法人税の損金1 個人事業者の必要経費2 法人の損金3 証拠の強さを組合せで考える第3 消費税の仕入税額控除1 所得税・法人税と消費税は別に判定する2 カード利用明細書は通常それだけでインボイスにならない3 宛名がない領収書でも直ちに無効とは限らない第4 電子取引データはデータのまま保存する1 紙への印刷だけで終わらせない2 電子メール・ウェブサイト・アプリ第5 領収書がないときの具体的な対応1 まず再発行又は再取得を試みる2 外部資料を先に保全する3 同時作成の支出記録を残す4 帳簿と申告まで照合する第6 弁護士・司法書士・税理士事務所の注意点1 弁護士事務所2 司法書士事務所3 税理士事務所第7 税務調査での説明と提出第8 関連記事第9 出典・資料の位置付け1 法令2 国税庁の公表資料
第1 この記事の対象と結論

領収書を紛失した場合,自動販売機等で領収書が発行されない場合又はウェブサイトから領収書データを取得する場合は,次の四つを分けて確認する必要がある。

①所得税の必要経費又は法人税の損金に当たる支出か
②消費税の仕入税額控除に必要な帳簿及び請求書等があるか
③電子取引の取引情報をデータのまま保存しているか
④税務調査で,支出の相手方,日付,金額,内容及び業務との関係を説明できるか

領収書がないという一事だけで①の結論が決まるわけではない。しかし,カード明細又は自社作成の出金伝票があれば,②から④までの要件を当然に満たすわけでもない。領収書の再取得を試み,外部資料と同時作成の記録を組み合わせ,帳簿との対応を残すことが基本となる。

第2 所得税の必要経費と法人税の損金
1 個人事業者の必要経費

所得税法37条1項は,事業所得等の必要経費について,総収入金額に係る売上原価,その収入を得るために直接要した費用及びその年に生じた販売費・一般管理費その他業務上の費用を基本としている。

したがって,領収書という一種類の書面の有無だけでなく,実際に支出したか,業務に必要な支出か,家事上の支出が混在していないか,どの年分の費用かを確認する必要がある。国税庁「やさしい必要経費の知識」も,必要経費の範囲と債務確定の時期を分けて説明している。

2 法人の損金

法人税法22条3項は,別段の定めがあるものを除き,売上原価等,販売費・一般管理費その他の費用及び資本等取引以外の損失を損金の額に算入するものとしている。

販売費・一般管理費等は,原則として,事業年度終了の日までに債務が成立し,具体的な給付原因が生じ,金額を合理的に算定できることを確認する必要がある(国税庁「販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定」)。領収書を後から作ることでは,取引の実在又は債務確定の時期を証明したことにはならない。

3 証拠の強さを組合せで考える

領収書がない場合は,契約書,注文履歴,請求書,納品・利用記録,銀行振込記録,カード又は決済アプリの利用明細,電子メール,交通系ICカードの履歴,参加者・訪問先・移動経路の記録等を組み合わせる。

支払の記録だけでは,何を購入したか,業務に使ったか又は家事上の支出ではないかまで分からない場合がある。反対に,契約書又は注文記録だけでは,実際の支払を確認できない場合がある。支出の発生,内容,金額,支払及び業務との関係を,それぞれどの資料で確認するかを整理する必要がある。

第3 消費税の仕入税額控除
1 所得税・法人税と消費税は別に判定する

消費税法30条7項から9項までは,仕入税額控除について,原則として帳簿及び適格請求書等の保存を求め,帳簿のみでよい取引その他の例外も定めている。国税庁「仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項」も,帳簿と請求書等の各記載事項を説明している。

所得税の必要経費又は法人税の損金として認められる可能性があることと,消費税の仕入税額控除を受けられることは,同じ判断ではない。一般課税の事業者は,支出の事実だけでなく,保存する書類又は電磁的記録が適格請求書等に当たるか,帳簿のみの保存でよい例外に当たるかを確認する必要がある。

2 カード利用明細書は通常それだけでインボイスにならない

国税庁のインボイス制度Q&A問103は,クレジットカード会社が交付する利用明細書は,実際に資産又は役務を提供した事業者が作成した書類ではなく,取引内容や適用税率等の記載事項も通常満たさないため,一般的に適格請求書には当たらないと説明している。

カード利用明細書は支払先,利用日及び金額を確認する重要な資料であるが,販売店等が発行する領収書,請求書又は利用証明書等の取得・保存を別に確認する必要がある。

3 宛名がない領収書でも直ちに無効とは限らない

小売業,飲食店業,タクシー業等の一定の事業者は,適格請求書に代えて適格簡易請求書を交付できる。適格簡易請求書では,交付を受ける事業者の氏名又は名称を記載する必要がない(国税庁「インボイス制度について」)。

したがって,「上様」又は宛名のない領収書を一律に無効と判断するのではなく,発行者,登録番号,取引年月日,取引内容,税率ごとの対価及び税率又は消費税額等の必要事項を確認する必要がある。

第4 電子取引データはデータのまま保存する
1 紙への印刷だけで終わらせない

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YouTuber・配信者の著作権・広告収益に相続税はかかるか―財産評価基本通達148と営業権(AI作成)

目次

第1 結論―チャンネルを一つの財産として評価しない1 権利・収益・アカウントを分ける2 最初に作る五つの一覧第2 動画の著作権と著作者人格権1 アップロードした人が全権利者とは限らない2 著作権は承継できるが著作者人格権は承継しない3 共同相続後の管理を決める第3 Google・YouTube・AdSenseの手続1 法的な承継とログイン権限は同じではない2 ブランドアカウントとチャンネル権限を区別する3 未払AdSense収益の受領手続第4 未払収益と死亡後の収益を分ける1 死亡時までに発生した未払収益2 死亡後に生じる収益第5 著作権の相続税評価―財産評価基本通達1481 著作権は相続税の課税対象となり得る2 通達148の算式3 固定倍率を使い回さない第6 営業権の評価と個人の才能への依存1 個人事業の営業権2 死亡とともに消滅する営業権は評価しない第7 法人運営と非上場株式1 権利者と契約名義を確認する2 二重計上を防ぐ第8 弁護士・税理士が集める資料1 初動で保存する資料2 共同作業の分担第9 裁判例・資料の確認状況1 直接の公表裁判例を前提にしない第10 出典・参考資料1 法令・国税庁資料2 Google・YouTube公式資料3 二次資料
第1 結論―チャンネルを一つの財産として評価しない
1 権利・収益・アカウントを分ける

YouTuber,動画配信者又はインフルエンサーが死亡した場合,「YouTubeチャンネルを相続できるか」だけを検討しても,民事,税務及びプラットフォーム上の手続を整理できない。
少なくとも,①動画等の著作権,②死亡時までに発生した未払収益,③死亡後に著作権又は事業から生ずる収益,④Google・YouTube・ブランドアカウント及びAdSenseの管理権限,⑤法人が事業主体である場合の株式に分ける必要がある。

国税庁は,著作権を含む金銭に見積もることができる経済的価値のある財産が相続税の課税対象になると説明している。
しかし,アカウント名や登録者数そのものを直ちに一つの相続財産として評価するのではなく,死亡時に誰がどの権利を有し,どの将来収益がその権利に帰属するかを確定する必要がある。

2 最初に作る五つの一覧

実務では,次の五つを別々の一覧にすると整理しやすい。
①動画,台本,写真,楽曲,サムネイル,ロゴ等の権利一覧
②AdSense,メンバーシップ,Super Chat,スポンサー料,物販代金等の未払額一覧
③Googleアカウント,ブランドアカウント,YouTube Studio及びAdSenseの権限一覧
④制作費,外注費,出演料,音源利用料,返金その他の債務一覧
⑤個人事業か法人事業か,法人の場合は株主,役員,契約名義及び知的財産の帰属を示す一覧

第2 動画の著作権と著作者人格権
1 アップロードした人が全権利者とは限らない

動画には,映像,台本,写真,音楽,イラスト,ロゴ,出演者の実演その他の複数の素材が含まれ得る。
チャンネルの開設者又は動画の投稿者が,これらすべての著作権者であるとは限らない。

撮影・編集された動画は,映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され,物に固定されていれば,映画の著作物に当たり得る(著作権法2条3項)。
映画の著作物の著作者は,制作,監督,演出,撮影,美術等を担当してその全体的形成に創作的に寄与した者であり(同法16条),撮影や編集を外注した場合は,外注先の撮影者・編集者が著作者となることがある。
もっとも,著作者が映画製作者(映画の著作物の製作に発意と責任を有する者。同法2条1項10号)に対し製作への参加を約束しているときは,その映画の著作物の著作権は映画製作者に帰属する(同法29条1項)。
この場合も著作者人格権は著作者に残るので(同法59条),外注契約の内容から,著作権が投稿者側と外注先のどちらにあるかを確認する。
相続税の課税対象となる著作権の範囲は,この帰属によって決まる。

雇用又は法人名義の制作,外注,著作権譲渡,利用許諾,共同制作及び第三者素材の利用がある場合は,契約書,発注書,請求書,制作データ及び公開時の表示から権利の帰属と利用範囲を確認する。
相続の対象を決める前提として,被相続人が有していた権利だけを特定する必要がある。

2 著作権は承継できるが著作者人格権は承継しない

著作権法61条は著作権の譲渡を予定しており,民法896条による包括承継の対象にもなり得る。
これに対し,著作者人格権は著作者の一身に専属し,譲渡することができないため,相続されない(著作権法59条)。

もっとも,著作者の死後も,著作者が生存していれば著作者人格権の侵害となるべき行為を原則としてしてはならない(著作権法60条)。
相続人が著作権を取得したからといって,故人の氏名表示を変え,内容を自由に改変し,又は第三者の権利を無視して再公開できるわけではない。

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利益はあるのに現金がない会社―内部留保・課税所得・資金繰りを弁護士と税理士が一緒に読む(AI作成)

目次

第1 利益,内部留保,課税所得及び現金を分ける1 四つの数字の役割2 内部留保は現金の別口座ではない第2 黒字でも現金が減る四つの場面1 売上げを計上しても代金が未回収である2 設備代金の支払と減価償却費は一致しない3 借入元本を返済する4 納税と費用計上の時期が異なる第3 会計利益から課税所得への調整を読む1 支出した額がすべて損金になるわけではない2 利益剰余金の増加だけで所得を計算しない第4 弁護士と税理士が共有する確認資料1 同じ基準日と対象法人で資料をそろえる2 資金繰りを日付で検証する3 法的評価と税務処理を対応させる第5 個別の法律問題へつなげる1 資金不足と破産法上の支払不能は同じではない2 債務者の資金不足だけで貸倒損失としない3 会社の財産を役員個人の現金と扱わない第6 出典・参考資料
第1 利益,内部留保,課税所得及び現金を分ける

会社が黒字であることと,期限までに支払えることは別である。
決算書に利益剰余金が多く計上されていても,その額と同額の現金が銀行口座にあるとは限らない。
反対に,借入れによって預金が増えても,それだけで会社の利益が増えたことにはならない。

本記事は,法人の決算書,法人税申告書及び資金繰りを結び付け,債権回収,支払猶予,事業再建又は役員との取引を検討するときの読み方を整理するものである。
基準日は令和8年10月8日である。
以下の数値例は,違いを説明するための仮定であり,実際の会社の決算又は特定の裁判例を再現したものではない。

1 四つの数字の役割
数字意味主に確認する資料当期の会計利益一定期間の収益から費用を控除した成果損益計算書,月次試算表,売上・費用の元帳利益剰余金過去の利益のうち配当等で社外へ流出せず蓄積された残高貸借対照表の純資産の部,株主資本等変動計算書法人税の課税所得税法上の益金から損金を控除して計算する金額法人税申告書の別表四・別表五(一),調整明細使用できる現預金支払に充てられる資金。使用制限と必要支出も確認する預金明細,資金繰り表,借入返済表,支払予定表

税引前利益と税引後の当期純利益も区別する必要がある。
利益剰余金は一時点の残高であり,当期利益は一定期間の成果であるから,両者をそのまま比較してはいけない。

2 内部留保は現金の別口座ではない

財務省の利益剰余金の解説は,当期純利益から配当金等を控除した額が蓄積されたものを利益剰余金として説明している。
また,その対応する資産は現金・預金に限られず,有形・無形固定資産など様々な形で再投資されるとしている。

したがって,「内部留保が1000万円ある」という説明から,「自由に引き出せる現金が1000万円ある」とは推定できない。
利益剰余金の額を,現預金,売掛金,在庫,設備,不動産及び負債の残高と併せて読む必要がある。
法人税申告書の利益積立金額も税法上の計算に用いるものであり,会社の預金残高を表示する欄ではない。

第2 黒字でも現金が減る四つの場面
1 売上げを計上しても代金が未回収である

売上げ1000万円を計上し,関連する費用700万円を支払ったが,売上代金はまだ回収していない場合を考える。
他の損益を無視すれば,利益は300万円である一方,この取引による現金の動きは700万円の支出となる。
入金前に給与,仕入代金又は税金の支払期限が来れば,黒字であっても資金不足となり得る。

売掛金については,請求書に書かれた入金予定だけでなく,取引先の承認,検収,支払条件,紛争又は相殺の有無,過去の回収状況を確認する。
回収予定を確実な入金と仮定した資金繰り表だけでは,支払能力の評価を誤ることがある。

2 設備代金の支払と減価償却費は一致しない

設備を1000万円で購入し,全額を支払った場合でも,その1000万円が購入年度の費用又は損金になるとは限らない。
仮に当期の減価償却費が200万円であるなら,設備購入の現金支出1000万円と当期費用200万円には800万円の差がある。
この200万円は説明のための仮定であり,個別資産の償却限度額を示すものではない。

法人税法31条1項は,減価償却費の損金算入について,損金経理額のうち償却限度額に達するまでの金額とする仕組みを定めている。

(続きを読む...)利益はあるのに現金がない会社―内部留保・課税所得・資金繰りを弁護士と税理士が一緒に読む(AI作成)

生成AIの税務回答を申告に使う前の検証手順―事実,適用年度,条文・通達,計算及び税理士の判断記録(AI作成)

目次

第1 下書きから申告までに検証工程を置く第2 事実認定とAIの候補を分ける1 資料の元の値へ戻る2 入金又は異常値だけで課税区分を決めない第3 適用年度と根拠資料の確認1 回答の基準日だけでなく適用時期を特定する2 資料の種類と射程を区別する第4 計算を文章の説明とは独立に照合する1 入力値,計算式及び転記先を確認する2 AIの回答が変わったときの扱い第5 税理士の判断と検証記録1 職員の作業と税理士の確認2 法定帳簿とAIの詳細ログは同じではない第6 国税庁のAI利用と民間の検証手順
第1 下書きから申告までに検証工程を置く

生成AIは,論点の候補出し,資料の比較又は文章の下書きに使えても,回答の流暢さだけで税務処理の正しさを確認できない。
申告に利用する前に,事実,適用年度,根拠資料及び計算を分けて検証し,最終的な採否を税理士が判断する工程を設ける。
本記事は検証の運用例を示すものであり,個別案件の課税関係を決めるものではない。

顧客資料をAIへ入力する前の守秘義務,個人データ及び有料資料の利用権限は,税理士事務所で生成AIを使うときの入力資料の分け方で整理している。
入力を認めたことと,出力をそのまま申告へ転記してよいことは別である。

第2 事実認定とAIの候補を分ける
1 資料の元の値へ戻る

請求書,契約書,総勘定元帳,入出金記録及び申告書のどの箇所から事実を拾ったかを残す。
OCRで抽出した金額,日付,相手方及び摘要は元資料と照合し,AIが推定で補った情報を確認済みの事実へ昇格させない。
資料同士が食い違う場合は,どちらを採用したかだけでなく,不一致の理由と追加確認の結果を記録する。

例えば,請求書の「1,100,000円」がOCRで「110,000円」になった場合,税法の説明が正しくても計算の出発点が誤っている。
この例は架空の数字によるものであり,原資料の値を独立に確認する必要性を示す。
原資料が不足する場合は,回答を確定せず,顧客への追加質問を具体化する。

2 入金又は異常値だけで課税区分を決めない

多額の入金の候補には売上のほか,借入金,資産の売却代金,前受金等があり得る。
重複とされた仕訳も,取消仕訳,再計上又は別取引である可能性を確認する。
AIの検出結果は調査の端緒として扱い,契約,証憑及び会計処理の対応を確認してから税務上の判断へ進む。

第3 適用年度と根拠資料の確認
1 回答の基準日だけでなく適用時期を特定する

税目,納税者の属性,対象年分・事業年度,取引日及び申告期限を先に特定する。
改正後の条文を見つけても,その施行日,経過措置及び対象取引への適用時期が確認できなければ,対象案件に適用できるとは限らない。
ウェブページの更新日又はAIの回答日を,法令の適用日と取り違えない。

2 資料の種類と射程を区別する
資料確認する箇所検証のポイント法令条,項,号及び必要な委任先対象時点の規定と経過措置を確認する法令解釈通達通達番号,改正履歴及び本文行政上の解釈を法令そのものと混同しない質疑応答事例等質問の前提と回答前提事実が案件と一致するか確認する裁判例判決本文,争点及び判断理由結論だけでなく事実関係と射程を確認する行政裁決裁決本文,争点及び認定事実裁判所の判決と区別し,事案差を確認する民間の解説引用元,版及び対象年度必要な一次資料へ遡る

法令はe-Gov法令検索,国税庁の解釈資料は法令解釈通達等で原文を確認する。
判例秘書等のデータベースを使う場合も,検索結果の見出し又は要旨だけで確認済みとせず,本文,事件の同一性及び引用箇所を確認する。
取得できなかった判決又は裁決を,存在しない,若しくは自説を裏付けるものと扱わない。

第4 計算を文章の説明とは独立に照合する

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弁護士・税理士がAI議事録を使うときの確認事項―録音,外部同期,原音声,誤要約及び共有(AI作成)

目次

第1 録音から共有までを別々に確認する第2 録音の説明と秘密情報の外部処理1 録音の告知と個人情報保護法上の義務2 守秘義務と顧客の許諾の範囲第3 自動同期,学習オフ及び削除の確認1 端末内録音とクラウド処理を区別する2 学習に使われないことだけでは足りない第4 原音声,文字起こし及び要約を分ける1 原音声の保全と照合箇所2 発言,要約及び推測を混ぜない3 AI議事録と意思決定記録を分ける第5 共有前の確認と誤りが見つかった場合1 依頼者共有版と内部原本を分ける2 共有版から外した情報も内部記録に残す第6 出典の位置付け
第1 録音から共有までを別々に確認する

法律相談,顧問先との打合せ又は税務相談でAI議事録を使う場合,録音を認めてもらったことだけで,録音の外部送信,AI処理及び第三者への共有まで認められたと扱わない。
録音,端末からの転送,文字起こし,要約,保存及び共有を工程に分け,それぞれの目的,処理先及び確認者を決める。
以下は通常の相談・打合せを対象とする運用例であり,裁判期日,取調べその他特別な規律のある場面は別に検討する。

AIの利用率又は議事録の作成速度は,個別の記録の正確性を証明しない。
採否を判断する際は,原音声へ戻れること,誤りを直せること及び共有先を制限できることを確認する。

第2 録音の説明と秘密情報の外部処理
1 録音の告知と個人情報保護法上の義務

個人情報保護委員会のFAQ・Q1-10は,通話内容から個人を識別できる場合には個人情報に当たり,利用目的の通知又は公表が必要である一方,同法上,録音している旨を伝える義務まではないと説明する。
この説明は,秘密録音がどの場面でも適法であること,又は弁護士・税理士の守秘義務,契約,プライバシー上の問題がなくなることを意味しない。

相談の場では,記録の目的,AIを使う工程,外部への送信の有無,共有先及び保存方針を事前に説明する運用が望ましい。
録音又は外部AI処理を希望しない人には,手書きメモ等で対応できるようにする。
この説明方法は実務上の提案であり,すべての録音に一律の同意取得義務があるという趣旨ではない。

2 守秘義務と顧客の許諾の範囲

弁護士法23条は,職務上知り得た秘密に関する保持の権利及び義務を定め,税理士法38条は,正当な理由のない業務上の秘密の漏えい又は窃用を禁止する。
国税庁の税理士制度Q&A・問6-24は,正当な理由について,本人の許諾がある場合又は法令に基づく義務がある場合と説明する。

顧客の許諾を確認するときは,「議事録を作る」という目的だけでなく,どの情報をどの事業者がどの目的で扱うかを特定する。
顧客の発言には相手方,従業員又は家族の情報も含まれ得るため,顧客の許諾だけで関係者全員の情報の扱いが解決するとは限らない。
必要な部分だけを処理し,医療,家族関係,資産その他の詳細を不用意に送らない。

第3 自動同期,学習オフ及び削除の確認
1 端末内録音とクラウド処理を区別する

録音時にインターネットへ接続していなくても,後でアプリを開いた時点で外部へ同期するサービスがある。
例えば,GensparkのSecond Brain公式説明では,端末での録音後,アプリへの転送・同期を経て文字起こし及び要約を行い,転送後には端末上の録音ファイルが自動削除されると説明している。
これは提供者の仕様説明であり,クラウド上のデータ,複製又はバックアップまで削除されることの確認ではない。

利用開始前に,録音端末,スマートフォン,AI事業者,会議サービス及び連携先の間のデータの流れを図又は台帳にする。
自動同期,メール・CRM等への連携,共有リンクの初期設定も確認し,外部へ送信する前に対象情報を減らせる工程を設ける。

2 学習に使われないことだけでは足りない

学習オフの設定があっても,文字起こしの処理,保存,保守担当者のアクセス又は再委託先への処理がなくなるわけではない。
個人情報保護委員会の生成AI利用に関する注意喚起は,利用目的との関係及び入力した個人データが機械学習等に利用されないこと等の確認を求めている。

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個人事業主の出張費・宿泊費はどこまで必要経費になるか―観光・家族同伴・ポイント利用と証拠保存(AI作成)

目次第1 金額だけでなく業務との関係を確認する第2 必要経費と家事費の基本1 所得税法37条の基準2 私用が混在する支出第3 観光の延泊・家族同伴を区分する1 費目ごとに業務部分を直接確認する2 日数だけの按分を唯一の方法としない第4 高額な宿泊費で残す資料1 宿泊の必要性と選択理由2 領収書と業務記録を組み合わせる第5 ポイント・マイルを使った支払1 取得条件と利用明細を確認する2 値引処理と両建処理3 特典宿泊を自分の評価額で経費にしない4 所得税の経費と消費税の仕入税額控除第6 前払金・保証金・必要経費の時期第7 申告・精算前の確認順序第8 出典
第1 金額だけでなく業務との関係を確認する

個人事業主の出張費・宿泊費では,高額だから当然に経費にならないとも,領収書があるから全額を経費にできるともいえない。業務との関係,私用部分,債務が確定する時期,ポイント等の支払方法を分けて確認する必要がある。
本記事は,令和8年10月8日現在の法令と国税庁資料に基づき,日本の個人事業主の事業所得に係る必要経費を扱う。勤務先から旅費を受け取る給与所得者や,法人が役員・従業員へ支給する旅費は,別の規定・取扱いを確認する必要がある。
国内出張だけでなく海外出張にも関係するが,外国の税務・移住後の課税関係や,ホテル特典宿泊のすべての制度を一律に扱うものではない。

第2 必要経費と家事費の基本
1 所得税法37条の基準

所得税法37条1項は,必要経費について,収入に直接要した費用のほか,「これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」を定めている。
出張という名称ではなく,取引先との面談,裁判所への出頭,業務上の研修,現地調査等の目的と実際の行動を確認する。旅行の一部で仕事のメールを送ったことだけから,全旅費を業務費へ変更することはできない。
個人事業主本人が自分に支払ったという形で日当を定めても,その定額が当然に必要経費になるものではない。実際の支出と業務との関係を確認する必要がある。

2 私用が混在する支出

所得税法45条1項1号は,家事上の経費と政令で定める家事関連費を必要経費に算入しないと定める。
所得税法施行令96条1号は,家事関連費の主たる部分が業務遂行上必要であり,その必要な部分を明らかに区分できる場合の当該部分を規定する。同条2号は,青色申告者について,取引の記録等に基づき業務遂行上直接必要であったことが明らかな部分を規定している。
したがって,仕事と私生活が混在する支出は,申告区分と記録を踏まえて業務部分を説明できるようにする。青色申告であることだけで,観光や家族旅行の費用がすべて業務費になるわけではない。

第3 観光の延泊・家族同伴を区分する
1 費目ごとに業務部分を直接確認する

取引先での打合せに必要な移動・宿泊と,観光のための延泊,観光施設の入場料,家族だけの行動費を分けることが有用である。
宿泊日,移動区間,部屋数,利用者及び支払先が分かる明細から,費目ごとに業務との関係を確認する。家族が同行したという事実だけで本人の業務支出がすべて否認されるとも,同伴分まで全部認められるとも判断しない。
家族が実際に業務を担当した場合には,役割,作業内容,業務上の必要性を資料で確認し,単なる同行と区別する必要がある。

2 日数だけの按分を唯一の方法としない

例えば,業務の宿泊2泊が各2万円,観光の延泊1泊が2万5000円,同伴家族の追加費用が1万円で,各費用を明細で区分できるという仮定であれば,まず業務宿泊の4万円を特定し,残りは業務上の必要性があるかを別に検討する。
これは費目を直接区分する説明例であり,個別の必要経費算入を認定するものではない。
旅行総額に業務日数の割合を掛ける方法を,往復交通費,宿泊費,追加家族費用のすべてへ機械的に用いると,実態とずれることがある。交通費は旅行の直接の目的,業務に必要な経路,観光による追加移動等を確認する必要がある。
国税庁「No.5388 海外渡航費の取扱い」は法人税の資料である。同資料の期間按分や往復旅費の取扱いを,個人事業主の所得税の一律の結論として引用してはならない。

第4 高額な宿泊費で残す資料
1 宿泊の必要性と選択理由

業務上の宿泊が必要かに加え,宿泊地,業務開始・終了時刻,交通事情,予約時の空室,安全上の事情,会場又は面談場所との位置関係,必要な作業環境を確認することが有用である。
宿泊料金だけで結論を決めず,選択時の事情を説明できる資料を残す。部屋のアップグレード,家族の追加料金,業務に関係しないサービス等は,宿泊本体と別に明細を確認する。
税法上の必要経費と,依頼者に請求できる実費の範囲,所属事務所の精算上限は別である。依頼者へ請求する場合は,委任契約・実費合意や事前の説明も確認する必要がある。

2 領収書と業務記録を組み合わせる

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海外で高額な医療費を請求されたとき―海外療養費・旅行保険・医療費控除と必要書類(AI作成)

目次第1 請求額,保険給付及び税の控除を分ける第2 病院で確認し,持ち帰る資料1 治療内容の説明と費用の説明2 領収書だけでなく診療明細も取得する3 請求と支払を照合する第3 日本の公的医療保険の海外療養費1 海外で支払えばすべて給付されるわけではない2 現地の請求額の7割が戻るという計算ではない3 換算日,申請期限及び入金までの時間第4 海外旅行保険・カード付帯保険第5 海外で支払った医療費と医療費控除1 外国の医師への支払も対象になり得る2 外貨で支払った医療費の円換算3 補填金を差し引き,控除額と還付額を区別する4 申告時に保険金が未確定の場合第6 相談・申請前の確認順序第7 出典
第1 請求額,保険給付及び税の控除を分ける

海外旅行中に病気やけがで入院し,高額な請求を受けたときは,①病院への支払,②日本の公的医療保険からの海外療養費,③海外旅行保険等の保険金,④日本の所得税の医療費控除を分けて確認する必要がある。
海外療養費は現地の請求額をそのまま払い戻す制度ではなく,医療費控除も支払額をそのまま還付する制度ではない。
本記事は,令和8年10月8日現在の法令と公表資料に基づき,海外での急な受診後に行う費用精算を整理する。海外療養費の具体的な書類・為替・時効の説明は協会けんぽの案内によるものであり,国民健康保険・健康保険組合等の加入者は自分の保険者の手続も確認する必要がある。

日本からの短期旅行と,海外移住・長期赴任とは,公的医療保険の加入資格や所得税の居住者判定が異なり得る。海外にいる日本人であることだけから,日本の各制度を利用できると判断してはならない。

第2 病院で確認し,持ち帰る資料
1 治療内容の説明と費用の説明

まず診療の必要性と安全を確認し,治療内容,予定される検査・処置,費用の概算,含まれない費用,追加費用が生じる条件を,可能な範囲で医療機関に確認する。
病院費用,医師の手術料,麻酔料,検査料,薬代,個室料等が別々に請求されることがあるため,総額だけでなく請求主体と費目を記録することが有用である。
治療の説明を受けたことと,料金・個室等の追加サービスに同意したことを一つの署名だけから同一視せず,見積書,同意書,請求書,説明時のメール等を保存する。これは費用の確認と証拠整理の提案であり,外国の医療機関の説明義務や請求の適法性を日本法だけで判定するものではない。

2 領収書だけでなく診療明細も取得する

協会けんぽの海外療養費では,申請書のほか,医科の場合の診療内容明細書(様式A),領収明細書(様式B),領収書原本と日本語訳,明細書の日本語訳,渡航期間を確認できる書類及び同意書等が必要となる。歯科の場合には様式Cを用いる。
様式A~Cは,月,受診者,医療機関,入院・外来ごとに分け,担当医に記入・署名を依頼する。申請者自身による記入で代用しない。同じ項目・内容が記載されていれば独自様式も使用できると案内されている。
翻訳文には翻訳者の署名,住所及び電話番号を記載する。退院・帰国後に遠隔で書類を集める負担を減らすため,可能であれば受診中に保険者の様式を病院へ示しておくとよい。

3 請求と支払を照合する

請求書の総額,患者の実際の支払,保険会社による病院への直接支払,保証金・前払金とその返還を区別する。明細と支払記録が対応するかを確認し,同じ治療費を重複して精算表へ載せない。
外貨の領収書には通貨単位,支払日,支払者が分かる資料を添え,カード明細や送金控えも保存する。公的給付の為替換算と所得税の換算は,次に述べるとおり基準が異なる。

第3 日本の公的医療保険の海外療養費
1 海外で支払えばすべて給付されるわけではない

協会けんぽは,海外旅行中や海外赴任中の急な病気・けが等で,やむを得ず現地の医療機関を受診した場合に,申請によって一部の医療費の払い戻しを受けられる制度と説明している。
対象は日本国内で保険診療として認められる医療行為に限られ,治療を目的として海外へ渡航した場合は支給対象とならないと案内されている。保険の加入資格,診療内容及び渡航目的を最初に確認する必要がある。

2 現地の請求額の7割が戻るという計算ではない

給付額は,日本国内で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額と,実際に海外で支払った額を比べ,低い方から自己負担相当額を差し引いて計算される。
例えば,現地で200万円を支払い,日本の基準による額が30万円,自己負担相当額がその3割となるという仮定であれば,給付は21万円となり,現地支払額の7割である140万円にはならない。この数値は制度の違いを示す仮定であり,実際の診療の査定額を示すものではない。
加入者の年齢等によって自己負担割合も異なる。国内の高額療養費の上限額を,海外の請求総額にそのまま当てはめて最終負担を見積もってはならない。

3 換算日,申請期限及び入金までの時間

協会けんぽは,外貨で支払った医療費について,支給決定日の外国為替換算率(売レート)を用いると説明している。
また,治療費を支払った翌日から2年を経過すると時効により申請できなくなると案内している。審査に通常数か月を要するため,返金予定を直近の生活資金と同じに扱わず,書類がそろい次第手続を進めることが有用である。
提出先や電子申請の対応状況は変わり得るので,申請時に加入保険者の公式案内を確認する必要がある。

(続きを読む...)海外で高額な医療費を請求されたとき―海外療養費・旅行保険・医療費控除と必要書類(AI作成)

相続事件の弁護士費用と税務―遺産分割,相続登記,共同売却及び金銭回収の費用区分(AI作成)

目次

第1 弁護士費用は,何の税金で何のための費用かを分ける第2 相続税の債務控除―死亡時の債務と相続人の費用は異なる1 被相続人の債務が対象となる2 死亡前の依頼による未払報酬は事実を確認する第3 取得費―相続登記の費用と遺産分割の費用を分ける1 原則として被相続人の取得費を引き継ぐ2 非業務用不動産の相続登記費用3 遺産分割の訴訟費用等は土地の取得費にならない第4 共同売却と金銭回収―代金から支払うことだけでは決まらない1 売却のために直接要した費用を確認する2 売却代金の回収費用は譲渡費用と区別する第5 賃貸業務等の必要経費は別に検討する第6 委任契約と請求明細で残しておきたい事項1 報酬の合意と税務上の区分をつなぐ資料2 一括報酬を区分する場合第7 関連記事と出典
第1 弁護士費用は,何の税金で何のための費用かを分ける

相続事件の弁護士費用については,「相続で支払った費用だから遺産から差し引ける」「不動産を取得したから取得費になる」「売却代金から払ったから譲渡費用になる」とは一律にいえない。
相続税の債務控除,譲渡所得の取得費・譲渡費用,不動産所得等の必要経費は,それぞれ要件が異なる。

また,委任契約で成功報酬を計算するための「経済的利益」と,税務上の取得費や課税価格は別の概念である。
報酬が取得財産の総額又は回収額の一定割合で計算される場合でも,その計算式だけで税務上の費用区分は決まらない。

本記事は,個人の通常の相続と,相続した土地・建物の売却を中心に整理する。限定承認,法人,非居住者及び国外財産には,別の検討が必要である。
法令・国税庁資料の確認日は令和8年10月7日である。国税庁の説明に加え,契約書や請求明細を整える実務上の提案を示す。

費用の内容検討する税務区分最初に確認する点相続開始後に相続人が依頼した遺産分割の弁護士費用相続税の債務控除・将来の譲渡所得被相続人の死亡時の債務とは異なる。遺産分割の訴訟費用等は土地の取得費にならない。非業務用不動産の相続登記に要する費用譲渡所得の取得費当該不動産に対応する通常必要な費用か。概算取得費5%を用いる場合は別扱いとなる。相続不動産の売却のために直接必要な費用譲渡所得の譲渡費用売却のための業務と,遺産分割・維持管理・代金回収の業務を区別する。売却後の代金回収の弁護士費用譲渡費用との区別代金回収費用は,国税庁の質疑応答では譲渡費用に含まれない。賃貸業務に関する紛争の弁護士費用不動産所得等の必要経費業務との関係,資産取得・譲渡に関する費用との区別,私的な相続紛争との混在を確認する。

各行の根拠と例外は以下のとおりである。表だけで費用の全額を申告書へ転記しないことが重要である。

第2 相続税の債務控除―死亡時の債務と相続人の費用は異なる
1 被相続人の債務が対象となる

相続税法13条1項1号は,控除対象を「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)」と定め,同法14条1項は,控除する債務を確実と認められるものに限る。
国税庁「No.4126 相続財産から控除できる債務」も,死亡時に現に存在する被相続人の借入金・未払金等を説明している。

相続開始後に相続人が遺産分割のため弁護士へ依頼して負担した報酬は,そのことだけで被相続人の死亡時の債務にはならない。
相続人全員で費用を負担したこと,遺産口座から支払ったこと又は協議書で「遺産から控除する」と合意したことだけでも,税法上の債務控除の要件を満たすわけではない。

2 死亡前の依頼による未払報酬は事実を確認する

被相続人自身が死亡前に弁護士へ依頼し,死亡時に未払報酬がある場合は,死亡後の相続人による依頼と区別する。
契約,業務の履行,報酬の発生条件,死亡時の債務の存在・確実性及び誰が負担する部分かを確認する必要がある。
「請求書の発行が死亡後である」という一事だけで結論を決めず,死亡時点の法律関係を調べる。

葬式費用には別の控除の制度があるが,遺産分割の弁護士費用が葬式費用に変わるものではない。

第3 取得費―相続登記の費用と遺産分割の費用を分ける
1 原則として被相続人の取得費を引き継ぐ

所得税法60条1項は,通常の相続等で取得した資産について,譲渡所得の計算上,前所有者から引き続き所有していたものとみなす。
相続した土地・建物を売却するときの取得費は,原則として被相続人の取得費を引き継ぐのであり,相続税評価額をそのまま購入代金のように扱うものではない。
建物では減価償却相当額の調整も必要となる(国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」)。

売買契約書,建築請負契約書,領収書,改良費の資料及び過去の申告資料は,遺産分割の価格交渉とは別の目的でも保存しておく必要がある。

2 非業務用不動産の相続登記費用

国税庁No.3270は,相続等で取得した土地・建物について,相続人が支払った登記費用等を取得費へ算入できることを説明している。ただし,業務用資産について必要経費に算入される費用との区別がある。
所得税基本通達60-2は,相続等による取得のため通常必要と認められる費用のうち,当該資産に対応する金額について定める。

(続きを読む...)相続事件の弁護士費用と税務―遺産分割,相続登記,共同売却及び金銭回収の費用区分(AI作成)

税務調査・審査請求・租税訴訟における弁護士と税理士の連携―依頼範囲,補佐人,資料及び期限の引継ぎ(AI作成)

目次

第1 連携を考える場面とこの記事の対象1 手続が変わると担当と委任を確認する2 顧問契約だけで次の手続まで受任済みとしない第2 税務代理・不服申立ての代理・訴訟の補佐人1 税務代理と不服申立ての代理2 訴訟の補佐人は訴訟代理人と異なる3 税理士法人の受託と自然人の選任第3 税務調査から処分への移行1 資料,回答及び判断を分けて管理する2 修正申告前に争い方を確認する3 更正の請求が未処理・返送の場合の連携第4 不服申立てと取消訴訟の期間1 一般的な期間と例外2 裁決を待たずに提訴できる場合3 争うことと納付・徴収の停止を分ける第5 資料と期限を引き継ぐための記録1 移行時の引継ぎ項目2 依頼者の判断と費用を明らかにする3 資料を共有する目的と範囲を記録する第6 関連記事第7 出典
第1 連携を考える場面とこの記事の対象
1 手続が変わると担当と委任を確認する

税務調査への対応,課税処分への不服申立て及び裁判所への訴えは,手続も必要な準備も異なる。
帳簿や取引を把握している税理士と,法的争点や裁判手続を担当する弁護士が連携する場合には,誰がどの範囲を受任し,どの期限までに何を行うのかを具体化する必要がある。

本記事は,令和8年10月7日に確認した法令と公的資料に基づき,通常の国税の課税処分に関する連携の基本を整理する。
地方税,国税犯則調査,刑事手続及び滞納処分に固有の不服申立期間を網羅するものではなく,具体的な税額計算や個別事件の勝敗は扱わない。

2 顧問契約だけで次の手続まで受任済みとしない

記帳・申告又は調査対応の依頼が,審査請求や訴訟の受任まで含むかは,契約と委任内容による。
処分通知を受けてから新たな担当を探している間にも期間は進むため,争いが見込まれる段階で,移行先の担当,費用,判断の期限及び資料共有の方法を確認しておくのがよい。

以下の担当表や引継ぎ項目は,連携のための運用例である。
法定の様式や,職種ごとの排他的な業務分担を定めるものではない。

第2 税務代理・不服申立ての代理・訴訟の補佐人
1 税務代理と不服申立ての代理

税理士法2条1項1号の税務代理には,税務官公署に対する申告等や不服申立て,調査・処分に関する主張又は陳述についての代理・代行が含まれる。
税務代理をする税理士は,同法30条に基づき,権限を証する書面を提出する必要がある。

国税通則法107条は,不服申立人が弁護士,税理士その他適当と認める者を代理人に選任できると定める。
ただし,不服申立ての取下げと代理人の選任は特別の委任が必要であり,税理士法31条にも同旨の規定がある。
手続上の代理人資格と,税理士業務を業として行う場合の業務制限は,別の問題として確認する必要がある。

弁護士が税理士法51条の通知によって税理士業務を行う場合には,所属弁護士会を経由した国税局長への通知と,管轄区域を含む同条の条件を確認する。
弁護士であることだけを理由に,税務代理の手続や通知の確認を省略することはできない。

2 訴訟の補佐人は訴訟代理人と異なる

税理士法2条の2第1項は,租税に関する事項について,税理士が裁判所で補佐人として,弁護士である訴訟代理人とともに出頭し,陳述することを認めている。
この規定は,税理士が弁護士の訴訟代理人に代わって単独で訴訟を代理する制度ではない。

同条2項によれば,補佐人の陳述は当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなされる。
ただし,当事者又は訴訟代理人が直ちに取り消し,又は更正したときは例外となる。
税額計算の説明も主張の一部になり得るため,出頭前に,帳簿・計算表・準備書面の数値と事実の説明を照合し,確認した事実と推測を分けておくことが重要である。

3 税理士法人の受託と自然人の選任

税理士法48条の6は,税理士法人が,補佐人の事務を社員又は使用人である税理士に行わせる事務の委託を受けることを認める。
その場合は,委託者に,社員等の中から補佐人を選任させなければならない。

(続きを読む...)税務調査・審査請求・租税訴訟における弁護士と税理士の連携―依頼範囲,補佐人,資料及び期限の引継ぎ(AI作成)

前払コンサルティング料・採用支援料の返金と税務―役務提供時期,法人税,消費税及び返還インボイス(AI作成)

目次

第1 返金額を決める前に確認すること1 契約と税務をつなぐ四つの日付2 採用に至らなかったことと役務未提供を分ける第2 法人税―前払いと損金算入を区別する1 まだ提供を受けていない役務2 契約期間が一年なら必ず全額損金となるわけではない第3 返金の実質と元の帳簿を対応させる1 未提供分の返還2 提供済みの役務の値引きと損害賠償3 後の返金合意と当初申告の誤りを分ける第4 消費税―役務提供時期と返還時期を確認する1 前払い時点で課税仕入れになるとは限らない2 提供済みの役務の値引きは返還等を受けた期間に調整する第5 損害賠償,解約手数料及び相殺を分ける1 損害賠償という名称だけで判断しない2 解約手続の対価と逸失利益の補填第6 返還インボイスと訂正した請求書1 返還インボイスが必要な場面2 返金の書類と申告是正を区別する第7 合意前の資料と担当者の確認事項1 契約から帳簿までを一続きにする2 弁護士と税理士が合意前にすり合わせる第8 関連記事と出典
第1 返金額を決める前に確認すること

法人がコンサルティング料又は採用支援料を前払いし,中途終了後に返金を受ける場合は,返金額だけでなく,元の支払を何の対価として,いつ,どの勘定と税区分で処理したかを確認する必要がある。
未提供の役務に対する前払金の返還,提供済みの役務の値引き及び損害賠償では,処理の出発点が異なる。
和解書に「解決金」と書くだけでは,法人税,消費税又は返還インボイスの取扱いは決まらない。

本記事は,国内の法人が事業のために役務を購入する場面を中心に,弁護士と税理士が合意前に確認する順序を整理する。
消費税の仕入税額の調整は原則課税を中心に説明する。簡易課税その他の特例,免税期間をまたぐ取引,海外取引及び個人事業者への適用は,それぞれの前提を別途確認する。

1 契約と税務をつなぐ四つの日付

①契約締結日・支払日,②役務提供日又は対象期間,③返金請求権や減額合意が具体化した日,④実際の返金日を並べる。
決算日と消費税の課税期間も併記し,「支払った年度」「サービスを受けた年度」「返金を受けた年度」を混同しない。

2 採用に至らなかったことと役務未提供を分ける

探索,接触,推薦,選考調整等の役務の対価を支払う契約では,採用が成立しなくても,役務が提供されている場合がある。
成功報酬についても,内定承諾,入社その他のどの時点を報酬発生条件としたかを確認する。
契約上の精算は,ヘッドハンティング・人材スカウト契約の中途解約と返金及び準委任契約の中途終了と報酬精算も参照されたい。

第2 法人税―前払いと損金算入を区別する
1 まだ提供を受けていない役務

国税庁No.5380は,継続的な役務のために支出した費用のうち,期末に未提供の役務に対応する前払費用について,原則として資産計上し,役務提供を受けた時に損金算入すると説明する。
前払いをしたことや請求書を受領したことだけで,未提供分まで当然に損金となるわけではない。

契約書,月次報告,納品物,検収記録及び業務日誌から,期末までに実施された業務と残存業務を確認する。
契約全体が一つの成果物を対象にしているのか,月ごとの継続役務なのか,着手業務と成功報酬を分けているのかにより,配分の前提も異なる。経過月数だけで一律に配分せず,契約と実施内容に対応する根拠を残す。

2 契約期間が一年なら必ず全額損金となるわけではない

同資料の短期前払費用の取扱いは,継続的な役務に係る前払費用について,支払日から一年以内に役務提供を受けること,支払年度の損金に継続して算入していること等を前提とする。
収益との対応が必要な費用については,例外の対象とならないことも説明されている。

したがって,「一年契約」「年度内に全額支払済み」という事情だけで適用を決めない。
成果物の完成に対する前払い,一回限りの業務又は条件付きの成功報酬を,同じ取扱いに当てはめられるかは契約の実質を確認する必要がある。
適用を検討する場合は,提供予定期間,実際の支払日及び過年度からの処理方針を税理士に示す。

第3 返金の実質と元の帳簿を対応させる
1 未提供分の返還

役務を受ける前の支払を前払金又は前払費用として資産計上していた場合は,その返還額と帳簿上の残高を照合する。
未費用化の残高を現金へ戻す部分と,損金算入済みの部分を区別することが出発点である。

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税理士事務所で生成AIを使うときの入力資料の分け方―顧客資料,国税庁の公表資料及び有料税務解説(AI作成)

目次

第1 同じ税務資料でも確認事項は異なる1 資料の性質と処理の目的を組み合わせる2 下書き,検証及び申告を分ける第2 顧客資料と税理士の守秘義務1 法人の帳簿にも秘密は含まれる2 顧客への説明と対象情報の特定第3 個人データ,学習オフ及び入力範囲1 学習に使われないこと以外の処理を確認する2 必要な情報を残し,不要な識別情報を外す3 給与資料を処理する場合のデータの流れ第4 国税庁の公表資料と有料税務解説1 公表資料の出所と適用年度2 有料解説はその契約を確認する第5 少人数の事務所で実装する運用案1 資料と処理先の台帳2 職員の利用と税理士の確認3 誤入力・誤出力が生じた場合4 出力の検証記録を残す第6 日税連ガイドラインの確認状況第7 出典・参考資料
第1 同じ税務資料でも確認事項は異なる
1 資料の性質と処理の目的を組み合わせる

税理士事務所で生成AIを利用する場合,①顧客から受領した申告書・帳簿・証憑,②法令及び国税庁の公表資料,③有料の税務解説・会員制データベースを分けて考える必要がある。
①では守秘義務や個人情報の取扱い,②では資料の適用時点と利用条件,③では取得・複製・外部送信・成果物利用の権限が,それぞれ主要な確認事項となる。

複数の種類の資料を一つの質問に添付する場合には,それぞれの条件を満たす必要がある。
公表された税務通達に顧客の元帳を添えれば,その入力全体を公開情報として扱うことはできない。
本記事は令和8年10月7日時点で確認した法令・行政資料に基づく一般的な運用の検討であり,特定のAIサービス又はプランを安全と認定するものではない。

2 下書き,検証及び申告を分ける

論点の洗い出し,資料の分類,計算の補助及び説明文の下書きは,AIを利用し得る工程である。
他方,課税要件の当てはめ,適用年度,経過措置,金額及び提出内容は,原資料と実際の事実に照らして担当税理士が確認する必要がある。

AIが示した条文・通達・裁決例は,識別情報が整っていても実在と内容を確認する。
国税庁の公表事例が似ていることと,当該顧客にも同じ税務処理が妥当であることは区別する。

第2 顧客資料と税理士の守秘義務
1 法人の帳簿にも秘密は含まれる

税理士法38条は,税理士業務に関して知り得た秘密について,正当な理由のない漏えい又は窃用を禁じている。
国税庁の税理士制度に関するQ&A・問6-24は,秘密の範囲及び本人の許諾等の正当な理由について,税理士法基本通達38-1~38-3を踏まえて説明している。

個人情報に該当しない法人の売上,資金繰り,取引条件又は調査対応方針にも,守秘義務の対象となる情報は含まれ得る。
氏名を削れば問題がなくなるという評価では,この点を見落とす。

2 顧客への説明と対象情報の特定

顧客資料を外部AIで処理する場合は,利用目的,資料の範囲,処理を行う事業者,保存・閲覧・再委託の条件及び成果物の扱いを確認する。
本人の許諾を根拠とするならば,何をどの目的で処理することへの許諾なのかを説明・記録する必要がある。

顧客が会社である場合も,給与資料等に含まれる従業員その他の個人の情報について,会社の許諾だけで個人情報保護法上のすべての問題が解消するわけではない。
顧客の許諾と,資料に含まれる別の主体の権利・秘密の取扱いを分けて検討する。

第3 個人データ,学習オフ及び入力範囲
1 学習に使われないこと以外の処理を確認する

個人情報保護委員会の生成AIサービスに関する注意喚起は,個人情報の入力と利用目的との関係,個人データが回答出力以外の目的で取り扱われる場合等への注意を示している。
学習への不使用は重要な確認事項であるが,回答生成に伴う送信,保持,ログ,人的閲覧又は外部ツールとの連携がすべて停止することを意味しない。

個人データの処理を委託と評価できる場合も,委託先の監督を含む安全管理が必要である。
利用目的,第三者提供に関する規律,国外の事業者による取扱い及び事故時の対応は,実際の契約と処理方法に即して確認する。

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税務調査で従業員の盗難・横領が判明したとき―会社・税理士・弁護士の初動と法定届出(AI作成)

目次第1 税務調査で見つかった不正を,税務だけで処理しない第2 「いつ何を知ったか」を記録する1 外部からの指摘と会社の確認結果を分ける2 帳簿が合う理由を調べる第3 相談・法定届出・被害届・告訴を区別する1 毒物・劇物の盗難・紛失は直ちに警察署へ2 税務署等からの「静観」の要請があった場合第4 会社・税理士・弁護士の役割を明確にする1 共通して行うことと,担当分野の違い2 税理士の助言義務と受任範囲第5 証拠保全と税務上の訂正を並行して進める1 訂正前のデータを残す2 税務調査と刑事捜査の権限を混同しない第6 関連記事と出典1 具体的な調査・是正の進め方2 一次資料
第1 税務調査で見つかった不正を,税務だけで処理しない

税務調査で従業員による原材料の持出しや無断売却を指摘された場合,会社には,安全確保,証拠保全,警察への対応,税務上の訂正及び損害回復という異なる課題が同時に生じる。
全容が判明するまで一切動かないのではなく,法定届出の要否と消失しやすい証拠を先に確認し,調査と是正を並行して進める必要がある。

本記事は,令和8年10月7日現在の法令及び公表資料に基づき,会社・税理士・弁護士が連携する際の実務上の整理を示すものである。
以下の表は一般的な対応例であり,一律の法定手順,専門家の責任を認定する基準又は特定事件の評価ではない。

課題最初に確認すること次につなぐ資料安全・届出物質の危険性,所在不明の状況,適用法令,会社が知った内容品目・数量の判明範囲,連絡記録,応急措置の記録証拠保全映像・ログの保存期限,原帳票の所在,変更権限原本,取得条件,保管者,複製・訂正の履歴税務対象年度,帳簿価額,盗難損失と請求権,既提出申告年度別資料,仕訳案,争点と修正根拠損害回復持出し数量,取得者,残存品,請求先と財産購入・工程・売却資料,財産調査,回収記録

盗難損失・損害賠償請求権の年度帰属及び加算税は,従業員の窃盗・横領で被害を受けた会社の税務で扱っている。
本記事では,その前提となる情報の受取り方と担当者間の引継ぎを中心に説明する。

第2 「いつ何を知ったか」を記録する
1 外部からの指摘と会社の確認結果を分ける

税務署や取引先から「従業員が売却していた」と告げられたことと,会社が特定の在庫の盗難を確認したことは,同一の事実ではない。
他方,帳簿上の不足が見つからないことだけで,具体的な売却情報を抽象的な疑いとして放置することも適切ではない。
情報源,対象物,時期,会社の所有物と結び付く資料及び追加確認の結果を,別々に残す。

記録欄記載例・確認事項情報を受けた時点日時,受領者,相手の所属・氏名,電話・面談等の方法指摘された事実物品名,売却先,期間,数量,資料を実見したか,伝聞か会社の確認所有物との対応,ロット・伝票・在庫の照合,確認できなかった理由法的検討と行動相談・届出の判断,担当者,実施日時,伝えた内容,追加報告の予定

「外部担当者がそう述べた」という記録と,外部資料そのものは区別する。
取得できていない資料は未取得と記載し,後から作成する経緯書では,当時の記録に基づく部分と記憶に基づく部分を分ける。

2 帳簿が合う理由を調べる

持ち出した原材料を「使用済み」と入力できる仕組みでは,払出帳簿と使用帳簿が一致していても,実際に工程へ投入されたことは証明されない。
出力漏れのない会計データを確保する作業と,記載された取引・使用の実在を確かめる作業は分けて行う。

資料確認できること追加確認が必要なこと仕訳・払出台帳会社が記録した処理・移動実際の移動,相手,工程投入投入記録記入者が申告した使用実投入,複数本・部分使用,訂正実棚・残量計測時点の現物過去の流れ,計量方法,未確認場所売却・入金資料外部取引の記録会社の物品との同一性,数量,代金の帰属

原材料数量の立証は,工場の原材料が長期間盗まれていたときの被害立証を参照されたい。

第3 相談・法定届出・被害届・告訴を区別する
1 毒物・劇物の盗難・紛失は直ちに警察署へ

毒物及び劇物取締法17条2項は,取扱いに係る毒物又は劇物が盗難にあい,又は紛失したときに,直ちに警察署へ届け出る義務を定める。
この規定は,同法22条4項・5項により業務上取扱者にも準用される。

盗難・紛失を把握した場合に,被害数量の最終確定,従業員の自認,逮捕又は税務調査の終了を待つという条文上の猶予はない。
現在判明している内容と未確定部分を分けて伝え,追加確認後に補充する対応が考えられる。
抽象的な疑いだけで届出義務が当然に発生すると断定することもできないため,疑いの具体性とその時点の認識を速やかに確認する。

行為主な目的確認すべき違い警察への相談疑いの段階で対応・捜査への影響を相談相談したというだけで法定届出を履行したとは限らない毒劇法17条2項の届出毒物・劇物の盗難・紛失を直ちに知らせる品目・判明数量・状況を伝えた記録を残す被害届犯罪被害の事実を申告する後日の提出日だけで,それ以前の届出の有無・適時性は決まらない告訴犯罪事実を申告し処罰を求める法定の事故届出とは目的・手続が異なる

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