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税務

損害賠償請求権の貸倒処理と非免責債権―破産,財産調査及び回収記録の実務(AI作成)

目次第1 請求権が残ることと回収できることを分ける第2 貸倒れの三つの取扱いと損害賠償債権第3 逮捕,退職及び破産申立てだけでは足りない第4 破産手続の段階ごとに何を確認するか第5 非免責債権なら貸倒処理できないのか1 故意の不法行為をすべて非免責としない2 法的責任の存続は回収の保証ではない3 税務処理のために権利放棄を先行させない4 現在の給与と未定の再就職を区別する5 年金収入があっても貸倒れを認めた判決の射程6 回収不能は収入の有無だけで判断しない第6 回収不能を説明する記録の作り方第7 仕訳,貸倒引当金及び後日の回収1 帳簿上の債権と税務上の債権を照合する2 貸倒引当金も会社の適用資格から確認する3 貸倒処理後も権利・回収の台帳を管理する第8 法人税の貸倒れと消費税の貸倒税額控除を分ける第9 決算前に税理士と弁護士が確認する順序第10 関連記事と根拠資料
第1 請求権が残ることと回収できることを分ける

会社が犯罪や不法行為の被害に遭い,損害賠償請求権を取得した場合,請求できる権利があることと,その債権を実際に回収できることは別である。
加害者が破産した場合も,破産申立て,手続開始,配当,免責及び非免責債権の判断を分けなければならない。
法人税の貸倒損失は,民事上の請求を続けるかという判断と対応させつつ,税法上の要件と年度を別に確認する。

本記事は,令和8年10月7日に確認した法令,法人税基本通達,国税庁資料及び裁判所の公開資料に基づき,会社の税理士と回収を担当する弁護士の連携を扱うものである。
非免責性の詳しい判断基準は,破産法253条1項2号の「悪意で加えた不法行為」も参照されたい。

第2 貸倒れの三つの取扱いと損害賠償債権
取扱い損害賠償債権で確認する内容法人税基本通達9-6-1法定の切捨て等,又は相当期間の債務超過・弁済不能を伴う書面による債務免除などの要件同9-6-2資産状況・支払能力等から債権全額の回収不能が明らかになった年度,損金経理及び担保の処分同9-6-3対象は一定の売掛債権。純粋な損害賠償債権へ取引停止1年の取扱いをそのまま適用しない

これらの原文は,国税庁「金銭債権の貸倒れ」に掲載されている。
貸倒損失を計上したいからという理由で,賠償債権の勘定科目を売掛金へ付け替えても,債権の発生原因は変わらない。
回収のために分割払の約束を得たことや,和解・公正証書を作ったことだけで,通常の売掛債権と同じ取扱いになるものでもない。

書面で請求を放棄すれば必ず貸倒損失になるわけではない。
9-6-1(4)では,債務超過が相当期間続き,弁済を受けられないことが必要である。
合理的な回収手段を捨てる無償の放棄は,寄附金等の問題も生じ得るため,民事上の合意と税務処理を同時に検討する。

法人税基本通達9-7-16・9-7-17(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_07_04.htm)は,会社が第三者へ損害賠償金を支払った場合の,役員・使用人に対する求償債権等を扱う。
その「全部又は一部」という取扱いを,会社自身が窃盗・横領の被害を受けて取得した賠償債権へ,当然に適用することはできない。
誰が被害者で,誰へ賠償金を支払い,どの原因で社員に請求するのかを確認し,一部貸倒れの根拠を取り違えないようにする。

第3 逮捕,退職及び破産申立てだけでは足りない

加害者が逮捕された,会社を退職した,弁護士から受任通知が届いた,又は破産申立てをしたという事実だけで,賠償債権全額の回収不能が確定するわけではない。
預金,不動産,換価できる財産,収入,先順位の担保,生活状況及び他の債務を確認する。
担保や保証がある場合は,その回収経路を含めて検討する。

国税不服審判所令和元年5月16日裁決(https://www.kfs.go.jp/service/JP/115/11/index.html)の公表裁決書(抄)「4(4)」は,会社の商品を窃取・横領して転売した元従業員に対する損害賠償請求権について,平成25年1月期から平成29年1月期までの全額回収不能を否定した。
対象年度には会社が本人へ給与を支払っており,支払能力が皆無とはいえなかったことや,会社が発覚後直ちに賠償請求訴訟を提起したこと等が考慮されている。
資産に乏しく他の支払義務もあるという事情は,一部の回収が困難であることをうかがわせるにとどまると判断された。

この事案の懲戒解雇は平成29年9月15日であり,対象年度は解雇前である。
裁決は,非免責性や破産後の将来給与を直接判断したものではない。
「給与があれば常に貸倒処理できない」という一般則として読むのではなく,評価した年度と当時の具体的な支払能力を確認する必要がある。

反対に,全額回収不能を検討するため,どの事件でも必ず訴訟と強制執行を最後まで行わなければならないという一律の手順が定められているわけでもない。
財産調査で判明した内容,回収額の見込み,必要な費用・労力及び実行できる回収手段を記録する。

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従業員の窃盗・横領で被害を受けた会社の税務―盗難損失,損害賠償請求権,修正申告及び加算税(AI作成)

目次第1 被害会社でも申告の修正が必要になることがある第2 転売代金を会社の売上げと決め付けない第3 損失と賠償請求権をどの年度に計上するか1 損失と収益を別々に確認する2 発覚日,示談日及び入金日だけで決めない3 請求権の額と回収可能性を混同しない第4 税務調査はどのように進むか1 対象年度と資料の対応を確かめる2 調査結果の説明を受けて判断する第5 修正申告で直す内容第6 過少申告加算税と重加算税を分ける1 過少申告加算税の基本2 従業員が犯罪を隠したことと会社の隠蔽を分ける第7 消費税は損害賠償金の実質を確認する第8 経理処理と申告調整の組合せ第9 税理士と弁護士が共有する資料第10 関連記事と主な根拠資料
第1 被害会社でも申告の修正が必要になることがある

会社の原材料,商品又は金銭を従業員が盗んだ場合,会社は被害者である。
しかし,被害者であることだけで,法人税の修正申告や加算税の問題がなくなるわけではない。
盗難による損失,加害者に対する損害賠償請求権,実際の回収及び回収不能を,それぞれの事業年度に分けて検討する必要がある。

本記事は,令和8年10月7日に確認した法令,国税庁の公表資料及び国税不服審判所の公表裁決を基に,会社の経理担当者,税理士及び弁護士が共通の資料を作るための確認順序を示すものである。
個別会社の被害額や犯人の資力を仮定した解説ではない。

分ける問題確認する内容盗難損失失われた資産の帳簿価額,既に原価・費用へ算入した額,発生年度損害賠償請求権相手方,権利の存在・内容を客観的に把握できた時期,損害額回収・貸倒れ現物返還,入金,保険金,残高,全額回収不能が明らかになった年度税務調査本税の修正理由,税目・年度,加算税の種類,納付と争う手続
第2 転売代金を会社の売上げと決め付けない

従業員が会社のために販売し,会社の売上代金を着服した場合と,会社の商品を盗み,自分の取引として転売した場合では,検討の出発点が異なる。
販売権限,販売名義,買主の認識,請求書・領収書,入金先及び代金の最終使途を確認する。
会社所有の商品だったことや,在庫管理に不備があったことだけで,転売の主体が会社だったと決まるものではない。

国税不服審判所令和元年5月16日裁決は,元従業員が会社から盗んだ商品を個人の取引として販売した事案で,落札代金の会社への帰属を否定した。
一方,会社の損害賠償請求権については別に益金算入を検討している。
「会社の売上げではない」という結論と,「会社に課税される収益が一切ない」という結論を結び付けてはならない。

転売口座の総入金額には,従業員が自分で購入した品物の代金,返金,口座間振替等が含まれ得る。
会社の被害品との対応を付けて除外・重複を整理し,転売代金,民事上の損害額及び帳簿価額を別の列で管理する。

第3 損失と賠償請求権をどの年度に計上するか
1 損失と収益を別々に確認する

法人税法22条は,各事業年度の収益と損失の計算を定めている。
盗難損失を検討するときは,盗まれた資産が貸借対照表に残っていたか,仕入れや払出しの際に既に原価・費用となっていたかを先に確認する。
既に損金へ算入した取得価額を,発覚時に「盗難損失」としてもう一度損金にしてはならない。

不法行為に基づく損害賠償請求権は,通常,損失の発生時に発生・確定するため,損失と請求権を同じ年度の損金・益金に計上することが問題となる。
ただし,加害者や権利内容を把握することが客観的に困難で,直ちに権利行使を期待できない場合まで,機械的に損害発生年度の益金とするものではない。
上記裁決の「4(3)」は,通常人を基準に権利の存在・内容を把握できたかを判断している。

2 発覚日,示談日及び入金日だけで決めない

代表者が実際に知らなかったことと,通常の在庫照合等をしても権利を把握できなかったことは別である。
棚卸記録,異常値の報告,仕入れと売上げの不一致,調査開始,行為者の特定及び被害数量の判明を時系列にする。
発覚日にまとめて計上する案と過年度へ帰属させる案について,根拠となる資料を対応させる。

法人税基本通達2-1-43は,「他の者」から受ける損害賠償金について,実際の受領年度に益金算入している場合の取扱いも定めている。

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出国税(国際観光旅客税)3,000円,宿泊税,免税販売のリファンド方式及びJESTA―訪日客と日本人旅行者が負担する制度(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 対象と基準日2 結論第2 国際観光旅客税1 課税の仕組み2 令和8年7月1日の引上げと経過措置3 日本人の負担4 税収の使途第3 宿泊税1 法定外目的税としての宿泊税2 東京都・大阪府・京都市の現行税率第4 免税販売のリファンド方式1 令和8年10月31日までの制度2 令和8年11月1日からの制度3 免税店の実務上の注意第5 JESTA(電子渡航認証)1 改正法と施行日2 認証の要件と上陸の条件3 手数料第6 動画の主張と一次資料の対応1 制度に関する主張2 統計に関する主張第7 今後の見通しと本記事で扱わない事項1 今後の見通し2 本記事で扱わない事項第8 関連記事第9 出典1 法令2 公的資料3 外国の公表資料4 その他
第1 本記事の対象と結論
1 対象と基準日

世界経済フォーラムの旅行・観光開発指数2026年版で日本が1位になったことを素材にしたYouTube動画(海外Yパパラジオ,令和8年10月3日公開)は,宿代,税金及び混雑という観光の費用が日本人にも回ってきていると指摘し,出国税は日本人も払うこと,免税販売が出国時に持出しを確かめてから税金を返す形に変わること,入国前の審査(JESTA)の機会に日本に住んでいない旅行者から費用を受け取るべきことを述べている。

本記事は,令和8年10月4日を基準日として,e-Gov法令検索で確認した国際観光旅客税法,外国人観光旅客の来訪の促進等による国際観光の振興に関する法律(以下「国際観光振興法」という。),消費税法,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。。未施行の改正後の条文を含む。)及び地方税法の条文と,国税庁・地方公共団体の公表資料を基に,訪日客と日本人旅行者が負担する制度を整理する。
地方公共団体が観光施設やバスの料金を住民と住民以外で分けることの法的な枠組みは,観光施設の「市民料金」と「外国人料金」は許されるか―姫路城の縦覧料改定,京都市バスの市民優先価格,地方自治法244条3項と高根町簡易水道事件で扱う。

2 結論

① 国際観光旅客税の税率は,令和8年7月1日から,本邦からの出国1回につき1,000円から3,000円に引き上げられた(所得税法等の一部を改正する法律〔令和8年法律第12号〕)。
納税義務者は国籍や居住地を問わない「国際観光旅客等」であり,日本人も出国のたびに納める。
同日前に締結された運送契約で同日前に出国の日を定めたものは,運賃と別に徴収するとされている場合を除き,従前の1,000円による。

② 国際観光旅客税の収入見込額に相当する金額は,国際観光振興法12条により,国際観光旅客の円滑かつ快適な旅行のための環境の整備等の国際観光振興施策に充てるものとされている。

③ 宿泊税は,地方公共団体が条例で定め,総務大臣の同意を得て課する法定外目的税であり,宿泊者の国籍を問わない。
京都市は令和8年3月1日から1人1泊の宿泊料金が10万円以上の場合の税額を1万円とし,東京都は令和9年4月1日から定額制を宿泊料金の3%の定率制に改める。

④ 消費税の免税販売(輸出物品販売場制度)は,令和8年11月1日から,免税店が税込価格で販売し,購入日から90日以内の出国時に税関の確認を受けたときに免税が成立し,免税店が消費税相当額を返金する「リファンド方式」に移行する(所得税法等の一部を改正する法律〔令和7年法律第13号〕)。
免税を受けられるのは日本の非居住者である外国人旅行者等であり,ここには居住地による線が既に引かれている。

⑤ JESTA(電子渡航認証)は,令和8年法律第32号による入管法の改正で導入され,査証免除の対象者が短期滞在の活動のために上陸するときは,事前に電子的に情報を提供して出入国在留管理庁長官の認証を受けることが上陸の条件になる。
施行日は令和11年3月31日までの間において政令で定める日である。
認証の手数料は,実費と出入国及び在留の公正な管理に要する費用の額その他の事情を勘案して政令で定めるとされており,動画が提案するように観光地の保全費用を上乗せするには,手数料の趣旨との関係で別の法的手当てが必要になると考えられる(本記事の評価)。

第2 国際観光旅客税
1 課税の仕組み

国際観光旅客税は,国際観光旅客等の国際船舶等による本邦からの出国に課される(国際観光旅客税法5条)。
「国際観光旅客等」は,国際船舶等により本邦から出国する観光旅客その他の者であって,入管法25条1項又は60条1項の規定による出国の確認を受ける者等をいう(同法2条1項3号)。
入管法25条1項は外国人の出国,60条1項は日本人の出国に関する規定であるから,国籍を問わず課税される。

次の出国は非課税である(同法6条)。
① 航空機により本邦を経由して外国に赴く旅客で,入国後24時間以内に出国するもの(乗継ぎ旅客)として政令で定めるもの
② 天候その他やむを得ない理由により本邦に寄港した国際船舶等に乗っていた者として政令で定めるもの
③ 出国する日における年齢が2歳未満の者

航空会社等の国内事業者・国外事業者は,搭乗の時までに国際観光旅客等から国際観光旅客税を徴収して国に納付する(同法16条,17条)。
これらの特別徴収が適用されない場合,国際観光旅客等は搭乗の時までに自ら納付しなければならない(同法18条1項)。

2 令和8年7月1日の引上げと経過措置

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共有物分割と不動産取得税――価値を等しく分けても課税される場合(AI作成)

目次第1 共有物分割なら非課税とは限らない第2 非課税の範囲と税務上の価格1 持分を超える部分は非課税から除かれる2 売買価格や当事者間の評価をそのまま使わない第3 令和2年判決――一体利用する土地の地積按分1 617㎡と566㎡に分けた駐車場の事案2 最高裁が判断した範囲第4 令和4年判決――複数の不動産は個々に比較する1 全体の取り分が釣り合っていても相殺しない2 二つの判決で確認する事項は異なる第5 分割案を合意する前の確認表第6 別に検討すべき取得と税目第7 出典
第1 共有物分割なら非課税とは限らない

共有している土地を分けて各人の単独所有にする場合でも,不動産取得税が生じることがある。
当事者が「双方の取り分は同じ価値である」と合意したことと,税務上,従前の共有持分を超える取得がないことは,同じではない。
分割案を決める前に,分割前後の持分,不動産ごとの価格及び土地の評価単位を確認する必要がある。

本稿は,令和8年10月4日現在の法令と,最高裁判所第一小法廷令和2年3月19日判決及び最高裁判所第三小法廷令和4年3月22日判決を基礎に,この問題を整理する。

第2 非課税の範囲と税務上の価格
1 持分を超える部分は非課税から除かれる

地方税法73条の2第1項は,不動産の取得に対して,その所在地の道府県が取得者に不動産取得税を課する仕組みを定めている。
同法73条の7第2号の3は,共有物の分割による取得を非課税とする一方,取得者の分割前の持分割合を超える部分の取得を除外している。
したがって,「共有物分割」という登記原因や合意書の表題だけでは,取得全部が非課税とは判断できない。

2 売買価格や当事者間の評価をそのまま使わない

同法73条の13第1項は,課税標準を取得時の不動産の価格とし,同法73条の21第1項本文は,固定資産課税台帳に登録された価格により課税標準となるべき価格を決定すると定める。
価格の登録がない不動産や,同条1項ただし書の特別の事情がある不動産については,同条2項により固定資産評価基準に基づいて価格を決定する。

当事者間の売買相場,不動産鑑定による評価,相続税の評価方法を参考にした配分及び固定資産評価による価格を混同しないことが重要である。
共有者間の公平な分配を考える資料と,不動産取得税の課税判断に用いる資料を分けて準備する。

第3 令和2年判決――一体利用する土地の地積按分
1 617㎡と566㎡に分けた駐車場の事案

最高裁判所第一小法廷令和2年3月19日判決(平成31年(行ヒ)第99号,民集74巻3号227頁)は,各2分の1の持分で共有していた土地を分筆し,一方が617㎡,他方が566㎡の土地を単独所有とした事案である。
判決本文は,裁判所公表の判決全文で確認できる。

分筆後の土地も構造物で物理的に区分されず,連続して舗装され,駐車区画の一部等が両土地にまたがっており,全体が駐車場として一体的に利用されていた。
課税庁は,両土地を一画地と認定して価格を算出し,617㎡の土地の価格を,全体の価格に617/1183を乗じて求めた。

この算定では,617㎡の土地の価格が,分筆前の土地の価格の2分の1を超える。
当該事件の持分超過部分に係る課税標準額は101万3000円,税額は3万0300円であった。
この税額は当該事件の処分内容であり,現在の個別案件の税額を示すものではない。

2 最高裁が判断した範囲

最高裁は,隣接する複数の宅地を一画地として認定し,画地計算法を適用する場合,各筆の評点数は,その画地の単位地積当たりの評点数に各筆の地積を乗じて算出すべきであるとした。
持分超過部分の判断のために評価するときや,各筆の所有者が異なるときにも,これと別の評価方法を採る理由はないと判断し,本件処分を適法とした。

この判決は,隣接する土地を常に一画地とするものではない。
形状,利用状況等から一体を成していると認められることが前提であり,「面積が持分割合を超えたら,どの土地でも直ちに課税される」と一般化することはできない。

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遺言による金銭信託の受益権を放棄した場合―代替取得者・遺産分割協議・課税関係(AI作成)

目次第1 問題の所在と結論第2 銀行の遺言信託と遺言による信託第3 信託が効力を生ずる時期第4 受益権放棄と遺言の代替条項第5 相続人全員の協議で変更する場合第6 相続税・贈与税の検討順序第7 設例による整理第8 実務上の確認資料第9 関連記事と出典
第1 問題の所在と結論

遺言に「一定の金銭を信託し,甲を受益者とする」と書かれているとき,甲が受益権を放棄することと,信託銀行に遺言執行を依頼しないことは別の行為である。遺言が「甲が受益権を放棄した場合は信託を設定せず,その金銭を乙らに分ける」と定めていれば,代替条項の文言,信託の効力が生じた時期,受託者への通知と引受け,乙らの取得原因を順に確認する必要がある。受益権の放棄だけで,常に遺産全体が未分割に戻るとはいえない。

税務上も「遺言を執行しなかったから贈与税はない」「全員で協議したから常に相続税だけである」とは決められない。遺言の代替条項による被相続人からの取得なのか,成立後の信託に関する権利の無償移転なのか,信託終了による残余財産取得なのか,別の取得原因なのかを,民事上の経過とともに検討する。本記事は一般的な整理であり,代替条項を伴う遺言による信託の受益権全部放棄について,同一事実関係の税務判断を示した裁決・判決を確認したものではない。

第2 銀行の遺言信託と遺言による信託

銀行の商品名である「遺言信託」は,遺言書の保管・遺言執行等のサービスをいうことがある。他方,信託法3条2号の遺言による信託は,遺言により受託者に財産を管理・処分させ,受益者に受益権を与える制度である。一つの遺言に両方が登場することもあるため,銀行が「遺言執行者」なのか「受託者」なのかを条項ごとに特定する。遺言執行契約を解約しても,それだけで信託の設定条項や代替取得者の指定が消えるわけではない。

第3 信託が効力を生ずる時期

信託法4条2項は,遺言による信託は遺言の効力の発生によって効力を生ずると定める。受託者への送金を信託の成立時点と当然に捉えてはならない。受託者となるべき者が引き受けない場合は信託法5条の手続と遺言の代替条項を確認する。受託者の不引受けと受益者の放棄は当事者も法的効果も異なる。

信託法4条4項は,信託行為に停止条件又は始期が付されている場合,その成就又は到来によって信託が効力を生ずると定める。したがって,遺言の効力発生時に当然に信託が効力を生ずるという原則と,条項に基づく例外を区別する。受託者への送金前であるという事実だけでは,信託が未発効であることの根拠にならない。

第4 受益権放棄と遺言の代替条項

信託法99条1項は,受益者が信託行為の当事者である場合を除き,受託者に対する意思表示によって受益権を放棄できるとし,同条2項は放棄した者が初めから受益権を有しなかったものとみなす。したがって,放棄の相手方,時期,書面の到達を記録する必要がある。もっとも,この民事上の遡及効から,あらゆる税務関係が自動的に相続開始時に遡って決まると即断できない。

遺言に「受益者が放棄した場合は信託を設定しない」とあるときは,その文言が信託設定の条件・失効事由をどう定めるか,既に効力を生じた信託の扱いをどう整理するかが問題となる。さらに,代替条項が指定する取得者と割合を確認する。代替条項により他の相続人が金銭を取得するなら,単に「信託をやめる」案でも,遺産全体の取得割合が変わり得る。

遺言本文に「受益権を放棄した場合は信託を設定せず,金銭を指定した者に取得させる」とある一方,遺言に組み込まれた別紙信託条項に「受益権放棄により信託が終了し,残余財産を指定した者に分配する」とある場合,両条項の整合性を検討しなければならない。前者は遺言者からの直接の代替取得を,後者は効力を生じた信託の終了と残余財産の取得を示す読み方があり,同じ取得者・割合であっても取得原因は同じとは限らない。本文と別紙の一体性,適用順序,信託の効力発生条件,放棄の意思表示の到達及び執行状況を確認する。このような併存条項に対する判断を,文言の一部又は送金の有無だけで確定しない。

第5 相続人全員の協議で変更する場合

遺言と異なる最初の相続人全員の協議を行う場合,預貯金,証券,不動産を財産別に特定し,信託に充てる予定の金銭と受益権の扱いも明記する。遺言執行者への指図だけで,既に生じた受益権や受託者との法律関係を変更したことにはならない。必要な受益者・受託者の意思表示や信託行為の変更・終了の可否を別途検討する。

国税庁No.4176は「特定の相続人に全部の遺産を与える」遺言と異なる全員協議の例であり,金銭信託の代替条項と受益権放棄が組み合わさる事例を直接判断していない。金融資産だけ遺言どおり執行して残りを協議する場合には,財産ごとの取得時点・取得原因・金銭の移動を追える資料を残す。

第6 相続税・贈与税の検討順序

相続税法9条の2第1項は,受益者等が適正な対価を負担せずに信託に関する権利を取得した場合,信託の効力が生じた時に,委託者から贈与又は遺贈により取得したものとみなす。受益者が後に放棄し,別の人が対価なしで利益を受けるなら,同条2項・3項・4項のどの場面に当たるかを調べる。国税庁の相続税法基本通達9の2-4は,一部の権利の放棄・消滅後に他の受益者等が取得したものとみなされる場合を説明する。国税庁の解説は全部放棄にも同様の課税関係が生じ得ると述べる一方,信託の終了事由にもなり得るとする。

遺言の代替条項によって遺言者から直接金銭を取得する場合は,その相続又は遺贈について相続税を検討する。一方,受益者等の存する信託が終了し,他の者が適正な対価を負担せずに残余財産を受けるべき又は帰属すべき者となる場合には,相続税法9条の2第4項により,終了直前の受益者等からの贈与とみなされることが問題となる。終了直前の受益者等であった取得者が,従前の信託に関する権利に相当する残余財産を取得する部分は除かれる。従前の受益者等の死亡に基因する終了の場合は,みなし遺贈となる。遺言者の死亡後に受益者が放棄したというだけで,その終了が受益者等の死亡に基因するものになるわけではない。

相続税法基本通達9の2-5は,同項の対象を,信託行為で指定された残余財産受益者等に限定していない。受益権を他の相続人へ譲渡する契約がなくても,信託終了と残余財産取得によるみなし贈与の問題は残る。信託法99条2項の民事上の遡及効と,税法上の取得時点・移転元の判定を同一視しない。ただし,遺言本文の不設定条項と別紙の終了条項が併存する場合に,どちらの取得原因として取り扱うべきかを直接判断した同一事実関係の裁決・判決は,本記事で確認できていない。上記の一般規定だけから個別事案の贈与税を確定しない。

第7 設例による整理

遺言者が金銭の一部を信託してAを受益者とし,「Aが受益権を放棄するときは信託を設定せず,その金銭をA・B・Cに所定割合で取得させる」と定めたとする。まずAが放棄しなければ,原則としてAの受益権と受託者の地位を確認する。Aが放棄する場合は,放棄の意思表示と到達,代替条項の発動,金銭の帰属を確認する。B・Cが金銭を取得するなら,Aが放棄したこととB・Cが無償で利益を得たことの税法上の関係も検討する。A・B・Cがその後に遺産全体の別の配分を協議する場合は,先の取得と後の協議を時系列で記録する。

例えば,本文が放棄時の金銭の直接取得を定め,別紙が放棄による信託終了と同じ割合の残余財産分配を定める設例では,まず双方の条項を対照して取得原因を確定する。直接の相続・遺贈と整理できる場合は相続税の検討となり,既に効力を生じた信託の終了と整理される場合は相続税法9条の2第4項を検討する。金銭額に分配割合を掛けただけで,各取得者の贈与税の課税価格が直ちに確定するわけではない。信託終了直前の受益者等,従前の権利に相当する部分の除外,財産評価及び取得時点を確認する。

第8 実務上の確認資料

確認する資料は,①遺言全文と変更遺言,②信託設定条項・放棄時の代替条項,遺言本文と別紙信託条項の対応表,停止条件・始期及び終了条項,③遺言執行者と受託者の就職・引受け・辞退資料,④受益権放棄書と受託者への到達記録,⑤信託口座と一般の遺産口座の移動記録,⑥全員協議書案,⑦相続税評価資料と申告書の取得者別内訳である。協議前の段階では,放棄や送金を先行させることで選択肢が変わらないかを確かめる。

第9 関連記事と出典

関連記事:清算型遺言の清算金から信託を設定する場合,遺言を一部執行し残りを遺産分割協議で変更する場合,遺言と異なる遺産分割協議はできるか。

法令:信託法3条,4条,5条,99条,163条,164条,182条。相続税法9条の2。
国税庁:相続税法基本通達9の2関係,同通達9の2関係の解説,信託終了時の課税に関する通達解説,タックスアンサーNo.4176。

東京国税局の税理士専門官だより(令和4年~令和6年)-税理士等情報せん,にせ税理士,国税OB税理士の業務制限及び調査妨害(AI作成)

目次第1 この記事の対象と資料1 税理士専門官だよりとは2 この資料を読むときの注意第2 税理士等情報せん1 作成を求める場面と主な違反行為2 作成の流れ3 情報せんの活用第3 にせ税理士への対応1 にせ税理士とは2 端緒の例3 税理士事務所職員と記帳代行業者ができる業務4 税理士証票の確認5 想定される違反行為と罰則6 にせ税理士に関する裁判例第4 退職した税務職員の業務制限1 税理士法42条の内容と趣旨2 「職の所掌に属すべき事件」の範囲3 期間の数え方と違反の具体例4 違反の効果と広告の表示第5 調査妨害への対応1 調査妨害の類型と税務職員の対応例2 調査非協力との区別3 記録の重視と受忍義務第6 令和4年度改正の紹介第7 弁護士及び依頼者にとっての意味第8 資料確認の範囲と限界第9 出典・関連記事1 検討した資料2 法令及び告示3 裁判例4 関連記事
第1 この記事の対象と資料
1 税理士専門官だよりとは

本記事は,東京国税局の税理士専門官が局内及び管内税務署の職員向けに発行している「税理士専門官だより」のうち,令和4年分から令和6年分までの各号を読み,税務署が税理士法違反をどのように把握し,懲戒処分や告発につなげようとしているかを整理するものである。
調査の基準日は令和8年10月2日である。

当サイトに掲載している写しは,令和4年分(12頁),令和5年分(16頁)及び令和6年分(15頁)の3点である。
各号には,7月の第1号から翌年6月の第5号までの通し番号と,「特別号」又は「号外」があり,文書分類は「共通(法令・通達)」,「情報通信類」とされている。

主な号と題名は次のとおりである。
①令和4年2月第3号「にせ税理士防止月間」,令和4年3月第4号「退職した税務職員に対する税理士業務の制限」,令和4年5月第5号「「税理士事務功績者」への表彰」,令和4年5月特別号「税理士法の一部が改正されました。」,令和4年7月第1号「「税理士等情報せん」を作成しましょう」,令和4年11月第2号「「税理士証票」を確認していますか?」
②令和5年2月第3号「にせ税理士防止月間」,令和5年3月第4号「退職した税務職員に対する税理士業務の制限」,令和5年6月第5号「「税理士事務功績者」への表彰」,令和5年6月特別号(令和5年4月施行の改正の紹介),令和5年7月第1号「「税理士等情報せん」はこうして活用されます!」,令和5年11月第2号「「税理士証票」を確認していますか?」
③令和6年2月第3号「その人、本当に税理士ですか??」,令和6年3月第4号「退職した税務職員に対する税理士業務の制限」,令和6年6月第5号「「税理士事務功績者」への表彰」,令和6年6月号外「税理士の調査妨害には、「毅然とした対応」と「詳細な記録」を!」,令和6年7月第1号「税理士等に対する懲戒処分の実施に向けて」,令和6年11月第2号「調査最盛期!増える調査妨害に向けて」

2 この資料を読むときの注意

税理士専門官だよりは,東京国税局の職員に向けた内部の広報であり,税理士や納税者に対する法令上の義務を定めたものではない。
証拠資料の具体例,表彰を受けた職員が把握した違反の内容,調査妨害に対する税理士調査側の対応等は黒塗りとなっており,その部分は本記事でも扱わない。
表彰を受けた職員の氏名と所属は掲載されているが,本記事では記載しない。

各号に書かれた条文の説明には,現行法と異なる部分がある。
例えば,罰則の「懲役」は,令和7年6月1日から拘禁刑に改められている。
本記事では,税理士専門官だよりの記載と,現行の税理士法及び財務省告示で確認できる事項とを区別して記載する。
本記事で引用した税理士法の条文は,e-Gov法令検索がメンテナンス中であったため,判例秘書の現行法令アーカイブ(令和8年8月1日現在)で確認した。

第2 税理士等情報せん
1 作成を求める場面と主な違反行為

各号に共通する依頼は,税理士法違反行為に関する情報を把握したときは,違反事実に限らず「疑い」も含めて,速やかに「税理士等情報せん」を作成することである。

違反行為を把握する場面として,次の3つが挙げられている。
①調査・滞納整理事務
②面接,電話,投書等による情報提供
③申告書の収受や郵便開封事務(申告書の「控」の送付先が,納税者でも関与税理士でもない第三者の住所である場合など)

主な違反行為として紹介されているのは,次の4類型である。
①脱税相談等をした場合の懲戒(税理士法45条):脱税相談・指示等,事実に反することを知りながら正しくない内容の申告書を作成すること
②信用失墜行為の禁止(同法37条):税理士本人(税理士が代表者である法人を含む。)の脱税や申告漏れ,関与先の書類を預かったまま申告を怠る業務懈怠,令和6年分からは調査妨害
③非税理士に対する名義貸しの禁止(同法37条の2):非税理士が作成した税務書類への署名押印

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税理士の懲戒処分の手続と量定-税理士懲戒処分等事務取扱規程,聴聞事務取扱規程及び税理士事務提要を現行法で読む(AI作成)

目次第1 この記事の対象と資料1 取り上げる資料2 資料を読むときの注意第2 懲戒処分の種類と対象となる行為1 懲戒処分の種類2 脱税相談等をした場合の懲戒(税理士法45条)3 一般の懲戒(税理士法46条)4 税理士法人と通知弁護士第3 端緒の把握から処分までの流れ1 端緒の把握2 実態確認と税理士法上の調査3 税務署長の報告から財務大臣への進達まで4 予告通知と弁明又は聴聞5 国税審議会への諮問と処分6 公告と国税庁の公表第4 処分の量定1 財務省告示の総則2 類型ごとの量定3 量定についての裁判例第5 処分の効力と処分後の措置1 効力の発生時期2 処分を受けた税理士への説明事項3 登録抹消の制限,除斥期間及び税理士であった者に対する決定第6 不服申立てと取消訴訟第7 実務上の着眼点1 税理士の不正を疑う依頼者から相談を受けた場合2 懲戒の手続に付された税理士を代理する場合3 通知弁護士として税理士業務を行う弁護士第8 公開後に確認した事項と確認の範囲1 公開後に確認した事項2 なお確認できていない事項第9 出典・関連記事1 検討した資料2 法令及び告示3 裁判例4 関連記事
第1 この記事の対象と資料
1 取り上げる資料

本記事は,税理士に対する懲戒処分が,税務署での端緒の把握から財務大臣の処分と公告に至るまで,どのような手続で行われるかを,国税当局の内部規程と現行法に沿って整理するものである。
調査の基準日は令和8年10月2日である。

中心となる資料は,当サイトに掲載している次の4点である。
①税理士懲戒処分等事務取扱規程(昭和57年7月8日大蔵省訓令特第13号。平成25年7月時点の写し)
②税理士法聴聞事務取扱規程(平成7年4月13日大蔵省訓令特第8号。平成25年7月現在の写し)
③税理士法事務取扱規程(昭和26年12月22日国税庁訓令特第29号。平成25年7月時点の写し)
④国税庁総務課の税理士事務提要(表紙は平成14年7月。本文は平成20年から平成23年までの事務運営指針等を引用しており,その頃までの改正を反映した版である)

税理士事務提要は,国税局及び税務署で税理士事務を担当する職員の標準的な事務手続を定めたものであり,総則,税理士会,情報の収集,調査等,指導,懲戒処分等,税理士法52条違反への対応,税理士登録に係る確認等,臨時の税務書類の作成等の許可,通知弁護士等,退職予定者に対する指導等,犯罪収益移転防止法及び中小企業等協同組合の各章から成る。
当サイトに別に掲載している「税理士事務提要(平成14年7月)」のPDFも,各頁の画像が④と同じであり,別の版ではない。

2 資料を読むときの注意

上記①から④までは,いずれも平成25年頃までの内容であり,その後の税理士法の改正を反映していない。
本記事では,資料に書かれた手続と,現行の税理士法,行政手続法,行政不服審査法及び財務省告示で確認できる事項とを区別して記載する。

特に注意すべき違いは,次の4点である。
①税理士業務の停止の上限は,資料では「1年以内」であるが,現行の税理士法44条2号は「二年以内」である。
②処分に対する不服申立ては,資料の通知書様式では財務大臣に対する異議申立てであるが,現行法では審査請求である。
③懲戒処分の公告は,資料では官報によるものとされているが,現行の税理士法47条の4は,財務省令で定める方法により閲覧できる状態に置く措置と官報による公告の両方を求めている。
④税理士であった者に対する「懲戒処分を受けるべきであつたことについての決定」(同法48条)と懲戒の除斥期間(同法47条の3)は,資料の作成後に設けられた制度である。

本記事で引用した税理士法,行政手続法及び行政不服審査法の条文は,e-Gov法令検索がメンテナンス中であったため,判例秘書の現行法令アーカイブ(令和8年8月1日現在)で確認した。

第2 懲戒処分の種類と対象となる行為
1 懲戒処分の種類

税理士法44条は,「税理士に対する懲戒処分は、次の三種とする。」とし,「戒告」,「二年以内の税理士業務の停止」及び「税理士業務の禁止」を掲げる。
処分をするのは財務大臣である(同法45条,46条)。

税理士業務の禁止の処分を受けた者は,処分を受けた日から3年を経過するまで税理士となる資格を有しない(同法4条6号)。
これに対し,業務の停止の処分を受けた者は,停止期間の満了によって税理士業務を再開することができる。

2 脱税相談等をした場合の懲戒(税理士法45条)

税理士法45条1項は,税理士が「故意に、真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき、又は第三十六条の規定に違反する行為をしたとき」は,「二年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分をすることができる」と定める。
同条2項は,「相当の注意を怠り、前項に規定する行為をしたとき」は,「戒告又は二年以内の税理士業務の停止の処分をすることができる」と定める。

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組織再編税制の適格判定と欠損金の引継制限―東京国税局審理課「組織再編税制一問一答」(平成24年6月)の41問と現行法との違い(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 対象とする資料2 結論第2 一問一答の構成第3 共通事項1 支配関係と完全支配関係2 適格か非適格かは選べない3 資産等の移転の取扱い4 「同一の者」と「一の者」第4 適格合併の判定1 3つの類型と対価要件2 外国法人が株主である子会社同士の合併3 合併後に合併法人が他社から資本参加を受ける場合4 無対価合併5 合併後に更に合併を予定している場合6 事業規模要件の比較期間7 三角合併と親法人株式第5 適格分割と現物出資1 無対価分割は分割型分割か分社型分割か2 孫会社への無対価分割は適格にならない3 分割後の資本参加と分割後の合併4 「主要な資産及び負債」の判定5 外国法人による国外資産の現物出資第6 未処理欠損金額の引継ぎと制限1 引継ぎの原則と繰越期間2 引継制限がかからない3つの場合3 設立日を基準にする場合の除外4 制限される欠損金額5 支配関係の起算は当事者の間で見る6 合併法人自身の欠損金額の使用制限第7 包括的否認規定(法人税法132条の2)1 一問一答の問72 最高裁平成28年2月29日の2判決3 5年を超える支配関係があっても否認された下級審の例4 実務上の意味第8 合併後の会計処理・申告・消費税1 棚卸資産の評価方法2 減価償却資産の取得日と償却方法3 申告期限の延長4 消費税第9 一問一答と現行法の主な違い第10 実務上の判断手順と注意点1 判断手順2 注意点第11 本記事で扱わない事項第12 関連記事第13 出典1 本記事で読んだ資料2 法令・通達3 裁判例
第1 本記事の対象と結論
1 対象とする資料

本記事は,当ブログに掲載している次の資料を読んで,組織再編税制(合併,分割,現物出資等に係る法人税等の取扱い)の実務上の要点を整理するものである。
基準日は令和8年10月1日である。

東京国税局課税第一部審理課「組織再編税制一問一答(平成24年6月)」

資料は,冒頭の「組織再編税制関係インデックス」4頁と,41問の一問一答から成る全115頁のスキャンPDFである。
インデックスの各行には,掲載区分として「組織再編税制一問一答(平成24年6月)」,作成部署として「東京国税局課税第一部審理課」と記載されており,インデックスの欄外には「2013/9/11」の印刷日時が付いている。
各問は【質問】【回答】【解説】【関係法令通達】の順で書かれ,末尾に「平成23年7月1日現在の法令・通達に基づいて作成しています。」という注記がある。

以下,この資料を「一問一答」と呼び,問の番号はインデックスの番号(001から041まで)に従って「問1」のように示す。
一問一答は,国税局の職員が作成した解説資料であり,法令でも国税庁長官の通達でもないので,納税者や裁判所を拘束するものではない。
もっとも,課税庁の担当部署が組織再編税制をどのように読んでいるかを具体例で示している点で,実務上の参考になる。

本記事では,一問一答の結論が現在も使えるかを確かめるため,法人税法,法人税法施行令及び消費税法施行令の現行条文を照合した。
照合には,判例秘書の「現行法令アーカイブ」(画面の表示では「令和8年8月1日 現在の現行法令」)を用いた。
本記事の作成時は,e-Gov法令検索がシステムメンテナンス中で利用できなかったため,e-Govでの照合はしていない。

2 結論

結論は次のとおりである。
①組織再編成が適格か非適格かは,法令の要件に当たるかどうかで決まり,納税者が選ぶことはできない(問3)。
②適格要件は,合併等の当事者の関係(完全支配関係,支配関係又は共同事業)ごとに異なり,再編後に資本関係が変わる予定や,再編後に更に合併する予定があるときは,その予定まで含めて判定する(問8,問11,問12,問18から問22まで)。
③未処理欠損金額の引継ぎと合併法人自身の欠損金額の使用は,5年前の日からの支配関係又はみなし共同事業要件がなければ制限され,設立日を基準にする特例にも,制限を免れるための迂回を封じる除外規定がある(問25から問34まで)。
④形式的に要件を満たしても,組織再編成を利用した租税回避と認められると,法人税法132条の2により否認され得る(問7)。
最高裁判所は,平成28年2月29日の2つの判決で,その判断基準を示している。
⑤一問一答は平成23年7月1日現在の法令に基づくので,欠損金額の繰越期間(現在は10年),無対価合併・無対価分割の適格要件,再編後の再編の扱い,親法人株式のみなし譲渡の項番号,減価償却の方法等は,現行法に読み替えて使う必要がある。

第2 一問一答の構成

一問一答の41問は,インデックスの分類によると次のとおりである。

分類問主な内容共通問1~問5支配関係と完全支配関係,適格・非適格の選択の可否,資産等の移転の取扱い,「同一の者」と「一の者」合併問6~問12,問14,問15,問25~問34合併の適格判定,三角合併,未処理欠損金額の引継ぎと制限分割問16~問23,問38無対価分割,分割後の資本参加・合併,主要な資産負債,新設法人の償却率現物出資問24外国法人による現物出資その他問13,問35~問37,問39~問41事業規模要件,棚卸資産・減価償却資産,申告期限の延長,消費税
第3 共通事項
1 支配関係と完全支配関係

一問一答は,「支配関係」を,一の者が法人の発行済株式等の50%を超えて直接又は間接に保有する関係と,一の者との間にその関係がある法人相互の関係であると説明する(問1)。
「完全支配関係」は,これを100%にしたものである(問2)。

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特定財産承継遺言と異なる最初の相続人全員の協議――登記原因と課税関係(AI作成)

目次第1 検討の対象と結論1 「最初の協議」であることの意味2 本記事の資料上の限界第2 まず確認すべき判決・裁決1 最高裁平成3年4月19日判決――遺言による取得の時点2 さいたま地裁平成14年2月7日判決――最初の全員協議の民事上の効力3 最高裁平成22年12月16日判決――中間の権利移転を省略する登記の限界4 国税不服審判所の裁決――後のやり直しを「最初の協議」と混同しない第3 事例別にみた協議の位置付け1 特定財産承継遺言があり、執行・登記前に最初の全員協議をする場合2 全遺産を一人に取得させる遺言を、最初の分割で変更する場合3 一部の財産について遺言を執行し、残部だけを協議する場合4 遺言どおりの取得後、又は最初の分割後に変更する場合5 金銭信託の代替条項がある場合第4 登記原因の検討1 民事上の有効性と登記原因は別の確認事項である2 登記前に確認する資料第5 課税関係の検討1 真正な代償分割である場合2 別個の低額譲渡・贈与と評価される場合3 後の再分割・申告訂正の場合第6 実務上の確認順序1 合意前に作る資料第7 出典
第1 検討の対象と結論
1 「最初の協議」であることの意味

特定の財産を特定の相続人に「相続させる」と定めた遺言がある場合でも、相続開始後、相続人全員がその財産を別の相続人に取得させることについて最初に合意することがある。この合意を、有効な遺産分割として扱えるか、遺言によりいったん取得した相続人からの贈与・交換・譲渡として扱うべきかは、登記と税務の双方に影響する。
結論を先に述べると、「全員による最初の協議」という形式だけで登記原因や課税関係が一律に確定するわけではない。遺言の文言、対象財産の範囲、遺言執行の状況、全員の合意内容、対価の性質及び従前の申告・登記を分けて確認する必要がある。

2 本記事の資料上の限界

本記事で確認した裁判例・裁決には、特定財産承継遺言がある不動産について、最初の全員協議により別の相続人が代償金を支払って取得した事案の登記原因と相続税・贈与税・所得税のすべてを一体として確定したものはない。民事上の協議の効力を認めた判決を、直ちに税務又は登記の先例として扱うことはできない。
以下では、資料が直接判断した事項と、実務上検討すべき事項を区別する。

第2 まず確認すべき判決・裁決
1 最高裁平成3年4月19日判決――遺言による取得の時点

最高裁平成3年4月19日判決は、特定の遺産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言について、特段の事情がない限り、その遺産は被相続人の死亡時に直ちに当該相続人に承継されると判断した。後の協議を検討する出発点は、遺言によるこの権利移転である。
もっとも、この判決自体は、その後の相続人全員による最初の合意の効力、登記原因又は課税関係を判断したものではない。

2 さいたま地裁平成14年2月7日判決――最初の全員協議の民事上の効力

同判決の事案では、土地全部を一人の相続人に相続させる遺言があったが、相続人全員は、別の相続人に土地の74%、残る二人に各13%を帰属させる内容の協議をした。裁判所は、遺言が協議を禁じておらず、第三者の権利も害しないなどの事実関係の下で、協議の効力を認めた。判決は、その合意に贈与や交換を含む混合契約の性質があり得ることにも触れた上で、通常の遺産分割と同様に取り扱うことが適切と述べている。
これは当該協議の民事上の効力に関する判断である。登記申請の原因を一律に「遺産分割」とできることや、贈与税・譲渡所得税が生じないことまで判示したものではない。また、代償金を伴う事案の税務を判断したものでもない。

3 最高裁平成22年12月16日判決――中間の権利移転を省略する登記の限界

同判決は、贈与を受けた者が死亡して相続が生じた事案について、贈与と相続という中間の権利移転を飛ばし、最終取得者に「真正な登記名義の回復」を原因として直接移転登記をすることは認められないとした。
これは特定財産承継遺言と全員協議の事案ではない。したがって、同判決をそのまま当てはめることはできないが、実際に生じた権利移転と異なる登記原因を便宜的に選べないことを検討する資料となる。

4 国税不服審判所の裁決――後のやり直しを「最初の協議」と混同しない

平成17年12月15日裁決では、有効に成立した最初の遺産分割の後で、錯誤を理由に再分割したと主張された事案につき、贈与税の課税が維持された。平成23年12月6日裁決は、全財産を各2分の1とする遺言、相続税申告後の紛争及び遺留分をめぐる和解に関するもので、相続税法55条等の適用が争われた。
両裁決は「遺言と異なる最初の全員協議」そのものを判断したものではない。協議がいつ成立したのか、従前の申告・分割が何を前提にしていたかによって論点が変わることを示す資料である。

第3 事例別にみた協議の位置付け
1 特定財産承継遺言があり、執行・登記前に最初の全員協議をする場合

相続人全員の合意により遺言と異なる帰属を定める協議は、さいたま地裁判決のように民事上有効と評価され得る。ただし、遺言による死亡時の権利承継を踏まえると、合意の法的構成にはなお検討を要する。対象財産の取得者を変更した理由、他の遺産との調整、支払金の位置付け、第三者の権利及び遺言執行者の権限を確認すべきである。
協議書の表題を「遺産分割協議書」としたことだけで、登記及び税務の取扱いは決まらない。

2 全遺産を一人に取得させる遺言を、最初の分割で変更する場合

国税庁タックスアンサーNo.4176は、遺言で財産全部を一人の相続人に取得させることとされていたが、相続人全員の協議で遺言と異なる分割をした場合、取得財産について相続税の課税対象として扱い、相続人間の贈与税の問題は生じないと説明する。関連する質疑応答は、全財産の包括遺贈を題材にしている。
この説明を、特定の土地だけを取得させる遺言と、別途執行される預貯金等がある事案へ無条件に拡張することはできない。個別の遺言と協議の構造を示して税務上の確認を要する。

3 一部の財産について遺言を執行し、残部だけを協議する場合

預貯金等は遺言どおりに払い戻し、土地だけを別の相続人が金銭を支払って取得する場合、土地の移転を遺産全体の分割調整として説明できるかが問題となる。協議書に「代償金」と記載しただけでは、遺言に基づいて土地を承継した者からの別個の移転という評価を排除できない。

(続きを読む...)特定財産承継遺言と異なる最初の相続人全員の協議――登記原因と課税関係(AI作成)

確定申告期の税務署の事務運営-令和5年分の大阪国税局長指示に見る申告相談・還付審査・照会文書(AI作成)

目次第1 この記事の対象と資料1 資料の名称と構成2 この資料を読むときの注意第2 確定申告会場の運営方針1 開設期間,相談受付時間及び入場整理券2 自力作成とスマホ申告の推進3 会場で受けない相談第3 申告相談の場面で税務署が確認していた事項1 納税者を代理する理由のない者2 源泉徴収と印紙税3 納付と還付の口座4 他の税務署の管内に住む納税者第4 インボイス制度と消費税の申告相談1 消費税の申告相談の流れ2 2割特例の選択に関する注意3 登録状況を伝えるときの本人確認第5 還付申告の審査と支払先への照会1 還付までの期間2 還付審査の体制3 支払先への照会と,文書の根拠の表示4 住宅借入金等特別控除の確認第6 提出事実と個人情報の管理1 収受日付印の扱い2 利用者識別番号を誤って送信した場合3 マイナンバーの本人確認第7 依頼者に助言するときの確認事項第8 本記事で扱わない事項第9 出典・関連記事1 検討した資料2 法令3 国税庁の公表資料4 関連記事
第1 この記事の対象と資料
1 資料の名称と構成

本記事は,大阪国税局長が管内の各税務署長に宛てた「令和5年分確定申告期における事務実施上の留意事項について(指示)」(令和5年12月12日付け)を読み,確定申告期に税務署がどのような方針で申告相談,申告書の収受及び還付審査を行っていたかを整理するものである。
調査の基準日は令和8年10月1日である。

当サイトに掲載している写しは全582頁であり,鑑文の後に,本文に当たる「別冊」(目次6頁,本文52頁),別添1から別添18まで,別冊様式(チラシ,チェック表,照会文書の様式等)及び国税庁の公表資料(インボイス制度の手引,Q&A等)が続く。
鑑文によれば,同指示は,令和5事務年度の課税部門の事務運営に関する指示,閉庁日対応に関する指示,個人課税事務提要,資産税事務提要等の通達に定めるところによるほか,別冊のとおり実施するよう求めるものである。

不正還付の未然防止に関する審査の着眼点(別冊45頁から47頁まで)及び別冊様式の一部は黒塗りとなっており,その部分の内容は本記事でも扱わない。

2 この資料を読むときの注意

同指示は,令和5年分の確定申告期(令和6年2月から3月まで)について,大阪国税局管内の税務署に向けた内部の事務運営を示すものである。
現在の法令,全国の税務署の運用又は令和8年現在の会場運営を直接示すものではない。
例えば,申告書等の控えへの収受日付印の押なつは,令和7年1月から取りやめられており,同指示が前提とした取扱いとは異なる。

そのため,本記事では,同指示に書かれた事項と,法令又は国税庁の現行の公表資料で確認できる事項を区別して記載する。
同指示から,税務署が何を重視し,どのような場面で別の部門へ引き継ぐのかを読み取ることは,依頼者に申告や照会への対応を助言するときの背景知識として役立つ。

第2 確定申告会場の運営方針
1 開設期間,相談受付時間及び入場整理券

同指示では,確定申告会場の開設期間を2月16日から3月15日まで,相談受付時間を16時までとし,全署統一としていた(別冊7頁)。
入場には整理券を要し,当日配付のほか,国税庁のLINE公式アカウントを通じたオンラインの事前発行を行い,電話や対面での事前発行は行わないとしていた(別添1)。
オンライン発行は1日当たり発行数の6割から8割を目安とし,申告期限間際は2割程度に減らすとされていた。

京都市内,大阪市内及び神戸市内の3か所には,合わせて20署を対象とする合同会場が置かれた(別冊14頁)。
閉庁日の対応は令和6年2月25日(日曜日)に管内56署で行い,そのうち41署は合同会場で対応するとされていた(別冊44頁)。
同指示は,令和8事務年度の全署を対象とした内部事務のセンター化と次世代システムの運用開始による部内業務のペーパーレス化を見据え,署外会場を署内へ戻すことなどの検討も求めていた(別冊44頁)。

2 自力作成とスマホ申告の推進

同指示の基本的な考え方は,マイナンバーカードを利用した自宅等からのe-Tax申告と,振替納税やスマホアプリ納付を中心とするキャッシュレス納付を強力に推進するというものである(別冊1頁)。
会場でも,来場者が自分でスマホやパソコンを操作して申告書を作成し,職員等は操作補助と税法の質問への対応に回るという「自力作成」の考え方が採られていた。

スマホコーナーについては,故障や破損のトラブルを防ぐため,スマホの操作は来場者本人が行い,職員等は操作しないとされていた(別冊25頁,別添11)。
ID・パスワード方式の発行について,別添11は,配偶者等の親族を含む本人以外の者には発行できないことに留意するとしている。
また,スマホコーナーの利用者については送信前確認を実施せず,事後審査の対象とするとされていた(別添11)。
会場でスマホ申告をしたからといって,職員が内容を確認済みであるとは限らないということになる。

3 会場で受けない相談

(続きを読む...)確定申告期の税務署の事務運営-令和5年分の大阪国税局長指示に見る申告相談・還付審査・照会文書(AI作成)

節税目的の養子縁組は無効か―最高裁平成29年1月31日判決と相続税上の養子数制限(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と結論第2 最高裁平成29年1月31日判決1 民法802条1号2 最高裁の判断3 動機と法律行為の意思を分ける第3 養子縁組の民法上の効果第4 相続税上の養子数制限1 民法上の相続人と相続税計算上の人数は同じとは限らない2 実子として扱われる養子がある3 相続税法63条による否認第5 孫養子と相続税額の2割加算第6 縁組意思をめぐる主張立証1 証拠化する事項2 意思能力と縁組意思は別に検討する第7 相続対策として検討する際の注意第8 出典・参考資料
第1 本記事の対象と結論

本記事は,相続税の節税を主な目的として行われた養子縁組が民法上無効となるかを,最高裁平成29年1月31日第三小法廷判決(平成28年(受)第1255号),現行民法及び相続税法から整理するものである。
法令及び国税庁資料の基準日は令和8年10月1日である。

最高裁は,節税の動機と縁組意思は併存し得るため,専ら相続税の節税目的で養子縁組をしたというだけで,直ちに民法802条1号の「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとはいえないとした。

もっとも,民法上の縁組が有効であることと,相続税計算で養子をどの範囲まで法定相続人の数に算入できるかは別問題である。
税務上は養子数の制限,相続税額の2割加算及び相続税法63条による否認可能性を分けて確認する必要がある。

第2 最高裁平成29年1月31日判決

1 民法802条1号

民法802条1号は,人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき,養子縁組を無効とする。
問題は,節税を目的とすることが,親子関係を作る意思と両立するかである。

2 最高裁の判断

最高裁は,養子縁組をすることによる相続税の節税効果を発生させることを動機として縁組をする場合でも,直ちに縁組意思がないとはいえず,節税の動機と縁組意思は併存し得るとした。
そして,専ら相続税の節税目的で縁組をしたというだけで,直ちに民法802条1号の無効事由に当たるとはいえないと判断した。

本判決は,「節税目的の養子縁組は常に有効」と判示したものではない。
個別の事実から当事者間に縁組意思がなかったと認められる場合は,同号による無効が問題となり得る。

3 動機と法律行為の意思を分ける

相続税額を下げたいという動機があっても,当事者が法律上の親子関係を成立させる意思を有していれば,両者は併存し得る。
逆に,届出の外形があり税務資料が作成されていても,当事者が親子関係を作る意思を欠いていたと立証されれば,縁組無効の余地は残る。

したがって,訴訟では「節税目的だったか」だけでなく,「届出時に法律上の親子関係を成立させる意思があったか」を,直接・間接事実から検討する。

第3 養子縁組の民法上の効果

民法809条は,養子が縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得すると定める。
そのため,普通養子は原則として養親の子として相続人となり,実親との親族関係も原則として残る。

養子縁組の有効性を検討するときは,縁組意思だけでなく,年齢,配偶者の同意,未成年者を養子とする場合の家庭裁判所の許可その他の成立要件を個別に確認する。
本判決は,これら他の要件を不要とするものではない。

第4 相続税上の養子数制限

1 民法上の相続人と相続税計算上の人数は同じとは限らない

相続税法15条2項は,遺産に係る基礎控除などの計算に用いる「相続人の数」について,一定の普通養子を算入できる人数を制限している。
国税庁の説明によれば,被相続人に実子がいる場合は1人まで,実子がいない場合は2人までが原則である。

この制限は,人数を超える養子縁組を民法上無効にする制度ではない。
養子が民法上の相続人であることと,相続税の基礎控除,生命保険金・死亡退職金の非課税限度額及び相続税総額の計算で何人を算入するかを分ける必要がある。

2 実子として扱われる養子がある

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固定資産評価審査委員会への審査申出―書面審理・口頭意見陳述・照会と最高裁平成2年1月18日判決(AI作成)

目次

第1 審査申出の対象と期間
第2 現行法上の四つの手続を区別する
第3 最高裁平成2年1月18日判決
第4 平成2年判決を現行法で使う際の注意
第5 申出前に評価のどこを確認するか
第6 書面照会の作り方
第7 申出書と証拠の組立て
第8 決定後の訴訟
第9 出典及び確認状況

固定資産課税台帳に登録された価格に不服がある場合は,固定資産評価審査委員会に対する審査申出が原則的な救済手段となる。もっとも,現在の地方税法は書面審理を原則とし,申出人による口頭意見陳述,市町村長に対する書面照会及び委員会が必要と認める公開の口頭審理を別の手続として定めている。

最高裁平成2年1月18日判決は,旧地方税法下の口頭審理に関する判決である。そのため,判決の手続結論をそのまま現在の審査申出に当てはめることはできない。他方,評価の手順,方法及び根拠を,申出人が不服の対象を特定できる程度に明らかにすべきであるという考え方は,現在の申出書,口頭意見陳述及び書面照会を設計する上でも重要である。

第1 審査申出の対象と期間

固定資産評価審査委員会に申し出ることができるのは,原則として固定資産課税台帳に登録された「価格」に関する不服である。納税義務者,課税標準,税額,住宅用地の認定等,価格以外の事項に関する不服は,市町村長に対する審査請求等,別の手続となる。

申出人は,当該固定資産の納税者である。申出期間は,一般に,固定資産課税台帳に価格等を登録した旨の公示の日から納税通知書の交付を受けた日後3か月までとされるが,価格の修正等があった場合は起算点が異なる。年度,処分の種類,通知日及び公示日を最初に確認すべきである。

登録価格を争う者は,原則として,委員会の決定を経ずに直ちに取消訴訟を提起することができない。期間管理を誤ると実体的な主張以前に救済を失い得るため,相談受任時に納税通知書,課税明細書,縦覧・閲覧資料及び到達日を保存する必要がある。

第2 現行法上の四つの手続を区別する

現行地方税法433条2項は,委員会が審査申出書,市町村長の弁明書及び反論書等を基礎として書面審理を行うことを原則とする。その上で,申出人の求めがあれば,委員会は申出人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。

この口頭意見陳述は,申出人が書面に記載した理由を補充して説明する機会である。大阪市の案内では,この場に市側関係者は出席しないとされている。市側担当者への質問の場と誤解せず,あらかじめ評価内容の説明を担当税務事務所等から受け,なお残る争点を申出書と意見陳述に落とし込むべきである。

同条5項は,申出人が委員会を通じて市町村長に書面で照会できる制度を定める。ただし,照会は具体的かつ個別的であり,重複せず,意見を求めるものではなく,回答に不相当な時間又は費用を要しないこと等が必要である。他の納税者の固定資産に関する事項も対象外となり得る。

同条6項の公開の口頭審理は,委員会が審査のため必要があると認める場合に,申出人と市町村長を出席させて行う手続である。申出人の求めにより与えられる口頭意見陳述とは同じではない。

第3 最高裁平成2年1月18日判決

最高裁第一小法廷平成2年1月18日判決・昭和61年(行ツ)第138号は,旧地方税法下の固定資産評価審査委員会の口頭審理を扱った。

判決は,この審査手続が,簡易迅速に納税者の権利救済を図る行政上の不服審査手続であり,民事訴訟と同程度に厳格な手続が要求されるものではないとした。その上で,委員会は,申出人が不服の対象を特定して反論できるよう,評価の手順,方法及び根拠を合理的に必要な程度で明らかにすれば足りるとした。

また,当時の事案では,宅地の評価を争うために,同一状況類似地域にあるすべての土地の評価額を明らかにする必要はないとされた。委員会が期日外に調査した結果についても,調査記録及び資料を閲覧でき,申出人に反論・反証の機会があるなら,その結果を改めて口頭審理で提示することまでは必要でないと判断された。

第4 平成2年判決を現行法で使う際の注意

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国税庁・e-Taxをかたる詐欺メールとAI自動音声―正規通知の見分け方と事務所対応(AI作成)

目次

第1 結論第2 国税庁が送らない連絡第3 正規のe-Taxメール第4 AI・自動音声電話の見分け方第5 不審な連絡を受けたときの初動第6 証拠保全と相談先第7 事務所の予防ルール第8 出典・参考資料
第1 結論

国税庁・国税局・税務署又はe-Taxを名乗るメール,SMS,LINE若しくは電話を受けても,その連絡だけで支払を決めてはならない。
メール等のリンクではなく,あらかじめ保存したブックマーク又は自分で入力した公式サイトからe-Taxのメッセージボックスへ入り,必要に応じて所轄税務署の公式番号へ折り返して確認する。

第2 国税庁が送らない連絡

国税庁の注意喚起によれば,国税庁・国税局・税務署は,納税者の同意なく,国税の納付を求める旨又は差押えに関するメッセージをSMS,メール又はLINEで送信しない。
SMSにURLを記載して誘導する連絡,差押えを予告して即時決済を迫るメール,ATMの操作又は国税庁が指定する口座への振込みを求める電話は信用すべきでない。
もっとも,国税庁又はe-Taxからの正規メールが一切存在しないという意味ではない。

第3 正規のe-Taxメール

e-Taxの正規の「税務署からのお知らせ」は,登録されたメールアドレスへメッセージボックスに情報を格納した旨などを知らせるものである。
e-Taxの注意喚起によれば,送信元は原則として[email protected]であり,添付ファイルはなく,本文にURLを記載しないのが原則である。
ただし,メールアドレス等の登録情報を変更したときの確認用URLなど,公式に説明された例外があるため,「URLがあるから必ず偽物」「国税庁名だから本物」という一要素だけで判断してはならない。

送信元表示は偽装できる。
正規性は,受信メールのリンクを使わず,e-Taxの公式メッセージボックスへ自分でアクセスし,同じ通知が格納されているかによって確認するのが安全である。

第4 AI・自動音声電話の見分け方

国税庁・国税局をかたるAI又は自動音声の電話が,税金と称して金銭を要求する事例が発生している。
このような着信では,音声案内に従って番号を押したり,個人情報を入力したり,指定先へ送金したりせず,いったん電話を切って公式番号へ折り返すべきである。

他方,国税庁は,納税者が相談窓口へ電話した場合のAI電話相談等も実施している。
したがって,AI音声であること自体を真偽の基準にせず,誰がどの番号へ発信したか,金銭又は認証情報を要求しているか,公式番号への折返しで確認できるかを基準とする必要がある。

第5 不審な連絡を受けたときの初動

不審なメール等を受けたときは,①URL及び添付ファイルを開かない,②返信しない,③個人情報・暗証番号・クレジットカード情報を入力しない,④支払わない,⑤公式サイトから連絡先を確認して折り返す,という順序で対応する。
リンク先で認証情報を入力した場合は,正規サイトからパスワードを変更し,ログイン履歴,登録情報及び二要素認証の状態を確認する。

第6 証拠保全と相談先

被害の有無を問わず,送信日時,送信元表示,実際のメールアドレス,メールヘッダー,本文,リンク先URL,電話番号,留守番電話,SMS画面及び支払記録を削除せず保存する。
スクリーンショットだけでなく,可能であれば原メールをeml形式等で保存し,URLは開かず文字列として記録する。
送金又はカード情報入力がある場合は金融機関・カード会社へ直ちに連絡し,警察,消費生活センター,関係する税務署及び組織内の情報セキュリティ担当者への相談も行う。

第7 事務所の予防ルール

事務所では,①税務連絡を受ける担当窓口を限定する,②e-Taxと国税庁の公式URLをブックマークする,③納付・口座変更・認証情報入力は二人で確認する,④取引先又は官公署の支払先変更は既知の連絡先へ別経路で照会する,⑤不審メールを組織内で共有する,という最低限のルールを定めることが有効である。
e-Taxの通常の利用方法は「e-Taxの利用方法-WEB版・電子納税・令和9年改正(AI作成)」を参照されたい。

第8 出典・参考資料

①国税庁「不審なメールや電話にご注意ください」
②e-Tax「e-Taxを装った不審なメール等にご注意ください」
③e-Tax「税務署からのお知らせメール」
④e-Tax「メッセージボックス」
⑤国税庁「AI電話相談」

育成就労外国人の給与と租税条約―所得税・源泉徴収と研修生免税(AI作成)

目次

第1 結論第2 育成就労制度の開始時期第3 国税庁文書回答の内容第4 国内法上の所得税・源泉徴収第5 租税条約の研修生条項第6 雇用主の確認事項第7 文書回答を利用するときの注意第8 出典・参考資料
第1 結論

育成就労外国人が育成就労実施者との雇用契約に基づいて受ける給与は,国内法上は給与所得であり,国内勤務に対応する給与について源泉徴収が問題となる。
育成就労制度が「人材育成」を目的とすることだけで,租税条約上の研修生等に対する免税が当然に適用されるわけではない。
国内法上の課税関係と,相手国との租税条約による修正を二段階で確認する必要がある。

第2 育成就労制度の開始時期

育成就労制度の施行日は,令和9年4月1日である。
出入国在留管理庁の育成就労制度Q&Aは,施行日及び事前申請の時期を案内している。
技能実習制度からの移行経過,在留資格の申請及び受入れ機関の要件は,税務とは別に確認しなければならない。

第3 国税庁文書回答の内容

国税庁が令和8年9月15日に公表した「育成就労外国人が育成就労実施者から支払を受ける給与の課税関係について」は,照会書に記載された事実関係を前提として回答したものである。
同回答は,給与が所得税法28条の給与所得に該当し,支払者に同法183条の源泉徴収義務が生じるとした上で,照会された租税条約の研修生等に関する免税規定は適用されないとしている。

回答の理由では,育成就労が雇用契約に基づく就労を通じた人材育成の制度であり,照会事実の下では,専ら訓練又は技術的経験を得るために滞在する者へ支払われる給付とはいえないことが重視されている。
制度名に「育成」が含まれることと,租税条約上の免税要件を満たすことは同じではない。

第4 国内法上の所得税・源泉徴収

まず,外国人本人が所得税法上の居住者か非居住者か,給与が国内勤務に対応する国内源泉所得か,誰が給与を支払うか及び支払時期を確認する。
雇用契約に基づく労務の対価である限り,支払名目が研修費,手当又は補助金であっても,契約内容及び実態によって給与所得該当性が判断される。
居住者については通常の給与所得の源泉徴収及び年末調整が問題となり,非居住者については国内源泉所得と租税条約を別途確認する。

第5 租税条約の研修生条項

租税条約の研修生・事業修習者等に関する条項は,条約ごとに,対象者,来日の主目的,支払の性質,免税期間及び上限額が異なる。
短期滞在者免税,学生免税及び研修生免税も別の規定である。
出身国の条約本文及び議定書,滞在目的,雇用契約,給与の負担者並びに滞在予定期間を照合し,適用を受ける場合は租税条約に関する届出書の要否及び提出時期も確認する必要がある。
あわせて,その条約が発効して問題の給与等に適用が始まっているか(署名されただけの新条約ではないか)と,BEPS防止措置実施条約による修正の有無も確かめる。
確認の順序は「租税条約を適用する前に確かめる5つのこと―署名と発効,適用開始日,BEPS防止措置実施条約,終了通告及び届出書(AI作成)」で整理している。

第6 雇用主の確認事項

受入れ企業は,①在留資格及び制度の施行時期,②住所・入国日・滞在予定期間,③勤務場所,④雇用契約・賃金台帳・給与の負担関係,⑤租税条約の相手国及び該当条項,⑥租税条約に関する届出書,⑦給与計算,年末調整又は確定申告の要否を確認すべきである。
人事・在留管理資料と給与・税務資料を別々に保管するだけでなく,同一人物について相互に照合できるようにすることが重要である。

第7 文書回答を利用するときの注意

国税庁の文書回答は,公表された照会事実と同一の事実関係が続くことを前提とする行政上の回答であり,法律又は裁判例と同じ一般的拘束力を持つものではない。
国籍,条約,契約,滞在期間,給与の支払者又は研修内容が異なる案件へ結論だけを転用すべきではない。
文書回答制度そのものについては「国税庁の法令解釈通達・事務運営指針・文書回答事例・質疑応答事例(AIリライト)」を参照されたい。

第8 出典・参考資料

①所得税法28条・183条(e-Gov法令検索)
②国税庁「育成就労外国人が育成就労実施者から支払を受ける給与の課税関係について」(令和8年9月15日回答)
③同「照会の内容」
④出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
⑤出入国在留管理庁「育成就労制度」

食品消費税1%法案とは―いつから・対象品目・5つの特例(AI作成)

目次

第1 食品消費税1%法案の内容と予定期間第2 閣議決定・国会提出・成立・施行を区別する第3 1%の対象になる品目と,対象外の取引第4 事業者向けの5つの特例1 本則課税への移行に係る届出2 飲食料品販売に係る簡易課税の計算3 中間申告4 総額表示5 定期供給契約による予約販売・通信販売第5 契約・価格表示・請求書の準備第6 就業者負担軽減支援金との関係第7 よくある疑問1 食品の税率は,今すぐ1%になったのか2 外食や新聞も1%になるのか3 食品事業者は,必ず還付を受けられるのか第8 参照資料
第1 食品消費税1%法案の内容と予定期間

「食品消費税1%法案」は,令和8年10月9日に閣議決定され,第222回国会に提出された政府法案の飲食料品税率引下げ部分を指す通称として,本記事で用いている。

正式名称は,「租税及び社会保険料による負担の軽減のための飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の支給に関する法律案」である。飲食料品の税率引下げと,就業者負担軽減支援金の制度を一つの法案に含む。

政府案では,令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間,対象となる飲食料品の消費税率を,地方消費税と合わせて1%に引き下げる。国の消費税率は0.78%であり,地方消費税相当分0.22%を合わせて1%となる。

本記事は,10月9日の提出法案と国税庁の準備資料を解説するものである。法案提出は,成立,公布又は施行と同じではない。以下の予定期間や特例を現在の制度と混同せず,実施前には成立した法律とその後の公式資料を確認する必要がある。

第2 閣議決定・国会提出・成立・施行を区別する
段階意味と本記事での確認政府の方針令和8年9月15日の方針は,法案の説明に至る前提である。閣議決定・国会提出内閣官房の10月9日公表資料で,法案の閣議決定と第222回国会への提出を確認できる。法案の成立・法律の公布提出とは別に確認する必要がある。政府法案の説明だけで成立済みとは判断できない。税率引下げの実施政府案の予定は令和9年4月1日である。成立・公布と,税率を実際に切り替える日も分ける。

9月15日の方針と,10月9日に国会へ提出された法案の内容を区別して確認する。国税庁の対応ページとQ&Aは,法案成立等を前提とする準備資料であり,特例を今すぐ利用できる根拠として扱ってはならない。

第3 1%の対象になる品目と,対象外の取引

現在の標準税率は10%,軽減税率は8%である。軽減税率の対象には,酒類・外食を除く飲食料品の譲渡と,定期購読契約に基づく一定の新聞の譲渡がある。食品消費税1%法案は,このうち飲食料品の譲渡に係る税率を臨時に引き下げる内容である。

取引現在の税率政府案の引下げ期間対象となる飲食料品の譲渡8%原則1%。一定の予約販売・通販には旧税率の経過取扱いがある。外食・酒類の販売10%飲食料品税率引下げの対象外。定期購読契約に基づく一定の新聞の譲渡8%飲食料品税率引下げの対象外。

「食品を使う取引」ならすべて1%となるわけではない。店舗内で飲食する取引と持ち帰り・宅配,ケータリング,酒類とそれ以外の商品を分け,現在の軽減税率の対象判定と照合する必要がある。一体資産等の個別判断は,国税庁の軽減税率資料も確認する。

第4 事業者向けの5つの特例
1 本則課税への移行に係る届出

政府案は,飲食料品を販売する免税事業者の課税事業者選択と,簡易課税を適用する事業者の本則課税への移行について,届出の時期等の特例を設ける。

国税庁Q&Aの問3-2では,飲食料品の譲渡を行う免税事業者が,令和9年4月1日の属する課税期間中に課税事業者選択届出書を提出することにより,その課税期間から課税事業者となる特例を説明している。4月1日からだけ課税されるとは限らず,個人事業者等の例では,その課税期間の初日である1月1日から課税事業者となる点に注意が必要である。

同Q&Aの問3-5には,飲食料品を販売する簡易課税事業者が,令和9年4月1日の属する課税期間中に簡易課税制度選択不適用届出書を提出することで,その課税期間から本則課税で申告できる特例が示されている。この課税期間には,対象事業者の2年間の継続適用要件を適用しない内容も含まれる。

本則課税で還付となるかは,実際の売上げ,仕入れ,税率及び仕入税額控除の要件によって異なる。免税事業者のままなら還付を受ける制度ではなく,届出をするとその後の申告や選択をやめる時期にも影響する。課税方式の変更を一律に勧めることはできない。

2 飲食料品販売に係る簡易課税の計算

国税庁Q&Aの問3-6は,簡易課税を適用する事業者について,1%の対象となる飲食料品の譲渡に係る売上税額と同額を,仕入税額として計上する特例を説明している。その他の売上げについては,通常のみなし仕入率による計算と区分する。

したがって,飲食料品と雑貨・外食等を併せて扱う事業者まで,消費税全体の納付額が一律ゼロとなる説明は不正確である。また,この計算の特例と,本則課税で実際の仕入税額を控除して還付を受ける仕組みは異なる。

3 中間申告

税率変更で実際の納付税額が減っても,従来の税額に基づく中間納付が過大となる場合がある。国税庁Q&Aの問3-8は,引下げ開始時と終了時に,直前課税期間の飲食料品の売上げ・仕入れへ変更後の税率を適用したものとして計算し,その税額を記載した仮決算による中間申告書を提出できる特例を説明している。

この特例は中間申告を一律に不要とするものではない。申告回数,計算に用いる期間,課税方式及び提出期限を確認する必要がある。

4 総額表示

税率切替え時の価格表示について,直ちに変更することが困難な事情があり,誤認防止措置を講じる場合に,切替え前後の一定期間,切替え前又は切替え後の税率による税込表示を認める内容である。

税抜価格だけの表示を認める制度ではなく,表示上の税率を実際の取引税率にする制度でもない。国税庁Q&Aの問3-9で期間と掲示の具体例を確認する必要がある。

5 定期供給契約による予約販売・通信販売

一定の定期供給契約による予約販売と通信販売には,引下げ前の8%を適用する経過取扱いがある。令和9年1月1日前の契約締結又は販売条件の提示・準備,4月1日前の対価受領又は申込受付,同日以後の譲渡等を,取引の種類に応じて確認する必要がある。

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優良な電子帳簿・デジタルシームレス保存・青色申告特別控除75万円―令和9年に向けた届出と導入手順(AI作成)

目次

第1 結論第2 三つの制度を区別する第3 優良な電子帳簿第4 デジタルシームレス保存第5 75万円の青色申告特別控除第6 届出と導入時期第7 JIIMA認証の意味第8 導入前チェック第9 出典・参考資料
第1 結論

令和8年度税制改正後の電子帳簿等保存制度では,①優良な電子帳簿に関する過少申告加算税5%軽減,②デジタルシームレス保存に関する重加算税10%加重の不適用,③令和9年分以後の所得税における75万円の青色申告特別控除を区別して確認する必要がある。
いずれも単に会計ソフトを導入すれば適用される制度ではなく,対象,保存要件,届出及び適用開始時期を制度ごとに確認しなければならない。

第2 三つの制度を区別する

優良な電子帳簿は,国税関係帳簿の備付け・保存の品質に着目する制度である。
デジタルシームレス保存は,デジタルインボイスや金融機関の決済データ等と帳簿との連携に着目する制度である。
75万円の青色申告特別控除は個人の所得税の制度であり,対象者,複式簿記,決算書の添付及び期限内申告等の所得税上の要件も別に満たさなければならない。

第3 優良な電子帳簿

電子帳簿保存法上の優良な電子帳簿として,訂正削除履歴,帳簿間の相互関連性,検索機能その他の要件を満たして対象帳簿を保存し,所定の届出をしている場合,その帳簿に記録された事項に関して生じた申告漏れについて,過少申告加算税が通常より5%軽減される。
ただし,隠蔽又は仮装がある場合などは対象外であり,帳簿に関連しない申告漏れまで一律に軽減される制度ではない。

第4 デジタルシームレス保存

デジタルシームレス保存は,国税庁長官の定める基準に適合するシステムを利用し,対象となる電子取引データを所定の要件で保存する制度である。
国税庁の届出書及び解説は,デジタル庁の仕様に従って送受信されたデジタルインボイス及び金融機関等の預貯金口座における決済データを対象例として示している。

要件を満たす対象データについては,電子取引データに係る隠蔽・仮装があった場合の重加算税10%加重の対象から除外される。
個人事業者については令和8年分の所得税及び消費税から適用が始まるが,通常の重加算税そのものが免除される制度ではない。

第5 75万円の青色申告特別控除

令和9年分以後,不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者は,正規の簿記の原則による記帳,貸借対照表及び損益計算書の添付並びに期限内申告等の基礎要件に加え,優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存のいずれか所定の要件を満たすと,75万円の青色申告特別控除を選択できる。
令和8年分までの65万円控除と,令和9年分以後の75万円控除とでは,適用年及び追加要件が異なる。

第6 届出と導入時期

令和9年分から適用を受けるためには,原則として令和9年1月1日から該当要件を満たす運用を開始する必要がある。
届出書の種類及び提出期限は,優良な電子帳簿とデジタルシームレス保存とで異なるため,国税庁の最新の届出書案内を確認する必要がある。
既に優良な電子帳簿による65万円控除等の届出をしている者については,再提出を要しない場合がある。

第7 JIIMA認証の意味

JIIMA認証情報リストに掲載されたソフトは,認証区分に応じた機能要件を満たしている。
しかし,認証は,利用者側の保存期間,入力時期,対象帳簿及び対象データの範囲,検索可能性,届出並びに日々の運用まで当然に充足することを保証するものではない。
ソフト選定と自社の運用設計を分けて確認すべきである。

第8 導入前チェック

導入前には,①利用する制度,②対象税目・対象帳簿・対象データ,③年初から要件を満たせるか,④訂正削除履歴及びデータ連携が機能するか,⑤届出書と提出期限,⑥保存データから原取引・仕訳・申告数値を追跡できるかを確認する必要がある。
電子帳簿保存制度の基礎は「国税実務の基礎-税務調査,予定納税,納付方法及び電子帳簿保存(AIリライト)」,e-Taxとの関係は「e-Taxの利用方法-WEB版・電子納税・令和9年改正(AI作成)」を参照されたい。

第9 出典・参考資料

①電子帳簿保存法(e-Gov法令検索)
②国税庁「電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?」
③国税庁「優良な電子帳簿の要件」
④国税庁「JIIMA認証情報リスト」
⑤国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」
⑥国税庁「電子取引の取引情報に係る電磁的記録に係る重加算税の加重措置の不適用の特例及び75万円の青色申告特別控除の適用を受ける旨の届出書」
⑦財務省「令和8年度税制改正の大綱」

相続した株式を遺言執行者が売却した場合の税金―法定相続分による申告と確定申告の方法(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 この記事の対象2 結論3 最初に確認する順序第2 誰が譲渡所得を申告するか1 国税庁が法定相続分による申告とした事例2 法定相続分が常に結論となるわけではないこと3 遺言執行者本人の所得にはならないこと4 売却後に疑問が生じた場合第3 各相続人の譲渡所得の計算1 基本式と按分2 取得費は相続税評価額ではないこと3 相続税の取得費加算は各人ごとに計算すること4 上場株式等と一般株式等を分けること5 税率第4 遺言執行者が作成・交付する資料1 共通計算書2 各人に渡す資料3 売却代金の分配と所得税第5 各相続人による確定申告の具体的方法1 申告前の準備2 確定申告書等作成コーナー又はe-Taxを利用する場合3 書面で提出する場合4 申告期限と納付第6 計算例1 法定相続分で申告する例2 分配割合と申告割合が異なる可能性第7 特に注意を要する場合1 特定口座と源泉徴収2 NISA口座の株式3 譲渡損失4 相続した非上場株式を発行会社へ売る場合5 限定承認,国外居住者及び外国証券第8 関連する記事1 遺言執行者による換価実務2 換金指定のある遺言と現物取得第9 出典1 法令2 国税庁の質疑応答・解説・手引き3 研究資料
第1 この記事の対象と結論
1 この記事の対象

本記事は,被相続人が所有していた株式を遺言執行者が売却し,その代金を相続人又は受遺者に分配する場面を対象とする。
遺言執行者が売却名義人であるため遺言執行者が一括して申告するのか,各相続人が法定相続分で申告するのか,遺言で定めた分配割合によるのかが問題となる。

2 結論

国税庁の質疑応答事例には,遺言執行者が遺産である不動産及び有価証券を換価した事案について,譲渡所得は法定相続分に応じて各相続人が申告するとしたものがある。
したがって,当該事例と同様に,売却時まで株式が共同相続人に帰属し,遺言執行者の処分の効果が相続人に直接生ずると整理できる事案では,各相続人が法定相続分に応じて確定申告するのが基本となる。遺言執行者が遺言執行者名義で一括申告するものではない。
もっとも,この結論は遺言執行者が売却したという一点だけから常に導かれるものではない。遺言が特定の者に換価代金のみを遺贈する趣旨か,包括遺贈か,相続分又は遺産分割方法を指定したものかによって,売却時の権利帰属と所得の帰属が異なり得る。

3 最初に確認する順序

①遺言の全文と遺言執行者の権限,②売却時に株式が誰に帰属していたか,③譲渡所得の申告者と割合,④各人に配分する売却代金・取得費・売却費用,⑤各人固有の取得費加算・損益通算等の順に確認する。
分配割合をそのまま申告割合と考えたり,相続税評価額を取得費と考えたりすると誤りやすい。

第2 誰が譲渡所得を申告するか
1 国税庁が法定相続分による申告とした事例

国税庁「遺言に基づき遺産の換価代金で特定公益信託を設定した場合の相続税及び譲渡所得の課税関係」は,遺言執行者が遺産である不動産及び有価証券を売却した事例について,遺産の換価処分は遺言執行者の職務として行われ,その権限内の行為は相続人に直接効力を生ずることを理由に,「法定相続分に応じて各相続人が申告する必要があります」と回答している。
この事例に従う場合,各相続人は自分の法定相続分だけを自分の確定申告書に計上する。遺言執行者は,各人が同じ基礎資料に基づいて申告できるように,共通の計算書と証拠資料を交付する。

2 法定相続分が常に結論となるわけではないこと

前記の国税庁ページは,照会された事実関係を前提とする一般的な回答であり,具体的な取引では異なる課税関係が生ずることがあると明記している。
小柳誠「換価遺言が行われた場合の課税関係について」(税務大学校論叢85号)は,換価遺言を一律に捉えず,不特定物である金銭の遺贈,包括遺贈又は相続分・遺産分割方法の指定のいずれと解するかを検討する必要があるとする。そして,金銭の遺贈と解される類型では,受遺者を譲渡所得の納税義務者とする見解を示している。
これは税務大学校の研究論文であり,前記の質疑応答事例と同じ位置付けの公式回答ではない。しかし,遺言の型によって納税義務者の検討が変わることを示す重要な資料である。

3 遺言執行者本人の所得にはならないこと

遺言執行者は,遺言の内容を実現するために株式を管理・処分する者であり,売却代金を自分のために取得する者ではない。
したがって,遺言執行者が注文を出し,売却代金を遺言執行者名義の管理口座で受領したという外形だけで,遺言執行者個人の譲渡所得になるものではない。遺言執行者自身が相続人又は受遺者でもある場合は,その者として帰属する部分を個人の申告に含める。

4 売却後に疑問が生じた場合

既に売却済みでも,まず遺言書,遺言執行者の就職・権限を示す書類,証券会社の相続手続書類,売却報告書,換価代金の分配計算書及び相続関係を揃える。
申告期限前に税理士又は所轄税務署へ事実関係を具体的に示して確認し,誰がどの割合で申告するかを相続人間で統一して記録する。同じ売却について重複申告又は申告漏れが生じないようにする。

第3 各相続人の譲渡所得の計算
1 基本式と按分

国税庁タックスアンサーNo.1463によれば,株式等の譲渡所得等は,譲渡価額から取得費と委託手数料等を差し引いて計算する。
法定相続分で申告する事案では,各人の譲渡価額,取得費及び売却に直接要した費用を同じ法定相続分で按分するのが出発点となる。すなわち,「各人の譲渡所得等=売却代金×申告割合-被相続人の取得費×申告割合-売却手数料等×申告割合」である。

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過少申告加算税の「正当な理由」―平成18年最高裁判決と税理士不正・通達変更(AI作成)

目次

第1 本記事が扱う「正当な理由」第2 最高裁が示した判断基準第3 税理士の不正だけでは認められなかった事例第4 税務署職員の共謀加担により認められた事例第5 課税庁の取扱変更について認められた事例第6 平成27年判決が示した時間軸の重要性第7 正当な理由を検討する際の確認事項第8 重加算税・本税・信義則との区別第9 税務調査・不服申立てで収集する資料第10 現行法と資料の確認状態第11 出典・関連記事

過少申告加算税は,申告額が結果として少なかったという客観的事実があれば原則として課される。納税者に脱税の意図がなかったことや,税理士に申告を任せていたことだけで当然に免除されるものではない。

「正当な理由」を検討する前に,調査通知,更正予知及び修正申告の時期による不適用又は税率の違いを確認する必要がある。
現行の国税通則法65条6項は,調査による更正予知に基づく修正ではなく,かつ所定の調査通知前に提出された修正申告について同条1項を適用しない。通知後でも更正予知によらない場合は,同条1項の割合が異なる。
自主的に修正したことだけで常に加算税がなくなるとは説明できず,対象税目,期限内・期限後申告,適用年分,帳簿に関する加重及び重加算税の要件を分けて確認する必要がある。
修正申告の時期による違いは,修正申告と加算税―行政指導,調査通知及び更正予知の前後で何が変わるかで詳しく説明している。

もっとも,現行の国税通則法65条5項1号は,税額計算の基礎とされなかったことについて「正当な理由があると認められる」事実に基づく税額を,過少申告加算税の計算対象から控除する。本記事では,この「正当な理由」を扱った最高裁平成18年4月20日,同月25日及び同年10月24日の各判決並びに最高裁平成27年6月12日判決を比較し,実務で必要となる事実と証拠を整理する。

第1 本記事が扱う「正当な理由」

平成18年当時,「正当な理由」に関する規定は国税通則法65条4項に置かれていた。現在は条項の追加等により同条5項1号に移っているため,旧判例を引用するときは,当時条文と現行条文を区別する必要がある。

現行条文は,正当な理由がある場合に本税そのものを免除する規定ではない。正当な理由があると認められる事実に対応する税額を,過少申告加算税の計算の基礎から控除する規定である。したがって,①本税の課税要件,②過少申告加算税の賦課要件,③正当な理由に対応する税額の範囲を分けて検討する。

第2 最高裁が示した判断基準

最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決(平成17年(行ヒ)第9号)は,「正当な理由があると認められる」場合を,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしても,なお納税者にこれを賦課することが不当又は酷になる場合とした。

過少申告加算税は,主観的責任を追及する刑罰ではなく,当初から適正に申告した者との客観的不公平を是正し,適正な申告納税を実現するための行政上の措置である。この制度目的から,納税者の善意,法令の不知,単なる解釈違い又は専門家への委任だけでは足りず,過少申告に至った経過を客観的事情として示す必要がある。

第3 税理士の不正だけでは認められなかった事例

最高裁平成18年4月20日判決では,税理士が納税者に無断で虚偽の申告書を提出し,納税資金を着服した。納税者には脱税の意図がなく,税理士の隠蔽・仮装を予測又は認識することも容易ではなかったため,税理士の行為を納税者本人の行為と同視できず,重加算税の要件は満たさないとされた。

しかし,過少申告加算税については結論が異なった。納税者は,税務署職員等から約800万円と示されていた税額が約550万円で済むとの税理士の説明を信じ,その根拠を調査せず,申告書の内容,控え及び納付の領収書も確認しなかった。他方,申告書を受理した税務署職員が脱税に加担した事実はなかった。最高裁は,このような事情の下では納税者側にも落ち度があり,「正当な理由」は認められないとした。

ここから分かるのは,重加算税の隠蔽・仮装と,過少申告加算税を免れる正当な理由が別の要件であることである。重加算税が取り消されても,過少申告加算税相当額が当然に取り消されるわけではない。

第4 税務署職員の共謀加担により認められた事例

最高裁平成18年4月25日第三小法廷判決(平成16年(行ヒ)第86号・第87号)も,税理士が納税者に無断で架空経費を計上し,過少申告をした事案である。納税者には,事前の税務相談で示された金額より約180万円低い税額を税理士から示されながら根拠や申告書の控えを確認しなかったという落ち度があった。

それでも最高裁は,「正当な理由」を認めた。この事件では,申告書を受理した統括国税調査官が収賄の上で不正行為に積極的に共謀加担し,課税庁職員の関与がなければ不正行為は不可能であったともいえるという,極めて特殊な事情があったためである。

4月20日判決と4月25日判決の分岐は,単に納税者が税理士を信頼したかではない。課税庁側の積極的関与という外部的・客観的事情が加わり,納税者に加算税を課すことが不当又は酷といえるかにある。

第5 課税庁の取扱変更について認められた事例

最高裁平成18年10月24日第三小法廷判決(平成17年(行ヒ)第20号)は,外国親会社から付与されたストックオプションの権利行使益を,一時所得として申告したことが問題となった事案である。

課税庁は,かつて権利行使益を一時所得として取り扱い,課税庁職員が監修等をした公刊物にもその見解が掲載されていた。その後,平成10年分の所得税の確定申告時期以降は給与所得として統一的に扱うようになったものの,取扱変更を通達で明示したのは平成14年6月であった。一時所得説にも相応の論拠があり,最高裁が給与所得と判断したのは平成17年で,それ以前は下級審の判断も分かれていた。

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自己の著作権を会社へ低額譲渡したときの所得税―長期譲渡所得・時価課税・契約実務(AI作成)

目次

第1 結論と検討の順序
第2 譲渡所得か,事業所得・雑所得か
第3 自己の著作に係る著作権は長期譲渡所得
第4 法人への低額譲渡と時価課税
第5 数字で確認する総所得金額への算入額
第6 契約書・時価・申告資料の確認表
第7 射程と別途検討する課税関係
第8 一次資料と関連記事

第1 結論と検討の順序

著作者である個人が,自分で創作した著作物の著作権を会社へ一回限り譲渡する場合,通常の利用許諾料と区別して,まず著作権という資産の譲渡所得に当たるかを調べる。譲渡所得に当たるなら,自己の著作に係る著作権は,保有期間が5年以内でも長期譲渡所得に区分される。

会社への対価が時価の2分の1未満なら,所得税法59条1項2号・同法施行令169条により,譲渡者の譲渡所得は原則として時価で譲渡したものとして計算する。さらに,長期譲渡所得の金額を求めた後,総所得金額へ算入する段階でその2分の1を用いる。「長期譲渡所得の金額」と「総所得金額に加える額」は異なる。

以下は個人の所得税を中心とする整理であり,個別契約の権利範囲,時価,取得費及び他の譲渡所得の有無で結論・金額が変わる。

第2 譲渡所得か,事業所得・雑所得か

国税庁は,著作権を譲渡所得の対象となる資産の一つとして挙げている。ただし,著作権が関係する収入をすべて譲渡所得とすることはできない。顧客に著作物の利用を継続的に許諾して受け取る対価と,著作権そのものを移転して受け取る対価は,まず契約の内容で分ける。

また,所得税法33条2項は,棚卸資産の譲渡や営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生じる所得などを譲渡所得から除く。創作物・権利を商品として反復販売する事業では,一件ごとに「著作権」と名付けても譲渡所得と即断できない。事業の取引形態,譲渡頻度,制作・販売の方法及び会計処理を確認する。

第3 自己の著作に係る著作権は長期譲渡所得

総合課税の譲渡所得は,原則として保有期間5年以内の資産を短期,5年超の資産を長期に分ける。しかし,所得税法33条3項1号は一定の資産を短期の範囲から除き,同法施行令82条1号は「自己の著作に係る著作権」をその対象にする。その結果,同条3項2号により,自己の著作に係る著作権の譲渡所得は保有期間を問わず長期譲渡所得となる。国税庁タックスアンサーNo.3152も同じ区分を示す。

適用前に,譲渡者自身が著作者であること,譲渡対象がその著作に係る著作権であることを確認する。共同制作,職務上の創作,過去の譲渡又は第三者から取得した権利が混在する場合には,契約・制作記録をたどり,権利ごとの帰属を確定する必要がある。

第4 法人への低額譲渡と時価課税

所得税法59条1項2号は,譲渡所得の基因となる資産を法人へ著しく低い価額で譲渡した場合を規定する。同法施行令169条の基準は,対価が譲渡時の時価の2分の1に満たないこと。この基準に当たるときは,実際に受け取った金額に時価との差額を別の所得として足すのではなく,譲渡による収入金額を時価とみなして譲渡所得を計算する。

例えば時価400万円,対価100万円なら,半額200万円を下回る。収入金額は100万円ではなく400万円である。時価と対価の比較には,金銭以外の経済的利益も対価に含まれ得ることに留意する(所得税基本通達59-2)。

対価が時価の2分の1以上なら59条1項2号は適用されない。ただし,所得税基本通達59-3は,同族会社等の行為又は計算が所得税法157条の要件を満たす場合を別に挙げる。「半額以上なら税務上必ず安全」という意味にはならない。

第5 数字で確認する総所得金額への算入額

次の例は,譲渡者が自ら著作した著作権を会社へ一回譲渡し,その年に他の総合課税の譲渡所得はなく,取得費と譲渡費用がいずれも0円であると仮定する。

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名目上の従業員給与を役員給与と認定された場合―東京地裁令和元年5月30日判決と税務争訟(AI作成)

目次

第1 結論
第2 東京地裁令和元年5月30日判決の事案
第3 誰に経済的利益が帰属したか
第4 仮装経理と損金不算入
第5 源泉徴収・附帯税・期間制限
第6 処分理由と証拠の点検
第7 相談・争訟の実務手順
第8 出典・関連記事

第1 結論

会社が第三者への従業員給与として支払った金銭でも,実際には役員が個人として負担すべき費用を会社が肩代わりしたと認定されれば,役員への経済的利益となり得る。帳簿で支払先・費目を仮装したと認められる場合は,法人税法34条3項の損金不算入に加え,役員給与に係る源泉徴収税,附帯税及び処分期間が争点となる。

税務争訟では,①第三者が会社に提供した労務,②その支払により誰が利益を得たか,③帳簿・給与資料の作成過程,④各課税処分の根拠と計算を分けて検討する。

第2 東京地裁令和元年5月30日判決の事案

会社は,同居する代表者の交際相手に対し,月額45万円を「給与手当」として計上し,おおむね月額40万円を本人名義の口座に振り込んでいた。会社は出勤簿を作成し,社会保険料及び源泉所得税等も本人に係る預り金として処理していた。

東京地裁令和元年5月30日判決は,その支払が会社の従業員としての労務の対価ではなく,代表者が個人として負担すべき費用を会社が負担したものと認定した。そして,代表者への役員給与を第三者への給与手当と仮装して経理したと判断し,法人税の更正,源泉所得税等の納税告知及び附帯税の各処分を適法として会社の請求を棄却した。判決の冒頭には「控訴」と記載されている。ここで紹介するのは第一審の判断であり,控訴審の帰結までは確認していない。

この判決は,第三者名義の従業員給与と代表者への経済的利益が問題となった事例である。第三者への業務委託料や暗号資産による役員退職給与について,同じ事実認定が当然に成り立つと述べるものではない。

第3 誰に経済的利益が帰属したか

法人税法34条4項は,同条の役員給与に債務免除その他の経済的利益を含める。判決は,役員が個人として負担すべき費用を法人が負担して役員が得た利益も,この経済的利益に当たるとした。

裁判所は,かつて第三者が会社事務所で事務をしていたことも認めたが,課税対象期間の活動内容を別に検討した。自宅での家事や代表者の世話が中心で,一部の買物・銀行・郵便局等の用務が会社に関係していても,月額の支払を会社の従業員としての労務の対価とは認めなかった。勤務時間の定め・出退勤管理の実態,出勤簿の作成目的,会社の業務量,代表者個人による同額の支払歴も判断材料とした。

弁護士が会社側を代理する場合,親族・同居人という属性だけで結論を出さず,対象各月の指示,成果物,取引先との連絡,勤務場所・時間,支払額の決め方を客観資料で確認する。課税庁側の認定についても,私的な便益と会社のための役務が混在するときは,その内容と支払額の対応を具体的に点検する。

第4 仮装経理と損金不算入

法人税法34条3項は,事実を隠蔽し,又は仮装して経理することにより役員に支給する給与の額を損金に算入しない。判決は,支払の実質を代表者への役員給与と認定した上で,第三者の給与手当という経理,出勤簿,社会保険の資格及び本人に係る預り金処理を併せ,仮装経理を認定した。

支払の相手方の名義と振込先だけで仮装の有無は決まらない。契約書,出勤簿,給与台帳,振込記録,経理担当者への指示を作成時期順に並べ,誰がどの事実を認識していたかを検討する。実際の役務があるとの主張は,その内容・量・支払額との対応を示す資料と一緒に提出する。

第5 源泉徴収・附帯税・期間制限

法人税の損金不算入と,役員が受けた経済的利益に係る所得税の源泉徴収は別の課税関係である。判決は,会社が第三者への給与として処理した額を代表者の役員給与に加えて源泉徴収・納付すべきだったとして,所得税法183条1項に基づく納税告知を適法とした。

また,第三者への給与と仮装した事実を基に源泉所得税等を納めなかったとして,国税通則法67条・68条に係る不納付加算税及び重加算税の賦課も適法とした。各税目・各期間について,本税額,既納付額,加算税の対象額を別々に照合する必要がある。

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公正証書遺言と異なる遺産分割協議が相続税の申告期限までに成立しない場合の申告方法(AI作成)

目次第1 結論1 申告期限までに協議が成立しなくても申告期限は延びない2 申告内容は「遺言で取得済みか,真に未分割か」で決まる第2 公正証書遺言があっても,その内容を先に分類する1 公正証書という方式だけでは申告方法は決まらない2 遺言によって取得者が確定している財産3 遺言が相続分だけを定め,個々の財産が未分割である場合4 遺言の対象外となる財産第3 申告期限時点の状況別の申告方法1 遺言と異なる協議が成立している場合2 遺言で全部の取得者が確定し,協議が未成立の場合3 取得者が確定した財産と未分割財産が混在する場合4 遺言が相続分又は包括遺贈の割合だけを定める場合第4 未分割申告と分割見込書1 相続税法55条による仮の計算2 配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例3 申告期限後3年以内の分割見込書を付ける範囲第5 申告後に遺言と異なる合意が成立した場合1 真に未分割であった財産の後日分割2 遺言で取得済みであった財産の分け直し3 平成23年12月6日裁決が示す注意点第6 申告期限までに行う実務上の確認第7 設例による整理1 全財産を長男に相続させる遺言2 長男3分の2,長女3分の1とする遺言3 自宅だけを配偶者に相続させる遺言第8 よくある誤解第9 関連記事第10 出典1 法令・裁判例・裁決2 国税庁資料3 文献
第1 結論
1 申告期限までに協議が成立しなくても申告期限は延びない

公正証書遺言と異なる分け方を相続人らが話し合っていても,相続税の申告期限までに合意が成立しなければ,予定している分け方で申告することはできない。

相続税の申告期限は,原則として,相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内である。

協議中であること,遺産分割調停を申し立てたこと又は遺言執行者との調整が続いていることだけでは,この期限は延長されない。

2 申告内容は「遺言で取得済みか,真に未分割か」で決まる

申告期限時点で遺言と異なる合意が成立していない場合には,まず,遺言によって既に取得者が確定している財産と,なお共同相続人間で分割されていない財産とを分ける。

遺言によって取得者が確定している財産は,原則として遺言どおりに取得したものとして申告する。

これに対し,真に未分割である財産は,相続税法55条により,民法に規定する相続分又は包括遺贈の割合に従って各人が取得したものとして課税価格を計算する。

したがって,「協議が成立していないから,遺産全部を一律に法定相続分で申告する」という処理は正確でない。

第2 公正証書遺言があっても,その内容を先に分類する
1 公正証書という方式だけでは申告方法は決まらない

公正証書遺言は遺言の方式であり,公正証書であること自体から相続税申告の取得割合が決まるわけではない。

申告方法を決めるのは,遺言の各条項が,①特定の財産を特定の相続人に相続させる特定財産承継遺言,②特定遺贈,③包括遺贈,④相続分の指定,⑤遺産分割方法の指定,⑥残余財産条項のいずれに当たるかである。

遺言の表題や一部の文言だけでなく,遺言全文,予備的条項,債務・費用の負担及び遺言執行者の権限まで確認する必要がある。

2 遺言によって取得者が確定している財産

最高裁判所第二小法廷平成3年4月19日判決(平成元年(オ)第174号,民集45巻4号477頁)は,特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言について,特段の事情のない限り,何らの行為を要せず,被相続人の死亡時に直ちに当該相続人へ承継されると判示した。

また,特定遺贈は受遺者が放棄すれば遺言者の死亡時に遡って効力を失うが,放棄されていない限り,遺贈の目的財産は遺言に基づいて取得される。

「全財産を長男に相続させる」,「自宅不動産を妻に相続させる」,「全財産を甲に包括遺贈する」など,遺言によって取得者が確定する財産は,単に別の分け方を交渉中であるという理由で未分割財産にはならない。

3 遺言が相続分だけを定め,個々の財産が未分割である場合

「長男の相続分を3分の2,長女の相続分を3分の1とする」など,割合だけを指定し,個々の財産の取得者を定めていない遺言では,個々の遺産はなお未分割となり得る。

その場合,相続税法55条による仮の計算では,遺言による指定相続分を含む民法上の相続分又は包括遺贈の割合を確認する。

法定相続分を機械的に用いるのではなく,遺言による割合指定と包括遺贈の有無を先に確認する必要がある。

4 遺言の対象外となる財産

遺言作成後に取得した財産,記載漏れの預金,遺言条項の解釈上対象に含まれない財産その他の残余財産について,取得者を定める条項がなければ,その部分は未分割となり得る。

他方,死亡保険金,死亡退職金その他の相続税法上のみなし相続財産は,相続税の課税対象となっても,通常の遺産分割の対象とは限らない。

遺言の対象財産,民法上の遺産及び相続税の課税財産の三つを同じ一覧に混在させないことが重要である。

第3 申告期限時点の状況別の申告方法
1 遺言と異なる協議が成立している場合

(続きを読む...)公正証書遺言と異なる遺産分割協議が相続税の申告期限までに成立しない場合の申告方法(AI作成)

令和8年度司法試験・租税法第2問の参考答案と予想される評価項目――暗号資産による役員退職給与、廃業後の貸倒れ、青色申告承認の承継(AI作成)

目次
第1 この記事の対象と結論
第2 予想評価項目の作り方
第3 問題の概要と結論
第4 予想される評価項目
第5 参考答案
第6 答案の補足解説
第7 公開答案の調査
第8 出典と確認状態

作成日:令和8年9月30日。この記事は法務省とは関係のない独自の予想です。評価項目、重み、解説及び答案は、公式の採点基準や配点を示しません。対象年度の「出題の趣旨」及び「採点実感」は本記事作成時点で公表されておらず、参照していません。本記事の答案は、令和8年の出題の趣旨及び採点実感を踏まえたものではないため、「模範解答」ではなく「参考答案」と呼びます。

第1 この記事の対象と結論

本記事は、法務省が掲載した令和8年司法試験の問題のうち、論文式選択科目「租税法」第2問を対象とする。答案はCBT試験の文字数に関する解説を踏まえ、一問につき30字×92行を上限とする想定で作成した。問題の条文適用基準日は、問題文の指定に従い、令和8年1月1日とする。租税特別措置法の適用は考慮しない。

本記事が予想する結論は、次のとおりである。

設問
結論の要旨

設問1
D社がAに暗号資産を現物の役員退職給与として移転した実質を捉える。法人税法61条1項による譲渡益は1,800万円。販売手数料の実体はなく、隠蔽・仮装経理によって支給した役員給与2,000万円は同法34条3項により全額損金不算入。

設問2

(続きを読む...)令和8年度司法試験・租税法第2問の参考答案と予想される評価項目――暗号資産による役員退職給与、廃業後の貸倒れ、青色申告承認の承継(AI作成)

家族や代表者が税金を肩代わりした後の破産―租税債権への代位の可否,求償権の扱い及び国税通則法41条(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 結論第2 第三者納付の制度1 本人以外の者も納付できる2 代位できるのは抵当権だけ第3 民法の弁済による代位との関係第4 裁判例1 神戸地方裁判所平成14年1月23日判決(民事再生)2 東京地方裁判所平成17年4月15日判決(民事再生)3 東京高等裁判所平成17年6月30日判決(旧破産法)4 東京地方裁判所平成27年11月26日判決5 東京地方裁判所平成27年11月12日判決(確認の訴え)第5 賃金や前渡金の代位弁済との違い第6 肩代わりした人の求償権1 破産手続での扱い2 免責との関係3 破産手続開始の後に納めた場合第7 相談を受けたときの注意点第8 関連記事第9 出典1 法令2 通達3 裁判例第10 確認状態
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

本記事は,会社の代表者,親会社,保証をした金融機関,同居の家族などが,本人(会社又は個人)に代わって税金を納めた後に本人が破産した場合に,納めた人が本人にどのような請求をでき,その請求が破産手続でどう扱われるかを整理する。
法令は,令和8年9月29日現在の条文をe-Gov法令検索(法令API)で確認した。
最高裁判所の判決は裁判所ウェブサイトの判決全文で確認し,裁判所ウェブサイトに掲載されていない下級審の裁判例は判例秘書で判決本文を確認した。

2 結論

①税金は本人以外の者も納めることができる(国税通則法41条1項,地方税法20条の6第1項)。
②しかし,税法が納めた人に代位を認めているのは,その税金を担保する抵当権がある場合の抵当権だけである(国税通則法41条2項,地方税法20条の6第2項)。
③下級審の裁判例は,税金を納めた人が租税債権そのものの優先的な地位を引き継ぐことを認めていない。
租税債権は性質上私人に移転しないとして代位そのものを否定したもの,代位で取得しても一般の破産債権にとどまるとしたもの,再生手続で一般優先債権として代位することはできないとしたもの,租税債権の優先性は国と納税義務者の間でのみ認められるとしたものがある。
④そのため,肩代わりした人が本人に求めることができるのは,原則として求償権(破産債権)だけであり,破産手続の配当を受けるにとどまる。
⑤この求償権は,租税等の請求権ではないので,本人が個人で免責許可決定を受けると免責の対象になる。
⑥未払賃金や前渡金の返還請求権を代位弁済した場合には,最高裁判所が優先的な地位の行使を認めているので,税金の場合と結論が逆になる。

第2 第三者納付の制度
1 本人以外の者も納付できる

国税通則法41条1項は,「国税は、これを納付すべき者のために第三者が納付することができる。」と定めている。
地方税法20条の6第1項も,「地方団体の徴収金は、その納税者又は特別徴収義務者のために第三者が納付し、又は納入することができる。」と定めている。

2 代位できるのは抵当権だけ

国税通則法41条2項は,「国税の納付について正当な利益を有する第三者又は国税を納付すべき者の同意を得た第三者が国税を納付すべき者に代わつてこれを納付した場合において、その国税を担保するため抵当権が設定されているときは、これらの者は、その納付により、その抵当権につき国に代位することができる。」と定めている。
地方税法20条の6第2項も,地方団体の徴収金について同じ趣旨を定めている。
これらの規定は,代位の対象を,税金を担保する抵当権に限って定めている。
国税の場合,代位しようとする第三者は,正当な利益を有すること又は本人の同意を得たことを証する書面を,納付の日の翌日までに国税局長,税務署長又は税関長に提出しなければならない(国税通則法施行令11条)。
国税庁の国税通則法基本通達(第41条関係2)は,「正当な利益を有する第三者」を,本人が国税を納付しないときに滞納処分を受けるか又は本人に対する法律上の自己の権利の価値を失う地位にある者とし,物上保証人,国税の担保のための抵当権付財産の第三取得者及び後順位担保権者を例に挙げている。
同通達(同3)は,国税の保証人等が履行に基づく求償権を有する場合も,正当な利益を有する第三者として国に代位できるとしている。
同居の家族のように正当な利益を有しない者でも,本人の同意を得て納めれば,同項の代位の対象になり得る。
税法には,納めた人が租税債権そのものを取得し,国と同じ優先的な地位で行使できるとする規定はない。

第3 民法の弁済による代位との関係

民法499条は,「債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。」と定め,同法501条1項は,代位した者は「債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。」と定める。
代位した者が原債権を行使できるのは,自己の権利に基づいて債務者に求償できる範囲内に限られる(同条2項)。

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同族会社への外注費は必要経費になるか―契約書・役務の実体・証拠(AI作成)

目次

第1 結論

第2 必要経費の趣旨と要件

1 所得税法37条
2 会社側で売上計上しただけでは足りない

第3 大阪地裁平成30年4月19日判決

1 事案の特徴
2 判決の判断

第4 必要経費を基礎付ける事実

1 会社が独立した役務を提供したこと
2 契約と対価が具体的であること
3 事業主本人の役割と会社の役割を分ける

第5 否認リスクが高い事情

第6 証拠チェックリスト

第7 別の否認規定

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暗号資産で支給する役員退職給与―時価譲渡・原価・過大給与・仮装経理(AI作成)

目次

第1 結論

第2 暗号資産の移転は時価で把握する

1 法人税法61条1項と22条2項
2 設例

第3 役員退職給与の損金算入

1 退職の事実と支給決議
2 不相当に高額な部分

第4 隠蔽又は仮装による役員給与

第5 第三者口座を経由した場合の証拠

第6 仕訳と税務計算を分ける

第7 出典

第1 結論

法人が保有する暗号資産を役員退職給与として移転した場合,現金支給ではないという理由で法人税の所得計算から外れるものではない。
移転時の時価で役員に経済的利益を供与したものとして,①暗号資産の譲渡損益,②役員退職給与の損金算入限度,③隠蔽又は仮装による経理の有無を別々に計算する。

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国庫補助金でソフトウェアを取得した場合の圧縮記帳(AI作成)

目次

第1 結論

第2 圧縮記帳は非課税ではなく課税の繰延べである

第3 法人税法42条の要件

1 国庫補助金等であること
2 目的に適合した固定資産を取得・改良すること
3 返還不要が確定すること
4 確定決算と明細書

第4 設例

第5 ソフトウェア取得で確認する資料

第6 誤りやすい点

第7 出典

第1 結論

法人が国庫補助金等でソフトウェアを取得した場合,補助金収入は原則として益金になる一方,法人税法42条の要件を満たせば,補助金を取得に充てた金額の範囲で圧縮記帳を行い,課税を将来へ繰り延べることができる。

ソフトウェアは法人税法施行令13条8号ヌの無形固定資産であり,事業の用に供する固定資産として取得したものは圧縮記帳の対象となり得る。
単なる保守料,クラウド利用料又は人件費補助とは区別する。

第2 圧縮記帳は非課税ではなく課税の繰延べである

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個人事業廃業後の売掛金貸倒れ―所得税法51条・63条・152条(AI作成)

目次

第1 結論

第2 売掛金は廃業年分の売上げになる

第3 所得税法51条2項の貸倒損失

1 回収不能の類型
2 確認資料

第4 廃業後の損失を遡って算入する

1 所得税法63条
2 廃業年分と前年分

第5 更正の請求の特例

1 所得税法152条の期限
2 添付・保存する資料

第6 設例

第7 消費税は別に判定する

第8 出典・関連記事

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青色申告の承認は事業承継できるか―申請・みなし承認・申告書の受理・信義則(AI作成)

目次

第1 結論

第2 青色申告制度と承認の性質

1 制度の目的
2 一身専属であること

第3 期限内に後継者自身が申請する

1 一般の新規開業・営業譲受け
2 青色申告者から相続した場合
3 被相続人が白色申告者であった場合

第4 みなし承認

第5 申告書の受理と信義則

1 受理は内容の是認ではない
2 租税法上の信義則は限定的である

第6 事業承継時の確認資料

第7 出典・関連記事

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勤務先が負担した国民年金基金掛金相当額は給与所得となるか―東京地判平成16年11月24日と社会保険料控除(AI作成)

第1 結論
第2 東京地裁平成16年11月24日判決

1 事件と争点
2 判決の判断
3 判決の射程

第3 現行法上の整理

1 給与所得への算入
2 社会保険料控除
3 源泉徴収・年末調整

第4 法律事務所・企業の実務チェックリスト
第5 判決及び資料の確認範囲
第6 関連記事
第7 出典

第1 結論

勤務先が,本来は役員又は従業員本人が負担すべき国民年金基金の掛金又はその相当額を負担した場合,その勤務先負担額は,原則として本人に対する経済的利益,すなわち給与所得として取り扱われる。国民年金基金掛金が社会保険料控除の対象であることから,直ちに勤務先負担額が非課税になるわけではない。

東京地裁平成16年11月24日判決(平成13年(行ウ)第359号・所得税更正処分取消請求事件)は,使用者が被用者本人の負担すべき保険料又は掛金を支払った場合の所得区分を検討し,国民年金基金掛金の勤務先負担額を給与所得とする税務処理を是認した。ただし,この判決は,勤務先が別個の退職年金制度を設けた場合一般や,業務委託先が独立事業者の費用を支払った場合一般を判断したものではない。

実務では,①誰が法令上・契約上の掛金負担者か,②勤務先が基金へ直接納付したのか本人へ手当を支給したのか,③給与課税と源泉徴収をしたか,④社会保険料控除を誰がどの年に適用できるかを分けて確認する必要がある。

第2 東京地裁平成16年11月24日判決

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KSK2とは何か-令和8年9月24日の国税システム更改,AI活用,e-Tax変更及び障害(AI作成)

目次第1 KSK2の位置付け1 KSK2とは何か2 更改の三つの開発コンセプト3 分かることと公表資料の限界第2 KSK2が扱う事務と情報1 申告から債権管理までの主な機能2 外部システムとの連携3 ガバメントクラウドと外部ネットワーク非接続端末第3 AI-OCR,予測AI及びデータ分析1 AI-OCRによる書面のデータ化2 調査選定と滞納整理を支援するデータ分析3 予測AIと生成AIは別の用途であること第4 納税者及び事業者に見える変更1 申告書等の様式と控用2 13桁の「お問い合わせ番号」3 e-Taxの接続先と文字の取扱い4 提出年月日の表示と電子交付の一括同意第5 更改前後に公表された不具合等1 e-Taxの不具合と解消公表2 税務署窓口での手続遅延3 更改前に判明した仕様書の掲載誤り第6 税務実務で区別しておきたいこと1 システム更改と税法上の義務は別であること2 データの整合性が重要になること3 障害時に残しておく記録4 セキュリティ資料の読み方第7 関連する記事1 提出の証明と申告書の閲覧2 国税庁資料の法的な位置付け第8 出典1 国税庁による制度及び更改の説明2 個人情報,システム機能及び情報連携3 更改前後のお知らせ
第1 KSK2の位置付け
1 KSK2とは何か

KSK2は,国税総合管理システムの次世代版であり,全国の国税局と税務署を結び,申告・納税の事績,各種資料,国税債権等を地域や税目を越えて管理し,税務調査や滞納整理を含む国税事務に利用する基幹システムです。
国税庁は令和8年9月24日に国税システムを更改したと公表しており,本記事では同月27日を調査基準日として,国税庁の公表資料をAIで整理した上で原資料と照合しました。

KSK2は,納税者向けの一つの新サービスの名称ではありません。
内部の賦課・徴収事務,書面の収受・入力,e-Tax,マイナポータル,eLTAX等との連携を支えるシステム群として理解するのが適切です。

2 更改の三つの開発コンセプト

国税庁が開発段階で示したコンセプトは,紙を前提とした処理からデータ中心の事務処理へ移ること,税目別のデータベース及びアプリケーションを統合すること,独自OSのメインフレームから汎用的なOSを使うオープンシステムへ刷新することの三つです。
旧KSKも地域や税目を越えた情報の一元管理を目的とするシステムでしたが,KSK2では,その内部に残っていた税目別のデータベース及びアプリケーションを統合することが開発課題とされました。

3 分かることと公表資料の限界

公表資料からは,KSK2の目的,主な機能,取り扱う情報の類型,外部システムとの連携,AI-OCR及びデータ分析の概略を確認できます。
一方,個別の納税者について用いる抽出条件,モデルの重み,職員画面の具体的な表示内容その他の詳細な内部運用は,確認した公表資料だけでは分かりません。

第2 KSK2が扱う事務と情報
1 申告から債権管理までの主な機能

国税庁の全項目評価書は,主な機能として,納税者ごとの部内番号の確認・付番,申告書等の入力,納税者の基本情報及び関係者情報の管理,各税目の申告・申請・届出情報の管理,法定調書等の資料情報の管理,国税の債権債務の管理,納税証明書の作成並びに税務調査対象者の選定等を挙げています。
したがって,KSK2は単なる電子申告の受付システムではなく,収受後の処理,課税,徴収,証明及び調査選定を横断する基盤です。

2 外部システムとの連携

全項目評価書には,e-Tax,eLTAX,住民基本台帳ネットワークシステム,マイナポータル,口座情報登録システム,日本銀行のシステム等との情報連携が記載されています。
例えば,地方公共団体との間ではeLTAXを経由して課税・滞納情報を照会・提供し,マイナポータルとの関係ではお知らせの通知や自己情報の連携にKSK2が関与します。

外部連携があることは,すべての情報を無条件に共有することを意味しません。
どの情報をどの目的で取り扱うかは,税法,番号法その他の根拠と個別の連携仕様によって区別して読む必要があります。

3 ガバメントクラウドと外部ネットワーク非接続端末

全項目評価書は,KSK2に加え,ガバメントソリューションサービス,ガバメントクラウド及び外部ネットワークに接続しない高性能パソコンを併用してデータ分析を行う構成を示しています。
ガバメントクラウドでは各種納税者情報を含むデータを加工・分析し,高性能パソコンではKSK2内の各税目データや調査で取得したデータを分析するとされています。

この記載から分かるのは,国税事務の全情報が一つの公開クラウドへ単純に移されたということではなく,目的に応じて複数の環境を組み合わせる構成であることです。
外部ネットワーク非接続端末からデータを移動する場合の媒体限定,暗号化及び不要データ削除も,同評価書に記載されています。

第3 AI-OCR,予測AI及びデータ分析
1 AI-OCRによる書面のデータ化

令和8年9月24日の更改後は,一部の書面申告書,申請書等について,AI-OCRがフリーピッチ枠の文字を認識し,データ化及びイメージ化を行います。

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破産管財人による破産法人の消費税申告-不動産売却,課税期間,申告・納付及び無申告の問題(AI作成)

目次第1 この記事の対象1 破産法人の消費税を取り上げます2 先に結論を示します第2 納税義務者と申告手続を行う者1 納税義務者は破産法人です2 申告・納付の手続は破産管財人が行います第3 不動産等を換価した場合の課税関係1 土地と建物は区分します2 任意売却であることだけでは課税関係は消えません3 課税売上げと控除対象仕入れを別々に確認します第4 課税期間,申告期限及び財団債権1 破産手続の開始日だけでは申告期限は決まりません2 財団債権となるかは発生原因と時期を確認します第5 無申告・期限後申告の問題1 本税だけで終わらないことがあります2 帳簿等の不備は税額計算にも影響します第6 破産管財人が作る確認表1 換価前に確認する事項2 換価後に確認する事項第7 懲戒事例を読む際の注意1 税務上の判断と懲戒判断は別です2 関連する記事第8 参照資料1 法令2 国税庁資料3 裁判例資料
第1 この記事の対象
1 破産法人の消費税を取り上げます

この記事は,法人の破産手続開始後に破産管財人が不動産その他の資産を換価した場合を中心に,消費税の納税義務者,課税・非課税の区分,申告・納付及び無申告となった場合の問題を整理したものです(令和8年9月27日現在)。

個人破産における所得税・消費税や,破産法人の法人税については,制度と計算構造が異なるため,必要な範囲を除いて扱いません。また,個別案件の課税関係は,基準期間,課税事業者選択,簡易課税,インボイス登録,売買契約及び換価費用等により変わります。

2 先に結論を示します

破産手続開始後も,破産法人が当然に消費税の納税義務者でなくなるわけではありません。国税庁は,破産財団に属する課税資産の譲渡等について,破産法人の基準期間により納税義務を判定し,破産管財人が申告・納付の手続を行うと説明しています。

したがって,管財実務では,換価時点で売買代金をそのまま配当原資とみなさず,土地・建物等の区分,課税期間,仕入税額控除に必要な帳簿・請求書等及び申告期限を早期に確認する必要があります。

第2 納税義務者と申告手続を行う者
1 納税義務者は破産法人です

国税庁の質疑応答事例は,破産財団は独立した法主体ではなく,破産財団に属する財産を課税資産として譲渡した場合の納税義務者は破産法人であると整理しています。納税義務の有無も,原則として破産法人の基準期間における課税売上高等によって判断します。

破産手続の開始は,財産の管理処分権を破産管財人に移しますが,破産法人とは別の納税主体として「破産財団」が新設されるわけではありません。

2 申告・納付の手続は破産管財人が行います

破産財団に属する課税資産の譲渡等について破産法人に消費税の申告・納付義務があるときは,その手続を破産管財人が行います。ここでは,「納税義務者」と「申告・納付の事務を担当する者」を区別する必要があります。

平成20年6月16日の名古屋高裁金沢支部判決は,破産会社の課税資産の譲渡に関する申告・納付について,破産管財人がその職務として行うべきことを前提に判断しました。この裁判例は,国税庁の「税務訴訟資料」に収録されています。

第3 不動産等を換価した場合の課税関係
1 土地と建物は区分します

土地の譲渡は消費税の非課税取引です。他方,事業者が事業として行う建物,機械,備品その他の資産の譲渡は,原則として課税取引となります。

土地と建物を一括して売却した場合でも,土地部分まで一律に課税されるわけではありません。国税庁は,契約で価額が区分されていない場合,譲渡時の時価や固定資産税評価額等を基礎とする合理的な方法で区分する必要があると説明しています。

2 任意売却であることだけでは課税関係は消えません

担保権者の同意を得て行う任意売却や,破産管財人による換価であっても,資産の譲渡に該当する限り,通常の消費税の判定から外れるわけではありません。裁判所の許可,担保権者との別除権協定及び配当見込みは,換価の適法性や経済性に関係しますが,それだけで消費税が非課税となるものではありません。

3 課税売上げと控除対象仕入れを別々に確認します

納付税額は,原則として課税売上げに係る消費税額から控除対象仕入税額を差し引いて計算します。そのため,売却代金だけでなく,仲介手数料,測量費,解体費その他の換価費用について,課税関係と保存書類を確認する必要があります。

仕入税額控除を受けるための帳簿・請求書等の要件は,取引時期やインボイス制度の適用関係によって異なります。破産開始前の経理資料が散逸している場合でも,保存資料の有無を確認しないまま控除可能であると扱うことはできません。

第4 課税期間,申告期限及び財団債権
1 破産手続の開始日だけでは申告期限は決まりません

法人の消費税の課税期間は,原則として事業年度です。確定申告と納付は,原則として課税期間の末日の翌日から2か月以内に行います。課税期間の特例や申告期限の延長がある場合は,それぞれ別に確認します。

破産手続が開始したことや,法人の営業を停止したことだけで,消費税の課税期間や申告期限が当然に消滅するわけではありません。開始決定日,事業年度末,換価日及び申告期限を同じ年表に置くと,確認漏れを防ぎやすくなります。

2 財団債権となるかは発生原因と時期を確認します

破産法148条1項は,一定の租税等の請求権及び破産管財人が破産財団に関してした行為によって生じた請求権を財団債権としています。

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生前贈与の加算は亡くなった年でどう変わるか―加算額の早見表,100万円の控除,贈与税額控除と還付されない贈与税(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象2 結論第2 加算の仕組みと経過措置1 相続税法19条1項2 亡くなった年で加算対象期間が変わる第3 早見表―毎年300万円を5年間贈与した翌年に亡くなった場合1 設例と前提2 死亡年ごとの加算額3 贈与の日をいつとみるか4 毎年の贈与を続ける意味第4 加算された贈与の贈与税と,還付されない贈与税1 控除される贈与税の額2 控除しきれない贈与税は還付されない第5 贈与税を払ってでも移すことの損得1 贈与税の実効税率2 相続税の税率3 比べ方と前提第6 加算の対象になる人とならない人1 相続又は遺贈により財産を取得した人に限られる2 孫を生命保険金の受取人にした場合第7 相続時精算課税との違い1 年110万円の基礎控除と加算の範囲2 暦年課税との比較第8 民法上の扱いは税とは別の物差し1 特別受益と遺留分2 税の7年と民法の10年を混同しない第9 関連記事第10 出典1 法令2 通達・国税庁の解説3 裁判例
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象

令和5年度の税制改正により,相続税の計算に足し戻される生前贈与(暦年課税)の範囲は,相続開始前3年以内から7年以内へ広がった。
もっとも,7年がそのまま適用されるのは令和13年以後の相続であり,それまでは亡くなった年によって範囲が変わる。
本記事は,子に毎年300万円ずつ5年間贈与した翌年に親が亡くなった設例で死亡年ごとの加算額を計算し,加算時の贈与税の扱い,贈与税を払って多めに贈与する損得,孫への贈与及び相続時精算課税との違いを整理する。

調査基準日は令和8年9月26日である。
条文はe-Gov法令検索(未施行の規定は施行日の版)で,国税庁の解説はタックスアンサー及び相続税法基本通達で確認した。
税額は本記事の試算であり,実際の申告では個別の事情により結果が変わる。

本記事の加算対象期間を使う前に,その入金によって贈与が成立し,受贈者に財産が帰属したかを確認する。贈与が成立しておらず,死亡時にも被相続人に帰属する名義預金は,期間内の贈与を足し戻す問題ではなく,本来の相続財産の範囲の問題である。そのため,7年以上前の入金というだけで課税対象から外れるとはいえない。

2 結論

①足し戻される贈与は,死亡の日が令和8年12月31日までなら3年以内,令和9年から令和12年までなら令和6年1月1日以後,令和13年1月1日以後なら7年以内のものである。
②3年より前の贈与は,その合計額から100万円を控除した残額だけが加算される。
③設例の加算額は,令和9年の死亡で800万円又は900万円,令和10年の死亡で1100万円,令和11年以後の死亡で1400万円であり,1500万円全額が足し戻されることはない。
④加算された贈与の贈与税は相続税額から控除されるが,控除しきれない分は還付されない。
⑤足し戻しの対象は,原則として相続又は遺贈により財産を取得した人に限られるが,孫を生命保険金の受取人にすると対象になる。
⑥税の加算期間(最長7年)と,民法の遺留分算定の基礎(相続人への贈与は10年)及び特別受益(期間の限定なし)は別の物差しである。

第2 加算の仕組みと経過措置
1 相続税法19条1項
(1) 加算の対象と期間

相続税法19条1項は,「相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前七年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、」その贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算すると定める。
加算するのは贈与の時の価額である。
タックスアンサー「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」は,「基礎控除額110万円以下の贈与財産や死亡した年に贈与されている財産の価額も加算することになります。」としている。

(2) 3年より前の部分から控除する100万円

同項は,加算する価額を,「(加算対象贈与財産のうち当該相続の開始前三年以内に取得した財産以外の財産にあつては、当該財産の価額の合計額から百万円を控除した残額)」としている。
100万円は,毎年の贈与ごとではなく,3年より前の贈与の合計額から1回だけ控除される。
相続税法基本通達19-1の(注)は,財産を取得した者ごとに100万円を控除すること,合計額が100万円以下なら残額は零となることを明らかにしている。

2 亡くなった年で加算対象期間が変わる
(1) 附則19条1項・2項(現行)

7年への延長は,所得税法等の一部を改正する法律(令和5年法律第3号)附則19条の経過措置により段階的に適用される。

(続きを読む...)生前贈与の加算は亡くなった年でどう変わるか―加算額の早見表,100万円の控除,贈与税額控除と還付されない贈与税(AI作成)

名義預金とは―判断基準・生前贈与との違い・相続税と遺産分割(AI作成)

目次

第1 名義預金とは―判断の出発点1 名義だけで持ち主は決まらない2 結論3 判断材料と確認資料の対応第2 判断基準――東京地裁平成20年10月17日判決1 事案と判断の枠組み2 名義と管理運用の評価3 贈与の手続をした財産との対比4 控訴審――東京高裁平成21年4月16日判決第3 家族名義の口座で資金を回していた事案――東京地裁平成30年4月24日判決第4 国税不服審判所の裁決に見る贈与の成否1 令和3年9月17日裁決の事案2 知らされていなかった子の名義預金――贈与は不成立3 親権者の母が管理していた子の名義預金――贈与が成立4 被相続人名義の預金の移し替えと重加算税5 妻名義の口座への入金を贈与としなかった裁決6 家族名義でも相続財産と認められなかった預金第5 民法の贈与と名義預金第6 生前贈与と認められるための証拠1 証拠の組み方2 年110万円以下の贈与3 相続時精算課税を選ぶ場合第7 生前贈与加算と名義預金の違い1 生前贈与加算は贈与があったことが前提2 名義預金との違い3 手渡しで成立した贈与が加算された例第8 遺産分割調停の合意は税務署を拘束しない第9 遺産分割・遺留分での名義預金1 遺産の範囲の争いと遺産確認の訴え2 贈与と認められる場合の特別受益と遺留分3 税務の判断と民事の判断の関係4 税務調査で名義預金を指摘されたときの資料整理第10 名義預金についてのよくある質問1 子名義なら子の財産になるか2 110万円以下なら名義預金にならないか3 契約書や贈与税申告がないと贈与は無効か4 親が未成年者の通帳を保管していると名義預金か5 7年以上前の入金なら相続税の対象外か6 生前に元の口座へ戻せば必ず非課税か第11 関連記事第12 出典1 法令2 国税庁の資料3 裁判例4 裁決
第1 名義預金とは―判断の出発点
1 名義だけで持ち主は決まらない

名義預金とは,口座の名義人と実質的な財産の持ち主が異なる預金を指す実務上の呼び方であり,法令上の用語ではない。例えば,親が子名義の口座へ積み立てても,贈与の合意がなく,親が自分の財産として管理している場合には,親の財産として相続税の対象になることがある。反対に,贈与が成立して子に帰属している預金まで,一律に名義預金とすることはできない。

判断では,誰が出資したかだけでなく,贈与の申込みと受諾,管理の目的,収益・使用の実態及び名義を付けた経緯を確認する。本記事は,判断基準,贈与の証拠,相続税と遺産分割の関係を裁判例と裁決に即して説明する。生前に整理する具体的な手順は,名義預金を生前に解消する方法で扱う。

令和8年10月11日に定義・証拠の説明及び公開資料へのリンクを見直した。裁判所の判決,国税不服審判所の裁決及び国税庁の税務解説は,それぞれ資料の性質が異なる。

2 結論

①名義預金に当たるかは,出捐者,管理運用の状況,利益の帰属者,名義人との関係,名義の経緯等を総合考慮して判断される(東京地裁平成20年10月17日判決)。
②夫婦間では,妻名義の預金を妻が自ら管理運用していても,それだけでは妻の財産とはされなかった(同判決及びその控訴審判決)。
③受贈者が口座の存在を知らず,通帳等を贈与者が保管していた子の名義預金について,贈与の成立を否定した裁決がある(国税不服審判所令和3年9月17日裁決)。
④贈与契約書,受贈者自身による口座の管理,贈与税の申告及び受贈者による使用が,贈与を示す証拠になる。
⑤遺産分割調停での当事者の合意は,課税庁を拘束しない(前記東京地裁判決)。
⑥名義預金は「贈与がなかった」ために相続財産そのものとされるもので,「贈与があった」上で足し戻す生前贈与加算(相続税法19条)とは別の問題である。

3 判断材料と確認資料の対応

次の項目は点数式のチェックリストではなく,事実を総合して評価するための整理である。一つに該当すれば結論が決まるというものではない。

判断材料確認する資料と注意点資金の出所入金元の通帳,給与・相続・贈与等の資料。親の出資でも,贈与が成立していれば子の財産になり得る。贈与の合意契約書,手紙,メッセージ,受諾・引渡しの経緯。契約書がないことだけで不成立と決めない。管理・運用通帳・印章・カードの保管,取引の指示,代理の目的。未成年者のための親権者管理を区別する。利益と使用利息の入金先,払戻し,生活費・投資等の使途。貯蓄を続けること自体は贈与を否定しない。名義の経緯と申告口座開設資料,家族関係,贈与税・所得税・相続税の申告。名義・申告の一事情だけで帰属を決めない。
第2 判断基準――東京地裁平成20年10月17日判決
1 事案と判断の枠組み

東京地裁平成20年10月17日判決(平成19年(行ウ)第19号,税務訴訟資料258号順号11053)は,平成13年4月15日に亡くなった夫の相続について,妻名義の有価証券及び預金(以下「妻名義預金等」という。)が夫の相続財産に当たるかが争われた事案である。
夫は全財産を妻に相続させる遺言をしており,先妻との子2名が遺留分減殺を請求して遺産分割調停が成立した後,子らの相続税について税務署長が妻名義預金等を遺産に加えて更正処分をし,子らがその取消しを求めた。
妻名義預金等の原資がいずれも夫の出捐によるものであることには,争いがなかった。

同判決は,被相続人以外の者の名義の財産であっても,相続開始時に被相続人に帰属するものであれば相続税の課税対象となるとし,その判断は「当該財産又はその購入原資の出捐者、当該財産の管理及び運用の状況、当該財産から生ずる利益の帰属者、被相続人と当該財産の名義人並びに当該財産の管理及び運用をする者との関係、当該財産の名義人がその名義を有することになった経緯等を総合考慮して判断するのが相当である」とした。

2 名義と管理運用の評価

同判決は,我が国においては「夫が自己の財産を、自己の扶養する妻名義の預金等の形態で保有するのも珍しいことではないというのが公知の事実である」として,妻名義であることの一事をもって妻の所有と断ずることはできないとした。
また,妻が自らの判断で主体的に取引をしていたこと自体は認めたが,妻は夫名義の財産の管理運用も同じようにしていたので,「夫婦間においては、妻が夫の財産について管理及び運用をすることがさほど不自然であるということはできないから、これを殊更重視することはできず」とした。
利息の一部が妻の年金の入金口座に入っていたことも,妻が預金を解約して他の用途に使用した事情がうかがわれないことから,結論を左右しなかった。

3 贈与の手続をした財産との対比

夫は平成2年に土地建物の持分の一部を妻に贈与しており,その際は贈与契約書を作り,妻が贈与税の申告書(納付すべき税額がない旨のもの)を提出していた。
同判決は,自分の死後の妻の生活を案じていた夫が,遺言とは別に財産を妻名義にしておこうと考えたとしても「あながち不自然とはいい難い」とし,妻名義預金等については「そのような手続を何ら採っていない」ことも考慮して,生前贈与を認めなかった。

4 控訴審――東京高裁平成21年4月16日判決

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親の賃貸建物だけを子の資産管理会社へ売る相続対策―無償返還届出,時価での売買,所得税・相続税・法人税及び遺留分(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事が扱う相続対策2 結論第2 この対策で減る部分と減らない部分1 減るのは将来の家賃の蓄積である2 売却の時点で評価額がむしろ増えることがある第3 土地の貸し借りと借地権の認定課税1 相当の地代と無償返還届出書2 親の相続のときの土地の評価3 借地権割合による控除を否定した裁判例第4 売買価額は時価による1 時価の2分の1未満なら親に譲渡所得課税2 2分の1以上でも課税を受けることがある3 死亡の6日前に同族会社へ不動産を売った事件4 時価をどう決めるか第5 同族会社の行為計算否認と評価通達61 相続税法64条と地上権の設定を否認した事件2 評価通達6と貸付用不動産の評価の見直し(案)第6 小規模宅地等の特例1 特定同族会社事業用宅地等には当たらない2 相続開始前3年以内の新たな貸付け第7 民法から見た注意点1 会社に積み上がる家賃は遺産に入らない2 不相当な対価による売買と負担付贈与3 会社の設立資金や株式を親が出した場合第8 実行前に確認する事項と専門家の説明義務1 確認する事項2 スキームを提案する税理士の説明義務第9 関連記事第10 出典1 法令2 通達・通達案3 国税庁の解説4 裁判例
第1 本記事の対象と結論
1 本記事が扱う相続対策

アパート等の賃貸建物とその敷地を持つ親が,子が株主となる会社(いわゆる資産管理会社)を設立し,敷地は親が持ったまま,建物だけをその会社に売るという相続対策がある。
売却後の家賃は会社の収入になるので,親の手元に家賃が積み上がらず,将来の相続財産の増加を抑えられるというのがその狙いである。
本記事は,この対策の効果の範囲,土地の貸借と売買価額に関する課税,同族会社に関する否認規定,小規模宅地等の特例並びに遺留分及び特別受益を,条文,国税庁の通達及び裁判例で確認して整理するものである。

調査基準日は令和8年9月26日である。
条文はe-Gov法令検索で,通達は国税庁ウェブサイトで確認し,裁判例は裁判所ウェブサイトで全文を確認したもののほか,同ウェブサイト未掲載の2件は判例秘書で全文を確認した。
数値例は本記事の試算であり,個別の物件については税理士による評価と試算が必要である。

2 結論

①この対策で抑えられるのは売却後の家賃の蓄積だけであり,売却の時点では建物が現金に変わるだけである。
②相続税の評価額で比べると,貸家として低く評価されていた建物が額面どおりの現金に変わるので,売却の時点で親の課税財産はむしろ増えることがある。
③会社が親の土地の上に建物を持つので,相当の地代を支払うか「土地の無償返還に関する届出書」を提出して借地権の認定課税を避けるのが通常であり,届出書を提出した土地は,親の相続のときに自用地としての価額の80%(使用貸借なら100%)で評価される。
④売買価額は時価によるべきであり,時価の2分の1未満なら親に時価による譲渡所得課税が及び,2分の1以上でも会社の受贈益と株主である子へのみなし贈与の課税を受けることがある。
⑤会社の事業は不動産の貸付けなので,親の土地は特定同族会社事業用宅地等に当たらず,小規模宅地等の特例を使えるとしても貸付事業用宅地等(200㎡・50%減額)である。
⑥民法上は,会社に積み上がる家賃は遺産にも遺留分を算定するための財産にも入らないが,不相当な対価による売買は負担付贈与とみなされることがあり,会社の設立資金を親が出せば特別受益や遺留分の問題になる。

第2 この対策で減る部分と減らない部分
1 減るのは将来の家賃の蓄積である

建物を会社に売った後の家賃は会社の収入になり,経費,地代及び法人税等を差し引いた残りは会社の財産として積み上がる。
会社の株式を子が持っていれば,その価値は子に帰属し,その分だけ親の財産が将来増えることを抑えられる。
他方で,売却の時点では,親の財産のうち建物が売買代金に置き換わるだけであり,売却そのもので親の財産が減るわけではない。

2 売却の時点で評価額がむしろ増えることがある
(1) 建物と土地の相続税評価

財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)89は,家屋を固定資産税評価額に倍率を乗じて評価するとし,国税庁のタックスアンサー「建築中の家屋の評価」は,その倍率を原則として1.0と説明している。
タックスアンサー「土地家屋の評価」は,「課税時期において貸家の用に供されている家屋は、その家屋の固定資産税評価額に借家権割合と賃貸割合を乗じた価額を、その家屋の固定資産税評価額から控除して評価します。」としている(評価通達93・94)。
貸家の敷地(貸家建付地)は,自用地としての価額から,自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合を控除して評価する(評価通達26)。
建物を会社に売ると,親の側では,建物に代わって売買代金の現金が入り,敷地は貸家建付地から会社に貸している土地に変わる。

(2) 本記事の試算

固定資産税評価額2,000万円,時価3,000万円の賃貸建物(賃貸割合100%,借家権割合30%)と,自用地としての価額1億円,借地権割合60%の敷地を,時価で売った場合の親の財産の評価額は,次のとおりである(譲渡所得税と売却後の地代は考慮していない。)。

項目売却前売却後(無償返還届出・賃貸借)売却後(使用貸借)建物又は現金建物1,400万円(2,000万円×0.7)現金3,000万円現金3,000万円敷地8,200万円(貸家建付地)8,000万円(自用地の80%)1億円(自用地)合計9,600万円1億1,000万円1億3,000万円

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令和9年から0歳でも使えるNISA――未成年者のつみたて投資枠の仕組み,払出し制限,親権者の管理,贈与税及び離婚・相続での注意(AI作成)

目次第1 結論――子本人名義の口座を親権者が管理する制度1 制度の概要2 本記事の対象と基準日第2 制度の骨格1 成人と同じ非課税口座の中の勘定2 投資枠と上限3 対象商品4 施行日と政令・省令第3 払出しの制限と18歳以後の扱い1 12歳になるまで――災害等による全額の払出しだけ2 12歳以後――教育費又は生活費のための払出し3 売却代金や分配金の受け皿4 制限に反したとき5 18歳以後と金融機関の変更第4 旧ジュニアNISAとの違い第5 親権者による管理1 子本人の財産を親権者が管理する2 払出しの使い道第6 贈与税と名義預金1 親が出すお金は子への贈与2 名義預金とされないために第7 離婚・相続での注意1 離婚時の財産分与2 親が亡くなった場合3 子が亡くなった場合第8 関連記事第9 出典1 法令2 財務省・金融庁・国税庁の資料3 裁判例4 裁決
第1 結論――子本人名義の口座を親権者が管理する制度
1 制度の概要
(1) 法令上の名称と通称

令和8年度の税制改正(令和8年法律第12号)により,令和9年1月1日から,0歳から17歳までの子もNISAのつみたて投資枠を使えるようになる。
法令上の名称は「未成年者特定累積投資勘定」である。
いわゆる「こどもNISA」は証券会社や報道で使われている通称であり,財務省・金融庁の資料では「未成年者のつみたて投資枠」等と表現されている。

(2) 五つの要点

制度の要点は,次のとおりである。
①口座は子本人の名義であり,成人と同じ非課税口座の中に設けられる。
②年間の投資枠は60万円,非課税で保有できる上限は600万円で,成長投資枠は無い。
③子が12歳になるまでは,災害等の特別な事情による全額の払出ししかできない。
④12歳以後は,子の教育費又は生活費に充てるための払出しができる。
⑤18歳になった後は,成人のつみたて投資枠に移行する。

(3) 子の財産であることの意味

法律上は子の財産であるから,親が出したお金は子への贈与となり,その管理は親権者が子を代表して行うことになる。
そのため,贈与税,いわゆる名義預金,離婚時の財産分与及び相続の場面で,通常の親名義の投資とは違う注意が要る。

2 本記事の対象と基準日

本記事は,令和8年9月26日現在の法令(令和9年1月1日施行の改正後の租税特別措置法,同法施行令及び同法施行規則を含む。)と,財務省・金融庁の公表資料を基に整理するものである。
制度はまだ始まっていないが,国税庁の租税特別措置法関係通達(措置法第37条の14関係)は,令和8年の改正で,この制度を前提とした取扱いを定めている。
他方,同日現在,国税庁のNISAの案内ページと金融庁のNISA特設ウェブサイトには,この制度の説明は掲載されていない。
対象商品の要件を定める告示や,金融機関の実務上の手続は,今後示されるものがあるため,実際に口座を開く際は金融機関の説明を確認する必要がある。

旧ジュニアNISAを含む,名義人が亡くなった場合のNISA口座の扱いは,相続発生時のNISA口座の取扱いで整理している。

第2 制度の骨格
1 成人と同じ非課税口座の中の勘定
(1) 定義

改正後の租税特別措置法37条の14第4項1号は,未成年者特定累積投資勘定を,「特定累積投資勘定のうち、非課税口座を開設している居住者又は恒久的施設を有する非居住者がその年一月一日において十八歳未満である年及び出生した日の属する年の各年において設けられるもの」と定義している。
つまり,旧ジュニアNISAのような別の口座ではなく,成人と同じ「非課税口座」の中の,つみたて投資枠(特定累積投資勘定)のうち,18歳未満の年に設けられるものという位置付けである。

(2) 年齢の下限の撤廃

現行の同条5項1号は,非課税口座を開設できる者を「その年一月一日において十八歳以上である者に限る」としているが,改正後の同号からはこの括弧書が削られた。

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示談金・解決金・和解金に税金はかかるか―名目ではなく補填対象・所得区分・権利確定時期で判断する(AI作成)

目次

第1 結論―名称ではなく何を補填する金銭かを見る第2 最初に分ける五つの項目第3 個人が受け取る場合第4 法人が受け取る場合第5 所得が帰属する時期第6 源泉徴収の有無1 支払金の実質に即して判断する2 総額・控除額・振込額を別々に確認する3 和解条項と支払資料を対応させる第7 消費税の取扱い第8 示談書・和解条項の作り方第9 確認資料と実務チェックリスト第10 調査範囲と限界第11 関連記事第12 出典・参考資料
第1 結論―名称ではなく何を補填する金銭かを見る

示談金,解決金又は和解金という名目だけで,所得税が課税されるか,非課税となるかは決まらない。受領者が誰か,どの権利・損害・費用を補う金銭か,役務や権利移転の対価を含むか,いつ権利が確定したかを項目ごとに判断する。

同じ一つの振込に,慰謝料,治療費,逸失利益,営業損失,未払賃金,退職金,弁護士費用,遅延損害金等が含まれることがある。税務上は,振込額全体を一括して扱うのではなく,各項目の実質に沿って所得区分,非課税,必要経費,源泉徴収及び消費税を検討する。

本記事は,令和8年9月25日現在の法令及び国税庁公表資料に基づく。

第2 最初に分ける五つの項目
確認項目主な資料税務上の意味
受領者当事者表示,振込先,代理受領の有無個人と法人では非課税規定・益金算入が異なる。
発生原因事故,契約違反,退職,明渡し,知財侵害等心身又は資産の損害か,所得・費用・対価の補填かを決める。
内訳請求書,訴状,準備書面,計算表,和解条項課税・非課税及び所得区分を項目別に判断する。
権利確定時期示談成立日,判決確定日,条件,分割払条項どの年分・事業年度に計上するかを判断する。
支払方法支払日,源泉徴収,消費税,遅延条項控除額,納付義務及び受取額を確定する。

第3 個人が受け取る場合
1 心身に加えられた損害

所得税法9条1項18号及び所得税法施行令30条は,心身に加えられた損害について支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金等を非課税とする。国税庁タックスアンサーNo.1700は,事故による治療費,慰謝料及び負傷して働けないことによる収益の補償等を例示する。ただし,治療費の補填額は医療費控除の計算で支払医療費から控除する。

2 資産に加えられた損害

不法行為その他突発的な事故により,家財,自家用車,着衣その他の私用資産に加えられた損害を補う損害賠償金等は,所得税法施行令30条2号の範囲で原則として非課税となる。交通事故の携行品について,修理費又は事故直前の時価を基礎に賠償額を算定することは民事上の損害額の問題であり,所得税の減価償却費又は税務上の帳簿価額とは目的が異なる。民事上の事故時価を税務上の簿価だけで決めず,反対に,非課税であることから新品再調達額の全額が民事上の損害になるとも考えない。

事業用資産では,受領金の対象をさらに分ける。国税庁タックスアンサーNo.1700は,①棚卸資産の損害に対する賠償金は収入金額に代わる性質があるため事業所得の収入金額となること,②仮店舗の賃借料等の必要経費を補填する金額も事業所得の収入金額となること,③事業用車両を廃車にする場合の車両自体の損害賠償金は非課税である一方,資産損失の計算では補填額を損失額から控除することを示している。したがって,「事業用資産だから全額課税」又は「資産損害だから損失の全額控除と非課税収入を重ねられる」と一律に処理しない。

交通事故によるヘルメット,高機能ウェア,靴及び救助時切断衣類の民事上の査定は,交通事故のヘルメット・高機能ウェア・靴の損害を,事業用車両の修理費,保険金,全損・除却,休車損害及び消費税は,事業用車両の交通事故の会計・税務を参照されたい。

3 失われた所得,契約上の対価その他の経済的利益

本来所得となるべき金額,役務の対価,事業上の必要経費,借家権の消滅又は資産・権利の譲渡等を補う部分は,単に「解決金」と記載しても当然には非課税とならない。事業所得,給与所得,退職所得,譲渡所得,一時所得又は雑所得のいずれに該当するかを,紛争前の法律関係と補填対象から判定する。

売買の解除を和解で精算するときは,代金の原状回復と,売主が別に取得する違約金を分ける。返還義務と違約金債権を相殺して差額を振り込んでも,差引額だけで所得区分や対象年分を決めることはできない。違約金も,業務との関係,継続性,対価性及び補填対象を確認して,一時所得等の区分又は非課税の要件を判断する。解除と原状回復による過年度の譲渡所得の検討は,違約金の所得計算と別の問題である。詳しくは売買契約を解除した後の所得税―原状回復,未収代金の貸倒れ,違約金と更正の請求を参照されたい。

遅延損害金は元本と別に検討する。元本が非課税でも,遅延損害金が当然に同じ取扱いになるとは限らない。

4 投資・貸付被害の返金と自主補償

投資詐欺や不正な金銭勧誘について返金・賠償・会社の自主補償を受けるときは,返還元本,資産損害の補填,約定利息,遅延損害金及び費用補填を区分する。「自主補償」という名称や,入金額が元本以下であることだけで,全額非課税と判断しない。支払者と受領者,対象資産,所得・必要経費の補填,権利移転等の対価及び過年度の損失処理との対応を確認する。

認定通知,実際の補償合意書,金額計算書,既返金の明細及び通帳を対応させる。例えば,同じ振込に元本の回復と利息相当額が含まれる場合は,その内訳と根拠を確認し,課税関係を別々に検討する。会社の補償方針や調査報告書は,税務当局による当該補償金の個別の課税判断とは区別する。ここでの確認手順は,所得税法施行令30条及び国税庁No.1700の実質による区分を,資料収集へ応用したものである。

損失の控除,返金・自主補償及び過年度処理の対応は,投資詐欺・金銭不祥事の被害と税務で具体的に説明している。

第4 法人が受け取る場合

個人についての所得税法9条の非課税所得を,法人へそのまま当てはめることはできない。法人税法22条2項により,資本等取引以外の取引に係る収益は原則として益金の額に算入される。損害賠償金又は和解金を受け取った法人は,損害に係る損失,修繕費その他の損金と,受取賠償金の益金をそれぞれ検討する。

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法人が資産を時価より低額で譲り受けた場合の税務―受贈益・時価・取得価額・相手方課税(AI作成)

目次

第1 結論と対象
第2 法人側に受贈益が生じる基本構造
第3 時価と取得価額
第4 完全支配関係がある法人間の例外
第5 売主が個人の場合

1 法人への著しい低額譲渡
2 自己創作の著作権を法人へ低額譲渡した場合
3 役員・株主から会社への移転

第6 売主が法人の場合
第7 実務上の確認資料
第8 確認済み事項と未確認事項
第9 出典・関連記事

第1 結論と対象

法人が資産を時価より低い対価で譲り受けた場合,買主法人には,原則として,取得時の適正な価額と実際の対価との差額に相当する受贈益が生じ得る。対価を支払っているため「贈与ではない」と直ちに処理することはできない。

検討の順序は,①取得した資産と取引単位,②取得時の時価,③実際の対価,④当事者の関係,⑤完全支配関係に関する益金不算入の有無,⑥売主側の課税,⑦買主側の取得価額である。本記事は令和8年9月28日現在の法令及び公表資料を基準とする。

第2 法人側に受贈益が生じる基本構造

法人税法22条2項は,各事業年度の所得計算上の益金に,有償又は無償による資産の譲渡,役務の提供,無償による資産の譲受けその他の取引に係る収益を含める。国税庁が公表する平成27年の税務訴訟資料(順号12643)は,適正な額より低い対価で資産を譲り受けた場合にも,対価と譲受時の適正な価額との差額が無償による資産の譲受けに類する受贈益として収益を構成すると判断している。

したがって,仕訳だけで結論は変わらない。契約書に売買と記載され,代金の支払があっても,税務上は低額部分を独立して認識する必要がある。反対に,時価との差があるように見えても,数量,支払条件,瑕疵,処分費用,換金制約その他の条件差を合理的に説明できれば,そもそも比較した価格が同じ条件の時価でない可能性がある。

第3 時価と取得価額
1 基準時は取得時である

比較するのは,原則として,法人が資産を取得した時点における適正な価額と実際の対価である。契約締結日,引渡日,所有権移転日又は停止条件成就日が異なるときは,契約の効力発生と資産取得の時点を資料から確定する。

2 評価方法は資産の性質に応じる

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身体障害者手帳で受けられる自動車税の減免その他のメリット――消費税・高速道路・駐車・改造助成(AI作成)

第1 結論

1 利用できる可能性がある制度
2 手帳があれば自動的に免除されるわけではない
3 令和8年に廃止された環境性能割

第2 自動車に関する税金

1 自動車税種別割の減免
2 軽自動車税種別割の免除・減免
3 身体障害者用自動車の消費税非課税
4 自動車重量税等

第3 有料道路料金の障害者割引

1 対象者と割引率
2 登録していない車両も利用できる場合
3 ETC利用と更新

第4 駐車に関する制度

1 駐車禁止除外指定車標章
2 公営・民間駐車場の料金割引

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保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の課税特例―所得税法64条2項・求償不能・役員保証(AI作成)

目次第1 所得税法64条2項の役割第2 適用要件を四段階に分ける第3 資産譲渡と保証債務履行のつながり第4 求償権が行使不能か第5 会社役員・代表者保証で争点になること第6 所得がなかったものとされる金額第7 申告時に保存・提出する資料第8 一次資料と確認範囲
第1 所得税法64条2項の役割

個人が会社その他の主債務者の保証人となり、保証債務を履行するために土地・建物等を譲渡しても、資産の値上がり益には原則として譲渡所得課税が生じる。もっとも、保証人が履行によって取得する求償権を回収できなければ、譲渡代金を実質的に享受していない部分が生じる。

所得税法64条2項は、保証債務を履行するために資産を譲渡し、その履行に伴う求償権の全部又は一部を行使できないこととなった場合に、その行使不能額に対応する部分を譲渡所得等の計算上なかったものとみなす特例である。保証債務を負担したこと自体や、主債務者が経営不振であることだけで適用される制度ではない。

第2 適用要件を四段階に分ける

実務では、少なくとも次の四段階を分けて確認する。

①民法上の保証・連帯保証又は物上保証等、履行により主債務者に対する求償権が生じる関係があること
②棚卸資産等を除く資産を譲渡したこと
③その譲渡が保証債務を履行するためのものであること
④履行に伴う求償権の全部又は一部を行使できないこととなったこと

国税庁の確定申告案内は、主債務者が既に弁済不能の状態にあるときに保証したものでないこと、保証債務履行のために資産を売却したこと、肩代りした金額の全部又は一部を将来も回収できないことを確認事項として示している。ただし、個別事件では条文、通達、保証締結時の事情及び裁判例を併せて検討する必要がある。

第3 資産譲渡と保証債務履行のつながり

売却代金を保証債務の弁済に直接充てた場合は、資金の流れを説明しやすい。売買契約書、決済明細、預金通帳、送金記録、代位弁済証書及び債権者の受領書を時系列で対応させる。

他方、手持預金で保証債務を履行した後に資産を譲渡して預金を補充しただけでは、国税庁の質疑事例は、その資産譲渡を保証債務履行のための譲渡とは扱わない。借入金で履行し、その借入金を返済するために資産を譲渡した場合とは区別される。資産譲渡、つなぎ融資、保証履行及び借入金返済の時期と金額を一つの資金繰表にする必要がある。

譲渡代金の一部だけを保証債務履行に充てた場合も、直ちに資産譲渡全体が特例対象又は対象外になるとは限らない。どの代金がどの債務に充てられたかを区分し、後述の上限計算につなげる。

第4 求償権が行使不能か

求償権の行使不能は、主債務者が破産又は解散した場合だけに限られない。国税庁の通知は、債務超過が相当期間継続し、支払能力がなく、他の債権者との関係からみても求償権の回収見込みがない場合など、客観的な事実に基づいて判定する考え方を示している。法人が事業を継続し、再建計画の一環として代表者が求償権を放棄する場合にも適用余地がある。

単に請求しなかった、主債務者との関係を悪化させたくなかった、又は任意に債権放棄したというだけでは足りない。決算書、資金繰表、債権者一覧、担保状況、滞納税額、再生・私的整理の資料、取締役会議事録、他の債権者の回収状況及び将来収益の見通しを保存する。

第5 会社役員・代表者保証で争点になること

会社の取締役又は代表者が自社債務を保証した事案では、保証締結時に会社の弁済不能又は求償不能をどこまで予見していたかが争われることがある。保証人が通常期待する求償可能性を欠いたまま保証を引き受けたのであれば、本特例による救済を認めるべきでないという考え方がある。

他方、会社の資金繰りが厳しいことを役員が知っていたというだけで、直ちに将来の求償不能を予見していたとは限らない。借換えに伴う保証契約の更新、経営改善計画、融資継続の見込み、担保余力及び保証時点を具体的に確定する必要がある。さいたま地裁平成16年4月14日判決は、保証債務履行を余儀なくされ、主債務が期限到来又は履行遅滞となっていることを独立の要件として加える課税庁の主張を排斥したと紹介されている。

したがって、役員保証だから一律に適用される、又は一律に適用されないとはいえない。保証締結又は更新時、資産譲渡時、保証履行時及び求償不能判定時の四つの時点を分け、各時点の客観資料で説明する。

第6 所得がなかったものとされる金額

所得がなかったものとみなされる金額は、無制限ではない。国税庁の案内では、①求償権のうち行使不能となった金額、②その年分の総所得金額等の合計額、③対象資産の譲渡益の額のうち、最も低い金額を基礎に計算する。

複数資産を譲渡した場合、保証債務履行に充てた金額が譲渡代金の合計を下回る場合、長期・短期譲渡所得が混在する場合又は一部回収がある場合は、計算明細書に沿った配分が必要になる。所得がなかったものとされるのは、譲渡収入の全額ではなく、法定の上限内で求償不能額に対応する部分である。

第7 申告時に保存・提出する資料

国税庁の案内は、特例の適用を記載した確定申告書に、保証債務の履行のための資産の譲渡に関する計算明細書、保証債務の事実を示す書類及び求償権が行使不能であることを示す書類を添付するよう求めている。

実務上は、保証契約書、金銭消費貸借契約書、抵当権設定契約書、催告書、代位弁済証書、売買契約書、決済・送金資料、主債務者の財務資料、再建又は廃業の計画、求償権放棄書、債権者との合意及び税理士への説明資料を、一つの時系列に整理する。後から作成した説明書だけでなく、各時点で存在した資料を残すことが重要である。

第8 一次資料と確認範囲

本稿は、所得税法64条2項、所得税法施行令180条、所得税基本通達及び国税庁の通知・質疑事例並びに国税不服審判所の公表裁決を中心に作成した。裁判例については国税庁研究資料、国立国会図書館の書誌情報等でも確認したが、関連裁判例の網羅検索又は判例秘書による全文確認は行っていない。個別の申告では、申告年分の様式・法令・通達と事実関係を改めて確認する必要がある。

ストックオプションの所得税――税制適格・非適格,付与・行使・売却,所得区分及び源泉徴収(AI作成)

目次

第1 結論
第2 付与・行使・売却を分ける
第3 税制非適格ストックオプション
第4 税制適格ストックオプション
第5 所得区分と源泉徴収
第6 実務で集める資料
第7 国外勤務・退職後行使等の注意点
第8 出典

第1 結論

ストックオプションの所得税は,①権利の付与,②権利行使による株式取得及び③取得株式の売却を分け,さらに税制適格か税制非適格かを確認する。

税制非適格の場合は,通常,権利行使時の経済的利益と売却時の値上がり益が別々に課税される。雇用契約又はこれに類する関係に基因して付与された権利の行使益は,原則として給与所得である。税制適格の場合は,一定の要件の下で行使時課税が繰り延べられ,売却時に,権利行使価額から売却価額までの利益が株式譲渡所得として課税される。

名称に「税制適格」と書かれているだけでは足りない。付与決議,付与契約,権利行使時期・金額,株式の管理及び売却の各要件を資料で確認する必要がある。

第2 付与・行使・売却を分ける
時点確認する事実課税関係の基本
付与付与決議,付与契約,対象者,行使価額,行使期間,譲渡制限一般に,無償付与だけでは直ちに課税関係が生じない
権利行使行使日,取得株数,行使価額,行使時の株価,適格要件非適格は行使益に課税。適格は要件を満たせば課税を繰延べ
売却売却日,売却価額,取得費,手数料,上場・非上場の別株式等の譲渡所得等として申告分離課税が基本

第3 税制非適格ストックオプション

国税庁タックスアンサーNo.1543は,税制非適格ストックオプションについて,権利行使時及び取得株式の譲渡時に課税されると説明している。

権利行使時の経済的利益は,おおむね「行使時の株価-権利行使価額」に取得株数を乗じて計算する。雇用関係又はこれに類する関係に基因して付与された場合は原則として給与所得となる。職務の遂行と関連しない利益と認められる場合,事業に関連して供与された場合その他の事実関係によって,雑所得又は事業所得となることがある。

取得株式を後に売却したときは,売却価額と,権利行使時の時価を基礎とする取得価額との差額が株式等の譲渡所得等となる。行使益と売却益を重ねて課税しないため,権利行使時の課税資料を保存することが重要である。

第4 税制適格ストックオプション

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役員社宅の99㎡・132㎡基準―小規模住宅,豪華社宅及び賃貸料相当額(AI作成)

目次第1 この記事の結論第2 判定の順序第3 小規模住宅の99㎡・132㎡基準1 法定耐用年数が30年以下の建物2 法定耐用年数が30年を超える建物3 マンションの共用部分第4 小規模住宅の賃貸料相当額第5 小規模住宅以外の賃貸料相当額1 会社所有の社宅2 会社が借りた住宅を役員に貸与する場合第6 豪華社宅第7 給与課税される範囲第8 実務上のチェックリスト第9 出典・根拠法令
第1 この記事の結論

会社が役員に社宅を貸与する場合,役員から毎月「賃貸料相当額」以上の家賃を受け取っていれば,原則として社宅による経済的利益は給与として課税されない。

計算の入口は,建物の法定耐用年数と床面積で小規模住宅に当たるかを判定することである。法定耐用年数が30年以下の建物は132平方メートル以下,30年を超える建物は99平方メートル以下が小規模住宅の基準である。区分所有建物では,共用部分の床面積を按分して専用部分に加えた床面積で判定する。

ただし,小規模住宅に当たるか否かとは別に,社会通念上一般に貸与される社宅とは認められない豪華社宅に当たる場合は通常の算式を使わず,通常支払うべき使用料相当額による。

第2 判定の順序

役員社宅の税務上の取扱いは,次の順序で確認すると整理しやすい。

① 会社が所有又は賃借した住宅を役員に貸与しているか。
② 豪華社宅に該当しないか。
③ 建物の法定耐用年数が30年以下か,30年を超えるか。
④ 共用部分を按分した後の床面積が132平方メートル又は99平方メートル以下か。
⑤ 小規模住宅又はそれ以外の住宅に対応する賃貸料相当額を計算する。
⑥ 役員から実際に受け取る家賃との差額を確認する。

入居者が家主と直接契約し,会社がその家賃を負担する場合又は会社が現金で住宅手当を支給する場合は,社宅の貸与とは扱われず,会社負担額は給与として課税される。

第3 小規模住宅の99㎡・132㎡基準
1 法定耐用年数が30年以下の建物

法定耐用年数が30年以下の建物は,床面積が132平方メートル以下であれば小規模住宅に該当する。典型的には木造住宅等が問題となるが,名称又は構造の印象だけで決めず,対象建物の法定耐用年数を確認する必要がある。

2 法定耐用年数が30年を超える建物

法定耐用年数が30年を超える建物は,床面積が99平方メートル以下であれば小規模住宅に該当する。鉄筋コンクリート造のマンション等では,この基準が問題となりやすい。

3 マンションの共用部分

区分所有建物では,専有部分の床面積だけではなく,共用部分の床面積を各戸に按分し,専有部分に加えた床面積によって99平方メートル又は132平方メートルの基準を判定する。

したがって,物件資料に表示された専有面積が99平方メートル以下であっても,共用部分の按分後には基準を超える場合がある。賃貸借契約書及び登記事項証明書だけでなく,共用部分の床面積及び按分方法を確認すべきである。

第4 小規模住宅の賃貸料相当額

小規模住宅の1か月当たりの賃貸料相当額は,次の3つの合計額である。

① その年度の建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
② 12円×建物の総床面積(平方メートル)÷3.3平方メートル
③ その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%

計算に用いるのは固定資産税評価額と常に同じとは限らず,「固定資産税の課税標準額」である。会社が物件を賃借している場合でも,計算に必要な課税標準額を家主等から入手する必要が生じる。

第5 小規模住宅以外の賃貸料相当額
1 会社所有の社宅

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役員報酬を0円にして非課税世帯になれるか―内部留保、役員貸付金、社会保険、給付制度の区別(AI作成)

第1 本記事の対象と結論
第2 会社の財産と役員個人の所得・資産は別である
第3 住民税非課税世帯の判定

1 前年の個人所得で判定する
2 大阪市の令和8年度課税分以降の基準
3 会社の内部留保と自社株式

第4 会社から個人へ利益を移す主な方法

1 役員給与
2 配当及び役員退職給与
3 会社による私的費用の負担
4 会社から役員への貸付け

第5 役員報酬を0円にする場合の会社法・法人税
第6 社会保険は報酬0円だけで決まらない
第7 給付制度ごとに所得要件と資産要件を確認する

1 住民税非課税を参照する給付
2 生活保護
3 介護保険の補足給付その他の制度

第8 婚姻費用・養育費との関係
第9 弁護士が確認する資料
第10 まとめ
第11 出典・参考資料

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農地を生前贈与して納税猶予を受けた後に贈与者が死亡したとき――相続税のみなし相続と,民法上はあくまで生前贈与であること(AI作成)

目次第1 結論第2 農地等の贈与税の納税猶予1 制度の骨格2 対象から除かれる農地3 猶予の継続と届出4 猶予が打ち切られる場合第3 贈与者が死亡したとき1 相続により取得したものとみなす2 課税価格に算入する価額3 相続税の納税猶予へ引き継ぐ場合4 税務上の扱いと民法上の扱いの対照第4 民法上はあくまで生前贈与である1 所有権が移転した時期2 遺留分の基礎財産での扱い3 減殺又は負担の順序4 遺産分割の対象にならない5 特別受益としての持戻し第5 相続人が複数いる場合に起きること1 推定相続人の一人に集中する制度であること2 他の相続人との調整第6 実務で起きる取り違え第7 確認する資料第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 公的資料
第1 結論

農家では,後継者へ農地を生前に贈与し,租税特別措置法70条の4の贈与税の納税猶予を受けていることがある。
この制度の下では,贈与者が死亡したときに,その農地が相続税の課税対象に取り込まれる。

ここで,税務上の扱いと民法上の扱いがねじれる。
租税特別措置法70条の5第1項は,贈与者が死亡した場合に,受贈者が当該農地等を「その贈与者から相続…により取得したものとみなす」と定めている。
しかし,これは相続税の課税関係についてのみなし規定であって,民法上の性質を贈与から遺贈へ変えるものではない。
当該農地は,贈与の時に受贈者へ移転しており,相続開始の時に被相続人が有していた財産ではない。

この区別を誤ると,①遺産分割の対象に入れてしまう,②遺留分の場面で遺贈として扱い,減殺又は負担の順序を誤る,③相続開始時の価額に引き直す作業を落とす,という誤りが生じる。
本記事では,制度の骨格を条文で押さえた上で,民法上の扱いとの違いを整理する。

第2 農地等の贈与税の納税猶予
1 制度の骨格

租税特別措置法70条の4第1項は,農業を営む個人(贈与者)が,その農業の用に供している農地の全部及び採草放牧地のうち政令で定める部分並びに準農地のうち政令で定める部分を,「当該贈与者の推定相続人で政令で定める者のうちの一人の者に贈与した場合」について定めている。

この場合,受贈者の贈与の日の属する年分の贈与税のうち,当該農地等の価額に対応する部分(納税猶予分の贈与税額)に相当する贈与税については,「当該年分の贈与税の申告書の提出期限までに当該納税猶予分の贈与税額に相当する担保を提供した場合に限り,…当該贈与者の死亡の日まで,その納税を猶予する。」

要点は次のとおりである。
①贈与の相手方は推定相続人の一人に限られる。
②農地は全部を,採草放牧地及び準農地は政令で定める部分を贈与する。
③期限内申告と担保の提供が要件である。
④猶予の終期は,原則として贈与者の死亡の日である。
⑤贈与者が既にこの制度の適用に係る贈与をしている場合は,重ねて適用を受けられない。

2 対象から除かれる農地

同項のかっこ書は,特定市街化区域農地等に該当するものを対象から除いている。
また,農地法32条1項又は33条1項の利用意向調査に係るもののうち政令で定めるものも除かれる。

そのため,市街化区域内の農地については,この制度の適用を受けていないことがある。
相続の場面で農地が出てきたときは,所在地が市街化区域かどうかを先に確認する。

「特定市街化区域農地等」は,租税特別措置法70条の4第2項3号が定義している。
同号は,「都市計画法第七条第一項に規定する市街化区域内に所在する農地又は採草放牧地で,平成三年一月一日において次に掲げる区域内に所在するもの(都市営農農地等を除く。)をいう。」とし,イからハまでに,①都の区域(特別区の存する区域に限る。),②首都圏,近畿圏又は中部圏内にある地方自治法上の指定都市の区域,③その他の市でその区域の全部又は一部が既成市街地,近郊整備地帯,既成都市区域,近郊整備区域又は都市整備区域内にあるものの区域を掲げている。

すなわち,市街化区域内の農地が常に除かれるのではなく,三大都市圏の特定の区域内にあるものが除かれる。
それ以外の市町村の市街化区域内の農地は,「特定市街化区域農地等」に当たらない。

さらに,同項4号の「都市営農農地等」は,「特定市街化区域農地等」から除かれている。

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貸付用不動産・不動産小口化商品の相続税評価の見直し――国税庁の通達案(令和8年9月18日)と令和9年以後の相続・贈与(AI作成)

目次第1 この記事が扱う対象と時点1 対象とする見直し2 調査基準日と資料の段階第2 見直しに至る経緯1 国税庁が示した評価額と取引価額の開き2 令和8年度税制改正大綱3 通達案の公表と意見募集第3 課税時期前5年以内に取得等した貸付用不動産1 対象となる貸付用不動産2 評価の方法3 対象から除かれるもの4 同族会社の株式の純資産価額との関係第4 不動産小口化商品(特定小口化商品)1 対象となる権利2 評価の方法第5 適用時期と贈与・購入の関係1 令和9年1月1日以後の相続,遺贈又は贈与2 令和8年中の贈与――加算は贈与の時の価額3 令和8年中の購入――相続が令和9年以後なら対象4 相続時精算課税の基礎控除110万円第6 総則6項との関係1 通達案の対象外でも総則6項は残る2 相続直前の不動産取得に関する裁判例3 旧租税特別措置法69条の4との比較第7 相談の際に確認する事項第8 出典1 法令2 通達・通達案3 裁判例4 税制改正大綱・政府税制調査会の資料
第1 この記事が扱う対象と時点
1 対象とする見直し

この記事は,賃貸マンション等の貸付用不動産と,不動産小口化商品について,相続税・贈与税の評価方法を見直す国税庁の法令解釈通達案「貸付用不動産の評価について(案)」を扱う。
見直しの中心は,①課税時期前5年以内に取得・新築した貸付用不動産と,②不動産特定共同事業契約等による不動産小口化商品を,路線価等による評価ではなく,原則として課税時期における通常の取引価額で評価することにある。
通達案は,令和9年1月1日以後に相続,遺贈又は贈与により取得した財産の評価に適用するとしている。

2 調査基準日と資料の段階

本記事は,令和8年9月19日時点で,e-Govのパブリックコメント(案件番号410080055)に掲載された通達案・概要・実施要領,財務省の令和8年度税制改正大綱,政府税制調査会の資料及び議事録,e-Gov法令検索の相続税法・租税特別措置法・不動産特定共同事業法,裁判所ウェブサイトの裁判例を確認して作成した。
通達案は,国税庁が令和8年9月18日に意見募集を始めたものであり,募集期間は同年10月18日までである。
確定した通達ではないから,意見募集の結果によって文言が変わる可能性がある。
特に,経過措置の基準日となる「通達制定日」は,通達案では「令和8年●月●日」と空欄になっている。

第2 見直しに至る経緯
1 国税庁が示した評価額と取引価額の開き
(1) 一棟賃貸マンションの駆け込み取得の事例

国税庁は,令和7年11月13日の政府税制調査会「経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合」に,説明資料「財産評価を巡る諸問題」を提出した。
同資料5頁の事例②は,被相続人が相続開始の約2年8か月前に主宰法人から22億円を借り入れ,一棟賃貸マンションを21.0億円で購入したものである。
このマンションの通達評価額は4.2億円で,取得価額の約5分の1(資料の表記では「4.99倍」)にとどまり,相続税額は12.3億円から4.4億円に減ったとされている。
同資料7頁は,相続開始前の駆け込み取得の事例では,かい離が「3倍超(中央値)」であったとしている。

(2) 不動産小口化商品の贈与の事例

同資料6頁の事例③は,68歳の贈与者が不動産小口化商品(信託受益権)を3,000万円で購入し,約5か月後に9歳の受贈者に贈与した事例である。
通達評価額は480万円で,受贈者は贈与後にこれを取得価額とほぼ同額で売却して現金化したとされている。
同資料9頁は,不動産小口化商品の贈与事例3件を挙げ,評価額の減少割合を▲82.8%,▲83.8%,▲78.2%としている。
同会合の議事録によれば,国税庁の担当者は,事例②の評価額について「約80%減」と説明している(議事録7頁)。
いわゆる「8割減」は,これらの個別事例の数値であり,貸付用不動産全体の平均値として示されたものではない。

2 令和8年度税制改正大綱

令和7年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱は,資産課税の「相続税等の財産評価の適正化」として,「相続税法の時価主義の下、貸付用不動産の市場価格と相続税評価額との乖離の実態を踏まえ、その取引実態等を考慮し、次の見直しを行う。」とした(大綱52頁)。
大綱は,被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産と,不動産特定共同事業契約又は信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産について,課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するとした。
また,大綱は,この改正を「通達に定める日」と書いており,法律の改正ではなく通達で行うことを前提としている。

3 通達案の公表と意見募集

国税庁は,令和8年9月18日,「貸付用不動産の評価について」の法令解釈通達(案)を公表し,意見募集を始めた。

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親の土地を子に使用貸借して賃料を子の所得にできるか―大阪地裁令和3年4月22日判決と大阪高裁令和4年7月20日判決(AI作成)

目次第1 親の土地の賃料を子へ移す方法と裁判所の判断第2 所得の帰属を決める所得税法12条1 実質所得者課税の原則2 所得税基本通達12-1第3 大阪地裁令和3年4月22日判決は子らの所得とした1 事案2 使用貸借は成立したとした3 子らは形式上も実質上も収益を享受しているとした第4 大阪高裁令和4年7月20日判決は親の所得とした1 使用貸借の成立は認めた2 子らを単なる名義人とした理由第5 両判決の分かれ目と,同じ方法が否認されやすい事情1 民法上の帰属を基準にするか,収益の支配を見るか2 控訴審の判断で重視された事情第6 既に同じ方法を取っている場合の手続と期間1 親に対する更正と加算税2 子が申告していた賃料の更正の請求3 契約をどうするか第7 出典1 法令・通達2 裁判例
第1 親の土地の賃料を子へ移す方法と裁判所の判断

親が所有する駐車場用地を子に無償で貸し(使用貸借),子が賃貸人となって第三者から賃料を受け取る形にすれば,賃料は子の不動産所得になるのか。
同じ事案について,大阪地裁令和3年4月22日判決は子らの所得と判断し,控訴審の大阪高裁令和4年7月20日判決は親の所得と判断した。

結論が分かれたのは,使用貸借が成立したかどうかではない。
控訴審も使用貸借の成立は認めた上で,子らは所得税法12条の「単なる名義人」に当たるとした。
相続税対策と所得税の節税を目的として,親の存命中は所有権を親に残したまま賃料だけを子へ移す方法は,控訴審の判断に従えば,親の所得として課税されることになる。

本記事は,令和8年9月19日を基準に,両判決の全文と所得税法12条を基に,判断の分かれ目と,同じ方法を取っている場合に確認すべき事項を説明する。
親族間の土地の貸し借りと贈与税・相続税の評価は親族間で土地を使わせる場合の課税-使用貸借と相当の地代で,地代の水準から使用貸借と賃貸借を見分ける方法は使用貸借と賃貸借の区別-固定資産税程度の支払,相場より安い地代・家賃は賃料かで扱っている。

第2 所得の帰属を決める所得税法12条
1 実質所得者課税の原則

所得税法12条は,次のとおり定める。
「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。」

この規定は,見出しのとおり実質所得者課税の原則と呼ばれる。
問題になるのは,収益の法律上の帰属者(本件では賃貸人となった子)が「単なる名義人」に当たるかどうかである。

2 所得税基本通達12-1

国税庁の所得税基本通達12-1は,同条の適用について次のように定める。
「法第12条の適用上、資産から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その収益の基因となる資産の真実の権利者がだれであるかにより判定すべきであるが、それが明らかでない場合には、その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する。」

通達は国税庁長官が職員に示す法令解釈であり,裁判所を拘束するものではない。
後記のとおり,第一審は使用借主を「真実の権利者」とみてこの通達を当てはめ,控訴審は同じ通達を所有者に帰属させる方向で引用した。

第3 大阪地裁令和3年4月22日判決は子らの所得とした
1 事案

親は大阪府枚方市に多数の不動産を所有し,平成16年頃から4筆の土地を駐車場として賃貸していた。
駐車場の賃貸借契約の事務と賃料の受領は,管理会社2社に報酬を払って委託していた。
平成25年11月以降,長男が親の意向を受けて税理士法人に不動産の節税対策と相続税対策を相談した。

平成26年1月25日付けで,親と長男,親と長女の間でそれぞれ「使用貸借契約書」と題する契約書が作られた。
契約書には,期間を平成26年2月1日から10年間とし,子が固定資産税等の相当額を親に支払うこと,親の承諾により転貸できることが記載されていた。
同日,土地上のアスファルト舗装等を子に贈与する契約も結ばれ,平成26年2月以降の駐車場の賃料は子らの口座に振り込まれるようになった。

税務署長は,平成26年分の駐車場の賃料は親に帰属するとして,親に対し所得税等の増額更正処分と過少申告加算税の賦課決定処分をした。
親がその取消しを求めたのが本件である。

(続きを読む...)親の土地を子に使用貸借して賃料を子の所得にできるか―大阪地裁令和3年4月22日判決と大阪高裁令和4年7月20日判決(AI作成)

会社法の株式価格決定と相続税評価の違い――DCF法,非流動性ディスカウント及び最高裁決定(AI作成)

目次第1 会社法の株式価格決定と相続税評価の違い――この記事の対象と時点第2 場面ごとに異なる非上場株式の「時価」1 条文上の文言の違い2 場面ごとの比較3 評価の目的が違えば数値も違う第3 会社法の価格決定で使われる評価方法1 DCF法・収益還元法・純資産法・配当還元法2 DCF法が主流となった経過3 複数の手法を併用した決定例4 プロラタ価値を明示した横浜地裁の決定第4 非流動性ディスカウントをめぐる最高裁の二つの決定1 最高裁平成27年3月26日決定――組織再編の買取請求では不可2 最高裁令和5年5月24日決定――譲渡制限株式の売買価格では可3 二つの決定の違い――「非上場株式は常に30%減」とはいえない4 公開買付け後のキャッシュアウトと評価通達6項5 最高裁令和8年9月30日決定――公正な交換比率と市場株価第5 相続税評価と会社法の価格決定の距離1 通達評価は「一定の割り切った評価」2 国税庁案が会社法の考え方に近づく面3 なお異なる面第6 実務上の使い分け――相続税評価額をそのまま使えない場面1 遺産分割と代償金2 財産分与3 譲渡制限株式の売買価格決定と株式買取請求第7 関連記事第8 出典1 法令2 裁判例3 有識者会議の資料
第1 会社法の株式価格決定と相続税評価の違い――この記事の対象と時点

同じ非上場株式であっても,相続税評価と会社法上の価格決定とでは,評価の目的,方法及びディスカウントの扱いが異なる。
相続税評価は,大量の申告を法定の期限内に処理するため,財産評価基本通達の定める方式で画一的に評価するものであり,国税庁自身が「一定の割り切った評価」と位置付けている(第6回資料11頁)。
これに対し会社法上の価格決定は,譲渡制限株式の売買価格や反対株主の買取価格について,裁判所が制度の趣旨に従い個別の事情を考慮して定めるものであり,DCF法等の評価手法の選択も,非流動性ディスカウントの可否も,手続の種類と算定過程に応じて判断される。

この記事は,令和8年10月8日現在で公表されている資料に基づき,会社法上の株式価格決定と相続税評価の違いを,条文,最高裁決定及び下級審の決定例に即して整理するものである。
素材は,国税庁の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の第1回から第6回までの会議資料,第5回までの議事要旨及び第5回当日机上配付資料「取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」であり,第6回会議の議事要旨はこの記事の作成時点で公表されていない。
有識者会議で示されている見直し案は国税庁事務局のたたき台であり,決定したものではない。
骨子自身も,評価水準・税負担の在り方等を含め「最終的には税制改正プロセスにおいて決定いただく」としている(骨子1頁)。

有識者会議の経緯と論点の全体は,親記事である取引相場のない株式の評価に関する有識者会議にまとめており,この記事はその第8「会社法における株式価格の決定との距離」を独立させて掘り下げたものである。

第2 場面ごとに異なる非上場株式の「時価」
1 条文上の文言の違い

相続税法22条は,「相続,遺贈又は贈与により取得した財産の価額は,当該財産の取得の時における時価により」と定めるだけで,評価の方法は財産評価基本通達に委ねられている。
これに対し会社法は,場面ごとに裁判所が価格を決定する手続を置いている。
譲渡制限株式の譲渡を会社が承認しなかった場合の買取りについて,会社法144条2項は株式会社又は譲渡等承認請求者が通知の日から20日以内に「裁判所に対し,売買価格の決定の申立てをすることができる」とし,同条3項は,裁判所は「譲渡等承認請求の時における株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならない」と定める。
吸収合併等に反対する株主は,会社法785条1項により「自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができ」,協議が調わないときは同法786条2項により裁判所に価格の決定の申立てをすることができる。
全部取得条項付種類株式の取得については,会社法172条1項が,反対株主等は裁判所に対し「取得の価格の決定の申立てをすることができる」と定めている。

吸収合併等に反対する株主の買取請求については,最高裁平成23年4月19日第三小法廷決定(平成22年(許)第30号,民集65巻3号1311頁)について裁判所ウェブサイトに掲載された裁判要旨が,吸収合併等によりシナジー(組織再編による相乗効果)その他の企業価値の増加が生じない場合の「公正な価格」は,「原則として,当該株式買取請求がされた日における,吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格をいう。」としている。

2 場面ごとの比較

非上場株式の価額が問題となる主な場面を整理すると,次のとおりである。

場面根拠評価の目的・方法相続税・贈与税相続税法22条,財産評価基本通達大量の申告を期限内に処理するための画一的評価。類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式等の通達の方式による所得税・法人税所得税基本通達・法人税基本通達第4回資料8頁によれば,課税上弊害がない限り評価通達に準じて評価する譲渡制限株式の売買価格会社法144条2項・3項譲渡を希望する株主の投下資本回収の保障。裁判所が資産状態その他一切の事情を考慮して定める組織再編の反対株主の買取請求会社法785条1項・786条2項退出を選択した株主への企業価値の適切な分配。「公正な価格」全部取得条項付種類株式の取得価格会社法172条1項一般に公正と認められる手続による公開買付けの後に同額で取得した場合は,特段の事情がない限り公開買付価格と同額M&A(相対取引)当事者間の合意交渉で決まる価格であり,交換価値を反映しているとは限らない遺産分割・遺留分・財産分与民法等当事者間の公平。相続税評価額は当然には基準とならない(第6参照)

所得税・法人税の行は,第4回資料8頁が「相続税法,所得税法,法人税法のいずれにおいても『時価』は『客観的交換価値』と解されており,時価の概念という点においては共通するものの,課税の目的に応じ,所得税基本通達及び法人税基本通達において,課税上弊害がない限り,評価通達に準じて評価する旨定められている」と記載していることによる。
M&Aの行は,東京高等裁判所令和6年8月28日判決(令和6年(行コ)第36号。裁判所ホームページ未掲載であり,判例秘書で全文を確認した。)が,M&Aが行われる場合には高度な経営判断や双方の交渉の結果等により売買代金が決定されるのであって,売買代金が交換価値を反映しているとは限らないと述べていることによる。

3 評価の目的が違えば数値も違う

評価の目的が違えば評価額が違うことは,有識者会議でも前提とされている。
第4回会議では,委員から「目的によって評価が異なるのは一般的な考え方であり,会社法の裁判例や,M&Aの事例を,相続や贈与の時の評価の参考とするような,目的が違うものを並べて参考とすることには違和感がある」との意見が出ている(第4回議事要旨12頁)。
第4回資料8頁も,委員の意見の整理として「会社法やM&A価格との乖離を根拠に通達の見直しを論ずることには慎重であるべき」との意見を掲げている。
他方,事務局は,昭和30年代に作られた考え方が評価理論の進歩や社会経済情勢の変化の中で置き去りにされ,評価額圧縮スキームを跋扈させる温床となった側面があるとし,「進歩を遂げた会社法やM&Aの考え方を参考にしながら見直していくことが必要」と説明している(第4回議事要旨6頁)。
会社法の価格決定実務は,相続税評価の「正解」ではなく,見直しの方向を考える際の参照点という位置付けである。

第3 会社法の価格決定で使われる評価方法

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国税庁が例示した非上場株式の評価額圧縮スキーム8類型――会社規模の操作,配当還元株主の作出及びオペレーティング・リース(AI作成)

目次第1 国税庁が例示した評価額圧縮スキーム8類型とは――この記事の対象と時点1 結論2 記事の性質と基準日第2 評価額圧縮スキーム8類型の一覧1 8類型の一覧表2 表の読み方第3 5つの型に分けた現行通達上の仕組み1 本記事の分類2 会社規模・評価会社区分の操作3 配当還元方式の対象の作出4 比準要素の引下げ5 純資産・評価差額の人為的変動6 評価時点の数値を下げる行為第4 財産評価基本通達6項(総則6項)との関係1 総則6項の適用件数2 経済産業省・中小企業庁の意見書がいう「14件」3 判断の枠組みと近時の例第5 見直し案での対応1 類型ごとの対応案2 会社規模の操作と配当還元方式3 利益操作とグループ法人4 資産管理会社と3年以内取得の不動産第6 実務上の注意1 既に実行したスキームの見直し2 総則6項のリスク3 事業承継税制との関係第7 関連記事第8 出典1 通達2 有識者会議の資料3 行政機関の意見書4 裁判例・裁決
第1 国税庁が例示した評価額圧縮スキーム8類型とは――この記事の対象と時点
1 結論

国税庁は,令和8年7月3日の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」第4回会議の資料の別添2に,取引相場のない株式(非上場株式)の相続税・贈与税の評価額を圧縮するスキームの事例を8類型掲げた(第4回資料32頁~39頁)。
その中身は,会社規模や評価会社の区分を人為的に動かすもの,配当還元方式で評価される株主を作り出すもの,オペレーティング・リース等で利益や純資産を一時的に下げるもの,債務や評価差額を膨らませるもの,通達上の期間の経過を待つものに分けられ,資料が示す圧縮額は評価額で最大100億円,割合で最大約98%である。
国税庁は,こうした事例への対応を,財産評価基本通達6項による個別の課税処分から,評価方法そのものの見直しへ移そうとしている。

2 記事の性質と基準日

この記事は,令和8年9月19日現在で国税庁が公表している第1回から第6回までの会議資料,第5回までの議事要旨及び第5回の当日机上配付資料「取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」に基づく。
第6回会議(令和8年9月16日)の議事要旨は,この記事の作成時点で公表されていない。

この記事は節税方法の解説ではない。
各事例の仕組みは,国税庁がどのような行為を問題視しているかを理解するのに必要な範囲でだけ紹介する。
別添2の事例は,資料自身が「事例を簡略化したもの」と題しているとおり(第4回資料31頁),制度の見直しを検討するために当局が示した例示である。
ここに挙げられた行為が当然に違法となるわけではなく,当然に財産評価基本通達6項の対象となるわけでもない。

また,後記第5の見直し案は,いずれも国税庁事務局が有識者会議に示したたたき台であり,決定したものではない。
骨子自身が「見直し内容のほか,評価水準・税負担の在り方等も含め,最終的には税制改正プロセスにおいて決定いただく」としている(骨子1頁)。
会議全体の経緯は,親記事の取引相場のない株式の評価に関する有識者会議にまとめている。

第2 評価額圧縮スキーム8類型の一覧
1 8類型の一覧表

第4回資料別添2の8事例を,資料の記載どおりにまとめると次のとおりである。

事例(第4回資料の頁)仕組みの要点資料が示す圧縮額又は割合①子会社の会社規模操作(32頁)上場株式を現物出資して設立した会社の傘下の子会社に,買収した会社の従業員を転籍させて中会社から大会社(類似業種比準方式)へ変え,その子会社へ上場株式を寄附する評価額▲100億円,税額▲55億円②配当還元方式を利用できる株主の作出(33頁)持株会社化の際に無議決権株式を大量に発行し,議決権を後継者に集約した上で,孫を「中心的な同族株主以外の同族株主」として配当還元価額で贈与する評価額▲19億円,税額▲10億円(原則的評価方式の2.2%の額)③会社規模操作(純資産価額方式から類似業種比準方式へ)(34頁)事業会社は海外子会社からの配当による資金の吸上げで,持株会社は事業会社からの借入れで,それぞれ株式等保有特定会社の判定を外し,持株会社は吸収分割で管理部門と従業員を承継して小会社から大会社へ変わる評価額▲20億円,税額▲10億円④循環貸付と評価差額の作出(35頁)純資産価額方式で評価される持株会社と子会社との間で現金の寄附と借入れを循環させて持株会社の債務を膨らませ,さらに孫会社への債権の寄附で評価差額を作り出す評価額▲65億円,税額▲35億円⑤オペレーティング・リース(36頁)借入れで中古航空機を取得してリースし,翌期の多額の減価償却で利益と純資産が減った時点で株式を贈与し,リース終了後の売却益で回復させる評価額▲10億円,税額▲5億円⑥株主構成の操作(37頁)資産管理会社の株主を創業家と上場会社の元役員等に分散させ,どのグループも議決権の15%以上を持たない会社にして,全株式を配当還元方式で評価させる評価額約98%減(原則的評価方式の2%程度)⑦第三者の一時的な介在(38頁)同族関係にない第三者に株式の6割を配当還元価額で売却し,残りを子へ贈与した後,会社が第三者の株式を配当還元価額で自己株式として取得する評価額約60%減(贈与の評価額が200株分の80株分)⑧貸付用不動産の3年経過(39頁)持株会社が借入れで約10億円の貸付用不動産を購入し,取得後3年以内の取引価額評価の期間を過ぎた4年6か月後に株式を子へ贈与する評価額▲5.4億円,税額▲3.0億円
2 表の読み方

圧縮額は資料の記載であり,①から⑤及び⑧は評価額と税額の減少額で,⑥と⑦は割合で示されている。
⑦の約60%減は,甲が保有する200株のうち子へ贈与するのが80株となるため,贈与の評価額がスキーム前の5分の2(80株/200株)になることによる(第4回資料38頁)。
⑧の5.4億円は,貸付用不動産の取得価額約10億円と相続税評価額約4.6億円の差額であり,資料は持株会社の株式を「評価額0円として子へ贈与」すると記載している(同資料39頁)。
第4回議事要旨10頁~11頁は,事務局がこれらの事例を順に紹介したことを記録している。

第3 5つの型に分けた現行通達上の仕組み
1 本記事の分類

ここでは,8事例を,現行の財産評価基本通達のどの定めを利用しているかという観点から,次の5つの型に分ける。
この分類は本記事によるものであり,資料が示した分類ではない。
一つの事例が複数の型にまたがることがある。

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配当還元方式の見直し案――少数株主の判定の3%基準,親族の範囲の縮小及び従業員持株会の固定価格評価(AI作成)

目次第1 配当還元方式の見直し案とは――この記事の対象と時点第2 現行の配当還元方式1 配当還元方式が適用される株主(財産評価基本通達188)2 配当還元価額の算式(財産評価基本通達188-2)3 還元率10%と2円50銭の意味第3 配当還元方式の見直しが検討される理由1 会計検査院が指摘した還元率10%2 市場平均収益率から見た還元率3 株主構成の操作による評価額の圧縮第4 配当還元方式の見直し案の内容1 同族関係者の「親族」の範囲の縮小2 3%基準――議決権保有割合と株式保有割合を用いる判定3 委任・代理契約のある者と一時的所有目的の者の除外4 計算方法の簡素化5 最低配当2円50銭と還元率をめぐる意見第5 従業員持株会の株式の固定価格評価1 第6回資料が示した案2 参考とされた最高裁平成21年2月17日判決第6 配当還元方式の見直しの実務への影響1 少数株主の相続・贈与2 親族の範囲の縮小は評価額を下げる方向にも働く3 現行のスキームへの依拠4 従業員持株会の規約の点検第7 関連記事第8 出典1 法令・通達2 裁判例3 有識者会議の資料4 公的資料5 関連記事
第1 配当還元方式の見直し案とは――この記事の対象と時点

国税庁は,取引相場のない株式(非上場株式)の相続税・贈与税の評価について,配当還元方式を廃止せずに「特別の例外的措置」として残した上で,適用される少数株主の範囲を絞り込む案を示している。
その柱は,①同族関係者の判定に用いる親族の範囲を配偶者,直系血族,兄弟姉妹及び1親等の姻族に狭めること,②議決権保有割合と株式保有割合を用いる3%基準に改めること,③前所有者と委任・代理契約を結んでいる者や一時的所有を目的とする者を除外すること,④計算を受取配当金と還元率によるものに簡素化することである。
あわせて,一定の要件を満たす従業員持株会の株式を固定価格で評価する案も示されている。

これらは,国税庁の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」で事務局が示したたたき台であり,通達改正が決まったものではない。
第5回会議(令和8年8月20日)の当日机上配付資料「取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」は,冒頭で「評価水準・税負担の在り方等も含め,最終的には税制改正プロセスにおいて決定いただく」としている(骨子1頁)。
また,第6回資料1頁は,配当還元方式(少数株主)を第7回会議以降の想定論点に位置付けており,議論はまだ途中である。

この記事は,令和8年9月19日現在で公表されている第5回までの議事要旨と第6回までの会議資料に基づき,配当還元方式に関する見直し案を整理するものである。
第6回会議の議事要旨は,この記事の作成時点で公表されていない。
会議全体の経緯と論点は,親記事の取引相場のない株式の評価に関する有識者会議にまとめている。

第2 現行の配当還元方式
1 配当還元方式が適用される株主(財産評価基本通達188)

取引相場のない株式は,株主の区分に応じて,同族株主等が取得した株式は原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式等)で,それ以外の少数株主等が取得した株式は特例的評価方式である配当還元方式で評価される(第1回資料1頁)。
配当還元方式が適用される「同族株主以外の株主等が取得した株式」は,財産評価基本通達188が次の4つに分けて定めている。

区分会社の状況配当還元方式の対象となる株主(1)同族株主のいる会社同族株主以外の株主(2)中心的な同族株主のいる会社中心的な同族株主以外の同族株主で,株式取得後の議決権が5%未満の者(役員及び法定申告期限までに役員となる者を除く)(3)同族株主のいない会社株主の1人及びその同族関係者の議決権の合計が15%未満である株主(4)中心的な株主がおり,同族株主のいない会社議決権の合計が15%以上のグループに属するが,株式取得後の議決権が5%未満の者(役員等を除く)

ここでいう「同族株主」とは,株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が議決権総数の30%以上(最も多いグループの議決権が50%超である会社では50%超)である場合のその株主及び同族関係者をいう(通達188(1))。
「同族関係者」は,法人税法施行令4条の「特殊の関係のある個人又は法人」とされている(同)。
「中心的な同族株主」は,同族株主の1人並びにその配偶者,直系血族,兄弟姉妹及び1親等の姻族の有する議決権の合計数が25%以上である場合のその株主をいう(通達188(2))。

評価明細書(第1表の1)でどのように判定するかは,取引相場のない株式(出資)の評価明細書の書き方で解説している。
議決権の数え方は種類株式があると変わる(通達188-5)ので,無議決権株式等がある会社については種類株式の相続税評価も参照されたい。

2 配当還元価額の算式(財産評価基本通達188-2)

財産評価基本通達188-2は,配当還元価額を次の算式で計算すると定めている。

(その株式に係る年配当金額)÷10%×(その株式の1株当たりの資本金等の額)÷50円

「年配当金額」は,通達183(1)の1株当たりの配当金額,すなわち直前期末以前2年間の剰余金の配当金額(将来毎期継続することが予想できない特別配当・記念配当等を除く。)の合計額の2分の1を,資本金等の額を50円で除した株数で割った金額である(通達183(1))。
そして,通達188-2は,年配当金額が「2円50銭未満のもの及び無配のものにあっては2円50銭とする」と定め,算定した金額が原則的評価方式による価額を超える場合は原則的評価方式の価額によるとしている。
同項の注は,年配当金額が「1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額」であるため,1株当たりの資本金等の額の50円に対する倍数を乗じることに留意するよう求めている。

たとえば,1株当たりの資本金等の額が500円(50円の10倍)で,資本金等の額50円当たりの年配当金額が5円であれば,配当還元価額は5円÷10%×10=500円となる。
無配であれば年配当金額は2円50銭とされ,2円50銭÷10%×10=250円となる(本記事の試算)。

3 還元率10%と2円50銭の意味

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資産管理会社の株式評価の見直し案――特定の評価会社の再編,純資産価額方式及び20%評価減の廃止(AI作成)

目次第1 この記事が扱う対象と時点第2 現行の特定の評価会社と資産管理会社の株式評価1 財産評価基本通達189が定める6つの区分2 資産構成の変動を無視する定め3 純資産価額方式の算式と20%評価減第3 見直し案における特定の評価会社の4類型1 純資産価額方式は特定の評価会社の評価方式へ2 第6回資料が示した4類型3 現行の区分との対応第4 資産管理会社の形式基準1 資産管理会社の定義2 事業承継税制の資産保有型会社・資産運用型会社3 判定方法の変更――帳簿価額で判定し,時価に洗い替えない4 検討中の修正点5 不動産賃貸業と「財産を法人に入れただけの会社」第5 純資産価額方式そのものの見直し1 純資産価額方式の三つの位置付け2 退職給付引当金を負債とする方向3 20%評価減の廃止案4 評価差額に対する法人税額等相当額(38%)5 純資産価額による頭打ちの要否6 第7回以降に残された論点第6 資産管理会社のオーナーにとっての実務上の注意1 現時点では現行通達で評価する2 特定会社の判定を外す対策の意味が変わり得る3 組織再編直後の会社・開業間もない会社4 生前贈与の計画第7 関連記事第8 出典1 法令・通達2 有識者会議の資料3 裁判例
第1 この記事が扱う対象と時点

令和8年9月16日の第6回「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」で,国税庁事務局は,現行の土地保有特定会社と株式等保有特定会社を「資産管理会社」に整理統合し,事業承継税制の資産保有型会社・資産運用型会社を参考にした形式基準により帳簿価額で判定した上で,純資産価額方式で評価する案を示した(第6回資料20頁)。
あわせて,純資産価額方式そのものについても,退職給付引当金を負債とする方向や,議決権割合50%以下の同族株主グループに属する株主等の20%評価減を「廃止せざるを得ないのではないか」とする考え方が示されている(第5回当日机上配付資料8頁)。
いずれも国税庁事務局のたたき台であり,決定した改正ではない。

本記事は,有識者会議の資料のうち,特定の評価会社,資産管理会社及び純資産価額方式に関する部分を取り上げ,現行の財産評価基本通達と対比して整理するものである。
基準日は令和8年9月19日現在であり,第6回会議の議事要旨は本記事の作成時点で公表されていない。
第5回の当日机上配付資料「取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」(以下「骨子」という。)は,見直し内容のほか評価水準・税負担の在り方等も含め「最終的には税制改正プロセスにおいて決定いただく」としている(骨子1頁)。
本記事で紹介する基準や割合は,いずれも今後変わり得る。

有識者会議の全体像は,親記事の取引相場のない株式の評価に関する有識者会議で扱っている。

第2 現行の特定の評価会社と資産管理会社の株式評価
1 財産評価基本通達189が定める6つの区分

現行の財産評価基本通達189は,「特定の評価会社の株式」を,評価会社の資産の保有状況,営業の状態等に応じて定めた会社の株式とし,次の6区分を置いている。
各区分の評価方法は,同通達189-2から189-6までが定めている。

区分(通達189)判定の要点評価方法(1)比準要素数1の会社配当・利益・簿価純資産の3要素のうちいずれか2が0で,かつ直前々期末基準でもいずれか2以上が0純資産価額(納税義務者の選択でL=0.25の併用方式)(2)株式等保有特定会社相続税評価額による総資産価額に占める株式等の価額の割合が50%以上純資産価額(選択によりS1+S2方式)(3)土地保有特定会社土地保有割合が,大会社等は70%以上,中会社等は90%以上純資産価額(4)開業後3年未満の会社等開業後3年未満,又は3要素がいずれも0純資産価額(5)開業前又は休業中の会社開業前又は休業中純資産価額(6)清算中の会社清算中清算分配見込額の複利現価

株式等保有特定会社の判定について,通達189(2)は,課税時期において評価会社の有する各資産を「この通達に定めるところにより評価した価額の合計額」のうちに占める株式,出資及び新株予約権付社債の価額の合計額の割合が50%以上である会社としている。
土地保有特定会社の判定も,同(3)が,各資産を「この通達の定めるところにより評価した価額の合計額」のうちに占める土地等の価額の合計額の割合(土地保有割合)で行うとしている。
つまり,現行の判定は帳簿価額ではなく相続税評価額で行う。

2 資産構成の変動を無視する定め

通達189は,株式等保有特定会社又は土地保有特定会社に該当するかどうかを判定する場合において,「課税時期前において合理的な理由もなく評価会社の資産構成に変動があり,その変動が次の(2)又は(3)に該当する評価会社と判定されることを免れるためのものと認められるときは,その変動はなかったものとして当該判定を行うものとする」と定めている。
比率基準による判定を外す行動を,現行通達自体が想定している。

3 純資産価額方式の算式と20%評価減

財産評価基本通達185本文は,1株当たりの純資産価額を,各資産の相続税評価額の合計額から各負債の金額及び評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除し,発行済株式数で除して計算するとしている。
その際,評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地等・家屋等は,課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。

評価差額に対する法人税額等に相当する金額について,通達186-2は,相続税評価額による純資産価額と帳簿価額による純資産価額の差額に「38%」を乗じて計算すると定めている。
この割合は,令和8年の改正(令8課評2-28外)で防衛特別法人税の創設を受けて37%から38%に改められたものであり,国税庁の改正説明によれば,令和8年4月1日以後に相続,遺贈又は贈与により取得した取引相場のない株式等の評価に適用される。
計算手順は取引相場のない株式(出資)の評価明細書の書き方で整理している。

通達185ただし書は,株式の取得者とその同族関係者の有する議決権の合計数が評価会社の議決権総数の50%以下である場合には,中会社・小会社の算式で用いる1株当たりの純資産価額に「100分の80を乗じて計算した金額とする」と定めている。
この20%評価減は,比準要素数1の会社(通達189-2),株式等保有特定会社(同189-3),土地保有特定会社及び開業後3年未満の会社等(同189-4)の純資産価額にも及ぶ。
他方,開業前又は休業中の会社(同189-5)には,ただし書の準用がない。

(続きを読む...)資産管理会社の株式評価の見直し案――特定の評価会社の再編,純資産価額方式及び20%評価減の廃止(AI作成)

類似業種比準方式は廃止されるのか――有識者会議の論点と会社法の価格決定で使われない理由(AI作成)

目次第1 この記事が扱う対象と時点1 類似業種比準方式は廃止されるのか(結論)2 第4回から第6回までの経過第2 現行の類似業種比準方式の仕組み1 類似業種比準方式の算式と比準要素2 しんしゃく割合と会社規模第3 類似業種比準方式の見直しが俎上に載った理由1 会計検査院の指摘と国税庁の再検証2 配当という比準要素の機能不全3 しんしゃく率の導入と比重の変更第4 類似業種比準方式の廃止・格下げをめぐる賛否1 廃止を支持する論拠2 維持又は限定的な見直しを求める論拠3 非経常的な損失の扱い4 昭和58年度税制改正答申の読み方の対立第5 会社法の価格決定で類似業種比準方式が使われない理由1 京都地決昭和62年5月18日を最後に見当たらない2 会社法の価格決定で用いられる評価方法3 税務評価と私法上の価格の目的の違い第6 株価上昇局面での再検証をめぐる対立1 日本商工会議所の再調査要求2 事務局の反論と数値第7 今後の見通しと実務上の注意1 決定前のたたき台であること2 類似業種比準方式を前提とした計画の点検3 事業承継税制の期限第8 関連記事第9 出典1 法令・通達2 有識者会議の資料3 裁判例4 その他の公的資料
第1 この記事が扱う対象と時点
1 類似業種比準方式は廃止されるのか(結論)

令和8年9月19日現在,取引相場のない株式の評価に用いる類似業種比準方式の廃止は決定していない。
ただし,国税庁は,令和8年8月20日の第5回「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」で,会社の規模区分と,類似業種比準方式・純資産価額方式による評価体系を廃止し,残余利益方式(インカムアプローチ)へ評価方式を原則一本化するたたき台を示している。
このたたき台は,見直し内容のほか評価水準・税負担の在り方も含めて「最終的には税制改正プロセスにおいて決定いただく」と自ら書いており,廃止の有無と時期は今後の税制改正の過程で決まる。

本記事は,令和8年9月19日現在で国税庁が公表している第1回から第6回までの会議資料,第1回から第5回までの議事要旨,日本商工会議所の委員提出意見書及び第5回会議の当日机上配付資料「取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」のうち,類似業種比準方式の存廃に関係する部分を読んで整理するものである。
第6回会議(令和8年9月16日)の議事要旨は作成中であり,会議での発言は第5回議事要旨までしか確認できない。
生成AIを用いて公表資料を通読し,数値と発言を原資料の該当頁と照合した上で構成した。
会議全体の経過と論点の一覧は,取引相場のない株式の評価に関する有識者会議で整理している。

2 第4回から第6回までの経過

類似業種比準方式の扱いは,第4回と第5回の間で段階が変わっている。
第4回会議(令和8年7月3日)では,国税庁事務局が,報道で「類似業種比準方式は廃止する」と断定的に書かれていることを懸念した委員に対し,「類似業種比準方式を廃止するということを現時点で決定しているわけではない」と答えている(第4回議事要旨3頁)。
同じ回の終わりには,委員から有識者会議として合意や方向性が決まったわけではないという理解でよいかと問われた座長が,「現時点で評価方式を一本化するであるとか,類似業種方式を廃止するといった合意はない」とした上で,議論を進めるために事務局にたたき台を示してもらうという認識を述べている(同25頁)。

これを受けて第5回で示されたのが,国税庁事務局のたたき台である。
したがって,第5回以降の資料は「事務局の考え方」であって,有識者会議の合意でも,通達改正でもない。
経過をまとめると,次のとおりである。

時点資料類似業種比準方式についての記載第4回(令和8年7月3日)第4回資料16頁「今後の類似業種比準方式の在り方をどう考えるか」と委員に意見を求める第4回(同日)第4回議事要旨3頁・25頁事務局は廃止を決定していないと説明し,座長は一本化・廃止の合意はないと確認第5回(令和8年8月20日)第5回資料1頁「類似業種比準方式を存置することは困難ではないか?」第5回(同日)骨子1頁「類似業種比準方式と純資産価額方式に基づく評価体系を廃止し,評価方式を原則一本化」第6回(令和8年9月16日)第6回資料11頁類似業種比準方式には理論的な根拠や実証的な裏付けがなく,他分野でも徐々に使われなくなってきたと整理

骨子1頁は,冒頭で「抜本的に評価体系の見直しを行うことが考えられる」とした上で,「その1」として「規模に応じた評価体系の廃止と評価方式の一本化」を掲げており,類似業種比準方式だけを単独で廃止するという書き方ではなく,規模区分と二つの方式を組み合わせた現行の体系全体を廃止するという書き方になっている。

第2 現行の類似業種比準方式の仕組み
1 類似業種比準方式の算式と比準要素
(1) 財産評価基本通達180の算式

財産評価基本通達180は,類似業種比準価額を,「類似業種の株価並びに1株当たりの配当金額、年利益金額及び純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)を基とし」て計算した金額と定めている。
算式は,A×{(Ⓑ/B+Ⓒ/C+Ⓓ/D)÷3}×0.7である。
Aは類似業種の株価,Ⓑ・Ⓒ・Ⓓは評価会社の1株当たりの配当金額・利益金額・純資産価額(帳簿価額によって計算した金額),B・C・Dは課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの配当金額・年利益金額・純資産価額である。
Ⓑ・Ⓒ・Ⓓは,1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額として計算する(同項(1)の注)。

(2) 比準要素の計算期間

同通達183によれば,配当金額は直前期末以前2年間の平均であり,特別配当・記念配当等で将来毎期継続することが予想できない金額を除く。
利益金額は直前期末以前1年間の法人税の課税所得金額を基に計算し,「固定資産売却益、保険差益等の非経常的な利益の金額を除く」とされ,納税義務者の選択により直前期末以前2年間の平均によることもできる。
純資産価額は,直前期末の資本金等の額と利益積立金額に相当する金額の合計額による。

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