第1 食料品消費税1%はいつから,どうなるのか
食料品消費税1%とは,政府法案が令和9年4月1日から令和11年3月31日まで,現在8%の対象飲食料品の税率を地方消費税と合わせて1%へ引き下げようとする制度である。
令和8年10月13日現在は第222回国会への法案提出段階であり,成立,公布又は施行はしていないため,現在の対象飲食料品には8%が適用される。
「食料品消費税1%法案」は,令和8年10月9日に閣議決定され,第222回国会に提出された政府法案の飲食料品税率引下げ部分を指す通称として,本記事で用いている。
正式名称は,「租税及び社会保険料による負担の軽減のための飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の支給に関する法律案」である。飲食料品の税率引下げと,就業者負担軽減支援金の制度を一つの法案に含む。
政府案では,令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間,対象となる飲食料品の消費税率を,地方消費税と合わせて1%に引き下げる。国の消費税率は0.78%であり,地方消費税相当分0.22%を合わせて1%となる。
本記事は,10月9日の提出法案と国税庁の準備資料を解説するものである。法案提出は,成立,公布又は施行と同じではない。以下の予定期間や特例を現在の制度と混同せず,実施前には成立した法律とその後の公式資料を確認する必要がある。
飲食店への影響を先に確認する場合は,食料品消費税1%で飲食店はどうなる?―外食・仕入税額控除・利益への影響(AI作成)を参照されたい。
店内飲食と持ち帰りの税率差,外食離れの懸念,仕入税額控除,利益及び資金繰りを区別して説明している。
第2 閣議決定・国会提出・成立・施行を区別する
| 段階 | 意味と本記事での確認 |
|---|---|
| 政府の方針 | 令和8年9月15日の方針は,法案の説明に至る前提である。 |
| 閣議決定・国会提出 | 内閣官房の10月9日公表資料で,法案の閣議決定と第222回国会への提出を確認できる。 |
| 法案の成立・法律の公布 | 提出とは別に確認する必要がある。政府法案の説明だけで成立済みとは判断できない。 |
| 税率引下げの実施 | 政府案の予定は令和9年4月1日である。成立・公布と,税率を実際に切り替える日も分ける。 |
9月15日の方針と,10月9日に国会へ提出された法案の内容を区別して確認する。国税庁の対応ページとQ&Aは,法案成立等を前提とする準備資料であり,特例を今すぐ利用できる根拠として扱ってはならない。
令和8年10月13日に確認した衆議院の議案審議経過情報では,第222回国会・閣法第1号の衆議院議案受理年月日は令和8年10月9日と表示されている。
確認時点の衆参の審議結果,公布年月日及び法律番号の欄は空欄であり,このページから成立・公布済みであることは確認できない。
空欄の先の進行を推測で補わず,法案が成立した後は成立内容と適用開始日を別に確認する。
第3 1%の対象になる品目と,対象外の取引
現在の標準税率は10%,軽減税率は8%である。軽減税率の対象には,酒類・外食を除く飲食料品の譲渡と,定期購読契約に基づく一定の新聞の譲渡がある。食料品消費税1%法案は,このうち飲食料品の譲渡に係る税率を臨時に引き下げる内容である。
| 取引 | 現在の税率 | 政府案の引下げ期間 |
|---|---|---|
| 対象となる飲食料品の譲渡 | 8% | 原則1%。一定の予約販売・通販には旧税率の経過取扱いがある。 |
| 外食・酒類の販売 | 10% | 飲食料品税率引下げの対象外。 |
| 定期購読契約に基づく一定の新聞の譲渡 | 8% | 飲食料品税率引下げの対象外。 |
「食品を使う取引」ならすべて1%となるわけではない。店舗内で飲食する取引と持ち帰り・宅配,ケータリング,酒類とそれ以外の商品を分け,現在の軽減税率の対象判定と照合する必要がある。一体資産等の個別判断は,国税庁の軽減税率資料も確認する。
例えば,同じ店で購入する弁当でも,持ち帰りの飲食料品の譲渡は現在8%,店内の設備で飲食する外食は現在10%という区分になる。
政府案の1%の対象を確認する場合も,食品の名称だけでなく,飲食料品の譲渡なのか外食なのかを確認する。
酒類は現在10%であり,一定の定期購読新聞は現在8%であるが,いずれも飲食料品1%の対象とは別である。
本体価格1000円の商品,外食・テイクアウト,コンビニ弁当及び家計への影響は,食料品消費税1%で値段,外食・テイクアウト及び家計がどう変わるかで具体例を示している。
第4 事業者向けの5つの特例
自分の課税方式と売上構成を先に確認し,該当する節を読むと,還付・納付ゼロ・届出の混同を避けられる。
| 現在の状況 | 最初に確認する点 | 詳しい節 |
|---|---|---|
| 本則課税 | 実際の売上税額と控除可能な仕入税額を比較。食品売上げだけで還付を断定しない。 | 第4の3・第5 |
| 簡易課税 | 1%対象の飲食料品売上げと外食等の売上げを区分。移行するなら届出を確認。 | 第4の1・2 |
| 免税事業者 | 免税のままなら還付を受けない。課税選択の効力が生じる期間と継続適用を確認。 | 第4の1 |
食品メーカーについては,食品原料と包装・設備等の税率を分け,還付額と利益・資金繰りを比較する。
食料品消費税1%と食品メーカー-還付・利益・資金繰りへの影響(AI作成)では,課税方式,価格条件,OEM及び輸出の影響を説明している。
1 本則課税への移行に係る届出
政府案は,飲食料品を販売する免税事業者の課税事業者選択と,簡易課税を適用する事業者の本則課税への移行について,届出の時期等の特例を設ける。
国税庁Q&Aの問3-2では,飲食料品の譲渡を行う免税事業者が,令和9年4月1日の属する課税期間中に課税事業者選択届出書を提出することにより,その課税期間から課税事業者となる特例を説明している。4月1日からだけ課税されるとは限らず,個人事業者等の例では,その課税期間の初日である1月1日から課税事業者となる点に注意が必要である。
同Q&Aの問3-5には,飲食料品を販売する簡易課税事業者が,令和9年4月1日の属する課税期間中に簡易課税制度選択不適用届出書を提出することで,その課税期間から本則課税で申告できる特例が示されている。この課税期間には,対象事業者の2年間の継続適用要件を適用しない内容も含まれる。
本則課税で還付となるかは,実際の売上げ,仕入れ,税率及び仕入税額控除の要件によって異なる。免税事業者のままなら還付を受ける制度ではなく,届出をするとその後の申告や選択をやめる時期にも影響する。課税方式の変更を一律に勧めることはできない。
2 飲食料品販売に係る簡易課税の計算
国税庁Q&Aの問3-6は,簡易課税を適用する事業者について,1%の対象となる飲食料品の譲渡に係る売上税額と同額を,仕入税額として計上する特例を説明している。その他の売上げについては,通常のみなし仕入率による計算と区分する。
したがって,飲食料品と雑貨・外食等を併せて扱う事業者まで,消費税全体の納付額が一律ゼロとなる説明は不正確である。また,この計算の特例と,本則課税で実際の仕入税額を控除して還付を受ける仕組みは異なる。
同Q&Aの問3-7では,この特例を適用する場合の75%ルールの判定・計算から,1%対象の飲食料品の譲渡を除くとしている。
店舗全体の売上比率だけで,外食等の計算まで同じ区分にまとめてはならない。
3 中間申告
税率変更で実際の納付税額が減っても,従来の税額に基づく中間納付が過大となる場合がある。国税庁Q&Aの問3-8は,引下げ開始時と終了時に,直前課税期間の飲食料品の売上げ・仕入れへ変更後の税率を適用したものとして計算し,その税額を記載した仮決算による中間申告書を提出できる特例を説明している。
この特例は中間申告を一律に不要とするものではない。申告回数,計算に用いる期間,課税方式及び提出期限を確認する必要がある。
4 総額表示
税率切替え時の価格表示について,直ちに変更することが困難な事情があり,誤認防止措置を講じる場合に,切替え前後の一定期間,切替え前又は切替え後の税率による税込表示を認める内容である。
税抜価格だけの表示を認める制度ではなく,表示上の税率を実際の取引税率にする制度でもない。国税庁Q&Aの問3-9で期間と掲示の具体例を確認する必要がある。
5 定期供給契約による予約販売・通信販売
一定の定期供給契約による予約販売と通信販売には,引下げ前の8%を適用する経過取扱いがある。令和9年1月1日前の契約締結又は販売条件の提示・準備,4月1日前の対価受領又は申込受付,同日以後の譲渡等を,取引の種類に応じて確認する必要がある。
1%への引下げを前提とした契約・販売条件は除かれる。対象となる取引について,事業者が8%と1%を任意に選択する制度ではない。国税庁Q&Aの問1-6と契約・販売条件を照合する。
第5 契約・価格表示・請求書の準備
適用税率は,原則として飲食料品を譲渡した時期で判定する。注文日,請求書の発行日及び返品日だけで機械的に切り替えてはならない。月締め請求で8%と1%の取引が混在するときは税率別に区分し,切替え前の売上げの返品等には元の売上げに適用した税率を用いる。
準備では,税込・税抜の契約価格,税率変更条項,定期便・通販条件の版,商品棚・通販ページの表示,レジ及び請求書システムを一緒に確認する。詳しい点検項目は,食料品消費税1%法案への事業者対応―契約・価格表示・請求書で説明する。
第6 就業者負担軽減支援金との関係
法案には,飲食料品税率引下げに加え,就業者負担軽減支援金の制度が含まれる。内閣官房の概要資料は,所得水準に応じた支援金,令和9年からの先行支給及び令和11年からの本格支給を示している。
所得水準の具体的な範囲や支給額等には政令で定める事項があるため,本記事では一律の金額やすべての世帯への支給を断定しない。飲食料品の税率1%という制度と,個人に対する支援金の対象・金額・申請方法は分けて確認する必要がある。
第7 よくある疑問
1 食品の税率は,今すぐ1%になったのか
10月9日の閣議決定・国会提出は,現在の取引へ1%を適用することと同じではない。政府案の引下げ期間は令和9年4月1日からであり,現行の標準税率10%・軽減税率8%と区別する必要がある。
2 外食や新聞も1%になるのか
外食・酒類は対象となる飲食料品の譲渡から除かれる。一定の新聞は現在の軽減税率の対象であるが,飲食料品税率引下げの対象ではない。
3 なぜ0%ではなく1%なのか
政府は,1%なら0%より事業者のシステム改修期間を短縮でき,令和9年4月から実施可能と説明している(令和8年7月30日の総理記者会見)。
これは政府が示した理由であり,すべての事業者に共通する改修期間や唯一の政策理由として一般化しない。
政府の制度資料では,2年間の税率1%と所得に連動した就業者負担軽減支援金を組み合わせ,全体として実質ゼロ化を図るつなぎと説明している。
税率そのものは1%であり,商品の税額と各人の支援額は別である。
4 食品事業者は,必ず還付を受けられるのか
還付の有無は課税方式,売上げ・仕入れ及び控除要件等によって異なる。免税のままの事業者,簡易課税事業者及び本則課税事業者を分けて判断する必要がある。消費税とは―税率・免税事業者・簡易課税・インボイスの基本(AI作成)の免税点・簡易課税等の説明も参照されたい。
第8 参照資料
1 内閣官房の制度・法案資料(10月9日の閣議決定・国会提出。概要,要綱,法律案・理由,新旧対照表等へのリンク。)
2 内閣官房公表の概要(税率,予定期間,5つの特例及び支援金制度。)
4 国税庁「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A」(取引時期・経過取扱い:問1-3~1-6,インボイス:問2-1・2-2,届出:問3-2・3-5,簡易課税:問3-6,中間申告:問3-8,総額表示:問3-9。)
8 衆議院「第222回国会 閣法第1号 議案審議経過情報」(令和8年10月13日確認。)