メインコンテンツへスキップ

休職・復職

休職中の賞与・退職金はどうなるか―勤続算入,評価,退職区分と退職所得控除(AI作成)

目次

第1 休職中の無給だけでは,賞与と退職金は決まらない1 この記事の対象と結論2 会社が払う額と,税務上の計算を分ける第2 就業規則と各制度の規程を一緒に読む1 制度の根拠と適用される版2 同じ「勤続」でも用途を確認する第3 休職中の賞与を確認する順序1 無給条項と賞与の支給条件2 「別途取扱い」の内容を探す3 欠勤の扱いと,実際の仕事への評価第4 休職期間満了時の退職金を確認する順序1 勤続年数,基本給及びポイント2 自然退職と自己都合の支給率3 雇用終了の効力と,金額の計算第5 退職所得控除の勤続年数は別に計算する1 会社の除算と税務上の勤続年数2 前提を限定した計算例第6 賞与と退職金の税務処理・引継資料1 退職後に払う賞与を退職金へまとめない2 弁護士と税理士・給与担当者が共有する事項第7 関連記事第8 出典1 法令・行政通達2 行政機関の解説・規程例
第1 休職中の無給だけでは,賞与と退職金は決まらない
1 この記事の対象と結論

私傷病で休職した社員について,「休職中は無給」「休職期間は勤続に算入する」という就業規則の記載だけから,賞与や退職金の額まで決めることはできない。
毎月の賃金,昇給,賞与,退職金の算定及び税務上の勤続年数は,それぞれの根拠に沿って確認する必要がある。

本記事は,令和8年10月14日現在の法令及び公表資料に基づき,民間企業の私傷病休職に伴う賞与・退職金の確認方法を整理する。
公務員の退職手当,役員退職金,産前産後休業・育児介護休業の特別な不利益取扱い規制及び業務上の傷病は,別の検討を要する。
以下の資料確認や計算表の作り方は,個別の規程を正確に適用するための実務上の提案である。

2 会社が払う額と,税務上の計算を分ける

最初に,会社が契約・規程に基づきいくら支払うべきかを確認する。
次に,支払う金銭が給与所得か退職所得か,退職所得控除に用いる勤続年数が何年かを確認する。
会社の退職金算定で休職期間を除いていても,その年数を税務計算へそのまま転記してはならない。

第2 就業規則と各制度の規程を一緒に読む
1 制度の根拠と適用される版

労働契約法7条は,合理的な労働条件を定めた就業規則の周知と,個別の合意との関係を定めている。
本則だけでなく,賃金規程,等級・評価規程,賞与規程,退職金規程,個別の雇用契約及び労働協約を確認する。
社員区分ごとの適用対象と,休職時・評価時・支給時の各版を対応させることが重要である。

労働基準法89条は,常時10人以上の労働者を使用する使用者について,就業規則の作成・届出を定める。
退職手当の定めをする場合の適用範囲・計算・支払方法等は同条3号の2,臨時の賃金等の定めは4号の記載事項である。
厚生労働省のモデル就業規則67頁・75頁も,賞与・退職金の制度を必ず設ける義務とは区別して,制度を設けた場合の条件の明確化を説明している。

2 同じ「勤続」でも用途を確認する
確認する用途見る規程・資料混同しやすい点休職できる期間の区分休職規程,入社日,区分判定日支給額の算定年数とは限らない昇給・等級・評価昇給条件,評価期間,等級規程在籍していることと評価対象の実績は別である賞与算定対象期間,在籍条件,査定・出勤係数月給が無給でも賞与まで当然にゼロとはならない会社の退職金勤続除算,ポイント,退職区分,支給率本則の勤続算入条項だけで算定を完結させない退職所得控除実際の勤務関係,過去の退職金,税法・通達会社の除算後の年数をそのまま使わない

本則が勤続算入を定め,別の制度が休職期間の除算やポイントの停止を定めている場合は,それぞれの対象と,相互の参照関係を確認する。
単に「別規程があるから優先する」と決めず,契約内容,条項の整合性,周知及び変更の経緯を検討する。
適用される就業規則の最低基準を下回る個別合意には,労働契約法12条の問題も残る。

第3 休職中の賞与を確認する順序
1 無給条項と賞与の支給条件

賞与では,①具体的な支給条件・算式,②算定対象期間,③支給日に在籍すること等の条件,④休職者の特則,⑤会社業績と個人評価を確認する。
「休職中の給与は支給しない」という条項が賞与にも及ぶかは,用語の定義と賞与規程との関係を読む必要がある。
無給休職という名称だけから,算定期間中に勤務した部分や既に成立した賞与請求権まで失われたと判断しない。

(続きを読む...)休職中の賞与・退職金はどうなるか―勤続算入,評価,退職区分と退職所得控除(AI作成)

主治医は患者の希望どおりに診断書を書くのか―交付義務,患者寄りの判断と証拠の信用性(AI作成)

目次

第1 結論第2 「患者の意向に沿う」の意味を分ける1 交付,用途,申告及び医学的結論は別である2 本人の申告を記載することと虚偽の認定は同じではない第3 交付義務は希望内容に従う義務か1 医師法19条2項と20条2 診断書の交付と修正を区別した裁判例3 希望への配慮を直ちに犯罪と結び付けない第4 患者寄りになる傾向を示す研究をどう読むか1 85.8%は何を測った数字か2 病名の表現への配慮と虚偽を区別する3 職場復帰の手引きが指摘する限界第5 弁護士・会社が診断書を評価する方法1 患者の依頼で作られたことだけで排斥しない2 記載ごとに前提と根拠を確認する第6 照会・修正依頼では結論を先に指定しない1 求めるのは不足する情報と判断の説明である2 勤務情報と照会の目的を簡潔に伝える第7 実務上の確認事項第8 出典
第1 結論

主治医が患者の希望や利益に配慮して診断書を書くことはある。
特に,精神科・心療内科の職場復帰判断については,主治医の判断が患者寄りになる傾向を示す国内の原著研究がある。
しかし,「よほどのことがない限り,患者が希望した医学的結論をそのまま書く」とまで一般化することはできない。

診断書を交付する義務と,患者の希望する病名,休業期間,復職日又は受傷原因を記載する義務は別である。
また,患者が依頼したことだけで診断書を信用できないと決めることも,医師が署名したことだけで記載の全てが裏付けられたと扱うことも適切ではない。
患者の申告,医師が確認した所見及び医師の医学的判断を分けて読むことが必要である。

本記事は,2026年10月14日時点の法令と公開資料に基づき,一般診断書及びメンタルヘルス不調による休復職を中心に説明する。
全診療科の現在の実態や,個別の患者・医師の判断を一律に評価するものではない。

第2 「患者の意向に沿う」の意味を分ける
1 交付,用途,申告及び医学的結論は別である

「患者の意向に沿った診断書」という言い方には,異なる依頼が含まれている。
何を希望しているのかによって,医師に求める対応も,診断書の読み方も変わる。

患者の希望区別すべきこと①診断書を交付してほしい正当事由のない交付拒否と,希望内容の不採用を区別する。②勤務先などの用途に必要な事項を書いてほしい必要な項目と,医師が確認できる範囲を照合する。③本人の訴えを記載してほしい本人の申告としての記載と,医師自身の認定を区別する。④病名の表現に配慮してほしい医学的な意味と,提出先に必要な情報が保たれるかを確認する。⑤休業期間や復職日を書いてほしい症状,診療経過,仕事内容及び配慮条件を前提にした評価かを確認する。⑥事故や職場が原因であると書いてほしい原因に関する本人の説明と,医師の専門的判断を区別する。

希望どおりの結論が書かれていても,医師が診察や検査に基づき独立に同じ結論へ到達した可能性がある。
反対に,本人の説明を正確に記録した診断書でも,説明に含まれる出来事を医師が直接確認したとは限らない。
この区別を保つことが,医学的判断と事実認定を混同しないための出発点となる。

2 本人の申告を記載することと虚偽の認定は同じではない

例えば,「本人は職場で叱責された後から不眠が続くと述べている」という記載と,「職場で違法な叱責が行われ,それが疾病の原因となった」という断定は,証明しようとする事項が異なる。
前者は申告の内容を示すものであり,叱責の具体的態様や違法性まで当然に証明するものではない。
後者については,医師が把握した資料,診療経過及び判断の根拠を別に確認する必要がある。

他覚的な異常が確認できないことも,直ちに症状が存在しないことを意味しない。
診断書では,訴えの内容,診察・検査結果及びそこから導かれる判断を区別して確認するのが適切である。
この考え方は,次に述べる裁判例でも示されている。

第3 交付義務は希望内容に従う義務か
1 医師法19条2項と20条

医師法19条2項は,診察等をした医師について,正当事由のない診断書等の交付拒否を禁止している。
同法20条は,自ら診察しないで診断書を交付することを禁止している。
これらは,医師の判断を患者の希望する医学的結論に合わせることを定めた条文ではない。

(続きを読む...)主治医は患者の希望どおりに診断書を書くのか―交付義務,患者寄りの判断と証拠の信用性(AI作成)

服薬中の社員を運転・危険機械作業に配置できるか――電子添文の注意,主治医照会及び代替業務(AI作成)

目次

第1 結論第2 薬ごとの注意と本人の症状を分ける1 運転を避ける注意と慎重な対応を求める注意2 タリージェの電子添文を例に読む3 眠気の自覚がないことだけでは安全性を確認できない第3 業務上の運転・機械操作と通勤を具体化する1 作業名ではなく操作と危険源を示す2 通勤時の自動車運転も別に確認する第4 主治医・産業医等への照会と判断記録1 本人の同意を得て勤務情報を提供する2 照会文例3 現場には作業制限と対応を伝える第5 代替業務と再評価1 服薬を続けながら行える仕事を検討する2 処方変更や症状変化を再評価につなげる第6 実務チェックリスト第7 関連記事第8 出典・参考資料
第1 結論

服薬中の社員の配置を判断するときは,本人が眠気を感じるかだけでなく,実際に使用する薬の電子添文等の注意と,担当する運転・機械操作の危険を確認する必要がある。
電子添文に,自動車の運転等の危険を伴う機械操作へ従事させないよう注意する旨が記載されている場合,本人の「眠くない」「これまで事故がない」という説明だけで,その注意を外して配置することは適切でない。

他方,運転又は危険機械操作の制限が必要であることと,すべての仕事ができないことは別の問題である。
会社は,本人の同意を得て主治医・産業医等と情報を共有し,安全に行える実在の業務,勤務時間,通勤方法及び再評価の条件を検討する。
本記事は,令和8年10月14日に確認した公開資料を基に,企業の人事・法務担当者が行う情報確認と配置判断の手順を説明する。

第2 薬ごとの注意と本人の症状を分ける
1 運転を避ける注意と慎重な対応を求める注意

PMDAの薬の使用中の運転に関する説明は,使用中の運転が禁止されている薬と,禁止されないまでも注意が必要な薬があることを示している。
「薬を飲んでいる」という事実だけで一律に就業全体を禁止するのでも,すべての薬を副作用の自己申告だけで評価するのでもなく,個々の製品の現在の注意を確認する。

確認するのは,製品名・剤形,電子添文の版,運転・機械操作についての文言,処方又は用量の変更,併用薬及び実際に生じている症状である。
市販薬についても,外箱や説明書の表示を確認し,不明な点は薬剤師又は登録販売者に相談する。
会社の担当者が薬理作用を独自に判断したり,薬の名前から本人の病名を推測したりする必要はない。

2 タリージェの電子添文を例に読む

令和8年10月14日にPMDAで確認したタリージェの電子添文は,令和7年1月改訂の第9版である。
8.1では,めまい,傾眠,意識消失等が起こることがあるため,投与中の患者を自動車の運転等の危険を伴う機械操作に従事させないよう注意している。

この注意を,「眠気が出た日だけ運転を避ければよい」と読み替えることはできない。
服用中の社員については,フォークリフト運転や危険な切断機操作等を予定業務から除外することを前提に,処方医・産業医等へ確認し,代替業務を検討する。
補助者又は監督者を付けることだけを,電子添文の注意を外す理由にしない。

この例は,すべての鎮痛薬又はすべての機械について同一の制限を定めるものではない。
他の薬や設備に適用するときは,当該製品の注意と具体的な危険源を改めて確認する。

3 眠気の自覚がないことだけでは安全性を確認できない

PMDAの服用中に運転を避ける薬がある理由についての説明は,眠気のほか,注意力の低下,目のかすみ,めまい等が運転に支障を生じさせることを挙げている。
したがって,面談では眠気だけを尋ねず,注意,視覚,ふらつき,反応及び物を落とすなどの変化も本人の申告として確認する。

長期間同じ薬を使用していても,服用量又は体調の変化によって副作用が強くなる可能性がある。
事故がなかったという経過は記録するが,電子添文の注意に反する配置を認める根拠にはしない。

第3 業務上の運転・機械操作と通勤を具体化する
1 作業名ではなく操作と危険源を示す

会社は,「現場作業」「軽作業」という名称だけでなく,車両の種類,走行経路,作業時間,歩行者との接触,機械の可動部,材料の供給・取出し,刃具交換,清掃及び異常時対応を整理する。

(続きを読む...)服薬中の社員を運転・危険機械作業に配置できるか――電子添文の注意,主治医照会及び代替業務(AI作成)

金属加工業の職場復帰支援プランの作り方――工程別作業表,禁止作業,中止基準及び再評価日(AI作成)

第1 結論第2 金属加工の職務を工程単位で分ける1 作業名だけで判断しない2 金属加工一般の工程と危険源第3 医学的な機能制限を作業条件へ変換する1 確認する身体機能2 服薬と危険機械3 抽象的な診断書表現を具体化する第4 職場復帰支援プランの作成手順1 通常業務と軽減可能業務を分ける2 工程別作業表を作る3 主治医・産業医等・事業主の役割4 許可・条件付き・禁止を明記する第5 工学的安全対策と残留リスク1 対策の優先順位2 材料搬送・クレーン・フォークリフト3 機械加工・段取り・清掃第6 復帰開始後の運用1 勤務時間・休憩・監督2 中止基準3 再評価第7 健康情報の共有範囲第8 実務チェックリスト第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令・指針2 公的な実務資料
第1 結論

金属加工業の職場復帰は,「軽作業なら可能」「切断作業だけなら可能」といった作業名だけで判断せず,材料の取出しから加工,検査,片付けまでを工程に分け,工程ごとの危険源と必要な身体機能を確認して決める必要がある。

職場復帰支援プランには,少なくとも,①実施する工程,②実施しない工程,③勤務時間及び休憩,④工学的な安全対策,⑤監督者,⑥症状が出た場合の中止基準,⑦連絡先,⑧再評価日を記載する。

主治医は症状,治療及び医学的な機能制限を示し,産業医等はその制限と具体的な職務を照合し,事業主は実際に割り当てる業務と就業上の措置を決定する。

危険な機械を用いる実作業を,安全性を確かめるための試験として行わせてはならない。

第2 金属加工の職務を工程単位で分ける
1 作業名だけで判断しない

「旋盤」「溶接」「切断」などの名称が同じでも,材料の重量・長さ・形状,治具,送り方法,刃具,作業姿勢,連続時間及び補助者の有無により負担と危険は異なる。

定常加工よりも,材料の取出し,機械への取付け,位置決め,刃具交換,切粉除去,異常時の対応,清掃及び保全に大きな危険がある場合もある。

したがって,通常作業だけでなく,開始前,段取り,加工中,測定,終了後及び異常時を一連の工程として確認する。

2 金属加工一般の工程と危険源

金属加工業では,次の工程を自社の実作業に合わせて洗い出す。

材料の受入れ,棚からの取出し,運搬及び保管クレーン・玉掛け・フォークリフト等による荷役材料の切断,旋盤・フライス盤・ボール盤等による機械加工研削,研磨,バリ取り及び仕上げプレス,シャー,曲げ及び成形溶接,溶断,ろう付けその他の熱作業熱処理,洗浄,塗布その他の付随工程寸法測定,外観検査,記録及び梱包切粉・端材・スクラップの回収及び廃棄刃具・砥石・金型の交換,清掃,点検,修理及び異常処置

各工程について,はさまれ・巻き込まれ,切創,飛来物,落下物,転倒,腰部負担,熱,火花,ヒューム,騒音,振動,薬品及び車両との接触等の危険源を特定する。

長尺材又は丸材は,重量だけでなく,重心の移動,回転,転がり及び周囲との接触を考慮し,専用ラック,転がり止め,表示及び取出し順序を定める。

積み上げた材料へ登って取り出す方法を前提とせず,保管高さ,棚,機械式補助具又は取出し方法そのものを見直す。

第3 医学的な機能制限を作業条件へ変換する
1 確認する身体機能

病名だけでは,特定の工程を安全に行えるかを判断できない。

上肢については,左右別の握力,つまみ動作,感覚,巧緻性,到達範囲,反復動作及び振動工具への耐性を確認する。

下肢及び体幹については,立位,歩行,方向転換,片足支持,足踏み又はペダル操作,階段,前屈,中腰,ひねり,持上げ,運搬及び姿勢保持を確認する。

併せて,痛み又はしびれの増悪,疲労,注意力,視聴覚,暑熱への耐性及び緊急停止・退避が可能かを確認する。

2 服薬と危険機械

眠気,注意力低下,めまい,ふらつき,低血圧等を生じ得る薬剤については,実際の製品の最新の電子添文を確認し,運転・危険機械操作を避ける注意と,慎重な対応を求める注意を区別する。
服薬の事実だけで就業全体を禁止するのではなく,制限すべき工程と実施可能な代替業務を分けて評価する。

電子添文に危険を伴う機械操作に従事させないよう注意する旨の記載がある薬については,本人の「眠気がない」という申告だけで操作を認めない。
例えば,タリージェの電子添文8.1の注意を前提に,フォークリフト運転や危険な切断機操作等を担当から除外し,処方医・産業医等に制限と代替業務を確認する。

服用時刻,副作用の有無及び主治医又は薬剤師の説明を確認する場合も,監督者の配置だけで電子添文の注意を外す運用にしない。
通勤時の運転も別に確認し,詳しい判断手順は,服薬中の社員を運転・危険機械作業に配置できるか――電子添文の注意,主治医照会及び代替業務(AI作成)を参照する。

(続きを読む...)金属加工業の職場復帰支援プランの作り方――工程別作業表,禁止作業,中止基準及び再評価日(AI作成)

休業診断書をどう読むか――作成日,療養期間,専門科検査,復職可能日及び産業医意見の区別(AI作成)

目次

第1 結論第2 最初に区別する日付1 作成日・診察日・療養期間2 検査日・結果判明日・再評価日3 復職判定日・休職満了日第3 連続する診断書の比較方法1 原本を時系列に並べる2 確定事項・暫定事項・未確認事項を分ける第4 主治医に提供する情報と尋ねる事項1 仕事内容を具体化する2 回答を求める事項3 抽象的な復職条件を具体化する第5 主治医・産業医等・事業主の役割第6 照会同意と健康情報の共有範囲1 照会先が変わる場合2 現場に伝える情報を限定する第7 休職通知・復職判断との接続第8 実務チェックリスト第9 関連記事第10 出典・参考資料
第1 結論

休業診断書は,診断書の作成時点で医師が把握した医学的事項を示す重要な資料であるが,診断名又は「療養を要する期間」だけで復職日や配置を自動的に決めるものではない。
会社は,診断書の作成日,診察日,療養期間,今後の検査,医師が想定した仕事及び再評価時期を分けて確認し,必要な勤務情報を主治医に提供した上で,産業医等の意見,本人の意向,職場の状況及び就業規則を踏まえて判断する。

特に,診断書の作成後に専門科の受診又は検査が予定されている場合,その結果は原則として当該診断書に反映されていない。
また,「○日まで休業を要する」との記載は,翌日から従前業務に制限なく復職できるとの意見と同じではない。

主治医の診断書には,本人や家族の希望が反映される場合があるが,患者が依頼したこと又は患者に有利な結論であることだけで,虚偽や無価値と決めてはならない。
本人の申告,診察・検査で確認した事項,医学的判断及び想定した仕事内容を区別して読む必要がある。
厚生労働省の職場復帰支援の手引きは,病状の回復と業務遂行能力の回復が一致するとは限らないことを指摘している(冊子13頁~15頁,PDF15頁~17頁)。

診断書の交付義務は,希望する休業期間や復職日へ医学的判断を合わせる義務とは別である。
患者寄りの判断に関する研究の意味と,記載ごとの信用性の検討は,主治医は患者の希望どおりに診断書を書くのか―交付義務,患者寄りの判断と証拠の信用性(AI作成)で説明している。

第2 最初に区別する日付
1 作成日・診察日・療養期間

最初に,①診断書の作成日,②医師が本人を診察した日,③療養を要する期間の始期と終期を区別する。
作成日と診察日が異なる場合や,診断書が過去の期間を含んでいる場合には,どの時点の症状と検査結果を前提とした意見かを確認する。

療養期間の終期は,その期間中は就業を避けるべきであるとの医学的意見を示すのが通常である。
しかし,終期の翌日に復職可能であること,従前業務を制限なく行えること又は通勤を含めて安全であることまで当然に示すものではない。

2 検査日・結果判明日・再評価日

診断書の作成後に専門科の受診,画像検査その他の検査が予定されているときは,検査日,結果が判明する見込みの日及び医師が就業可否を再評価できる時期を確認する。
診断書の記載と後日の検査予定を一つの結論として扱わず,「現在の判断」と「今後確認される事項」を分けて記録する。

主治医が結果判明後に改めて意見を述べる予定であるなら,会社は回答期限を一方的に固定するのではなく,休職期間,就業規則上の手続及び安全上の必要性を踏まえて,追加資料の提出時期を本人と調整する。

3 復職判定日・休職満了日

復職の可否を判断する日は,診断書の療養期間末日と一致するとは限らない。
会社が勤務情報を主治医に提供し,主治医の意見書,産業医等の意見,本人との面談及び職場の受入条件を確認するための期間も考慮する必要がある。

就業規則上の休職満了日も,医学上の療養期間とは別の基準である。
診断書の提出だけで休職期間が当然に延長されるわけではなく,会社は適用条項,延長の可否,復職手続及び満了時の取扱いを別に判断し,必要な通知を行う。

第3 連続する診断書の比較方法
1 原本を時系列に並べる

診断書が複数提出された場合は,要約又は口頭説明だけでなく,各診断書の原本又は真正な写しを時系列に並べる。
比較する事項は,作成日,診断名,療養期間,症状又は機能制限の記載,治療・検査の予定,仕事に関する記載及び再評価時期である。

診断名の表現が変わった場合は,病状が悪化したと直ちに推測せず,診療科の変更,検査の進行又は診断書の目的の違いを確認する。
療養期間が延びた場合も,その理由が症状の継続,検査結果待ち,治療計画の変更又は安全な復職条件の未確定のいずれであるかを分けて確認する。

休業を要するという意見が短期間で条件付きの就業可能へ変わった場合は,病名の変更と,就業についての判断の変更を分けて確認する。
病名が同じでも,症状・身体機能の評価,検査結果,医師が把握した仕事内容又は想定する就業上の配慮が変わった可能性があるため,どの前提が変わったかを照会する。

「負荷を制限した業務から漸次復帰可」という意見は,通常業務への全面復帰や,短期間での症状消失を示すものではない。
会社は,制限を設けた実在の業務を安全に継続できるかという問いに置き換え,必要な勤務条件を具体化する。

変更理由の記載がないことは追加確認を要する事情であるが,それだけで診断書の信用性が低いと決め付けない。
変更の根拠となった症状・身体機能の経過,検査結果,対象とする作業,避けるべき動作及び再評価時期を確認する。

専門科の検査で「現時点では特定の病気と断定できない」と説明された場合,それを「その病気の可能性が完全に否定された」「症状が消失した」「従前業務を制限なく安全に行える」という結論へ置き換えてはならない。診断名の確定・除外と,現在の症状,機能制限及び具体的な仕事への適性は別の確認事項である。

(続きを読む...)休業診断書をどう読むか――作成日,療養期間,専門科検査,復職可能日及び産業医意見の区別(AI作成)

手足のしびれ・腰痛がある製造業社員の復職判断――危険機械・重量物作業の安全確認(AI作成)

第1 結論
第2 製造作業を工程・危険源に分ける

1 職種名だけでは判断できない
2 工程ごとの確認事項
3 金属加工を一連の工程として確認する

第3 症状・服薬と安全上必要な機能

1 しびれは部位・発症時期・変動を確認する
2 腰痛は立位だけでなく座位・運転も確認する
3 服薬と危険作業

第4 復職判断の手順

1 会社が作業情報を具体化する
2 主治医と産業医等の役割を分ける
3 危険作業は実地の耐久試験にしない
4 配慮は危険源に近い対策から検討する
5 診断書の作成時点と再評価を分ける

第5 判断結果と再評価の記録
第6 法的な位置付け
第7 関連記事
第8 出典・参考資料

(続きを読む...)手足のしびれ・腰痛がある製造業社員の復職判断――危険機械・重量物作業の安全確認(AI作成)

復職審査における診療情報提供への同意拒否・条件付き同意と休職期間満了―協成事件(東京地裁令和6年5月28日判決)(AI作成)

目次

第1 最初に確認する結論と資料の限界

1 復職可診断書だけで結論は決まらない
2 協成事件について確認できた資料

第2 協成事件の概要

1 休職と復職申出
2 診療情報提供への条件付き同意
3 休職期間満了とその後の対応

第3 休職期間満了時に分けて考える問題

1 休職制度は就業規則等に基づく
2 休職事由が消滅したか
3 雇用終了の法的性質

第4 主治医,産業医等及び事業主の役割

1 主治医の役割
2 産業医等の役割
3 事業主が行う最終判断

第5 診療情報提供への同意を求める場合

1 健康情報は必要な範囲に限定する
2 依頼書に記載する事項

(続きを読む...)復職審査における診療情報提供への同意拒否・条件付き同意と休職期間満了―協成事件(東京地裁令和6年5月28日判決)(AI作成)

休職期間中の無給と休業手当の区別――民法536条2項,労働基準法26条及び就業禁止条項(AI作成)

目次

第1 無給扱いと休業手当を区別する第2 関連記事第3 出典・参考資料1 法令2 実務書3 裁判例
第1 無給扱いと休業手当を区別する

私傷病のため労務を提供できず,契約上も有給とする定めがない場合,原則として賃金は発生しない。
この原則は欠勤中にも当てはまるが,療養の必要性と発令要件を確認して適法な無給休職を命じ,合理的な復職手続を明確にしておけば,欠勤扱いのまま復帰の申出に対して労務の受領を拒否する場合に比べ,賃金紛争のリスクを低減し得ると考えられる。
休職中の取扱いの契約上の根拠を明らかにし,休職事由の消滅を確認する手順と医学的資料を整えられるためである。
ただし,この差が現れるのは,本人が療養期間中に就業を申し出た場合である。
会社の判断による号の休職を先に命じることには,長期欠勤を要件とする号との接続の問題が伴うため,発令の時期は,休職事由の号の選び方で整理した点と併せて検討する。

もっとも,民法536条2項の帰責性の問題があるため,会社が就労を拒否している場面を,当然に同じ無給扱いにすることはできない。
休職命令が有効であっても,復職可能な状態となった社員の受入れを正当な理由なく拒む場合や,必要な確認を超えて判断を引き延ばす場合には,賃金請求の問題が残る。
復職の申出を受けたときは,他の業務への配置可能性も含めて速やかに検討し,確認中の期間を当然に無給としないことが必要である。

欠勤中の社員との面談で,会社が「無理して働く必要はない」「療養に専念した方がよい」と勧めることにも注意を要する。本人が就業を希望していた場合,会社が就労を控えさせたと評価される材料になり得るからである。就業の可否は主治医と産業医等の意見を聴いて判断するという形をとり,本人が「軽い仕事ならできる」等と述べたときは,その場で可否を答えず,発言をそのまま記録して検討する。

労働基準法26条は,使用者の責に帰すべき事由による休業について,平均賃金の60%以上の休業手当を定めている。
最高裁昭和62年7月17日判決(昭和57年(オ)第1189号,民集41巻5号1283頁)は,同条の「使用者の責に帰すべき事由」は,民法536条2項の債権者の責めに帰すべき事由よりも広く,使用者側に起因する経営,管理上の障害を含むとした。
したがって,会社による就労の拒否が民法536条2項の帰責事由に当たれば賃金全額の支払が問題となり,同項の帰責事由に当たらない場合でも,労働基準法26条の休業手当の支払義務が残ることがある。

もっとも,この判決と,同日の最高裁昭和62年7月17日判決(昭和57年(オ)第1190号,民集41巻5号1350頁)は,いずれも労働組合の部分ストライキによってスト不参加者の労働が無価値となった事案であり,1350頁の判決は不参加者の賃金請求権を,1283頁の判決は休業手当請求権を,当該事案ではいずれも否定している。私傷病による就労の拒否に,その結論をそのまま移すことはできない。
なお,民法536条2項は,平成29年法律第44号による改正(令和2年4月1日施行)で,「反対給付を受ける権利を失わない」から「反対給付の履行を拒むことができない」へ文言が改められており,上記の判決はいずれも改正前の規定についてのものである。

会社が休職を命じたという形式だけで支給の有無は決まらず,休業の実質的な理由を確認する必要があり,民法上の賃金請求が成立する場合の額を当然に60%へ減らす規定でもない。

就業規則に「傷病者に対する就業禁止」等の条項が置かれていることがある。この種の条項は,労働安全衛生規則61条1項の内容をそのまま採り入れた項,会社が心身の状況を判断して就業を禁止できるとする項,及びその期間を無給とする項の組合せになっていることがある。

このうち法令の内容を採り入れた部分の対象は,同項が定める疾病等に限られる。会社の判断による就業禁止を定める部分は,これに対応する法令上の根拠がなく,就業可能であると主張する労働者の労務の受領を会社の判断で拒む場面となるため,前記の民法536条2項及び労働基準法26条の問題が正面から生じる。

無給とする定めがあっても,就業を禁止する措置自体が正当と認められなければ,賃金支払義務は残る。また,労働基準法26条の定める基準は同法13条により労働契約をもって下回ることができないから,規則に無給と定めたことだけを理由に休業手当の支払を免れることもできない。

賃金・休業手当の支払義務を判断した後は,税務上の取扱いも区別する。国税庁「No.1905 労働基準法の休業手当等の課税関係」は,使用者の責に帰すべき事由による労働基準法26条の休業手当を,給与所得として扱うとしている。給与担当者は,通常の賃金と同様に,給与計算及び源泉徴収の対象となる支払として処理する。

これに対し,業務上の傷病による療養のため労働できず,賃金を受けない場合の労働基準法76条の休業補償は,非課税である。「休業手当」と「休業補償」は,名称が似ていても原因,法的根拠及び課税関係が異なる。私傷病で休職している社員に会社が独自に支払う金銭まで,「病気のための支払」という理由だけで非課税にしてはならず,支払の根拠と性質を個別に確認する。

弁護士が支払義務を検討し,税理士又は給与担当者が税務処理を確認するときは,休業の原因,労務提供の可否,支払の根拠,対象期間及び金額を共有する。無給扱いが適切かという労働法上の判断と,支払う金銭が課税されるかという税務上の判断を分けることが重要である。

復職後の賃金減額案に同意しないことと,労務を提供する意思・能力がないことも,同一ではない。
会社が減額への同意を受入れの条件にする場合は,契約に沿った労務提供を受け入れるべき状況かと,賃金変更の有効な根拠があるかを分けて確認する必要がある。
復職後の勤務時間,業務軽減,合意及び減額の継続については,復職した社員の給与を下げられるか―短時間勤務・業務軽減・本人同意と減額の継続(AI作成)で整理している。

第2 関連記事

休職の開始時に確認すべき事項の全体像は,社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項(AI作成)で整理している。

復職の申出を受けた場合の配置可能性の検討は,元の仕事ができない社員の配置可能性――片山組事件と職種限定合意(AI作成)で整理している。

無給期間の生活を支える傷病手当金は,休職中の傷病手当金――待期,通算1年6か月,退職後の継続給付及び2年の時効(AI作成)で整理している。

(続きを読む...)休職期間中の無給と休業手当の区別――民法536条2項,労働基準法26条及び就業禁止条項(AI作成)

主治医に何を伝え何を尋ねるか――勤務情報提供書,就業の可否,制限の程度と再評価の時期(AI作成)

第1 医師に伝える仕事と尋ねる事項

1 主治医,産業医等及び事業主の役割
2 診療情報提供への同意と追加照会
3 製造業・危険作業で具体化する事項

第2 関連記事第3 出典・参考資料1 法令に基づく指針2 公的な解説・行政資料3 実務書

「療養を要する」「就労可能」とだけ記載された診断書でも,既に得ている情報と合わせて必要な就業判断ができる場合はある。
判断に必要な情報が不足する場合に,会社が実際の作業と実施可能な配慮を伝え,必要な範囲で制限の内容・期間や再評価時期を尋ねる。
以下では,主治医に提供する情報と,尋ねる事項を整理する。

第1 医師に伝える仕事と尋ねる事項

治療と就業の両立支援指針5(1)~(3)は,仕事の情報を主治医に伝えて意見を得た上で,産業医等の意見,本人の意向及び職場の状況を踏まえて事業主が判断する流れを示している。

産業医等がいない場合は主治医から提供された情報を参考とするのであって,会社だけで医学的な判断を代行するという意味ではない。

なお,令和7年5月14日に公布された労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)により,労働者数50人未満の事業場についてもストレスチェックの実施が義務化される。施行日は公布後3年以内の政令で定める日とされており,現時点では未施行であるが,小規模事業場の健康管理体制は今後変わることになる。

「療養を要する」「就労可能」との記載だけでは判断に必要な情報が不足する場合,次の事項を確認する。

質問は休職又は就業のどちらかへ誘導せず,実際の作業と実施可能な配慮を示した上で行う。
医師法19条2項の交付義務と,会社又は本人が希望する医学的結論への書換えは区別する。

例えば,「添付の勤務情報を前提に,就業の可否,必要な制限,措置期間及び再評価時期をご教示いただきたい。現時点で判断できない項目は,その理由と追加で必要な情報をご教示いただきたい」と尋ねる方法が考えられる。
これは照会文の例であり,特定の結論への変更を求めるものでも,厚生労働省の公式様式の引用でもない。

誤記の訂正,不足事項の補足及び医学的結論の変更は分けて依頼する。
交付義務,患者への配慮及び診断書の信用性の関係は,主治医は患者の希望どおりに診断書を書くのか―交付義務,患者寄りの判断と証拠の信用性(AI作成)で説明している。

確認する事項
医師に伝える情報・尋ねる内容

(続きを読む...)主治医に何を伝え何を尋ねるか――勤務情報提供書,就業の可否,制限の程度と再評価の時期(AI作成)

休職事由の号の選び方――満了時の効果,欠勤要件の通算及び就業規則の不利益変更(AI作成)

第1 会社の規程と本人の適用条件1 再欠勤・再休職の通算と適用する規程2 通算規程の変更と判決の射程第2 関連記事第3 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的な解説・行政資料4 実務書
第1 会社の規程と本人の適用条件

休職を命じる場面では,どの休職事由を適用するかによって,休職期間の上限だけでなく,期間が満了したときの効果まで変わることがある。
長期欠勤を要件とする号と,会社の判断による号とが併記された規程では,先にどちらを使うかが,後に退職へ至る経路を左右する。
以下では,規程の確認事項と,二つの号の接続の問題を整理する。

厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)16頁は,休職の定義,期間の制限及び復職等について労働基準法に定めはないと説明している。

したがって,同モデルの空欄を埋めた期間が法律上の標準になるわけではなく,まず自社の就業規則,雇用契約及び適用対象を確認する。

労働契約法7条は,合理的な労働条件を定めた就業規則を周知していた場合の契約内容への取込みを定めている。

実務上は,休職事由,必要な欠勤日数,勤続期間による違い,申請又は命令の手続,休職期間及び再休職時の通算規定に加え,休職中の賃金の取扱いと復職手続の適用対象を確認し,今回の事実がどの条項に該当するかを記録しておくのが適切である。
欠勤中の社員に休職者向けの復職条項をそのまま適用できるとは限らないため,休職への移行に命令を要するのか,自動的に移行するのかを確認するとともに,診断書提出や医師面談については健康管理に関する別の条項の有無と適用条件も確認する。

休職事由が複数の号に分かれている場合,どの号を適用するかによって,休職期間の上限だけでなく,期間満了時の効果も変わることがある。長期欠勤を要件とする号については満了時に退職とする一方,会社の判断による号については満了時に復職を命じるものとする規程もあるため,退職に至る経路がどの号を経由するかを,発令の時点で確認する。また,会社の判断による号について満了時に条件を付けずに復職を命じる旨を定める一方,復職の基準を別の条項で列挙している規程では,満了時に基準を満たさず療養がなお必要な場合の扱いが文言上定まらないため,発令の時点でこの点の解釈と理由を整理しておく。

あわせて,会社の判断による号の休職を先に命じると,その期間の不就労は労働義務が免除された状態であって「欠勤」ではないため,長期欠勤を要件とする号の日数が積み上がらなくなることがある。早期に休職を命じるほど後にその号を適用できなくなるという関係が生じ得るので,二つの号の接続を先に確認する。本人が診断書を提出して療養している期間は,休職を命じなくても就労しない状態に変わりはないから,会社の判断による号の休職を先に命じる実益は,主として,その期間中に本人が就業を申し出た場合の取扱いにあり(休職期間中の無給と休業手当の区別参照),休職を命じる時期は,この実益と二つの号の接続の問題とを比べて決めることになる。なお,通知書に規程の文言の読替えを記載しても,就業規則の内容が変わるわけではない。会社の解釈を示すのであれば,その理由も併せて記載する。

長期欠勤を要件とする号の日数を数えるときは,欠勤期間の途中に入った年次有給休暇の日にも注意する。労働基準法39条6項の労使協定による計画年休日は,協定で対象外としていない限り,私傷病で欠勤中の社員についても年休の日となり,欠勤には当たらないと考えられる。本人が残りの年休を使った日も同様である。そのため,要件を満たす日はその分だけ後ろにずれ得る。規程に数え方の定めがないときは,発令前に数え方を決め,その理由とともに記録しておく。

休職制度の不備が見つかった場合でも,今回の事案に対応するために休職期間を短縮したり,再休職の通算条件や復職要件を不利益に変更したりして,そのまま適用できるわけではない。

労働契約法9条及び10条により,合意のない就業規則による不利益変更は原則として認められず,例外的に変更が認められるには,変更後の規則の周知に加え,不利益の程度,変更の必要性,内容の相当性及び交渉の状況等に照らした合理性が必要となる。

現在適用される規程とその周知状況を確認する作業と,将来に向けて制度を整備する作業を分け,就業規則の変更では変更しないとした個別合意の有無も確認する必要がある。

東京高裁平成7年8月30日判決(平成6年(ネ)第2275号・富国生命事件)は,復職後に約3か月通常勤務をしていた社員について,未治癒で症状が再燃する可能性があるだけでは当該規則の休職事由に当たらないとして,会社の控訴を棄却した。

この判決は当該就業規則と勤務状況についての判断であり,病気なら休職させられるとも,本人が働きたいと言えば必ず就業させるとも述べていない。

なお,同事件では,会社が業務外の傷病として扱う一方,労働者側は業務起因性を争っていた。事案の位置づけを確認せずに引用すると,争点を取り違えることになる。

1 再欠勤・再休職の通算と適用する規程

一度復職して再び欠勤・休職した場合には,前後の期間を通算する条件を条文ごとに確認する。「欠勤日数の通算」と「休職期間の通算」は別の定めである。通常勤務を何か月続ければ前の期間を数えなくなるのか,同一又は類似の理由による再欠勤を特別に通算するのか,起算日・終了日と適用する版を確認する。

東京地裁平成20年12月19日判決(平成18年(ワ)第19368号,野村総合研究所事件,判例秘書L06332761)では,通常勤務による通算の区切りを3か月から6か月とする改定と,同一又は類似の理由による欠勤の通算条項が問題となった。改定当時の必要性,制度及び組合の対応等に基づく固有の検討であり,どの会社でも6か月又は無期限の通算を採用・適用できるという基準ではない。

通算の確認では,欠勤開始日,休職発令日,休職開始日,短期間の出勤日,正式な復職日及び再欠勤日を一つの時系列にする。
短期出勤が連続性を切るか,出勤日を期間へ含めるか,再欠勤時に何を残期間から控除するかは,欠勤通算条項と休職通算条項を分けて読む。
会社の期間表は,入社日と勤続区分の判定日も対応させて適用する。

「同一の原因」又は「類似の理由」という規程の要件は,診断名の一致だけで決めない。
診療科や診断名が変わった事情,症状・機能制限,治療経過,復職中の勤務状況及び医師の説明を確認し,規程の文言と照合する。
会社が医学的な因果関係を独自に診断するのではなく,必要な範囲の医学的意見を得て,人事上の通算要件を判断する。

民法138条・140条・143条による期間計算では,別段の定め,初日の算入及び月・年の暦による計算を確認する。

(続きを読む...)休職事由の号の選び方――満了時の効果,欠勤要件の通算及び就業規則の不利益変更(AI作成)

休職と年次有給休暇の関係――休職前の取得,年5日の時季指定,出勤率及び2年の時効(AI作成)

第1 年休・欠勤・休職の日付を分ける第2 関連記事第3 出典・参考資料1 法令

休職に入れば労働義務のない日となるため,年次有給休暇を取得することも,使用者が時季を指定して与えることもできなくなる。休職の開始日を決める場面では,年休の残日数,次の基準日の出勤率及び時効を併せて確認しておく必要がある。

第1 年休・欠勤・休職の日付を分ける

診断書の作成日,療養を要するとされた期間の初日,実際の欠勤開始日及び就業規則上の休職開始日は,同じとは限らない。

年休の申出と残日数,欠勤期間の算定方法及び休職への移行条件を別々に確認し,開始日と満了予定日を計算する。

最終出勤日,欠勤開始日,休職開始日,休職期間の満了予定日,他の休職事由へ移行する場合の移行日,退職日及び社会保険の資格喪失日は,いずれも別の概念である。これらを一覧にして定義し,通知書,社会保険の届出及び賃金計算の各書面をその一覧に合わせる。同一の事案について書面ごとに日付が食い違うと,後に事実関係の確認が困難になる。また,当初の休職期間を規程より短く定めて後に発令し直すと,起算日が後ろにずれて満了時期が当初の想定より遅くなることがあるため,発令前に勤続年数と適用条項を確定させる。

労働基準法39条5項は,原則として労働者の請求する時季に年休を与える仕組みを定めている。

病気による欠勤を自動的に年休へ振り替えたり,年休を全て消化した日を当然の休職開始日としたりせず,本人の申出と適用規程を確認することが必要である。

欠勤中に計画年休日が来た場合(協定で対象外とされていない場合)や本人が残りの年休を使った場合,その日は欠勤ではなく年休となり,長期欠勤を要件とする休職事由の日数計算に影響する。

休職開始日を計算するときは,所定労働日,会社休日,1日年休,半日年休及び欠勤を日ごとの表にして確認する。半日年休を当然に1日の欠勤へ切り上げたり,所定労働日を基礎とする年休日数を暦日数へ機械的に置き換えたりしてはならない。

就業規則が「欠勤が一定期間に達したとき」と定める場合と「一定期間を超えたとき」と定める場合を区別し,年休取得日又は半日年休の残りの時間が欠勤期間の連続性,起算日及び休職開始日にどのように影響するかを,規程の文言と実際の勤務記録に沿って確認する。

この点は,休職事由の号の選び方――満了時の効果,欠勤要件の通算及び就業規則の不利益変更(AI作成)で整理している。

他方,同法39条7項は,年10労働日以上の年休が付与される労働者について,そのうち5日を,基準日から1年以内の期間に,労働者ごとに時季を定めて与えなければならないとしており,この義務は同法120条1号の罰則の対象とされている。同条8項により,同条5項又は6項の規定によって既に与えた年休の日数(5日を超えるときは5日)については,時季を定めて与えることを要しない。

休職に入れば労働義務のない日となり,使用者が時季を指定して年休を与えることはできなくなるほか,本人が請求して取得することもできない。労働基準法施行規則24条の7の年次有給休暇管理簿により,当該労働者の基準日と当年度の取得実績を休職開始前に確認しておく必要がある。

また,同法39条10項が出勤したものとみなすのは,業務上の負傷若しくは疾病による療養のための休業,育児休業,介護休業及び産前産後の休業の各期間であり,私傷病による欠勤及び休職の期間はこれに含まれない。欠勤が長期化すると次の基準日に全労働日の8割以上出勤したという要件を満たさないことがある。他方,年次有給休暇の請求権は,労働基準法115条により2年で時効消滅する(賃金の請求権と異なり,同法143条3項による当分の間の読替えの対象ではない。)。年休を消化せずに残すかどうかを本人が判断する場面では,次の基準日の出勤率と併せて,この点も説明するのが適切である。

未消化の年休を多く残したまま休職に入ると,休職期間の満了や退職の場面で,その消化又は代償を求められることがある。年次有給休暇の買取りは,労働基準法39条が定める年次有給休暇の趣旨に反するため,原則として許されないと解されている。残日数の多い労働者について休職を検討するときは,休職開始前の取得の意向を確認し,回答期限を定めて書面で受け取っておくのが適切である。

年5日の時季指定義務の具体的な計算方法及び時季変更権については,年次有給休暇の付与日数,取得方法,年5日義務及び時季変更権(AIリライト)で整理している。

第2 関連記事

休職の開始時に確認すべき事項の全体像は,社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項(AI作成)で整理している。

年休の付与日数,取得方法,年5日義務及び時季変更権は,年次有給休暇の付与日数,取得方法,年5日義務及び時季変更権(AIリライト)で整理している。

第3 出典・参考資料
1 法令

②e-Gov法令検索「労働基準法」13条,19条,24条,26条,39条,115条,120条,143条

⑪e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」5条1項1号の3,24条の7

元の仕事ができない社員の配置可能性――片山組事件と職種限定合意(AI作成)

第1 他の業務への配置可能性配置可能性を工程・動作ごとに確認する第2 関連記事第3 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 法令に基づく指針4 公的な解説・行政資料

傷病により従前の業務を通常どおり遂行できなくなった社員について,元の仕事ができないという一事から労務の受領を拒むことはできない。他方,職種を限定する合意がある場合には,別の業務への配置を一方的に命じることもできない。以下では,この二つの制約の関係を整理する。

第1 他の業務への配置可能性

最高裁平成10年4月9日第一小法廷判決(平成7年(オ)第1230号・片山組事件)は,職種等を限定しない契約について,現に命じられた業務を十分にできなくても,現実に配置される可能性のある他の業務を遂行でき,その提供を申し出ている場合には,契約に沿った労務提供があるとした。

最高裁は,他業務への配置可能性を十分に検討しなかった原判決を破棄し,差し戻している。

同事件は自宅治療を命じられた期間の賃金等が問題となったものであり,休職期間満了時の復職要件を直接判断した事件ではない。

実務上は,契約上の職種限定,本人の能力・経験,企業の規模及び実際の配置・異動の状況を確認し,元の仕事ができないという理由だけで検討を終えないことが重要である。

治療と就業の両立支援指針5(5)ウは,職場復帰の可否について,①主治医の意見を求め,②これを産業医等に提供して意見を聴取し(産業医等がいない場合は主治医から提供を受けた情報を参考とし),③本人の意向を確認し,④復帰予定の職場の意見を聴取した上で,⑤これらを総合的に勘案し,配置転換も含めた職場復帰の可否を判断する,という順序を示している。

ただし,同判決から,存在しない仕事を常に新設する義務まで導くことはできない。

配置可能性を工程・動作ごとに確認する

他の業務への配置可能性は,「事務」「検査」「軽作業」といった職務名だけでは判断できない。現に存在する職務について,担当工程,必要な動作,危険要因及び実施可能な配慮を整理し,社員の現在の機能と照合する。

確認段階具体的に記録する事項

①職務の洗出し雇用契約上の職種・勤務地の範囲,本人の能力・経験,各事業場に現に存在する職務,欠員及び過去の配置・異動の実情。
②工程・動作立位・座位・歩行の時間,重量と取扱回数,持上げ高さ,前屈・中腰・ひねり,両手操作,階段・段差,暑熱・振動,車両・危険機械及び緊急時の退避。
③必要な機能歩行・平衡,握力・巧緻性,疼痛と疲労,注意・判断・反応速度及び作業後又は翌日までの回復。
④実施可能な配慮補助具,二人作業,工程変更,作業量又は時間の短縮,休憩,監督,危険作業の除外及び一時的な配置変更。
⑤判断と見直し可能な職務と不可能な職務,その理由,配慮の実施可能性,実施期間及び再評価日。

座って行う検査又は事務補助であっても,長時間座位,作業場所までの歩行,製品又は書類の持運び,段差,機械への接近若しくは緊急避難が必要であれば,当然に安全な軽作業となるわけではない。仕事の名称ではなく,実際の工程全体を確認する必要がある。

「軽作業がない」と判断する場合は,検討した職務・事業場,危険要因,業務分担の変更,補助具,二人作業,短時間勤務及び配置転換の可否と,採用できない具体的理由を記録する。主治医又は産業医等には,この職務情報を示した上で,通常業務,軽減業務,禁止業務及び再評価時期について意見を求める。

一時的な配慮又は既存業務の再配分を検討することと,会社に恒常的な新職務を創設することとは区別する。また,現時点で配置困難であっても,症状又は職場条件が変化する可能性があるときは再評価日を定める。

他方,最高裁令和6年4月26日第二小法廷判決(令和5年(受)第604号)は,職種や業務内容を限定する合意がある場合,労働者の同意を得ずにされた異なる職種等への配置転換命令について,使用者が命令権を有することを前提として権利濫用に当たらないとした原審の判断には違法があるとして,原判決を破棄し差し戻した。

同判決は私傷病休職の事件ではないが,休職回避のために別業務への配置を検討する際にも,限定合意に反する命令をすることと,本人との合意によって別業務に従事する可能性を検討することを区別する必要がある。

職種限定があることだけから,他業務の検討が全て不要になるとも,元の職務ができなければ直ちに退職となるともいえない。

労働基準法施行規則5条1項1号の3及び厚生労働省の改正案内によれば,令和6年4月1日以降,契約締結時及び有期契約更新時の労働条件明示では,就業場所及び従事すべき業務の変更の範囲も対象となっている。

労働条件通知書だけでなく,採用時の説明や個別合意も確認するのが適切であり,この改正は全ての在職者に休職開始時の通知書再交付を一律に命じる制度ではない。

障害者である労働者については,障害者雇用促進法36条の3の措置も検討対象となるが,過重な負担となる場合の例外がある。

(続きを読む...)元の仕事ができない社員の配置可能性――片山組事件と職種限定合意(AI作成)

休職中の傷病手当金――待期,通算1年6か月,退職後の継続給付及び2年の時効(AI作成)

第1 傷病手当金の申請と時効第2 関連記事第3 出典・参考資料1 法令2 公的な解説・行政資料

休職中の社員の生活を支えるのは,多くの場合,健康保険の傷病手当金である。会社が休職と呼ぶ期間と給付の対象となる期間は一致しないため,待期の数え方,支給期間の通算,退職後の継続給付及び時効を,それぞれ分けて確認する必要がある。

支給要件,金額の計算,支給期間の数え方,退職後の継続給付並びに障害年金,出産手当金,労災保険及び雇用保険との調整の詳細は,傷病手当金とは―支給要件,金額の計算,退職後の継続給付及び障害年金・失業保険との関係で整理しており,本記事では,休職中の社員について会社が確認すべき点に絞って説明する。

第1 傷病手当金の申請と時効

健康保険法99条は,被保険者が療養のため労務に服することができない場合,連続する3日間の待期を経た4日目以降の対象日について傷病手当金を支給する仕組みを定めている。

協会けんぽの案内では,待期には年次有給休暇や公休日も含まれるとされており,会社が休職と呼ぶ期間の初日から数えるとは限らない。

また,傷病手当金は療養のため労務に服することができない場合の給付であるから,主治医が就業可能とする一方で会社の判断により就業させない期間について,この要件を当然に満たすとはいえない。労務不能の判定は保険者が行うが,就業を止めるかどうかを検討する際は,賃金請求の問題だけでなく,本人が賃金も給付も受けられない状態となる可能性も併せて確認する必要がある。

1日当たりの額は,原則として,支給開始月以前の直近の継続した12か月間の標準報酬月額の平均額を30で除した額の3分の2である。

加入期間が12か月未満の場合には別の算定規定があり,端数処理もあるため,単純に現在の手取り給与の3分の2として案内しないことが重要である。計算例と,加入期間が12か月未満の場合に用いる平均額は,傷病手当金とは―支給要件,金額の計算,退職後の継続給付及び障害年金・失業保険との関係の第4で示している。

健康保険法108条により,報酬を受けられる期間は傷病手当金との調整が行われ,報酬額が傷病手当金より少なければ差額支給の対象となる。

したがって,給与が少しでも出れば必ず全額不支給になるとは限らず,年休を含め,対象日ごとの給与の取扱いを正確に確認する。

年次有給休暇の付与日数,年休賃金及び傷病手当金との調整については,年次有給休暇の付与日数,取得方法,年5日義務及び時季変更権を参照されたい。

同一の傷病についての支給期間は,支給開始日から通算して1年6か月であり,会社の休職可能期間とは別である。

実務上は,休職制度が終了する日と給付が終了する日を,別々に説明することが重要である。

例えば,「傷病手当金は1年6か月出るので,無理して働く必要はない」といった説明は,本人に,雇用も1年6か月続くと受け取られるおそれがある。

休職期間が3か月等と短い規程では,後に休職期間満了による退職が争われたときの材料にもなるので,給付の期間と休職期間を並べて示すのが適切である。

また,健康保険法104条は,資格喪失日の前日まで引き続き1年以上被保険者であった者が,その資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けているときは,被保険者として受けることができるはずであった期間,継続して同一の保険者からその給付を受けることができるとしている。

休職期間の満了により退職する可能性がある場合も,退職すれば当然に給付が終了すると案内せず,被保険者期間の長さと,資格喪失時に傷病手当金を受けているか,報酬を受けているために支給が停止されているにとどまるかを確認する必要がある。

協会けんぽは,退職日に出勤したときは継続給付を受ける条件を満たさないとしている。また,退職後にいったん労務可能となった場合は,治癒しているか否かを問わず,同一の傷病により再び労務不能となっても傷病手当金は支給されない。

休職期間の満了日に挨拶や引継ぎのための出社を求めると,本人の継続給付を失わせることになる。継続給付の要件は,傷病手当金とは―支給要件,金額の計算,退職後の継続給付及び障害年金・失業保険との関係の第6で整理している。

健康保険法193条及び協会けんぽのFAQ問2によれば,傷病手当金は労務不能であった日ごとにその翌日から2年で時効となる。

このため,休職の終了まで申請を待つ運用は避け,対象期間の勤務・給与の記録を確認して申請を進めるのが適切である。

健康保険法施行規則84条は,申請に必要な療養担当者の意見と,労務に服さなかった期間や報酬等についての事業主の証明を定めている。

実務上は,本人,医療機関及び会社の担当部分を開始時に説明し,勤務・給与の記録に基づいて申請書を作成できる体制を整えるのが適切である。

休職期間中も使用関係が続く限り被保険者資格は失われず,事業主と被保険者は,賃金の支給が停止される前の標準報酬に基づく保険料を折半して負担する(健康保険法161条,昭和26年3月9日保文発第619号)。無給の期間に給与から控除できない本人負担分の支払方法と,復職後の給与から立替金を控除する場合の制約は,社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項の第6の3で整理している。

健康保険法55条1項により,同一の傷病について労災保険の相当する給付を受けられる場合には,健康保険の給付との調整が問題となる。

私傷病として傷病手当金を申請した後に業務上の傷病と判断された場合も,保険者及び労働基準監督署に手続を確認し,会社だけで返還額を確定したり,申請を一律に止めたりしないことが適切である。業務上か業務外かの判断がつかない間も,労災保険の請求と並行して傷病手当金を申請することができ,健康保険の給付を受ける権利の時効は労災保険の決定を待たずに進むので,申請を止めると本人が給付を失うおそれがある。関係する裁判例は,傷病手当金とは―支給要件,金額の計算,退職後の継続給付及び障害年金・失業保険との関係の第7の3で説明している。

第2 関連記事

休職の開始時に確認すべき事項の全体像は,社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項で整理している。

社会保険の加入・保険料・資格取得喪失は,社会保険の加入・保険料・資格取得喪失と士業の適用で説明している。

(続きを読む...)休職中の傷病手当金――待期,通算1年6か月,退職後の継続給付及び2年の時効(AI作成)

休職通知書に記載すべき事項――適用条項,期間,賃金,復職手続及び満了時の取扱い(AI作成)

目次

第1 休職通知で伝える事項第2 関連記事第3 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 法令に基づく指針4 公的な解説・行政資料5 実務書
第1 休職通知で伝える事項

休職を命じるときは,適用する条項と期間だけでなく,賃金の取扱い,連絡の方法,復職の手続及び満了時の取扱いを,交付した日付とともに書面で残しておく必要がある。
後に効力が争われる場面では,発令時にどの条項を適用し,本人に何を説明したかが確認されることになり,書面に残っていない事項は,発令の時点で会社がそのように判断していたことを示しにくくなるからである。

治療と就業の両立支援指針5(5)アは,長期休業の開始前に,制度,賃金,手続,休業可能期間及び職場復帰の手順を説明する対応を示している。

同アは,これらの情報提供とともに休業申請書類を提出させて休業を開始することを示しており,また,治療の見込みが立てやすい傷病の場合には,休業開始の時点で主治医や産業医等の専門的な助言を得ながら休業終了の目安も把握することを示している。休職への移行に本人の申請を要するのか,会社の命令によるのかは規程ごとに異なるため,自社の手続と照合する。

説明の食い違いを防ぐため,次の事項を通知書又は説明書にまとめ,本人に交付した内容と日付を残す。

項目通知・説明する内容①根拠と開始日適用する規程,休職事由,休職開始日及びその算定の基礎。②期間満了予定日,延長の有無と条件,再休職時の通算方法。診断書の記載期間を超えて期間を定める場合は,その期間を定めた根拠。③金銭給与の取扱い,傷病手当金の申請手順,社会保険料の本人負担分及び住民税の支払方法。④連絡担当窓口,連絡方法,予定する連絡時期,病状により連絡が難しい場合の相談方法。⑤復職期間の途中でも復職を申し出られること,復職を申し出る時期,必要な資料,医師の意見を踏まえた判断の手順,及び申出を受けてから会社が判断するまでに通常要する期間の目安。⑥試し出勤制度の有無,目的,対象者,申出方法,実施前に定める条件・提出書類及び正式な復職判定との関係。⑦満了時の取扱い適用規程の内容と,復職の可否を判断するための確認事項。

発令日,本人への交付日・到達日,休職開始日及び満了日は区別する。年休,半日年休,会社休日又は欠勤期間の算定が確定していない段階では,休職開始日及び満了日を確定した日付として記載せず,算定中であることと確定後の通知方法を示す。

算定根拠を確認した後,開始日,満了日及び計算過程を書面で通知する。当初の案から変更した場合は,変更理由,説明日及び本人に交付した最終版を記録する。

新たな診断書が提出され,療養を要する期間が従前より長くなっても,既に通知した休職期間が当然に変更されるわけではない。会社は,就業規則の適用条項,延長又は区分変更の可否,休職満了日,必要な復職手続及び本人への説明を別に検討する。

反対に,休職期間が満了するからといって,医学的に復職可能になるわけでもない。診断書の療養期間,主治医の復職意見,産業医等の意見及び会社の人事判断を分け,通知内容を変更するときは変更日と根拠を書面に残す。

もっとも,記載を増やすほど紛争を防げるわけではない。会社の規程の解釈を通知書に詳しく書いても就業規則の内容は変わらず,本人に交付した書面の文言は,後に個別に取り上げられることもある。療養中の本人が読む負担も考え,本人に交付する書面には,適用条項,期間の根拠,本人が取り得る手続及び会社が行う対応を正確に記載し,規程の解釈を検討した経過は社内の記録として残す方法もある。

治療と就業の両立支援指針4(4)ア(イ)④は,試し出勤制度を,長期休業者の円滑な職場復帰を支援するために事業主が自主的に設ける勤務制度と位置付けている。
会社に制度がある場合は,休職開始時に,制度の目的,対象者,申出窓口,申出時期及び提出を求める資料を説明し,具体的な利用可否と実施条件は休職開始時に固定せず,回復状況,職務内容及び医学的意見を踏まえて実施前に決めることを明確にする。

実施する場合は,開始前に本人の意向並びに主治医及び産業医等の意見を確認し,目的,期間,出勤日,時間,場所,行う活動と禁止業務,指揮命令者,給与,交通費及び社会保険上の取扱い,事故時の連絡・受診方法,健康情報の取扱者,中止基準及び評価日を個別の実施計画に記載する。
この計画は休職開始時の一般的な制度説明と区別し,実施条件を変更した場合は変更内容と本人への説明日も記録する。

試し出勤の実施計画は,復職可能と判断した後に必要に応じて作成する職場復帰支援プランとは,目的と作成時点が異なる。
試し出勤の結果は復職判断の資料の一つであり,主治医及び産業医等の意見,本人の意向,復帰予定職場の意見,実際の職務及び配置転換の可能性等と併せて総合的に検討する。

自然退職条項では,「退職するための条件」と「条件が成立した場合の退職日」を分けて記載する。例えば,適用規程が「休職期間の満了時までに休職事由が消滅しないときは,満了日をもって退職する」と定めている場合,満了した事実だけで足りるわけではない。他方,その条項が有効に適用され,満了時に退職要件が成立していれば,規程上の退職日は満了日となる。「休職満了日=自然退職日ではない」とだけ記載するのは,条件と日付の区別が伝わりにくい。

このような規程であることを確認した上での説明例は,「休職期間の満了日は○年○月○日です。満了時までに休職事由が消滅せず,就業規則第○条の退職要件を満たす場合は,同条により満了日をもって退職となります。復職を希望する場合の申出・資料提出の手順は次のとおりです。」となる。満了日,適用条項及び復職手順は,実際の規程と計算結果に合わせて記載する。

満了前に復職申出と必要な資料を確認し,主治医・産業医等の意見,本人の意向,実際の職務,配置可能性及び必要な配慮を踏まえて審査する。その結果と理由,適用条項,満了日,退職要件の成否及び要件が成立する場合の退職日を,書面で説明する方法が適切である。会社内部の決裁日,通知の作成日,本人への到達日及び規程上の退職日を混同しない。

自然退職の通知は,適用条項により生じる効果を説明する通知なのか,通知自体が終了要件となるのかを区別する。「会社が後日退職を決めた日が必ず退職日になる」とも,「通知がなくてもどの規程でも満了日で終了する」とも一律には説明できない。満了後に審査・通知する場合も,会社側の手続の遅れだけを本人の復職不能の根拠とせず,満了時の状態,復職申出の経緯,規程及び個別の合意を確認する。

以上の通知・記録の方法は,本記事が提案する実務上の手順である。厚生労働省「退職・解雇に関するルール」が説明する休職期間満了と労務提供能力の関係も踏まえ,開始時に将来の自然退職を無条件で確定しないことが重要である。

満了時の退職条項を説明することと,将来の退職扱いの有効性を確定することは別である。

実務上は,開始時の通知だけで結論を固定せず,満了時の状態と適用規程,現実的な配置可能性を改めて確認し,解雇による場合は労働契約法16条等の規制を検討する必要がある。

通知書を受け取ったことの確認と,不利益な労働条件変更や将来の退職への同意は区別する。

給与や復職後の勤務条件を変更する合意を求める場合は,変更前後の内容,不利益の程度及び選択肢を説明し,検討の機会を確保するのが適切である。

最高裁平成28年2月19日第二小法廷判決(平成25年(受)第2595号・山梨県民信用組合事件)は,賃金・退職金の不利益変更への同意について,署名等だけでなく,不利益の内容・程度,経緯,情報提供・説明等から,自由意思に基づくものと認める合理的理由が客観的に存在するかを判断すべきものとし,原判決を破棄して差し戻した。

説明書や合意書を修正した場合は,旧案と最終案の相違点,説明日及び交付した版も記録する。

合意の有無だけでなく,労働契約法8条~12条に基づき,就業規則を下回る条件となっていないか等も別途確認する必要がある。

診断書の作成日,療養期間,復職可能日及び休職期間の区別は,休業診断書をどう読むか――作成日,療養期間,専門科検査,復職可能日及び産業医意見の区別(AI作成)で整理している。

(続きを読む...)休職通知書に記載すべき事項――適用条項,期間,賃金,復職手続及び満了時の取扱い(AI作成)

休職・欠勤中の社員に受診を命じられるか――指示に従う義務の根拠,指定医の受診及び拒まれた場合の対応(AI作成)

第1 受診を求める場面と拒まれた場合の対応

1 指定医の受診と診療情報提供への同意を分ける
2 拒否と条件付き同意への対応
3 協成事件から分かることと分からないこと
4 主治医と指定医の結論が異なるときの照合事項

第2 関連記事第3 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 法令に基づく指針4 実務書
第1 受診を求める場面と拒まれた場合の対応

社員が療養中で,会社が医学的な資料を得たい場面では,本人に受診や情報提供を求めることになる。
本人が応じない場合に,何を根拠にどこまで求められるかは,休職中か欠勤中かによって使える条項が異なり,裁判例の射程も限られている。
以下では,その順序と限界を整理する。

本人が受診や追加の情報提供に応じない場合も,確認の目的,不足している事項及び規程上の根拠を示し,より限定した確認方法を検討する。

検討の順序としては,裁判例を参照する前に,自社の規程に,休職者に限らず適用される健康管理上の条項がないかを確認する。傷病による欠勤が一定日数以上に及ぶ場合の診断書提出義務,会社が必要と認めた場合に指定医の診断を受けさせることができる旨の定め,健康管理上必要と認めたときに受診及び結果の報告を命じることができる旨の定めが置かれていることがある。復職手続に関する条項が休職者にしか及ばないのに対し,これらは在籍者一般に及ぶ形で置かれていることが多い。その場合,拒否したときの効果が定められているかも併せて確認する。

精神的不調による欠勤が疑われるときは,直ちに懲戒の問題として処理しないことが重要である。

受診や資料提出が進まないときは,本人が拒否しているのか,病状,費用,予約事情又は説明の不明確さによって対応できないのかを確認する。

必要性を説明し,質問範囲の限定や提出時期の調整等を検討した経緯も記録する。

受診命令の有効性,取得できる医療情報の範囲,労務提供能力及び懲戒・雇用終了の有効性は,それぞれ検討すべき問題である。

受診を求める措置そのものの適否は,懲戒の適否とは別に検討する。最高裁昭和61年3月13日第一小法廷判決(昭和58年(オ)第1408号・集民147号237頁)は,健康管理規程等により労働契約上その健康回復を目的とする健康管理従事者の指示に従う義務がある職員について,当該検診が疾病の治癒回復という目的との関係で合理性ないし相当性を肯定し得る限り,病院又は担当医師の指定及び実施時期の指示を含めて,これに従う義務があるとした。

したがって,受診を求める場合は,①労働契約上その指示に従う義務の根拠と,②求める検査又は面談が目的との関係で合理性・相当性を有することを,それぞれ確認する必要がある。

もっとも,就業規則に定めがなければおよそ求められないというわけではない。東京高裁昭和61年11月13日判決(昭和59年(行コ)第74号・労働判例487号66頁。裁判所HP未掲載)は,休職中の従業員が自らの疾病は業務に起因すると主張したのに対し,会社が専門医を指定して受診を指示した事案について,就業規則等に指定医受診の定めがないことを前提としつつ,労使間における信義則ないし公平の観念に照らし合理的かつ相当な理由のある措置であるとして,指定医の受診を指示することができ,労働者はこれに応ずる義務があるとした。同判決は,最高裁昭和63年9月8日第一小法廷判決(昭和62年(行ツ)第32号,第33号・労働判例530号13頁。裁判所HP未掲載)により維持されている。

ただし,同事件で合理的かつ相当な理由が認められたのは,業務起因性の有無が以後の処遇に直接影響したことに加え,本人が当初提出した診断書を作成した医師自身が,会社に対して業務に起因するものではないと説明したという食い違いがあったためである。また,同事件は労働組合法7条の不当労働行為の成否が争われたものであり,受診の指示に関する判断は理由中でされている。会社と主治医の判断が食い違っていない段階について,同判決から一般に指定医の受診を求め得るとまでいうことはできない。

会社が自らの判断のために指定医の受診を求めるときは,費用を会社負担とし,主治医の受診とは建付けを分けておくと,措置の相当性を説明しやすい。

最高裁平成24年4月27日第二小法廷判決(平成23年(受)第903号・日本ヒューレット・パッカード事件)は,当該精神的不調の下での欠勤について,健康診断や治療・休職等の検討を経ずに行った諭旨退職を,懲戒事由を欠くものとして無効とした。

この判決は,あらゆる受診拒否や欠勤を免責する判断ではなく,当該欠勤の原因・経緯と会社の対応を踏まえたものである。

なお,労働安全衛生法68条及び同規則61条による就業禁止は,病気一般を対象とするものではなく,規則に定める疾病等に該当するかが問題となる。

同規則による就業禁止には,あらかじめ産業医その他専門の医師の意見を聴く必要があり,安全確保の措置を検討することと,無給休職の根拠・期間を決めることは分けて考えるべきである。

この点,治療と就業の両立支援指針2は,同法68条及び同規則61条1項の就業禁止について,これらの規定が「当該労働者の疾病の種類,程度及びこれらについての産業医等の意見を勘案の上,可能な限り配置転換,作業時間の短縮その他の必要な措置を講ずることによって就業の機会を失わせないようにし,やむを得ない場合に限り就業を禁止するものとする趣旨であり,種々の条件を十分に考慮して慎重に判断すべきものである」としている。同指針は,労働安全衛生法62条が,中高年齢者その他労働災害の防止上その就業に当たって特に配慮を必要とする者について,心身の条件に応じた適正な配置を求めていることにも言及している。

1 指定医の受診と診療情報提供への同意を分ける

(続きを読む...)休職・欠勤中の社員に受診を命じられるか――指示に従う義務の根拠,指定医の受診及び拒まれた場合の対応(AI作成)

試し出勤が有効な場合と有効でない場合-疾患別・職種別の復職判断(AI作成)

第1 試し出勤の有効性は疾患名ではなく確認できる事実で決まる1 結論2 本記事の対象と基準時3 五つの条件を満たす場合に有効性が高い第2 疾患と職務を掛け合わせる判断方法1 疾患名から一律の結論を出さない2 疾患側の四つの軸3 職務側の四つの軸4 変動性と危険性の四象限第3 休職原因となった疾患ごとの分析1 うつ病,適応障害,不安障害等のメンタルヘルス不調2 がん及びがん治療後3 脳卒中,脳外傷及び高次脳機能障害4 心疾患及び循環器疾患5 糖尿病6 肝疾患7 難病その他の症状が変動する慢性疾患8 腰痛,頸肩腕障害その他の筋骨格系疾患9 疾患別分類に載っていない疾患第4 職種及び職務負荷ごとの分析1 一般事務,経理,IT及び知識労働2 接客,電話,窓口,営業及び苦情対応3 介護,看護,製造,建設,運搬その他の身体負荷が高い仕事4 運転,高所,危険機械,医療安全その他の安全上重要な仕事5 夜勤,交替制,不規則勤務,出張及び長時間労働6 在宅勤務及びハイブリッド勤務7 管理職,専門職及び職種限定のある社員第5 有効な試し出勤の設計1 仮説,観察事項及び判断後の対応を先に決める2 実際の職務との一致を示す3 中止基準を失敗扱いしない4 一回の結果を合否にしない5 試し出勤を行わない方がよい場合第6 法的な位置付けと裁判例1 試し出勤は一律の法定義務ではない2 東京高裁平成28年9月12日判決3 東京地裁八王子支部平成6年5月25日判決4 片山組事件最高裁判決第7 医学研究から分かることと分からないこと1 直接分かること2 直接分からないこと第8 実務上の確認順序1 実施前2 実施中3 実施後第9 出典1 法令2 法令に基づく指針3 所管行政機関の解説・運用資料4 裁判例5 医学文献
第1 試し出勤の有効性は疾患名ではなく確認できる事実で決まる
1 結論

試し出勤が有効であるのは,復職可否を判断するために残っている具体的な不確実性を,安全な方法で減らせる場合である。
例えば,通勤を継続できるか,現実の職場で注意・集中を保てるか,作業後の疲労が翌日までに回復するか,勤務条件を調整すれば安定して働けるかが,診察や自宅生活だけでは分からない場合には,目的を絞った試し出勤が役立つ。

反対に,試し出勤をしても判断に必要な情報が増えない場合,実際の職務と異なる活動しか行わない場合又は試すこと自体に許容できない危険がある場合には,試し出勤の有効性は低い。
一度出勤できたことを完全復職の証明としたり,予定を一部こなせなかったことを復職不可の自動的な根拠としたりする運用も適切ではない。

本記事でいう「有効」とは,制度又は合意の法的な有効・無効ではなく,復職判断に必要な情報を得る方法として有用であるという意味である。
試し出勤中の給与,最低賃金,労災・通勤災害及び傷病手当金については,「休職中の試し出勤制度―給与・最低賃金,労災・通勤災害及び傷病手当金の取扱い(AI作成)」で扱っている。

2 本記事の対象と基準時

本記事は,民間企業における私傷病休職中の社員について,正式な復職決定の前に行う職場での試し出勤を中心に,模擬出勤及び通勤訓練も必要に応じて扱う。
令和8年9月2日現在の法令,公表資料及び医学文献に基づく整理であり,就業規則,労働契約,疾患の状態及び職務内容によって個別の結論は異なる。

3 五つの条件を満たす場合に有効性が高い

試し出勤の有効性が高いのは,①確認したい事項が具体的であること,②復職後に予定される職務又は職場環境と対応していること,③安全に中止又は変更できること,④必要な配慮を試して比較できること,⑤結果を一回の合否ではなく他の資料と合わせて評価することという五つの条件を満たす場合である。
この五条件は前記指針の文言をそのまま列挙したものではなく,本記事が公的資料及び医学研究を横断して整理した実務上の評価枠組みである。

厚生労働省の「治療と就業の両立支援指針」は,試し出勤制度を,長期休業者の勤務時間又は勤務日数を短縮して円滑な復帰を支援し,本人と職場の不安を解消して具体的な準備を行うための事業主の自主的な制度としている。
したがって,単に出勤日数を消化させるのではなく,何を確認し,どの条件を整えるための期間であるかを決める必要がある。

第2 疾患と職務を掛け合わせる判断方法
1 疾患名から一律の結論を出さない

同じ疾患でも,症状,治療内容,副作用,後遺症,回復経過及び日内・日間の変動は人によって異なる。
また,同じ「事務職」でも,定型入力を自分のペースで行う仕事と,締切の下で複数案件を判断しながら顧客対応をする仕事とでは,必要な能力及び失敗時の影響が異なる。

前記指針は,疾病を理由に安易に就業を禁止せず,主治医及び産業医等の意見を勘案して,可能な限り配置転換,作業時間の短縮その他の措置を検討する一方,就業による増悪,再発及び労働災害を防止することを就業の前提としている。
このため,診断名の一覧表ではなく,社員の現在の機能と具体的な職務負荷を照合する必要がある。

2 疾患側の四つの軸

疾患側では,①症状及び機能制限が現在どの程度安定しているか,②一日の中又は日ごとの変動があるか,③治療及び服薬による時間的制約又は副作用があるか,④負荷による増悪又は重大な事故の可能性があるかを確認する。

医学的な就業可否は主治医等が判断する事項であり,会社が試し出勤によって診断又は治療効果を判定するものではない。
会社が確認するのは,医学的意見で許容された範囲内で,具体的な職務及び配慮が継続可能かという職務適合の事実である。

3 職務側の四つの軸

職務側では,①身体的負荷,②認知的・心理的負荷,③勤務時間及び通勤を含む時間的負荷,④失敗が本人,同僚,顧客又は公衆に与える危険の大きさを確認する。

厚生労働省の「治療と就業の両立支援指針・解説及び疾病別留意事項」の様式例は,立位,重量物,暑熱・寒冷・屋外,振動工具,不特定多数との対面,病原体,呼吸用保護具,単独作業,高所,危険な機械操作,自動車運転,残業,出張及び夜勤を職務情報として主治医に伝える構造である。

(続きを読む...)試し出勤が有効な場合と有効でない場合-疾患別・職種別の復職判断(AI作成)

試し出勤を拒否・中止・失敗した社員の復職可否-協力義務,判断資料及び休職期間満了(AI作成)

第1 試し出勤の拒否・中止・失敗だけで復職不可とは決まらない

1 最初に確認すべき結論

2 三つの問題を分ける

3 本記事の対象と基準時

第2 試し出勤への協力を求める範囲

1 就業規則と個別計画が出発点となる

2 両立支援は社員本人の申出と対話を基礎とする

3 一般的な協力義務と個別の法的義務を区別する

4 障害に関係する場合は合理的配慮の手続を重ねる

第3 拒否・中止・失敗を同じ事実として扱わない

1 試し出勤を拒否した場合

2 試し出勤を中止した場合

(続きを読む...)試し出勤を拒否・中止・失敗した社員の復職可否-協力義務,判断資料及び休職期間満了(AI作成)

休職中の試し出勤制度―給与・最低賃金,労災・通勤災害及び傷病手当金の取扱い(AI作成)

第1 試し出勤で最初に区別すべきこと1 この記事の対象と結論2 模擬出勤,通勤訓練及び職場での試し出勤第2 制度の法的位置付けと実施手順1 令和8年4月からの法定指針2 開始前に書面で決める事項第3 給与と最低賃金1 実際の労務提供がない場合2 実際の労務提供がある場合3 最低賃金と従前の契約賃金は別の問題である4 賃金精算と給与課税・源泉徴収第4 労災と通勤災害1 職場で事故が起きた場合2 通勤訓練中の事故第5 傷病手当金1 出勤した事実だけで直ちに支給が止まるわけではない2 労務不能の判断と報酬による調整を分ける3 申請時に会社が残す記録第6 就業規則と個別計画の点検事項1 制度規程に置く基本事項2 実施中に越えてはならない境界第7 出典・参考資料1 法令・告示2 裁判例・行政裁決3 法令に基づく指針4 所管行政機関の解説・Q&A・運用資料5 関連記事
第1 試し出勤で最初に区別すべきこと
1 この記事の対象と結論

本記事は,私傷病で休職中の社員が正式な復職決定の前に行う模擬出勤,通勤訓練及び職場での試し出勤について,令和8年9月1日現在の法令及び公表資料に基づき,給与,最低賃金,労災・通勤災害並びに傷病手当金の取扱いを整理するものである。
短時間勤務等による正式な復職後は通常の就労であり,休職中の試し出勤とは区別する。

「試し出勤」という名称だけで無給か有給か,労災保険が適用されるか,又は傷病手当金が支給されるかが決まるわけではない。
使用者の指示の有無,行った作業の内容,会社の事業への有用性,時間及び場所の拘束,賃金又は報酬の有無,主治医等の意見並びに制度の目的を具体的に確認する必要がある。

2 模擬出勤,通勤訓練及び職場での試し出勤

厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は,正式な職場復帰決定前の取組を,①図書館やデイケア等で軽作業を行う模擬出勤,②自宅から職場付近まで移動して帰宅する通勤訓練,③本来の職場等へ試験的に継続して出勤する試し出勤に分けている。
この区別は,会社施設へ入ったかどうかだけでなく,実際の業務を行ったかを検討する出発点となる。

職場に滞在しても,私物の読書や体調記録だけで,使用者が業務上の指示をせず,成果を会社が利用しない場合は,労務提供に当たらないことがある。
反対に,資料作成,電話対応,データ入力,顧客対応又は同僚の業務補助等を命じ,通常業務の一部として成果を受け取る場合は,「訓練」と呼んでいても労務提供と評価される可能性が高くなる。

第2 制度の法的位置付けと実施手順
1 令和8年4月からの法定指針

労働施策総合推進法27条の3第1項は,治療を受ける労働者について,事業主が相談対応の体制整備その他の必要な措置を講ずる努力義務を定めている。
同条2項に基づく「治療と就業の両立支援指針」は令和8年4月1日から適用され,試し出勤制度を,長期間休業した労働者の円滑な職場復帰を支援するため,勤務時間又は勤務日数を短縮して試し出勤等を行う自主的な勤務制度と位置付けている。

同指針は,支援を労働者本人の申出から始めることを基本とし,事業主が措置を一方的に判断しないこと,主治医及び産業医等の意見を踏まえること,本人の同意を得た上で必要な健康情報を共有することを求めている。
試し出勤も,会社が一方的に命じる適性試験ではなく,治療と就業の両立を支える個別の計画として実施するのが適切である。

2 開始前に書面で決める事項

本記事では,試し出勤の制度根拠を就業規則等で定め,個々の社員については開始前に実施計画を作成する形を基本とする。
私傷病休職の開始時の取扱いは,私傷病休職の開始時に使用者が確認すべき事項で整理している。

実施計画では,①目的,②開始日及び終了予定日,③出勤日,滞在時間及び場所,④行う活動と禁止する業務,⑤指揮命令者,⑥給与,交通費及び社会保険上の取扱い,⑦事故時の連絡及び受診手順,⑧主治医又は産業医等の意見,⑨健康情報を扱う者の範囲,⑩中止基準,⑪評価日,⑫正式な復職判断とは別手続であることを明確にする。
実施中に予定外の業務を依頼した場合は,その時点から労働時間,賃金,災害補償及び傷病手当金への影響を再検討する必要がある。

第3 給与と最低賃金
1 実際の労務提供がない場合

模擬出勤又は通勤訓練として,社員が任意に生活リズムや通勤可能性を確認するだけで,会社の指揮命令下における作業を行わない場合は,その時間について当然に賃金請求権が発生するとは限らない。
もっとも,就業規則,労働契約又は実施計画で手当,交通費その他の支給を約束したときは,その定めに従うことになる。

無給で行う場合は,会社の利益となる仕事をさせないことを実際の運用でも徹底しなければならない。
名称だけを「リハビリ」「見学」又は「試し」としながら,通常業務の一部を割り当てる運用は,無給とする根拠にはならない。

2 実際の労務提供がある場合

(続きを読む...)休職中の試し出勤制度―給与・最低賃金,労災・通勤災害及び傷病手当金の取扱い(AI作成)

社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項(AI作成)

目次

第1 最初に確認する休職の根拠と就業の可否第2 就業規則と休職開始日の確認1 会社の規程と本人の適用条件2 年休・欠勤・休職の日付を分ける第3 診断書と具体的な仕事を照合する1 医師に伝える仕事と尋ねる事項2 他の業務への配置可能性3 本人が受診等に応じない場合4 医療情報の取得と共有の範囲第4 業務上の傷病の可能性を確認する第5 休職通知で伝える事項第6 給与・傷病手当金・社会保険料1 無給扱いと休業手当を区別する2 傷病手当金の申請と時効3 社会保険料と立替金の精算第7 休職中の連絡と復職の準備第8 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 法令に基づく指針4 公的な解説・行政資料5 実務書
第1 最初に確認する休職の根拠と就業の可否

社員から療養を要する診断書が提出されたときは,休職の必要性と,会社の制度上いつから休職にするかを分けて確認することが重要である。

本記事では,民間企業の使用者が休職開始時に確認する事項を,①就業規則,②具体的な就労能力,③業務上の傷病の可能性,④休職通知,⑤金銭負担,⑥連絡と復職の準備の順に整理する。

以下で述べる手順は,法令上の義務ではなく,公開されている法令,裁判例及び行政資料を踏まえた提案である。

令和8年9月6日現在,労働施策総合推進法27条の3に基づく治療と就業の両立支援措置は,同年4月1日から事業主の努力義務となっている。

同時に適用された厚生労働省の治療と就業の両立支援指針は,長期休業の開始前に,賃金を含む制度,休業可能期間及び復帰手順を本人に説明する流れを示している。

この努力義務は,希望どおりの有給休職を一律に認める義務ではない。

他方,労働契約法5条の安全配慮義務は別に問題となるため,努力義務だから個別の健康上の危険に対応しなくてよいということにもならない。

本人から診断書や休職の申出がない場合でも,過重な業務が続き,体調悪化や欠勤等を会社が把握しているときは,申出を待つだけで対応を終えてはならない。

最高裁平成26年3月24日第二小法廷判決(平成23年(受)第1259号・東芝事件)は,過重な業務が続き体調悪化が認められる状況では,精神的健康に関する情報の積極的な申告を期待し難いことを前提に,業務軽減等の配慮をする必要があると述べている。

なお,この説示は理由中のものであり,同判決の裁判要旨は過失相殺に関するものである。同事件については,差戻後の控訴審判決(東京高裁平成28年8月31日判決・平成26年(ネ)第2150号)が別にある。

勤務時間,担当業務,欠勤及び本人の具体的な訴えを記録し,医師への相談や業務負担の軽減等の必要性を検討することになる。

もっとも,安全確保のために対応を始めることと,就業規則に基づく無給の休職を発令することは,別々に根拠を確認する必要がある。

第2 就業規則と休職開始日の確認
1 会社の規程と本人の適用条件

休職の定義,期間の制限及び復職等について労働基準法に定めはない。まず自社の就業規則,雇用契約及び適用対象を確認し,休職事由,必要な欠勤日数,勤続期間による違い,申請又は命令の手続,休職期間及び再休職時の通算規定を確認する。規程によっては,「欠勤」の定義や休職期間との通算の定めがなく,長期の欠勤から就業を再開する場合の手続も置かれていないことがあるため,これらの定めの有無も併せて確認する。

休職・復職・満了時の扱いを就業規則によって定める場合は、その規定が労働契約の内容となる根拠も確認する。労働契約法7条は、合理的な労働条件を定める就業規則を労働者に周知していた場合、原則としてその内容が労働契約の内容になると定める。就業規則に書かれているというだけで足りず、周知、合理性、個別合意及び適用対象を確認する。

休職事由が複数の号に分かれている場合,どの号を適用するかによって,休職期間の上限だけでなく,期間が満了したときの効果も変わることがある。会社の判断による号の休職を先に命じると,長期欠勤を要件とする号の日数が積み上がらなくなることもあるため,二つの号の接続を先に確認する。本人が診断書を提出して療養している期間は,休職を命じなくても就労しない状態に変わりはない。そのため,会社の判断による号の休職を先に命じる実益は,主として,その期間中に本人が就業を申し出た場合の取扱い(後記第6の1)にあり,休職を命じる時期は,この実益と二つの号の接続の問題とを比べて決めることになる。

詳細は,休職事由の号の選び方――満了時の効果,欠勤要件の通算及び就業規則の不利益変更(AI作成)で整理している。

2 年休・欠勤・休職の日付を分ける

診断書の作成日,療養を要するとされた期間の初日,実際の欠勤開始日及び就業規則上の休職開始日は,同じとは限らない。年休の申出と残日数,欠勤期間の算定方法及び休職への移行条件を別々に確認し,開始日と満了予定日を計算する。

診断書に記載された療養期間は,その期間が経過すれば就業できるとの判断まで示すものとは限らない。治療と就業の両立支援指針5(5)アも,治療の見込みが立てやすい疾病については,休業開始の時点で主治医や産業医等の助言を得ながら休業終了の目安を把握することを示している。診断書の期間を超えて休職期間を定める場合は,症状の経過,予定されている検査及び医師の意見を確認する時期等,その期間を定めた根拠を記録しておく。あわせて,期間の途中でも復職を申し出られることを本人に示しておけば,後に就業可能とする診断書が提出されたときも,休職期間の設定の当否ではなく,復職の申出に速やかに対応したかという問題として検討しやすくなる。

休職に入れば労働義務のない日となるため,年次有給休暇を取得することも,使用者が時季を指定して与えることもできなくなる。休職開始前の取得の意向,次の基準日の出勤率及び2年の時効を併せて確認しておく必要がある。

詳細は,休職と年次有給休暇の関係――休職前の取得,年5日の時季指定,出勤率及び2年の時効(AI作成)で整理している。

第3 診断書と具体的な仕事を照合する
1 医師に伝える仕事と尋ねる事項

治療と就業の両立支援指針5(1)~(3)は,仕事の情報を主治医に伝えて意見を得た上で,産業医等の意見,本人の意向及び職場の状況を踏まえて事業主が判断する流れを示している。産業医等がいない場合は,主治医から提供された情報を参考とする。

「療養を要する」「就労可能」との記載だけでは判断に必要な情報が不足するため,実際の作業と負荷,可能な勤務の条件,制限の程度と期間,及び再評価の時期を分けて尋ねる。質問は,休職又は就業のどちらかへ誘導しない。

休職・復職面談では,通勤への支障,服薬による眠気・ふらつき,通常業務のうち支障のある作業及び本人が希望する配慮を,就業判断に必要な範囲で確認する。

(続きを読む...)社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項(AI作成)

裁判所職員の病気休職──統計・公務災害補償・国会答弁の資料整理(AIリライト)

本記事は,裁判所職員(裁判官及び一般職の裁判所職員)の病気休職,とりわけ精神疾患による休職について,国会答弁,情報公開請求で得られた統計及び不開示の事実,過労自殺をめぐる使用者の安全配慮義務,並びに国家公務員災害補償制度に基づく公務災害の補償・審査手続を整理した資料である。裁判所が公表し,又は開示した文書を出発点とし,関係する法令・裁判例の原典を併せて示す。数値は開示文書及び国会答弁資料に基づく。

目次

第1 裁判所職員の病気休職に関する国会質疑
第2 精神疾患による休職・長期病休の統計

1 精神疾患による休職発令数(平成21年度~平成29年度)
2 精神疾患による90日以上の長期病休者数(平成30年~令和4年)
3 裁判所別の内訳を示す文書は存在しないこと

第3 過労自殺と使用者の安全配慮義務

1 予見可能性と相当因果関係
2 過失相殺・素因減額の限定
3 退職強要と精神障害の労災認定

第4 裁判所職員の公務災害補償の仕組みと不服申立て

1 実施機関による認定と補償
2 認定に不服がある場合の審査申立て
3 公務災害認定の実際

第5 最高裁判所に存在しないとされた文書
第6 当事者の不当要求・カスタマーハラスメント

(続きを読む...)裁判所職員の病気休職──統計・公務災害補償・国会答弁の資料整理(AIリライト)