目次
第1 休職中の無給だけでは,賞与と退職金は決まらない1 この記事の対象と結論2 会社が払う額と,税務上の計算を分ける第2 就業規則と各制度の規程を一緒に読む1 制度の根拠と適用される版2 同じ「勤続」でも用途を確認する第3 休職中の賞与を確認する順序1 無給条項と賞与の支給条件2 「別途取扱い」の内容を探す3 欠勤の扱いと,実際の仕事への評価第4 休職期間満了時の退職金を確認する順序1 勤続年数,基本給及びポイント2 自然退職と自己都合の支給率3 雇用終了の効力と,金額の計算第5 退職所得控除の勤続年数は別に計算する1 会社の除算と税務上の勤続年数2 前提を限定した計算例第6 賞与と退職金の税務処理・引継資料1 退職後に払う賞与を退職金へまとめない2 弁護士と税理士・給与担当者が共有する事項第7 関連記事第8 出典1 法令・行政通達2 行政機関の解説・規程例
第1 休職中の無給だけでは,賞与と退職金は決まらない
1 この記事の対象と結論
私傷病で休職した社員について,「休職中は無給」「休職期間は勤続に算入する」という就業規則の記載だけから,賞与や退職金の額まで決めることはできない。
毎月の賃金,昇給,賞与,退職金の算定及び税務上の勤続年数は,それぞれの根拠に沿って確認する必要がある。
本記事は,令和8年10月14日現在の法令及び公表資料に基づき,民間企業の私傷病休職に伴う賞与・退職金の確認方法を整理する。
公務員の退職手当,役員退職金,産前産後休業・育児介護休業の特別な不利益取扱い規制及び業務上の傷病は,別の検討を要する。
以下の資料確認や計算表の作り方は,個別の規程を正確に適用するための実務上の提案である。
2 会社が払う額と,税務上の計算を分ける
最初に,会社が契約・規程に基づきいくら支払うべきかを確認する。
次に,支払う金銭が給与所得か退職所得か,退職所得控除に用いる勤続年数が何年かを確認する。
会社の退職金算定で休職期間を除いていても,その年数を税務計算へそのまま転記してはならない。
第2 就業規則と各制度の規程を一緒に読む
1 制度の根拠と適用される版
労働契約法7条は,合理的な労働条件を定めた就業規則の周知と,個別の合意との関係を定めている。
本則だけでなく,賃金規程,等級・評価規程,賞与規程,退職金規程,個別の雇用契約及び労働協約を確認する。
社員区分ごとの適用対象と,休職時・評価時・支給時の各版を対応させることが重要である。
労働基準法89条は,常時10人以上の労働者を使用する使用者について,就業規則の作成・届出を定める。
退職手当の定めをする場合の適用範囲・計算・支払方法等は同条3号の2,臨時の賃金等の定めは4号の記載事項である。
厚生労働省のモデル就業規則67頁・75頁も,賞与・退職金の制度を必ず設ける義務とは区別して,制度を設けた場合の条件の明確化を説明している。
2 同じ「勤続」でも用途を確認する
確認する用途見る規程・資料混同しやすい点休職できる期間の区分休職規程,入社日,区分判定日支給額の算定年数とは限らない昇給・等級・評価昇給条件,評価期間,等級規程在籍していることと評価対象の実績は別である賞与算定対象期間,在籍条件,査定・出勤係数月給が無給でも賞与まで当然にゼロとはならない会社の退職金勤続除算,ポイント,退職区分,支給率本則の勤続算入条項だけで算定を完結させない退職所得控除実際の勤務関係,過去の退職金,税法・通達会社の除算後の年数をそのまま使わない
本則が勤続算入を定め,別の制度が休職期間の除算やポイントの停止を定めている場合は,それぞれの対象と,相互の参照関係を確認する。
単に「別規程があるから優先する」と決めず,契約内容,条項の整合性,周知及び変更の経緯を検討する。
適用される就業規則の最低基準を下回る個別合意には,労働契約法12条の問題も残る。
第3 休職中の賞与を確認する順序
1 無給条項と賞与の支給条件
賞与では,①具体的な支給条件・算式,②算定対象期間,③支給日に在籍すること等の条件,④休職者の特則,⑤会社業績と個人評価を確認する。
「休職中の給与は支給しない」という条項が賞与にも及ぶかは,用語の定義と賞与規程との関係を読む必要がある。
無給休職という名称だけから,算定期間中に勤務した部分や既に成立した賞与請求権まで失われたと判断しない。