第1 傷病手当金の申請と時効第2 関連記事第3 出典・参考資料1 法令2 公的な解説・行政資料
休職中の社員の生活を支えるのは,多くの場合,健康保険の傷病手当金である。会社が休職と呼ぶ期間と給付の対象となる期間は一致しないため,待期の数え方,支給期間の通算,退職後の継続給付及び時効を,それぞれ分けて確認する必要がある。
支給要件,金額の計算,支給期間の数え方,退職後の継続給付並びに障害年金,出産手当金,労災保険及び雇用保険との調整の詳細は,傷病手当金とは―支給要件,金額の計算,退職後の継続給付及び障害年金・失業保険との関係で整理しており,本記事では,休職中の社員について会社が確認すべき点に絞って説明する。
第1 傷病手当金の申請と時効
健康保険法99条は,被保険者が療養のため労務に服することができない場合,連続する3日間の待期を経た4日目以降の対象日について傷病手当金を支給する仕組みを定めている。
協会けんぽの案内では,待期には年次有給休暇や公休日も含まれるとされており,会社が休職と呼ぶ期間の初日から数えるとは限らない。
また,傷病手当金は療養のため労務に服することができない場合の給付であるから,主治医が就業可能とする一方で会社の判断により就業させない期間について,この要件を当然に満たすとはいえない。労務不能の判定は保険者が行うが,就業を止めるかどうかを検討する際は,賃金請求の問題だけでなく,本人が賃金も給付も受けられない状態となる可能性も併せて確認する必要がある。
1日当たりの額は,原則として,支給開始月以前の直近の継続した12か月間の標準報酬月額の平均額を30で除した額の3分の2である。
加入期間が12か月未満の場合には別の算定規定があり,端数処理もあるため,単純に現在の手取り給与の3分の2として案内しないことが重要である。計算例と,加入期間が12か月未満の場合に用いる平均額は,傷病手当金とは―支給要件,金額の計算,退職後の継続給付及び障害年金・失業保険との関係の第4で示している。
健康保険法108条により,報酬を受けられる期間は傷病手当金との調整が行われ,報酬額が傷病手当金より少なければ差額支給の対象となる。
したがって,給与が少しでも出れば必ず全額不支給になるとは限らず,年休を含め,対象日ごとの給与の取扱いを正確に確認する。
年次有給休暇の付与日数,年休賃金及び傷病手当金との調整については,年次有給休暇の付与日数,取得方法,年5日義務及び時季変更権を参照されたい。
同一の傷病についての支給期間は,支給開始日から通算して1年6か月であり,会社の休職可能期間とは別である。
実務上は,休職制度が終了する日と給付が終了する日を,別々に説明することが重要である。
例えば,「傷病手当金は1年6か月出るので,無理して働く必要はない」といった説明は,本人に,雇用も1年6か月続くと受け取られるおそれがある。
休職期間が3か月等と短い規程では,後に休職期間満了による退職が争われたときの材料にもなるので,給付の期間と休職期間を並べて示すのが適切である。
また,健康保険法104条は,資格喪失日の前日まで引き続き1年以上被保険者であった者が,その資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けているときは,被保険者として受けることができるはずであった期間,継続して同一の保険者からその給付を受けることができるとしている。
休職期間の満了により退職する可能性がある場合も,退職すれば当然に給付が終了すると案内せず,被保険者期間の長さと,資格喪失時に傷病手当金を受けているか,報酬を受けているために支給が停止されているにとどまるかを確認する必要がある。
協会けんぽは,退職日に出勤したときは継続給付を受ける条件を満たさないとしている。また,退職後にいったん労務可能となった場合は,治癒しているか否かを問わず,同一の傷病により再び労務不能となっても傷病手当金は支給されない。
休職期間の満了日に挨拶や引継ぎのための出社を求めると,本人の継続給付を失わせることになる。継続給付の要件は,傷病手当金とは―支給要件,金額の計算,退職後の継続給付及び障害年金・失業保険との関係の第6で整理している。
健康保険法193条及び協会けんぽのFAQ問2によれば,傷病手当金は労務不能であった日ごとにその翌日から2年で時効となる。
このため,休職の終了まで申請を待つ運用は避け,対象期間の勤務・給与の記録を確認して申請を進めるのが適切である。
健康保険法施行規則84条は,申請に必要な療養担当者の意見と,労務に服さなかった期間や報酬等についての事業主の証明を定めている。
実務上は,本人,医療機関及び会社の担当部分を開始時に説明し,勤務・給与の記録に基づいて申請書を作成できる体制を整えるのが適切である。
休職期間中も使用関係が続く限り被保険者資格は失われず,事業主と被保険者は,賃金の支給が停止される前の標準報酬に基づく保険料を折半して負担する(健康保険法161条,昭和26年3月9日保文発第619号)。無給の期間に給与から控除できない本人負担分の支払方法と,復職後の給与から立替金を控除する場合の制約は,社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項の第6の3で整理している。
健康保険法55条1項により,同一の傷病について労災保険の相当する給付を受けられる場合には,健康保険の給付との調整が問題となる。
私傷病として傷病手当金を申請した後に業務上の傷病と判断された場合も,保険者及び労働基準監督署に手続を確認し,会社だけで返還額を確定したり,申請を一律に止めたりしないことが適切である。業務上か業務外かの判断がつかない間も,労災保険の請求と並行して傷病手当金を申請することができ,健康保険の給付を受ける権利の時効は労災保険の決定を待たずに進むので,申請を止めると本人が給付を失うおそれがある。関係する裁判例は,傷病手当金とは―支給要件,金額の計算,退職後の継続給付及び障害年金・失業保険との関係の第7の3で説明している。
第2 関連記事
休職の開始時に確認すべき事項の全体像は,社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項で整理している。
社会保険の加入・保険料・資格取得喪失は,社会保険の加入・保険料・資格取得喪失と士業の適用で説明している。
(続きを読む...)休職中の傷病手当金――待期,通算1年6か月,退職後の継続給付及び2年の時効(AI作成)