第1 結論第2 最初に区別する日付1 作成日・診察日・療養期間2 検査日・結果判明日・再評価日3 復職判定日・休職満了日第3 連続する診断書の比較方法1 原本を時系列に並べる2 確定事項・暫定事項・未確認事項を分ける第4 主治医に提供する情報と尋ねる事項1 仕事内容を具体化する2 回答を求める事項第5 主治医・産業医等・事業主の役割第6 照会同意と健康情報の共有範囲1 照会先が変わる場合2 現場に伝える情報を限定する第7 休職通知・復職判断との接続第8 実務チェックリスト第9 関連記事第10 出典・参考資料
第1 結論
休業診断書は,診断書の作成時点で医師が把握した医学的事項を示す重要な資料であるが,診断名又は「療養を要する期間」だけで復職日や配置を自動的に決めるものではない。
会社は,診断書の作成日,診察日,療養期間,今後の検査,医師が想定した仕事及び再評価時期を分けて確認し,必要な勤務情報を主治医に提供した上で,産業医等の意見,本人の意向,職場の状況及び就業規則を踏まえて判断する。
特に,診断書の作成後に専門科の受診又は検査が予定されている場合,その結果は原則として当該診断書に反映されていない。
また,「○日まで休業を要する」との記載は,翌日から従前業務に制限なく復職できるとの意見と同じではない。
第2 最初に区別する日付
1 作成日・診察日・療養期間
最初に,①診断書の作成日,②医師が本人を診察した日,③療養を要する期間の始期と終期を区別する。
作成日と診察日が異なる場合や,診断書が過去の期間を含んでいる場合には,どの時点の症状と検査結果を前提とした意見かを確認する。
療養期間の終期は,その期間中は就業を避けるべきであるとの医学的意見を示すのが通常である。
しかし,終期の翌日に復職可能であること,従前業務を制限なく行えること又は通勤を含めて安全であることまで当然に示すものではない。
2 検査日・結果判明日・再評価日
診断書の作成後に専門科の受診,画像検査その他の検査が予定されているときは,検査日,結果が判明する見込みの日及び医師が就業可否を再評価できる時期を確認する。
診断書の記載と後日の検査予定を一つの結論として扱わず,「現在の判断」と「今後確認される事項」を分けて記録する。
主治医が結果判明後に改めて意見を述べる予定であるなら,会社は回答期限を一方的に固定するのではなく,休職期間,就業規則上の手続及び安全上の必要性を踏まえて,追加資料の提出時期を本人と調整する。
3 復職判定日・休職満了日
復職の可否を判断する日は,診断書の療養期間末日と一致するとは限らない。
会社が勤務情報を主治医に提供し,主治医の意見書,産業医等の意見,本人との面談及び職場の受入条件を確認するための期間も考慮する必要がある。
就業規則上の休職満了日も,医学上の療養期間とは別の基準である。
診断書の提出だけで休職期間が当然に延長されるわけではなく,会社は適用条項,延長の可否,復職手続及び満了時の取扱いを別に判断し,必要な通知を行う。
第3 連続する診断書の比較方法
1 原本を時系列に並べる
診断書が複数提出された場合は,要約又は口頭説明だけでなく,各診断書の原本又は真正な写しを時系列に並べる。
比較する事項は,作成日,診断名,療養期間,症状又は機能制限の記載,治療・検査の予定,仕事に関する記載及び再評価時期である。
診断名の表現が変わった場合は,病状が悪化したと直ちに推測せず,診療科の変更,検査の進行又は診断書の目的の違いを確認する。
療養期間が延びた場合も,その理由が症状の継続,検査結果待ち,治療計画の変更又は安全な復職条件の未確定のいずれであるかを分けて確認する。
2 確定事項・暫定事項・未確認事項を分ける
診断書と面談記録を読むときは,医師が書面で示した事項,本人が医師から聞いたと説明する事項,会社が観察した事項及び今後の検査で確認される事項を混在させない。
本人又は担当者から「主治医が復職は無理と言った」「検査後なら判断できると言った」と報告を受けた場合は,重要な職場情報として記録しつつ,最終的な就業判断の根拠に用いる部分は書面又は本人同意のある照会で確認する。
口頭説明と診断書の文言が異なるときは,どちらかを直ちに誤りと決めず,医師が把握した勤務内容,説明の対象となった業務及び説明時点を確認する。
第4 主治医に提供する情報と尋ねる事項
1 仕事内容を具体化する
厚生労働省の治療と就業の両立支援指針は,労働者が勤務情報を主治医に提供し,主治医の意見を得た上で,事業主が産業医等の意見も踏まえて就業上の措置を判断する流れを示している。
会社は職種名だけでなく,勤務時間,通勤方法,立位・座位・歩行,重量物,反復動作,暑熱・寒冷,高所,車両運転,危険機械,単独作業及び緊急時の対応を記載する。
通常業務だけでなく,現実に実施できる短時間勤務,作業量の軽減,危険作業の除外,休憩,補助具又は一時的な配置も示す。
実在しない「軽作業」を前提に意見を求めたり,医学的に安全かを医師に尋ねる前に危険作業を試させたりしない。
2 回答を求める事項
主治医には,少なくとも次の事項を尋ねる。
現在の症状,治療予定及び服薬の副作用が通勤又は就業に与える影響現時点で就業可能か,条件付きで可能か,又は休業が必要か避けるべき作業,可能な勤務時間・作業量,必要な休憩その他の配慮措置を要する期間と,次に判断を見直す時期今後予定する検査・専門科受診と,結果判明後に回答が変わる可能性
会社が知りたいのは病名の詳細そのものではなく,具体的な仕事に対して必要となる制限と再評価時期である。
診療録全体を一律に求めず,質問を就業判断に必要な範囲へ限定する。
第5 主治医・産業医等・事業主の役割