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遺留分

旧法の遺留分減殺訴訟における価額弁償の抗弁―誰が選択するか,条件付判決,金銭判決及び評価基準時(AI作成)

目次第1 結論第2 本記事が扱う旧法事案第3 価額弁償の抗弁の基本構造第4 訴訟の三つの分岐第5 平成9年最高裁判決の条件付判決第6 遺留分権利者が価額弁償請求権を行使した場合第7 裁判所の釈明・鑑定と当事者の選択第8 価額弁償額の評価基準時第9 主張立証で確認すべき事項第10 関連記事及び出典
第1 結論

令和元年6月30日までに開始した相続へ適用される旧法の遺留分減殺訴訟では,裁判所が当事者に代わって「現物返還ではなく金銭で解決する」と選択することはできない。

受遺者又は受贈者が旧民法1041条の価額弁償を選択し,裁判所が定める額を速やかに支払う意思を表明してその額の確定を求めた場合,裁判所は,その額が支払われなかったことを条件として現物返還請求を認容する条件付判決をすることができる。これは単純な「引換給付判決」ではない。

他方,受遺者又は受贈者が価額を弁償する旨を表明しただけで,遺留分権利者が価額弁償請求権を行使していない場合,裁判所は無条件の金銭支払を命じることができない。金銭請求権を確定的に取得するには,遺留分権利者による権利行使の意思表示が必要である。

第2 本記事が扱う旧法事案

平成30年法律第72号附則2条により,令和元年7月1日の施行日前に開始した相続には原則として従前の例が適用される。本記事は,旧民法1031条以下の遺留分減殺請求と旧民法1041条の価額弁償を扱う。

令和元年7月1日以後に開始した相続では,民法1046条により当初から遺留分侵害額に相当する金銭請求権が生じるため,本記事の物権的減殺,現物返還及び価額弁償の抗弁という構造は適用されない。

第3 価額弁償の抗弁の基本構造

旧法の遺留分減殺請求には物権的効力があり,減殺の意思表示によって,侵害の限度で目的物の所有権又は共有持分が遺留分権利者へ帰属する。したがって,訴訟の出発点は現物返還又は持分移転登記である。

旧民法1041条は,減殺を受ける受遺者又は受贈者に,目的物の価額を弁償して返還義務を免れる選択肢を与えた。価額弁償は裁判所の裁量による代償分割ではなく,受遺者又は受贈者が行使する抗弁である。

第4 訴訟の三つの分岐
当事者の意思表示権利関係判決の形受遺者等が価額弁償の抗弁を出さない遺留分権利者は現物の権利を有する現物返還・持分移転登記受遺者等が裁判所の定める額を速やかに支払う意思を表明し,額の確定を求める支払までは現物返還請求権が残る不払を条件とする現物返還の条件付判決さらに遺留分権利者が価額弁償請求権を行使する現物の権利を遡って失い,金銭請求権を確定的に取得する金銭支払判決
第5 平成9年最高裁判決の条件付判決

最高裁平成9年2月25日第三小法廷判決(平成6年(オ)第1746号,民集51巻2号448頁)は,受遺者が事実審口頭弁論終結前に,裁判所が定めた価額を速やかに支払う意思を表明し,その額の確定を求めたときは,その主張を価額弁償の抗弁として扱うことができるとした。

同判決が示した主文は,受遺者が裁判所の定めた額を支払わなかったことを条件として,遺留分権利者の現物返還請求を認容するものである。支払と登記を同時履行とする通常の引換給付とは,条件の置き方が異なる。

第6 遺留分権利者が価額弁償請求権を行使した場合

最高裁平成20年1月24日第一小法廷判決(平成18年(受)第1572号,民集62巻1号63頁)は,受遺者等が価額を弁償する旨を表明し,遺留分権利者が価額弁償請求権を行使したとき,遺留分権利者は目的物の所有権及び現物返還請求権を遡って失い,これに代わる価額弁償請求権を確定的に取得するとした。

最高裁令和7年7月10日第一小法廷判決(令和6年(受)第2号)は,受遺者が価額弁償の意思を表明していても,遺留分権利者が価額弁償請求権を行使していない場合,裁判所は無条件の金銭支払を命じることができないと明確にした。

第7 裁判所の釈明・鑑定と当事者の選択

裁判所が,価額弁償の可能性,評価基準時,鑑定の要否又は和解による金銭解決について見解を示すことはある。しかし,その釈明・争点整理・証拠採否だけで,受遺者等の価額弁償の抗弁又は遺留分権利者の価額弁償請求権行使がされたことにはならない。

訴訟記録上は,誰が,いつ,どの意思表示をし,どの請求又は抗弁として陳述したかを区別する必要がある。裁判所が現在価額の鑑定を検討しているという事情だけから,現物返還の法律関係が金銭債権へ変わったと扱うことはできない。

第8 価額弁償額の評価基準時

最高裁昭和51年8月30日第二小法廷判決(昭和50年(オ)第920号,民集30巻7号768頁)は,現実に価額弁償がされる場合はその時の目的物価額により,訴訟で裁判所が額を定める場合はこれに最も近い事実審口頭弁論終結時の価額によるとした。

この基準時は,遺留分侵害の有無及び減殺割合を計算する相続開始時評価とは別である。地価が相続開始後に上昇又は下落していても,両者の評価目的を混同してはならない。

第9 主張立証で確認すべき事項

実務上は,①相続開始日,②減殺の意思表示と到達日,③減殺によって取得した権利の内容,④受遺者等の価額弁償の意思表示,⑤裁判所の定める額を速やかに支払う意思と額の確定を求める陳述,⑥遺留分権利者による価額弁償請求権行使,⑦評価対象,評価時点及び評価資料を時系列で整理する。

準備書面では,「価額弁償の抗弁」「条件付判決を求める陳述」「価額弁償請求権を行使する意思表示」を同じものとして記載せず,主体,時点及び法律効果を分ける必要がある。

第10 関連記事及び出典

評価基準時の全体像は,旧法事案の遺留分減殺請求における遺産の評価基準時を参照されたい。減殺請求後に換地処分があった土地については,相続開始後に遺留分減殺請求をし,その後に換地処分があった土地の評価基準時(AI作成)で説明している。

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相続開始後に遺留分減殺請求をし,その後に換地処分があった土地の評価基準時(AI作成)

目次第1 本件の結論1 相続開始,減殺請求,換地処分の順に検討する2 換地後の価格を相続開始時へ遡らせるわけではない第2 旧法の遺留分減殺請求が適用される範囲1 適用法は減殺請求日ではなく相続開始日で決まる2 減殺請求後は目的土地について共有持分が生じる第3 遺留分を計算するための従前地の評価1 基礎財産は相続開始時に評価する2 相続開始時の事業段階を価格へ反映する第4 減殺請求後の換地処分による権利の移行1 従前地の法律関係は換地へ移る2 遺留分権利者の共有持分も換地へ移る3 清算金は原則として同じ持分割合で按分される第5 換地処分後に価額弁償をする場合1 価額弁償の基準時は相続開始時ではない2 換地処分後は換地の持分を評価する3 清算金の二重計上を避ける第6 事案によって結論が変わる分岐1 金銭解決が裁判所の職権で選ばれるわけではない2 換地が定められなかった場合3 減殺請求前に処分があった場合第7 主張立証及び鑑定で準備する資料1 二つの評価書を区別する2 換地関係資料を時系列でそろえる第8 関連記事1 旧法の評価基準時及び計算方法2 訴額との区別第9 まとめ1 本件では二つの基準時を使い分ける第10 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 土地区画整理事業及び清算金の取扱資料
第1 本件の結論
1 相続開始,減殺請求,換地処分の順に検討する

本記事が扱うのは,①被相続人の死亡により相続が開始し,②遺留分権利者が土地について旧法上の遺留分減殺請求を行い,③その後に土地区画整理事業の換地処分が効力を生じた場合である。
調査基準日は令和8年9月29日であり,令和元年6月30日までに開始した相続へ適用される改正前民法を前提とする。

結論として,土地の評価基準時は,評価の目的によって二つに分かれる。
遺留分侵害の有無及び減殺の割合を決めるための評価は相続開始時であり,その時点の従前地を評価する。
これに対し,換地処分後に旧民法1041条の価額弁償によって現物返還を免れる場合は,原則として現実の弁償時の換地を評価し,訴訟では事実審口頭弁論終結時の換地を評価する。

清算金については,換地処分時までに減殺請求による共有関係が成立していれば,その共有所有権について生じる交付清算金又は徴収清算金は,原則として従前地の共有持分と同じ割合で各共有者に按分される。
ただし,清算金が減殺請求時に土地とともに「移動」するのではなく,換地処分の公告日の翌日に,各共有者と施行者との間で持分割合に応じた独立の債権又は債務として確定するという関係である。

評価の目的評価対象評価基準時遺留分侵害及び減殺割合の計算相続開始時の従前地相続開始時減殺後の権利の帰属従前地から移行する換地の持分換地処分の効力発生時に権利の客体が換地へ移るため,新たな減殺割合の計算はしない旧民法1041条の価額弁償換地処分後の換地の持分現実の弁償時。訴訟では事実審口頭弁論終結時換地計画で定められた清算金共有持分に対応して別個に確定する清算金債権又は債務換地処分の公告日の翌日。原則として同日時点の共有持分割合で按分
2 換地後の価格を相続開始時へ遡らせるわけではない

相続開始時評価では,後に成立した換地の現在価格を用いるのではなく,相続開始時に存在した従前地の客観的交換価値を求める。
相続開始時に土地区画整理事業が既に進行していた場合は,当時の事業計画,仮換地指定,使用収益制限及び市場の認識が従前地の価格形成要因になり得るが,その後の換地処分によって判明した結果を当然に相続開始時へ遡及させるものではない。

換地処分後の価額弁償では,反対に,既に権利の客体が従前地から換地へ移っているため,存在しない従前地の現在価格を仮定するのではなく,換地の現実の価額を基礎とするのが相当である。
ただし,この結論は遺留分法と土地区画整理法を組み合わせた解釈であり,本件と同じ時系列を直接判断した公刊裁判例は,本記事で確認した範囲では見当たらなかった。

第2 旧法の遺留分減殺請求が適用される範囲
1 適用法は減殺請求日ではなく相続開始日で決まる

平成30年法律第72号による遺留分制度の改正は,原則として令和元年7月1日に施行された。
同法附則2条により,施行日前に開始した相続については原則として従前の例によるため,被相続人が令和元年6月30日までに死亡した場合は,減殺請求又は換地処分が同年7月1日以後であっても旧法事案となり得る。

令和元年7月1日以後に開始した相続では,民法1046条により遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求が生じるだけであり,土地の共有持分を物権的に取得する旧法の構造は採られていない。
したがって,本記事の「減殺請求後に持分が換地へ移る」という説明は,改正前民法が適用される相続に限られる。

2 減殺請求後は目的土地について共有持分が生じる

旧法上,遺留分減殺請求の意思表示が効力を生じると,遺留分を侵害する限度で目的物について遺留分権利者の権利が生じる。
最高裁令和7年7月10日第一小法廷判決(令和6年(受)第2号,遺留分減殺請求事件)は,旧法事案について,価額弁償請求権が確定的に取得されるまでは,遺留分権利者が減殺によって取得した共有持分権及びこれに基づく現物返還請求権を有することを前提としている。

本件では,換地処分の前に減殺請求がされているため,換地処分時には受遺者又は受贈者だけでなく,遺留分権利者も従前地の持分権者となっていることを出発点とする。
減殺請求前に受遺者が土地を第三者へ売却した場合とは,評価対象及び適用される法理が異なる。

第3 遺留分を計算するための従前地の評価
1 基礎財産は相続開始時に評価する

改正前民法1029条は,遺留分算定の基礎を,被相続人が相続開始時に有した財産の価額に贈与財産の価額を加え,債務の全額を控除したものとしていた。

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相続税の申告書を遺留分の基礎財産表に使えない理由――相続時精算課税,農地等の納税猶予,小規模宅地等の特例及び債務控除の読み替え(AI作成)

目次第1 結論第2 相続税の申告書に載っている財産の範囲1 課税価格の計算は民法上の遺産の範囲と一致しない2 「取得者」欄は遺言又は遺産分割の結果を書いたものである第3 相続開始の時に被相続人が所有していなかった財産が混ざる1 相続時精算課税に係る贈与財産2 農地等の贈与税の納税猶予に係る農地等3 相続開始前七年以内の贈与4 税法上のみなし規定は民法上の性質を変えない第4 課税価格の評価額は民法上の時価ではない1 小規模宅地等の特例2 農業投資価格3 路線価及び固定資産税評価額第5 みなし相続財産と非課税財産1 生命保険金及び死亡退職手当金2 特別受益の問題とは別である第6 債務控除欄の読み替え1 葬式費用は相続税では控除できるが遺留分では控除できない2 申告書に計上しなかった債務を後から主張する場合第7 申告書から遺留分の基礎財産表を作る手順第8 相続税の申告書を書証にするときの注意第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料
第1 結論

相続事件で遺産の全体像をつかもうとするとき,相続税の申告書又は税理士が作成した財産の一覧表が最初に手に入ることが多い。
しかし,相続税の申告書は相続税の課税価格を計算するための書類であって,遺留分を算定するための財産の一覧表ではない。
両者は,載せる財産の範囲,価額の求め方及び控除する債務の範囲のいずれにおいても一致しない。

民法1043条1項は,遺留分を算定するための財産の価額を「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。」と定めている(令和元年7月1日前に開始した相続では,同じ内容の旧民法1029条1項による。)。
これに対し,相続税の課税価格には,被相続人が相続開始の時に所有していなかった財産が,複数のみなし規定によって入り込む。
課税価格に算入する価額も,小規模宅地等の特例その他の政策的な評価によって取引価格から離れることがある。

そのため,申告書の数字をそのまま計算シートへ書き写すと,次の4種類の誤りが同時に起こり得る。
①遺留分の基礎財産に入れてはならない財産を入れる。
②遺贈と生前贈与を取り違えて,減殺又は負担の順序を誤る。
③価額を過小又は過大に見積もる。
④控除できない葬式費用を控除する。

本記事では,申告書のどの欄がどの理由で使えないのかを条文に即して整理し,申告書を読み替えて遺留分の基礎財産表を作る手順を示す。

第2 相続税の申告書に載っている財産の範囲
1 課税価格の計算は民法上の遺産の範囲と一致しない

相続税の課税価格は,相続又は遺贈により取得した財産の価額を基礎としつつ,次のものを加減して計算する。
①相続税法3条1項によって相続又は遺贈により取得したものとみなされる財産(生命保険金,死亡退職手当金等)を加える。
②相続時精算課税に係る贈与財産の価額を加える(相続税法21条の15第1項,21条の16第1項)。
③相続開始前の一定期間内(後記3のとおり,相続開始日に応じて3年以内から7年以内まで)の贈与財産の価額を加える(相続税法19条1項)。
④租税特別措置法70条の5第1項により相続で取得したものとみなされる農地等を加える。
⑤相続税法12条1項の非課税財産を除く。
⑥相続税法13条1項の債務及び葬式費用を控除する。

このうち②③④は,相続開始の時には既に受贈者のものになっていた財産である。
⑤は課税上除かれるだけであって,民法上の扱いは別に考える必要がある。
⑥には,民法上は相続債務でないものが含まれている。

2 「取得者」欄は遺言又は遺産分割の結果を書いたものである

財産の明細に付された「取得者」欄は,その財産を誰が取得したかを申告する欄であって,遺言の条項をそのまま写したものではない。
遺言と異なる内容の遺産分割がされた場合や,未登記の建物について実際の使用者を書いた場合には,遺言の条項と食い違うことがある。

そのため,取得者欄を根拠に「この不動産は遺言で誰々が取得した」と主張すると,遺言原本と照合した相手方から不整合を指摘されることになる。

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遺留分減殺請求を受けた親子・夫婦を一人の弁護士が代理できるか―減殺の順序,受贈者自身の遺留分,利益相反の説明(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象とする場面2 結論第2 誰がどれだけ減殺を受けるかを決める規定1 遺贈は生前贈与より先に減殺される2 複数の遺贈は目的の価額の割合に応じて減殺される3 生前贈与は後の贈与から減殺される4 相続人に対する特別受益の贈与は時期を問わない5 相続人でない者への古い贈与は要件が異なる第3 受遺者・受贈者が共同相続人である場合1 遺贈についての平成10年2月26日判決2 生前贈与の扱いと判例タイムズ1345号の計算シート3 数値例4 計算の前提を確認する事項第4 家族の間で利害が分かれる場面1 遺贈を受けた者と生前贈与を受けた者2 新しい贈与の受贈者と古い贈与の受贈者3 相続人でない者への贈与4 価額弁償の対象と支払者5 無資力の損失6 特別受益と取得財産の主張第5 一人の弁護士が複数の被告を代理するときの規律1 受任時の説明義務2 現実に利害が対立したとき3 利益相反事件との関係4 受任時に説明しておく事項第6 委任契約と弁護士費用1 委任契約書に定める事項2 成功報酬金の算定基礎第7 受任時の確認手順第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 日本弁護士連合会の会規4 文献
第1 この記事の対象と結論
1 対象とする場面

本記事は,令和元年7月1日より前に開始した相続について,遺留分権利者から遺留分減殺請求を受けた受遺者又は受贈者が複数いる場面を扱う。
典型例は,被相続人から遺言で財産を取得した子と,生前贈与を受けた他の家族が,同じ訴訟の被告になる場合である。
基準日は令和8年9月18日である。

平成30年法律第72号附則2条により,同法の施行日前に開始した相続の遺留分には,原則として改正前の民法(以下「旧民法」という。)が適用される。

2 結論

複数の受遺者・受贈者のうち誰がどれだけ減殺を受けるかは,旧民法1033条から1035条までの順序と,各処分の目的の価額によって決まる。
遺贈は生前贈与より先に減殺され,生前贈与は後の贈与から前の贈与へと減殺される。

もっとも,受遺者又は受贈者が共同相続人である場合は,その人自身の遺留分を考慮する必要がある。
最高裁は,相続人に対する遺贈について,受遺者の遺留分額を超える部分だけが旧民法1034条の「目的の価額」に当たるとした。
判例タイムズ1345号の論文は,相続人の一人に遺贈及び贈与がされた場合にはその総額から遺留分額を控除して遺留分超過額を算出すべきであるとし,同論文の計算シートは,生前贈与についても受贈者ごとの遺留分超過額を上限として減殺額を割り付けている。
そのため,贈与の日付が新しいというだけで,その受贈者が大きな負担を負うとは限らない。

家族が同じ訴訟の被告になっても,減殺の順序,評価,価額弁償の対象及び相続人でない者への贈与の扱いについて,被告の間で利害が分かれることがある。
一人の弁護士が複数の被告から受任することは直ちに禁じられるものではないが,弁護士職務基本規程32条により,受任に当たって辞任の可能性その他の不利益を及ぼすおそれを依頼者それぞれに説明しなければならない。

第2 誰がどれだけ減殺を受けるかを決める規定
1 遺贈は生前贈与より先に減殺される

旧民法1033条は,贈与は遺贈を減殺した後でなければ減殺することができないと定めていた。
遺言で財産を取得した家族と,生前贈与を受けた家族が同時に請求を受けている場合は,まず遺贈の側に侵害額を割り当てる。

特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言による取得も,最高裁平成10年2月26日第一小法廷判決(平成9年(オ)第802号,民集52巻1号274頁)により,遺贈と同様に扱われる。

2 複数の遺贈は目的の価額の割合に応じて減殺される

旧民法1034条は,遺贈はその目的の価額の割合に応じて減殺すると定め,遺言者が遺言に別段の意思を表示したときはその意思に従うとしていた。

3 生前贈与は後の贈与から減殺される

旧民法1035条は,贈与の減殺は後の贈与から順次前の贈与に対してすると定めていた。
遺贈を減殺しても侵害が残る場合は,相続開始に近い贈与から古い贈与へ遡って減殺額を割り当てる。

4 相続人に対する特別受益の贈与は時期を問わない

旧民法1030条は,減殺の基礎に算入する贈与を,原則として相続開始前の1年間にしたものに限り,当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは,1年前の日より前にしたものも算入するとしていた。

最高裁平成10年3月24日第三小法廷判決(平成9年(オ)第2117号,民集52巻2号433頁)は,旧民法903条1項の定める相続人に対する贈与は,減殺請求を認めることがその相続人に酷であるなどの特段の事情のない限り,旧民法1030条の要件を満たさないものであっても遺留分減殺の対象となるとした。

5 相続人でない者への古い贈与は要件が異なる

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遺留分減殺請求の訴額の算定―不動産の持分移転登記請求,土地の2分の1,建物,訴額と価額弁償額・弁護士費用の違い(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象とする訴訟2 結論第2 訴額算定の法令上の枠組み1 訴えで主張する利益によって算定する2 昭和31年の民事局長通知3 平成6年の民事局長通知と土地の2分の14 手数料額への当てはめ第3 遺留分減殺による持分移転登記請求の訴額1 基本の算式2 数値例3 手引が示す追加の2分の14 請求の趣旨と訴額の対応第4 訴状の訴額から評価額を逆算するときの注意1 固定資産税評価額の年度2 換地・分筆・合筆3 未知数を一つ置けば必ず一致する第5 訴額と区別すべき金額1 四つの金額の違い2 固定資産税評価額と時価3 訴額に相当する金銭を支払えば終わるわけではない4 弁護士費用の算定基礎第6 現行法の遺留分侵害額請求の訴額第7 訴状を作成し,又は受け取ったときの確認手順1 訴状を作成する側2 訴状を受け取った側第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料4 文献
第1 この記事の対象と結論
1 対象とする訴訟

本記事は,令和元年7月1日より前に開始した相続について,遺留分権利者が受遺者又は受贈者に対し,遺留分減殺を原因とする不動産の持分移転登記手続を求める訴訟の「訴訟物の価額」(以下「訴額」という。)を扱う。
基準日は令和8年9月18日であり,条文は同日にe-Gov法令検索で確認した。

平成30年法律第72号附則2条は,同法の施行日前に開始した相続について,原則として従前の例によると定めている。
そのため,訴えの提起が令和8年であっても,相続開始が令和元年6月30日以前であれば,旧法の遺留分減殺請求として,金銭ではなく不動産の持分そのものが請求の対象になることがある。

2 結論

訴額の出発点は,昭和31年12月12日民事甲第412号民事局長通知の「所有権移転登記請求権 目的たる物の価格」であり,固定資産税評価額のある不動産はその価格による。
土地については,平成6年3月28日民二第79号民事局長通知により,受付事務の取扱いとして固定資産税評価額に2分の1を乗じた額を基準とする。
建物には,この土地の2分の1の取扱いはない。

遺留分減殺による持分移転登記請求では,こうして求めた目的物の価額に,各原告が求める持分割合を乗じ,原告が複数であれば合算するのが基本である。
もっとも,『三訂版 事例からみる訴額算定の手引』は,遺留分減殺による持分移転登記請求を「抹消に代わる移転登記」と位置付け,更に2分の1を乗じる計算を示している。
他方,判例タイムズ1345号のモデル訴状は,通常の所有権移転登記の形で請求の趣旨を示しており,受付実務が一つに定まっているとまではいえない。

訴額は,申立手数料を計算するための額である。
遺留分侵害額,価額弁償の額及び弁護士費用の算定基礎とは,基準も時点も異なる。
訴状の訴額に相当する金銭を支払えば紛争が終わるわけではない。

第2 訴額算定の法令上の枠組み
1 訴えで主張する利益によって算定する

民事訴訟法8条1項は,訴額を「訴えで主張する利益によって算定する」と定める。
民事訴訟費用等に関する法律4条1項は,手数料の算出の基礎となる訴額も,民事訴訟法8条1項及び9条により算定するとしている。

一つの訴えで数個の請求をする場合は,民事訴訟法9条1項本文により,その価額を合算する。
ただし,訴えで主張する利益が各請求について共通である場合は,同項ただし書により合算しない。

2 昭和31年の民事局長通知

昭和31年12月12日民事甲第412号民事局長通知「訴訟物の価額の算定基準について」は,所有権について「目的たる物の価格」とし,地方税法349条による固定資産税の課税標準となる価格があるものはその価格,その他のものは取引価格によるとしている。
同通知は,所有権移転登記請求権についても「目的たる物の価格」とし,所有権に基づく物の引渡(明渡)請求権については「目的たる物の価格の二分の一」としている。

同通知は,各裁判所の受付事務の取扱いが分かれていたことから参考資料として作成されたものであり,訴額に争いがあるとき等の基準となるものではないと明記している。
また,価格の認定については,固定資産税の課税標準となる価格を証明する書面を提出させる等の方法により当事者に証明させるとしている。

3 平成6年の民事局長通知と土地の2分の1

平成6年3月28日民二第79号民事局長通知「土地を目的とする訴訟の訴訟物の価額の算定基準について」は,平成6年度の評価替えで宅地の固定資産税評価額が大きく上昇することを踏まえ,同年4月1日から当分の間,土地を目的とする訴訟の受付事務の取扱いとして,固定資産税評価額に2分の1を乗じて得た金額を基準とすることが妥当であるとした。

(続きを読む...)遺留分減殺請求の訴額の算定―不動産の持分移転登記請求,土地の2分の1,建物,訴額と価額弁償額・弁護士費用の違い(AI作成)

遺留分の計算で葬儀費用を差し引けるか-遺言・合意・相続税との違い(AI作成)

目次第1 葬儀費用を遺留分の計算から差し引けるか1 通常の葬儀費用は被相続人の債務ではない2 死亡後の預金残高から計算しない第2 遺留分額と遺留分侵害額の計算1 基礎財産の計算2 葬儀費用200万円を差し引いた場合の差額3 遺留分侵害額の計算第3 合意,生前契約又は遺言がある場合1 相続開始後の合意2 被相続人の生前契約3 遺産から葬儀費用を支弁する遺言4 遺言執行費用との区別第4 葬儀費用の負担者と遺留分計算の違い1 費用の最終負担は別の法律問題である2 確認できた費用負担に関する裁判例第5 相続税の葬式費用控除との違い1 相続税法は債務と葬式費用を分けている2 税務上の控除対象となる費用第6 紛争になった場合に確認する資料と期限1 最初に確認する資料2 遺留分侵害額請求の期間制限3 旧法の裁判例を参照する場合第7 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 所管行政機関の解説4 職能団体の会員による解説及びその他の文献5 関連記事
第1 葬儀費用を遺留分の計算から差し引けるか
1 通常の葬儀費用は被相続人の債務ではない

本記事は,令和8年9月15日現在の日本法に基づき,死亡後に遺族が支出した葬儀費用を遺留分の計算へ反映できるかを扱うものである。
通常の葬儀費用については,被相続人が死亡時に負担していた債務として,遺留分の基礎財産から当然に控除することはできないと考えられる。

民法1043条1項は,相続開始時の財産に一定の贈与を加え,債務の全額を控除して遺留分の基礎財産を算定する仕組みを定めている。
相続は死亡によって開始し,相続人は被相続人の権利義務を承継するため,ここで確認すべき債務は,被相続人が死亡時に負っていた債務である(民法882条,896条及び1043条)。

遺族が死亡後に葬儀社と契約して負担した費用は,この意味での被相続人の債務とは区別される。
ただし,生前契約,関係者の合意又は遺言による支弁の指定がある場合には,後記第3のとおり別の検討が必要となる。

2 死亡後の預金残高から計算しない

死亡時に4000万円の預金があった場合,その後に葬儀費用200万円を払い出して残高が3800万円になっても,死亡時の財産額が当然に3800万円へ変わるわけではない。
遺留分の基礎財産は相続開始時を基準にするため,死亡後の口座残高だけから計算することはできない。

預金からの出金が認められるか,葬儀費用を最終的に誰が負担するか,その費用を当事者間で精算できるかは,遺留分の基礎財産とは分けて判断する問題である。
被相続人の債務一般の計算と主張立証については,遺留分侵害額請求の基礎財産から控除される「被相続人の債務」の効果的な主張立証方法(AI作成)で説明している。

第2 遺留分額と遺留分侵害額の計算
1 基礎財産の計算

遺留分の基礎財産は,「相続開始時の財産+算入対象となる贈与-被相続人の債務」によって求める(民法1043条1項)。
贈与の算入には期間等の制限があるため,死亡時の積極財産だけを確認して計算が完了するわけではない(民法1044条)。

基礎財産に総体的遺留分率と遺留分権利者の法定相続分を乗じると,その者の遺留分額が求められる(民法1042条)。
直系尊属だけが相続人である場合の総体的遺留分率は3分の1であり,それ以外の場合は2分の1である。

2 葬儀費用200万円を差し引いた場合の差額

死亡時の財産が4000万円で,被相続人の債務及び算入対象となる贈与がなく,相続人が子2人だけであるとする。
一方の子が遺言によって全財産を取得し,他方の子に遺贈,贈与その他の受益がなく,葬儀費用の控除を認める特別の事情もない場合,財産を取得しない子の遺留分割合は4分の1である。

葬儀費用を差し引かない計算は4000万円×4分の1=1000万円であり,200万円を差し引く計算は3800万円×4分の1=950万円である。
この設例における遺留分額の差は50万円であり,葬儀費用200万円がそのまま遺留分の請求額から控除されるわけではない。

3 遺留分侵害額の計算

実際の遺留分侵害額は,遺留分額から,請求する者が受けた遺贈又は一定の贈与及び遺産分割で取得すべき遺産の価額を控除し,その者が承継する被相続人の債務を加算して求める(民法1046条2項)。
基礎財産を求める段階の債務控除と,個別の侵害額を求める段階の債務加算を分ける必要がある。

死亡後の葬儀費用を支払った事実だけでは,その費用が民法1046条2項3号の加算対象になるわけではない。
費用負担に関する別の請求権が成立する場合も,遺留分の法定計算へ組み込むのか,最終的な支払額を別途精算するのかを区別することになる。

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遺留分侵害額請求の期限と手続―内容証明・交渉・調停・訴訟・必要書類(AI作成)

第1 この記事の対象と最初に行うこと

1 令和元年7月1日以後に開始した相続が対象である

2 請求額の確定より先に期限を確認する

3 内容証明から訴訟までの標準的な順序

第2 1年と10年の期限

1 知った時から1年

2 相続開始から10年

3 発送日ではなく到達時が問題となる

4 権利行使後の金銭債権も別に管理する

第3 内容証明郵便による権利行使

1 内容証明と配達証明の役割は異なる

2 通知書で特定する事項

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遺留分侵害額請求の計算方法と請求を受けた側の対応―期限の許与・分割払い・遅延損害金(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と既存記事との役割分担1 令和元年7月1日以後に開始した相続を扱うこと2 旧法と変わった点と変わらなかった点3 既存記事との役割分担第2 遺留分を算定するための財産1 条文と算式2 相続人に対する贈与が10年に限られたこと3 負担付贈与と不相当な対価第3 遺留分を請求できる人と割合1 遺留分を請求できる人2 総体的遺留分と個別的遺留分3 相続人の組合せごとの遺留分割合4 複数の子・直系尊属、代襲相続及び養子5 相続放棄、相続欠格及び廃除6 相続開始前の遺留分放棄第4 遺留分侵害額1 民法1046条2項の算定式2 寄与分が反映されないこと3 承継債務を加算すること
4 死亡保険金の取扱い第5 遺留分侵害額請求を受けた側の確認事項1 回答前に保存する資料2 請求額を検証する順序3 受遺者・受贈者の負担限度と負担順序4 遺留分権利者承継債務を弁済した場合5 裁判所による期限の許与6 分割払いの合意と事実上の分割払い第6 遅延損害金と期間制限1 権利行使と履行請求を区別する2 遅延損害金の利率3 民法1048条の期間と発生後の金銭債権の時効4 請求を受けた側の回答順序第7 現物で解決する場合の課税1 代物弁済と譲渡所得2 相続税の更正の請求と修正申告第8 新法の解釈を示した裁判例がほとんどないこと第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料4 文献

第1 この記事の対象と既存記事との役割分担

1 令和元年7月1日以後に開始した相続を扱うこと

民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)の附則第2条は「この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前に開始した相続については、この附則に特別の定めがある場合を除き、なお従前の例による。」と定める。
遺留分に関する改正規定は同法附則第1条ただし書の各号に掲げられておらず、法務省が公表する原則的な施行期日である2019年7月1日から施行された。
したがって、被相続人の死亡日が令和元年7月1日以後であれば、金銭の支払を求める遺留分侵害額請求として処理する。

判定の基準は相続開始日であって、判決の年でも権利行使の年でもない。
逆に、判決が令和6年や令和7年であっても、相続開始が施行日より前であれば旧法の遺留分減殺請求として処理される。

2 旧法と変わった点と変わらなかった点

改正の中心は、権利の性質が物権的効果から金銭債権へ変わったことである。
民法1046条1項は「遺留分権利者及びその承継人は、受遺者…又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる」と定める。
その結果、旧法で最も誤りが生じやすかった減殺率の分母の選択という問題は、計算の手順から消えた。

もっとも、変わらなかった部分も多い。
基礎財産の算式(1043条1項)は旧1029条とほぼ同文であり、負担の順序(1047条1項各号)も旧1033条から1035条までと同じ構造である。
遺留分の放棄に関する1049条は旧1043条と同文で、第2項の「共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない」という規律も維持されている。
実質的に変わったのは、後述する贈与の加算期間、負担の限度の条文化、価額弁償に代わる期限の許与の4点に整理できる。

3 既存記事との役割分担

旧法の計算方法そのものは旧法の遺留分減殺請求の計算方法―基礎財産・侵害額・減殺率と判例タイムズ1345号の計算シートで扱っている。
減殺の順序は旧法の遺留分減殺請求の順序―遺贈・死因贈与・生前贈与と通知の先後、遺産の評価時点は旧法事案の遺留分減殺請求における遺産の評価基準時で扱っている。
この記事は新法の金額の算定過程に絞り、旧法との違いが実務にどう表れるかを併せて示す。
1年・10年の期限,内容証明による通知,交渉,調停,訴訟及び必要書類は,遺留分侵害額請求の期限と手続―内容証明・交渉・調停・訴訟・必要書類で扱っている。

第2 遺留分を算定するための財産

1 条文と算式

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旧法の遺留分減殺請求の計算方法―基礎財産・侵害額・減殺率と判例タイムズ1345号の計算シート(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と既存記事との役割分担1 令和元年7月1日より前に開始した相続を扱うこと2 この記事が扱う範囲3 既存記事との役割分担第2 算定式と計算シート1 最高裁が示した算定式2 東京地方裁判所プラクティス委員会が提案した計算シート3 計算シートが選択した説第3 遺留分算定の基礎となる財産1 式と入力欄の対応2 生前贈与を加算する範囲3 金銭の贈与を相続開始時の貨幣価値に引き直すこと4 相続債務の控除5 相続税の申告書から数値を転記するときの注意第4 個別的遺留分額1 総体的遺留分率に法定相続分を乗じること2 計算シートの模擬事案が前提とする法定相続分第5 遺留分侵害額1 計算シートの算定順序2 未処理遺産を分配する基準第6 減殺額と減殺率1 減殺の対象となるのは遺留分超過受遺額であること2 受遺額からみた減殺率3 判決が用いた分母には幅があること4 持分を分数にするときの乗算第7 計算シートの用語が判決の別紙に現れること1 判決文に現れる計算シート由来の用語2 計算過程を検算する際の着眼点第8 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料4 文献

第1 この記事の対象と既存記事との役割分担

1 令和元年7月1日より前に開始した相続を扱うこと

民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)の附則第2条は「この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前に開始した相続については、この附則に特別の定めがある場合を除き、なお従前の例による。」と定める。
遺留分に関する改正規定は同法附則第1条ただし書の各号に掲げられておらず、原則的な施行期日によることになる。
法務省は原則的な施行期日を2019年7月1日と公表しており、同法の公布日は平成30年7月13日である。
したがって、被相続人の死亡日が令和元年7月1日より前であれば、金銭債権化された遺留分侵害額請求ではなく、物権的効果を生ずる遺留分減殺請求として処理する。

判定の基準は相続開始日であって、判決の年でも権利行使の年でもない。
現に、判決日が令和6年や令和7年であっても、相続開始日が施行日前であるために旧法が適用される事案は珍しくない。

2 この記事が扱う範囲

この記事は、旧法の遺留分減殺請求において、基礎財産、個別的遺留分額、遺留分侵害額及び減殺率という四つの数値を、どの順序でどのように出すかという算定過程そのものを扱う。
個別の財産をどう評価するか、争点整理をどう進めるかといった問題は扱わない。

3 既存記事との役割分担

減殺の順序、すなわち遺贈・死因贈与・生前贈与のどれから先に減殺するかという問題は、旧法の遺留分減殺請求の順序―遺贈・死因贈与・生前贈与と通知の先後で扱っている。
遺産をいつの時点の価額で評価するかは旧法事案の遺留分減殺請求における遺産の評価基準時で、減殺の結果生じた共有関係をどう解消するかは改正前の遺留分減殺請求によって共有となった不動産の解消方法で扱っている。
相続開始後に遺留分減殺請求がされ,その後に換地処分があった土地の評価対象及び基準時は,相続後に遺留分減殺請求をし,その後に換地処分があった土地の評価基準時(AI作成)で扱っている。
この記事は、それらの前提となる金額の算出に絞る。
令和元年7月1日以後に開始した相続については権利の性質が金銭債権に変わっており、その計算方法は遺留分侵害額請求の計算方法―旧法の減殺請求と何が変わったかで扱っている。

葬儀費用を遺留分の計算から差し引けるかについては,通常の葬儀費用と被相続人の債務との区別,遺言・合意・生前契約及び相続税上の取扱いを,遺留分の計算で葬儀費用を差し引けるか-遺言・合意・相続税との違い(AI作成)で説明している。

第2 算定式と計算シート

1 最高裁が示した算定式

最高裁判所第三小法廷平成8年11月26日判決(民集第50巻10号2747頁)は、遺留分侵害額の算定について、被相続人が相続開始の時に有していた財産全体の価額に贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して基礎財産額を確定し、これに遺留分の割合と法定相続分の割合を乗じ、遺留分権利者が特別受益を得ているときはその価額を控除し、相続によって得た財産があるときはその額を控除して、負担すべき相続債務があるときはその額を加算するという順序を示している。
旧法の計算は、この四段階を順に踏むことに尽きる。

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旧法の遺留分減殺請求の順序―遺贈・死因贈与・生前贈与と通知の先後(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 令和元年7月1日より前に開始した相続を扱うこと
2 負担順序と通知順序は別の問題であること
3 既存記事との役割分担

第2 旧法が定める客観的な減殺順序

1 遺贈を生前贈与より先に減殺すること
2 複数の遺贈は目的価額に応じて減殺すること
3 相続人に対する遺贈の目的価額
4 複数の生前贈与は後の贈与から減殺すること
5 受贈者が共同相続人である場合の減殺額

第3 明文だけでは決まらない三つの論点

1 同時の贈与
2 贈与の先後を判断する基準時
3 死因贈与の位置付け

第4 相手方へ通知する時間的順序

1 客観的減殺額の範囲内では通知順を選べること
2 通知順によって負担を付け替えることはできないこと
3 複数の相手方へ早期に通知する実務上の理由

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旧法事案の遺留分減殺請求における遺産の評価基準時

目次

第1 結論
第2 旧法事案となる相続開始日
第3 遺留分算定の基礎財産は相続開始時に評価する

1 旧民法1029条及び1044条
2 大審院大正7年12月25日判決
3 金銭の生前贈与は相続開始時の貨幣価値に換算する
4 評価時点と財産の状態は分けて考える

第4 旧民法1041条の価額弁償は別の時点で評価する

1 相続開始時評価と価額弁償時評価は目的が異なる
2 現実の弁償時と事実審口頭弁論終結時
3 金銭判決には二段階の意思表示が必要である

第5 減殺請求前に目的物が処分された場合

1 最高裁平成10年3月10日判決
2 処分の時期及び内容を先に確定する

第6 遺産分割及び税務上の評価との区別

1 遺産分割の評価基準時とは異なる
2 相続税評価額がそのまま民法上の時価になるとは限らない
3 相続税の申告書に載る財産の範囲は基礎財産と一致しない

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改正前の遺留分減殺請求によって共有となった不動産の解消方法(AI作成)

第1 この記事の対象と最初に確認する三つの分岐

1 相続開始が令和元年7月1日より前か
2 減殺された処分が特定財産型か割合型か
3 現物を取得したい者と資金を準備できる者は誰か

第2 改正前の遺留分減殺請求の効果

1 意思表示によって持分が当然に帰属する
2 減殺請求の1年と10年の期間
3 旧法の減殺順序と現行法の負担順序は同一ではない

第3 共有物分割と遺産分割の振分け

1 処分類型ごとの原則
2 特定財産承継遺言と共同相続人への減殺
3 相続分指定の減殺は遺産分割で処理する
4 遺産共有持分と物権共有持分が併存する場合

第4 共有物分割へ進む前の確認と証拠

1 協議,調停及び訴訟
2 不分割契約と権利濫用
3 低負担の資料から分割方法を絞る

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遺留分侵害額請求の基礎財産から控除される「被相続人の債務」の効果的な主張立証方法(AI作成)

目次

第1 本稿の狙いと全体像

1 本稿が扱う問題
2 最大のポイント-債務は「二つの段階」で逆向きに効く

(1) 段階① 基礎財産からの控除
(2) 段階② 侵害額算定における承継債務の加算
(3) 二段階の混同が最も多い誤り

第2 段階①-基礎財産から控除される「被相続人の債務」

1 条文の枠組み(民法1043条1項)
2 控除される債務・されない債務

(1) 控除される債務
(2) 控除されない債務
(3) 葬式費用と「相続税の債務控除」との違い

3 控除の基準時(最判平成8年11月26日)
4 債務超過の場合の帰結

第3 最大の争点-保証債務・連帯保証債務

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遺留分に関するメモ書き(AIリライト)

目次

第1 本記事の役割及び情報の基準日
第2 遺留分とは
第3 遺留分の権利者及び割合

1 請求できる人
2 相続人の組合せごとの割合
3 相続放棄及び遺留分の放棄

第4 遺留分侵害額の計算

1 計算の順序
2 生前贈与を加算する期間
3 債務,寄与分及び特別寄与料

第5 遺留分侵害額請求の期限及び手続
第6 遺留分侵害額請求を受けた場合
第7 旧法の遺留分減殺請求
第8 主要な最高裁判例
第9 目的別の関連記事
第10 出典

第1 本記事の役割及び情報の基準日
本記事は,山中弁護士ブログにおける遺留分関係のハブ記事である。

遺留分の権利者,割合,計算,請求期限及び新旧法の違いを概観し,個別論点は後掲の専門記事に接続する。

(続きを読む...)遺留分に関するメモ書き(AIリライト)