第1 はじめに――なぜ今なお「減殺」による共有が問題となるのか
1 本記事の狙いと,既存記事との役割分担
相続をめぐる共有状態の解消方法一般については,別記事「遺産相続における共有状態の解消方法」で,遺産共有と通常共有の異同,遺産分割による解消(現物・代償・換価・共有分割),共有物分割による解消(現物・賠償・競売),持分単位での解消(放棄・譲渡・買取権),そして令和3年改正が新設した手段までを体系的に整理しました。
本記事は,そのうちの特殊な一類型,すなわち平成30年改正前の「遺留分減殺請求」を行使した結果として不動産が共有状態になっている場合の解消方法に絞って掘り下げるものです。この共有は,通常の遺産共有とも純粋な物権共有とも異なる独自の性格をもち,共有物分割訴訟によるのか遺産分割審判によるのかの振り分け,価額弁償の可否,登記の方法という各場面で,改正前の法理を正確に適用する必要があります。一般論を扱う既存記事だけでは処理しきれない論点であるため,独立して整理します。
2 金銭債権化への改正と,なお改正前の相続が残る理由
平成30年の相続法改正は,従来の遺留分「減殺」請求権を,遺留分「侵害額」請求権へと改めました。改正前の減殺請求権は,行使すると遺贈や贈与が遺留分を侵害する限度で当然に失効し,目的物(の共有持分)が物権的に遺留分権利者に復帰するという物権的効果をもつ形成権でした。これに対し,改正後の遺留分侵害額請求権は,行使によって「遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる」金銭債権を発生させるにとどまります(民法1046条1項)。遺贈や贈与は失効せず,原則として共有関係は生じません。
改正が物権的効果を廃した理由は,まさに本記事が扱う共有の弊害にありました。すなわち,遺贈等の目的財産が事業用財産であった場合には円滑な事業承継を困難にし,また,生じた共有関係の解消をめぐって新たな紛争を招くという弊害です。金銭債権化は,この二重の紛争構造を解消するための立法でした。
もっとも,改正法の附則第2条は,施行日前に開始した相続については,附則に特別の定めがある場合を除き,なお従前の例によるとしており,遺留分に関する規定には特別の経過措置が置かれていません。遺留分に関する規定の施行日は令和元年(2019年)7月1日ですから,被相続人の死亡が令和元年7月1日より前であれば,今なお改正前の減殺請求(物権的効果)が適用されます。したがって,施行日前に開始した相続で既に減殺請求がされ,目的不動産が共有のまま放置されている事案は,現在も相当数残存しています。基準となるのは相続開始日(被相続人の死亡日)であって,遺言の作成日でも減殺請求の時期でもありません。
第2 遺留分減殺請求の物権的効果と二段階構造
1 減殺請求権の法的性質――形成権かつ物権的効果
判例・通説は,改正前の遺留分減殺請求権を,形成権であり,かつ物権的効果をもつものと解していました。減殺請求は,受贈者又は受遺者に対する裁判外の意思表示によって行うことができ,必ずしも訴えの方法によることを要しません(最高裁昭和41年7月14日判決・民集20巻6号1183頁)。そして,減殺請求の意思表示がされると,遺留分を侵害する贈与や遺贈は遺留分を侵害する限度で当然に効力を失い,その目的物(の持分)は当然に減殺請求者に帰属します(最高裁昭和51年8月30日判決・民集30巻7号768頁)。
2 二段階構造――共有の発生とその解消
減殺請求者は,減殺の目的物を自ら選択して取り戻すことはできません。そのため,目的物の全部が戻る場合を除き,減殺請求の効果として,減殺請求者と受益者(受遺者・受贈者)との共有が生じざるを得ません。これが第一段階です。次に,この共有関係を,共有物分割又は遺産分割の手続によって解消して,はじめて特定の財産を現実に取得することになります。これが第二段階です。
このように,改正前の減殺請求は,意思表示だけでは紛争が終わらず,共有を解消する第二段階の手続を必ず要する構造をもっていました。この二段階の負担が,改正によって金銭債権化された立法上の理由でもあります。以下では,この第二段階の手続を,どのように選択すべきかを整理します。
3 減殺の順序――遺贈を先に,贈与は新しいものから
減殺の対象となる贈与や遺贈が複数あるときは,減殺する順序が法律で定められています。まず遺贈を減殺し,遺贈を減殺してもなお遺留分の侵害が残るときに,はじめて贈与を減殺します(改正前民法1033条)。そして贈与が複数あるときは,相続開始に近い新しい贈与から順次,古い贈与へと遡って減殺します(改正前民法1035条。現行民法1047条1項も同じ順序です。)。この順序は,減殺請求者や受益者の都合で変更することはできません。
この順序ルールからは,実務上重要な帰結が導かれます。すなわち,複数の生前贈与がされている事案では,最も新しい時期にされた贈与が,遺贈の次に真っ先に減殺の射程に入り,古い贈与ほど後回しとなって残りやすいということです。どの財産が現実に減殺され,共有や価額弁償の対象となるのかは,この順序によって決まります。
第3 生じた共有の性質と解消手続の振り分け
1 分水嶺――取戻財産の相続財産性(固有財産説)
減殺によって生じた共有を,家庭裁判所の遺産分割によって解消するのか,地方裁判所の共有物分割訴訟によって解消するのかは,減殺請求者が取り戻した権利が「遺産分割の対象となる相続財産としての性質」をもつかどうかによって決まります。判例は,特定遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に減殺請求者に帰属する権利は,遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しないとし,遺言者の財産全部についての包括遺贈も,遺贈の対象となる財産を個々的に掲記する代わりに包括的に表示する実質を有するもので,その限りで特定遺贈とその性質を異にするものではないとしました(最高裁平成8年1月26日判決・民集50巻1号132頁)。この立場は固有財産説と呼ばれ,登記実務が「遺留分減殺」を登記原因として受遺者から減殺請求者への移転登記手続を認める取扱いとも整合します。
この固有財産説を基準にすると,減殺された処分行為の類型ごとに,解消手続は次のように振り分けられます。
2 共有物分割による類型
特定遺贈,特定物の生前贈与,特定の財産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言,及び遺産全部の包括遺贈を減殺した場合には,取り戻された財産は減殺請求者の固有財産となり,相続財産には復帰しません。したがって,減殺請求者と受益者との共有は物権法上の共有であり,その解消は共有物分割(地方裁判所の民事訴訟)によります。「相続させる」旨の遺言も,効力発生と同時に目的財産が当該相続人に承継される点で特定遺贈と同様に扱われますから(最高裁平成3年4月19日判決・民集45巻4号477頁),減殺後の共有は共有物分割によることになります。この場合,減殺請求の当事者以外の共同相続人は取戻財産について特段の権利をもたないため,共有物分割の手続に加わりません。
受益者が相続人以外の第三者である場合(第三者への特定遺贈・贈与)も,第三者を遺産分割の手続に拘束することはできませんから,共有関係の解消は共有物分割によります。
3 遺産分割による類型
これに対し,相続分の指定や割合的包括遺贈を減殺した場合には,取り戻される権利は個別財産上の持分ではなく,遺産全体に対する一定の割合にとどまり,相続財産としての性質が維持されます。したがって,その共有は遺産共有であり,解消は遺産分割(家庭裁判所の家事審判)によります。相続分の指定が減殺された場合には,遺留分割合を超える相続分を指定された相続人の指定相続分が,その遺留分割合を超える部分の割合に応じて修正されるものと解されており,この修正を踏まえて遺産分割審判による分割が行われます(最高裁平成24年1月26日決定・集民239号635頁)。
なお,遺産共有を解消する遺産分割の手続の中では,遺留分を侵害する形での寄与分の主張は制約を受けますが,本来的な未分割の遺産の部分については寄与分を主張する余地があると解されています。
4 遺産共有と物権共有とが併存する場合
一個の不動産について,未分割の遺産共有持分と,減殺によって生じた物権共有持分とが併存することがあります。この場合,両持分の間の共有関係の解消は共有物分割訴訟によるべきであり,共有物分割によって遺産共有持分権者に分与された部分が,さらに遺産分割の対象となるという二段階の処理になります(最高裁平成25年11月29日判決・民集67巻8号1736頁)。関係者全員の同意があれば,共有物分割と遺産分割とを一つの手続の中で総合的に解決することも考えられますが,全員の同意がない限り,物権共有の共有物分割と遺産共有の遺産分割とを併せて行うことはできないとされています(東京高裁平成5年3月30日決定・家月46巻3号66頁(裁判所ウェブサイト未掲載))。
第4 共有物分割による解消の実務
1 協議・調停・訴訟
減殺によって生じた共有の多くは,前記のとおり共有物分割によって解消します。手続は,まず共有者間の協議を行い,協議が調わないとき又は協議をすることができないときに,共有物分割訴訟を提起します(民法258条1項)。共有物分割訴訟は,共有者全員を当事者とすべき固有必要的共同訴訟です。減殺請求者が複数あるときは,それらの者を含めて共有物分割を行うことになります。
2 分割の方法――現物・全面的価格賠償・競売
共有物分割の方法には,現物分割,賠償分割,競売分割があります。現物を欲する共有者が一人であれば,その者に共有物全部を取得させ,他の共有者にその持分の価格を賠償させる全面的価格賠償が用いられます。もっとも,全面的価格賠償が許されるためには,特定の共有者に取得させることが相当であり,かつ価格が適正に評価され,取得者に支払能力があって,他の共有者に対する賠償金の支払により共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が必要です(最高裁平成8年10月31日判決・民集50巻9号2563頁)。改正前の減殺による共有であっても,共有物分割訴訟において柔軟な分割方法を用いることができる点は,遺産分割審判と大きく変わりません。
全面的価格賠償を選択する場合には,賠償金が現実に支払われることをどう確保するかが実務上の要点となります。賠償金の支払と持分移転登記手続とを引換給付とする方法,賠償金の支払を停止条件として分割の効力を生じさせる方法,弁済期を定めて不払いのときは換価に移行させる方法などが用いられます。
3 持分単位での解消の併用
共有物全体を分割するのではなく,持分だけを動かして共有関係から離脱する手段を併用することもできます。共有持分の放棄(民法255条。ただし他の共有者に対するみなし贈与として贈与税の対象となり得ます。),第三者又は他の共有者への持分の譲渡,管理費用等の負担を1年以内に履行しない共有者からの共有持分買取権の行使(民法253条2項)がこれにあたります。共有物全部の取得を目指す場面では,共有持分買取権と全面的価格賠償による共有物分割とを,一方を主位的に,他方を予備的に主張する構成も考えられます。
第5 価額弁償――受益者側の対抗手段
1 制度の意義
受贈者・受遺者は,目的物の価額を弁償することにより,目的物の返還義務を免れることができます(改正前民法1041条)。現物を手元に残したい受益者にとって,これは最も重要な対抗手段です。減殺の対象が金銭である場合や,受益者が価額弁償を選択した場合には,減殺請求者は個別的遺留分に相当する額の金銭を取得するにとどまり,そもそも共有や共有物分割の問題は生じません。したがって,価額弁償は,共有の発生自体を回避する機能ももっています。
価額弁償は,減殺された贈与又は遺贈の目的である各個の財産ごとに行うことができます。判例は,受贈者又は受遺者は,遺留分減殺の対象とされた贈与又は遺贈の目的である各個の財産について,民法1041条1項に基づく価額弁償をすることができるとしています(最高裁平成12年7月11日判決・民集54巻6号1886頁)。したがって受益者は,遺留分の全体を清算しなくても,特に手元に残したい特定の財産についてだけ価額を弁償して,その現物を確保することができます。事業用資産や自社株式,居住用不動産など,どうしても現物で残したい財産がある場合に有力な方法です。
2 価額弁償の方法――現実の弁償又は弁済の提供
もっとも,受益者が単に価額を弁償する旨の意思表示をしただけでは,現物返還義務を免れることはできません。判例は,価額弁償によって返還義務を免れるためには,遺留分権利者に対し価額の弁償を現実に履行するか,又はその履行の提供をすることを要するとしています(最高裁昭和54年7月10日判決・民集33巻5号562頁)。単なる意思表示で足りるとすると,遺留分権利者が確実に価額を手中に収める道を保障しないまま目的物の帰属を確定させることになり,公平を失するからです。
3 評価の基準時
弁償すべき価額は,現実に弁償がされる時の目的物の価額です。遺留分権利者が価額弁償を請求する訴訟においては,現実の弁償に最も接着した時点として,事実審の口頭弁論終結の時が算定の基準時となります(前掲最高裁昭和51年8月30日判決)。したがって,減殺請求から弁償までに時間が経過して目的物の価額が変動した場合,その変動のリスクは受益者が負うことになります。
4 遺留分権利者からの価額弁償請求
受益者が価額を弁償する旨の意思表示をした場合には,遺留分権利者は,目的物の現物返還請求権を行使することも,これに代わる価額弁償請求権を行使することもできます。そして,遺留分権利者が価額弁償を請求する意思表示をしたときは,その時点で現物返還請求権を確定的に失って価額弁償請求権を取得し,遅延損害金はその請求の日の翌日から発生します(最高裁平成20年1月24日判決・民集62巻1号63頁)。
したがって,受益者が「価額を弁償する」と表明しただけでは,遅延損害金は発生しません。遅延損害金が発生し始めるのは,あくまで遺留分権利者の側が弁償金の支払を請求した日の翌日からであり,その後は,法定利率(民法404条。現在は変動制で年3パーセント。)による遅延損害金が上乗せされます。受益者としては,支払請求を受けた後は,遅延損害金を増やさないよう,速やかに弁償金を現実に支払うか,その履行の提供をすることが重要です。
5 判決主文の型
受益者が事実審の口頭弁論終結前に,裁判所が定めた価額により価額弁償をする旨の意思表示をした場合には,裁判所は,口頭弁論終結の時を基準として弁償すべき額を定めたうえ,受益者がその額を支払わなかったことを条件として遺留分権利者の請求を認容すべきものとされています(最高裁平成9年2月25日判決・民集51巻2号448頁)。移転登記手続を求める訴訟では,「被告は,原告に対し,被告が原告に対して金○円を支払わなかったときは,別紙物件目録記載の不動産の持分○分の○につき,○年○月○日遺留分減殺を原因とする所有権移転登記手続をせよ。」という停止条件付きの主文が用いられます。目的物の引渡しを求める場合には,意思表示の擬制に関する民事執行法174条の適用がないため,「判決確定の2週間後において金○円を支払わなかったときは」という形に工夫を要します。
第6 登記手続
減殺による持分の取得を登記に反映させる場合,登記原因は「遺留分減殺」であり,減殺の意思表示をした日を登記原因の日付とします。目的物の全部を減殺したときは所有権移転登記,一部を減殺したときは共有持分移転登記となります。受遺者への遺贈の登記が未了のときは,遺留分減殺に基づく移転登記請求権を保全するため,受遺者が遺贈義務者(相続人又は遺言執行者)に対してもつ移転登記請求権を代位行使し,あわせて処分禁止の仮処分によって権利を保全することが考えられます。もっとも,特定の財産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言については,被指定者が単独で相続登記を申請することができるため,代位訴訟を要しません。
他の相続人が既に法定相続分による共同相続の登記を経由している場合には,減殺により取得した持分を登記上符合させるために,更正登記や真正な登記名義の回復を原因とする移転登記などの手続を検討する必要があります。登記の現況に応じて,求めるべき登記の種類を的確に選択することが重要です。
第7 令和3年改正・経過措置と実務上の指針
1 令和3年改正(共有法)の適用関係
改正前の減殺によって生じた共有の大半は,物権法上の共有です。したがって,令和3年改正で新設された規律との関係は,次のように整理できます。すなわち,遺産共有と通常共有とが併存する共有物についての特則(民法258条の2。相続開始から10年を経過すると遺産共有持分についても共有物分割で一元的に解消できるとするもの)は,遺産共有持分を対象とする特則ですから,減殺による物権共有持分そのものには,10年の要件や異議の申出の制約はかかりません。物権共有は端的に共有物分割によって解消できます。また,所在等不明共有者の持分の取得・譲渡(民法262条の2・262条の3)についても,遺産共有持分であれば相続開始から10年の経過が要件となりますが,減殺による物権共有持分は通常共有ですから,この10年の要件を待たずに利用することができます。
2 経過措置――相続開始日という基準
本記事が対象とするのは,あくまで相続開始が令和元年7月1日より前の事案です。相続開始がこの日以後であれば,遺留分侵害額請求権(金銭債権)が適用され,共有は生じません。したがって,受任にあたっては,まず被相続人の死亡日を確認し,改正前の減殺(物権的効果)が適用される事案か,改正後の金銭債権が適用される事案かを見極めることが出発点となります。金銭債権化された改正後の制度では,金銭を準備できない受遺者・受贈者は,裁判所に対して支払につき相当の期限の許与を求めることができ(民法1047条5項),改正前に受益者がもっていた価額弁償の抗弁とは原則と例外が逆転している点にも留意が必要です。
3 受任時のチェックポイント
改正前の減殺による共有の解消を受任した場合には,次の点を順に確認すると見通しが立てやすくなります。第一に,被相続人の死亡日が令和元年7月1日より前かどうか。第二に,減殺請求の意思表示がいつ,どのような形でされ,改正前民法の期間制限(減殺すべき贈与又は遺贈を知った時から1年,相続開始から10年)を徒過していないか。第三に,減殺された処分行為が特定遺贈・「相続させる」旨の遺言・生前贈与・全部包括遺贈なのか,それとも相続分の指定・割合的包括遺贈なのかを特定し,共有物分割(地方裁判所)と遺産分割(家庭裁判所)のいずれによるべきかを判定すること。第四に,受益者側であれば価額弁償の可否・原資・意思表示の時期を,減殺請求者側であれば現物取得と価額弁償請求のいずれを求めるかを検討すること。第五に,登記の現況を確認し,必要な登記請求・代位・仮処分を設計すること。そして,いずれの手段を選ぶ場合にも,共有物分割やみなし贈与等の課税関係を法務と一体で検討することが求められます。
第8 まとめ
改正前の遺留分減殺請求によって生じた共有は,通常の遺産共有とも純粋な物権共有とも異なる独自の性格をもち,その解消は,減殺された処分行為の類型に応じて共有物分割(地方裁判所)と遺産分割(家庭裁判所)とに振り分けられます。振り分けの分水嶺は,取戻財産が相続財産としての性質をもつかどうかであり,特定遺贈・「相続させる」旨の遺言・生前贈与・全部包括遺贈・第三者への遺贈贈与は共有物分割,相続分の指定・割合的包括遺贈は遺産分割によります。受益者側にとっては価額弁償が最も有力な対抗手段であり,その方法・基準時・判決主文の型には確立した判例法理があります。そして,これらすべての前提として,相続開始日が令和元年7月1日より前かどうかという経過措置の基準を最初に確認することが,実務の出発点となります。
出典
本記事が根拠とした主な法令・裁判例・文献は次のとおりです(法令の条文は電子政府の総合窓口(e-Gov)法令検索により確認しています。裁判例は,裁判所ウェブサイトの裁判例検索に掲載されているものについて,各裁判例へのリンクを付しています。)。
1 法令
- 民法(現行1046条・1047条,改正前1031条・1040条・1041条・1042条,並びに249条・253条・255条・256条・258条・258条の2・262条の2・262条の3)
- 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)附則
- 不動産登記法
- 民事執行法174条
- 会社法106条
- 所得税法58条・59条
- 相続税法9条
2 裁判例
- 最高裁昭和41年7月14日判決(民集20巻6号1183頁)
- 最高裁昭和51年8月30日判決(民集30巻7号768頁)
- 最高裁昭和54年7月10日判決(民集33巻5号562頁)
- 最高裁平成3年4月19日判決(民集45巻4号477頁)
- 最高裁平成8年1月26日判決(民集50巻1号132頁)
- 最高裁平成8年10月31日判決(民集50巻9号2563頁)
- 最高裁平成9年2月25日判決(民集51巻2号448頁)
- 最高裁平成20年1月24日判決(民集62巻1号63頁)
- 最高裁平成24年1月26日決定(集民239号635頁)
- 最高裁平成25年11月29日判決(民集67巻8号1736頁)
- 東京高裁平成5年3月30日決定(家月46巻3号66頁)(裁判所ウェブサイト未掲載)
3 文献
- 三平聡史『共有不動産の紛争解決の実務〔第2版〕』(民事法研究会)
- 片岡武ほか『家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務〔第4版〕』(日本加除出版)
- 片岡武ほか『改正相続法と家庭裁判所の実務』(日本加除出版)
- 田村洋三・小圷眞史編著『実務相続関係訴訟〔第3版〕』(日本加除出版)
- 潮見佳男『詳解 相続法』(弘文堂)
- 星野雅紀編『遺留分をめぐる紛争事例解説集』(新日本法規出版)
- 平田厚『〔改正相続法対応〕Q&A 相続財産をめぐる第三者対抗要件』(新日本法規出版)
- 『遺留分の法律と実務』(ぎょうせい)
- 山下寛ほか「遺留分減殺請求訴訟を巡る諸問題(上)(下)」判例タイムズ1250号・1252号