第1 肘関節の可動域制限が該当する後遺障害等級
1 該当するのは第12級6号である
交通事故により肘関節の可動域が健側の4分の3以下に制限された状態は,自動車損害賠償保障法施行令別表第二の第12級6号「一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」に該当する。三大関節とは肩関節,ひじ関節及び手関節をいい,肘関節はそのうちの一つである。同表の第12級7号は「一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」であって下肢についての規定であるから,肘関節の可動域制限を第12級7号と表記するのは誤りである。また,等級表に該当する項目がない障害について他の等級を借りる場合を準用等級というところ,肘関節の屈曲・伸展の制限は第12級6号そのものに該当するから,「第12級相当」ではなく「第12級6号に該当」と表記するのが正確である。後述する前腕の回内・回外の制限は,これに対して文字どおり「第12級に準ずる」ものとして扱われる。等級表に定めのない後遺障害を等級表上の等級に当てはめる根拠は,同表の備考第6号が「各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であつて,各等級の後遺障害に相当するものは,当該等級の後遺障害とする」と定めていることにある。
本記事は,肘関節の屈曲・伸展及び前腕の回内・回外の制限が後遺障害等級としてどのように評価されるか,その制限が実際にどのような支障と代償動作をもたらすか,そして裁判所が何を判断の分かれ目としてきたかを,法令,通達,学会基準及び判例データベースで全文を確認した裁判例に基づいて整理するものである。生成AIを用いて一次資料を突き合わせながら作成している。同じ上肢の三大関節でも関節ごとに論点が異なるため,肩関節の可動域制限と後遺障害12級6号及び手関節の可動域制限と後遺障害12級6号は別稿で扱っている。また,下肢の三大関節の機能障害は第12級7号であって号数も評価の枠組みも異なるので,股関節,膝関節及び足関節については各別稿を参照されたい。本記事は肘関節に固有の論点に絞る。
2 自賠責保険が労災保険の基準に準拠する構造
自賠責保険における後遺障害等級の認定基準は,自賠責保険の告示自体に定められているわけではない。自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)第3は,「等級の認定は,原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う」と定めており,自賠責保険は労災保険の認定基準を借りている。したがって,肘関節の可動域制限がどのように評価されるかを正確に知るには,労働基準局長通達であるせき柱及びその他の体幹骨,上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準について(平成16年6月4日基発第0604003号)と,その別添「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」に当たる必要がある。本記事の等級に関する記述は,特に断らない限りこの通達によるものである。同通達は平成16年7月1日以降に支給事由が生じたものについて適用され,それ以前のものには改正前の認定基準が適用される。自賠責保険の支払基準そのものについては,自賠責保険の支払基準(令和2年4月1日以降の交通事故に適用されるもの)を参照されたい。
3 上位及び下位の評価
同じ肘関節の機能障害でも,制限の程度により三段階に分かれる。①可動域が健側の4分の3以下であれば「関節の機能に障害を残すもの」として第12級6号,②2分の1以下であれば「関節の機能に著しい障害を残すもの」として第10級10号,③関節が強直したものは「関節の用を廃したもの」として第8級6号である。ここでいう強直とは完全強直又はこれに近い状態をいい,通達は「これに近い状態」を可動域が原則として健側の10パーセント程度以下(10パーセントに相当する角度を5度単位で切り上げた角度以下)に制限されたものと定義し,可動域が10度以下に制限されている場合はすべてこれに該当するとしている。関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態も用廃に含まれ,「これに近い状態」とは他動では可動するものの自動運動では健側の10パーセント程度以下となったものをいう。
なお,「関節の機能に著しい障害を残すもの」は,労災保険の障害等級表(労働者災害補償保険法施行規則別表第一)では第10級の9であるのに対し,自賠責保険の施行令別表第二では第10級10号である。第8級6号及び第12級6号は両者で一致するが,第10級だけ号数がずれるので,労災の資料と自賠責の資料を突き合わせる際は注意を要する。
第2 可動域の測り方と4分の3基準の当てはめ
1 屈曲と伸展は合計値で評価する
通達の別添第1の1(2)は,「原則として,屈曲と伸展のように同一面にある運動については,両者の可動域角度を合計した値をもって関節可動域の制限の程度を評価する」と定めている。肘関節の屈曲と伸展はまさに同一面にある運動であるから,両者を合計した値で比較する。屈曲拘縮があって伸展がマイナスの値になる場合は,その分を減算した値が可動域となる。実際に,横浜地方裁判所令和4年8月29日判決(令和2年(ワ)第1537号)は,患側の屈曲100度・伸展マイナス10度について「100度-10度=90度」とし,健側の屈曲145度・伸展0度について「145度-0度=145度」として両者を比較している。
この評価方法の帰結として,失われた運動域が屈曲側にあるか伸展側にあるかを問わず,合計値が同じであれば同じ等級になる。屈曲が110度まで残っているが伸展が0度の事案と,屈曲は145度あるが伸展がマイナス35度の事案とは,いずれも合計110度として同じ評価を受ける。後述するとおり,この二つは機能的には同じではない。
2 比較の相手は原則として健側である
同別添第1の1(1)は,「障害を残す関節の可動域を測定し,原則として健側の可動域角度と比較する」ものとし,せき柱や,健側となるべき関節にも障害を残す場合等に限って,後述する参考可動域角度と比較するとしている。すなわち,一般に「正常値」として紹介される角度は,あくまで健側が使えないときの代替の物差しである。前掲の横浜地方裁判所令和4年8月29日判決も,参考可動域角度の150度ではなく健側の実測値145度を分母としている。もともと肘が伸びる被害者で健側の伸展が10度あるような場合には,分母が大きくなる分だけ制限率も大きく算定されるから,後遺障害診断書には健側の実測値も併せて記載してもらう必要がある。
3 参考可動域角度
参考可動域角度は,日本整形外科学会,日本リハビリテーション医学会及び日本足の外科学会が定める関節可動域表示ならびに測定法(2022年4月改訂)によるもので,肘関節については屈曲が0度から145度,伸展が0度から5度であり,合計は150度となる。前腕は回内・回外がいずれも0度から90度で,合計180度である。肘の屈曲は前腕回外位で,前腕の回内・回外は肩の回旋が入らないように肘を90度に屈曲した肢位で測定するものとされている。
参考可動域角度で計算する場合,第12級6号の境界は150度の4分の3である112・5度,第10級10号の境界は2分の1である75度となる。2022年4月改訂の主な変更点は足関節・足部及び趾に関する用語の定義等であり,肘関節及び前腕の参考可動域角度は改訂の前後で変わっていない。労災保険の測定要領も同学会基準に準拠して定められたものであるから,改訂によって肘関節の認定が変わることはない。
4 測定は原則として他動運動による
同別添第2の1(1)は,測定値について「原則として,他動運動による測定値による」とし,他動運動による測定値を採用することが適切でないものについては自動運動による測定値を参考とするとしている。その例として挙げられているのは,末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となり他動では可動するが自動ではできない場合と,関節を可動させると我慢できない程度の痛みが生じるために自動では可動できないと医学的に判断される場合である。この点について,秋田地方裁判所令和元年10月23日判決(平成30年(ワ)第76号)は,測定した医師が日本整形外科学会整形外科専門医かつ日本手外科学会専門医であって測定につき格別の利害関係もないことから,通常の方法と異なる測定によって過大な他動可動域を測定したと疑う合理的な理由はないとして,自動運動による測定値によるべき場合には当たらないと判断している。
肘関節については,通達自身が固有の注意を述べている。すなわち,「肘関節では,その伸展筋が麻痺していても,下垂位では,自然に伸展する」として,測定姿勢によって値が変わることを指摘し,「各論において述べる基本的な測定姿勢のほか,それぞれの事情に応じ,体位を変えて測定した値をも考慮して運動制限の範囲を判定しなければならない」としている。上腕三頭筋の機能が失われていても,腕を垂らせば重力で肘が伸びるため,測定肢位によっては伸展制限が過小に評価され得るということである。
5 肘関節には参考運動が定められていない
同別添第1の1(2)は,各関節の運動を主要運動と参考運動に区別する表を掲げている。この表において,肘関節の主要運動は屈曲・伸展であり,参考運動の欄には何も記載されていない。参考運動が定められているのは,せき柱(頸部・胸腰部),肩関節(伸展,外旋・内旋)及び手関節(橈屈,尺屈)と股関節(外旋・内旋)だけであって,肘関節,ひざ関節,足関節及び前腕には参考運動がない。
このことは実務上大きな意味を持つ。同別添第1の2(3)は,「主要運動の可動域が1/2(これ以下は著しい機能障害)又は3/4(これ以下は機能障害)をわずかに上回る場合に,当該関節の参考運動が1/2以下又は3/4以下に制限されているときは,関節の著しい機能障害又は機能障害と認定する」とし,「わずかに」とは原則として5度であるとしている。肩関節や手関節の事案では,主要運動が基準をわずかに上回っていても参考運動によって救済される場面が現実に存在するが,肘関節には参考運動が定められていない以上,この救済を適用する余地がない。肘関節の可動域が健側の4分の3をわずかに上回る事案では,同じ上肢の他の関節であれば残されている逃げ道が閉ざされていることになる。
第3 前腕の回内・回外の扱い
1 準用等級による評価
前腕の回内・回外は,解剖学上は近位橈尺関節及び遠位橈尺関節の運動であって肘関節そのものの運動ではないが,等級評価上は独立の項目として扱われる。同通達第2節第3の2(2)アは,「前腕の回内・回外については,その可動域が健側の1/4以下に制限されているものを第10級,1/2以下に制限されているものを第12級に準ずる関節の機能障害としてそれぞれ取り扱う」と定めている。健側の回内・回外の合計が180度であれば,患側の合計が90度以下で第12級に準ずる障害,45度以下で第10級に準ずる障害となる。屈曲・伸展の制限が第12級6号に「該当」するのとは異なり,回内・回外の制限は第12級に「準ずる」ものであるという違いがある。
2 肘関節部の骨折では「いずれか上位」となる
同アはさらに,「回内・回外の可動域制限と同一上肢の関節の機能障害を残す場合は,併合の方法を用いて準用等級を定める」としつつ,「ただし,手関節部又はひじ関節部の骨折等により,手関節又はひじ関節の機能障害と回内・回外の可動域制限を残す場合は,いずれか上位の等級で認定する」と定め,注記において「手関節部の骨折等の場合には手関節と回内・回外が,ひじ関節部の骨折等の場合にはひじ関節と回内・回外に障害を残すことが一般的である」としている。すなわち,橈骨頭骨折,肘頭骨折,上腕骨遠位端骨折といった肘関節部の骨折では,屈曲・伸展の制限と回内・回外の制限が併存するのが臨床上通常であることを前提に,あえて併合による繰上げを否定しているのである。この結果,肘関節の機能障害が第12級6号,前腕の回内・回外の制限が第12級に準ずるものである場合でも,等級は第12級にとどまる。
この処理を正面から適用したのが,大阪高等裁判所令和2年5月28日判決(令和2年(ネ)第148号)である。同判決は,「一三級以上に該当する後遺障害が二つ以上あるときは,重い方の後遺障害の等級を一級繰り上げるのが通常であるが,肘関節部の骨折等の場合には肘関節と前腕の回内・回外に障害を残すことが一般的であることから,手関節部又は肘関節部の骨折等により,手関節又は肘関節の機能障害と前腕の回内・回外の可動域制限を残す場合は,等級を繰り上げることなく,いずれか上位の等級で認定すべきである」と述べ,労災補償の実務書である『労災補償 障害認定必携』(第16版)を参照している。事案は左橈骨頭骨折,同骨折術後の偽関節及び左尺骨骨幹部骨折であり,他動値は肘の屈曲が右150度・左115度,伸展が右5度・左マイナス20度,前腕の回内が右80度・左10度,回外が右135度・左60度であった。肘関節は左95度・右155度で約61パーセント,前腕は左70度・右215度で約33パーセントとなり,いずれも第12級又は第12級に準ずるものであるから,両者を併せて考慮しても第12級にとどまるとされた。
他方,前腕骨骨幹部の骨折など肘関節部以外の受傷によって回内・回外だけが制限された場合には,このただし書の適用がなく,同一上肢の関節の機能障害との間で併合の方法を用いる余地が残る。骨折線が骨端部にあるか骨幹部にあるかによって等級が一段階変わり得るということであるから,画像上の骨折部位を後遺障害診断書及び画像資料で押さえておく必要がある。
第4 可動域制限の原因と因果関係
1 肘が拘縮しやすい理由
肘は,腕尺関節,腕橈関節及び近位橈尺関節という三つの関節が単一の関節包と滑膜腔を共有する構造をとっており,内側及び外側の側副靱帯が全可動域を通じて緊張し,腱,筋及び皮膚が近接している。2024年に公表された専門家インタビュー論文は,こうした解剖学的な複雑さのゆえに,肘は他の関節に比べて外傷又は手術の後に可動域喪失を来しやすいと指摘している。外傷後の肘の拘縮は,関節包・靱帯・筋等の関節周囲軟部組織及び関節をまたぐ異所性骨化による関節外性のもの,関節内骨折によって関節面の解剖が変化した関節内性のもの,及びその混合型に分類されている。
拘縮は受傷した関節に限って生ずるものでもない。仙台地方裁判所平成28年1月8日判決(平成26年(ワ)第132号)が前提事実として摘示する自賠責保険の認定によれば,右鎖骨骨折及び右橈骨遠位端骨折を負った被害者について,右肩関節の機能障害は鎖骨骨折後の拘縮によるものとして第10級10号,右肘関節の機能障害は橈骨骨折後の拘縮によるものとして第12級6号とされ,両者は同一系列の障害であるから施行令別表第二備考第6号により併合の方法を用いて第9級相当とされている。手関節部の骨折であっても,固定期間中の廃用等を介して肘関節に拘縮が及ぶことがあるから,受傷した部位以外の関節についても可動域を測定しておく実益がある。
2 異所性骨化
異所性骨化は肘周囲の外傷後に生じやすく,可動域制限の原因となる。2021年に公表された研究は,肘関節周囲の骨折又は脱臼の後に拘縮解離術を受けた49例について異所性骨化の発生部位を分類し,その部位が受傷型に対応することを報告している。特に,前腕近位部の関節外骨折では4例中3例に近位橈尺骨癒合が生じており,これは前腕の回内・回外が完全に失われることを意味する。前記のとおり回内・回外は独立の準用等級の対象であるから,受傷部位に応じて,屈曲・伸展だけでなく回内・回外の測定値も併せて取得しておく必要がある。
3 廃用性又は心因性の制限との切り分け
通達の別添第2の1(1)は,「関節の機能障害は,関節そのものの器質的損傷によるほか,各種の原因で起こり得るから,その原因を無視して機械的に角度を測定しても,労働能力の低下の程度を判定する資料とすることはできない」とし,制限の原因を器質的変化によるものと機能的変化によるものとに大別した上,機能的変化には神経麻痺,疼痛及び緊張によるものがあるとしている。また,同別添は関節の共働運動を利用することによって心因性の運動制限の診断や詐病の鑑別に役立つことがあるとし,通達本体は,ギプス固定による廃用性の機能障害については将来における障害の程度の軽減を考慮して等級を認定するとしている。
可動域の測定値そのものではなく,その原因となる器質的損傷の立証が出発点になるという点を端的に述べたのが,大阪地方裁判所平成30年12月25日判決(平成29年(ワ)第5304号)である。同判決は,被害者が肩関節及び肘関節の可動域制限をそれぞれ第12級6号に当たると主張したのに対し,「そもそも機能障害を認定するには,事故により関節の動きが制限される原因となる器質的損傷が生じたことが必要となるところ,本件においては,これを認めるに足りる証拠はなく,原告の主張を採用することはできない」として,測定値の当否に立ち入ることなくいずれも排斥した。
この切り分けが正面から問題となったのが,前掲の秋田地方裁判所令和元年10月23日判決である。同判決は,静脈穿刺により右前腕の尺骨神経を損傷した事案について,「尺骨神経損傷により通常生ずる障害は,尺骨神経の支配領域に照らし,環指及び小指の感覚傷害や屈曲力低下などであり,損傷部位よりも近位の関節の機能障害を当然に引き起こすものではない」とした上,右肩関節及び右肘関節の可動域制限は「本来,安静が必要な状況下での右上肢の使用に起因するものであったり,心因性のものであったり,あるいはその両方によるものである可能性が高い」として相当因果関係を否定した。もっとも,同判決は「可動域制限が生ずることになった最初のきっかけが本件受傷にあること(事実的因果関係の存在)自体は否定されるものではない」とも述べており,事実的因果関係と相当因果関係とを区別している。
これと対照的なのが,東京地方裁判所令和5年6月9日判決(令和2年(ワ)第31747号,自保ジャーナル2159号21頁)である。同判決は,追突事故の被害者について,関節そのものの画像所見ではなく神経伝導速度検査及び針筋電図等の神経学的検査の結果から,「左上肢の関節可動域制限については,神経学的検査結果と相まって可動域制限の原因となる器質的損傷が立証されているというべきである」として,左肩関節を第10級10号,左肘関節を第12級6号と認定し,併合第9級とした。自賠責保険の認定が併合第14級であったのに対し,大きく上位の等級が認められた事案である。他方,同判決は左下肢の可動域制限については器質的損傷の立証がないとしており,同一の被害者についても部位ごとに判断が分かれている。
4 人工肘関節,動揺関節及び併合
人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節については,可動域が健側の2分の1以下に制限されているものは「関節の用を廃したもの」として第8級6号,それ以外のものは「関節の機能に著しい障害を残すもの」として第10級10号とされる。すなわち,人工肘関節に置換した場合は,可動域が良好であっても第10級を下回ることはない。上肢の動揺関節については,常に硬性補装具を必要とするものを第10級に準ずる関節の機能障害,時々硬性補装具を必要とするものを第12級に準ずる関節の機能障害として取り扱い,習慣性脱臼は第12級に準ずるものとして取り扱う。動揺関節の立証方法については,ストレスレントゲン撮影と後遺障害も参照されたい。
併合については,一上肢の三大関節のすべての関節の機能に著しい障害を残すものは第8級,すべての関節の機能に障害を残すものは第10級に準ずる障害として取り扱われる。等級表に組合せの定めがない場合には併合の方法を用いて準用等級を定めることになり,前掲の東京地方裁判所令和5年6月9日判決のように,肩関節の第10級と肘関節の第12級を併合して第9級とする処理がされる。なお,骨折部にキュンチャー等を装着したためにそれが機能障害の原因となる場合は,除去を待って等級の認定を行うものとされている。
第5 可動域制限が日常生活及び就労に及ぼす影響
1 日常生活動作が要求する可動域
肘関節の機能的可動域については,1981年に公表された生体力学的研究が現在も基準として参照されている。同研究は健常者33名について15の日常生活動作に要する肘の屈曲及び前腕の回旋を電気角度計で同時測定し,研究の対象とした日常生活動作の大半は屈曲30度から130度までの100度の運動弧と,回内・回外各50度の合計100度の回旋によって遂行できると結論づけた。もっとも,同研究自身が,後頭部に手を届かせるには約140度の屈曲を要し,靴紐を結ぶには15度まで伸ばす必要があると述べており,「100度あれば足りる」というのはあくまで平均像である。
2 現代的な動作が要求する可動域
より新しい研究は,この古典的な運動弧では足りない動作があることを示している。2011年に公表された三次元光学追跡による研究は,健常者25名に6種の姿勢課題と11種の機能課題を行わせ,携帯電話を耳に当てる動作では屈曲が142度前後に達し,運動弧も130度と最大であったこと,キーボード入力では回内が65度と最大であったこと,ドアを開ける動作では回外が77度と最大であったこと,フォークの使用では回内・回外の運動弧が103度に達したことを報告し,日常生活動作に必要な肘の可動域は従来の報告より大きい可能性があると結論づけている。2016年に公表された研究も,八つの日常生活動作をすべて遂行するには肘の屈曲が0度から121度まで必要であったとしている。
これらを踏まえると,第12級6号の上限である合計約112度という水準は,携帯電話の操作やキーボード入力といった現代の生活及び就労に不可欠な動作を,後述する代償なしには遂行し得ない水準であるということになる。他方で,1995年に公表された研究は,健常者50名100肢について装具で肘の可動域を15度刻みで制限しながら12種の日常生活動作を行わせ,隣接関節による代償動作及び工夫を許せば屈曲75度から120度までの45度の運動弧で全課題を遂行できたとしている。損害の程度が争われる場面では,この研究が「その程度の制限なら支障はない」という主張の根拠として用いられることがある。しかし同研究の結論は代償を許すことを前提とするものであり,また当時の課題設定には携帯電話やキーボードの操作が含まれていない。
3 屈曲の喪失と伸展の喪失は等価でない
同じ合計値であっても,失われたのが屈曲側か伸展側かによって支障の内容は異なる。2015年に公表された三次元動作解析研究は,健常者12名に可調節の肘装具を装着して三段階の拘縮を再現し,11種の日常生活動作を行わせた上で,肘の屈曲の喪失は伸展の喪失よりも多くの動作に影響すると結論づけている。前記の1981年の研究に照らしても,後頭部に手を届かせる動作や整容・食事のように身体に手を近づける動作は深い屈曲を要するのに対し,伸展の喪失は主として身体から離れた位置へ手を届かせる場面で問題となる。前記の2024年のインタビュー論文も,伸展の喪失は身体周囲の空間における手の使用を損ない,屈曲の喪失は整容及び身の回りの動作における手の使用を制限すると整理している。
第2の1で述べたとおり,等級認定は屈曲と伸展の合計値のみを見るため,この差異は等級に反映されない。屈曲側を大きく失った被害者と伸展側を大きく失った被害者とが同じ第12級6号となる以上,労働能力喪失率や慰謝料の主張においては,どちらの運動が失われたかと,それが当該被害者の具体的な生活及び業務にどう作用するかを個別に主張立証する必要がある。
4 患肢を超えた影響
肘の拘縮の影響は患側上肢にとどまらない。2015年に公表された歩行分析研究は,健常者40名について肘装具を30度,90度及び120度の屈曲位で固定して模擬的な拘縮を作り,いずれの条件でも歩行速度及び歩幅が対照条件と比べて有意に低下し,単脚支持期が短縮し両脚支持期が延長したことを報告している。速度差は毎秒0・03メートルから0・05メートル程度と小さいものの,腕の振りが損なわれることが歩行に影響することを示しており,「上肢の障害であるから歩行や移動には影響しない」という説明が当然には成り立たないことを意味する。
第6 代償動作
1 代償の担い手と代価
前記2015年の三次元動作解析研究は,肘の屈曲の喪失が体幹の前屈,手関節の掌屈及び橈屈,並びに肩関節の屈曲・外転・上腕の内旋の複合運動によって代償され,肘の伸展の喪失は主として体幹の前屈によって代償されると報告している。すなわち,屈曲を失った被害者は頸肩腕と腰の三系統に負担を分散させることによって動作を成立させており,伸展を失った被害者は腰を折ることによってこれを補っている。代償に使える体幹の運動範囲にも限りがあり,前記2016年の研究は日常生活動作遂行時の体幹の最大運動が側屈23度,軸回旋32度,屈伸59度であったとしている。頸椎捻挫,腰椎捻挫又は肩関節の障害を併発している被害者では,代償の原資そのものが損なわれていることになるから,肘単独の制限から想定される以上の支障が生じ得る。
2 前腕の回旋の喪失は肩が代償する
前腕の回内・回外の喪失については,2012年に公表された研究が具体的な数値を示している。同研究は健常者6名に前腕を回外位又は中間位で固定する装具を装着させ,ドライバーの使用等5種の課題を行わせたところ,ドライバーの使用における前腕回旋が77・6度から11・3度又は18・2度に制限された状態では,肩関節の外転・内転の運動範囲が57・3度又は62・8度,内旋・外旋が37・1度又は44・2度それぞれ有意に増加したと報告し,肘関節自体は前腕の回旋に有意に寄与しないとしている。前腕の回旋を失った被害者は,肩を余分に大きく動かすことによって課題を遂行しているということであり,肘関節部の骨折によって回内・回外の制限を負った被害者は,等級上は前記のとおり併合されないにもかかわらず,肩関節に構造的な過負荷を負うことになる。
3 「できるようになったこと」と「治ったこと」の区別
代償動作をめぐっては,見解が対立しているように見える資料がある。前記2024年のインタビュー論文は,肘の運動弧は手関節及び肩関節によって代償されないと明言しており,前記の各代償研究と相容れないようにも読める。もっとも,前者は手を空間内の目標位置に運ぶという肘固有の機能が他の関節では置き換えられないことをいうものであり,後者は体幹,肩及び手関節の余分な運動を動員すれば課題自体は遂行できることをいうものであって,「課題を遂行できるか」と「運動として等価か」を区別すれば両立する。すなわち,代償によって動作は成立するが,それは正常な運動パターンではなく,より大きな運動と他部位の負担を要する。
この区別を裏づける臨床経過を認定したのが,前掲の横浜地方裁判所令和4年8月29日判決である。同判決の認定事実によれば,被害者は平成29年6月19日の診察時に「左上肢肘の関節可動域の制限で,左手で髭剃りや右肩の洗体ができなくて困っている」と述べており,その時点の他動値は屈曲95度・伸展マイナス20度であった。ところが約二週間後の同年7月3日の診察では,「左肘の関節可動域は余り変化がなかったが,左手は顔まで届くようになり,右肩も触れるようになった」と記録されている。可動域はほとんど変わらないまま動作だけが可能になったという経過であり,これは代償動作の獲得を示すものと考えられる。損害額が争われる場面で「現に日常生活を送れている」という反論がされたときは,動作の可否と関節機能の回復とが別であることを,このような臨床経過の記録に基づいて示すことが考えられる。
第7 裁判例にみる判断の分かれ目
肘関節の可動域制限を正面から扱った裁判例のうち,判例秘書プラスで判決全文を確認したものを掲げる。いずれも裁判所ウェブサイトの裁判例検索には掲載されていない。同検索の対象は判例集登載のものと主要判決速報等に限られており,交通事故の後遺障害等級を争う下級審判決はほとんど含まれないため,掲載がないことは判決が存在しないことを意味しない。
| 裁判所・裁判年月日 | 事件番号 | 主な判断の分かれ目 |
|---|---|---|
| 大阪高等裁判所令和2年5月28日判決 | 令和2年(ネ)第148号 | 前腕の回内・回外との「いずれか上位」処理,測定時期の選択 |
| 東京地方裁判所令和4年3月18日判決 | 令和元年(ワ)第31497号 | 測定方法の適否,等級と労働能力喪失率の分離 |
| 東京地方裁判所令和5年2月15日判決 | 令和元年(ワ)第29766号 | 4分の3基準の当てはめ |
| 東京地方裁判所令和5年6月9日判決 | 令和2年(ワ)第31747号 | 神経学的検査による器質的損傷の立証 |
| 横浜地方裁判所令和4年8月29日判決 | 令和2年(ワ)第1537号 | 合計値の計算方法,代償動作の獲得 |
| 京都地方裁判所令和6年10月3日判決 | 令和5年(ワ)第1574号 | 第12級と第10級の境界 |
| 秋田地方裁判所令和元年10月23日判決 | 平成30年(ワ)第76号 | 相当因果関係,他動運動による測定値の優先 |
| 大阪地方裁判所平成30年12月25日判決 | 平成29年(ワ)第5304号 | 器質的損傷の立証の要否(第4の3で扱う) |
| 仙台地方裁判所平成28年1月8日判決 | 平成26年(ワ)第132号 | 受傷部位以外の関節に及んだ拘縮(第4の1で扱う) |
1 測定方法の適否が等級を決した事例
東京地方裁判所令和4年3月18日判決(令和元年(ワ)第31497号)は,左橈骨頭骨折の事案について,同一の被害者に関する三通りの測定値が証拠として提出された事例である。第一回の測定は,被害者をいすに座らせた状態で肩関節を90度屈曲させ,上肢をもって肘関節の可動域を横から見た角度を測定するというものであった。被害者は,測定要領に従ったものではない可能性があるとの助言を受けて再測定を依頼し,同じ医師が測定要領に則って測定した結果は,肘の伸展が右10度・左マイナス10度,屈曲が右140度・左100度,前腕の回内が右100度・左90度,回外が右100度・左80度であった。さらに約三年後のセカンドオピニオンでは,伸展が右0度・左マイナス30度,屈曲が右135度・左80度,回内が右90度・左30度,回外が右90度・左40度と記録されている。
裁判所は,第一回の測定方法が測定要領と異なるものであった上,通達別添が「被測定者の姿勢と肢位によって,各関節の運動範囲は著しく変化する,特に,関節自体に器質的変化のない場合にはこの傾向が著しい」としていること,測定した医師自身も測定の際の姿勢や見る向きによって結果が変わり得る旨を述べていることを考慮し,第一回測定を前提に後遺障害の程度を判断することは相当でなく,測定要領に則った測定を前提とすべきであるとした。その上で,左肘の可動域は健側の4分の3以下に制限されているとして第12級6号を認定している。測定要領に則った値では左90度・右150度で60パーセントとなり第12級であるのに対し,セカンドオピニオンの値では左50度・右135度で約37パーセントとなり第10級の水準に達することからも,どの測定を採用するかによって等級が一段階動き得ることが分かる。
2 測定時期の選択
前掲の大阪高等裁判所令和2年5月28日判決では,加害者側が,被害者が偽関節手術を受けた後の時点における肘関節の可動域が健側の4分の3以下に制限されていないとして機能障害を争った。これに対し同判決は,「偽関節手術から症状固定までの間に,仮骨形成の程度,骨の癒合の状態は変化しており,その途中の時期の可動域の測定結果をもって,後遺障害の有無を判断することは相当でない」としてこれを排斥している。他方,前掲の秋田地方裁判所令和元年10月23日判決は,右手関節について,複数回の測定のうち一部の時期の値は健側の4分の3以下であったものの,最も新しい時期の測定値が4分の3を超えていたことから機能障害を認めなかった。いずれの時点の測定値を採るかは結論を左右するから,症状固定に至るまでの測定値の推移そのものを主張立証の対象とすべきである。なお前掲の横浜地方裁判所令和4年8月29日判決及び京都地方裁判所令和6年10月3日判決は,いずれも症状固定日を可動域の推移に照らして判断している。
3 第12級と第10級の境界
京都地方裁判所令和6年10月3日判決(令和5年(ワ)第1574号)は,左尺骨肘頭骨折(関節内骨折)の事案について,加害者側が「拘縮をきたすとは考えられず,後遺障害が残存したとはいえない。残存したとしても第12級6号にとどまる」と争ったのに対し,肘頭骨折後の拘縮による可動域制限が健側である右肘関節の可動域角度の2分の1以下に制限された状態(他動で屈曲115度,伸展マイナス55度)で残存したとして,第10級10号を認定した。屈曲が115度と比較的保たれていても,伸展がマイナス55度であれば合計は60度にとどまり,第10級の水準に達する。第2の1で述べた合計値評価の帰結が端的に現れた事例である。同判決は左肩関節の第14級9号と併せて併合第10級とし,労働能力喪失率27パーセント,喪失期間26年として後遺障害逸失利益2881万8331円を認め,過失相殺をせずに3477万3116円の請求を全部認容している。
4 4分の3基準の当てはめが明示されなかった事例
東京地方裁判所令和5年2月15日判決(令和元年(ワ)第29766号)は,水上バイクに牽引された浮き輪に乗っていた被害者が停泊中の船舶に衝突した事故について,症状固定時の左肘関節の可動域角度の他動値が125度であるのに対して健側である右肘は145度であること,重量物を持つと左肘付近が痛み頭が洗いにくいこと,症状固定から約三年半後の本人尋問時にも可動域制限が残っていることから,将来においても回復が困難であるとして第12級6号に該当すると判断した。もっとも,125度は145度の約86パーセントであって,4分の3という基準を数値上は満たしていない。判決文中で「4分の3」という語が現れるのは被害者の主張部分のみであり,裁判所は基準への当てはめを明示していない。基準を機械的に適用しない例として位置づけられるが,判決が理由を述べていないため,射程は慎重に見るべきである。なお同判決は,左肘関節の第12級6号と股関節の第12級7号及び第13号を併合して第12級とし,労働能力喪失率を14パーセントとしており,系列を異にする第12級が複数あるにもかかわらず繰上げをしていない点についても理由が述べられていない。
5 等級と労働能力喪失率の分離
前掲の東京地方裁判所令和4年3月18日判決は,左肘の第12級6号と右足の第10級とを併合して第9級と認定しながら,労働能力喪失率については第12級程度の14パーセントにとどめた。その理由として同判決が挙げるのは,被害者が症状固定前に医師に対して肘に関してはそれほど困っていない旨を申告し,症状固定日にも日常生活に関して困らない旨を申告していたこと,加除訂正前の後遺障害診断書に自覚症状が違和感程度であると記載されていたこと,被害者がシステムエンジニアであり左肘が利き腕でないこと,事故前年の年収633万0426円に対して症状固定後の年収が653万2750円と増額していることである。
もっとも,同判決が認定した後遺障害診断書の自覚症状欄には,「歩行中に左腕を振ると左肘を伸ばした時に左肘外側の痛みが増強する」,「パソコンタイピング中に左肘を曲げていると左肘の外側あたりが痛む」との記載がある。前記第5で述べた腕の振りと歩行の関係,及びキーボード入力が回内65度を要するという知見に照らせば,これらは肘の障害として理解しやすい訴えであるが,初期に医師へ「困っていない」と申告していたことがそれを上回って考慮されている。同様の構造は前掲の大阪高等裁判所令和2年5月28日判決にも現れており,同判決は,被害者が本人尋問で「ドアノブを回せない,2キログラム程度の物すら持てない」と供述したのに対し,前腕の回内・回外が健側の4分の1以下には制限されていないこと,重労働の許可がされていること,後遺障害診断書の自覚症状欄に「左では重い物(5キログラム程度)までしか持てない」,「大きな箱を持ちにくい」と記載されていることに照らして,関節の機能に著しい障害を残すとまではいえないとした。ドアノブを回す動作が回外77度を要することは前記のとおりであり,同事案の回外は右135度に対し左60度と半減しているが,等級はこれによって動いていない。
第8 賠償額及び資料収集上の確認事項
1 自賠責保険の水準
第12級6号に該当する場合,自賠責保険の保険金額の限度は施行令別表第二により224万円であり,そのうち後遺障害に対する慰謝料等の額は支払基準第3の2により94万円である。逸失利益の算定に用いる労働能力喪失率は,同基準の別表Ⅰにより第12級で100分の14であり,第11級は100分の20,第10級は100分の27,第13級は100分の9である。裁判上は自賠責保険の基準を上回る額が認められるのが通例であり,日弁連交通事故相談センター東京支部が編集する『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』の基準が参照される。もっとも,前記第7の5で見たとおり,等級に対応する喪失率がそのまま認められるとは限らず,具体的な業務内容,利き腕か否か,症状固定後の収入の推移といった事情が個別に検討されている。労災保険との関係については,労災事故の示談を参照されたい。
2 後遺障害診断書に記載してもらう事項
以上を踏まえると,肘関節の事案で後遺障害診断書に記載を求めるべき事項は,①患側の屈曲及び伸展の他動値と自動値,②健側の屈曲及び伸展の他動値と自動値,③患側及び健側の前腕の回内・回外の値,④測定が「関節可動域表示ならびに測定法」に則った肢位で行われたこと,⑤可動域制限の原因となる器質的損傷の内容と,それを裏づける画像所見の記載,⑥受傷部位が骨端部か骨幹部かが分かる骨折部位の特定,⑦異所性骨化又は近位橈尺骨癒合の有無である。健側の値がなければ分母が定まらず,前腕の値がなければ準用等級の検討ができない。診療記録の取得については文書提出命令も参照されたい。なお,資料の取得に要する費用については,弁護士費用特約と実費で扱っている。
3 初期の申告及び自覚症状欄の記載
前記第7の5で見た二つの裁判例に共通するのは,被害者が訴訟段階で述べた支障の程度が,診療録又は後遺障害診断書に記録された初期の申告及び自覚症状欄の記載を上回っていたことが,かえって不利に働いたという点である。診断書の自覚症状欄に「重い物(5キログラム程度)までしか持てない」と記載されていれば,本人尋問で「2キログラム程度の物すら持てない」と述べても,その記載を超える主張は採用されにくい。したがって,症状固定に近い時期には,どの動作がどの程度できないのかを具体的かつ正確に医師に伝え,診断書の自覚症状欄に反映してもらうことが重要である。前記第5及び第6で整理した,屈曲側と伸展側のいずれを失ったのか,代償のためにどの部位にどのような負担が生じているのかという視点は,この場面で具体的な訴えを組み立てる手がかりになる。整骨院等での施術については,整骨院・接骨院に関するメモ書きも参照されたい。
出典・参考資料
法令
- 自動車損害賠償保障法施行令(昭和30年政令第286号)別表第二 https://laws.e-gov.go.jp/law/330CO0000000286
- 労働者災害補償保険法施行規則(昭和30年労働省令第22号)別表第一 https://laws.e-gov.go.jp/law/330M50002000022
告示・通達
- 自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号) https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/kijyun.pdf
- 同基準別表Ⅰ(労働能力喪失率表) https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/2001/63aa2969/63aa2969.html ※このページは平成13年の制定当初の版であり,慰謝料額等はその後の改正前の数値である。慰謝料額は前掲のPDF(現行版)による。
- せき柱及びその他の体幹骨,上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準について(平成16年6月4日基発第0604003号,厚生労働省労働基準局長) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb2627&dataType=1&pageNo=1
- 同通達別添「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb2627&dataType=1&pageNo=2
学会基準
- 日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会・日本足の外科学会「関節可動域表示ならびに測定法改訂について(2022年4月改訂)」Jpn J Rehabil Med 58巻10号1188頁~1200頁 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/58/10/58_58.1188/_pdf
裁判例
いずれも裁判所ウェブサイトの裁判例検索に未掲載であり,判例秘書プラスで判決全文を確認した。
- 大阪高等裁判所令和2年5月28日判決(令和2年(ネ)第148号)
- 東京地方裁判所令和4年3月18日判決(令和元年(ワ)第31497号)
- 東京地方裁判所令和5年2月15日判決(令和元年(ワ)第29766号)
- 東京地方裁判所令和5年6月9日判決(令和2年(ワ)第31747号,自保ジャーナル2159号21頁)
- 横浜地方裁判所令和4年8月29日判決(令和2年(ワ)第1537号,交通事故民事裁判例集55巻4号所収)
- 京都地方裁判所令和6年10月3日判決(令和5年(ワ)第1574号)
- 秋田地方裁判所令和元年10月23日判決(平成30年(ワ)第76号)
- 大阪地方裁判所平成30年12月25日判決(平成29年(ワ)第5304号)
- 仙台地方裁判所平成28年1月8日判決(平成26年(ワ)第132号)
文献
- 佐久間邦夫=八木一洋編『交通損害関係訴訟 補訂版』(青林書院,2013年)392頁~393頁
- 小賀野晶一=古笛恵子編『交通事故医療法入門 第2版』(勁草書房,2023年)323頁・327頁
- 稲葉直樹ほか『6つのケースでわかる! 弁護士のための後遺障害の実務』(学陽書房,2020年)59頁~63頁
- Morrey BF, Askew LJ, Chao EY. A biomechanical study of normal functional elbow motion. J Bone Joint Surg Am. 1981;63(6):872-877.
- Vasen AP, Lacey SH, Keith MW, Shaffer JW. Functional range of motion of the elbow. J Hand Surg Am. 1995;20(2):288-292.
- Sardelli M, Tashjian RZ, MacWilliams BA. Functional elbow range of motion for contemporary tasks. J Bone Joint Surg Am. 2011;93(5):471-477.
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