目次第1 改正の概要と効力への影響1 改正の根拠と施行日2 改正後の要件を満たさない協定・決議は無効になる第2 専門業務型裁量労働制1 労使協定に加わった事項2 同意の取り方3 同意の撤回4 対象業務に加わったM&Aアドバイザーの業務第3 企画業務型裁量労働制1 決議に加わった事項2 労使委員会の運営3 定期報告第4 両制度に共通する運用上の留意点1 時間配分の裁量2 みなし労働時間と処遇3 健康・福祉確保措置第5 弁護士が確認する資料と論点1 使用者側の点検2 労働者側から残業代を請求する場面第6 別セッションで掘り下げるテーマと未検討点第7 出典・関連記事
第1 改正の概要と効力への影響
1 改正の根拠と施行日
裁量労働制には,労使協定で定める専門業務型裁量労働制(労働基準法38条の3)と,労使委員会の決議で定める企画業務型裁量労働制(同法38条の4)がある。
どちらも,要件を満たせば,対象業務に就いた労働者は協定又は決議で定めた時間労働したものとみなされる。
令和6年4月1日,労働基準法施行規則等を改正する令和5年厚生労働省令第39号と,企画業務型の指針及び専門業務型の対象業務を定める告示を改正する令和5年厚生労働省告示第115号が施行・適用された(厚生労働省「裁量労働制の概要」)。
法律の条文は改正されておらず,協定事項・決議事項の具体化,労使委員会の運営及び対象業務の追加が省令と告示で行われた。
本記事は,令和8年10月4日にe-Gov法令検索の現行の労働基準法及び労働基準法施行規則,施行通達(令和5年8月2日基発0802第7号。以下「施行通達」という。)及び厚生労働省のリーフレットを確認して,改正の内容と,弁護士が使用者側・労働者側の相談で確認する事項を整理するものである。
令和6年4月の厚生労働省関係の制度変更の全体は,令和6年4月の厚生労働省制度変更―労働条件明示,裁量労働制,時間外労働の上限規制及び医療保護入院の実務確認で扱っている。
2 改正後の要件を満たさない協定・決議は無効になる
施行通達18頁は,令和6年4月1日を有効期間に含む専門業務型の労使協定及び企画業務型の決議は,改正後の省令及び告示に適合したものでない場合には,同日以降無効となるとしている。
厚生労働省のリーフレット「裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です」も,新たに又は継続して裁量労働制を導入するには,専門業務型の労使協定と企画業務型の運営規程・決議に新しい事項を加え,導入・適用までに(継続導入する事業場では令和6年3月末までに)労働基準監督署へ協定届・決議届を届け出る必要があるとしていた。
改正前から裁量労働制を続けている事業場では,令和6年4月以降の協定・決議に新しい事項が入っているかを確認しないと,みなし労働時間制が適用されているという前提自体が崩れることがある。
なお,令和6年3月31日以前に改正後の内容で協定・決議をして新様式で届け出た場合は,施行時に改めて届け出る必要はないとされた(施行通達19頁)。
第2 専門業務型裁量労働制
1 労使協定に加わった事項
労働基準法38条の3第1項6号は,同項1号から5号までの事項のほか厚生労働省令で定める事項を協定で定めるとしている。
これを受けた現行の労働基準法施行規則24条の2の2第3項は,次の事項を定めている。
①使用者は,労働者を対象業務に就かせたときは協定で定める時間労働したものとみなすことについて当該労働者の同意を得なければならないこと及び当該同意をしなかった当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと(1号)
②同意の撤回に関する手続(2号)
③労使協定の有効期間の定め(3号)
④労働時間の状況並びに健康及び福祉を確保するための措置の実施状況,苦情の処理に関する措置の実施状況並びに同意及びその撤回について,労働者ごとの記録を有効期間中及びその満了後に保存すること(4号)
使用者は,④の記録を作成して保存しなければならない(同規則24条の2の2の2)。
保存期間は,条文上は有効期間中及び満了後5年間であるが,同規則71条により当分の間は3年間とされている。
2 同意の取り方
施行通達2頁~3頁は,同意は労働者ごとに,かつ,労使協定の有効期間ごとに得る必要があるとしている。
また,制度の概要,同意した場合に適用される評価制度とこれに対応する賃金制度の内容,同意しなかった場合の配置及び処遇を,使用者が労働者に明示したうえで説明して同意を得ることを協定で定めることが適当であるとしている。
さらに,処遇等について十分な説明がなされなかったこと等により,同意が労働者の自由な意思に基づくものとは認められない場合には,労働時間のみなしの効果が生じないことがあるとしている。
この記載からすると,使用者側の点検では,同意書が存在するかだけでなく,同意を得た時期が協定の有効期間ごとになっているか,同意の前に評価・賃金制度と不同意の場合の処遇を書面で示したかを確認することになる。
労働者側からみなしの効果を争う場面では,同意書の日付,同意の前に交付された説明資料及び同意を求められた際の状況が検討の対象になる。
(続きを読む...)裁量労働制の令和6年4月改正―本人同意と撤回,労使委員会,健康・福祉確保措置及び継続導入の手続(AI作成)