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賃金・労働時間・休暇

本人希望の転勤・勤務地変更と手当―会社命令型との区別,社宅・赴任旅費及び就業規則の改定(AI作成)

目次

第1 本人希望の転勤を処理する判断順序第2 会社命令型と本人希望型を区別する1 異動の名称ではなく実質で分類する2 本人に希望勤務地への異動請求権が当然に生じるわけではない第3 現行規程に区別がなければ個別除外は慎重に行う1 就業規則の文言・目的・運用を確認する2 就業規則より不利な個別合意には労働契約法12条がある第4 将来に向けた本人希望型制度は別建てできる1 申請制度と会社命令制度を別章又は別規程にする2 就業規則の変更手続と既存社員への適用を分ける第5 管理職だけを会社命令型の対象とする場合1 「管理職」を客観的に定義する2 管理職限定だけで全ての差が正当化されるわけではない3 差別的取扱いとキャリア機会を点検する第6 手当・旅費・社宅に差を設ける基準1 給付の目的を分解する2 労働法上の支給義務と税務上の取扱いを分ける第7 会社都合と本人都合が混在する場合第8 規程と書式の条項例1 定義条項2 申請と決定3 労働条件の確認4 費用と手当第9 運用に必要な書類第10 制度改定の確認事項第11 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 行政資料
第1 本人希望の転勤を処理する判断順序

本人が勤務地の変更を希望した場合でも,申出だけで転勤が成立するわけではない。

労働契約,就業規則及び労働協約を確認した上で,会社が人員配置上の必要性,受入部署,職務内容及び労働条件を検討し,異動を決定する必要がある。

その際は,次の順序で整理すると,異動の可否と手当の有無を混同しにくい。

①現在の就業規則・赴任旅費規程・社宅規程が,本人希望の転勤を適用対象から外しているかを確認する。

②異動の主たる目的が会社の業務上の必要にあるのか,本人の生活上又はキャリア上の希望にあるのか,双方にあるのかを記録する。

③現行規程を適用する事案か,将来に向けて別制度を設けるべき事案かを分ける。

④異動の決定と,赴任旅費,社宅,支度金,単身赴任手当等の給付決定を別々に行う。

⑤労働条件の変更,税務,社会保険,給与控除及び差別的取扱いの問題を個別に確認する。

本記事は,本人の申出を契機として同一使用者内で勤務地を変更する場面を対象とする。

使用者が一方的に命じる転勤の有効性は,配転命令(転勤命令)の有効性―就業規則の根拠,職種・勤務地の限定合意と東亜ペイント事件の判断枠組み(AI作成)で扱っている。

第2 会社命令型と本人希望型を区別する
1 異動の名称ではなく実質で分類する

「転勤希望制度」「自己都合転勤」「社内公募」等の名称だけで法的性質は決まらない。

申出の端緒,会社側の配置上の必要性,候補者の選定,異動を断った場合の取扱い及び費用負担を総合して分類する。

類型主な特徴記録すべき事項会社命令型会社の業務上の必要に基づき,対象者と勤務地を会社が選ぶ必要性,人選理由,発令日,赴任日,負担軽減措置本人希望型本人が生活上又はキャリア上の理由で申し出て,会社が受入れの可否を判断する申出理由,受入条件,撤回期限,労働条件への同意社内公募型募集条件を示して応募を受け,選考後に会社が異動を決定する募集要項,選考基準,合否,異動条件混合型本人の希望と会社の業務上の必要が併存する各目的の比重,会社が求めた条件,費用ごとの負担理由

会社が本人の希望を受け入れた後に正式な異動命令を出したというだけで,全ての費用が当然に会社命令型になるわけではない。

反対に,会社が欠員補充や育成のために積極的に異動を求めながら,申請書に本人が署名したことだけを理由に本人希望型とすることも適切ではない。

2 本人に希望勤務地への異動請求権が当然に生じるわけではない

一般に,労働契約又は社内制度に特別の定めがなければ,労働者が希望した勤務地へ異動させることを会社に当然に請求できるわけではない。

会社は,欠員,受入部署の業務,必要な技能,賃金・等級,通勤可能性及び他の従業員との公平を検討して,申出を承認しないことができる。

ただし,配偶者の転勤,子の養育,家族の介護,治療その他の事情を申告した労働者については,適用される法令,休業・短時間勤務等の制度及び社内規程を確認し,申出を検討した経過を残すことが望ましい。

第3 現行規程に区別がなければ個別除外は慎重に行う
1 就業規則の文言・目的・運用を確認する

赴任旅費規程や社宅規程が「会社の命による転勤」だけを対象と明記している場合は,その要件への該当性を検討する。

これに対し,規程が単に「転勤した社員」「転居を伴う人事異動」等を対象とし,本人希望型を除く文言を置いていない場合は,本人の希望が契機であったことだけを理由に全ての手当を外すことは慎重に考える必要がある。

規程の対象は,条文だけでなく,制定目的,関係条項,従来の説明及び運用を踏まえて解釈される。

会社が想定していなかった類型であっても,現行文言がその類型を含むなら,今回だけ適用外とするのではなく,現行規程を適用した上で将来の制度を改めることを検討する。

2 就業規則より不利な個別合意には労働契約法12条がある

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令和8年9月1日からの36協定と労基署の監督指導―月45時間規制は緩和されたのか(AI作成)

目次

第1 結論と本記事の対象1 月45時間の上限規制が緩和されたわけではない2 資料の範囲と確認日第2 変更されていない法律上の上限1 一般の事業における原則2 特別条項にも超えられない上限がある3 変わった点と変わらない点第3 令和8年9月1日から何が変わったか1 時間数だけに着目した一律の指導を見直した2 相談・支援も拡充された第4 特別条項の健康・福祉確保措置1 協定届で選ぶだけでは足りない2 実施記録の保存3 措置は労働者ごとのリスクに結び付けて確認する第5 36協定を点検するときの実務1 協定の成立・内容・届出・運用を分ける2 記録を一つの時系列へまとめる第6 残業代・残業命令・安全配慮義務との関係1 割増賃金の支払義務は別問題である2 36協定だけで残業命令権が決まるわけではない3 安全配慮義務は緩和されていない第7 弁護士・税理士が確認する資料1 弁護士が受任時に確認する事項2 税理士が気付きやすい資料と連携第8 監督統計の読み方第9 関連記事第10 出典・参考資料
第1 結論と本記事の対象
1 月45時間の上限規制が緩和されたわけではない

厚生労働省は,令和8年9月1日から,時間外・休日労働時間数だけに着目して1か月45時間以内への削減を求める一律の監督指導を見直した。
もっとも,労働基準法36条が定める原則月45時間・年360時間の限度時間や,特別条項を設ける場合の法律上の上限は改正されていない。
今回変わったのは法令上の上限ではなく,労働基準監督署が各事業場の事情をどのように確認し,指導するかという行政上の運用である。

監督署は,特別条項付き36協定で定めた健康及び福祉を確保するための措置が実際に実施されているかを重点的に確認し,事業場の状況に応じて必要な指導を行う。
過重労働による健康障害のおそれが高い場合には,改正後も必要な指導が行われるため,月45時間を超えても問題がないという制度ではない。

2 資料の範囲と確認日

本記事は,令和8年10月15日現在の労働基準法,同法施行規則,厚生労働省の令和8年8月19日付け報道発表,同年9月1日の厚生労働大臣会見,令和8年版36協定届の記載例及び令和7年度の監督指導結果を中心に整理する。
監督指導の変更は厚生労働省の公表資料で確認できるが,個別事案で用いられる内部の監督要領や各署の具体的運用をすべて確認したものではない。

第2 変更されていない法律上の上限
1 一般の事業における原則

労働基準法36条は,36協定で定める時間外労働の限度時間を,原則として1か月45時間・1年360時間としている。
対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制では,1か月42時間・1年320時間である。
これらは36協定を締結すると当然に働かせることができる標準時間ではなく,臨時的な事情がない通常の場合の限度時間である。

2 特別条項にも超えられない上限がある

通常予見できない業務量の大幅な増加等へ対応する必要がある場合は,労使の手続を経て特別条項を設けることができる。
それでも,時間外労働は年720時間以内,時間外労働と休日労働の合計は単月100時間未満,同じ合計の2か月平均から6か月平均まではいずれも月80時間以内でなければならない。
また,原則の月45時間を超えることができるのは年6か月以内である。
建設事業,自動車運転の業務及び医師等には別の特例があるため,対象業務を確認して一般則と混同しないことが必要である。

3 変わった点と変わらない点
確認事項令和8年9月1日以後の扱い原則月45時間・年360時間労働基準法上の限度時間は変わらない特別条項の年720時間等法律上の上限は変わらない割増賃金の支払監督指導の見直しとは別であり,支払義務は変わらない監督署の確認時間数だけによる一律指導を見直し,健康・福祉確保措置の実施状況を重点的に確認する健康障害のおそれが高い場合事業場の実態に応じた必要な指導が続く
第3 令和8年9月1日から何が変わったか
1 時間数だけに着目した一律の指導を見直した

厚生労働省の令和8年8月19日付け報道発表は,時間外・休日労働時間数だけに着目して1か月45時間以内への削減を求める一律の指導を見直すと明記している。
その上で,各事業場が36協定で定める健康及び福祉を確保するための措置の実施状況を重点的に確認し,確認した状況に応じた必要な指導を行うとしている。

この説明は,月45時間という法定の限度時間を廃止し,又は特別条項なしの時間外労働を適法にするものではない。
監督指導の着眼点を,時間数のみの一律評価から,労使が定めた措置の履行と個別の健康リスクを含む確認へ改めたものと理解すべきである。

2 相談・支援も拡充された

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転勤に伴う処遇をどう設計するか―支度金,社宅,単身赴任と帰省費用(AI作成)

目次

第1 異動の判断と給付の設計を分ける第2 異動のケースと給付を対応させる1 初回・再転勤・帰任を区別する2 一時金・実費・継続補助を分ける第3 社宅の契約と本人負担を確定する1 家賃上限と負担率を組み合わせる2 税の賃貸料相当額を実際家賃と混同しない第4 単身赴任の開始・終了を事実で管理する第5 帰省費用の税務を行程ごとに見る1 移転旅費は通常必要な範囲を確認する2 業務旅行に付随する帰宅と私的帰省を分ける第6 帰任・再転勤・制度移行の負担を試算する第7 通知・精算・給与控除をつなぐ
第1 異動の判断と給付の設計を分ける

転勤に伴う費用は,移転時の一時金,実費精算,社宅,別居中の継続手当及び帰省費用に分けて設計する。
同じ転勤でも,単身赴任,家族帯同,会社命令型,本人希望型及び帰任では,異動の目的と必要な支援が異なる。
本稿は,給付の入口・計算・終了と税務上の確認を整理する。
本人希望型を現行規程の適用対象から外せるか,将来に向けて別制度を設ける方法及び会社都合と本人都合が混在する場合の扱いは,本人希望の転勤・勤務地変更と手当―会社命令型との区別,社宅・赴任旅費及び就業規則の改定(AI作成)で説明する。
以下の制度例は設計提案であり,法令・公式資料の確認基準日は令和8年10月21日である。

補助を設けたことだけで配転命令が有効になるわけではない。
職種・勤務地の限定合意や権利濫用は,配転命令(転勤命令)の有効性(AI作成)の問題として別に検討する。

第2 異動のケースと給付を対応させる
1 初回・再転勤・帰任を区別する

異動の決定日,赴任日,居住地の変更日,家族の同行日及び帰任日を記録する。
異動の間隔だけでなく,実際に転居費用が再び発生するかを確認する。
前の異動から短期間でも引越しが必要な場合と,同じ住居から勤務先だけが変わる場合を同じにしない。

2 一時金・実費・継続補助を分ける
給付定める事項移転費・支度金対象費用,対象者,定額又は実費,上限,申請及び重複精算社宅契約主体,対象住宅,会社の家賃上限,本人負担及び退去条件単身赴任手当別居の理由,家族の居住状況,開始・終了及び再確認帰省費用業務旅行との関係,対象行程,回数・上限,証憑及び税区分

支度金を給与額に連動させる場合でも,何の費用を補う制度なのかを説明できるようにする。
会社が直接支払った引越費用と本人への一時金が,同じ費用を二重に補っていないかを確認する。
制度上の支給義務と,税務上非課税となる範囲は別である。

第3 社宅の契約と本人負担を確定する
1 家賃上限と負担率を組み合わせる

会社の家賃上限,本人負担率,超過額の負担,駐車場・共益費・更新料及び敷金等を別に定める。
「会社負担は一定率」とだけ書くと,上限を超えた部分にも同じ率を適用するのかが曖昧になる。
家族人数や地域で上限を変えるなら,人数・地域の変更がいつ反映されるかも明示する。

2 税の賃貸料相当額を実際家賃と混同しない

国税庁No.2597によれば,使用人への社宅貸与では,税務上の賃貸料相当額と徴収額により給与課税の範囲を確認する。
賃貸料相当額の50%以上を徴収する場合の扱いも,実際の家賃の50%を徴収するという意味ではない。
会社の家賃上限や本人負担率とは別に,必要な固定資産税の課税標準額等を確認する。

同案内は,現金住宅手当や本人が直接契約する家賃の会社負担を,社宅貸与と区別して給与課税の対象とする。

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家族手当・住宅手当の支給基準―会社の扶養条件と税・社会保険を分ける(AI作成)

目次

第1 「扶養」を三つの制度に分ける第2 会社が支援する対象を文章にする1 家族の範囲と支給目的をそろえる2 住宅手当の条件を独立して定める第3 共働き・育児休業・別居を扱う第4 改正の年月と資料の期間を合わせる1 収入と所得を混同しない2 健康保険の変更を正しい対象に用いる3 税の施行日と対象年分を分ける第5 確認資料と個人情報を絞る第6 開始・終了・遡及精算を記録する第7 課税・割増賃金・待遇差を別に点検する
第1 「扶養」を三つの制度に分ける

家族手当を設計するときは,会社の支給条件,所得税の扶養控除等及び健康保険の被扶養者認定を区別する。
会社の手当は契約・規程に基づく処遇であり,税や健康保険の認定が変わっただけで支給義務が当然に発生又は消滅するとは限らない。
本稿は申請・認定・変更の事務を設計する方法を説明する。
制度例は一般的な設計提案であり,法令・公式資料の確認基準日は令和8年10月14日である。

区分確認する基準会社の家族手当対象家族,生計維持,申請,支給開始・終了及び例外の規程所得税対象年分の所得要件,親族・年齢等の要件及び申告内容健康保険今後の年間収入の見込み,続柄,同居・生計維持等の認定要件
第2 会社が支援する対象を文章にする
1 家族の範囲と支給目的をそろえる

子育て支援,家族の生活費の補助又は住宅費の補助のどれを目的とするかを先に決める。
配偶者,子,親等の範囲,年齢,学生の扱い,同居の要否,別居時の送金及び重複受給を規程にする。
「扶養している家族」という一語に頼ると,担当者ごとに違う認定が生じやすい。

税や健康保険の認定を支給条件に用いる場合は,どの制度のどの認定を参照するのかを特定する。
外部制度の改正に自動で連動させるのか,会社の基準を改定してから反映するのかも決める。
会社独自の条件を設ける場合には,その目的に合う条件か,契約・法令との関係で問題がないかを点検する。

2 住宅手当の条件を独立して定める

住宅手当は,借家・持家の別,契約名義,居住の事実,家賃負担及び社宅との併給を確認する。
家族手当の受給者と世帯主が同じとは限らず,健康保険上の扶養者とも必ずしも一致しない。
何を証明するための書類なのかを明示し,住民票の世帯主であることだけで経済的な負担を推定しない。

第3 共働き・育児休業・別居を扱う

会社の家族手当を夫婦のいずれか一方だけに支給するなら,主な生計維持者の判定期間,届出及び変更の方法を定める。
前年の給与だけを比べる方式では,転職,休業及び復職後の状態を反映できないことがある。
一時的な収入減少と継続的な変更を分ける扱いが考えられるが,会社の規程に根拠を持たせる必要がある。

日本年金機構の被扶養者の届出案内は,健康保険の共同扶養について今後の年間収入を見込む扱いを説明し,育児休業等による一時的な収入の逆転についての取扱いも示している。
これは健康保険の認定の説明であり,会社の家族手当にも同じ結論が当然に適用されるという意味ではない。

進学に伴う別居については,会社が同居を支給条件とするのか,学生の別居を例外とするのかを明示する。
就職,卒業,結婚及び送金の終了が起きたときに,いつ支給条件を再確認するかを定める。
健康保険では後期高齢者医療制度への移行による被扶養者の削除があるが,会社が高齢の親への生活支援を別に設けることとは区別する。

第4 改正の年月と資料の期間を合わせる
1 収入と所得を混同しない

(続きを読む...)家族手当・住宅手当の支給基準―会社の扶養条件と税・社会保険を分ける(AI作成)

賞与制度をどう設計するか―会社・部門・個人の業績,勤怠係数と支給額通知(AI作成)

目次

第1 原資の決定と,個人への配分を分ける第2 会社業績から支給月数を決める第3 部門の目標と,個人の貢献を接続する1 部門ごとの仕事に対応した業績指標2 集団中心点と,評価者調整を混同しない第4 基準額と個人加減算を,二重計上しない算式にする1 基礎となる賃金と,配分表の意味2 創作例で,計算順序を示す第5 勤怠と,休業者・入退社・在籍条件を定める第6 評価の確定,支給決裁,通知と税務を接続する第7 規程,別表,計算設定を一つの版として管理する第8 一次資料による裏付けと,設計提案の範囲
第1 原資の決定と,個人への配分を分ける

賞与制度では,会社業績による原資又は支給月数の決定,部門業績の反映及び個人貢献の配分を分ける設計が考えられる。
全社で同じ月数を使うだけでは部門や個人の違いを表しにくく,個人評価だけで決めると会社の支払負担との関係が見えにくくなる。
三つの層を分ける方式は,各層が何を測り,どの金額へ影響したかを説明するために有用である。
本記事は一般化した設計提案であり,特定の指標・配点・金額表を法律上の標準とするものではない。
確認基準日は令和8年10月14日である。

会社業績,部門業績,個人評価,勤怠及び特別賞与をすべて使う場合は,作用する順序を最初に決める。
同じ成果が複数の層で評価されること自体が常に不適切とは限らないが,何を反映するかが重なっていないかを確認する。
算定期間,確定日,支給日及び対象者を,層ごとに整理する必要がある。

第2 会社業績から支給月数を決める

会社全体の支給月数を業績指標に連動させる方式は,業績による変動と支払負担を説明しやすい。
利益,売上,付加価値又は人件費との比率等を使うなら,指標の定義,対象期間,データの確定時点及び例外を決める。
規程の会計用語と社内管理資料の集計範囲が一致するかも確認する。

人件費と付加価値の関係を使う場合は,その指標に何の費用を含め,付加価値をどう定義するかを明示する。
賞与費用自体が指標の人件費に入るなら,今回の賞与決定との循環をどう解くかを整理する。
前年の確定値,今回決定前の試算又は所定の計算手順等,採用する基準を明らかにし,担当者がその都度異なる値を使わない。

業績値の区分に月数を対応させる表には,上下限,区分境界,赤字,異常値及び特別な増減の判断者を定める。
直近の月が見込値なら,後の確定値との精算を行うのか,決定時点の値で固定するのかも明示する。
目安の月数と,規程上請求できる確定額の関係を曖昧にしない。

第3 部門の目標と,個人の貢献を接続する
1 部門ごとの仕事に対応した業績指標

営業部門では予算達成,製造では生産性や品質,間接部門では支援先の成果や業務品質等を用いる設計が考えられる。
指標の性質が違う部門を,絶対額だけで同じ順位に並べることは難しい。
達成率へ換算する場合も,予算の難易度,前年の水準,市況及び会社が与えた資源の差を検討する。

複数指標を加重平均する場合は,方向,単位及び配点を合わせる。
少ない方が良い事故件数と,多い方が良い売上をそのまま足さず,目標との対応を点数化する必要がある。
相互に似た指標を重く重ねると,意図した以上に一つの成果を優遇するため,項目の関係も点検する。

2 集団中心点と,評価者調整を混同しない

部門の業績に応じて個人評価の中心となる点を動かす方法は,同じ個人貢献でも所属部門の成果を配分へ反映する設計となる。

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役割賃金制度をどう設計するか―等級・号俸,洗替え,昇降格と手当の接続(AI作成)

目次

第1 賃金の各要素に,何を反映するかを決める第2 等級別の号俸表と,評価による動きを設計する1 等級幅と号俸差を組み合わせる2 年間評価を何号の移動へ変換するか第3 上限・下限の洗替えと,翌年度の基準額第4 昇格・降格時の金額の位置付けと,処理順序1 従前額に近い金額と,同じ号俸番号は別の方式2 評価改定・等級変更・手当変更を順序立てる第5 初任・中途採用と,手当・日割計算を整合させる1 初任の格付けと見直し条件2 手当と給与計算の基礎を別に定義する第6 導入・変更と,法的な裏付けの範囲
第1 賃金の各要素に,何を反映するかを決める

役割賃金制度では,役割・資格等級に対応する賃金と,号俸による等級内の位置を組み合わせる方式が考えられる。
基礎的な賃金,役割給及び手当を分ければ,生活・経験,職務の責任及び特定の支給条件を個別に説明しやすい。
ただし,項目名を分けるだけでは目的や法的性質は決まらず,実際の決定・改定・支給条件を確認する必要がある。
本記事は,賃金表と評価,昇降格,単年度の加減算及び手当を接続するための一般的な設計案を説明する。
確認基準日は令和8年10月14日であり,特定の賃金水準・年齢基準・減額方式を推奨するものではない。

基礎部分を年齢や経験で,役割部分を等級・号俸で決める方式では,両者の基準日を分けて管理する。
基準日に決める金額と実際に支給へ反映する月が違う場合は,両日付と対象者を明記する。
給与明細から各要素を計算し直せることが,制度を説明するための基本となる。

第2 等級別の号俸表と,評価による動きを設計する
1 等級幅と号俸差を組み合わせる

各等級に下限・上限を置き,その間を複数の号俸に分ける方式は,同じ等級でも経験や評価に応じた金額差を設ける設計である。
等級間の金額範囲を重ねると,昇格・降格時に従前額に近い位置を選びやすい一方,上位等級の下限より下位等級の上限が高くなることもある。
等級の順番だけで金額の大小を説明せず,表の重なりと号俸の意味を明らかにする。

同じ一号の移動でも,等級ごと又は号俸位置ごとの金額差が違えば,評価による昇給額が変わる。
下限・上限,中間号俸及び等級変更の境界で試算し,同じ評定がどの程度の金額へ結び付くかを説明する。
役割給の増減が賞与の基礎額や退職ポイントにも及ぶ制度では,年収と将来の処遇も確認する。

2 年間評価を何号の移動へ変換するか

年間の評定を号俸の増減へ変換する設計は,評価と金額の関係を明確にしやすい。
一方,単年度の評価が毎年の賃金に蓄積する方式では,同じ評価が続いたときの差が広がる。
据置き・上昇・下降の区分,適用月,再評価後の訂正及び等級変更が同時にある場合の処理順序を定める。

賃金表や増減規則の新設・変更と,既存の有効な制度を適用する査定は区別する。
規程に増減の記載があるだけで,具体的な低評価や減額が正当になるわけではない。
前提事実,評価方法,説明及び賃金算定の接続を確認することが必要である。

第3 上限・下限の洗替えと,翌年度の基準額

上限・下限に達した人について,基準となる位置を固定し,当年の評価による加減算だけを反映して翌年度は基準へ戻す方式が考えられる。
これは,通常の号俸移動による累積方式と異なる設計であり,「洗替え」という名称だけで説明を済ませない。
固定する基準位置,当年の支給額,翌年度の戻り先及び昇降格後の新しい基準を記録する。

創作例として,基準額26万円に当年だけ8000円を加算し,翌年度は再び26万円から評価するなら,翌年度の出発点は26万8000円ではない。

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人事評価制度をどう設計するか―目的別配点,複数評価者,点数調整と処遇への接続(AI作成)

目次

第1 評価の目的と,決定する処遇を先に分ける第2 役割別の項目と,目的別の配点を作る1 成果と行動を,仕事の実態に合わせる2 同じ項目別評価から,目的に応じた結果を作る第3 自己評価,独立した採点,合議の役割を分ける1 複数評価者を置くだけで公平とはしない2 合議では,元の判断と変更理由を残す第4 評価者の甘辛調整と,集団の実績差を区別する1 平均点を動かす設計の利点と限界2 特別加減点と,境界値の運用第5 当年の評定と,昇格に使う累積点を分ける第6 説明と再評価を,当期の訂正へ接続する第7 導入・変更と,判例の射程
第1 評価の目的と,決定する処遇を先に分ける

人事評価制度を設計するときは,能力開発,昇給,資格等級の昇降格,役職の任命及び賞与のうち,どの目的にどの結果を使うかを先に決める。
一つの評価票を複数の処遇に使うことはできるが,同じ総合評定がすべての目的に最適とは限らない。
本記事は,目的別配点,複数評価者の合議,点数調整,累積評価及び説明・訂正を組み合わせる設計方法を説明する。
以下は一般化した設計提案であり,特定の配点や調整方式が法律上の標準であるという意味ではない。
確認基準日は令和8年10月14日である。

資格等級は能力や役割上の位置付け,役職は現在の職務と権限,号俸は賃金表内の位置というように,制度上の変数を分ける。
役職交代,資格降格及び低評価による号俸改定を同じ「降格」で処理しない。
それぞれの判断者,基準,手続,適用日及び金銭的効果を対応させることが出発点となる。

第2 役割別の項目と,目的別の配点を作る
1 成果と行動を,仕事の実態に合わせる

成果を測る項目と,役割を遂行する行動・能力を測る項目を分ける方式は,結果だけでは捉えられない仕事の進め方を評価へ反映できる。
営業,製造,開発,間接業務等について,担当する仕事,責任,権限及び成果を上げる機会に対応した項目を設ける。
「責任感」「協調性」といった項目は,観察できる言動や成果物,期待される水準を示し,印象だけで採点しないようにする。

期首には,目標,期限,担当範囲,必要な支援及び評価に用いる資料を共有する。
期中に担当業務や目標を変更した場合は,変更日と評価への反映を記録する。
会社が与えていない権限や仕事の機会を,本人の能力不足と取り違えない設計が重要である。

2 同じ項目別評価から,目的に応じた結果を作る

昇給・昇格では継続的な能力や行動,賞与では当期の成果を相対的に重くする設計が考えられる。
ただし,長期的な品質や協働を重視する職務では,賞与でも成果だけに偏らせない等の選択が必要となる。
どの比率が正解かを一律に決めず,制度目的と職務から説明できる配点を選ぶ。

創作の説明例として,成果70点・行動90点を,昇給用では成果4割・行動6割,賞与用では成果6割・行動4割で加重すると,昇給用は82点,賞与用は78点となる。
同じ仕事でも目的別の総合点が異なる例であり,実際の会社の配点や評定区分を示すものではない。
正式な配点表,記入例,各職種の評価票及び計算システムが同じ版・同じ計算になることを検証する。

第3 自己評価,独立した採点,合議の役割を分ける
1 複数評価者を置くだけで公平とはしない

直属上司だけでなく,業務を知る他部署の責任者等を加える方式は,一人の見方に偏ることを減らすための設計である。
一方,仕事を観察していない人が肩書だけで採点すると,推測を平均することになる。
評価者が観察できる項目,資料の取得方法及び評価できない場合の扱いを定める。

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ポイント制退職金制度をどう設計するか―勤続・役割の積立て,休職,退職事由と移行措置(AI作成)

目次

第1 算定要素を分けることが,制度設計の出発点になる第2 勤続ポイントと役割ポイントに,何を反映させるか1 勤続ポイントは,加算の傾斜と対象期間を決める2 役割ポイントは,毎年の履歴と退職時の資格を区別する第3 上限,単価及び退職事由別係数を設計する1 上限は,加算停止か累積上限かを明記する2 単価と係数は,全累積額へ及ぶ効果を確認する第4 休職と雇用終了事由を,算定要素へ接続する1 在籍・勤続と,二種類の加算を分ける2 「会社都合」「自己都合」だけで全事由を処理しない第5 ポイント台帳とモデル計算を,規程と同時に作る1 本人と会社が増減を追える台帳2 仮定例で,停止と残高の違いを示す第6 導入・改定と移行措置を別に検討する第7 会社の算定期間と,退職所得控除の期間を分ける第8 法令・行政例と設計提案の区別
第1 算定要素を分けることが,制度設計の出発点になる

ポイント制退職金は,勤続や役割等に対応するポイントを積み立て,退職時に単価や退職事由に応じた係数を使って金額へ換算する設計である。
例えば,「勤続に対応する累積ポイント+役割に対応する累積ポイント」に換算単価と退職事由別係数を掛ける方式が考えられる。
これは設計方式の一例であり,法令がこの算式を指定しているわけではない。

最終の基本給に勤続別支給率を掛ける方式と比べ,ポイント制では,勤続の蓄積と各年度の役割を分けて表示しやすい。
一方,年度別の記録を正確に管理し,異動,休職,評価訂正及び制度変更を台帳へ反映する負担が生じる。
本記事は,算式の選び方,曖昧になりやすい境界及び管理方法を説明する。
法令・資料の確認基準日は令和8年10月14日である。

第2 勤続ポイントと役割ポイントに,何を反映させるか
1 勤続ポイントは,加算の傾斜と対象期間を決める

勤続ポイントの年ごとの加算を一定にする方式は,計算を説明しやすい。
一定の勤続区分ごとに加算率を高くする方式は,長期勤続を重く評価する設計となるが,区分をまたぐ時点で将来の積立額に差が生じる。
加算率の目的を明らかにし,短期離職,中途採用及び長期勤続のモデルで結果を比較するとよい。

勤続年数の起算日,年度又は月単位の加算,中途入退社の端数,休職期間,再雇用及び他制度からの引継ぎを定める。
勤続区分の到達で過去の全期間を新しい率で再計算する方式と,到達後だけ新しい率で加算する方式は,別の算式である。
累積表と加算表を併記する場合は,両者が同じ結果になることを検算する。

2 役割ポイントは,毎年の履歴と退職時の資格を区別する

各年度の役割・資格に応じたポイントを積む方式は,その時期に担った役割を退職金へ反映する設計である。
退職時の最終等級だけで全期間を計算する方式とは異なり,過去の昇格・降格・異動の履歴が必要となる。
役割と資格等級が別の制度なら,どちらをポイントの基準にするかを明示する。

期中に役割が変わった場合は,年度基準日の等級で固定する方式,月割りする方式等を比較し,採用する方法を定める。
役職手当がなくなることだけから,資格等級や過去に付与済みのポイントも当然に下がるとは扱わない。
評価を訂正した場合には,対象年度の加算とその後の累積残高へ反映する手順を設ける。

第3 上限,単価及び退職事由別係数を設計する
1 上限は,加算停止か累積上限かを明記する

一定の勤続年数又は年齢で加算を止める方法は,長期在籍時の積立額を予測しやすくする設計である。
ただし,加算停止と,累積総点の上限,又は受給額の上限は異なる。
勤続ポイントと役割ポイントに別の上限があるなら,それぞれの判定日と対象を説明する。

上限到達後の昇格,定年延長,再雇用及び役割変更をどう扱うかも決める。

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私傷病休職制度をどう設計するか―勤続別期間,再休職の通算,復職手続と処遇の接続(AI作成)

目次

第1 休職制度は,期間表と運用手順を組み合わせて設計する第2 欠勤から休職への移行と,勤続別の期間表1 発令までの期間と,休職の保障期間を分ける2 勤続別に期間を段階化する意味と境界の扱い第3 短期出勤と再休職の通算を別々に定める1 欠勤の連続性をどう判定するか2 再休職では,残期間・原因・再設定の条件を定める第4 医師の意見と,会社による復職判断を接続する1 原職復帰を原則とする場合の補完2 段階的な復帰と満了時の手続第5 休職中の処遇を制度ごとに明示する1 在籍・勤続と金銭を分ける2 「別途取扱い」を計算できる規程へつなぐ第6 設計の変更と,法的な裏付けの範囲
第1 休職制度は,期間表と運用手順を組み合わせて設計する

私傷病休職制度の設計では,発令までの欠勤,休職期間,復職審査,復職後の支援,再休職及び満了時の扱いを,一つの流れとして決めることが重要である。
期間だけを決めても,いつから数えるか,どの出勤で連続性が切れるか,復職を誰が判断するかが不明であれば,運用は安定しない。
本記事では,勤続別の期間設定,再休職の通算及び処遇の整理という設計方法と,その方法を採るときに補うべき事項を説明する。
以下の制度選択は各社の検討案であり,法令が一律の期間表や通算方法を指定しているという意味ではない。
法令・行政資料の確認基準日は令和8年10月14日である。

厚生労働省のモデル就業規則9条は,業務外傷病による欠勤から休職へ移る条件,復職及び満了時の退職を規程例として示す(16頁)。
同じ欄を埋めればすべての会社で適切となるわけではなく,対象従業員,業務,雇用契約及び他の規程との整合を確認する必要がある。

第2 欠勤から休職への移行と,勤続別の期間表
1 発令までの期間と,休職の保障期間を分ける

欠勤が一定期間続いた場合に休職へ移行させる方法は,通常の勤怠管理と,身分を維持して療養する期間を分ける設計である。
その場合は,欠勤開始日,発令条件に達する日,休職開始日及び満了日をそれぞれ定める。
既に経過した欠勤を休職期間へ含めるのか,発令後に別の期間を与えるのかも明文化しないと,実質的な保障期間が変わる。

日・月・年で期間を定める場合は,暦による計算,初日,満了日,休日と通知の関係を確認する。
「一定期間を超えたら発令する」という条件と,「開始後一定期間で満了する」という条件を同じ欄で処理しない。
会社が発令を遅らせたときの扱いも含め,担当者が日付から再現できる算定表を用意するとよい。

2 勤続別に期間を段階化する意味と境界の扱い

勤続に応じて休職期間を長くする設計は,長期勤続者への配慮と雇用維持の負担を段階的に配分する方法である。
ただし,勤続年数の区切りと保障期間は,採用・定着の方針,代替要員の確保,療養・復帰支援の実情等を踏まえて決めるべきであり,どの企業にも適切な唯一の表はない。
短時間・有期雇用等の対象範囲も,雇用区分の名称だけで決めず,適用契約と待遇差の根拠を別に検討する。

期間表には,勤続年数を判定する日,休職中に次の区分へ達した場合の扱い,再休職時の再判定及び定年・契約終了との関係を併記する。
発令時の区分で固定する設計と,勤続到達時に期間を見直す設計では,保障と管理の負担が異なる。
採用する方式を明示し,担当者の裁量でその都度変更しないことが重要である。

第3 短期出勤と再休職の通算を別々に定める
1 欠勤の連続性をどう判定するか

短期間だけ出勤して再び欠勤した場合に,欠勤の連続性を維持する条項は,暦の上の出勤だけで休職発令条件がリセットされることを防ぐ設計である。
一方で,復帰へ向けた試行を不利に扱いすぎれば,出勤を試すことをためらわせる可能性もある。
連続性の判定期間,実際に就労した日を欠勤日数へ含めるか及び試し出勤の扱いを区別して決める。

試し出勤,短時間の正式勤務及び通常勤務への復帰は,出勤という名称だけで同じ状態にしない。

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人事評価に納得できないときの確認と再評価申立て―評価表,点数調整,給与・賞与への反映(AI作成)

目次

第1 評価への疑問を,確認できる問題に分ける1 最終評定だけで判断しない2 適用規程と期間をそろえる第2 素点・配点・調整から最終評定を追う1 評価の目的ごとに計算を確認する2 平均点調整と累積点を分ける第3 低評価の根拠を,具体的な仕事と記録に戻す1 成果の見落としと業務機会を確認する2 年休取得と勤務上の評価を混同しない第4 評価理由の説明と,個人データの開示・訂正を分ける1 まず対象資料と必要な説明を特定する2 開示の例外と,事実誤りの訂正の範囲第5 再評価申立てを,採否を回答できる形にする1 対象・理由・資料・求める対応をそろえる2 再評価と今後の改善指導は別に進める第6 見直し結果を,当期と将来の処遇へ接続する1 給与・賞与・累積点・退職金を別々に確認する2 賞与額の訂正は人事と経理で共有する第7 相談時にそろえる資料と注意点第8 出典と確認範囲
第1 評価への疑問を,確認できる問題に分ける
1 最終評定だけで判断しない

人事評価に納得できないときは,評価対象の仕事と期間,適用された基準,点数の計算及び処遇への反映を順に確認することが有用である。
自己評価より低いという事情だけで違法な評価と決まるわけではないが,会社が裁量による査定と説明するだけで,事実や計算の誤りが解消するわけでもない。
本記事は,民間企業の従業員について,給与が下がる前も含め,評価理由の確認と再評価申立ての準備を説明するものである。
法令・資料の確認基準日は令和8年10月14日であり,以下の照合表や申立ての整理方法は,一律の法定様式ではなく実務上の提案である。

疑問は,①根拠事実の誤り,②基準・配点の適用違い,③計算・点数調整の誤り,④規程所定の手続の欠落,⑤評価から給与等への反映の誤りに分けると具体化しやすい。
例えば,完了した仕事が未完了と扱われたことと,正しい成果をどの水準と評価するかは,異なる問題である。
評価,資格等級,役職,号俸及び懲戒処分も区別し,何を見直してほしいかを特定する。

2 適用規程と期間をそろえる

雇用契約書,就業規則,評価・等級規程,給与規程及び賞与規程について,対象者,評価期間,制定・改定日,周知日及び処遇の適用日を確認する。
同じ名前の規程でも年度や職種によって基準が異なる場合があり,記入例や説明資料を正式な適用基準と当然に同一視しない。
既存制度に従った個別査定を争うのか,配点や給与表を変えた制度変更を争うのかも分ける。

労働契約法7条から10条及び12条は,就業規則と契約,合意による変更,就業規則による不利益変更及び規則を下回る個別条件に関係する。
規程の周知は労働基準法106条の問題であり,個別の評価理由の説明や本人データの開示とは,対象と根拠が異なる。
等級・給与の変更の法的な検討は,人事評価・能力等級の引下げと賃金減額で扱っている。

第2 素点・配点・調整から最終評定を追う
1 評価の目的ごとに計算を確認する

同じ項目別評価でも,昇給・昇格用と賞与用とで成果や行動の重みが違えば,最終評定が異なることがある。
本人の「B評価」がどの目的の評定なのかを確認し,項目別の素点,配点,合計点,端数処理,評定区分の境界及び最終結果を一つずつ接続する。
正式な配点表,記入例及び実際の評価票が一致しない場合は,対象職種,適用版又は計算方法の違いなのかを会社へ照会する。

説明のための仮定例として,成果80点・行動60点を,給与用では半分ずつ,賞与用では成果7割・行動3割で加重する制度を考える。
給与用は70点,賞与用は74点となり,同じ項目別評価から違う総合点が生じる。
ただし,74点がどの評定になるか,いくら支給されるかは,別に区分表と給与・賞与の算式を確認しなければ決まらない。

2 平均点調整と累積点を分ける

評価者の甘辛をそろえる平均点調整がある場合は,調整前後の本人点,対象集団の範囲,集団平均,基準点,調整式,端数処理及び補正理由を確認する。
評価者の厳しさと,集団ごとの職務・成果・目標難易度の差は同じではなく,平均が違うという事実だけで一方を甘い評価者と決めることはできない。
平均点調整があるだけで当然に違法,又は公平な評価と結論付けず,制度の目的・根拠と具体的な適用を検証する。

当年の昇給結果と,昇格のための累積点も別に確認する。

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復職した社員の給与を下げられるか―短時間勤務・業務軽減・本人同意と減額の継続(AI作成)

目次

第1 復職後の賃金減額についての結論1 仕事の負担が減っただけでは,基本給は自動的に下がらない2 勤務時間,仕事の内容,役職及び賃金制度を区別する第2 賃金を変更するための根拠1 既存の賃金規程に基づく場合2 本人との合意による場合3 就業規則を変更する場合第3 軽作業への変更と,リハビリ勤務の減額を扱った裁判例1 西東社事件――配置転換だけでは賃金減額の根拠にならない2 Chubb損害保険事件――当初の減額と,その後の継続を分ける3 片山組事件――元の仕事だけを基準に労務不能と判断しない第4 健康への配慮と賃金変更は,別の根拠を確認する1 令和8年の両立支援の努力義務と,障害者への配慮2 試し出勤,最低賃金及び従前の契約賃金を区別する3 通常の賃金変更と,減給の制裁を区別する第5 会社側と労働者側が確認すべき資料・手順1 賃金項目ごとに,変更前後と根拠を並べる2 暫定的な減額では,期間と回復後の扱いを明確にする3 減額に同意しない場合と,会社が就労を受け入れない場合第6 出典1 法令2 裁判例・公開判決写し・掲載理由抜粋3 行政資料・文献
第1 復職後の賃金減額についての結論
1 仕事の負担が減っただけでは,基本給は自動的に下がらない

病気で休職していた社員が復職しても,直ちに以前と同じ仕事量や責任を担えるとは限らない。
しかし,「以前ほど働けない」「軽い仕事を任せている」という事情だけで,会社が契約上の基本給を一方的に下げられるわけではない。
減額するには,有効な労働契約・賃金規程に基づく取扱い,本人との有効な合意,又は合理的な就業規則変更等の根拠を確認する必要がある。

他方,復職前と同じ賃金を,どのような働き方でも必ず払い続けるという一律のルールがあるわけでもない。
本人の希望等を踏まえて短時間勤務と賃金を合意する場合や,有効な職務給・役職手当の制度が変更後の職務に適用される場合には,支給額を変更できることがある。
判断の要点は,何が変わったのか,どの賃金項目に影響するのか,その根拠が何か,いつまでその取扱いを続けられるのかを分けることである。

本記事は,令和8年10月14日現在の法令及び確認できた公表資料に基づき,日本の民間企業で私傷病休職から復職する社員の賃金を扱うものである。
公務員給与,産休・育休取得を理由とする不利益取扱いの特別規制及び個別の医学的な復職判定は,それぞれ別の検討を要する。

2 勤務時間,仕事の内容,役職及び賃金制度を区別する

給与明細の総額が下がっていても,基本給の単価を下げたのか,不就労時間に対応する額を控除したのか,役職手当の支給を終了したのかによって,検討する根拠は異なる。
例えば,残業をしなくなったため実際の時間外労働に対応する手当が減る場面を,基本給の引下げと同じものとして扱うべきではない。
反対に,固定の手当や月給として約束した額まで,名称だけを理由に自由に減らせるわけではない。

変更された事情賃金の検討確認する根拠①勤務時間・日数の短縮不就労部分の計算と賃金単価の変更を分ける勤務時間・賃金の合意,欠勤控除・短時間勤務の規程,短縮の理由②同じ時間で業務の負担を軽減仕事量の割合から基本給を自動計算し直さない契約上の賃金,職務給・評価制度,個別変更の合意③役職・職務・等級を変更変更自体の有効性と,給与項目への効果を分ける配置・役職・等級変更の権限,賃金表及び手当の支給要件④新たな減額制度を導入既存規程の運用と区別する本人との合意又は就業規則変更の周知・合理性
第2 賃金を変更するための根拠
1 既存の賃金規程に基づく場合

労働契約法7条は,合理的な労働条件を定めた就業規則を周知して契約を締結した場合に,その規則が契約内容となることを定めている。
ただし,個別に異なる条件を合意した部分に関する例外もあるため,就業規則だけでなく,採用時の条件,雇用契約書,昇給時の合意等を確認する必要がある。

職務に対応する給与額を定める制度であれば,有効な職務変更に伴って制度上の給与額が変わることはあり得る。
役職手当についても,当該役職を担うことが支給要件であり,役職を外す措置が有効である場合には,その要件を失ったことによる支給終了が問題となる。
しかし,「配置転換を命じることができる」という条項だけから,基本給まで変更する権限を当然に導くことはできない。

実務では,①変更できる職務・役職・等級,②変更の権限と条件,③その変更と給与項目を結ぶ条項,④変更後の計算方法を順にたどる必要がある。
既存の評価制度に従って給与を決めることと,後から給与表や引下げ条件を新設することも,別に検討する。
一般的な評価・等級制度の検討は,人事評価・能力等級の引下げと賃金減額に関する記事で扱っている。

2 本人との合意による場合

労働契約法8条は,「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」と定める。
復職に際して,勤務時間,担当業務及び賃金について有効な合意が成立すれば,その内容に従った取扱いが可能となる。
ただし,同意書への署名があるかという点だけで判断を終えることはできない。

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外回り営業は残業代が出ないのか―事業場外みなし労働時間制,日報・スマホ及び歩合給の確認点(AI作成)

目次

第1 外回りでも,残業代が不要とは限らない1 この記事の対象と結論2 相談で最初に区別する制度第2 「労働時間を算定し難いとき」の確認1 社外にいるだけでは足りない2 スマホや日報の存在だけで決まらない第3 最高裁判決と差戻審から分かること1 旅行添乗員について適用を否定した判決2 日報の正確性の検討を求めた令和6年判決3 差戻審は業務の違う日を分けて判断した第4 みなし時間と内勤時間を分けて計算する1 所定時間と「通常必要な時間」2 帰社後の会議等を消してはいけない第5 歩合給でも割増賃金を確認する1 固定給部分と歩合給部分の算式は異なる2 「手当に含む」という説明を資料で確認する第6 健康確保のための時間把握は別に必要である1 みなし制の適用者も把握対象となる2 記録を減らすことを制度維持の目的にしない第7 相談前の資料保全と会社側の見直し1 勤務日ごとの資料をそろえる2 会社は部署・業務・日ごとに運用を点検する第8 主な出典
第1 外回りでも,残業代が不要とは限らない
1 この記事の対象と結論

会社に雇用され,顧客訪問や出張の多い営業担当者について,「外回りだから残業代はない」「歩合給に全部含まれている」と説明された場合の確認点を整理する。
事業場外みなし労働時間制は,労働時間の算定方法についての制度であり,外勤者の割増賃金を一律に免除する制度ではない。
①制度の適用要件,②何時間とみなすか,③内勤その他の時間,④賃金の内訳と既払額を順に確認する必要がある。

この記事は令和8年10月13日現在の法令と公開資料に基づく。実際の業務,指示・報告,労働契約及び賃金規程により結論は異なる。
「独立自営家」等の呼称や経費負担の方法だけで,労働法上の労働者に当たるか,又はみなし制が適用されるかは決まらない。雇用関係が争われる場合は,業務の指揮監督や報酬の実態を別に確認する。

2 相談で最初に区別する制度

事業場外みなし制,裁量労働制,固定残業代及び歩合給は,それぞれ別の制度である。
会社に対し,適用している制度の名称だけでなく,根拠条文,対象業務,みなし時間,労使協定及び給与明細上の割増賃金の欄を確認する。
本記事は労働基準法38条の2の事業場外みなし制を中心に扱い,管理監督者や裁量労働制の適否を同じ基準で判断しない。

第2 「労働時間を算定し難いとき」の確認
1 社外にいるだけでは足りない

労働基準法38条の2第1項は,労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事し,労働時間を算定し難い場合を対象とする。
会社が日報を確認していなかったという事実だけで,法律上も算定し難いと判断することはできない。業務の性質,遂行方法,指示及び報告の実態を確認する必要がある。

厚生労働省は,時間を管理する者がいるグループでの外勤,随時使用者の具体的な指示を受ける外勤,訪問先・帰社時刻等の具体的指示に従う外勤などを,算定が可能で制度の適用がない類型として説明している。
単なる同行の有無だけで決めず,同行者の役割,指示の内容,同行した時間帯及びその他の時間の把握方法まで調べる。
出典:厚生労働省「外勤業務後の内勤業務も事業場外みなし労働が適用されますか?」。

2 スマホや日報の存在だけで決まらない

スマホを貸与されていることや,日報を提出することは,判断資料の一部である。
訪問先や時刻を誰が決めるのか,変更に承認が必要か,電話・チャットによる指示の頻度,日報に始終業・休憩・業務内容をどの程度記載するのか,会社が正確性をどのように確認できるのかを併せて見る。
「連絡できるから必ず不適用」「日報は自己申告だから必ず適用」という説明は避けるべきである。

第3 最高裁判決と差戻審から分かること
1 旅行添乗員について適用を否定した判決

最高裁平成26年1月24日第二小法廷判決(平成24年(受)第1475号)は,募集型企画旅行の添乗員の事案である。
具体的な旅行日程・マニュアルによる指示,変更時の報告と指示,詳細な添乗日報及びその正確性を確認できる仕組みなどから,勤務状況の具体的把握が困難とは認め難いとして,みなし制の適用を否定した。
携帯電話の貸与だけを理由にした判決ではない(判決PDF4~6頁)。

2 日報の正確性の検討を求めた令和6年判決

最高裁令和6年4月16日第三小法廷判決(令和5年(受)第365号)は,技能実習の監理団体の指導員について,業務日報による報告等を重視して適用を否定した原審判断を一部破棄し,差し戻した。

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決算賞与の支給日在籍要件と税務―退職者への支給義務,未払賞与の損金算入及び源泉徴収(AI作成)

目次

第1 支給条件と税務上の計上条件を一緒に確認する第2 退職者への賞与支給義務をどう判断するか1 賞与の具体的な根拠と通知の意味2 在籍要件の合理性と個別の適用第3 使用人賞与の損金算入時期1 支給予定日が到来した賞与2 翌期1か月以内に支払う決算賞与3 その他の賞与第4 社員の収入年分と会社の源泉徴収時期第5 通知を出す前と決算・支払時の確認第6 関連記事と出典1 関連記事2 法令・行政資料と確認範囲
第1 支給条件と税務上の計上条件を一緒に確認する

決算前に社員へ賞与の金額を知らせ,翌期に支払う場合,支給日に在籍する社員だけに払うという条件があると,翌期1か月以内に支払う方法で通知年度の損金に算入するための通知要件を満たさない。労働法上の支給条件として在籍要件を設けることと,法人税上の通知要件を満たすことは,別の問題である。
人事担当が作った賞与規程と,経理担当が使う支給通知書が食い違うと,退職者との支給紛争と申告上の誤りが同時に生じる。人事・経理・決裁者は,支給対象者,金額,条件,支給予定日,決算日及び実際の支払日を同じ資料で確認する必要がある。
本稿は令和8年10月10日に確認した法令・国税庁の説明を基準とし,一般の使用人に対する賞与を中心に扱う。役員としての職務に対する賞与は,役員給与の損金算入要件も別途問題となる。

第2 退職者への賞与支給義務をどう判断するか
1 賞与の具体的な根拠と通知の意味

賞与は,評価対象期間に働いたという一点だけで,予定額全額の請求権が当然に生じるものではない。就業規則,労働協約,個別合意,確立した慣行等から,支給対象者,計算方法,金額決定手続及び在籍条件を確認する。
金額を記載したメールでも,「見込額」「最終査定で変更」「支給日在籍者に限る」という留保がある場合と,条件を付けず確定額を支払う個別合意が成立している場合とでは意味が異なる。文書の表題だけで判断せず,規程と通知文面を合わせて読む。

2 在籍要件の合理性と個別の適用

厚生労働省の大和銀行事件の紹介によれば,支給日に在籍する者だけに賞与を払う従来の慣行を就業規則に明文化した事案で,最高裁昭和57年10月7日判決は,その内容の合理性を認め,支給日前に退職した者の請求を認めなかった。この紹介から,退職・解雇・死亡の全事案で不支給が有効になると一般化することはできない。
任意退職,定年,整理解雇,懲戒解雇,死亡では,退職日を選べるか,雇用終了の原因,賞与制度の目的及び例外条項が異なる。規定自体の合理性と,その人への適用を分けて検討する。解雇の有効性が争われている場合には,支給日の在籍という前提も確定していない。
茨城労働局の相談資料は,支給が遅れた場合の支給予定日と現実の支払日の区別にも注意を促している。会社が支払を遅らせた後,その間に退職したことだけを理由に,予定日に在籍していた者の権利が失われたと扱うことは避けるべきである。
在籍要件を外すと税務上有利になるとしても,税務担当だけで既存の労働条件を変更してはならない。規程の変更,個別合意,労使手続及び周知の要否を,変更内容に応じて検討する。

第3 使用人賞与の損金算入時期
1 支給予定日が到来した賞与

法人税法施行令72条の3第1号は,労働協約又は就業規則で定められた支給予定日が到来し,使用人に支給額を通知し,所定の年度に損金経理した賞与について,支給予定日と通知日のうち遅い日の属する事業年度に算入する扱いを定めている。支給予定日,通知及び経理の条件をそれぞれ確認する。

2 翌期1か月以内に支払う決算賞与

同条第2号の方法では,①各人別に,同時期に支給を受ける全使用人へ金額を通知すること,②通知した全使用人へ,通知年度終了日の翌日から1か月以内に通知どおりの金額を支払うこと,③通知年度に損金経理することが必要である。
国税庁の法人税基本通達9-2-43は,支給日に在職する使用人だけに払う条件付きの支給額通知について,「支給額の通知には該当しない」としている。この通知要件は,同条第2号イの要件である。未払賞与を計上したことや,支払までが1か月以内だったことだけで足りるわけではない。
例えば3月決算法人が3月25日に各人へ金額を通知し,4月20日に支払う計画でも,通知に「4月20日在籍者のみ」との条件があれば,第2号の方法で3月期の損金にできる通知とは扱われない。これは退職者分の金額だけの問題ではなく,同時期の賞与の通知・支払要件全体を点検する契機となる。
計算式だけの周知では,各人別の具体額を通知したかが不明確になる。対象者別の確定額,通知日,到達を確認できる記録,退職者への扱い及び実際の振込額を残す。

人事評価の通知,社内の賞与試算及び各人別の具体的支給額の通知は区別する。
全社の支給月数,部門配分,個人評定及び出勤係数等を使う制度では,適用する算式から具体額へ至る過程を示し,評価結果を知らせただけで施行令72条の3第2号の支給額通知をしたとは扱わない。
再評価の申立て後に額を変更した場合は,通知内容と実際の支払を取り直し,当該賞与がどの類型・要件を満たすかを確認する必要がある。

3 その他の賞与

第1号・第2号の方法に当たらない賞与は,同条第3号により,支払った日の属する事業年度に損金算入する。条件付き通知が第2号を満たさないからといって,支払後も永久に損金にできないという意味ではない。

第4 社員の収入年分と会社の源泉徴収時期

給与所得の収入すべき時期と,会社が源泉徴収する時期も分ける。所得税基本通達36-9は,支給日が定められた一般の給与等について,その支給日を収入すべき時期としている。他方,所得税法183条1項は源泉徴収について「その支払の際」と定める。
国税庁は,給与等が未払の場合,原則として実際に払う際に源泉徴収すると説明している。会社側の未払計上年度,社員側の収入年分,実際の支払日及び源泉徴収時期が常に一致すると考えてはならない。

(続きを読む...)決算賞与の支給日在籍要件と税務―退職者への支給義務,未払賞与の損金算入及び源泉徴収(AI作成)

倒産実務と労働法の交錯―雇用・労働債権・労働組合・事業譲渡の実務(AI作成)

目次

第1 倒産処理では労働法を後回しにできない1 手続開始だけでは雇用契約は終了しない2 最初に固定すべき三つの時点第2 破産・民事再生・会社更生で労働債権の扱いは異なる1 破産手続における給料・退職手当2 民事再生手続における労働債権3 会社更生手続における労働債権4 優先されることと現実に支払えることは別である第3 解雇・事業休止をどの時点で行うか1 倒産は解雇を当然に有効にしない2 解雇予告と解雇予告手当を分けて検討する3 大量離職の届出等も確認する第4 未払賃金立替払制度を早期に準備する1 制度の対象2 破産申立代理人・管財人の実務第5 労働組合と従業員代表への対応1 法的倒産手続にも通知・意見聴取の場面がある2 団体交渉義務は別に残る第6 事業継続・事業譲渡と雇用の処理1 事業譲渡では個別承諾が原則である2 会社分割・合併とはルールが異なる3 スポンサー選定と雇用維持を同時に設計する第7 受任から事業譲渡までの実務チェックリスト1 申立前2 手続開始直後3 事業譲渡・終結局面第8 まとめ

会社が倒産局面に入ると、雇用の終了、未払賃金の順位、労働組合対応及び事業譲渡後の雇用承継を同時に処理する必要がある。本稿は、破産・民事再生・会社更生の違いを踏まえ、受任から事業譲渡・終結までの確認順序を整理するものである。

第1 倒産処理では労働法を後回しにできない
1 手続開始だけでは雇用契約は終了しない

会社が破産手続開始決定を受けても、それだけで従業員との労働契約が一律に終了するわけではない。事業を直ちに停止するのか、管財人が一定期間継続するのか、スポンサーへの事業譲渡を目指すのかにより、必要な雇用処理は変わる。

破産の場合、民法631条は、使用者が破産手続開始決定を受けたときは、雇用期間の定めの有無にかかわらず、労働者又は破産管財人が民法627条により解約を申し入れられると定める。ただし、管財人による労働契約の終了を検討するときも、労働契約法16条・17条、労働基準法19条・20条その他の強行法規との関係を、雇用形態と事案に応じて確認する必要がある。

民法:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

労働契約法:https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128

労働基準法:https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049

2 最初に固定すべき三つの時点

倒産実務と労働法が交錯する案件では、少なくとも次の三つの時点を固定する必要がある。

① 各賃金・退職手当・解雇予告手当等の発生日及び支払期日
② 破産等の申立日及び手続開始決定日
③ 休業日、解雇日、退職日及び事業譲渡日

同じ「未払賃金」でも、手続開始前の給料か、開始後に事業を継続した期間の給料かにより、手続上の順位が変わる。弁済の可否を検討する際には、債権名だけでなく、発生日、支払期日、労務提供期間、退職日、支払原資を一覧化することが重要である。

第2 破産・民事再生・会社更生で労働債権の扱いは異なる
1 破産手続における給料・退職手当

破産法149条1項は、破産手続開始前3か月間の破産者の使用人の給料請求権を財団債権とする。民事再生手続が廃止等で終了して破産手続に移った場合には、この「破産手続開始前三月間」は、破産手続開始の日前に再生手続開始の決定があるときは「再生手続開始前三月間」と読み替えられる(民事再生法252条5項)ので、再生手続開始日から3か月さかのぼって数える(詳しくは、民事再生の再生計画案が否決されたとき―再生手続廃止の確定前後の破産手続への移行,給料・租税・開始前借入れの扱い及び再度の再生手続開始の申立て(AI作成)で整理している。)。破産法149条2項は、退職手当請求権のうち同項所定の上限額までを財団債権とする。手続開始後、労働契約が終了するまでの間に生じた使用人の請求権は、破産法148条1項8号の財団債権となる。

それ以外の雇用関係に基づく給料等については、民法306条2号及び308条の一般先取特権により、破産法98条の優先的破産債権となる範囲がある。財団債権となる部分、優先的破産債権となる部分、一般破産債権となる部分を一つの残高として扱ってはならない。

破産法:https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075

2 民事再生手続における労働債権

民事再生では、一般先取特権で保護される雇用関係の請求権は、民事再生法122条の一般優先債権として、再生手続によらず随時弁済される。手続開始後の事業継続に必要な給料等は、同法119条の共益債権に該当し得て、同法121条により再生債権に先立って弁済される。

もっとも、「随時弁済できる」という法的地位と、資金繰り上実際に弁済できることは同じではない。再生計画の前提となる運転資金に給料・社会保険料・税を織り込み、日次の資金繰りで確認する必要がある。

民事再生法:https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225

3 会社更生手続における労働債権

会社更生法130条は、手続開始前6か月間の給料請求権及び退職手当請求権のうち同条所定の範囲を共益債権とする。手続開始後の事業経営に必要な費用は、同法127条の共益債権となる。

破産法の「開始前3か月」と会社更生法の「開始前6か月」を混同してはならない。退職手当についても条文上の計算方法が異なるため、金額表を手続別に作成する必要がある。

会社更生法:https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000154

4 優先されることと現実に支払えることは別である

財団債権又は共益債権であっても、手続財産が不足すれば全額回収が保証されるわけではない。破産法152条は、財団不足時の弁済順位と按分を定め、同条所定の一部の財団債権を他の財団債権より優先させる。

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過重労働・過労自殺と使用者の安全配慮義務―電通事件・東芝事件と予見可能性・過失相殺(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 2つの最高裁判決が扱った問題2 責任の成立と減額を分けて検討する第2 安全配慮義務の法的根拠1 現在の労働契約法5条2 電通事件の請求構成第3 電通事件―長時間労働の認識と業務量の調整1 最高裁が重視した事情2 本人の裁量や意欲だけでは業務管理の問題を解消しない第4 東芝事件―健康情報の不申告と素因減額1 過重な業務と体調悪化を認識できた状況2 精神的健康に関する情報の不申告3 通常の個性の範囲を超える事情があるか4 破棄差戻しの意味と給付の控除第5 予見可能性と因果関係の調べ方1 何を,いつ認識できたか2 保存・照合する資料3 令和8年9月1日からの監督指導見直しとの関係第6 関連記事第7 出典・参考資料
第1 本記事の対象と結論
1 2つの最高裁判決が扱った問題

長時間労働や強い心理的負荷によって労働者が心身の健康を損なった場合,使用者が業務量や労働環境をどのように管理していたかが問題となる。本記事は,電通事件の最高裁第二小法廷平成12年3月24日判決と,東芝事件の最高裁第二小法廷平成26年3月24日判決を中心に,安全配慮義務,因果関係,予見可能性及び損害額の減額を整理する。

電通事件は従業員の過労自殺について会社の使用者責任を判断した事件である。東芝事件は,過重な業務によってうつ病を発症・増悪させた従業員の解雇無効確認等請求事件であり,最高裁で中心となったのは,健康情報の不申告や個体側の事情を理由とする減額と,保険給付の控除である。東芝事件は,従業員が自殺した事案ではない。

2 責任の成立と減額を分けて検討する

過重労働が認められることだけで,すべての疾病や死亡について直ちに使用者の責任が決まるわけではない。業務の負荷,使用者・上司の認識,実施できた負担軽減措置,疾病の発症・増悪との因果関係を検討した上で,過失相殺や素因減額の可否を別に検討する必要がある。

一方,真面目さや責任感の強さが通常想定される労働者の個性の範囲内にある場合,その性格を理由に損害額を減らすことはできない。また,過重な業務が続き体調悪化が認識できる状況では,労働者が精神科等への通院や病名を申告しなかったことだけを重視して使用者の責任を軽くすることもできない。

第2 安全配慮義務の法的根拠
1 現在の労働契約法5条

労働契約法5条は,使用者に対し,労働者が生命・身体等の安全を確保しながら働くことができるよう,必要な配慮をする義務を定めている。身体的な事故の防止だけでなく,業務の管理による心身の健康への配慮も問題となる。

具体的な義務の内容は,仕事の内容,労働時間,職責,支援体制,健康状態及び使用者が知り得た事情によって定まる。健康診断を実施したことや,就業規則に相談窓口を設けたことだけで,実際の業務を軽減する必要がなくなるわけではない。

2 電通事件の請求構成

電通事件で最高裁が是認したのは,上司の過失を前提とする民法715条の使用者責任である。現在の労働契約法5条が施行される前の事案であり,同条を直接適用して責任を認めた判決ではない。

安全配慮義務違反による債務不履行責任と,上司等の不法行為を前提とする使用者責任は,請求の法的構成が異なる。実際の訴訟では,義務違反の内容と因果関係を具体化し,適用法及び時効を確認して構成を選ぶ。時効の詳細は,安全配慮義務違反による損害賠償請求権の消滅時効で説明している。

第3 電通事件―長時間労働の認識と業務量の調整
1 最高裁が重視した事情

最高裁平成12年3月24日判決(平成10年(オ)第217号・第218号,民集54巻3号1155頁)は,日中の連絡・打合せ等に加えて,終業後に企画書や資料を作成する業務構造の下で,従業員が恒常的に長時間労働をしていた事案である。

会社では残業時間の過少申告が常態化していることが認識され,上司は当該従業員が徹夜で働く状態にあることを知り,健康状態の悪化にも気付いていた。それにもかかわらず,期限どおりに仕事を終えることを前提に睡眠や時間配分を指導するだけで,業務量を適切に調整しなかった。

最高裁は,これらの事情と,疲労・睡眠不足,うつ病の発症及び自殺に至る経過を踏まえ,業務と自殺との相当因果関係及び上司の過失を認めた原審の判断を是認した(判決本文7〜8頁)。

2 本人の裁量や意欲だけでは業務管理の問題を解消しない

仕事への意欲が高いことや,作業の時間配分に一定の裁量があることは,使用者の管理責任を当然に否定する事情ではない。同判決は,所定の期限までに業務を完了すべきことを求める包括的な指揮命令の下で,長時間の残業をせざるを得ない状態となっていた点を重視した。

実務上は,「早く帰るよう注意した」という説明だけでなく,担当案件,納期,人員配置,代替担当者及び実際の業務削減がどう変わったかを確認する必要がある。これは判決の判断から導かれる業務管理上の着眼点である。

第4 東芝事件―健康情報の不申告と素因減額
1 過重な業務と体調悪化を認識できた状況

最高裁平成26年3月24日判決(平成23年(受)第1259号,民集68巻3号261頁)では,製造ラインの立上げの工程責任者となった従業員が,日程の短縮,厳しい督促,支援の不足,担当者の減員及び新たな業務の追加等によって大きな負担を負っていた。

健康診断で頭痛・めまい・不眠等を申告し,体調不良を上司に伝えて欠勤を繰り返し,業務の軽減も申し出ていた。最高裁は,使用者が,その状態が過重な業務によって生じていることを認識し得て,業務軽減等の措置を取ることも可能な状況にあったと判断した(判決本文9〜11頁)。

2 精神的健康に関する情報の不申告

労働者が申告していなかったのは,神経科への通院,病名及び処方薬等の情報であった。最高裁は,これらが本人のプライバシーに属し,人事考課等にも影響し得るため,職場に知られずに働き続けようとすることが想定される性質の情報であることを考慮した。

その上で,過重な業務が続き体調悪化が認識できる場合には,積極的な申告が期待し難いことを前提に,必要な業務軽減等を行うべきであり,本件の情報不申告を理由とする過失相殺はできないとした。これは,労働者によるあらゆる情報不申告について,一律に過失相殺を禁止した判断ではない。判決が挙げた業務負荷と体調悪化の認識可能性を併せて読む必要がある。

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裁量労働制の令和6年4月改正―本人同意と撤回,労使委員会,健康・福祉確保措置及び継続導入の手続(AI作成)

目次第1 改正の概要と効力への影響1 改正の根拠と施行日2 改正後の要件を満たさない協定・決議は無効になる第2 専門業務型裁量労働制1 労使協定に加わった事項2 同意の取り方3 同意の撤回4 対象業務に加わったM&Aアドバイザーの業務第3 企画業務型裁量労働制1 決議に加わった事項2 労使委員会の運営3 定期報告第4 両制度に共通する運用上の留意点1 時間配分の裁量2 みなし労働時間と処遇3 健康・福祉確保措置第5 弁護士が確認する資料と論点1 使用者側の点検2 労働者側から残業代を請求する場面第6 本記事で扱わない事項第7 出典・関連記事
第1 改正の概要と効力への影響
1 改正の根拠と施行日

裁量労働制には,労使協定で定める専門業務型裁量労働制(労働基準法38条の3)と,労使委員会の決議で定める企画業務型裁量労働制(同法38条の4)がある。
どちらも,要件を満たせば,対象業務に就いた労働者は協定又は決議で定めた時間労働したものとみなされる。
令和6年4月1日,労働基準法施行規則等を改正する令和5年厚生労働省令第39号と,企画業務型の指針及び専門業務型の対象業務を定める告示を改正する令和5年厚生労働省告示第115号が施行・適用された(厚生労働省「裁量労働制の概要」)。
法律の条文は改正されておらず,協定事項・決議事項の具体化,労使委員会の運営及び対象業務の追加が省令と告示で行われた。

本記事は,令和8年10月4日にe-Gov法令検索の現行の労働基準法及び労働基準法施行規則,施行通達(令和5年8月2日基発0802第7号。以下「施行通達」という。)及び厚生労働省のリーフレットを確認して,改正の内容と,弁護士が使用者側・労働者側の相談で確認する事項を整理するものである。
令和6年4月の厚生労働省関係の制度変更の全体は,令和6年4月の厚生労働省制度変更―労働条件明示,裁量労働制,時間外労働の上限規制及び医療保護入院の実務確認で扱っている。

2 改正後の要件を満たさない協定・決議は無効になる

施行通達18頁は,令和6年4月1日を有効期間に含む専門業務型の労使協定及び企画業務型の決議は,改正後の省令及び告示に適合したものでない場合には,同日以降無効となるとしている。
厚生労働省のリーフレット「裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です」も,新たに又は継続して裁量労働制を導入するには,専門業務型の労使協定と企画業務型の運営規程・決議に新しい事項を加え,導入・適用までに(継続導入する事業場では令和6年3月末までに)労働基準監督署へ協定届・決議届を届け出る必要があるとしていた。

改正前から裁量労働制を続けている事業場では,令和6年4月以降の協定・決議に新しい事項が入っているかを確認しないと,みなし労働時間制が適用されているという前提自体が崩れることがある。
なお,令和6年3月31日以前に改正後の内容で協定・決議をして新様式で届け出た場合は,施行時に改めて届け出る必要はないとされた(施行通達19頁)。

第2 専門業務型裁量労働制
1 労使協定に加わった事項

労働基準法38条の3第1項6号は,同項1号から5号までの事項のほか厚生労働省令で定める事項を協定で定めるとしている。
これを受けた現行の労働基準法施行規則24条の2の2第3項は,次の事項を定めている。

①使用者は,労働者を対象業務に就かせたときは協定で定める時間労働したものとみなすことについて当該労働者の同意を得なければならないこと及び当該同意をしなかった当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと(1号)
②同意の撤回に関する手続(2号)
③労使協定の有効期間の定め(3号)
④労働時間の状況並びに健康及び福祉を確保するための措置の実施状況,苦情の処理に関する措置の実施状況並びに同意及びその撤回について,労働者ごとの記録を有効期間中及びその満了後に保存すること(4号)

使用者は,④の記録を作成して保存しなければならない(同規則24条の2の2の2)。
保存期間は,条文上は有効期間中及び満了後5年間であるが,同規則71条により当分の間は3年間とされている。

2 同意の取り方

施行通達2頁~3頁は,同意は労働者ごとに,かつ,労使協定の有効期間ごとに得る必要があるとしている。
また,制度の概要,同意した場合に適用される評価制度とこれに対応する賃金制度の内容,同意しなかった場合の配置及び処遇を,使用者が労働者に明示したうえで説明して同意を得ることを協定で定めることが適当であるとしている。
さらに,処遇等について十分な説明がなされなかったこと等により,同意が労働者の自由な意思に基づくものとは認められない場合には,労働時間のみなしの効果が生じないことがあるとしている。

この記載からすると,使用者側の点検では,同意書が存在するかだけでなく,同意を得た時期が協定の有効期間ごとになっているか,同意の前に評価・賃金制度と不同意の場合の処遇を書面で示したかを確認することになる。
労働者側からみなしの効果を争う場面では,同意書の日付,同意の前に交付された説明資料及び同意を求められた際の状況が検討の対象になる。

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教育訓練休暇給付金の実務―無給休暇,加入5年以上,就業規則と失業給付への影響(AI作成)

目次第1 在職したまま学ぶための生活保障第2 休暇開始前に確認する支給要件1 一般被保険者と2つの期間要件2 自発的な連続30日以上の無給休暇3 対象となる教育訓練第3 給付日数と受給期間第4 受給後の失業給付への影響第5 就業規則と取得合意で確認する事項第6 事業主と本人の手続を分ける第7 関連制度と本記事の範囲
第1 在職したまま学ぶための生活保障

教育訓練休暇給付金は,令和7年10月に始まった雇用保険の給付である。
一定の一般被保険者が離職せず,自発的に教育訓練へ専念するために取得する無給休暇中の生活を支える。
休暇を取る権利が一律に新設されたと理解するのではなく,社内の休暇制度,事業主との合意,雇用保険の給付要件をそれぞれ確認する必要がある。

この記事は,令和8年10月4日に確認した厚生労働省の公式案内と「教育訓練休暇給付金のご案内」(表示番号PL080801保07,本文1頁~10頁)に基づき,取得前の説明,規程と手続を整理する。

第2 休暇開始前に確認する支給要件
1 一般被保険者と2つの期間要件

雇用保険の一般被保険者であることが必要であり,高年齢被保険者,短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者は対象外である。
その上で,①休暇開始前2年間に12か月以上の被保険者期間があること,②休暇開始前の雇用保険加入期間が5年以上あることの両方を満たす必要がある。

単に現在の会社で5年間勤務したかどうかでは決まらない。離職期間や,基本手当,過去の休暇給付,育児休業給付等の受給歴によって通算できない期間が生じることがある。
会社の勤続年数の記録と雇用保険の算定は区別し,休暇開始前にハローワークで加入・受給歴を確認する。

2 自発的な連続30日以上の無給休暇

休暇は,就業規則,労働協約等に規定された制度に基づき,本人が取得を希望して事業主の承認を受ける,連続30日以上の無給休暇であることを要する。
会社から制度の案内を受けたこと自体は妨げにならないが,業務命令による研修にこの給付を利用することは認められない。
事業主の合意が得られない場合には,この制度による給付を受けられないと公式Q&Aは説明している。

会社が週1回の出勤を予定しながら,30日間の教育訓練休暇として申請する運用は認められない。
予期しない事情で就労した場合の扱いと,最初から出勤を組み込んだ休暇制度とは区別する必要がある。
収入を伴う就労を行った日や,有給休暇,育児休業等の別の休暇・休業の日については支給を受けられない。副業で就労した日も同様である。

無給の休暇中に受講費用等の補助が支給された場合でも,就労の対価としての賃金ではないものは,その支給だけで不支給になるわけではないと案内されている。
手当という名称だけで判断せず,支払目的と就労の実態を確認する。

3 対象となる教育訓練

大学・大学院等の教育訓練,教育訓練給付金の指定講座を有する法人等が提供する教育訓練,職業安定局長が定める職業上の教育訓練等が対象となる。
公式案内は司法修習,語学留学,海外大学院での修士号取得等も掲げている。
ただし,司法修習生であることだけで給付対象となるわけではなく,在職,雇用保険,休暇と加入期間等の要件も満たす必要がある。
受講費用を支援する教育訓練給付金の対象講座を受講する場合は,その給付を併せて利用できることがある。各給付の要件は別に確認する。

第3 給付日数と受給期間

所定給付日数は,算定対象となる雇用保険加入期間が5年以上10年未満なら90日,10年以上20年未満なら120日,20年以上なら150日である。
受給期間は原則として休暇開始日から1年間である。
日数が残っていても受給期間を過ぎれば支給を受けられない。妊娠,出産,育児,疾病等による延長が可能な場合には,ハローワークに相談する。

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人事評価・能力等級の引下げと賃金減額―懲戒降格との違い,根拠規程と裁量審査(AI作成)

目次第1 賃金を下げる前に,何を変更するのかを分ける1 本記事の対象と結論2 四つの類型と賃金へのつながり第2 等級と給与を結び付ける根拠を確認する1 契約,等級規程,給与規程を一緒に読む2 制度の新設・改定と個別査定を分ける3 組合の同意と変更の合理性は別に検討する4 AIによる時短を理由に月給を減らせるか第3 低評価を裏付ける事実と手続を確認する1 評価結果から元の業務記録へ戻る2 説明・意見提出・再評価の機会を設ける3 再評価と改善指導を混同しない第4 野村総合研究所事件が示す評価降格の検討1 規程と評価の運用を合わせて判断した事案2 判決の時点と,当事者の主張に注意する第5 懲戒降格と減給制裁を評価降給から分ける1 処分名ではなく,措置の実質を見る2 減給額の上限と処分全体の相当性を分ける第6 決裁前・異議申出時にそろえる資料1 会社側が減額前に確認すること2 労働者側が争う点を具体化すること第7 関連記事・出典1 関連記事2 法令・行政資料・裁判例
第1 賃金を下げる前に,何を変更するのかを分ける
1 本記事の対象と結論

「評価が低いので給与を下げたい」「管理職を外れたので基本給も下がる」「降格に納得できない」という相談では,まず,評価,能力等級・職能資格,役職及び懲戒処分のうち,何が変更されたのかを特定する必要がある。

同じ「降格」という言葉でも,既存の評価制度に従って等級を下げること,部長等の役職を解くこと,非違行為の制裁として資格や役職を下げることでは,根拠と審査する事情が異なる。人事措置が有効であることと,その措置によって賃金の特定の項目を減額できることも,分けて検討する必要がある。

本記事の結論は,規程と契約を確認し,評価を裏付ける資料を検証した上で,変更される等級・職務と賃金との関係をたどることである。制度自体の不利益変更と,既存制度に基づく個別査定を混同せず,労働基準法91条の減給制裁の問題と,評価降給の問題も分ける。

調査基準日は令和8年10月3日である。本記事は,民間企業の労働契約を主な対象とする。地方公務員の降任・降給・懲戒は,地方公務員法や条例等による別の検討を要する。

2 四つの類型と賃金へのつながり

人事評価では,目標,成果,行動等についての評価結果を確認する。賃金との関係では,低評価を賞与や昇降給に反映する規程があるかを確認する。

能力等級・職能資格の引下げでは,資格・等級制度における位置付けの変更を確認する。賃金との関係では,引下げの権限・条件と等級別給与の定めが結び付くかを確認する。

役職の解任では,部長・課長等の職務,権限及び責任の変更を確認する。賃金との関係では,役職手当の支給要件と基本給の決め方を別に確認する。

懲戒降格では,非違行為に対する制裁としての資格・役職の変更を確認する。賃金との関係では,懲戒の種別・事由,処分の相当性及び減給制裁の実質を確認する。

これらは常に別々に行われるとは限らない。役職解任に等級引下げが伴う場合も,懲戒と人事上の措置が同じ時期に行われる場合もある。その場合でも,各措置の根拠と効果を一つずつ示すべきである。

例えば,役職手当が当該役職を担うことを支給要件としている場合と,基本給が役職とは別の職能資格によって決まる場合とでは,役職を外したときの給与への影響が違う。「役職を外す権限がある」という説明だけで基本給の引下げまで導くことはできない。名称ではなく,実際の職務と契約・規程の内容を確認することが出発点となる。

第2 等級と給与を結び付ける根拠を確認する
1 契約,等級規程,給与規程を一緒に読む

労働契約法7条は,合理的な労働条件を定めた就業規則を労働者に周知させていた場合に,その内容が労働契約の内容となることを定めている。個別に異なる労働条件を合意した部分についてのただし書もあるため,就業規則だけでなく,雇用契約書や採用時の条件を確認する必要がある。

同法8条は,「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」と定める。ただし,既存の契約上の制度に従って給与を決定する場面と,その制度や契約上の給与額を新たに変更する場面とを先に見分けなければならない。

等級を下げれば給与も下がると説明する場合は,少なくとも,①どの労働者にどの制度を適用するか,②どの条件で誰が等級を変更できるか,③変更後の等級から基本給・手当等をどう計算するか,④いつから適用するか,を確認する。等級規程に引下げの定めがあっても,給与規程との接続が明らかでなければ,予定する減額の根拠は別に検討する必要がある。

給与明細の支給総額だけを見ると,基本給の変更,役職手当の終了,賞与査定,欠勤控除等が混ざることがある。人事担当者は,各項目について変更前後の額,計算式及び根拠条項を一覧にし,決裁前に法務担当者と確認することが考えられる。

病気からの復職に伴い仕事の負担を軽減することと,評価制度に基づいて等級・給与を決めることも,分けて検討する必要がある。
配慮のために軽い仕事へ変更したという事情だけで基本給を比例減額せず,時間の短縮,賃金規程との接続及び本人の合意の内容・期間を確認する。
復職に固有の検討は,復職した社員の給与を下げられるか―短時間勤務・業務軽減・本人同意と減額の継続で整理している。

2 制度の新設・改定と個別査定を分ける

従来から年1回の評価で等級を見直し,その等級に対応する給与を支払う制度がある場合には,制度の拘束力と,今回の評価・等級決定がその制度に従っているかが問題となる。

これに対し,降格を予定していなかった制度に新たな引下げ条項を加える場合や,同じ等級でも基本給が低くなる給与表へ改める場合は,制度自体の変更による不利益を検討する必要がある。「査定」と呼んでいても,実際には給与制度を変更していれば,既存制度の運用として説明するだけでは足りない。

実務では,評価対象期間,評価基準の制定・改定日,周知日,等級決定日及び賃金への適用日を日付順に並べる方法が有用である。特定の社員の評価に合わせて後から基準を作ったのか,評価期間開始時に示された基準を適用したのかによって,説明すべき問題が変わる。複数の規程の版がある場合は,対象年度の規程を保存する。

3 組合の同意と変更の合理性は別に検討する

労働契約法9条は,合意のない就業規則による不利益変更を原則として禁止し,10条の場合を例外とする。10条による変更には,変更後の規則の周知と,労働者の不利益の程度,変更の必要性,内容の相当性,労組等との交渉状況その他の事情に照らした合理性が必要である。

労働基準法90条が定める過半数労組又は過半数代表者の意見聴取は,個々の労働者の同意とも,労働契約法10条の合理性判断とも異なる。意見書を添えて届け出たことだけで,不利益変更の効力まで確定するわけではない。

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最低賃金の引上げと固定残業代―最低賃金の計算から除かれる賃金,基本給への振替と不利益変更(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象とする場面2 結論の要点第2 最低賃金を満たしているかの計算1 算入する賃金と算入しない賃金2 月給制の時間換算3 改定の効力発生日と違反した場合第3 固定残業代が最低賃金の判断に与える影響1 固定残業代を含めて最低賃金を満たすとはいえない2 基本給が最低賃金を下回る場合の固定残業代(東京地裁令和6年5月17日判決)第4 基本給への振替と労働条件の変更1 総額を変えない振替が不利益になりうる理由2 個別の同意による場合(最高裁平成28年2月19日判決)3 就業規則の変更による場合4 総額を維持した組替えと割増賃金(最高裁令和5年3月10日判決)5 東京地裁令和6年5月17日判決の組替え部分第5 最低賃金の改定前に点検すること1 計算の点検2 下回る場合の対応第6 関連記事第7 出典1 法令2 裁判例3 所管行政機関の資料
第1 この記事の対象と結論
1 対象とする場面

地域別最低賃金は毎年改定され,改定のたびに,月給のうち基本給を時間額に直すと最低賃金を下回る,という問題が生じることがある。
固定残業代(定額残業代)を支払っている会社では,「固定残業代を含めれば最低賃金を上回っている」「総額を変えずに固定残業代の一部を基本給へ振り替えればよい」と考えられることがある。
本記事は,最低賃金法の計算方法と,固定残業代の有効性及び労働条件の変更の観点から,これらの対応の問題点を整理する。

固定残業代が有効になる要件そのもの(判別可能性・対価性)は,固定残業代が有効になる要件―判別可能性・対価性と最高裁7判決で扱っている。
本記事の条文は,令和8年9月28日時点の現行法をe-Gov法令検索で確認した。
都道府県ごとの最低賃金額と発効年月日は,厚生労働省の地域別最低賃金の全国一覧で確認する必要がある。

2 結論の要点

①時間外労働,休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金は,最低賃金を満たしているかの計算に算入しない(最低賃金法4条3項2号,最低賃金法施行規則1条2項)。
固定残業代を含めて最低賃金を満たしていると考えることはできない。
②基本給等を時間額に直して最低賃金を下回ると,その部分は無効となり,最低賃金と同様の定めをしたものとみなされる(最低賃金法4条2項)。
③基本給等が最低賃金を下回る状態で「固定残業代」とされていた手当について,通常の労働時間の賃金に当たる部分が含まれているとして,固定残業代としての効力を認めなかった裁判例がある(東京地裁令和6年5月17日判決)。
④総額を変えずに固定残業代を減らして基本給を増やす振替は,労働者にとって不利益な変更になりうる。
そのため,労働者の自由な意思に基づく同意か,合理的な就業規則の変更が必要になる。
⑤賃金総額を維持したまま手当を組み替えた賃金体系について,割増賃金の支払を認めなかった最高裁判決がある(最高裁令和5年3月10日判決)。

第2 最低賃金を満たしているかの計算
1 算入する賃金と算入しない賃金
(1) 最低賃金法4条

最低賃金法4条1項は「使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。」と定める。
同条3項は,次の賃金を最低賃金を満たしているかの計算に算入しないとする。
①「一月をこえない期間ごとに支払われる賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの」(1号)
②「通常の労働時間又は労働日の賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの」(2号)
③「当該最低賃金において算入しないことを定める賃金」(3号)

(2) 最低賃金法施行規則1条

最低賃金法施行規則1条1項は,4条3項1号の賃金を「臨時に支払われる賃金及び一月をこえる期間ごとに支払われる賃金」とする。
同条2項は,4条3項2号の賃金を次のとおりとする。
①「所定労働時間をこえる時間の労働に対して支払われる賃金」(1号)
②「所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金」(2号)

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未払賃金を第三者が立替払いした場合―求償権と代位取得した財団債権(AI作成)

第1 結論

第2 最初に二つの権利を分ける

1 求償権
2 代位取得した原賃金債権

第3 破産法149条による財団債権

第4 最高裁平成23年11月22日判決

1 事案
2 判断
3 立替払いの時期・主体と租税債権の場合

第5 現在の民法で確認すべき点

第6 回収方法

第7 保存すべき資料

第8 令和8年司法試験倒産法との関係

第9 出典

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高年収の専門職・スタッフ職は管理監督者か―残業代請求で確認する権限・勤怠裁量・待遇(AI作成)

目次第1 管理職の肩書と労基法上の管理監督者は同じではない1 社内の役職名だけでは決まらない2 高年収だけでも決まらない第2 法的効果と判断枠組み1 時間外・休日規制の適用除外2 深夜割増賃金は別である第3 職務内容・責任・権限1 経営方針への関与2 人事権と部下の管理3 予算・契約・事業運営の裁量第4 勤務態様と労働時間の裁量1 出退勤を自ら決められたか2 実際に裁量を行使できたか第5 待遇1 役職に見合う優遇の有無2 比較対象を適切に選ぶ第6 日本マクドナルド事件から分かること1 東京地裁平成20年1月28日判決2 厚生労働省通達の否定要素第7 専門職・スタッフ職で確認する事項1 専門性と経営権限を分ける2 資料による立証第8 残業代請求の組立て1 管理監督者性が否定された場合2 管理監督者性が認められる場合第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令・行政資料2 裁判例・判例秘書
第1 管理職の肩書と労基法上の管理監督者は同じではない
1 社内の役職名だけでは決まらない

部長,マネージャー,店長,専門職又はスタッフ職という肩書があっても,当然に労働基準法41条2号の管理監督者になるわけではない。
管理監督者に当たるかは,名称ではなく,経営者と一体的な立場にあるといえる職務内容・責任・権限,勤務態様及び賃金その他の待遇を実態に即して判断する。

会社法上の役員,管理職手当の対象者,人事制度上の管理職及び労基法上の管理監督者は,それぞれ範囲が異なる。
残業代請求では,社内制度上の区分をそのまま結論にせず,実際の仕事と権限を確認する必要がある。

労働組合法2条但書1号の使用者の利益代表者と,ここで扱う労基法41条2号の管理監督者は,適用される制度と判断の目的が異なる。
前者は労働組合の自主性を確保するための団体の法適合性,後者は労働時間・休憩・休日の規制の適用除外に関する問題である。
組合の法適合性を検討するときは,雇入れ等に関する直接の権限や,労働関係の機密に接するために組合員としての責任と直接抵触するかを別に確認し,手当・勤怠裁量や役職名だけで両者を同じ範囲と扱わない。

2 高年収だけでも決まらない

年収が高いことは待遇を判断する一事情であるが,高年収だけで管理監督者性を基礎付けることはできない。
高度な知識・経験に対する専門職報酬,成果給又は転職市場での希少性により給与が高くても,経営方針への関与,部下の人事権及び勤務時間の裁量が乏しい場合がある。

反対に,低い待遇は,時間規制を外される地位にふさわしくないことを示す重要な事情となる。
基本給・役職手当・賞与だけでなく,実労働時間で割り戻した賃金,他の非管理職との逆転及び深夜勤務の頻度も確認する。

第2 法的効果と判断枠組み
1 時間外・休日規制の適用除外

労働基準法41条2号の管理監督者には,同法の労働時間,休憩及び休日に関する規定が適用されない。
そのため,管理監督者性が認められると,原則として法定時間外労働及び法定休日労働の割増賃金は発生しない。

適用除外の影響が大きいため,単に管理職らしい仕事をしているという程度では足りない。
行政通達及び裁判例は,企業経営上の必要から経営者と一体的な立場にあり,労働時間規制を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務・責任・権限と,その地位にふさわしい待遇を求めている。

2 深夜割増賃金は別である

管理監督者であっても,午後10時から午前5時までの深夜労働に対する労働基準法37条の割増賃金規制は適用される。
最高裁平成21年12月18日判決は,労働基準法41条が深夜割増賃金に関する同法37条の適用を排除するものではないとした。

もっとも,所定賃金に一定額の深夜割増賃金を含める趣旨が労働協約,就業規則その他によって明らかな場合は,その額の限度で別途支払を要しないことがある。
その場合も,通常賃金部分と深夜割増部分を判別できるか,実際の深夜労働に対応する額を満たすかを確認する必要がある。

第3 職務内容・責任・権限
1 経営方針への関与

事業計画,予算,営業方針,組織編成,採用方針及び重要取引について,どの会議に参加し,どの資料を受け取り,どの範囲で決定又は意見反映できたかを確認する。

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医療機関の宿日直許可―当直・非常勤医師の労働時間,通常勤務と同態様の業務及び割増賃金(AI作成)

目次第1 宿日直許可を検討する順序1 医療法上の宿直と労働基準法上の許可は別制度である2 確認すべき四つの資料第2 労働基準法上の法的枠組み1 許可がなければ待機時間も原則として労働時間になり得る2 大星ビル管理事件―仮眠時間も労働時間になり得る3 許可の効果は労働時間規制の全部を消すものではない第3 医師等の宿日直許可基準1 通常勤務から完全に解放されていること2 業務が軽度又は短時間であること3 宿直では十分な睡眠が確保できること4 宿日直手当と回数の基準第4 限定許可と通常勤務と同態様の業務1 診療科,職種,時間帯及び業務を限定した許可2 救急又は産科という名称だけでは決まらない3 通常勤務と同態様の業務が稀に発生した場合4 通常勤務と同態様の業務が常態化した場合第5 許可取得後の労務管理1 一勤務ごとの記録を残す2 勤怠記録と診療記録を突き合わせる3 実態が変わったときは許可内容を見直す第6 非常勤医師及び兼業医師の留意点1 非常勤医師も許可対象になり得る2 副業・兼業先を含む労働時間管理第7 紛争時の証拠チェックリスト1 医療機関側に求める資料2 医師側で保存する資料第8 関連記事第9 主要な一次資料
第1 宿日直許可を検討する順序
1 医療法上の宿直と労働基準法上の許可は別制度である

医療法16条は,医業を行う病院の管理者に対し,原則として病院に医師を宿直させることを求める。これは,入院患者の病状が急変した場合に診療できる体制を確保するための医療提供体制上の規定である。

これに対し,労働基準法上の宿日直許可は,断続的な宿直又は日直の勤務について,労働基準監督署長の許可を受けた場合に,許可の範囲で労働時間,休憩及び休日に関する規定の適用を除外する制度である。

したがって,医療法上,病院に医師を宿直させる必要があることから,当然に労働基準法上の労働時間規制が適用除外になるわけではない。また,病院が一つの宿日直許可を受けていることから,その病院における全ての当直,職種,診療科又は時間帯が適用除外になるわけでもない。

2 確認すべき四つの資料

令和8年9月20日現在,宿日直勤務を検討するときは,少なくとも次の四つを照合する必要がある。
①労働基準監督署長が交付した宿日直許可書及びその条件。
②対象者の労働条件通知書,雇用契約書,勤務表及び院内の当直規程。
③電子カルテ,救急受入れ,電話・呼出し,入退室,業務日誌等の実際の勤務記録。
④賃金台帳,給与明細及び時間外・休日・深夜割増賃金の計算資料。

許可があるかどうかだけでなく,許可された対象と実際の勤務が一致しているかを一勤務ごとに確認することが重要である。

第2 労働基準法上の法的枠組み
1 許可がなければ待機時間も原則として労働時間になり得る

宿直又は日直という名称であっても,労働者が病院の指揮命令下に置かれ,場所的・時間的に拘束されている時間は,原則として労働時間に当たり得る。当直料だけを定額で支払うことや,診療がなかったことだけで,当然に労働時間でなくなるわけではない。

労働基準法41条3号は,監視又は断続的労働に従事する者で,使用者が行政官庁の許可を受けたものについて,労働時間,休憩及び休日の規定を適用しないとする。労働基準法施行規則23条は,宿直又は日直の勤務で断続的な業務について,様式第10号による所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合に,法定労働時間を超えて労働させることができると定める。

2 大星ビル管理事件―仮眠時間も労働時間になり得る

最高裁平成14年2月28日判決(大星ビル管理事件・平成9年(オ)第608号)は,仮眠室での待機中も,警報・電話等に直ちに対応する義務があり,労働からの解放が保障されていない場合,仮眠時間全体が労働基準法上の労働時間となり得るとした。

医療機関の当直でも,まず,場所的・時間的拘束,即応義務,業務発生時の対応義務及び自由利用の保障から,労働時間該当性を判断する。その上で,労働時間に当たる時間について,労働基準法41条3号・施行規則23条の宿日直許可があり,かつ,実際の勤務が許可の対象・条件に収まるかを別に判断する。労働時間該当性と許可による適用除外は二段階の問題である。

3 許可の効果は労働時間規制の全部を消すものではない

宿日直許可の対象となる勤務は,許可の範囲で,労働基準法32条の労働時間,34条の休憩及び35条の休日に関する規定の適用が除外される。しかし,深夜業の割増賃金に関する規定まで一律に除外されるものではない。

また,許可中に通常の勤務時間と同じ態様の業務に従事した時間は,許可された断続的勤務として扱うことができない。その時間について,通常の労働時間として把握し,必要な時間外・休日労働の手続及び割増賃金の支払を行う必要がある。

第3 医師等の宿日直許可基準
1 通常勤務から完全に解放されていること

厚生労働省の「医師、看護師等の宿日直許可基準について」(令和元年7月1日基発0701第8号)は,医療機関の医師,看護師等について,通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後の勤務であることを前提とする。

外来診療の延長,予定手術,通常の病棟業務その他の日中と同じ密度の業務を継続して行う時間を,名目上「宿直」と呼ぶだけでは足りない。

2 業務が軽度又は短時間であること

許可対象となるのは,一般の宿日直許可基準を満たし,特殊な措置を必要としない軽度又は短時間の業務に限られる。具体例として,医師が少数の要注意患者の状態変動に対応するため,問診等による診察,必要な看護師等への指示又は確認を行うことなどが示されている。

実際の患者数だけでなく,診療内容,処置時間,呼出頻度,連続する対応時間,業務間の休息可能性を確認する必要がある。

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賃金・残業代の消滅時効は3年か5年か―労働基準法115条・附則143条の読替えと撤廃論議(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象2 結論第2 労働基準法115条と附則143条の読替え1 115条の本則2 附則143条による「当分の間」の読替え3 起算点は賃金の支払期日第3 請求権ごとの時効期間1 一覧2 退職手当3 年次有給休暇4 災害補償その他の請求権5 付加金と記録の保存第4 適用開始と経過措置1 令和2年4月1日以後に支払期日が到来する賃金2 付加金の経過措置3 民法の経過措置との違い第5 「当分の間」の3年を撤廃すべきかという議論1 労働政策審議会の報告と建議2 施行後5年の検討規定3 日本弁護士連合会の意見書と会長声明4 調査基準日の状況第6 請求と時効管理の実務1 時効の完成を止める手段2 労働基準監督署への申告と時効3 証拠の確保4 労働基準法の賃金に当たらない債権第7 関連記事第8 出典・参考資料1 法令2 公的資料
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象

本記事は,未払の賃金・残業代(割増賃金)を請求できる期間,すなわち労働基準法の規定による賃金の請求権の消滅時効について,労働基準法115条と同法附則143条の関係を中心に説明するものである。
あわせて,退職手当,年次有給休暇,災害補償,付加金及び記録の保存期間の扱い,令和2年4月1日の改正の適用開始,「当分の間」の3年を撤廃すべきかという議論の経過,請求と時効管理の実務を扱う。
調査基準日は令和8年9月19日であり,条文はe-Gov法令検索で取得した同日時点の現行条文(令和9年4月1日施行予定の改正後の条文を含む。)と照合した。

債権の消滅時効の一般原則(民法166条)は債権の消滅時効は何年か―5年・10年の原則,短期消滅時効の廃止及び分野別の時効期間で,消滅時効全体の見取り図は消滅時効に関するメモ書きで扱っている。

2 結論

未払の賃金・残業代の消滅時効期間は,調査基準日現在,賃金の支払期日から3年である。
労働基準法115条の本則は5年と定めているが,同法附則143条3項が「当分の間」これを3年と読み替えており,この読替えは調査基準日現在も削除されていない。
退職手当(退職金)の請求権は5年,年次有給休暇の請求権と災害補償の請求権は2年である(ただし,令和9年4月1日以後,政令で定める疾病に係る災害補償の請求権は5年となる。)。
付加金の請求は違反の時から3年以内にしなければならず,賃金台帳等の記録の保存期間も当分の間3年とされている。

3年の期間が適用されるのは,令和2年4月1日以後に支払期日が到来した賃金であり,それより前に支払期日が到来した賃金には改正前の2年が適用される。
もっとも,改正前の2年が適用される賃金は既に全て2年を経過しているから,現在請求を検討する賃金は,事実上全て3年の対象である。
3年の経過が近い賃金については,内容証明郵便による催告(民法150条)で6か月の完成猶予を得た上で,その間に労働審判の申立て又は訴えの提起をするのが基本である。

第2 労働基準法115条と附則143条の読替え
1 115条の本則

労働基準法115条は,「この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。」と定める。
この規定は,労働基準法の一部を改正する法律(令和2年法律第13号)によって改められたものであり,改正前の115条は,退職手当を除く賃金,災害補償その他の請求権を2年,退職手当の請求権を5年としていた。

改正の契機は,民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)が,月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権の1年の短期消滅時効(改正前民法174条1号)を含む職業別の短期消滅時効を廃止し,一般の債権の消滅時効期間を「知った時から5年・行使することができる時から10年」(民法166条1項)に改めたことである。
労働基準法の旧2年の規定は,民法の1年の短期消滅時効では労働者の保護に欠ける一方,民法の一般原則の10年では使用者に酷にすぎるという考慮から設けられた特則であり,基礎となった民法の短期消滅時効がなくなったことから,その在り方が見直された。

2 附則143条による「当分の間」の読替え

労働基準法附則143条3項は,115条の適用について,当分の間,同条中「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」とあるのを「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」と読み替えると定める。
その結果,退職手当以外の賃金の請求権は3年,退職手当の請求権は5年となる。
同条1項は記録の保存期間(109条)の「五年間」を「三年間」と,同条2項は付加金の請求期間(114条ただし書)の「五年」を「三年」と,それぞれ当分の間読み替えている。

「当分の間」の終期は法律に定められていないから,附則143条が法律の改正によって削除されない限り,3年の期間が続く。
調査基準日現在の現行条文には附則143条がそのまま置かれており,令和9年4月1日に施行が予定されている労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第60号)による改正後の条文でも,附則143条3項は「第百十五条第一項」を読み替える形に改められた上で維持されている。

3 起算点は賃金の支払期日

115条の起算点は「これを行使することができる時」であり,民法166条1項1号のような「知った時」を起算点とする定め(主観的起算点)は置かれていない。
厚生労働省労働基準局の「改正労働基準法等に関するQ&A」(令和2年4月1日)は,起算点について現行の取扱いからの変更はなく,改正後の115条の「これを行使することができる時」は従来と同様に賃金支払期日が起算点であることを示していると説明している。

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固定残業代が有効になる要件―判別可能性・対価性と最高裁7判決,職務手当型の規程の点検(AI作成)

目次第1 固定残業代の有効性を決める二つの要件第2 判別可能性1 歩合給や基本給に含めただけでは判別できない2 割増賃金の前に実労働時間の争いを固定する3 高額の年俸でも同じ(最高裁平成29年7月7日判決)第3 対価性1 対価性の判断要素(最高裁平成30年7月19日判決)2 判別の前提としての対価性と賃金体系全体(最高裁令和2年3月30日判決)3 賃金体系を変えて手当を新設した場合(最高裁令和5年3月10日判決)第4 差額の支払と,無効とされた場合の計算1 固定残業代を超える割増賃金は別途支払う2 無効とされると手当は計算の基礎に入る第5 求人・募集の段階で求められる表示1 職業安定法と施行規則の定め2 指針が求める3点の明示3 明示を怠った場合の行政上の措置4 求人時の表示と固定残業代の有効性の関係第6 就業規則・雇用契約書を点検するときの着眼点1 職務手当に割増賃金を含める型の規程2 確認する資料と事実3 請求の期間4 相当時間数の設定と最低賃金の改定第7 出典1 法令2 法律に基づく指針3 所管行政機関の広報資料4 裁判例
第1 固定残業代の有効性を決める二つの要件

基本給や手当に残業代をあらかじめ含めて支払う方法(固定残業代)は,それだけで労働基準法37条に違反するものではない。
最高裁平成29年7月7日判決は,基本給や諸手当に「あらかじめ含めることにより割増賃金を支払うという方法自体が直ちに同条に反するものではない。」とした。

もっとも,固定残業代の支払で割増賃金を支払ったといえるためには,次の要件がある。
①通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別できること(判別可能性)
②その手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされていること(対価性)
③割増賃金に当たる部分が法定の計算額を下回るときは,差額を支払うこと

本記事は,令和8年9月19日を基準に,これらの要件を示した最高裁の7判決の全文を基に,要件の中身と,求人・募集の段階で求められる表示,就業規則や雇用契約書の定めを点検するときの着眼点を説明する。
残業代の計算方法と請求手続の全体は時間外労働,休日労働及び深夜労働と残業代請求で,休憩時間中の電話番が労働時間になるかは昼休みの電話番・来客対応は労働時間になるか―休憩と残業代の判断・立証で扱っている。

第2 判別可能性
1 歩合給や基本給に含めただけでは判別できない
(1) 歩合給の事案(最高裁平成6年6月13日判決)

タクシー乗務員の賃金が月間水揚高に一定の歩合を乗じた歩合給だけで,時間外・深夜労働をしても増額されない事案で,会社は歩合給に割増賃金も含まれていると主張した。
最高裁平成6年6月13日判決は,歩合給が時間外・深夜労働によって増額されず,「通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできないものであったことからして、この歩合給の支給によって、上告人らに対して法三七条の規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたとすることは困難なものというべき」とした。

(2) 基本給の事案(最高裁平成24年3月8日判決)

派遣労働者の基本給を月額41万円とし,月間総労働時間が180時間を超えた分だけ1時間当たりの額を加算する契約について,会社は180時間以内の時間外労働分は基本給に含まれていると主張した。
最高裁平成24年3月8日判決は,月額41万円の全体が基本給とされ,その一部が割増賃金として区別されていた事情はなく,時間外労働の時間も月によって大きく変動し得ることから,「通常の労働時間の賃金に当たる部分と同項の規定する時間外の割増賃金に当たる部分とを判別することはできないものというべきである。」とした。
同判決は,労働者が180時間以内の時間外労働の割増賃金の請求権を放棄したという原審の見方も,自由な意思に基づく放棄の意思表示が明確でないとして退けた。

同判決の補足意見は,一定時間分の残業手当を毎月の給与に含める場合には,その旨が雇用契約上明確にされ,支給時に時間数と金額が明示され,その時間を超えた残業には別途上乗せして支払う旨もあらかじめ明らかにされていなければならないと解すべきと思われる,と述べた。
これは補足意見であり法廷意見ではないが,固定残業代の定め方を検討する際の目安になる。

賃金請求権の放棄を検討するときは,どの請求を放棄する意思表示があったのかと,それが自由な意思に基づくものかを分けて確認する。
最高裁平成24年3月8日判決は,放棄の意思表示を示す事情がうかがわれないことに加え,毎月の時間外労働時間が大きく変動し,あらかじめ予測しにくいことを指摘している。
実務では,賃金が高額か,契約書に署名したかという点だけで結論を出さず,放棄対象の期間・金額,説明資料,交渉経過及び本人が把握できた労働時間を対応させる。

また,月間160時間又は180時間という総枠と,法定時間外労働の時間数を同じものとして計算しない。
労働基準法32条の原則は1日8時間・1週40時間であり,月の総労働時間が同じでも,日・週の配分によって時間外労働は異なり得る。
変形労働時間制等の適用の有無を確認し,勤怠記録を日・週に分け,勤務日・休日の配置と給与計算を照合することが必要である。

2 割増賃金の前に実労働時間の争いを固定する

前記の最高裁平成6年6月13日判決には,固定残業代とは別に,弁論主義に関する重要な判示がある。原審では,午前2時以後も乗務員が会社との雇用契約に基づいて勤務していたことは当事者間に争いがなかった。それにもかかわらず,原審が午前2時以後の勤務は会社の指揮命令によるものではないとして割増賃金請求を排斥したため,最高裁は,当事者間に争いのない事実と異なる認定をした点に弁論主義違反があるとした。

残業代事件では,固定残業代の有効性だけを争点にすると,その前提となる実労働時間の自白・否認を見落としやすい。準備書面と口頭弁論調書を照合し,少なくとも,①日ごとの始業・終業時刻,②所定時刻後に業務をした事実,③雇用契約に基づく業務であること,④休憩・中抜けの時間,⑤使用者の指示又は黙認,⑥時間外・深夜・休日労働の区分について,相手方が認めた範囲と争う範囲を明示する必要がある。

(続きを読む...)固定残業代が有効になる要件―判別可能性・対価性と最高裁7判決,職務手当型の規程の点検(AI作成)

非正規社員から待遇差の説明を求められたときの回答手順と想定問答(AI作成)

第1 この記事の対象と結論1 対象と基準時2 最初にすべきこと3 令和8年10月1日施行後の明示義務第2 説明請求を受けた後の七段階1 請求内容をそのまま記録する2 適用法条と雇用区分を確定する3 待遇を一項目ずつ分ける4 比較対象となる通常の労働者を選ぶ5 待遇の性質・目的を確定する6 相違を証拠に接続する7 回答を承認し,説明後も記録する第3 回答前に確認する資料第4 待遇差に関する想定問答1 契約書に署名しているから,待遇差を承諾したのではないか2 同じ仕事をしているのに,なぜ賃金が違うのか3 基本給が低い理由はどう説明すべきか4 非正規社員には賞与を支給しなくてもよいか5 非正規社員には退職手当を支給しなくてもよいか6 家族手当は正社員だけでよいか7 住宅手当は転勤のある正社員だけでよいか8 夏季冬季休暇は同じ日数を与える必要があるか9 例外的に仕事の少ない正社員と比べればよいか10 有期契約だから待遇が低くてもよいか11 定年後再雇用者は定年前の本人と比べればよいか12 出向社員は出向先社員と比べればよいか13 正社員の待遇を下げて差をなくしてよいか第5 回答書の組み立て1 結論から断定しない2 基本給の回答例3 説明できないときの回答第6 主要な最高裁判例第7 一次資料と未確認資料の区別出典・参考資料1 法令・行政資料2 裁判例3 文献
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準時

本記事は,令和8年10月8日現在,直接雇用の短時間労働者又は有期雇用労働者から,正社員との基本給,賞与,退職手当,各種手当又は休暇の相違について説明を求められた場合の対応手順を整理するものである。
派遣労働者については,派遣先均等・均衡方式と労使協定方式で確認事項が異なるため,別途の検討を要する。

2 最初にすべきこと

説明請求を受けたときは,人事担当者がその場で「正社員とは責任が違う」「契約で決まっている」などと回答せず,質問の対象となる待遇,比較対象となる通常の労働者,制度決定時の目的及び現在の運用実態を確定する必要がある。
説明できない待遇差は,説明文だけを整えるのではなく,追加調査又は制度見直しへ戻すべきである。

3 令和8年10月1日施行後の明示義務

短時間・有期雇用労働法14条2項に基づく説明請求権及び事業主の説明義務は,令和8年10月1日に初めて生じたものではなく,現在も存在する。
令和8年10月1日からは,雇入れ時に,通常の労働者との待遇の相違の内容及び理由等について説明を求めることができる旨を明示する義務も施行されている。
同日から適用されている改正同一労働同一賃金ガイドラインは,退職手当,無事故手当,家族手当,住宅手当,夏季冬季休暇及び褒賞を新たに明記し,説明不足等が「その他の事情」として考慮され得ることなどを明確にしている。

第2 説明請求を受けた後の七段階
1 請求内容をそのまま記録する

請求日,請求者,質問された待遇,比較対象として挙げられた正社員,回答希望時期及び請求方法を記録する。
口頭の質問であっても無視せず,質問の意味が曖昧な場合は,対象となる賃金項目,期間及び比較対象を確認する。
説明を求めたことを理由とする不利益取扱いは禁止されているため,請求後の配置,評価,更新及び雇止めは,通常の人事判断と説明請求への対応を分けて記録する。

2 適用法条と雇用区分を確定する

パート,アルバイト,契約社員,嘱託社員等の名称ではなく,所定労働時間と契約期間によって短時間労働者又は有期雇用労働者に該当するかを確認する。
無期雇用のフルタイム労働者は,原則として短時間・有期雇用労働法8条・9条の直接の対象ではないが,労働契約法3条2項による均衡の考慮は別に残る。

3 待遇を一項目ずつ分ける

月例賃金を総額だけで比べず,基本給,職務手当,役職手当,精皆勤手当,家族手当,住宅手当,通勤手当等に分ける。
一時金についても,賞与,慰労金,褒賞及び退職手当を区別し,休暇は年次有給休暇,夏季冬季休暇,病気休暇等を区別する。
短時間・有期雇用労働法8条の不合理性は,個々の待遇ごとに判断されるからである。

4 比較対象となる通常の労働者を選ぶ

比較対象は,会社に雇用される通常の労働者のうち,問題となる待遇に対応する者又は雇用管理区分である。
能力不足,休職復帰直後又は健康上の配慮等により標準的な職務から一時的に外れた正社員だけを選び,特定の非正規労働者と比べるべきではない。
同職種,同等級,同勤務地,同じ上司の下で働く者その他の候補を挙げ,誰を選んだかだけでなく,なぜその者又は区分を選んだかも記録する。

5 待遇の性質・目的を確定する

就業規則の名称だけでなく,支給要件,算定方法,制度導入時の資料,実際の支給実績及び労使協議から,待遇の性質及び目的を認定する。
基本給,賞与及び退職手当は複数の目的を持つことが多いため,一つの目的だけで全額の差を説明しない。
制度目的が現在の運用と合っていない場合は,現在の実態に即した説明と制度改定の要否を分けて検討する。

6 相違を証拠に接続する

職務内容については,作業項目だけでなく,責任,権限,事故・苦情対応,部下指導,決裁及び成果指標を比べる。
職務内容及び配置の変更範囲については,規程上の転勤,配置転換,職種変更,昇進及び管理職登用の可能性だけでなく,過去の人事発令及び実績を確認する。
「将来の期待が違う」「正社員には転勤がある」という抽象的な説明は,実際の制度及び運用の資料へ置き換える必要がある。

7 回答を承認し,説明後も記録する

回答案は,人事,法務及び必要な決裁者が,規程,実績及び給与資料との整合性を確認する。
説明日,説明者,交付資料,労働者の質問,即答できなかった事項及び追加回答日を記録し,回答によって新たに判明した制度上の問題を待遇別検討票へ戻す。
説明請求への対応は,一度きりの答弁ではなく,待遇制度を継続的に監査する入口である。

第3 回答前に確認する資料

確認分野
主な資料
確認する事実

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在宅勤務の退勤打刻は残業時間の証拠になるか―残業許可制・PCログ・中抜けの判断と立証(AI作成)

目次

第1 結論と本記事の対象1 結論2 資料の範囲と基準日第2 労働時間の法的な判断基準1 使用者の指揮命令下に置かれている時間2 在宅勤務にも労働基準法が適用されること第3 退勤打刻は何を証明するか1 打刻が示す事実2 事業場勤務と在宅勤務の違い3 位置情報付き打刻の限界第4 残業許可制がある場合1 無許可残業が当然に無償となるわけではないこと2 厚生労働省Q&Aが示す確認事項3 残業許可制を実効的に運用する方法第5 打刻と照合する証拠1 勤怠記録・修正履歴・承認履歴2 パソコン・VPN・業務システムの記録3 メール・チャット・電話・会議記録4 成果物・ファイル更新・予定表・業務量5 休憩・中抜け第6 勤務日ごとの証拠整理表第7 労働者側と会社側の実務対応1 労働者側の確認事項2 会社側の確認事項3 紛争になった後の証拠保全第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 厚生労働省資料4 検討の端緒となった二次資料
第1 結論と本記事の対象
1 結論

在宅勤務の退勤打刻は,労働者が申告した終業時刻を示す重要な資料である。
しかし,自宅にいたことと業務に従事していたことが一致するとは限らないため,退勤打刻だけで,始業から退勤まで継続して労働したことが常に認められるわけではない。
反対に,在宅勤務であること又は残業の事前許可がないことだけで,打刻された時間帯の労働時間該当性が一律に否定されるわけでもない。

労働時間に当たるかは,使用者の指揮命令下に置かれていたかという客観的な基準により判断される。
実務では,勤怠打刻,パソコン・VPNの記録,メール・業務チャット・電話,予定表,ファイル更新・成果物,上司の指示・認識,業務量・期限及び休憩・中抜けを勤務日ごとに照合する必要がある。

2 資料の範囲と基準日

本記事は,令和8年9月15日現在の労働基準法,最高裁判例及び厚生労働省の公表資料を基礎とし,在宅勤務の退勤打刻,残業許可制及び周辺記録の証拠上の位置付けを整理するものである。
実際の残業代計算では,労働契約,就業規則,テレワーク勤務規程,適用される労働時間制度,休憩時間,法定休日及び既払賃金も個別に確認する必要がある。

本記事の検討の端緒となった二件のX投稿は,東京地裁令和7年9月3日判決に関する二次的な紹介である。
同判決は裁判所ウェブサイトでは確認できず,判決全文も確認できていないため,本記事の法的結論の根拠には用いていない。
裁判所ウェブサイトに掲載されていないことは,裁判例が存在しないことを意味しない。

第2 労働時間の法的な判断基準
1 使用者の指揮命令下に置かれている時間

最高裁平成12年3月9日第一小法廷判決は,労働基準法上の労働時間を,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間であるとした。
労働時間に当たるかは,就業規則や社内制度の名称だけで決まるのではなく,労働者の行為を使用者の指揮命令下に置かれたものと客観的に評価できるかによって決まる。

したがって,「在宅勤務中であった」,「勤怠システム上は退勤前であった」又は「残業許可を得ていなかった」という一つの事実だけで結論を出すのは相当でない。
当日の具体的な業務,指示,成果及び時間の使い方を証拠に即して検討する必要がある。

2 在宅勤務にも労働基準法が適用されること

厚生労働省のテレワークの場合,労働時間管理や残業代はどうなりますかは,使用者が労働時間を適正に把握・管理する責務はテレワークでも同じであり,残業を行わせる場合には36協定と割増賃金の支払が必要であると説明している。
在宅勤務で使用者が現認できないことは,労働時間管理をしなくてよい理由にはならない。

テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドラインは,使用者が在宅勤務の労働時間管理方法をあらかじめ明確にすること,情報通信機器の使用時間等の客観的記録又は適正な自己申告を利用することを示している。
制度設計と個別紛争における事実認定は区別しつつ,平時の管理方法が実態を反映していたかを確認することが重要である。

第3 退勤打刻は何を証明するか
1 打刻が示す事実

退勤打刻は,原則として,労働者が勤怠システムに終業時刻として入力又は送信した時刻を示す。
打刻方法がICカード,パソコン,携帯電話又は自己申告のいずれであるか,修正履歴,承認履歴及び位置情報が保存されるかによって,記録から分かる事実は異なる。

本記事では,打刻を労働時間認定の出発点となる資料と整理する。

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減給の制裁の上限と解釈例規―労働基準法91条の「1回の額」・「総額」と,降格・出勤停止・賞与との違い(AI作成)

目次第1 労働基準法91条が定める二つの上限1 条文と本記事の対象2 「1回の額」と「総額」は別々の上限である3 平均賃金と賃金総額の算定4 計算例第2 「基本給の10%以内」型の規程の点検1 1件の非違行為について月々の割合で減給する定め2 上限を超える定めの効力と罰則3 モデル就業規則の規定例第3 同条の減給に当たる措置と当たらない措置1 職務の変更を伴う格下げと,職務をそのままにした降給2 出勤停止と昇給停止3 遅刻・早退の賃金控除と賞与からの減額第4 同条の制限を受けないことと懲戒処分の相当性第5 関連する山中弁護士ブログの記事第6 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 行政解釈4 公的資料5 文献

第1 労働基準法91条が定める二つの上限

1 条文と本記事の対象

労働基準法91条は,「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」と定めている。
本記事は,同条の「1回の額」と「総額」の意味,平均賃金及び賃金総額の算定方法,並びに同条の制限を受ける措置と受けない措置の区別を,行政解釈に沿って説明するものである。
本記事で取り上げる行政解釈は,旧労働省の通達等であり,厚生労働省労働基準局編『労働基準法解釈総覧(改訂16版)』に収録されているものである。
本記事の記載は,令和8年9月11日時点の法令及び公表資料に基づく。

就業規則に定める制裁は減給に限られない。
「労働基準法の施行に関する件」(昭和22年9月13日発基第17号)は,就業規則に定める制裁は減給に限定されるものではなく,譴責,出勤停止,即時解雇等も,制裁の原因となる事案が公序良俗に反しない限り禁止する趣旨ではないとしている。
常時10人以上の労働者を使用する使用者は,表彰及び制裁の定めをする場合には,その種類及び程度に関する事項を就業規則に記載しなければならない(労働基準法89条9号)。
最高裁平成15年10月10日第二小法廷判決(フジ興産事件)も,「使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する」としている。

2 「1回の額」と「総額」は別々の上限である

同条の上限は二つある。
一つは,1回の減給の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならないという上限であり,もう一つは,1賃金支払期の減給の総額がその期の賃金総額の10分の1を超えてはならないという上限である。
二つの関係について,行政解釈は,「法第九十一条は、一回の事案に対しては減給の総額が平均賃金の一日分の半額以内、又一賃金支払期に発生した数事案に対する減給の総額が、当該賃金支払期における賃金の総額の十分の一以内でなければならないとする趣旨である。」としている(昭和23年9月20日基収第1789号)。

この解釈例規の問いは,1件の非違行為について日を替え,又は月を替えれば減給を繰り返せるのではないかというものであった。
回答は,1回の事案に対する減給の総額を平均賃金の1日分の半額以内とするものであるから,1件の非違行為について減給を何回かに分け,又は複数の月にわたって続けても,その合計は平均賃金の1日分の半額を超えられない。
「10分の1」は,1賃金支払期に複数の非違行為があり,それぞれについて減給する場合に,その合計を抑える上限である。

3 平均賃金と賃金総額の算定

平均賃金は,算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を,その期間の総日数で除した金額である(労働基準法12条1項本文)。
賃金締切日がある場合は,直前の賃金締切日から起算する(同条2項)。

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昼休みの電話番・来客対応は労働時間になるか―休憩と残業代の判断・立証(AI作成)

第1 昼休みの電話番は,対応義務の実態で判断する第2 昼休み全体の待機と単発の対応を分ける1 電話が鳴らなくても待機義務が続く場合2 自由な休憩中に一度だけ対応した場合3 当番表がなくても実際の指示と運用を確認する第3 大星ビル管理事件の判断と昼休みへの射程1 実作業のない仮眠時間も労働時間とした理由2 契約上の手当と法定割増賃金は別に判断した第4 休憩不足と残業代を別々に計算する1 実労働時間が8時間を超えると必要な休憩も変わる2 勤務時間帯と実際の休憩による四つの設例3 25%割増の対象と既払額を確認する第5 当番の実態と時間をどの資料で示すか1 従業員は手元の資料から指示・時間・控除を具体化する2 会社は自動控除と実際の当番を照合する3 追加調査へ進む条件と調査を広げない基準第6 時効の確認と昼当番の運用改善1 賃金の時効と記録保存期間を混同しない2 会社は対応を引き継ぎ,勤務途中に休憩を確保する第7 出典1 法令2 裁判例3 所管行政機関の解説・Q&A・運用資料
第1 昼休みの電話番は,対応義務の実態で判断する

昼休み中に電話や来客への対応を求められ,労働から離れることが保障されていない場合は,実際に対応していない待機時間も労働時間となる。
厚生労働省も,昼当番として電話・来客対応をする時間は勤務時間に含まれ,昼休みが費やされた場合には別途休憩を与える必要があると説明している(昼当番に関するQ&A)。

ただし,本来自由に休める時間に単発の対応をした場合と,昼休み全体にわたり応答を求められた場合とでは,計上する時間の範囲が異なる。
①労働時間に含める範囲,②法定休憩の不足,③通常賃金及び割増賃金の不足を分けて確認する必要がある。

本記事は,令和8年8月31日現在の法令等を基に,民間事業場の通常の日中勤務を扱うものである。
公務員,管理監督者等の適用除外,変形労働時間制等に固有の問題は対象とせず,計算例は1日8時間・1週40時間制を前提とする。

第2 昼休み全体の待機と単発の対応を分ける
1 電話が鳴らなくても待機義務が続く場合

12時から13時まで電話当番を命じられ,電話が鳴れば直ちに応答しなければならない場合,通話が5分で終わったからといって,残り55分を当然に休憩とすることはできない。
食事ができたことや,その日に来客がなかったことだけでは,対応義務が解除されていたとはいえない。

厚生労働省の「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集」問6も,電話・来客への対応が要求される場合には,実際の対応がない時間も労働時間に該当すると説明している。
客が途切れたときに休んでよいという運用でも,来店があれば即座に業務へ戻る必要があるなら,労働から離れることを保障した休憩ではないとされている(同資料20頁~21頁〔PDF27頁~28頁〕)。

2 自由な休憩中に一度だけ対応した場合

同じ問6は,外出等が自由で,電話・来客対応を義務付けられていなかった時間を休憩としている。
そのような休憩中に顧客対応を余儀なくされた場合には,その対応に要した時間を労働時間として扱うと説明している。

したがって,対応の前後に自由な休憩へ戻れたのか,対応後も電話のそばで待つよう求められたのかを区別する必要がある。
「1件電話を受けた」という事実だけから,昼休み全部又は通話時間だけのいずれかに決めることはできない。

なお,この参考事例集は,脳・心臓疾患及び精神障害の労災認定に用いる業務参考資料である。
休憩の実態を整理する参考にはなるが,それ自体が民事の賃金請求について裁判所を拘束する基準というわけではない。

3 当番表がなくても実際の指示と運用を確認する

労働時間適正把握ガイドラインは,明示又は黙示の指示による業務を労働時間とし,即時の業務対応を求められ,労働から離れることが保障されない待機も含めている(1頁~2頁)。
書面の当番表がなくても,受付に残るよう求められたことや,電話に出ないと注意されたことなど,実際の運用が問題となる。

反対に,別の担当者が応答し,本人は対応不要で自由に休めたのであれば,自分の判断で事務所に残ったというだけで労働時間にはならない。
外出の可否,応答しなかった場合の扱い,交代要員の有無及び上司の認識を組み合わせて確認するのが相当である。

第3 大星ビル管理事件の判断と昼休みへの射程
1 実作業のない仮眠時間も労働時間とした理由

労働基準法上の労働時間は,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,労働契約や就業規則等の定めではなく,労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるかによって客観的に定まる(最高裁判所第一小法廷平成12年3月9日判決。三菱重工業長崎造船所事件)。
同判決は,業務の準備行為等を事業所内で行うことを義務付けられ,又は余儀なくされたときは,特段の事情のない限り指揮命令下に置かれたものと評価でき,社会通念上必要と認められる限り労働時間に当たるとした。

最高裁判所第一小法廷平成14年2月28日判決(平成9年(オ)第608号・第609号,民集56巻2号361頁。大星ビル管理事件)は,ビル管理会社の従業員の仮眠時間を扱ったものである。
最高裁は,実作業をしていないことだけで使用者の指揮命令下から離れたとはいえず,労働からの解放が保障されているかによって判断するとした。

同事件では,仮眠室での待機と警報・電話等への即時対応が義務付けられ,実質的にその義務がないといえる事情もなかったため,仮眠時間全体の労働時間性が認められた(判決7頁~8頁)。
昼休みそのものの判決ではないが,対応のない時間にも役務提供の義務が続くかという判断の参考になる。

判決は,実作業の必要が生じることが皆無に等しいなど,実質的な義務付けがない場合も検討している。
ただし,ある日にたまたま電話が鳴らなかったことと,実質的に対応義務がなかったこととは別である。

当番制を導入した後も,当番日以外の従業員に対し,当番が応答しない場合に限って個人の携帯電話へ転送する運用がとられることがある。
この場合は,転送が実際に生じた頻度や,転送されたときに直ちに応答することを求められていたかを確かめ,実作業の必要が生じることが皆無に等しいといえるかを検討することになる。
転送がごくまれで,応答しなくても不利益な扱いを受けない運用であれば,当番日以外の昼休みは休憩と評価されやすいと考えられるが,当番日は前記のとおり対応義務の実態で判断する。
飲食店等が営業の合間の閉店時間帯を休憩時間としている場合も,同じ観点から検討することになる。

2 契約上の手当と法定割増賃金は別に判断した

同判決は,労働基準法上の労働時間であることから,当然に労働契約所定の賃金請求権が生じるわけではなく,賃金についての合意内容を確認するとした。
一方で,明確な支払規定がないというだけで無給と解釈することも相当ではないと述べている(判決9頁)。

同事件では,月給や泊り勤務手当等を踏まえ,契約の定めだけに基づく追加の時間外勤務手当等の請求は認められなかったが,労働基準法13条・37条による法定割増賃金の支払義務は別に判断された。
昼当番についても,労働時間に当たるかを確定した後,雇用契約,賃金規程及び既払額を確認する必要がある。
月給制又は当番手当の支給があるという理由だけで,法定割増賃金の不足がないと判断することはできない。
定額の手当を残業代の支払に充てていると会社が主張する場合に,その手当が割増賃金の支払と認められる要件は,固定残業代が有効になる要件―判別可能性・対価性と最高裁7判決,職務手当型の規程の点検で説明している。

主文は原判決を破棄して東京高裁へ差し戻すものであり,最高裁が請求額をそのまま全額認めたものではない(判決9頁~13頁)。

第4 休憩不足と残業代を別々に計算する
1 実労働時間が8時間を超えると必要な休憩も変わる

労働基準法34条1項・3項は,実労働時間に応じた休憩を勤務の途中に与え,自由に利用させることを求めている。
最低時間は次のとおりであり,終業後に休ませることを勤務途中の休憩の代わりにはできない。

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業務内容が変わらない定年後再雇用社員の賃金水準の目安(AI作成)

第1 この記事が扱う対象と結論

1 対象と基準時
2 何%なら適法という基準はない
3 本記事における実務上の目安
4 市場相場と法的評価は別である

第2 現行法の判断枠組み

1 高年齢者雇用安定法は賃金率を定めていない
2 短時間・有期雇用労働法8条の均衡待遇
3 同法9条の均等待遇
4 説明義務と令和8年改正ガイドライン

第3 「業務内容が同じ」を分解する方法

1 作業だけでなく責任と権限を比べる
2 変更範囲は規程と実績の双方を見る
3 基本給を一つの性質に決めつけない

第4 主要裁判例が示すもの

1 長澤運輸事件――76%から80%は一般基準ではない
2 名古屋自動車学校事件――60%基準の否定
3 低い割合を認めた裁判例の読み方

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退職時の定期代精算と最終給与からの控除(AI作成)

目次第1 結論と問題の分け方1 定期代は当然には控除できない2 実務上最も安全な方法第2 返還義務の有無1 通勤手当も賃金になり得る2 支給方法によって結論が異なる3 退職日と最終出勤日は区別する4 規程がない場合と不当利得第3 返還額の計算1 実際の払戻額を基準とする方法2 日割り又は月割りによる方法第4 最終給与から控除するための要件1 一方的な相殺は原則として許されない2 賃金控除協定3 本人の自由意思による合意相殺4 過払賃金の調整的相殺5 控除額と退職時の7日払6 退職代行窓口を介した相殺同意第5 関係裁判例とその射程1 通勤手当と返還に近い裁判例2 控除・相殺に関する最高裁判例3 直接裁判例の確認範囲第6 会社が行う処理の順序1 事実と規程の確認2 控除方法の確認3 規程に定める事項第7 退職者が確認する事項1 返還義務の根拠2 控除の根拠第8 税務・社会保険・労働保険1 所得税2 健康保険・厚生年金3 労働保険第9 出典・参考資料1 法令・行政資料2 裁判例3 文献
第1 結論と問題の分け方
1 定期代は当然には控除できない

退職時に,既に支給した通勤定期券代の未使用期間分を最終給与から当然に控除できるという一般的なルールはない。

会社は,まず,通勤手当規程,就業規則又は個別合意に基づき,退職者に対する返還請求権が成立するかを確認する必要がある。その上で,返還請求権を最終給与から差し引くことが労働基準法24条1項の賃金全額払の原則に反しないかを,別に検討する必要がある。

したがって,判断は,①退職者に返還義務があるか,②返還義務があるとして最終給与から控除できるか,という二段階になる。返還義務があることと,給与からの控除が許されることは同じではない。

2 実務上最も安全な方法

会社が定期券の払戻しを直接受ける方法,又は最終給与を全額支払った上で退職者から別に返還を受ける方法は,賃金控除をめぐる争いを避けやすい。

最終給与から控除する場合には,返還債務の根拠と金額を明確にした上で,賃金控除協定又は本人の自由な意思に基づく個別同意など,労働基準法24条との関係を処理する根拠が必要となる。

なお,本記事は一般的な法制度と実務上の確認事項を説明するものであり,個別事案についての法律相談ではない。結論は,実際に適用される規程の文言,周知状況,支給方法,退職日,最終出勤日及び定期券の払戻条件によって変わる。

第2 返還義務の有無
1 通勤手当も賃金になり得る

労働基準法11条は,名称を問わず,労働の対償として使用者が労働者に支払うものを賃金とする。就業規則や賃金規程に基づいて定期的に支給される通勤手当は,一般に賃金に当たり得る。

6か月分をまとめて支給したからといって,直ちに会社の預り金になるわけではない。複数月分の一括支給は,各月の賃金の前払として構成される場合があるため,退職後の未使用分が返還対象となるかは,支給条件と返還条項から判断する必要がある。

2 支給方法によって結論が異なる
(1) 実費補填型

現実に通勤した費用,又は最も経済的かつ合理的な経路の定期券代を支給し,通勤しない期間には支給しないことが規程上明確である場合,退職後又は通勤終了後の期間について受給権が発生しないと解釈しやすい。

ただし,この場合も,どの日から不支給とするか,支給済額をどの算式で返還するかが規程に定められているかを確認しなければならない。

(2) 定額・固定給型

出勤日数や現実の交通費と切り離して毎月一定額を支給し,不支給又は返還の条件を定めていない場合,退職だけを理由として支給済額の一部が当然に不当利得になるとは限らない。

長年の運用上も欠勤や休職の際に減額していなかった場合には,固定的な賃金としての性格が強くなる。規程が不明確なまま,会社が後から実費精算型として扱うことには慎重な検討が必要である。

(3) 会社購入・現物交付型

会社が定期券を購入して従業員に交付し,長期欠勤,休職又は退職の際に回収して解約する制度であれば,定期券の所有関係と回収手続を規程に明記する必要がある。

もっとも,定期券を現物で支給すること自体についても,労働基準法24条の通貨払原則との関係で,労働協約その他の根拠を確認する必要がある。

(4) 複数月分の一括現金支給型

6か月定期券相当額などを現金で一括支給する制度では,対象となる各月の支給条件,退職時の支給停止日,返還義務,払戻手数料及び端数処理を定める必要がある。

単に「未経過分を返還する」と定めるだけでは,退職日基準か最終出勤日基準か,日割りか月割りか,交通事業者の実際の払戻額かが明らかにならない。

3 退職日と最終出勤日は区別する

有給休暇の取得により,最終出勤日から退職日まで数週間あることがある。規程が退職日の翌日から不支給と定める場合に,運用だけで最終出勤日の翌日から不支給に変更すると,返還請求の根拠を欠くおそれがある。

他方,現実の通勤を支給要件とする実費補填型の規程が最終出勤日の翌日を基準日として明示している場合には,その基準による精算が制度目的に合うことがある。

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定年再雇用社員・嘱託社員に昇給・家族手当・住宅手当を正社員と同様に行う必要性(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 検討する待遇と労働者の区分
2 同一労働同一賃金の規制の全体像と本記事の位置付け

第2 高年齢者雇用確保措置と待遇の適正化は別の規制体系である
第3 家族手当・住宅手当の不支給が許容された事例――長澤運輸事件

1 事案と最高裁判決の結論
2 住宅手当・家族手当に関する判示

第4 家族手当に類する手当の支給が必要とされた事例――日本郵便(大阪)事件

1 事案と最高裁判決の結論
2 扶養手当に関する判示

第5 家族手当・住宅手当の支給が必要となる場合の判断基準
第6 昇給を正社員と同様に行う必要性――名古屋自動車学校事件

1 最高裁判所令和5年7月20日判決が示した分析の視点
2 差戻控訴審・名古屋高等裁判所令和8年2月26日判決の認定
3 昇給の必要性を検討する際の着眼点

第7 令和8年10月1日施行の改正ガイドラインへの反映

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特定技能1号に退職手当を支給しないことの法的リスク――同一労働同一賃金ガイドラインの改正と報酬同等性要件(AI作成)

第1 この記事の対象
第2 同一労働同一賃金ガイドラインにおける退職手当規定の新設

1 現行のガイドラインは退職手当の判断基準を示していない
2 令和8年10月1日施行の改正で退職手当の項目が新設される
3 パートタイマーへの退職手当支給は,この規律が想定する対応の一例である

第3 特定技能1号の報酬に関する入管法上の規律

1 特定技能雇用契約における報酬同等性の要件
2 「報酬」の範囲と退職手当の位置付け
3 比較対象となる「日本人労働者」の範囲

第4 パートタイマーには支給し特定技能1号には支給しない場合の検討

1 特定技能1号自身とパート有期法との関係
2 「その他の事情」の明確化が与える影響
3 入管法上の報酬同等性要件との関係
4 労働基準法3条との関係

第5 実務上の対応

1 待遇検討票に特定技能外国人を含める
2 報酬に関する説明書の作成における留意点

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パートタイマーが正社員に転換する際の退職手当の取扱い――勤続年数の通算義務と同一労働同一賃金ガイドラインの改正(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 検討の対象と時点
2 「正社員転換」と「無期転換」の違い

第2 通常の労働者への転換を定める規定

1 パート・有期法13条
2 転換推進措置の性質

第3 退職手当と不合理な待遇差の禁止

1 パート・有期法8条
2 メトロコマース事件最高裁判決

第4 転換時の勤続年数の通算

1 法律上の一律の義務はない
2 就業規則における設計例
3 インターネット上の誤った説明

第5 税務上の勤続年数の計算との違い

1 退職所得控除額の計算原則

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残業代請求訴訟の仮執行による仮払い-遅延損害金・源泉徴収・逆転後の返還(AIリライト)

目次第1 結論と対象範囲1 仮払い後の取扱い2 最初に区別する三つの支払経路第2 仮払い後の遅延損害金1 控訴審は仮払いを考慮しない2 実体法上は弁済の提供の効果が生じる第3 確定判決と逆転後の返還1 確定後の二重執行を防ぐ方法2 原判決又は仮執行宣言が取り消された場合第4 源泉徴収と所得区分1 残業代元本,遅延損害金及び付加金2 任意の仮払いと強制執行を区別する第5 所得年分と税務訂正1 通常の未払残業代は本来の支給年分に属する2 支払時の源泉徴収と所得の帰属年分は別である3 逆転敗訴後は会社側と従業員側を分けて処理する第6 仮払い前後の実務確認1 支払前の確認事項2 支払後の確認事項第7 関連記事第8 出典・参考資料1 法令及び裁判例2 国税庁資料及び文献
第1 結論と対象範囲
1 仮払い後の取扱い

残業代請求訴訟で仮執行宣言付判決に基づく支払をした場合,その支払には実体法上の効果が生じるため,元本に充当された部分については,原則として支払日の翌日以後の遅延損害金は発生しないと考えられる。
もっとも,控訴審は仮執行による給付を考慮しないで本案の当否を判断し,原判決又は仮執行宣言が取り消されたときは民事訴訟法260条2項の原状回復が問題となる。

税務上は,残業代元本,遅延損害金及び付加金を分ける必要がある。
残業代元本は給与所得であり,会社には原則として支払時の源泉徴収義務がある一方,遅延損害金は雑所得,付加金は一時所得として扱われ,通常は給与所得の源泉徴収の対象とならない。

2 最初に区別する三つの支払経路

本記事でいう「仮払い」には,仮執行宣言付判決を受けた会社が強制執行を避けるために任意に支払う場合と,従業員が現実に強制執行して取り立てる場合がある。
これらに加え,仮執行とは別に,控訴審係属中の弁済又は供託として支払う場合もある。

支払の法的根拠が違えば,控訴審での取扱い,源泉徴収額を執行手続上差し引けるか,返還請求の根拠及び遅延損害金の停止時点が変わり得る。
したがって,振込書面,送金案内,供託原因,受領書及び執行記録に,何に基づく支払であるかを残すことが重要である。

第2 仮払い後の遅延損害金
1 控訴審は仮払いを考慮しない

最高裁平成24年4月6日第二小法廷判決(平成22年(受)第754号,民集66巻6号2535頁)は,仮執行宣言に基づく給付があっても,控訴審はその事実を考慮せず,請求の当否を判断すべきであるとした。
その上で,給付によって生じた実体法上の効果は,仮執行宣言が効力を失わないことを条件とし,確定判決に基づく強制執行の手続で考慮されると判示した。

裁判所PDF:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-82179.pdf

この判例は,控訴審の審理対象と,仮払いの実体法上の効果を区別したものである。
控訴審判決の主文に仮払い済みの額が反映されていないことだけから,その額を重ねて受領できるわけではない。

2 実体法上は弁済の提供の効果が生じる

知財高裁令和6年4月24日判決(令和5年(ネ)第10052号,令和5年(ネ)第10080号及び令和6年(ネ)第10002号)は,仮執行に基づく仮払金について,実体法上は弁済の提供の効果があり,その額が支払うべき元利金を上回るとして,仮払日の翌日以後の遅延損害金を認めなかった。
残業代事件の裁判例ではないものの,仮払いと遅延損害金の関係を直接示す近時の公刊裁判例として参考になる。

裁判所PDF:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-93156.pdf

したがって,仮払額が支払日時点の元本,遅延損害金及び費用を全て満たす場合,通常はその翌日以後の遅延損害金は発生しない。
一部だけを支払う場合は,支払合意又は充当指定の内容を確認し,特段の定めがなければ民法489条の費用,利息,元本の順序を踏まえて,元本に充当された額を計算する必要がある。

民法:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089/

第3 確定判決と逆転後の返還
1 確定後の二重執行を防ぐ方法

仮払い後も控訴審判決の主文が全額の支払を命じる形になった場合,支払済み部分は確定判決に基づく執行の段階で調整する。
従業員が同じ部分について強制執行を申し立てたときは,会社は支払資料を示して執行の対象額を争い,必要に応じて民事執行法35条の請求異議の訴え及び執行停止を検討する。

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労働者名簿,賃金台帳及び記録の保存(AIリライト)

第1 制度の概要と本記事の基準日1 本記事の対象2 各事業場ごとの作成義務第2 労働者名簿1 作成対象と訂正義務2 記載事項第3 賃金台帳1 作成及び記入の時期2 記載事項3 記載事項の例外及び補充4 様式と一体調製第4 電子データによる作成及び保存1 電子化に必要な機能2 本社等で一括管理する場合第5 労働関係記録の保存1 保存対象2 5年と3年の関係3 保存期間の起算日4 3年を超える保存の検討第6 違反に対する罰則1 30万円以下の罰金2 事業主に対する両罰規定第7 関連記事第8 出典・参考資料1 法令2 厚生労働省資料3 関連記事
第1 制度の概要と本記事の基準日
1 本記事の対象

本記事は,使用者が作成する労働者名簿及び賃金台帳の対象者,記載事項,様式,電子化並びに労働関係記録の保存期間を説明するものである。
内容は,令和8年9月2日現在の労働基準法及び労働基準法施行規則に基づく。

2 各事業場ごとの作成義務

使用者は,労働者名簿及び賃金台帳を,企業全体で一つではなく各事業場ごとに調製しなければならない(労働基準法107条及び108条)。
労働者名簿は日々雇い入れられる者を作成対象から除くのに対し,賃金台帳は日々雇い入れられる者についても作成する点が異なる。

第2 労働者名簿
1 作成対象と訂正義務

使用者は,各事業場ごとに,日々雇い入れられる者を除く各労働者について労働者名簿を調製しなければならない(労働基準法107条1項)。
記載事項に変更があった場合には,遅滞なく訂正しなければならない(同条2項)。

2 記載事項

労働者名簿の記載事項は,次のとおりである(労働基準法107条1項,労働基準法施行規則53条1項及び様式第19号)。
① 氏名
② 生年月日
③ 履歴
④ 性別
⑤ 住所
⑥ 従事する業務の種類
⑦ 雇入れの年月日
⑧ 退職の年月日及びその事由(退職の事由が解雇である場合は,その理由を含む。)
⑨ 死亡の年月日及びその原因

常時30人未満の労働者を使用する事業では,⑥の従事する業務の種類を記載する必要はない(労働基準法施行規則53条2項)。

第3 賃金台帳
1 作成及び記入の時期

使用者は,各事業場ごとに賃金台帳を調製し,賃金計算の基礎となる事項,賃金額その他の法定事項を,賃金支払の都度,遅滞なく労働者各人別に記入しなければならない(労働基準法108条及び労働基準法施行規則54条1項)。
給与計算システムにデータが存在するだけでは足りず,法定事項を各労働者について確認できる賃金台帳として整える必要がある。

2 記載事項

賃金台帳の記載事項は,次のとおりである(労働基準法施行規則54条1項)。

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時間外労働,休日労働及び深夜労働と残業代請求(AIリライト)

目次

第1 この記事の対象と割増率の全体像1 対象範囲と基準日2 割増率と支払総額第2 労働時間に当たるか1 使用者の指揮命令下という基準2 待機,仮眠及び休憩中の対応3 労働時間の記録4 在宅勤務の打刻と残業許可制第3 法定労働時間と36協定1 1日8時間及び1週40時間2 36協定の役割と残業命令3 時間外労働の上限4 令和8年9月1日からの監督指導の見直し第4 時間外労働,休日労働及び深夜労働の区別1 法定内残業と法定時間外労働2 法定休日と所定休日3 深夜労働と割増率の重なり4 月60時間超と代替休暇第5 残業代の計算1 基本となる計算式2 基礎賃金から除外される手当3 出来高払制その他の請負制4 端数処理第6 適用除外と固定残業代1 管理監督者2 その他の適用除外と高度プロフェッショナル制度3 医療機関の宿日直許可4 固定残業代の判断第7 未払残業代を請求するときの確認事項1 請求の基礎となる資料2 請求手段と停止基準3 消滅時効と付加金4 遅延損害金第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 所管行政機関の解説・運用資料
第1 この記事の対象と割増率の全体像
1 対象範囲と基準日

この記事は,労働基準法上の時間外労働,休日労働及び深夜労働の区別,割増賃金の計算並びに未払残業代を請求するときの確認事項を扱うものである。
調査の基準日は令和8年10月15日であり,同日現在の法令及び公表された行政資料を前提とする。
実際の計算では,労働契約,就業規則,賃金規程,変形労働時間制等の有無及び各賃金支払期に適用される法令を個別に確認する必要がある。

一般に「残業代」と呼ばれるものには,所定労働時間を超えた労働に対する通常の賃金と,労働基準法37条による割増賃金とが含まれる。
所定労働時間を超えたからといって,直ちに法定の割増率が適用されるわけではない。

2 割増率と支払総額

次の表の「割増率」は通常の1時間当たり賃金へ上乗せする割合であり,「未払時の合計率」は通常の賃金部分も支払われていない場合の合計である。
既に月給等によって通常の賃金部分が支払われているかどうかにより,追加して支払う額は異なる。

労働の区分法定の割増率通常の賃金部分も未払の場合の合計率

法定内残業0%100%
月60時間以内の法定時間外労働25%以上125%以上
月60時間を超える法定時間外労働50%以上150%以上
法定休日労働35%以上135%以上
深夜労働25%以上125%以上
月60時間以内の法定時間外労働かつ深夜労働50%以上150%以上
月60時間を超える法定時間外労働かつ深夜労働75%以上175%以上
法定休日労働かつ深夜労働60%以上160%以上

法定休日には1日8時間という時間外労働の区分を重ねず,法定休日の35%と深夜の25%だけを必要に応じて重ねる。
月60時間の算定には法定休日労働の時間を含めない。
就業規則又は労働契約が法定率より高い率を定めている場合は,その定めも確認する必要がある。

第2 労働時間に当たるか
1 使用者の指揮命令下という基準

最高裁平成12年3月9日第一小法廷判決は,労働基準法上の労働時間を,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間であるとした。
該当性は,労働契約,就業規則等の名称又は定めだけで決まるのではなく,労働者の行為を使用者の指揮命令下に置かれたものと客観的に評価できるかによって決まる。

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年次有給休暇の付与日数,取得方法,年5日義務及び時季変更権(AIリライト)

目次第1 年次有給休暇が発生する要件と日数1 6か月の継続勤務と8割以上の出勤2 通常の労働者の付与日数3 短時間労働者の比例付与4 出勤率の計算と出勤したものとみなされる日第2 労働者による年次有給休暇の取得1 年休は使用者の承認によって発生するものではない2 利用目的は原則として労働者の自由である3 半日単位年休と時間単位年休4 欠勤後の振替,退職前の取得及び労働義務のない日5 退職代行の通知を受けた場合の勤務日別の確認第3 使用者による年5日の取得義務1 対象となる労働者2 使用者の時季指定と労働者の意見3 年次有給休暇管理簿と罰則第4 計画年休1 労使協定で計画的に付与できる範囲2 年休が不足する労働者と計画日の変更3 所定休日及び会社休業日との区別第5 使用者の時季変更権1 事業の正常な運営を妨げる場合2 直前の申出と事後の時季変更3 代替要員の確保と具体的事情4 長期連続年休と集中的訓練第6 年休中の賃金,不利益取扱い,買上げ及び時効1 年休中の賃金2 不利益取扱い3 未取得年休の買上げ4 年休権の時効第7 労災保険の休業給付及び健康保険の傷病手当金との関係1 労災保険の休業補償給付等2 健康保険の傷病手当金第8 実務上確認すべき事項1 労働者が確認する事項2 使用者が確認する事項3 関連記事第9 出典1 法令2 行政資料3 裁判例
第1 年次有給休暇が発生する要件と日数
1 6か月の継続勤務と8割以上の出勤

本記事は,令和8年9月2日現在の法令及び公表資料に基づき,労働基準法上の年次有給休暇を整理したものである。
使用者は,雇入れの日から6か月間継続して勤務し,その期間の全労働日の8割以上出勤した労働者に,原則として10労働日の年次有給休暇を与えなければならない(労働基準法39条1項)。
雇用形態が正社員か,契約社員か,パートタイマーかによって,この権利の有無が決まるものではない。

継続勤務は,契約の形式だけでなく,実質的に使用関係が続いているかによって判断される。
そのため,有期労働契約が更新された場合や,同じ使用者の下でパートタイマーから正社員へ転換した場合も,実質的な使用関係が継続していれば,転換前の期間を通算するのが原則である。

試用期間中であることや本採用の手続がまだ済んでいないことだけで,年休の権利が否定されるわけではない。
雇入れの日からの実質的な継続勤務と出勤率を確認し,法定の要件を満たす者に,本採用後でなければ付与しないという扱いをしない。

会社が入社時の付与や全社共通の付与日を設ける場合も,個人ごとの法定付与時期を遅らせないように設計する。
入社日,実際の付与日・日数,次の付与日及び年5日取得義務の履行期間を対応させる。
前倒し・分割付与や履行期間の重複は,厚生労働省の年5日の年次有給休暇の確実な取得の該当部分を確認し,会社の年度だけで一律に管理しない。

2 通常の労働者の付与日数

週5日以上勤務する労働者,週所定労働時間が30時間以上の労働者又は年間所定労働日数が217日以上の労働者については,継続勤務年数に応じて次のとおり付与される(厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」)。

継続勤務年数6か月1年6か月2年6か月3年6か月4年6か月5年6か月6年6か月以上付与日数10日11日12日14日16日18日20日

各基準日前の1年間について8割以上出勤したときに,次の年の年休が発生する。
したがって,6か月経過時に10日が発生した後は,原則として1年ごとに出勤率と付与日数を判定する。

3 短時間労働者の比例付与

週所定労働日数が4日以下で,週所定労働時間が30時間未満の労働者には,週又は年間の所定労働日数に応じて比例付与が行われる。
法定の付与日数は次のとおりである。

週所定労働日数年間所定労働日数6か月1年6か月2年6か月3年6か月4年6か月5年6か月6年6か月以上4日169日~216日7日8日9日10日12日13日15日3日121日~168日5日6日6日8日9日10日11日2日73日~120日3日4日4日5日6日6日7日1日48日~72日1日2日2日2日3日3日3日

勤務日数が年度によって定まらない場合は,基準日における労働契約の内容を確認する必要がある。
また,週4日以下でも週所定労働時間が30時間以上であれば,比例付与ではなく通常の労働者の日数表が適用される。

4 出勤率の計算と出勤したものとみなされる日

出勤率は,原則として,出勤日数を全労働日で除して計算する。
業務上の負傷又は疾病による療養のために休業した期間,産前産後休業期間,育児休業・介護休業期間及び年次有給休暇を取得した日は,出勤したものとみなされる(労働基準法39条10項)。

使用者が正当な理由なく就労を拒否した期間について,最高裁平成25年6月6日判決は,無効な解雇によって就労できなかった日を全労働日と出勤日数の双方に算入すべきものとした(平成23年(受)第2183号・民集67巻5号1187頁)。
他方で,使用者の責めに帰すべき事由による休業日を含め,労働者に就労義務がなかった日を全労働日に含めるかは,休業の原因と法的性質を区別して判断する必要がある。

第2 労働者による年次有給休暇の取得

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令和8年10月1日施行の改正同一労働同一賃金ガイドラインに基づき,民間企業で対応が必要な事項(AI作成)

第1 改正の対象と企業対応の出発点

1 令和8年10月1日に変わるもの
2 対象となる労働者を先に分類する
3 最初に作成すべき待遇一覧表

第2 新たに明記された六つの待遇と記載が拡充された待遇

1 六つの新規項目
2 賞与及び病気休職・病気休暇
3 六項目以外の待遇も点検する

第3 雇入れ時の明示と待遇差の説明方法

1 労働条件通知書等への追加事項
2 説明資料に必要な内容
3 説明不足が実体判断にも影響する

第4 待遇差を判断する法的枠組み

1 待遇ごとに性質・目的を認定する
2 規程と人事運用の実態を一致させる
3 抽象的な人材確保目的は免責理由にならない
4 定年後再雇用及び無期転換

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