目次
第1 プレートを残したままでも後遺障害を検討できるか1 残っている金属だけで等級は決まらない2 鎖骨骨折全般の解説との関係第2 鎖骨のプレートは必ず除去するのか1 骨幹部プレートとフックプレートを区別する2 抜去の利益と手術の負担を確認する第3 除去しない場合の症状固定と認定時期1 金属が機能障害の原因となる場合の認定基準2 除去しない理由と改善の見込みを分けて確認する第4 残る症状ごとに確認する後遺障害1 鎖骨の変形とプレートの突出2 肩関節の可動域制限3 金属による刺激と皮膚のしびれ第5 申請前に確認する資料と医師への質問1 まず通常の診療資料をそろえる2 主治医に確認する質問第6 よくある質問1 プレート除去をしないと後遺障害は認められないか2 プレートが入っていれば第12級になるか3 骨がついたのに痛い場合は何を確認するか4 抜去後にしびれが残ったら申請できないか第7 出典・参考資料1 法令・公的認定基準2 医学資料
第1 プレートを残したままでも後遺障害を検討できるか
1 残っている金属だけで等級は決まらない
交通事故による鎖骨骨折でプレート除去をしない場合でも,後遺障害の検討が一律に排除されるわけではない。
しかし,体内にプレートが残っている事実だけで後遺障害等級が認定されるものでもない。
症状固定時に残る骨の変形,肩関節の動かしにくさ,痛み・しびれの内容と原因を確認する必要がある。
特に重要なのは,プレートが肩関節の機能障害の原因になっているか,抜去による改善が見込まれるか,主治医がどのような治療計画を立てているかである。
「抜去しない」という本人の希望だけで,症状固定や等級が決まるものではない。
本記事は,プレートを残す治療上の判断と,後遺障害の認定時期・資料の問題を扱う。
2 鎖骨骨折全般の解説との関係
変形,肩関節機能障害,神経症状の等級と裁判例は,交通事故による鎖骨骨折の後遺障害等級で説明している。
本記事では,プレートの種類,症状の原因及び抜去計画という,除去しない場合に先に確認すべき問題に重点を置く。
第2 鎖骨のプレートは必ず除去するのか
1 骨幹部プレートとフックプレートを区別する
鎖骨の中央付近を固定するプレートについて,骨癒合後も残している患者を追跡した研究があり,すべての患者に一律の抜去を勧める扱いではない。
他方,鎖骨の遠位端骨折に用いるフックプレートについては,骨癒合後,肩の可動域を改善し金属による不快感を解消するため,通常は抜去が必要になるとする専門家向け手術資料がある。
したがって,「鎖骨のプレート」という名称だけで,除去の要否を判断することはできない。
受傷部位,手術記録,プレートの種類・位置,現在の骨癒合及び肩の状態を主治医に確認するのが先である。
別の種類のプレートについての説明や,別の患者が抜去しなかったという経験を,そのまま自分の治療計画へ当てはめるべきではない。
2 抜去の利益と手術の負担を確認する
抜去により,金属の突出に伴う圧迫感や,物・衣類が当たるときの痛みが改善する場合がある。
一方,抜去にも手術の負担があり,抜去後の再骨折が報告されている。
小規模の後ろ向き研究では,抜去群と残置群で肩機能の評価に有意差がなかったという結果もあるが,患者の選ばれ方や追跡期間に限界がある。
この結果は,「残した方が安全である」「除去は不要である」とすべての患者に言い切る根拠ではない。
抜去を考えている場合は,改善を期待する症状,改善の見込み,骨癒合の確認方法,手術のリスク及び術後の仕事・運動の制限について説明を受ける必要がある。
除去せず経過観察する場合も,その理由と今後の受診方針を確認しておくと,後の症状固定判断を理解しやすい。
第3 除去しない場合の症状固定と認定時期
1 金属が機能障害の原因となる場合の認定基準
自賠責の支払基準は,後遺障害の等級認定について,原則として労災の障害等級認定基準に準じるとしている。
厚生労働省の上肢の認定基準は,骨折部に用いた金属が機能障害の原因となる場合,その除去を待って等級を認定することとし,原因とならない場合には,創面治癒をもって等級を認定することとしている。