第1 この記事の対象と結論
1 この記事が扱う問題
TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷の後遺障害認定では,手首に痛みがあるか,又はMRIに異常があるかという一つの事情だけでは結論が決まらない。検討すべき問題は,①TFCC損傷が存在するか,②その損傷が交通事故によるものか,③症状固定時の痛み・不安定性・可動域制限がその損傷によるものか,④その残存障害がどの等級に達するかという四段階に分かれる。
本記事は,この四段階を医学的所見と法的評価の双方から整理し,後遺障害申請又は訴訟で収集すべき資料を示すものである。手関節の可動域測定,4分の3基準,前腕の回内・回外及び可動域制限に関する一般的な裁判例は,別記事「手関節の可動域制限と後遺障害12級6号」で詳しく扱っているため,本記事ではTFCC固有の問題に重点を置く。
2 結論
TFCC損傷で最も重要なのは,画像所見を単独で読むのではなく,事故機序,事故直後の尺側手関節症状,臨床所見,画像の撮影時期・断面・シーケンス,保存療法又は手術の経過,症状固定時の所見及び事故前の状態を時間順に突き合わせることである。MRIが陽性でも無症候性又は変性の所見である可能性があり,反対にMRIが陰性でも周辺部又は尺骨小窩付着部の損傷を十分に描出できていない可能性がある。
したがって,「MRI陽性なら12級13号」,「MRI陰性なら非該当」という処理はいずれも正確でない。12級13号には,症状固定時に残る頑固な疼痛等がTFCC損傷又はDRUJ(遠位橈尺関節)の障害に対応することを客観的に説明できる資料が必要である。
事故による損傷は認められても,修復術後の残存症状との対応が弱ければ14級9号にとどまり得る。なお,本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり,個別の診断,治療方針,後遺障害等級又は訴訟結果を保証するものではない。
第2 TFCC損傷を評価する医学的前提
1 TFCCの構造と役割
TFCCは,関節円板,半月板類似体,掌側・背側橈尺靱帯,尺骨月状骨靱帯,尺骨三角骨靱帯,尺側側副靱帯及び尺側手根伸筋腱鞘等から成る複合体である。TFCCは尺側手関節に加わる荷重を分散し,前腕の回内・回外に伴うDRUJを安定させる。そのため,損傷すると尺側手関節痛,クリック,不安定感,把持力低下並びに回内・回外時又は荷重時の痛みが問題となり得る。
2 外傷性損傷と変性損傷
TFCC損傷には,転倒して手をつく,ハンドルを握った手に回旋力が加わる,又は手関節が尺屈した状態で軸圧を受けるなどの外傷で生じるものがある。他方で,加齢,反復負荷,尺骨が相対的に長いulnar-positive variance,尺骨突き上げ等による変性損傷もある。
国際的に用いられるPalmer分類は外傷性のⅠ型と変性のⅡ型を分けるが,実際の症例では外傷と変性が併存することがある。変性所見があることは直ちに事故との因果関係を否定する事情ではないが,事故前から症候性であったのか,事故により新たに断裂したのか,又は無症候性変性が症候化・増悪したのかを区別する必要がある。
3 症状と臨床所見
確認すべき症状は,尺骨茎状突起付近又は尺骨小窩部の痛み,クリック,引っ掛かり,不安定感,把持力低下,ドアノブを回す動作,雑巾を絞る動作,重い物を持つ動作及び椅子から手をついて立つ動作での痛みである。臨床所見には,圧痛,腫脹,皮下出血,fovea sign,ulnocarpal stress test,DRUJ ballottement test,可動域,握力及び誘発動作がある。
もっとも,908例を対象とした研究では,臨床検査及びMRIの単独診断能は限定的であった。したがって,一つの誘発テストの陽性又は陰性だけで損傷の有無を確定すべきではない。
第3 画像検査と関節鏡所見の読み方
1 単純X線とCT
単純X線ではTFCCそのものを直接描出しにくいが,橈骨遠位端骨折,尺骨茎状突起骨折,DRUJの配列,ulnar variance及び尺骨突き上げを評価できる。画像診断に関する国際的合意は,DRUJ不安定性の初期評価には単純X線を用い,中間位,回内位及び回外位の軸位CTを不安定性評価に用いるとしている。したがって,TFCC損傷を疑う事件で単純X線に断裂像がないことは,TFCC損傷の否定を意味しない。
2 MRI・MR関節造影・CT関節造影
MRIはTFCC病変の主要な画像検査であるが,検出能は病変部位と撮影条件で変わる。28研究・1155手関節を統合した研究では,MRIの感度は0.76,特異度は0.82であり,中央部病変は周辺部病変より検出しやすかった。
同研究の中央部病変の感度・特異度は0.92・0.93であるのに対し,周辺部病変は0.71・0.98であった。この数値は,陰性MRIが特に周辺部損傷を完全には除外しないことを示す一方,陽性MRIだけで事故起因性を確定できないことも示す。
MRIを評価するときは,磁場強度だけでなく,撮影時期,断面,スライス厚,コイル,脂肪抑制の有無,T2*又はgradient echo等のシーケンス,断裂部位及び読影医の専門性を確認する必要がある。尺骨小窩付着部又は周辺部の損傷が疑われるのに通常MRIが決め手を欠く場合,MR関節造影又はCT関節造影が問題となり得るが,侵襲,費用及び検査結果が治療・法的評価を変える可能性を考慮し,実施の要否は手外科医が判断すべきである。
3 関節鏡及び手術所見
関節鏡は断裂部位,不安定性及びプロービング所見を直接確認でき,保存療法で改善しない症例では診断と治療を兼ねることがある。しかし,関節鏡で損傷を確認できたことは,その損傷が事故で生じたこと,又は症状固定時の残存症状がその損傷によることを当然には証明しない。手術記録では,Palmer分類,断裂位置,新鮮損傷を示す所見,変性所見,DRUJ不安定性,修復内容及び術後経過を確認する必要がある。
4 無症候性所見と鑑別診断
無症候者のMRIにもTFCC異常が認められ,その頻度は年齢とともに増加する。15研究・977手関節を対象とした系統的レビューでは,TFCC異常の頻度は30歳未満で27%,70歳以上で49%であり,無症候群に限っても15%から49%へ増加した。
したがって,画像陽性例では事故前の診療歴・就労状況,健側所見,変性の分布及び事故後の症状発現時期を調べる必要がある。反対に,画像陰性例では,腱鞘炎,尺側手根伸筋腱障害,月状三角骨靱帯損傷,豆状三角骨関節障害,尺骨茎状突起偽関節,DRUJ障害及び頸部・末梢神経由来の痛み等を鑑別する必要がある。
第4 後遺障害等級の法的枠組み
1 自賠責保険が労災認定基準に準じる根拠
国土交通省・金融庁「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」は,後遺障害等級の認定を原則として労災保険の障害等級認定基準に準じて行うと定める。等級の文言は,e-Gov法令検索の自動車損害賠償保障法施行令別表第二に定められている。TFCC損傷で主に問題となるのは,機能障害としての12級6号と,神経症状としての12級13号又は14級9号である。
2 12級6号となる機能障害
12級6号は,「一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」である。手関節の主要運動は屈曲(掌屈)と伸展(背屈)であり,同一面の両運動の合計値が原則として健側の4分の3以下に制限される場合が対象となる。
もっとも,可動域制限が疼痛による努力不足又は廃用だけでなく,TFCC損傷,DRUJ拘縮,術後拘縮等の器質的変化により医学的に説明できなければならない。測定は原則として他動運動によるが,耐え難い疼痛等により他動値を採用することが適切でない場合は,自動運動も検討対象となる。測定方法の詳細は前記別記事を参照されたい。
3 12級13号と14級9号
12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」,14級9号は「局部に神経症状を残すもの」である。厚生労働省の障害等級認定基準は,12級について他覚的に神経系統の障害が証明されるものを,14級について12級より軽度のものを想定している。
TFCC事件では神経そのものの損傷に限定されず,器質的損傷に対応する局所疼痛として評価される。実務上,12級13号には,画像,手術,DRUJ不安定性又は再現性のある臨床所見等により,症状固定時の頑固な疼痛等を医学的に説明できることが必要である。14級9号は,他覚的所見が12級に足りなくても,事故直後から症状が一貫し,受傷機序,治療経過及び症状推移により残存痛を医学的に説明できる場合に問題となる。
4 機能障害と疼痛の重複評価
同じTFCC損傷から可動域制限と局所疼痛が生じても,一つの身体障害を異なる観点から評価しているにすぎない場合,又は一方が他方に通常派生する場合は,原則として両者を別々に併合せず,上位の等級で評価する。ただし,残存障害の原因,系列及び相互関係により結論が異なり得るため,診断名だけで機械的に処理すべきではない。
第5 認定判断の四段階
1 第1段階――TFCC損傷の存在
損傷の存在は,MRIの一行の記載だけでなく,断裂部位,画像シーケンス,臨床所見,DRUJ不安定性及び関節鏡所見を総合して判断する。「TFCCに高信号」との記載は,断裂の部位・程度及び変性との区別が不明なことがあるため,DICOM画像と正式な読影報告書を確保すべきである。
2 第2段階――事故起因性
事故起因性では,手をついた,ハンドルを強く握った状態で回旋力を受けた,又は手関節に軸圧が加わった等の受傷機序が重要である。事故直後又は合理的に近接した時期の診療録に,尺側手関節痛,腫脹,皮下出血又はクリックが記録されているかも確認する。事故前無症状,事故後の症状の一貫性,反対側との比較及び加齢変性等の代替原因を含めて評価しなければならない。
3 第3段階――残存症状との因果関係
事故によるTFCC損傷が認められても,保存療法又は手術後に残った症状がその損傷によるとは限らない。症状固定時の疼痛部位,圧痛・クリック,DRUJ不安定性,握力,可動域,誘発所見,最新画像,術後所見及び職業動作への支障を相互に対応させる必要がある。特に手術で損傷が修復された事件では,残存症状が修復後のTFCC又はDRUJ障害によるのか,術後拘縮,廃用,別の病態又は主観的疼痛によるのかが争点となる。
4 第4段階――等級の選択
主要運動の客観的な可動域制限が基準に達し,器質的原因で説明できる場合は12級6号を検討する。可動域基準に達しないが,症状固定時の頑固な疼痛等を客観的に証明できる場合は12級13号を検討し,その程度に達しないものの医学的に説明可能な疼痛が残る場合は14級9号を検討する。四段階のいずれかが欠ければ,画像上の損傷があっても非該当となり得る。
第6 資料収集と申請準備
1 事故資料と初期診療録
最初に,交通事故証明書,実況見分調書等の刑事記録,車両又は自転車の損傷写真,転倒状況の写真,ドライブレコーダー及び本人の事故直後の説明を確保する。医療機関からは,初診時からの診療録,救急記録,紹介状,画像検査報告書及び診療報酬明細書を取り寄せ,最初の手関節症状の記載日と部位を時系列表にする。受傷直後の腫脹又は皮下出血を撮影した写真,勤務先への申告,家族とのメッセージ等も,同時期の症状を示す補助資料となり得る。
2 専門診療と臨床所見
尺側手関節痛が続くのに捻挫として経過観察されている場合は,手外科又は手関節を専門とする整形外科医の評価を検討する。診療録又は診断書には,疼痛部位,圧痛,クリック,fovea sign,DRUJ不安定性,各誘発テスト,可動域,握力,健側比較及び就労・生活動作への支障を,陽性所見だけでなく陰性所見も含めて記録してもらうことが望ましい。検査結果は患者が指定するものではなく,診療上の必要性を医師が判断する。
3 画像と手術資料
画像は報告書だけでなくDICOM形式の元データを取得し,撮影日,装置の磁場強度,シーケンス及び断面が分かる資料をそろえる。再読影を依頼する場合は,事故態様,症状部位,検査時期及び疑われる断裂部位を正確に伝え,元画像に基づく所見と法的評価を混同しない意見を求める。手術が行われた場合は,手術記録,関節鏡写真・動画,術前後の画像,退院要約,リハビリテーション記録及び術後の臨床所見を取得する。
4 症状固定時の資料
後遺障害診断書には,傷病名だけでなく,症状固定時の自覚症状,客観的所見,可動域の他動値・自動値,疼痛により測定が制限された場合の注記,握力及び画像所見を対応させる必要がある。可動域は原則として5度刻みで,所定の肢位により両側を測定する。日常生活又は仕事への支障は,「手首が痛い」と抽象的に書くのではなく,把持重量,回内・回外,工具操作,キーボード,調理,運転等の具体的動作,頻度及び代償方法を記録する。
5 追加検査・医師意見の費用対効果
資料は,①既に存在する診療録・画像の回収,②主治医への照会,③専門医の再評価,④追加画像又は医学意見の順に,負担の小さいものから集めるのが合理的である。既存画像で争点を解決できる場合,又は追加検査の結果が治療方針・等級判断を変えない場合は,高額又は侵襲的な検査を重ねる必要性は低い。反対に,周辺部損傷が疑われるのに通常MRIの条件が不十分で,結果が治療又は12級13号の判断を左右し得る場合は,手外科医と検査の追加を検討する余地がある。
第7 典型的な反論と検証方法
1 症状の訴え又は診断が遅い
相手方は,事故直後の手関節痛の記載がない,又はTFCC診断まで数か月あるとして事故起因性を争うことがある。この場合は,初期診療録における上肢痛の部位,救急時の優先傷病,他院紹介の経緯,画像検査までの待機期間及び事故直後の同時期資料を確認する。診断名が遅れたことと,症状の発現が遅れたことは区別すべきである。
2 MRI陽性は変性又は無症候性所見である
画像陽性だけでは事故外傷を確定できないため,この反論には医学的根拠がある。反証には,事故前無症状,事故直後から同一部位の症状があること,新鮮外傷又は不安定性を示す所見,事故機序との整合性,健側との差及び他原因の乏しさを組み合わせる必要がある。
3 MRI陰性である
陰性MRIは重要な事情であるが,周辺部又は尺骨小窩付着部の損傷では感度が低下する。撮影条件,病変部位,専門医の読影,臨床所見及び必要に応じた関節造影又は関節鏡所見を確認し,単純な二分論を避けるべきである。もっとも,陰性画像に加えて臨床所見も乏しく,症状部位が変動し,治療に長い空白がある場合は,非該当の可能性が高まる。
4 手術で修復済みである
手術歴は損傷の存在を裏付け得る一方,症状固定時の障害を当然に裏付けるものではない。術後のDRUJ安定性,誘発痛,可動域,握力及び画像を改めて確認し,残存症状の原因を示す必要がある。これは,受傷時の損傷と症状固定時の後遺障害を別々に立証するという問題である。
第8 裁判例
1 札幌地裁令和7年3月19日判決――非該当から12級13号
札幌地裁令和7年3月19日判決(自保ジャーナル2194号63頁)は,自賠責保険の非該当認定と異なり,右TFCC損傷による後遺障害を12級13号と評価した。判決は,事故直後からの右手関節痛,早期からのクリック,ハンドル付近への衝突機序,主治医・専門医の診断,MRIシーケンスの限界,臨床症状,手術所見及び他原因の乏しさ等を総合した。
特定の画像一枚ではなく,複数の独立した資料が同じ結論を指すかを検討した事例である。裁判所HP未掲載であり,判決収録本文及び榎木貴之・小杉晴洋『自賠責・紛争処理事例と判例から読み解く後遺障害等級認定の判断』(新日本法規,令和8年)202頁~203頁で判示内容を確認した。
2 名古屋地裁令和4年9月14日判決――損傷を認めても14級9号
名古屋地裁令和4年9月14日判決・令和2年(ワ)第5540号(交通民事裁判例集55巻5号74頁~90頁)は,T2*画像,術中所見,事故直後からの疼痛・クリック及び受傷機序等から,事故によるTFCC損傷を認めた。もっとも,修復術後に残った症状とTFCC損傷との客観的対応が十分でないとして,12級ではなく14級9号相当とした。
この判決は,損傷の存在・事故起因性と,症状固定時の残存症状との因果関係を分けて立証する必要を示す。弁護士ドットコムLIBRARYの判決本文及び榎木・小杉前掲書171頁~175頁で確認した。裁判所HP未掲載である。
3 否定例が示す反対事情
神戸地裁令和5年8月10日判決・令和4年(ワ)第472号(交通民事裁判例集56巻4号252頁~257頁)は,追突時にハンドルを握っていたことのほか,両側のulnar-positive variance,DRUJ弛緩性,急性期の明確な外傷所見の欠如及び後日のMRIでの軽度変性等を検討し,事故によるTFCC損傷又は後遺障害を否定する方向に評価した。名古屋地裁令和6年12月18日判決・令和4年(ワ)第3816号(交通民事裁判例集57巻6号269頁~275頁)も,尺骨茎状突起近傍の所見,事故機序,経過及び代替原因等を検討し,事故によるTFCC損傷及びこれに基づく後遺障害を否定した。両判決は弁護士ドットコムLIBRARYの判決本文該当箇所で確認したが,いずれも裁判所HP未掲載である。
4 確認した裁判例の範囲
令和8年8月1日までに,裁判所HP,弁護士ドットコムLIBRARY,交通民事裁判例集,自保ジャーナル及び関連実務書で「TFCC」「T.F.C.C.」「三角線維軟骨」「三角線維軟骨複合体」を検索し,次の12件を確認した。この一覧は利用できた公開資料及び認証付きデータベースの検索結果であり,日本に存在する全判決を保証するものではない。裁判所HPの検索で該当判決本文が見つからなかったものは,不存在ではなく「裁判所HP未掲載」とした。
| 裁判例 | 事件番号・掲載誌 | 本記事で確認できた位置付け |
|---|---|---|
| 札幌地裁令和7年3月19日判決 | 自保ジャーナル2194号63頁 | 自賠責非該当を覆し12級13号。判決収録本文確認済 |
| 名古屋地裁令和6年12月18日判決 | 令和4年(ワ)第3816号・交民57巻6号269頁~275頁 | 事故によるTFCC損傷及び後遺障害を否定。原文該当箇所確認済 |
| 東京地裁令和6年6月24日判決 | 令和2年(ワ)第24821号・交民57巻3号276頁以下 | TFCC診断の記載を確認。TFCC単独の等級結論は本調査で未確定 |
| 神戸地裁令和5年8月10日判決 | 令和4年(ワ)第472号・交民56巻4号252頁~257頁 | 事故起因性を否定する方向の原文該当箇所確認済 |
| 福岡地裁令和4年12月26日判決 | 令和2年(ワ)第3131号・交民55巻6号266頁,270頁~273頁 | TFCC損傷と残存痛の検討箇所を確認。TFCC単独の結論は本調査で未確定 |
| 名古屋地裁令和4年9月30日判決 | 自保ジャーナル2138号56頁 | 変性TFCCの症候化・増悪として12級13号とする実務書の紹介を確認。判決原文全体は本調査で未確認 |
| 名古屋地裁令和4年9月14日判決 | 令和2年(ワ)第5540号・交民55巻5号74頁~90頁 | 事故性損傷を認め,残存症状を14級9号と評価。判決本文確認済 |
| 京都地裁令和4年3月17日判決 | 令和元年(ワ)第4350号ほか・交民55巻2号119頁,123頁,131頁 | 右TFCC損傷の診断・治療箇所を確認。TFCC単独の結論は本調査で未確定 |
| 東京地裁令和2年7月22日判決 | 令和元年(ワ)第22417号・交民53巻4号148頁~154頁 | MRI上の関節円板損傷等の検討箇所を確認。TFCC単独の結論は本調査で未確定 |
| 名古屋地裁平成30年9月5日判決 | 平成28年(ワ)第1937号・交民51巻5号35頁~45頁 | 機序,経過,関節造影及び既往変性の検討箇所を確認。TFCC単独の結論は本調査で未確定 |
| 横浜地裁平成30年9月27日判決 | 平成29年(ワ)第607号・交民51巻5号165頁以下 | 関連負傷としてのTFCC診断を確認。TFCC等級判断の中心事件ではない |
| 横浜地裁平成28年3月24日判決 | 自保ジャーナル1978号75頁 | 12級を否定し14級9号とする実務書の紹介を確認。判決原文全体は本調査で未確認 |
なお,検索で確認した同名語のうち,音楽商品番号に由来する2件は医学的なTFCC損傷事件ではないため除外した。
第9 申請前の確認事項
後遺障害申請又は異議申立ての前には,次の事項を順に確認する必要がある。
① 事故直後から尺側手関節症状が診療録又は同時期資料に残っているか。
② 事故機序と損傷部位が医学的に整合するか。
③ MRIの元画像,撮影条件,断裂部位及び読影所見を確認したか。
④ 無症候性変性,健側所見,ulnar variance及び他の疼痛原因を検討したか。
⑤ 臨床所見,画像所見及び必要に応じて関節鏡所見が相互に整合するか。
⑥ 受傷時の損傷だけでなく,症状固定時の疼痛,不安定性,可動域及び握力を裏付けたか。
⑦ 12級6号,12級13号,14級9号又は非該当のどの要件を,どの資料が満たすのかを対応表にしたか。
⑧ 追加検査又は医学意見が結論を変える可能性と,費用・侵襲を比較したか。
この確認により不足資料が特定できなければ,検査や意見書を無限定に追加すべきではない。反対に,事故直後の症状,専門医所見及び画像・手術所見がそろっているのに,一般的MRIの陰性又は変性所見だけで非該当とされた場合は,異議申立て又は訴訟で四段階の判断過程を組み直す余地がある。
第10 出典・参考資料
1 法令・行政資料
① 自動車損害賠償保障法施行令(昭和30年政令第286号)別表第二(令和8年8月1日現行本文をe-Govで確認)。
② 国土交通省・金融庁「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」3頁。
③ 厚生労働省平成16年6月4日基発第0604003号「せき柱及びその他の体幹骨,上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準について」。
④ 厚生労働省平成16年6月4日基発第0604002号「障害等級認定基準の一部改正について」。
⑤ 日本リハビリテーション医学会・日本整形外科学会・日本足の外科学会「関節可動域表示ならびに測定法改訂について(2022年4月改訂)」1188頁~1200頁。
2 裁判例・実務書
① 札幌地裁令和7年3月19日判決・自保ジャーナル2194号63頁(裁判所HP未掲載)。
② 名古屋地裁令和4年9月14日判決・令和2年(ワ)第5540号・交通民事裁判例集55巻5号74頁~90頁(裁判所HP未掲載)。
③ 神戸地裁令和5年8月10日判決・令和4年(ワ)第472号・交通民事裁判例集56巻4号252頁~257頁(裁判所HP未掲載)。
④ 名古屋地裁令和6年12月18日判決・令和4年(ワ)第3816号・交通民事裁判例集57巻6号269頁~275頁(裁判所HP未掲載)。
⑤ 榎木貴之・小杉晴洋『自賠責・紛争処理事例と判例から読み解く後遺障害等級認定の判断―傾向を踏まえた交通事故事件処理―』新日本法規,令和8年,171頁~175頁,202頁~203頁,400頁,435頁。
⑥ 加藤義治『医師と損保のためのわかりやすい交通事故外傷ガイドQ&A 整形外科編』保険毎日新聞社,令和6年,66頁~68頁。
⑦ 上谷雅孝ほか編『関節のMRI』第3版,メディカル・サイエンス・インターナショナル,令和2年,393頁~396頁。
3 医学文献
① Treiser MD, Crawford K, Iorio ML. TFCC Injuries: Meta-Analysis and Comparison of Diagnostic Imaging Modalities. J Wrist Surg. 2018;7:267-272. PMCID: PMC6005773。
② Boer BC, Vestering M, van Raak SM et al. MR arthrography is slightly more accurate than conventional MRI in detecting TFCC lesions of the wrist. Eur J Orthop Surg Traumatol. 2018;28:1549-1553. PMCID: PMC6244851。
③ Dietrich TJ et al. Interdisciplinary consensus statements on imaging of DRUJ instability and TFCC injuries. Eur Radiol. 2023;33:6322-6338. PMID: 37191922。
④ Schmauss D et al. Clinical tests and magnetic resonance imaging have limited diagnostic value for triangular fibrocartilage complex lesions. Arch Orthop Trauma Surg. 2016;136:873-880. PMID: 26969464。
⑤ Chan JJ, Teunis T, Ring D. Prevalence of triangular fibrocartilage complex abnormalities regardless of symptoms rise with age. Clin Orthop Relat Res. 2014;472:3987-3994. PMID: 25091224。
⑥ Portnoff B et al. Prevalence of asymptomatic TFCC tears on MRI: A systematic review. Hand Surg Rehabil. 2024;43:101684. PMID: 38493923。
⑦ Sander AL et al. Outcome of conservative treatment for triangular fibrocartilage complex lesions with stable distal radioulnar joint. Eur J Trauma Emerg Surg. 2021;47:1621-1625. PMCID: PMC8476392。