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親族法・家事事件

面会交流・親子交流で渡されたAirTag―位置情報の追跡とストーカー規制法(AI作成)

目次

第1 子どもに渡した物から相手の居場所が分かる場合第2 紛失防止タグに関する法改正第3 物に取り付ける場合と,中に入れて渡す場合第4 無承諾,目的及び反復を分けて確認する1 承諾の有無2 行為の目的3 反復と刑事責任第5 発見時に記録しておく事情第6 親子交流の実施方法とは別に検討する第7 会報の事例と一次資料の関係第8 出典
第1 子どもに渡した物から相手の居場所が分かる場合

親子交流の際に渡されたぬいぐるみなどにAirTag等の紛失防止タグが入っており,その位置情報から,同居親や子どもの居場所が把握されていた場合,どう考えればよいか。
令和7年のストーカー規制法改正では,紛失防止タグを利用した位置情報の取得等に対応する規定が設けられ,関係部分は令和7年12月30日に施行された。

ただし,タグが見つかったという事実だけで,直ちにストーカー行為の犯罪が成立すると結論付けることはできない。
誰の位置情報を,どのような目的で,承諾を得ずに取得したのか,物をどのように渡したのか,行為が反復されているかなどを分けて確認する必要がある。

本記事の親子交流の例は,大阪弁護士会の会報に掲載された被害者支援実務意見交換会の架空事例を手掛かりにした説明である。
実際の事件や裁判例を紹介するものではない。

第2 紛失防止タグに関する法改正

警察庁は,改正により,紛失防止タグを用いた位置情報の無承諾取得等を規制対象に加えたと説明している。
警察庁の令和8年3月9日付け通達では,紛失防止タグ等に関する規定の解釈と運用が示されている。
通達によれば,いわゆる紛失防止タグは法律上の「位置特定用識別情報送信装置」に当たると解され,紛失防止タグ等を用いた位置情報の取得等の行為は,ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「法」という。)2条3項の「位置情報無承諾取得等」に含まれる。

同通達の説明によれば,位置情報の無承諾取得等は,特定の者のほか,その配偶者,直系若しくは同居の親族その他その者と社会生活において密接な関係を有する者に対して行われる場合も問題になる。
そのため,子どもの所持品にタグがある場合でも,「子どもの物だから,同居親への追跡とは無関係」と直ちに判断することはできない。
子どもが特定の者の直系又は同居の親族に当たる場合,好意又は怨恨の感情を向けられた特定の者が同居親であれば,子どもに対する行為も対象となり得る。

警察庁「ストーカー規制法が改正されました!」

第3 物に取り付ける場合と,中に入れて渡す場合

タグを衣服やかばんに固定した場合だけが問題になるわけではない。
警察庁の通達は,対象となる者の所持品に紛失防止タグ等を差し入れる行為や,タグ等を差し入れた物を渡す行為についても説明している。

したがって,ぬいぐるみの中にタグを入れて渡す行為は,相手方の承諾がなければ,位置情報を実際に取得したかどうかとは別に,タグを差し入れた物の交付(法2条3項3号,同法施行令3条2号)として問題になり得る(目的の要件は後記第4の2)。
「縫い付けていない」「本人の持ち物に直接取り付けていない」という事情だけで,規制の対象外と決めることは適切ではない。

もっとも,タグを渡した行為(同項3号)と,その後に位置情報を取得した行為(同項2号)は別の行為であるから,事実として分けて整理するべきである。
発見された物,発見場所,渡された時期,端末に表示された通知及び関係する連絡内容などが,事情を説明する手掛かりになる。

第4 無承諾,目的及び反復を分けて確認する
1 承諾の有無

警察庁の通達は,承諾について,任意かつ真意によるものであることを求めている。
脅迫された場合やだまされて誤信した場合の承諾は,任意かつ真意に基づく承諾とはいえないとされている。
合意の下で位置情報を共有していた場合でも,今後の共有を断る旨を伝えられた後も引き続き取得すれば,「承諾を得ないで」に該当し得る。
警察官や第三者を通じて拒絶が伝えられた場合も同様である。

親子交流について親の間で合意していることと,位置情報の取得について承諾があることは,確認すべき対象が異なる。

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共同親権で相手が同意しないとき―親権行使者指定と子の氏・進学・転居(AI作成)

目次

第1 共同親権でも、問題ごとに手続を分ける1 この記事の対象2 親権者の変更とは区別する第2 一方で決められる場合と、共同で決める場合1 日常の行為と急迫の事情2 意見が違うというだけで、単独決定に切り替わるわけではない第3 親権行使者指定で求めること1 対象とする行為を具体的にする2 調停と審判の申立先を区別する第4 子どもの名字を変えたい場合1 15歳未満と15歳以上を分ける2 共同申立てと、指定を受けた一方による申立て3 許可後の入籍届を忘れない第5 進学・転居について意見が対立する場合1 期限と、対立している内容を分ける2 転居は子どもの生活への影響を具体化する第6 申立て前に整理する資料と期限第7 関連記事と出典1 関連記事2 法令・裁判所の資料3 関連する実務解説
第1 共同親権でも、問題ごとに手続を分ける
1 この記事の対象

父母双方が親権者である場合に、子どもの名字の変更、進学、転居等について意見が一致しないときは、誰が何を決める必要があるのかを具体的に整理する。
本記事は、令和8年10月28日に確認した裁判所の手続案内等に基づき、特定の事項について一方が単独で親権を行うための親権行使者指定を中心に説明する。

共同親権というだけで、子どもに関するすべての行為に他方の同意が必要になるわけではない。
反対に、子どもと同居しているという事情だけで、重要な事項をすべて一方で決められるわけでもない。

2 親権者の変更とは区別する

親権行使者指定は、父母双方が親権者であることを前提に、協議が調わない特定の事項について、一方が単独で行えるようにする手続である。
親権者そのものの変更や、子どもを主に監護する者の指定とは、求める判断の対象が異なる。

例えば、入学に必要な契約について判断を求める場合と、今後の親権者を一方に変更する場合では、申立ての目的も説明すべき事情も同じではない。
まず、必要な行為、期限、対立している点を分けて整理する。

第2 一方で決められる場合と、共同で決める場合
1 日常の行為と急迫の事情

民法824条の2は、父母双方が親権者である場合の共同行使を基本としつつ、監護・教育に関する日常の行為や、子の利益のため急迫の事情がある場合等の単独行使を定めている。
裁判所の案内は、日常の行為の例として食事・衣服の決定、短期間の観光旅行、通常のワクチン接種等を挙げるが、具体的事情によって判断が異なり得るとしている。

したがって、行為の名称だけで、必ず共同決定又は必ず単独決定と分類することは適切でない。
子どもへの影響、決定の内容、変更のしやすさ、緊急性等を具体的に確認する。

2 意見が違うというだけで、単独決定に切り替わるわけではない

共同で決めるべき事項について協議が調わない場合は、民法824条の2第3項に基づく親権行使者指定を検討する。
家庭裁判所が、父又は母の請求により、子の利益のため必要と認めるときに、その事項を一方が単独で行うことができる旨を定める仕組みである。

日常の行為や急迫の事情に該当するかという問題と、裁判所の指定を受ける必要があるかという問題を混同しない。
相手が返事をしない、又は反対しているという事実だけから、すべての行為について単独行使が可能になると考えないようにする。

第3 親権行使者指定で求めること
1 対象とする行為を具体的にする

裁判所の案内は、重要な事項の例として居住場所の決定、進学先に係る契約、重大な医療行為に関する同意等を挙げ、15歳未満の子の氏変更許可申立ての法定代理も指定の対象となる例に含めている。
申立てでは、誰が、どの子について、どの行為を単独で行えるようにすることを求めるのかを明らかにする。

「子どものことを全部自分で決めたい」という希望と、具体的な契約又は申立てのために指定を求めることは区別する。
一方の希望だけでなく、その行為が子どもの生活に必要な理由、他の選択肢、相手との意見の違いを整理することが有用である。

2 調停と審判の申立先を区別する

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子の監護者はどう決まるか―4つの着眼点と判断資料(AI作成)

目次

第1 監護者指定で判断されること1 親権者・監護者・親権の行使方法を分ける第2 養育を評価する4つの着眼点1 従前の監護状況2 今後の監護態勢3 子との関係性4 他方の親と子の関係に対する姿勢第3 子の個別事情と裁判例の読み方1 15歳になるまで希望が考慮されないわけではない2 きょうだいの関係も一人ずつ検討する3 不貞の責任と養育への影響を区別する4 共同監護が機能している場合と,争いが激しくなった場合第4 主張と資料を整理するときの手順第5 出典
第1 監護者指定で判断されること

子の監護者を定めるときの中心は,子の利益である。
父母のどちらが婚姻の破綻に責任を負うかという問題と,これから誰の下でどのような養育を受けることが子の利益にかなうかという問題は,分けて考える必要がある。

民法766条は,父母が離婚する場合の監護者又は監護の分掌,親子交流,費用分担等について,子の利益を最も優先して考慮するものとしている。
父母の話合いで定められない場合等には,家庭裁判所の手続が問題になる。

本記事は,令和8年10月24日を確認日として,現行法と,司法研修所編『子の監護・引渡しをめぐる紛争の審理及び判断に関する研究』(法曹会,令和6年)の整理及び裁判例を用いて,何を具体的な事実として示すかを説明する。
同書は令和8年4月1日の改正法施行前に刊行された研究であり,以下の4着眼点は裁判所を拘束する4つの法定要件ではない。

1 親権者・監護者・親権の行使方法を分ける

令和8年4月1日施行後は,離婚後に父母双方を親権者とすることも可能になった。
もっとも,双方が親権者であることと,子が双方の家で同じ期間生活することは同じではない。
監護者を定めるか,監護を分掌するか,親子交流や費用をどうするかを具体的に考える必要がある。

民法824条の3による監護者は,監護及び教育,居所の指定等の身上監護に関する権利義務を単独で行使する。
裁判所の案内も,重大な医療,転居,進路等に関する決定と,財産管理・身分行為を区別している。
親権者と監護者の呼び名だけで,全ての法律行為を一人でできると理解しないことが大切である。

第2 養育を評価する4つの着眼点
1 従前の監護状況

これまで,いつ,誰が,どのような養育を担ってきたかを整理する。
食事や送迎だけでなく,受診,園・学校との連絡,学習,生活上の困難への対応なども,実際の分担が分かるようにする。

父母の役割が時期によって変わった場合には,出産後,就職・転職後,別居前後を分ける。
福岡高裁令和元年10月29日決定は,乳児期の母の監護だけでなく,その後の父の監護,子の学校生活,母との交流等を検討した。
母の申立てを却下した決定であり,主文で父を監護者に指定した決定ではない。

2 今後の監護態勢

これからの生活を,実行できる計画として示す。
住居,通学,勤務時間,健康上の支援,親本人と補助者の分担を,平日・休日の予定に結び付ける。

祖父母等の助けがあることだけで有利・不利が決まるわけではない。
補助者が何を担当でき,その協力が続く見込みがあるか,親本人が子の状態を把握して必要な対応をできるかが,具体的な検討事項になる。
本研究は4着眼点を同じ配点の採点表とせず,将来の監護を評価する上で監護態勢の影響が大きいと整理している。

3 子との関係性

子が各親とどのような経験を重ね,困ったときに誰に頼り,現在の生活をどう受け止めているかを考える。

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子の引渡しの保全処分―急いで対応する場合の判断と必要な資料(AI作成)

目次

第1 監護者指定の結論と,直ちに引き渡す必要性は別である1 本案の見通しと,待てない事情を別々に示す第2 保全の必要性を,具体的な事情から考える1 現在の世話に問題がなくても,それだけで結論は出ない2 面会後に返さなかったことだけで,保全が必ず認められるわけではない3 通園先からの連れ出しと,従前の状態への回復4 申立て後の事情の変化も確認する第3 申立てに向けて整理する資料第4 抗告・執行・他の手続との違い1 抗告しただけで当然に執行が止まるわけではない2 執行の2週間は,誰への送達から数えるか3 調停中の処分,間接強制,民事請求を区別する第5 引渡しを実施するときに引き継ぐ情報第6 出典
第1 監護者指定の結論と,直ちに引き渡す必要性は別である

子を引き渡してほしいときは,最終的に誰が監護するのがよいかという問題と,その判断を待たずに現在の監護状態を変える必要があるかという問題を分けて整理する。

家事事件手続法157条1項は,子の監護に関する処分の審判又は調停が申し立てられた場合に,子その他の利害関係人の急迫の危険を防止するため必要があるとき,仮の地位を定める仮処分等を命じ得るものとしている。
最終的な監護者指定の見込みがあるという説明だけで,保全の必要性まで当然に認められるわけではない。

本記事は令和8年10月24日を確認日として,現行条文と,判文を確認した裁判例,司法研修所編『子の監護・引渡しをめぐる紛争の審理及び判断に関する研究』(法曹会,令和6年)の整理を基に説明する。
同書は令和8年4月1日の改正法施行前に刊行された研究であり,そこで紹介される全ての事例の結論が,現在のどの事件にも当てはまるものではない。

1 本案の見通しと,待てない事情を別々に示す

本研究は,本案で申立てが認められる蓋然性と,保全の必要性を分けて検討する。
家事事件手続法109条は,保全処分について疎明によるものとしている。

まず,従前・現在・今後の監護態勢,子との関係,他方の親との関係への配慮等を整理する。
その上で,安全,養育環境の変化,重要な関係が断たれている影響等について,何が起こり,判断を待つ間にどのような不利益が生じるかを具体化する。

監護者指定の判断資料は,子の監護者はどう決まるかを参照されたい。

第2 保全の必要性を,具体的な事情から考える
1 現在の世話に問題がなくても,それだけで結論は出ない

京都家裁平成29年2月17日審判は,父の下での監護にも配慮が認められる一方,従前の母による監護,今後の監護態勢,母子関係が分断される負担等を検討し,仮の引渡しを認めた。
母が主として世話をしてきたことだけで,どの事件でも保全が認められるという事例ではない。

福岡家裁平成26年11月14日審判は,子が施設で安定して生活していた事案で,従前の実父との日常生活を早期に取り戻す必要と,本案確定まで時間を要すること等から,実父を仮の監護者と指定した。
実母・養父・実父という身分関係と,従前の養育・施設措置の経緯がある特殊な事案である。
施設で問題なく過ごしていれば保全は認められない,という説明にはならないが,誰にでも同じ申立てができることを示したものでもない。

2 面会後に返さなかったことだけで,保全が必ず認められるわけではない

東京高裁平成24年10月18日決定は,面会後に子を返さなかった経緯,従前の監護,現在の生活等を検討し,子を強制的に奪った場合と同視できるとはせず,保全処分を取り消した。

他方,大阪高裁平成30年3月9日決定では,子を引き渡した経緯,従前の主たる監護者,親子の関係等が検討され,母を監護者に指定して引渡しを命じた。
ただし,こちらは本案の決定であり,保全が認められた事例として並べてはならない。

返還予定や合意の内容,従前の生活,引き取った経緯,現在の安全や通学,親子の交流を整理する必要がある。
これらの事例から,自分で子を取り返す方法を導くことはできない。

3 通園先からの連れ出しと,従前の状態への回復

東京高裁平成20年12月18日決定は,保育園から無断で連れ出された後,速やかに従前の状態への回復を求めた事案で,仮の引渡しを認めた。
一方,仮の監護者指定については必要な事情がないとして却下した。

これは旧法下の具体的事案であり,本案の見通しの検討を全て省けるという一般原則にすることはできない。

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AIと結婚できるか―婚姻届・婚姻意思と,サービス終了で「相手」が消えるときの法律問題(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 結論の要点第2 AIやキャラクターとの「結婚」の報道1 岡山市での結婚式(2025年)2 過去の例第3 AIとの婚姻が成立しない理由1 婚姻は届出によって効力を生じる2 AIは権利義務の主体にならない3 婚姻をする意思4 同性婚をめぐる議論との違い第4 結婚式と「婚姻証明書」の意味1 式場・企画会社との契約は通常の契約2 証明書は記念品である第5 法律上の配偶者でないことの効果1 相続2 重婚と離婚第6 サービスの終了で「相手」が消えるとき1 AIキャラクターは事業者のサービスの一部2 実際にあった例3 会話の記録と個人情報第7 AIへの愛着をめぐる事業者と規制の動き第8 関連記事第9 出典
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

生成AIで性格や話し方を設定したAIキャラクターと,結婚式を挙げた人の例が報じられている。
本記事は,日本法のもとでAIと結婚できるか,結婚式や「婚姻届」風の書面にどのような意味があるか,法律上の配偶者でないことでどのような違いが生じるか,AIサービスが終わって「相手」が消えるときに何が問題になるかを整理する。
基準日は2026年10月23日である。

2 結論の要点

① 日本法では,AIとの婚姻は成立しない。婚姻は戸籍法の定める届出によって効力を生じ,届出には当事者双方の署名等が必要であるが,AIは権利義務の主体になれず,婚姻の当事者になれないからである。
② AIとの結婚式や「婚姻証明書」は,私的な行事や記念品であり,戸籍への記載や法律上の夫婦としての効果は生じない。式場や企画会社との契約は,通常の契約として扱われる。
③ AIは配偶者として相続人になることはなく,法律上の配偶者がいる人がAIと結婚式を挙げても重婚には当たらない。
④ AIキャラクターは事業者のサービスの一部であり,サービスの終了や仕様の変更は,主に利用規約と事業者の事情によって決まる。

第2 AIやキャラクターとの「結婚」の報道
1 岡山市での結婚式(2025年)

RSK山陽放送は,2025年11月8日,東京都に住む32歳の会社員の女性が,ChatGPTで自分好みの性格や話し方を学習させたAIキャラクターと,岡山市北区の結婚式場で結婚式を挙げたと報じた。
報道によれば,式では,AIキャラクターの姿が目の前に見えるよう用意されたAR眼鏡を使い,指輪を交換した。
企画を担当したのは,岡山県を中心にブライダルを企画し,漫画やアニメのキャラクターとの挙式プランも手がけてきた夫妻である。
女性は,AIとの関係について「いつか、パッて使えなくなっちゃうんじゃないか、という不安がありますね」と話している。

2 過去の例

2017年11月には,キャラクターと暮らす装置を開発するGateboxが,キャラクターとの「婚姻届」を受け付け,郵送すると「婚姻証明書」を送り返す企画を始めたと報じられた。
2018年11月には,東京都内の男性がバーチャルシンガーのキャラクターと都内の式場で挙式・披露宴を行ったと報じられている。
これらは,いずれも事業者や本人による私的な企画であり,戸籍上の婚姻とは関係がない。

第3 AIとの婚姻が成立しない理由
1 婚姻は届出によって効力を生じる

憲法24条1項は,「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」と定める。
民法739条1項は,婚姻は戸籍法の定めるところにより届け出ることによって効力を生ずるとし,同条2項は,届出は当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面等でしなければならないとしている。
戸籍法74条は,婚姻をしようとする者が,夫婦が称する氏等を届書に記載して届け出なければならないと定めている。

AIは届書に署名することができず,夫婦が称する氏を持つ者にもならない。
そのため,AIを当事者とする届出は,民法739条2項の方式を満たすことができない。

2 AIは権利義務の主体にならない

民法3条1項は,「私権の享有は、出生に始まる。」と定めている。

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養育費の受給率と未払い率―男女差・取決めの有無と国際比較の読み方(AI作成)

目次

第1 養育費を払わない男女の割合は分かるか第2 日本の母子世帯・父子世帯の受給状況1 現在も受けている世帯の割合2 71.9%・91.3%を不払い率にできない理由3 男女差を説明するときの限界第3 取決めがある世帯に限ると数字が変わる第4 英国の77%とは何の割合か1 Collect and Payで一部でも支払った人の割合2 対象地域とサービスの範囲第5 日本と外国の数字を比べる際の確認表第6 未払いに直面している場合
第1 養育費を払わない男女の割合は分かるか

母子世帯と父子世帯の養育費の受給状況は,公的調査から確認できる。
しかし,受け取っている世帯の割合の裏返しを,そのまま男性又は女性が養育費を払わない割合とすることはできない。
受取側を調べた世帯統計と,支払義務を負う人の履行状況は,分母が異なるからである。

本記事では,令和3年度全国ひとり親世帯等調査と,英国の2026年6月までのCMS統計を例に,受給率,未受給及び不払いの区別を整理する。
数値の大小だけで男女の責任や制度の優劣を決めず,調査対象と指標の定義から読む必要がある。

第2 日本の母子世帯・父子世帯の受給状況
1 現在も受けている世帯の割合

令和3年度全国ひとり親世帯等調査は,令和3年11月1日現在の状況を調査したものである。
養育費の受給状況の次の数値は,母子世帯・父子世帯のうち離婚・未婚の該当世帯についての集計であり,死別等を含む全ひとり親世帯を一律に分母とした数値ではない。

受給状況母子世帯父子世帯現在も受けている28.1%8.7%受けたことがあるが,現在は受けていない14.2%4.8%受けたことがない56.9%85.9%不詳0.8%0.6%

出典は,こども家庭庁掲載の調査報告(https://www.cfa.go.jp/sites/default/files/node/basic_page/field_ref_resources/f1dc19f2-79dc-49bf-a774-21607026a21d/9ff012a5/20230725_councils_shingikai_hinkon_hitorioya_6TseCaln_05.pdf)の表17-(3)-1及び表17-(3)-3(報告書60頁,結合PDF68頁)である。
同じ表には離婚・未婚別の数値もあるため,離婚した世帯だけの割合として28.1%・8.7%を引用してはならない。

2 71.9%・91.3%を不払い率にできない理由

100%から現在の受給割合を引くと,母子世帯では71.9%,父子世帯では91.3%となる。
しかし,この計算には,過去に受けた世帯,受けたことがない世帯及び不詳がまとめて含まれる。
支払義務のある金額,支払期日,取決めの存否及びその時点の未払残額をそろえた履行率ではない。

したがって,父親の71.9%が不払い,母親の91.3%が不払いという書き換えはできない。
現在受給している世帯についても,約束された全額が毎月支払われているかどうかは,この区分だけでは分からない。

3 男女差を説明するときの限界

母子世帯と父子世帯では,所得,子の年齢,養育費の取決めの状況等の構成が異なり得る。
受給割合の違いだけで,性別そのものが不払いの原因であるとは判断できない。

受取側の世帯の割合と,支払側の人数の割合は同じ統計ではない。
男女の支払行動を比べるには,支払義務がある人を共通の条件で把握し,対象期間と支払額を確認する資料が必要になる。

第3 取決めがある世帯に限ると数字が変わる

同じ調査でも,養育費の取決めをしている世帯に限ると,現在も受けている割合は母子世帯57.7%,父子世帯25.9%である。
出典は同報告の表17-(3)-7及び表17-(3)-8(報告書62・63頁,結合PDF70・71頁)である。

現在も受けている割合の分母母子世帯父子世帯調査の養育費受給状況の集計対象28.1%8.7%そのうち養育費の取決めをしている世帯57.7%25.9%

この違いは,数字に分母を付けて示す必要があることを表している。

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同性婚訴訟の高裁判決の比較―違憲4件・合憲1件の判断内容,国家賠償及び最高裁大法廷への回付(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論1 対象とする判決と基準日2 結論の要点第2 争点と各条項の意味1 争われた規定と請求の形2 憲法13条・14条1項・24条の関係第3 高裁判決5件の一覧第4 違憲とした4判決の判断1 東京高裁令和6年10月30日判決2 福岡高裁令和6年12月13日判決3 名古屋高裁令和7年3月7日判決4 大阪高裁令和7年3月25日判決第5 合憲とした東京高裁令和7年11月28日判決第6 国家賠償請求が退けられた理由第7 最高裁大法廷への回付と今後の見方1 大法廷への回付2 判決を読むときの注意点第8 出典
第1 この記事の対象と結論
1 対象とする判決と基準日

同性同士の婚姻を認めない民法及び戸籍法の規定(以下「本件諸規定」という。)の憲法適合性を争い,国に損害賠償を求めた訴訟について,裁判所HPの裁判例検索に判決全文が掲載されている高等裁判所の判決は,令和8年10月16日現在,東京高裁2件,福岡高裁,名古屋高裁及び大阪高裁の各1件の合計5件である。
本記事は,この5件の判決全文を読み比べ,各判決が憲法13条,14条1項及び24条をどのように判断したか,国家賠償請求をどの理由で退けたかを整理する。
令和8年3月25日に最高裁判所で大法廷へ回付されたと報じられた6件の訴訟には,札幌高裁の事件も含まれるが,同高裁の判決は裁判所HPに全文が掲載されていないため,本記事の比較表には含めていない。

2 結論の要点

5件のうち4件は,本件諸規定が憲法14条1項及び24条2項に違反すると判断し,そのうち福岡高裁判決は憲法13条違反も認めた。
他方,東京高裁令和7年11月28日判決は,本件諸規定が憲法24条1項・2項及び14条1項のいずれにも違反しないと判断した。
国家賠償請求は5件とも退けられており,違憲とした判決も,国会議員の立法不作為が国家賠償法上違法である,又は国会議員に故意・過失があるとまでは認めていない。
違憲判断と損害賠償請求の結論が一致しないのは,違憲審査と国家賠償法上の違法・過失の判断とで基準が異なるためである。

第2 争点と各条項の意味
1 争われた規定と請求の形

各訴訟の原告は,同性の相手との婚姻を望んで婚姻届を提出し,不受理とされた者等である。
原告らは,国会が同性間の婚姻を可能とする立法措置をとらないこと(立法不作為)が違法であるとして,国家賠償法1条1項に基づき慰謝料を請求した。
そのため,裁判所は,①本件諸規定が憲法に違反するか,②違反するとしても,立法不作為が国家賠償法上違法と評価されるかの2段階で判断している。

2 憲法13条・14条1項・24条の関係

憲法24条1項は婚姻が「両性の合意のみに基いて成立」すると定め,同条2項は婚姻及び家族に関する法律が「個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して」制定されるべきことを定めている。
違憲とした4判決は,いずれも憲法14条1項と24条2項の違反を認めており,同条1項の「両性」の文言が同性間の婚姻まで保障しているかという問題とは別に,立法裁量の限界と平等原則の観点から違憲性を判断している。
憲法13条(幸福追求権)を根拠に婚姻の法的保護を求める主張については,5件のうち福岡高裁判決だけが違反を認め,大阪高裁判決は直ちに違反するとはいえないとした。

第3 高裁判決5件の一覧
判決憲法の判断国家賠償請求東京高裁令和6年10月30日判決(令和5年(ネ)第292号)14条1項・24条2項に違反棄却(違反が国会にとって明白であったとはいえない)福岡高裁令和6年12月13日判決(令和5年(ネ)第584号)13条・14条1項・24条2項に違反棄却(国会議員の故意又は過失を認め難い)名古屋高裁令和7年3月7日判決(令和5年(ネ)第570号)14条1項・24条2項に違反棄却(原判決の結論を維持)大阪高裁令和7年3月25日判決(令和4年(ネ)第1675号)14条1項・24条2項に違反(13条は直ちに違反とはいえない)棄却(立法不作為は違法とはいえない)東京高裁令和7年11月28日判決(令和6年(ネ)第1861号)24条1項・2項,14条1項のいずれにも違反しない棄却

いずれの判決も控訴を棄却しており,第一審で敗訴した原告らの損害賠償請求は認められていない。
「違憲判決」と報じられる判決も,主文は控訴棄却であり,違憲の判断は理由中の判断である。

第4 違憲とした4判決の判断
1 東京高裁令和6年10月30日判決

東京高裁令和6年10月30日判決(令和5年(ネ)第292号)は,「現行の法令において、同性間の人的結合関係について配偶者としての法的身分関係の形成に係る規定が設けられていないことが、憲法14条1項、24条2項に違反することは、前記のとおりである。」と述べた(判決書57頁)。
もっとも,同判決は,憲法24条1項が男女間の婚姻を憲法13条・14条に立脚した制度に改めることを明文で要請する一方,同性間の人的結合関係について同様の規定を設けるべきことまでは明文で要請していないとも述べている(同頁)。
国家賠償請求については,本件諸規定が憲法14条1項・24条2項に違反することが国会にとって明白となっていたとはいえないとして,口頭弁論終結時(令和6年4月26日)までの立法不作為を違法とはしなかった(判決書58頁)。

2 福岡高裁令和6年12月13日判決

(続きを読む...)同性婚訴訟の高裁判決の比較―違憲4件・合憲1件の判断内容,国家賠償及び最高裁大法廷への回付(AI作成)

養育費法制の国際比較―金額の決め方・行政徴収・立替払いと日本の違い(AI作成)

目次

第1 養育費法制は何を比べるべきか1 請求額,回収額及び給付額は別である2 制度名よりも,誰の資金が動くかを見る第2 金額を決める仕組みの比較第3 行政徴収,支払仲介及び公的支払の比較1 アメリカと英国の行政関与2 フランスのARIPAとASF3 ドイツの養育費立替制度4 韓国の先払制度第4 日本の月額2万円・8万円は何を意味するか1 法定養育費は親への請求権である2 先取特権は公的保証ではない第5 国境を越える請求で確認すること第6 よくある質問1 海外では国が必ず養育費を立て替えるのか2 共同親権なら養育費の支払は不要になるのか3 回収率の高い国の制度を採れば同じ結果になるのか第7 国別記事と資料の確認時点
第1 養育費法制は何を比べるべきか

養育費法制を国際比較するときは,金額を決める仕組み,決まった金額を回収する仕組み,支払がない間の生活を支える給付を分ける必要がある。
行政機関が関与していても,親から集めた養育費を送金する制度と,公費から一定額を支給する制度では,役割が異なる。

本記事は,日本,アメリカ,イングランド及びウェールズ,フランス,ドイツ,韓国,オーストラリアについて,公的案内から制度の役割を比較する。
各国の全制度を網羅するものではなく,国別の具体的な金額・年齢・請求手続は,末尾の各記事及び公的窓口で確認する必要がある。

1 請求額,回収額及び給付額は別である

親に対して請求できる額と,実際に回収できた額は一致するとは限らない。
公的な立替え・先払いの額にも独自の上限や受給条件があり,親が負う養育費全額がそのまま公費で保証されるとは限らない。

比較の順序は,①誰がいくら負担するか,②どの文書・判断で額を確定するか,③誰がどの方法で徴収するか,④未払時にどの給付を利用できるか,⑤国境を越える場合にも同じ経路を利用できるか,である。
外国に立替制度があるという説明だけで,日本からの申請の可否や全額回収の見込みまでは分からない。

2 制度名よりも,誰の資金が動くかを見る

行政徴収・支払仲介では,基本的に支払義務者から徴収した金銭を受取側に渡す。
公的立替え・先払いでは,所定の条件で公費による支払が行われ,義務者への回収と組み合わせられる。
生活支援の給付,民間保証及び手続費用の補助も,それぞれ別に確認する必要がある。

第2 金額を決める仕組みの比較

次の表は,制度を読む際の入口を示したものである。
表に挙げた指針や行政サービスが,すべての事案に一律に適用されるわけではない。

国・地域金額を考える入口比較するときの注意日本父母の合意,家庭裁判所の調停・審判等で適正額を定める。未取決めの場合の法定養育費は別に扱う。月額2万円は一般的な適正額の基準ではない。アメリカ対象州の制度と個別の養育費命令を確認する。全国共通の固定額を前提にしない。イングランド及びウェールズCMSの対象では,支払側の収入,子の数,監護の状況等を計算に反映する。CMSの対象となる請求かを先に確認する。フランス執行力ある裁判・合意等に定められた養育費を確認する。支払仲介を始めることと,養育費額の変更は別である。ドイツデュッセルドルフ表は裁判実務上の指針となる。表の需要額と児童手当等を調整した支払額は異なる。韓国裁判・調停等で定めた養育費と先払制度の対象額を分ける。先払額が養育費債権の全額とは限らない。オーストラリア基本算式では,父母の所得割合と監護に伴う費用割合を組み合わせる。支払側の所得だけで決まる制度として説明しない。

日本の手続は裁判所の養育費に関する案内(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_09/minzi_26_01/index.html),米国の命令と支援機関の関係はUSA.gov(https://www.usa.gov/child-support),CMSの計算は英国政府の計算案内(https://www.gov.uk/how-child-maintenance-is-worked-out)が入口となる。
ドイツの表はデュッセルドルフ上級地方裁判所の2026年表(https://www.olg-duesseldorf.nrw.de/infos/Duesseldorfer_Tabelle/Tabelle-2026/DT_2026.pdf),豪州の基本算式はServices Australia(https://www.servicesaustralia.gov.au/basic-child-support-formula?context=21911)を参照されたい。

第3 行政徴収,支払仲介及び公的支払の比較
1 アメリカと英国の行政関与

アメリカでは,州・部族の養育費支援機関が,親子関係の確定,命令の取得・変更及び履行確保等を支援する。
USA.govは,連邦政府・州政府が養育費そのものを支払うのではなく,親から回収するための支援を行うと説明している。

英国政府の支払方法の案内(https://www.gov.uk/child-maintenance-service/payments)では,CMSが金額を計算し父母間で送金するDirect Payと,CMSが徴収・送金するCollect and Payを区別している。
Collect and Payも義務者からの徴収を通じて受取側へ渡す仕組みであり,CMSが未払額を一律に公費で補う制度ではない。

2 フランスのARIPAとASF

フランスの養育費の支払仲介(IFPA)(https://www.service-public.gouv.fr/particuliers/vosdroits/F36407)では,ARIPAが支払側から受領した養育費を受取側に送金し,未払時には回収を担う。
これに対し,ASF(家族支援手当)(https://www.service-public.gouv.fr/particuliers/vosdroits/F815)は,所定の条件で支給される社会給付であり,未払養育費の前払いとして支給される場合もある。

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養育費の立替払い・保証は利用できるか―公的給付,民間保証,自治体の費用補助の違い(AI作成)

目次

第1 最初に区別したい四つの仕組み1 養育費の請求権と,実際にお金を受け取る仕組み2 法定養育費は,国が立て替える給付ではない3 国から養育費はもらえるのか第2 民間の養育費保証を利用する場合1 保証料の補助と,保証会社による支払は別である2 契約前に書面で確認する事項第3 大阪市で利用を検討できる三つの費用補助1 養育費の保証促進補助金2 公正証書等作成促進補助金3 強制執行着手金補助金第4 費用を支払う前から確認したいこと1 住所地,対象経費及び申請の順序2 契約書と領収書は費目を分ける第5 生活支援と養育費回収を並行して進める1 生活費が不足するときの相談2 回収のために残す記録第6 出典
第1 最初に区別したい四つの仕組み
1 養育費の請求権と,実際にお金を受け取る仕組み

養育費が支払われなくなったときは,相手から未払分を回収する問題と,当面の子の生活費を確保する問題を並行して考える必要がある。
回収に時間がかかる場合でも,生活支援の相談を回収手続の終了まで待つ必要はない。

「養育費の立替払い」という言葉だけでは,誰が,何を根拠に,いくら支払う制度なのかは分からない。
①一定の要件に基づく公的給付,②保証会社との契約による立替保証,③保証料・文書作成費用・執行費用に対する自治体の補助,④父母間の養育費を請求・回収する制度を分けることが出発点となる。

この記事は,令和8年10月16日に確認した国・自治体の公式案内を基に,日本で支援先や保証契約を選ぶ際の確認事項を説明する。
自治体の例は大阪市を中心とし,その条件を全国の自治体に共通するものとして扱わない。

2 法定養育費は,国が立て替える給付ではない

法務省の改正法案内で説明される法定養育費は,取決めをしないまま離婚した場合等に,所定の要件で父母間に生じる養育費の請求権である。
国が未払額を全額支払う立替給付とは性質が異なり,請求権が生じることだけで現実の入金が保障されるわけではない。

発生要件,経過措置,金額及び先取特権の詳細は,法定養育費と養育費債権の先取特権を参照されたい。
私的な取決め,法定養育費,保証会社の保証対象を同じ金額・同じ期間のものと決め付けないことが必要である。

3 国から養育費はもらえるのか

法定養育費は他方の親への請求権であり,国が支給する養育費ではない。
また,自治体の保証料・公正証書作成費用・執行費用の補助は,所定の費用を支援する制度であり,未払養育費全額を国が支払う制度とは異なる。
利用できる支援は,住所地,所得,対象経費及び申請時期等を各窓口で確認する必要がある。

外国の行政徴収,支払仲介及び公的先払いとの違いは,養育費法制の国際比較を参照されたい。
日本の制度の位置付けは,裁判所の法定養育費等の案内(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_09/minzi_26_01/index.html)でも確認できる。

第2 民間の養育費保証を利用する場合
1 保証料の補助と,保証会社による支払は別である

東京都の養育費確保支援事業の案内は,保証会社による養育費の立替え,受取者への支払及び支払義務者への請求を行う保証契約について,初回保証料を助成対象としている。
ここで自治体が助成するのは保証契約の費用であり,自治体自身が毎月の養育費を支払うという説明ではない。
同事業の対象地域は東京都内の町村であり,区市についてはそれぞれの制度を確認する必要がある。

保証料の補助を受けられることと,保証会社の審査に通り,個々の未払いについて保証金の支払を受けられることも別の問題である。
契約締結前に,自治体の補助要件と保証会社の契約条件の両方を確認する。

2 契約前に書面で確認する事項

保証契約を検討する際は,広告の「立替」「保証」という表示だけで判断せず,契約書・約款・重要な条件の説明を取り寄せることが望ましい。
次の事項は,保証の範囲と実際の入金時期を把握するための実務上の確認項目であり,すべての会社に共通する契約条件を述べるものではない。

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アイルランド法の養育費―2026年ガイドライン・計算・未払いと日本からの請求(AI作成)

目次

第1 結論と確認の順序第2 養育費を決める三つの方法第3 養育費はいくらになるか第4 2026年の公式ガイドラインと計算ツール第5 養育費は何歳まで支払うか第6 裁判所へ申し立てる場合第7 未払いとなった場合第8 国外からの回収と中央当局第9 日本からアイルランド在住の親に請求する場合第10 アイルランドの命令を日本で使う場合第11 よくある質問1 アイルランド法では養育費はいくらですか2 アイルランドの養育費は何歳までですか3 両親が結婚していなくても請求できますか4 共同監護なら養育費は不要ですか5 公式計算ツールは裁判所を拘束しますか6 養育費が未払いになるとどうなりますか7 日本からアイルランドの親へ請求できますか8 養育費を国が立て替える制度はありますか第12 最初にそろえる資料第13 関連記事第14 出典と調査範囲
第1 結論と確認の順序

アイルランドの養育費はChild Maintenanceと呼ばれ,両親が婚姻しているかどうかにかかわらず,扶養を必要とする子について問題となる。
金額には全家庭へ一律に適用される固定額があるわけではなく,令和8年に公表された公式ガイドラインと計算ツールは,当事者間で金額を検討するための出発点である。
裁判所は,双方の収入・資産・支出,子の必要及び他の扶養義務等を個別に検討する。

日本とアイルランドをまたぐ事件では,①誰が誰に請求するか,②子と両親の住所・常居所,③既存の合意又は裁判所命令,④相手の勤務先と財産の所在国,⑤請求する国と執行する国を順に確認する。
国際裁判管轄,準拠法,外国判断の承認及び強制執行は別の判断であり,アイルランド法が準拠法となることと,アイルランドで直ちに回収できることは同じではない。

第2 養育費を決める三つの方法

アイルランドのCourts Serviceは,養育費の決め方として,非公式の任意合意,調停又は法律専門家の支援を受けた合意,裁判所のMaintenance Orderという三つの経路を案内している。
親同士で合意できる場合は,支払額,支払日,臨時の教育費・医療費,監護時間の変更及び見直し時期を文書化する。

任意合意だけでは将来の不払いに備えた執行力が十分でない場合がある。
合意内容を裁判所命令にする必要があるかは,支払状況,相手の勤務・財産,国際移動の予定及び既にある命令を踏まえて検討する。

合意できないときは,扶養を必要とする子を監護する親等がMaintenance Orderを申し立てることができる。
子の養育費と元配偶者の生活費であるspousal maintenanceは対象者と金額を分けて記録する。

第3 養育費はいくらになるか

アイルランド法には,全事件へ機械的に適用する一律の法定算式はない。
裁判所は,双方の収入,資産,生活費,債務,他に扶養する者,子の年齢,教育・医療その他の必要を個別に検討する。

令和8年10月16日に確認したCourts Service及び改訂法令では,District Courtが子1人について命じる定期金の上限は週150ユーロである。
これは標準的な養育費額ではなく,District Courtの管轄上の上限である。
請求額がこれを超える場合の裁判所選択は別に確認する必要がある。

Family Courts Act 2024には,将来のFamily District Courtについて子1人当たり週500ユーロへ上限を引き上げる条文がある。
しかし,今回確認した施行情報では同法を現行の金額基準として扱うことはできず,政府は最初のFamily Courtsの運用開始を令和9年1月の予定として説明していた。
申立て又は記事利用の時点で施行状況を再確認する必要がある。

第4 2026年の公式ガイドラインと計算ツール

アイルランド政府は,令和8年1月19日に初のChild Maintenance Guidelines for Irelandを公表し,同年2月26日にオンライン計算ツールを公開した。
計算ツールは,両親が私的な取決めを作る際の目安を示すものである。

計算では,総収入から本人の生活維持に必要な控除等を行った所得,他に扶養する子,対象となる子の年齢及び各親が子を養育する時間等を考慮する。
入力する収入期間,養育時間及び他の扶養対象を誤ると結果も変わるため,計算結果だけで合意書又は申立額を決めない。

ガイドラインと計算ツールは,交渉の共通の出発点として有用であるが,裁判所を拘束する法定算式ではない。
特別な教育費,医療費,住居費,障害又は収入変動等がある場合は,ツールで表現できない事情を別に記録する。

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フランスの養育費法制―扶養義務,金額の決定・変更,執行力ある文書,ARIPA及び日仏間の承認・執行(AI作成)

目次

第1 フランスの養育費を法律問題として整理する視点第2 養育・教育への寄与義務の法的性質1 父母双方の資力と子の必要2 金銭給付以外の負担第3 養育費額の決定と司法省参考算定表の位置付け1 裁判官の判断枠組み2 参考算定表は法規範そのものではない第4 親権・子の居住と養育費の関係1 共同の親権行使と費用分担は別問題である2 交互居住でも養育費は当然にゼロにならない第5 成年後の継続と義務の終了第6 養育費の変更と物価連動1 事情変更による増額・減額2 指数連動条項第7 養育費を執行できる文書1 執行力ある文書が必要となる理由2 文書に定めるべき事項第8 ARIPAの法的位置付け1 支払仲介は原債権を変更しない2 適用範囲と除外第9 未払回収とASFの法的区別1 ARIPAによる未払回収2 ASFは社会給付である3 ARIPAの支払仲介とASFは同じ制度か第10 国際養育費事件の法的な切分け1 四つの法的段階2 条約関係を先に確認する第11 日本の判断をフランスで承認・執行する場合1 外国裁判のexequatur2 日本の文書ごとの分類が必要である第12 フランスの判断を日本で利用する場合と準備資料1 日本での承認と強制執行2 相談・申立て前にそろえる資料3 法的論点別の短い結論4 関連記事と主要出典
第1 フランスの養育費を法律問題として整理する視点

フランスの子に対する養育費は,単なる送金サービスや社会保障給付ではなく,父母が負う子の養育・教育への寄与義務を具体化する法律問題である。
令和8年10月16日現在の法制度を検討するときは,①実体法上の義務,②金額・支払方法を定める手続,③執行力ある文書,④支払仲介・未払回収,⑤国境を越える承認・執行を区別する必要がある。

フランス民法371-2条は,父母がそれぞれの資力,他方の親の資力及び子の必要に応じて,子の養育・教育に寄与すると定める。
この三要素が金額決定の法的基礎であり,司法省の参考算定表やARIPAは,この実体法上の義務を置き換えるものではない。

法的段階中心となる問題主な根拠・制度実体法誰が,どの基準で,いつまで負担するか民法371-2条形成・変更合意又は裁判で月額・終期・特別費用をどう定めるか民法373-2-2条・373-2-13条執行力どの文書に基づき回収できるか裁判,認可合意,公正証書等支払・回収支払仲介,未払回収,社会給付をどう区別するかARIPA・Caf・MSA・ASF国際事件どの国が判断し,どの法を適用し,どこで執行するか国際裁判管轄・準拠法・承認・強制執行
第2 養育・教育への寄与義務の法的性質
1 父母双方の資力と子の必要

民法371-2条は,支払親の収入だけを基準とせず,父母双方の資力と子の必要を比較する構造を採る。
したがって,給与・事業所得・資産だけでなく,住居費,他の扶養家族,子の年齢,教育費,医療費及び特別な必要を具体的資料で示すことが重要である。

養育費は,親権の有無や離婚原因に対する制裁として決まるものではない。
子の生活を支える費用分担として,親権行使,子の居住及び面会交流とは法的に区別して検討する。

2 金銭給付以外の負担

父母の一方が毎月の金銭を支払う形が一般的であるが,父母が直接負担する住居費,学費,医療費その他の費目も全体の費用分担に影響する。
合意又は裁判では,定期金と特別費用を区別し,誰がどの資料に基づいて何割を負担するかを明確にする必要がある。

第3 養育費額の決定と司法省参考算定表の位置付け
1 裁判官の判断枠組み

父母が合意できる場合は,月額,支払開始日,毎月の支払期限,送金方法,物価連動,特別費用及び終期を文書にする。
合意できない場合は,juge aux affaires familiales(家族事件裁判官)が,民法371-2条の要素と提出資料に基づいて個別に判断する。

全国一律の法定月額は存在しない。
同じ所得額でも,子の人数,居住態様,父母の直接負担及び子の個別事情によって結論は変わり得る。

2 参考算定表は法規範そのものではない

フランス司法省の養育費シミュレーターは,支払親の月額課税純所得,共通の子の人数及び居住態様を入力して参考額を示す。
司法省の参考算定表は,所得から一定の最低生活費を控除した額に,子の人数及び居住態様に応じた割合を掛ける構成である。

これらはgrille indicative(参考表)であり,民法371-2条に基づく裁判官の個別判断を拘束する法定算式ではない。
算定結果は主張の出発点として利用し,受領親の資力,子の具体的費用,父母の直接負担その他の事情を資料で補充する必要がある。

第4 親権・子の居住と養育費の関係
1 共同の親権行使と費用分担は別問題である

父母が共同で親権を行使することは,双方の資力が同じであること又は子の費用を半分ずつ負担していることを意味しない。

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オーストラリア法の養育費はいくら?計算方法・何歳まで・不払い・日本からの請求(AI作成)

目次

第1 結論―固定の月額ではなく,双方の所得・監護割合等で決まる第2 オーストラリア法の養育費制度1 行政査定が中心となる2 親責任・居住時間と養育費は同じ問題ではない第3 養育費を計算する8段階1 各親のchild support incomeを出す2 父母のchild support incomeを合算する3 各親の所得割合を出す4 各親の監護割合を出す5 監護割合を費用割合に換算する6 child support percentageを出す7 子の費用を出す8 年間支払額を出す第4 オーストラリアの養育費はいくらか1 子1人当たりの固定月額はない2 令和8年の単純計算例3 手取り25万円ならいくらか第5 共同養育なら養育費はゼロになるか第6 養育費は何歳までか1 行政査定は通常18歳までである2 全日制中等教育中は学年末まで延長できる場合がある3 成年子の裁判所命令は別である第7 父母の合意と行政査定1 行政査定と合意を区別する2 特別事情による査定変更第8 養育費を払わない場合の回収1 私的回収とServices Australiaによる回収2 豪州内の回収措置第9 日本に住んでいても請求できるか1 日本は豪州の相互取扱国一覧にない2 日本居住でも豪州側が扱える場合がある3 支払親が日本にいる場合は別の工程が必要である第10 養育費と子育て支援制度の違い第11 申請・相談前の確認事項第12 よくある質問1 オーストラリアの養育費は1人当たり毎月いくらですか2 手取り25万円ならいくらですか3 共同養育なら養育費はゼロですか4 オーストラリアの養育費は何歳までですか5 養育費を払わないとどうなりますか6 日本に住んでいても請求できますか7 オーストラリアに子育て支援制度はありますか第13 関連記事第14 出典・調査範囲1 豪州連邦法及び西オーストラリア州法2 豪州政府資料3 調査上の留保
第1 結論―固定の月額ではなく,双方の所得・監護割合等で決まる

オーストラリアの養育費(child support)には,「子1人なら毎月一律いくら」という固定相場はない。
Services Australiaは,父母双方のadjusted taxable incomeから自己扶養額等を差し引き,双方の所得割合,各親の監護割合,子の人数及び年齢から年間額を査定する。
そのため,支払親の収入が同じでも,相手方の収入,子と過ごす日数,子の年齢及び他に扶養する子の有無等によって金額は変わる。

日本の「手取り25万円」だけを豪ドルへ換算しても,オーストラリア法の養育費は計算できない。
通常の行政査定は子が18歳になると終了するが,子が全日制の中等教育を続ける場合には,17歳のうちに申請して18歳になる学年の終了日まで延長できる場合がある。

日本とオーストラリアに父母又は子が分かれて住む事件では,豪州法上の査定額だけでなく,誰がどこで申請できるか,どの国に相手方の給与・預金等があるか,日本又は豪州の判断を他国で利用できるかを分けて確認する必要がある。
本記事は,令和8年10月16日現在の豪州連邦法,西オーストラリア州法及びServices Australiaの公開資料に基づき,行政査定の基本を説明する。
Services Australiaの行政査定は豪州のchild support schemeとして扱われる一方,成年子の裁判所命令等では西オーストラリア州法を含む適用法・裁判所の確認が必要であり,親子関係自体の争い及び個別の国際裁判管轄・外国裁判承認も具体的事案ごとに別途検討する必要がある。

第2 オーストラリア法の養育費制度
1 行政査定が中心となる

Child Support (Assessment) Act 1989は,父母が子を扶養する義務を負うことを前提に,Services AustraliaのRegistrarによる行政査定の仕組みを定めている。
行政査定を利用できる場面では,裁判所が日本の養育費算定表に相当する表を使って毎月額を決めるのではなく,法定の計算式によって年間額が算出される。
Services Australiaは,別居している父母及び一定の非親監護者に対し,査定,支払管理及び回収のサービスを提供する。

2 親責任・居住時間と養育費は同じ問題ではない

親が子について重要事項を共同で決めること,子が各親と過ごす時間及び養育費は別の問題である。
子と過ごす時間は養育費の計算要素になるが,共同決定をする命令があることだけで養育費が半額又はゼロになるわけではない。
反対に,養育費を支払っていることだけで,特定の居住日程又は親子交流が当然に認められるわけでもない。

第3 養育費を計算する8段階

Services Australiaの基本式は,父母間の一つのchild support caseで非親監護者がいない場合,おおむね次の8段階である。

1 各親のchild support incomeを出す

adjusted taxable incomeから,自己扶養額及び一定の扶養控除額等を差し引く。
令和8年に始まるchild support periodの自己扶養額は,各親につき年3万1046豪ドルである。
adjusted taxable incomeには課税所得だけでなく,一定の海外所得,報告対象のフリンジベネフィット,退職年金への追加拠出等が含まれ得るため,日本の給与明細の手取り額とは一致しない。

2 父母のchild support incomeを合算する

第1段階で得た双方の金額を足し,combined child support incomeを出す。

3 各親の所得割合を出す

各親のchild support incomeをcombined child support incomeで割り,income percentageを出す。

4 各親の監護割合を出す

(続きを読む...)オーストラリア法の養育費はいくら?計算方法・何歳まで・不払い・日本からの請求(AI作成)

韓国の養育費制度―2021年算定基準表,未払い時の回収・制裁及び先払制度(AI作成)

目次

第1 韓国の養育費を検討する順序第2 養育費を決める法的根拠1 父母の協議と家庭法院の裁判2 養育費の額と回収方法は別問題である第3 2021年養育費算定基準表の見方1 現在確認できる公表基準2 計算の基本順序3 加算・減算を検討する事情第4 何歳まで支払うか,過去分を請求できるか1 何歳まで支払うか2 過去の養育費第5 未払い時の韓国内の回収手段1 養育費履行管理院の支援2 2回以上の不払いと直接支払命令3 財産明示・財産照会と差押え第6 運転免許停止・出国禁止・名簿公開・刑事罰1 行政上の制裁は自動的には発動しない2 刑事罰にも先行要件がある第7 養育費先払制度1 国が先に支払い,義務者から回収する制度2 令和8年10月29日に予定される所得要件の変更3 韓国の先払制度と日本の法定養育費は同じか第8 日本と韓国をまたぐ養育費請求1 五つの法律問題を分ける2 2007年ハーグ養育費条約を当然の経路としない3 最初にそろえる資料第9 よくある質問1 韓国の養育費はいくらか2 韓国の養育費は何歳までか3 過去の養育費も請求できるか4 2回払わないと勤務先から直接支払われるか5 不払いならすぐ出国禁止又は名簿公開になるか6 養育費を払わないと直ちに刑事罰になるか7 韓国の養育費先払制度はいくらか8 日本の調停調書をそのまま韓国で執行できるか第10 相談前に整理する資料第11 関連記事第12 出典と調査範囲1 韓国の法令・裁判所資料2 韓国政府及び国際機関の資料
第1 韓国の養育費を検討する順序

韓国の養育費については,①韓国法上の養育費請求権,②具体的な金額,③支払義務を定めた合意又は裁判書,④未払い時の韓国内の回収手段,⑤日本と韓国をまたぐ場合の管轄・準拠法・承認・執行を分けて検討する必要がある。
当事者の一方が韓国人であるという事実だけでは,どの国の裁判所で,どの国の法律により,どの国の財産から回収できるかは決まらない。

本記事は,令和8年10月16日現在の韓国法令,韓国大法院・ソウル家庭法院及び韓国政府の公開資料を基礎に,韓国国内の養育費制度を中心として整理する。
韓国語の「양육비」は養育費,「가정법원」は家庭法院,「양육비이행관리원」は養育費履行管理院を意味する。

確認する事項主な判断材料本記事の担当箇所養育費を定める根拠父母の協議,韓国民法837条,家庭法院の裁判第2毎月の金額父母双方の所得,子の年齢・人数,個別事情第3過去分・終期既存合意・裁判書,子の成年到達,大法院決定第4未払い時の回収直接支払命令,財産明示・照会,差押え等第5行政上・刑事上の制裁先行する家庭法院の命令,未払額・回数,正当理由第6先払制度執行権原,直前の支払状況,申請時点の制度要件第7日韓間の請求・回収国際裁判管轄,準拠法,判断の種類,財産所在地第8
第2 養育費を決める法的根拠
1 父母の協議と家庭法院の裁判

韓国民法837条は,協議離婚をする父母が,養育者,養育費用の負担及び面接交渉の方法を含む子の養育事項を協議で定めることを予定している。
協議が子の福祉に反する場合,協議が成立しない場合又は協議できない場合には,家庭法院が子の意思・年齢,父母の財産状況その他の事情を考慮して定める。

家庭法院は,子の福祉のために必要と認めるときは,父母,子,検事の請求又は職権により,いったん定めた養育事項を変更できる。
したがって,養育費は離婚時の一回限りの固定事項ではなく,父母の所得,子の教育・医療上の必要その他の事情が大きく変わった場合には,増額又は減額の可否が問題となる。

2 養育費の額と回収方法は別問題である

養育費の額を合意しただけでは,直ちに給与又は預金を差し押さえられるとは限らない。
韓国で直接支払命令その他の強制的な手段を用いるためには,その手続が求める執行権原又は先行命令があるかを確認する必要がある。

反対に,執行可能な裁判書があっても,義務者の勤務先,預貯金,不動産その他の財産が不明であれば,財産明示・財産照会等を先に検討することになる。
「毎月いくらか」と「どの文書で決まっているか」と「どこから回収するか」を分けることが実務上重要である。

第3 2021年養育費算定基準表の見方
1 現在確認できる公表基準

ソウル家庭法院は,令和3年12月22日に2021年養育費算定基準表及び解説書を公表し,令和4年3月1日から施行した。
同法院は令和8年7月にも同じ基準表と解説書を案内しており,本記事の調査日現在,これより新しい公表基準表は確認できなかった。

この基準表は,全国の家庭法院実務で重要な基準として用いられるが,法律が定める全国一律の固定額ではない。
具体的事件では,子の福祉,父母の収入・財産,子の人数・年齢及び個別費用を考慮し,基準表と異なる額が定められることがある。

2 計算の基本順序

基準表による計算の基本は,父母双方の月収を合算し,子の年齢に対応する標準養育費を確認した上で,父母の所得割合等により分担額を求めるという順序である。
概念的には,「標準養育費×非養育親の所得÷父母の所得合計」が出発点となる。

もっとも,所得は給与だけを意味しない。
事業所得,賃料,利子その他の継続的収入,稼働能力をどのように認定するかが争点になり得るため,源泉徴収資料,納税資料,給与明細,事業帳簿及び口座資料等をそろえる必要がある。

3 加算・減算を検討する事情

(続きを読む...)韓国の養育費制度―2021年算定基準表,未払い時の回収・制裁及び先払制度(AI作成)

台湾の養育費(子女扶養費)―金額の決め方,18歳までの期間,未払い回収及び日台間の承認・強制執行(AI作成)

目次

第1 結論第2 台湾法上の扶養義務1 離婚しても未成年子に対する義務はなくならない2 未成年子と成年後の扶養を区別する第3 台湾の養育費はいくらか1 子の必要と父母の経済力で決める2 地域の消費支出は参考資料であって固定表ではない3 月1万6000台湾元は現在の全国一律基準ではない第4 台湾の養育費は何歳までか1 令和5年1月1日以後の成年年齢は18歳である2 令和5年1月1日前の合意・裁判には経過措置がある3 18歳後の給付は別の法的根拠を確認する第5 合意,調停又は裁判で定める事項1 金額だけでなく期間と支払方法を明確にする2 日台間の送金条件を具体化する第6 台湾で養育費が支払われない場合第7 日本と台湾をまたぐ請求・回収1 最初に四つの事実を固定する2 日本で台湾居住の親へ請求する場合3 台湾の判断を日本で使う場合4 日本の判断を台湾で使う場合第8 よくある質問1 台湾の養育費は子ども1人当たりいくらか2 月1万6000台湾元が現在の基準か3 台湾の養育費は何歳までか4 台湾で養育費を払わない場合はどうするか5 日本に住む親が台湾に住む親へ請求できるか6 日本の調停調書・審判・判決で台湾の財産を差し押さえられるか7 台湾の裁判を日本で執行できるか第9 相談時にそろえる資料第10 関連記事第11 主な一次資料

台湾で「養育費」と呼ばれる費用は,離婚後の父母が未成年の子の生活・教育等のために負担する子女扶養費を指すことが多い。
本記事は,児童手当その他の公的給付や,出生から成人までの子育て費用の総額ではなく,父母間で分担する子の扶養費を扱う。
台湾法上の金額・終期・未払い時の手続と,日本と台湾をまたぐ事件の確認順序を,令和8年10月16日現在の一次資料に基づいて整理する。

第1 結論

台湾の民法には,子ども1人につき毎月一律に支払う全国共通の法定額は定められていない。
子の必要,父母それぞれの経済力・身分及び具体的な生活事情により金額を決め,複数の扶養義務者がいるときは原則としてその経済力に応じて分担する。

検索結果等で「台湾の養育費は1人当たり月1万6000台湾元」と紹介されることがあるが,この金額を現在の台湾法に基づく全国一律の公定額として扱うことはできない。
裁判例が地域の1人当たり消費支出等を参照することはあるものの,統計額がそのまま支払額になるわけではなく,子の個別の必要と父母の負担能力を併せて判断する。

台湾では令和5年1月1日から成年年齢が20歳から18歳へ引き下げられた。
もっとも,同日前に契約,裁判その他によって「成年まで」又は20歳までの給付を受ける権利が成立している場合は経過措置があるため,作成日と文言を確認しなければならない。

台湾国内の未払いには,継続する給与債権等への執行や履行を促す制度がある。
他方,日本の調停調書・審判・判決を台湾の給与・預金等へ用いる場合,又は台湾の判断を日本で用いる場合は,判断の種類,確定性,送達,承認要件及び執行国の手続を別に検討する必要がある。

第2 台湾法上の扶養義務
1 離婚しても未成年子に対する義務はなくならない

台湾民法1114条は直系血族相互間の扶養義務を定め,1116条の2は父母の未成年子に対する扶養義務が婚姻の無効・取消し又は離婚によって影響を受けないことを定める。
親権又は監護を担っていない親であることだけを理由に,子に対する経済的負担が消滅するものではない。

父母の一方が子を日常的に監護している場合,その親は住居,食事,通学,医療及び日々の世話を現実に負担している。
他方親に求める金銭額は,子の費用全額ではなく,父母双方がどのように分担すべきかという問題である。

2 未成年子と成年後の扶養を区別する

未成年子の扶養では,子が自ら生活費を得られるかだけでなく,父母がその生活をどの程度保障すべきかが問題となる。
これに対し,成年後の扶養については,台湾民法1117条が,自力で生活を維持できず,かつ,労働能力がないことを原則的な要件としている。

したがって,18歳到達後も在学中であるという事情だけから,未成年期と同じ内容の定期扶養費が当然に続くとはいえない。
既存の合意・裁判の終期,成年後の子の就学・健康・就労能力及び父母の合意を分けて確認する必要がある。

第3 台湾の養育費はいくらか
1 子の必要と父母の経済力で決める

台湾民法1119条は,扶養の程度を扶養を受ける者の必要と扶養義務者の経済能力・身分により定める。
また,同順位の扶養義務者が複数いる場合,1115条3項により,原則として各人の経済能力に応じて義務を負う。

実務では,子の年齢・人数,居住地域,住居費,食費,衣服費,教育費,医療費,保育費その他の具体的支出,父母の収入・資産・債務及び現実の監護負担が問題となる。
父母の所得額だけを比較するのではなく,監護親が金銭以外の方法で負担している日常の監護も考慮対象となり得る。

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フィリピン法の養育費―金額・請求時期・何歳まで・日比間の承認と執行(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と結論第2 誰が養育費を負担し,誰が請求できるか第3 養育費に含まれる費用第4 フィリピンの養育費はいくらか第5 いつから請求でき,過去分はどうなるか第6 フィリピンの養育費は何歳までか第7 離婚の成立,婚姻外の子及び不払い第8 日本で新たに請求する場合の管轄と準拠法第9 フィリピンで新たに請求する場合第10 フィリピンの判断を日本で使う場合第11 日本の判断をフィリピンで使う場合第12 2007年ハーグ扶養条約を日比間で利用できるか第13 相談時にそろえる資料第14 よくある質問1 フィリピンの養育費は給与の何%ですか2 養育費には学費や医療費も含まれますか3 過去の未払分はいつから請求できますか4 子が18歳になれば必ず養育費は終わりますか5 父母が結婚していない子も請求できますか6 養育費を払わなければ直ちに逮捕されますか7 フィリピンで離婚していなければ養育費を請求できませんか8 日本に住む親からフィリピンにいる子が請求できますか9 日本とフィリピンの間ではハーグ条約で回収できますか第15 関連記事と出典
第1 本記事の対象と結論

本記事は,フィリピン共和国のFamily Code(家族法)による親から子への養育費と,日本・フィリピン間での請求,外国判断の承認及び強制執行を扱う。
イスラム身分法が適用される事件その他の特別法上の事件には別の規律があり得るため,本記事の一般論をそのまま当てはめない。

「フィリピン人の親であれば常にフィリピン法が適用される」「月収の一定割合で決まる」「18歳で必ず終了する」「外国の裁判があれば相手国で直ちに差し押さえられる」という理解はいずれも正確ではない。
子の常居所,親子関係,準拠法,既存の合意・裁判,請求日,父母の資力,子の具体的な必要及び財産所在地を順に確認する必要がある。

論点フィリピン法の基本線日比間の事件で追加確認する事項金額義務者の資力・手段と権利者の必要に比例する日本の算定表又は固定割合を当然に用いない対象費用生活,住居,衣服,医療,教育及び交通を含む既存合意が特別費をどう扱うか確認する請求時期必要が生じた時から請求可能だが,支払は裁判上又は裁判外の請求日以後が原則である請求到達の証拠と未払額計算を保存する支払終期18歳だけで一律に決まらず,成年後の教育・訓練や障害も問題となる準拠法と合意・裁判の文言を確認する越境回収外国判断は相手国で承認・執行の手続を要する判断の種類,確定・送達,翻訳及び財産所在地を確認する
第2 誰が養育費を負担し,誰が請求できるか

フィリピン家族法195条は,父母とその子の間の扶養義務を定め,婚姻中に生まれた子と婚姻外で生まれた子をいずれも対象に含める。
父母が婚姻しているか,別居しているか又は婚姻の効力を争っているかだけで,子の養育費請求権が消滅するわけではない。

もっとも,親子関係が争われる事件では,養育費の金額に先立ち,出生証明書,認知,裁判その他の資料によりfiliation(親子関係)を確認する必要がある。
未成年の子について誰が手続上請求を行うか,日本の手続で誰が申立人又は法定代理人となるかも,準拠法と手続法を分けて検討する。

同法199条・200条は,複数の扶養義務者がいる場合の順位と,各人の資力に応じた負担を定める。
父だけ又は母だけが常に全額を負担するとの前提を置かず,父母双方の収入・財産,現実の監護及び他の扶養負担を確認する。

第3 養育費に含まれる費用

フィリピン家族法194条によれば,supportには,家族の経済力に応じた生活,住居,衣服,医療,教育及び交通に不可欠な費用が含まれる。
教育には,成年後であっても,職業,職種又は技能のための就学・訓練が含まれ,交通には通学又は通勤の費用が含まれる。

したがって,食費だけを養育費として計算するのは不十分である。
家賃又は住居費,衣服費,医療費,授業料・教材費,通学費その他の必要費を項目別に整理し,領収書,学校資料,診療資料及び送金記録で裏付ける。

通常の月額に何を含め,学費,入院費その他の臨時支出をどの割合で追加負担するかは,合意書又は裁判で具体化することが望ましい。
通貨,送金手数料,為替差及び支払日も,日比間の継続払いでは明記する。

第4 フィリピンの養育費はいくらか

フィリピン家族法201条は,養育費の額を,支払義務者のresources or means(資力又は手段)と受給者のnecessities(必要)に比例させる。
同条は,一律の金額又は給与に対する固定割合を定めていない。

金額を検討するときは,子の年齢,健康,教育,住居及び日常生活上の必要を積み上げるとともに,父母双方の給与,事業所得,資産,生活水準,他の扶養義務及び現実の監護負担を確認する。
収入資料が乏しい場合も,給与明細の有無だけで支払能力を判断せず,銀行取引,事業,資産及び生活実態を調査する。

同法202条により,受給者の必要又は義務者の資力が増減すれば,養育費も比例して増減し得る。
一度決めた月額が将来にわたり固定されるとは限らないため,進学,疾病,転職,失業又は収入増減が生じた場合の資料と再協議方法を保存する。

第5 いつから請求でき,過去分はどうなるか

フィリピン家族法203条は,扶養を必要とした時から義務を請求できる一方,支払は裁判上又は裁判外の請求日からとする。

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ニュージーランド法の養育費―IRDによる計算・支払期間・未払いと日本からの請求(AI作成)

目次

第1 結論―金額,手続及び国際回収を分けて考える第2 ニュージーランドで養育費を決める四つの方法第3 IRDの算定式を利用できる人と子の要件第4 IRDの算定式では養育費をどのように計算するか第5 共同監護なら養育費はゼロになるか第6 所得又は家族状況が変わった場合第7 支払日と支払終期第8 未払いになった場合のIRDの対応第9 一方の親が海外に住む場合第10 日本とニュージーランドの間で請求・回収する場合第11 相談前に準備する資料第12 よくある質問1 ニュージーランドの養育費はいくらですか2 共同監護なら養育費を払わなくてよいですか3 養育費は何歳までですか4 ニュージーランド政府から養育費をもらえますか5 日本からニュージーランド在住の親へ請求できますか6 日本の養育費の決定をニュージーランドで差押えに使えますか7 ニュージーランドはハーグ養育費条約の締約国ですか第13 出典と調査範囲

ニュージーランド法の養育費は,一律の月額で決まるものではない。
父母等が直接決める私的合意,Inland Revenue(IRD)に登録する任意合意,IRDの算定式による決定及び裁判所の命令を区別し,算定式では双方の所得,子の年齢,監護割合及び他の扶養対象者等を考慮する。
日本とニュージーランドをまたぐ事件では,ニュージーランドの算定制度だけでなく,日本の国際裁判管轄,準拠法,外国判断の承認及び財産所在地での執行を別々に確認する必要がある。

第1 結論―金額,手続及び国際回収を分けて考える

ニュージーランドのchild supportは,主としてChild Support Act 1991に基づき,税務行政機関であるIRDが算定,徴収及び送金を担う制度である。
Family Courtが関与する場面もあるが,すべての養育費が最初から裁判所で決まるわけではない。

「ニュージーランドの養育費はいくらか」という質問には,固定額ではなく,どの制度を利用するか,父母双方の所得,子の年齢,監護割合,他の扶養対象者及び適用年度を確認しなければ答えられない。
公表されている最低年額も,通常の平均額又はすべての家庭に適用される標準額ではない。

国境を越える事件では,①誰が誰に何を請求するか,②どの国で新しい判断を得るか,③どの国の法を適用するか,④既存の合意・IRD assessment・裁判所命令が相手国でどのような効力を持つか,⑤給与・預金・不動産がどの国にあるかを順に分ける。
条約が使えない場合でも請求が直ちに不可能になるわけではないが,一方の国で得た文書だけで他方の国の財産を直ちに差し押さえられるわけでもない。

第2 ニュージーランドで養育費を決める四つの方法

第1は,父母等が金額,支払日及び支払方法を直接決めるprivate agreementである。
柔軟に設計できる反面,IRDが金額を計算し,又は通常の制度として徴収するものではないため,書面化,変更方法及び未払い時の対応を合意しておく必要がある。

第2は,合意した金額をIRDに登録するvoluntary agreementである。
IRDは登録された合意に従って徴収・送金するが,金額自体を算定式で決める制度ではない。
既存のformula assessmentから任意合意へ移るときは,法定の最低額その他の登録要件を確認する。

第3は,IRDのformula assessmentである。
申請後,IRDが父母双方の所得,生活費控除,監護割合及び子の養育費用等を用いて各支払親の年額を計算し,通常は毎年の養育費年度ごとに再計算する。

第4は,Family Courtの命令である。
IRDの決定に対する不服,通常の算定式では公正な結果にならない事情又は海外居住者が関わる場面等では,行政上の見直しと裁判所手続のどちらが利用できるかを確認する。
裁判所命令についてIRDが徴収・送金を扱う場合もあるため,命令を得る手続と支払を回収する仕組みを分けて確認する。

第3 IRDの算定式を利用できる人と子の要件

formula assessmentを利用できるかは,子の年齢,市民権・通常居住,申請者と子との関係,監護割合及び支払親の居住国等によって決まる。
IRDの案内では,受領側のcarerは原則として子を少なくとも35%監護している必要があり,これは通常1年間に128泊以上に相当する。

子は原則として18歳未満で,婚姻しておらず,経済的に自立しておらず,一定の給付を本人名義で受けていないこと等が求められる。
18歳に達した後も学校に在籍する場合の取扱いがあるため,誕生日だけで終了日を決めない。

支払親がニュージーランドにいない場合でも,オーストラリア又は協定国との制度,あるいは協定国以外に関するIRDの適格要件により申請できる余地がある。
日本居住者が関わるときは,「海外居住だから対象外」又は「ニュージーランドに子がいるから必ずIRDが扱う」と即断せず,子,carer及び支払親ごとの要件を申請時点で確認する。

私的合意は当事者間の契約であるため,formula assessmentと同じ適格要件がそのまま適用されるとは限らない。

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インドの養育費―金額の決め方,何歳まで支払うか及び日印間の請求・執行(AI作成)

目次

第1 結論―全国一律の金額又は収入割合はない第2 子の養育費と配偶者の扶養を分ける第3 最初に適用される法令と手続を特定する1 BNSS144条による簡易な扶養命令2 HAMA20条による子の扶養3 HMA26条及びSMA38条第4 金額を決める際の考慮事情第5 収入の25%又は子1人当たりの定額ではない第6 何歳まで支払うかは根拠法ごとに異なる第7 申立日,暫定扶養料及び資産開示第8 不払い,変更及びインド国内の執行第9 日本からインドにいる親へ請求する場合第10 日本とインドの裁判を相手国で使う場合1 日本の養育費判断をインドで使う場合2 インドの養育費判断を日本で使う場合3 2007年ハーグ扶養条約第11 よくある質問1 インドの養育費は子1人当たりいくらですか2 手取り収入の何%を支払いますか3 監護親が再婚すると子の養育費は終わりますか4 配偶者の不貞があると子の養育費は払わなくてよいですか5 離婚前でも子の養育費を請求できますか6 日本の調停調書があればインドの給与をすぐ差し押さえられますか第12 相談時にそろえる資料第13 関連記事第14 出典と調査範囲
第1 結論―全国一律の金額又は収入割合はない

インドの子の養育費には,全国一律の月額又は「収入の何%」という一つの法定算式があるわけではない。
裁判所は,適用される法令と手続を特定した上で,子の必要,従前の生活水準,両親の実収入・資産・負債,他の扶養義務,教育費・医療費及び監護の実情等を資料に基づいて検討する。

令和6年7月1日からは,従前の刑事訴訟法125条に対応する簡易な扶養手続が,Bharatiya Nagarik Suraksha Sanhita, 2023(BNSS)144条に置き換わっている。
もっとも,BNSS144条だけで全ての子の扶養問題が処理されるわけではなく,Hindu Adoptions and Maintenance Act, 1956(HAMA)20条,Hindu Marriage Act, 1955(HMA)26条又はSpecial Marriage Act, 1954(SMA)38条等が問題となることもある。

日本とインドにまたがる事件では,養育費の金額に加えて,どちらの国で請求するか,どの国の法律を適用するか,既存の合意又は裁判を他国で利用できるか,実際に差し押さえる財産がどこにあるかを分けて確認する必要がある。
当事者の一方がインド国籍であることやインドに住むことだけで,インド法の適用又は日本の裁判のインドでの強制執行が当然に決まるものではない。

第2 子の養育費と配偶者の扶養を分ける

インドの公的資料では,子の養育費と,妻又は離婚した妻の扶養が同じ条文又は同じ裁判の中で扱われることがある。
しかし,権利者,支払期間,取消しの要件及び考慮事情は同じではない。

BNSS144条1項は,十分な資力がある者が扶養を怠り,又は拒んだ場合について,妻,子及び父母を区別して列挙している。
妻の再婚,正当な理由のない同居拒否又は別居合意に関する規定を,子の養育費が当然に消滅する根拠として用いることはできない。
離婚していない父母の間でも,子に関する同条の要件を満たせば申立ての問題となり得るため,「離婚後でなければ養育費を請求できない」とは限らない。

第3 最初に適用される法令と手続を特定する
1 BNSS144条による簡易な扶養命令

BNSS144条は,十分な資力があるのに扶養を怠り,又は拒む者に対し,第一級司法治安判事が月額の扶養料を命じる枠組みを定める。
対象には,自ら生活を維持できない嫡出又は非嫡出の子が含まれ,既婚か否かだけで未成年の子を除外する文言ではない。

成年の子については,既婚の娘を除き,身体的又は精神的な異常若しくは傷害のため自ら生活を維持できない場合が条文上の対象となる。
この年齢と要件は,他の家族法上の扶養請求と同じではないため,後記のHAMA20条等と混同しない。

同条は,本案の月額扶養料のほか,手続中の暫定扶養料及び手続費用を命じることができるとし,暫定扶養料の申立ては,相手方への通知送達後60日以内の処理に努める旨を置く。
ただし,これは一律に60日で支払開始又は終局判断が確定するという保証ではない。

2 HAMA20条による子の扶養

HAMAは,ヒンドゥー教徒のほか,仏教徒,ジャイナ教徒及びシク教徒等に適用される一方,イスラム教徒,キリスト教徒,パールシー教徒又はユダヤ教徒には,条文上の適用要件を満たさない限り当然には適用されない。
したがって,当事者がインド国籍であるというだけでHAMAを適用しない。

HAMA20条は,親に嫡出又は非嫡出の子を扶養する義務を負わせ,子は未成年の間,親に扶養を求めることができるとする。
また,同条3項は,未婚の娘が自己の収入その他の財産によって生活を維持できない場合に,その扶養義務を定める。

インド最高裁のAbhilasha v. Parkash判決は,旧刑事訴訟法125条とHAMA20条3項の違いを扱い,成年の未婚の娘によるHAMA上の請求には,適切な主張立証と同法上の手続が必要であることを示した。
同判決はBNSS施行前の判決であるため,現在の具体的事件ではBNSS144条の文言と施行後の裁判例を併せて確認する必要がある。

3 HMA26条及びSMA38条

(続きを読む...)インドの養育費―金額の決め方,何歳まで支払うか及び日印間の請求・執行(AI作成)

アメリカの養育費―州法上の金額・終期,日本からの請求と未払い回収(AI作成)

目次

第1 結論―アメリカ全国一律の養育費はない第2 アメリカの養育費は州法を中心に決まる1 連邦法と州法の役割2 まず確認する州第3 養育費の金額―カリフォルニア州とニューヨーク州の例1 カリフォルニア州2 ニューヨーク州3 変更の申立て第4 養育費は何歳までか1 カリフォルニア州2 ニューヨーク州3 終期と未払額は別問題である第5 共同親権・共同監護でも養育費は0円とは限らない第6 日本から請求する場合の国際裁判管轄1 養育費だけを日本の家庭裁判所に申し立てる場合2 日本で国際離婚訴訟を行う場合3 日本で判断を得ることと回収できることは別である第7 どの国・州の法を適用するか第8 日本の判断をアメリカで承認・執行する場合1 条約ルートを当然の前提にしない2 対象州ごとの確認事項第9 アメリカの判断を日本で承認・執行する場合1 日本での承認2 日本での強制執行第10 未払い時にアメリカで取り得る措置第11 相談・申立て前に準備する資料第12 よくある質問1 アメリカの養育費はいくらか2 養育費は18歳までか3 共同親権なら養育費は不要か4 親がアメリカに住んでいても日本から請求できるか5 日本の審判書でアメリカの給与をすぐ差し押さえられるか6 日米間で2007年ハーグ養育費条約を使えるか7 アメリカでは養育費は義務か8 払わなければ直ちに逮捕されるのか第13 関連記事第14 出典と更新時点
第1 結論―アメリカ全国一律の養育費はない

アメリカの養育費は,連邦法が各州に算定指針の整備等を求める一方,具体的な算定式,支払終期,変更及び執行の手続は主として州法によって定まる。
したがって,「アメリカの養育費はいくらか」,「何歳までか」という質問には,対象となる州を特定しなければ正確に答えられない。

たとえば,カリフォルニア州では父母双方の収入や子と過ごす時間等が算定に影響し,ニューヨーク州では一定の所得を基礎に,子が1人なら17%,2人なら25%等の法定割合を出発点とする。
支払終期も,カリフォルニア州では原則18歳であるのに対し,ニューヨーク州では原則21歳であり,同じではない。

日本とアメリカに父母又は子が分かれて住む場合は,さらに,①どの国の裁判所に申し立てることができるか,②どの国・州の法を適用するか,③得られた判断を財産のある国・州で承認・執行できるかを分けて検討する必要がある。
日本の家庭裁判所で養育費を定めても,その調停調書又は審判書だけでアメリカの給与や銀行口座を直ちに差し押さえられるわけではない。

国際事件では,親の国籍よりも,子と父母の住所・常居所,既存の合意又は裁判,対象州,送達の経過,未払額及び財産所在地が重要である。
最初にこれらを確定することが,請求と回収の出発点となる。

第2 アメリカの養育費は州法を中心に決まる
1 連邦法と州法の役割

連邦規則45 CFR §302.56は,各州に対し,養育費の算定指針を設けて公開することを求めている。
算定指針は,父母の所得又は支払能力に関する証拠,子の医療上の必要等を考慮し,数値的な基準を含むものでなければならない。
算定指針による額は適正額であるとの反証可能な推定が働く仕組みとされている。

もっとも,連邦規則がアメリカ全州共通の月額を定めているわけではない。
各州が州法と州のガイドラインに基づいて具体的な額を定めるため,インターネット上の「全米平均額」を個別事件の見込額として用いることはできない。

2 まず確認する州

対象州は,単に父又は母がアメリカ人であるという理由で決まるものではない。
現在又は過去の住所,子の居住地,既存命令を出した裁判所,勤務先及び財産所在地等から,どの州の裁判所又はchild support agencyが事件を扱うかを確認する。

USA.govの案内によれば,各州又は部族のchild support agencyは,親子関係の確定,養育費の設定・変更及び執行を支援する。
一方の親が国外にいる場合も,関係州の機関又は連邦Office of Child Support Services(OCSS)への照会が案内されている。

第3 養育費の金額―カリフォルニア州とニューヨーク州の例
1 カリフォルニア州

カリフォルニア州の公式ガイドライン計算機は,父母双方の所得,課税関係,子の人数及びそれぞれが子と過ごす時間等を入力して概算額を示す。
ただし,計算結果は見積りであり,最終的な養育費を決定する権限は裁判官にある。

同州のFAQも,双方の所得と子と過ごす時間が金額に影響することを説明している。
したがって,支払親の年収だけを円換算して月額を求めたり,「共同監護だから折半で0円」と処理したりすることはできない。

2 ニューヨーク州

ニューヨーク州裁判所の案内によれば,原則として父母の合算所得を基礎に,子が1人なら17%,2人なら25%,3人なら29%,4人なら31%,5人以上なら35%以上の割合を用いる。

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スコットランドの養育費の法制度―CMS・aliment・対象年齢・不払い・国外居住(AI作成)

目次

第1 結論―CMSとalimentを分けて検討する第2 スコットランドの養育費はいくらか1 CMSは支払親の週額総所得等から計算する2 shared careで減額される場合がある3 alimentはCMSの割合表では決まらない第3 スコットランドの養育費は何歳まで支払うのか1 CMSは原則16歳未満,承認教育等では20歳未満である2 alimentは教育・訓練中なら25歳未満まで対象となり得る第4 スコットランドでは12歳以上の子どもが自分でCMSへ申請できるか第5 子どもに会えなくても養育費を支払うのか第6 父母間の合意はどのように扱われるか第7 CMSとsheriff courtのどちらを使うのか1 CMSの権限がある通常の定期養育費はCMSが出発点となる2 aliment又は裁判所の追加命令を検討する場面がある第8 養育費が支払われない場合にCMSはどう回収するか第9 aliment又は登録合意の不払いはどう扱うか第10 親の一方が日本その他の国外に住む場合1 CMSを当然に利用できるとは限らない2 国際回収では相互執行の根拠を国ごとに確認する第11 相談時に確認する資料第12 関連記事及び出典
第1 結論―CMSとalimentを分けて検討する

スコットランドの子の扶養には,Child Support Act 1991に基づくChild Maintenance Service(CMS)のchild maintenanceと,Family Law (Scotland) Act 1985に基づくalimentという二つの法的な仕組みがある。
CMSは,支払親の所得,対象となる子の人数及びshared care等に基づき定期養育費を算定し,必要に応じて徴収する英国の行政制度である。
これに対し,alimentは,子の必要,父母の資力・稼働能力その他の事情を踏まえてスコットランドの裁判所が定める扶養であり,CMSを利用できない国外居住事案,大学等の教育中の子,高所得者の上乗せ,教育費又は障害費用等で問題となる。

確認事項CMSのchild maintenanceスコットランド法のaliment主な根拠Child Support Act 1991Family Law (Scotland) Act 1985決定主体CMSsheriff court又はCourt of Session金額の考え方法定算式による週額計算必要・資力・稼働能力その他の事情年齢の基本線原則16歳未満,承認された教育・訓練中は20歳未満18歳未満,又は教育・職業訓練中の18歳以上25歳未満国外居住三者の英国常居所を原則とし例外ありCMSの権限がない場面でも裁判所の検討余地あり

したがって,「スコットランドの養育費はいくらか」「何歳までか」「不払いをどう回収するか」という質問には,最初にCMSの管轄と対象年齢を確認し,次にaliment又は国際回収の経路が必要かを判定する必要がある。

第2 スコットランドの養育費はいくらか
1 CMSは支払親の週額総所得等から計算する

CMSは,通常,支払親の年間総所得を週額へ換算し,私的年金拠出,支払親が扶養する他の子,対象となる子の人数及びshared careの宿泊日数等を順に反映する。
年収だけから一律額を答えることはできず,税引前所得,年金拠出,他の子,対象となる子及び宿泊日数をそろえて計算する必要がある。

調整後の週額総所得CMSの主な率7ポンド未満nil rateとなる場合がある7ポンド以上100ポンド以下又は一定の給付受給通常はflat rate100.01ポンド以上200ポンド未満reduced rate200ポンド以上800ポンド以下basic rate800ポンド超3000ポンド以下basic rateにbasic plus rateを加える

basic rateは,対象となる子が1人なら12%,2人なら16%,3人以上なら19%である。
週額総所得が800ポンドを超える部分には,3000ポンドを上限として,子が1人なら9%,2人なら12%,3人以上なら15%を加える。
例えば,調整後の週額総所得が1000ポンドで対象となる子が2人なら,shared care等を反映する前の週額は,800ポンドの16%である128ポンドと,残り200ポンドの12%である24ポンドの合計152ポンドとなる。
この例は算式の説明にすぎず,個別事件の確定額ではない。

2 shared careで減額される場合がある

子が支払親のもとに年間52泊以上する場合,CMSの計算額はshared careとして減額されることがある。

年間宿泊日数子1人ごとの減額割合52泊から103泊7分の1104泊から155泊7分の2156泊から174泊7分の3175泊超2分の1に加えて週7ポンド

日常の養育を父母が同等に分担し,non-resident parentが存在しないと評価される場合は,その子についてCMSのchild maintenanceは生じない。
単に「共同親権」「共同監護」と呼ばれているだけでなく,実際の日常養育と宿泊実績を確認する必要がある。

3 alimentはCMSの割合表では決まらない

alimentの額は,Family Law (Scotland) Act 1985第4条により,子の必要,父母双方の資力,稼働能力及び事件の全事情を考慮して定められる。
16歳未満の子については,子を養育する者が負担する養育費用を裁判所が合理的な範囲で含めることもできる。
そのため,日本の養育費算定表又はCMSの割合を,alimentの法定算式としてそのまま用いることはできない。

第3 スコットランドの養育費は何歳まで支払うのか
1 CMSは原則16歳未満,承認教育等では20歳未満である

CMSの対象となるqualifying childは,原則として16歳未満である。
16歳以上でも,承認された水準の全日制教育又は訓練を続ける場合は,20歳になるまで対象となり得る。
スコットランド政府の案内では,対象となる教育水準は原則としてSCQF level 7以下であるが,Higher National Certificate及びCertificate of Higher Education等は除外される。

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ベトナム法の養育費―金額・支払期間・未払いと日越間の請求・執行(AI作成)

目次

第1 ベトナム法の養育費を検討する順序第2 離婚後に誰が養育費を負担するか第3 ベトナム法の養育費はいくらか第4 支払方法と金額の変更第5 ベトナム法の養育費は何歳までか第6 ベトナムで未払い養育費を請求する場合第7 ベトナムで外国要素のある扶養を扱う場合第8 日本の裁判所で準拠法を決める場合第9 ベトナムの判断を日本で使う場合第10 日本の判断をベトナムで使う場合第11 2007年ハーグ扶養条約を利用できるか第12 親権・監護・面会交流と養育費の関係第13 相談時にそろえる資料第14 ベトナム法の養育費に関するよくある質問1 ベトナム法の養育費はいくらですか2 離婚後も養育費を支払う義務がありますか3 養育費は18歳で必ず終わりますか4 養育費を一括で支払えますか5 相手がベトナムへ帰国した場合,日本から請求できますか6 ベトナム人の親であればベトナム法が適用されますか第15 関連記事と主要資料
第1 ベトナム法の養育費を検討する順序

ベトナム婚姻家族法は,養育費を含む扶養を「cấp dưỡng」と表現し,扶養義務者が,別居する未成年者又は働く能力と自活できる財産がない成年者等の必要不可欠な需要を満たすため,金銭その他の財産を給付することと定義している。
離婚後の子に対する養育費も,この扶養制度の一部として定められている。

ベトナム人の親が関係するだけで,常にベトナム法が適用されるわけではない。
日本とベトナムにまたがる事件では,金額を計算する前に,準拠法,裁判管轄,既存の合意・裁判及び相手方財産の所在地を分けて確認する必要がある。

最初に確認する事項確認する内容混同してはならない事項準拠法どの国の法が養育費請求に適用されるか親又は子の国籍だけでは決まらない手続国どの国の裁判所その他の機関を利用できるか準拠法と裁判管轄は別である既存文書合意書,調停調書,審判,判決等の有無と効力離婚の成立と養育費の給付は別に確認する回収先義務者の住所,勤務先,預金,不動産等がどの国にあるか日本の執行手続はベトナムの財産に直接及ばない
第2 離婚後に誰が養育費を負担するか

ベトナム婚姻家族法82条2項は,離婚後に子を直接養育しない親が子を扶養する義務を負うと定める。
同条3項は,子を直接養育しない親に面会・世話をする権利と義務も認めている。

同法110条は,子と同居しない親又は同居していても扶養義務に違反する親が,未成年の子及び働く能力がなく自活できる財産もない成年の子を扶養する義務を定める。
離婚したかどうかだけでなく,親子関係,子を直接養育する者,子の年齢・能力・財産及び既存の合意又は裁判を確認する。

同法107条は,扶養義務を他の義務で置き換え,又は他人へ移転することができないと定める。
離婚時の財産分与,一括金又は他の債務と養育費を調整するときは,何が養育費の履行に当たるかを合意書に明記する必要がある。

第3 ベトナム法の養育費はいくらか

ベトナム婚姻家族法116条1項は,扶養義務者と扶養を受ける者又はその後見人が,義務者の現実の収入・能力と,扶養を受ける者の必要不可欠な需要を基礎に金額を合意すると定める。
合意できない場合は,裁判所へ判断を求めることができる。

同条は,全国一律の月額,最低額又は収入に対する固定割合を定めていない。
インターネット上の「相場」だけから金額を決めず,父母双方の収入・資産・他の扶養負担,子の生活費・住居費・教育費・医療費その他の具体的需要を資料で示す必要がある。

義務者の「能力」は,給与明細の金額だけで判断できるとは限らない。
事業収入,銀行取引,財産,職業,生活実態及び他の扶養義務を確認し,子の需要についても通常費用と臨時の教育・医療費を分けて整理する。

第4 支払方法と金額の変更

ベトナム婚姻家族法117条は,扶養を月払,四半期払,半年払,年払又は一括払で行うことができると定める。
当事者が国をまたいで生活する場合は,支払額だけでなく,通貨,換算日,支払日,送金先,送金手数料,送金不能時の連絡方法及び支払証明の保存方法を定める必要がある。

一括払いは常に有利とは限らない。
対象期間,算定の前提,為替・物価の変動,進学・医療等による追加費用及び将来の事情変更をどのように扱うかを明確にする。

同法116条2項は,合理的な理由があるときは扶養額を変更できるとし,当事者が合意できない場合は裁判所へ判断を求めることができると定める。
同法117条は,義務者が経済的困難に陥って履行できないときの方法変更又は一時停止についても,合意できなければ裁判所へ判断を求める仕組みを置いている。

第5 ベトナム法の養育費は何歳までか

「ベトナム法の養育費は一律に18歳まで」とだけ説明するのは正確ではない。

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シンガポール法の養育費―金額,21歳まで,請求・執行と日本との関係(AI作成)

目次

第1 シンガポール法の養育費の基本第2 誰が請求できるか第3 シンガポールの養育費はいくらか1 固定の割合又は定額ではない2 命令の形第4 シンガポールの養育費は何歳までか第5 離婚前,離婚手続中及び離婚後の申立て第6 申立方法と必要書類第7 金額の変更と未払い時の執行第8 当事者又は財産が日本にある場合1 国外にいる相手への命令2 外国の判断又は財産に対する執行第9 よくある質問1 シンガポールの養育費はいくらですか2 養育費は21歳までですか3 離婚前でも子の養育費を請求できますか4 国から養育費を受け取る制度ですか5 養育費は海外でも差し押さえられますか第10 受任時に確認する資料第11 出典と調査範囲
第1 シンガポール法の養育費の基本

シンガポールのWomen’s Charter 1961(女性憲章)68条は,裁判所の命令又は合意に別段の定めがある場合を除き,父母が子を扶養し,又はその扶養に寄与する義務を負うと定める。
子が父母のどちらに監護されているか,婚内子であるか婚外子であるかにかかわらず,父母の資力と生活上の地位に照らして合理的な住居,衣服,食事及び教育を提供し,又はその費用を支払うことが基本となる。

同法69条2項は,親が自活できない子に合理的な養育費を提供することを怠り,又は拒んだ場合に,裁判所が月額又は一時金の支払を命じることができるとする。
日本の実務でいう養育費に近いが,日本の養育費算定表をそのまま使う制度ではない。

質問シンガポール法の基本線個別事件で確認する事項誰が負担するか父母の双方が子の扶養に責任を負う監護状況,父母の資力,既存の合意・命令いくらか一律の法定割合ではなく,事件の事情から決める子の必要,収入・資産,生活水準,教育等何歳までか原則として21歳まで障害,National Service,教育・訓練,特別事情どのように請求するかFamily Justice Courtsの手続を利用する離婚手続中か,Part 8の独立申立てか国外の相手へ請求できるか指定国との相互執行制度がある相手国,判断の種類,送達,財産所在地
第2 誰が請求できるか

Women’s Charter 1961の69条3項によれば,子の後見人又は現に子を監護している者が養育費を申し立てることができる。
子が21歳以上である場合は子本人,子が21歳未満である場合は21歳以上の兄弟姉妹も,同項所定の条件の下で申立人となり得る。

申立ての前には,出生証明書,親子関係,子を現に監護している者,父母と子の住所,既存の養育費合意・裁判所命令及び支払履歴を確認する。
当事者の国籍が日本又はシンガポールであるという事実だけで,国際裁判管轄又は準拠法が当然に決まるわけではない。

日本の裁判所で請求する場合の申立人,法定代理及び準拠法については,国際扶養の準拠法及び国際養育費の請求と回収も確認する必要がある。

第3 シンガポールの養育費はいくらか
1 固定の割合又は定額ではない

Women’s Charter 1961の69条4項は,裁判所が事件のすべての事情を考慮するとし,子の経済的必要,収入・稼働能力・資産その他の経済的資源,心身の障害,婚姻当事者の年齢と婚姻期間,家庭への貢献,従前の生活水準,予定されていた教育・訓練方法等を挙げる。
同法68条が父母の資力と生活上の地位を考慮すると定めることからも,検索で見つけた一定割合を機械的に掛けて金額を決めるものではない。

実際には,住居費,食費,衣類費,保育料,学費,教材費,医療費,交通費,課外活動費等について,必要性,頻度,支払先及び負担済みの親を整理する。
父母双方の給与明細,税務・社会保険関係資料,銀行取引,資産・負債,他の扶養負担及び実際の生活水準も,支払能力を検討する資料となる。

2 命令の形

Singapore Courtsの養育費案内は,定額の月払い,特定費用の全部又は一部の償還,保育施設等のサービス提供者への直接払いを,代表的な命令として挙げる。
裁判所の裁量により,申立日前の日にさかのぼって支払を命じる場合もある。

月額だけでなく,学校・医療費の実費分担,支払期限,証憑の提示方法,送金手数料,通貨及び為替差を明確にすることが,将来の未払い紛争を減らす。

第4 シンガポールの養育費は何歳までか

Women’s Charter 1961の69条5項・6項によれば,養育費命令は原則として子が21歳になった日に終了する。
ただし,心身の障害,フルタイムのNational Service,教育機関での就学又は職業・専門訓練,その他の特別の事情により養育費が必要な場合は,21歳を超える期間の命令が認められ得る。

21歳を超える命令は自動的に続くものではなく,命令自体が21歳後も続く期間を明示する必要がある。
進学予定,学業の内容と期間,National Serviceの状況,障害と生活能力,収入及び具体的費用を資料化する。

したがって,「21歳になれば必ず終了する」「大学を卒業するまで必ず続く」のいずれも正確ではない。
既存命令の文言と69条5項の例外を照合して判断する。

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カナダ法の養育費―連邦ガイドライン・何歳まで・共同養育・日加間の請求と執行(AI作成)

目次

第1 カナダ法の養育費を調べるときの結論第2 連邦法と州法のどちらを使うか第3 基本額は年収・子の人数・州の表で求める第4 特別費用と高所得者の調整第5 共同養育と分割養育第6 養育費は何歳まで支払うか第7 一方の親が日本などカナダ国外にいる場合第8 日本とカナダの間で回収する場合第9 相談時に確認する資料第10 よくある質問1 カナダの養育費は年収の何パーセントか2 カナダの養育費は何歳までか3 共同養育なら養育費を払わなくてよいか4 日本に住んだままカナダの親へ請求できるか第11 関連記事第12 出典と調査範囲
第1 カナダ法の養育費を調べるときの結論

カナダ法の養育費は,年収の一定割合を掛けるだけでは決まらない。
カナダの離婚法に基づく場合は,原則として連邦養育費ガイドラインにより,支払義務者の年収,子の人数及び適用される州・準州の表から基本額を求め,必要に応じて特別又は臨時の費用を加える。
共同養育,高所得,成人後の子及び国外居住が関係するときは,別の調整が必要である。

本記事は,令和8年10月16日現在のカナダ連邦法令,カナダ司法省及びハーグ国際私法会議の公開資料を基礎に,連邦ルールの全体像と日加間の請求・承認・執行の確認順序を整理する。
婚姻の有無,離婚をした国,親子の居住州,既存裁判及び財産所在地によって適用法と手続が変わるため,個別事件では対象州の現行法も確認する必要がある。

第2 連邦法と州法のどちらを使うか

カナダのDivorce Actに基づいて離婚する夫婦には,Federal Child Support Guidelinesが適用される。
これに対し,婚姻していない場合,別居しているが離婚しない場合,又は外国法により離婚した場合は,申立てをする州又は準州の法律により養育費を判断することがある。
したがって,「カナダ法」というだけで連邦ガイドラインの適用を確定せず,婚姻・離婚の経過と手続をする州を先に特定する。

カナダ司法省の案内によれば,州・準州のガイドラインは連邦ガイドラインと異なることがあり,ケベック州を除く各州・準州では基本額について連邦表が用いられている。
ただし,適用法,手続,所得資料及び執行制度まで全国一律であるという意味ではない。

第3 基本額は年収・子の人数・州の表で求める

連邦ガイドライン3条は,未成年の子について,適用表による額と7条の費用を養育費の基本構造とする。
適用表の額は,支払義務者の年収,対象となる子の人数及び適用州・準州によって変わる。
年収は,原則としてカナダ歳入庁のT1 General formにおけるTotal incomeの所得項目を基礎に,Schedule IIIによる調整をして算定する。

2025年連邦養育費表は令和7年10月1日に施行された。
令和7年9月30日以前の期間については,その期間に対応する旧表を用いる。
新表は従前の養育費命令を自動的に変更するものではないが,額の差が事情変更として変更申立ての理由となり得る。

支払義務者がカナダ国内に居住するときは,原則としてその者が常居所を有する州・準州の表を用いる。
支払義務者がカナダ国外に居住し,又はその居住地が不明のときは,原則として他方配偶者が常居所を有する州・準州の表を用いる。

第4 特別費用と高所得者の調整

連邦ガイドライン7条の特別又は臨時の費用には,就労等のための保育費,子に対応する医療・歯科保険料,保険で補填されない一定の医療費,特別な教育費,高等教育費及び臨時の課外活動費が含まれる。
裁判所は,子の利益に照らした必要性と,父母及び子の資力等に照らした相当性を考慮する。
費用は,子自身の負担分を控除した上で,原則として父母の所得割合に応じて分担し,補助金や税額控除等も考慮する。

支払義務者の年収が15万カナダドルを超える場合も,直ちに定額又は単純な割合計算へ移るわけではない。
連邦ガイドライン4条は,原則として通常の算定額を用い,それが不適切と判断される場合には,最初の15万カナダドルの表額,超過部分について相当な額及び7条の費用を組み合わせる。

第5 共同養育と分割養育

双方が年間を通じて子との養育時間の40%以上を持つ共同養育では,養育費が当然にゼロになるわけではない。

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インドネシア法の養育費―誰が払い,いくら・何歳まで,未払時にどう回収するか(AI作成)

目次

第1 結論―離婚後も子の養育義務は続く第2 養育費は父と母のどちらが払うのか第3 インドネシアの養育費はいくらか第4 養育費は何歳まで払うのか第5 どの裁判所へ請求するのか第6 離婚判決に養育費の定めがない場合はどうするか第7 養育費を払わない場合はどう回収するか第8 日本とインドネシアにまたがる事件は何を分けるのか第9 相談時にそろえる資料第10 出典と調査範囲
第1 結論―離婚後も子の養育義務は続く

インドネシア法では,父母が離婚しても子を養育し教育する義務は終わらない。
婚姻法41条及び45条は父母双方の義務を定めた上で,離婚後の養育・教育費は父が負担することを原則とし,父が現実に負担できないときは裁判所が母にも分担させることができるとしている。

本記事は,令和8年10月16日現在のインドネシアの公式法令,最高裁判所資料及び公開裁判例を基礎に,離婚後の養育費の負担者,金額,終期,裁判所及び未払時の執行を整理する。
イスラム教徒の事件で用いられるKompilasi Hukum Islam(KHI)と,一般の婚姻法を区別し,KHIの21歳基準や宗教裁判部門の指針を全ての事件へ一律に広げない。

よくある質問短い回答個別事件で確認する事項離婚後も養育費を払うか払う。父母の婚姻が終わっても子の養育・教育義務は続く離婚判決,子の監護,既存合意誰が払うか父の負担が原則であるが,父が負担できない場合は母にも分担が命じられ得る父母の所得・資産・扶養負担いくらか全国一律の固定月額ではなく,子の必要と負担者の能力を基礎に裁判所が定める生活費,教育費,医療費,所得資料何歳までか一般法は子が婚姻し又は自立するまで,イスラム教徒のKHIは成人・自立の目安として21歳を示す適用法,判決文,教育・障害・自立状況払わない場合はどうするか金額を命じる執行可能な裁判を確認し,裁判所へ執行を申し立てる確定・送達,未払額,財産所在地
第2 養育費は父と母のどちらが払うのか

インドネシア婚姻法(Undang-Undang Nomor 1 Tahun 1974)45条は,父母双方に子をできる限りよく養育し教育する義務を課し,その義務は父母の婚姻が終了した後も続くと定める。
したがって,離婚により親子関係又は子に対する責任がなくなるものではない。

同法41条(b)は,離婚の結果として,子に必要な養育・教育費は父が責任を負うことを原則とする。
ただし,父が現実にその義務を履行できないときは,裁判所が母にも費用を分担させることができる。

イスラム教徒の事件では,大統領指示1号(1991年)により普及されたKHI105条(c)及び156条(d)も参照される。
これらは子の監護費用と養育費を父の能力に応じた負担とするが,KHIはイスラム法上の家事事件の規律であり,非イスラム教徒の事件へ当然に適用するものではない。

第3 インドネシアの養育費はいくらか

本記事で確認した法令及び最高裁判所資料には,日本の養育費算定表のような全国共通の固定月額は示されていない。
裁判所は,子の生活・教育・医療等の必要と,主として負担する父の所得,資産,他の扶養負担及び現実の支払能力を基礎に金額を定める。

請求側は,月ごとの食費・住居費・学費・教材費・交通費・医療費等を分け,領収書,学校資料及び送金記録を準備する必要がある。
支払側の給与明細,銀行取引,事業収入,資産,生活水準及び他の扶養家族に関する資料も,金額を判断する重要な材料となる。

インドネシア最高裁判所のSEMA No.3/2015に含まれる宗教裁判部門の指針は,養育費を命じる主文に,教育費・医療費を除く基礎額について年10%から20%の増額を付すことが望ましいとする。
これは宗教裁判部門の裁判指針であり,全事件に自動的に適用される法定利率又は全国一律の算定式として扱わない。

第4 養育費は何歳まで払うのか

婚姻法45条2項は,子が婚姻するか,自ら生活できるようになるまで父母の養育・教育義務が続くとする。
一般法の条文は単一の年齢だけで終期を定めていないため,年齢のほか,婚姻,自立,教育及び就労の状況を確認する必要がある。

イスラム教徒の事件で参照されるKHI156条(d)は,子が成人し自ら生活できるようになるまで,少なくとも21歳までを父の負担の基準として示す。
もっとも,21歳という数字を非イスラム教徒の事件又は個別判決の文言へ機械的に当てはめず,適用法と実際の裁判主文を読む必要がある。

第5 どの裁判所へ請求するのか

イスラム教徒間の婚姻・離婚に伴う養育費は,原則としてPengadilan Agama(宗教裁判所)が扱う。
宗教裁判所法(Undang-Undang Nomor 7 Tahun 1989)49条は,イスラム教徒間の婚姻分野の事件を宗教裁判所の管轄とする。

非イスラム教徒の離婚及び養育費は,原則としてPengadilan Negeri(一般裁判所)で扱う。

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イタリア法の養育費―金額の決め方・支払期間・特別費用・日伊間の請求回収(AI作成)

目次

第1 結論―一律の割合や平均額ではなく,五つの事情から決める第2 養育費の金額を決める五つの事情第3 通常費用と特別費用を分ける第4 養育費は何歳まで支払うか第5 イタリアでの請求・変更・回収第6 イタリアで裁判する場合の管轄と準拠法第7 日本とイタリアの間で請求・回収する場合第8 よくある質問1 イタリアの養育費は収入の何%ですか2 イタリアの養育費は何歳までですか3 日本からイタリアの給与や預金を差し押さえられますか4 海外にいる親へ養育費を請求する最初の一歩は何ですか第9 相談時にそろえる資料第10 関連記事第11 出典と調査範囲
第1 結論―一律の割合や平均額ではなく,五つの事情から決める

イタリア法の子の養育費は,「収入の何%」という一律の全国基準だけで決まるものではない。
イタリア民法337-ter条は,子の現在の需要,両親と同居していた当時の生活水準,各親と過ごす時間,両親双方の経済力,各親が担う家事・ケア労働の経済的価値を考慮して,必要に応じて定期金を定める仕組みを採る。

日本とイタリアにまたがる事件では,金額の問題だけでなく,どちらの国で請求するか,どの国の法律が適用されるか,既存の合意・裁判をどの国で承認・執行するか,財産がどこにあるかを分けて確認する必要がある。
イタリア人の親がいることや,親がイタリアに住むことだけで,常にイタリア法が適用され,又は日本の裁判をイタリアで直ちに執行できるとは限らない。

第2 養育費の金額を決める五つの事情

両親は,原則として各自の資力に比例して子の生活,教育及び養育を負担する。
裁判所が定期金を定める場合の中心的な考慮要素は,次の五つである。

考慮要素確認する資料の例子の現在の需要食費,住居費,教育費,医療費,年齢・健康状態同居時の生活水準住居,学校,習い事,家族の支出実績各親と過ごす時間監護日数,宿泊,送迎,日常の直接負担両親双方の経済力収入,資産,住居費,債務,実際の可処分資力家事・ケア労働の経済的価値日常監護,家事,通院・学校対応等の分担

したがって,共同監護や面会交流の日数が多いことだけで定期金が当然にゼロになるわけではない。
反対に,一方の親が日常費用を直接負担していることは,他の事情と併せて金額を決める材料になる。

定期金は,当事者又は裁判所が別の基準を定めない限り,ISTATの指数に応じて自動的に調整される。
収入・監護状況・子の需要が変わった場合には,権利者又は義務者が裁判所へ変更を求めることができる。

第3 通常費用と特別費用を分ける

定期金は,食費,通常の住居費,衣類,反復する学校用品,市販薬など,子の日常生活に通常必要となる費用を広く賄うものとされる。
これに対し,臨時性・散発性,負担の大きさ,又は選択性を持つ費用は,定期金とは別の「特別費用」として扱われることがある。

ミラノ裁判所のガイドラインは,医療費,学校費,課外活動費等を,事前の合意を要するものと要しないものに分けている。
もっとも,これはミラノの実務指針であり,イタリア全国で個別事情にかかわらず一律に適用される法定一覧ではない。
具体的な事件では,合意書又は裁判書が通常費用・特別費用の範囲,負担割合,事前協議,領収書の提出期限をどのように定めているかを読む必要がある。

第4 養育費は何歳まで支払うか

成年に達したことだけで,養育費が当然に終了するわけではない。
成年の子が経済的に自立していない場合,裁判所は一方又は双方の親に定期金を命じることができ,原則として成年の子へ直接支払わせることができる。

他方,いったん経済的に自立した成年の子が後に生活困難となった場合は,未成年子と同じ養育費が当然に復活するのではなく,生活上の必要を対象とする扶養の制度が問題となる。
重度の障害がある成年の子には,未成年子に関する規律が全面的に適用される。

したがって,「18歳」「大学卒業」など一つの年齢だけで終期を決めず,就学・職業訓練,就労可能性,実際の収入,求職状況,障害,既存の合意・裁判の文言を確認する必要がある。

第5 イタリアでの請求・変更・回収

イタリアで養育費を求める裁判手続では,原則として弁護士による申立てが必要である。
養育費は,離婚・別居等の手続の一部としても,独立の手続としても定められ得る。

金額を定めた裁判は執行の基礎となり,不払いの場合には一般の金銭債権の強制執行手段を利用する。

(続きを読む...)イタリア法の養育費―金額の決め方・支払期間・特別費用・日伊間の請求回収(AI作成)

ドイツの養育費―デュッセルドルフ表2026・計算方法・何歳まで・不払い対応(AI作成)

目次

第1 ドイツの養育費を検討する順序第2 誰が誰に対して養育費を負担するか1 直系親族間の扶養義務,子の必要及び親の支払能力2 子が一方の親と主に暮らす場合3 成人した子の場合第3 デュッセルドルフ表2026の法的位置付け1 法律ではなく裁判実務上の指針であること2 2026年の第1所得区分の必要額と支払額3 児童手当は必要額の充足に用いること4 自己の生活維持額と不足事案第4 ドイツの養育費の計算方法1 調整後純収入を確認する2 年齢,所得区分及び扶養権利者数を当てはめる3 児童手当,子の収入及び支払能力を反映する4 単純な計算例第5 ドイツの養育費は何歳までか1 18歳で当然に終わる制度ではない2 21歳未満の所定の就学者3 親元を離れた学生等第6 交代居住・共同監護の場合の養育費第7 請求,権利証書及び不払いへの対応1 収入資料の開示を求め,請求時点を残す2 青少年局の補佐制度3 簡易手続と強制執行可能な権利証書4 養育費立替制度5 表の養育費額と公的立替額は同じか第8 日本とドイツにまたがる請求・執行1 最初に準拠法と裁判管轄を分ける2 2007年ハーグ扶養条約の日独間での扱い3 外国の権利証書を用いる場合の確認事項第9 ドイツの養育費に関するよくある質問1 ドイツの養育費は子1人当たりいくらか2 デュッセルドルフ表には法律上の拘束力があるか3 養育費は18歳までか4 父母が半分ずつ監護すれば支払は0になるか5 不払いの場合は何から始めるか6 日本からドイツ在住の親へ請求できるか第10 関連記事と主要資料
第1 ドイツの養育費を検討する順序

ドイツの養育費は,ドイツ民法典(Bürgerliches Gesetzbuch。以下「BGB」という。)上の扶養請求権を基礎とし,デュッセルドルフ表(Düsseldorfer Tabelle)を金額算定の重要な指針として運用する制度である。
デュッセルドルフ表自体は法律でも一律の料金表でもなく,個別事件では子の必要,父母の収入,扶養すべき人数,児童手当(Kindergeld),自己の生活を維持するための金額及び監護形態を確認する必要がある。

この記事は,令和8年10月16日現在のBGB,2026年1月1日版デュッセルドルフ表,連邦政府の制度案内及び連邦通常裁判所の裁判例に基づき,主として法律関係を整理するものである。
日本とドイツにまたがる事件では,ドイツ人であることやドイツに住んでいたことだけでドイツ法が当然に適用されるわけではないため,準拠法,裁判管轄及び判決等の承認・執行を金額計算より先に確認する必要がある。

第2 誰が誰に対して養育費を負担するか
1 直系親族間の扶養義務,子の必要及び親の支払能力

BGB1601条は,直系親族が相互に扶養する義務を定める。
子の養育費では,父母が子に対して負う扶養義務が出発点となる。

BGB1602条によれば,自ら生活を維持できない者が扶養を請求でき,未成年の子については,その財産収益や労働収入だけでは扶養に足りない範囲で父母に請求できる。
他方,BGB1603条は,義務者が自らの相当な生活を害さずに給付できるかという支払能力を問題とし,未成年の未婚の子等に対しては父母の加重された責任を定める。

したがって,表の金額だけを見て請求額を確定するのではなく,子に請求権があるか,義務者に支払能力があるか,他に同順位又は先順位の扶養義務があるかを順に確認する。

2 子が一方の親と主に暮らす場合

BGB1606条3項は,複数の同順位義務者が原則として収入・財産状況に応じて負担する一方,未成年の未婚の子を監護する親は,通常,世話及び養育によって扶養義務を履行するものとしている。
この通常の居住モデルでは,子と主に暮らす親が監護による扶養を行い,他方の親が金銭による養育費(Barunterhalt)を支払うという整理になる。

共同親権の有無と金銭負担の有無は同じ問題ではない。
父母双方が親権を持っていても,子が一方の親と主に暮らす場合は,他方の親に金銭扶養義務が生じ得る。

3 成人した子の場合

成人した子については,監護する親が世話だけで全部の扶養義務を履行するという未成年者の原則はそのまま当てはまらず,父母双方が原則として支払能力に応じて金銭扶養を分担する。
子自身の収入,職業訓練手当,奨学金その他の給付及び児童手当も,必要額の計算で確認する。

第3 デュッセルドルフ表2026の法的位置付け
1 法律ではなく裁判実務上の指針であること

デュッセルドルフ表2026は,自ら「法的効力を持つものではなく,指針である」と明記している。
同表は,扶養権利者が2人いる場合を基礎として,義務者の調整後月額純収入と子の年齢から月額必要額(Bedarf)を示す。

扶養権利者の人数が2人より多い又は少ない場合は,より低い又は高い所得区分への調整が相当となることがある。
表の必要額は,児童手当等を控除した実際の支払額(Zahlbetrag)と同じではない。

2 2026年の第1所得区分の必要額と支払額

2026年表の第1所得区分は,義務者の調整後月額純収入が2100ユーロまでの場合である。
同区分の月額は次のとおりであり,支払額は2026年の児童手当259ユーロを未成年者では半額,成人者では全額控除した附表の金額である。

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中国の養育費(抚养费)の法制度―金額・支払終期・未払いと日中間の請求・執行(AI作成)

目次

第1 本記事で扱う「中国の養育費」第2 誰が養育費を負担し,誰が請求できるか第3 中国の養育費はいくらか1 収入の20~30%は固定額ではない2 固定収入がない場合第4 養育費に含まれる費用と支払方法第5 中国の養育費は何歳までか第6 離婚時の合意,増額請求及び未払い第7 中国で養育費を請求し,未払いを回収する場合第8 日中間の事件では準拠法を先に確認する第9 中国の判決・調解書を日本で使う場合第10 日本の調停・審判・判決を中国で使う場合第11 2007年ハーグ扶養条約を当然に利用できるか第12 相談時にそろえる資料第13 よくある質問1 中国の養育費は収入の20~30%で必ず決まりますか2 子が18歳になれば必ず終了しますか3 離婚時に「養育費を請求しない」と合意すれば将来も請求できませんか4 中国籍の親であれば日本でも中国の20~30%基準を使いますか5 中国の判決があれば日本の預金をすぐ差し押さえられますか6 日本の審判があれば中国の財産をすぐ差し押さえられますか第14 関連記事と出典
第1 本記事で扱う「中国の養育費」

本記事は,中華人民共和国本土の民事法における父母から子への養育費(抚养费)を扱う。
香港特別行政区,マカオ特別行政区及び台湾には別の法制度があるため,本記事の説明をそのまま当てはめない。

中国語の「养育成本」は子育てに要する社会的・経済的費用を広く示す表現であるのに対し,法律上の請求対象として問題となるのは主に「抚养费」である。
中国の「養育費はいくらか」「何歳までか」という質問には,中国法が適用されるか,既に合意・裁判・調解があるか,父母と子がどの国に住み,財産がどこにあるかを確認してから答える必要がある。

法律上の論点中国法の基本線日中間の事件で別に確認する事項金額子の実際の必要,父母の負担能力及び現地の実際の生活水準を考慮するどの国の法が準拠法となるか支払終期原則18歳までであり,例外がある成年年齢だけでなく就学・障害等を確認する変更事情により増額請求等があり得る既存合意・裁判の効力と変更手続を確認する未払い中国の有効な裁判・調解等に基づく執行を検討する債務名義と財産がある国を一致させる外国判断条約又は相互主義等の承認要件を確認する身分部分と金銭給付部分を分ける
第2 誰が養育費を負担し,誰が請求できるか

中華人民共和国民法典1067条は,父母が扶養義務を履行しない場合,未成年の子又は独立して生活できない成年の子が扶養費を請求する権利を定める。
父母が離婚した場合も親子関係は消滅せず,同法1084条・1085条により,子を直接養育しない側の父又は母は養育費の一部又は全部を負担する。

婚姻関係にない男女の間に生まれた子も,民法典1071条により婚内子と同等の権利を有する。
父母が婚姻していたかどうかだけで養育費請求の可否を決めず,親子関係,直接養育者,子の年齢及び既存の合意・裁判を確認する。

離婚協議書,人民法院の判決,調解書その他の文書があるときは,子本人,直接養育する親その他の誰が債権者として記載されているかを原文で確認する。
日本で手続をする場合の申立人・法定代理・利益相反は,日本の家事事件手続と準拠法に基づいて別に判断する。

第3 中国の養育費はいくらか
1 収入の20~30%は固定額ではない

最高人民法院の婚姻家庭編解釈(一)49条は,養育費の額を,子の実際の必要,父母双方の負担能力及び現地の実際の生活水準に基づいて決めるとする。
固定収入がある場合は,月の総収入の20~30%を基準として定めることができ,複数の子を負担する場合は割合を適切に引き上げることができるが,一般に月の総収入の50%を超えない。

この20~30%は,すべての事件に機械的に適用する法定定額ではない。
子の人数,具体的な生活・就学・医療上の必要,父母双方の収入・財産・他の扶養負担,居住地の生活水準及び既存の養育状況を資料で示す必要がある。

2 固定収入がない場合

固定収入がない場合は,婚姻家庭編解釈(一)49条により,当年の総収入又は同業種の平均収入を参照し,前記の割合を手掛かりに額を決めることができる。
事業所得,報酬,配当,賃料等があるときは,給与明細の有無だけで無収入と扱わず,税務資料,銀行取引,会社資料及び生活実態を確認する。

特別の事情がある場合は,20~30%又は50%という一般的な割合を適切に引き上げ,又は引き下げることができる。
したがって,検索で見つけた割合だけから個別事件の金額を断定しない。

第4 養育費に含まれる費用と支払方法

婚姻家庭編解釈(一)42条は,養育費に生活費,教育費及び医療費等を含むとする。
学費,通院・治療費その他の支出が通常の定期額に含まれるか,別途分担の対象となるかは,既存合意・裁判の文言,支出の性質と必要性,父母の負担能力等から確認する。

同解釈50条は,養育費を原則として定期的に支払うものとし,条件がある場合は一括払いも認める。
51条は,一方の親に経済的収入がなく,又は所在不明である場合に,その財産を養育費に充てることができるとする。

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イギリスの養育費の法制度―CMSの計算・対象年齢・不払い・日本からの請求(イングランド及びウェールズ)(AI作成)

目次

第1 結論―本記事の「イギリス」はイングランド及びウェールズである第2 イギリスの養育費はいくらか1 固定の月額ではない2 週額総所得200ポンド以上の基本的な割合3 計算例4 shared careでいくら減るか第3 イギリスの養育費は何歳までか1 CMSは原則16歳未満である2 Family Courtの命令はCMSと終期が同じとは限らない第4 子どもに会えなくても養育費を払うのか第5 日本に住む親はCMSを利用できるか第6 養育費を払わない場合にCMSはどう回収するか1 CMSは国が養育費を立て替える制度か第7 CMSとFamily Courtはどう使い分けるか第8 Children Act 1989 Schedule 1による一時金・住居等第9 高所得者と資産をどう扱うか第10 既存合意と命令を変更できるか第11 日本とイギリスの間で請求・回収する場合第12 一括払いと日本の税務第13 受任時の確認順序第14 関連記事と出典
第1 結論―本記事の「イギリス」はイングランド及びウェールズである

イギリスは,イングランド,ウェールズ,スコットランド及び北アイルランドから成り,家族法の制度は法域ごとに異なる。
本記事でいう「イギリスの養育費」は,特に断らない限りイングランド及びウェールズのchild maintenanceを指す。
スコットランドのCMSとalimentは,スコットランドの養育費の法制度―CMS・aliment・対象年齢・不払い・国外居住で整理し,北アイルランドは本記事の対象としない。

本記事は,個別事件で必要となる制度の選択,管轄,算定要素,命令の種類及び承認・執行の要件を中心に説明する。

通常の定期養育費は,行政機関であるChild Maintenance Service(CMS)が支払親の週額総所得等から算定する。
全国一律の月額相場はなく,対象となる子の人数,他の子,年金拠出及びshared careの泊数等によって金額が変わる。

CMSによる養育費と親子交流は別の問題であり,子に会っていないことだけで養育費の負担がなくなるものではない。
支払がない場合は,CMSが給与・年金・給付又は銀行口座から徴収し,必要に応じて裁判所のliability orderを取得する制度がある。

ただし,日本に住む監護親と子がイギリス国外にいる場合は,通常,CMSへ新規申請できない。
高所得者の追加給付,住居,一時金,日英間の承認・執行は,CMSとは別にFamily Court又は各国の手続を検討する必要がある。

法律上の論点要点主に確認する制度通常の養育費額固定額ではなく,支払親の週額総所得と子の人数等から計算するCMS支払終期原則16歳未満,承認された教育・訓練中は20歳未満までがCMSの対象となり得るCMS・Family Court親子交流との関係親子交流と養育費は別であり,原則として負担は残るCMS・私的合意不払い時の回収給与等・銀行口座からの徴収,liability order等があり得るCMS・裁判所日本からの請求・回収CMSを利用できないことがあるため,居住地,既存判断及び財産所在地から経路を分けるCMS・Family Court・各国の承認執行法
第2 イギリスの養育費はいくらか
1 固定の月額ではない

GOV.UKの計算案内によれば,CMSはHM Revenue and Customs(HMRC)の情報等から支払親の年間総所得を把握し,週額へ換算する。
その上で,所得帯,養育費の対象となる子の人数,同居して扶養する他の子,年金拠出及びshared care等を考慮する。

そのため,「イギリスの養育費は毎月いくら」という単一の相場はない。
CMSの計算は週額を基礎とするため,日本の家庭裁判所の養育費算定表による月額とそのまま比較しない。

2 週額総所得200ポンド以上の基本的な割合

令和8年10月16日現在,調整後の週額総所得が200ポンド以上800ポンド以下の場合,対象となる子が1人なら12%,2人なら16%,3人以上なら19%が出発点となる。
週額総所得が800ポンドを超え3000ポンド以下の場合,最初の800ポンドには上記割合を用い,800ポンドを超える部分には,子が1人なら9%,2人なら12%,3人以上なら15%を用いる。

対象となる子の人数週額200~800ポンドの部分週額800ポンド超~3000ポンドの部分1人12%9%2人16%12%3人以上19%15%

週額総所得が200ポンド未満の場合は,nil rate,flat rate又はreduced rateが問題となり,単純な上表の割合だけでは決まらない。
週額総所得が3000ポンドを超える場合は,CMSの計算に加えて,受領親が裁判所へ追加の養育費を求めることを検討する。

3 計算例

他の子,年金拠出及びshared careによる調整がないものとして,支払親の週額総所得が600ポンドで対象となる子が1人なら,出発点は週72ポンド(600ポンドの12%)である。
同じ前提で,週額総所得が1200ポンドで対象となる子が1人なら,最初の800ポンドについて週96ポンド,残る400ポンドについて週36ポンドとなり,合計は週132ポンドである。

これは説明のための単純例であり,実際のCMS calculationはHMRC所得,他の子,年金拠出,variation及びshared care等により変わり得る。
GOV.UKのchild maintenance calculatorも概算の確認に利用できるが,正式なCMSの決定そのものではない。

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国際結婚は日本で有効か―成立・方式・重婚と配偶者控除の確認順序(AI作成)

目次

第1 国際結婚では何を確認するか第2 婚姻の資格と本国法1 各当事者の本国法を調べる2 重国籍と国籍選択を分ける第3 婚姻の方式と戸籍への報告1 日本で婚姻する場合2 外国で婚姻した場合第4 前婚がある場合の無効・取消し第5 子の親子関係は別に調べる第6 配偶者控除を判断する前の確認第7 相談・申告前にそろえる資料第8 関連記事と一次資料1 関連記事2 一次資料
第1 国際結婚では何を確認するか

国際結婚の相談では,婚姻証明書の有無だけでなく,婚姻する資格,婚姻の方法,日本での戸籍への反映を分けて確認する必要がある。
婚姻が有効かどうかは,再婚,離婚,子の身分及び税務申告の前提にもなる。
本記事は令和8年10月16日現在の日本法と公的資料に基づき,日本人と外国人との婚姻を中心に,確認の順序を整理する。

最初に,誰と誰の婚姻を,どの国で,どの時点について判断するかを決める。
日本での有効性と相手国での有効性・登録は別に確認し,国ごとの外国法の内容は原文と適用時点に基づいて調べる。
特定の外国の制度が日本と同じであることを前提にしない。

第2 婚姻の資格と本国法
1 各当事者の本国法を調べる

通則法24条1項は,婚姻の成立を各当事者の本国法によらせている。
年齢や既存婚姻などの実質的成立要件について,双方の国籍と婚姻時の法令を確認する。
一人の本国法の条件を満たしたことだけで,婚姻全体が有効になるわけではない。

婚姻要件具備証明書は,外国人がその本国法上の婚姻要件を備えることを確認するための重要な資料である。
法務省の戸籍Q&Aは,その国の証明書が発行されない場合の代替資料も案内している。
証明書を取得できないときは,事情と代替資料を届出先へ確認し,記載内容に疑問があるときは前婚・離婚の原資料までさかのぼる。

2 重国籍と国籍選択を分ける

日本国籍を含む重国籍者の本国法は,通則法38条1項ただし書により日本法となる。
日本国籍を選択したかどうかだけでなく,婚姻時にどの国籍を有していたかを確認する。
外国籍だけを記載した旅券一通から,日本国籍がないと断定しない。

国籍法14条2項の選択の宣言と,外国の国籍を実際に失うことも同一ではない。
同法16条1項は,選択の宣言をした日本国民に外国籍の離脱に努めることを求めている。
宣言の記録と外国法上の国籍喪失をそれぞれ確かめる必要がある。

第3 婚姻の方式と戸籍への報告
1 日本で婚姻する場合

通則法24条2項は婚姻の方式を婚姻挙行地法によらせ,同条3項本文は一方当事者の本国法に適合する方式も認める。
ただし,日本で婚姻が挙行され,当事者の一方が日本人である場合,同項ただし書により本国法方式を選ぶことはできない。
日本に駐在する外国領事の面前で手続をしたというだけで,婚姻挙行地をその外国と扱わない。

日本法による婚姻は,民法739条1項の届出によって効力を生ずる。
日本人を含む夫婦が日本国内で外国方式の領事婚だけを行った場合,外国の証書があることのみをもって,日本でも有効な婚姻が成立したと判断しない。

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外国での認知と日本の戸籍・認知無効―成立準拠法,方式,出訴期間を分ける(AI作成)

目次

第1 最初に分ける事項第2 認知による親子関係の成立準拠法1 国籍と連結時点を記録する2 承諾要件と反致を別に点検する第3 外国での方式と戸籍への報告1 行為地法に適合する方式2 日本の戸籍への報告第4 認知無効と既存の父子関係1 一つの法の無効原因だけで終えない2 別の父との関係がある場合第5 日本法の認知無効と経過措置1 改正後の7年の期間2 出生年月日と認知日を混同しない第6 相談前にそろえる資料第7 関連記事と一次資料1 関連する制度2 法令
第1 最初に分ける事項

外国で子を認知した場合には,親子関係が実体法上成立するか,認知の方式が適法か,日本の戸籍への報告が必要かを分けて検討する。
外国の証明書があること,又は日本の戸籍に記載されたことだけで,どの国の法でも同じ父子関係が成立し,争うこともできなくなるとはいえない。

本記事は令和8年10月14日現在の日本の法令を基準に,任意の認知と認知無効の確認順序を整理する。
父母の婚姻による嫡出推定,裁判による身分関係の確定,国籍取得にはそれぞれ別の規律があるため,どの制度による親子関係が問題かを先に確定する。

第2 認知による親子関係の成立準拠法
1 国籍と連結時点を記録する

嫡出でない子の父子関係の成立について,通則法29条1項前段は子の出生時の父の本国法を定める。
認知については同条2項により,その法のほか,認知時の認知者又は子の本国法によることもできる。
父と子の現在の国籍だけでなく,出生時と認知時の国籍を記録する必要がある。

確認する法連結点基準時通則法29条1項前段父の本国法子の出生時同条2項の追加候補認知者の本国法認知時同条2項の追加候補子の本国法認知時

死亡が先行している場合には同条3項の時点の修正を確認する。
重国籍の場合には通則法38条により本国法を特定し,日本国籍を含む重国籍者の本国法は日本法とする。

2 承諾要件と反致を別に点検する

選択的に法を適用できることから,子や第三者の承諾・同意を省略できるわけではない。
通則法29条1項後段及び2項後段は,認知時の子の本国法が承諾・同意を要件とする場合の保護を定めている。
どの候補法によって成立させるかと,併せて必要となる承諾要件を区別する。

外国の本国法を指定する場合は,通則法41条の反致が成立するかも確認する。
試験問題が反致の検討を除外していても,実際の案件で同じ前提を置くことはできない。

第3 外国での方式と戸籍への報告
1 行為地法に適合する方式

通則法34条1項は,親族関係についての法律行為の方式を実質的成立準拠法によらせ,同条2項は行為地法に適合する方式も有効とする。
外国の登録官への意思表示,署名,証書の作成等が現地法上の方式を満たすかを,その国の法令と証書から確認する。
方式が有効であることと,血縁や承諾等の実質的成立要件を満たすことは別問題である。

2 日本の戸籍への報告

戸籍法41条は,外国に在る日本人が現地の方式で届出事件に関する証書を作らせた場合,原則として3か月以内に在外公館へ証書の謄本を提出すること等を定めている。
外国で成立した身分行為の報告と,日本で初めて認知を成立させる届出を混同してはならない。
戸籍の記載,外国の身分登録及び日本国籍取得の手続は別々に確認する。

証書の原本又は謄本,認知日,作成機関,翻訳及び当事者の国籍資料をそろえ,対象者に応じた届出先と必要書類を確認する。

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ヤングケアラーの相談先と法律支援―家族の介護・生活困窮・学校生活をどうつなぐか(AI作成)

目次

第1 家族の世話で生活が苦しくなったとき1 名前に当てはまるかより、生活への影響を伝える2 身体介護だけでなく、見守りや生活の世話も対象になる第2 現行法の支援と年齢の考え方1 相談・生活環境・修学・就業を支える制度である2 18歳で一律に支援が終わるわけではない第3 相談先の探し方と、最初に伝えること1 学校・自治体・支援団体から相談できる2 メモは相談を助けるが、準備が整うまで待つ必要はない第4 本人の支援と家族の支援をつなぐ1 家族のサービスを増やすだけでなく、本人の時間を確保する2 生活困窮・就労・家計の問題も一緒に整理する第5 弁護士への相談が役立つ場面1 福祉の調整に加えて、権利・手続・契約の問題を確認する2 本人の意思と、相談・代理の立場を区別する第6 進学・就職・成人後に支援を切らさないために第7 出典・関連情報
第1 家族の世話で生活が苦しくなったとき
1 名前に当てはまるかより、生活への影響を伝える

家族の介護や日常の世話を続ける中で、学校に行けない、眠れない、働く時間を確保できないという困り事が生じることがある。
相談の出発点は、自分が「ヤングケアラー」に該当するかを一人で判定することではなく、いま何に困り、どのような生活を望んでいるかを伝えることである。

家事や家族の世話をすること自体が、すべて過度の負担になるわけではない。
本人の年齢、心身の状態、世話の内容・頻度、休息や学習への影響を合わせて考える必要がある。
家族への思いを大切にすることと、本人が休み、学び、将来を選べることは、両方を支援の目的にできる。

こども家庭庁が令和8年8月に公表した「若者10万人の総合調査(ウェブアンケート・途中経過)」では、15歳から39歳までの有効回答6万7905人のうち、家族の中に「お世話」をしている人が現在いる者は6.8%、過去にいた者は8.7%で、合わせて15.5%であった。
ここでいう「お世話」は、家族の介護その他の日常生活の世話のほか家族の感情面のサポートも含み(自分の子どもの育児は含まない。)、過度な負担であるかどうかを問わないから、この数字がそのままヤングケアラーの割合を示すわけではない。
もっとも、「お世話」をしている(していた)者のうち、自分がヤングケアラーに当てはまる(当てはまっていた)と答えたのは31.8%にとどまり、当てはまらないが53.0%、わからないが15.2%であった。
この調査は調査会社の登録モニターに対するインターネット調査の途中集計であり、回答者の約6割が女性であるなど属性に偏りがあるから、若者全体の割合とみることはできない。
それでも、家族の世話をしていても自分をヤングケアラーと考えていない人が多いことは、名前に当てはまるかどうかより、生活への影響から相談を始めることの意味を示している。

2 身体介護だけでなく、見守りや生活の世話も対象になる

令和6年改正後の子ども・若者育成支援推進法15条1項は、家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者を、支援の対象として明記している。
こども家庭庁等の令和6年6月12日付け通知は、きょうだいの世話、精神面の支え、家族のための通訳なども視野に入れている。
性別によって対象を限定する仕組みではなく、男性が担うケアも、本人の負担に即して把握する必要がある。

第2 現行法の支援と年齢の考え方
1 相談・生活環境・修学・就業を支える制度である

同法15条は、関係機関等が相談・助言、医療や療養、生活環境の改善、修学・就業などの支援に努めることを定める。
同条2項は家族等への援助も定め、16条は状況把握、関係機関の連携、適切な機関への誘導と継続的支援を求めている。
根拠条文は、子ども・若者育成支援推進法で確認できる。

これらは支援の枠組みを定める条文であり、ヤングケアラーと呼ばれることで一定額の給付や特定のサービスが自動的に受けられるという意味ではない。
介護保険、障害福祉、生活困窮者支援などの制度については、それぞれの対象要件、申請手続、地域の提供体制を確認する必要がある。
相談の際には、使える制度の一覧だけでなく、誰が申請を手伝い、いつから実際の負担を減らせるかまで確認したい。

2 18歳で一律に支援が終わるわけではない

令和6年の通知は、おおむね30歳未満を中心に、状況によっては40歳未満も対象となり得るという考え方を示している。
したがって、高校を卒業した、成人になったという理由だけで、支援の相談を諦める必要はない。

ただし、18歳未満の児童に対する制度と、18歳以上の若者に対する制度は同一ではない。
同通知が説明する要支援児童等のサポートプランの取扱いを、そのまま成人全員への同じ義務や給付制度として説明することはできない。

(続きを読む...)ヤングケアラーの相談先と法律支援―家族の介護・生活困窮・学校生活をどうつなぐか(AI作成)

家事事件の書類交付等申請書の書き方―調停調書・審判書・確定証明書の取り寄せ方(AI作成)

目次

第1 家事事件の書類交付等申請書とは第2 調停調書・審判書・証明書の違い1 提出先に必要な文書を確認する2 強制執行のための申請は,単なる謄本取得と分ける第3 書類交付と記録の閲覧・謄写の違い1 当事者による裁判書・調書等の交付には許可不要の規定がある2 相手方の提出書面や調査報告書を見たい場合は別に確認する第4 申請書の書き方と準備する情報1 事件番号・申請者・必要な文書を特定する2 郵送先・返信用封筒・本人確認資料を確認する第5 費用と申請先の調べ方1 謄本と証明書の手数料を混同しない2 終了した事件の担当窓口を確認する第6 よくある確認事項1 事件番号が分からない場合2 確定証明書が必要と言われた場合3 養育費などの支払がない場合第7 公式書式・参照資料
第1 家事事件の書類交付等申請書とは

家事事件の書類交付等申請書は,家庭裁判所の事件について,調停調書・審判書などの交付や,確定・送達に関する証明を求めるための書面である。裁判所によって「申請書」「家事事件等書類交付等申請書」など名称や様式が異なる。

申請前に確認したいのは,何に使うか,どの文書が必要か,どの裁判所の事件かの3点である。調停調書の謄本が必要なのか,審判書と確定証明書が必要なのかを確認せずに申請すると,提出先が求める書類がそろわないことがある。

この記事は,当事者本人が自分の家事事件の書類を取り寄せる場合を中心に,東京家庭裁判所の申請書・記載例と,大阪家庭裁判所の正本送達・執行文付与等用の記載例を使って説明する。第三者による請求や,記録全体の閲覧・謄写には,別の条件や手続がある。

家事事件の具体例,調停・審判の違い,申立先の調べ方については,家庭裁判所の総合案内を参照されたい。

第2 調停調書・審判書・証明書の違い
1 提出先に必要な文書を確認する

最初に,役所,年金事務所,金融機関,登記の担当者など,実際に提出する先へ必要書類を確認する。裁判所に聞くときも,「事件の書類を全部ほしい」という伝え方より,「何の手続に使う,どの文書を何通ほしい」という伝え方の方が申請を整理しやすい。

文書確認する内容調停調書成立した合意等を記載した調書。提出先が正本・謄本のどちらを求めるか,必要通数を確認する。審判書裁判官の判断を記載した書面。審判の内容を示す文書と,確定を証明する文書は区別する。確定証明書審判等が確定したことに関する証明。審判書を持っているだけで,必ず代用できるわけではない。送達証明書書類の送達についての証明。自分が謄本を受け取ったこととは別である。不成立・取下証明書事件が不成立又は取下げで終了したことなどの証明。使用目的と必要な証明事項を確認する。

正本と謄本は,申請書でも選択欄が分かれている。どちらも「裁判所の書類のコピー」と考えて任意に選ぶのではなく,提出先の指定に従って申し込む必要がある。

2 強制執行のための申請は,単なる謄本取得と分ける

大阪家庭裁判所の「家事事件等書類交付等申請書(正本送達・執行文付与等用)」には,正本の送達,執行文の付与,送達証明,確定証明等の欄がある。通常の謄本交付と,強制執行の準備のためにどの項目を申請するかは区別しなければならない。

執行文が常に必要とは限らず,必要な書類は債務名義の種類や求める執行手続によって異なる。裁判所の財産開示手続の案内にある執行文の要否と,実際に申し立てる執行裁判所の案内を確認する必要がある。

第3 書類交付と記録の閲覧・謄写の違い
1 当事者による裁判書・調書等の交付には許可不要の規定がある

家事審判事件の記録の閲覧等については,家事事件手続法47条が定めている。同条6項によれば,当事者は,審判書その他の裁判書の正本・謄本・抄本や,事件に関する事項の証明書について,家庭裁判所の許可を得ないで交付を請求できる。審判を受ける者が審判後に請求する場合も同様である。

家事調停事件についても,同法254条4項は,裁判書,成立した合意又は所定の終了事項を記載した調書,事件に関する事項の証明書について,当事者が家庭裁判所の許可を得ずに交付を請求できると定めている。

したがって,当事者が自分の調停調書等を取り寄せる場合に,「家事事件の書類はすべて裁判官の許可がなければもらえない」と考えるのは正確ではない。ただし,申請者の立場や事件との関係を確認できる資料が必要になる場合がある。

2 相手方の提出書面や調査報告書を見たい場合は別に確認する

上記の交付の扱いを,事件記録中のすべての資料に広げることはできない。相手方の提出書面,添付資料,調査報告書などの閲覧・謄写については,審判事件か調停事件か,申請者が当事者か第三者か,記録の内容などに応じて許可の取扱いが異なる。

家庭裁判所調査官の報告書を確認したい場合には,家庭裁判所調査官の調査・報告書の案内も参照されたい。調停調書を取得する申請書だけで,事件記録全体の閲覧まで済むとは限らない。

第4 申請書の書き方と準備する情報
1 事件番号・申請者・必要な文書を特定する

裁判所から届いた呼出状,調停調書,審判書などで,裁判所名と事件番号を確認する。事件番号は,年,事件符号,番号を省略せず転記する。調停と審判で事件番号が異なる場合には,必要な書類がどちらの事件のものかを担当係へ確認する。

記入する欄書く内容・確認事項宛先その事件を扱った家庭裁判所。本庁・支部・出張所も確認する。事件番号手元の裁判所書類から,年・事件符号・番号を転記する。文書・通数調停調書,審判書,確定証明書等を選び,正本・謄本の別と必要通数を指定する。交付・送達等自分が受け取る申請か,相手方等への正式な送達を求める申請かを区別する。申請者氏名,住所,日中連絡できる電話番号等を,その裁判所の様式に従って記入する。収入印紙・郵便料文書の種類,ページ数,通数,送付方法に応じて必要額を確認する。

東京家庭裁判所の記載例では,調停調書の謄本について,事件番号,必要通数,日付,申請人欄を記入し,「交付」と「謄本」を選ぶ例が示されている。様式にある受領欄や裁判所の処理欄は,申請時に全部埋める欄ではない。

2 郵送先・返信用封筒・本人確認資料を確認する

東京家庭裁判所の謄本交付の記載例では,郵送申請の場合,申請書,収入印紙,返信用切手,返信先を記載した返信用封筒を送ることとされている。氏名・住所が調書又は審判書と異なる場合には,つながりの分かる戸籍謄本や戸籍の附票等のコピーが必要とされており,身分証明書のコピーだけで当然に代用できるものではない。

来庁申請については,記入した申請書,必要な収入印紙,身分証明書等を持参する案内がある。郵送と来庁で必要なものを混同せず,代理人による申請や氏名・住所の変更がある場合には,先に担当係へ確認する必要がある。

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日常家事代理と表見代理―配偶者の代理権,信頼の対象と契約前の確認事項(AI作成)

目次

第1 配偶者の代理人として契約するときの検討順序第2 日常家事代理権と夫婦の財産の帰属1 民法761条の責任と代理権2 婚姻と個別の財産処分の権限は分ける第3 日常家事の範囲は目的だけで決まらない1 夫婦ごとの生活状況と行為の種類・性質2 代金の使途と財産処分の性質を別に確認する第4 権限を越えた行為と信頼の対象1 110条の一般的な検討と区別する2 日常家事の範囲内だと信じた理由を検討する3 実印や委任状の資料としての役割第5 契約前に整理する資料と確認事項1 確認する問いと資料を対応させる2 本人への確認と条件の明確化第6 無断で契約された本人が確認する事項第7 出典・関連記事と確認範囲1 法令・裁判例2 関連記事
第1 配偶者の代理人として契約するときの検討順序

夫婦の一方が,他方の代理人として契約する場面では,配偶者であること,実印や印鑑登録証明書を持っていること,個別の契約について代理権を与えられていることを分けて確認する必要がある。
特に,日常の家事に関する代理権だけを根拠とする場合,権限を越えた行為について問題となる信頼の対象は,その行為が当該夫婦の日常家事の範囲に属することである。個別の代理権があると信じた理由だけで,この問いを置き換えることはできない。

本記事は,現行民法と最高裁昭和44年12月18日第一小法廷判決の判断枠組みに基づき,契約の相手方と,無断で契約された本人の双方が確認する事項を整理するものである。登記手続を任せた場合など,日常家事とは別の基本代理権がある場面は,後掲の関連記事で扱う。

第2 日常家事代理権と夫婦の財産の帰属
1 民法761条の責任と代理権

民法761条本文は,夫婦の一方が日常家事について第三者と法律行為をした場合に,そこから生じた債務を他方も連帯して負担すると定める。ただし,第三者に責任を負わない旨を予告した場合の例外も,同条ただし書に置かれている。
昭和44年判決は,同条が責任を定めるだけでなく,夫婦が日常家事に関する法律行為について相互に他方を代理する権限も定めていると解した。

もっとも,日常家事債務の連帯責任と,他方の代理人としてした契約の効力は,検討する問いが異なる。誰を契約当事者として表示したか,どの債務の負担又はどの財産の処分が問題なのかを最初に確定する必要がある。

2 婚姻と個別の財産処分の権限は分ける

民法762条1項は,婚姻前から有する財産と,婚姻中に自己の名で得た財産を,その夫婦の一方の特有財産とする。同条2項の帰属不明財産の共有推定も別の規律である。
したがって,婚姻関係だけから,相手の名義の財産を処分する一般的な代理権を導くことはできない。財産の帰属,日常家事の範囲,個別に与えられた代理権を分けて調べることになる。

第3 日常家事の範囲は目的だけで決まらない
1 夫婦ごとの生活状況と行為の種類・性質

昭和44年判決は,共同生活を営む上で通常必要な法律行為を日常家事とし,具体的な範囲は,夫婦の社会的地位,職業,資産,収入,地域の慣習などによって異なるとした。
同時に,内部的な生活事情や個別の目的だけで判断せず,行為の種類・性質も客観的に考慮する必要があるとした。第三者の保護を目的とする規定であるためである。

2 代金の使途と財産処分の性質を別に確認する

契約によって得た金銭を生活のために使うという説明と,その契約行為自体が通常の共同生活に必要な行為かという評価は,同じではない。
実務では,使途だけでなく,処分する財産の種類,契約の内容・金額,その夫婦の生活との関係を整理することが有用である。これは判決の判断要素を契約確認へ落とし込んだ実務上の整理であり,一定額を越えると日常家事ではなくなるという一律の基準を示すものではない。

第4 権限を越えた行為と信頼の対象
1 110条の一般的な検討と区別する

民法110条は,代理人が権限外の行為をした場合でも,相手方にその代理人の権限があると信じる正当な理由があれば,110条が準用する109条1項本文の効果を認める規定である。
しかし昭和44年判決は,日常家事代理権を基礎に,広く一般的に110条の表見代理を認めることは,夫婦の財産的独立を損なうおそれがあるとして否定した。

2 日常家事の範囲内だと信じた理由を検討する

判決が示したのは,日常家事とは別の代理権が授与されていない場合に,相手方が当該行為をその夫婦の日常家事の範囲内だと信じる正当な理由があるときに限り,110条の趣旨を類推して保護するという枠組みである。
したがって,この類推の場面では,個別の処分について代理権があると信じたことと,行為が日常家事に属すると信じたことを分ける必要がある。正当な理由の判断では,どちらの信頼を,どの資料が支えているかを明確にする。

3 実印や委任状の資料としての役割

実印,印鑑登録証明書,委任状等が示されたときは,誰が,どの目的で交付・作成し,どの権限を示すものなのかを確認する必要がある。
それらが個別の代理権の存在を検討する資料になることと,処分行為の種類・性質が日常家事に変わることは別である。反対に,資料の内容から実際の授権を認められる場合まで,日常家事の範囲だけで処理するべきではない。

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別居3年で離婚できるか―婚姻破綻の判断事情,修復行動と第一審・控訴審の比較(AI作成)

目次第1 別居3年という法律上の基準はない1 生死不明の3年と別居期間は別である2 裁量棄却と有責配偶者の問題を分ける第2 同じ事件で第一審と控訴審の結論が分かれた例1 別居3年5か月で請求を棄却した第一審2 別居4年10か月で離婚を認めた控訴審第3 別居期間と一緒に確認する事情1 住所の違いと共同生活の実態2 修復希望と具体的な行動3 子との関係と離婚後の生活第4 相談・訴訟で準備する資料1 出来事と裏付けを時系列にする2 訴えを起こした時の資料を更新する第5 判決の集計を個別事件の勝訴率にしない第6 令和8年改正と古い判決の読み方第7 出典・関連記事
第1 別居3年という法律上の基準はない
1 生死不明の3年と別居期間は別である

相手方が離婚に応じない場合,「別居を3年続ければ裁判で離婚できる」と考えることがある。しかし,令和8年10月5日現在の民法770条に,別居3年を独立の離婚原因とする規定はない。同条1項3号の3年以上という期間は,配偶者の生死が明らかでない場合の要件である。所在や生存が分かっている配偶者との別居とは異なる。
別居を通じた婚姻破綻は,通常,同項4号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」の問題として検討する。期間だけでなく,同居していた期間,別居に至る経緯,別居後の生活・交流,修復の可能性などを具体的に見る必要がある。

2 裁量棄却と有責配偶者の問題を分ける

現行770条2項の裁量棄却は,同条1項1号から3号までの事由がある場合の規定である。4号の婚姻破綻については,重大な事由が認められるかという判断と,破綻について専ら又は主として責任を負う配偶者からの請求を信義則上認められるかという問題を区別する。
有責配偶者からの請求では,最高裁大法廷昭和62年9月2日判決の枠組みに従い,別居期間を双方の年齢・同居期間との対比で評価し,未成熟子の有無や,相手方を極めて苛酷な状態に置く等の特段の事情も検討する。同判決の結論は破棄差戻しである。有責性を争われている事件に,一般の別居事例の年数をそのまま当てはめることはできない。
詳しくは,有責配偶者からの離婚請求を参照されたい。

第2 同じ事件で第一審と控訴審の結論が分かれた例
1 別居3年5か月で請求を棄却した第一審

東京家庭裁判所立川支部平成27年1月20日判決(平成25年(家ホ)第235号)は,妻からの離婚請求を棄却した。判決が認定した別居期間は約3年5か月であり,それまでの同居期間は約10年であった。
第一審は,夫の修復希望,子と夫との良好な関係等を踏まえ,婚姻関係に回復可能性がないとまでは認めなかった。妻が主張した暴力等についても,その主張どおりの事実が認められた事案ではない。この判断を,「暴力があっても3年では離婚できない」という一般論へ広げることはできない。

2 別居4年10か月で離婚を認めた控訴審

同事件の控訴審である東京高等裁判所平成28年5月25日判決(平成27年(ネ)第1064号,判例タイムズ1432号97頁)は,離婚請求を棄却した部分を取り消し,離婚を認めた。
控訴審は,別居が約4年10か月に及んだこと,妻の強い離婚意思,夫に具体的な修復行動がないこと等を検討した。夫が婚姻継続を希望しながら,命じられた婚姻費用を十分に支払っていなかった点も,その希望を評価する事情となっている。
この比較からは,年月の経過に加えて,修復の言葉と実際の行動,生活費の負担等を証拠で示すことが重要といえる。「第一審で棄却されたから控訴しても同じ」「4年10か月に達すれば必ず認められる」という理解は,どちらも判決の検討内容に合わない。

第3 別居期間と一緒に確認する事情
1 住所の違いと共同生活の実態

別居の開始日は,住民票の異動日だけでなく,実際に共同生活を終えた経緯と資料で確認する。単身赴任,入院,介護等による一時的な住居の分離と,夫婦関係を解消するための別居は,住所が違うというだけでは同じ評価にならない。
家庭内別居を主張する場合も,寝室,食事,家事,家計,連絡及び子の世話の実態を説明する必要がある。途中で再同居した,旅行へ行った,家計を一部共同にしていた等の事情があれば,その目的と経過を併せて整理する。

2 修復希望と具体的な行動

婚姻の継続を希望する側は,いつ,どのような方法で話合いを提案し,関係悪化の原因を改善したのかを具体化する。離婚を求める側は,修復の提案があったか,応じなかった理由,話合いや調停を経ても関係が回復しなかった経過を説明する。
生活費については,合意・審判等で定められた額と,現実の支払日・支払額を区別する。支払が足りない場合には,収入減等の理由や,変更を求めた経過も確認する。婚姻費用の不足だけで直ちに婚姻破綻又は悪意の遺棄が成立するという一律の基準ではない。
DV,虐待,威圧又は保護命令等が関係する事件では,直接連絡や同居再開を安易に勧めるべきではない。連絡を避ける理由と安全確保の必要性を踏まえ,代理人や裁判所を通じて事実と意向を整理する。

3 子との関係と離婚後の生活

子の監護,親子交流,通学,健康及び生活費を確認する。子と片方の親が良好な関係を持つことと,夫婦関係が回復できることは,当然に同じ問題ではない。夫婦関係の評価と,子の生活をどう守るかをそれぞれ説明する。
別居後の住居,収入,療養,家計及び扶養の状況も整理する。有責配偶者からの請求では,離婚後の苛酷な状態を判断するため,経済的給付の内容と履行可能性が特に重要となる。

第4 相談・訴訟で準備する資料
1 出来事と裏付けを時系列にする

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離婚後の共同親権の国際比較-決定権・居住・DV対応の違い(AI作成)

目次

第1 共同親権を比較するための区別1 対象と比較の範囲2 責任・決定権と居住の比較表第2 日本の親権者指定と親権行使1 離婚時に共同・単独のいずれを定めるか2 双方が親権者となった後の行使方法第3 外国の決定権と居住の仕組み1 フランスの共同行使と交互居住2 ドイツの重要事項と日常事項3 イングランド・ウェールズの親の関与4 豪州の2024年改正と共同決定命令5 カリフォルニア州の法的監護と身体的監護第4 DV・虐待への対応の条件と効果1 調停提案の除外と接触の安全判断2 子の福祉への危険と安全の考慮3 カリフォルニア州の過去5年のDV認定第5 子の意向を考慮する仕組み第6 日本の離婚・養育費・取決め文書の関連記事第7 出典・参考資料1 法令2 行政機関の制度解説3 裁判所の制度解説・司法手続の運用資料
第1 共同親権を比較するための区別
1 対象と比較の範囲

離婚後の共同親権を比較するときは,①子について誰が法的な責任・権限を持つか,②どの事項を共同で決めるか,③子がどこで,どのような日程で暮らすかを分けて読む必要がある。
父母双方が権限を持つことから,居住時間を半分ずつにすることや,日常の行為まで常に双方の同意を得ることが当然に導かれるわけではない。

本記事は,令和8年10月3日を基準日として,日本,フランス,ドイツ,イングランド・ウェールズ,オーストラリアの連邦法及び米国カリフォルニア州の条文・公的解説を比較する。
英国全体,米国全州又は西オーストラリア州の別個の法制度へ一般化するものではなく,世界の採用率,制度の実効性及び子への心理的効果は対象としない。
外国法の日本語説明は原文の要約・仮訳であり,公定訳ではない。

2 責任・決定権と居住の比較表

フランスのautorité parentale,ドイツのelterliche Sorge,英国・豪州のparental responsibilityは,各法域の法律上の概念である。
カリフォルニア州ではlegal custodyとphysical custodyを区別するため,同じ「共同親権」という日本語だけで法律効果を揃えることはできない。

法域法的責任・決定権居住・時間との区別日本離婚時に双方又は一方を親権者に指定し,双方なら共同行使が基本で,単独行使の規定もある監護者・監護の分掌,親子交流及び費用分担は別に定めるフランス別離は親権行使の帰属規則を変えないが,子の利益のため単独行使も認められる交互居住又は一方の親の住所での居住を定め得るドイツ共同配慮を持つ別居父母の重要事項は合意を要し,日常事項とは扱いが異なる決定権の分担に関する規定だけでは,居住時間の割合は決まらないイングランド・ウェールズ政府案内は,重要決定への他方の関与と,日常決定の扱いを区別して説明する法律上の父母の関与に関する推定は,特定の時間配分を意味しない豪州連邦法各親の親責任は別離後も存続して裁判所命令に従い,重要事項の共同・単独決定命令が可能共同決定と平等な時間配分は異なり,司法長官省は平等な時間を過ごす法的権利はないと説明するカリフォルニア州裁判所案内は,重要決定に関するlegal custodyに共同・単独の形があると説明する居住に関するphysical custodyとは別の概念であり,生活日程は別に確認する

表は各制度の対応関係を示すものであり,共同の制度の有無だけによる優劣の評価ではない。
日常事項の単独決定,父母が合意できない場合の処理及び安全への対応は,以下の各規定と併せて読む。

第2 日本の親権者指定と親権行使
1 離婚時に共同・単独のいずれを定めるか
(1) 父母双方又は一方の指定

離婚後の親権に関する改正は,令和8年4月1日に施行された。
現行の民法819条1項・2項は,協議離婚又は裁判離婚の際に,父母の双方又は一方を親権者に定めるものとしている。

(2) 裁判所が単独親権にしなければならない場合

民法819条7項は,裁判所が親権者を指定する際,子の利益のため,父母と子の関係,父母相互の関係その他一切の事情を考慮するものとしている。
父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがある場合や,一方が他方から暴力等を受けるおそれの有無,協議が調わない理由その他の事情を考慮して親権の共同行使が困難と認める場合等,共同親権により子の利益を害すると認められるときは,父母の一方を親権者に定めなければならない。

したがって,共同行使の規定があることと,裁判所が親権者を指定する際に共同を一律に優先することは別の問題である。
親権者の指定は,日々の行為を誰が決めるかという次の問題とも区別される。

2 双方が親権者となった後の行使方法
(1) 共同行使と単独でできる行為

民法824条の2第1項・第2項では,双方が親権者である場合の共同行使を基本としつつ,監護・教育に関する日常の行為については単独行使を認めている。
子の利益のため急迫の事情がある場合も,一方が親権を行う。

(2) 合意できない特定事項の単独行使

共同で決めるべき特定事項について協議が調わない場合,民法824条の2第3項により,家庭裁判所は,父又は母の請求に基づき,子の利益のため必要と認めるときに一方が単独で親権を行使できる旨を定められる。

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再婚禁止期間を理由とする国家賠償請求の後続裁判例―平成30年東京地裁・高裁判決、消滅時効と損害の立証(AI作成)

目次第1 平成27年大法廷判決の射程第2 平成30年東京地裁・高裁判決1 届出、請求と結論2 判決が判断していないこと第3 消滅時効を調べる順序1 適用法と起算点2 実務で集める資料第4 損害額と因果関係の立証第5 時期による戸籍実務と調査の限界

最高裁大法廷は平成27年12月16日、旧民法733条1項の再婚禁止期間のうち100日を超える部分が平成20年当時には違憲であったと判断した。しかし、国会がその時点まで改廃しなかったことについては国家賠償法上の違法性を否定し、賠償請求を棄却した。違憲判断と個別の賠償請求の成否は別の問題である。本稿は、判例秘書収録の判決本文で確認できた一つの後続訴訟の第一審・控訴審を紹介し、時効と損害立証の検討方法を示す。

第1 平成27年大法廷判決の射程

大法廷は、平成20年に前婚を解消した女性の事件で、100日超過部分の違憲性を認めた。他方、国会議員による立法不作為が国家賠償法1条1項上違法となるには、違憲性が明白であるのに正当な理由なく長期にわたって改廃を怠ったといえる場合などであるとし、平成20年当時についてその要件を満たさないと判断した。判決が慰謝料を算定したわけではなく、請求は棄却された。平成27年大法廷判決全文を参照されたい。

平成7年判決との違いは、再婚禁止期間の平成7年・平成27年最高裁判決と国家賠償で検討した。本稿で扱う平成30年の二判決は、これら最高裁判決とは別の事件であり、同じ訴訟の第一審と控訴審である。

第2 平成30年東京地裁・高裁判決
1 届出、請求と結論

東京地裁平成30年3月13日判決(平成27年(ワ)第28945号、判例秘書文献番号L07331663)によれば、女性は平成27年5月15日に離婚し、同年7月10日に新たな相手との婚姻届を提出したが受理されず、同年11月22日に婚姻した。7月10日の届出は離婚から約56日後であり、100日を経過する前である。この時点の不受理を、最高裁が違憲とした「100日超過部分」による不受理と表現してはならない。

女性、新たな配偶者及び子がそれぞれ100万円の慰謝料を請求したが、東京地裁は請求を棄却した。請求額の合計300万円は認容額ではない。判決は、100日経過後も再婚できなかったという主張も検討した上で、当該時期の立法不作為について国賠法上の違法性を認めなかった。

東京高裁平成30年9月27日判決(平成30年(ネ)第1602号、判例秘書文献番号L07320602)も控訴を棄却した。高裁判決の事件番号と年月日は東京高裁の特別保存事件一覧でも確認できる。ただし、同一覧は判決理由を掲載する資料ではない。本稿の地裁・高裁の認定及び判断は判例秘書収録の各判決本文による。

2 判決が判断していないこと

両判決は立法不作為の国賠法上の違法性を否定して請求を退けた。消滅時効の起算点や完成の有無を確定した事例でも、慰謝料の相当額を算定した事例でもない。したがって、「平成30年判決が時効は3年と判断した」「慰謝料を1人100万円と認定した」という紹介は誤りである。

平成27年(ワ)の事件番号から、訴えの提起年は平成27年と分かるが、提訴の具体的な月日をこの番号だけで確定できない。「平成27年大法廷判決後に提起された訴訟」とも断定しない。

第3 消滅時効を調べる順序
1 適用法と起算点

国家賠償法4条により、同法に特別の規定がない事項には民法を適用する。令和2年4月1日の改正民法施行前の不法行為に係る旧民法724条は、損害及び加害者を知った時から3年、行為時から20年という期間を定めていた。改正後の民法724条も一般の不法行為について主観的起算点から3年、行為時から20年を定め、724条の2は生命・身体侵害による損害賠償請求の主観的期間を5年とする。改正法附則の経過措置も確認する必要がある。

精神的苦痛を請求するというだけで724条の2の5年になるわけではない。また、最高裁の平成27年判決が出た日を一律に時効の起算日とする根拠もない。届出の不受理、100日経過後の取扱い、婚姻が成立した日、損害を認識した経緯、請求権者ごとの認識及び訴訟上の手続を時系列に置き、適用法・経過措置・時効の完成猶予や更新の有無を個別に調べる。

2 実務で集める資料

戸籍謄本、離婚届と婚姻届の写し、不受理証明又は窓口の記録、届出時の説明、再提出の記録、当事者間の連絡、婚姻が遅れたことによる具体的な不利益の資料を確保する。損害の発生・認識時期が争われるときは、単なる後日の陳述だけに依存しない。各請求権者について何をいつ知ったかを分けて記録する。

第4 損害額と因果関係の立証

違憲とされた規定が適用された事実だけで慰謝料額は決まらない。受理されなかった届出が100日以内か以後か、100日経過後に再届出したか、他の婚姻障害がなかったか、いつ婚姻できたか、どの不利益が行政の取扱い又は立法不作為と結び付くかを確認する。婚姻できなかった期間、生活上・身分上の影響、支出の領収書、精神的苦痛を裏付ける資料を整理し、請求権者ごとの損害と因果関係を主張立証する。

平成27年大法廷事件の請求額や平成30年東京訴訟の「各100万円」は当事者の請求であり、裁判所の賠償額の相場ではない。ここで確認した判決に認容例はなく、違法性が否定されたため、損害額についての裁判所の積極的な算定判断も得られない。

第5 時期による戸籍実務と調査の限界

平成27年大法廷判決後、法務省は改正までの間、離婚から100日経過後の婚姻届を受理する取扱いを市区町村に通知した。法務省の判決説明資料にその旨が記されている。平成28年6月7日に禁止期間は法定の100日に短縮され、令和6年4月1日に廃止された。過去の不受理を評価するときは、各届出日の法令と通知、実際の窓口対応を分ける。平成28年改正の法務省説明及び令和6年施行の法務省説明を参照されたい。

本稿の後続裁判例の確認範囲は、判例秘書で確認した前記一訴訟の二判決と、裁判所ウェブサイト等で確認できた資料である。未掲載判決や和解、訴訟外の解決を含め、全国の請求例がこれだけであるとは断定できない。両判決の本文は判例秘書で照合したが、裁判所ウェブサイトの判決全文は確認できていない。個別事件を扱う際は判決原本・訴訟記録と、適用時点の法令・通知を追加で確認する。

再婚禁止期間の平成7年・平成27年最高裁判決と国家賠償―違憲と立法不作為の違法性(AI作成)

目次第1 二つの判決の結論1 平成7年12月5日第三小法廷判決2 平成27年12月16日大法廷判決第2 平成7年判決の射程第3 平成27年判決の二段階の判断1 規定の違憲性2 国会議員の職務上の義務違反第4 多数意見と反対意見の分岐第5 国家賠償を検討する実務上の手順第6 法改正との関係と資料

再婚禁止期間をめぐる最高裁判決は、平成7年も平成27年も国への損害賠償請求を認めなかった。しかし、両判決の憲法判断は同じではない。平成7年判決は旧民法733条の合憲性を確定せず、平成27年判決は100日を超える部分を違憲とした上で国家賠償法上の違法性を否定した。この区別が、過去の立法不作為を論じる出発点となる。

第1 二つの判決の結論
1 平成7年12月5日第三小法廷判決

女性のみに6か月の再婚禁止期間を設けた当時の民法733条について、再婚届の不受理による精神的損害等を主張する当事者が、国会による改廃をしないことなどを理由に国家賠償を請求した。最高裁は請求を退けた。この判決で問題となった立法不作為の判断時点は平成元年である。請求棄却を「6か月の禁止は合憲」と言い換えてはならない。

2 平成27年12月16日大法廷判決

平成20年に前婚を解消した女性の請求について、最高裁は当時の6か月の禁止のうち100日を超える部分が、遅くとも同年当時には憲法14条1項・24条2項に違反していたとした。他方、当時の100日以内の部分は違憲としなかった。それでも国会による改廃の遅れは国家賠償法1条1項上違法と評価できないとして、賠償請求を棄却した。

第2 平成7年判決の射程

平成7年判決は、国会議員の立法行為について、憲法の一義的な文言に反する立法をあえて行うような例外的な場合でなければ国家賠償法上違法と評価されない、という先例の枠組みを引用した。そして、旧733条の元来の目的を、父性の推定の重複を避け、父子関係の紛争を予防する点に求めた上、改廃しないことが直ちにその例外に当たるとはいえないと判断した。判決文は6か月の期間のすべてについて憲法適合性を審査し、合憲と結論したものではない。

平成27年判決も、この先例を「立法不作為について国賠法上の違法性を否定した判断」として扱う。千葉勝美裁判官の補足意見は、平成7年判決が引用した「憲法の一義的な文言に反する」という例は、国賠法上の違法となる全ての場合を尽くしたものではないと説明している。両判決を、単純な合憲判決から違憲判決への変更と整理するのは不正確である。

第3 平成27年判決の二段階の判断
1 規定の違憲性

当時の民法772条では、前婚解消後300日以内と後婚成立後200日経過後に出生した子について父性の推定が重なり得た。この重複を避けるには計算上100日の禁止で足りる。大法廷は、旧法制定時に6か月という幅を設けたことまで不合理とはしなかったが、医療・科学技術や婚姻・家族の社会状況の変化を踏まえると、平成20年には100日を超える制約を正当化できなくなっていたと判断した。

2 国会議員の職務上の義務違反

規定が違憲でも、国会議員の立法行為・立法不作為が直ちに国家賠償法上違法になるわけではない。大法廷は、違憲であることが明白なのに国会が正当な理由なく長期にわたり改廃を怠った場合などに、個々の国民に対する職務上の法的義務違反として例外的に違法となり得るとした。

本件では、平成7年判決が違憲との判断を示さず立法不作為の国賠責任を否定していた。平成6年の改正要綱試案と平成8年の法律案要綱は100日への短縮を提案したが、100日超過部分が違憲であるとの前提で作成されたとはうかがわれない。その後も同部分を違憲とする司法判断はなかった。多数意見は、平成20年時点で違憲性が国会にとって明白だったとはいえず、国賠法上の違法性を否定した。

第4 多数意見と反対意見の分岐

山浦善樹裁判官は反対意見で、再婚禁止期間の全部が違憲であり、遅くとも平成13年には違憲となっていたと考えた。平成7年判決の判断時点は平成元年であり、平成20年を問う本件の妨げにならないという。科学技術の進歩、社会状況、諸外国の法改正、国際機関の勧告等から、平成20年より相当前に国会に違憲性が明白となり、改廃に技術的困難もなかったとして、立法不作為の違法性と過失を認め、賠償請求を認容すべきだと述べた。これは多数意見の結論ではない。

対立点は、婚姻の自由をどこまで制約できるかに加え、いつ、何を根拠に、違憲性が国会にとって明白になったと評価できるかにある。平成8年の100日短縮案を、政策提案とみるか、違憲状態の認識を裏付ける事情とみるかでも評価が分かれた。

第5 国家賠償を検討する実務上の手順

① まず、婚姻届の不受理等がいつ起き、どの時点の旧法が適用されたかを戸籍・届書等で確定する。平成7年事件の平成元年と平成27年事件の平成20年を混同しない。

② 次に、憲法上の制約の内容・違憲となった時期と、国会議員の職務上の義務違反を別々に検討する。先例、法制審議会資料、国会審議、司法判断、当時の科学的・社会的知見を時系列で整理し、違憲性の明白性と正当な理由のない不作為の期間を立証する。改正提案が存在した事実だけで、国賠責任が成立するわけではない。

③ 最後に、個別の届出経過、再婚できなかった期間、損害と因果関係、請求権の期間制限を検討する。平成27年判決は平成20年時点の立法不作為の違法性を否定したのであり、全ての時期・全ての事案について国賠責任の有無を一括して決めたものではない。一方、同判決の違憲判断だけを根拠に賠償が自動的に認められるわけでもない。

後続裁判例として、東京地裁平成30年3月13日判決(平成27年(ワ)第28945号、判例秘書文献番号L07331663)とその控訴審である東京高裁同年9月27日判決(平成30年(ネ)第1602号、同L07320602)がある。女性、新たな配偶者及び子は各100万円を請求したが、いずれも棄却された。これは一訴訟の二判決であり、請求額を認容額と取り違えてはならない。両判決は消滅時効の成否や慰謝料の相当額を判断していない。事実経過と判断の限界は再婚禁止期間を理由とする国家賠償請求の後続裁判例で詳述した。

時効を検討するときは、国家賠償法4条と適用時点の民法724条、改正法の経過措置を確認し、損害及び加害者を知った時期を請求権者ごとに検討する。平成27年大法廷判決の言渡日が一律に時効の起算日となるわけではない。精神的苦痛の請求というだけで民法724条の2の5年の期間が適用されるわけでもない。

第6 法改正との関係と資料

平成27年大法廷判決後は、改正前でも離婚から100日を経過した婚姻届を受理する取扱いが市区町村に通知された(法務省の判決説明資料)。平成28年改正で法定の期間は100日に短縮され、令和6年4月1日からは再婚禁止期間自体が廃止された。後の法改正と、過去の特定時点における国家賠償責任の成否は分けて論じる。現行の戸籍・父の推定については再婚禁止期間の廃止と父の推定、違憲判決の一覧は最高裁判所における違憲判決の一覧を参照されたい。

関連する平成15年度旧司法試験の問題文・出題趣旨・模範答案は、平成15年度旧司法試験論文式試験の模範答案―憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法の全12問と出題趣旨を踏まえた解説に掲載している。

一次資料:最高裁平成7年12月5日第三小法廷判決(平成4年(オ)第255号、裁判集民事177号243頁。判例秘書収録本文・文献番号L05010101を令和8年10月1日に照合)。最高裁平成27年12月16日大法廷判決(平成25年(オ)第1079号、民集69巻8号2427頁)の判決全文。平成7年判決の公開掲載本文も参照できるが、本稿の本文確認は判例秘書収録本文に基づく。

再婚禁止期間の廃止と父の推定―婚姻日・出生日で判定する戸籍と相談実務(AI作成)

目次第1 結論と確認する日付第2 再婚禁止期間の変遷第3 平成27年大法廷判決の読み方第4 出生時期による父の推定と経過措置第5 戸籍・相談実務での手順第6 関連判例・記事と出典

女性の再婚禁止期間は令和6年4月1日から廃止された。ただし、過去の婚姻と出生を調べる際は、再婚禁止期間の適用には婚姻日、改正後の嫡出推定の適用には子の出生日をそれぞれ確認する必要がある。両者を同じ基準日で処理すると、戸籍上の父を誤るおそれがある。本稿は令和8年10月1日現在の法令・公的資料を基準に、国内法が適用される典型例を整理する。

第1 結論と確認する日付

最初に、前婚の解消・取消日、再婚の届出日、子の出生日を戸籍と出生証明書で確かめる。離婚後300日以内の出生か、出生時までに再婚していたかも確認する。懐胎時期、当事者の国籍、認知・養子縁組の有無、父と推定される者の生死は、争う手続を選ぶ段階で別に確認する。

令和6年4月1日以後の婚姻には、改正前民法733条の女性の再婚禁止期間は適用されない。一方、改正民法772条の新しい父の推定は、原則として同日以後に生まれた子に適用される(令和4年法律第102号附則3条)。したがって、令和6年3月31日以前に生まれた子の父を、後の改正規定だけで決め直すことはできない。

第2 再婚禁止期間の変遷
1 平成28年6月6日まで

改正前民法733条1項は、女性について前婚の解消又は取消しの日から6か月の再婚禁止期間を定めていた。これは当時の民法772条が、前婚解消後300日以内と後婚成立後200日を経過した後の出生について父の推定が重なる事態を避ける趣旨と説明されていた。ただし、旧733条2項には前婚解消前から懐胎していた場合の出産後の例外があった。

ただし、法定の6か月という文言と、平成27年12月16日の大法廷判決後の戸籍事務上の取扱いは区別する。同判決後、平成28年改正法の施行前であっても、前婚解消・取消しから100日を経過した婚姻届を受理するよう市区町村に通知された(法務省の判決後の取扱い)。この時期の個別の届出の成否は、届出日と不受理・受理の記録で確認する。

2 平成28年6月7日から令和6年3月31日まで

平成28年法律第71号は、再婚禁止期間を6か月から100日に短縮し、平成28年6月7日に公布・施行された。前婚解消・取消しの時に懐胎していなかった場合、又はその後に出産した場合には、100日以内でも同期間の規定を適用しない。期間内の婚姻届については、当時必要とされた証明資料を含め、法務省の平成28年改正案内と当時の戸籍記録を確認する。

3 令和6年4月1日以後

令和4年法律第102号により女性の再婚禁止期間は廃止された。この廃止は、法務省の改正の概要によれば、令和6年4月1日以後にされる婚姻に適用される。前婚解消から100日以内という理由だけで、現在の婚姻届を旧733条に基づいて拒むことはできない。

第3 平成27年大法廷判決の読み方

最高裁平成27年12月16日大法廷判決(平成25年(オ)第1079号)は、平成20年に離婚した女性が国に賠償を求めた事件である。判決は、当時の6か月の再婚禁止期間のうち100日を超える部分は、平成20年当時には憲法14条1項・24条2項に違反するに至っていたとした。他方、当時の100日以内の部分は違憲としなかった。これは令和6年の全面廃止後の現行法について、100日間の禁止を認めた判断ではない。

同判決は、立法不作為について国家賠償法1条1項上の違法性を否定し、賠償請求を棄却した。規定の違憲性と国家賠償責任は別の判断である。判決は、平成7年の第三小法廷判決について、国会が733条を改廃しなかった立法不作為が直ちに国家賠償法上違法となる例外的な場合に当たらないと判断したものと説明し、同判決が733条を合憲と判示したとは扱っていない。判決が挙げた医療・科学技術や社会状況の変化も、違憲性の判断時点を読む際の事情であり、個々のDNA鑑定だけで法律上の父を決める趣旨ではない。

第4 出生時期による父の推定と経過措置
1 令和6年4月1日以後に生まれた子

改正民法772条は、婚姻前に懐胎して婚姻成立後に生まれた子も、その婚姻の夫の子と推定する。同条3項は、懐胎から出生までに二以上の婚姻をした場合、出生の直近の婚姻の夫の子と推定する。したがって、前婚解消後300日以内であっても、母が再婚した後に生まれた子は、原則として再婚後の夫の子と推定される。再婚していなければ、300日以内の出生について前夫の子との推定が問題になる。裁判所の嫡出否認調停案内も両者を区別している。

2 令和6年3月31日以前に生まれた子

新772条は出生に遡って適用されず、旧法の父の推定を確認する。子と母には施行日から1年間、施行日前出生の子について嫡出否認の訴えを提起できる特例が設けられた(同法附則4条2項)。この特例期間は令和7年3月31日までで、現在は経過している。ただし、それだけで全ての親子関係の救済手段がなくなるわけではない。嫡出推定が及ばない事情があれば、親子関係不存在確認など別の手続が問題になり得る。父による否認も、施行日前出生の子には従前の例によるため、個別の起算点と期間を確認する。

3 推定と血縁が食い違う場合

嫡出推定が及ぶ父子関係は、科学的証拠で生物学上の父子関係がないことが判明しただけでは、親子関係不存在確認の訴えで争えない(最高裁平成26年7月17日判決)。改正後は、子・母・一定の場合の前夫にも嫡出否認権が認められ、原則的な出訴期間は3年である。子には一定の要件の下で21歳までの特則もある。申立権者、起算点、代理行使の可否及び例外を、裁判所の案内と適用される条文で確認する。

第5 戸籍・相談実務での手順

① 戸籍全部事項証明書、離婚・婚姻の各受理日、出生証明書を集め、婚姻日と出生日を別々に区切って適用法を特定する。推定が及ぶかは、前婚解消日から300日以内か、再婚の有無・時期、懐胎時の外形的事情を整理して判断する。

② 出生届をまだ出していない場合は、戸籍に載る父の見込みを戸籍窓口又は法務局に確認する。離婚後に懐胎したことが医師の証明書で明らかな場合など、嫡出推定が及ばないことが戸籍事務上明白なときには、裁判を経ずに元夫の子としない取扱いが可能な場合がある。詳しくは法務省の無戸籍に関するFAQを参照する。

③ 推定が及ぶ場合は嫡出否認、外形的事情により推定が及ばない場合は親子関係不存在確認など、手続の入口を分ける。家事調停の申立て、合意に相当する審判の可否、訴えの相手方と期間を事案ごとに確認する。裁判所の無戸籍者向け案内は手続の違いを説明している。

④ 国籍が絡む場合は準拠法を先に調べる。ここで述べた民法772条以下を全件に機械的に当てはめない。生物学上の父の認知、養子縁組、相続も別個に検討する。裁判で親子関係が争われている間も、私的なDNA鑑定の結果だけで戸籍を訂正したり相続人から除外したりしない。

第6 関連判例・記事と出典

法令:民法772条、774条、777条、778条の2及び令和4年法律第102号附則。改正の適用関係は法務省「民法等の一部を改正する法律について」及び同省「改正の概要」、平成28年改正は同省の案内で確認した。

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節税目的の養子縁組は無効か―最高裁平成29年1月31日判決と相続税上の養子数制限(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と結論第2 最高裁平成29年1月31日判決1 民法802条1号2 最高裁の判断3 動機と法律行為の意思を分ける第3 養子縁組の民法上の効果第4 相続税上の養子数制限1 民法上の相続人と相続税計算上の人数は同じとは限らない2 実子として扱われる養子がある3 相続税法63条による否認第5 孫養子と相続税額の2割加算第6 縁組意思をめぐる主張立証1 証拠化する事項2 意思能力と縁組意思は別に検討する第7 相続対策として検討する際の注意第8 出典・参考資料
第1 本記事の対象と結論

本記事は,相続税の節税を主な目的として行われた養子縁組が民法上無効となるかを,最高裁平成29年1月31日第三小法廷判決(平成28年(受)第1255号),現行民法及び相続税法から整理するものである。
法令及び国税庁資料の基準日は令和8年10月1日である。

最高裁は,節税の動機と縁組意思は併存し得るため,専ら相続税の節税目的で養子縁組をしたというだけで,直ちに民法802条1号の「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとはいえないとした。

もっとも,民法上の縁組が有効であることと,相続税計算で養子をどの範囲まで法定相続人の数に算入できるかは別問題である。
税務上は養子数の制限,相続税額の2割加算及び相続税法63条による否認可能性を分けて確認する必要がある。

第2 最高裁平成29年1月31日判決

1 民法802条1号

民法802条1号は,人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき,養子縁組を無効とする。
問題は,節税を目的とすることが,親子関係を作る意思と両立するかである。

2 最高裁の判断

最高裁は,養子縁組をすることによる相続税の節税効果を発生させることを動機として縁組をする場合でも,直ちに縁組意思がないとはいえず,節税の動機と縁組意思は併存し得るとした。
そして,専ら相続税の節税目的で縁組をしたというだけで,直ちに民法802条1号の無効事由に当たるとはいえないと判断した。

本判決は,「節税目的の養子縁組は常に有効」と判示したものではない。
個別の事実から当事者間に縁組意思がなかったと認められる場合は,同号による無効が問題となり得る。

3 動機と法律行為の意思を分ける

相続税額を下げたいという動機があっても,当事者が法律上の親子関係を成立させる意思を有していれば,両者は併存し得る。
逆に,届出の外形があり税務資料が作成されていても,当事者が親子関係を作る意思を欠いていたと立証されれば,縁組無効の余地は残る。

したがって,訴訟では「節税目的だったか」だけでなく,「届出時に法律上の親子関係を成立させる意思があったか」を,直接・間接事実から検討する。

第3 養子縁組の民法上の効果

民法809条は,養子が縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得すると定める。
そのため,普通養子は原則として養親の子として相続人となり,実親との親族関係も原則として残る。

養子縁組の有効性を検討するときは,縁組意思だけでなく,年齢,配偶者の同意,未成年者を養子とする場合の家庭裁判所の許可その他の成立要件を個別に確認する。
本判決は,これら他の要件を不要とするものではない。

第4 相続税上の養子数制限

1 民法上の相続人と相続税計算上の人数は同じとは限らない

相続税法15条2項は,遺産に係る基礎控除などの計算に用いる「相続人の数」について,一定の普通養子を算入できる人数を制限している。
国税庁の説明によれば,被相続人に実子がいる場合は1人まで,実子がいない場合は2人までが原則である。

この制限は,人数を超える養子縁組を民法上無効にする制度ではない。
養子が民法上の相続人であることと,相続税の基礎控除,生命保険金・死亡退職金の非課税限度額及び相続税総額の計算で何人を算入するかを分ける必要がある。

2 実子として扱われる養子がある

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国境を越えて連れ去られた子の意思と人身保護請求―情報環境・心理的影響と返還決定(AI作成)

目次

第1 結論
第2 最高裁平成30年3月15日判決
第3 年齢だけでは自由意思を判断できない
第4 情報環境と心理的影響を検討する
第5 人身保護請求における拘束と顕著な違法性
第6 ハーグ条約の返還決定との関係
第7 証拠収集と子への配慮
第8 申立て・防御のチェックリスト
第9 出典と確認範囲

国境を越えて連れ去られた子が同居親のもとに残りたいと述べていても,年齢と発言だけで自由意思による滞在と決めることはできません。最高裁平成30年3月15日判決は,子が多面的・客観的な情報を得ているか,同居親の心理的影響を受けていないかを具体的に検討しました。

第1 結論

子の意思を扱う実務では,次の三層を分けます。

子が言葉として何を述べているか。
その判断の前提となる情報が多面的・客観的だったか。
監護親への依存,情報遮断,反復説明その他の心理的影響により,発言が自由意思に基づかない状態になっていないか。

また,ハーグ条約実施法による子の返還手続は,監護権の最終的な帰属を決める手続ではありません。常居所地国へ子を返すかを判断する手続と,親権・監護権の本案を混同しないことが重要です。

第2 最高裁平成30年3月15日判決

最高裁判所第一小法廷平成30年3月15日判決は,国外への子の返還を命じる確定決定があるのに返還が実現していない事案で,人身保護請求の成否を判断しました。

最高裁は,意思能力のある子が監護親のもとにとどまる意思を示していても,子が自由意思に基づいてそこにいるとはいえない特段の事情があれば,監護親による「拘束」を認め得るとしました。そして,返還決定に従わない監護の継続について顕著な違法性を検討し,原審を破棄して差し戻しました。

第3 年齢だけでは自由意思を判断できない

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性別の取扱いの変更審判―生殖不能要件違憲決定後の要件・申立て・必要資料(AI作成)

目次

第1 最高裁令和5年10月25日大法廷決定の結論第2 現在の要件をどう読むか第3 外観要件は別問題である第4 申立人・管轄・費用第5 申立てに必要な書類第6 申立て前の確認手順第7 審判後の取扱い第8 実務上の注意点第9 出典と確認範囲

最高裁大法廷は,令和5年10月25日,性別の取扱いの変更審判について,生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠くことを求める要件を憲法13条に違反し無効と判断しました。ただし,外観要件まで多数意見が無効と判断したわけではありません。申立てでは,最高裁決定が無効とした要件,現在も裁判所案内に掲げられている要件,必要書類を分けて確認する必要があります。

第1 最高裁令和5年10月25日大法廷決定の結論

最高裁令和5年10月25日大法廷決定(令和2年(ク)第993号)は,性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号の生殖不能要件を,憲法13条に違反し無効としました。

この決定は,同じ4号の規定について「現時点では」憲法13条,14条1項に違反するものとはいえないとしていた最高裁平成31年1月23日第二小法廷決定(平成30年(ク)第269号,集民261号1頁)を変更したものです。

最高裁は,医学的知見の進展により,必要な治療を受けたかどうかが性別適合手術の有無だけで決まるものではなくなったと指摘しました。その上で,生殖腺除去手術を受けるか,性自認に従った法令上の性別の取扱いを受ける重要な法的利益を断念するかという過酷な二者択一を迫ることは,必要かつ合理的な制約ではないと判断しました。

条文が形式上残っていても,違憲無効とされた生殖不能要件を満たさないことを理由に性別変更審判を拒むことはできません。

第2 現在の要件をどう読むか

裁判所の「性別の取扱いの変更」案内は,令和8年10月1日現在,次の事項を掲げています。

2人以上の医師により,法律上の「性同一性障害者」に該当すると診断されていること
18歳以上であること
現に婚姻していないこと
現に未成年の子がいないこと
生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること

このうち5番目の生殖不能要件について,裁判所案内自体が,最高裁大法廷決定により憲法13条に違反し無効と判断されたと注記しています。実務では,単に条文又は古い書式を読むのではなく,この違憲無効判断を反映して要件を整理します。

第3 外観要件は別問題である

同法3条1項5号の外観要件は,「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること」を求めます。令和5年大法廷決定の多数意見は,原審がこの要件に関する申立人の主張を判断していなかったため,更に審理させる目的で事件を原審に差し戻しました。

反対意見には外観要件も違憲無効とする見解がありますが,多数意見の判断ではありません。現在の裁判所案内も外観要件を掲げています。そのため,「最高裁決定により性別適合手術に関する要件はすべてなくなった」と説明するのは正確ではありません。

外観要件への該当性,必要な医療資料及び申立先家庭裁判所の運用は,申立て時点で個別に確認します。令和5年大法廷決定後の差戻審や下級審実務を援用する場合は,報道や二次資料だけでなく,入手可能な裁判書本文で射程を確認する必要があります。

第4 申立人・管轄・費用

申立人:性別の取扱いの変更を求める本人です。

(続きを読む...)性別の取扱いの変更審判―生殖不能要件違憲決定後の要件・申立て・必要資料(AI作成)

財産分与審判で不動産の明渡しも命じられる場合―家事事件手続法154条2項4号と最高裁令和2年8月6日決定(AI作成)

第1 結論とこの記事の対象第2 最高裁令和2年8月6日決定の事案1 争われた点2 原審と最高裁の結論第3 明渡しを命じる法的根拠1 家事事件手続法154条2項4号2 財産分与を実効的にするための給付命令第4 命令できる場合とできない場合を分ける1 最高裁が示した場合2 当然に明渡しが命じられるわけではない3 第三者占有等は別に検討する第5 申立て・主張・証拠の組み立て1 対象不動産と占有関係を特定する2 分与の帰属と明渡しの必要性を一体で示す3 金銭給付・住宅ローン・明渡時期を調整する第6 審判後と強制執行を見据えた確認事項第7 関連記事第8 出典・確認状況

離婚後の財産分与審判で、夫婦の一方名義の不動産を他方が占有し、その不動産を占有者へ分与しないと判断される場合、家庭裁判所は、必要があると認めれば、占有者に対して名義人への明渡しを命じることができます。
最高裁令和2年8月6日第一小法廷決定は、明渡しは必ず民事訴訟で別に請求しなければならないという原審の理解を否定しました。ただし、財産分与審判をしただけで明渡命令が当然に付くという判断ではありません。

第1 結論とこの記事の対象

財産分与の対象、割合、金額の計算及び離婚後の請求期限を先に確認したい方は、財産分与とは?対象財産・計算方法・割合・請求期限を解説を参照してください。
この記事では、そのうち不動産の明渡しを財産分与審判で命じられる場合を説明します。

実務上の要点は、財産分与の対象・帰属・評価だけでなく、審判後に誰が不動産を占有し、どの給付を命じなければ判断した権利関係を実現できないかまで申立て段階から示すことです。

本記事は、離婚した当事者間の財産分与審判において、一方当事者名義の不動産を他方当事者が占有している場合を対象とします。賃借人、同居親族、会社その他の第三者が占有している場合や、所有権自体が第三者との間で争われている場合は、別の手続・当事者・請求原因を検討する必要があります。

第2 最高裁令和2年8月6日決定の事案
1 争われた点

抗告人と相手方は平成12年に婚姻し、平成29年に離婚しました。婚姻中に協力して得た財産として抗告人名義の建物等があり、その建物を相手方が占有していました。

財産分与の審判で、家庭裁判所がその建物を相手方へ分与しないと判断した場合に、家事事件手続法154条2項4号に基づいて、相手方に対し抗告人への建物明渡しを命じることができるかが争点となりました。

2 原審と最高裁の結論

原審は、明渡請求は所有権に基づくものとして民事訴訟で審理判断されるべきであり、家事審判では命じることができないとしました。

最高裁は、この判断を破棄し、東京高裁へ差し戻しました。財産分与の内容に沿った権利関係を実現するため必要と認められるときは、家庭裁判所が財産分与審判の中で明渡しを命じることができるとしたためです。

第3 明渡しを命じる法的根拠
1 家事事件手続法154条2項4号

家事事件手続法154条2項は、財産分与に関する処分の審判を含む一定の審判で、当事者に対し、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命じることができると定めています。

財産分与については、民法768条により、家庭裁判所が分与の額だけでなく方法も定めます。令和8年4月1日以後に離婚した場合は、離婚後に財産分与を求められる期間が原則5年となっており、同日前に離婚した場合の原則2年とは異なります。

2 財産分与を実効的にするための給付命令

最高裁は、財産分与審判が分与の要否・額・方法を定めるだけにとどまると、当事者は、その内容に沿った権利関係を実現するため、審判後に改めて給付訴訟等を提起しなければならないと指摘しました。

同号は、この迂遠な手続を避け、財産分与審判を実効的なものとする趣旨です。条文は、財産を他方へ分与する場合だけに給付命令を限定していません。そのため、他方当事者へ分与しない財産についても、判断した権利関係の実現に必要な給付を命じることができます。

第4 命令できる場合とできない場合を分ける
1 最高裁が示した場合

最高裁が明示したのは、①当事者双方が婚姻中の協力によって得た財産であり、②一方当事者の所有名義の不動産を、③他方当事者が占有し、④その不動産を他方当事者へ分与しないと判断した場合です。この場合に、その判断に沿った権利関係を実現するため必要と認められれば、他方当事者に名義人への明渡しを命じることができます。

2 当然に明渡しが命じられるわけではない

決定の文言は「命ずることができる」であり、「必ず命じなければならない」ではありません。明渡しの必要性、分与する金銭との関係、転居準備の要否、子その他の同居者の生活、合意や使用権原の有無など、個別事情に即した審理が必要です。

また、最高裁は原審を破棄して差し戻したものであり、自ら具体的な明渡時期や条件を定めたものではありません。破棄差戻しという手続結果と、差戻審での最終的な給付内容を混同しないことが必要です。

3 第三者占有等は別に検討する

同決定は、財産分与審判の当事者である元配偶者が占有していた事案です。第三者が独自の賃借権その他の権原を主張する場合、抵当権実行や任意売却が予定される場合、共有者がいる場合には、その第三者の手続保障と権利関係を別に検討します。

(続きを読む...)財産分与審判で不動産の明渡しも命じられる場合―家事事件手続法154条2項4号と最高裁令和2年8月6日決定(AI作成)

有責配偶者からの離婚請求―別居期間は何年なら認められるのか,最高裁平成2年11月8日判決から考える(AI作成)

目次

第1 昭和62年大法廷判決の基本枠組み
第2 最高裁平成2年11月8日判決
第3 別居年数だけでは決まらない
第4 判断の基準時は現在に近い
第5 離婚請求者側の主張立証
第6 相手方配偶者側の主張立証
第7 有責性と財産・生活保障を混同しない
第8 受任時のチェックリスト
第9 現行民法との関係
第10 出典及び確認状況

不貞行為や一方的な別居等によって婚姻関係の破綻について主として責任を負う配偶者から離婚を請求する場合,「別居が何年続けば離婚できるか」という質問を受けることが多い。しかし,最高裁判例は,別居期間だけで自動的に結論を出す年数基準を採用していない。

最高裁昭和62年9月2日大法廷判決が示した枠組みを前提に,最高裁平成2年11月8日判決は,原審が約8年の別居期間を短いとした判断を破棄し,口頭弁論終結時の事情を十分に審理すべきであるとした。重要なのは,別居年数,夫婦の年齢・同居期間,未成熟子の有無,離婚後の生活の苛酷性及び離婚請求者が行ってきた経済的配慮等を総合することである。

第1 昭和62年大法廷判決の基本枠組み

最高裁大法廷昭和62年9月2日判決・昭和61年(オ)第260号は,有責配偶者からの離婚請求であっても,夫婦が相当の長期間別居し,その間に未成熟の子が存在せず,相手方配偶者が離婚によって精神的,社会的又は経済的に極めて苛酷な状態に置かれる等の著しく社会正義に反する特段の事情がないときは,請求を認容し得るとした。

「相当の長期間」は固定された年数ではない。夫婦の年齢,同居期間,別居に至った経緯,別居後の交流及び生活関係等と比較して評価される。未成熟子がいるか否かも重要であるが,それだけが独立した機械的要件ではなく,子の監護・生活の実情を含む全体事情の中で検討される。

第2 最高裁平成2年11月8日判決

最高裁第一小法廷平成2年11月8日判決・平成元年(オ)第1039号は,有責配偶者である夫からの離婚請求について,原審が,別居期間約8年は同居期間及び当事者の年齢との対比で短く,請求は許されないと判断した事案である。

最高裁は,別居期間が約8年に及んでいること等を踏まえ,別居期間だけを形式的に比較して請求を排斥するのではなく,原審口頭弁論終結時における諸事情を審理判断すべきであるとした。そして,離婚により相手方配偶者が精神的,社会的又は経済的に極めて苛酷な状態に置かれるか等の点について審理が尽くされていないとして,原判決を破棄し,事件を原審へ差し戻した。

この判決は,「別居8年なら必ず離婚が認められる」としたものではない。最高裁は離婚を自判で認容せず,総合判断に必要な事実の審理が不足しているとしたのである。

第3 別居年数だけでは決まらない

別居期間は重要な事情であるが,開始日と年数を数えるだけでは足りない。次の事情を同じ時間軸に並べる必要がある。

① 婚姻日,同居期間及び実質的に共同生活が失われた時期
② 別居開始の経緯,別居を継続させた事情及び修復に向けた協議
③ 当事者の年齢,健康状態,就労能力及び収入
④ 未成熟子の年齢,監護状況,教育費及び親子交流

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国際養育費の請求と回収―準拠法・日本の裁判管轄・外国裁判の承認と強制執行(AI作成)

目次

第1 最初に決める四つの事項1 相手が国外へ移住した場合はどうするか第2 誰の権利を,どの手続で行使するか第3 日本の裁判所に国際裁判管轄があるか第4 養育費の準拠法を決める第5 外国の養育費裁判を日本で使う第6 日本の判断を外国で回収に使う場合第7 日本国内の財産から回収する場合第8 受任時にそろえる資料第9 関連記事第10 出典と調査範囲

国際的な養育費事件では,「どの国の法で支払義務を判断するか」が分かっても,直ちにお金を回収できるわけではない。誰が誰に請求するのか,日本の裁判所に管轄があるのか,既存の外国裁判を利用できるのか,債務者の財産がどの国にあるのかを順に確認する。本記事は,令和8年10月1日現在の日本法と裁判所の公開資料を基礎に,受任から回収までの判断順序を整理する。

第1 最初に決める四つの事項

最初に,①請求権者と相手方,②新たな取決め又は裁判が必要か,③日本と外国のどちらで裁判をし,どちらの財産から回収するか,④適用される法律と既存裁判の効力を記録する。国際裁判管轄,準拠法,外国裁判の承認,強制執行は別の判断である。日本法が準拠法となっても日本で裁判できるとは限らず,日本で裁判できても外国にある給与や預金を日本の執行手続だけで差し押さえることはできない。

1 相手が国外へ移住した場合はどうするか

海外へ移住したという事実だけでは,請求や回収の可否は決まらない。
養育費を定めた文書の有無,日本又は外国で請求するための管轄,適用される法,外国での承認・執行及び財産所在地を順に確認する必要がある。

外国の国内の徴収・立替制度が,日本に住む親子にも同じ条件で利用できるとは限らない。
また,日本は確認日現在の2007年ハーグ養育費条約の締約状況表(https://www.hcch.net/en/instruments/conventions/status-table/?cid=131)に締約当事者として掲載されていないため,相手国が締約国であることだけで中央当局間の経路を前提にしない。

各国の制度の役割を横断して比較したい場合は,養育費法制の国際比較を参照されたい。
本記事の第3以下では,個別の請求と回収に必要な法的段階を説明する。

第2 誰の権利を,どの手続で行使するか

離婚に伴い監護親が他方の親へ子の監護費用の分担を求める場合,子自身の扶養料請求権を行使する場合,既にある外国裁判に基づいて支払を求める場合では,権利者,申立人,必要な書類及び手続が異なる。受任時には,合意書,調停調書,審判書,判決書のどれがあるか,その文書で誰が債権者とされ,どの期間・金額の支払が命じられているかを先に読む。

扶養義務の準拠法に関する法律6条は,扶養権利者のためにその権利を行使できる者の範囲等を扶養義務の準拠法に委ねる。親権者や監護者であるというだけで,常に自己名義で子の扶養請求権を行使できると決めない。外国の親権・監護裁判の効力,子の手続行為能力,法定代理及び利益相反も区別して調べる。日本の家事事件での申立人は,監護費用分担の手続か子の扶養請求の手続かに応じて確認する。

第3 日本の裁判所に国際裁判管轄があるか

離婚訴訟に子の監護費用の分担に関する裁判を附帯して求める場合は,人事訴訟法3条の4を確認する。これとは別に養育費又は扶養について審判を求める場合,家事事件手続法3条の10は,申立人でない扶養義務者,又は扶養権利者(監護費用分担では子の監護者若しくは子)の住所が日本国内にあることを管轄原因とする。住所がないか知れないときは居所を確認する。調停の国際裁判管轄は同法3条の13,特別の事情による申立ての却下は同法3条の14で別に確認する。

ここでいう管轄の住所・居所と,後述する準拠法の連結点である常居所を混同しない。子が日本国籍であること,日本に一時滞在したことだけで日本の管轄を断定せず,住所の資料,転居の経緯,相手方の所在,証拠の所在地をそろえる。日本に国際裁判管轄があると分かった後も,どの家庭裁判所へ申し立てるかという国内の土地管轄を別に確認する。神戸家庭裁判所の案内も,離婚に伴う養育費の管轄と準拠法を分けて示している。

第4 養育費の準拠法を決める

親子間の扶養義務の準拠法は,親権等の親子関係を扱う通則法32条から直ちに決めず,扶養義務の準拠法に関する法律2条を確認する。扶養権利者の常居所地法が第一順位であり,その法によって扶養を受けられなければ当事者の共通本国法,それでも扶養を受けられなければ日本法へ進む。単に前順位法による金額が低いという理由で,次の法を自由に選べるわけではない。

子が重国籍の場合,扶養法には通則法38条1項のような国籍一本化規定がない。共通に有する国籍の法が共通本国法となり得ること,その判断が同法2条1項ただし書の解釈であることを確認する。扶養法2条2項は重国籍者の特則ではなく,日本法へ進むための規定である。外国法で扶養を受けられるかを判断する際は,成年年齢,教育中の子への扶養,障害,期間及び権利行使者を,条文の施行日とともに調べる。詳しくは国際扶養の準拠法を参照されたい。

第5 外国の養育費裁判を日本で使う

外国に養育費を命じる裁判があるときは,新たな日本の本案裁判を起こす前に,その裁判の確定性,給付を命じる部分,債権者・債務者,対象期間を確認する。家事事件手続法79条の2は,外国裁判所の家事事件についての確定した裁判等につき,性質に反しない限り民事訴訟法118条を準用する。同条の承認要件は,外国裁判所の裁判権,敗訴者への適法な呼出し又は応訴,内容と手続の公序,相互の保証である。外国で裁判を得たことだけで日本における効力を断定しない。

承認され得ることと,その裁判に基づき日本で強制執行できることも別である。民事執行法24条による執行判決の要否・管轄を確認する。家事事件の裁判に係る執行判決を求める訴えは,原則として家庭裁判所が管轄する。執行判決を得た後,国内の給与・預金等について債務名義に基づく執行を検討する。外国の文書が判決・審判・公的機関の判断のどれに当たるか,給付部分が確定しているかは,原文と外国法資料で確認する。

中国の人民法院の判決又は調解書に養育費の支払が定められている場合も,日本で当然に執行できるわけではない。
家事事件手続法79条の2,民事訴訟法118条及び民事執行法24条を確認し,身分関係の部分と金銭給付の部分を分けて検討する必要があるため,詳しくは中国の養育費(抚养费)の法制度―金額・支払終期・未払いと日中間の請求・執行を参照されたい。

フィリピンのFamily Courtその他の裁判所が養育費を命じた場合も,日本で当然に執行できるわけではない。
家事事件手続法79条の2,民事訴訟法118条及び民事執行法24条により,外国裁判所の裁判権,通知・応訴,公序,相互の保証,確定及び執行判決を確認する必要があるため,詳しくはフィリピン法の養育費―金額・請求時期・何歳まで・日比間の承認と執行を参照されたい。

第6 日本の判断を外国で回収に使う場合

債務者の給与や預金が外国にしかないときは,日本の調停調書や審判・判決を得るだけでは回収工程は終わらない。執行先国でその判断が承認又は執行の対象になるか,同国の手続,必要な確定証明・送達記録・翻訳及び現地代理人を確認する。日本の執行判決や差押命令を外国の財産へそのまま及ぼすとは説明しない。

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戸籍の名字の異字体を正字体に戻す方法―申出・氏の変更許可・戸籍訂正の区別(AI作成)

目次第1 結論―文字の関係によって手続が三つに分かれる1 最初に確認すべき三つの経路2 「異体字」という呼び方だけでは決められない理由第2 同じ字種の正字へ直す市区町村への申出1 申出で処理できる範囲2 自治体が示している具体例3 個別の文字を窓口で確認する方法第3 申出人,提出先及び変更の効果1 申出人と提出先2 一つの戸籍ごとの確認3 一度直した文字を元へ戻す場合第4 別の字種へ変える場合の氏の変更許可1 戸籍法107条の手続になる場合2 申立人,申立先,費用及び資料3 許可後の届出第5 現在の戸籍記載自体が誤っている場合の戸籍訂正1 市区町村長による戸籍法24条の訂正2 家庭裁判所の許可を得る戸籍法113条の訂正第6 手続を進める順序1 現在の文字と希望する文字を固定する2 本籍地へ確認する質問3 変更後に確認する事項第7 よくある疑問1 「髙」を「高」にする場合も申出だけで済むか2 正字へ直せば全ての名義が自動的に変わるか3 電子手続で異体字を入力できない問題とは同じか第8 まとめ第9 出典及び確認日1 法令2 裁判所及び自治体の公式案内3 行政研究資料及び文字情報

戸籍の名字に使われている異字体を一般的な正字へ直したい場合,最初から家庭裁判所へ申し立てるとは限りません。
現在の文字と希望する文字が戸籍実務上で同じ字種の対応関係にあれば,市区町村への申出で処理できることがあります。
別の字種への変更であれば氏の変更許可,現在の戸籍記載そのものが誤っていれば戸籍訂正が問題となるため,三つの経路を区別する必要があります。

第1 結論―文字の関係によって手続が三つに分かれる
1 最初に確認すべき三つの経路

戸籍の文字を正字へ直す手続は,おおむね次のように整理できます。
ただし,個々の文字がどの類型に当たるかは見た目だけでは決められないため,本籍地の市区町村に現在の一字と希望する一字を示して確認する必要があります。

確認結果主な手続主な窓口・根拠同じ字種の俗字・誤字・旧字体から対応する正字・通用字体へ直す場合市区町村長の職権訂正を促す申出又は更正の申出原則として本籍地の市区町村現在の氏の記載は正しいが,別の字種の氏へ変えたい場合氏の変更許可を得た後の届出戸籍法107条,住所地の家庭裁判所出生届などの原始資料と異なる文字が記載されたなど,現在の戸籍に錯誤・遺漏がある場合市区町村長による訂正又は家庭裁判所の許可を得た戸籍訂正戸籍法24条・113条
2 「異体字」という呼び方だけでは決められない理由

日常用語では,旧字体,俗字,誤字,別体,フォントのデザイン差及び外字をまとめて「異体字」と呼ぶことがあります。
しかし,戸籍実務では,その呼び方よりも,二つの文字が同じ字種に属する対応字であるか,異なる字種であるかが重要です。

戸籍の文字は法務省の通達や文字情報に基づいて扱われており,漢字辞典やパソコンの変換候補だけで手続を確定することはできません。
令和6年5月にも誤字俗字・正字一覧表の一部改正が公表資料で確認できるため,特定の文字の組合せは現在の窓口運用で確認するのが安全です。

第2 同じ字種の正字へ直す市区町村への申出
1 申出で処理できる範囲

戸籍に氏又は名が俗字等若しくは誤字で記載されており,対応する同じ字種の正字等へ直す場合は,市区町村長限りで文字を訂正できる取扱いがあります。
また,通用字体と異なる字体を通用字体へ改める更正の申出として扱われる場合もあります。

この申出は,新しい氏を自由に選ぶための届出ではありません。
市区町村長に対して,現在の戸籍文字と対応正字との関係を確認した上で職権訂正を求める手続であり,対応関係に疑義があれば法務局への照会が行われることがあります。

2 自治体が示している具体例

岸和田市の公式案内は,氏の文字である「澤」を「沢」に,「邊」を「辺」に直す例を,申出によって変更できる例として掲げています。
同案内は,誤字から正字,俗字から正字,旧字体から通用字体への変更が可能である一方,「埜」から「野」のように字種・字体が全く異なる文字への変更は氏又は名の変更になると説明しています。

豊川市の公式案内も,誤字や俗字を正しい字に訂正でき,旧字体を対応する新字体へ訂正できると案内しています。
鹿嶋市の公式案内は,「濱」などの旧字体を正字又は通用字体へ直す申出を例示しています。

3 個別の文字を窓口で確認する方法

相談時には,「異体字を普通の字にしたい」とだけ伝えるのではなく,①戸籍全部事項証明書に記載された現在の文字,②希望する文字,③その文字が記載された経緯,④筆頭者と配偶者の状況を示すと,手続の分類を確認しやすくなります。
細かなはね,点,線の長短などはフォントによって見え方が変わるため,戸籍証明書の字形と希望字形を紙面で並べて示すのが実務的です。

法務省の「戸籍統一文字情報」は文字を調べる手掛かりになりますが,検索結果だけで申出の可否が決まるわけではありません。
最終的には,本籍地の市区町村が現行の通達・一覧表に照らして判断します。

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親子交流は調停と審判のどちらで決めるか―間接強制ができる定め方,試行的実施及び統計(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象とする場面2 結論の要点第2 親子交流を定める手続1 協議,調停及び審判2 交流の試行的実施第3 調停と審判の終わり方1 全国の統計(令和7年)2 東京家庭裁判所の説明第4 間接強制ができる定め方(最高裁平成25年3月28日決定)1 判断基準2 間接強制が認められた定め(平成24年(許)第48号)3 間接強制が認められなかった定め4 子が交流を拒んでいる場合第5 取決めが守られないときの手段1 履行勧告2 間接強制3 定めの変更第6 調停で決めるか審判で決めるか1 調停で決める場合の注意点2 審判を求める場合の注意点第7 関連記事第8 出典1 法令2 裁判例3 統計・裁判所の資料
第1 この記事の対象と結論
1 対象とする場面

本記事は,別居や離婚によって子と離れて暮らす親と子との交流(親子交流)を,家庭裁判所の調停で決めるか審判で決めるかを考える際に,知っておくべき法令,最高裁の判断及び統計を整理する。
令和6年の民法等の改正(令和6年法律第33号。令和8年4月1日施行)により,民法766条1項の「父又は母と子との面会及びその他の交流」は「父又は母と子との交流」と改められ,裁判所の手続案内でも「親子交流調停」の語が用いられている。
本記事の統計と裁判例は改正前のものであり,そこでは「面会交流」の語が使われているので,引用する箇所ではその語をそのまま用いる。

以下,最高裁の決定にならい,子を監護している親を「監護親」,子を監護していない親を「非監護親」という。
本記事の条文は,令和8年9月28日時点の現行法をe-Gov法令検索で確認した。

2 結論の要点

①令和7年に全国の家庭裁判所で終局した面会交流の事件1万2135件のうち,調停成立は6508件(53.6%),審判による認容は1495件(12.3%)であった。
②調停調書でも審判でも,面会交流の日時又は頻度,各回の時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められ,監護親がすべき給付が特定されていれば,間接強制ができる(最高裁平成25年3月28日決定)。
③最高裁は同時に,面会交流は柔軟に対応できる条項に基づき,監護親と非監護親の協力の下で実施されることが望ましいとも述べている。
そのため,取決めでは,協力による柔軟な実施と,守られない場合に備えた特定とをどう両立させるかが問題になる。
④改正法により,審判事件と調停事件で家庭裁判所が当事者に交流の試行的実施を促す規定が設けられた(家事事件手続法152条の3,258条3項)。
⑤取決めが守られないときは,履行勧告,間接強制,定めの変更の申立てを使い分けることになる。

第2 親子交流を定める手続
1 協議,調停及び審判
(1) 民法の定め

民法766条1項は,父母が協議上の離婚をするときは,「子の監護をすべき者又は子の監護の分掌、父又は母と子との交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」と定める。
同条2項は,協議が調わないとき又は協議をすることができないときは,家庭裁判所が同項の事項を定めるとする。
離婚前の別居中の交流など,766条の場合のほかの交流については,民法817条の13第1項・2項が,父母の協議で定め,協議が調わないときは家庭裁判所が父又は母の請求により定めるとしている。
祖父母等の父母以外の親族と子との交流は,祖父母等と子との交流―最高裁令和3年3月29日決定と民法766条の2で扱っている。

(2) 調停から審判へ

家庭裁判所の手続は,通常,親子交流調停の申立てから始まる。
裁判所の「親子交流調停」の案内は,「話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には審判手続が開始され、裁判官が、一切の事情を考慮して、判断(審判)をすることになります。」と説明している。
家事調停の申立てから終了までの流れは,家事調停の申立て,進行,ウェブ会議及び終了後の手続で扱っている。

2 交流の試行的実施

家事事件手続法152条の3第1項は,「家庭裁判所は、子の監護に関する処分の審判事件(子の監護に要する費用の分担に関する処分の審判事件を除く。)において、子の心身の状態に照らして相当でないと認める事情がなく、かつ、事実の調査のため必要があると認めるときは、当事者に対し、子との交流の試行的実施を促すことができる。」と定める。
同条2項により,家庭裁判所は,交流の方法,日時,場所,家庭裁判所調査官その他の者の立会いの有無を定め,子の心身に有害な影響を及ぼす言動の禁止等の条件を付けることができ,同条3項により,結果の報告を求めることができる。
この規定は,子の監護に関する処分の調停事件(養育費に関するものを除く。)と離婚調停事件に準用される(同法258条3項)。

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国際扶養の準拠法―常居所地法・共通本国法・日本法(AI作成)

目次第1 扶養は独立して準拠法を決める第2 三段階の連結第3 成年年齢との関係第4 重国籍と共通本国法第5 実務上の確認事項第6 出典

国際的な親子間の扶養料請求では,親権者,法定代理人,子の成年年齢及び扶養義務の準拠法を分けて考える必要がある。本記事は,扶養義務の準拠法に関する法律を中心に,令和8年9月28日現在の日本法を整理する。

第1 扶養は独立して準拠法を決める

親権等の親子間の法律関係は法の適用に関する通則法32条によるが,扶養義務については同法43条1項により同条の適用が除外され,特別法である「扶養義務の準拠法に関する法律」による。子の国籍法が成年年齢を16歳とすることや,一方の親が単独親権者であることだけで,扶養請求の準拠法と結論を決めることはできない。

第2 三段階の連結

扶養義務の準拠法に関する法律2条1項本文は,扶養権利者の常居所地法を第一順位とする。同法によって扶養を受けられないときは,当事者の共通本国法を第二順位とする。同項ただし書及び2項により,これらの法によっても扶養を受けられないときは日本法による。

この段階的連結は,第一順位の法を適用した結果が不利なら自由に次の法を選べる制度ではない。「扶養を受けることができない」場合に限って次順位へ進む。扶養の要件,権利者・義務者の範囲,程度,期間,変更・消滅等を各準拠法について確認する必要がある。

第3 成年年齢との関係

外国法が親の扶養義務を「未成年子」に限り,成年年齢を16歳と定める場合でも,16歳以上の子が扶養を受けられないと直ちに結論づけない。「未成年子」の該当性を扶養準拠法の実体要件として判断するのか,別個の先決問題として子の本国法等により判断するのかを検討する。前者の構成で扶養が認められなければ扶養法2条の次順位法を確認し,後者の構成なら別に定まる成年年齢と扶養準拠法上の要件を組み合わせて検討する。外国法が具体的な年齢を定めるのか,「未成年者」という概念を用いるのかも条文と解釈資料で確認する。

子の扶養請求権の存否,子のために権利を行使できる者,親権・法定代理権及び日本の裁判所での手続行為能力は,問題ごとに分けて確認する。扶養法6条は,扶養権利者のために権利を行使できる者の範囲等を扶養義務の準拠法に委ねる。親権等の親子間の法律関係には通則法32条が関わり,日本での申立ての方式や手続上の代理には日本の手続法も関わる。日本国籍を含む重国籍者の本国法を通則法によって決める場面では,同法38条1項ただし書も確認する。

第4 重国籍と共通本国法

扶養義務には通則法38条1項の国籍一本化規定をそのまま適用せず,扶養法にも同様の規定はない。扶養法2条1項ただし書の「当事者の共通本国法」は,両当事者が共通に国籍を有する国があればその国の法を指すと解される。これは同項ただし書の解釈であり,扶養法2条2項に重国籍者の特則があるわけではない。同条2項は,先順位の法によっても扶養を受けられない場合に日本法を適用する規定である。

例えば,子が日本国籍と甲国籍を有し,父が甲国籍だけを有する場合,共通本国法として甲国法が第二順位になり得る。子が日本国籍を含むため能力について日本法が本国法になることと,扶養の第二順位に甲国法が現れることは矛盾しない。問題ごとに適用法令が異なるためである。

第5 実務上の確認事項

①扶養権利者・義務者の国籍と重国籍の組合せ。
②権利者の常居所地。短期滞在先と生活の本拠を区別する。
③第一順位法で扶養を受けられるか。年齢だけでなく,教育中の子,障害のある成年子等の規律も調べる。
④共通本国法の有無と,重国籍者が共通に有する国籍。
⑤日本法に進む要件を満たすか。
⑥扶養法6条による権利行使者,親権・法定代理,利益相反,外国の親権・監護裁判の承認を分けて確認する。
⑦外国法の条文,判例,運用及び日本語訳を提出できる形で準備する。

請求・回収までの手順は、関連記事「国際養育費の請求と回収―準拠法・日本の裁判管轄・外国裁判の承認と強制執行」を参照されたい。

中国法が準拠法となる場合,最高人民法院の婚姻家庭編解釈(一)49条は,子の実際の必要,父母双方の負担能力及び現地の実際の生活水準から養育費を定め,固定収入がある場合の20~30%を一般的な基準とする。
この割合を機械的な定額とせず,支払終期,教育費・医療費,増額及び日中間の承認・執行も分けて確認する必要があるため,詳しくは中国の養育費(抚养费)の法制度―金額・支払終期・未払いと日中間の請求・執行を参照されたい。

扶養権利者である子の常居所がフィリピンにある場合,扶養義務の準拠法に関する法律2条1項本文により,まずフィリピン法による扶養請求の可否を検討する。
子又は親がフィリピン国籍であることだけで当然にフィリピン法が適用されるわけではなく,常居所を先に確定する。
フィリピン家族法194条・201条~203条は,養育費の費目,義務者の資力と権利者の必要に応じた金額,増減及び請求時期を定め,成年後の教育費も問題となるため,詳しくはフィリピン法の養育費―金額・請求時期・何歳まで・日比間の承認と執行を参照されたい。

例えば,イギリスの養育費のうちイングランド及びウェールズ法では,CMSの常居所要件とFamily Courtの権限を区別し,Children Act 1989 Schedule 1は定期金,一時金及び財産に関する命令を定める。
CMSと裁判所の対象年齢は同じではないため,詳しくはイギリスの養育費の法制度―CMSの計算・対象年齢・不払い・日本からの請求を参照されたい。

(続きを読む...)国際扶養の準拠法―常居所地法・共通本国法・日本法(AI作成)

国際親子関係の準拠法―嫡出推定・嫡出否認・重国籍・出訴期間(AI作成)

目次第1 準拠法を決める単位第2 嫡出親子関係の成立第3 嫡出否認第4 重国籍者の本国法第5 実務上の確認事項第6 出典

国際的な親子関係では,DNA上の父子関係だけでなく,どの国の法が嫡出推定を置き,誰が,どの方法・期間で否認できるかを確定しなければならない。本記事は,令和8年9月28日現在の法の適用に関する通則法を基礎に整理する。

第1 準拠法を決める単位

離婚の準拠法,嫡出親子関係の成立・否認の準拠法,認知の準拠法,親権等の親子間の法律関係の準拠法は同じとは限らない。離婚が成立した国又は親子関係を争う裁判所の所在地だけで準拠法を決めてはならない。

第2 嫡出親子関係の成立

通則法28条1項は,夫婦の一方の本国法で,子の出生時に子が嫡出となるべきときは,その子を嫡出である子とする。夫と妻のいずれか一方の本国法が嫡出性を認めれば足りる選択的連結であり,子の身分の安定を図る規定である。

どの期間に生まれた子を夫の子と推定するか,推定が及ばない場合があるかは,この準拠法によって判断する。出生時の夫婦双方の国籍を確認し,それぞれの国の嫡出推定規定を調査する必要がある。

第3 嫡出否認

嫡出否認は嫡出推定と表裏の関係にあるため,通則法28条の問題と解される。双方の本国法が子を嫡出とする場合,嫡出性を否定するには,原則として双方の法により否認が可能でなければならないと解されている。否認権者,否認原因,権利行使期間とその起算点,推定の及ばない子の扱いは,指定された法の内容を確認する。他方,日本の裁判所に訴える場合の訴状・送達等の手続は日本の手続法に従うため,外国法上の権利行使要件と日本の訴訟手続を分ける。

例えば,一方の法が母にも否認権を認め,出生を知った時から90日以内と定め,他方の法が母又は子にも否認権を認めて3年の期間を定めるときは,誰がいつ提訴したかを両法について検討する。片方の法の期間だけを満たしても,もう片方の法による嫡出性が残れば,否認請求が認められないことがある。

日本法については,令和4年法律第102号による改正後の民法772条以下と経過措置を確認する。現在の民法777条は原則3年の出訴期間を定めるが,出生時期によって改正前法が適用される可能性がある。

第4 重国籍者の本国法

通則法38条1項は,当事者が二つ以上の国籍を有するとき,原則として常居所を有する国が国籍国の一つであればその国の法を本国法とし,そうでなければ最も密接な関係がある国の法を本国法とする。ただし,日本国籍を含む重国籍者については日本法を本国法とする。

したがって,日本国籍と外国国籍を有する子又は親については,外国に常居所があっても,通則法上の本国法は日本法となる。ただし,扶養義務の準拠法については別の「扶養義務の準拠法に関する法律」が適用されるため,通則法38条をそのまま当てはめない。

第5 実務上の確認事項

①出生時の父母の婚姻関係と国籍,重国籍の有無。
②出生証明書,戸籍,婚姻・離婚の成立日。
③各国法の嫡出推定期間,否認権者,出訴期間及び起算点。
④外国法上の裁判手続と,日本の人事訴訟・家事事件の国際裁判管轄。
⑤反致を扱うときは通則法41条の要件とただし書の適用除外を確認する。試験問題が反致の検討を不要と指定している場合は,その指定を答案に明示する。当事者の契約だけで親子の身分関係の抵触規則を排除したと扱わない。
⑥日本法の改正前後を分けるための出生年月日。

第6 出典

①e-Gov法令検索「法の適用に関する通則法」28条,29条,30条,38条,41条。
②e-Gov法令検索「民法」772条~778条の2。
③e-Gov法令検索「人事訴訟法」。
④法務省「無戸籍でお困りの方へ・よくある御質問」。
⑤小出邦夫編著『一問一答 新しい国際私法』(商事法務,平成18年)138頁~140頁(設問135・136)。
⑥東京家庭裁判所令和3年1月4日審判(令和2年(家イ)第8523号。裁判所ウェブサイト未掲載)。判例の位置付けは北澤安紀「嫡出否認に関する準拠法」令和4年度重要判例解説283頁以下で確認した。

未成年子による扶養料請求の法定代理と利益相反―単独親権・共同親権・特別代理人の実務(AI作成)

目次

第1 結論
第2 最初に区別すべき二つの請求
第3 未成年の子に手続行為能力はあるか
第4 誰が法定代理人になるか
第5 相手方と親権者の組合せによる類型別整理
第6 四つの「代理人」を区別する
第7 兄弟姉妹・並行請求・和解における利益相反
第8 共同親権施行後の注意点
第9 申立前の実務チェックリスト
第10 子の意思の把握
第11 国際扶養事件では準拠法を別に確認する
第13 まとめ

◯以下の記事も参照してください。
・ 父母間の養育費合意は子自身の扶養料請求を妨げるか―免除条項・事情変更・二重請求の整理(AI作成)
・ 親と未成年の子の利益相反と特別代理人―遺産分割・相続放棄・担保提供の判断基準と代理権の濫用(AI作成)
・ 訴訟能力,訴状等の受送達者,審判前の保全処分及び特別代理人(AIリライト)

第1 結論

未成年の子が父又は母に民法877条以下の扶養料を請求する場合,申立人は子であり,金銭給付を求める通常の扶養請求では,子は法定代理人を通じて手続を行うのが原則である。子と同居している,日常の監護をしている,又は離婚時に監護者と定められたというだけで,その親に当然に法定代理権が生じるわけではない。まず親権者又は未成年後見人を確認する必要がある。

次に,法定代理人となるべき者と子との間に利益相反がないかを確認する。典型例は,子が扶養料を請求する相手方自身が親権者である場合である。この場合,その親が子を代理して自分を相手に申し立てることはできず,民法826条の特別代理人が問題となる。共同親権者の一方だけが相手方である場合も,「他方の親だけで足りる」と即断せず,非利益相反の親と特別代理人との共同代理の要否を検討する。

弁護士を選任しても,その前提となる法定代理権の欠缺又は利益相反が当然に治癒されるわけではない。また,民法826条の特別代理人,家事事件手続法19条の手続上の特別代理人及び同法22条・23条の手続代理人は,根拠・選任主体・権限が異なる。

第2 最初に区別すべき二つの請求

請求権利主体・当事者主な根拠通常の申立人

(続きを読む...)未成年子による扶養料請求の法定代理と利益相反―単独親権・共同親権・特別代理人の実務(AI作成)

子の引渡しの間接強制と権利濫用―最高裁平成31年決定と令和4年決定の違い(AI作成)

第1 結論第2 子の引渡しを実現する手続1 子の引渡しを命ずる審判と強制執行2 間接強制と直接的な引渡しの実施3 人身保護請求とは区別する第3 最高裁平成31年4月26日決定1 事案の経過2 最高裁の判断3 射程第4 最高裁令和4年11月30日決定1 事案の経過2 最高裁の判断3 宇賀克也裁判官の補足意見第5 二つの決定の違い第6 申立て・抗告で確認する事項1 拒絶の言葉だけで結論を出さない2 時系列と働き掛けを具体化する3 手続ごとの判断対象を混同しない第7 関連記事第8 出典
第1 結論

子が引渡しを拒んでいることは,子の引渡しを命ずる審判を債務名義とする間接強制を直ちに妨げる理由にはなりません。
もっとも,直接的な引渡しの実施が子の心身への重大な悪影響のおそれを理由に不能となり,人身保護請求でも子が自由意思に基づいて現在の監護者の下にとどまっていると判断された後に,金銭の支払で監護者を心理的に圧迫することは,過酷な執行として権利濫用となることがあります。

最高裁平成31年4月26日決定・平成30年(許)第13号は,先行する引渡執行と人身保護請求の具体的な経過を踏まえて,間接強制の申立てを権利濫用としました。
これに対し,最高裁令和4年11月30日決定・令和3年(許)第17号は,審判確定後約2か月の間に子が2回拒絶したにとどまる事案で,権利濫用とした原決定を破棄しました。

二つの決定は,子の拒絶意思を重視するか否かという抽象的な対立ではありません。
子の拒絶の現れ方,子への影響,先行手続の結果,現在の監護者が引渡しのためにした働き掛けなどを,具体的な時系列に沿って比較した判断です。

第2 子の引渡しを実現する手続
1 子の引渡しを命ずる審判と強制執行

家庭裁判所が子の監護者を定め,現在の監護者に子の引渡しを命じても,審判の確定だけで現実の監護が移るわけではありません。
任意の引渡しが実現しないときは,確定審判等を債務名義として強制執行を申し立てることになります。

強制執行の場面でも,子は単なる物ではありません。
引渡しを命じられた者は,子の年齢,発達の程度その他の事情を踏まえ,子の心身に有害な影響を及ぼさないよう配慮しつつ,合理的に必要な行為をして引渡しを実現する義務を負います。

2 間接強制と直接的な引渡しの実施

民事執行法174条1項は,子の引渡しの強制執行について,①執行裁判所が執行官に子の引渡しを実施させる方法と,②同法172条1項の間接強制の方法を定めています。

間接強制は,債務者が一定期間内に引渡しをしないとき,遅延期間に応じた一定額の金銭を債権者に支払うよう命じ,心理的な圧力によって履行を促す方法です。
執行官による引渡しの実施は,間接強制決定の確定後2週間が経過した場合,間接強制をしても監護を解く見込みがない場合,又は子の急迫の危険を防止するため直ちに執行する必要がある場合のいずれかで申し立てることができます。

間接強制と執行官による引渡しの実施は,申立要件,執行の方法及び子への影響が異なります。
一方の手続で生じた事情を他方で援用するときは,いつ,誰が,何を観察し,どの理由で手続が終わったのかを明確にします。

3 人身保護請求とは区別する

人身保護請求は,現在の監護が人身保護法上の拘束に当たり,その拘束が顕著に違法であるかなどを審理する別の手続です。
子の引渡しの審判,強制執行及び人身保護請求では,判断対象と判断時点が同じではありません。

もっとも,先行する人身保護請求で子の判断能力,意思の強固さ,現在の監護者からの影響の有無が具体的に審理された場合,その認定経過は,後の間接強制が過酷な執行となるかを判断する重要な事情になり得ます。

第3 最高裁平成31年4月26日決定
1 事案の経過

最高裁平成31年4月26日決定の事案では,家庭裁判所が母を3人の子の監護者と指定し,父に子らの引渡しを命じる審判が確定しました。
執行官による引渡しの際,二男と長女は母へ引き渡されましたが,当時9歳3か月の長男は明確に拒絶して泣きじゃくり,呼吸困難に陥りそうになりました。執行官は,執行を続けると長男の心身に重大な悪影響を及ぼすおそれがあるとして,長男について執行不能で終了しました。

その後,母は父らを拘束者として人身保護請求をしました。
長男は,当時9歳7か月で,弟妹と離れて暮らすのは嫌であるものの父らの下での生活を続けたいと述べました。裁判所は,長男が十分な判断能力に基づく強固な意思を明確に表示し,その意思は父らの影響によるものではなく自由意思であるとして,人身保護請求を棄却しました。

2 最高裁の判断

最高裁は,子が引渡しを拒絶する意思を表明していることは,直ちに間接強制を妨げる理由ではないという一般論を示しました。
しかし,本件では,引渡執行が子の心身への重大な悪影響のおそれを理由に不能となり,人身保護請求でも自由意思に基づく強固な拒絶意思が認定されていました。

最高裁は,この経過の下では,子の心身に有害な影響を及ぼさずに引渡しを実現するため父がすべき合理的な行為を具体的に想定することは困難であるとしました。
父に1日1万円の支払を命じて心理的に圧迫することは過酷な執行であり,間接強制の申立ては権利濫用に当たるとして,申立てを却下しました。

3 射程

この決定は,子が拒絶すれば間接強制はできないという一般ルールを定めたものではありません。
直接的な引渡しの実施で身体的不調が現れ,その後の人身保護請求で自由意思に基づく強固な意思が認定されたという,積み重なった事情の下での判断です。

第4 最高裁令和4年11月30日決定
1 事案の経過

最高裁令和4年11月30日決定の事案では,家庭裁判所が母を子らの監護者と指定し,父に引渡しを命じる審判が令和3年3月29日に確定しました。
同年4月5日,二男は母へ引き渡されましたが,長男は約2時間の説得にも応じず,母の下に行くと父に会えなくなると述べ,母を押しのけるなどして拒絶しました。

同年5月30日の弟との面会時にも,長男は母の姿を見て反発し,母に抱かれることを拒み,泣きながら父宅へ帰ることを強く求めました。
母は同年6月9日に間接強制を申し立て,原々審は,父に長男を引き渡すよう命じるとともに,履行しないときは1日2万円を支払うよう命じました。

2 最高裁の判断

(続きを読む...)子の引渡しの間接強制と権利濫用―最高裁平成31年決定と令和4年決定の違い(AI作成)

祖父母等と子との交流―最高裁令和3年3月29日決定と民法766条の2(AI作成)

◯以下の記事も参照してください。
・ 離婚に関するメモ書き
・ 家事調停に関するメモ書き
・ 平成21年度から令和6年度までの許可抗告事件の分析(AI作成)
・ 平成21年度から令和6年度までの最高裁民事破棄判決の分析(AI作成)

目次

第1 結論の要点
第2 最高裁令和3年3月29日決定(旧法)

1 祖父母と子との面会交流
2 祖母を監護者に指定する申立て
3 二つの決定を混同しないこと

第3 令和8年施行の民法766条の2

1 原則は父又は母による申立て
2 親族自身が申し立てられる場合
3 交流を定める実体要件

第4 申立てと立証の実務

1 最初に確認する事項
2 子の利益に関する資料
3 申立先・費用・書類

(続きを読む...)祖父母等と子との交流―最高裁令和3年3月29日決定と民法766条の2(AI作成)