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親族法・家事事件

日常家事代理と表見代理―配偶者の代理権,信頼の対象と契約前の確認事項(AI作成)

目次

第1 配偶者の代理人として契約するときの検討順序第2 日常家事代理権と夫婦の財産の帰属1 民法761条の責任と代理権2 婚姻と個別の財産処分の権限は分ける第3 日常家事の範囲は目的だけで決まらない1 夫婦ごとの生活状況と行為の種類・性質2 代金の使途と財産処分の性質を別に確認する第4 権限を越えた行為と信頼の対象1 110条の一般的な検討と区別する2 日常家事の範囲内だと信じた理由を検討する3 実印や委任状の資料としての役割第5 契約前に整理する資料と確認事項1 確認する問いと資料を対応させる2 本人への確認と条件の明確化第6 無断で契約された本人が確認する事項第7 出典・関連記事と確認範囲1 法令・裁判例2 関連記事
第1 配偶者の代理人として契約するときの検討順序

夫婦の一方が,他方の代理人として契約する場面では,配偶者であること,実印や印鑑登録証明書を持っていること,個別の契約について代理権を与えられていることを分けて確認する必要がある。
特に,日常の家事に関する代理権だけを根拠とする場合,権限を越えた行為について問題となる信頼の対象は,その行為が当該夫婦の日常家事の範囲に属することである。個別の代理権があると信じた理由だけで,この問いを置き換えることはできない。

本記事は,現行民法と最高裁昭和44年12月18日第一小法廷判決の判断枠組みに基づき,契約の相手方と,無断で契約された本人の双方が確認する事項を整理するものである。登記手続を任せた場合など,日常家事とは別の基本代理権がある場面は,後掲の関連記事で扱う。

第2 日常家事代理権と夫婦の財産の帰属
1 民法761条の責任と代理権

民法761条本文は,夫婦の一方が日常家事について第三者と法律行為をした場合に,そこから生じた債務を他方も連帯して負担すると定める。ただし,第三者に責任を負わない旨を予告した場合の例外も,同条ただし書に置かれている。
昭和44年判決は,同条が責任を定めるだけでなく,夫婦が日常家事に関する法律行為について相互に他方を代理する権限も定めていると解した。

もっとも,日常家事債務の連帯責任と,他方の代理人としてした契約の効力は,検討する問いが異なる。誰を契約当事者として表示したか,どの債務の負担又はどの財産の処分が問題なのかを最初に確定する必要がある。

2 婚姻と個別の財産処分の権限は分ける

民法762条1項は,婚姻前から有する財産と,婚姻中に自己の名で得た財産を,その夫婦の一方の特有財産とする。同条2項の帰属不明財産の共有推定も別の規律である。
したがって,婚姻関係だけから,相手の名義の財産を処分する一般的な代理権を導くことはできない。財産の帰属,日常家事の範囲,個別に与えられた代理権を分けて調べることになる。

第3 日常家事の範囲は目的だけで決まらない
1 夫婦ごとの生活状況と行為の種類・性質

昭和44年判決は,共同生活を営む上で通常必要な法律行為を日常家事とし,具体的な範囲は,夫婦の社会的地位,職業,資産,収入,地域の慣習などによって異なるとした。
同時に,内部的な生活事情や個別の目的だけで判断せず,行為の種類・性質も客観的に考慮する必要があるとした。第三者の保護を目的とする規定であるためである。

2 代金の使途と財産処分の性質を別に確認する

契約によって得た金銭を生活のために使うという説明と,その契約行為自体が通常の共同生活に必要な行為かという評価は,同じではない。
実務では,使途だけでなく,処分する財産の種類,契約の内容・金額,その夫婦の生活との関係を整理することが有用である。これは判決の判断要素を契約確認へ落とし込んだ実務上の整理であり,一定額を越えると日常家事ではなくなるという一律の基準を示すものではない。

第4 権限を越えた行為と信頼の対象
1 110条の一般的な検討と区別する

民法110条は,代理人が権限外の行為をした場合でも,相手方にその代理人の権限があると信じる正当な理由があれば,110条が準用する109条1項本文の効果を認める規定である。
しかし昭和44年判決は,日常家事代理権を基礎に,広く一般的に110条の表見代理を認めることは,夫婦の財産的独立を損なうおそれがあるとして否定した。

2 日常家事の範囲内だと信じた理由を検討する

判決が示したのは,日常家事とは別の代理権が授与されていない場合に,相手方が当該行為をその夫婦の日常家事の範囲内だと信じる正当な理由があるときに限り,110条の趣旨を類推して保護するという枠組みである。
したがって,この類推の場面では,個別の処分について代理権があると信じたことと,行為が日常家事に属すると信じたことを分ける必要がある。正当な理由の判断では,どちらの信頼を,どの資料が支えているかを明確にする。

3 実印や委任状の資料としての役割

実印,印鑑登録証明書,委任状等が示されたときは,誰が,どの目的で交付・作成し,どの権限を示すものなのかを確認する必要がある。
それらが個別の代理権の存在を検討する資料になることと,処分行為の種類・性質が日常家事に変わることは別である。反対に,資料の内容から実際の授権を認められる場合まで,日常家事の範囲だけで処理するべきではない。

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こども性暴力防止法とは―日本版DBSの対象・義務・令和8年12月25日の施行準備(AI作成)

目次

第1 こども性暴力防止法の結論と基準日1 令和8年12月25日に施行される2 対象事業・対象従事者・措置の三つを分けて確認する3 本記事の確認基準日は令和8年10月8日である第2 対象事業者は二つの仕組みに分かれる1 学校設置者等は法律上の義務対象である2 民間教育保育等事業者には認定制度がある3 業務委託先や施設利用者も契約関係だけで決めない第3 誰が犯罪事実確認等の対象になるか1 支配性・継続性・閉鎖性の三要件が中心になる2 正規職員だけが対象になるわけではない3 対象者リストは職名簿ではなく業務台帳として作る第4 事業者に求められる主な措置1 未然防止のための行動基準と研修を整える2 相談・報告と早期把握の経路を作る3 犯罪事実確認と防止措置を採用・配置に接続する4 疑いが生じたときは安全確保・調査・支援を分ける5 犯罪事実確認記録等を厳格に管理する第5 令和8年12月25日までの準備1 制度周知と責任者の指定2 不適切な行為と対象従事者の範囲を確定する3 就業規則・募集要項・契約書を見直す4 相談・報告・事案対応の規程と研修を整える5 情報管理規程と技術的措置を実装する第6 採用・労務管理で誤りやすい点1 一般的な犯罪歴調査の制度ではない2 情報の確認と人事上の判断を分ける3 「該当者はいない」という人数情報も外部へ自由に出せない第7 施行準備の最終確認表1 事業・従事者の範囲2 規程・人事・研修3 犯罪事実確認・情報管理第8 出典・確認範囲1 法令2 こども家庭庁の資料3 個別判断で追加確認が必要な事項
第1 こども性暴力防止法の結論と基準日
1 令和8年12月25日に施行される

こども家庭庁が「こども性暴力防止法」と呼んでいる制度は,「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(令和6年法律第69号)である。
同法は令和6年6月19日に成立し,同月26日に公布され,令和8年12月25日に施行される。
「日本版DBS」はこの制度の通称として用いられるが,犯罪事実確認だけでなく,日常の未然防止,早期把握,疑いが生じた場合の調査・保護・支援及び情報管理までを一体として整える法律である。

2 対象事業・対象従事者・措置の三つを分けて確認する

実務では,①どの事業が法律上の対象となるか,②その事業で誰が対象業務従事者となるか,③各事業者がどの措置をいつまでに行うかを分けて確認する必要がある。
法人全体が一括して対象になるとは限らず,同じ法人の中でも施設やサービスによって取扱いが異なり得る。
また,職名や雇用形態だけで対象者を決めるのではなく,実際の業務における児童等との接し方を確認しなければならない。

3 本記事の確認基準日は令和8年10月8日である

本記事は,令和8年10月8日現在の法令,令和8年9月改訂の施行ガイドライン及びQ&A,同年10月1日付けの監督等指針並びに義務事業者用準備ガイドVer.1.1に基づく。
制度の運用資料,申請画面及びひな型は施行までに更新される可能性があるので,実際に準備を行う時点でこども家庭庁「こども性暴力防止法」の最新資料を確認する必要がある。

第2 対象事業者は二つの仕組みに分かれる
1 学校設置者等は法律上の義務対象である

学校,認定こども園,児童福祉施設その他の法律が定める学校設置者等には,対象業務従事者に対する犯罪事実確認を含む各措置が法律上義務付けられる。
どの施設・事業が学校設置者等に該当するかは,名称や法人格だけでなく,根拠法令,認可・届出の種類及び実際に提供する役務により確認する。
地方公共団体や一つの法人が複数の施設を運営する場合には,事業所ごとの対象性と,誰が申請・情報管理を担当するかを対応表にしておく必要がある。

2 民間教育保育等事業者には認定制度がある

学習塾,スポーツクラブ,放課後活動,民間の学習支援等の事業については,法律が定める要件を満たす民間教育保育等事業者が認定を受け,学校設置者等と同等の措置を実施する仕組みが設けられている。
「こどもにサービスを提供している」というだけで直ちに同一の義務対象になるわけではないが,認定を受ける場合には,対象事業,対象従事者,規程,研修,相談体制及び情報管理を一体として整備することになる。
認定の要否を検討する事業者は,利用者への表示だけでなく,申請後に継続して実施できる人員・権限・予算があるかを先に確認すべきである。

3 業務委託先や施設利用者も契約関係だけで決めない

学校や保育所の事業として外部事業者へ水泳指導等を委託する場合には,外部の指導者であっても学校設置者等が犯罪事実確認を行う必要があると,令和8年9月29日改訂Q&Aは説明している。
これに対し,施設を貸しているにとどまり,別事業者が独立した英会話教室等を行う場合には,その事業の実施主体と認定の有無を確認することになる。
契約書上の「委託」「場所貸し」という名称だけに依存せず,誰の事業として,誰の指揮・管理の下で,児童等へ役務を提供しているかを整理する必要がある。

第3 誰が犯罪事実確認等の対象になるか
1 支配性・継続性・閉鎖性の三要件が中心になる

対象従事者の範囲は,法令上明記された職種に加え,実際の業務が支配性,継続性及び閉鎖性の三要件を満たすかによって判断される。
支配性とは,指導やコミュニケーション等を通じて児童等に対して優越的な立場に立つ機会があることをいう。

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別居3年で離婚できるか―婚姻破綻の判断事情,修復行動と第一審・控訴審の比較(AI作成)

目次第1 別居3年という法律上の基準はない1 生死不明の3年と別居期間は別である2 裁量棄却と有責配偶者の問題を分ける第2 同じ事件で第一審と控訴審の結論が分かれた例1 別居3年5か月で請求を棄却した第一審2 別居4年10か月で離婚を認めた控訴審第3 別居期間と一緒に確認する事情1 住所の違いと共同生活の実態2 修復希望と具体的な行動3 子との関係と離婚後の生活第4 相談・訴訟で準備する資料1 出来事と裏付けを時系列にする2 訴えを起こした時の資料を更新する第5 判決の集計を個別事件の勝訴率にしない第6 令和8年改正と古い判決の読み方第7 出典・関連記事
第1 別居3年という法律上の基準はない
1 生死不明の3年と別居期間は別である

相手方が離婚に応じない場合,「別居を3年続ければ裁判で離婚できる」と考えることがある。しかし,令和8年10月5日現在の民法770条に,別居3年を独立の離婚原因とする規定はない。同条1項3号の3年以上という期間は,配偶者の生死が明らかでない場合の要件である。所在や生存が分かっている配偶者との別居とは異なる。
別居を通じた婚姻破綻は,通常,同項4号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」の問題として検討する。期間だけでなく,同居していた期間,別居に至る経緯,別居後の生活・交流,修復の可能性などを具体的に見る必要がある。

2 裁量棄却と有責配偶者の問題を分ける

現行770条2項の裁量棄却は,同条1項1号から3号までの事由がある場合の規定である。4号の婚姻破綻については,重大な事由が認められるかという判断と,破綻について専ら又は主として責任を負う配偶者からの請求を信義則上認められるかという問題を区別する。
有責配偶者からの請求では,最高裁大法廷昭和62年9月2日判決の枠組みに従い,別居期間を双方の年齢・同居期間との対比で評価し,未成熟子の有無や,相手方を極めて苛酷な状態に置く等の特段の事情も検討する。同判決の結論は破棄差戻しである。有責性を争われている事件に,一般の別居事例の年数をそのまま当てはめることはできない。
詳しくは,有責配偶者からの離婚請求を参照されたい。

第2 同じ事件で第一審と控訴審の結論が分かれた例
1 別居3年5か月で請求を棄却した第一審

東京家庭裁判所立川支部平成27年1月20日判決(平成25年(家ホ)第235号)は,妻からの離婚請求を棄却した。判決が認定した別居期間は約3年5か月であり,それまでの同居期間は約10年であった。
第一審は,夫の修復希望,子と夫との良好な関係等を踏まえ,婚姻関係に回復可能性がないとまでは認めなかった。妻が主張した暴力等についても,その主張どおりの事実が認められた事案ではない。この判断を,「暴力があっても3年では離婚できない」という一般論へ広げることはできない。

2 別居4年10か月で離婚を認めた控訴審

同事件の控訴審である東京高等裁判所平成28年5月25日判決(平成27年(ネ)第1064号,判例タイムズ1432号97頁)は,離婚請求を棄却した部分を取り消し,離婚を認めた。
控訴審は,別居が約4年10か月に及んだこと,妻の強い離婚意思,夫に具体的な修復行動がないこと等を検討した。夫が婚姻継続を希望しながら,命じられた婚姻費用を十分に支払っていなかった点も,その希望を評価する事情となっている。
この比較からは,年月の経過に加えて,修復の言葉と実際の行動,生活費の負担等を証拠で示すことが重要といえる。「第一審で棄却されたから控訴しても同じ」「4年10か月に達すれば必ず認められる」という理解は,どちらも判決の検討内容に合わない。

第3 別居期間と一緒に確認する事情
1 住所の違いと共同生活の実態

別居の開始日は,住民票の異動日だけでなく,実際に共同生活を終えた経緯と資料で確認する。単身赴任,入院,介護等による一時的な住居の分離と,夫婦関係を解消するための別居は,住所が違うというだけでは同じ評価にならない。
家庭内別居を主張する場合も,寝室,食事,家事,家計,連絡及び子の世話の実態を説明する必要がある。途中で再同居した,旅行へ行った,家計を一部共同にしていた等の事情があれば,その目的と経過を併せて整理する。

2 修復希望と具体的な行動

婚姻の継続を希望する側は,いつ,どのような方法で話合いを提案し,関係悪化の原因を改善したのかを具体化する。離婚を求める側は,修復の提案があったか,応じなかった理由,話合いや調停を経ても関係が回復しなかった経過を説明する。
生活費については,合意・審判等で定められた額と,現実の支払日・支払額を区別する。支払が足りない場合には,収入減等の理由や,変更を求めた経過も確認する。婚姻費用の不足だけで直ちに婚姻破綻又は悪意の遺棄が成立するという一律の基準ではない。
DV,虐待,威圧又は保護命令等が関係する事件では,直接連絡や同居再開を安易に勧めるべきではない。連絡を避ける理由と安全確保の必要性を踏まえ,代理人や裁判所を通じて事実と意向を整理する。

3 子との関係と離婚後の生活

子の監護,親子交流,通学,健康及び生活費を確認する。子と片方の親が良好な関係を持つことと,夫婦関係が回復できることは,当然に同じ問題ではない。夫婦関係の評価と,子の生活をどう守るかをそれぞれ説明する。
別居後の住居,収入,療養,家計及び扶養の状況も整理する。有責配偶者からの請求では,離婚後の苛酷な状態を判断するため,経済的給付の内容と履行可能性が特に重要となる。

第4 相談・訴訟で準備する資料
1 出来事と裏付けを時系列にする

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離婚後の共同親権の国際比較-決定権・居住・DV対応の違い(AI作成)

目次

第1 共同親権を比較するための区別1 対象と比較の範囲2 責任・決定権と居住の比較表第2 日本の親権者指定と親権行使1 離婚時に共同・単独のいずれを定めるか2 双方が親権者となった後の行使方法第3 外国の決定権と居住の仕組み1 フランスの共同行使と交互居住2 ドイツの重要事項と日常事項3 イングランド・ウェールズの親の関与4 豪州の2024年改正と共同決定命令5 カリフォルニア州の法的監護と身体的監護第4 DV・虐待への対応の条件と効果1 調停提案の除外と接触の安全判断2 子の福祉への危険と安全の考慮3 カリフォルニア州の過去5年のDV認定第5 子の意向を考慮する仕組み第6 日本の離婚・養育費・取決め文書の関連記事第7 出典・参考資料1 法令2 行政機関の制度解説3 裁判所の制度解説・司法手続の運用資料
第1 共同親権を比較するための区別
1 対象と比較の範囲

離婚後の共同親権を比較するときは,①子について誰が法的な責任・権限を持つか,②どの事項を共同で決めるか,③子がどこで,どのような日程で暮らすかを分けて読む必要がある。
父母双方が権限を持つことから,居住時間を半分ずつにすることや,日常の行為まで常に双方の同意を得ることが当然に導かれるわけではない。

本記事は,令和8年10月3日を基準日として,日本,フランス,ドイツ,イングランド・ウェールズ,オーストラリアの連邦法及び米国カリフォルニア州の条文・公的解説を比較する。
英国全体,米国全州又は西オーストラリア州の別個の法制度へ一般化するものではなく,世界の採用率,制度の実効性及び子への心理的効果は対象としない。
外国法の日本語説明は原文の要約・仮訳であり,公定訳ではない。

2 責任・決定権と居住の比較表

フランスのautorité parentale,ドイツのelterliche Sorge,英国・豪州のparental responsibilityは,各法域の法律上の概念である。
カリフォルニア州ではlegal custodyとphysical custodyを区別するため,同じ「共同親権」という日本語だけで法律効果を揃えることはできない。

法域法的責任・決定権居住・時間との区別日本離婚時に双方又は一方を親権者に指定し,双方なら共同行使が基本で,単独行使の規定もある監護者・監護の分掌,親子交流及び費用分担は別に定めるフランス別離は親権行使の帰属規則を変えないが,子の利益のため単独行使も認められる交互居住又は一方の親の住所での居住を定め得るドイツ共同配慮を持つ別居父母の重要事項は合意を要し,日常事項とは扱いが異なる決定権の分担に関する規定だけでは,居住時間の割合は決まらないイングランド・ウェールズ政府案内は,重要決定への他方の関与と,日常決定の扱いを区別して説明する法律上の父母の関与に関する推定は,特定の時間配分を意味しない豪州連邦法各親の親責任は別離後も存続して裁判所命令に従い,重要事項の共同・単独決定命令が可能共同決定と平等な時間配分は異なり,司法長官省は平等な時間を過ごす法的権利はないと説明するカリフォルニア州裁判所案内は,重要決定に関するlegal custodyに共同・単独の形があると説明する居住に関するphysical custodyとは別の概念であり,生活日程は別に確認する

表は各制度の対応関係を示すものであり,共同の制度の有無だけによる優劣の評価ではない。
日常事項の単独決定,父母が合意できない場合の処理及び安全への対応は,以下の各規定と併せて読む。

第2 日本の親権者指定と親権行使
1 離婚時に共同・単独のいずれを定めるか
(1) 父母双方又は一方の指定

離婚後の親権に関する改正は,令和8年4月1日に施行された。
現行の民法819条1項・2項は,協議離婚又は裁判離婚の際に,父母の双方又は一方を親権者に定めるものとしている。

(2) 裁判所が単独親権にしなければならない場合

民法819条7項は,裁判所が親権者を指定する際,子の利益のため,父母と子の関係,父母相互の関係その他一切の事情を考慮するものとしている。
父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがある場合や,一方が他方から暴力等を受けるおそれの有無,協議が調わない理由その他の事情を考慮して親権の共同行使が困難と認める場合等,共同親権により子の利益を害すると認められるときは,父母の一方を親権者に定めなければならない。

したがって,共同行使の規定があることと,裁判所が親権者を指定する際に共同を一律に優先することは別の問題である。
親権者の指定は,日々の行為を誰が決めるかという次の問題とも区別される。

2 双方が親権者となった後の行使方法
(1) 共同行使と単独でできる行為

民法824条の2第1項・第2項では,双方が親権者である場合の共同行使を基本としつつ,監護・教育に関する日常の行為については単独行使を認めている。
子の利益のため急迫の事情がある場合も,一方が親権を行う。

(2) 合意できない特定事項の単独行使

共同で決めるべき特定事項について協議が調わない場合,民法824条の2第3項により,家庭裁判所は,父又は母の請求に基づき,子の利益のため必要と認めるときに一方が単独で親権を行使できる旨を定められる。

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再婚禁止期間を理由とする国家賠償請求の後続裁判例―平成30年東京地裁・高裁判決、消滅時効と損害の立証(AI作成)

目次第1 平成27年大法廷判決の射程第2 平成30年東京地裁・高裁判決1 届出、請求と結論2 判決が判断していないこと第3 消滅時効を調べる順序1 適用法と起算点2 実務で集める資料第4 損害額と因果関係の立証第5 時期による戸籍実務と調査の限界

最高裁大法廷は平成27年12月16日、旧民法733条1項の再婚禁止期間のうち100日を超える部分が平成20年当時には違憲であったと判断した。しかし、国会がその時点まで改廃しなかったことについては国家賠償法上の違法性を否定し、賠償請求を棄却した。違憲判断と個別の賠償請求の成否は別の問題である。本稿は、判例秘書収録の判決本文で確認できた一つの後続訴訟の第一審・控訴審を紹介し、時効と損害立証の検討方法を示す。

第1 平成27年大法廷判決の射程

大法廷は、平成20年に前婚を解消した女性の事件で、100日超過部分の違憲性を認めた。他方、国会議員による立法不作為が国家賠償法1条1項上違法となるには、違憲性が明白であるのに正当な理由なく長期にわたって改廃を怠ったといえる場合などであるとし、平成20年当時についてその要件を満たさないと判断した。判決が慰謝料を算定したわけではなく、請求は棄却された。平成27年大法廷判決全文を参照されたい。

平成7年判決との違いは、再婚禁止期間の平成7年・平成27年最高裁判決と国家賠償で検討した。本稿で扱う平成30年の二判決は、これら最高裁判決とは別の事件であり、同じ訴訟の第一審と控訴審である。

第2 平成30年東京地裁・高裁判決
1 届出、請求と結論

東京地裁平成30年3月13日判決(平成27年(ワ)第28945号、判例秘書文献番号L07331663)によれば、女性は平成27年5月15日に離婚し、同年7月10日に新たな相手との婚姻届を提出したが受理されず、同年11月22日に婚姻した。7月10日の届出は離婚から約56日後であり、100日を経過する前である。この時点の不受理を、最高裁が違憲とした「100日超過部分」による不受理と表現してはならない。

女性、新たな配偶者及び子がそれぞれ100万円の慰謝料を請求したが、東京地裁は請求を棄却した。請求額の合計300万円は認容額ではない。判決は、100日経過後も再婚できなかったという主張も検討した上で、当該時期の立法不作為について国賠法上の違法性を認めなかった。

東京高裁平成30年9月27日判決(平成30年(ネ)第1602号、判例秘書文献番号L07320602)も控訴を棄却した。高裁判決の事件番号と年月日は東京高裁の特別保存事件一覧でも確認できる。ただし、同一覧は判決理由を掲載する資料ではない。本稿の地裁・高裁の認定及び判断は判例秘書収録の各判決本文による。

2 判決が判断していないこと

両判決は立法不作為の国賠法上の違法性を否定して請求を退けた。消滅時効の起算点や完成の有無を確定した事例でも、慰謝料の相当額を算定した事例でもない。したがって、「平成30年判決が時効は3年と判断した」「慰謝料を1人100万円と認定した」という紹介は誤りである。

平成27年(ワ)の事件番号から、訴えの提起年は平成27年と分かるが、提訴の具体的な月日をこの番号だけで確定できない。「平成27年大法廷判決後に提起された訴訟」とも断定しない。

第3 消滅時効を調べる順序
1 適用法と起算点

国家賠償法4条により、同法に特別の規定がない事項には民法を適用する。令和2年4月1日の改正民法施行前の不法行為に係る旧民法724条は、損害及び加害者を知った時から3年、行為時から20年という期間を定めていた。改正後の民法724条も一般の不法行為について主観的起算点から3年、行為時から20年を定め、724条の2は生命・身体侵害による損害賠償請求の主観的期間を5年とする。改正法附則の経過措置も確認する必要がある。

精神的苦痛を請求するというだけで724条の2の5年になるわけではない。また、最高裁の平成27年判決が出た日を一律に時効の起算日とする根拠もない。届出の不受理、100日経過後の取扱い、婚姻が成立した日、損害を認識した経緯、請求権者ごとの認識及び訴訟上の手続を時系列に置き、適用法・経過措置・時効の完成猶予や更新の有無を個別に調べる。

2 実務で集める資料

戸籍謄本、離婚届と婚姻届の写し、不受理証明又は窓口の記録、届出時の説明、再提出の記録、当事者間の連絡、婚姻が遅れたことによる具体的な不利益の資料を確保する。損害の発生・認識時期が争われるときは、単なる後日の陳述だけに依存しない。各請求権者について何をいつ知ったかを分けて記録する。

第4 損害額と因果関係の立証

違憲とされた規定が適用された事実だけで慰謝料額は決まらない。受理されなかった届出が100日以内か以後か、100日経過後に再届出したか、他の婚姻障害がなかったか、いつ婚姻できたか、どの不利益が行政の取扱い又は立法不作為と結び付くかを確認する。婚姻できなかった期間、生活上・身分上の影響、支出の領収書、精神的苦痛を裏付ける資料を整理し、請求権者ごとの損害と因果関係を主張立証する。

平成27年大法廷事件の請求額や平成30年東京訴訟の「各100万円」は当事者の請求であり、裁判所の賠償額の相場ではない。ここで確認した判決に認容例はなく、違法性が否定されたため、損害額についての裁判所の積極的な算定判断も得られない。

第5 時期による戸籍実務と調査の限界

平成27年大法廷判決後、法務省は改正までの間、離婚から100日経過後の婚姻届を受理する取扱いを市区町村に通知した。法務省の判決説明資料にその旨が記されている。平成28年6月7日に禁止期間は法定の100日に短縮され、令和6年4月1日に廃止された。過去の不受理を評価するときは、各届出日の法令と通知、実際の窓口対応を分ける。平成28年改正の法務省説明及び令和6年施行の法務省説明を参照されたい。

本稿の後続裁判例の確認範囲は、判例秘書で確認した前記一訴訟の二判決と、裁判所ウェブサイト等で確認できた資料である。未掲載判決や和解、訴訟外の解決を含め、全国の請求例がこれだけであるとは断定できない。両判決の本文は判例秘書で照合したが、裁判所ウェブサイトの判決全文は確認できていない。個別事件を扱う際は判決原本・訴訟記録と、適用時点の法令・通知を追加で確認する。

再婚禁止期間の平成7年・平成27年最高裁判決と国家賠償―違憲と立法不作為の違法性(AI作成)

目次第1 二つの判決の結論1 平成7年12月5日第三小法廷判決2 平成27年12月16日大法廷判決第2 平成7年判決の射程第3 平成27年判決の二段階の判断1 規定の違憲性2 国会議員の職務上の義務違反第4 多数意見と反対意見の分岐第5 国家賠償を検討する実務上の手順第6 法改正との関係と資料

再婚禁止期間をめぐる最高裁判決は、平成7年も平成27年も国への損害賠償請求を認めなかった。しかし、両判決の憲法判断は同じではない。平成7年判決は旧民法733条の合憲性を確定せず、平成27年判決は100日を超える部分を違憲とした上で国家賠償法上の違法性を否定した。この区別が、過去の立法不作為を論じる出発点となる。

第1 二つの判決の結論
1 平成7年12月5日第三小法廷判決

女性のみに6か月の再婚禁止期間を設けた当時の民法733条について、再婚届の不受理による精神的損害等を主張する当事者が、国会による改廃をしないことなどを理由に国家賠償を請求した。最高裁は請求を退けた。この判決で問題となった立法不作為の判断時点は平成元年である。請求棄却を「6か月の禁止は合憲」と言い換えてはならない。

2 平成27年12月16日大法廷判決

平成20年に前婚を解消した女性の請求について、最高裁は当時の6か月の禁止のうち100日を超える部分が、遅くとも同年当時には憲法14条1項・24条2項に違反していたとした。他方、当時の100日以内の部分は違憲としなかった。それでも国会による改廃の遅れは国家賠償法1条1項上違法と評価できないとして、賠償請求を棄却した。

第2 平成7年判決の射程

平成7年判決は、国会議員の立法行為について、憲法の一義的な文言に反する立法をあえて行うような例外的な場合でなければ国家賠償法上違法と評価されない、という先例の枠組みを引用した。そして、旧733条の元来の目的を、父性の推定の重複を避け、父子関係の紛争を予防する点に求めた上、改廃しないことが直ちにその例外に当たるとはいえないと判断した。判決文は6か月の期間のすべてについて憲法適合性を審査し、合憲と結論したものではない。

平成27年判決も、この先例を「立法不作為について国賠法上の違法性を否定した判断」として扱う。千葉勝美裁判官の補足意見は、平成7年判決が引用した「憲法の一義的な文言に反する」という例は、国賠法上の違法となる全ての場合を尽くしたものではないと説明している。両判決を、単純な合憲判決から違憲判決への変更と整理するのは不正確である。

第3 平成27年判決の二段階の判断
1 規定の違憲性

当時の民法772条では、前婚解消後300日以内と後婚成立後200日経過後に出生した子について父性の推定が重なり得た。この重複を避けるには計算上100日の禁止で足りる。大法廷は、旧法制定時に6か月という幅を設けたことまで不合理とはしなかったが、医療・科学技術や婚姻・家族の社会状況の変化を踏まえると、平成20年には100日を超える制約を正当化できなくなっていたと判断した。

2 国会議員の職務上の義務違反

規定が違憲でも、国会議員の立法行為・立法不作為が直ちに国家賠償法上違法になるわけではない。大法廷は、違憲であることが明白なのに国会が正当な理由なく長期にわたり改廃を怠った場合などに、個々の国民に対する職務上の法的義務違反として例外的に違法となり得るとした。

本件では、平成7年判決が違憲との判断を示さず立法不作為の国賠責任を否定していた。平成6年の改正要綱試案と平成8年の法律案要綱は100日への短縮を提案したが、100日超過部分が違憲であるとの前提で作成されたとはうかがわれない。その後も同部分を違憲とする司法判断はなかった。多数意見は、平成20年時点で違憲性が国会にとって明白だったとはいえず、国賠法上の違法性を否定した。

第4 多数意見と反対意見の分岐

山浦善樹裁判官は反対意見で、再婚禁止期間の全部が違憲であり、遅くとも平成13年には違憲となっていたと考えた。平成7年判決の判断時点は平成元年であり、平成20年を問う本件の妨げにならないという。科学技術の進歩、社会状況、諸外国の法改正、国際機関の勧告等から、平成20年より相当前に国会に違憲性が明白となり、改廃に技術的困難もなかったとして、立法不作為の違法性と過失を認め、賠償請求を認容すべきだと述べた。これは多数意見の結論ではない。

対立点は、婚姻の自由をどこまで制約できるかに加え、いつ、何を根拠に、違憲性が国会にとって明白になったと評価できるかにある。平成8年の100日短縮案を、政策提案とみるか、違憲状態の認識を裏付ける事情とみるかでも評価が分かれた。

第5 国家賠償を検討する実務上の手順

① まず、婚姻届の不受理等がいつ起き、どの時点の旧法が適用されたかを戸籍・届書等で確定する。平成7年事件の平成元年と平成27年事件の平成20年を混同しない。

② 次に、憲法上の制約の内容・違憲となった時期と、国会議員の職務上の義務違反を別々に検討する。先例、法制審議会資料、国会審議、司法判断、当時の科学的・社会的知見を時系列で整理し、違憲性の明白性と正当な理由のない不作為の期間を立証する。改正提案が存在した事実だけで、国賠責任が成立するわけではない。

③ 最後に、個別の届出経過、再婚できなかった期間、損害と因果関係、請求権の期間制限を検討する。平成27年判決は平成20年時点の立法不作為の違法性を否定したのであり、全ての時期・全ての事案について国賠責任の有無を一括して決めたものではない。一方、同判決の違憲判断だけを根拠に賠償が自動的に認められるわけでもない。

後続裁判例として、東京地裁平成30年3月13日判決(平成27年(ワ)第28945号、判例秘書文献番号L07331663)とその控訴審である東京高裁同年9月27日判決(平成30年(ネ)第1602号、同L07320602)がある。女性、新たな配偶者及び子は各100万円を請求したが、いずれも棄却された。これは一訴訟の二判決であり、請求額を認容額と取り違えてはならない。両判決は消滅時効の成否や慰謝料の相当額を判断していない。事実経過と判断の限界は再婚禁止期間を理由とする国家賠償請求の後続裁判例で詳述した。

時効を検討するときは、国家賠償法4条と適用時点の民法724条、改正法の経過措置を確認し、損害及び加害者を知った時期を請求権者ごとに検討する。平成27年大法廷判決の言渡日が一律に時効の起算日となるわけではない。精神的苦痛の請求というだけで民法724条の2の5年の期間が適用されるわけでもない。

第6 法改正との関係と資料

平成27年大法廷判決後は、改正前でも離婚から100日を経過した婚姻届を受理する取扱いが市区町村に通知された(法務省の判決説明資料)。平成28年改正で法定の期間は100日に短縮され、令和6年4月1日からは再婚禁止期間自体が廃止された。後の法改正と、過去の特定時点における国家賠償責任の成否は分けて論じる。現行の戸籍・父の推定については再婚禁止期間の廃止と父の推定、違憲判決の一覧は最高裁判所における違憲判決の一覧を参照されたい。

関連する平成15年度旧司法試験の問題文・出題趣旨・模範答案は、平成15年度旧司法試験論文式試験の模範答案―憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法の全12問と出題趣旨を踏まえた解説に掲載している。

一次資料:最高裁平成7年12月5日第三小法廷判決(平成4年(オ)第255号、裁判集民事177号243頁。判例秘書収録本文・文献番号L05010101を令和8年10月1日に照合)。最高裁平成27年12月16日大法廷判決(平成25年(オ)第1079号、民集69巻8号2427頁)の判決全文。平成7年判決の公開掲載本文も参照できるが、本稿の本文確認は判例秘書収録本文に基づく。

再婚禁止期間の廃止と父の推定―婚姻日・出生日で判定する戸籍と相談実務(AI作成)

目次第1 結論と確認する日付第2 再婚禁止期間の変遷第3 平成27年大法廷判決の読み方第4 出生時期による父の推定と経過措置第5 戸籍・相談実務での手順第6 関連判例・記事と出典

女性の再婚禁止期間は令和6年4月1日から廃止された。ただし、過去の婚姻と出生を調べる際は、再婚禁止期間の適用には婚姻日、改正後の嫡出推定の適用には子の出生日をそれぞれ確認する必要がある。両者を同じ基準日で処理すると、戸籍上の父を誤るおそれがある。本稿は令和8年10月1日現在の法令・公的資料を基準に、国内法が適用される典型例を整理する。

第1 結論と確認する日付

最初に、前婚の解消・取消日、再婚の届出日、子の出生日を戸籍と出生証明書で確かめる。離婚後300日以内の出生か、出生時までに再婚していたかも確認する。懐胎時期、当事者の国籍、認知・養子縁組の有無、父と推定される者の生死は、争う手続を選ぶ段階で別に確認する。

令和6年4月1日以後の婚姻には、改正前民法733条の女性の再婚禁止期間は適用されない。一方、改正民法772条の新しい父の推定は、原則として同日以後に生まれた子に適用される(令和4年法律第102号附則3条)。したがって、令和6年3月31日以前に生まれた子の父を、後の改正規定だけで決め直すことはできない。

第2 再婚禁止期間の変遷
1 平成28年6月6日まで

改正前民法733条1項は、女性について前婚の解消又は取消しの日から6か月の再婚禁止期間を定めていた。これは当時の民法772条が、前婚解消後300日以内と後婚成立後200日を経過した後の出生について父の推定が重なる事態を避ける趣旨と説明されていた。ただし、旧733条2項には前婚解消前から懐胎していた場合の出産後の例外があった。

ただし、法定の6か月という文言と、平成27年12月16日の大法廷判決後の戸籍事務上の取扱いは区別する。同判決後、平成28年改正法の施行前であっても、前婚解消・取消しから100日を経過した婚姻届を受理するよう市区町村に通知された(法務省の判決後の取扱い)。この時期の個別の届出の成否は、届出日と不受理・受理の記録で確認する。

2 平成28年6月7日から令和6年3月31日まで

平成28年法律第71号は、再婚禁止期間を6か月から100日に短縮し、平成28年6月7日に公布・施行された。前婚解消・取消しの時に懐胎していなかった場合、又はその後に出産した場合には、100日以内でも同期間の規定を適用しない。期間内の婚姻届については、当時必要とされた証明資料を含め、法務省の平成28年改正案内と当時の戸籍記録を確認する。

3 令和6年4月1日以後

令和4年法律第102号により女性の再婚禁止期間は廃止された。この廃止は、法務省の改正の概要によれば、令和6年4月1日以後にされる婚姻に適用される。前婚解消から100日以内という理由だけで、現在の婚姻届を旧733条に基づいて拒むことはできない。

第3 平成27年大法廷判決の読み方

最高裁平成27年12月16日大法廷判決(平成25年(オ)第1079号)は、平成20年に離婚した女性が国に賠償を求めた事件である。判決は、当時の6か月の再婚禁止期間のうち100日を超える部分は、平成20年当時には憲法14条1項・24条2項に違反するに至っていたとした。他方、当時の100日以内の部分は違憲としなかった。これは令和6年の全面廃止後の現行法について、100日間の禁止を認めた判断ではない。

同判決は、立法不作為について国家賠償法1条1項上の違法性を否定し、賠償請求を棄却した。規定の違憲性と国家賠償責任は別の判断である。判決は、平成7年の第三小法廷判決について、国会が733条を改廃しなかった立法不作為が直ちに国家賠償法上違法となる例外的な場合に当たらないと判断したものと説明し、同判決が733条を合憲と判示したとは扱っていない。判決が挙げた医療・科学技術や社会状況の変化も、違憲性の判断時点を読む際の事情であり、個々のDNA鑑定だけで法律上の父を決める趣旨ではない。

第4 出生時期による父の推定と経過措置
1 令和6年4月1日以後に生まれた子

改正民法772条は、婚姻前に懐胎して婚姻成立後に生まれた子も、その婚姻の夫の子と推定する。同条3項は、懐胎から出生までに二以上の婚姻をした場合、出生の直近の婚姻の夫の子と推定する。したがって、前婚解消後300日以内であっても、母が再婚した後に生まれた子は、原則として再婚後の夫の子と推定される。再婚していなければ、300日以内の出生について前夫の子との推定が問題になる。裁判所の嫡出否認調停案内も両者を区別している。

2 令和6年3月31日以前に生まれた子

新772条は出生に遡って適用されず、旧法の父の推定を確認する。子と母には施行日から1年間、施行日前出生の子について嫡出否認の訴えを提起できる特例が設けられた(同法附則4条2項)。この特例期間は令和7年3月31日までで、現在は経過している。ただし、それだけで全ての親子関係の救済手段がなくなるわけではない。嫡出推定が及ばない事情があれば、親子関係不存在確認など別の手続が問題になり得る。父による否認も、施行日前出生の子には従前の例によるため、個別の起算点と期間を確認する。

3 推定と血縁が食い違う場合

嫡出推定が及ぶ父子関係は、科学的証拠で生物学上の父子関係がないことが判明しただけでは、親子関係不存在確認の訴えで争えない(最高裁平成26年7月17日判決)。改正後は、子・母・一定の場合の前夫にも嫡出否認権が認められ、原則的な出訴期間は3年である。子には一定の要件の下で21歳までの特則もある。申立権者、起算点、代理行使の可否及び例外を、裁判所の案内と適用される条文で確認する。

第5 戸籍・相談実務での手順

① 戸籍全部事項証明書、離婚・婚姻の各受理日、出生証明書を集め、婚姻日と出生日を別々に区切って適用法を特定する。推定が及ぶかは、前婚解消日から300日以内か、再婚の有無・時期、懐胎時の外形的事情を整理して判断する。

② 出生届をまだ出していない場合は、戸籍に載る父の見込みを戸籍窓口又は法務局に確認する。離婚後に懐胎したことが医師の証明書で明らかな場合など、嫡出推定が及ばないことが戸籍事務上明白なときには、裁判を経ずに元夫の子としない取扱いが可能な場合がある。詳しくは法務省の無戸籍に関するFAQを参照する。

③ 推定が及ぶ場合は嫡出否認、外形的事情により推定が及ばない場合は親子関係不存在確認など、手続の入口を分ける。家事調停の申立て、合意に相当する審判の可否、訴えの相手方と期間を事案ごとに確認する。裁判所の無戸籍者向け案内は手続の違いを説明している。

④ 国籍が絡む場合は準拠法を先に調べる。ここで述べた民法772条以下を全件に機械的に当てはめない。生物学上の父の認知、養子縁組、相続も別個に検討する。裁判で親子関係が争われている間も、私的なDNA鑑定の結果だけで戸籍を訂正したり相続人から除外したりしない。

第6 関連判例・記事と出典

法令:民法772条、774条、777条、778条の2及び令和4年法律第102号附則。改正の適用関係は法務省「民法等の一部を改正する法律について」及び同省「改正の概要」、平成28年改正は同省の案内で確認した。

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節税目的の養子縁組は無効か―最高裁平成29年1月31日判決と相続税上の養子数制限(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と結論第2 最高裁平成29年1月31日判決1 民法802条1号2 最高裁の判断3 動機と法律行為の意思を分ける第3 養子縁組の民法上の効果第4 相続税上の養子数制限1 民法上の相続人と相続税計算上の人数は同じとは限らない2 実子として扱われる養子がある3 相続税法63条による否認第5 孫養子と相続税額の2割加算第6 縁組意思をめぐる主張立証1 証拠化する事項2 意思能力と縁組意思は別に検討する第7 相続対策として検討する際の注意第8 出典・参考資料
第1 本記事の対象と結論

本記事は,相続税の節税を主な目的として行われた養子縁組が民法上無効となるかを,最高裁平成29年1月31日第三小法廷判決(平成28年(受)第1255号),現行民法及び相続税法から整理するものである。
法令及び国税庁資料の基準日は令和8年10月1日である。

最高裁は,節税の動機と縁組意思は併存し得るため,専ら相続税の節税目的で養子縁組をしたというだけで,直ちに民法802条1号の「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとはいえないとした。

もっとも,民法上の縁組が有効であることと,相続税計算で養子をどの範囲まで法定相続人の数に算入できるかは別問題である。
税務上は養子数の制限,相続税額の2割加算及び相続税法63条による否認可能性を分けて確認する必要がある。

第2 最高裁平成29年1月31日判決

1 民法802条1号

民法802条1号は,人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき,養子縁組を無効とする。
問題は,節税を目的とすることが,親子関係を作る意思と両立するかである。

2 最高裁の判断

最高裁は,養子縁組をすることによる相続税の節税効果を発生させることを動機として縁組をする場合でも,直ちに縁組意思がないとはいえず,節税の動機と縁組意思は併存し得るとした。
そして,専ら相続税の節税目的で縁組をしたというだけで,直ちに民法802条1号の無効事由に当たるとはいえないと判断した。

本判決は,「節税目的の養子縁組は常に有効」と判示したものではない。
個別の事実から当事者間に縁組意思がなかったと認められる場合は,同号による無効が問題となり得る。

3 動機と法律行為の意思を分ける

相続税額を下げたいという動機があっても,当事者が法律上の親子関係を成立させる意思を有していれば,両者は併存し得る。
逆に,届出の外形があり税務資料が作成されていても,当事者が親子関係を作る意思を欠いていたと立証されれば,縁組無効の余地は残る。

したがって,訴訟では「節税目的だったか」だけでなく,「届出時に法律上の親子関係を成立させる意思があったか」を,直接・間接事実から検討する。

第3 養子縁組の民法上の効果

民法809条は,養子が縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得すると定める。
そのため,普通養子は原則として養親の子として相続人となり,実親との親族関係も原則として残る。

養子縁組の有効性を検討するときは,縁組意思だけでなく,年齢,配偶者の同意,未成年者を養子とする場合の家庭裁判所の許可その他の成立要件を個別に確認する。
本判決は,これら他の要件を不要とするものではない。

第4 相続税上の養子数制限

1 民法上の相続人と相続税計算上の人数は同じとは限らない

相続税法15条2項は,遺産に係る基礎控除などの計算に用いる「相続人の数」について,一定の普通養子を算入できる人数を制限している。
国税庁の説明によれば,被相続人に実子がいる場合は1人まで,実子がいない場合は2人までが原則である。

この制限は,人数を超える養子縁組を民法上無効にする制度ではない。
養子が民法上の相続人であることと,相続税の基礎控除,生命保険金・死亡退職金の非課税限度額及び相続税総額の計算で何人を算入するかを分ける必要がある。

2 実子として扱われる養子がある

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国境を越えて連れ去られた子の意思と人身保護請求―情報環境・心理的影響と返還決定(AI作成)

目次

第1 結論
第2 最高裁平成30年3月15日判決
第3 年齢だけでは自由意思を判断できない
第4 情報環境と心理的影響を検討する
第5 人身保護請求における拘束と顕著な違法性
第6 ハーグ条約の返還決定との関係
第7 証拠収集と子への配慮
第8 申立て・防御のチェックリスト
第9 出典と確認範囲

国境を越えて連れ去られた子が同居親のもとに残りたいと述べていても,年齢と発言だけで自由意思による滞在と決めることはできません。最高裁平成30年3月15日判決は,子が多面的・客観的な情報を得ているか,同居親の心理的影響を受けていないかを具体的に検討しました。

第1 結論

子の意思を扱う実務では,次の三層を分けます。

子が言葉として何を述べているか。
その判断の前提となる情報が多面的・客観的だったか。
監護親への依存,情報遮断,反復説明その他の心理的影響により,発言が自由意思に基づかない状態になっていないか。

また,ハーグ条約実施法による子の返還手続は,監護権の最終的な帰属を決める手続ではありません。常居所地国へ子を返すかを判断する手続と,親権・監護権の本案を混同しないことが重要です。

第2 最高裁平成30年3月15日判決

最高裁判所第一小法廷平成30年3月15日判決は,国外への子の返還を命じる確定決定があるのに返還が実現していない事案で,人身保護請求の成否を判断しました。

最高裁は,意思能力のある子が監護親のもとにとどまる意思を示していても,子が自由意思に基づいてそこにいるとはいえない特段の事情があれば,監護親による「拘束」を認め得るとしました。そして,返還決定に従わない監護の継続について顕著な違法性を検討し,原審を破棄して差し戻しました。

第3 年齢だけでは自由意思を判断できない

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性別の取扱いの変更審判―生殖不能要件違憲決定後の要件・申立て・必要資料(AI作成)

目次

第1 最高裁令和5年10月25日大法廷決定の結論第2 現在の要件をどう読むか第3 外観要件は別問題である第4 申立人・管轄・費用第5 申立てに必要な書類第6 申立て前の確認手順第7 審判後の取扱い第8 実務上の注意点第9 出典と確認範囲

最高裁大法廷は,令和5年10月25日,性別の取扱いの変更審判について,生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠くことを求める要件を憲法13条に違反し無効と判断しました。ただし,外観要件まで多数意見が無効と判断したわけではありません。申立てでは,最高裁決定が無効とした要件,現在も裁判所案内に掲げられている要件,必要書類を分けて確認する必要があります。

第1 最高裁令和5年10月25日大法廷決定の結論

最高裁令和5年10月25日大法廷決定(令和2年(ク)第993号)は,性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号の生殖不能要件を,憲法13条に違反し無効としました。

最高裁は,医学的知見の進展により,必要な治療を受けたかどうかが性別適合手術の有無だけで決まるものではなくなったと指摘しました。その上で,生殖腺除去手術を受けるか,性自認に従った法令上の性別の取扱いを受ける重要な法的利益を断念するかという過酷な二者択一を迫ることは,必要かつ合理的な制約ではないと判断しました。

条文が形式上残っていても,違憲無効とされた生殖不能要件を満たさないことを理由に性別変更審判を拒むことはできません。

第2 現在の要件をどう読むか

裁判所の「性別の取扱いの変更」案内は,令和8年10月1日現在,次の事項を掲げています。

2人以上の医師により,法律上の「性同一性障害者」に該当すると診断されていること
18歳以上であること
現に婚姻していないこと
現に未成年の子がいないこと
生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること

このうち5番目の生殖不能要件について,裁判所案内自体が,最高裁大法廷決定により憲法13条に違反し無効と判断されたと注記しています。実務では,単に条文又は古い書式を読むのではなく,この違憲無効判断を反映して要件を整理します。

第3 外観要件は別問題である

同法3条1項5号の外観要件は,「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること」を求めます。令和5年大法廷決定の多数意見は,原審がこの要件に関する申立人の主張を判断していなかったため,更に審理させる目的で事件を原審に差し戻しました。

反対意見には外観要件も違憲無効とする見解がありますが,多数意見の判断ではありません。現在の裁判所案内も外観要件を掲げています。そのため,「最高裁決定により性別適合手術に関する要件はすべてなくなった」と説明するのは正確ではありません。

外観要件への該当性,必要な医療資料及び申立先家庭裁判所の運用は,申立て時点で個別に確認します。令和5年大法廷決定後の差戻審や下級審実務を援用する場合は,報道や二次資料だけでなく,入手可能な裁判書本文で射程を確認する必要があります。

第4 申立人・管轄・費用

申立人:性別の取扱いの変更を求める本人です。
申立先:申立人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

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財産分与審判で不動産の明渡しも命じられる場合―家事事件手続法154条2項4号と最高裁令和2年8月6日決定(AI作成)

第1 結論とこの記事の対象第2 最高裁令和2年8月6日決定の事案1 争われた点2 原審と最高裁の結論第3 明渡しを命じる法的根拠1 家事事件手続法154条2項4号2 財産分与を実効的にするための給付命令第4 命令できる場合とできない場合を分ける1 最高裁が示した場合2 当然に明渡しが命じられるわけではない3 第三者占有等は別に検討する第5 申立て・主張・証拠の組み立て1 対象不動産と占有関係を特定する2 分与の帰属と明渡しの必要性を一体で示す3 金銭給付・住宅ローン・明渡時期を調整する第6 審判後と強制執行を見据えた確認事項第7 関連記事第8 出典・確認状況

離婚後の財産分与審判で、夫婦の一方名義の不動産を他方が占有し、その不動産を占有者へ分与しないと判断される場合、家庭裁判所は、必要があると認めれば、占有者に対して名義人への明渡しを命じることができます。
最高裁令和2年8月6日第一小法廷決定は、明渡しは必ず民事訴訟で別に請求しなければならないという原審の理解を否定しました。ただし、財産分与審判をしただけで明渡命令が当然に付くという判断ではありません。

第1 結論とこの記事の対象

実務上の要点は、財産分与の対象・帰属・評価だけでなく、審判後に誰が不動産を占有し、どの給付を命じなければ判断した権利関係を実現できないかまで申立て段階から示すことです。

本記事は、離婚した当事者間の財産分与審判において、一方当事者名義の不動産を他方当事者が占有している場合を対象とします。賃借人、同居親族、会社その他の第三者が占有している場合や、所有権自体が第三者との間で争われている場合は、別の手続・当事者・請求原因を検討する必要があります。

第2 最高裁令和2年8月6日決定の事案
1 争われた点

抗告人と相手方は平成12年に婚姻し、平成29年に離婚しました。婚姻中に協力して得た財産として抗告人名義の建物等があり、その建物を相手方が占有していました。

財産分与の審判で、家庭裁判所がその建物を相手方へ分与しないと判断した場合に、家事事件手続法154条2項4号に基づいて、相手方に対し抗告人への建物明渡しを命じることができるかが争点となりました。

2 原審と最高裁の結論

原審は、明渡請求は所有権に基づくものとして民事訴訟で審理判断されるべきであり、家事審判では命じることができないとしました。

最高裁は、この判断を破棄し、東京高裁へ差し戻しました。財産分与の内容に沿った権利関係を実現するため必要と認められるときは、家庭裁判所が財産分与審判の中で明渡しを命じることができるとしたためです。

第3 明渡しを命じる法的根拠
1 家事事件手続法154条2項4号

家事事件手続法154条2項は、財産分与に関する処分の審判を含む一定の審判で、当事者に対し、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命じることができると定めています。

財産分与については、民法768条により、家庭裁判所が分与の額だけでなく方法も定めます。令和8年4月1日以後に離婚した場合は、離婚後に財産分与を求められる期間が原則5年となっており、同日前に離婚した場合の原則2年とは異なります。

2 財産分与を実効的にするための給付命令

最高裁は、財産分与審判が分与の要否・額・方法を定めるだけにとどまると、当事者は、その内容に沿った権利関係を実現するため、審判後に改めて給付訴訟等を提起しなければならないと指摘しました。

同号は、この迂遠な手続を避け、財産分与審判を実効的なものとする趣旨です。条文は、財産を他方へ分与する場合だけに給付命令を限定していません。そのため、他方当事者へ分与しない財産についても、判断した権利関係の実現に必要な給付を命じることができます。

第4 命令できる場合とできない場合を分ける
1 最高裁が示した場合

最高裁が明示したのは、①当事者双方が婚姻中の協力によって得た財産であり、②一方当事者の所有名義の不動産を、③他方当事者が占有し、④その不動産を他方当事者へ分与しないと判断した場合です。この場合に、その判断に沿った権利関係を実現するため必要と認められれば、他方当事者に名義人への明渡しを命じることができます。

2 当然に明渡しが命じられるわけではない

決定の文言は「命ずることができる」であり、「必ず命じなければならない」ではありません。明渡しの必要性、分与する金銭との関係、転居準備の要否、子その他の同居者の生活、合意や使用権原の有無など、個別事情に即した審理が必要です。

また、最高裁は原審を破棄して差し戻したものであり、自ら具体的な明渡時期や条件を定めたものではありません。破棄差戻しという手続結果と、差戻審での最終的な給付内容を混同しないことが必要です。

3 第三者占有等は別に検討する

同決定は、財産分与審判の当事者である元配偶者が占有していた事案です。第三者が独自の賃借権その他の権原を主張する場合、抵当権実行や任意売却が予定される場合、共有者がいる場合には、その第三者の手続保障と権利関係を別に検討します。

財産分与審判の給付命令を、審判当事者でない者に対する一般的な明渡命令として扱うことはできません。

第5 申立て・主張・証拠の組み立て
1 対象不動産と占有関係を特定する

(続きを読む...)財産分与審判で不動産の明渡しも命じられる場合―家事事件手続法154条2項4号と最高裁令和2年8月6日決定(AI作成)

有責配偶者からの離婚請求―別居期間は何年なら認められるのか,最高裁平成2年11月8日判決から考える(AI作成)

目次

第1 昭和62年大法廷判決の基本枠組み
第2 最高裁平成2年11月8日判決
第3 別居年数だけでは決まらない
第4 判断の基準時は現在に近い
第5 離婚請求者側の主張立証
第6 相手方配偶者側の主張立証
第7 有責性と財産・生活保障を混同しない
第8 受任時のチェックリスト
第9 現行民法との関係
第10 出典及び確認状況

不貞行為や一方的な別居等によって婚姻関係の破綻について主として責任を負う配偶者から離婚を請求する場合,「別居が何年続けば離婚できるか」という質問を受けることが多い。しかし,最高裁判例は,別居期間だけで自動的に結論を出す年数基準を採用していない。

最高裁昭和62年9月2日大法廷判決が示した枠組みを前提に,最高裁平成2年11月8日判決は,原審が約8年の別居期間を短いとした判断を破棄し,口頭弁論終結時の事情を十分に審理すべきであるとした。重要なのは,別居年数,夫婦の年齢・同居期間,未成熟子の有無,離婚後の生活の苛酷性及び離婚請求者が行ってきた経済的配慮等を総合することである。

第1 昭和62年大法廷判決の基本枠組み

最高裁大法廷昭和62年9月2日判決・昭和61年(オ)第260号は,有責配偶者からの離婚請求であっても,夫婦が相当の長期間別居し,その間に未成熟の子が存在せず,相手方配偶者が離婚によって精神的,社会的又は経済的に極めて苛酷な状態に置かれる等の著しく社会正義に反する特段の事情がないときは,請求を認容し得るとした。

「相当の長期間」は固定された年数ではない。夫婦の年齢,同居期間,別居に至った経緯,別居後の交流及び生活関係等と比較して評価される。未成熟子がいるか否かも重要であるが,それだけが独立した機械的要件ではなく,子の監護・生活の実情を含む全体事情の中で検討される。

第2 最高裁平成2年11月8日判決

最高裁第一小法廷平成2年11月8日判決・平成元年(オ)第1039号は,有責配偶者である夫からの離婚請求について,原審が,別居期間約8年は同居期間及び当事者の年齢との対比で短く,請求は許されないと判断した事案である。

最高裁は,別居期間が約8年に及んでいること等を踏まえ,別居期間だけを形式的に比較して請求を排斥するのではなく,原審口頭弁論終結時における諸事情を審理判断すべきであるとした。そして,離婚により相手方配偶者が精神的,社会的又は経済的に極めて苛酷な状態に置かれるか等の点について審理が尽くされていないとして,原判決を破棄し,事件を原審へ差し戻した。

この判決は,「別居8年なら必ず離婚が認められる」としたものではない。最高裁は離婚を自判で認容せず,総合判断に必要な事実の審理が不足しているとしたのである。

第3 別居年数だけでは決まらない

別居期間は重要な事情であるが,開始日と年数を数えるだけでは足りない。次の事情を同じ時間軸に並べる必要がある。

① 婚姻日,同居期間及び実質的に共同生活が失われた時期
② 別居開始の経緯,別居を継続させた事情及び修復に向けた協議
③ 当事者の年齢,健康状態,就労能力及び収入
④ 未成熟子の年齢,監護状況,教育費及び親子交流

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国際養育費の請求と回収―準拠法・日本の裁判管轄・外国裁判の承認と強制執行(AI作成)

目次
第1 最初に決める四つの事項
第2 誰の権利を,どの手続で行使するか
第3 日本の裁判所に国際裁判管轄があるか
第4 養育費の準拠法を決める
第5 外国の養育費裁判を日本で使う
第6 日本の判断を外国で回収に使う場合
第7 日本国内の財産から回収する場合
第8 受任時にそろえる資料
第9 関連記事
第10 出典と調査範囲

国際的な養育費事件では,「どの国の法で支払義務を判断するか」が分かっても,直ちにお金を回収できるわけではない。誰が誰に請求するのか,日本の裁判所に管轄があるのか,既存の外国裁判を利用できるのか,債務者の財産がどの国にあるのかを順に確認する。本記事は,令和8年10月1日現在の日本法と裁判所の公開資料を基礎に,受任から回収までの判断順序を整理する。

第1 最初に決める四つの事項

最初に,①請求権者と相手方,②新たな取決め又は裁判が必要か,③日本と外国のどちらで裁判をし,どちらの財産から回収するか,④適用される法律と既存裁判の効力を記録する。国際裁判管轄,準拠法,外国裁判の承認,強制執行は別の判断である。日本法が準拠法となっても日本で裁判できるとは限らず,日本で裁判できても外国にある給与や預金を日本の執行手続だけで差し押さえることはできない。

第2 誰の権利を,どの手続で行使するか

離婚に伴い監護親が他方の親へ子の監護費用の分担を求める場合,子自身の扶養料請求権を行使する場合,既にある外国裁判に基づいて支払を求める場合では,権利者,申立人,必要な書類及び手続が異なる。受任時には,合意書,調停調書,審判書,判決書のどれがあるか,その文書で誰が債権者とされ,どの期間・金額の支払が命じられているかを先に読む。

扶養義務の準拠法に関する法律6条は,扶養権利者のためにその権利を行使できる者の範囲等を扶養義務の準拠法に委ねる。親権者や監護者であるというだけで,常に自己名義で子の扶養請求権を行使できると決めない。外国の親権・監護裁判の効力,子の手続行為能力,法定代理及び利益相反も区別して調べる。日本の家事事件での申立人は,監護費用分担の手続か子の扶養請求の手続かに応じて確認する。

第3 日本の裁判所に国際裁判管轄があるか

離婚訴訟に子の監護費用の分担に関する裁判を附帯して求める場合は,人事訴訟法3条の4を確認する。これとは別に養育費又は扶養について審判を求める場合,家事事件手続法3条の10は,申立人でない扶養義務者,又は扶養権利者(監護費用分担では子の監護者若しくは子)の住所が日本国内にあることを管轄原因とする。住所がないか知れないときは居所を確認する。調停の国際裁判管轄は同法3条の13,特別の事情による申立ての却下は同法3条の14で別に確認する。

ここでいう管轄の住所・居所と,後述する準拠法の連結点である常居所を混同しない。子が日本国籍であること,日本に一時滞在したことだけで日本の管轄を断定せず,住所の資料,転居の経緯,相手方の所在,証拠の所在地をそろえる。日本に国際裁判管轄があると分かった後も,どの家庭裁判所へ申し立てるかという国内の土地管轄を別に確認する。神戸家庭裁判所の案内も,離婚に伴う養育費の管轄と準拠法を分けて示している。

第4 養育費の準拠法を決める

親子間の扶養義務の準拠法は,親権等の親子関係を扱う通則法32条から直ちに決めず,扶養義務の準拠法に関する法律2条を確認する。扶養権利者の常居所地法が第一順位であり,その法によって扶養を受けられなければ当事者の共通本国法,それでも扶養を受けられなければ日本法へ進む。単に前順位法による金額が低いという理由で,次の法を自由に選べるわけではない。

子が重国籍の場合,扶養法には通則法38条1項のような国籍一本化規定がない。共通に有する国籍の法が共通本国法となり得ること,その判断が同法2条1項ただし書の解釈であることを確認する。扶養法2条2項は重国籍者の特則ではなく,日本法へ進むための規定である。外国法で扶養を受けられるかを判断する際は,成年年齢,教育中の子への扶養,障害,期間及び権利行使者を,条文の施行日とともに調べる。詳しくは国際扶養の準拠法を参照されたい。

第5 外国の養育費裁判を日本で使う

外国に養育費を命じる裁判があるときは,新たな日本の本案裁判を起こす前に,その裁判の確定性,給付を命じる部分,債権者・債務者,対象期間を確認する。家事事件手続法79条の2は,外国裁判所の家事事件についての確定した裁判等につき,性質に反しない限り民事訴訟法118条を準用する。同条の承認要件は,外国裁判所の裁判権,敗訴者への適法な呼出し又は応訴,内容と手続の公序,相互の保証である。外国で裁判を得たことだけで日本における効力を断定しない。

承認され得ることと,その裁判に基づき日本で強制執行できることも別である。民事執行法24条による執行判決の要否・管轄を確認する。家事事件の裁判に係る執行判決を求める訴えは,原則として家庭裁判所が管轄する。執行判決を得た後,国内の給与・預金等について債務名義に基づく執行を検討する。外国の文書が判決・審判・公的機関の判断のどれに当たるか,給付部分が確定しているかは,原文と外国法資料で確認する。

第6 日本の判断を外国で回収に使う場合

債務者の給与や預金が外国にしかないときは,日本の調停調書や審判・判決を得るだけでは回収工程は終わらない。執行先国でその判断が承認又は執行の対象になるか,同国の手続,必要な確定証明・送達記録・翻訳及び現地代理人を確認する。日本の執行判決や差押命令を外国の財産へそのまま及ぼすとは説明しない。

外国の制度と二国間・多国間の枠組みの適用は相手国ごとに異なる。本記事は特定国で日本の養育費判断を執行できると保証するものではない。受任時には,執行先の候補国と財産の種類を確定し,現地の公的資料又は弁護士を通じて必要書類・期間・費用を調べる。

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戸籍の名字の異字体を正字体に戻す方法―申出・氏の変更許可・戸籍訂正の区別(AI作成)

目次第1 結論―文字の関係によって手続が三つに分かれる1 最初に確認すべき三つの経路2 「異体字」という呼び方だけでは決められない理由第2 同じ字種の正字へ直す市区町村への申出1 申出で処理できる範囲2 自治体が示している具体例3 個別の文字を窓口で確認する方法第3 申出人,提出先及び変更の効果1 申出人と提出先2 一つの戸籍ごとの確認3 一度直した文字を元へ戻す場合第4 別の字種へ変える場合の氏の変更許可1 戸籍法107条の手続になる場合2 申立人,申立先,費用及び資料3 許可後の届出第5 現在の戸籍記載自体が誤っている場合の戸籍訂正1 市区町村長による戸籍法24条の訂正2 家庭裁判所の許可を得る戸籍法113条の訂正第6 手続を進める順序1 現在の文字と希望する文字を固定する2 本籍地へ確認する質問3 変更後に確認する事項第7 よくある疑問1 「髙」を「高」にする場合も申出だけで済むか2 正字へ直せば全ての名義が自動的に変わるか3 電子手続で異体字を入力できない問題とは同じか第8 まとめ第9 出典及び確認日1 法令2 裁判所及び自治体の公式案内3 行政研究資料及び文字情報

戸籍の名字に使われている異字体を一般的な正字へ直したい場合,最初から家庭裁判所へ申し立てるとは限りません。
現在の文字と希望する文字が戸籍実務上で同じ字種の対応関係にあれば,市区町村への申出で処理できることがあります。
別の字種への変更であれば氏の変更許可,現在の戸籍記載そのものが誤っていれば戸籍訂正が問題となるため,三つの経路を区別する必要があります。

第1 結論―文字の関係によって手続が三つに分かれる
1 最初に確認すべき三つの経路

戸籍の文字を正字へ直す手続は,おおむね次のように整理できます。
ただし,個々の文字がどの類型に当たるかは見た目だけでは決められないため,本籍地の市区町村に現在の一字と希望する一字を示して確認する必要があります。

確認結果主な手続主な窓口・根拠同じ字種の俗字・誤字・旧字体から対応する正字・通用字体へ直す場合市区町村長の職権訂正を促す申出又は更正の申出原則として本籍地の市区町村現在の氏の記載は正しいが,別の字種の氏へ変えたい場合氏の変更許可を得た後の届出戸籍法107条,住所地の家庭裁判所出生届などの原始資料と異なる文字が記載されたなど,現在の戸籍に錯誤・遺漏がある場合市区町村長による訂正又は家庭裁判所の許可を得た戸籍訂正戸籍法24条・113条
2 「異体字」という呼び方だけでは決められない理由

日常用語では,旧字体,俗字,誤字,別体,フォントのデザイン差及び外字をまとめて「異体字」と呼ぶことがあります。
しかし,戸籍実務では,その呼び方よりも,二つの文字が同じ字種に属する対応字であるか,異なる字種であるかが重要です。

戸籍の文字は法務省の通達や文字情報に基づいて扱われており,漢字辞典やパソコンの変換候補だけで手続を確定することはできません。
令和6年5月にも誤字俗字・正字一覧表の一部改正が公表資料で確認できるため,特定の文字の組合せは現在の窓口運用で確認するのが安全です。

第2 同じ字種の正字へ直す市区町村への申出
1 申出で処理できる範囲

戸籍に氏又は名が俗字等若しくは誤字で記載されており,対応する同じ字種の正字等へ直す場合は,市区町村長限りで文字を訂正できる取扱いがあります。
また,通用字体と異なる字体を通用字体へ改める更正の申出として扱われる場合もあります。

この申出は,新しい氏を自由に選ぶための届出ではありません。
市区町村長に対して,現在の戸籍文字と対応正字との関係を確認した上で職権訂正を求める手続であり,対応関係に疑義があれば法務局への照会が行われることがあります。

2 自治体が示している具体例

岸和田市の公式案内は,氏の文字である「澤」を「沢」に,「邊」を「辺」に直す例を,申出によって変更できる例として掲げています。
同案内は,誤字から正字,俗字から正字,旧字体から通用字体への変更が可能である一方,「埜」から「野」のように字種・字体が全く異なる文字への変更は氏又は名の変更になると説明しています。

豊川市の公式案内も,誤字や俗字を正しい字に訂正でき,旧字体を対応する新字体へ訂正できると案内しています。
鹿嶋市の公式案内は,「濱」などの旧字体を正字又は通用字体へ直す申出を例示しています。

3 個別の文字を窓口で確認する方法

相談時には,「異体字を普通の字にしたい」とだけ伝えるのではなく,①戸籍全部事項証明書に記載された現在の文字,②希望する文字,③その文字が記載された経緯,④筆頭者と配偶者の状況を示すと,手続の分類を確認しやすくなります。
細かなはね,点,線の長短などはフォントによって見え方が変わるため,戸籍証明書の字形と希望字形を紙面で並べて示すのが実務的です。

法務省の「戸籍統一文字情報」は文字を調べる手掛かりになりますが,検索結果だけで申出の可否が決まるわけではありません。
最終的には,本籍地の市区町村が現行の通達・一覧表に照らして判断します。

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親子交流は調停と審判のどちらで決めるか―間接強制ができる定め方,試行的実施及び統計(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象とする場面2 結論の要点第2 親子交流を定める手続1 協議,調停及び審判2 交流の試行的実施第3 調停と審判の終わり方1 全国の統計(令和7年)2 東京家庭裁判所の説明第4 間接強制ができる定め方(最高裁平成25年3月28日決定)1 判断基準2 間接強制が認められた定め(平成24年(許)第48号)3 間接強制が認められなかった定め4 子が交流を拒んでいる場合第5 取決めが守られないときの手段1 履行勧告2 間接強制3 定めの変更第6 調停で決めるか審判で決めるか1 調停で決める場合の注意点2 審判を求める場合の注意点第7 関連記事第8 出典1 法令2 裁判例3 統計・裁判所の資料
第1 この記事の対象と結論
1 対象とする場面

本記事は,別居や離婚によって子と離れて暮らす親と子との交流(親子交流)を,家庭裁判所の調停で決めるか審判で決めるかを考える際に,知っておくべき法令,最高裁の判断及び統計を整理する。
令和6年の民法等の改正(令和6年法律第33号。令和8年4月1日施行)により,民法766条1項の「父又は母と子との面会及びその他の交流」は「父又は母と子との交流」と改められ,裁判所の手続案内でも「親子交流調停」の語が用いられている。
本記事の統計と裁判例は改正前のものであり,そこでは「面会交流」の語が使われているので,引用する箇所ではその語をそのまま用いる。

以下,最高裁の決定にならい,子を監護している親を「監護親」,子を監護していない親を「非監護親」という。
本記事の条文は,令和8年9月28日時点の現行法をe-Gov法令検索で確認した。

2 結論の要点

①令和7年に全国の家庭裁判所で終局した面会交流の事件1万2135件のうち,調停成立は6508件(53.6%),審判による認容は1495件(12.3%)であった。
②調停調書でも審判でも,面会交流の日時又は頻度,各回の時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められ,監護親がすべき給付が特定されていれば,間接強制ができる(最高裁平成25年3月28日決定)。
③最高裁は同時に,面会交流は柔軟に対応できる条項に基づき,監護親と非監護親の協力の下で実施されることが望ましいとも述べている。
そのため,取決めでは,協力による柔軟な実施と,守られない場合に備えた特定とをどう両立させるかが問題になる。
④改正法により,審判事件と調停事件で家庭裁判所が当事者に交流の試行的実施を促す規定が設けられた(家事事件手続法152条の3,258条3項)。
⑤取決めが守られないときは,履行勧告,間接強制,定めの変更の申立てを使い分けることになる。

第2 親子交流を定める手続
1 協議,調停及び審判
(1) 民法の定め

民法766条1項は,父母が協議上の離婚をするときは,「子の監護をすべき者又は子の監護の分掌、父又は母と子との交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」と定める。
同条2項は,協議が調わないとき又は協議をすることができないときは,家庭裁判所が同項の事項を定めるとする。
離婚前の別居中の交流など,766条の場合のほかの交流については,民法817条の13第1項・2項が,父母の協議で定め,協議が調わないときは家庭裁判所が父又は母の請求により定めるとしている。
祖父母等の父母以外の親族と子との交流は,祖父母等と子との交流―最高裁令和3年3月29日決定と民法766条の2で扱っている。

(2) 調停から審判へ

家庭裁判所の手続は,通常,親子交流調停の申立てから始まる。
裁判所の「親子交流調停」の案内は,「話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には審判手続が開始され、裁判官が、一切の事情を考慮して、判断(審判)をすることになります。」と説明している。
家事調停の申立てから終了までの流れは,家事調停の申立て,進行,ウェブ会議及び終了後の手続で扱っている。

2 交流の試行的実施

家事事件手続法152条の3第1項は,「家庭裁判所は、子の監護に関する処分の審判事件(子の監護に要する費用の分担に関する処分の審判事件を除く。)において、子の心身の状態に照らして相当でないと認める事情がなく、かつ、事実の調査のため必要があると認めるときは、当事者に対し、子との交流の試行的実施を促すことができる。」と定める。
同条2項により,家庭裁判所は,交流の方法,日時,場所,家庭裁判所調査官その他の者の立会いの有無を定め,子の心身に有害な影響を及ぼす言動の禁止等の条件を付けることができ,同条3項により,結果の報告を求めることができる。
この規定は,子の監護に関する処分の調停事件(養育費に関するものを除く。)と離婚調停事件に準用される(同法258条3項)。

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国際扶養の準拠法―常居所地法・共通本国法・日本法(AI作成)

目次第1 扶養は独立して準拠法を決める第2 三段階の連結第3 成年年齢との関係第4 重国籍と共通本国法第5 実務上の確認事項第6 出典

国際的な親子間の扶養料請求では,親権者,法定代理人,子の成年年齢及び扶養義務の準拠法を分けて考える必要がある。本記事は,扶養義務の準拠法に関する法律を中心に,令和8年9月28日現在の日本法を整理する。

第1 扶養は独立して準拠法を決める

親権等の親子間の法律関係は法の適用に関する通則法32条によるが,扶養義務については同法43条1項により同条の適用が除外され,特別法である「扶養義務の準拠法に関する法律」による。子の国籍法が成年年齢を16歳とすることや,一方の親が単独親権者であることだけで,扶養請求の準拠法と結論を決めることはできない。

第2 三段階の連結

扶養義務の準拠法に関する法律2条1項本文は,扶養権利者の常居所地法を第一順位とする。同法によって扶養を受けられないときは,当事者の共通本国法を第二順位とする。同項ただし書及び2項により,これらの法によっても扶養を受けられないときは日本法による。

この段階的連結は,第一順位の法を適用した結果が不利なら自由に次の法を選べる制度ではない。「扶養を受けることができない」場合に限って次順位へ進む。扶養の要件,権利者・義務者の範囲,程度,期間,変更・消滅等を各準拠法について確認する必要がある。

第3 成年年齢との関係

外国法が親の扶養義務を「未成年子」に限り,成年年齢を16歳と定める場合でも,16歳以上の子が扶養を受けられないと直ちに結論づけない。「未成年子」の該当性を扶養準拠法の実体要件として判断するのか,別個の先決問題として子の本国法等により判断するのかを検討する。前者の構成で扶養が認められなければ扶養法2条の次順位法を確認し,後者の構成なら別に定まる成年年齢と扶養準拠法上の要件を組み合わせて検討する。外国法が具体的な年齢を定めるのか,「未成年者」という概念を用いるのかも条文と解釈資料で確認する。

子の扶養請求権の存否,子のために権利を行使できる者,親権・法定代理権及び日本の裁判所での手続行為能力は,問題ごとに分けて確認する。扶養法6条は,扶養権利者のために権利を行使できる者の範囲等を扶養義務の準拠法に委ねる。親権等の親子間の法律関係には通則法32条が関わり,日本での申立ての方式や手続上の代理には日本の手続法も関わる。日本国籍を含む重国籍者の本国法を通則法によって決める場面では,同法38条1項ただし書も確認する。

第4 重国籍と共通本国法

扶養義務には通則法38条1項の国籍一本化規定をそのまま適用せず,扶養法にも同様の規定はない。扶養法2条1項ただし書の「当事者の共通本国法」は,両当事者が共通に国籍を有する国があればその国の法を指すと解される。これは同項ただし書の解釈であり,扶養法2条2項に重国籍者の特則があるわけではない。同条2項は,先順位の法によっても扶養を受けられない場合に日本法を適用する規定である。

例えば,子が日本国籍と甲国籍を有し,父が甲国籍だけを有する場合,共通本国法として甲国法が第二順位になり得る。子が日本国籍を含むため能力について日本法が本国法になることと,扶養の第二順位に甲国法が現れることは矛盾しない。問題ごとに適用法令が異なるためである。

第5 実務上の確認事項

①扶養権利者・義務者の国籍と重国籍の組合せ。
②権利者の常居所地。短期滞在先と生活の本拠を区別する。
③第一順位法で扶養を受けられるか。年齢だけでなく,教育中の子,障害のある成年子等の規律も調べる。
④共通本国法の有無と,重国籍者が共通に有する国籍。
⑤日本法に進む要件を満たすか。
⑥扶養法6条による権利行使者,親権・法定代理,利益相反,外国の親権・監護裁判の承認を分けて確認する。
⑦外国法の条文,判例,運用及び日本語訳を提出できる形で準備する。

請求・回収までの手順は、関連記事「国際養育費の請求と回収―準拠法・日本の裁判管轄・外国裁判の承認と強制執行」を参照されたい。

第6 出典

①e-Gov法令検索「扶養義務の準拠法に関する法律」2条・6条。
②e-Gov法令検索「法の適用に関する通則法」32条,38条,43条。
③小出邦夫編著『一問一答 新しい国際私法』(商事法務,平成18年)135頁~140頁。
④東京高等裁判所平成18年10月30日決定(平成18年(ラ)第876号,判例時報1965号70頁。裁判所ウェブサイト未掲載)。同決定の書誌は専門誌索引で確認したが,本記事はその事案の結論を直接の根拠としていない。
⑤法務省「平成29年司法試験の採点実感(国際関係法・私法系)」。同年の別問題について,扶養法には通則法38条1項相当の規定がないことを明示する資料であり,令和8年司法試験の公式資料ではない。

国際親子関係の準拠法―嫡出推定・嫡出否認・重国籍・出訴期間(AI作成)

目次第1 準拠法を決める単位第2 嫡出親子関係の成立第3 嫡出否認第4 重国籍者の本国法第5 実務上の確認事項第6 出典

国際的な親子関係では,DNA上の父子関係だけでなく,どの国の法が嫡出推定を置き,誰が,どの方法・期間で否認できるかを確定しなければならない。本記事は,令和8年9月28日現在の法の適用に関する通則法を基礎に整理する。

第1 準拠法を決める単位

離婚の準拠法,嫡出親子関係の成立・否認の準拠法,認知の準拠法,親権等の親子間の法律関係の準拠法は同じとは限らない。離婚が成立した国又は親子関係を争う裁判所の所在地だけで準拠法を決めてはならない。

第2 嫡出親子関係の成立

通則法28条1項は,夫婦の一方の本国法で,子の出生時に子が嫡出となるべきときは,その子を嫡出である子とする。夫と妻のいずれか一方の本国法が嫡出性を認めれば足りる選択的連結であり,子の身分の安定を図る規定である。

どの期間に生まれた子を夫の子と推定するか,推定が及ばない場合があるかは,この準拠法によって判断する。出生時の夫婦双方の国籍を確認し,それぞれの国の嫡出推定規定を調査する必要がある。

第3 嫡出否認

嫡出否認は嫡出推定と表裏の関係にあるため,通則法28条の問題と解される。双方の本国法が子を嫡出とする場合,嫡出性を否定するには,原則として双方の法により否認が可能でなければならないと解されている。否認権者,否認原因,権利行使期間とその起算点,推定の及ばない子の扱いは,指定された法の内容を確認する。他方,日本の裁判所に訴える場合の訴状・送達等の手続は日本の手続法に従うため,外国法上の権利行使要件と日本の訴訟手続を分ける。

例えば,一方の法が母にも否認権を認め,出生を知った時から90日以内と定め,他方の法が母又は子にも否認権を認めて3年の期間を定めるときは,誰がいつ提訴したかを両法について検討する。片方の法の期間だけを満たしても,もう片方の法による嫡出性が残れば,否認請求が認められないことがある。

日本法については,令和4年法律第102号による改正後の民法772条以下と経過措置を確認する。現在の民法777条は原則3年の出訴期間を定めるが,出生時期によって改正前法が適用される可能性がある。

第4 重国籍者の本国法

通則法38条1項は,当事者が二つ以上の国籍を有するとき,原則として常居所を有する国が国籍国の一つであればその国の法を本国法とし,そうでなければ最も密接な関係がある国の法を本国法とする。ただし,日本国籍を含む重国籍者については日本法を本国法とする。

したがって,日本国籍と外国国籍を有する子又は親については,外国に常居所があっても,通則法上の本国法は日本法となる。ただし,扶養義務の準拠法については別の「扶養義務の準拠法に関する法律」が適用されるため,通則法38条をそのまま当てはめない。

第5 実務上の確認事項

①出生時の父母の婚姻関係と国籍,重国籍の有無。
②出生証明書,戸籍,婚姻・離婚の成立日。
③各国法の嫡出推定期間,否認権者,出訴期間及び起算点。
④外国法上の裁判手続と,日本の人事訴訟・家事事件の国際裁判管轄。
⑤反致を扱うときは通則法41条の要件とただし書の適用除外を確認する。試験問題が反致の検討を不要と指定している場合は,その指定を答案に明示する。当事者の契約だけで親子の身分関係の抵触規則を排除したと扱わない。
⑥日本法の改正前後を分けるための出生年月日。

第6 出典

①e-Gov法令検索「法の適用に関する通則法」28条,29条,30条,38条,41条。
②e-Gov法令検索「民法」772条~778条の2。
③e-Gov法令検索「人事訴訟法」。
④法務省「無戸籍でお困りの方へ・よくある御質問」。
⑤小出邦夫編著『一問一答 新しい国際私法』(商事法務,平成18年)138頁~140頁(設問135・136)。
⑥東京家庭裁判所令和3年1月4日審判(令和2年(家イ)第8523号。裁判所ウェブサイト未掲載)。判例の位置付けは北澤安紀「嫡出否認に関する準拠法」令和4年度重要判例解説283頁以下で確認した。

未成年子による扶養料請求の法定代理と利益相反―単独親権・共同親権・特別代理人の実務(AI作成)

目次

第1 結論
第2 最初に区別すべき二つの請求
第3 未成年の子に手続行為能力はあるか
第4 誰が法定代理人になるか
第5 相手方と親権者の組合せによる類型別整理
第6 四つの「代理人」を区別する
第7 兄弟姉妹・並行請求・和解における利益相反
第8 共同親権施行後の注意点
第9 申立前の実務チェックリスト
第10 子の意思の把握
第11 国際扶養事件では準拠法を別に確認する
第13 まとめ

◯本ブログ記事は専らAIで作成したものです。
◯以下の記事も参照してください。
・ 父母間の養育費合意は子自身の扶養料請求を妨げるか―免除条項・事情変更・二重請求の整理(AI作成)
・ 親と未成年の子の利益相反と特別代理人―遺産分割・相続放棄・担保提供の判断基準と代理権の濫用(AI作成)
・ 訴訟能力,訴状等の受送達者,審判前の保全処分及び特別代理人(AIリライト)

第1 結論

未成年の子が父又は母に民法877条以下の扶養料を請求する場合,申立人は子であり,金銭給付を求める通常の扶養請求では,子は法定代理人を通じて手続を行うのが原則である。子と同居している,日常の監護をしている,又は離婚時に監護者と定められたというだけで,その親に当然に法定代理権が生じるわけではない。まず親権者又は未成年後見人を確認する必要がある。

次に,法定代理人となるべき者と子との間に利益相反がないかを確認する。典型例は,子が扶養料を請求する相手方自身が親権者である場合である。この場合,その親が子を代理して自分を相手に申し立てることはできず,民法826条の特別代理人が問題となる。共同親権者の一方だけが相手方である場合も,「他方の親だけで足りる」と即断せず,非利益相反の親と特別代理人との共同代理の要否を検討する。

弁護士を選任しても,その前提となる法定代理権の欠缺又は利益相反が当然に治癒されるわけではない。また,民法826条の特別代理人,家事事件手続法19条の手続上の特別代理人及び同法22条・23条の手続代理人は,根拠・選任主体・権限が異なる。

第2 最初に区別すべき二つの請求

請求権利主体・当事者主な根拠通常の申立人

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子の引渡しの間接強制と権利濫用―最高裁平成31年決定と令和4年決定の違い(AI作成)

第1 結論第2 子の引渡しを実現する手続1 子の引渡しを命ずる審判と強制執行2 間接強制と直接的な引渡しの実施3 人身保護請求とは区別する第3 最高裁平成31年4月26日決定1 事案の経過2 最高裁の判断3 射程第4 最高裁令和4年11月30日決定1 事案の経過2 最高裁の判断3 宇賀克也裁判官の補足意見第5 二つの決定の違い第6 申立て・抗告で確認する事項1 拒絶の言葉だけで結論を出さない2 時系列と働き掛けを具体化する3 手続ごとの判断対象を混同しない第7 関連記事第8 出典
第1 結論

子が引渡しを拒んでいることは,子の引渡しを命ずる審判を債務名義とする間接強制を直ちに妨げる理由にはなりません。
もっとも,直接的な引渡しの実施が子の心身への重大な悪影響のおそれを理由に不能となり,人身保護請求でも子が自由意思に基づいて現在の監護者の下にとどまっていると判断された後に,金銭の支払で監護者を心理的に圧迫することは,過酷な執行として権利濫用となることがあります。

最高裁平成31年4月26日決定・平成30年(許)第13号は,先行する引渡執行と人身保護請求の具体的な経過を踏まえて,間接強制の申立てを権利濫用としました。
これに対し,最高裁令和4年11月30日決定・令和3年(許)第17号は,審判確定後約2か月の間に子が2回拒絶したにとどまる事案で,権利濫用とした原決定を破棄しました。

二つの決定は,子の拒絶意思を重視するか否かという抽象的な対立ではありません。
子の拒絶の現れ方,子への影響,先行手続の結果,現在の監護者が引渡しのためにした働き掛けなどを,具体的な時系列に沿って比較した判断です。

第2 子の引渡しを実現する手続
1 子の引渡しを命ずる審判と強制執行

家庭裁判所が子の監護者を定め,現在の監護者に子の引渡しを命じても,審判の確定だけで現実の監護が移るわけではありません。
任意の引渡しが実現しないときは,確定審判等を債務名義として強制執行を申し立てることになります。

強制執行の場面でも,子は単なる物ではありません。
引渡しを命じられた者は,子の年齢,発達の程度その他の事情を踏まえ,子の心身に有害な影響を及ぼさないよう配慮しつつ,合理的に必要な行為をして引渡しを実現する義務を負います。

2 間接強制と直接的な引渡しの実施

民事執行法174条1項は,子の引渡しの強制執行について,①執行裁判所が執行官に子の引渡しを実施させる方法と,②同法172条1項の間接強制の方法を定めています。

間接強制は,債務者が一定期間内に引渡しをしないとき,遅延期間に応じた一定額の金銭を債権者に支払うよう命じ,心理的な圧力によって履行を促す方法です。
執行官による引渡しの実施は,間接強制決定の確定後2週間が経過した場合,間接強制をしても監護を解く見込みがない場合,又は子の急迫の危険を防止するため直ちに執行する必要がある場合のいずれかで申し立てることができます。

間接強制と執行官による引渡しの実施は,申立要件,執行の方法及び子への影響が異なります。
一方の手続で生じた事情を他方で援用するときは,いつ,誰が,何を観察し,どの理由で手続が終わったのかを明確にします。

3 人身保護請求とは区別する

人身保護請求は,現在の監護が人身保護法上の拘束に当たり,その拘束が顕著に違法であるかなどを審理する別の手続です。
子の引渡しの審判,強制執行及び人身保護請求では,判断対象と判断時点が同じではありません。

もっとも,先行する人身保護請求で子の判断能力,意思の強固さ,現在の監護者からの影響の有無が具体的に審理された場合,その認定経過は,後の間接強制が過酷な執行となるかを判断する重要な事情になり得ます。

第3 最高裁平成31年4月26日決定
1 事案の経過

最高裁平成31年4月26日決定の事案では,家庭裁判所が母を3人の子の監護者と指定し,父に子らの引渡しを命じる審判が確定しました。
執行官による引渡しの際,二男と長女は母へ引き渡されましたが,当時9歳3か月の長男は明確に拒絶して泣きじゃくり,呼吸困難に陥りそうになりました。執行官は,執行を続けると長男の心身に重大な悪影響を及ぼすおそれがあるとして,長男について執行不能で終了しました。

その後,母は父らを拘束者として人身保護請求をしました。
長男は,当時9歳7か月で,弟妹と離れて暮らすのは嫌であるものの父らの下での生活を続けたいと述べました。裁判所は,長男が十分な判断能力に基づく強固な意思を明確に表示し,その意思は父らの影響によるものではなく自由意思であるとして,人身保護請求を棄却しました。

2 最高裁の判断

最高裁は,子が引渡しを拒絶する意思を表明していることは,直ちに間接強制を妨げる理由ではないという一般論を示しました。
しかし,本件では,引渡執行が子の心身への重大な悪影響のおそれを理由に不能となり,人身保護請求でも自由意思に基づく強固な拒絶意思が認定されていました。

最高裁は,この経過の下では,子の心身に有害な影響を及ぼさずに引渡しを実現するため父がすべき合理的な行為を具体的に想定することは困難であるとしました。
父に1日1万円の支払を命じて心理的に圧迫することは過酷な執行であり,間接強制の申立ては権利濫用に当たるとして,申立てを却下しました。

3 射程

この決定は,子が拒絶すれば間接強制はできないという一般ルールを定めたものではありません。
直接的な引渡しの実施で身体的不調が現れ,その後の人身保護請求で自由意思に基づく強固な意思が認定されたという,積み重なった事情の下での判断です。

第4 最高裁令和4年11月30日決定
1 事案の経過

最高裁令和4年11月30日決定の事案では,家庭裁判所が母を子らの監護者と指定し,父に引渡しを命じる審判が令和3年3月29日に確定しました。
同年4月5日,二男は母へ引き渡されましたが,長男は約2時間の説得にも応じず,母の下に行くと父に会えなくなると述べ,母を押しのけるなどして拒絶しました。

同年5月30日の弟との面会時にも,長男は母の姿を見て反発し,母に抱かれることを拒み,泣きながら父宅へ帰ることを強く求めました。
母は同年6月9日に間接強制を申し立て,原々審は,父に長男を引き渡すよう命じるとともに,履行しないときは1日2万円を支払うよう命じました。

2 最高裁の判断

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祖父母等と子との交流―最高裁令和3年3月29日決定と民法766条の2(AI作成)

◯本ブログ記事は専らAIで作成したものです。
◯以下の記事も参照してください。
・ 離婚に関するメモ書き
・ 家事調停に関するメモ書き
・ 平成21年度から令和6年度までの許可抗告事件の分析(AI作成)
・ 平成21年度から令和6年度までの最高裁民事破棄判決の分析(AI作成)

目次

第1 結論の要点
第2 最高裁令和3年3月29日決定(旧法)

1 祖父母と子との面会交流
2 祖母を監護者に指定する申立て
3 二つの決定を混同しないこと

第3 令和8年施行の民法766条の2

1 原則は父又は母による申立て
2 親族自身が申し立てられる場合
3 交流を定める実体要件

第4 申立てと立証の実務

1 最初に確認する事項
2 子の利益に関する資料

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離婚・家事事件の民間ADR――家庭裁判所の調停との違い,強制執行及びDV対応(AI作成)

目次

第1 民間ADRと家庭裁判所の家事調停

1 民間ADRとは何か
2 裁判所の調停との主な違い

第2 離婚・家事事件で利用できる場面

1 離婚条件,養育費及び親子交流
2 事業者ごとに取扱範囲が異なる

第3 民間ADRを選びやすい場合と家庭裁判所を選ぶべき場合

1 民間ADRを検討しやすい場合
2 裁判所又は保護手続を優先すべき場合

第4 成立した合意の効力と強制執行

1 合意書は当然に債務名義になるわけではない
2 認証ADRの特定和解と家事事件の例外
3 離婚そのものと届出

第5 申立て前に確認する事項

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親と未成年の子の利益相反と特別代理人―遺産分割・相続放棄・担保提供の判断基準と代理権の濫用(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象2 結論第2 親権者の代理権と利益相反の規律1 親権者の代理権2 民法826条3 父母が共同で親権を行う場合4 成年後見人への準用第3 利益相反行為の判断基準―外形で判断する1 判例の基準2 外形で判断することの意味3 昭和42年判決の事案第4 典型的な場面の判断1 遺産分割協議2 相続放棄3 担保の提供・保証4 親から子への贈与を受ける場合第5 特別代理人を選任せずにした行為の効力1 無権代理行為となる2 成年に達した後の追認3 選任された特別代理人自身が利益相反する場合第6 利益相反に当たらない場合の代理権の濫用1 民法107条2 親権者の代理権の濫用に関する判例3 現行法の下での読み方4 代理行為の時点の目的と,代金を使い込まれた場合の子の救済第7 特別代理人の選任の申立て1 申立ての概要2 申立ての前に確認すること3 手続の場面で求められる例4 未成年の子による扶養料請求第8 関連記事第9 出典1 法令2 裁判例3 裁判所の手続案内
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象

本記事は,親権者である父又は母が未成年の子を代理して法律行為をする場面のうち,親と子の利益が相反するため家庭裁判所に特別代理人の選任を請求しなければならないのはどのような場合かを扱う。
典型は,父が死亡して母と未成年の子が共同相続人となった場合の遺産分割協議,子の相続放棄,及び親の借入れのために子の不動産に担保を設定する場合である。
あわせて,利益相反行為に当たらない場合でも問題となる代理権の濫用を扱う。

調査基準日は令和8年9月25日である。
条文はe-Gov法令検索の現行条文を,裁判例は裁判所HPの裁判例検索で全文を確認した最高裁判例を,申立ての手続は裁判所HPの手続案内を用いた。
成年後見人と本人の利益相反(民法860条による826条の準用)は,相続人に認知症・精神障害等で判断能力を欠く人がいる場合の遺産分割及び成年後見人は本人の古い借金を返してよいかで扱っている。

2 結論

①親権を行う者とその子との利益が相反する行為については,親権を行う者は,子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない(民法826条1項)。
②利益相反行為に当たるかどうかは,行為の外形で決すべきであり,親権者の意図や行為の実質的な効果を問題とすべきではないとするのが判例である。
③親権者と未成年の子が共同相続人となった場合に,親権者が子を代理して遺産分割協議をすることは,親権者と子の利益相反行為となる。
親権者が数人の子を代理して遺産分割協議をする場合も,子同士の利益相反が問題となる。親権者自身が共同相続人であるときは各子について特別代理人を要し,親権者が相続人でないときは親権者が代理する一人を除く各子について別々の特別代理人を要する。
④親権者が特別代理人を選任せずに利益相反行為をしたときは無権代理行為となり,子が成年に達した後に追認すれば効力を生じる。
⑤外形上は利益相反行為に当たらない行為(子の名義での借入れ,第三者の債務のための担保提供等)でも,代理権の濫用として子に効果が及ばないことがある(民法107条)。
ただし,判例は,親権者の広範な裁量を前提に,濫用に当たる場合を限定している。
⑥特別代理人の選任は,子の住所地の家庭裁判所に申し立てる。
申立てには,遺産分割協議書案など利益相反に関する資料を付ける。

第2 親権者の代理権と利益相反の規律
1 親権者の代理権

民法824条本文は,「親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。」と定める。
親権は,成年に達しない子について,その子の利益のために行使しなければならない(同法818条1項)。
親権者は,子の財産に関する法律行為について広い代理権を持つが,その代理権には,次の利益相反行為の規律と,代理権の濫用の規律(第6)による制限がある。

2 民法826条

民法826条1項は,「親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。」と定める。
同条2項は,「親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。」と定める。
1項は親と子の利益相反,2項は同じ親権に服する子どうしの利益相反を対象とする。

3 父母が共同で親権を行う場合

父母は,その双方が親権者であるときは,原則として共同して親権を行う(民法824条の2第1項)。

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国際離婚の手続選択と日本の国際裁判管轄・準拠法―調停・訴訟・財産分与・慰謝料を分ける(AI作成)

目次
第1 結論―管轄と準拠法は別に調べる
第2 最初に請求単位へ分解する
第3 日本の裁判所に国際裁判管轄があるか
第4 調停・審判・訴訟の選択
第5 離婚に適用される法律
第6 財産分与・慰謝料・子の事項は別に確認する
第7 外国法と証拠の準備
第8 受任時チェックリスト
第9 関連記事
第10 出典と調査範囲

第1 結論―管轄と準拠法は別に調べる

国際離婚では、「日本の裁判所が事件を扱えるか」という国際裁判管轄と、「離婚の成否をどの国の法律で判断するか」という準拠法は別問題である。日本に国際裁判管轄があっても外国法を適用することがあり、反対に日本法が準拠法となり得ても、日本の裁判所に管轄がなければ日本で訴訟を進めることはできない。

さらに、離婚そのもの、財産分与、慰謝料、親権・監護、養育費、婚姻費用では、管轄・準拠法・手続が同じとは限らない。実務では、夫婦関係を一括して「国際離婚事件」と呼ぶ前に、請求ごとの入口を作る必要がある。

第2 最初に請求単位へ分解する
検討単位最初に確認する事項
離婚の成立裁判離婚、調停・審判、協議離婚のどの方法が可能か
財産分与対象財産、所在地、取得時期、名義、外国の夫婦財産制
慰謝料等離婚請求との関連、行為地・結果発生地、請求相手
子に関する事項子の常居所、現在地、監護状況、国際的な連れ去りの有無
扶養・養育費権利者・義務者の常居所、既存合意・裁判、執行先財産
外国裁判の効力承認・執行が必要か、送達と防御機会、公序、確定性

この分解により、「離婚は日本でできるが、外国不動産の処理や外国での執行には別の対応が必要」という結論も明瞭になる。

第3 日本の裁判所に国際裁判管轄があるか

離婚訴訟の国際裁判管轄は、人事訴訟法3条の2以下から確認する。同条は、身分関係の当事者の住所又は居所が日本にある場合などを管轄原因として定める。条文には複数の管轄原因があるため、「日本国籍の当事者がいる」又は「日本で結婚した」という事情だけで結論を出さず、原告・被告の住所、最後の共通住所、現在の居所その他の条文要件へ事実を割り当てる。

人事訴訟法3条の5は、日本に管轄原因があっても、事案の性質、応訴負担、証拠の所在地その他の事情から日本で審理することが当事者間の衡平を害し、適正・迅速な審理を妨げる特別の事情がある場合の取扱いを定める。したがって、形式的な接点だけでなく、外国での係属、当事者・証人の所在、資料言語、判決の実効性も確認する。

財産分与や関連する損害賠償を離婚訴訟と一緒に扱えるかは、人事訴訟法3条の3・3条の4等の専用規定を別に確認する。関連性があるというだけで、全ての請求が当然に日本の管轄へ入るわけではない。

第4 調停・審判・訴訟の選択

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医師など高収入共働き夫婦の離婚実務―婚姻費用,養育費,財産分与,医療法人及び監護の整理(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 高収入共働きの離婚が複雑になる理由2 結論第2 最初に四つの時点を固定する1 別居開始時2 財産形成の基準時3 婚姻費用・養育費の収入基準年4 離婚成立と請求期限第3 婚姻費用と養育費の収入評価1 給与収入の合算2 事業所得と経費3 高額所得と算定表の範囲4 教育費・住宅費・特別費用第4 財産分与の資産一覧1 個人名義の金融資産2 不動産と住宅ローン3 医療機器,診療所及び事業資産第5 医療法人・関係会社と個人財産の区別1 法人財産はそのまま夫婦の財産ではない2 医療法人の類型を確認する3 家族労働と役員報酬第6 子の監護と勤務体制1 勤務表を具体化する2 監護と収入の二重計上を避ける3 子を情報の運び手にしない第7 資料保全と開示の実務1 収入資料2 資産・負債・法人資料第8 合意書・調停条項の確認1 支払条項2 財産分与と税・法人手続第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令2 裁判所の資料
第1 本記事の対象と結論
1 高収入共働きの離婚が複雑になる理由

医師,歯科医師,経営者,士業その他の専門職同士の共働き夫婦では,両方に高い収入があるため争点が少ないように見える。実際には,給与収入と事業収入の併存,日当直・スポット勤務の変動,当直回数の変化,可変給与,法人からの報酬,留保金,非上場株式,退職金,借入金,教育費,夜間・休日勤務と監護の分担等が重なる。

2 結論

この類型では,「高収入者だから算定表より高くなる」又は「共働きだから生活費は各自負担である」と単純化しないことが重要である。①現在の生活費の分担,②子の居所・監護・医療・教育,③収入の評価,④婚姻中に形成された財産,⑤個人と会社・医療法人の財産の区別,⑥将来のキャリアと監護体制を別々の表にし,その後に相互の影響を確認する。

第2 最初に四つの時点を固定する
1 別居開始時

婚姻費用,住宅ローン,子の居所,生活費の支払及び面会交流について,別居を開始した日の前後で事実関係が大きく変わる。別居日だけでなく,合意の有無,住所の変更,子の引渡し,鍵と財産の移動及び生活費の支払開始日を時系列にする。

2 財産形成の基準時

財産分与では,夫婦の協力による財産形成が実質的に終了した時点が問題となる。長期別居の後に大きな収入,株式価値の変動,施設の開業,借入又は資産移転があると,「どの時点の財産が分与対象か」と「いつの価値で評価するか」を分けて検討する必要がある。

3 婚姻費用・養育費の収入基準年

確定申告書や源泉徴収票は過去一年間の収入を示すが,当直回数,勤務先,雇用形態又は休業の変化がある場合,過去一年だけで将来の基礎収入を評価できないことがある。数年分の収入及び最近の勤務実態を並べ,一時的な要因と継続的な変化を分ける。

4 離婚成立と請求期限

婚姻費用は婚姻中の生活保持の問題であり,離婚後の養育費とは別である。財産分与は離婚後に請求期間があるため,調停,裁判又は公正証書で合意する場合に,未解決の財産が残っていないかを確認する。

第3 婚姻費用と養育費の収入評価
1 給与収入の合算

複数の病院・クリニックから給与を得ている場合,主たる勤務先の源泉徴収票だけでは収入の全体が分からない。住民税課税証明書,確定申告書,青色申告決算書,支払調書,給与明細,賞与明細及び当直・非常勤先の支払記録を総合する。

2 事業所得と経費

開業医,個人事業主又は自営業者では,売上ではなく事業上の必要経費を控除した所得が出発点となる。ただし,税務上の経費が生活費分担の計算で常に全額控除されるとは限らない。減価償却,事業専従者給与,親族・関係会社への支払,家事関連費との按分及び一時的な投資を個別に見る。

3 高額所得と算定表の範囲

裁判所が公表する養育費・婚姻費用算定表は,父母又は夫婦の収入と子の人数・年齢に応じた標準額を迅速に把握するための道具である。収入が表の上限を大きく超える場合,上限値を用いるか,標準算定方式を応用するか,実際の生活状況や貯蓄部分をどう評価するかが問題となる。自動的な答えはなく,個別事情と最新の裁判実務を確認する必要がある。

4 教育費・住宅費・特別費用

私立学校,学習塾,留学,医学部等への進学,習い事,高額の医療費又は住居費は,標準的な生活費にどこまで含まれるかが問題となる。婚姻中の合意,従前の支出,子の意向と適性,父母の収入・資産及び今後の支払能力を資料で示す。

第4 財産分与の資産一覧
1 個人名義の金融資産

預貯金,株式,投資信託,外貨,暗号資産,保険の解約返戻金,確定拠出年金,企業年金,職員共済,退職金見込額及び従業員持株会等を一覧にする。婚姻前財産,相続・贈与で取得した財産及びそれらの代償財産は,婚姻中に両方で形成した財産と区別する。

2 不動産と住宅ローン

登記名義,取得時期,頭金の原資,現在価値,ローン残高,団体信用生命保険,事業での利用,売却可能性及び離婚後の居住者を整理する。所有名義とローンの債務者を分け,財産分与の合意だけで金融機関に対する債務者が当然に変わらないことに注意する。

3 医療機器,診療所及び事業資産

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こども性暴力防止法の施行と弁護士の役割―事業者側助言・こども側代理・聴き取りの注意点(AI作成)

目次第1 こども性暴力防止法とこの記事の結論1 令和8年12月25日から施行される2 弁護士の役割は一つではない3 公開資料だけを根拠とする第2 事業者側弁護士が最初に整理する事項1 法の対象と事業者の区分を確認する2 初動を「聴き取り」だけにしない3 担当者,指揮系統及び記録を決める第3 こどもへの聴き取りに先立つ安全確保1 現在の危険から離す2 医療と証拠保全を遅らせない3 外部機関との役割分担を決める第4 こどもへの聴き取りの注意点1 聴き取りの目的を限定する2 誘導を避け,自由な説明を尊重する3 聴取回数と参加者を絞る4 録音・録画は目的と負担を確認する第5 事業者側弁護士とこども側弁護士の役割分担1 事業者側弁護士の役割2 こども側弁護士の役割3 必要に応じて代理人を分ける第6 情報管理,労務対応及び説明1 情報共有は必要性と権限で判断する2 安全確保と懲戒判断を分ける3 こども・保護者への説明事項を記録する第7 弁護士が使う初動確認表1 事業者側の確認事項2 こども側の確認事項第8 出典・確認範囲1 法令及びこども家庭庁資料2 確認していない事項
第1 こども性暴力防止法とこの記事の結論
1 令和8年12月25日から施行される

こども性暴力防止法の正式名称は,「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」であり,令和6年法律第69号として公布された。
同法は,令和8年12月25日から施行される。
学校設置者等には法定の措置が義務付けられ,学習塾等の民間教育保育等事業者については,認定を受けた事業者に同等の措置が求められる仕組みである。

2 弁護士の役割は一つではない

性暴力の疑いが生じた場面で,弁護士は,事業者側で初動,調査,安全確保,関係機関との連携及び労務対応を助言する場合と,こども又は保護者の側で権利擁護,意思確認,被害申告及び支援機関との連携を担う場合がある。
事業者側の事実確認と,こどもの安全・回復のための支援は,目的も担当者も一致するとは限らない。
同じ弁護士が双方の立場を曖昧に担当すると,利益相反や,こどもが事業者の調査へ協力することを当然視する危険が生じるので,受任主体,依頼目的,情報共有の範囲及び意思決定者を最初に明確にする必要がある。

3 公開資料だけを根拠とする

本記事は,令和8年10月8日現在の法令,こども家庭庁の指針,Q&A及び公開研修資料に基づく。
個別の被害事案や関係者名は扱わず,公開資料から一般化できる実務上の確認事項だけを記載する。
制度の対象事業者,対象従事者,主な義務及び施行準備の全体像は,子ども性暴力防止法とは―「こども性暴力防止法」(日本版DBS)の対象・義務・令和8年12月25日の施行準備で整理している。

個別案件では,対象事業,施行時期,所管行政庁,警察・児童相談所への連絡,労働法上の措置及び証拠保全を,最新の公式資料と当該事案の事情に即して確認する必要がある。

第2 事業者側弁護士が最初に整理する事項
1 法の対象と事業者の区分を確認する

最初に,事業者が学校設置者等に当たるのか,民間教育保育等事業者に当たるのか,後者であれば認定を受けているのか又は受ける予定があるのかを確認する。
同じ法人が複数の事業を行う場合,施設又はサービスごとに法の対象範囲が異なることがあるので,法人名だけで判断しない。
従事者の職名ではなく,実際に児童等へ提供する役務,接触の態様及び法令上の区分を確認する。

2 初動を「聴き取り」だけにしない

こども家庭庁の公開資料は,こどもへの聴き取りに先立ち,警察への通報・相談,所管行政庁への相談及び専門家への相談を検討するよう求めている。
したがって,事業者が最初に行うべき作業は,詳しい供述を直ちに取り切ることではない。
①現在も接触の危険があるか,②緊急の医療が必要か,③証拠が失われるおそれがあるか,④警察,児童相談所又は所管行政庁へいつ連絡するか,⑤誰がこどもと保護者へ説明するかを先に整理する。

3 担当者,指揮系統及び記録を決める

事業者内部では,安全確保,関係機関への連絡,こども・保護者対応,従事者対応,労務判断及び広報対応の担当を分ける。
弁護士は,誰が最終判断を行うのか,どの情報を誰へ共有するのか,時刻を含む初動記録を誰が作成するのかを確認する。
関係者が独自に繰り返し質問すると,こどもの負担を増やし,記憶や供述の評価を難しくすることがあるので,連絡経路を一本化する必要がある。

第3 こどもへの聴き取りに先立つ安全確保
1 現在の危険から離す

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エホバの証人の輸血方針の変更(令和8年9月)と宗教的輸血拒否の法的枠組み―成人患者の意思確認,同意書及び子どもへの輸血(AI作成)

目次第1 この記事の対象と基準日第2 エホバの証人が公表した輸血方針の変更1 公表された文書2 変更の内容3 個人の決定の扱いと事前指示書4 図表「Products Derived From Whole Blood」第3 国内の血液製剤から見た変更の意味1 全血製剤はほとんど供給されていない2 献血された血液の使い道第4 成人患者の輸血拒否に関する裁判例1 最高裁平成12年2月29日判決2 大分地裁昭和60年12月2日決定3 方針変更後に意思確認で注意すべき点第5 子どもへの輸血と親権者の拒否1 ガイドラインの年齢区分2 行政機関の位置付け3 三つの手続と選び方4 審判例5 方針変更が子どもの事案に与える影響第6 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 行政機関の通知・Q&A・事務連絡4 医学会等の指針5 統計・公的機関の資料6 宗教団体の公表資料
第1 この記事の対象と基準日

エホバの証人は,令和8年9月18日,他人の血液に由来する赤血球,白血球,血漿及び血小板(主要4成分)を治療に用いるかどうかを,各信者が個人として決めることとする方針を公式ウェブサイトで公表した。
全血の輸血は,引き続き受けないとしている。
本記事は,公表された文書の内容を確認した上で,宗教上の理由による輸血拒否について,国内の法令,裁判例,行政機関の通知及び医学会等の指針がどのような枠組みを置いているかを整理し,今回の変更が医療機関,患者,家族及び代理人の実務にどう関係するかを検討するものである。

基準日は令和8年9月20日である。
エホバの証人の文書は,基準日時点で英語版だけが公表されており,日本語の記事及び図表は同団体の日本語サイトに掲載されていない(同サイトのトップページには動画「2026 統治体からの話(6)」の案内がある。)。
そのため,本記事で英語の文書を日本語で示す部分は,いずれも本記事による仮訳である。
教義の当否は論じず,公表文書の記載と,法令,裁判例及び公的資料で確認できる事項に限って扱う。

結論を先に示すと,次のとおりである。
①今回の変更の中心は,主要4成分の使用を各信者の判断に委ねた点にあり,全血の輸血を受けないこと,全血の輸血に回る献血をしないことは維持されている。
②国内では全血製剤はほとんど供給されていないため,国内で行われる輸血の大半は,各信者が個人で判断する範囲に入ると考えられる。
③同じ信者でも受け入れる製剤が人によって分かれ得るので,医療機関は,信仰の有無からではなく,製剤ごとに本人の現在の意思を確かめる必要が大きくなる。
④子どもへの輸血について親権者が同意しない場合の法的手続(親権停止の審判,その保全処分及び児童相談所長等の緊急の措置)は,今回の変更によって何も変わらない。

第2 エホバの証人が公表した輸血方針の変更
1 公表された文書
(1) 令和8年9月18日の公表

公表の中心は,令和8年9月18日付けの「2026 Governing Body Update #6」(動画)である。
同じ日に,解説記事「How Do Jehovah’s Witnesses Show Respect for Life?」と,図表「Products Derived From Whole Blood」が公表された。
解説記事の末尾には,同記事は Update #6 で説明された内容を反映したもので,今後『ものみの塔』誌に掲載される予定である旨の注記がある。
同団体は,この変更を「adjustment」(調整)と表現している。

(2) 先行する令和8年3月20日の公表

これに先立つ令和8年3月20日付けの「2026 Governing Body Update #2」は,患者自身の血液を医療に用いることについての立場を明確にするものであった。
今回の解説記事は,この Update #2 の説明を引用した上で,同じ原則を主要4成分にも当てはめる構成をとっている。

2 変更の内容

解説記事の記載を項目ごとに整理すると,次のとおりである。

項目従前の扱い(解説記事の説明による)令和8年9月18日以降全血の輸血受けない受けない(変更なし)主要4成分(赤血球・白血球・血漿・血小板)全血と同じ原則を当てはめて受けない各信者が個人として決める分画(アルブミン,免疫グロブリン,凝固因子等)受け入れる信者がいることを前提とする記載がある各信者が個人として決める献血しない全血の輸血に回る献血はしない。成分・分画を他人に用いる明確な目的の献血は各信者が決める自己の血液の使用―令和8年3月20日の Update #2 から各信者が決める
(1) 主要4成分は各信者の判断に委ねられた

解説記事は,統治体が,他人の血液に由来する全血の主要4成分についても同じ原則が当てはまると決定したと述べ,「これら4つの主要成分をあらゆる内科的・外科的治療で用いるかどうかは,各クリスチャンが個人として決定しなければならない」(仮訳)としている。
他方で,主要4成分の一つ又は複数を用いる治療を統治体が軽く見ているわけではなく,引き続き「非常に重大な事柄」(仮訳)とみているとも述べている。

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離婚慰謝料の遅延損害金はいつから発生するか―離婚成立時とした最高裁令和4年1月28日判決と請求の趣旨の書き方(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論第2 最高裁令和4年1月28日判決1 事案と原審の判断2 最高裁の理由3 主文と利率第3 離婚自体慰謝料と個別的有責行為の慰謝料1 同判決の「なお」書き2 個別の違法行為を理由とする慰謝料第4 不貞相手に対する慰謝料請求との違い1 最高裁平成31年2月19日判決2 起算日の違い第5 離婚の成立時と請求の趣旨の書き方1 離婚の成立時2 離婚訴訟で慰謝料を併せて請求する場合3 離婚後に慰謝料だけを請求する場合4 財産分与との関係第6 関連記事第7 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料
第1 本記事の対象と結論

本記事は,離婚に伴う慰謝料(いわゆる離婚慰謝料)の遅延損害金がいつから発生し,何%の利率になるか,また,訴状の請求の趣旨にどう書くかを扱う。
調査基準日は令和8年9月19日である。

結論は次のとおりである。
①離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務は,離婚の成立時に遅滞に陥る(最高裁令和4年1月28日判決)。
②婚姻関係が破綻した時期や有責行為の時期が令和2年4月1日より前であっても,離婚の成立が同日以後であれば,遅延損害金の利率は年3%である。
③離婚訴訟で離婚と慰謝料を併せて請求するときは,同判決の主文に倣い,「本判決確定の日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員」と書くことになる。
④暴力や不貞行為など,破綻の原因となった個別の違法行為を理由とする慰謝料は,同判決の対象外であり,不法行為一般の原則によれば,各行為による損害の発生時に遅滞に陥ると考えられる。
⑤不貞相手(第三者)に対しては,特段の事情がない限り離婚に伴う慰謝料そのものを請求できない(最高裁平成31年2月19日判決)ので,不貞相手に請求するのは通常は不貞行為を理由とする慰謝料である。

第2 最高裁令和4年1月28日判決
1 事案と原審の判断

最高裁判所第二小法廷令和4年1月28日判決(令和2年(受)第1765号,民集76巻1号78頁)は,夫婦の一方(上告人)が本訴で離婚を請求し,他方(被上告人)が反訴で離婚とともに離婚に伴う慰謝料及び「判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金」を請求した事案である。
夫婦は平成16年11月に婚姻の届出をし,平成29年3月に別居していた。

原審の大阪高裁は,離婚を認め,慰謝料を120万円の限度で認容した上で,遅延損害金の利率を年5分とした。
その理由は,慰謝料請求は婚姻関係を破綻させた責任を前提とするものであり,婚姻関係が破綻した時は改正民法(平成29年法律第44号)の施行日である令和2年4月1日より前であるから,改正前の民法所定の年5分によるというものであった。

2 最高裁の理由

最高裁は,原審の判断を是認できないとして,次のとおり述べた。
「離婚に伴う慰謝料請求は,夫婦の一方が,他方に対し,その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由として損害の賠償を求めるものであり,このような損害は,離婚が成立して初めて評価されるものであるから,その請求権は,当該夫婦の離婚の成立により発生するものと解すべきである。」

続けて,不法行為による損害賠償債務は損害の発生と同時に何らの催告を要することなく遅滞に陥るという最高裁判所第三小法廷昭和37年9月4日判決(昭和34年(オ)第117号,民集16巻9号1834頁)を引用し,「離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務は,離婚の成立時に遅滞に陥ると解するのが相当である。」とした。
裁判所HPの裁判要旨も「離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務は,離婚の成立時に遅滞に陥る。」である。

つまり,同判決は,不法行為の時に遅滞に陥るという原則を変えたのではなく,離婚に伴う慰謝料では「損害の発生」が離婚の成立時であることを明らかにしたものである。
不法行為の遅延損害金の起算日一般については,不法行為・交通事故の遅延損害金はいつから発生するかで扱う。

3 主文と利率

同判決の事案では,離婚は判決によって成立するので,最高裁は「離婚の成立時である本判決確定の時に遅滞に陥る」とし,改正法の施行日前に遅滞の責任を負った(改正法附則17条3項参照)ということはできないから,利率は改正後の民法404条2項所定の年3パーセントであるとした。
そして,主文1項で,上告人の不服申立ての範囲である20万円に対する年5分の遅延損害金を認容した部分を変更し,次のとおり命じた。
「上告人は,被上告人に対し,20万円に対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。」

民法404条2項は「法定利率は、年三パーセントとする。」と定め,民法419条1項は,金銭債務の不履行による損害賠償の額を「債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。」としている。
民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則17条3項は,「施行日前に債務者が遅滞の責任を負った場合における遅延損害金を生ずべき債権に係る法定利率については、新法第四百十九条第一項の規定にかかわらず、なお従前の例による。」と定める。
したがって,離婚の成立が令和2年4月1日以後であれば,破綻の原因となった行為がそれより前であっても,離婚に伴う慰謝料の遅延損害金は年3%となる。

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DNA鑑定で兄弟・親子関係と相続は変わるか――戸籍上の身分関係と科学的証拠(AI作成)

目次第1 この記事の概要1 想定している場面2 基準日と資料の性質第2 法律上の親子関係・兄弟姉妹関係は何で決まるか1 実母子関係は分娩の事実で決まる2 実父子関係は嫡出推定か認知で決まる3 兄弟姉妹関係は親子関係から導かれる4 戸籍の記載の位置付け第3 最高裁平成26年7月17日の2つの判決1 2つの判決の書誌2 裁判要旨3 理由中の判示4 推定の及ばない子という例外5 射程第4 令和4年民法改正による嫡出推定・嫡出否認の見直し1 改正の概要と施行日2 民法772条(嫡出の推定)3 民法774条・775条(否認権者と訴えの相手方)4 民法777条・778条・778条の2(出訴期間)5 経過措置6 父が死亡している場合第5 嫡出推定が及ばない場合等の争い方1 親子関係不存在確認の訴え2 当事者の一方又は双方が死亡している場合の被告2の2 法定相続分に差異が生じる場合の確認の利益3 調停前置と合意に相当する審判4 長期間の親子としての実態と権利の濫用5 判決の効力と戸籍の訂正第6 相続への影響1 兄弟姉妹の相続順位と相続分2 生物学上のつながりの有無は相続権を左右しない3 「相続しない」ことの法的な意味第7 私的なDNA鑑定を求められたときの実務1 相手方の同意なしに検体を取ることの問題2 成年後見人には検体採取に同意する権限がない3 本人が死亡した後の検体4 費用と手続は鑑定を求める側が担う5 鑑定の精度について第8 遺体・遺骨の引取りとの関係第9 国際的な親子関係では準拠法を先に確認する第10 まとめ第11 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料4 関連記事
第1 この記事の概要
1 想定している場面

相続や死後の手続の場面では,次のような申出を受けることがある。
① 「本当に血がつながっているのか確かめたい。DNA鑑定の結果次第で、死後の手続にも相続にも関わるかどうかを決めたい。」という親族の申出
② 「亡くなった父の子とされている人は、本当は父の子ではないのではないか。」と疑う相続人の申出
③ 「成年後見人として、本人の検体を採って鑑定に回してほしい。」という親族の依頼

この記事は,弁護士・成年後見人・相続の相談者を読者として,こうした申出を受けたときに,DNA鑑定の結果によって法律上の親子関係・兄弟姉妹関係と相続がどこまで変わるのかを整理するものである。
結論を先に書くと,DNA鑑定で示された血縁の有無だけで,法律上の親子関係や相続人の地位は変わらない。
また,嫡出推定が及ぶ父子関係は,科学的証拠によって生物学上の父子関係がないことが明らかであっても,親子関係不存在確認の訴えでは争えないというのが最高裁判例である。

2 基準日と資料の性質

この記事の基準日は令和8年9月18日である。
法令は,e-Gov法令検索(法令API)で基準日に取得した現行の条文及び改正附則によった。
裁判例は,裁判所ウェブサイトの裁判例検索で存在と裁判要旨を確認したものを挙げ,同サイトに掲載のないものはその旨を明記した。
この記事は一般的な整理であり,個別の事件では,戸籍の記載,子の出生の時期,認知の有無,当事者の生死等によって使える手続が大きく異なる。

第2 法律上の親子関係・兄弟姉妹関係は何で決まるか
1 実母子関係は分娩の事実で決まる

最高裁昭和37年4月27日判決(昭和35年(オ)第1189号,民集16巻7号1247頁)の裁判要旨は,「母と非嫡出子間の親子関係は、原則として、母の認知をまたず、分娩の事実により当然発生する。」というものである。
民法779条は「嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。」と定めているが,母子関係については,認知ではなく分娩の事実が基準になるということである。

2 実父子関係は嫡出推定か認知で決まる

婚姻中の夫婦の間に生まれた子について,民法772条1項は「妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。」と定めている。
同項後段は,婚姻前に懐胎した子であって婚姻成立後に生まれたものも同様としている。
懐胎の時期については,同条2項が,婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子は婚姻前に懐胎したものと推定し,婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定すると定めている。
他方,嫡出でない子の父子関係は,父の認知(民法779条)又は認知の訴え(民法787条)によって生じる。
つまり,実父子関係は,生物学上のつながりそのものではなく,嫡出推定又は認知という法律上の仕組みを通じて定まる。

3 兄弟姉妹関係は親子関係から導かれる

兄弟姉妹関係は,それ自体を独立に定める仕組みがあるわけではなく,共通の父又は母との法律上の親子関係から導かれる。
したがって,「兄弟かどうか」という疑いは,法律的には,「その人と共通の親との間に法律上の親子関係があるかどうか」という問題に置き換えて考えることになる。
父母の双方を同じくするか一方のみを同じくするかも,法律上の父母を基準に判断される。

ここまでの分娩・嫡出推定・認知の説明は実親子関係に関するものであり,養子縁組による親族関係は別に確認する。民法727条により,養子と養親及びその血族との間には縁組の日から血族間と同一の親族関係が生じる。普通養子縁組では実方との親族関係も残るが,特別養子縁組では民法817条の9所定の例外を除き実方の父母及び血族との親族関係が終了する。相続人を確定するときは,戸籍で縁組の種類と成立日を調べ,養子縁組前に生まれた子と兄弟姉妹・代襲相続の問題も区別する。

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家事事件の住所・氏名秘匿と非開示希望―DV事件で提出前に確認すべきこと(AI作成)

目次

1 提出後ではなく提出前に確認する
2 四つの方法は目的が異なる
2-1 不要な情報のマスキング
2-2 送達場所等の届出
2-3 住所・氏名等の秘匿制度
2-4 非開示希望
3 住所・氏名等の秘匿申立て
4 非開示希望の対象と限界
5 秘匿決定と非開示希望の違い
6 住所を推知させる情報の例
7 提出前チェックリスト
8 決定後及び関連事件でも管理を続ける
9 不服申立て及び閲覧請求
10 関連記事
11 一次資料その他

1 提出後ではなく提出前に確認する

家事事件で住所、勤務先、通院先、子の学校等を相手方に知られると危険が生じる場合、書面を裁判所へ提出する前に情報管理を検討する必要がある。提出後に秘匿を申し立てても、既に閲覧又は謄写された情報を回収することはできない。
実務上は、①不要な情報を最初から記載しない又はマスキングする、②送達場所等の届出を適切に行う、③住所・氏名等の秘匿制度を申し立てる、④その他の情報について非開示を希望する、という方法を区別して検討する。

2 四つの方法は目的が異なる
2-1 不要な情報のマスキング

証拠又は添付資料に事件の判断に不要な住所、電話番号、勤務先、通院先、学校名、店舗名、位置情報等が含まれる場合、その部分を提出用写しで見えないようにする方法が基本となる。
黒塗りを画像の上に置いただけの電子ファイルは、コピー又は編集により元の文字が読めることがある。紙面及び電子データの双方で復元できない状態かを確認する必要がある。

2-2 送達場所等の届出

現住所と異なる安全な場所へ送達を受けたい場合、送達場所及び送達受取人の届出を検討する。ただし、送達場所を届け出ただけで、記録中の現住所その他の情報が当然に秘匿されるわけではない。

2-3 住所・氏名等の秘匿制度

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離婚訴訟の標準審理モデル―財産分与を含む事件を長期化させない準備(AI作成)

目次

1 東京家裁の審理モデルの位置付け
2 人事訴訟の平均審理期間
3 訴状提出前のチェックポイント
4 第1回口頭弁論期日と段階的な審理
4-1 有責配偶者からの離婚請求
5 財産分与の審理準備
5-1 財産一覧表
5-2 基準時と評価時
5-3 特有財産と混在財産
5-4 不動産、ローン及び退職金
6 子に関する争点と家庭裁判所調査官
7 本人尋問と和解
8 代理人が作成する進行管理表
9 令和6年モデル利用時の注意
10 関連記事
11 一次資料その他

1 東京家裁の審理モデルの位置付け

東京家庭裁判所家事第6部は、令和6年4月26日付けで「東京家裁人訴部における離婚訴訟の審理モデル」を公表した。同モデルは、東京三弁護士会との意見交換を経て、審理の計画性及び質を高め、離婚訴訟の不必要な長期化を防ぐために作成された実務資料である。
ただし、同モデルは法令、最高裁判例又は全国一律の処理基準ではない。東京家裁における一つの審理運営モデルであり、個別事件では担当裁判体の訴訟指揮及び事件の内容に従う。

2 人事訴訟の平均審理期間

最高裁判所事務総局家庭局「家庭裁判所の現状と課題」によれば、令和6年に終局した人事訴訟事件の平均審理期間は14.8か月であった。離婚事件では、財産分与の申立てがある事件が19.2か月、申立てがない事件が12.9か月であった。
平成27年は、財産分与の申立てがある事件が15.5か月、ない事件が10.8か月であり、いずれも長期化している。もっとも、これらは全国の既済事件の平均値であり、個別事件の終結時期を保証するものではない。

最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第11回)」(令和7年7月)によれば、財産分与の申立てがある離婚訴訟は、判決で終局した場合の平均審理期間が23.4か月、和解で終局した場合が18.5か月であり、判決の方がおおむね5か月程度長い(同報告書178頁)。
同報告書は、離婚訴訟の既済事件に占める財産分与の申立てがある事件の割合が平成27年の31.7%から令和6年の41.6%に増えていることから、これが人事訴訟全体の平均審理期間を押し上げている原因の一つであると推測している(同報告書182頁)。
他方、親権者を指定すべき子がいる離婚事件といない離婚事件の平均審理期間の差は、1か月に満たない(同報告書179頁)。

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家事調停はどのくらいかかるか―平均審理期間,期日間隔及び代理人ができること(AI作成)

目次

1 家事調停の期間を考える際の結論
2 令和6年の平均審理期間及び平均期日間隔
3 申立てから第1回期日までに行うこと
4 期日と期日の間に代理人が行うこと
5 事件を長期化させやすい事情
6 ウェブ会議と期日間隔
7 平均値を依頼者への説明に使う際の注意
8 調停が成立しない場合の見通し
9 関連記事
10 一次資料その他

1 家事調停の期間を考える際の結論

① 夫婦関係調整調停について、令和6年の全国平均は、平均審理期間が6.8か月、平均期日間隔が1.9か月であった。ただし、これは既済事件の平均値であり、申立てから終局までの標準期限を示すものではない。
② 期日間の約2か月は、単なる待ち時間ではない。必要資料の収集、主張の整理、相手方提案の検討及び次回期日の進行準備に使う期間である。
③ 離婚、婚姻費用、親子交流、財産分与等の争点が重なる事件では、事実関係及び資料を争点ごとに分け、次回期日までの宿題を具体化することが長期化防止につながる。
④ 本記事の数値は、最高裁判所事務総局家庭局「家庭裁判所の現状と課題」(令和7年度実務協議会(冬季)、令和8年2月)の令和6年統計を基礎とする。同文書は裁判所自身の運用認識を示す司法行政資料であるが、法令でも判例でもない。

2 令和6年の平均審理期間及び平均期日間隔

同文書によれば、夫婦関係調整調停の平均審理期間は、平成20年の4.3か月から令和6年の6.8か月へ延びた。また、平均期日間隔は、平成20年の1.4か月から令和6年の1.9か月へ延びた。
平均審理期間は、申立てから成立、不成立、取下げ等による終局までに要した期間の平均である。平均期日間隔は、各期日の間隔を平均したものであり、「必ず2か月おきに指定される」という規則ではない。
実際の期間は、争点の数、当事者の出頭状況、提出資料の量、子に関する調査の要否、裁判所及び代理人の日程、ウェブ会議利用の可否等によって変わる。

最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第11回)」(令和7年7月)も、令和6年の統計を分析している。同報告書によれば、夫婦関係調整調停や婚姻費用分担事件を含む婚姻関係事件の平均審理期間は7.0か月、平均期日回数は3.6回、平均期日間隔は1.9か月であった。
同報告書の資料4-2によれば、婚姻関係事件の平均審理期間は、双方に手続代理人がいる事件で9.9か月、申立人側のみに代理人がいる事件で6.4か月、相手方側のみに代理人がいる事件で7.6か月、双方とも本人の事件で4.6か月であり、代理人の付き方によって大きく異なる。
同じ年の遺産分割事件の平均審理期間は12.1か月、子の監護事件は8.3か月であった。

第11回迅速化検証報告書における令和6年の平均審理期間は、次のように整理できる。
夫婦関係調整調停だけの6.8か月と、より広い婚姻関係事件の7.0か月は、対象範囲が異なる数値である。

事件類型平均審理期間対象範囲・出典婚姻関係事件7.0か月夫婦関係調整、婚姻費用分担等。報告書157頁~158頁遺産分割事件12.1か月調停・審判の両手続を経た事件も、通じて1件として計上。152頁~153頁子の監護事件8.3か月養育費、監護者指定、子の引渡し、面会交流等。164頁~165頁

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資産額と「実際に払える額」は違う-和解・財産分与・代償分割の支払能力チェック(AI作成)

第1 資産額と支払能力は同じではない

1 この記事が扱う場面
2 六つの確認軸

第2 資産別に「実際に使える額」を確認する

1 預貯金
2 上場株式・投資信託その他の金融資産
3 不動産
4 保険、退職金、事業及び法人関係財産

第3 収入と一括払いの原資を分ける

1 高収入でも一括払いできるとは限らない
2 分割払いは各月の資金繰りを確認する

第4 手続ごとの確認事項

1 民事訴訟上の和解
2 離婚に伴う財産分与
3 遺産分割における代償分割

第5 支払能力を裏付ける資料

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弁護士による民事信託(家族信託)業務の流れ-受任・意思確認から監督・清算まで(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と結論第2 受任-依頼者,目的及び制度選択を確定する1 依頼者及び利害関係を特定する2 依頼の目的を事実に置き換える3 他の制度及び受託者候補を検討する第3 意思確認-委託者本人の能力及び真意を記録する1 委託者本人と独立して面談する2 能力確認と契約内容の説明を記録する第4 契約-権限,変更,交代及び終了を一体として設計する1 ひな型を個別の財産及び目的に合わせる2 終了制限は目的との対応を具体化する3 公正証書及び専門職との連携を決める第5 実装-財産移転,登記,口座及び税務提出を完了する1 契約締結と財産移転を区別する2 信託口口座の取扱いを事前に確認する3 税務提出の担当及び期限を決める第6 運用-分別管理,帳簿,報告及び監督を続ける1 受託者の法定義務を運用へ落とし込む2 弁護士の受任範囲を明確にする3 信託監督人及び受益者代理人の要否を検討する第7 変更・交代-契約後の事情変更に備える1 信託の変更手続を確認する2 受託者の任務終了と後継者への引継ぎを分ける第8 終了・清算-残余財産の給付と最終計算まで行う1 終了事由及び終了時点を確定する2 終了後の清算手続を完了する3 最終計算の承認と記録保存を確認する出典1 法令2 所管行政機関の手続案内3 職能団体のガイドライン
第1 本記事の対象と結論

本記事は,弁護士が民事信託(家族信託)の相談を受けた後,受任,委託者本人の意思確認,契約設計,財産移転,運用,受託者交代,終了及び清算をどの順序で確認するかを整理するものである。
調査の基準日は令和8年9月6日であり,同日現在の信託法,国税庁の手続案内及び日本弁護士連合会の公開ガイドラインを確認し,AIを利用して作成した。

民事信託業務は,契約書を作成して署名押印すれば完了するものではない。
信託の効力発生とは別に,対象財産の移転,登記,口座,帳簿,税務提出,受託者の監督,交代時の引継ぎ及び終了後の清算を実装する必要があるからである。

本記事は一般的な業務工程を示すものであり,個別の契約条項,課税関係又は金融機関の取扱いを一律に示すものではない。
民事信託の制度選択自体に伴う難しさについては,家族信託(民事信託)が難しい4つの理由で説明している。

第2 受任-依頼者,目的及び制度選択を確定する
1 依頼者及び利害関係を特定する

最初に,誰が弁護士への依頼者であり,誰の意思と利益を中心に信託を設計するのかを委任契約書及び面談記録で特定する。
親族から相談が持ち込まれた場合でも,委託者となる本人,受託者候補,他の推定相続人及び受益予定者の利害が常に一致するとは限らない。

日本弁護士連合会の「民事信託業務に関するガイドライン」3頁~5頁は,委託者本人との面談,親族等から不当な影響を受けていないことの確認及び他の制度との比較検討を重視している。
複数の当事者から共同で依頼を受ける場合は,利益相反が現にあるか,将来顕在化し得るか,情報を相互に共有できるかを受任前に確認する必要がある。

2 依頼の目的を事実に置き換える

「認知症対策」「財産を守りたい」又は「家族に迷惑を掛けたくない」という抽象的な希望だけでは,受託者へ与える権限も信託の終了条件も決められない。
管理を継続したい財産,想定する期間,収益の使途,売却又は借入れの必要性,受益者の生活費,承継先及び終了後の帰属先を事実レベルで確認する。

確認すべき資料は,①対象財産の一覧,②不動産登記事項証明書,③預貯金及び有価証券の残高資料,④賃貸借契約及び借入資料,⑤家族関係を示す戸籍等並びに⑥既存の遺言,任意後見契約又は贈与契約である。
資料を集める目的は,財産額を増やして見せることではなく,信託へ入れる財産,残す財産及び信託外で処理する事項を分けることにある。

3 他の制度及び受託者候補を検討する

本人の財産管理だけが目的であれば任意後見又は法定後見,死亡後の承継だけが目的であれば遺言,生前の権利移転が目的であれば贈与で足りる場合がある。
民事信託とこれらの制度は排他的ではなく,身上保護,信託外財産及び遺言執行を補うために併用することもある。

受託者候補については,年齢及び家族関係だけでなく,対象財産を管理する時間と能力,帳簿作成,利益相反への対応,長期継続の可能性,報酬及び後継者候補を確認する。
日弁連ガイドライン5頁~6頁は,受託者候補の適格性を検討し,受託者の法的義務と責任を具体的に説明することを求めている。

第3 意思確認-委託者本人の能力及び真意を記録する
1 委託者本人と独立して面談する

委託者の判断能力と信託設定意思は,親族の説明だけで確定しない。
少なくとも重要な局面では委託者本人と面談し,信託する財産,受託者へ移る権限,受益者,信託期間,変更・終了条件及び残余財産の帰属について,本人自身の言葉で理解と意思を確認する。

親族が同席すると本人の発言が影響を受けるおそれがあるときは,日弁連ガイドライン4頁が示すように,本人だけと面談する機会を設ける。
通訳,補助者又は医療情報が必要な場合でも,本人の意思を代替するのではなく,意思決定を支援して理解の有無を確認するという位置付けを明確にする。

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民事信託(家族信託)の税金はいつ発生するか-設定・運用・受益者変更・相続・終了の時系列(AI作成)

目次

第1 結論-税金は受託者への名義変更だけで決まらない第2 課税関係の全体像1 受益者等課税信託の基本2 時系列表第3 設定時の税金1 委託者と受益者が同じ自益信託2 委託者と受益者が異なる他益信託3 不動産を信託する場合の流通税4 紙の信託契約書の印紙税第4 運用中の税金及び受託者の手続1 所得税は受益者に帰属する2 消費税及び固定資産税3 信託不動産の損失制限4 信託の計算書第5 受益者又は受益権割合が変わった時1 新たな受益者が生じた場合2 受益者別調書及び贈与税申告第6 先順位の受益者が死亡した時1 次順位の受益者へのみなし遺贈2 受益者連続型信託の評価3 小規模宅地等の特例第7 信託が終了した時1 残余財産の取得と贈与税又は相続税2 不動産取得税及び登録免許税3 取得費及び所有期間の引継ぎ4 空き家の3000万円特別控除5 終了時の受益者別調書第8 設計及び運用時の確認順序出典1 法令2 法令解釈通達及び改正説明3 国税庁の手続案内及びタックスアンサー4 国税庁の質疑応答事例5 東京国税局の文書回答事例6 財務省の税制資料
第1 結論-税金は受託者への名義変更だけで決まらない

民事信託(家族信託)の税務では,受託者名義に変えたかどうかだけでなく,誰が信託の経済的利益を受ける地位を取得し,その地位がいつ移ったかを見る必要がある。
委託者が自ら受益者となる自益信託では,設定時に受益権の経済的な移転がないため,相続税法9条の2第1項による贈与税又は相続税は通常生じないが,これを「家族信託は非課税である」と言い換えることはできない。

課税又は手続が問題となる主な時点は,①他人を受益者とする信託の設定時,②信託財産から所得が生じた時,③受益者又は受益権割合が変わった時,④先順位の受益者が死亡した時,⑤信託終了後に残余財産を取得した時,⑥不動産の登記又は紙の契約書を作成した時である。
贈与税,相続税及び所得税のほか,消費税,登録免許税,不動産取得税,固定資産税,印紙税並びに受託者の法定調書を別々に確認しなければならない。

本記事は,令和8年9月6日現在の法令及び国税庁等の公開資料に基づき,個人を委託者,受託者及び受益者とする一般的な受益者等課税信託を時系列で整理するものである。
法人課税信託,集団投資信託,退職年金等信託,受益者等が存しない信託,国外財産を含む信託及び個別の税額計算は対象外であり,具体的な申告では最新の法令と事実関係を税理士等に確認する必要がある。

第2 課税関係の全体像
1 受益者等課税信託の基本

所得税法13条は,受益者等課税信託について,信託財産に属する資産及び負債を受益者が有し,信託財産に帰せられる収益及び費用を受益者の収益及び費用とみなして所得税法を適用するものとしている。
消費税法14条も,原則として,信託財産に属する資産を受益者が有するものとみなし,信託財産に係る取引を受益者の取引として扱う。

したがって,受託者が家賃を受け取り,費用を支払っていても,所得税及び消費税の課税主体は受託者であるとは限らない。
受益者等課税信託では,受益者が信託財産を直接保有して取引したものに近い形で課税関係を確認することになるが,受託者には後述する法定調書の提出義務が別に生じ得る。

2 時系列表

①設定時は,自益信託か他益信託か,不動産を信託するか,紙の信託契約書を作成するかを確認する。
②運用中は,賃料,配当,譲渡益その他の所得を誰に帰属させるか,消費税の課税事業者か,不動産所得の損失制限があるかを確認する。
③受益者変更時は,新たな受益者が対価を負担したか,変更が前の受益者の死亡に基因するか,受益権割合が動いたかを確認する。
④相続時は,次順位の受益者へのみなし遺贈,受益者連続型信託の評価,相続税額の加算,債務控除及び小規模宅地等の特例を確認する。
⑤終了時は,残余財産を取得する者の従前の受益権,取得原因,不動産の登記,取得費の引継ぎ及び空き家特例を確認する。

第3 設定時の税金
1 委託者と受益者が同じ自益信託

相続税法9条の2第1項は,信託の効力が生じた場合に,適正な対価を負担せずに受益者等となる者があるときは,その者が委託者から信託に関する権利を贈与により取得したものとみなし,委託者の死亡に基因する場合は遺贈により取得したものとみなしている。
委託者と受益者が同一であり,受益権が他人へ移らない通常の自益信託では,この規定による贈与税又は相続税は設定時には通常生じない。

もっとも,自益信託であることは,設定から終了まで全ての税がかからないことを意味しない。
不動産の信託登記,紙の信託契約書,運用益,受益者の変更及び終了時の残余財産取得については,それぞれ別の課税関係がある。

2 委託者と受益者が異なる他益信託

委託者以外の者が適正な対価を負担せずに受益者となる他益信託では,信託の効力が生じた時に,受益者が信託に関する権利を委託者から贈与により取得したものとみなされる。
委託者の死亡により信託の効力が生じるときは,贈与ではなく遺贈による取得とみなされる。

課税時期は,受託者が信託財産を換価し,又は受益者へ金銭を交付した時に限られない。
信託の効力発生により経済的利益を受ける受益者等となった時点で課税関係を検討する必要がある。

3 不動産を信託する場合の流通税

登録免許税法7条1項により,委託者から受託者への信託のための財産権移転の登記は登録免許税を課されないが,信託の登記そのものは別に課税される。
財務省の令和8年の案内によれば,土地の所有権の信託登記は,令和11年3月31日まで税率が1000分の3に軽減されているが,建物その他の登記は別に確認する必要がある。

地方税法73条の7第3号は,委託者から受託者に信託財産を移す場合の不動産取得について,所定の例外を除き不動産取得税を課さないとしている。
したがって,不動産取得税が課されないことと,信託登記の登録免許税が生じることとは両立する。

4 紙の信託契約書の印紙税

国税庁の印紙税額一覧表では,信託行為に関する契約書は第12号文書とされ,1通につき200円である。
文書の名称ではなく内容及び作成形態によって課税文書への該当性が決まるため,電子契約や関連契約書を含め,実際に作成する文書ごとに確認する必要がある。

第4 運用中の税金及び受託者の手続
1 所得税は受益者に帰属する

受益者等課税信託では,賃料,配当,利子,譲渡益その他の収益及び対応する費用は,原則として受益者に帰属する。
受託者の口座に入金されたままで受益者へ現金が交付されていなくても,そのことだけで受益者への所得課税を免れるものではない。

受益者が確定申告を要するか,所得区分,必要経費及び源泉徴収をどう扱うかは,信託財産と取引の内容によって異なる。
信託を設定したこと自体が,受益者の一般的な所得税の申告期限又は計算方法を別制度に置き換えるものではない。

2 消費税及び固定資産税

消費税法14条により,受益者等課税信託の信託財産に係る取引は原則として受益者の取引と扱われるため,賃貸その他の取引の課税・非課税,受益者の課税事業者該当性及びインボイス対応を受益者側で確認する必要がある。
信託を利用したことだけで,課税売上げが非課税になるものではない。

固定資産税は,地方税法343条により,原則として登記簿等に所有者として登記されている者に課される。
信託不動産では受託者名義で登記されるため,通常は受託者が納税通知を受けるが,信託財産から支出するか,受益者への収支報告でどう扱うかを信託事務として整理する必要がある。

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最高裁令和8年6月17日決定と民事信託の終了制限-信託法164条の適用排除条項及び受託者解任(AI作成)

目次

第1 本決定の結論と記事の対象第2 信託の終了,受託者の解任及び清算の区別1 信託法164条の原則と別段の定め2 信託法58条4項による受託者解任3 信託終了後の清算第3 本件の事実関係と原審の判断1 30年間の信託と終了制限条項2 原審の判断第4 最高裁が示した二段階の合理的必要性1 第1段階-条項自体の効力2 第2段階-終了申入れ時の任務継続3 補足意見が挙げた検討要素第5 本決定が判断していない事項と射程1 本件条項の効力を最終判断していない2 信託終了又は受託者解任を命じていない3 直接の射程と未確定の事項第6 民事信託契約の作成及び運用に与える影響1 信託目的と終了制限との対応を明らかにする2 期間及び制限手段を検討する3 終了申入れ時に必要性を再評価する4 受託者の固有利益及び終了後の手続を分けて確認する出典・参考資料1 法令・条約・告示2 裁判例・行政処分・弁護士懲戒3 その他の文献
第1 本決定の結論と記事の対象

本記事は,最高裁令和8年6月17日第三小法廷決定(令和6年(許)第30号・受託者解任申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件)を対象とし,信託法164条1項の適用排除条項と受託者解任との関係を整理するものである。
調査の基準日は令和8年9月6日であり,同日までに確認できた公開資料及び同日現在の信託法に基づき,AIを利用して作成した。
対象は本決定の事案,判示事項,射程及び民事信託契約の作成・運用上の留意点であり,個別の信託契約の有効性を判断するものではない。

本決定は,信託法164条1項の適用を排除する条項が,同条3項の「別段の定め」として常に有効になるとはしなかった。
条項自体が効力を有するには,信託目的の達成のために合理的に必要と認められることを要するとしたのである。
さらに,条項が有効であっても,終了申入れの時点で受託者が申入れを拒絶して任務を続けることについて,別に合理的必要性を要するとした。

もっとも,最高裁は,本件条項を無効とし,信託が終了したと判断し,又は受託者を解任したものではない。
原決定を破棄し,二つの合理的必要性について審理を尽くさせるため,事件を東京高等裁判所へ差し戻した。

第2 信託の終了,受託者の解任及び清算の区別
1 信託法164条の原則と別段の定め

信託法164条1項は,委託者及び受益者が,いつでも,その合意により信託を終了できると定めている。
委託者と受益者が同一人である自益信託では,双方の地位を兼ねる者の意思により終了の合意を成立させられることになる。

他方,同条3項は,信託行為に別段の定めがあるときは,その定めによるとしている。
本件の中心的な問題は,終了権を排除する文言があれば常に別段の定めとして効力を有するのか,それとも信託の本質から効力を制限されるのかという点であった。

2 信託法58条4項による受託者解任

信託法58条1項は,委託者及び受益者の合意による受託者の解任を認め,同条3項は信託行為による別段の定めを認めている。
これとは別に,同条4項は,受託者が任務違反により信託財産に著しい損害を与えた場合その他重要な事由があるときに,裁判所が委託者又は受益者の申立てによって受託者を解任できると定めている。

信託の終了は信託関係を清算段階へ移行させる制度であるのに対し,受託者の解任は特定の受託者の任務を終了させる制度である。
両者は別の制度であるが,本件では,終了申入れを拒絶して任務を続けたことが58条4項の重要な事由に当たるかという形で接続した。

3 信託終了後の清算

信託法176条は,信託が終了しても,清算が結了するまでは信託が存続するものとみなしている。
終了後の受託者は清算受託者となり,現務の結了,債権の取立て,債務の弁済及び残余財産の給付等を行う(同法177条以下)。
そのため,信託を終了できるかという問題と,終了後に誰がどのように清算するかという問題も区別する必要がある。

第3 本件の事実関係と原審の判断
1 30年間の信託と終了制限条項

最高裁決定全文によれば,抗告人は,平成29年5月23日,保有する外国会社の株式を兄である相手方へ信託し,自らを委託者兼受益者,相手方を受託者とする信託契約を締結した。
信託目的は,会社価値の毀損を防止し,会社全体の利益の最大化を図ることとされ,信託期間は30年間とされた。

契約には,委託者兼受益者が信託期間中に契約を解除できない旨の条項があった。
抗告人は令和2年8月及び9月,信託法164条1項に基づいて信託を終了する旨を通知したが,相手方は同条3項の別段の定めがあるとして終了を認めず,その後も受託者の任務を続けた。

2 原審の判断

抗告人は,信託法58条4項に基づく受託者の解任を申し立てた。
原審の東京高等裁判所令和6年9月10日決定(令和5年(ラ)第639号)は,終了制限条項が164条3項の別段の定めに当たり,終了通知によって信託は終了しないと判断した。
その上で,相手方が終了を認めず任務を続けても,58条4項の重要な事由はないとして,申立てを却下すべきものとした。

第4 最高裁が示した二段階の合理的必要性
1 第1段階-条項自体の効力

最高裁は,信託法164条3項が,信託の種類,目的等に応じて終了事由を柔軟に定められるようにする趣旨であるとした。
もっとも,信託の本質に反する定めまで許されるものではないとした。

信託では,財産権の名義を受託者へ移す一方,受託者は受益者のために管理・処分を行い,受託者自身が利益を享受する立場にはない。
最高裁は,専ら受託者の利益を図る目的の信託を定義から除く信託法2条1項と,受託者の利益享受を禁ずる同法8条を,この本質を示す規定として挙げた。

終了制限条項は,委託者兼受益者が通常は自由に信託を終了できる地位を制限し,その意思に反して受託者が任務を続けることを可能にするため,類型的かつ抽象的に利益相反のおそれがある。
そこで最高裁は,利益相反行為を扱う信託法31条1項及び2項を参照し,同条2項4号と同様に,信託目的の達成のために合理的に必要であることを終了制限条項にも要求した。

2 第2段階-終了申入れ時の任務継続

条項が契約締結時に有効であったとしても,その後の事情が変われば,受託者が終了申入れを拒絶して任務を続ける必要性は失われ得る。
最高裁は,終了申入れがされた時点で任務を続けることが信託目的の達成のために合理的に必要である場合に限り,受託者が申入れを拒絶して任務を続けることが許されるとした。

したがって,条項自体の効力と,終了申入れ後にその条項を根拠として任務を続けることの許容性とは,別々に審査される。
この二段階の判断枠組みは,契約締結時と終了申入れ時の事情を分けて確認することを求めるものである。

3 補足意見が挙げた検討要素

補足意見は,本件の「会社価値の毀損防止・利益最大化」という信託目的は抽象的であり,合理的必要性を判断する直接の指針になりにくいと指摘した。
その上で,信託契約締結の経緯,契約内容及び当事者が意図した実質的効果を踏まえ,信託目的の内容を理解する必要があると述べた。

(続きを読む...)最高裁令和8年6月17日決定と民事信託の終了制限-信託法164条の適用排除条項及び受託者解任(AI作成)

養育費債権の先取特権とは―対象範囲,子1人当たり月額8万円の上限及び差押え(AI作成)

第1 子の監護費用の先取特権とは第2 先取特権の対象となる債権1 確定期限の定めがある定期金債権であること2 養育費だけでなく婚姻費用等も対象になり得る第3 上限は子1人当たり月額8万円である第4 優先順位と効力第5 債務名義がなくても差押えを申し立てられる1 私的な合意書がある場合2 法定養育費の場合第6 差押財産が分からない場合第7 令和8年4月1日前の取決めと未払分第8 申立て前の確認事項第9 出典

養育費債権の先取特権は,養育費等のうち子1人当たり月額8万円までの部分に認められる一般先取特権である。
私的な合意書しかない場合でも,先取特権の存在を証する文書を提出できれば,債務名義を取得せずに担保権実行として差押えを申し立てられる。

第1 子の監護費用の先取特権とは

子の監護費用の先取特権は,養育費等の一定部分について,原則として一般債権者に優先して弁済を受けることができる権利である(民法306条3号・308条の2)。
令和8年4月1日以後に生じた各期の定期金に適用される。

この制度により,父母間の私的な合意書しかない場合でも,その書面によって先取特権の存在を証明できれば,担保権実行として給与や預貯金等の差押えを申し立てることができる。
ただし,先取特権が養育費の額を決めるわけではなく,養育費債権が成立していること,確定した支払期限があること及び未払となったことが前提である。

第2 先取特権の対象となる債権
1 確定期限の定めがある定期金債権であること

先取特権が及ぶのは,民法308条の2が掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権のうち,子の監護に要する費用として相当な額である。
支払額だけでなく,「毎月末日限り」など各回の支払期限を明確に決めておくことが重要である。

一括払いの解決金,臨時の学費又は医療費などが当然に同条の定期金債権に含まれるとは限らない。
合意内容が定期金債権に当たるかは,書面の文言と支払設計を確認して判断する必要がある。

2 養育費だけでなく婚姻費用等も対象になり得る

対象となる義務は,夫婦間の協力及び扶助,婚姻費用の分担,離婚後の子の監護費用並びに親族間の扶養である。
したがって,離婚後の養育費のほか,婚姻費用分担金又は扶養料のうち子の監護に要する費用に対応する部分も対象になり得る。

婚姻費用の先取特権と回収方法は,婚姻費用が支払われない場合-履行勧告・給与差押え・令和8年の先取特権(AI作成)で説明している。

第3 上限は子1人当たり月額8万円である

省令1条は,先取特権が及ぶ額を,月額8万円に定期金によって扶養を受けるべき子の数を乗じた額としている。
子が2人であれば月額16万円,3人であれば月額24万円が上限となる。

この8万円は,家庭裁判所が認定すべき養育費の標準額でも,義務者が常に支払うべき額でもない。
合意又は審判による養育費が子1人当たり月額5万円であれば,先取特権の対象もその債権額を超えない。
反対に,子1人について月額10万円の養育費債権があっても,先取特権が及ぶのは月額8万円までであり,残る月額2万円については先取特権による優先権がない。

上限を超える部分も養育費債権として消滅するわけではない。
超過部分を含めて強制執行するためには,調停誸書,審判書又は執行認諾文言付き公正証書などの債務名義を確認する実益がある。

第4 優先順位と効力

一般先取特権が競合する場合の順位は,民法306条各号の順序による(民法329条1項)。
子の監護費用は,共益の費用及び雇用関係に次ぐ順位であり,葬式の費用及び日用品の供給より先順位となる。

先取特権があるからといって,常に全額を回収できるわけではない。
差し押さえた財産の価額,他の担保権又は先取特権の有無,租税その他の優先関係及び手続費用によって,実際の配当額は変わる。

一般先取特権は,債務者の総財産に及ぶが,不動産については登記をした第三者との関係に制限がある(民法336条)。
実務では,給与又は預貯金に対する債権差押えが中心になるため,対象財産と他の差押えの有無を確認する必要がある。

第5 債務名義がなくても差押えを申し立てられる
1 私的な合意書がある場合

債権を目的とする担保権の実行は,担保権の存在を証する文書が提出されたときに開始する(民事執行法193条1項)。
裁判所の家事事件Q&Aも,父母間の私的な合意書だけがある場合でも,月額8万円に子の数を乗じた額を上限として担保権実行を申し立てられると案内している。

申立てでは,合意書だけでなく,父母と子の関係,支払期限,未払の発生及び子の人数等を示す資料が必要となる。
口頭合意しかなく,先取特権の存在を証する文書を提出できない場合は,直ちに同じ方法で差押えができるとは限らないため,調停その他の方法による債務名義の取得を検討すべきである。

令和8年4月23日の参議院法務委員会では,最高裁判所事務総局民事局長が,父母間で取り決めた養育費の支払を求める担保権実行には担保権の存在を証する文書の提出が必要であり,提出された文書がこれに当たるかは個別の事案ごとに執行裁判所が判断すると答弁した。
同局長は,民事執行法上,印鑑が必要であるという法律上の要件にはなっていないとも答弁している。
押印がないことだけで申立てを断念する必要はないが,当事者,子,月額及び支払期限が読み取れない書面や,作成の真正が争われやすい書面では,執行裁判所の判断が分かれ得るため,提出前に記載内容を確認する必要がある。

養育費の合意書,公正証書及び調停調書の違いは,養育費の取り決め方―共同養育計画書・合意書・公正証書・調停調書の違い(AI作成)で説明している。

2 法定養育費の場合

法定養育費にも先取特権が及ぶため,養育費を取り決めずに離婚した場合でも,令和8年4月1日以後の離婚等で要件を満たせば担保権実行を申し立てることができる。
執行裁判所は,法定養育費について必要があると認めるときは,差押命令を発する前に債務者を審尋できる(民事執行法193条3項)。

法定養育費の発生要件,月額及び支払期間は,法定養育費とは―請求要件,子1人当たり月額2万円及び支払期間(AI作成)を参照されたい。

第6 差押財産が分からない場合

(続きを読む...)養育費債権の先取特権とは―対象範囲,子1人当たり月額8万円の上限及び差押え(AI作成)

法定養育費とは―請求要件,子1人当たり月額2万円及び支払期間(AI作成)

第1 法定養育費は取決めまでの暫定的な養育費である第2 請求できるための要件1 養育費の取決めがないこと2 離婚時から引き続き子を主として監護していること3 離婚等が令和8年4月1日以後であること第3 金額は子1人当たり月額2万円である1 子の数を乗じて計算する2 離婚月及び終了月は日割りとなる第4 いつからいつまで請求できるか1 離婚の日から請求できる2 三つのうち最も早い日に終了する第5 支払能力がない場合と家庭裁判所による調整1 義務者が支払を拒める場合2 後の養育費手続で免除又は猶予があり得る第6 請求と回収の進め方1 本来の養育費の取決めを並行して進める2 未払の場合は先取特権による担保権実行を検討する第7 確認すべき資料第8 出典

法定養育費は,令和8年4月1日以後に養育費を取り決めずに離婚した場合に,離婚時から子を主として監護する親が他方の親へ請求できる暫定的・補充的な養育費である。
金額は原則として子1人当たり月額2万円であり,本来の養育費の標準額又は最低額を意味しない。

第1 法定養育費は取決めまでの暫定的な養育費である

法定養育費は,養育費の取決めがない期間の空白を埋めるため,民法766条の3によって発生する請求権である。
養育費の合意又は家庭裁判所の審判が整うまでの当面の生活費を確保する役割を持つ。

法定養育費は,父母の収入や子の事情を踏まえて定める本来の養育費の標準額でも最低額でもない。
父母は,法定養育費の請求とは別に,協議,調停又は審判によって適正な養育費を定める必要がある。

第2 請求できるための要件
1 養育費の取決めがないこと

法定養育費は,父母が子の監護に要する費用の分担について定めないまま離婚した場合に問題となる。
離婚時に養育費の合意がある場合は,その合意に基づく養育費を請求することになり,法定養育費は発生しない。

取決めを文書にしていないだけで,口頭の合意が存在する場合に直ちに「取決めがない」とはいえない。
法定養育費を請求する前に,離婚時の協議内容,離婚届に伴って作成した書面,メールその他の記録を確認する必要がある。

2 離婚時から引き続き子を主として監護していること

請求できるのは,父母の一方であって,離婚時から引き続き未成年の子の監護を主として行っている者である。
単に親権者として指定されたかだけでなく,現実に誰が子を主として監護しているかが問題となる。

監護状況に争いがある場合は,同居状況,通学・通園,日常の世話,生活費の負担その他の具体的事情を整理する必要がある。
離婚後に監護者が変わった場合など,継続して主たる監護をしているといえるかが明確でない事案では,個別の検討を要する。

3 離婚等が令和8年4月1日以後であること

法定養育費は,令和8年4月1日より前の離婚には適用されない。
婚姻の取消し,裁判上の離婚及び認知にも民法766条の3が準用されるが,改正法附則3条2項により,いずれも施行日前に行われた場合には法定養育費は発生しない。

第3 金額は子1人当たり月額2万円である
1 子の数を乗じて計算する

法定養育費の額は,月額2万円に,離婚時から引き続き主として監護する未成年の子の数を乗じて計算する。
対象となる子が2人であれば月額4万円,3人であれば月額6万円である。

この金額は父母の収入に応じて作られた養育費算定表の金額ではない。
算定表による標準額と法定養育費の違いは,養育費算定表の見方,計算方法及び法定養育費との違い(AI作成)で説明している。

2 離婚月及び終了月は日割りとなる

法定養育費は毎月末に支払うものとされる。
離婚等の日が月の初日でない場合は,その月の初日から離婚等の日の前日までの日数に応じた額を控除する。
養育費の取決めが成立するなどして月の途中で請求期間が終わる場合も,終了日の翌日から月末までの日数に応じた額を控除する。

1日当たりの額は,月額をその月の日数で除して算定する。
実際の請求では,離婚日,終了事由が生じた日及び各月の日数を特定して計算する必要がある。

第4 いつからいつまで請求できるか
1 離婚の日から請求できる

法定養育費は,離婚の日から請求できる。
通常の養育費の過去分について実務上問題となる請求の始期とは制度が異なるため,区別が必要である。

通常の養育費の始期と法定養育費との関係は,養育費はいつから請求できるか―離婚後の過去分・法定養育費・調停申立ての始期(AI作成)で説明している。

2 三つのうち最も早い日に終了する

法定養育費を請求できる期間は,次の三つのうち最も早い日に終了する。
① 父母が協議によって養育費の分担を定めた日
② 養育費の分担について家庭裁判所の審判が確定した日
③ 子が成年に達した日

法定養育費は,適正な養育費が決まるまでの空白を埋める制度である。
月額2万円を長期間の最終的な養育費として固定する趣旨ではない。

第5 支払能力がない場合と家庭裁判所による調整
1 義務者が支払を拒める場合

(続きを読む...)法定養育費とは―請求要件,子1人当たり月額2万円及び支払期間(AI作成)

親族間で土地を使わせる場合の課税-使用貸借と相当の地代(AI作成)

第1 親の土地を無償で借りても,借地権の贈与税は原則としてかからない第2 固定資産税相当額を負担する場合も使用貸借に含まれる第3 通常の地代と相当の地代の違い1 相場の地代を払うだけでは権利金の問題が残る2 相当の地代はおおむね年6%を基準とする3 相当の地代に満たない場合と地代を引き下げる場合第4 相続時の土地評価と小規模宅地等の特例1 子の家や貸家があっても,使用貸借地は原則として自用地評価となる2 相当の地代を収受する土地の80%評価3 使用貸借でも居住用の特例を検討できる場合がある第5 同族会社など法人が関係する土地貸借1 個人間の取扱いをそのまま当てはめない2 土地の無償返還に関する届出書の役割3 土地と同族会社株式の評価,裁判例の示す範囲第6 親族間の契約を決める前に確認する事項1 親の所有地か借地か,従前の借地権があるか2 返還条件と毎年の税負担を契約に合わせて確認する3 内縁の配偶者への地代は所得税法56条だけで否認されない第7 出典1 法令2 国税庁の法令解釈通達3 国税庁の制度説明・手続案内4 裁判例

第1 親の土地を無償で借りても,借地権の贈与税は原則としてかからない

親の所有する土地に子が自分の家を建て,権利金も地代も支払わずに使用する場合,国税庁は,土地を使用する権利の価額を零として取り扱っている。
そのため,子に借地権相当額の贈与税は課されない一方,後に親の土地を相続するときは,原則として自用地の価額で評価する(国税庁「親の土地に子供が家を建てたとき」)。

本記事は,令和8年9月28日を基準に,親子その他の個人間で,建物の所有を目的として土地を使わせる場合を中心に説明する。
次の表は,権利金その他の特別な経済的利益の授受がない場合の基本的な違いである。

土地の使わせ方借りる側の取扱い貸す側の土地評価使用貸借使用権は零評価原則として自用地価額通常の地代による賃貸借権利金授受の慣行がある地域では,借地権の贈与が問題となる通常の貸宅地の評価相当の地代による賃貸借借地権設定による利益はないものとして扱う原則として自用地価額の80%

表の賃貸借に関する取扱いは,国税庁の相当の地代に関する通達の趣旨,1項,2項注及び6項による。
法人が当事者となる場合,既存の借地権がある場合及び小規模宅地等の特例については,それぞれ別の条件を確認する必要がある。
親の土地や建物を無償で使わせたことが,相続の際に民法上の特別受益に当たるかについては,実家に独身のまま無償で住み続けた子は特別受益者になるか―同居・別居・土地利用で分かれる判断で説明している。

第2 固定資産税相当額を負担する場合も使用貸借に含まれる

民法593条及び601条は,無償で使用・収益して契約終了時に返還する使用貸借と,賃料を支払う賃貸借を区別している。
親族間でも,契約書の表題だけでなく,地代,権利金及びその他の利益の授受を確かめることになる。

国税庁の「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」1項は,土地の公租公課に相当する金額以下の授受があるにすぎない場合も,使用貸借に該当するとしている。
したがって,子が親にその土地の固定資産税・都市計画税相当額だけを支払っても,そのことだけで借地権の贈与税が生じるわけではない。
以下,この通達を「使用貸借通達」という。

反対に,毎月の地代がなくても,権利金や地代に代わる経済的利益を与えている場合は,同項の使用貸借には該当しない。
税額を少し超えたという数字だけで結論を出すのではなく,土地の使用の対価として何を約束し,何を支払っているかを検討する必要がある。
民法上,固定資産税相当額を超える地代や相場より安い地代が賃料に当たるかを判断した裁判例は,使用貸借と賃貸借の区別-固定資産税程度の支払,相場より安い地代・家賃は賃料かで整理している。

零評価になるのは,この土地使用権である。
親から土地の所有権そのものや建築資金の贈与を受ける場合まで,贈与税がかからないという意味ではない(相続税法,使用貸借通達1項)。

第3 通常の地代と相当の地代の違い

1 相場の地代を払うだけでは権利金の問題が残る

通常の地代とは,その地域の通常の賃貸借契約で支払われる地代である。
借地権設定時に権利金を授受する慣行がある地域で,権利金を払わず,通常の地代だけで借地権を設定すると,借地人が借地権相当の利益を受けたものとして,贈与税が問題となる。

これは,使用貸借の使用権を零評価とする取扱いとは異なる。
「無償では申し訳ないから相場の地代を払う」と決める前に,権利金の取扱いも含めて確認する必要がある(相当の地代に関する通達の趣旨及び2項注)。

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離婚届不受理申出の方法と効力――有効期間,取下げ及び受理後の手続(AI作成)

目次

第1 離婚届不受理申出の意味

1 制度の法的根拠

2 申出で止められる届出

第2 申出の方法

1 申出人と申出先

2 申出書,本人確認書類及び費用

3 本人が出頭できない場合

4 有効期間と取下げ

第3 申出後の効果と限界

1 同じ日に離婚届が提出された場合

2 通知の範囲

3 離婚条件及び裁判上の離婚との関係

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戸籍の公開制度の沿革――明治5年式戸籍から昭和51年・平成19年改正を経て現在まで(AI作成)

第1 戸籍の「公開」を理解するための前提

1 本記事の対象と結論

2 「公開」に含まれる四つの制度

3 公開制度の主要な転換点

第2 明治5年式戸籍から一般公開原則の成立まで

1 明治4年太政官布告第170号と明治5年式戸籍

2 明治19年戸籍取扱手続

3 明治31年戸籍法による一般公開の明文化

4 大正3年戸籍法への承継

第3 戦後の公開原則と昭和43年・昭和51年の制限

1 昭和22年制定時の戸籍法10条

2 昭和43年の明治5年式戸籍に関する二つの通達

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戸籍謄本・住民票の職務上請求――要件,DV等支援措置,不正取得の責任及びオンライン化(AI作成)

第1 職務上請求の対象と基本原則

1 この記事が扱う範囲

2 窓口で交付されたことと実質的適法性

第2 戸籍と住民票で異なる法的構造

1 各証明書が示す情報

2 以前同じ戸籍だった人の現在住所

3 戸籍法上の請求類型

4 住民基本台帳法上の申出

5 戸籍証明書等の広域交付との違い

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遺産分割調停・審判の管轄,移送と自庁処理(AI作成)

第1 調停と審判の管轄は異なる

1 基本的な区別

2 同じ裁判所で当然に続くわけではない

3 管轄を調べる前に手続類型を分ける

第2 遺産分割調停の管轄

1 相手方住所地と複数の相手方

2 住所がない場合又は住所が知れない場合

3 調停の合意管轄

4 相続開始地は調停の法定管轄ではない

第3 遺産分割審判の管轄

1 相続開始地の家庭裁判所

2 審判の合意管轄

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遺産管理人とは――遺産分割調停・審判中の選任要件と権限(AIリライト)

第1 この記事でいう遺産管理人

1 家事事件手続法200条1項の財産の管理者

2 名称が似ている制度との違い

第2 遺産管理人の選任要件

1 遺産分割事件の係属と本案審判の蓋然性

2 財産管理の必要性

3 選任の必要性を基礎付ける例

(1) 保存・管理が行われていない例

(2) 中立的な管理が必要となる例

(3) 賃料の開示をめぐる紛争

第3 申立て,審理及び不服申立て

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相続財産管理人選任申立ての手引

1 令和5年4月改正より前の取扱いに関するものですが,相続財産管理人選任申立ての手引を以下のとおり掲載しています。

・ 相続財産管理人選任申立ての手引(申立てを検討している人向けの説明文書)
・ 相続財産管理人選任申立ての手引(民法918条2項用)
・ 相続財産管理人選任申立ての手引(成年後見人・保佐人・補助人用)
・ 自治体向け財産管理人選任事件申立てQ&A(令和元年11月改訂の,大阪家庭裁判所家事第4部財産管理係書記官室の文書)

2 「大阪家裁後見センターだより」も参照してください。

3 令和5年4月1日以降の相続財産清算人の手続については,次の記事で整理しています。
・ 相続人がいない場合の相続財産清算人
・ 相続財産清算人の権限外行為許可
・ 相続財産清算人による不動産の任意売却

個人事業主の離婚と婚姻費用及び養育費――確定申告書からの総収入の認定,減価償却費の取扱い及び回収方法(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

第2 自営業者の総収入は確定申告書の「課税される所得金額」から組み立てる

1 出発点となる書類と最も多い誤り
2 「課税される所得金額」に加算する項目
3 社会保険料控除だけを加算しない理由
4 必要経費そのものを争う場合

第3 減価償却費――令和4年の二つの高等裁判所決定

1 二者択一という枠組み
2 減価償却費を加算した例
3 減価償却費を加算しなかった例
4 分岐点はどこにあるか

第4 給与所得と事業所得が併存する場合の換算

第5 確定申告書が信用できない場合の収入認定

第6 高額所得の個人事業主

1 算定表の上限
2 基礎収入の修正計算

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経営者の離婚をめぐる四つの局面――役員報酬と婚姻費用,譲渡制限株式の売買価格決定,債権者による取消し及び婚姻後の夫婦間契約(AI作成)

第1 この記事が扱う範囲1 対象及び時点2 令和6年民法改正の経過措置は請求期間だけが例外であること3 同じ日に施行された年金分割の請求期限の伸長第2 役員報酬と婚姻費用及び養育費1 標準算定方式と基礎収入の割合2 同族会社の役員の総収入をどう認定するか3 過去に遡る分担と,財産分与による清算4 いったん定めた分担額を争う方法5 資料を出させる手段としての情報開示命令6 執行の段階で認められている特例第3 譲渡制限株式の売買価格の決定1 現物分与から価格決定に至る道筋2 申立て,審理及び鑑定3 非流動性ディスカウントをめぐる二つの最高裁決定4 二つの決定の関係をどう読むか第4 債権者及び破産管財人から見た財産分与1 詐害行為とならないのが原則であること2 取消しの範囲と,慰謝料の取扱い3 分与者が破産した場合の財産分与金4 婚姻費用の分担に関する債権を被保全債権とする場合5 破産法上の否認をめぐって見解が分かれている点第5 民法754条の削除と婚姻後の夫婦間契約1 削除された規定と,判例による限定2 削除の理由と,法制審議会答申からの経緯3 婚姻の届出前にする夫婦財産契約の制約4 婚姻後にする合意の設計5 自社株式及び株主間契約への影響出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料4 文献5 ウェブ資料
第1 この記事が扱う範囲
1 対象及び時点

非上場会社を経営する者の離婚では,自社株式が財産分与の対象となるか,どのように評価するかが最大の争点になる。もっとも,実際の事件で決着を左右するのはそれだけではない。株式の評価額とは別に毎月の収入が問題になる局面,分与を現実に実行しようとして会社法上の手続に突き当たる局面,分与を第三者である債権者や破産管財人がどう見るかという局面,そして紛争が生じる前に合意で備える局面がある。本記事は,この四つを条文及び判決文に即して整理する。自社株式そのものの対象性,評価及び課税は経営者の離婚と自社株式の財産分与で扱っているため,本記事では重複しない範囲に絞る。本記事の作成にはAIを用いており,引用する法令はe-Gov法令検索により,裁判例は裁判所ウェブサイトにより,それぞれ内容を確認している。本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり,個別の事案に対する法的助言ではない。

2 令和6年民法改正の経過措置は請求期間だけが例外であること

民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)は令和8年4月1日から施行されている。財産分与に関しては,民法768条2項ただし書が家庭裁判所に対する請求の期間を「離婚の時から五年」とし,同条3項が考慮すべき事情を列挙した上で「この場合において,婚姻中の財産の取得又は維持についての各当事者の寄与の程度は,その程度が異なることが明らかでないときは,相等しいものとする」と定めた。実務上の疑問は,施行日より前に成立した離婚にこれらの規定が及ぶかであるが,この点は同法の附則が明文で処理している。

附則2条は「第一条の規定による改正後の民法(以下「新民法」という。)の規定は,この附則に特別の定めがある場合を除き,この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし,同条の規定による改正前の民法(附則第六条において「旧民法」という。)の規定により生じた効力を妨げない」と定め,原則として遡って適用することを明らかにする。その上で,附則4条が「施行日前に離婚し,又は婚姻が取り消された場合における財産の分与に関する処分を家庭裁判所に請求することができる期間の制限については,なお従前の例による」として,請求期間だけを例外に切り出している。したがって,施行日前に離婚した事案では請求期間は従前どおり2年であるのに対し,寄与の程度を相等しいものとする同条3項後段は,施行日前に成立した離婚の財産分与についても適用されることになる。改正の効果を一律に「施行日以後の離婚に適用される」と説明すると,この非対称を落とすことになる。

3 同じ日に施行された年金分割の請求期限の伸長

財産分与と並んで請求期限が伸長されたのが,離婚時の年金分割である。厚生年金保険法78条の2第1項ただし書は,標準報酬の改定又は決定の請求について「当該離婚等をしたときから五年を経過したときその他の厚生労働省令で定める場合に該当するときは,この限りでない」と定める。これは令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)による改正で,日本年金機構の案内によれば施行日は令和8年4月1日であり,同日前に離婚等をした場合は従前どおり2年以内に請求する必要がある。

この改正には立法の経緯がある。令和6年民法改正の際に参議院法務委員会が付した附帯決議(令和6年5月16日)は,その第13項において,「本法により離婚時の財産分与に係る請求期限が二年から五年となることを踏まえ,二年となっている離婚時の年金分割に係る請求期限の延長について早急に検討を行うこと」と述べていた。財産分与と年金分割は,同じ日に,5年へ伸長する点でも施行日前の離婚を従前どおりとする点でも同じ構造で揃ったことになるから,離婚の相談では二つを対にして期限を確認することになる。

第2 役員報酬と婚姻費用及び養育費
1 標準算定方式と基礎収入の割合

婚姻費用及び養育費の算定は,現在,令和元年12月23日に公表された司法研究(平成30年度司法研究「養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究」)が提案した改定標準算定方式・算定表によっている。同研究の概要によれば,総収入から公租公課,職業費及び特別経費を控除した基礎収入の割合は,給与所得者でおおむね54パーセントから38パーセント,自営業者でおおむね61パーセントから48パーセントとなり,いずれも高額所得者ほど割合が小さくなる。子の生活費指数は0歳から14歳までが62,15歳以上が85である。自営業者については課税される所得金額を総収入とする点が給与所得者と異なる。

給与所得者を含む算定表全体の選び方,読み方,計算式及び特別事情については,婚姻費用算定表の見方,計算方法と特別事情(AI作成)で説明している。

同研究の概要には,「本研究の発表は,養育費等の額を変更すべき事情変更には該当しない」との記載もある。既に定められた養育費等の額について,算定方式が改定されたこと自体を理由に変更を求めることはできないという趣旨であり,改定の前後をまたぐ事案では確認しておく必要がある。

2 同族会社の役員の総収入をどう認定するか

経営者の事案に固有の難しさは,総収入の認定にある。婚姻費用及び養育費の算定実務を扱う文献は,同族会社の取締役について,代表取締役でない場合であっても「その収入額をその意思で変更することができる立場にあることが多く,その報酬額は,税金対策など様々な事情の影響を受けやすい」と指摘し,源泉徴収票では不十分と思われる事情がある場合には,源泉徴収票のほかに確定申告書等を提出させ,会社の営業内容をも検討すべきであるとする(松本哲泓『婚姻費用・養育費の算定』73頁)。給与所得者であれば源泉徴収票で足りるという前提が,経営者の事案では成り立たないということである。

もっとも,これは相手方が資料を任意に提出することを前提とした議論である。会社の決算資料や役員報酬の決定過程を示す資料は会社が保有しており,経営に関与していない配偶者の側で当然に入手できるものではない。相手方が提出しない場合にどうするかが,実務上の本題になる。

役員報酬の減額が争われた裁判例として,広島高等裁判所平成22年6月24日判決(平成21年(ネ)第569号,裁判所ウェブサイト)がある。夫は,離婚訴訟の原審で自らの年収を1641万円として養育費を主張していたが,本人尋問が行われた口頭弁論期日に,夫が取締役を務める会社の常務会で経費削減を理由に取締役報酬を28.57パーセント減額する決議がされたとする議事録を提出し,減額後の収入で算定すべきであると主張した。同判決は,会社の決算書類が提出されておらず,大幅な減額を要するほど業績が悪化したことを認めるに足りる客観的な証拠がないことなどから,この決議は「本件訴訟における養育費の算定において,その高額化を免れるために意図的に作出されたものとの疑いが残る」として減額を認めず,減額前の年収1641万円を養育費算定上の総収入とした。係争中の役員報酬の減額に対しては,減額の時期と訴訟の経過との関係や,業績を示す決算書類の提出の有無を具体的に指摘することが有効であることを示す例である。

3 過去に遡る分担と,財産分与による清算

婚姻費用の分担については,古くから二つの取扱いが確立している。第一に,最高裁判所大法廷昭和40年6月30日決定(昭和37年(ク)第243号,民集19巻4号1114頁)は,婚姻費用の分担に関する処分の審判が憲法32条及び82条に違反しないとした上で,「家庭裁判所は,審判時から過去に遡つて,婚姻費用の分担に関する処分をすることができる」と判示した。別居後に請求を怠っていた期間についても,遡って分担を求める余地がある。

第二に,最高裁判所第三小法廷昭和53年11月14日判決(昭和53年(オ)第706号,民集32巻8号1529頁)は,「離婚訴訟において裁判所が財産分与を命ずるにあたつては,当事者の一方が婚姻継続中に過当に負担した婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができる」と判示した。婚姻費用という毎月の収入の問題と,自社株式を含む財産分与という蓄積の問題は,別々の手続に分かれてはいるものの,金額の決定においては接続する。なお,最高裁判所第一小法廷令和2年1月23日決定(平成31年(許)第1号,民集74巻1号1頁)は,婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても婚姻費用分担請求権は消滅しないとしており,離婚成立によって過去分の請求が失われるわけではない。もっとも,過当に負担した婚姻費用の清算を財産分与の額に取り込むには,清算の対象となる財産の額が定まっていることが前提になる。自社株式について,対象を確定する時点と評価する時点をどのように分け,どのような評価方法によるかは,経営者の離婚と自社株式の財産分与の第4で扱っている。

4 いったん定めた分担額を争う方法

経営者の事案では,別居直後に取り交わした合意の金額が,後に判明した実際の収入と大きく食い違うことがある。この場合に,合意の無効を民事訴訟で確認してから審判に進むという道筋が考えられるが,最高裁判所第一小法廷令和7年9月4日判決(令和6年(受)第239号,民集79巻6号2637頁)は,これを否定した。同判決は「夫婦間における婚姻費用の分担の内容を定める合意の無効確認を求める訴えは,確認の利益を欠くものとして不適法である」と判示している。

その理由として同判決が挙げるのは,婚姻費用の分担義務が「その時々で変動する夫婦の収入,生活状況等の影響を受け得るもの」であり,「婚姻費用の分担の内容は,婚姻費用合意によって,以後,固定されるものではなく,適時に新たな形成があり得るものである」という点である。そのため,婚姻費用分担審判の手続において合意の成否が争われ,合意と異なる分担の内容を形成することを求める主張がされた場合,家庭裁判所は合意の存否,効力及び内容のみならず夫婦の収入,生活状況等の一切の事情を踏まえて新たに分担の内容を形成することになり,別途民事訴訟で合意の効力が確定されていないからといって,これが妨げられるわけではないとされた。同判決の事案は,夫の当時の年収について実際の額よりも低廉な額を前提として月額16万円とする合意がされ,後の審判が月額29万円等の支払を命じたというものであり,収入を低く示して合意を取り付けたと疑われる場面での争い方を示している。争う場は民事訴訟ではなく婚姻費用分担審判である,というのが実務上の帰結になる。

5 資料を出させる手段としての情報開示命令

令和6年改正で新設された家事事件手続法152条の2は,この分野で最も実務的な意味を持つ規定である。同条1項は,夫婦間の協力扶助に関する処分,婚姻費用の分担に関する処分及び子の監護に要する費用の分担に関する処分の各審判事件について,家庭裁判所が必要があると認めるときは,申立てにより又は職権で,当事者に対し「その収入及び資産の状況に関する情報を開示することを命ずることができる」と定める。同条2項は,財産の分与に関する処分の審判事件について,「その財産の状況に関する情報を開示することを命ずることができる」と定める。

さらに同条3項は「前二項の規定により情報の開示を命じられた当事者が,正当な理由なくその情報を開示せず,又は虚偽の情報を開示したときは,家庭裁判所は,十万円以下の過料に処する」と定めており,開示しないこと自体に制裁が用意された。会社の決算資料や役員報酬の実額を相手方が抱えたまま出さないという,経営者の事案に特有の状況に対して,正面から手当てをした規定である。もっとも,命ずるかどうかは家庭裁判所の判断であり,過料の額も10万円以下であるから,これだけで資料が必ず出るとまでは言えない。実務的には,まず情報開示命令の申立てをした上で,出てこない場合に調査嘱託その他の手段を検討するという順序になる。同条2項による財産の状況の開示は,自社株式の評価資料が相手方に偏在する事案でも同じ役割を果たす。資料が出た後に評価が争いとなって鑑定を実施する場合に,費用の負担及び鑑定結果に従う旨の合意をあらかじめ得ておくという調停実務の扱いは,経営者の離婚と自社株式の財産分与の第4の2で扱っている。

6 執行の段階で認められている特例

婚姻費用及び養育費については,執行の段階でも一般債権と異なる扱いがされている。民事執行法151条の2は,民法760条の婚姻費用分担義務や民法766条の子の監護に関する義務等について確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において,その一部に不履行があるときは,「当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても,債権執行を開始することができる」と定める。将来分について改めて申立てを繰り返す必要がないということである。また,同法152条3項は,これらの義務に係る金銭債権を請求する場合には差押禁止の範囲を4分の3から2分の1に読み替えるものとしており,給与債権からの回収可能額が広がる。

(続きを読む...)経営者の離婚をめぐる四つの局面――役員報酬と婚姻費用,譲渡制限株式の売買価格決定,債権者による取消し及び婚姻後の夫婦間契約(AI作成)

家族信託(民事信託)が難しい4つの理由-設計・税務・実務インフラ・制度選択(AI作成)

AIで作成した本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり,特定の個別事案に対する法的助言ではありません。実際の設計・受任に当たっては,個別の事実関係と最新の法令・裁判例を確認してください。

目次

第1 本記事の対象と射程

1 本記事が扱う「4つの難所」と,現実化した具体的リスク
2 用語の整理――民事信託・家族信託・商事信託

第2 難所その1――設計を誤ると,信託の一部無効や終了制限条項の効力が問題となる

1 任意規定を基調とする制度構造
2 遺留分潜脱と公序良俗による一部無効――東京地方裁判所平成30年9月12日判決
3 「防御的」設計がかえって潜脱と評価されるリスク
4 信託の終了を制限する条項――最高裁令和8年6月17日決定

第3 難所その2――税務が私法とは別に動き,想定外の税負担が生じる

1 受益者等課税の原則と,他益信託化による課税
2 受益者連続型のフル評価課税と相続税額の加算
3 信託した収益不動産の損失は損益通算も繰越しもできない
4 非課税措置・特例の適用可否は制度ごとに異なる

第4 難所その3――口座を開けず信託が機能せず,専門職が責任を負う

1 民事信託には商事信託と同じ行政監督がない

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法定養育費と養育費債権の先取特権の違い―子1人当たり月額2万円・8万円と使い分け(AI作成)

第1 法定養育費と先取特権は別の制度である第2 どの記事を確認すべきか1 養育費を決めずに離婚した場合2 養育費の取決めはあるが支払われない場合3 これから養育費を取り決める場合第3 手続選択の早見表第4 令和8年4月1日を基準に適用を分ける第5 関連記事第6 出典

法定養育費は,養育費を取り決めずに離婚した場合の暫定的な請求権であり,子1人当たり月額2万円である。
養育費債権の先取特権は,成立した養育費等の回収を強化する優先権であり,子1人当たり月額8万円まで及ぶ。
本記事は,二つの制度の違いと,取決め・債務名義の有無に応じて最初に確認すべき手続を整理する。

第1 法定養育費と先取特権は別の制度である

法定養育費と養育費債権の先取特権は,同じ民法改正によって新設され,令和8年4月1日に施行された別の制度である。
両制度は併存し得るため,法定養育費にも先取特権が及ぶ場合がある。

両制度の金額も異なる。
法定養育費は子1人当たり月額2万円であり,先取特権が及ぶ上限は子1人当たり月額8万円である。
2万円は通常の養育費の標準額又は最低額ではなく,8万円は養育費の認定額又は支払額そのものではない。

比較事項
法定養育費
子の監護費用の先取特権

根拠
民法766条の3
民法306条3号・308条の2

役割
取決めがない間の請求権を発生させる
発生済みの定期金債権の回収を強化する

主な場面
令和8年4月1日以後に養育費を決めずに離婚した場合
養育費等に確定した支払期限があり,未払となった場合

省令上の額

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選択的夫婦別姓(夫婦別氏)と戸籍情報システム―公表仕様で分かる改修範囲と未確定事項(AIリライト)

目次

第1 現行制度と本記事の検討範囲

1 現行法では婚姻時に夫又は妻の氏を選ぶ

2 最高裁判例と立法政策の区別

3 技術的実現可能性と改修規模は別の問題である

4 統計数値は調査方法と集計単位を併記する

第2 公表仕様から確認できる戸籍データの構造

1 戸籍の主キーは筆頭者氏名ではない

2 各個人の氏を保持する項目がある

3 公表仕様では分からない事項

第3 制度設計が確定しなければ仕様を確定できない事項

1 戸籍の編製と表示

2 子の氏と身分変動

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家庭裁判所の家事調停―申立て・費用・当日の流れと終了後の手続(AIリライト)

目次

第1 家事調停の対象と三つの事件類型

1 家事調停の役割

2 別表第2調停,特殊調停及び一般調停の違い

3 調停前置

第2 管轄裁判所,移送及び申立て

1 管轄裁判所

2 本庁と支部の取扱い

3 申立書,添付資料及び費用

第3 申立書の送付,住所等の秘匿及び記録

1 申立書等が相手方へ送られる範囲

2 住所等を知られたくない場合

3 記録の閲覧・謄写と終局文書の交付

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