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親族法・家事事件

こども性暴力防止法の施行と弁護士の役割―事業者側助言・こども側代理・聴き取りの注意点(AI作成)

目次第1 こども性暴力防止法とこの記事の結論1 令和8年12月25日から施行される2 弁護士の役割は一つではない3 公開資料だけを根拠とする第2 事業者側弁護士が最初に整理する事項1 法の対象と事業者の区分を確認する2 初動を「聴き取り」だけにしない3 担当者,指揮系統及び記録を決める第3 こどもへの聴き取りに先立つ安全確保1 現在の危険から離す2 医療と証拠保全を遅らせない3 外部機関との役割分担を決める第4 こどもへの聴き取りの注意点1 聴き取りの目的を限定する2 誘導を避け,自由な説明を尊重する3 聴取回数と参加者を絞る4 録音・録画は目的と負担を確認する第5 事業者側弁護士とこども側弁護士の役割分担1 事業者側弁護士の役割2 こども側弁護士の役割3 必要に応じて代理人を分ける第6 情報管理,労務対応及び説明1 情報共有は必要性と権限で判断する2 安全確保と懲戒判断を分ける3 こども・保護者への説明事項を記録する第7 弁護士が使う初動確認表1 事業者側の確認事項2 こども側の確認事項第8 出典・確認範囲1 法令及びこども家庭庁資料2 確認していない事項
第1 こども性暴力防止法とこの記事の結論
1 令和8年12月25日から施行される

こども性暴力防止法の正式名称は,「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」であり,令和6年法律第69号として公布された。
同法は,令和8年12月25日から施行される。
学校設置者等には法定の措置が義務付けられ,学習塾等の民間教育保育等事業者については,認定を受けた事業者に同等の措置が求められる仕組みである。

2 弁護士の役割は一つではない

性暴力の疑いが生じた場面で,弁護士は,事業者側で初動,調査,安全確保,関係機関との連携及び労務対応を助言する場合と,こども又は保護者の側で権利擁護,意思確認,被害申告及び支援機関との連携を担う場合がある。
事業者側の事実確認と,こどもの安全・回復のための支援は,目的も担当者も一致するとは限らない。
同じ弁護士が双方の立場を曖昧に担当すると,利益相反や,こどもが事業者の調査へ協力することを当然視する危険が生じるので,受任主体,依頼目的,情報共有の範囲及び意思決定者を最初に明確にする必要がある。

3 公開資料だけを根拠とする

本記事は,令和8年9月20日現在の法令,こども家庭庁の指針,Q&A及び公開研修資料に基づく。
個別の被害事案や関係者名は扱わず,公開資料から一般化できる実務上の確認事項だけを記載する。
個別案件では,対象事業,施行時期,所管行政庁,警察・児童相談所への連絡,労働法上の措置及び証拠保全を,最新の公式資料と当該事案の事情に即して確認する必要がある。

第2 事業者側弁護士が最初に整理する事項
1 法の対象と事業者の区分を確認する

最初に,事業者が学校設置者等に当たるのか,民間教育保育等事業者に当たるのか,後者であれば認定を受けているのか又は受ける予定があるのかを確認する。
同じ法人が複数の事業を行う場合,施設又はサービスごとに法の対象範囲が異なることがあるので,法人名だけで判断しない。
従事者の職名ではなく,実際に児童等へ提供する役務,接触の態様及び法令上の区分を確認する。

2 初動を「聴き取り」だけにしない

こども家庭庁の公開資料は,こどもへの聴き取りに先立ち,警察への通報・相談,所管行政庁への相談及び専門家への相談を検討するよう求めている。
したがって,事業者が最初に行うべき作業は,詳しい供述を直ちに取り切ることではない。
①現在も接触の危険があるか,②緊急の医療が必要か,③証拠が失われるおそれがあるか,④警察,児童相談所又は所管行政庁へいつ連絡するか,⑤誰がこどもと保護者へ説明するかを先に整理する。

3 担当者,指揮系統及び記録を決める

事業者内部では,安全確保,関係機関への連絡,こども・保護者対応,従事者対応,労務判断及び広報対応の担当を分ける。
弁護士は,誰が最終判断を行うのか,どの情報を誰へ共有するのか,時刻を含む初動記録を誰が作成するのかを確認する。
関係者が独自に繰り返し質問すると,こどもの負担を増やし,記憶や供述の評価を難しくすることがあるので,連絡経路を一本化する必要がある。

第3 こどもへの聴き取りに先立つ安全確保
1 現在の危険から離す

性暴力の疑いが具体化した場合は,こどもと加害が疑われる従事者との接触を止める必要性を検討する。

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エホバの証人の輸血方針の変更(令和8年9月)と宗教的輸血拒否の法的枠組み―成人患者の意思確認,同意書及び子どもへの輸血(AI作成)

目次第1 この記事の対象と基準日第2 エホバの証人が公表した輸血方針の変更1 公表された文書2 変更の内容3 個人の決定の扱いと事前指示書4 図表「Products Derived From Whole Blood」第3 国内の血液製剤から見た変更の意味1 全血製剤はほとんど供給されていない2 献血された血液の使い道第4 成人患者の輸血拒否に関する裁判例1 最高裁平成12年2月29日判決2 大分地裁昭和60年12月2日決定3 方針変更後に意思確認で注意すべき点第5 子どもへの輸血と親権者の拒否1 ガイドラインの年齢区分2 行政機関の位置付け3 三つの手続と選び方4 審判例5 方針変更が子どもの事案に与える影響第6 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 行政機関の通知・Q&A・事務連絡4 医学会等の指針5 統計・公的機関の資料6 宗教団体の公表資料
第1 この記事の対象と基準日

エホバの証人は,令和8年9月18日,他人の血液に由来する赤血球,白血球,血漿及び血小板(主要4成分)を治療に用いるかどうかを,各信者が個人として決めることとする方針を公式ウェブサイトで公表した。
全血の輸血は,引き続き受けないとしている。
本記事は,公表された文書の内容を確認した上で,宗教上の理由による輸血拒否について,国内の法令,裁判例,行政機関の通知及び医学会等の指針がどのような枠組みを置いているかを整理し,今回の変更が医療機関,患者,家族及び代理人の実務にどう関係するかを検討するものである。

基準日は令和8年9月20日である。
エホバの証人の文書は,基準日時点で英語版だけが公表されており,日本語の記事及び図表は同団体の日本語サイトに掲載されていない(同サイトのトップページには動画「2026 統治体からの話(6)」の案内がある。)。
そのため,本記事で英語の文書を日本語で示す部分は,いずれも本記事による仮訳である。
教義の当否は論じず,公表文書の記載と,法令,裁判例及び公的資料で確認できる事項に限って扱う。

結論を先に示すと,次のとおりである。
①今回の変更の中心は,主要4成分の使用を各信者の判断に委ねた点にあり,全血の輸血を受けないこと,全血の輸血に回る献血をしないことは維持されている。
②国内では全血製剤はほとんど供給されていないため,国内で行われる輸血の大半は,各信者が個人で判断する範囲に入ると考えられる。
③同じ信者でも受け入れる製剤が人によって分かれ得るので,医療機関は,信仰の有無からではなく,製剤ごとに本人の現在の意思を確かめる必要が大きくなる。
④子どもへの輸血について親権者が同意しない場合の法的手続(親権停止の審判,その保全処分及び児童相談所長等の緊急の措置)は,今回の変更によって何も変わらない。

第2 エホバの証人が公表した輸血方針の変更
1 公表された文書
(1) 令和8年9月18日の公表

公表の中心は,令和8年9月18日付けの「2026 Governing Body Update #6」(動画)である。
同じ日に,解説記事「How Do Jehovah’s Witnesses Show Respect for Life?」と,図表「Products Derived From Whole Blood」が公表された。
解説記事の末尾には,同記事は Update #6 で説明された内容を反映したもので,今後『ものみの塔』誌に掲載される予定である旨の注記がある。
同団体は,この変更を「adjustment」(調整)と表現している。

(2) 先行する令和8年3月20日の公表

これに先立つ令和8年3月20日付けの「2026 Governing Body Update #2」は,患者自身の血液を医療に用いることについての立場を明確にするものであった。
今回の解説記事は,この Update #2 の説明を引用した上で,同じ原則を主要4成分にも当てはめる構成をとっている。

2 変更の内容

解説記事の記載を項目ごとに整理すると,次のとおりである。

項目従前の扱い(解説記事の説明による)令和8年9月18日以降全血の輸血受けない受けない(変更なし)主要4成分(赤血球・白血球・血漿・血小板)全血と同じ原則を当てはめて受けない各信者が個人として決める分画(アルブミン,免疫グロブリン,凝固因子等)受け入れる信者がいることを前提とする記載がある各信者が個人として決める献血しない全血の輸血に回る献血はしない。成分・分画を他人に用いる明確な目的の献血は各信者が決める自己の血液の使用―令和8年3月20日の Update #2 から各信者が決める
(1) 主要4成分は各信者の判断に委ねられた

解説記事は,統治体が,他人の血液に由来する全血の主要4成分についても同じ原則が当てはまると決定したと述べ,「これら4つの主要成分をあらゆる内科的・外科的治療で用いるかどうかは,各クリスチャンが個人として決定しなければならない」(仮訳)としている。
他方で,主要4成分の一つ又は複数を用いる治療を統治体が軽く見ているわけではなく,引き続き「非常に重大な事柄」(仮訳)とみているとも述べている。

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離婚慰謝料の遅延損害金はいつから発生するか―離婚成立時とした最高裁令和4年1月28日判決と請求の趣旨の書き方(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論第2 最高裁令和4年1月28日判決1 事案と原審の判断2 最高裁の理由3 主文と利率第3 離婚自体慰謝料と個別的有責行為の慰謝料1 同判決の「なお」書き2 個別の違法行為を理由とする慰謝料第4 不貞相手に対する慰謝料請求との違い1 最高裁平成31年2月19日判決2 起算日の違い第5 離婚の成立時と請求の趣旨の書き方1 離婚の成立時2 離婚訴訟で慰謝料を併せて請求する場合3 離婚後に慰謝料だけを請求する場合4 財産分与との関係第6 関連記事第7 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料
第1 本記事の対象と結論

本記事は,離婚に伴う慰謝料(いわゆる離婚慰謝料)の遅延損害金がいつから発生し,何%の利率になるか,また,訴状の請求の趣旨にどう書くかを扱う。
調査基準日は令和8年9月19日である。

結論は次のとおりである。
①離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務は,離婚の成立時に遅滞に陥る(最高裁令和4年1月28日判決)。
②婚姻関係が破綻した時期や有責行為の時期が令和2年4月1日より前であっても,離婚の成立が同日以後であれば,遅延損害金の利率は年3%である。
③離婚訴訟で離婚と慰謝料を併せて請求するときは,同判決の主文に倣い,「本判決確定の日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員」と書くことになる。
④暴力や不貞行為など,破綻の原因となった個別の違法行為を理由とする慰謝料は,同判決の対象外であり,不法行為一般の原則によれば,各行為による損害の発生時に遅滞に陥ると考えられる。
⑤不貞相手(第三者)に対しては,特段の事情がない限り離婚に伴う慰謝料そのものを請求できない(最高裁平成31年2月19日判決)ので,不貞相手に請求するのは通常は不貞行為を理由とする慰謝料である。

第2 最高裁令和4年1月28日判決
1 事案と原審の判断

最高裁判所第二小法廷令和4年1月28日判決(令和2年(受)第1765号,民集76巻1号78頁)は,夫婦の一方(上告人)が本訴で離婚を請求し,他方(被上告人)が反訴で離婚とともに離婚に伴う慰謝料及び「判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金」を請求した事案である。
夫婦は平成16年11月に婚姻の届出をし,平成29年3月に別居していた。

原審の大阪高裁は,離婚を認め,慰謝料を120万円の限度で認容した上で,遅延損害金の利率を年5分とした。
その理由は,慰謝料請求は婚姻関係を破綻させた責任を前提とするものであり,婚姻関係が破綻した時は改正民法(平成29年法律第44号)の施行日である令和2年4月1日より前であるから,改正前の民法所定の年5分によるというものであった。

2 最高裁の理由

最高裁は,原審の判断を是認できないとして,次のとおり述べた。
「離婚に伴う慰謝料請求は,夫婦の一方が,他方に対し,その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由として損害の賠償を求めるものであり,このような損害は,離婚が成立して初めて評価されるものであるから,その請求権は,当該夫婦の離婚の成立により発生するものと解すべきである。」

続けて,不法行為による損害賠償債務は損害の発生と同時に何らの催告を要することなく遅滞に陥るという最高裁判所第三小法廷昭和37年9月4日判決(昭和34年(オ)第117号,民集16巻9号1834頁)を引用し,「離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務は,離婚の成立時に遅滞に陥ると解するのが相当である。」とした。
裁判所HPの裁判要旨も「離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務は,離婚の成立時に遅滞に陥る。」である。

つまり,同判決は,不法行為の時に遅滞に陥るという原則を変えたのではなく,離婚に伴う慰謝料では「損害の発生」が離婚の成立時であることを明らかにしたものである。
不法行為の遅延損害金の起算日一般については,不法行為・交通事故の遅延損害金はいつから発生するかで扱う。

3 主文と利率

同判決の事案では,離婚は判決によって成立するので,最高裁は「離婚の成立時である本判決確定の時に遅滞に陥る」とし,改正法の施行日前に遅滞の責任を負った(改正法附則17条3項参照)ということはできないから,利率は改正後の民法404条2項所定の年3パーセントであるとした。
そして,主文1項で,上告人の不服申立ての範囲である20万円に対する年5分の遅延損害金を認容した部分を変更し,次のとおり命じた。
「上告人は,被上告人に対し,20万円に対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。」

民法404条2項は「法定利率は、年三パーセントとする。」と定め,民法419条1項は,金銭債務の不履行による損害賠償の額を「債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。」としている。
民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則17条3項は,「施行日前に債務者が遅滞の責任を負った場合における遅延損害金を生ずべき債権に係る法定利率については、新法第四百十九条第一項の規定にかかわらず、なお従前の例による。」と定める。
したがって,離婚の成立が令和2年4月1日以後であれば,破綻の原因となった行為がそれより前であっても,離婚に伴う慰謝料の遅延損害金は年3%となる。

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DNA鑑定で兄弟・親子関係と相続は変わるか――戸籍上の身分関係と科学的証拠(AI作成)

目次第1 この記事の概要1 想定している場面2 基準日と資料の性質第2 法律上の親子関係・兄弟姉妹関係は何で決まるか1 母子関係は分娩の事実で決まる2 父子関係は嫡出推定か認知で決まる3 兄弟姉妹関係は親子関係から導かれる4 戸籍の記載の位置付け第3 最高裁平成26年7月17日の2つの判決1 2つの判決の書誌2 裁判要旨3 理由中の判示4 推定の及ばない子という例外5 射程第4 令和4年民法改正による嫡出推定・嫡出否認の見直し1 改正の概要と施行日2 民法772条(嫡出の推定)3 民法774条・775条(否認権者と訴えの相手方)4 民法777条・778条・778条の2(出訴期間)5 経過措置6 父が死亡している場合第5 嫡出推定が及ばない場合等の争い方1 親子関係不存在確認の訴え2 当事者の一方又は双方が死亡している場合の被告3 調停前置と合意に相当する審判4 長期間の親子としての実態と権利の濫用5 判決の効力と戸籍の訂正第6 相続への影響1 兄弟姉妹の相続順位と相続分2 生物学上のつながりの有無は相続権を左右しない3 「相続しない」ことの法的な意味第7 私的なDNA鑑定を求められたときの実務1 相手方の同意なしに検体を取ることの問題2 成年後見人には検体採取に同意する権限がない3 本人が死亡した後の検体4 費用と手続は鑑定を求める側が担う5 鑑定の精度について第8 遺体・遺骨の引取りとの関係第9 まとめ第10 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料4 関連記事
第1 この記事の概要
1 想定している場面

相続や死後の手続の場面では,次のような申出を受けることがある。
① 「本当に血がつながっているのか確かめたい。DNA鑑定の結果次第で、死後の手続にも相続にも関わるかどうかを決めたい。」という親族の申出
② 「亡くなった父の子とされている人は、本当は父の子ではないのではないか。」と疑う相続人の申出
③ 「成年後見人として、本人の検体を採って鑑定に回してほしい。」という親族の依頼

この記事は,弁護士・成年後見人・相続の相談者を読者として,こうした申出を受けたときに,DNA鑑定の結果によって法律上の親子関係・兄弟姉妹関係と相続がどこまで変わるのかを整理するものである。
結論を先に書くと,生物学上のつながりの有無は,法律上の親子関係が裁判で覆らない限り,相続権を左右しない。
また,嫡出推定が及ぶ父子関係は,科学的証拠によって生物学上の父子関係がないことが明らかであっても,親子関係不存在確認の訴えでは争えないというのが最高裁判例である。

2 基準日と資料の性質

この記事の基準日は令和8年9月18日である。
法令は,e-Gov法令検索(法令API)で基準日に取得した現行の条文及び改正附則によった。
裁判例は,裁判所ウェブサイトの裁判例検索で存在と裁判要旨を確認したものを挙げ,同サイトに掲載のないものはその旨を明記した。
この記事は一般的な整理であり,個別の事件では,戸籍の記載,子の出生の時期,認知の有無,当事者の生死等によって使える手続が大きく異なる。

第2 法律上の親子関係・兄弟姉妹関係は何で決まるか
1 母子関係は分娩の事実で決まる

最高裁昭和37年4月27日判決(昭和35年(オ)第1189号,民集16巻7号1247頁)の裁判要旨は,「母と非嫡出子間の親子関係は、原則として、母の認知をまたず、分娩の事実により当然発生する。」というものである。
民法779条は「嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。」と定めているが,母子関係については,認知ではなく分娩の事実が基準になるということである。

2 父子関係は嫡出推定か認知で決まる

婚姻中の夫婦の間に生まれた子について,民法772条1項は「妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。」と定めている。
同項後段は,婚姻前に懐胎した子であって婚姻成立後に生まれたものも同様としている。
懐胎の時期については,同条2項が,婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子は婚姻前に懐胎したものと推定し,婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定すると定めている。
他方,嫡出でない子の父子関係は,父の認知(民法779条)又は認知の訴え(民法787条)によって生じる。
つまり,法律上の父子関係は,生物学上のつながりそのものではなく,嫡出推定又は認知という法律上の仕組みを通じて定まる。

3 兄弟姉妹関係は親子関係から導かれる

兄弟姉妹関係は,それ自体を独立に定める仕組みがあるわけではなく,共通の父又は母との法律上の親子関係から導かれる。
したがって,「兄弟かどうか」という疑いは,法律的には,「その人と共通の親との間に法律上の親子関係があるかどうか」という問題に置き換えて考えることになる。
父母の双方を同じくするか一方のみを同じくするかも,法律上の父母を基準に判断される。

4 戸籍の記載の位置付け

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家事事件の住所・氏名秘匿と非開示希望―DV事件で提出前に確認すべきこと(AI作成)

目次

1 提出後ではなく提出前に確認する
2 四つの方法は目的が異なる
2-1 不要な情報のマスキング
2-2 送達場所等の届出
2-3 住所・氏名等の秘匿制度
2-4 非開示希望
3 住所・氏名等の秘匿申立て
4 非開示希望の対象と限界
5 秘匿決定と非開示希望の違い
6 住所を推知させる情報の例
7 提出前チェックリスト
8 決定後及び関連事件でも管理を続ける
9 不服申立て及び閲覧請求
10 関連記事
11 一次資料その他

1 提出後ではなく提出前に確認する

家事事件で住所、勤務先、通院先、子の学校等を相手方に知られると危険が生じる場合、書面を裁判所へ提出する前に情報管理を検討する必要がある。提出後に秘匿を申し立てても、既に閲覧又は謄写された情報を回収することはできない。
実務上は、①不要な情報を最初から記載しない又はマスキングする、②送達場所等の届出を適切に行う、③住所・氏名等の秘匿制度を申し立てる、④その他の情報について非開示を希望する、という方法を区別して検討する。

2 四つの方法は目的が異なる
2-1 不要な情報のマスキング

証拠又は添付資料に事件の判断に不要な住所、電話番号、勤務先、通院先、学校名、店舗名、位置情報等が含まれる場合、その部分を提出用写しで見えないようにする方法が基本となる。
黒塗りを画像の上に置いただけの電子ファイルは、コピー又は編集により元の文字が読めることがある。紙面及び電子データの双方で復元できない状態かを確認する必要がある。

2-2 送達場所等の届出

現住所と異なる安全な場所へ送達を受けたい場合、送達場所及び送達受取人の届出を検討する。ただし、送達場所を届け出ただけで、記録中の現住所その他の情報が当然に秘匿されるわけではない。

2-3 住所・氏名等の秘匿制度

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離婚訴訟の標準審理モデル―財産分与を含む事件を長期化させない準備(AI作成)

目次

1 東京家裁の審理モデルの位置付け
2 人事訴訟の平均審理期間
3 訴状提出前のチェックポイント
4 第1回口頭弁論期日と段階的な審理
5 財産分与の審理準備
5-1 財産一覧表
5-2 基準時と評価時
5-3 特有財産と混在財産
5-4 不動産、ローン及び退職金
6 子に関する争点と家庭裁判所調査官
7 本人尋問と和解
8 代理人が作成する進行管理表
9 令和6年モデル利用時の注意
10 関連記事
11 一次資料その他

1 東京家裁の審理モデルの位置付け

東京家庭裁判所家事第6部は、令和6年4月26日付けで「東京家裁人訴部における離婚訴訟の審理モデル」を公表した。同モデルは、東京三弁護士会との意見交換を経て、審理の計画性及び質を高め、離婚訴訟の不必要な長期化を防ぐために作成された実務資料である。
ただし、同モデルは法令、最高裁判例又は全国一律の処理基準ではない。東京家裁における一つの審理運営モデルであり、個別事件では担当裁判体の訴訟指揮及び事件の内容に従う。

2 人事訴訟の平均審理期間

最高裁判所事務総局家庭局「家庭裁判所の現状と課題」によれば、令和6年に終局した人事訴訟事件の平均審理期間は14.8か月であった。離婚事件では、財産分与の申立てがある事件が19.2か月、申立てがない事件が12.9か月であった。
平成27年は、財産分与の申立てがある事件が15.5か月、ない事件が10.8か月であり、いずれも長期化している。もっとも、これらは全国の既済事件の平均値であり、個別事件の終結時期を保証するものではない。

最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第11回)」(令和7年7月)によれば、財産分与の申立てがある離婚訴訟は、判決で終局した場合の平均審理期間が23.4か月、和解で終局した場合が18.5か月であり、判決の方がおおむね5か月程度長い(同報告書178頁)。
同報告書は、離婚訴訟の既済事件に占める財産分与の申立てがある事件の割合が平成27年の31.7%から令和6年の41.6%に増えていることから、これが人事訴訟全体の平均審理期間を押し上げている原因の一つであると推測している(同報告書182頁)。
他方、親権者を指定すべき子がいる離婚事件といない離婚事件の平均審理期間の差は、1か月に満たない(同報告書179頁)。

3 訴状提出前のチェックポイント

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家事調停はどのくらいかかるか―平均審理期間,期日間隔及び代理人ができること(AI作成)

目次

1 家事調停の期間を考える際の結論
2 令和6年の平均審理期間及び平均期日間隔
3 申立てから第1回期日までに行うこと
4 期日と期日の間に代理人が行うこと
5 事件を長期化させやすい事情
6 ウェブ会議と期日間隔
7 平均値を依頼者への説明に使う際の注意
8 調停が成立しない場合の見通し
9 関連記事
10 一次資料その他

1 家事調停の期間を考える際の結論

① 夫婦関係調整調停について、令和6年の全国平均は、平均審理期間が6.8か月、平均期日間隔が1.9か月であった。ただし、これは既済事件の平均値であり、申立てから終局までの標準期限を示すものではない。
② 期日間の約2か月は、単なる待ち時間ではない。必要資料の収集、主張の整理、相手方提案の検討及び次回期日の進行準備に使う期間である。
③ 離婚、婚姻費用、面会交流、財産分与等の争点が重なる事件では、事実関係及び資料を争点ごとに分け、次回期日までの宿題を具体化することが長期化防止につながる。
④ 本記事の数値は、最高裁判所事務総局家庭局「家庭裁判所の現状と課題」(令和7年度実務協議会(冬季)、令和8年2月)の令和6年統計を基礎とする。同文書は裁判所自身の運用認識を示す司法行政資料であるが、法令でも判例でもない。

2 令和6年の平均審理期間及び平均期日間隔

同文書によれば、夫婦関係調整調停の平均審理期間は、平成20年の4.3か月から令和6年の6.8か月へ延びた。また、平均期日間隔は、平成20年の1.4か月から令和6年の1.9か月へ延びた。
平均審理期間は、申立てから成立、不成立、取下げ等による終局までに要した期間の平均である。平均期日間隔は、各期日の間隔を平均したものであり、「必ず2か月おきに指定される」という規則ではない。
実際の期間は、争点の数、当事者の出頭状況、提出資料の量、子に関する調査の要否、裁判所及び代理人の日程、ウェブ会議利用の可否等によって変わる。

最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第11回)」(令和7年7月)も、令和6年の統計を分析している。同報告書によれば、夫婦関係調整調停や婚姻費用分担事件を含む婚姻関係事件の平均審理期間は7.0か月、平均期日回数は3.6回、平均期日間隔は1.9か月であった。
同報告書の資料4-2によれば、婚姻関係事件の平均審理期間は、双方に手続代理人がいる事件で9.9か月、申立人側のみに代理人がいる事件で6.4か月、相手方側のみに代理人がいる事件で7.6か月、双方とも本人の事件で4.6か月であり、代理人の付き方によって大きく異なる。
同じ年の遺産分割事件の平均審理期間は12.1か月、子の監護事件は8.3か月であった。

3 申立てから第1回期日までに行うこと

申立人は、申立書を提出すれば準備が終わるわけではない。第1回期日までに、申立ての目的、争点及び希望する解決の優先順位を整理する必要がある。

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資産額と「実際に払える額」は違う-和解・財産分与・代償分割の支払能力チェック(AI作成)

第1 資産額と支払能力は同じではない

1 この記事が扱う場面
2 六つの確認軸

第2 資産別に「実際に使える額」を確認する

1 預貯金
2 上場株式・投資信託その他の金融資産
3 不動産
4 保険、退職金、事業及び法人関係財産

第3 収入と一括払いの原資を分ける

1 高収入でも一括払いできるとは限らない
2 分割払いは各月の資金繰りを確認する

第4 手続ごとの確認事項

1 民事訴訟上の和解
2 離婚に伴う財産分与
3 遺産分割における代償分割

第5 支払能力を裏付ける資料

(続きを読む...)資産額と「実際に払える額」は違う-和解・財産分与・代償分割の支払能力チェック(AI作成)

弁護士による民事信託(家族信託)業務の流れ-受任・意思確認から監督・清算まで(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と結論第2 受任-依頼者,目的及び制度選択を確定する1 依頼者及び利害関係を特定する2 依頼の目的を事実に置き換える3 他の制度及び受託者候補を検討する第3 意思確認-委託者本人の能力及び真意を記録する1 委託者本人と独立して面談する2 能力確認と契約内容の説明を記録する第4 契約-権限,変更,交代及び終了を一体として設計する1 ひな型を個別の財産及び目的に合わせる2 終了制限は目的との対応を具体化する3 公正証書及び専門職との連携を決める第5 実装-財産移転,登記,口座及び税務提出を完了する1 契約締結と財産移転を区別する2 信託口口座の取扱いを事前に確認する3 税務提出の担当及び期限を決める第6 運用-分別管理,帳簿,報告及び監督を続ける1 受託者の法定義務を運用へ落とし込む2 弁護士の受任範囲を明確にする3 信託監督人及び受益者代理人の要否を検討する第7 変更・交代-契約後の事情変更に備える1 信託の変更手続を確認する2 受託者の任務終了と後継者への引継ぎを分ける第8 終了・清算-残余財産の給付と最終計算まで行う1 終了事由及び終了時点を確定する2 終了後の清算手続を完了する3 最終計算の承認と記録保存を確認する出典1 法令2 所管行政機関の手続案内3 職能団体のガイドライン
第1 本記事の対象と結論

本記事は,弁護士が民事信託(家族信託)の相談を受けた後,受任,委託者本人の意思確認,契約設計,財産移転,運用,受託者交代,終了及び清算をどの順序で確認するかを整理するものである。
調査の基準日は令和8年9月6日であり,同日現在の信託法,国税庁の手続案内及び日本弁護士連合会の公開ガイドラインを確認し,AIを利用して作成した。

民事信託業務は,契約書を作成して署名押印すれば完了するものではない。
信託の効力発生とは別に,対象財産の移転,登記,口座,帳簿,税務提出,受託者の監督,交代時の引継ぎ及び終了後の清算を実装する必要があるからである。

本記事は一般的な業務工程を示すものであり,個別の契約条項,課税関係又は金融機関の取扱いを一律に示すものではない。
民事信託の制度選択自体に伴う難しさについては,家族信託(民事信託)が難しい4つの理由で説明している。

第2 受任-依頼者,目的及び制度選択を確定する
1 依頼者及び利害関係を特定する

最初に,誰が弁護士への依頼者であり,誰の意思と利益を中心に信託を設計するのかを委任契約書及び面談記録で特定する。
親族から相談が持ち込まれた場合でも,委託者となる本人,受託者候補,他の推定相続人及び受益予定者の利害が常に一致するとは限らない。

日本弁護士連合会の「民事信託業務に関するガイドライン」3頁~5頁は,委託者本人との面談,親族等から不当な影響を受けていないことの確認及び他の制度との比較検討を重視している。
複数の当事者から共同で依頼を受ける場合は,利益相反が現にあるか,将来顕在化し得るか,情報を相互に共有できるかを受任前に確認する必要がある。

2 依頼の目的を事実に置き換える

「認知症対策」「財産を守りたい」又は「家族に迷惑を掛けたくない」という抽象的な希望だけでは,受託者へ与える権限も信託の終了条件も決められない。
管理を継続したい財産,想定する期間,収益の使途,売却又は借入れの必要性,受益者の生活費,承継先及び終了後の帰属先を事実レベルで確認する。

確認すべき資料は,①対象財産の一覧,②不動産登記事項証明書,③預貯金及び有価証券の残高資料,④賃貸借契約及び借入資料,⑤家族関係を示す戸籍等並びに⑥既存の遺言,任意後見契約又は贈与契約である。
資料を集める目的は,財産額を増やして見せることではなく,信託へ入れる財産,残す財産及び信託外で処理する事項を分けることにある。

3 他の制度及び受託者候補を検討する

本人の財産管理だけが目的であれば任意後見又は法定後見,死亡後の承継だけが目的であれば遺言,生前の権利移転が目的であれば贈与で足りる場合がある。
民事信託とこれらの制度は排他的ではなく,身上保護,信託外財産及び遺言執行を補うために併用することもある。

受託者候補については,年齢及び家族関係だけでなく,対象財産を管理する時間と能力,帳簿作成,利益相反への対応,長期継続の可能性,報酬及び後継者候補を確認する。
日弁連ガイドライン5頁~6頁は,受託者候補の適格性を検討し,受託者の法的義務と責任を具体的に説明することを求めている。

第3 意思確認-委託者本人の能力及び真意を記録する
1 委託者本人と独立して面談する

委託者の判断能力と信託設定意思は,親族の説明だけで確定しない。
少なくとも重要な局面では委託者本人と面談し,信託する財産,受託者へ移る権限,受益者,信託期間,変更・終了条件及び残余財産の帰属について,本人自身の言葉で理解と意思を確認する。

親族が同席すると本人の発言が影響を受けるおそれがあるときは,日弁連ガイドライン4頁が示すように,本人だけと面談する機会を設ける。
通訳,補助者又は医療情報が必要な場合でも,本人の意思を代替するのではなく,意思決定を支援して理解の有無を確認するという位置付けを明確にする。

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民事信託(家族信託)の税金はいつ発生するか-設定・運用・受益者変更・相続・終了の時系列(AI作成)

目次

第1 結論-税金は受託者への名義変更だけで決まらない第2 課税関係の全体像1 受益者等課税信託の基本2 時系列表第3 設定時の税金1 委託者と受益者が同じ自益信託2 委託者と受益者が異なる他益信託3 不動産を信託する場合の流通税4 紙の信託契約書の印紙税第4 運用中の税金及び受託者の手続1 所得税は受益者に帰属する2 消費税及び固定資産税3 信託不動産の損失制限4 信託の計算書第5 受益者又は受益権割合が変わった時1 新たな受益者が生じた場合2 受益者別調書及び贈与税申告第6 先順位の受益者が死亡した時1 次順位の受益者へのみなし遺贈2 受益者連続型信託の評価3 小規模宅地等の特例第7 信託が終了した時1 残余財産の取得と贈与税又は相続税2 不動産取得税及び登録免許税3 取得費及び所有期間の引継ぎ4 空き家の3000万円特別控除5 終了時の受益者別調書第8 設計及び運用時の確認順序出典1 法令2 法令解釈通達及び改正説明3 国税庁の手続案内及びタックスアンサー4 国税庁の質疑応答事例5 東京国税局の文書回答事例6 財務省の税制資料
第1 結論-税金は受託者への名義変更だけで決まらない

民事信託(家族信託)の税務では,受託者名義に変えたかどうかだけでなく,誰が信託の経済的利益を受ける地位を取得し,その地位がいつ移ったかを見る必要がある。
委託者が自ら受益者となる自益信託では,設定時に受益権の経済的な移転がないため,相続税法9条の2第1項による贈与税又は相続税は通常生じないが,これを「家族信託は非課税である」と言い換えることはできない。

課税又は手続が問題となる主な時点は,①他人を受益者とする信託の設定時,②信託財産から所得が生じた時,③受益者又は受益権割合が変わった時,④先順位の受益者が死亡した時,⑤信託終了後に残余財産を取得した時,⑥不動産の登記又は紙の契約書を作成した時である。
贈与税,相続税及び所得税のほか,消費税,登録免許税,不動産取得税,固定資産税,印紙税並びに受託者の法定調書を別々に確認しなければならない。

本記事は,令和8年9月6日現在の法令及び国税庁等の公開資料に基づき,個人を委託者,受託者及び受益者とする一般的な受益者等課税信託を時系列で整理するものである。
法人課税信託,集団投資信託,退職年金等信託,受益者等が存しない信託,国外財産を含む信託及び個別の税額計算は対象外であり,具体的な申告では最新の法令と事実関係を税理士等に確認する必要がある。

第2 課税関係の全体像
1 受益者等課税信託の基本

所得税法13条は,受益者等課税信託について,信託財産に属する資産及び負債を受益者が有し,信託財産に帰せられる収益及び費用を受益者の収益及び費用とみなして所得税法を適用するものとしている。
消費税法14条も,原則として,信託財産に属する資産を受益者が有するものとみなし,信託財産に係る取引を受益者の取引として扱う。

したがって,受託者が家賃を受け取り,費用を支払っていても,所得税及び消費税の課税主体は受託者であるとは限らない。
受益者等課税信託では,受益者が信託財産を直接保有して取引したものに近い形で課税関係を確認することになるが,受託者には後述する法定調書の提出義務が別に生じ得る。

2 時系列表

①設定時は,自益信託か他益信託か,不動産を信託するか,紙の信託契約書を作成するかを確認する。
②運用中は,賃料,配当,譲渡益その他の所得を誰に帰属させるか,消費税の課税事業者か,不動産所得の損失制限があるかを確認する。
③受益者変更時は,新たな受益者が対価を負担したか,変更が前の受益者の死亡に基因するか,受益権割合が動いたかを確認する。
④相続時は,次順位の受益者へのみなし遺贈,受益者連続型信託の評価,相続税額の加算,債務控除及び小規模宅地等の特例を確認する。
⑤終了時は,残余財産を取得する者の従前の受益権,取得原因,不動産の登記,取得費の引継ぎ及び空き家特例を確認する。

第3 設定時の税金
1 委託者と受益者が同じ自益信託

相続税法9条の2第1項は,信託の効力が生じた場合に,適正な対価を負担せずに受益者等となる者があるときは,その者が委託者から信託に関する権利を贈与により取得したものとみなし,委託者の死亡に基因する場合は遺贈により取得したものとみなしている。
委託者と受益者が同一であり,受益権が他人へ移らない通常の自益信託では,この規定による贈与税又は相続税は設定時には通常生じない。

もっとも,自益信託であることは,設定から終了まで全ての税がかからないことを意味しない。
不動産の信託登記,紙の信託契約書,運用益,受益者の変更及び終了時の残余財産取得については,それぞれ別の課税関係がある。

2 委託者と受益者が異なる他益信託

委託者以外の者が適正な対価を負担せずに受益者となる他益信託では,信託の効力が生じた時に,受益者が信託に関する権利を委託者から贈与により取得したものとみなされる。
委託者の死亡により信託の効力が生じるときは,贈与ではなく遺贈による取得とみなされる。

課税時期は,受託者が信託財産を換価し,又は受益者へ金銭を交付した時に限られない。
信託の効力発生により経済的利益を受ける受益者等となった時点で課税関係を検討する必要がある。

3 不動産を信託する場合の流通税

登録免許税法7条1項により,委託者から受託者への信託のための財産権移転の登記は登録免許税を課されないが,信託の登記そのものは別に課税される。
財務省の令和8年の案内によれば,土地の所有権の信託登記は,令和11年3月31日まで税率が1000分の3に軽減されているが,建物その他の登記は別に確認する必要がある。

地方税法73条の7第3号は,委託者から受託者に信託財産を移す場合の不動産取得について,所定の例外を除き不動産取得税を課さないとしている。
したがって,不動産取得税が課されないことと,信託登記の登録免許税が生じることとは両立する。

4 紙の信託契約書の印紙税

国税庁の印紙税額一覧表では,信託行為に関する契約書は第12号文書とされ,1通につき200円である。
文書の名称ではなく内容及び作成形態によって課税文書への該当性が決まるため,電子契約や関連契約書を含め,実際に作成する文書ごとに確認する必要がある。

第4 運用中の税金及び受託者の手続
1 所得税は受益者に帰属する

受益者等課税信託では,賃料,配当,利子,譲渡益その他の収益及び対応する費用は,原則として受益者に帰属する。
受託者の口座に入金されたままで受益者へ現金が交付されていなくても,そのことだけで受益者への所得課税を免れるものではない。

受益者が確定申告を要するか,所得区分,必要経費及び源泉徴収をどう扱うかは,信託財産と取引の内容によって異なる。
信託を設定したこと自体が,受益者の一般的な所得税の申告期限又は計算方法を別制度に置き換えるものではない。

2 消費税及び固定資産税

消費税法14条により,受益者等課税信託の信託財産に係る取引は原則として受益者の取引と扱われるため,賃貸その他の取引の課税・非課税,受益者の課税事業者該当性及びインボイス対応を受益者側で確認する必要がある。
信託を利用したことだけで,課税売上げが非課税になるものではない。

固定資産税は,地方税法343条により,原則として登記簿等に所有者として登記されている者に課される。
信託不動産では受託者名義で登記されるため,通常は受託者が納税通知を受けるが,信託財産から支出するか,受益者への収支報告でどう扱うかを信託事務として整理する必要がある。

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最高裁令和8年6月17日決定と民事信託の終了制限-信託法164条の適用排除条項及び受託者解任(AI作成)

目次

第1 本決定の結論と記事の対象第2 信託の終了,受託者の解任及び清算の区別1 信託法164条の原則と別段の定め2 信託法58条4項による受託者解任3 信託終了後の清算第3 本件の事実関係と原審の判断1 30年間の信託と終了制限条項2 原審の判断第4 最高裁が示した二段階の合理的必要性1 第1段階-条項自体の効力2 第2段階-終了申入れ時の任務継続3 補足意見が挙げた検討要素第5 本決定が判断していない事項と射程1 本件条項の効力を最終判断していない2 信託終了又は受託者解任を命じていない3 直接の射程と未確定の事項第6 民事信託契約の作成及び運用に与える影響1 信託目的と終了制限との対応を明らかにする2 期間及び制限手段を検討する3 終了申入れ時に必要性を再評価する4 受託者の固有利益及び終了後の手続を分けて確認する出典・参考資料1 法令・条約・告示2 裁判例・行政処分・弁護士懲戒3 その他の文献
第1 本決定の結論と記事の対象

本記事は,最高裁令和8年6月17日第三小法廷決定(令和6年(許)第30号・受託者解任申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件)を対象とし,信託法164条1項の適用排除条項と受託者解任との関係を整理するものである。
調査の基準日は令和8年9月6日であり,同日までに確認できた公開資料及び同日現在の信託法に基づき,AIを利用して作成した。
対象は本決定の事案,判示事項,射程及び民事信託契約の作成・運用上の留意点であり,個別の信託契約の有効性を判断するものではない。

本決定は,信託法164条1項の適用を排除する条項が,同条3項の「別段の定め」として常に有効になるとはしなかった。
条項自体が効力を有するには,信託目的の達成のために合理的に必要と認められることを要するとしたのである。
さらに,条項が有効であっても,終了申入れの時点で受託者が申入れを拒絶して任務を続けることについて,別に合理的必要性を要するとした。

もっとも,最高裁は,本件条項を無効とし,信託が終了したと判断し,又は受託者を解任したものではない。
原決定を破棄し,二つの合理的必要性について審理を尽くさせるため,事件を東京高等裁判所へ差し戻した。

第2 信託の終了,受託者の解任及び清算の区別
1 信託法164条の原則と別段の定め

信託法164条1項は,委託者及び受益者が,いつでも,その合意により信託を終了できると定めている。
委託者と受益者が同一人である自益信託では,双方の地位を兼ねる者の意思により終了の合意を成立させられることになる。

他方,同条3項は,信託行為に別段の定めがあるときは,その定めによるとしている。
本件の中心的な問題は,終了権を排除する文言があれば常に別段の定めとして効力を有するのか,それとも信託の本質から効力を制限されるのかという点であった。

2 信託法58条4項による受託者解任

信託法58条1項は,委託者及び受益者の合意による受託者の解任を認め,同条3項は信託行為による別段の定めを認めている。
これとは別に,同条4項は,受託者が任務違反により信託財産に著しい損害を与えた場合その他重要な事由があるときに,裁判所が委託者又は受益者の申立てによって受託者を解任できると定めている。

信託の終了は信託関係を清算段階へ移行させる制度であるのに対し,受託者の解任は特定の受託者の任務を終了させる制度である。
両者は別の制度であるが,本件では,終了申入れを拒絶して任務を続けたことが58条4項の重要な事由に当たるかという形で接続した。

3 信託終了後の清算

信託法176条は,信託が終了しても,清算が結了するまでは信託が存続するものとみなしている。
終了後の受託者は清算受託者となり,現務の結了,債権の取立て,債務の弁済及び残余財産の給付等を行う(同法177条以下)。
そのため,信託を終了できるかという問題と,終了後に誰がどのように清算するかという問題も区別する必要がある。

第3 本件の事実関係と原審の判断
1 30年間の信託と終了制限条項

最高裁決定全文によれば,抗告人は,平成29年5月23日,保有する外国会社の株式を兄である相手方へ信託し,自らを委託者兼受益者,相手方を受託者とする信託契約を締結した。
信託目的は,会社価値の毀損を防止し,会社全体の利益の最大化を図ることとされ,信託期間は30年間とされた。

契約には,委託者兼受益者が信託期間中に契約を解除できない旨の条項があった。
抗告人は令和2年8月及び9月,信託法164条1項に基づいて信託を終了する旨を通知したが,相手方は同条3項の別段の定めがあるとして終了を認めず,その後も受託者の任務を続けた。

2 原審の判断

抗告人は,信託法58条4項に基づく受託者の解任を申し立てた。
原審の東京高等裁判所令和6年9月10日決定(令和5年(ラ)第639号)は,終了制限条項が164条3項の別段の定めに当たり,終了通知によって信託は終了しないと判断した。
その上で,相手方が終了を認めず任務を続けても,58条4項の重要な事由はないとして,申立てを却下すべきものとした。

第4 最高裁が示した二段階の合理的必要性
1 第1段階-条項自体の効力

最高裁は,信託法164条3項が,信託の種類,目的等に応じて終了事由を柔軟に定められるようにする趣旨であるとした。
もっとも,信託の本質に反する定めまで許されるものではないとした。

信託では,財産権の名義を受託者へ移す一方,受託者は受益者のために管理・処分を行い,受託者自身が利益を享受する立場にはない。
最高裁は,専ら受託者の利益を図る目的の信託を定義から除く信託法2条1項と,受託者の利益享受を禁ずる同法8条を,この本質を示す規定として挙げた。

終了制限条項は,委託者兼受益者が通常は自由に信託を終了できる地位を制限し,その意思に反して受託者が任務を続けることを可能にするため,類型的かつ抽象的に利益相反のおそれがある。
そこで最高裁は,利益相反行為を扱う信託法31条1項及び2項を参照し,同条2項4号と同様に,信託目的の達成のために合理的に必要であることを終了制限条項にも要求した。

2 第2段階-終了申入れ時の任務継続

条項が契約締結時に有効であったとしても,その後の事情が変われば,受託者が終了申入れを拒絶して任務を続ける必要性は失われ得る。
最高裁は,終了申入れがされた時点で任務を続けることが信託目的の達成のために合理的に必要である場合に限り,受託者が申入れを拒絶して任務を続けることが許されるとした。

したがって,条項自体の効力と,終了申入れ後にその条項を根拠として任務を続けることの許容性とは,別々に審査される。
この二段階の判断枠組みは,契約締結時と終了申入れ時の事情を分けて確認することを求めるものである。

3 補足意見が挙げた検討要素

補足意見は,本件の「会社価値の毀損防止・利益最大化」という信託目的は抽象的であり,合理的必要性を判断する直接の指針になりにくいと指摘した。
その上で,信託契約締結の経緯,契約内容及び当事者が意図した実質的効果を踏まえ,信託目的の内容を理解する必要があると述べた。

(続きを読む...)最高裁令和8年6月17日決定と民事信託の終了制限-信託法164条の適用排除条項及び受託者解任(AI作成)

養育費債権の先取特権とは―対象範囲,子1人当たり月額8万円の上限及び差押え(AI作成)

第1 子の監護費用の先取特権とは第2 先取特権の対象となる債権1 確定期限の定めがある定期金債権であること2 養育費だけでなく婚姻費用等も対象になり得る第3 上限は子1人当たり月額8万円である第4 優先順位と効力第5 債務名義がなくても差押えを申し立てられる1 私的な合意書がある場合2 法定養育費の場合第6 差押財産が分からない場合第7 令和8年4月1日前の取決めと未払分第8 申立て前の確認事項第9 出典

養育費債権の先取特権は,養育費等のうち子1人当たり月額8万円までの部分に認められる一般先取特権である。
私的な合意書しかない場合でも,先取特権の存在を証する文書を提出できれば,債務名義を取得せずに担保権実行として差押えを申し立てられる。

第1 子の監護費用の先取特権とは

子の監護費用の先取特権は,養育費等の一定部分について,原則として一般債権者に優先して弁済を受けることができる権利である(民法306条3号・308条の2)。
令和8年4月1日以後に生じた各期の定期金に適用される。

この制度により,父母間の私的な合意書しかない場合でも,その書面によって先取特権の存在を証明できれば,担保権実行として給与や預貯金等の差押えを申し立てることができる。
ただし,先取特権が養育費の額を決めるわけではなく,養育費債権が成立していること,確定した支払期限があること及び未払となったことが前提である。

第2 先取特権の対象となる債権
1 確定期限の定めがある定期金債権であること

先取特権が及ぶのは,民法308条の2が掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権のうち,子の監護に要する費用として相当な額である。
支払額だけでなく,「毎月末日限り」など各回の支払期限を明確に決めておくことが重要である。

一括払いの解決金,臨時の学費又は医療費などが当然に同条の定期金債権に含まれるとは限らない。
合意内容が定期金債権に当たるかは,書面の文言と支払設計を確認して判断する必要がある。

2 養育費だけでなく婚姻費用等も対象になり得る

対象となる義務は,夫婦間の協力及び扶助,婚姻費用の分担,離婚後の子の監護費用並びに親族間の扶養である。
したがって,離婚後の養育費のほか,婚姻費用分担金又は扶養料のうち子の監護に要する費用に対応する部分も対象になり得る。

婚姻費用の先取特権と回収方法は,婚姻費用が支払われない場合-履行勧告・給与差押え・令和8年の先取特権(AI作成)で説明している。

第3 上限は子1人当たり月額8万円である

省令1条は,先取特権が及ぶ額を,月額8万円に定期金によって扶養を受けるべき子の数を乗じた額としている。
子が2人であれば月額16万円,3人であれば月額24万円が上限となる。

この8万円は,家庭裁判所が認定すべき養育費の標準額でも,義務者が常に支払うべき額でもない。
合意又は審判による養育費が子1人当たり月額5万円であれば,先取特権の対象もその債権額を超えない。
反対に,子1人について月額10万円の養育費債権があっても,先取特権が及ぶのは月額8万円までであり,残る月額2万円については先取特権による優先権がない。

上限を超える部分も養育費債権として消滅するわけではない。
超過部分を含めて強制執行するためには,調停誸書,審判書又は執行認諾文言付き公正証書などの債務名義を確認する実益がある。

第4 優先順位と効力

一般先取特権が競合する場合の順位は,民法306条各号の順序による(民法329条1項)。
子の監護費用は,共益の費用及び雇用関係に次ぐ順位であり,葬式の費用及び日用品の供給より先順位となる。

先取特権があるからといって,常に全額を回収できるわけではない。
差し押さえた財産の価額,他の担保権又は先取特権の有無,租税その他の優先関係及び手続費用によって,実際の配当額は変わる。

一般先取特権は,債務者の総財産に及ぶが,不動産については登記をした第三者との関係に制限がある(民法336条)。
実務では,給与又は預貯金に対する債権差押えが中心になるため,対象財産と他の差押えの有無を確認する必要がある。

第5 債務名義がなくても差押えを申し立てられる
1 私的な合意書がある場合

債権を目的とする担保権の実行は,担保権の存在を証する文書が提出されたときに開始する(民事執行法193条1項)。
裁判所の家事事件Q&Aも,父母間の私的な合意書だけがある場合でも,月額8万円に子の数を乗じた額を上限として担保権実行を申し立てられると案内している。

申立てでは,合意書だけでなく,父母と子の関係,支払期限,未払の発生及び子の人数等を示す資料が必要となる。
口頭合意しかなく,先取特権の存在を証する文書を提出できない場合は,直ちに同じ方法で差押えができるとは限らないため,調停その他の方法による債務名義の取得を検討すべきである。

養育費の合意書,公正証書及び調停調書の違いは,養育費の取り決め方―共同養育計画書・合意書・公正証書・調停調書の違い(AI作成)で説明している。

2 法定養育費の場合

法定養育費にも先取特権が及ぶため,養育費を取り決めずに離婚した場合でも,令和8年4月1日以後の離婚等で要件を満たせば担保権実行を申し立てることができる。
執行裁判所は,法定養育費について必要があると認めるときは,差押命令を発する前に債務者を審尋できる(民事執行法193条3項)。

法定養育費の発生要件,月額及び支払期間は,法定養育費とは―請求要件,子1人当たり月額2万円及び支払期間(AI作成)を参照されたい。

第6 差押財産が分からない場合

子の監護費用の一般先取特権を有することを証する文書を提出できる債権者は,民事執行法の要件を満たす場合,財産開示手続又は給与債権に関する第三者からの情報取得手続を利用できる。
令和8年4月1日からは,これらの手続によって給与債権を特定した場合に差押命令の申立てへ接続するワンストップ執行手続も設けられている。

(続きを読む...)養育費債権の先取特権とは―対象範囲,子1人当たり月額8万円の上限及び差押え(AI作成)

法定養育費とは―請求要件,子1人当たり月額2万円及び支払期間(AI作成)

第1 法定養育費は取決めまでの暫定的な養育費である第2 請求できるための要件1 養育費の取決めがないこと2 離婚時から引き続き子を主として監護していること3 離婚等が令和8年4月1日以後であること第3 金額は子1人当たり月額2万円である1 子の数を乗じて計算する2 離婚月及び終了月は日割りとなる第4 いつからいつまで請求できるか1 離婚の日から請求できる2 三つのうち最も早い日に終了する第5 支払能力がない場合と家庭裁判所による調整1 義務者が支払を拒める場合2 後の養育費手続で免除又は猶予があり得る第6 請求と回収の進め方1 本来の養育費の取決めを並行して進める2 未払の場合は先取特権による担保権実行を検討する第7 確認すべき資料第8 出典

法定養育費は,令和8年4月1日以後に養育費を取り決めずに離婚した場合に,離婚時から子を主として監護する親が他方の親へ請求できる暫定的・補充的な養育費である。
金額は原則として子1人当たり月額2万円であり,本来の養育費の標準額又は最低額を意味しない。

第1 法定養育費は取決めまでの暫定的な養育費である

法定養育費は,養育費の取決めがない期間の空白を埋めるため,民法766条の3によって発生する請求権である。
養育費の合意又は家庭裁判所の審判が整うまでの当面の生活費を確保する役割を持つ。

法定養育費は,父母の収入や子の事情を踏まえて定める本来の養育費の標準額でも最低額でもない。
父母は,法定養育費の請求とは別に,協議,調停又は審判によって適正な養育費を定める必要がある。

第2 請求できるための要件
1 養育費の取決めがないこと

法定養育費は,父母が子の監護に要する費用の分担について定めないまま離婚した場合に問題となる。
離婚時に養育費の合意がある場合は,その合意に基づく養育費を請求することになり,法定養育費は発生しない。

取決めを文書にしていないだけで,口頭の合意が存在する場合に直ちに「取決めがない」とはいえない。
法定養育費を請求する前に,離婚時の協議内容,離婚届に伴って作成した書面,メールその他の記録を確認する必要がある。

2 離婚時から引き続き子を主として監護していること

請求できるのは,父母の一方であって,離婚時から引き続き未成年の子の監護を主として行っている者である。
単に親権者として指定されたかだけでなく,現実に誰が子を主として監護しているかが問題となる。

監護状況に争いがある場合は,同居状況,通学・通園,日常の世話,生活費の負担その他の具体的事情を整理する必要がある。
離婚後に監護者が変わった場合など,継続して主たる監護をしているといえるかが明確でない事案では,個別の検討を要する。

3 離婚等が令和8年4月1日以後であること

法定養育費は,令和8年4月1日より前の離婚には適用されない。
婚姻の取消し,裁判上の離婚及び認知にも民法766条の3が準用されるが,改正法附則3条2項により,いずれも施行日前に行われた場合には法定養育費は発生しない。

第3 金額は子1人当たり月額2万円である
1 子の数を乗じて計算する

法定養育費の額は,月額2万円に,離婚時から引き続き主として監護する未成年の子の数を乗じて計算する。
対象となる子が2人であれば月額4万円,3人であれば月額6万円である。

この金額は父母の収入に応じて作られた養育費算定表の金額ではない。
算定表による標準額と法定養育費の違いは,養育費算定表の見方,計算方法及び法定養育費との違い(AI作成)で説明している。

2 離婚月及び終了月は日割りとなる

法定養育費は毎月末に支払うものとされる。
離婚等の日が月の初日でない場合は,その月の初日から離婚等の日の前日までの日数に応じた額を控除する。
養育費の取決めが成立するなどして月の途中で請求期間が終わる場合も,終了日の翌日から月末までの日数に応じた額を控除する。

1日当たりの額は,月額をその月の日数で除して算定する。
実際の請求では,離婚日,終了事由が生じた日及び各月の日数を特定して計算する必要がある。

第4 いつからいつまで請求できるか
1 離婚の日から請求できる

法定養育費は,離婚の日から請求できる。
通常の養育費の過去分について実務上問題となる請求の始期とは制度が異なるため,区別が必要である。

通常の養育費の始期と法定養育費との関係は,養育費はいつから請求できるか―離婚後の過去分・法定養育費・調停申立ての始期(AI作成)で説明している。

2 三つのうち最も早い日に終了する

法定養育費を請求できる期間は,次の三つのうち最も早い日に終了する。
① 父母が協議によって養育費の分担を定めた日
② 養育費の分担について家庭裁判所の審判が確定した日
③ 子が成年に達した日

法定養育費は,適正な養育費が決まるまでの空白を埋める制度である。
月額2万円を長期間の最終的な養育費として固定する趣旨ではない。

第5 支払能力がない場合と家庭裁判所による調整
1 義務者が支払を拒める場合

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親族間で土地を使わせる場合の課税-使用貸借と相当の地代(AI作成)

第1 親の土地を無償で借りても,借地権の贈与税は原則としてかからない第2 固定資産税相当額を負担する場合も使用貸借に含まれる第3 通常の地代と相当の地代の違い1 相場の地代を払うだけでは権利金の問題が残る2 相当の地代はおおむね年6%を基準とする3 相当の地代に満たない場合と地代を引き下げる場合第4 相続時の土地評価と小規模宅地等の特例1 子の家や貸家があっても,使用貸借地は原則として自用地評価となる2 相当の地代を収受する土地の80%評価3 使用貸借でも居住用の特例を検討できる場合がある第5 同族会社など法人が関係する土地貸借1 個人間の取扱いをそのまま当てはめない2 土地の無償返還に関する届出書の役割3 土地と同族会社株式の評価,裁判例の示す範囲第6 親族間の契約を決める前に確認する事項1 親の所有地か借地か,従前の借地権があるか2 返還条件と毎年の税負担を契約に合わせて確認する第7 出典1 法令2 国税庁の法令解釈通達3 国税庁の制度説明・手続案内4 裁判例

第1 親の土地を無償で借りても,借地権の贈与税は原則としてかからない

親の所有する土地に子が自分の家を建て,権利金も地代も支払わずに使用する場合,国税庁は,土地を使用する権利の価額を零として取り扱っている。
そのため,子に借地権相当額の贈与税は課されない一方,後に親の土地を相続するときは,原則として自用地の価額で評価する(国税庁「親の土地に子供が家を建てたとき」)。

本記事は,令和8年9月4日を基準に,親子その他の個人間で,建物の所有を目的として土地を使わせる場合を中心に説明する。
次の表は,権利金その他の特別な経済的利益の授受がない場合の基本的な違いである。

土地の使わせ方借りる側の取扱い貸す側の土地評価使用貸借使用権は零評価原則として自用地価額通常の地代による賃貸借権利金授受の慣行がある地域では,借地権の贈与が問題となる通常の貸宅地の評価相当の地代による賃貸借借地権設定による利益はないものとして扱う原則として自用地価額の80%

表の賃貸借に関する取扱いは,国税庁の相当の地代に関する通達の趣旨,1項,2項注及び6項による。
法人が当事者となる場合,既存の借地権がある場合及び小規模宅地等の特例については,それぞれ別の条件を確認する必要がある。
親の土地や建物を無償で使わせたことが,相続の際に民法上の特別受益に当たるかについては,実家に独身のまま無償で住み続けた子は特別受益者になるか―同居・別居・土地利用で分かれる判断で説明している。

第2 固定資産税相当額を負担する場合も使用貸借に含まれる

民法593条及び601条は,無償で使用・収益して契約終了時に返還する使用貸借と,賃料を支払う賃貸借を区別している。
親族間でも,契約書の表題だけでなく,地代,権利金及びその他の利益の授受を確かめることになる。

国税庁の「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」1項は,土地の公租公課に相当する金額以下の授受があるにすぎない場合も,使用貸借に該当するとしている。
したがって,子が親にその土地の固定資産税・都市計画税相当額だけを支払っても,そのことだけで借地権の贈与税が生じるわけではない。
以下,この通達を「使用貸借通達」という。

反対に,毎月の地代がなくても,権利金や地代に代わる経済的利益を与えている場合は,同項の使用貸借には該当しない。
税額を少し超えたという数字だけで結論を出すのではなく,土地の使用の対価として何を約束し,何を支払っているかを検討する必要がある。
民法上,固定資産税相当額を超える地代や相場より安い地代が賃料に当たるかを判断した裁判例は,使用貸借と賃貸借の区別-固定資産税程度の支払,相場より安い地代・家賃は賃料かで整理している。

零評価になるのは,この土地使用権である。
親から土地の所有権そのものや建築資金の贈与を受ける場合まで,贈与税がかからないという意味ではない(相続税法,使用貸借通達1項)。

第3 通常の地代と相当の地代の違い

1 相場の地代を払うだけでは権利金の問題が残る

通常の地代とは,その地域の通常の賃貸借契約で支払われる地代である。
借地権設定時に権利金を授受する慣行がある地域で,権利金を払わず,通常の地代だけで借地権を設定すると,借地人が借地権相当の利益を受けたものとして,贈与税が問題となる。

これは,使用貸借の使用権を零評価とする取扱いとは異なる。
「無償では申し訳ないから相場の地代を払う」と決める前に,権利金の取扱いも含めて確認する必要がある(相当の地代に関する通達の趣旨及び2項注)。

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離婚届不受理申出の方法と効力――有効期間,取下げ及び受理後の手続(AI作成)

目次

第1 離婚届不受理申出の意味

1 制度の法的根拠

2 申出で止められる届出

第2 申出の方法

1 申出人と申出先

2 申出書,本人確認書類及び費用

3 本人が出頭できない場合

4 有効期間と取下げ

第3 申出後の効果と限界

1 同じ日に離婚届が提出された場合

2 通知の範囲

3 離婚条件及び裁判上の離婚との関係

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戸籍の公開制度の沿革――明治5年式戸籍から昭和51年・平成19年改正を経て現在まで(AI作成)

第1 戸籍の「公開」を理解するための前提

1 本記事の対象と結論

2 「公開」に含まれる四つの制度

3 公開制度の主要な転換点

第2 明治5年式戸籍から一般公開原則の成立まで

1 明治4年太政官布告第170号と明治5年式戸籍

2 明治19年戸籍取扱手続

3 明治31年戸籍法による一般公開の明文化

4 大正3年戸籍法への承継

第3 戦後の公開原則と昭和43年・昭和51年の制限

1 昭和22年制定時の戸籍法10条

2 昭和43年の明治5年式戸籍に関する二つの通達

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戸籍謄本・住民票の職務上請求――要件,DV等支援措置,不正取得の責任及びオンライン化(AI作成)

第1 職務上請求の対象と基本原則

1 この記事が扱う範囲

2 窓口で交付されたことと実質的適法性

第2 戸籍と住民票で異なる法的構造

1 各証明書が示す情報

2 以前同じ戸籍だった人の現在住所

3 戸籍法上の請求類型

4 住民基本台帳法上の申出

5 戸籍証明書等の広域交付との違い

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遺産分割調停・審判の管轄,移送と自庁処理(AI作成)

第1 調停と審判の管轄は異なる

1 基本的な区別

2 同じ裁判所で当然に続くわけではない

第2 遺産分割調停の管轄

1 相手方住所地と複数の相手方

2 住所がない場合又は住所が知れない場合

3 調停の合意管轄

4 相続開始地は調停の法定管轄ではない

第3 遺産分割審判の管轄

1 相続開始地の家庭裁判所

2 審判の合意管轄

3 寄与分事件との関係

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遺産管理人とは――遺産分割調停・審判中の選任要件と権限(AIリライト)

第1 この記事でいう遺産管理人

1 家事事件手続法200条1項の財産の管理者

2 名称が似ている制度との違い

第2 遺産管理人の選任要件

1 遺産分割事件の係属と本案審判の蓋然性

2 財産管理の必要性

3 選任の必要性を基礎付ける例

(1) 保存・管理が行われていない例

(2) 中立的な管理が必要となる例

(3) 賃料の開示をめぐる紛争

第3 申立て,審理及び不服申立て

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相続財産管理人選任申立ての手引

1 令和5年4月改正より前の取扱いに関するものですが,相続財産管理人選任申立ての手引を以下のとおり掲載しています。

・ 相続財産管理人選任申立ての手引(申立てを検討している人向けの説明文書)
・ 相続財産管理人選任申立ての手引(民法918条2項用)
・ 相続財産管理人選任申立ての手引(成年後見人・保佐人・補助人用)
・ 自治体向け財産管理人選任事件申立てQ&A(令和元年11月改訂の,大阪家庭裁判所家事第4部財産管理係書記官室の文書)

2 「大阪家裁後見センターだより」も参照してください。

3 令和5年4月1日以降の相続財産清算人の手続については,次の記事で整理しています。
・ 相続人がいない場合の相続財産清算人
・ 相続財産清算人の権限外行為許可
・ 相続財産清算人による不動産の任意売却

個人事業主の離婚と婚姻費用及び養育費――確定申告書からの総収入の認定,減価償却費の取扱い及び回収方法(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

第2 自営業者の総収入は確定申告書の「課税される所得金額」から組み立てる

1 出発点となる書類と最も多い誤り
2 「課税される所得金額」に加算する項目
3 社会保険料控除だけを加算しない理由
4 必要経費そのものを争う場合

第3 減価償却費――令和4年の二つの高等裁判所決定

1 二者択一という枠組み
2 減価償却費を加算した例
3 減価償却費を加算しなかった例
4 分岐点はどこにあるか

第4 給与所得と事業所得が併存する場合の換算

第5 確定申告書が信用できない場合の収入認定

第6 高額所得の個人事業主

1 算定表の上限
2 基礎収入の修正計算

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経営者の離婚をめぐる四つの局面――役員報酬と婚姻費用,譲渡制限株式の売買価格決定,債権者による取消し及び婚姻後の夫婦間契約(AI作成)

第1 この記事が扱う範囲1 対象及び時点2 令和6年民法改正の経過措置は請求期間だけが例外であること3 同じ日に施行された年金分割の請求期限の伸長第2 役員報酬と婚姻費用及び養育費1 標準算定方式と基礎収入の割合2 同族会社の役員の総収入をどう認定するか3 過去に遡る分担と,財産分与による清算4 いったん定めた分担額を争う方法5 資料を出させる手段としての情報開示命令6 執行の段階で認められている特例第3 譲渡制限株式の売買価格の決定1 現物分与から価格決定に至る道筋2 申立て,審理及び鑑定3 非流動性ディスカウントをめぐる二つの最高裁決定4 二つの決定の関係をどう読むか第4 債権者及び破産管財人から見た財産分与1 詐害行為とならないのが原則であること2 取消しの範囲と,慰謝料の取扱い3 分与者が破産した場合の財産分与金4 婚姻費用の分担に関する債権を被保全債権とする場合5 破産法上の否認をめぐって見解が分かれている点第5 民法754条の削除と婚姻後の夫婦間契約1 削除された規定と,判例による限定2 削除の理由と,法制審議会答申からの経緯3 婚姻の届出前にする夫婦財産契約の制約4 婚姻後にする合意の設計5 自社株式及び株主間契約への影響出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料4 文献5 ウェブ資料
第1 この記事が扱う範囲
1 対象及び時点

非上場会社を経営する者の離婚では,自社株式が財産分与の対象となるか,どのように評価するかが最大の争点になる。もっとも,実際の事件で決着を左右するのはそれだけではない。株式の評価額とは別に毎月の収入が問題になる局面,分与を現実に実行しようとして会社法上の手続に突き当たる局面,分与を第三者である債権者や破産管財人がどう見るかという局面,そして紛争が生じる前に合意で備える局面がある。本記事は,この四つを条文及び判決文に即して整理する。自社株式そのものの対象性,評価及び課税は経営者の離婚と自社株式の財産分与で扱っているため,本記事では重複しない範囲に絞る。本記事の作成にはAIを用いており,引用する法令はe-Gov法令検索により,裁判例は裁判所ウェブサイトにより,それぞれ内容を確認している。本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり,個別の事案に対する法的助言ではない。

2 令和6年民法改正の経過措置は請求期間だけが例外であること

民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)は令和8年4月1日から施行されている。財産分与に関しては,民法768条2項ただし書が家庭裁判所に対する請求の期間を「離婚の時から五年」とし,同条3項が考慮すべき事情を列挙した上で「この場合において,婚姻中の財産の取得又は維持についての各当事者の寄与の程度は,その程度が異なることが明らかでないときは,相等しいものとする」と定めた。実務上の疑問は,施行日より前に成立した離婚にこれらの規定が及ぶかであるが,この点は同法の附則が明文で処理している。

附則2条は「第一条の規定による改正後の民法(以下「新民法」という。)の規定は,この附則に特別の定めがある場合を除き,この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし,同条の規定による改正前の民法(附則第六条において「旧民法」という。)の規定により生じた効力を妨げない」と定め,原則として遡って適用することを明らかにする。その上で,附則4条が「施行日前に離婚し,又は婚姻が取り消された場合における財産の分与に関する処分を家庭裁判所に請求することができる期間の制限については,なお従前の例による」として,請求期間だけを例外に切り出している。したがって,施行日前に離婚した事案では請求期間は従前どおり2年であるのに対し,寄与の程度を相等しいものとする同条3項後段は,施行日前に成立した離婚の財産分与についても適用されることになる。改正の効果を一律に「施行日以後の離婚に適用される」と説明すると,この非対称を落とすことになる。

3 同じ日に施行された年金分割の請求期限の伸長

財産分与と並んで請求期限が伸長されたのが,離婚時の年金分割である。厚生年金保険法78条の2第1項ただし書は,標準報酬の改定又は決定の請求について「当該離婚等をしたときから五年を経過したときその他の厚生労働省令で定める場合に該当するときは,この限りでない」と定める。これは令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)による改正で,日本年金機構の案内によれば施行日は令和8年4月1日であり,同日前に離婚等をした場合は従前どおり2年以内に請求する必要がある。

この改正には立法の経緯がある。令和6年民法改正の際に参議院法務委員会が付した附帯決議(令和6年5月16日)は,その第13項において,「本法により離婚時の財産分与に係る請求期限が二年から五年となることを踏まえ,二年となっている離婚時の年金分割に係る請求期限の延長について早急に検討を行うこと」と述べていた。財産分与と年金分割は,同じ日に,5年へ伸長する点でも施行日前の離婚を従前どおりとする点でも同じ構造で揃ったことになるから,離婚の相談では二つを対にして期限を確認することになる。

第2 役員報酬と婚姻費用及び養育費
1 標準算定方式と基礎収入の割合

婚姻費用及び養育費の算定は,現在,令和元年12月23日に公表された司法研究(平成30年度司法研究「養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究」)が提案した改定標準算定方式・算定表によっている。同研究の概要によれば,総収入から公租公課,職業費及び特別経費を控除した基礎収入の割合は,給与所得者でおおむね54パーセントから38パーセント,自営業者でおおむね61パーセントから48パーセントとなり,いずれも高額所得者ほど割合が小さくなる。子の生活費指数は0歳から14歳までが62,15歳以上が85である。自営業者については課税される所得金額を総収入とする点が給与所得者と異なる。

給与所得者を含む算定表全体の選び方,読み方,計算式及び特別事情については,婚姻費用算定表の見方,計算方法と特別事情(AI作成)で説明している。

同研究の概要には,「本研究の発表は,養育費等の額を変更すべき事情変更には該当しない」との記載もある。既に定められた養育費等の額について,算定方式が改定されたこと自体を理由に変更を求めることはできないという趣旨であり,改定の前後をまたぐ事案では確認しておく必要がある。

2 同族会社の役員の総収入をどう認定するか

経営者の事案に固有の難しさは,総収入の認定にある。婚姻費用及び養育費の算定実務を扱う文献は,同族会社の取締役について,代表取締役でない場合であっても「その収入額をその意思で変更することができる立場にあることが多く,その報酬額は,税金対策など様々な事情の影響を受けやすい」と指摘し,源泉徴収票では不十分と思われる事情がある場合には,源泉徴収票のほかに確定申告書等を提出させ,会社の営業内容をも検討すべきであるとする(松本哲泓『婚姻費用・養育費の算定』73頁)。給与所得者であれば源泉徴収票で足りるという前提が,経営者の事案では成り立たないということである。

もっとも,これは相手方が資料を任意に提出することを前提とした議論である。会社の決算資料や役員報酬の決定過程を示す資料は会社が保有しており,経営に関与していない配偶者の側で当然に入手できるものではない。相手方が提出しない場合にどうするかが,実務上の本題になる。

役員報酬の減額が争われた裁判例として,広島高等裁判所平成22年6月24日判決(平成21年(ネ)第569号,裁判所ウェブサイト)がある。夫は,離婚訴訟の原審で自らの年収を1641万円として養育費を主張していたが,本人尋問が行われた口頭弁論期日に,夫が取締役を務める会社の常務会で経費削減を理由に取締役報酬を28.57パーセント減額する決議がされたとする議事録を提出し,減額後の収入で算定すべきであると主張した。同判決は,会社の決算書類が提出されておらず,大幅な減額を要するほど業績が悪化したことを認めるに足りる客観的な証拠がないことなどから,この決議は「本件訴訟における養育費の算定において,その高額化を免れるために意図的に作出されたものとの疑いが残る」として減額を認めず,減額前の年収1641万円を養育費算定上の総収入とした。係争中の役員報酬の減額に対しては,減額の時期と訴訟の経過との関係や,業績を示す決算書類の提出の有無を具体的に指摘することが有効であることを示す例である。

3 過去に遡る分担と,財産分与による清算

婚姻費用の分担については,古くから二つの取扱いが確立している。第一に,最高裁判所大法廷昭和40年6月30日決定(昭和37年(ク)第243号,民集19巻4号1114頁)は,婚姻費用の分担に関する処分の審判が憲法32条及び82条に違反しないとした上で,「家庭裁判所は,審判時から過去に遡つて,婚姻費用の分担に関する処分をすることができる」と判示した。別居後に請求を怠っていた期間についても,遡って分担を求める余地がある。

第二に,最高裁判所第三小法廷昭和53年11月14日判決(昭和53年(オ)第706号,民集32巻8号1529頁)は,「離婚訴訟において裁判所が財産分与を命ずるにあたつては,当事者の一方が婚姻継続中に過当に負担した婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができる」と判示した。婚姻費用という毎月の収入の問題と,自社株式を含む財産分与という蓄積の問題は,別々の手続に分かれてはいるものの,金額の決定においては接続する。なお,最高裁判所第一小法廷令和2年1月23日決定(平成31年(許)第1号,民集74巻1号1頁)は,婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても婚姻費用分担請求権は消滅しないとしており,離婚成立によって過去分の請求が失われるわけではない。もっとも,過当に負担した婚姻費用の清算を財産分与の額に取り込むには,清算の対象となる財産の額が定まっていることが前提になる。自社株式について,対象を確定する時点と評価する時点をどのように分け,どのような評価方法によるかは,経営者の離婚と自社株式の財産分与の第4で扱っている。

4 いったん定めた分担額を争う方法

経営者の事案では,別居直後に取り交わした合意の金額が,後に判明した実際の収入と大きく食い違うことがある。この場合に,合意の無効を民事訴訟で確認してから審判に進むという道筋が考えられるが,最高裁判所第一小法廷令和7年9月4日判決(令和6年(受)第239号,民集79巻6号2637頁)は,これを否定した。同判決は「夫婦間における婚姻費用の分担の内容を定める合意の無効確認を求める訴えは,確認の利益を欠くものとして不適法である」と判示している。

その理由として同判決が挙げるのは,婚姻費用の分担義務が「その時々で変動する夫婦の収入,生活状況等の影響を受け得るもの」であり,「婚姻費用の分担の内容は,婚姻費用合意によって,以後,固定されるものではなく,適時に新たな形成があり得るものである」という点である。そのため,婚姻費用分担審判の手続において合意の成否が争われ,合意と異なる分担の内容を形成することを求める主張がされた場合,家庭裁判所は合意の存否,効力及び内容のみならず夫婦の収入,生活状況等の一切の事情を踏まえて新たに分担の内容を形成することになり,別途民事訴訟で合意の効力が確定されていないからといって,これが妨げられるわけではないとされた。同判決の事案は,夫の当時の年収について実際の額よりも低廉な額を前提として月額16万円とする合意がされ,後の審判が月額29万円等の支払を命じたというものであり,収入を低く示して合意を取り付けたと疑われる場面での争い方を示している。争う場は民事訴訟ではなく婚姻費用分担審判である,というのが実務上の帰結になる。

5 資料を出させる手段としての情報開示命令

令和6年改正で新設された家事事件手続法152条の2は,この分野で最も実務的な意味を持つ規定である。同条1項は,夫婦間の協力扶助に関する処分,婚姻費用の分担に関する処分及び子の監護に要する費用の分担に関する処分の各審判事件について,家庭裁判所が必要があると認めるときは,申立てにより又は職権で,当事者に対し「その収入及び資産の状況に関する情報を開示することを命ずることができる」と定める。同条2項は,財産の分与に関する処分の審判事件について,「その財産の状況に関する情報を開示することを命ずることができる」と定める。

さらに同条3項は「前二項の規定により情報の開示を命じられた当事者が,正当な理由なくその情報を開示せず,又は虚偽の情報を開示したときは,家庭裁判所は,十万円以下の過料に処する」と定めており,開示しないこと自体に制裁が用意された。会社の決算資料や役員報酬の実額を相手方が抱えたまま出さないという,経営者の事案に特有の状況に対して,正面から手当てをした規定である。もっとも,命ずるかどうかは家庭裁判所の判断であり,過料の額も10万円以下であるから,これだけで資料が必ず出るとまでは言えない。実務的には,まず情報開示命令の申立てをした上で,出てこない場合に調査嘱託その他の手段を検討するという順序になる。同条2項による財産の状況の開示は,自社株式の評価資料が相手方に偏在する事案でも同じ役割を果たす。資料が出た後に評価が争いとなって鑑定を実施する場合に,費用の負担及び鑑定結果に従う旨の合意をあらかじめ得ておくという調停実務の扱いは,経営者の離婚と自社株式の財産分与の第4の2で扱っている。

6 執行の段階で認められている特例

婚姻費用及び養育費については,執行の段階でも一般債権と異なる扱いがされている。民事執行法151条の2は,民法760条の婚姻費用分担義務や民法766条の子の監護に関する義務等について確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において,その一部に不履行があるときは,「当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても,債権執行を開始することができる」と定める。将来分について改めて申立てを繰り返す必要がないということである。また,同法152条3項は,これらの義務に係る金銭債権を請求する場合には差押禁止の範囲を4分の3から2分の1に読み替えるものとしており,給与債権からの回収可能額が広がる。

(続きを読む...)経営者の離婚をめぐる四つの局面――役員報酬と婚姻費用,譲渡制限株式の売買価格決定,債権者による取消し及び婚姻後の夫婦間契約(AI作成)

家族信託(民事信託)が難しい4つの理由-設計・税務・実務インフラ・制度選択(AI作成)

AIで作成した本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり,特定の個別事案に対する法的助言ではありません。実際の設計・受任に当たっては,個別の事実関係と最新の法令・裁判例を確認してください。

目次

第1 本記事の対象と射程

1 本記事が扱う「4つの難所」と,現実化した具体的リスク
2 用語の整理――民事信託・家族信託・商事信託

第2 難所その1――設計を誤ると,信託の一部無効や終了制限条項の効力が問題となる

1 任意規定を基調とする制度構造
2 遺留分潜脱と公序良俗による一部無効――東京地方裁判所平成30年9月12日判決
3 「防御的」設計がかえって潜脱と評価されるリスク
4 信託の終了を制限する条項――最高裁令和8年6月17日決定

第3 難所その2――税務が私法とは別に動き,想定外の税負担が生じる

1 受益者等課税の原則と,他益信託化による課税
2 受益者連続型のフル評価課税と相続税額の加算
3 信託した収益不動産の損失は損益通算も繰越しもできない
4 非課税措置・特例の適用可否は制度ごとに異なる

第4 難所その3――口座を開けず信託が機能せず,専門職が責任を負う

1 民事信託には商事信託と同じ行政監督がない

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法定養育費と養育費債権の先取特権の違い―子1人当たり月額2万円・8万円と使い分け(AI作成)

第1 法定養育費と先取特権は別の制度である第2 どの記事を確認すべきか1 養育費を決めずに離婚した場合2 養育費の取決めはあるが支払われない場合3 これから養育費を取り決める場合第3 手続選択の早見表第4 令和8年4月1日を基準に適用を分ける第5 関連記事第6 出典

法定養育費は,養育費を取り決めずに離婚した場合の暫定的な請求権であり,子1人当たり月額2万円である。
養育費債権の先取特権は,成立した養育費等の回収を強化する優先権であり,子1人当たり月額8万円まで及ぶ。
本記事は,二つの制度の違いと,取決め・債務名義の有無に応じて最初に確認すべき手続を整理する。

第1 法定養育費と先取特権は別の制度である

法定養育費と養育費債権の先取特権は,同じ民法改正によって新設され,令和8年4月1日に施行された別の制度である。
両制度は併存し得るため,法定養育費にも先取特権が及ぶ場合がある。

両制度の金額も異なる。
法定養育費は子1人当たり月額2万円であり,先取特権が及ぶ上限は子1人当たり月額8万円である。
2万円は通常の養育費の標準額又は最低額ではなく,8万円は養育費の認定額又は支払額そのものではない。

比較事項
法定養育費
子の監護費用の先取特権

根拠
民法766条の3
民法306条3号・308条の2

役割
取決めがない間の請求権を発生させる
発生済みの定期金債権の回収を強化する

主な場面
令和8年4月1日以後に養育費を決めずに離婚した場合
養育費等に確定した支払期限があり,未払となった場合

省令上の額

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選択的夫婦別姓(夫婦別氏)と戸籍情報システム―公表仕様で分かる改修範囲と未確定事項(AIリライト)

目次

第1 現行制度と本記事の検討範囲

1 現行法では婚姻時に夫又は妻の氏を選ぶ

2 最高裁判例と立法政策の区別

3 技術的実現可能性と改修規模は別の問題である

第2 公表仕様から確認できる戸籍データの構造

1 戸籍の主キーは筆頭者氏名ではない

2 各個人の氏を保持する項目がある

3 公表仕様では分からない事項

第3 制度設計が確定しなければ仕様を確定できない事項

1 戸籍の編製と表示

2 子の氏と身分変動

3 経過措置と履歴の保存

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家事調停の申立て,進行,ウェブ会議及び終了後の手続(AIリライト)

目次

第1 家事調停の対象と三つの事件類型

1 家事調停の役割

2 別表第2調停,特殊調停及び一般調停の違い

3 調停前置

第2 管轄裁判所,移送及び申立て

1 管轄裁判所

2 本庁と支部の取扱い

3 申立書,添付資料及び費用

第3 申立書の送付,住所等の秘匿及び記録

1 申立書等が相手方へ送られる範囲

2 住所等を知られたくない場合

3 記録の閲覧・謄写と終局文書の交付

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家事審判に対する即時抗告,特別抗告及び許可抗告(AIリライト)

目次

第1 家事審判等に対する即時抗告

1 総論

(1) 不服申立ての方法としての即時抗告
(2) 即時抗告をすることができる審判
(3) 即時抗告をすることができない審判の効力
(4) 即時抗告の期間及び起算点
(5) 抗告状に貼付する収入印紙
(6) 当事者目録の作成
(7) 原裁判所による再度の考案及び事件送付
(8) 不利益変更禁止の原則の不適用

2 抗告審の手続

(1) 当事者の呼称
(2) 抗告状の写しの送付
(3) 陳述の聴取(法的審問請求権の保障)
(4) 抗告裁判所による自判
(5) 手続の準用
(6) 抗告審における調停
(7) 審理の方式と憲法適合性

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家事審判の手続,証拠調べ,取下げ及び記録閲覧(AIリライト)

目次

第1 家事審判の対象と位置付け

1 家事審判と家事調停

2 別表第一事件と別表第二事件

3 調停不成立後の審判と合意管轄

第2 申立てから審判までの流れ

1 申立書と相手方への送付

2 期日,非公開及び当事者の立会い

3 審理終結,審判及び告知

第3 当事者の陳述と手続保障

1 別表第二事件における陳述聴取

2 年金分割事件の特則

3 調査結果の通知と抗告審の反論機会

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離婚の手続と決めること-親権・養育費・財産分与・慰謝料(AIリライト)

第1 この記事の対象と基準日1 離婚実務の論点を分けて考える2 令和8年9月15日現在の制度を基準とする第2 離婚の方法と裁判離婚の原因1 協議離婚・調停離婚・裁判離婚2 裁判上の離婚原因3 離婚届をめぐる事故を防ぐ第3 離婚前に決める事項と合意書1 確認事項を一覧化する2 合意は履行できる内容にする第4 子の親権・監護・親子交流1 離婚後の親権者2 親権の共同・単独行使3 親子交流と父母以外の親族第5 養育費1 合意又は裁判で定める養育費2 法定養育費3 先取特権と履行確保4 収入資料の提出第6 別居中の婚姻費用1 婚姻中の生活費2 既存の合意がある場合第7 財産分与・住宅・事業資産・年金分割1 財産分与の対象と期間2 裁判所に分与を求めた財産の特定3 情報開示命令と支払原資4 自宅・住宅ローン・会社関係財産5 将来の退職金・確定拠出年金6 年金分割第8 離婚慰謝料1 離婚自体の損害と個別の不法行為2 不貞相手など第三者への請求3 離婚に伴う慰謝料の遅延損害金第9 証拠と安全への配慮1 先に時系列と資料一覧を作る2 DV・虐待・住所秘匿第10 子の移動・引渡し1 実力による連れ去りを避ける2 引渡し・返還の裁判例は手続を区別する第11 関連記事第12 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 裁判所・法務省・日本年金機構・内閣府

離婚を進める前には,手続の選択だけでなく,子の生活,別居中と離婚後の費用,財産・債務,安全確保を同時に整理する必要があります。
この記事では,令和8年4月1日施行後の制度を基準に,合意書や裁判手続へ進む前に確認すべき事項をまとめます。

第1 この記事の対象と基準日
1 離婚実務の論点を分けて考える

離婚事件では,離婚するかどうかだけでなく,子の親権・監護,親子交流,養育費,別居中の婚姻費用,財産分与,年金分割,慰謝料などを分けて検討する必要があります。
同じ夫婦の問題でも,合意で決められる事項,家庭裁判所が判断する事項,別の民事訴訟で扱うことがある事項では,手続と必要な証拠が異なります。

最初に,①子の安全と生活,②別居中と離婚後の生活費,③財産と債務,④暴力・不貞などの損害,⑤住所や連絡先の秘匿の必要性に分けると,優先順位を付けやすくなります。

2 令和8年9月15日現在の制度を基準とする

この記事は,令和8年9月15日現在の法令と公的資料を基準にしています。
父母の離婚後の親権,法定養育費,養育費債権の先取特権,財産分与の期間などに関する令和6年法律第33号は,令和8年4月1日に施行されました。

離婚日が施行日の前か後かによって,法定養育費の有無,財産分与を求められる期間などが異なります。
古い解説を利用するときは,説明の基準日と経過措置を確認する必要があります。

第2 離婚の方法と裁判離婚の原因
1 協議離婚・調停離婚・裁判離婚

夫婦が離婚と条件について合意できる場合は,離婚届による協議離婚ができます。
合意できない場合又は直接の話合いが難しい場合は,家庭裁判所の夫婦関係調整調停を利用し,調停でも解決しないときは離婚訴訟を検討します。

離婚訴訟を提起する前には,原則として家庭裁判所の調停を経ます。
離婚調停では,離婚そのもののほか,親権者の指定,親子交流,養育費,財産分与,年金分割,慰謝料などを一緒に話し合うことができます。
手続の全体像は,裁判所の「夫婦関係や男女関係に関する調停」で確認できます。

2 裁判上の離婚原因

民法770条1項は,裁判上の離婚原因として,①配偶者に不貞な行為があったとき,②配偶者から悪意で遺棄されたとき,③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき,④その他婚姻を継続し難い重大な事由があるときを定めています。
従前の「配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがないとき」という独立の離婚原因は,令和8年4月1日に削除されました。

離婚原因が形式的に存在しても,裁判所は一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは離婚請求を棄却できます。
別居期間だけで結論が決まるものではなく,別居に至った経緯,夫婦関係の実情,未成熟子への影響などが個別に検討されます。

3 離婚届をめぐる事故を防ぐ

署名済みの離婚届を相手方に渡した後で離婚意思を撤回した場合や,無断提出のおそれがある場合は,不受理申出を検討します。
不受理申出は届出の受理を防ぐ制度であり,親権,養育費,財産分与などの条件を決める制度ではありません。
手続の詳細は,離婚届の不受理申出に関する記事で整理しています。

第3 離婚前に決める事項と合意書
1 確認事項を一覧化する

未成年の子がいる場合は,親権を父母双方又は一方のどちらに定めるか,子の主たる生活場所,監護の分担,親子交流の方法,養育費,進学・医療などの臨時費用を確認します。
夫婦間では,別居中の婚姻費用,預貯金・不動産・保険・退職金・有価証券などの財産分与,住宅ローンその他の債務,年金分割,慰謝料を整理します。

氏の選択,住民票,健康保険,児童手当,学校・保育所への連絡などの行政上の手続も必要ですが,法的紛争の解決とは分けて期限と担当者を確認するのが安全です。

2 合意は履行できる内容にする

金銭の合意では,金額だけでなく,支払開始日,支払日,終期,振込先,振込手数料,臨時費用の負担,事情変更時の協議方法を明確にします。
親子交流では,子の年齢と生活に応じ,日時,場所,引渡方法,連絡方法,学校行事,病気時の対応などを具体化します。

私的な合意書,執行認諾文言付きの公正証書,調停調書,審判書又は判決書では,強制執行の可否と方法が異なります。
公正証書を作成するだけで銀行などの第三者との契約が変更されるわけではないため,住宅ローンや連帯保証を処理するときは債権者の承諾を別に確認します。

第4 子の親権・監護・親子交流
1 離婚後の親権者

令和8年4月1日以後は,協議離婚をする父母は,原則として父母双方又は一方を親権者と定めます。
親権者の協議が調わない場合でも,親権者指定の審判又は調停を申し立てた上で離婚届を提出できる制度があります。
家庭裁判所が親権者を定めるときは,子と父母との関係,父と母との関係その他一切の事情を考慮し,子の利益のために判断します。

父母双方を親権者とすることで子の利益を害すると認められるとき,父母の一方が他方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれがあるとき,共同して親権を行うことが困難であると認められるときなどは,父母の一方を親権者としなければなりません。
共同親権が原則,単独親権が例外という単純な関係ではありません。

制度の詳細と経過措置は,共同親権・共同監護・養育費に関する記事及び裁判所の親権に関する案内を参照してください。

(続きを読む...)離婚の手続と決めること-親権・養育費・財産分与・慰謝料(AIリライト)