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離婚訴訟の標準審理モデル―財産分与を含む事件を長期化させない準備(AI作成)

1 東京家裁の審理モデルの位置付け

東京家庭裁判所家事第6部は、令和6年4月26日付けで「東京家裁人訴部における離婚訴訟の審理モデル」を公表した。同モデルは、東京三弁護士会との意見交換を経て、審理の計画性及び質を高め、離婚訴訟の不必要な長期化を防ぐために作成された実務資料である。
ただし、同モデルは法令、最高裁判例又は全国一律の処理基準ではない。東京家裁における一つの審理運営モデルであり、個別事件では担当裁判体の訴訟指揮及び事件の内容に従う。

2 人事訴訟の平均審理期間

最高裁判所事務総局家庭局「家庭裁判所の現状と課題」によれば、令和6年に終局した人事訴訟事件の平均審理期間は14.8か月であった。離婚事件では、財産分与の申立てがある事件が19.2か月、申立てがない事件が12.9か月であった。
平成27年は、財産分与の申立てがある事件が15.5か月、ない事件が10.8か月であり、いずれも長期化している。もっとも、これらは全国の既済事件の平均値であり、個別事件の終結時期を保証するものではない。

最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第11回)」(令和7年7月)によれば、財産分与の申立てがある離婚訴訟は、判決で終局した場合の平均審理期間が23.4か月、和解で終局した場合が18.5か月であり、判決の方がおおむね5か月程度長い(同報告書178頁)。
同報告書は、離婚訴訟の既済事件に占める財産分与の申立てがある事件の割合が平成27年の31.7%から令和6年の41.6%に増えていることから、これが人事訴訟全体の平均審理期間を押し上げている原因の一つであると推測している(同報告書182頁)。
他方、親権者を指定すべき子がいる離婚事件といない離婚事件の平均審理期間の差は、1か月に満たない(同報告書179頁)。

3 訴状提出前のチェックポイント

審理モデルは、訴状段階で争点の見通しを示すことを重視している。代理人は少なくとも次の事項を確認すべきである。
① 離婚原因について、民法770条1項各号のどれを主張するかを整理する。
② 国際結婚又は国外居住の事情がある場合、国際裁判管轄及び準拠法を確認する。
③ 別居開始時期、別居の直接の契機及び離婚原因を時系列で記載する。
④ 評価的・感情的な表現を避け、離婚原因に関係する具体的事実に絞る。
⑤ 離婚請求に附帯して申し立てることができる事項と、別手続が必要な事項を区別する。
⑥ 先行する調停の経過、合意できた事項及び残った争点を示す。
⑦ 住所、勤務先、通院先等の秘匿又は非開示が必要かを提出前に確認する。

4 第1回口頭弁論期日と段階的な審理

第1回口頭弁論期日では、答弁内容を踏まえて争点を確認し、証拠収集及び審理の順序を協議する。調停記録は訴訟記録へ自動的に引き継がれるものではないため、訴訟で必要な主張及び証拠は改めて提出する必要がある。
離婚の成否自体が争われる場合、離婚原因又は有責配偶者からの請求に関する争点を先に審理し、その見通しを踏まえて財産分与等へ進む方法が考えられる。すべての争点を同時に広げるのではなく、判断の前提となる争点から順に終点を設定することが重要である。
保険の解約返戻金、退職金、住宅ローン残高、贈与又は相続による取得財産等、第三者からの資料取得に時間を要するものは、早期に洗い出す必要がある。

別居による婚姻破綻が争われる場合は、別居開始日と同居期間だけでなく、修復提案と実際の行動、婚姻費用の取決めと支払履歴、子との関係を時系列にする。審理中の変化も口頭弁論終結まで更新する。東京家裁立川支部平成27年1月20日判決と同事件の東京高裁平成28年5月25日判決では結論が分かれたが、年数だけの変化ではない。判例秘書の両掲載全文に基づく比較は、別居3年で離婚できるかで説明する。DV等がある場合は安全に配慮し、直接連絡や再同居を機械的に勧めない。

4-1 有責配偶者からの離婚請求

有責配偶者からの離婚請求は,別居期間が一定年数を超えれば自動的に認められるものではない。最高裁第一小法廷平成2年11月8日判決・平成元年(オ)第1039号は,約8年の別居期間を同居期間や当事者の年齢と形式的に比較して請求を排斥した原判決を破棄し,口頭弁論終結時における諸事情の審理が必要であるとした。

実務では,婚姻・同居・別居の経過,破綻原因,未成熟子の有無と監護状況,婚姻費用等の支払履歴,双方の年齢・健康・収入・住居・資産,離婚後の生活見通し及び財産給付の具体的提案を時間軸に沿って更新する。別居年数だけで見通しを説明せず,相手方が離婚により精神的,社会的又は経済的に極めて苛酷な状態に置かれるかを裏付け資料と対応させる必要がある。

判例の枠組みと立証事項の詳細は,有責配偶者からの離婚請求―別居期間は何年なら認められるのか,最高裁平成2年11月8日判決から考える(AI作成)で整理している。

5 財産分与の審理準備

財産分与は、夫婦双方の財産及び債務を一覧化し、基準時、分与対象性及び評価を整理して初めて全体像が見える。特定の不動産だけを切り離して議論すると、預貯金、保険、退職金及び債務との調整ができず、審理が長期化しやすい。

同報告書が紹介する実情調査では、大規模家庭裁判所が、分与対象財産を画定する基準時に争いがある事案で早期に合意を働き掛けることや、探索的な調査嘱託は採用しない旨を事前に伝えることで不必要な調査嘱託の申立てを抑止する工夫をしているとされている。
同庁は、弁護士会との意見交換会で、財産分与の申立時に基準時を明らかにするとともに少なくとも申立人側の財産資料を提出するよう要望し、不足している場合は直ちに補充を求める運用を開始したという(同報告書188頁)。
離婚原因についても、原告側に破綻原因として特に重視する点の特定を求め、被告側にはその点を中心に認否反論をするよう促している実情が紹介されている。

5-1 財産一覧表

財産一覧表には、少なくとも、財産の種類、名義人、所在又は金融機関、基準時残高、現在価額、分与対象性に関する双方の主張及び裏付け資料を記載する。
分与割合について2分の1以外を主張する場合は、その法的・事実的根拠を具体化する。単に収入差又は名義だけを示しても足りない場合がある。

5-2 基準時と評価時

財産分与では、夫婦の協力関係が終了した時点として別居時を基準時とする実務が多い。他方、価格が変動する財産の評価時は口頭弁論終結時に近い時点が問題となることがあり、分与対象を確定する基準時と価額を評価する時点を区別すべきである。
個別事件では、同居中の家計分離、別居後の財産移動、住宅ローン返済等により別の整理が必要となることがある。

5-3 特有財産と混在財産

婚姻前から有する財産、相続又は贈与により得た財産は、特有財産となり得る。ただし、婚姻後の入出金と混在している場合、原資及び移動経路を預金履歴等で示す必要がある。
「親からもらった」「婚姻前の貯金である」という説明だけでなく、取得時期、金額及び現在の財産との対応関係を資料で示すことが重要である。

5-4 不動産、ローン及び退職金

不動産については、査定書、固定資産評価資料、ローン残高、名義及び居住状況を整理する。売却、取得、共有継続のいずれを希望するか、その実現可能性も検討する。
退職金については、退職時期、支給見込み、婚姻期間との対応及び勤務先資料の取得可能性を確認する。保険については、基準時の解約返戻金額を保険会社に照会する。
審理モデルは、住宅ローンを別居時の債務残高で評価するとしている(同モデル17頁~18頁)。
そのため、別居後に夫婦の一方が相手方名義の住宅ローンを払っていた場合は、払った分の精算を別に検討する必要がある。
詳しくは、別記事「妻が払った夫名義の住宅ローンは取り戻せるか」で扱っている。

オーバーローンの自宅を原則として計算から除外するのではなく、他の分与対象財産との通算と、通算が衡平を害する事情の有無を検討する。東京高裁令和6年8月21日判決(令和6年(ネ)第710号、判例タイムズ1539号60頁、判例秘書L07920691の掲載全文確認)は、この両面を述べた。本件の分与申立て却下という結論と、単一の高裁判決という射程も踏まえる。対象財産・対象債務、居住継続、返済計画及び他方の住居を整理し、通算表と衡平に関する主張を分ける。詳しくは、オーバーローンの自宅と財産分与を参照されたい。

6 子に関する争点と家庭裁判所調査官

親権者の指定、監護状況又は子の意向が争点となる場合、家庭裁判所調査官の調査が行われることがある。ただし、人事訴訟における調査官調査は、裁判所が判断に必要と認めた具体的事項について行われる補充的な資料収集であり、当然に実施されるものではない。
子に関する調査の時期と、離婚原因又は財産分与の審理時期は相互に影響する。子の生活への負担を抑えつつ、何を調査で確認する必要があるかを具体化すべきである。

7 本人尋問と和解

審理モデルは、本人尋問について、争点を絞り、一問一答で具体的事実を確認する運用を示している。東京家裁のモデル上は、本人一人につき反対尋問を含めおおむね40分を一つの目安としているが、これは法定の時間制限ではない。
和解は、主要な争点及び資料が整理された後であれば、判決では実現しにくい柔軟な解決に役立つ。不動産の売却又は取得、ローン負担、引越し、面会交流及び金銭の分割払等を組み合わせる場合、履行可能性を具体的に確認する必要がある。

8 代理人が作成する進行管理表

長期化防止のため、代理人は事件ごとに次の進行管理表を作成すると有用である。

  • 離婚原因及び抗弁の一覧
  • 各争点に対応する主張書面及び証拠
  • 第三者から取得する資料と取得予定日
  • 財産一覧表の未確定項目
  • 子に関する調査の要否及び確認事項
  • 次回期日までの依頼者、代理人及び相手方の作業
  • 和解条件の最低条件、優先順位及び履行方法

9 令和6年モデル利用時の注意

審理モデルは令和6年4月時点の資料である。その後、令和6年法律第33号による家族法改正が令和8年4月1日に施行された。また、民事裁判手続のデジタル化に関する改正も段階的に施行されている。
したがって、審理モデル中の法令、ウェブ会議及び手続案内に関する記述は、個別事件の基準日における現行法及び担当裁判所の最新案内と照合する必要がある。

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11 一次資料その他

① 東京家庭裁判所家事第6部「東京家裁人訴部における離婚訴訟の審理モデル」(令和6年4月26日付け)
② 最高裁判所事務総局家庭局「家庭裁判所の現状と課題」(令和7年度実務協議会(冬季))
③ e-Gov法令検索「人事訴訟法」
④ e-Gov法令検索「民法」
⑤ 最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第11回)」第5章(177頁~189頁)
⑥ 最高裁大法廷昭和62年9月2日判決・昭和61年(オ)第260号:裁判所公式全文を確認済み。
⑦ 最高裁第一小法廷平成2年11月8日判決・平成元年(オ)第1039号:裁判所公式全文を確認済み。
* ①、②及び⑤は裁判所の運用資料又は統計資料であり、法令又は判例ではない。⑥及び⑦は裁判所公表の判決全文を確認した。判例秘書では、令和8年10月1日時点で⑥及び⑦の判決本文を照合していない。