目次
第1 結論-理由を分解し,時効を止めずに進める1 最初に行うべきこと2 再査定,ADR及び時効管理は別々の作業である第2 減額・不払いの理由を六つに分ける1 補償義務の有無2 免責事由3 対象費目4 必要性及び相当性5 事前同意及び選任手続6 金額の算定第3 再査定を求める方法1 資料を一式そろえる2 書面で回答を求める項目3 再査定申出の骨格第4 日弁連ADRとそんぽADRの違い1 比較表第5 日弁連の弁護士費用保険ADR1 対象となる紛争2 申立人と受任弁護士の制限3 和解あっせん,裁定及び見解表明4 手数料5 時効完成猶予の扱い第6 そんぽADRセンター1 利用できる相手方と申立人2 苦情解決手続と紛争解決手続3 和解案と特別調停案4 時効完成猶予は限定的である第7 消滅時効を管理する1 3年の起算点を一律に事故日にしない2 再査定中であることだけに依存しない3 管理表の最低項目第8 ADR申立書に添付する資料1 共通する提出パケット2 ADRを選ぶ前の確認第9 実務上の留意点1 保険金と弁護士報酬を混同しない2 確認した裁判例の範囲第10 まとめ1 実行順序第11 出典1 法令及び行政資料2 日弁連の資料3 そんぽADRセンター等の資料
第1 結論-理由を分解し,時効を止めずに進める
1 最初に行うべきこと
弁護士費用保険又は弁護士費用特約の保険金が減額され,又は支払われなかった場合,最初に確認すべきものは,事故時に適用される約款,不払い又は減額の根拠条項,保険会社が認定した事実及び計算過程である。
単に「LAC基準に合わない」「必要性がない」などの結論だけを争うのではなく,①補償義務,②免責,③対象費目,④必要性・相当性,⑤事前同意,⑥金額計算のどこで見解が分かれたのかを特定する必要がある。
2 再査定,ADR及び時効管理は別々の作業である
保険会社への再査定の申出,日弁連の弁護士費用保険ADR及びそんぽADRセンターは,目的,申立人,対象となる保険会社,手続の効果及び費用が異なる。
特に,ADRを申し立てたというだけで,常に消滅時効の完成が猶予されるわけではない。
保険法95条1項は,保険給付を請求する権利について,権利を行使することができる時から3年間行使しないときは時効によって消滅すると定める。
したがって,再査定やADRを進める場合も,別に起算点,完成予定日及び完成猶予・更新事由を管理する必要がある。
第2 減額・不払いの理由を六つに分ける
1 補償義務の有無
対象事故,対象となる法的手続,被保険者の範囲,保険期間又は支払事由の発生時期が約款の補償要件を満たすかという争いである。
この争いでは,商品名や一般的な「弁護士費用特約」のイメージではなく,当該事故に適用される約款本文を基礎にする。
2 免責事由
故意,契約締結前から存在した紛争,家族間紛争その他の免責条項に該当するかという争いである。
保険会社に対しては,適用した免責条項と,その条項に該当すると認定した具体的事実を対応させた説明を求める。
3 対象費目
着手金,報酬金,時間制報酬,法律相談料,日当,実費,鑑定費又は資料取得費が,約款のどの費目に該当するかという争いである。
同じ請求書に記載された金額でも,費目ごとに補償要件,事前同意の要否及び上限が異なることがあるため,一括して扱わない方がよい。
4 必要性及び相当性
費用の種類自体は補償対象でも,事件との関連性,必要性,相当性,重複又は代替可能性が争われる場合がある。
この場合は,費用ごとに,対象となる争点,行った作業,作業量,立証趣旨及び他の資料では代替できない理由を示す。
5 事前同意及び選任手続
弁護士への委任,費用の支出又は報酬額について,約款所定の事前同意を得ているかという争いである。
弁護士を自分で選べることと,その弁護士に支払う費用が全額保険金になることは別問題であり,詳細は「弁護士費用保険で弁護士を自分で選べるか」で整理している。
6 金額の算定
補償対象であること自体に争いがなくても,経済的利益,時間単価,作業時間,着手金と報酬金の算定基礎,既払額又は上限額により減額される場合がある。
この場合は,保険会社の計算式を入手し,入力値と計算方法を分けて確認する。
第3 再査定を求める方法
1 資料を一式そろえる
再査定の前に,次の資料を時系列順にそろえる。
① 保険証券及び契約内容が分かる資料
② 事故時に適用される約款及び特約
③ 弁護士との委任契約書,報酬説明書及び変更合意
④ 保険会社へ提出した事前承認申請,見積書及び請求書
⑤ 保険会社の承認,不承認又は減額回答
⑥ 作業記録,領収書,送金記録及び資料の立証趣旨
⑦ 保険会社との電話,電子メール及び面談の記録
適用約款が不明なままでは,どの事実が必要かも定まらない。
保険始期日だけでなく,事故日,紛争発生日,弁護士選任日,費用発生日及び請求日を並べ,当該商品に適用される版を確認する。
2 書面で回答を求める項目
再査定の申出では,少なくとも次の事項を項目別に尋ねる。
① 適用約款の名称,版及び条項
② 支払対象と認めた費目及び認めなかった費目
③ 各結論の前提となった認定事実
④ 金額の算定式,単価,作業時間,経済的利益及び控除額
⑤ 不足している資料と,提出した場合に再検討される事項
⑥ 争いのない部分を先に支払うことの可否
⑦ 再査定を担当する部門及び社外専門家の関与の有無
⑧ 利用できる苦情窓口及びADR
金融庁の「保険会社向けの総合的な監督指針」Ⅱ-4-4-3は,支払査定後に苦情があった場合の再度の事実確認,算定根拠の説明及び不払時の根拠条項を含む説明に着目している。
また,日本損害保険協会の「損害保険の保険金支払に関するガイドライン」は,支払額に異議がある場合の説明・再調査や,不払時の根拠条項・認定事実の説明,外部専門家を含む再検証の仕組みを掲げている。
もっとも,監督指針は保険会社の態勢に関する監督上の着眼点であり,同ガイドラインは損害保険業界の自主的な指針である。
これらは,再査定で確認すべき事項を示す重要な資料であるが,個別約款にない補償義務を当然に発生させるものではない。
3 再査定申出の骨格
再査定の申出は,次のように,争点,約款,事実及び資料を一対一で対応させるとよい。
(続きを読む...)弁護士費用保険の保険金が減額・不払いになったとき-再査定・日弁連ADR・そんぽADR・消滅時効(AI作成)