目次
第1 本記事の対象と結論1 対象とする文書2 本記事の結論3 検証の基準日,資料及び方法第2 対処方針に至る経緯1 合格者数3,000人目標から1,500人程度まで2 対処方針の結論と三つの論点3 対処方針が答えた問いと答えていない問い第3 業務量・求人量のデータの扱い1 割合だけを示し,弁護士が関与する件数の減少を示していない2 弁護士1人当たりの事件数の資料を使っていない3 「総体として大きな変化なし」というまとめ4 訴訟外業務の「顕著な拡大」の根拠5 比較の起点と終点第4 所得のデータの扱い1 質問の仕方が異なる調査をつないだ「上昇」2 所得総額という指標3 1979年から1999年までの比較4 弁護士白書の調査に表れた弁護士自身の回答第5 法曹の質のデータの扱い1 採用した資料の限界と「低下を認めない」という結論を分ける2 苦情の割合の上昇を「横ばいないし減少」とまとめている3 懲戒の数字が質の変化を映すまでの時間と分母4 選抜の厳しさの低下を論じていない5 質に近い資料を集めながら使っていない6 証拠として採る資料の基準が論点によって違う第6 司法基盤と需要の見通しの扱い1 「具体的・現実的な予測」の読み替え2 企業内弁護士の数と上場企業の数の比較3 弁護士費用保険の販売件数4 地方の新規登録の減少と減員の関係第7 結論と逆の方向に働き得る資料の扱い1 収集しながら本文で使わなかった資料2 人口減少と弁護士人口の将来予測3 意見照会の結果と減員を求める意見第8 文書内の数値の不一致と弁護士白書の版1 対処方針の中の不一致2 弁護士白書の版による数値の違い第9 対処方針の側から考えられる反論と残る問題1 データで裏付けられる事情2 減員を求める側の立証の問題3 データの扱いとして公平といえる点4 反論を踏まえても残る問題5 本記事の検討の範囲第10 関連記事第11 出典・参考資料1 日本弁護士連合会の文書2 弁護士会の文書3 統計・データ
第1 本記事の対象と結論
1 対象とする文書
(1) 文書の名称,作成主体及び形式
本記事が対象とするのは,日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。)が2022年(令和4年)3月17日付けで取りまとめた「法曹人口政策に関する当面の対処方針~司法試験合格者数の更なる減員に関する検証結果~」(以下「対処方針」という。)である。
日弁連のウェブサイトでは「意見書等」の区分に掲載されており,本体(印字頁1頁~7頁),別紙「論点項目ごとの検討結果」(8頁~48頁)及び別添(49頁~57頁)から成る。
作成の経過は,日弁連の法曹養成制度改革実現本部内に置かれた法曹人口検証本部が検討し,理事会での意見を踏まえて各弁護士会及び関連委員会へ意見照会を行ったというものである(対処方針2頁~3頁)。
別添1によれば,同本部の会議は2020年度に7回,2021年度に10回開かれた(対処方針49頁)。
(2) 対処方針の結論
対処方針の結論は,「現時点において,司法試験の合格者数に関して,更なる減員を提言しなければならない状況にはない。」というものである(対処方針3頁)。
同時に,合否の判定は近年の合格者数の維持を所与の目標とせず,司法試験法1条に基づいて厳正に実施されるべきであるとも述べている。
2 本記事の結論
(1) データの扱いに見られる偏り
本記事では,対処方針は客観的なデータを公平に取り扱ったものとはいえないと考える。
対処方針は数値を作り出した文書ではなく,不利な数字の一部も本文に示している。
しかし,割合と実数のどちらを示すか,どの年を比べるか,どの資料を証拠として採るか,検証の基準をどう読むかという,解釈を選ぶ場面のほとんどで,更なる減員は不要という結論に沿う選択がされている。
さらに,資料一覧に挙げながら本文で一度も使っていない資料のなかに,結論と逆の方向に働き得るものが多く含まれている。
(2) 主な問題点
本記事が指摘する主な問題点は,次のとおりである。
①割合の上昇だけを示し,弁護士が関与する件数の減少を示していない(第3の1)。
②弁護士1人当たりの事件数の資料を集めながら,本文で使っていない(第3の2)。
③訴訟外業務の「顕著な拡大」を,金額の大きさを示さない増減率から導いている(第3の4)。
④質問の仕方が異なる調査をつないで所得の「上昇」を述べ,弁護士白書自身の注意書きを落としている(第4の1)。
⑤質の経年比較に使える指標の限界と,採用した資料から低下を認めなかったことを区別する必要があり,苦情の割合の上昇も「横ばいないし減少」というまとめだけでは捉えられない(第5の1・2)。
⑥利用者による弁護士の評価など,質に近い資料を集めながら使っていない(第5の5)。
⑦教官等の実感は退け,関係団体のヒアリングは需要の根拠に採るという,論点によって異なる基準を用いている(第5の6)。
⑧2012年の日弁連の提言が定めた判断基準を,検証する側が事後に読み替えている(第6の1)。
⑨弁護士人口の将来予測,人口の増減率,他の資格や裁判官との収入の比較等,減員の判断に関わる資料を本文で扱っていない(第7の1・2)。
⑩意見照会の結果を示していない(第7の3)。
3 検証の基準日,資料及び方法
(続きを読む...)日弁連の「法曹人口政策に関する当面の対処方針」(2022年3月17日)はデータを公平中立に分析したか-統計の扱いの検証(AI作成)