第1 シンポジウムの概要
1 開催日時・場所・テーマ
日本弁護士連合会(日弁連)は,2026年9月5日(土),福岡市の西南学院大学中央キャンパス(福岡市早良区西新6-2-92)において,第24回弁護士業務改革シンポジウムを開催する。
全体会は午前10時10分から10時30分まで,分科会及びワークショップは午前10時45分から午後5時30分までの間で,企画ごとに異なる時間帯で行われる。
全体テーマは,「交流都市 福岡から未来を拓く~共創とテクノロジーで描く新しい弁護士像~」である。
本稿は,第24回シンポジウムの全体構成,各分科会及びワークショップの内容,並びに近年のシンポジウムで扱いが広がっている生成AI関連企画を,日弁連が公表した情報に基づいて整理するものである。
主催は日弁連であり,参加費は無料である。
参加対象は「どなたでも」とされているが,一部の分科会及びワークショップは会員限定である。
開催方法は来場及びオンライン参加(ライブ配信)の両方であるが,会員限定企画の一部はライブ配信を行わない。
各分科会及びワークショップへの事前申込みの受付は,本稿執筆時点(2026年8月29日)で既に終了している。
全体会のみ,来場・オンラインいずれも事前申込みが不要である。
2 弁護士業務改革シンポジウムとは何か
弁護士業務改革シンポジウムは,日弁連が主催する,弁護士業務の改革・発展をテーマとする全国規模のシンポジウムである。
第1回は1985年3月11日,東京において「弁護士業務対策シンポジウム」の名称で開催され,以来おおむね隔年で開催が重ねられてきた。
第24回である今回は,初回から数えて41年目の開催である。
日弁連が主催する会議体・行事全般の中での位置付けについては,日弁連の総会,代議員会,人権擁護大会,弁護士業務改革シンポジウム,司法シンポジウム及び国選弁護シンポジウムも参照されたい。
直近の開催実績は,第23回(2024年9月7日・仙台),第22回(2022年9月3日・名古屋),第21回(2019年9月7日・京都),第20回(2017年9月9日・東京)である。
3 プログラムの構成
第24回シンポジウムは,全体会に加えて,8つの分科会及び4つのワークショップ(A~D)で構成される。
分科会のうち第1分科会及び第5分科会は会員限定であり,第5分科会はオンライン配信も行われない。
ワークショップA~Dの4企画は,いずれも会員限定であり,オンライン配信は行われない。
第2 生成AIに関する3つの企画
全体テーマに「テクノロジー」の語が含まれているとおり,生成AIを直接の題材とする企画が,分科会・ワークショップを通じて3つ用意されている。
1 第2分科会「業務効率化の最前線:AIが変える弁護士と事務職員の実務」
第2分科会は,午前10時45分から午後5時30分まで,2号館407教室で行われる。
一般公開の企画であり,定員は約330人,ライブ配信は500人分である。
本分科会は,弁護士と事務職員それぞれの立場から,リーガルテック,特に生成AIがもたらす法律実務の変化とその対応策を,多角的に検討するものである。
第1部では,生成AI・AIエージェントによる業務効率化の可能性や,技術の進展が弁護士に求められる業務に与える影響が整理され,具体的な活用方法,将来展望,リスクヘッジ及び弁護士としての向き合い方が報告される。
AIが弁護士業務に与える影響の一般的な整理については,AIに代替される弁護士業務と人が担う役割も参照されたい。
基調報告は盛田哲矢会員(愛知県)及び竹波斉志会員(京都)が行う。
パネルディスカッションには両名に篠島正幸会員(第二東京)が加わり,宮内宏会員(第二東京)がモデレーターを務める。
第1部ではこれに加えて,事務職員3名(五反田法律事務所,日比谷シティ法律事務所,弁護士法人港国際法律事務所の各所属)による「お役立ちツールTips」の紹介も予定されている。
第2部では,生成AIと既存業務を組み合わせた効率化の取り組みが紹介される。
具体的には,法律事務所向けアンケート報告(鹿島啓一会員・金沢),法律事務所へのインタビュー報告(弁護士法人サリュ銀座事務所の事務職員2名)に続き,パネルディスカッションが行われる。
このパネルディスカッションでは,生成AIと非弁提携の議論との関係や,今後の業務の変化についても議論される予定である。
2 第7分科会「生成AI時代のスポーツ・エンターテインメントとパブリシティ権」
第7分科会は,午前11時45分から午後4時30分まで,2号館203教室で行われる。
定員は約250人,ライブ配信は500人分である。
スポーツ・エンターテインメントの分野では,コロナ禍を契機としたDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展に加え,生成AIの登場と急速な発展により,従来にはなかった法的・倫理的課題が顕在化しているとされる。
本分科会では,その中でも,アスリートやアーティストの死後のパブリシティ権や肖像の取扱い(相続や遺言の可否等)に焦点を当て,諸外国の法制度との比較を踏まえた検討が行われる予定である。
生成AIと肖像・パブリシティ権をめぐる問題状況については,AIによる声・肖像の無断模倣も併せて参照されたい。
海外調査については,フランス共和国及びモナコ公国における調査結果が,山田尚史会員(大阪弁護士会)から報告される予定である。
このほか,エンターテインメント分野の基調報告を上村剛会員(東京弁護士会)及び笠原智恵会員(第一東京弁護士会)が,スポーツ分野の基調報告を渡邉健太郎会員(第一東京弁護士会)が行う予定である。
これらの基調報告のタイトル及び第2部の登壇者は,2026年8月18日時点で調整中とされている。
第2部のパネルディスカッションのコーディネーターは,大橋卓生会員(第一東京弁護士会)が務める予定である。
3 ワークショップD「体験しよう!~生成AIを用いた文書作成と工夫~」
ワークショップDは,午後3時30分から5時30分まで,2号館202教室で行われる。
会員限定であり,定員は約20人,ライブ配信は行われない。
架空の事例を題材に生成AIで文書を作成し,より良い結果を得るための指示(プロンプト)の修正を,講師と参加者が実践する参加型の企画である。
なお,本ワークショップは,2026年8月18日時点で既に定員に達し,申込みを締め切っている。
第3 その他の分科会
生成AI関連以外にも,次の6つの分科会が予定されている。
1 第1分科会「民事信託を普段使いから更なる高みへ」
第1分科会は,午前11時45分から午後4時30分まで,2号館511教室で行われる。
会員限定であり,定員は約330人,ライブ配信は500人分である。
正式名称は「民事信託を普段使いから更なる高みへ-スタートからゴールまでの弁護士業務と金融機関・税理士との連携-」である。
第23回シンポジウムの企画を掘り下げ,民事信託に関する事案の提示,信託契約,変更・終了時の書類,訴訟等トラブルを防ぐ視点を解説した上で,後半では金融機関・税理士との連携を議論する。
2 第3分科会「弁護士が支援する『食と農』」
第3分科会は,午前10時45分から午後1時45分まで,2号館402教室で行われる。
一般公開の企画であり,定員は約170人,ライブ配信は500人分である。
農村人口の減少・高齢化や自然災害の激甚化等,農業を取り巻く課題を踏まえ,開催地である九州の農業の実情に即して,弁護士が多様な担い手を伴走的に支援する方法を検討する。
鈴木憲和農林水産大臣のビデオメッセージ上映,大分県への視察報告及び農業コンプライアンスチェックシートの紹介も予定されている。
3 第4分科会「弁護士費用保険(権利保護保険)の課題」
第4分科会は,午前11時45分から午後4時30分まで,2号館304教室で行われる。
一般公開の企画であり,定員は約250人,ライブ配信は500人分である。
正式名称は「弁護士費用保険(権利保護保険)の課題~海外調査及び我が国における発展経過を踏まえて~」である。
日弁連リーガル・アクセス・センターが2025年9月に実施したイタリア調査の結果を報告した上で,我が国における弁護士費用保険の創設・発展の経緯を振り返り,保険使用時における弁護士選任の自由・非弁規制の問題や,弁護士費用保険におけるテクノロジー利用と弁護士業規制の関係を議論する。
4 第5分科会「中規模法律事務所の経営課題に切り込む!」
第5分科会は,午前10時45分から午後1時45分まで,2号館301教室で行われる。
会員限定であり,ライブ配信は行われない。
定員は約300人である。
中規模事務所に特有の組織課題,弁護士・事務職員の採用及び定着のためのマネジメント,運営コストの増大と売上確保,資金繰り,後継者育成及び事業承継を扱う。
5 第6分科会「地方公共団体における第三者調査委員会の活用について」
第6分科会は,午後2時30分から5時30分まで,2号館301教室で行われる。
一般公開の企画であり,定員は約300人,ライブ配信は500人分である。
地方公共団体における不祥事対応での第三者調査委員会の活用増加を踏まえ,民間企業の第三者委員会とは異なる検討点(設置根拠,委員選定,調査手法,記録保管,報酬等)を,委員経験者や研究者を交えて検討する。
基調講演は榊原秀訓氏(南山大学大学院法務研究科教授)が行い,パネルディスカッションのコーディネーターは東尚吾会員(大阪弁護士会)が務める。
6 第8分科会「弁護士業務の多様なキャリアを考える」
第8分科会は,午前10時45分から午後5時30分まで,2号館201教室で行われる。
一般公開の企画であり,定員は約300人,ライブ配信は500人分である。
正式名称は「弁護士業務の多様なキャリアを考える~企業内弁護士と女性弁護士に焦点を当てて」である。
前半は企業内弁護士の本質的価値と新しい働き方について検討し,後半は「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査報告書2020」及び2025年に実施した追加アンケートの分析結果(石田京子・早稲田大学法学学術院教授ほか)を基に,海外における男女格差の状況や改善に向けた取組を紹介した上で,日本で取り組むべき施策についてパネルディスカッションを行う。
このパネルディスカッションのコーディネーターは松田さとみ会員(大阪弁護士会)が務め,パネリストには北嶋紀子会員(大阪弁護士会)も加わる。
第4 会員限定のワークショップA~C
生成AI関連のワークショップDのほかに,次の3つのワークショップが会員限定で予定されている。
3企画とも,ライブ配信は行われない。
1 ワークショップA「公益通報の外部窓口を務める弁護士の『ここだけ』の情報交換」
午後2時30分から4時30分まで,2号館302教室で行われる(定員約30人)。
弁護士が公益通報の外部窓口を務めるにあたっての注意点(利益相反,守秘義務等)やヒヤリハットを,外部窓口を務める弁護士同士で情報交換する企画である。
2 ワークショップB「行政事件をやってみよう!」
午前10時45分から午後0時45分まで,2号館202教室で行われる(定員約30人)。
正式名称は「行政事件をやってみよう!-弁護士が廃棄物に関わる事例を素材としたディスカッション-」である。
弁護士が廃棄物問題に初めて関与する場面を想定し,行政交渉や行政手続への弁護士関与の有用性を,具体例に基づくディスカッション形式で確認する企画である。
3 ワークショップC「弁護士過疎地への赴任のススメ」
午後1時10分から3時10分まで,2号館202教室で行われる(定員約30人)。
ひまわり基金法律事務所や偏在対応弁護士に対する経済的支援制度の説明に加え,赴任経験者(平岡路子会員・後藤周平会員・星野拓哉会員)を招いた座談会と相談ブースが予定されている。
第5 過去のシンポジウムにみるAIというテーマの位置付け
情報技術を扱う企画は,今回が初めてではない。
日弁連が公表している過去の開催一覧によれば,情報技術関連の企画は,少なくとも第13回(2003年・鹿児島)第2分科会「21世紀を生きる弁護士のためのIT」まで遡ることができ,その後も継続して組まれてきた。
「AI」という語が分科会名に初めて現れるのは,第21回(2019年・京都)第2分科会「やっときた!もうすぐ実現,e裁判。次はAI考えよう。」である。
第23回(2024年・仙台)では,AIが一分科会の題材にとどまらず,シンポジウム全体のテーマ自体に組み込まれた。
全体テーマは「杜の都から発信!変革の時代を生き抜くための弁護士業務~AIにできること,弁護士にしかできないこと~」であり,第1分科会も「リーガルテクノロジーは弁護士業務をどう変えるか」であった。
今回の第24回では,全体テーマに「テクノロジー」の語が引き続き用いられているほか,生成AIを直接の題材とする企画が3つ(第2分科会,第7分科会,ワークショップD)に増えている。
以上の経過からは,弁護士業務改革シンポジウムにおけるIT・AI関連の企画が,2000年代の「IT化」を起点として,2019年に「AI」という語を伴う企画として現れ,2024年に全体テーマそのものに組み込まれ,2026年には複数企画に展開してきたことが読み取れる。
単発の企画ではなく,日弁連が複数回にわたって継続的に取り上げてきた政策的関心であるということができる。
第6 大阪弁護士会に所属する登壇者
今回のシンポジウムには,大阪弁護士会に所属する会員が講師・登壇者として複数関わっている。
第6分科会のパネルディスカッションでは東尚吾会員がコーディネーターを務め,第7分科会ではフランス・モナコの海外調査結果を山田尚史会員が報告し,第8分科会のパネルディスカッションでは松田さとみ会員がコーディネーターを,北嶋紀子会員がパネリストを務める。
大阪弁護士会独自の広報・会告として本シンポジウムを取り上げたものは,本稿執筆時点では確認できていない。
第7 参加を希望する方へ
各分科会及びワークショップへの事前申込みの受付は,既に終了している。
全体会のみは,来場・オンラインいずれも事前申込みが不要である。
全体会及び各分科会の資料(会員限定の企画を除く。)は,特段の事情がない限り,シンポジウム当日までに日弁連ウェブサイトの本シンポジウムのページに掲載される予定である。
会員限定の分科会の資料は,会員専用サイトに掲載される。
当日の会場に来場者用の駐車場はなく,学内の食堂も利用できないため,近隣の飲食店等を利用するか,指定された学生ホールを利用する必要がある。
参加者による録音・録画は禁止されているが,主催者側で会場の写真・映像撮影及び録音が行われ,日弁連の書籍やウェブサイト等に使用される場合がある。
出典
①日本弁護士連合会「第24回弁護士業務改革シンポジウム」(2026年8月29日確認)
②日本弁護士連合会「第24回弁護士業務改革シンポジウム分科会等の御案内」(PDF,2026年8月18日時点)
③日本弁護士連合会「弁護士業務改革シンポジウム」(過去の開催一覧,2026年8月29日確認)
④日本弁護士連合会「自由と正義」2026年Vol.77 No.6(6月号)85頁