目次
第1 偽造とエンハンスの区別
1 偽造等の意味
2 エンハンスの意味と原資料との同一性問題
第2 偽造等がされた証拠への対応
1 民事訴訟法228条1項を出発点とする整理
2 新たな判定枠組みの創設が時期尚早とされた理由
3 契約取引型と不法行為型による影響度の違い
第3 エンハンスされた証拠に関する実務上のプラクティス
1 証拠説明書(民事訴訟規則137条1項)の活用
2 申告しなかった場合の効果
第4 議論の過程で示された具体的な視点
1 不動産登記実務における本人確認への影響
2 申告義務化の実効性をめぐる対立
3 フォレンジック費用の負担という提案
第5 比較法上の位置づけ
1 証拠提出段階に立ち入らない日本の到達点
2 米国,豪州及びシンガポールの規律
第6 今後の課題
1 民事証拠法の改正論議への言及
2 刑事罰による担保との関係
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出典
公益社団法人商事法務研究会は,令和8年8月,「AI時代における民事司法を考える研究会」の取りまとめを公表した。同取りまとめは,裁判所及び弁護士・司法書士によるAI利活用一般を検討する一方で,AIを利用して作成された証拠が民事訴訟に提出される場面についても,独立の章(第6)を設けて検討している。生成AIによる文書,画像,音声又は映像の偽造・改ざんが社会問題化する中で,早晩民事訴訟の場面でも同様の問題に直面することは想像に難くない。
本記事は,同取りまとめ第6の内容と,そこに至る全12回の議論の経過(議事概要)を整理し,AIで作成・加工された証拠に対して現在の民事訴訟実務がどこまで対応の方向性を示し,何を今後の課題として残したかを明らかにするものである。研究会の全体像及び裁判官によるAI利用等の他の論点は,別稿「「AI時代における民事司法を考える研究会」取りまとめの要点と限界」で扱っているので,あわせて参照されたい。
第1 偽造とエンハンスの区別
1 偽造等の意味