第1 会議参加・画面共有・遠隔操作は別である
ウェブ会議に参加すること,資料を画面共有すること,別のパソコンを遠隔操作することでは,相手に見せる情報と与える権限が異なる。
法律事務所では,操作の便利さと守秘上の制約を一緒に確認する必要がある。
本記事は機器・アプリの準備を扱い,裁判手続上の実施要件や録音録画の取扱いは裁判所の指示と関係法令に従う。
第2 Zoomの時間制限と会議前の準備
Zoomの現行サポート案内では,ベーシックの無料ライセンスが主催する通常の会議は,1対1を含め原則40分の制限がある(出典①)。
古い「1対1なら無制限」という説明を現在の標準条件として用いるべきではない。
有料アカウントに所属していても,主催者へどのライセンスが割り当てられているかを確認する。
① 主催者と参加者を確認し,会議URLを必要な相手にだけ伝える。
② 待機室,参加時認証及び画面共有権限を確認する。
③ カメラ,マイク,スピーカー,表示名をテストする。
④ 時間制限と中断時の連絡方法を確認する。
⑤ 終了後に会議・共有が停止していることを確認する。
契約プランの上限値や例外は変わり得るため,重要な会議では開催時点の公式案内を確認する。
本記事は,アカウントの購入や有料化を推奨するものではない。
第3 Teamsのアカウントと参加経路
Teamsでは,個人用アカウント,職場・学校アカウント,ゲストとしての参加を区別する。
会議によってはブラウザー等から参加できるが,主催組織の設定によってサインイン等を求められる場合がある(出典②)。
「Teamsには必ず個人用Microsoftアカウントが必要」と一律に説明するのは適切ではない。
複数のアカウントを使っている場合は,予定の組織・アカウントで入室しているかを確認する。
裁判所の招待で指定された参加方法を,一般のオンライン会議の方法へ勝手に置き換えない。
入室待機中に送ったチャットが,相手へ既に伝わったと推測しない。
第4 共有前に閉じるもの・確認するもの
共有する資料は,必要なページをあらかじめ開く。
メール通知,他事件のタブ,ファイル名,最近使用した項目,クリップボード等が見えないかを確認する。
画面全体の共有よりアプリ単位の共有が適する場面でも,そのアプリ内の別タブやウィンドウには注意が必要である。
録画,文字起こし,AIによる要約を利用する場合は,参加者への説明,必要な同意や許可,保存先,アクセス権及び保存期間を先に確認する。
裁判所での尋問等は,一般的なアプリの録画機能があることをもって自由に記録できるわけではない。
手続の解説は民事訴訟におけるウェブ尋問を参照されたい。
第5 リモートデスクトップと遠隔サポート
リモートデスクトップは,別のパソコンへ接続して操作する仕組みである。
GoogleのChromeリモートデスクトップ案内は,自分の端末へのアクセスと,他人からのサポートを受ける接続を区別している(出典③)。
サポート相手は,画面を見るだけでなく,アプリ,ファイル,メール等へアクセスできる場合がある。
① 相手が正規の担当者であることを,既知の連絡先で確認する。
② 支援範囲と見せてよい情報を確認する。
③ パスワードや回復コードを伝えない。
④ 作業中に何が行われているかを確認する。
⑤ 終了時に接続を切り,継続的なアクセス権が残っていないかを確認する。
相手が正規の保守業者であることと,提案された操作がメーカーの公式な解決策であることは別に確認する。
作業前に,症状を確認した日時,製品名と版,アカウントとライセンスの種類,直前の更新,提案された操作,根拠となる公式資料,見込まれる効果,所要時間,データへの影響及び元に戻す方法を記録する。
作業後には,開始・終了時刻,実行した操作,変更した設定,インストール又は削除したアプリ,確認結果及び未解決事項を残す。
パソコンとOffice等の購入・納品時の記録及び保守作業の記録は,法律事務所がパソコン・Office等を購入・納品してもらうときの確認事項で整理している。Office 2016・Office 2019が「ライセンスのない製品」になった場合は,KB5002907後の復旧手順も参照されたい。
突然表示された警告や電話の指示で遠隔操作を許可することは避ける。
不審な送金画面や認証要求が現れた場合は,作業を中断して事務所の責任者へ連絡する。
使っていない遠隔操作ソフトや,更新されないまま残った会議アプリは,それ自体が攻撃の入口になり得る。
インストール済みアプリの一覧を定期的に見て,使っていない遠隔操作ソフトは削除し,使い続けるものは常駐や自動起動の有無と,無人でも接続を受け付ける設定になっていないかを確認する。
Zoom等の会議アプリも,自動更新が実際に働いているかを版数で確かめる(出典④)。
偽の警告画面から電話をかけ,遠隔操作を許してしまった後の対応は,サポート詐欺(偽のセキュリティ警告)に遭ったときで整理している(出典⑤)。
第6 関連記事と出典
ディスプレイの接続・拡張・画面共有,弁護士情報セキュリティ規程,法律事務所がパソコン・Office等を購入・納品してもらうときの確認事項及びIT関係のメモ書きも参照されたい。
① Zoom「Zoom Meetingsの時間制限を把握する」
https://support.zoom.com/hc/ja/article?id=zm_kb&sysparm_article=KB0067979
② Microsoft「Microsoft Teamsで会議に参加する」
https://support.microsoft.com/ja-jp/teams/meetings/join-a-meeting-in-microsoft-teams
③ Google「Chromeリモートデスクトップで他のパソコンにアクセスする」
https://support.google.com/chrome/answer/1649523?hl=ja
④ 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」10-6(技術的安全管理措置)
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
⑤ 情報処理推進機構 安心相談窓口だより「遠隔操作を他人に安易に許可しないで」(2020年11月25日公開)
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2020/mgdayori20201125.html