日弁連会長選挙の選挙運動に対する規制

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目次
第1 事前の選挙運動の禁止

1 会長選挙規程の定め
2 政策提言団体の活動の位置づけ
3 事前の選挙運動に該当するかもしれない事例
4 公職選挙の場合の取扱い
第2 選挙運動用ウェブサイトに対する規制
第3 発送する文書に対する規制
第4 公開質問状に対する規制
第5 禁止事項を定める会長選挙規程58条
第6 関連記事

第1 事前の選挙運動の禁止
1 会長選挙規程の定め
(1)ア 選挙運動用ウェブサイトの開設を含む選挙運動の期間は,立候補の届出が受理された時(つまり,公示日)から投票日の前日までであり(会長選挙規程53条),候補者及びその他の会員が選挙運動の期間外に選挙運動をすること(つまり,事前運動)は禁止されています(会長選挙規程58条1号)。
イ 2020年の日弁連会長選挙の場合,再投票の公示日は2月20日(木)ですから,2月8日(土)午前0時から2月19日(水)までの間,選挙運動をすることはできません。
(2) 日弁連委員会ニュース(2019年12月1日発行分)の選管ニュースには以下の記載があります。
① 日弁連人権擁護大会の会場前にて「~の会賛同のお願い」と題する文書を不特定多数の会員に配布し、その文中に「次期日弁連会長候補者として代表世話人の一人であるAを推薦しました。」との記述があった礼があります。これは単なる「~の会」の広報宣伝活動とは受け取り難く、実質的選挙運動にあたる疑いがある(会規第58条第1号)として、警告が発せられました。
② 支持者や支援者向けのニュースであると銘打っても、文書内容が選挙運動にあたるものであれば、実態として支持者以外に配布されれば選挙違反になる可能性があります。
③ 選挙運動の期間は「立候補の届出が受理された時から投票日の前日」と厳格に定められています(会規第53条)。この期間外の選挙運動は認められておらず、前述の事例のとおり立候補届出前に「立候補者」、「立候補予定者」などの文言を用いることはできません。
2 政策提言団体の活動の位置づけ
(1) 日弁連会長選挙の前年に設立される政策提言団体への賛同を呼びかける行為は,当該団体の単なる広報宣伝活動であって,特定の候補者への賛同を呼びかけているわけではないから,選挙運動には該当しないということになっていると思います。
(2) 政策提言団体の広報宣伝活動において,代表世話人が次期日弁連会長選挙に立候補する予定であるなどと書いてあることはありません。
(3) 日弁連会長選挙の場合,選挙事務所は2箇所以内に制限されている(会長選挙規程55条1項)関係で,政策提言団体は,日弁連会長選挙がある年の前年12月までに,東京及び大阪の2箇所に事務所を設置することが多いです。
3 事前の選挙運動に該当するかもしれない事例
(1) 吉峯康博弁護士ブログ「日弁連会長選挙(2年に1回)とは?」(平成19年12月21日投稿)には,「『事前活動』は極めて大切です。2年に1回、会員の声・意見等にその土地に出向き直接耳を傾ける大切な機会です。私は22年間『事前活動』にも関与してきました。」と書いてあります。
(2) 平成20年5月30日から平成29年3月3日までの間,日弁連会員がインターネットで選挙運動をすることが禁止されていましたところ,吉峯康博弁護士ブログには,選挙運動の期間かどうかを問わず,宇都宮健児弁護士を応援する記事がたくさん投稿されていた気がします(例えば,「チェンジ 日弁連も?なぜ、私は、日弁連会長に宇都宮健児を推すのか?」(平成21年12月25日投稿))。
(3) 北奥法律事務所HP「次期日弁連会長(たぶん)にボロ負けした若僧が、18年後に一矢報いた?話~第1話~」(2019年6月7日付)には,「先日、次回の日弁連会長選挙に立候補を予定されている山岸良太弁護士が選挙運動の一環として岩手弁護士会の会員を対象に行った懇談会に参加してきました。」と書いてあります。
4 公職選挙の場合の取扱い
(1) 政治活動とは,政治上の目的を持って行われる一切の活動から,選挙運動にわたる行為を除いたものをいいます(千葉県浦安市HPの「選挙運動と政治活動」参照)。
(2) 公職選挙法239条1号の罪の構成要件である同法129条にいう選挙運動とは,特定の選挙の施行が予測せられ或は確定的となった場合,特定の人がその選挙に立候補することが確定して居るときは固より,その立候補が予測せられるときにおいても,その選挙につきその人に当選を得しめるため投票を得若しくは得しめる目的を以て,直接または間接に必要かつ有利な周施,勧誘若しくは誘導その他諸般の行為をなすことをいいます(最高裁昭和38年10月22日決定)。
(3) 投票を電話により依頼する者及びそのための要員を確保して候補者の支援組織に派遣する者は,いずれも公職選挙法221条1項2号にいう「選挙運動者」に当たります(最高裁平成16年12月21日決定)。

第2 選挙運動用ウェブサイトに対する規制
1 日弁連の会長選挙施行細則43条の3に基づき,①候補者は複数の選挙運動用ウェブサイトを開設してはいけませんし(2項),②選挙運動用ウェブサイトのアドレスは会長選挙が実施される年の西暦及び自己の氏名を含むものでなければなりませんし(2項),③日弁連,裁判所,法務省その他の公的機関ウェブサイトへのリンクしか設定できませんし(4項),④投票日の前日までしか更新できませんし(5項),⑤投票日の午後12時までに閉鎖しなければなりません(6項)。
2(1) 候補者の選挙運動用ウェブサイトのアドレスは,日弁連の会員専用HPに掲載されます(日弁連の会長選挙施行細則43条の3第7項)。
(2) 令和2年度同3年度日弁連会長選挙の場合,候補者の選挙運動用ウェブサイトのアドレス(届出順です。)は以下のとおりであって,2020及び自己の氏名が含まれていました。
武内更一候補:takeuchikouichi2020.com
及川智志候補:oikawasatoshi2020.com
荒  中候補:2020aratadashi.com
山岸良太候補:2020yamagishi-ryota.jp
川上明彦候補:kawakami-akihiko2020.com
3 フェイスブックやツイッターなどのSNS,Youtubeやニコニコ動画等の動画共有サービス,Ustreamやニコニコ動画の生放送等の動画中継サイトは,私設のウェブサイトではありませんから,選挙運動用ウェブサイトとして利用することはできません。
4 「◯◯を考える会」等のHPを,会長選の公示後,選挙運動用ウェブサイトとして利用することはできません。

第3 発送する文書に対する規制
1 文書による選挙運動に関する基準(令和元年7月11日付の日弁連選挙管理委員会の文書)には,「発送する文書について」として以下の記載があります。
(1) 支援者及び運動員同志の間で,並びにこれらの者と候補者の間で発送する文書は,選挙運動に当たらないとする。ただし,次の場合はこの限りでない。
イ  支援者又は運動員を限定せずに文書を発送する場合
ロ  「支援者間文書」等の表示をしていても実態が異なる場合及び実態と異なることが推測される場合
(2) 候補者,支援者及び運動員から,不特定多数の会員等に対して発送する文書は,それが選挙に関わるものである限り,形状及び内容を問わず選挙運動とみなす。
(3) 候補者,支援者及び運動員が不特定多数の会員に対して発送以外の方法で配布する文書は,それが選挙に関わるものである限り,形状及び内容を問わず選挙運動とみなす。
2 文書による選挙運動は,郵便はがきの発送及びポスターの掲示に限られます(日弁連の会長選挙規程56条1項)。
3 候補者,支援者又は運動員が,不特定多数の会員等に対し,ファクシミリにより選挙に関わる文書を送付した場合,郵便はがきの発送及びポスターの掲示以外の方法により文書による選挙運動をしたこととなりますから,日弁連の会長選挙規程56条1項に違反すると思います。
4 私は,いずれかの候補者の支援者又は運動員ではありませんが,「支持者間連絡文書」と題する文書がFAXされてくることがあります。

第4 公開質問状に対する規制

1 候補者は,会員から送付された公開質問状に対し,口頭,文書,ウェブサイト上のいずれの方法によって回答することもできます。
2  質問者が候補者の回答を文書や電子メールで配布することは,選挙運動違反に該当するおそれがあるため不可ですが,ウェブサイトで発信することはできます。

第5 禁止事項を定める会長選挙規程58条
・ 禁止事項を定める会長選挙規程58条は以下のとおりです。
    候補者及びその他の会員は、選挙運動として次に掲げる行為をし、又は会員以外の者にこれをさせてはならない。
一 第五十三条に規定する期間外に選挙運動をすること。
二 第五十五条の規定に違反して選挙事務所を設けること。
三 第五十六条の規定に違反して文書による選挙運動をすること。
四 第五十六条の二又は第五十六条の三の規定に違反してウェブサイト又は電子メールを利用する方法による選挙運動をすること。
五 選挙権を有する会員の自宅又は法律事務所を戸別訪問すること。
六 新聞、雑誌その他の出版物に候補者に関する記事又は広告を掲載すること。
七 利益を授受し、又はその約束をすること。
八 供応をし、又はこれを受けること。
九 電報により投票を依頼すること。
十 投票のため乗り物を提供すること。
十一 候補者を誹謗し、その他不正な手段で他人の当選を妨げること。
十二 選挙事務所、弁護士会館、弁護士控室又は法律事務所以外の場所において会合すること。ただし、委員会の許可を得たときは、この限りでない。
十三 ウェブサイト、ソーシャル・ネットワーキング・サービス又は電子メールを利用し、事実と異なる情報を発信すること。

第6 関連記事
1 日弁連会長選挙関係
① 日弁連会長選挙
② 日弁連設立時から平成18年度までの日弁連会長選挙の結果
③ 日弁連会長選挙の前年に活動していた政策提言団体(2007年以降の分)
④ 2019年に設立された政策提言団体の代表者の意見交換会等への出席状況
⑤ 日弁連会長選挙の選挙運動に対する規制
2 その他
① 日弁連の歴代会長及び事務総長
② 日弁連の歴代正副会長(昭和57年度以降)
③ 日弁連の歴代副会長の担当会務
④ 日弁連役員に関する記事の一覧
⑤ 弁護士会の会派

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