目次
1 死刑執行に反対する日弁連の会長声明
2 日弁連人権擁護大会等で採択されている決議
3 日弁連が支援する再審事件
4 平成元年以降に発生した「単独」犯による大量殺人事件等
5 日弁連の死刑廃止活動に対する反対活動
6 死刑判決が拡大していること
7 死刑執行に関する政府見解
8 死刑囚及び無期懲役受刑者,並びに無期刑仮釈放者の平均受刑在所期間
9 死刑判決に対する上訴取下げに関する最高裁判例
10 死刑制度に関する最高裁判例
10の2 裁判員裁判による死刑判決と控訴審の審査方法
11 死刑判決の言渡し
12 関連記事その他
1 死刑執行に反対する日弁連の会長声明
(1) 日本国政府によって実際に執行された死刑に対する日弁連の会長声明,会長談話等は以下のとおりです。
(小林元治日弁連会長)
・ 死刑執行に対し強く抗議し、直ちに全ての死刑執行を停止して、死刑制度を廃止する立法措置を早急に講じることを求める会長声明(令和4年7月26日付)
(荒中日弁連会長)
・ 死刑執行に対し強く抗議し、死刑制度を廃止する立法措置を講じること、死刑制度が廃止されるまでの間全ての死刑の執行を停止することを求める会長声明(令和3年12月21日付)
(菊地裕太郎日弁連会長)
① 死刑執行に強く抗議し、直ちに死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すことを求める会長声明(平成30年7月6日付)
② 死刑執行に強く抗議し、直ちに死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すことを求める会長声明(平成30年7月26日付)
③ 死刑執行に強く抗議し、直ちに死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すことを求める会長声明(平成30年12月27日付)
④ 死刑執行に強く抗議し、直ちに死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すことを求める会長声明(令和元年8月2日付)
⑤ 死刑執行に強く抗議し、直ちに死刑執行を停止し、死刑制度の廃止を目指すことを求める会長声明(令和元年12月26日付)
(中本和洋日弁連会長)
① 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを求める会長声明(平成28年11月11日付)
② 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを求める会長声明(平成29年7月13日付)
③ 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを求める会長声明(平成29年12月19日付)
(村越進日弁連会長)
① 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成26年6月26日付)
② 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成26年8月29日付)
③ 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し、死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明(平成27年6月25日付)
④ 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し、死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明(平成27年12月18日付)
⑤ 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し、死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明(平成28年3月25日付)
(山岸憲司日弁連会長)
① 死刑執行に強く抗議し、死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成24年8月3日付)
② 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成24年9月27日付)
③ 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成25年2月21日付)
④ 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成25年4月26日付)
⑤ 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成25年9月12日付)
⑥ 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成25年12月12日付)
(宇都宮健児日弁連会長)
① 死刑執行に関する会長声明(平成22年7月28日付)
② 死刑執行の再開に強く抗議し、死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成24年3月29日付)
(宮崎誠日弁連会長)
① 死刑執行に関する会長声明(平成20年4月10日付)
② 死刑執行に関する会長声明(平成20年6月17日付)
③ 死刑執行に関する会長声明(平成20年9月11日付)
④ 死刑執行に関する会長声明(平成20年10月28日付)
⑤ 死刑執行に関する会長声明(平成21年1月29日付)
⑥ 死刑執行に関する会長声明(平成21年7月28日付)
(平山正剛日弁連会長)
① 死刑執行に関する会長声明(平成18年12月25日付)
② 死刑執行に関する会長声明(平成19年4月27日付)
③ 死刑執行に関する会長声明(平成19年8月23日付)
④ 死刑執行に関する会長声明(平成19年12月7日付)
⑤ 死刑執行に関する会長声明(平成20年2月1日付)
(梶谷剛日弁連会長)
① 死刑執行に関する会長声明(平成16年9月14日付)
② 死刑執行に関する会長声明(平成17年9月16日付)
(本林徹日弁連会長)
① 死刑確定者の死刑執行に関する会長声明(平成14年9月19日付)
② 死刑確定者の死刑執行に関する会長声明(平成15年9月12日付)
(久保井一匡日弁連会長)
① 死刑執行に関する会長声明(平成12年11月30日付)
② 死刑確定者の死刑執行に関する会長声明(平成13年12月28日付)
(小堀樹日弁連会長)
① 死刑執行に対する会長声明(平成10年6月26日付)
② 死刑執行に関する会長声明(平成10年11月20日付)
③ 死刑執行に関する会長声明(平成11年9月10日付)
④ 死刑執行に関する会長談話(平成11年12月17日付)
(鬼追明夫日弁連会長)
・ なし。
(土屋公献日弁連会長)
・ 死刑執行に関する談話(平成6年12月2日付)
・ 死刑執行に関する声明(平成7年5月29日付)
・ 死刑執行についての声明(平成7年12月22日付)
(阿部三郎日弁連会長)
・ 死刑執行に関する会長談話(平成5年5月6日付)
・ 死刑執行に対する会長声明(平成5年12月3日付)
どうして死刑判決言い渡しに抗議をせず、「執行」に抗議するのだろう・・?
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死刑執行に抗議する会長声明|第二東京弁護士会 https://t.co/TyDpMAmbA3— スラ弁(弁護士大西洋一) (@o2441) July 26, 2022
(2) 産経WESTの「「色に染まった」委員会が主導する政治的声明 「反対できない」単位会元会長が吐露」(平成29年5月23日付)には以下の記載があります。
関係者によると、日弁連の場合、主に委員会の提案が会長と各単位会選出の副会長13人・理事71人で構成する理事会の審議にかけられ、原則として承認を得て表明されるのが意見書。ただ、緊急だったり、従前の日弁連意見と同趣旨だったりすれば理事会の審議を省略でき、正副会長の承認だけで表明できる。従前の意見書の範囲内にとどめる会長声明も同様だ。
【弁護士会 「左傾」の要因】「色に染まった」委員会が主導する政治的声明 「反対できない」単位会元会長が吐露 https://t.co/LeYERZqOtT pic.twitter.com/0q5CslEfh3
— 産経ニュース (@Sankei_news) May 22, 2017
日弁連がそこまで市民に見放されたくないなら、
まずは死刑廃止の決議を止めるべき。死刑が良いのかは確かに微妙な問題で、俺も本当に迷うけど、
日本の一般市民は圧倒的多数が死刑維持に賛成。結局、日弁連の執行部が自分のやりたい方向かどうかで、市民感情という説明を利用してるだけ。 https://t.co/eAXYM4PguU
— そー弁 (@sobengshi) July 4, 2020
人間って他人にアドバイスをしてあげたい生き物だと思うんですよね。この欲求を満たしてあげる場を設定してあげると大体の人は喜ぶ。ただ積極的に請われた場合を除き、アドバイスというのはする側の自己満足であり、アドバイスされる側にとっては雑音に近いということは認識しておいた方が良いと思う。
— 教皇ノースライム (@noooooooorth) June 26, 2021
11月14日、オンライン形式にて、シンポジウム「死刑廃止の実現を考える日2022」を開催します。
今年度は、再審請求中の死刑執行について議論します。ぜひ、ご参加ください。https://t.co/Goz6eIJkEk pic.twitter.com/74A5mjssyp— 日本弁護士連合会(日弁連) (@JFBAsns) October 31, 2022
2 日弁連人権擁護大会等で採択されている決議
(1) 日弁連は,人権擁護大会において以下の決議を採択しています。
① 死刑執行停止法の制定、死刑制度に関する情報の公開及び死刑問題調査会の設置を求める決議(平成16年10月8日付)
② 罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言(平成23年10月7日付)
③ 死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言(平成28年10月7日付)
(2)ア 日弁連HPの「死刑制度の問題(死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部)」に,死刑問題に関する日弁連の資料が色々と掲載されています。
イ 日弁連HPに「裁判員の皆さまへ 知ってほしい刑罰のこと」が載っています。
(3) 東北弁護士会連合会は,平成28年7月1日,「犯罪加害者家族に対する支援を求める決議」を出しました。
(4) 日弁連は,令和元年10月15日付で「死刑制度の廃止並びにこれに伴う代替刑の導入及び減刑手続制度の創設に関する基本方針」を取りまとめ,10月25日付けで内閣総理大臣,法務大臣,衆議院議長及び参議院議長宛てに提出しました。
東弁が臨時総会を開き、死刑廃止に向けた決議を強行。そりゃメチャクチャだよと反対運動を始めました。 pic.twitter.com/xQUs5gT3vL
— 北村晴男 (@kitamuraharuo) September 12, 2020
シンポなどの類のなかには「市民に理解してもらうために」と言いつつ、電話かけしないと人が集まらず、そうした苦労により集まるのはシンパのみ。
なので、本来「理解してもらう」対象者にまるで見てもらえてる風ではなく、これに会費が使われるのか…という疑問はどうしても残りました。 https://t.co/BMmkfk2NF7— 向原総合法律事務所 弁護士向原 (@harrier0516osk) July 3, 2022
たったこれだけで「全会員の総意」的にカネを使えるのは羨ましい限りです。
日弁連業際非弁対策本部は年間500万か600万です。
委員会のために必要な本は自腹で買ってます。この前は詳解行政書士法第5次改訂版5,500円を買いました。条解弁護士法は14,000円です。もちろん自腹です。… https://t.co/ii4peTfsNf— 向原総合法律事務所 弁護士向原 (@harrier0516osk) August 21, 2024
3 日弁連が支援する再審事件
(1) 日弁連が支援する再審事件の一覧がWikipediaの「日本弁護士連合会が支援する再審事件」に載っています。
(2) 日弁連は,以下の基準を満たした事件を人権侵犯事件として特に支援することとしています。
① 冤罪事件である可能性がある。
② 無罪等を言い渡すべき明らかな新証拠を入手する可能性がある。
③ 日弁連がその救済に取り組むべき相当性,必要性がある。
(3) 令和元年9月現在,日弁連が支援する再審事件のうち,被告人が存命中の死刑確定事件は以下のとおりです。
① 昭和41年6月30日発生の袴田事件
・ 強盗殺人放火事件であり,殺害された被害者は4人です。
・ 第2次再審請求審としての静岡地裁は,平成26年3月27日,再審開始,並びに死刑及び拘置の執行停止を決定したものの,即時抗告審としての東京高裁は,平成30年6月11日,静岡地裁決定を取り消し,再審請求を棄却しました。
② 昭和41年12月5日発生のマルヨ無線事件
・ 強盗殺人放火事件であり,殺害された被害者は2人です。
・ 強盗殺人及び放火について再審請求されています。
③ 昭和63年6月20日発生の鶴見事件
・ 強盗殺人事件であり,殺害された被害者は2人です。
・ 弁護士ドットコムニュースに「冤罪を訴え続ける死刑囚の妻「最後まで付き合うしかない」…逮捕後、激動の29年語る」が載っています。
・ 日弁連は,平成29年8月25日付で再審支援を決定しました。
④ 平成20年10月1日発生の大阪個室ビデオ店放火殺人事件
・ 南海電気鉄道の難波駅前商店街にある雑居ビルで発生した放火事件であり,16人が焼死し,9人が負傷しました。
・ 日弁連は,令和元年6月20日,再審支援を発表しました(日弁連新聞2019年9月号2頁)。
身内の問題になると、感情や現実が前面に来るので、勉強してどうこうなる問題じゃないのが難しいところ。
貧困問題や少年事件に熱心に取り組んでおり、スゲェなぁと尊敬している弁護士も、ご子息ご令嬢が貧しい家庭の子供と関わってほしくないと明言して、私学に通わせたりしますからね。 https://t.co/5WhoR14VJ0
— ピピピーッ (@O59K2dPQH59QEJx) October 3, 2021
4 平成元年以降に発生した大量殺人事件等
(1) Wikipediaの「大量殺人」が載っている大量殺人事件のうち,平成元年以降に発生又は発覚したものを新しい順に並べた場合,以下のとおりであって,平成27年以降,特に大量殺人事件が増えています。
・ 令和 元年 7月18日発生の京都アニメーション放火殺人事件(死者35人,負傷者32人)
・ 平成30年11月26日発覚の宮崎高千穂一家6人殺人事件(死者6人)
・ 平成30年11月 6日発覚の日立妻子6人殺人事件(死者6人)
・ 平成29年10月30日発覚の座間9遺体事件(死者9人)
・ 平成28年 9月 発覚の大口病院連続点滴中毒死事件(殺人罪3件。ただし,被告人の自白によれば約20人)
・ 平成28年 7月26日発生の相模原障害者施設殺傷事件(死者19人,負傷者26人)
・ 平成27年 9月14日及び同月16日発生の熊谷連続殺人事件(死者6人)
・ 平成20年10月 1日発生の大阪個室ビデオ店放火殺人事件(死者16人,負傷者9人)
・ 平成20年 6月 8日発生の秋葉原通り魔事件(死者7人,負傷者10人)
・ 平成16年 8月 2日発生の加古川7人殺害事件(死者7人)
・ 平成13年 6月 8日発生の付属池田小事件(死者8人,負傷者15人)
・ 平成13年 5月 8日発生の武富士弘前支店強盗殺人・放火事件(死者5人,負傷者4人)
・ 平成12年 8月14日発生の大分一家6人殺傷事件(死者3人,負傷者3人)
・ 平成12年 6月11日発生の宇都宮宝石店放火殺人事件(死者6人)
・ 平成11年 5月23日発生の横浜・麻雀店放火殺人事件(死者7人(うち,1人は被疑者の店長))
・ 平成 7年 7月 5日発覚の福島悪魔払い殺人事件(死者6人,負傷者2人)
・ 平成 7年 3月20日発生の地下鉄サリン事件(死者13人,負傷者約6300人)
(2)ア 平成2年3月18日に兵庫県尼崎市で発生した長崎屋火災の場合,死者12人,負傷者6人となっていますところ,犯人が検挙されないまま公訴時効が完成しました。
イ 平成27年5月17日発生の川崎市簡易宿泊所火災の場合,死者11人,負傷者17人となっていますところ,犯人はまだ検挙されていません。
正しくその通りで、私は制度としての死刑は現在の日本の刑事裁判制度においては冤罪の可能性が払拭できず一定確率で無辜の民が処刑されうる制度だと考えているので反対していますが、ツマーが誰かに殺されたらほぼ間違いなくその相手が死刑になることを望むどころか自ら殺すと思います。 https://t.co/jlvS33MKti
— 教皇ノースライム (@noooooooorth) April 29, 2021
5 日弁連の死刑廃止活動に対する反対活動
(1) 日弁連は,昭和62年度に第一東京弁護士会会長及び日弁連会長をしていた岡村勲弁護士の夫人が平成9年10月10日に殺害された事件(山一證券代理人弁護士夫人殺人事件)に関して,平成9年11月10日,元副会長夫人殺害事件に関する会長声明を発表しました。
(2) 弁護士ドットコムニュースに「日弁連の死刑廃止活動「賛成派弁護士の会費も使われている」弁護士グループが質問状」(平成29年8月28日付)が載っています。
(3) 岡村勲弁護士らによって,平成12年1月23日,全国犯罪被害者の会(通称は「あすの会」)が設立されましたが,平成30年6月3日をもって解散しました。
日本弁護士連合会 会員声明
日本弁護士連合会会員は、日本弁護士連合会に対し、強制加入団体の特質に鑑み、死刑廃止運動をはじめとした、構成員の政治的思想信条の自由を過度に侵害する活動を、直ちに停止し、有志による活動に切り替えるよう求める。
— 大阪名物パチパチ弁護士 (@obpmb3fN93mQI9i) July 13, 2018
総会前、賛成の委任状が少ないのに焦った執行部は委任状未提出者の情報を外部に漏洩し、派閥の力関係を利用して賛成の委任状を出させた。投票の秘密も、実質的な投票の自由も奪っておきながら、良くも平然と「決議を採択しました」などと呑気に言えますね。恥は忘れたのかな? https://t.co/SKkKjk8yiP
— 北村晴男 (@kitamuraharuo) September 29, 2020
やっぱり、そうだろうと思ったよ。
日弁連は猛省して方針転換すべし。死刑制度、弁護士5割以上は「存置すべき」https://t.co/59pwh7ZLQy
— 米田龍玄 (@RyogenYoneda) August 31, 2021
6 死刑判決が拡大していること
(1) 「量刑制度を考える超党派の会の刑法等の一部を改正する法律案(終身刑導入関係)」に対する日弁連意見書(2008年11月18日付)には以下の記載があります(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
① 死刑判決数は,司法統計年報によって,1992年から1999年までと2000年から2007年までの各8年間の死刑判決言渡し数(死刑判決を維持したものを含む。)を比較すると,地方裁判所では43件が109件(約2.5倍)に,高等裁判所では31件が124件(約4.0倍)に,最高裁判所では33件が68件(約2.1倍)に,それぞれ増加している。
ちなみに,同様の期間の無期判決の推移を比較すると,地方裁判所では329件が771件(約2.3倍)に,高等裁判所では197件が563件(約2.9倍)に,最高裁判所では87件が368件(約4.2倍)と死刑判決同様に増加している(司法統計年報)。
② 死刑判決には,こうした厳罰主義の傾向を端的にみてとることができ,従来では死刑判決とはならなかったと思われる事案において死刑が言い渡されるものが数多く見られる。
死刑は,1983年のいわゆる永山最高裁判決以降,殺害被害者1名の場合には,①同種無期刑前科のある者の仮釈放中,②身代金目的誘拐,③保険金目的の事案において,抑制的に言い渡されてきたが,近年はこの枠組みを超えて死刑判決が言い渡されている。
また,殺害被害者2名の事案の場合でも,昭和60年から平成15年までに死刑を求刑された73件のうち約半分の37件において無期刑が言い渡されていたところ,2006年の光市事件最高裁判所差戻判決は,死刑を例外的な刑罰とはせず,犯罪の客観的な側面が悪質な場合は原則として死刑であり,特に酌量すべき事情がある場合に限って死刑が回避されるという考えを示し,近年では殺害被害者が2名の事案では死刑求刑事件のほとんどに死刑判決が言い渡されている。
(2) 平成11年4月14日,山口県光市の社宅アパートで発生した光市母子殺害事件については,最高裁平成24年2月20日判決によって死刑判決が確定しました。
役に立つかはその人次第?裁判所用語
【主文後回し】
主文の前に判決理由から述べること
極刑の場合このケースとなる(ことが多い)
先に極刑を宣告すると被告人が動揺し、その後の判決理由を聞かなくなるため後回しにするとされている
なお、一部著名事件や執行猶予案件にも用いられることがある— 赤木集@裁判所書記官 (@akagi_komuin) August 24, 2021
7 死刑執行に関する政府見解
(1) 死刑執行までの期間
ア 再審請求,恩赦出願等がない限り,法務大臣は判決確定の日から6ヶ月以内に死刑執行命令を出さなければならないとする刑事訴訟法475条は訓示規定であると解されています(昭和60年3月27日の衆議院法務委員会における筧栄一法務省刑事局長の答弁参照)。
イ 再審請求や恩赦の出願などの事由,つまり,刑事訴訟法475 条2項に規定される事由がない
者の,判決確定から執行までの平均期間については,平成9年から平成18年までの10年間において死刑を執行された者についていえば,約4年3ヶ月です(平成19年12月7日の衆議院法務委員会における大野恒太郎法務省刑事局長の答弁参照)。
ウ 刑事訴訟法476条に基づき,法務大臣が死刑執行命令に署名してから5日以内に必ず死刑が執行されています(平成19年12月7日の衆議院法務委員会における大野恒太郎法務省刑事局長の答弁参照)。
(2) 法務大臣の判断で死刑の執行を停止できないこと等
ア 現行法制のもとでは、法務大臣がその判断で事実上,死刑判決の執行及び効力を停止するということは,法律上は許されません(平成8年2月27日の参議院法務委員会における長尾立子法務大臣の答弁参照)。
イ 衆議院議員保坂展人君提出拷問等禁止委員会最終見解のうち、刑事司法・刑事拘禁と入管手続などに関する質問に対する答弁書(平成19年6月15日付)には以下の記載があります。
① 裁判所は、犯罪事実の認定についてはもとより、被告人に有利な情状についても、慎重な審理を尽くした上で死刑判決を言い渡しているものと承知しており、最終的に確定した裁判について速やかにその実現を図ることは、死刑の執行の任に当たる法務大臣の重要な職責であると考えている。仮に再審の請求や恩赦の出願を死刑執行の停止事由とした場合には、死刑確定者が再審の請求や恩赦の出願を繰り返す限り、死刑の執行をなし得ず、刑事裁判を実現することは不可能になり、相当ではないと考えられる。
② 裁判所は、犯罪事実の認定についてはもとより、被告人に有利な情状についても、慎重な審理を尽くした上で死刑判決を言い渡しているものと承知しており、最終的に確定した裁判について速やかにその実現を図ることが重要であると考えており、御指摘のような制度改正(山中注:立法措置等による死刑執行の停止,恩赦制度の実効化を含めた減刑のための制度の改革を含めた制度改正)は相当でないと考えている。
(3) 死刑執行に関する情報公開
ア 衆議院議員保坂展人君提出死刑執行と法務省に関する質問に対する答弁書(平成11年1月26日付)には以下の記載があります。
平成十年十一月十九日午後一時ごろ、法務大臣官房秘書課広報室職員が、法務省内において、新聞社等の記者に対し、「本日、死刑確定者三名に対して、死刑の執行をしました。」旨記載したメモを配布するなどして、死刑執行の事実を発表した。
調査した範囲では、法務省が、死刑執行の当日に執行者数を発表したのは、このときが初めてである。
イ 衆議院調査局法務調査室が作成した,死刑制度に関する資料(平成20年6月。PDFで108頁あります。)11頁には以下の記載があります。
平成19 年12 月7日、法務省は、3人の死刑を執行するとともに、死刑の執行を受けた者の氏名と犯罪事実、執行場所を初めて公式に発表した。同省は、初めて氏名などを公表した理由について、「事件の被害者をはじめとする国民から情報公開をすべきだとの要請が高まるなか、死刑が適正に執行されていることを国民に理解してもらうために公開が重要と考え、鳩山法務大臣が今回の公表を決断した」と説明している。
(4) 死刑執行命令を発する際の考慮要素等
参議院議員福島みずほ君提出死刑制度における手続き的問題に関する質問に対する答弁書(平成30年7月27日付)には以下の記載があります。
① 個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたいが、一般論として申し上げれば、死刑の執行に際しては、法務大臣は、個々の事案につき関係記録を十分に精査し、刑の執行停止、再審又は非常上告の事由の有無、恩赦を相当とする情状の有無等について慎重に検討し、これらの事由等がないと認めた場合に、初めて死刑執行命令を発することとしている。
また、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)上、再審請求中であることは、死刑の執行停止事由とされていないところ、法務大臣は、死刑執行命令を発するに当たっては、再審請求がなされていることを十分参酌することとしているが、再審請求を行っているから死刑執行をしないという考えはとっていない。
戦後、再審請求中に死刑の執行が行われた事例はあるが、個々具体的な事項については、答弁を差し控えたい。
② 刑事訴訟法第四百七十九条第一項は、「死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によつて執行を停止する。」と規定しているところ、一般に、その趣旨については、心神喪失状態にある者に対する死刑の執行は、刑の執行としての意味を有しないからであるなどとされ、同項の「心神喪失の状態」については、死刑の執行に際して自己の生命が裁判に基づいて絶たれることの認識能力のない状態をいうものと解されている。
また、一般論として申し上げれば、死刑確定者の精神状態については、法務省の関係部局において、常に注意が払われ、必要に応じて、医師の専門的見地からの診療等を受けさせるなど、慎重な配慮がなされており、法務大臣は、このような専門的な見地からの判断をも踏まえて、心神喪失の状態にあること等の執行停止の事由の有無を判断しており、この点に関し、新たな仕組みが必要とは考えていない。
③ 個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたいが、一般的な取扱いとして、死刑確定者本人に対する執行の告知は、当日、刑事施設の長が、執行に先立ち行っている。
(5) 死刑執行と自由権規約6条との関係
・ 参議院議員福島瑞穂君提出国際人権規約委員会「最終見解」についての実施状況に関する質問に対する答弁書(平成12年8月25日付)には以下の記載があります。
第三の九について
死刑について規定している刑法(明治四十年法律第四十五号)は法務省が所管している。
我が国においては、法定刑として死刑が定められている罪は、殺人、強盗殺人等一定の重大な犯罪合計十八の罪に限られている上、外患誘致の罪を除く十七の罪については懲役刑又は禁錮刑が選択刑として定められている。また、個別の事件における死刑の選択は、昭和五十八年七月八日最高裁判所第二小法廷判決において示された「死刑制度を存置する現行法制の下では、犯行の罪質、動機、態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性ことに殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむをえないと認められる場合には、死刑の選択も許される」との判断を踏まえて、極めて厳格かつ慎重に行われているものと承知している。このように、我が国においては、現在、死刑は、罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対してのみ科せられており、B規約第六条に規定する義務を履行している。
また、検察官の求刑や上告も、右最高裁判所判決において示された判断を踏まえて、極めて厳格かつ慎重に行われていると承知している。
麻原彰晃のWikipediaに麻原の死刑執行命令書が載ってるのすごいな pic.twitter.com/t2h3wXEeJd
— 津山 (@TYM30) October 27, 2021
本日、死刑執行がないとすると、9年ぶりの死刑執行0の年になります。
12月29日以降は、法律により死刑執行ができません(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律178条2項)。— 深澤諭史 (@fukazawas) December 28, 2020
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他の法相経験者はどうか知りませんが、私は大臣室の引き出しに仏像と数珠を入れておき、署名時に手を合わせていました。やっぱり、なかなか荷の重い仕事ですから。 https://t.co/J2Qc0YwgRI— おおくぼやまと@霞ヶ関 (@okubo_yamato) November 12, 2022
8 死刑囚及び無期懲役受刑者,並びに無期刑仮釈放者の平均受刑在所期間
(1) Crime Info HPの「審級別死刑確定数および無期懲役確定数」に,昭和32年以降の死刑確定人員及び無期懲役確定人員が載っています。
(2)ア 法務省HPの「検察統計統計表」の年報の表63「審級別 確定裁判を受けた裁判の結果別人員」に,直近5年の死刑,無期,実刑及び執行猶予の人数等が載っています。
イ 平成29年の死刑は2人,無期懲役は18人であり,平成30年の死刑は2人,無期懲役は25人です。
(3) Wikipediaに以下の記事が載っています。
① 日本における死刑囚の一覧
② 日本における収監中の死刑囚の一覧
③ 日本における被死刑執行者の一覧
④ 日本において獄死もしくは恩赦された死刑囚の一覧
→ 戦後,恩赦によって死刑から無期懲役に減刑されたのは6人であり,最後の例は昭和50年6月17日の恩赦です。
⑤ 女性死刑囚
⑥ 少年死刑囚
→ 令和元年9月現在,平成時代に発生した事件に関する少年死刑囚は4人です。
(4) 無期懲役が確定し,矯正施設において服役している者の数は,平成12年8月1日現在,904人です(平成12年10月3日付の「衆議院議員保坂展人君提出死刑と無期懲役の格差に関する質問に対する答弁書」参照)。
(5)ア 法務省HPの「無期刑受刑者の仮釈放の運用状況等について」に掲載されている「無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況について」(平成30年11月)によれば,例えば,以下のことが分かります。
① 平成29年末時点で刑事施設に在所中の無期刑受刑者(年末在所無期刑者)は,1795人です。
② 平成29年の無期刑仮釈放者は11人であるのに対し,死亡した無期刑受刑者は30人です。
③ 平成29年の無期刑仮釈放者の平均受刑在所期間は33年2月です。
④ 平成29年末時点において,40年以上50年未満の間,在所している受刑者は34人であり,50年以上の間,在所している受刑者は11人です。
⑤ 平成22年の仮釈放の不許可事例として,被害者数3人の強盗致死傷及び放火により60年10月間,服役していた70歳代の受刑者のケースがあります(逆算すれば,判決確定時に19歳程度であったこととなります。)。
イ 刑法28条からすれば,無期刑受刑者は10年を経過した時点で仮釈放される可能性があるものの,現実の運用はこれとは全く異なります。
(6) 「マル特無期事件」に指定された受刑者の場合,終身又はそれに近い期間,服役させられることとなる点で,事実上の終身刑となっています(「特に犯情悪質等の無期懲役刑確定者に対する刑の執行指揮及びそれらの者の仮出獄に対する検察官の意見をより適正にする方策について(平成10年6月18日付の最高検察庁の次長検事依命通達)」(「最高検マル特無期通達」などといいます。)参照)
(7) 平成29年簡易生命表によれば,日本人男性の平均寿命は81.09歳であり,日本人女性の平均寿命は87.26歳です(公益財団法人生命保険文化センターHPの「日本人の平均寿命はどれくらい?」参照)。
(8) 日弁連HPに,「無期刑受刑者に対する仮釈放制度の改善を求める意見書」(平成22年12月17日付)が載っています。
(9) ヤフーニュースHPに「「慣例化」した歳末死刑執行と抗議から考える~このままの制度でいいのか」が載っています。
9 死刑判決に対する上訴取下げに関する最高裁判例
・ 最高裁平成7年6月28日決定は,以下の判示をしています(改行を追加しています。)。
死刑判決に対する上訴取下げは、上訴による不服申立ての道を自ら閉ざして死刑判決を確定させるという重大な法律効果を伴うものであるから、死刑判決の言渡しを受けた被告人が、その判決に不服があるのに、死刑判決宣告の衝撃及び公判審理の重圧に伴う精神的苦痛によって拘禁反応等の精神障害を生じ、その影響下において、その苦痛から逃れることを目的として上訴を取り下げた場合には、その上訴取下げは無効と解するのが相当である。
けだし、被告人の上訴取下げが有効であるためには、被告人において上訴取下げの意義を理解し、自己の権利を守る能力を有することが必要であると解すべきところ(最高裁昭和二九年(し)第四一号同年七月三〇日第二小法廷決定・刑集八巻七号一二三一頁参照)、右のような状況の下で上訴を取り下げた場合、被告人は、自己の権利を守る能力を著しく制限されていたものというべきだからである。
10 死刑制度に関する最高裁判例
(1) 死刑そのものは憲法36条の「殘虐な刑罰」ではありません(最高裁大法廷昭和23年3月12日判決)。
(2) 昭和30年4月当時,各国において採用している死刑執行方法は,絞殺,斬殺,銃殺,電気殺,瓦斯殺等であるが,これらの比較考量において一長一短の批判があるけれども,現在わが国の採用している絞首方法が他の方法に比して特に人道上残虐であるとする理由は認められません(最高裁大法廷昭和30年4月6日判決)。
(3) 現在の死刑の執行方法が明治6年太政官布告第65号の規定どおりに行われていない点があるとしても,それは右布告で規定した死刑の執行方法の基本的事項に反しているものとは認められず,この一事をもって憲法31条に違反するものとはいえません(最高裁大法廷昭和36年7月19日判決)。
(4) 死刑制度を存置する現行法制の下では,犯行の罪質,動機,態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性,結果の重大性ことに殺害された被害者の数,遺族の被害感情,社会的影響,犯人の年齢,前科,犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき,その罪責が誠に重大であって,罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむをえないと認められる場合には,死刑の選択も許されます(最高裁昭和58年7月8日判決)。
(5) 死刑の確定裁判を受けた者につき長期間にわたる拘置を継続したのちに死刑を執行することは,憲法36条にいう「残虐な刑罰」に当たりません(最高裁昭和60年7月19日決定)。
10の2 裁判員裁判による死刑判決と控訴審の審査方法
(1) 最高裁平成27年2月3日判決は,裁判員裁判による死刑判決と控訴審の審査方法について以下の判示をしています。
刑罰権の行使は,国家統治権の作用により強制的に被告人の
法益を剥奪するものであり,その中でも,死刑は,懲役,禁錮,罰金等の他の刑罰とは異なり被告人の生命そのものを永遠に奪い去るという点で,あらゆる刑罰のうちで最も冷厳で誠にやむを得ない場合に行われる究極の刑罰であるから,昭和58年判決で判示され,その後も当裁判所の同種の判示が重ねられているとおり,その適用は慎重に行われなければならない。また,元来,裁判の結果が何人にも公平であるべきであるということは,裁判の営みそのものに内在する本質的な要請であるところ,前記のように他の刑罰とは異なる究極の刑罰である死刑の適用に当たっては,公平性の確保にも十分に意を払わなければならないものである。もとより,量刑に当たり考慮すべき情状やその重みは事案ごとに異なるから,先例との詳細な事例比較を行うことは意味がないし,相当でもない。しかし,前記のとおり,死刑が究極の刑罰であり,その適用は慎重に行われなければならないという観点及び公平性の確保の観点からすると,同様の観点で慎重な検討を行った結果である裁判例の集積から死刑の選択上考慮されるべき要素及び各要素に与えられた重みの程度・根拠を検討しておくこと,また,評議に際しては,その検討結果を裁判体の共通認識とし,それを出発点として議論することが不可欠である。このことは,裁判官のみで構成される合議体によって行われる裁判であろうと,裁判員の参加する合議体によって行われる裁判であろうと,変わるものではない。
そして,評議の中では,前記のような裁判例の集積から見いだされる考慮要素として,犯行の罪質,動機,計画性,態様殊に殺害の手段方法の執よう性・残虐性,結果の重大性殊に殺害された被害者の数,遺族の被害感情,社会的影響,犯人の年齢,前科,犯行後の情状等が取り上げられることとなろうが,結論を出すに当たっては,各要素に与えられた重みの程度・根拠を踏まえて,総合的な評価を行い,死刑を選択することが真にやむを得ないと認められるかどうかについて,前記の慎重に行われなければならないという観点及び公平性の確保の観点をも踏まえて議論を深める必要がある。
その上で,死刑の科刑が是認されるためには,死刑の選択をやむを得ないと認めた裁判体の判断の具体的,説得的な根拠が示される必要があり,控訴審は,第1審のこのような判断が合理的なものといえるか否かを審査すべきである。
(2) 仙台高裁令和5年2月16日判決(裁判長は40期の深沢茂之)は一般論として以下の判示をしています。
死刑が他の刑罰とは異なり、被告人の生命そのものを永遠に奪い去るという、あらゆる刑罰のうちで最も冷厳で誠にやむを得ない場合に行われる究極の刑罰であることから、その適用は慎重に行われなければならず、また、このような死刑の適用に当たっては、公平性の確保にも十分に意を払わなければならない。その上で、死刑の科刑が是認されるためには、死刑の選択をやむを得ないと認めた裁判体の判断の具体的、説得的な根拠が示される必要があり、控訴審としては、第一審のこのような判断が合理的なものといえるか否かを審査することとなる(最高裁平成25年(あ)第1127号、平成27年2月3日第2小法廷決定・刑集69巻1号1頁参照)。
11 死刑判決の言渡し
・ 「法廷に臨む 最高裁判事として」60頁には,「死刑判決の言渡し」として以下の記載があります。
判決の言渡しの日は朝から気が重い。冷たい雨がいっそう陰麓をさそう。
四〇名余。死刑に反対する会のメンバーらしき人も数名いる。写真撮影の二分が長く、苦痛に感じる。「本件上告を棄却する」と主文を読み上げるのと同時に「死刑反対」「死刑を見直してください」と叫ぶ女性、「死刑反対」と書かれたものを掲げる人。ときには傍聴人が「人殺し」と叫んだりすることもあると聞いた。死刑の存否は冷静な場で議論されるべきものであろう。
騒然とした法廷から審議室に戻っても、直ちに審議をはじめる気持ちにならない。被告人の顔を見ない上告審でさえそのように感じるのだから、被告人と対面し言葉をかわす事実審、とくに一審の裁判官の気持ちは察するに余りあるものがある。
季刊刑事弁護112号見本出来。
どうぞよろしくお願いします。https://t.co/O6oZA400zi pic.twitter.com/EJstXR7oki— 季刊刑事弁護 (@kikankeijibengo) October 7, 2022
12 関連記事その他
(1) 東弁リブラ2022年11月号の「会長声明が発出されるまで」には以下の記載があります。
現在,会長声明等の発出は,「本会の見解等公表に関する運用基準」(2020年2月12日制定)に基づいて行われています。
これは,「会長の名で本会の見解又は姿勢」を公表する基準であり(1条),内容は理事者会で決定するものとし(3条),公表する場合として,①本会が取り組んできた人権問題,司法問題又は弁護士業務問題に関する重要な政策若しくは方針に関し,新たな事象が発生して早急に本会の見解等を公にする必要がある場合,②過去に発表した本会の見解等に関連する事象が発生した場合で,改めて本会の見解等を明らかにする必要がある場合,③その他,基本的人権の擁護及び社会正義の実現の観点から,本会が社会に対して啓発又はアピールすべき事項がある場合等が定められています(5条)。
(2)ア nippon.comに「死刑の執行件数の推移」が載っています。
イ 昭和24年7月15日発生の三鷹事件(死者6名,負傷者20名)に関する最高裁大法廷昭和30年6月22日判決では,8対7という意見の相違がある事件(意見の内訳は,8人が上告棄却(死刑確定),7人が破棄差戻し(死刑判決の審理やり直し))であり,かつ,地裁判決の無期懲役が書面審理だけの高裁判決で死刑に変更された重大事件であるにもかかわらず,「理由がないことが明らかである」場合にのみ適用される刑訴法408条に基づき(判決文12頁),弁論を開かないで判決をしたことが物議を醸しました。
そのため,最高裁大法廷昭和30年6月22日判決より後は,どの小法廷においても,また,大法廷においても,死刑事件については必ず弁論を開くようになりました(「最高裁判決の内側」(昭和40年8月30日発行)142頁及び143頁参照)。
(3) 令和4年1月25日現在,Wikipediaの「紅林麻雄」(くればやしあさお)には以下の記載があります。
自身が担当した幸浦事件(死刑判決の後、無罪)、二俣事件(死刑判決の後、無罪)、小島事件(無期懲役判決の後、無罪)、島田事件(死刑判決の後、無罪)の各事件で無実の者から拷問で自白を引き出し、証拠を捏造して数々の冤罪を作った。
あらゆる手段を用いて被疑者を拷問し、自白を強要させるなどした紅林を「拷問王」と称す人物もいる。
(4)ア 財田川事件(さいたがわじけん)に関する最高裁昭和51年10月12日決定には「矢野弁護人(山中注:矢野伊吉弁護士のこと。)は、正規の抗告趣意書を提出したほか、累次にわたり印刷物、著書等により、世間に対して申立人の無実を訴え、当裁判所にもそれらのものが送付されたが、弁護人がその担当する裁判所に係属中の事件について、自己の期待する内容の裁判を得ようとして、世論をあおるような行為に出ることは、職業倫理として慎しむべきであり、現に弁護士会がその趣旨の倫理規程を定めている国もあるくらいである。」と書いてあります(リンク先のPDF9頁及び10頁)。
イ 矢野伊吉弁護士は,高松地家裁丸亀支部長をしていた昭和44年,財田川事件の死刑囚が提出した無実を訴える私信を再審請求として受理して審理を開始し,当該死刑囚の無実を確信したものの,周囲の反対にあって再審開始を断念し,昭和45年8月に任期終了退官した後,弁護士登録をした上で自ら再審請求をしました。
また,昭和50年に「財田川暗黒裁判」を執筆しました。
(5) 最高裁令和5年9月27日決定は, 当事者双方が口頭弁論期日に連続して出頭しなかった場合において、訴えの取下げがあったものとみなされないとした原審の判断に民訴法263条後段の解釈適用を誤った違法があるとされた事例でありますところ,当該事例の相手方は大阪拘置所に収容されている死刑確定者でした。
(6) 日本の死刑制度について考える懇話会は,令和6年11月13日に報告書をとりまとめました。
(7)ア 令和2年10月に出された,死刑執行の通知制度に関する文書を以下のとおり掲載しています。
・ 「被害者等通知制度実施要領について」の一部改正について(令和2年10月21日付の法務省刑事局長の依命通達)
・ 被害者等に対する死刑執行に関する通知について(令和2年10月21日付の法務省刑事局長の依命通達)
・ 法務省刑事局における死刑執行に関する通知実施要領(令和2年10月頃の文書)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 日弁連の歴代会長及び事務総長
・ 死刑執行に反対する日弁連の会長声明等
・ 死刑囚及び無期刑の受刑者に対する恩赦による減刑
・ マル特無期事件
・ 恩赦の件数及び無期刑受刑者の仮釈放
・ 恩赦に関する記事の一覧