死刑執行に反対する日弁連の会長声明等

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目次
1 死刑執行に反対する日弁連の会長声明
2 日弁連人権擁護大会等で採択されている決議
3 日弁連が支援する再審事件
4 平成元年以降に発生した「単独」犯による大量殺人事件等
5 日弁連の死刑廃止活動に対する反対活動
6 死刑判決が拡大していること
7 死刑執行に関する政府見解
8 死刑囚及び無期懲役受刑者,並びに無期刑仮釈放者の平均受刑在所期間
9 関連記事

1 死刑執行に反対する日弁連の会長声明
(1) 日本国政府によって実際に執行された死刑に対する日弁連の会長声明,会長談話等は以下のとおりです。
(菊地裕太郎日弁連会長)
① 死刑執行に強く抗議し、直ちに死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すことを求める会長声明(平成30年7月6日付)
② 死刑執行に強く抗議し、直ちに死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すことを求める会長声明(平成30年7月26日付)
③ 死刑執行に強く抗議し、直ちに死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すことを求める会長声明(平成30年12月27日付)
④ 死刑執行に強く抗議し、直ちに死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すことを求める会長声明(令和元年8月2日付)
(中本和洋日弁連会長)

① 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを求める会長声明(平成28年11月11日付)
② 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを求める会長声明(平成29年7月13日付)
③ 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを求める会長声明(平成29年12月19日付)
(村越進日弁連会長)

① 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成26年6月26日付)
② 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成26年8月29日付)
③ 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し、死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明(平成27年6月25日付)
④ 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し、死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明(平成27年12月18日付)
⑤ 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し、死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明(平成28年3月25日付)
(山岸憲司日弁連会長)

① 死刑執行に強く抗議し、死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成24年8月3日付)
② 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成24年9月27日付)
③ 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成25年2月21日付)
④ 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成25年4月26日付)
⑤ 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成25年9月12日付)
⑥ 死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成25年12月12日付)
(宇都宮健児日弁連会長)
① 死刑執行に関する会長声明(平成22年7月28日付)
② 死刑執行の再開に強く抗議し、死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(平成24年3月29日付)
(宮崎誠日弁連会長)
① 死刑執行に関する会長声明(平成20年4月10日付)
② 死刑執行に関する会長声明(平成20年6月17日付)
③ 死刑執行に関する会長声明(平成20年9月11日付)
④ 死刑執行に関する会長声明(平成20年10月28日付)
⑤ 死刑執行に関する会長声明(平成21年1月29日付)
⑥ 死刑執行に関する会長声明(平成21年7月28日付)
(平山正剛日弁連会長)

① 死刑執行に関する会長声明(平成18年12月25日付)
② 死刑執行に関する会長声明(平成19年4月27日付)
③ 死刑執行に関する会長声明(平成19年8月23日付)
④ 死刑執行に関する会長声明(平成19年12月7日付)
⑤ 死刑執行に関する会長声明(平成20年2月1日付)
(梶谷剛日弁連会長)
① 死刑執行に関する会長声明(平成16年9月14日付)
② 死刑執行に関する会長声明(平成17年9月16日付)
(本林徹日弁連会長)
① 死刑確定者の死刑執行に関する会長声明(平成14年9月19日付)
② 死刑確定者の死刑執行に関する会長声明(平成15年9月12日付)
(久保井一匡日弁連会長)
① 死刑執行に関する会長声明(平成12年11月30日付)
② 死刑確定者の死刑執行に関する会長声明(平成13年12月28日付)
(小堀樹日弁連会長)
① 死刑執行に対する会長声明(平成10年6月26日付)
② 死刑執行に関する会長声明(平成10年11月20日付)
③ 死刑執行に関する会長声明(平成11年9月10日付)
④ 死刑執行に関する会長談話(平成11年12月17日付)
(鬼追明夫日弁連会長)
・ なし。
(土屋公献日弁連会長)
・ 死刑執行に関する談話(平成6年12月2日付)
・ 死刑執行に関する声明(平成7年5月29日付)
・ 死刑執行についての声明(平成7年12月22日付)
(阿部三郎日弁連会長)
・ 死刑執行に関する会長談話(平成5年5月6日付)
・ 死刑執行に対する会長声明(平成5年12月3日付)
(2) 産経WESTの「「色に染まった」委員会が主導する政治的声明 「反対できない」単位会元会長が吐露」(平成29年5月23日付)には以下の記載があります。
 関係者によると、日弁連の場合、主に委員会の提案が会長と各単位会選出の副会長13人・理事71人で構成する理事会の審議にかけられ、原則として承認を得て表明されるのが意見書。ただ、緊急だったり、従前の日弁連意見と同趣旨だったりすれば理事会の審議を省略でき、正副会長の承認だけで表明できる。従前の意見書の範囲内にとどめる会長声明も同様だ。

2 日弁連人権擁護大会等で採択されている決議
(1) 日弁連は,人権擁護大会において以下の決議を採択しています。
① 死刑執行停止法の制定、死刑制度に関する情報の公開及び死刑問題調査会の設置を求める決議(平成16年10月8日付)
② 罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言(平成23年10月7日付)
③ 死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言(平成28年10月7日付)
(2)ア 日弁連HPの「死刑制度の問題(死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部)」に,死刑問題に関する日弁連の資料が色々と掲載されています。
イ 日弁連HPに「裁判員の皆さまへ 知ってほしい刑罰のこと」が載っています。
(3) 東北弁護士会連合会は,平成28年7月1日,「犯罪加害者家族に対する支援を求める決議」を出しました。
(4) 日弁連は,令和元年10月15日付で「死刑制度の廃止並びにこれに伴う代替刑の導入及び減刑手続制度の創設に関する基本方針」を取りまとめ,10月25日付けで内閣総理大臣,法務大臣,衆議院議長及び参議院議長宛てに提出しました。

3 日弁連が支援する再審事件
(1) 日弁連が支援する再審事件の一覧がWikipediaの「日本弁護士連合会が支援する再審事件」に載っています。
(2) 日弁連は,以下の基準を満たした事件を人権侵犯事件として特に支援することとしています。
① 冤罪事件である可能性がある。
② 無罪等を言い渡すべき明らかな新証拠を入手する可能性がある。
③ 日弁連がその救済に取り組むべき相当性,必要性がある。
(3) 令和元年9月現在,日弁連が支援する再審事件のうち,被告人が存命中の死刑確定事件は以下のとおりです。
① 昭和41年6月30日発生の袴田事件
・ 強盗殺人放火事件であり,殺害された被害者は4人です。
・ 第2次再審請求審としての静岡地裁は,平成26年3月27日,再審開始,並びに死刑及び拘置の執行停止を決定したものの,即時抗告審としての東京高裁は,平成30年6月11日,静岡地裁決定を取り消し,再審請求を棄却しました。
② 昭和41年12月5日発生のマルヨ無線事件
・ 強盗殺人放火事件であり,殺害された被害者は2人です。
・ 強盗殺人及び放火について再審請求されています。
③ 昭和63年6月20日発生の鶴見事件
・ 強盗殺人事件であり,殺害された被害者は2人です。
・ 弁護士ドットコムニュースに「冤罪を訴え続ける死刑囚の妻「最後まで付き合うしかない」…逮捕後、激動の29年語る」が載っています。
・ 日弁連は,平成29年8月25日付で再審支援を決定しました。
④ 平成20年10月1日発生の大阪個室ビデオ店放火殺人事件
・ 南海電気鉄道の難波駅前商店街にある雑居ビルで発生した放火事件であり,16人が焼死し,9人が負傷しました。
・ 日弁連は,令和元年6月20日,再審支援を発表しました(日弁連新聞2019年9月号2頁)。

4 平成元年以降に発生した大量殺人事件等
(1) Wikipediaの「大量殺人」が載っている大量殺人事件のうち,平成元年以降に発生又は発覚したものを新しい順に並べた場合,以下のとおりであって,平成27年以降,特に大量殺人事件が増えています。
・ 令和 元年 7月18日発生の京都アニメーション放火殺人事件(死者35人,負傷者32人)
・ 平成30年11月26日発覚の宮崎高千穂一家6人殺人事件(死者6人)
・ 平成30年11月 6日発覚の日立妻子6人殺人事件(死者6人)
・ 平成29年10月30日発覚の座間9遺体事件(死者9人)
・ 平成28年 9月   発覚の大口病院連続点滴中毒死事件(殺人罪3件。ただし,被告人の自白によれば約20人)
・ 平成28年 7月26日発生の相模原障害者施設殺傷事件(死者19人,負傷者26人)
・ 平成27年 9月14日及び同月16日発生の熊谷連続殺人事件(死者6人)
・ 平成20年10月 1日発生の大阪個室ビデオ店放火殺人事件(死者16人,負傷者9人)
・ 平成20年 6月 8日発生の秋葉原通り魔事件(死者7人,負傷者10人)
・ 平成16年 8月 2日発生の加古川7人殺害事件(死者7人)
・ 平成13年 6月 8日発生の付属池田小事件(死者8人,負傷者15人)
・ 平成13年 5月 8日発生の武富士弘前支店強盗殺人・放火事件(死者5人,負傷者4人)
・ 平成12年 8月14日発生の大分一家6人殺傷事件(死者3人,負傷者3人)
・ 平成12年 6月11日発生の宇都宮宝石店放火殺人事件(死者6人)
・ 平成11年 5月23日発生の横浜・麻雀店放火殺人事件(死者7人(うち,1人は被疑者の店長))
・ 平成 7年 7月 5日発覚の福島悪魔払い殺人事件(死者6人,負傷者2人)
・ 平成 7年 3月20日発生の地下鉄サリン事件(死者13人,負傷者約6300人)
(2)ア 平成2年3月18日に兵庫県尼崎市で発生した長崎屋火災の場合,死者12人,負傷者6人となっていますところ,犯人が検挙されないまま公訴時効が完成しました。
イ 平成27年5月17日発生の川崎市簡易宿泊所火災の場合,死者11人,負傷者17人となっていますところ,犯人はまだ検挙されていません。

5 日弁連の死刑廃止活動に対する反対活動
(1) 日弁連は,昭和62年度に第一東京弁護士会会長及び日弁連会長をしていた岡村勲弁護士の夫人が平成9年10月10日に殺害された事件(山一證券代理人弁護士夫人殺人事件)に関して,平成9年11月10日,元副会長夫人殺害事件に関する会長声明を発表しました。
(2) 弁護士ドットコムニュースに日弁連の死刑廃止活動「賛成派弁護士の会費も使われている」弁護士グループが質問状」(平成29年8月28日付)が載っています。
(3) 岡村勲弁護士らによって,平成12年1月23日,全国犯罪被害者の会(通称は「あすの会」)が設立されましたが,平成30年6月3日をもって解散しました。

6 死刑判決が拡大していること
(1) 「量刑制度を考える超党派の会の刑法等の一部を改正する法律案(終身刑導入関係)」に対する日弁連意見書(2008年11月18日付)には以下の記載があります(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
① 死刑判決数は,司法統計年報によって,1992年から1999年までと2000年から2007年までの各8年間の死刑判決言渡し数(死刑判決を維持したものを含む。)を比較すると,地方裁判所では43件が109件(約2.5倍)に,高等裁判所では31件が124件(約4.0倍)に,最高裁判所では33件が68件(約2.1倍)に,それぞれ増加している。
 ちなみに,同様の期間の無期判決の推移を比較すると,地方裁判所では329件が771件(約2.3倍)に,高等裁判所では197件が563件(約2.9倍)に,最高裁判所では87件が368件(約4.2倍)と死刑判決同様に増加している(司法統計年報)。
② 死刑判決には,こうした厳罰主義の傾向を端的にみてとることができ,従来では死刑判決とはならなかったと思われる事案において死刑が言い渡されるものが数多く見られる。
 死刑は,1983年のいわゆる永山最高裁判決以降,殺害被害者1名の場合には,①同種無期刑前科のある者の仮釈放中,②身代金目的誘拐,③保険金目的の事案において,抑制的に言い渡されてきたが,近年はこの枠組みを超えて死刑判決が言い渡されている。
 また,殺害被害者2名の事案の場合でも,昭和60年から平成15年までに死刑を求刑された73件のうち約半分の37件において無期刑が言い渡されていたところ,2006年の光市事件最高裁判所差戻判決は,死刑を例外的な刑罰とはせず,犯罪の客観的な側面が悪質な場合は原則として死刑であり,特に酌量すべき事情がある場合に限って死刑が回避されるという考えを示し,近年では殺害被害者が2名の事案では死刑求刑事件のほとんどに死刑判決が言い渡されている。
(2) 平成11年4月14日,山口県光市の社宅アパートで発生した光市母子殺害事件については,最高裁平成24年2月20日判決によって死刑判決が確定しました。

7 死刑執行に関する政府見解
(1) 死刑執行までの期間
ア 再審請求,恩赦出願等がない限り,法務大臣は判決確定の日から6ヶ月以内に死刑執行命令を出さなければならないとする刑事訴訟法475条は訓示規定であると解されています(昭和60年3月27日の衆議院法務委員会における筧栄一法務省刑事局長の答弁参照)。
イ 再審請求や恩赦の出願などの事由,つまり,刑事訴訟法475 条2項に規定される事由がない
者の,判決確定から執行までの平均期間については,平成9年から平成18年までの10年間において死刑を執行された者についていえば,約4年3ヶ月です(平成19年12月7日の衆議院法務委員会における大野恒太郎法務省刑事局長の答弁参照)。
ウ 刑事訴訟法476条に基づき,法務大臣が死刑執行命令に署名してから5日以内に必ず死刑が執行されています(平成19年12月7日の衆議院法務委員会における大野恒太郎法務省刑事局長の答弁参照)。
(2) 法務大臣の判断で死刑の執行を停止できないこと等
ア 現行法制のもとでは、法務大臣がその判断で事実上,死刑判決の執行及び効力を停止するということは,法律上は許されません(平成8年2月27日の参議院法務委員会における長尾立子法務大臣の答弁参照)。
イ 衆議院議員保坂展人君提出拷問等禁止委員会最終見解のうち、刑事司法・刑事拘禁と入管手続などに関する質問に対する答弁書(平成19年6月15日付)には以下の記載があります。
① 裁判所は、犯罪事実の認定についてはもとより、被告人に有利な情状についても、慎重な審理を尽くした上で死刑判決を言い渡しているものと承知しており、最終的に確定した裁判について速やかにその実現を図ることは、死刑の執行の任に当たる法務大臣の重要な職責であると考えている。仮に再審の請求や恩赦の出願を死刑執行の停止事由とした場合には、死刑確定者が再審の請求や恩赦の出願を繰り返す限り、死刑の執行をなし得ず、刑事裁判を実現することは不可能になり、相当ではないと考えられる。
② 裁判所は、犯罪事実の認定についてはもとより、被告人に有利な情状についても、慎重な審理を尽くした上で死刑判決を言い渡しているものと承知しており、最終的に確定した裁判について速やかにその実現を図ることが重要であると考えており、御指摘のような制度改正(山中注:立法措置等による死刑執行の停止,恩赦制度の実効化を含めた減刑のための制度の改革を含めた制度改正)は相当でないと考えている。
(3) 死刑執行に関する情報公開
ア 衆議院議員保坂展人君提出死刑執行と法務省に関する質問に対する答弁書(平成11年1月26日付)には以下の記載があります。
 平成十年十一月十九日午後一時ごろ、法務大臣官房秘書課広報室職員が、法務省内において、新聞社等の記者に対し、「本日、死刑確定者三名に対して、死刑の執行をしました。」旨記載したメモを配布するなどして、死刑執行の事実を発表した。
 調査した範囲では、法務省が、死刑執行の当日に執行者数を発表したのは、このときが初めてである。
イ 衆議院調査局法務調査室が作成した,死刑制度に関する資料(平成20年6月。PDFで108頁あります。)11頁には以下の記載があります。
 平成19 年12 月7日、法務省は、3人の死刑を執行するとともに、死刑の執行を受けた者の氏名と犯罪事実、執行場所を初めて公式に発表した。同省は、初めて氏名などを公表した理由について、「事件の被害者をはじめとする国民から情報公開をすべきだとの要請が高まるなか、死刑が適正に執行されていることを国民に理解してもらうために公開が重要と考え、鳩山法務大臣が今回の公表を決断した」と説明している。
(4) 死刑執行命令を発する際の考慮要素等
 参議院議員福島みずほ君提出死刑制度における手続き的問題に関する質問に対する答弁書(平成30年7月27日付)には以下の記載があります。
① 個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたいが、一般論として申し上げれば、死刑の執行に際しては、法務大臣は、個々の事案につき関係記録を十分に精査し、刑の執行停止、再審又は非常上告の事由の有無、恩赦を相当とする情状の有無等について慎重に検討し、これらの事由等がないと認めた場合に、初めて死刑執行命令を発することとしている。
   また、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)上、再審請求中であることは、死刑の執行停止事由とされていないところ、法務大臣は、死刑執行命令を発するに当たっては、再審請求がなされていることを十分参酌することとしているが、再審請求を行っているから死刑執行をしないという考えはとっていない。
   戦後、再審請求中に死刑の執行が行われた事例はあるが、個々具体的な事項については、答弁を差し控えたい。
② 刑事訴訟法第四百七十九条第一項は、「死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によつて執行を停止する。」と規定しているところ、一般に、その趣旨については、心神喪失状態にある者に対する死刑の執行は、刑の執行としての意味を有しないからであるなどとされ、同項の「心神喪失の状態」については、死刑の執行に際して自己の生命が裁判に基づいて絶たれることの認識能力のない状態をいうものと解されている。
   また、一般論として申し上げれば、死刑確定者の精神状態については、法務省の関係部局において、常に注意が払われ、必要に応じて、医師の専門的見地からの診療等を受けさせるなど、慎重な配慮がなされており、法務大臣は、このような専門的な見地からの判断をも踏まえて、心神喪失の状態にあること等の執行停止の事由の有無を判断しており、この点に関し、新たな仕組みが必要とは考えていない。
③ 個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたいが、一般的な取扱いとして、死刑確定者本人に対する執行の告知は、当日、刑事施設の長が、執行に先立ち行っている。

8 死刑囚及び無期懲役受刑者,並びに無期刑仮釈放者の平均受刑在所期間
(1) Crime Info HP「審級別死刑確定数および無期懲役確定数」に,昭和32年以降の死刑確定人員及び無期懲役確定人員が載っています。
(2)ア 法務省HPの「検察統計統計表」の年報の表63「審級別 確定裁判を受けた裁判の結果別人員」に,直近5年の死刑,無期,実刑及び執行猶予の人数等が載っています。
イ 平成29年の死刑は2人,無期懲役は18人であり,平成30年の死刑は2人,無期懲役は25人です。
(3) Wikipediaに以下の記事が載っています。
① 日本における死刑囚の一覧
② 日本における収監中の死刑囚の一覧
③ 日本における被死刑執行者の一覧
④ 日本において獄死もしくは恩赦された死刑囚の一覧
→ 戦後,恩赦によって死刑から無期懲役に減刑されたのは6人であり,最後の例は昭和50年6月17日の恩赦です。
⑤ 女性死刑囚
⑥ 少年死刑囚
→ 令和元年9月現在,平成時代に発生した事件に関する少年死刑囚は4人です。
(4) 無期懲役が確定し,矯正施設において服役している者の数は,平成12年8月1日現在,904人です(平成12年10月3日付の「衆議院議員保坂展人君提出死刑と無期懲役の格差に関する質問に対する答弁書」参照)。
(5)ア 法務省HPの「無期刑受刑者の仮釈放の運用状況等について」に掲載されている「無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況について」(平成30年11月)によれば,例えば,以下のことが分かります。
① 平成29年末時点で刑事施設に在所中の無期刑受刑者(年末在所無期刑者)は,1795人です。
② 平成29年の無期刑仮釈放者は11人であるのに対し,死亡した無期刑受刑者は30人です。
③ 平成29年の無期刑仮釈放者の平均受刑在所期間は33年2月です。
④ 平成29年末時点において,40年以上50年未満の間,在所している受刑者は34人であり,50年以上の間,在所している受刑者は11人です。
⑤ 平成22年の仮釈放の不許可事例として,被害者数3人の強盗致死傷及び放火により60年10月間,服役していた70歳代の受刑者のケースがあります(逆算すれば,判決確定時に19歳程度であったこととなります。)。
イ 刑法28条からすれば,無期刑受刑者は10年を経過した時点で仮釈放される可能性があるものの,現実の運用はこれとは全く異なります。
(6) 「マル特無期事件」に指定された受刑者の場合,終身又はそれに近い期間,服役させられることとなる点で,事実上の終身刑となっています(特に犯情悪質等の無期懲役刑確定者に対する刑の執行指揮及びそれらの者の仮出獄に対する検察官の意見をより適正にする方策について(平成10年6月18日付の最高検察庁の次長検事依命通達)」(「最高検マル特無期通達」などといいます。)参照)
(7) 平成29年簡易生命表によれば,日本人男性の平均寿命は81.09歳であり,日本人女性の平均寿命は87.26歳です(公益財団法人生命保険文化センターHP「日本人の平均寿命はどれくらい?」参照)。
(8) 日弁連HPに,「無期刑受刑者に対する仮釈放制度の改善を求める意見書」(平成22年12月17日付)が載っています。

9 関連記事
   以下の記事も参照してください。
① 日弁連の歴代会長及び事務総長
② 死刑囚及び無期刑の受刑者に対する恩赦による減刑
③ マル特無期事件
④ 恩赦の件数及び無期刑受刑者の仮釈放
 恩赦に関する記事の一覧

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