メインコンテンツへスキップ
       

青色申告の承認は事業承継できるか―申請・みなし承認・申告書の受理・信義則(AI作成)

第1 結論

所得税の青色申告の承認は,店舗,屋号又は帳簿ではなく,承認を受けた個人に帰属する一身専属的な地位である。
相続,営業譲渡その他の事業承継により同じ事業を続けても,後継者は自分の名義で青色申告承認申請書を期限内に提出しなければならない。

青色申告書として作成した確定申告書が受理されたこと,申告税額が収納されたこと,青色申告用紙が送付されたこと又は数年間指摘されなかったことは,承認申請や承認の代わりにならない。
申請をした上で法定期間内に却下通知がなければ,所得税法147条のみなし承認を検討する。

第2 青色申告制度と承認の性質

1 制度の目的

青色申告制度は,正確な帳簿の記帳・保存を推進し,申告納税制度の下で適正な課税を実現するための制度である。
承認を受けて青色申告書を提出する納税者には,青色申告特別控除,青色事業専従者給与,純損失の繰越控除その他の特典が認められる。

最高裁昭和62年10月30日第三小法廷判決は,青色申告の承認を,租税優遇を伴う特別の申告書で申告できる法的地位又は資格を納税者に付与する設権的処分と説明した。

2 一身専属であること

所得税法151条2項は,承認を受けた業務の全部を廃止した場合,その廃止の日の属する年分の翌年分以後,承認の効力を失うと定める。
承認は,承認を受けた者が対象業務を継続する限り存続するものであり,別人である後継者へ移転しない。

法人が事業を引き継ぐ場合も,個人の所得税の承認が法人税の青色申告承認へ転化することはない。
個人と法人は別の納税義務者であり,法人は法人税法上の手続を行う。

第3 期限内に後継者自身が申請する

1 一般の新規開業・営業譲受け

青色申告をしようとする年の3月15日までに,後継者の納税地を所轄する税務署長へ申請書を提出する。
その年の1月16日以後に新たに業務を開始した場合は,業務開始日から2か月以内である。

営業譲受けが「新たに業務を開始した場合」に当たるかは,後継者が従前から同種の業務を営んでいたかも含めて確認する。
最も早い可能性のある期限で管理し,期限の解釈だけに依存して提出を遅らせない方が安全である。

2 青色申告者から相続した場合

国税庁は,被相続人が青色申告者であった場合の相続人の申請期限を,死亡日が1月1日から8月31日までなら死亡日から4か月以内,9月1日から10月31日までならその年の12月31日,11月1日から12月31日までなら翌年2月15日としている。

共同相続人が複数いて誰が事業を承継するか未確定でも,期限は進行する。
事業を承継する可能性のある相続人は,遺産分割の成立を待たずに申請要否を確認する必要がある。

3 被相続人が白色申告者であった場合

被相続人が青色申告者でない場合,その年の1月16日以後に相続人が新たに業務を開始したときは,原則として開始日から2か月以内である。
被相続人の申告区分ではなく,相続人自身が青色申告の要件を満たし期限内に申請したかを確認する。

第4 みなし承認

所得税法147条は,申請書を提出した者に対し,所定の日までに承認又は却下の処分がなかったときは,その日に承認があったものとみなす。
国税庁は,原則として青色申告をしようとする年の12月31日まで,その年の11月1日以後に新たに業務を開始した場合は翌年2月15日までに通知がなければ,承認されたものとみなされると案内している。

みなし承認には,前提として適式な申請書の期限内提出が必要である。
青色の確定申告書を提出しただけの場合に,その申告書を承認申請書とみなす制度ではない。

第5 申告書の受理と信義則

1 受理は内容の是認ではない

最高裁昭和62年10月30日判決は,税務署長による申告書の受理及び申告税額の収納は,申告内容を是認することを意味しないとした。
青色申告用紙の送付又は承認の有無を税務署が確認しなかったことも,承認の公的見解の表示とはいえないとした。

したがって,無申請のまま青色申告書を数年提出し,税務署から直ちに指摘されなかったとしても,白色申告を前提とする更正処分を当然に妨げない。

2 租税法上の信義則は限定的である

同判決は,租税法規に適合する課税処分を信義則で取り消し得るとしても,納税者間の平等・公平を犠牲にしてなお信頼保護を要する特別の事情が必要であるとした。
少なくとも,税務官庁の公的見解の表示,それを信頼した行動,反対の処分による経済的不利益及び納税者に帰責事由がないことを検討する必要がある。

通常の受理,収納,申告書用紙の送付又は沈黙だけでは,この要件を満たしにくい。

第6 事業承継時の確認資料

①被相続人又は譲渡人の青色申告承認状況と対象業務
②承継日,開業日及び申請期限
③後継者名義の申請書控え,e-Tax受信通知又は収受日を示す資料
④却下通知又は承認通知の有無
⑤帳簿組織,勘定科目,棚卸資産及び固定資産の引継ぎ
⑥青色事業専従者給与,消費税及び源泉所得税の別手続

屋号の継続,従業員の継続雇用又は同じ会計ソフトの利用は,事業承継の事実を示す資料にはなるが,青色申告承認の移転を示す資料ではない。

第7 出典・関連記事

①e-Gov法令検索「所得税法」143条から152条
②国税庁「No.2070 青色申告制度」
③国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
④国税庁「法第143条《青色申告》関係」
⑤最高裁昭和62年10月30日第三小法廷判決
⑥開業届・青色申告承認申請書・青色事業専従者給与届―違いと期限(AI作成)