メインコンテンツへスキップ
       

小説の登場人物をTシャツ・SNSスタンプに使えるか――キャラクター,翻案権及び二次的著作物の新規部分(AI作成)

第1 結論

小説の登場人物について、性格、役割、口癖、人物関係等を抽象化した「キャラクター」自体は、直ちに独立の著作物になるわけではない。もっとも、小説の具体的な文章表現、漫画の絵、映画の映像・台詞等をTシャツやSNSスタンプに再製すれば、複製権、翻案権、公衆送信権等の侵害になり得る。

小説を原著作物として漫画・映画が二次的著作物に当たる場合、原著作者は著作権法28条により、二次的著作物の利用について二次的著作物の著作者と同一の種類の権利を有する。二次的著作物で新たに付加された外見や場面だから原著作者の権利が当然に及ばない、と単純に切り分けることはできない。

第2 抽象的なキャラクターと具体的表現を分ける

最高裁平成9年7月17日判決(ポパイ事件)は、漫画の登場人物のいわゆるキャラクターは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、それ自体は思想又は感情を創作的に表現したものとはいえないとした。

したがって、「無口な渡世人」「眼帯をした海賊」「魔法学校に通う少年」といった抽象的設定だけを利用することと、特定作品の絵、文章、衣装、構図、台詞及び組合せを再現することは区別する。名前だけの利用も著作権侵害にならない場合が多いが、ロゴとしての図案、商標、不正競争防止法上の商品等表示その他の権利は別に検討する。

著作権侵害では、アイデア又は抽象的特徴の共通ではなく、既存作品の創作的表現に依拠し、その表現上の本質的特徴を直接感得できるかが中心となる。

第3 小説から映画・漫画になった場合

著作権法2条1項11号は、二次的著作物を、著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化その他翻案することにより創作した著作物と定義する。小説を漫画化・映画化した作品は、原作の創作的表現を維持しつつ新たな表現を加えた二次的著作物になり得る。

映画監督、脚本家、美術担当者、漫画家等は、新たに創作した表現について権利を取得し得る。他方、二次的著作物の創作・利用には原著作者の権利処理も必要である。著作権法28条は、二次的著作物の原著作物の著作者が、その二次的著作物の利用について、二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有すると定める。

したがって、映画の場面画像を商品化する場合、映画製作者側の権利だけでなく、原作小説の著作者の28条上の権利も問題になり得る。

第4 キャンディ・キャンディ事件と28条

最高裁平成13年10月25日判決(キャンディ・キャンディ事件)は、連載漫画が原作原稿を原著作物とする二次的著作物であることを前提に、原作者が著作権法28条により、その漫画の利用について漫画家と同一の種類の権利を有するとした。

この判決の重要点は、漫画の絵が漫画家の創作した新たな表現であっても、二次的著作物である漫画の利用について、原作者の28条上の権利を否定しなかったことにある。原作文章に登場人物の顔の細部が書かれていないというだけで、漫画の商品化を原作者の権利から切り離すことはできない。

その後の裁判例でも、小説を原作とする映像作品で付加された外見的特徴について、映像作品が原作の二次的著作物である以上、原作者の28条上の権利が問題になるとした例がある。

第5 「二次的著作物の新規部分」なら自由か

二次的著作物の著作者が新たに加えた創作的表現について著作権を取得することは正しい。しかし、そこから直ちに、「新規部分だけを利用すれば原著作者の28条上の権利は及ばない」という一般原則を導くことはできない。

28条は、原著作者に二次的著作物の利用について同一種類の権利を与える。キャンディ・キャンディ事件のように、二次的著作物として一体的に形成された人物画を利用する場合、原作に同じ絵が存在しないという理由だけでは原著作者の権利処理を省けない。

他方、後の作者が既存作品の具体的表現に依拠せず、抽象的な人物類型又は題材だけから独立に創作した別作品であれば、そもそも原作品の翻案又は二次的著作物の利用に当たらない余地がある。また、二次的著作物から物理的・観念的に切り離された別個独立の著作物の利用と評価できる場合も、個別検討を要する。

境界は「新しいか古いか」というラベルではなく、①対象物がどの作品の表現か、②原著作物の創作的表現に依拠しているか、③二次的著作物として利用しているか、④別個独立の作品と評価できるかによって判断する。

第6 Tシャツ・SNSスタンプ・場面画像の検討

利用例主な著作権上の問題確認点
漫画の人物画をTシャツに印刷・販売複製権、譲渡権。原作があると28条も問題になる。漫画家・出版社側だけでなく原作者側の権利処理を確認する。
映画の最後の場面を画像化映画の複製、場面美術・写真、28条。原作にない結末・人物でも、映画が二次的著作物として利用されるかを確認する。
俳優の姿を基にSNSスタンプを制作映画・写真・美術の翻案又は複製、公衆送信。俳優本人の肖像・パブリシティ、契約上の商品化権も確認する。
名前と抽象的設定だけを使い独自の絵を描く著作権侵害でない余地がある。既存の具体的な絵・衣装・構図・台詞を再現していないか、商標等を確認する。

SNSスタンプは、画像データの作成時に複製権、プラットフォームへの登録・配信時に公衆送信権が問題になる。販売価格が無料であっても、著作権侵害が当然に否定されるわけではない。

第7 著作権以外の権利

商品化では、著作権だけでなく、商標権、不正競争防止法、意匠権、契約上の商品化権、俳優・著名人の肖像権又はパブリシティ権を確認する。作品名・人物名・ロゴが商標登録されている場合や、広く知られた商品等表示になっている場合は、抽象的キャラクターが著作物でないことだけでは利用できない。

また、著作者人格権の同一性保持権、氏名表示権及び公表権も、改変の態様、表示及び未公表素材の利用によって問題になる。

第8 商品化前のチェックリスト

①利用する具体的な画像、文章、台詞、名前及びロゴを確定する。
②原著作物と二次的著作物の関係を権利図にする。
③原作者、脚本家、漫画家、映画製作者、写真家、美術担当者等の権利帰属を契約で確認する。
④利用行為を複製、譲渡、公衆送信、翻案等に分ける。
⑤28条により原著作者の権利処理が必要かを確認する。
⑥人物名・ロゴの商標登録と周知性を調査する。
⑦俳優等の肖像・パブリシティ及び出演契約の商品化条項を確認する。
⑧許諾地域、媒体、数量、期間、改変、監修及び再許諾を契約に記載する。

第9 出典・確認範囲

①e-Gov法令検索「著作権法」2条、21条、23条、26条の2、27条、28条及び112条。
②最高裁平成9年7月17日第一小法廷判決(平成4年(オ)第1443号、ポパイ事件)。
③最高裁平成13年10月25日第一小法廷判決(平成12年(受)第798号、キャンディ・キャンディ事件)。
④東京地裁令和5年判決(小説の登場人物と映像作品に関する事件)。
⑤東京地裁令和4年判決(木枯し紋次郎事件)。

確認日:令和8年9月28日。判例秘書による網羅検索は実施していない。個別商品では原作契約、映画化契約、出演契約、商品化契約及び商標登録を追加確認する必要がある。