第1 この記事の結論
会社が役員に社宅を貸与する場合,役員から毎月「賃貸料相当額」以上の家賃を受け取っていれば,原則として社宅による経済的利益は給与として課税されない。
計算の入口は,建物の法定耐用年数と床面積で小規模住宅に当たるかを判定することである。法定耐用年数が30年以下の建物は132平方メートル以下,30年を超える建物は99平方メートル以下が小規模住宅の基準である。区分所有建物では,共用部分の床面積を按分して専用部分に加えた床面積で判定する。
ただし,小規模住宅に当たるか否かとは別に,社会通念上一般に貸与される社宅とは認められない豪華社宅に当たる場合は通常の算式を使わず,通常支払うべき使用料相当額による。
第2 判定の順序
役員社宅の税務上の取扱いは,次の順序で確認すると整理しやすい。
① 会社が所有又は賃借した住宅を役員に貸与しているか。
② 豪華社宅に該当しないか。
③ 建物の法定耐用年数が30年以下か,30年を超えるか。
④ 共用部分を按分した後の床面積が132平方メートル又は99平方メートル以下か。
⑤ 小規模住宅又はそれ以外の住宅に対応する賃貸料相当額を計算する。
⑥ 役員から実際に受け取る家賃との差額を確認する。
入居者が家主と直接契約し,会社がその家賃を負担する場合又は会社が現金で住宅手当を支給する場合は,社宅の貸与とは扱われず,会社負担額は給与として課税される。
第3 小規模住宅の99㎡・132㎡基準
1 法定耐用年数が30年以下の建物
法定耐用年数が30年以下の建物は,床面積が132平方メートル以下であれば小規模住宅に該当する。典型的には木造住宅等が問題となるが,名称又は構造の印象だけで決めず,対象建物の法定耐用年数を確認する必要がある。
2 法定耐用年数が30年を超える建物
法定耐用年数が30年を超える建物は,床面積が99平方メートル以下であれば小規模住宅に該当する。鉄筋コンクリート造のマンション等では,この基準が問題となりやすい。
3 マンションの共用部分
区分所有建物では,専有部分の床面積だけではなく,共用部分の床面積を各戸に按分し,専有部分に加えた床面積によって99平方メートル又は132平方メートルの基準を判定する。
したがって,物件資料に表示された専有面積が99平方メートル以下であっても,共用部分の按分後には基準を超える場合がある。賃貸借契約書及び登記事項証明書だけでなく,共用部分の床面積及び按分方法を確認すべきである。
第4 小規模住宅の賃貸料相当額
小規模住宅の1か月当たりの賃貸料相当額は,次の3つの合計額である。
① その年度の建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
② 12円×建物の総床面積(平方メートル)÷3.3平方メートル
③ その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%
計算に用いるのは固定資産税評価額と常に同じとは限らず,「固定資産税の課税標準額」である。会社が物件を賃借している場合でも,計算に必要な課税標準額を家主等から入手する必要が生じる。
第5 小規模住宅以外の賃貸料相当額
1 会社所有の社宅
会社所有の社宅では,次の合計額の12分の1が1か月当たりの賃貸料相当額となる。
① 建物の固定資産税の課税標準額×12%(法定耐用年数が30年を超える建物は10%)
② 敷地の固定資産税の課税標準額×6%
2 会社が借りた住宅を役員に貸与する場合
会社が他から借りた住宅を役員に貸与する場合は,①会社が家主に支払う家賃の50%と,②会社所有の場合の算式で計算した賃貸料相当額のうち,いずれか多い金額が賃貸料相当額となる。
したがって,「役員負担は会社家賃の50%にすればよい」と一律に考えるのは正確ではない。固定資産税の課税標準額を用いた金額の方が大きい場合には,そちらを受け取る必要がある。
第6 豪華社宅
豪華社宅に該当する場合,小規模住宅又はそれ以外の住宅の算式は適用されず,通常支払うべき使用料相当額が賃貸料相当額となる。
国税庁は,床面積が240平方メートルを超える住宅について,取得価額,会社が支払う賃料,内外装の状況その他の要素を総合して豪華社宅かを判定するとしている。240平方メートル以下でも,プール等の一般的な貸与住宅にはない設備又は役員個人の嗜好を著しく反映した設備がある場合には,豪華社宅に該当し得る。
240平方メートルは機械的な安全基準ではない。床面積だけでなく,立地,設備,取得価額及び市場賃料を含む具体的事情を保存しておく必要がある。
第7 給与課税される範囲
役員に無償で貸与した場合,賃貸料相当額の全額が給与として課税される。役員から受け取る家賃が賃貸料相当額より低い場合は,賃貸料相当額と実際の家賃との差額が給与として課税される。
役員から受け取る金額を毎月の賃貸料相当額以上にするだけでなく,固定資産税の課税標準額又は会社家賃が変わった場合には再計算する。契約書,物件図面,耐用年数,共用部分の按分資料,課税標準額及び計算表を同じ年度ごとに保存すると,税務調査時の説明が容易になる。
第8 実務上のチェックリスト
① 会社名義で住宅を所有又は賃借しているか。
② 対象役員,入居日,物件及び会社負担額を社内決裁に残したか。
③ 建物の法定耐用年数を確認したか。
④ 区分所有建物の共用部分を按分したか。
⑤ 99平方メートル又は132平方メートルの基準を正しく適用したか。
⑥ 豪華社宅の可能性を別途検討したか。
⑦ 最新年度の固定資産税の課税標準額を取得したか。
⑧ 会社家賃の50%と算式額の多い方を比較したか。
⑨ 役員から毎月実際に家賃を受け取っているか。
⑩ 年度又は契約条件が変わった時点で再計算したか。
第9 出典・根拠法令
① 国税庁タックスアンサーNo.2600「役員に社宅などを貸したとき」
② 所得税法36条
③ 所得税法施行令84条の2
④ 所得税基本通達36-15及び36-40から36-41まで