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ストックオプションの所得税――税制適格・非適格,付与・行使・売却,所得区分及び源泉徴収(AI作成)

第1 結論

ストックオプションの所得税は,①権利の付与,②権利行使による株式取得及び③取得株式の売却を分け,さらに税制適格か税制非適格かを確認する。

税制非適格の場合は,通常,権利行使時の経済的利益と売却時の値上がり益が別々に課税される。雇用契約又はこれに類する関係に基因して付与された権利の行使益は,原則として給与所得である。税制適格の場合は,一定の要件の下で行使時課税が繰り延べられ,売却時に,権利行使価額から売却価額までの利益が株式譲渡所得として課税される。

名称に「税制適格」と書かれているだけでは足りない。付与決議,付与契約,権利行使時期・金額,株式の管理及び売却の各要件を資料で確認する必要がある。

第2 付与・行使・売却を分ける

時点確認する事実課税関係の基本
付与付与決議,付与契約,対象者,行使価額,行使期間,譲渡制限一般に,無償付与だけでは直ちに課税関係が生じない
権利行使行使日,取得株数,行使価額,行使時の株価,適格要件非適格は行使益に課税。適格は要件を満たせば課税を繰延べ
売却売却日,売却価額,取得費,手数料,上場・非上場の別株式等の譲渡所得等として申告分離課税が基本

第3 税制非適格ストックオプション

国税庁タックスアンサーNo.1543は,税制非適格ストックオプションについて,権利行使時及び取得株式の譲渡時に課税されると説明している。

権利行使時の経済的利益は,おおむね「行使時の株価-権利行使価額」に取得株数を乗じて計算する。雇用関係又はこれに類する関係に基因して付与された場合は原則として給与所得となる。職務の遂行と関連しない利益と認められる場合,事業に関連して供与された場合その他の事実関係によって,雑所得又は事業所得となることがある。

取得株式を後に売却したときは,売却価額と,権利行使時の時価を基礎とする取得価額との差額が株式等の譲渡所得等となる。行使益と売却益を重ねて課税しないため,権利行使時の課税資料を保存することが重要である。

第4 税制適格ストックオプション

租税特別措置法29条の2所定の要件を満たす場合は,権利行使による経済的利益への課税が売却時まで繰り延べられる。国税庁タックスアンサーNo.1540によれば,売却時には,払込価額(権利行使価額)を取得価額として,上場株式等又は一般株式等に係る譲渡所得等を計算する。

適格性の確認では,対象者と発行会社等との関係,付与決議及び付与契約,権利行使期間,年間の権利行使価額,権利の譲渡禁止,行使価額と契約時株価の関係,取得株式の管理等を確認する。制度改正により行使期間,年間上限及び株式管理の要件が変更されているため,付与時と行使時の法令を取り違えない。

国税庁の質疑事例「ストックオプション契約の内容を税制非適格から税制適格に変更した場合」は,当初の付与契約が適格要件を満たさない場合,権利行使前に契約を変更しても適格制度を適用できないとしている。後から名称又は一部条項を整えるだけでは足りない。

第5 所得区分と源泉徴収

所得区分は,付与者,対象者の地位,付与目的,職務との関係及び退職後の事情を基に判断する。従業員・役員が職務の対価として得る行使益は給与所得が基本であるが,退職後行使であっても直ちに退職所得又は雑所得になるわけではない。

給与所得に当たる行使益について,誰がいつ源泉徴収義務を負うかは,発行会社,勤務先,親会社・子会社,国内支払又は国外支払,居住者又は非居住者の別によって異なる。権利行使に現金支給が伴わない場合でも,源泉徴収義務がなくなるとは限らないため,行使前に税額と納付方法を確認する。

第6 実務で集める資料

①株主総会・取締役会の付与決議。
②新株予約権の募集事項及び付与契約書。
③行使請求書,払込記録,取得株数及び行使日。
④付与時・行使時・売却時の株価算定資料。
⑤証券会社,信託又は発行会社による株式管理記録。
⑥給与明細,源泉徴収票,法定調書及び確定申告書。
⑦退職日,国内外の勤務期間,出向・転籍及び居住者区分の資料。
⑧株式売買報告書及び手数料明細。

会社側は,付与時に適格性を設計するだけでなく,行使時に要件充足を再確認し,権利者へ必要な税務情報を渡す。権利者側は,契約書に記載された「適格」の表示だけで申告せず,会社の説明資料と実際の行使・管理記録を照合する。

第7 国外勤務・退職後行使等の注意点

付与から行使までの間に国外勤務がある場合は,行使益のうち国内勤務に対応する部分が国内源泉所得となるか,租税条約の適用があるかを確認する。国税庁の「ストックオプションに係る国内源泉所得の範囲」は,付与時から行使時までの期間に占める日本勤務期間を基礎に国内源泉所得を計算した事例を示している。

退職後行使,M&Aに伴う条件変更,株式移転,発行会社による買戻し又は国外転出では,一般的な三段階整理だけでは足りない。付与契約の変更内容,行使時の身分,株式の管理・移転及び居住地を個別に確認する。

第8 出典

e-Gov法令検索「租税特別措置法」29条の2。
国税庁「No.1543 税制非適格ストック・オプションに係る課税関係について」(令和8年4月1日現在法令等)。
国税庁「No.1540 ストック・オプション税制の適用を受けて取得した株式を譲渡した場合」(令和8年4月1日現在法令等)。
国税庁「No.1541 ストック・オプション税制の適用を受けて取得した株式の返還又は移転があった場合」(令和8年4月1日現在法令等)。
国税庁「ストックオプション契約の内容を税制非適格から税制適格に変更した場合」
国税庁「ストックオプションに係る国内源泉所得の範囲」

確認日:令和8年9月23日。本記事は所得税の基本構造を扱う。法人税,会計処理,会社法上の発行手続及び個別の株価算定は別途確認を要する。判例秘書は本記事の作成に当たって検索していない。