メインコンテンツへスキップ
       

事業譲渡で残存債権者は譲受会社に請求できるか―会社法22条・23条・23条の2とブランド続用(AI作成)

第1 事業譲渡では債務が当然に移らない

事業譲渡では、合併や会社分割と異なり、譲渡対象となる資産、契約及び債務を当事者間の契約で個別に定める。譲渡会社と譲受会社が「旧債務は譲渡会社に残す」と合意しただけでは、譲受会社が常に債権者への責任を免れるわけではない。

残された債権者は、①商号続用責任、②債務引受広告、③詐害的事業譲渡に関する会社法23条の2、④個別の債務引受契約、⑤民法上の詐害行為取消し等を分けて検討する。

第2 商号を続用した譲受会社の責任

会社法22条1項は、事業を譲り受けた会社が譲渡会社の商号を引き続き使用するとき、譲受会社も譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負うと定めている。

事業譲渡契約で引き受けないと定めた簿外債務や紛争債務についても、同項の要件を満たせば対外責任が問題となる。契約上の債務承継の範囲と、会社法22条による法定責任を分ける必要がある。

ただし、譲受会社が事業譲渡後遅滞なく、旧債務を負わない旨を本店所在地で登記した場合、又は譲渡会社及び譲受会社から債権者へその旨の通知をした場合には、会社法22条2項の例外が問題となる。通知の相手、到達日及び内容を保存する。

第3 ブランド・屋号を続用した場合

最高裁平成16年2月20日第二小法廷判決は、ゴルフ場の営業譲渡において、商号そのものではなくゴルフクラブの名称が営業主体を表示する機能を果たしていた場合に、旧商法26条1項を類推適用した。

この判断から、会社の商号が異なっても、店舗名、ブランド、ウェブサイト、電話番号、看板、会員制度及び顧客向け表示の連続性によって、同じ営業主体が事業を続けているとの外観が生じる場合には、会社法22条1項の類推適用が問題となり得る。

名称を一部変更したかだけで結論を出さず、その表示が取引先・顧客にとって営業主体を識別する機能を果たしていたか、事業主体の変更と債務不承継が明確に告知されたかを確認する。

第4 債務引受けを広告した場合

会社法23条1項は、譲受会社が譲渡会社の商号を続用しない場合でも、譲渡会社の事業によって生じた債務を引き受ける旨を広告したとき、債権者が譲受会社へ弁済を請求できると定めている。

広告に当たるかは、ウェブサイト、店頭掲示、顧客通知、プレスリリース等の具体的な表現によって判断する。「事業を承継しました」という表示と「旧会社の債務をすべて引き受けました」という表示は同じではないため、表示内容を画像又はPDFで保存する。

第5 残存債権者を害する事業譲渡

会社法23条の2第1項は、譲渡会社が残存債権者を害することを知って事業を譲渡した場合、残存債権者が譲受会社に対し、承継した財産の価額を限度として債務の履行を請求できると定めている。ただし、譲受会社が効力発生時に残存債権者を害することを知らなかった場合は除かれる。

重要なのは、事業譲渡後の譲渡会社に、残存債権者への弁済に足りる財産が残ったかである。譲渡対象資産、対価、対価の支払先、債務の選別、譲渡前後の貸借対照表及び資金移動を調べる。

同条2項は、譲渡会社が害意をもって譲渡したことを知った時から2年以内に請求又は請求の予告をしない場合、また事業譲渡の効力発生日から10年を経過した場合に責任が消滅すると定めている。知った時と効力発生日の双方を記録する。

第6 債権者側の調査と請求設計

債権者は、次の資料を早期に収集する。

① 元の契約書、請求書及び未払残高
② 譲渡会社・譲受会社の登記事項証明書
③ 事業譲渡契約、資産・債務一覧及び譲渡対価
④ 事業譲渡前後の決算書、預金及び主要資産
⑤ 商号、屋号、店舗、電話番号、ウェブサイト及びSNSの表示
⑥ 顧客・取引先への承継通知
⑦ 譲受会社の支配者、役員及び譲渡交渉時の認識

商号続用、広告及び会社法23条の2は要件と責任範囲が異なるため、請求原因を併記するときも事実を混ぜない。仮差押え等の保全が必要か、譲渡会社に対する本案請求及び倒産手続への届出も別に検討する。

第7 譲受会社側の予防策

譲受会社は、法務・財務デュー・ディリジェンスにより、係争債務、未払債務、保証、顧客預り金、労働債務及び税務債務を確認する。契約上の債務除外だけに依存せず、会社法22条の免責登記又は通知、表示変更、債権者対応及び補償条項を整える。

事業価値に比して著しく低い対価、譲渡会社に資産が残らない設計又は特定債権者だけを除外する設計は、会社法23条の2の問題を生じさせる。価格算定資料、取締役会資料、債務選別の理由及び弁済原資を保存する。

第8 法令・裁判例

① e-Gov法令検索「会社法」22条、23条及び23条の2。
② 最高裁平成16年2月20日第二小法廷判決、平成13年(受)第1267号、民集58巻2号367頁。
③ 法務省「会社法の一部を改正する法律案」。

本記事は令和8年9月23日現在の法令及び公開裁判例に基づく。個別の事業譲渡では、効力発生日、債務承継条項、表示及び譲渡後の弁済原資を確認する必要がある。