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日米地位協定と沖縄―米軍基地・事件事故・PFASと改定要求を解説(AI作成)

日米地位協定は,沖縄だけを対象とする協定ではありません。しかし,米軍専用施設・区域の面積が沖縄に集中しているため,基地の使用,事件事故の捜査,被害者の救済,環境調査といった制度が,沖縄の住民生活と密接に関わります。
本記事では,協定の規定と政府の説明を確認した上で,沖縄県が求める見直しの内容を整理します。県の要請は,現在そのまま行使できる権利を示したものではありません。また,刑事裁判権と身柄の確保,立入りの申請と許可・実施は,それぞれ区別して読む必要があります。

第1 日米地位協定と沖縄の関係

1 基地の使用と米軍関係者の地位を定める協定

日米地位協定は,日米安全保障条約6条に基づく施設・区域の使用や,日本における米軍関係者の地位を定めています。基地の管理だけでなく,刑事裁判権,損害賠償,出入国,課税などを扱うため,「基地内の問題」に限られる制度ではありません。
外務省は,米軍施設・区域も日本の領域であり,米国の領土ではないと説明しています。したがって,「沖縄の米軍基地は米国領である」という理解は適切ではありません。一方,日本の領域であることと,日本の行政機関が基地内で自由に調査・立入りを行えることは,同じではありません。
根拠は,外務省「日米地位協定Q&A」(問1・問4・問5)(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/qa.html)です。条文と制度全体は,日米地位協定の内容をわかりやすく解説で説明しています。

2 「沖縄に70.3%」の分母と基準日

沖縄県の令和8年4月「沖縄の米軍及び自衛隊基地(統計資料集)」1頁によると,令和7年1月1日現在,全国の米軍専用施設・区域の面積のうち,沖縄県にあるものが70.3%を占めます。これは,基地の数や沖縄県の面積に対する割合ではありません。

比較する対象全国沖縄県沖縄県の割合
米軍専用施設・区域の面積262,624千㎡184,542千㎡70.3%
米軍専用施設・区域の施設数76施設31施設40.8%
共同使用を含む米軍施設・区域の面積980,099千㎡186,680千㎡19.0%

同じ「米軍基地の割合」でも,専用施設に限るか,共同使用を含めるかで数値が変わります。また,資料の公表時点は令和8年4月ですが,表の数値の基準日は令和7年1月1日です。
出典は,沖縄県「沖縄の米軍及び自衛隊基地(統計資料集)」1頁(https://www.pref.okinawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/039/499/r8_okinawa_kichi_toukeisiryousyu1.pdf)です。施設の法的根拠や全国との関係は,在日米軍基地の法的根拠,施設数,日米地位協定及び主要裁判例を参照してください。

第2 事件事故と刑事裁判権・起訴前の身柄

1 日本で裁判できるかと,誰が身柄を確保するか

日米地位協定17条は,日本の当局の裁判権も認めています。日米双方の裁判権が競合する場合,米軍関係者の公務執行中の犯罪などについては米側が第一次の権利を持ち,それ以外の犯罪については日本側が第一次の権利を持つという区分があります。公務外であっても,専ら米国の財産・安全や所定の米軍関係者の身体・財産だけに対する犯罪などの区分を確認する必要があります。
したがって,「米軍人の犯罪はすべて日本で裁判できない」という説明も,「沖縄で起きた事件ならすべて日本が優先する」という説明も正確ではありません。
身柄は,さらに別の問題です。17条5項(c)が米側の起訴前拘禁を定めるのは,日本が裁判権を行使すべき軍人・軍属の被疑者で,その身柄が米側にある場合です。外務省Q&Aは,日本の警察が公務外の事件で現行犯逮捕等をした場合,日本側が身柄を確保し続けると説明しています。
根拠は,協定17条(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/kyoutei/pdfs/17.pdf)及び外務省Q&A問9(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/qa.html)です。

2 1995年の運用改善と沖縄県の要請の違い

平成7年10月の日米合同委員会合意は,殺人・強姦という凶悪な犯罪の特定の場合に,日本が求める起訴前の身柄移転を米側が好意的に考慮することなどを定めています。すべての事件で,要請すれば直ちに引渡しを受けられるという規定ではありません。
これに対し,沖縄県は,日本側から起訴前の身柄移転の要請がある場合,速やかに応じる旨を協定に明記するよう求めています。現在の運用改善と,県が求める条文上の保障の違いは,改定論を読む際の重要な点です。
出典は,外務省「刑事裁判手続に係る日米合同委員会合意」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/rem_keiji_01.html)及び沖縄県「要請事項」第17条関係(https://www.pref.okinawa.jp/heiwakichi/kichi/1017255/1017256/1017258.html)です。

第3 被害者の損害賠償と救済

刑事事件の処分がどうなるかと,被害者が損害賠償を受けられるかも,区別する必要があります。協定18条5項は,公務執行中の行為等による第三者の損害について,日本側が請求を処理する仕組みを定めています。同条6項の公務外の不法行為等では,日本側の査定と米側の支払判断を伴う別の手続が定められています。
民事訴訟の可否,行政上の請求処理,保険による支払,実際の回収は,同じ問いではありません。「制度があるから必ず十分な額を回収できる」とも,「米軍関係者が相手なら訴訟を起こせない」ともいえません。
沖縄県は,確定判決額に満たない支払となった場合の差額補填を日米両政府の責任で行うことや,給与等の差押えについて,協定への明記を求めています。政府が説明する既存の救済措置と,県が求める制度上の保障は区別して確認してください。
根拠は,協定18条(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/kyoutei/pdfs/18.pdf),外務省Q&A問11(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/qa.html)及び沖縄県「要請事項」第18条関係(https://www.pref.okinawa.jp/heiwakichi/kichi/1017255/1017256/1017258.html)です。

第4 PFASと基地への立入り・環境調査

1 環境補足協定による立入りの範囲

平成27年の環境補足協定4条は,環境に影響を及ぼす事故(漏出)が現に発生した場合と,返還に関連する現地調査の場合に,特定された日本側当局が適切な立入りを行えるよう,合同委員会で手続を定めることとしています。
周辺で高い濃度が測定されたという事実だけから,この規定により基地内のすべての調査が無条件に実施できるとはいえません。調査の目的,申請する枠組み,立入りが認められた範囲,試料採取の可否を確認する必要があります。
根拠は,環境補足協定4条(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000415174.pdf)です。立入りの仕組みの詳細は,日米地位協定と環境問題―PFAS・基地への立入りと環境補足協定で説明しています。

2 沖縄県の申請経緯と,まだ区別すべき事実

沖縄県の公表ページは,嘉手納飛行場,普天間飛行場,キャンプ・ハンセンに関する過去の立入り申請への米側の不許可回答と,令和8年6月12日の再申請を掲載しています。令和7年12月19日に国が公表した米側回答も,同ページから確認できます。
この経緯から確認できるのは,県が調査のための立入りを求めたことと,掲載された回答・再申請の内容です。再申請したこと自体を,許可や実際の調査の完了と読み替えることはできません。また,立入りの可否と,汚染の発生源や個別の健康被害との因果関係も,別の問題です。
出典は,沖縄県「有機フッ素化合物について」(「1973年合意に基づく米軍基地内への立入申請」の項,令和8年7月7日更新)(https://www.pref.okinawa.lg.jp/kurashikankyo/kankyo/1004418/1028431.html)です。

第5 沖縄県が求める11項目の見直し

沖縄県の要請は,刑事裁判権だけに限られていません。以下は県が公表する11項目の内容を,読者が関係する条文を探せるよう簡潔に整理したものです。いずれも県の要請であり,現行協定がその内容をすべて保障しているという意味ではありません。

対象条文県が見直しを求める主な内容
第1条・身分軍属の範囲と運用の透明性,米軍関係者の人数等の情報提供
第2条・施設の提供等施設の提供・用途変更・返還等について地方公共団体の意向を尊重
第3条・管理自治体の立入り,事故情報,日本法の適用,環境条項と調査の実効性
第4条・返還環境汚染や不発弾等の調査・原状回復,土地の使用履歴の提供
第5条・船舶・航空機民間空港・港湾の使用の制限,国内法の適用,移動と訓練の区別
第9条・出入国人・動植物の検疫や保健衛生について国内法を適用
第13条・課税米軍関係者の私有車両の税率を民間車両と同じにする
第15条・歳出外資金諸機関基地内の諸機関による日本人への役務提供の制限
第17条・刑事裁判権起訴前の身柄移転,基地外の米軍財産の捜索等,事故現場の日本側主導
第18条・民事請求権判決額との差額補填の保障,給与等の差押え
第25条・合同委員会合意の迅速な公表,自治体の意見聴取,地域特別委員会の設置

この要請を検討する際は,「現に存在する制度」「運用改善で対応した部分」「県がなお条文への明記や実効性の確保を求める部分」を分けると,争点が見えやすくなります。例えば,環境補足協定が存在することと,県が求める調査を実施できることは,それぞれ確認が必要です。
出典は,沖縄県「要請事項(日米地位協定)」(https://www.pref.okinawa.jp/heiwakichi/kichi/1017255/1017256/1017258.html)です。同県の「要請の概要」(https://www.pref.okinawa.jp/heiwakichi/kichi/1017255/1017256/1017257.html)に記載された要請日は平成29年9月11日・12日です。ウェブページの更新日を新しい要請日と混同しないよう注意してください。

第6 本文改定・補足協定・運用改善はどう違うか

方法確認する点
協定本文の改定協定自体の規定を変更する。27条は,いずれの政府も改正を要請できる旨を定める
補足協定既存の協定を補足する別の合意を設ける。環境補足協定等の対象・条件を確認する
運用改善合同委員会合意等による具体的な運用を確認する。本文の改定と同一ではない

協定27条が改正要請と交渉の仕組みを定めていることから,改定が制度上想定されていないわけではありません。ただし,一方の要請だけで改定内容が成立するわけでもありません。根拠は,協定27条(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/kyoutei/pdfs/27.pdf)です。
沖縄県は,日米地位協定ポータルサイト(https://www.pref.okinawa.jp/heiwakichi/kichi/1017465/1017466.html)で,自らの問題意識や他国調査資料を公表しています。他国との比較では,条文の一部だけで優劣を決めず,補足協定,国内法,対象者,裁判権と身柄の段階の違いも確認する必要があります。
改定論の各論は,日米地位協定の問題点と改定論,比較は,日米地位協定とドイツ・韓国の比較,協議の仕組みは,日米合同委員会とはを参照してください。

第7 騒音訴訟・普天間返還を調べるときの関連記事

沖縄の基地問題には,飛行による騒音,基地の返還,代替施設の建設もあります。しかし,騒音被害の賠償と飛行差止めでは請求の性質が異なり,米軍機と自衛隊機でも裁判上の扱いを分ける必要があります。判例の考え方は,米軍基地騒音訴訟の判例―米軍機・自衛隊機の飛行差止めと損害賠償で整理しています。
また,普天間飛行場の返還合意や辺野古代替施設をめぐる経緯は,協定に基づく施設・区域の問題と,埋立承認等の国内法上の手続を分けて読むことが有用です。経緯と裁判については,普天間飛行場の返還合意と辺野古代替施設―計画・裁判・工事の経緯を参照してください。

第8 主な一次資料

① 外務省「日米地位協定(全文)」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/pdfs/fulltext.pdf)
② 外務省「日米地位協定Q&A」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/qa.html)
③ 沖縄県「要請事項(日米地位協定)」(https://www.pref.okinawa.jp/heiwakichi/kichi/1017255/1017256/1017258.html)
④ 沖縄県「日米地位協定ポータルサイト」(https://www.pref.okinawa.jp/heiwakichi/kichi/1017465/1017466.html)
⑤ 沖縄県「沖縄の米軍及び自衛隊基地(統計資料集)」令和8年4月(https://www.pref.okinawa.jp/heiwakichi/kichi/1017273/1017274/1025057/1039499.html)