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普天間飛行場の返還合意と辺野古代替施設―計画・裁判・工事の経緯(AIリライト)

第1 この記事の対象と資料の読み方

本記事は,普天間飛行場の成立,平成8年の返還合意,辺野古代替施設の計画,公有水面埋立てをめぐる行政手続及び裁判並びに工事の現状を,令和8年8月29日現在の公表資料に基づいて整理するものである。
返還合意が成立したこと,代替施設を建設する行政上の手続が進んでいること及び実際の返還日が決まっていることは,それぞれ別の事柄である。

この問題に関する資料には,①日米両政府の合意文書,②日本政府の事業計画及び説明,③沖縄県及び地元自治体の資料,④個別の行政処分,⑤裁判所の判決がある。
本記事では,政策上の立場と裁判所が判断した法的争点とを区別し,数値には資料名又は対象時点を付している。

第2 普天間飛行場の成立と立地

宜野湾市の説明によれば,普天間飛行場は,昭和20年4月に米軍が土地を接収し,米陸軍工兵隊が滑走路を建設したことに始まる。
昭和47年の沖縄返還後は,日本政府が米国に提供する施設・区域として米海兵隊が使用している。

同飛行場は宜野湾市のほぼ中央部にあり,その周囲には住宅,学校,医療施設等が広がっている。
基地が市域を分断する立地と周辺の市街化が,返還問題を理解する前提となる。

第3 平成8年の返還合意とSACO最終報告

1 返還の条件を伴う合意

日米両政府は,平成8年4月12日,代替施設の整備その他の必要な措置を講じた後に普天間飛行場を返還する方針を発表した。
同年12月2日のSACO最終報告は,重要な軍事的機能及び能力を維持しつつ,代替施設が完成し,運用可能となった後に返還する枠組みを示した。

SACO最終報告が検討した代替案は,①嘉手納飛行場へのヘリコプター運用機能の集約,②キャンプ・シュワブにおけるヘリポートの建設,③海上施設の開発及び建設である。
この段階では海上施設案が採用されたが,現在の埋立計画は,その後の日米協議及び国内手続を経て具体化されたものである。

2 「5ないし7年以内」の意味

平成8年の文書にある「今後5ないし7年以内」は,十分な代替施設が完成し,運用可能となることを前提にした当時の見通しである。
したがって,この表現を,現在も効力を持つ確定的な返還期限又は工事期間として読むことはできない。

第4 辺野古代替施設計画の形成と現在の仕様

1 平成11年以降の計画変更

政府は,平成11年12月,キャンプ・シュワブ水域を移設先とする基本方針を閣議決定した。
平成14年の基本計画は,辺野古沿岸部を埋め立てて1本の滑走路を設ける内容であったが,平成18年5月1日の再編実施のための日米のロードマップでは,2本の滑走路をV字型に配置する現在の基本形が示された。

平成25年3月,沖縄防衛局は沖縄県知事に公有水面埋立承認を申請し,同年12月に承認を受けた。
その後,大浦湾側で確認された軟弱地盤等に対応するため,令和2年4月に設計概要の変更承認を申請した。

2 滑走路,埋立面積及び移転する機能

防衛省の現在の説明では,2本の滑走路はそれぞれ1200メートルであり,両端のオーバーラン各300メートルを含む施設の長さは1800メートルとされている。
同省が示す埋立面積は約152ヘクタールであるのに対し,沖縄県の環境影響評価手続のページには約155ヘクタールと記載されている。
両数値は公表資料の時点及び対象範囲を付して用いるべきであり,本記事では一方を他方の単純な訂正値として扱わない。

防衛省によれば,普天間飛行場の機能の全部を辺野古へ移す計画ではない。
オスプレイ等の運用機能は代替施設へ移し,KC-130空中給油機は岩国飛行場へ移駐し,航空機の緊急時受入れ機能は新田原基地及び築城基地へ移す構成である。

第5 返還・埋立て・裁判の主要な経緯

年月日出来事資料上の位置付け
平成8年4月12日・同年12月2日日米両政府が返還方針を発表し,SACO最終報告が代替施設完成後の返還枠組みを示した。日米合意文書
平成11年12月28日政府がキャンプ・シュワブ水域を移設先とする基本方針を閣議決定した。日本政府の政策決定
平成18年5月1日日米ロードマップがV字型の2本の滑走路を持つ代替施設を示した。日米合意文書
平成25年3月22日・同年12月27日沖縄防衛局が埋立承認を申請し,沖縄県知事が承認した。公有水面埋立法上の処分
平成27年10月13日・平成28年12月20日沖縄県知事が承認を取り消し,最高裁が国の指示に従わないことを違法と判断した。行政処分・最高裁判決
平成30年8月31日・平成31年4月5日沖縄県副知事が承認後の事情を理由に承認を取り消し,国土交通大臣がその処分を取り消す裁決をした。行政処分・審査請求の裁決
令和2年4月21日・令和3年11月25日沖縄防衛局が設計概要の変更承認を申請し,沖縄県知事が承認しない処分をした。公有水面埋立法上の処分
令和4年4月8日・同月28日国土交通大臣が不承認処分を取り消す裁決をし,続いて承認を求める是正の指示をした。審査請求の裁決・国の関与
令和5年9月4日最高裁が設計変更を承認するよう求めた是正の指示を適法と判断した。最高裁判決
令和5年12月20日・同月28日福岡高裁那覇支部が承認を命じる代執行判決をし,国土交通大臣が沖縄県知事に代わって変更を承認した。高裁判決・代執行
令和6年1月10日防衛省が大浦湾側の工事に着手した。事業の実施
令和8年7月13日・同月16日最高裁が周辺住民4名の原告適格を分けて判断し,日米合同委員会が残る区域の工事実施に合意した。最高裁判決・日米合同委員会合意

第6 公有水面埋立てをめぐる行政手続と裁判

1 当初の承認取消しと平成28年最高裁判決

公有水面埋立法42条1項は,国の機関が埋立てをしようとするときは都道府県知事の承認を受けるものとし,同条3項は設計概要の変更について同法13条ノ2を準用している。
同法51条1号により,これらの事務は地方自治法上の法定受託事務である。

沖縄県知事は,平成27年10月,平成25年の埋立承認を取り消した。
最高裁平成28年12月20日第二小法廷判決(平成28年(行ヒ)第394号,民集70巻9号2281頁)は,国土交通大臣が承認取消しの取消しを指示したのに,知事がこれを行わないことは違法であると判断した。
この判決の対象は,地方自治法に基づく国の関与と知事の不作為の適法性である。

2 承認の取消し(撤回)と令和4年最高裁判決

沖縄県副知事は,平成30年8月,承認後に判明した事情等を理由に埋立承認を取り消した。
この処分は一般に「撤回」と呼ばれており,国土交通大臣は平成31年4月,沖縄防衛局の審査請求に対する裁決によって処分を取り消した。

最高裁令和4年12月8日第一小法廷判決(令和4年(行ヒ)第92号)は,沖縄県が行政主体として国土交通大臣の裁決の取消しを求めた訴訟について,県に原告適格がないと判断した。
同判決は,周辺住民の原告適格を判断したものでも,埋立事業の政策上の当否を判断したものでもない。

3 設計変更不承認,是正の指示及び代執行

沖縄県知事は,令和3年11月,軟弱地盤等に対応する設計概要の変更を承認しない処分をした。
国土交通大臣は,令和4年4月,行政不服審査法に基づく裁決で不承認処分を取り消し,その後,変更承認を求める是正の指示をした。

最高裁令和5年9月4日第一小法廷判決(令和5年(行ヒ)第143号)は,裁決の拘束力があるのに沖縄県知事が同じ事情を理由として承認しなかったことなどから,是正の指示を適法と判断した。
その後,福岡高裁那覇支部令和5年12月20日判決(令和5年(行ケ)第5号)は,知事に対し3日以内に変更承認をするよう命じ,国土交通大臣は同月28日に代わって承認した。

4 周辺住民の原告適格を判断した令和8年最高裁判決

最高裁令和8年7月13日第一小法廷判決(令和6年(行ヒ)第281号)で裁決の取消しを求めたのは,沖縄県ではなく周辺住民4名である。
最高裁は,予測される航空機騒音による健康又は生活環境上の著しい被害を受けるおそれを具体的に検討し,4名のうち3名の原告適格を認めた高裁判断を維持し,より離れた1名については原告適格を否定した。

最高裁は,航空機の衝突又は墜落の危険のみを理由とする原告適格は認めなかった。
同判決は差戻し判決ではなく,埋立事業全体の適法性又は政策上の当否を最終判断した判決でもない。

第7 現在の工事と返還時期

1 大浦湾側を含む工事の進行

防衛省によれば,辺野古側では平成29年11月に護岸工事,平成30年12月に埋立工事が始まった。
大浦湾側では,国土交通大臣による変更承認後の令和6年1月に工事が始まり,同年12月に地盤改良工事,令和8年6月に新たな区域の埋立工事へ進んだとされている。

防衛省の令和8年7月17日報道官会見によれば,日米合同委員会は同月16日,大浦湾側の残る区域における埋立工事及び地盤改良工事の実施に合意した。
防衛省は,これにより代替施設建設に必要な埋立工事及び地盤改良工事について,日米合同委員会の実施合意が全て整ったと説明している。

2 工事期間の見込みと実際の返還日

防衛省は,変更後の計画に基づく工事の着手から,埋立てに約8年,埋立てを含む工事の完了まで約9年3か月,米側への施設提供手続を含めて約12年を要するとの見通しを示している。
これは一定の前提に基づく所要期間の見込みであり,暦上の返還日を確定したものではない。

平成25年の沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画は,普天間飛行場の返還について8項目の条件を掲げている。
代替施設の完成,運用可能性,提供手続等が関係するため,令和8年8月29日現在,確定した返還日は公表されていない。

第8 政府と沖縄県の立場

防衛省は,普天間飛行場の危険性を除去し,海兵隊の機能を維持するため,辺野古移設が唯一の解決策であるとの立場を示している。
これは政府の政策上の評価であり,個々の裁判例の判示そのものではない。

沖縄県は,普天間飛行場の一日も早い閉鎖・返還と県外移設を求め,辺野古への移設に反対する立場を示している。
政府と沖縄県の立場は一致しておらず,本記事では,裁判結果だけから政策上の対立が解消したとは扱わない。

第9 関連記事

在日米軍基地の法的根拠及び日米地位協定については,「在日米軍基地の法的根拠,施設数,日米地位協定及び主要裁判例」参照。
基地周辺の航空機騒音をめぐる裁判については,「米軍基地騒音訴訟の判例―飛行差止め,過去の損害及び将来の損害」参照。
沖縄返還をめぐる外交文書と刑事事件については,「沖縄返還密約と西山事件―外務省調査,刑事裁判及び情報公開訴訟」参照。
米軍施設の返還・集約に関する別の経緯については,「関東空軍施設整理統合計画(関東計画)と立川・府中基地跡地」参照。

第10 出典・参考資料

1 法令

① e-Gov法令検索「公有水面埋立法」
② e-Gov法令検索「行政不服審査法」
③ e-Gov法令検索「地方自治法」

2 日米合意・政府文書

① 日米特別行動委員会「普天間飛行場に関するSACO最終報告(仮訳)」(平成8年12月2日)
② 日米安全保障協議委員会「再編実施のための日米のロードマップ(仮訳)」(平成18年5月1日)
③ 日米両政府「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」(平成25年4月)

3 裁判例

① 最高裁平成28年12月20日第二小法廷判決(平成28年(行ヒ)第394号,民集70巻9号2281頁)
② 最高裁令和4年12月8日第一小法廷判決(令和4年(行ヒ)第92号)
③ 最高裁令和5年9月4日第一小法廷判決(令和5年(行ヒ)第143号)
④ 福岡高裁那覇支部令和5年12月20日判決(令和5年(行ケ)第5号)
⑤ 最高裁令和8年7月13日第一小法廷判決(令和6年(行ヒ)第281号)

4 所管行政機関の解説・運用資料

① 防衛省「普天間飛行場代替施設について」(令和8年8月29日確認)
② 防衛省「普天間飛行場の移設に係る措置に関する協議会」(令和8年8月29日確認)
③ 防衛省「令和8年7月17日報道官会見

5 地方公共団体の資料

① 宜野湾市「普天間飛行場の概要」(令和2年6月30日更新)
② 沖縄県「普天間飛行場代替施設建設事業」(令和8年3月31日更新)
③ 沖縄県「辺野古新基地建設問題の経緯」(令和8年8月29日確認)
④ 沖縄県「辺野古新基地建設問題の争訟」(令和8年8月29日確認)
⑤ 沖縄県「辺野古新基地建設問題(普天間飛行場の辺野古移設)について」(令和7年9月4日更新)