第1 この記事の対象と結論
1 公示送達は裁判所のウェブページに掲載されるようになった
民事訴訟法111条は,公示送達を,公示事項を最高裁判所規則で定める方法により不特定多数の者が閲覧することができる状態に置く措置と,裁判所の掲示場への掲示又は裁判所に設置した電子計算機の映像面での閲覧の措置とによって行うと定めている。
この規定は,令和8年5月21日に施行された民事訴訟法の改正(令和4年法律第48号)によるものである。
裁判所ウェブサイトには,「公示送達・公告(令和8年5月21日以降に申立等があった事件等に関するもの)」のページが設けられ,全国の裁判所の掲載ページへのリンク集になっている。
結論として,実務上の要点は次のとおりである。
①令和8年5月21日以後に申立て等があった事件の公示送達は各裁判所のウェブページで確認し,同月20日以前に申立て等があった事件は各裁判所の掲示場で確認する。
②公示送達の効力は,措置を開始した日から2週間(外国においてすべき送達は6週間)を経過することによって生じ,同一の当事者に対する2回目以降の公示送達は措置を開始した日の翌日に生ずる(民事訴訟法112条)。
③当事者が相手方の所在を知ることができない場合,公示送達された書類等に記載された意思表示は,措置を開始した日から2週間を経過した時に到達したものとみなされる(民事訴訟法113条)。
④掲載ページには利用条件があり,大阪地方裁判所等のページは,スクレイピング,スクリーンショットの撮影や転記によるSNS・ブログへの転載等を禁止している。
2 基準日と本記事の範囲
本記事は,令和8年9月19日を基準日とする。
本記事は,民事訴訟における公示送達の掲載方法と,掲載ページを見るときの注意を扱う。
公示送達の要件を満たすための住所調査や,付郵便送達・システム送達との関係は,「民事訴訟の送達――補充送達,付郵便送達,公示送達及びシステム送達」で説明している。
個別の事件の公示事項の内容は,掲載ページの利用条件に照らし,本記事では一切取り上げない。
第2 公示送達の要件
1 公示送達ができる場合
民事訴訟法110条1項は,次の場合に,裁判所書記官が申立てにより公示送達をすることができると定めている。
①当事者の住所,居所その他送達をすべき場所が知れない場合(民事訴訟法109条の2の規定により送達をすることができる場合を除く。)。
②同法107条1項の規定により送達をすることができない場合。
③外国においてすべき書類の送達について,同法108条の規定によることができず,又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合。
④同法108条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後6か月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合。
①の括弧書きにより,送達を受けるべき者についてシステム送達をすることができる場合は,送達場所が知れないことを理由に公示送達をすることはできない。
2 職権による公示送達
裁判所は,訴訟の遅滞を避けるため必要があると認めるときは,申立てがないときであっても,裁判所書記官に公示送達をすべきことを命ずることができる(民事訴訟法110条2項)。
同一の当事者に対する2回目以降の公示送達は,職権でする(同条3項本文)。
ただし,外国の管轄官庁に嘱託を発した後6か月を経過しても送達を証する書面の送付がない場合(同条1項4号)は,この限りでない(同条3項ただし書)。
第3 公示送達の方法
1 法律と規則の定め
民事訴訟法111条は,公示送達について,公示事項を「最高裁判所規則で定める方法により不特定多数の者が閲覧することができる状態に置く措置をとるとともに、当該事項が記載された書面を裁判所の掲示場に掲示し、又は当該事項を裁判所に設置した電子計算機の映像面に表示したものの閲覧をすることができる状態に置く措置をとることによってする。」と定めている。
公示事項は,書類の公示送達であれば,裁判所書記官が送達すべき書類を保管し,いつでも送達を受けるべき者に交付すべきことである(同条1号)。
電磁的記録の公示送達であれば,裁判所書記官が,いつでも送達を受けるべき者に出力した書面を交付し,又はシステム送達の措置をとるとともに通知を発すべきことである(同条2号)。
民事訴訟規則46条1項は,法111条の「最高裁判所規則で定める方法」を,裁判所の電子計算機と閲覧をする者の電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用する方法のうち,①ファイルに記録された公示事項を閲覧をする者の電子計算機の映像面に表示するもの,かつ,②「インタ-ネットに接続された自動公衆送信装置を使用するもの」としている。
つまり,公示事項をインターネットで公開することが,公示送達の方法の一部になった。
2 官報・新聞への掲載
裁判所書記官は,公示送達があったことを官報又は新聞紙に掲載することができる(民事訴訟規則46条2項前段)。
外国においてすべき送達については,官報又は新聞紙への掲載に代えて,公示送達があったことを通知することができる(同項後段)。
第4 裁判所ウェブサイトの掲載ページ
1 全国のリンク集
裁判所ウェブサイトの「公示送達・公告(令和8年5月21日以降に申立等があった事件等に関するもの)」は,全国の裁判所の「公示送達・公告」ページへのリンク集である。
リンクは,最高裁判所,各高等裁判所,知的財産高等裁判所,各地方裁判所・家庭裁判所及び管内の簡易裁判所ごとに並んでいる。
同ページは,令和8年5月20日以前に申立て等があった事件等に関する公示送達・公告事項については,各裁判所に設置された掲示場を確認するよう案内している。
したがって,相手方の所在が知れないまま旧法の事件で公示送達が行われた場合は,ウェブページを見ても掲載されていないことがある。
2 大阪地方裁判所・大阪家庭裁判所・大阪府内の簡易裁判所のページ
大阪地方裁判所・大阪家庭裁判所・大阪府内の簡易裁判所の掲載ページ(公示送達・公告)では,掲載年月日,公示・公告事項名及び掲載終了年月日が一覧表で示され,公示・公告事項名のリンクから各事件のPDFを開く形になっている。
公示・公告事項名には,「【公示送達】」の表示と,裁判所名及び事件番号が記載されている。
令和8年9月19日時点では,大阪地方裁判所の本庁・支部と大阪府内の簡易裁判所の事件が,1日に十数件の割合で掲載されていた。
3 申立人・代理人が確認すること
公示送達を申し立てた側は,掲載ページで次の点を確認しておくとよい。
①自分の事件が掲載されているか(裁判所名と事件番号で確認する)。
②掲載年月日(措置を開始した日を確認する手掛かりになる)。
③効力が生ずる日(前記第1の2週間又は6週間)と,その後の期日の予定。
④掲載終了年月日。
効力発生日の計算の基準は「措置を開始した日」であり,掲載ページの掲載年月日と措置の開始日が一致するかは,担当書記官に確認するのが確実である。
第5 効力発生時期と意思表示の到達
1 公示送達の効力発生時期
民事訴訟法112条1項本文は,「公示送達は、前条の規定による措置を開始した日から二週間を経過することによって、その効力を生ずる。」と定めている。
同一の当事者に対する2回目以降の公示送達(同法110条3項の公示送達)は,措置を開始した日の翌日に効力を生ずる(同法112条1項ただし書)。
外国においてすべき送達についてした公示送達は,期間が6週間になる(同条2項)。
これらの期間は,短縮することができない(同条3項)。
2 公示送達による意思表示の到達
民事訴訟法113条は,訴訟の当事者が相手方の所在を知ることができない場合に,相手方に対する公示送達がされた書類又は電磁的記録に,その訴訟の目的である請求又は防御の方法に関する意思表示をする旨の記載等があるときは,その意思表示は,措置を開始した日から2週間を経過した時に,相手方に到達したものとみなすと定めている。
解除や相殺の意思表示を訴状や準備書面に書いて公示送達する場合は,この規定によって意思表示の到達日が決まる。
3 被告が後で訴訟を知った場合
公示送達によって判決がされ,被告が訴訟の係属を知らないまま控訴期間を過ぎた場合には,訴訟行為の追完(民事訴訟法97条1項)が問題になる。
この点は,「訴訟行為の追完(民事訴訟法97条)―控訴期間を過ぎた場合の救済,送達日の誤認,通知メールの見落とし及び事務所内の事務処理」で説明している。
外国にいる被告への公示送達は,「外国送達の方法,送達条約及び公示送達」で説明している。
第6 掲載ページの利用条件
1 大阪地方裁判所等のページの利用条件
大阪地方裁判所・大阪家庭裁判所・大阪府内の簡易裁判所の「公示送達・公告」ページの冒頭には,ページの利用に当たっての条件が示されている(令和8年9月19日確認)。
その要点は,次のとおりである。
①スクレイピングなど,プログラムを用いて公開されている情報を取得する行為と,そのプログラム又はソースコード等の公開を禁止している。
②これに違反した場合はアクセスを制限することがあり,安定したサービスの提供に支障を生じさせた場合は損害賠償請求等の法的な措置を講じる場合があるとしている。
③ページから取得した個人情報(氏名,住所等)を,公示送達の名宛人の同意なく反復継続して収集しウェブサイト等に掲載するなど,違法又は不当な行為を助長し,又は誘発するおそれがある方法で利用した場合は,個人情報保護法の規定に抵触するおそれがあるとしている。
④公示事項を公示送達情報の確認以外の目的で利用する行為と,公示事項が表示された画像のコピー,スクリーンショットの撮影,画像中の文字列の転記等によって,インターネットサイト,SNSその他これに準ずるものへ転載・拡散する行為を禁止している。
④については,個人のブログや閲覧者が限られるものであるか否かを問わないとされている。
2 実務上の注意
法律事務所が相手方の所在調査や事件管理のために掲載ページを見ることは,公示送達情報の確認の目的の範囲内である。
他方,掲載された氏名や住所を一覧にして保存したり,依頼者との連絡で画像を転送したりする場合は,上記の利用条件に照らして必要な範囲にとどめる必要がある。
掲載ページを定期的に自動で取得する仕組みを作ることは,上記①の禁止に当たるので行わない。
ブログや事務所のウェブサイトで公示送達を紹介するときは,制度の説明と掲載ページのURLを示すにとどめ,個別の事件の公示事項は掲載しない。
第7 関連記事
①民事訴訟の送達――補充送達,付郵便送達,公示送達及びシステム送達
②外国送達の方法,送達条約及び公示送達
③訴訟行為の追完(民事訴訟法97条)―控訴期間を過ぎた場合の救済,送達日の誤認,通知メールの見落とし及び事務所内の事務処理
④TreeeS操作マニュアル(当事者用)の読み方―提出の入口,30日で消える一覧,手数料の納付及び送達の確認
第8 出典
1 法令
①民事訴訟法109条の2,110条から113条まで(e-Gov法令検索,令和8年9月19日現在)。
②裁判所「民事訴訟規則」46条(令和8年9月19日確認)。
2 裁判所ウェブサイト
①裁判所「公示送達・公告(令和8年5月21日以降に申立等があった事件等に関するもの)」(令和8年9月19日確認)。
②大阪地方裁判所・大阪家庭裁判所・大阪府内の簡易裁判所「公示送達・公告」(令和8年9月19日確認)。