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電子化された債務名義と強制執行―事件特定情報・執行文・自動車登録・特許権等登録(AI作成)

第1 本記事の位置付け

本記事は,電子化された債務名義,記録事項証明,事件特定情報及び各種登録手続を扱う分割記事である。

mintsの全体像と論点別の入口は,mints(ミンツ)とは―料金・対象事件・登録・ログイン・提出・送達の実務Q&Aにまとめている。

画面上のクリック,入力,アップロード,ダウンロードその他の操作手順は,mints操作マニュアル~当事者ユーザ編~の解説を参照されたい。

証拠の提出方法,証拠説明書の作成及び証拠原本の取扱いは,mints後の証拠説明書を参照されたい。

第2 電子化された債務名義と登記手続

1 登記手続を命ずる判決における記録事項証明の要否

登記手続を命ずる判決(例えば「被告は,原告に対し,別紙不動産目録記載1の不動産につき,所有権移転登記手続をせよ。」との判決)を得て法務局に登記を申請する場合には,別の注意が必要である。
フェーズ3後は債務名義(電子判決書・電子調書等)がデータになるため,システム送達される場合,mintsには電子判決書等がアップロードされた旨の通知が来るだけであり,電子判決書自体をダウンロードしても,これまでの判決書正本(末尾に「これは正本である」との認証文言が付されたもの)に相当するものが交付されるわけではない。
登記申請には,「本電磁的記録(本書面)の内容が,裁判所のファイルに記録されている事項と同一であることを証明する」との文言のある記録事項証明が別途必要である。

2 記録事項証明の取得方法と登記申請時の注意点

この記録事項証明は,電子判決書等のシステム送達とは別に,mintsの「記録外」画面へのアップロードにより提供されるので,アップロードされてから1週間程度までを目安に,速やかにダウンロードしておきたい(申請・手数料は不要。準備の手引35頁)。事件情報と当事者アカウントの関連付けは,和解では和解調書をアップロードした日から1週間が経過した日以降に,判決では控訴の提起があると確定日の経過前に,解除されることがある(準備の手引36頁)ので,事件の確定を待つ必要はない。関連付けの解除後にダウンロードしていなかった場合は,別途,「記録事項証明の交付(提供)申請書」により申請する必要がある(手数料を要する)。申請書と記載例は,裁判所ウェブサイトに掲載されている。書面による交付の手数料は用紙1枚につき150円,電磁的記録による提供の手数料は1件につき2100円で,ペイジーにより納付する。電磁的記録の提供を受ける場合は,アップロード通知後1週間以内にダウンロードする必要がある。
ここで注意したいのは,mintsからダウンロードした電磁的記録の記録事項証明を,単に紙に印刷しただけのものは,登記申請に使えないという点である。登記官がその真正性を確認できないためである。
電子署名の付された電磁的記録のまま登記申請に用いるか,確定後に書面(記名押印がされたもの)の交付を受けて用いる必要がある。書面による交付を郵送で受けたいときは,返送用の封筒と切手をあらかじめ用意しておきたい。

なお,弁護士等,電子提出が義務付けられている者は,確定後であっても書面により記録事項証明の交付を申請することはできず,mintsの新規申立てフォームで「申立種別:その他」を選択して電子申立てをする必要がある(以上,裁判所ホームページ「フェーズ3後の債務名義による登記申請の留意事項」)。

3 和解調書等を債務名義とする場合の留意点

裁判所書記官が和解について電子調書を作成し,これをファイルに記録したときは,その記録は確定判決と同一の効力を有する(民事訴訟法267条1項)。
したがって,和解調書は民事執行法22条7号の債務名義に当たる。ファイルに記録された電子調書は,当事者に送達しなければならない(民事訴訟法267条2項)。

裁判所ホームページ「フェーズ3後の債務名義による登記申請の留意事項」1頁は,フェーズ3後の債務名義が電子判決書・電子調書(和解)等のデータになると説明しており,準備の手引35頁も,登記手続を要する主文又は和解条項が含まれる場合の取扱いを電子判決書と和解調書等とで区別していない。
前記1及び2で述べた記録事項証明の要否と取得方法は,和解調書等にも当てはまる。

もっとも,同留意事項1頁は,判決の確定証明を別途取得して提出すべきことを,債務名義が判決である場合の留意事項として記載しており,電子調書(和解)等について同様の記載を置いていない。

また,準備の手引36頁は,終局事由ごとに事件情報と当事者アカウントの関連付けが解除される時期を整理しており,判決並びに訴状却下命令及び訴え却下判決についてはその確定日を,和解については和解調書をアップロードした日から1週間が経過した日を,和解に代わる決定についてはその確定日を,それぞれ基準としている。
前記2では事件の確定までを記録事項証明のダウンロードの目安として述べたが,和解ではこの確定日に当たる基準日を経ないため,和解調書のアップロード後速やかにダウンロードする必要がある。この記録事項証明が提供される記録外領域の位置付けは,mintsの「記録」と「記録外」の違いで説明している。

第3 強制執行と事件特定情報

1 書面による申立原則と事件特定情報の活用

強制執行は,改正民執法の全面施行(遅くとも令和10年6月)までは,書面による申立てが必要である(準備の手引37頁)。債務名義等に係る電磁的記録がmints上にある場合,「事件特定情報」を書面で提供することで,記録事項証明書の提出を省略できる(改正民執法第18条の2。準備の手引37頁)。

事件特定情報が提供されれば,送達証明書・確定証明書の提出も不要である。事件特定情報とは,係属していた裁判所名・事件番号及び符号である(改正民執規則第15条の2)。これは債務名義・執行文・更正決定ごとに異なる。それぞれの事件特定情報を提供する必要がある(以上,準備の手引38頁)。事件特定情報,記録事項証明及び民事訴訟法91条の3の訴訟に関する事項の証明の区別並びに事件特定情報提供書面の使い分けについては,事件特定情報提供書面と民事訴訟法91条の3―記録事項証明との違い(AI作成)を参照されたい。

2 執行文付与等の電子申立て及び手続上の留意点

債務名義等が新法適用事件のものである場合,執行文付与の申立ては電子申立ての義務がある(特例執行文付与申立事件の定義につき令和5年整備法による改正後の民執法附則第5条,電子申立ての義務につき同附則第6条及び第7条。準備の手引37頁)。
執行文付与の手数料は,単純執行文が300円であるのに対し,承継執行文や事実到来執行文は1,500円であり,債務者を追加する場合はこれに1,200円が加算される。

なお,準備の手引には,督促異議の申立て,更正決定の申立て,担保取消しの申立て,控訴に伴う執行停止の申立てを含む約30種類の申立て・書面について,新規申立てフォームと記録一覧のアップロード画面のいずれから提出するかを整理した対応表が掲載されている(準備の手引40頁・41頁)。
特に更正決定の申立書,記録事項証明書等の証明申請書及び執行文付与の申立ては,事件が終結して関連付けが解除される前と後とで提出場所が変わることがあるため,時期を誤らないよう注意されたい。

3 mintsにおける執行文付与申立ての流れ

大阪地方裁判所が作成した操作説明資料③(令和8年3月18日時点。情報公開請求により取得した文書)23頁~27頁は,電子判決書に基づいて判決言渡しがされた事件又は和解が成立した事件について,単純執行文の付与を申し立てる場合の操作の流れを,事件情報の関連付けが解除される前と後とに分けて説明している。

関連付けの解除前に申し立てる場合は,当該事件の事件情報画面のファイルアップロード画面で「その他」のタブを選び,種別「その他」として執行文付与申立書のPDFをアップロードする。
アップロードが完了すると申立人に完了通知が届き,裁判所が手数料納付情報を登録すると「手数料納付情報が登録されました」との通知が届く。
申立人は手数料納付情報一覧からペイジーで納付するが,手数料を要する他の申立てを併せてしている場合など,同じ事件番号で複数の手数料納付情報が存在することがあるため,備考欄の記載も確認する。
裁判所が電子執行文をアップロードすると,当該事件情報に関連付けされている者全員へ通知が届き,記録一覧から電子執行文を閲覧又はダウンロードすることができる。

関連付けの解除後に申し立てる場合は,新規申立てフォームから執行文付与の申立てを行う。
裁判所は執行文用の事件情報を新たに作成して申立人を関連付け,提出された申立書等をその事件情報にアップロードする。
手数料の納付も電子執行文のアップロードも,いずれもこの執行文用の事件情報で行うことになる。

当事者の関連付けは,①事件完結日(確定日等)と,②裁判所が最後に電磁的記録をアップロードした日(執行文付与の事件では電子執行文をアップロードした日)から1週間が経過した日との,いずれか遅い日以降に解除される。
したがって,電子執行文は,関連付けが解除される前に速やかにダウンロードしておく必要がある。

4 電子化された債務名義による自動車登録及び特許権等登録

電子化された債務名義に基づいて自動車登録を申請する場合,当面は書面の記録事項証明書を運輸支局等に持参する必要がある。電磁的記録事項証明書及びその印刷物は利用できず,自動車保有関係手続のワンストップサービス(OSS)も利用できない。債務名義がシステム送達され,その主文又は和解条項等に自動車登録手続が含まれる場合は,第一審裁判所の裁判所書記官に書面の記録事項証明の交付を希望する旨を伝えることにより,1回に限って無償で交付を受けられるが,2回目以降は有料である。なお,債務名義が判決である場合は,記録事項証明とは別に,判決の確定証明書(書面)も従前と同様に別途取得する必要がある(要手数料)(以上,裁判所「フェーズ3後の債務名義による自動車登録申請の留意事項」1頁・2頁)。

特許権,実用新案権,意匠権又は商標権の登録申請には,電磁的記録事項証明書又は書面の記録事項証明書を利用できる。ただし,電磁的記録事項証明書を単に印刷した書面では,裁判所書記官による電子署名を確認できないため,登録専門官において真正に成立したものと判断できず,これを提出することはできない。債務名義が判決である場合は,登録手続に際して,判決の確定証明(書面又は電磁的記録)を別途取得する必要がある(以上,裁判所「フェーズ3後の債務名義による特許権等の登録申請の留意事項」1頁・3頁)。

第4 出典

e-Gov法令検索「民事訴訟法」

裁判所「民事訴訟手続のデジタル化に関する資料」

裁判所「民事訴訟フェーズ3に向けた準備の手引」

裁判所「フェーズ3後の債務名義による登記申請の留意事項」

裁判所「フェーズ3後の債務名義による自動車登録申請の留意事項」

裁判所「フェーズ3後の債務名義による特許権等の登録申請の留意事項」

⑦ 大阪地方裁判所「改修後mints操作説明資料③(準備書面等のアップロード~電子執行文付与)」(令和8年3月18日時点。情報公開請求により取得した文書)

e-Gov法令検索「民事執行法」