第1 少年事件で弁護士に相談する時期
少年事件では,警察・検察による捜査の段階と,家庭裁判所で調査・審判を受ける段階とで,弁護士の立場が異なる。家庭裁判所に送られるまで相談できないわけではない。逮捕されたとき,取調べへの対応に迷うとき,事実関係を争うときは,早い段階で少年事件を扱う弁護士へ相談することが重要である。
事件全体の流れと家庭裁判所からの呼出しへの対応は,少年事件の流れと保護者の対応で説明している。本記事では,誰にどの段階の活動を依頼し,費用制度をどう確認するかを整理する。
1 捜査段階の弁護人と家裁段階の付添人
| 段階 | 弁護士の立場と主な活動 |
|---|---|
| 警察・検察の捜査 | 弁護人として,面会,取調べへの助言,証拠の確認,身柄拘束への対応等を行う |
| 家庭裁判所の調査・審判 | 付添人として,非行事実に関する意見,生活環境の調整,調査・審判への対応等を行う |
| 逆送後の刑事手続 | 弁護人として,起訴や刑事裁判に対応する。家裁段階の付添人の選任と区別して確認する |
同じ弁護士が継続して担当する場合でも,家裁送致後の付添人活動をどこまで依頼するか,選任の届出や費用の扱いを確認する必要がある。捜査段階で国選弁護人が選任されていたことだけで,家裁段階にも同じ条件の国選付添人が自動的に付くと考えてはならない。
14歳未満の触法少年に関する警察の調査は,犯罪少年の捜査と同じ手続ではない。年齢と現在の手続を相談時に伝える必要がある。
2 逮捕された場合と在宅の場合
逮捕された場合には,所在する警察署等,逮捕の日時,疑われている行為,すでに弁護士が付いているかを確認する。本人は弁護士との面会を求めることができ,家族からも弁護士会等に相談できる。当番弁護士制度の初回接見と,その後の継続的な依頼とは区別して確認するとよい。
在宅で捜査を受けている場合にも,呼出しの日時,提出を求められているもの,取調べの状況を相談できる。身柄拘束がないから弁護士の必要性が低いと一律に判断せず,事実を争っているか,学校・職場への影響があるか,保護者だけで対応できるかを検討する。
東京弁護士会の少年事件の案内も,身柄拘束の有無を問わず,少年の権利を守り,更生を支える弁護士の活動を説明している。
第2 付添人は何をするのか
1 非行事実と手続上の権利を確認する
付添人は,少年の言い分を聴き,事件記録や証拠を確認し,非行事実について裁判所に意見を述べる。事実関係に争いがある場合には,どの点を認め,どの点を争っているのか,供述や証拠に問題がないかを整理する。
少年事件を更生のための手続と説明することは,事実を争う権利をなくすことを意味しない。反省文の提出や謝罪を急ぐ前に,本人の認識と記録の内容の違いを弁護士に伝える必要がある。
本人と保護者の説明に相違がある場合にも,無理に言葉を合わせるのではなく,直接見聞きした事実,伝聞,推測を区別することが大切である。
2 生活環境を整え,調査・審判に対応する
付添人は,家庭の見守り,通学・就労,交友関係,福祉や医療の支援等について,本人・保護者と対応を検討し,必要に応じて関係先と調整する。被害回復に向けた対応も活動の一つであるが,示談が成立すれば必ず審判不開始や不処分になるというものではない。
調査官面接や審判で伝えるべき事情,すでに行った対応,今後実行できる計画を整理し,適切な処分に関する意見を述べる。抽象的な「今後は気を付ける」という約束だけでなく,誰が,何を,いつから行うかを説明できるようにすることが有用である。
裁判所の「少年審判に関係する人たち」は,裁判官,調査官,書記官,付添人等の役割を区別して説明している。付添人は裁判所の調査官とは異なる立場で活動する。
3 身柄拘束と決定への対応
少年鑑別所への送致による観護措置は,少年院送致という最終的な保護処分と異なる。付添人への相談では,決定の種類,告知された日,収容先,手元の書類を伝える必要がある。
観護措置への異議や保護処分への抗告は,同じ制度ではなく,申立てができる者,理由,期限も異なる。特定少年では,付添人の申立てに関する本人の意思の扱いにも特例がある。決定に不服がある場合は,書類を持って速やかに相談することが重要である。
第3 付添人の選任と国選の範囲
1 私選付添人
少年法10条は,少年や保護者等による付添人の選任を定めている。弁護士を付添人に選任する場合には,家庭裁判所の許可は不要である。一方,弁護士以外の人が付添人になる場合には,家庭裁判所の許可が必要となる。
保護者が審判に出席することと,付添人に選任されることは同じではない。少年法上の保護者の定義も,民法上の未成年者の親権者と完全に同じではないため,18歳・19歳の事件では実際の監護状況も含めて確認する。
2 国選付添人は全事件に自動的に付く制度ではない
少年法22条の3は,一定の罪の事件で検察官を審判に出席させる決定がされた場合,少年に弁護士付添人がいなければ付添人を付すことを定める。また,一定の事件で少年鑑別所送致の観護措置がとられ,弁護士付添人がいない場合には,事案や保護者の有無等を考慮して必要と認めるときに付添人を付すことができる。
そのほか,被害者等による審判傍聴に関する少年法22条の5にも付添人を付す規定がある。したがって,「観護措置になれば必ず国選」「資力が乏しければすべて国選」とはいえない。現在の事件が対象となるかは,担当の家庭裁判所や弁護士に確認する必要がある。
国選弁護人と国選付添人では,手続段階と制度の要件が異なる。申出や確認を後回しにせず,家裁送致前後に継続して担当する弁護士を確認するとよい。
第4 費用と援助制度の確認方法
1 私選の見積りで確認すること
私選の費用は,事件の内容と委任契約によって異なる。相談料,着手金,報酬金,接見や出張に伴う日当・実費等について,金額だけでなく,何が含まれるかを確認する必要がある。
| 確認項目 | 相談・契約時の確認内容 |
|---|---|
| 対象となる段階 | 捜査だけか,家裁送致後の付添人活動まで含むか |
| 主な活動 | 接見,記録確認,学校等との調整,示談,審判出席の扱い |
| 追加費用 | 接見回数,遠方への移動,抗告,逆送後の刑事裁判の扱い |
| 支払条件 | 支払時期,分割の可否,契約終了時の精算方法 |
事件の個別事情を確認せずに,一律の相場や「総額」を断定することは適切ではない。見積書・委任契約書で活動範囲を確かめ,疑問点は契約前に説明を受けることが大切である。
2 日弁連委託援助と法テラス
国選の対象とならない場合にも,費用の援助を利用できることがある。法テラスの受託業務の案内は,日本弁護士連合会から委託を受けた援助業務として,家庭裁判所に送られた少年の付添人活動等を挙げている。
援助には,対象となる事件や活動,資力,弁護士による援助の必要性等の要件がある。同案内では,申込みは弁護士から行う必要があるとされている。本人や保護者は,担当弁護士に「少年保護事件の付添援助が利用できるか」と尋ねるとよい。
民事法律扶助,国選弁護,国選付添人,日弁連委託援助は別の制度である。援助される費目,負担や返還の扱い,対象となる活動期間は,現在の制度と個別の決定を確認する必要がある。「法テラスだから少年事件の費用がすべて無料」と一括して考えてはならない。
第5 相談前に整理しておくもの
相談時には,①本人の生年月日と行為時の年齢,②現在の手続段階,③警察署・裁判所の名称と事件番号,④身柄拘束の有無,⑤呼出しや提出期限,⑥事実関係について争いがあるか,⑦すでに担当する弁護士の有無を伝えるとよい。
呼出状や決定書,警察・裁判所から受け取った書類,経過のメモ,通学・就労と家庭の支援状況を用意する。費用の援助を希望する場合には,資力の確認に必要な資料を担当弁護士に尋ねる。
資料がそろうまで相談を遅らせる必要はない。逮捕,観護措置,不服申立ての期限,翌日等の呼出しがある場合は,その事情を最初に伝えることが重要である。
第6 関連記事及び出典
少年事件の流れと保護者の対応
家庭裁判所調査官の仕事内容と調査報告書
少年審判における被害者の権利
根拠資料は,少年法10条,17条の2,22条の3,22条の5,32条,65条,裁判所「少年審判に関係する人たち」,裁判所「少年事件Q&A」,東京弁護士会「少年事件」,法テラス「国などから頼まれて行なう受託業務」である。確認日は令和8年10月11日である。