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税務

土壌汚染地の相続税評価と浄化・改善費用―区域の種類,最も合理的な措置,求償権及び対策費用の税務(AI作成)

目次

第1 この記事の要点1 対象と結論2 前提第2 土壌汚染地として評価する土地第3 評価の算式第4 浄化・改善費用の見積り―「最も合理的と認められる措置」と土壌汚染対策法1 国税庁の情報が示す基準2 要措置区域の場合3 形質変更時要届出区域の場合4 自然由来の汚染の場合5 見積りの点検第5 費用が確定している場合と,汚染原因者に対する権利1 浄化・改善費用の額が確定している場合2 汚染原因者に対する求償権3 損害賠償請求権第6 汚染土壌対策費用の所得税・法人税第7 実務上の確認事項第8 関連記事第9 出典及び確認状態
第1 この記事の要点
1 対象と結論

本記事は,相続税・贈与税の申告で土壌汚染地をどう評価するかについて,国税庁の「土壌汚染地等の評価の考え方について(情報)」(令和6年6月21日,資産評価企画官情報第3号・資産課税課情報第11号)と土壌汚染対策法の条文を突き合わせて整理するものである。
国税庁の情報は,課税実務の取扱いを整理した資料であり,法令や通達そのものではない。

土壌汚染地の価額は,汚染がないものとした場合の価額から,浄化・改善費用に相当する金額,使用収益制限による減価に相当する金額及び心理的要因による減価に相当する金額を控除して求める(原価方式)。
このうち実務上の争点になりやすいのは浄化・改善費用であり,国税庁の情報は,見積額を「課税時期において最も合理的と認められる措置」に基づいて算定し,その地域の標準的な土地利用の実現に必要な範囲に限るとしている。

土壌汚染対策法は,汚染の存在そのものではなく,汚染による人の健康被害の防止を目的とし,区域の種類によって求める措置が大きく異なる。
そのため,汚染が判明した土地について,掘削除去(汚染土壌を掘り取って搬出する方法)の見積額をそのまま控除額にする前に,区域の種類と法が求める措置を確かめる必要がある。
本記事では,あわせて,費用が確定している場合の債務控除,汚染原因者に対する求償権・損害賠償請求権の計上及び汚染土壌対策費用の所得税・法人税の扱いを説明する。

2 前提

本記事の基準日は令和8年10月10日である。
土壌汚染対策法とその施行令・施行規則は,e-Gov法令検索の現行版(令和8年7月1日施行の改正後の版)で確認した。
この改正で変わったのは権限の委任先の名称(法63条)等であり,本記事で引用する条文の内容は,令和7年7月時点の版と同じである。

第2 土壌汚染地として評価する土地

国税庁の情報によれば,土壌汚染地として評価する土地は,課税時期において,特定有害物質による汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないと認められる土地である(情報2頁)。
次の3点に注意する。

①汚染の可能性があるという潜在的な段階では,土壌汚染地として評価することはできない。
②土壌汚染の調査・対策が義務付けられているかどうかを問わない。
③要措置区域又は形質変更時要届出区域に指定されていれば,基準に適合しないことが明らかであるから,いずれも土壌汚染地に当たる。

区域に指定されているかどうかは,都道府県知事(政令で定める市では市長)が調製する台帳で確かめる。
台帳は,正当な理由がなければ閲覧を拒めないとされている(土壌汚染対策法15条3項)。
台帳には,形質変更時要届出区域のうち汚染が専ら自然に由来する区域(自然由来特例区域)等であるかどうかも記載される(同法施行規則58条5項)。

区域の種類は,次のとおり,健康被害が生ずるおそれの有無で分かれる。
要措置区域は,土壌の汚染状態が基準に適合せず,かつ,健康被害が生じ,又は生ずるおそれがあるものとして政令で定める基準に該当する土地である(同法6条1項)。
形質変更時要届出区域は,基準に適合しないが,その政令の基準には該当しない土地である(同法11条1項)。
政令の基準は,地下水を経由する摂取については周辺に飲用井戸等の取水口があるかどうか,土壌の直接摂取については土壌含有量基準に適合せず人が立ち入ることができる土地かどうかで判断される(同法施行令5条1号,同法施行規則30条)。

調査報告義務の免除確認と,土壌の基準適合の確認は同じではない(土壌汚染対策法3条1項ただし書)。
調査・対策義務がないことだけで評価対象外にせず,反対に,廃止届,調査未実施又は汚染の噂だけで基準不適合が認められたとも扱わない。
課税時期における調査結果,免除確認書,土地利用状況及び区域指定台帳を相互に照合し,行政手続の状態と汚染の認定を別欄で記録する。

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失踪宣告と相続・相続税―死亡とみなされる時点,相続人の変動,申告期限,取消し及び外国が関わる場合(AI作成)

目次

第1 この記事の対象第2 失踪の宣告の要件と死亡とみなされる時点1 普通失踪と危難失踪2 死亡とみなされるのは審判の日ではない3 手続の概要第3 相続への影響1 相続は死亡とみなされる時点で開始する2 他の相続との先後で相続人が変わる第4 相続税の申告期限と財産の評価1 申告期限は審判の確定を知った日から数える2 財産は相続開始の時の価額で評価する3 失踪の宣告・取消しによる相続人の異動と更正の請求第5 失踪の宣告の取消し第6 外国が関わる場合1 日本の裁判所が失踪の宣告をすることができる場合2 死亡とみなされる時点と相続・婚姻への影響3 失踪の宣告の取消しの管轄4 外国の裁判所がした失踪の宣告5 不在者財産管理を選ぶ場合第7 最初に確認すること1 よくある質問第8 関連記事第9 出典1 法令2 通達・公的資料
第1 この記事の対象

本記事は,家族が行方不明となって生死が分からない場合に家庭裁判所がする失踪の宣告(民法30条)について,相続と相続税の実務で問題となる点を整理するものである。

失踪の宣告では,死亡したものとみなされる時点が審判の日ではなく過去の時点になる。
そのため,誰が相続人になるか,相続税の申告期限がいつから進むか,財産をいつの価額で評価するかの判断が,通常の死亡の場合と異なる。

行方不明者が外国籍である場合や外国に住んでいた場合には,日本の裁判所が失踪の宣告をすることができる範囲が限られることがあり,外国の裁判所がした失踪の宣告を日本でどう扱うかも問題となる。

条文はe-Gov法令検索の現行条文(令和8年10月時点)で,通達は国税庁ホームページの相続税法基本通達で確認した。

申立人,申立先,必要書類,費用及び審判確定後の届出を実行順に確認したい場合は,失踪宣告の申立て―要件,必要書類,費用,期間及び確定後の手続を参照されたい。
本記事は,死亡とみなされる時点が相続・相続税及び外国が関わる法律関係に与える影響を中心に説明する。

第2 失踪の宣告の要件と死亡とみなされる時点
1 普通失踪と危難失踪

不在者の生死が7年間明らかでないときは,家庭裁判所は,利害関係人の請求により,失踪の宣告をすることができる(民法30条1項)。
戦地に臨んだ者,沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が,戦争が止んだ後,船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないときも,同様である(同条2項)。

2 死亡とみなされるのは審判の日ではない

普通失踪の宣告を受けた者は7年の期間が満了した時に,危難失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に,死亡したものとみなされる(民法31条)。
審判は申立てから公告等を経てされるため,死亡したものとみなされる日は,審判の日や戸籍に記載される日より前になる。

失踪の宣告の裁判が確定したときは,その裁判を請求した者が,裁判が確定した日から10日以内に,裁判の謄本を添付して届け出なければならない(戸籍法94条,63条1項)。
この届書には,民法31条の規定によって死亡したとみなされる日も記載する(戸籍法94条)。

3 手続の概要

失踪の宣告の審判事件は,不在者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する(家事事件手続法148条1項)。
家庭裁判所は,申立てがあったこと,不在者は一定の期間までに生存の届出をすべきこと,届出がないときは失踪の宣告がされること,及び不在者の生死を知る者は一定の期間までに届出をすべきことを公告する(同条3項)。
その期間は,普通失踪では3か月,危難失踪では1か月を下ってはならず,期間が経過しなければ失踪の宣告の審判をすることができない(同項)。
失踪の宣告の審判は,不在者に告知することを要しない(同条4項)。

第3 相続への影響
1 相続は死亡とみなされる時点で開始する

相続は,死亡によって開始する(民法882条)。
失踪の宣告を受けた者の相続は,民法31条により死亡したものとみなされる時点で開始し,相続人の範囲や相続分もその時点を基準に判断する。

2 他の相続との先後で相続人が変わる

行方不明者自身が,親などの相続人となるべき立場にある場合には,死亡したものとみなされる時点と,その親の死亡の時点との先後によって結論が変わる。

例えば,子Aが行方不明となってから12年後に親Cが死亡し,その後,Aについて普通失踪の宣告がされた場合を考える。

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税務調査への回答書と税務意見書の作り方―税目・年分・事実・証拠・法令・計算及び留保の整理(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論第2 最初に三つの文書を区別する1 税務調査への回答書2 税務意見書3 税理士法33条の2の添付書面第3 作成前に固定する事項1 手続の段階を確認する2 納税者・税目・期間・取引を一行で示す3 質問と回答の対応を固定する第4 事実・証拠・推認・未確認を分ける1 確認できた事実2 依頼者又は担当者の説明3 資料からの推認4 未確認事項と追加確認方法第5 法令・通達・判例等の階層を示す1 適用時点の法令を最初に確認する2 法令と通達を同列に扱わない3 判例・裁決の射程を限定する第6 計算を再現できる形で示す1 入力値と根拠資料を対応させる2 主位計算と代替計算を分ける3 税額以外の効果を忘れない第7 税務調査への回答書の組立て1 冒頭2 回答本文3 提出資料一覧4 調査結果の説明後第8 税務意見書の組立て1 依頼事項と結論の要旨2 前提事実と資料一覧3 争点ごとの規範と当てはめ4 計算・選択肢・次の行動5 留保と更新履歴第9 弁護士と税理士の共同作業第10 提出前の確認事項第11 関連記事第12 一次資料と確認状態
第1 この記事の対象と結論

税務調査で提出する回答書と、依頼者又は担当者に示す税務意見書は、どちらも税法上の結論を書く文書である。しかし、宛先、目的、前提となる事実、求める判断及び提出後の効果が異なる。調査担当者への回答書は、質問又は指摘に対して、納税者の認識と根拠資料を記録に残す文書である。税務意見書は、複数の法的構成、計算結果、証拠上の強弱及び未確認事項を示し、依頼者の判断に資する文書である。

両者に共通する基本は、①納税者、税目、課税期間及び対象取引を最初に固定し、②確認できた事実、資料からの推認、依頼者の説明及び未確認事項を分け、③法令、通達、裁判例・裁決及び二次資料の順序を示し、④計算過程と代替計算を再現できる形で残し、⑤断定できない点には確認方法又は留保を付けることである。

本記事の文書構成は、法令で定められた様式ではなく、国税庁の税務調査手続に関するFAQ、事務運営指針、税理士法上の書面添付・意見聴取制度及び現行法令を踏まえた実務上の整理である。個別事件では、調査か行政指導か、質問検査権に基づく提示・提出の求めか、修正申告の勧奨後か、更正等の処分後かによって、文書の目的と期限を組み替える必要がある。

第2 最初に三つの文書を区別する
1 税務調査への回答書

税務調査への回答書は、調査担当者からの質問、資料提出の求め又は調査結果の説明に対し、納税者又は税務代理人の認識を整理して伝えるための文書である。すべての回答を書面で提出しなければならないという一般的な法定様式があるわけではない。口頭回答で足りる事項、資料自体を示す事項及び書面で誤解を防ぐべき事項を分ける必要がある。

回答書には、質問の範囲を超える推測、未確認の数字又は不要な個人情報を広く書かない。他方で、争点となる取引の経緯、契約、入出金、会計処理及び申告処理を断片的に答えると、同じ事実について回答が食い違うおそれがある。質問、回答、根拠資料、回答日及び回答者を対応させることが重要である。

2 税務意見書

税務意見書は、申告前の処理方針、税務調査への対応、修正申告の要否、不服申立て又は訴訟の見通し等について、事実と法令を結び付けて判断材料を示す文書である。結論だけでなく、前提事実、採用しなかった見解、金額への影響及び追加確認事項を示す点に意味がある。

意見書の結論は、資料が増えれば変わり得る。したがって、「現時点で確認した資料の範囲」「この事実を前提とする」「別の事実が確認された場合の結論」を明示し、将来の証拠と現在の判断を混同しないようにする。

3 税理士法33条の2の添付書面

税理士法33条の2の計算事項等記載書面又は審査事項等記載書面は、任意に作成する調査回答書や一般的な意見書とは別の法定制度である。税理士が申告書をどのように計算・整理・審査したか等を所定の様式に具体的に記載し、申告書に添付する。国税庁は、申告審理、準備調査及び調査の要否判断にこの書面を活用するとしている。

同書面が添付され、所定の要件を満たす場合には、税理士法35条に基づく調査通知前の意見聴取が問題となる。ただし、事前通知を要しない調査では意見聴取が行われず、添付書面があること自体で調査が行われないことが保証されるわけでもない。通常の回答書を「33条の2書面」と呼んだり、一般的な税務意見書に同制度の効果が当然に生じると扱ったりしてはならない。

第3 作成前に固定する事項
1 手続の段階を確認する

最初に、税務署等からの連絡が、税務調査か行政指導かを確認する。国税庁の一般納税者向けFAQは、申告内容を確認して課税標準等又は税額等を認定する目的で質問検査等を行うものを調査とし、自発的な見直しを求める行政指導と区別している。また、担当者は具体的な手続に入る前に、いずれに当たるかを明示するとしている。

次に、事前通知前、調査中、調査結果の説明後、修正申告の勧奨後、更正等の処分後のどの段階かを固定する。調査中の事実説明と、処分後の不服申立ての主張書面では、対象、期限及び立証責任の検討が異なる。

2 納税者・税目・期間・取引を一行で示す

回答書又は意見書の冒頭に、少なくとも次の事項を一行又は短い段落で示す。

①納税者の氏名又は法人名

②対象税目

③年分又は事業年度・課税期間

④対象となる取引、勘定科目又は申告項目

⑤文書の目的と宛先

例えば、法人税と消費税、代表者個人の所得税及び源泉所得税が同じ取引から問題になることがある。納税者、税目又は期間を省略すると、ある税目の結論を別の税目にもそのまま適用する誤りが生じやすい。

3 質問と回答の対応を固定する

調査回答書では、担当者の質問を要約し過ぎず、質問日、質問者、質問内容及び回答期限を記録する。質問が口頭であれば、理解した質問を回答書の冒頭に示し、「質問の趣旨を上記のとおり理解した」と記載する方法がある。質問の前提が異なるときは、結論を答える前に前提の相違を明示する。

第4 事実・証拠・推認・未確認を分ける

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弁護士・税理士が緊急時に残す意思決定記録―爆破予告,サイバー事故及び電子申告障害(AI作成)

目次

第1 緊急時の記録は経過表だけでは足りない第2 事案ごとに初動の目的を定める1 爆破予告では安全確保と警察への連絡を先行させる2 サイバー事故では封じ込めと証拠保全を両立させる3 電子申告障害では期限と代替手段を記録する4 国税・地方税と申告・納付を分けて記録する第3 意思決定記録に残す項目1 事実,伝聞,推認及び未確認を分ける2 選択肢,権限者及び理由を残す第4 原資料と後日の再構成を分ける1 メール,チャット,録音及びログを関連付ける2 後日の聴取で補った部分を明示する第5 弁護士・税理士の業務記録としての注意点1 秘密保持と外部提供の範囲を確認する2 税務判断と税理士法上の帳簿を混同しない第6 AI議事録は意思決定記録そのものではない第7 実務用チェックリスト1 初動時2 判断時3 収束後第8 出典と確認範囲1 一次資料2 二次資料と未確認事項
第1 緊急時の記録は経過表だけでは足りない

爆破予告,サイバー事故又は電子申告障害が発生した場合,最初に優先すべきことは,人の安全,事故の拡大防止,証拠保全及び期限対応である。
もっとも,事後に対応の相当性を説明するためには,「何時に何をしたか」という経過だけでなく,その時点で確認できた事実,選択肢,権限者,判断理由,通知,実行結果及び未解決事項を残す必要がある。
後日の記憶で補った部分は,当時作成した記録と区別する。

本記事でいう意思決定記録は,警察,監督官庁又は依頼者への報告書そのものではない。
原資料を保全しつつ,誰がどの情報に基づき,どの選択肢から何を決めたかを,後から検証できる形にした内部記録である。

第2 事案ごとに初動の目的を定める
1 爆破予告では安全確保と警察への連絡を先行させる

警察庁は,インターネット上で爆破予告等を発見した場合は最寄りの警察署等へ通報し,緊急の対応を要する場合は110番通報するよう案内している。
同庁は,被害対象となった施設について,警戒・検索,避難又は行事中止等の措置が必要となることがあるとも説明している。

施設側の記録には,少なくとも,予告の原文・URL・受信時刻,対象場所と予告時刻,警察への連絡時刻と回答,捜索・避難・中止等の選択肢,決定権者,決定理由,来場者・関係者への通知方法及び安全確認の結果を残す。
警察の指示と施設側の自主判断を混同しないことも重要である。

東京大学は,令和8年5月祭について,爆破予告を受け,五月祭常任委員会が警察と協議し,来場者等の安全を確保できないと判断して中止を決定したと公表している。
この公式発表からは中止の事実と大枠の理由を確認できるが,当時検討された全選択肢,権限分担及び通知記録の全部まで確認できるわけではない。
東京大学新聞の事後報道は記録の必要性を考える端緒になるものの,開示決定通知,請求書及び検索範囲の原資料を得ないまま,文書不存在又は対応の違法性を断定してはならない。

2 サイバー事故では封じ込めと証拠保全を両立させる

サイバー事故では,端末の隔離,外部接続の制限,認証情報の変更等により被害拡大を防ぐ一方,ログ,メール,端末イメージその他の調査資料を失わないようにする。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の中小企業向け資料は,対応体制,連絡先,初動対応及び再発防止を平時から整理する必要性を示している。

個人情報保護委員会の資料は,漏えい等の原因・範囲を明らかにする際,ログ等の有無が調査可能性を左右し得ることを示している。
復旧を急ぐためにログを上書きしたり,疑わしいファイルを直ちに削除したりすると,侵入経路,影響範囲及び通知対象の確認が難しくなる。
技術担当者の作業記録と,事務所又は法人としての意思決定記録を相互に参照できるようにする。

3 電子申告障害では期限と代替手段を記録する

電子申告に障害が生じた場合,エラー画面,発生時刻,対象税目・年分,利用者識別番号,送信ファイルの版,受付結果及びe-Taxの稼働状況を保存する。
同時に,復旧待ち,別端末・別回線,書面提出その他の代替手段と,それぞれの期限・負担を検討する。

国税庁は,国税庁のシステムが申告期限直前に利用できない場合でも,期限延長の対象・期間・手続は国税庁の告示等によって定まること,対象外の場合には個別延長の申請が問題となることを案内している。
障害があれば当然に期限が延びると扱わず,国税庁の障害情報,法令・告示及び個別事案の資料を確認する。

4 国税・地方税と申告・納付を分けて記録する

e-Taxに関する国税の期限延長と,eLTAXに関する地方税の期限延長は,根拠と申請先が異なる。
国税庁の対象者指定に該当するか,所轄税務署への個別申請が必要か,地方税では総務大臣の指定又は自治体への申請が必要かを,納税者・税目ごとに確認する。

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事業用車両の交通事故の会計・税務―修理費,保険金,全損・除却,休車損害及び消費税(AI作成)

目次

第1 結論第2 事故ごとに資料と勘定を分ける1 損害明細を相殺しない2 時点を一本の時系列にする第3 修理費か資本的支出か1 原状回復は修繕費が出発点となる2 保険金額と修理費区分は連動しない第4 法人が受け取る保険金・賠償金1 収入と費用を別に計上する2 保険差益の圧縮記帳は自動ではない第5 個人事業者が受け取る保険金・賠償金1 車両そのものの損害と事業収入の補填を分ける2 家事使用部分を区分する第6 全損,除却及び残存車両1 帳簿価額と事故時価額は別の数字である2 代替車両の取得は別取引である第7 休車損害と代替車両費1 民事上の損害額を資料で立証する2 所得課税と消費税を混同しない第8 消費税の判定1 通常の損害賠償金・保険金は課税対象外である2 修理・購入は別に課税仕入れを判定する3 名目ではなく実質で判断する第9 決算・申告前の確認事項第10 根拠資料と確認範囲
第1 結論

事業用車両の交通事故では,受け取った金銭と支出した金銭を差額だけで処理せず,民事上の損害項目,会計上の取引,法人税又は所得税,消費税を分けて確認する必要がある。同じ保険金・損害賠償金でも,法人か個人事業者か,車両そのものの損害か休車による減収かによって所得課税の取扱いが異なる。また,損害賠償金が消費税の対象外であっても,修理代や代替車両の購入は別の課税仕入れとなり得る。

最初に,次の事項を確定する。

1 車両の所有者,使用者及び保険契約者は誰か。
2 法人所有,個人事業用,リース又は私有車の業務使用のいずれか。
3 修理可能か,経済的全損か,廃車・売却・保険会社への引渡しのどれか。
4 支払金が修理費,車両損害,休車損害,代車費用その他のどの項目に対応するか。
5 事故日,修理完了日,保険金額の確定日,入金日,除却日及び買換日がいつか。
6 消費税の課税事業者か,原則課税か簡易課税か,事業供用割合はいくらか。

会計仕訳は契約,所有関係,決算期及び採用する会計方針によって変わるため,本記事では判断の順序と税務上の確認点を整理する。

第2 事故ごとに資料と勘定を分ける
1 損害明細を相殺しない

保険会社が修理工場へ直接支払った場合や,修理費と車両保険金が同額であった場合でも,取引が存在しなかったことにはならない。修理契約の当事者,請求書の宛名,修理代金,保険金又は賠償金の支払先,自己負担額を確認し,総額で記録できる資料を残す。

相手方から一括金を受領した場合は,示談書又は支払明細に基づき,車両修理費,車両時価額,レッカー・保管費,代車料,休車損害,積荷損害等に区分する。項目の性質が分からないまま「雑収入」又は「修繕費」の差額だけを計上すると,所得課税と消費税の判定を誤りやすい。

2 時点を一本の時系列にする

事故日と入金日だけでなく,修理の発注日・完了日・請求書発行日,保険会社が支払額を確定した日,廃車・抹消登録日,残存車両の売却・引渡日及び代替車両の取得・事業供用日を記録する。決算日をまたぐ場合は,未収入金,未払金,固定資産の使用停止及び除却の時期を個別に検討する。

事故受付票,修理見積書,保険会社の認定明細,示談書,入金通知,請求書,振込記録,車検証,固定資産台帳,抹消登録・売却資料及び買換車両の契約書を同じ事故番号で保存する。

第3 修理費か資本的支出か
1 原状回復は修繕費が出発点となる

法人税基本通達7―8―1及び7―8―2は,固定資産の通常の維持管理又は原状回復のための支出と,使用可能期間を延長させ,又は価値を増加させる支出を区分している。事故前の状態へ戻すための板金,塗装又は同等部品への交換は,通常は修繕費を検討する出発点となる。他方,事故を機に性能の高い設備を追加し,又は耐久性・価値を明らかに高める部分は,資本的支出となる可能性がある。

「事故修理」という名称だけで全額を修繕費にできるわけではない。修理見積書を工事項目・部品ごとに分け,原状回復部分,性能向上部分,定期整備・消耗品交換及び事故と無関係な不具合の修理を区分する。

2 保険金額と修理費区分は連動しない

保険会社が修理費全額を認定したことは,その全額が税務上の修繕費になることを意味しない。保険契約上の査定と,税務上の資本的支出・修繕費の判定は目的が異なる。逆に,保険会社が一部しか支払わなかったことだけで,残額が必要経費又は損金にならないとも限らない。

修理後の車両について,取得価額へ加算した部分,費用処理した部分,自己負担額及び保険金・賠償金を別々に記録する。消費税についても,保険金との差額ではなく,修理サービスの対価と請求書を基礎に判定する。

第4 法人が受け取る保険金・賠償金
1 収入と費用を別に計上する

法人が受け取る車両保険金又は損害賠償金は,原則として益金・収益の側で認識し,修理費,除却損,代替車両の取得費等は別に処理する。入金額と支出額を相殺した差額だけを記録しない。

保険金の受領が決算日後でも,決算日前に金額が確定している場合などは,収益計上時期の検討が必要となる。保険会社の認定通知,合意書,支払通知及び入金日を保存し,事故発生だけで金額が未確定の段階と,権利・金額が確定した段階を区別する。

反対に,従業員が運転する事業用車両の事故で法人が被害者に損害賠償金を支払う場合は,受け取る保険金とは別に支出として処理する。

(続きを読む...)事業用車両の交通事故の会計・税務―修理費,保険金,全損・除却,休車損害及び消費税(AI作成)

国税庁の税務統計の読み方―民間給与・会社・申告所得税の標本調査と税務調査事績(AI作成)

目次

第1 はじめに第2 最初に区別すべき4つの公表物1 行政記録の全数集計2 3つの標本調査3 税務調査等の事績4 調査年・事業年度・事務年度第3 3つの標本調査の母集団と集計単位1 民間給与実態統計調査2 会社標本調査3 申告所得税標本調査第4 重複と反復をどう考えるか1 同じ年の中の重複2 年をまたぐ反復第5 抽出率と選択効果は別の問題である1 標本調査の不均等な抽出2 税務調査の選定3 1件当たり金額の分母第6 弁護士・税理士が引用する際の確認手順1 資料名と表番号を固定する2 母集団と除外対象を書く3 集計単位と重複可能性を書く4 推計値と実数を分ける5 選択後の割合を母集団に外挿しない6 個別事件への当てはめは別に行う第7 関連する当ブログの記事第8 国税庁の一次資料
第1 はじめに

国税庁が公表する統計には、申告・課税などの行政記録を集計したもの、標本を抽出して全体を推計したもの、税務調査等の実績を集計したものがある。いずれも有用であるが、同じ「件数」「割合」「1件当たり」といった表現でも、母集団、集計単位、抽出方法及び分母が異なる。

特に、民間給与実態統計調査、会社標本調査及び申告所得税標本調査は、名称に「標本調査」を含む一方、税務調査事績は、調査対象として選定された納税者等に対する実地調査又は簡易な接触の結果である。後者を納税者全体の無作為標本とみなすことはできない。

本記事では、国税庁の一次資料に基づき、これらの統計について、①誰又は何が母集団であるか、②1行又は1件が何を表すか、③同じ人・会社が複数回現れ得るか、④選択の仕組みが数値の意味にどう影響するかを整理する。個別の統計表を引用する前に、その数値が答えられる問いと答えられない問いを切り分けることが目的である。

第2 最初に区別すべき4つの公表物
1 行政記録の全数集計

国税庁の「統計情報」には、徴税、申告所得税、源泉所得税、法人税、相続税、消費税等の申告・課税事績を集計した統計年報などがある。これらは、対象となる行政記録を集計したものであり、標本から母集団を推計する標本調査とは性質が異なる。

ただし、全数集計であっても、「日本にいるすべての人」又は「すべての事業者」を意味するとは限らない。申告書、課税、源泉徴収義務者など、各表が対象とする行政記録の範囲が、そのまま母集団の範囲になる。

2 3つの標本調査

民間給与実態統計調査は、民間事業所の給与所得者を対象として、給与階級別分布等を明らかにする調査である。会社標本調査は、国内の普通法人のうち所定の範囲を対象として、資本金階級別・業種別の実態等を明らかにする調査である。申告所得税標本調査は、申告所得税の納税者を対象として、所得者別・所得種類別の構成等を明らかにする調査である。

いずれも層化等により標本を抽出するが、抽出率は一律ではない。規模の大きい層を全数抽出とし、それ以外の層について異なる抽出率を用いることがある。そのため、単純な標本件数と推計された全体件数を混同してはならない。

3 税務調査等の事績

法人税等又は所得税・消費税の調査事績は、実地調査や簡易な接触を実施した件数、そのうち申告漏れ等が把握された件数、追徴税額等を集計したものである。調査対象は、申告内容、資料情報、過去の調査状況などを踏まえ、調査必要度を考慮して選定される。

したがって、「実地調査1件当たりの申告漏れ所得金額」や「調査した件数のうち非違があった割合」は、選定された案件に条件付けられた数値である。これを納税者全体の申告漏れ率又は平均申告漏れ額と読み替えることはできない。

4 調査年・事業年度・事務年度

公表資料の期間も統一されていない。民間給与実態統計調査は暦年の給与、会社標本調査は一定期間内に終了した事業年度、税務調査事績は原則として7月から翌年6月までの事務年度を基礎とする。異なる資料を比較するときは、表題の「令和6年分」「令和6年度」「令和6事務年度」が同じ期間を意味しないことに注意を要する。

第3 3つの標本調査の母集団と集計単位
調査主な母集団主な集計単位範囲を読む際の注意民間給与実態統計調査年末現在の民間事業所の給与所得者給与所得者官公庁職員、日雇労働者その他の所定の者を含まない。複数の勤務先から給与を得た人は複数人として集計され得る。会社標本調査活動中の国内普通法人のうち所定の範囲事業年度同一法人に対象期間中に終了する事業年度が複数あれば、それぞれ対象になり得る。申告所得税標本調査申告所得税の納税者納税者集計対象は、所定の時点までに申告し、申告納税額がある者であり、還付申告者や申告納税額のない者を含まない。
1 民間給与実態統計調査

民間給与実態統計調査の給与所得者は、原則として調査年の12月31日現在で民間事業所に勤務する給与所得者であり、所得税の納税の有無を問わない。一方、官公庁等の職員、日々雇い入れられる者、給与所得者の全員について所得税を源泉徴収する必要のない事業所の従事者等は対象外である。

標本は、事業所を抽出し、その事業所に所属する給与所得者を調べる二段抽出である。年間給与額が2000万円を超える者等について全数を調査する層が設けられ、その他の標本については抽出率及び回答率に応じた推計が行われる。

同一人が年中に複数の事業所に勤務し、それぞれから給与の支払を受けた場合、各事業所の給与所得者として複数人に数えられ得る。このため、同調査の「給与所得者数」や平均給与を、直ちに個人単位の就業者数又は一人の年間総収入と同一視することはできない。

2 会社標本調査

会社標本調査は、会社企業を資本金階級等により層化して抽出する。大規模法人や連結・グループ通算に関係する法人等には全数抽出となる層があり、その他の層には抽出率に応じた標本調査が用いられる。集計値は、標本法人の数値に標本抽出率の逆数に相当する係数を乗じるなどして推計される。

集計単位は、法人そのものではなく、対象期間内に終了した事業年度を基本とする。同一法人に対象期間中に終了した事業年度が2つ以上ある場合には、それぞれが調査対象となり得る。この性質を踏まえずに「法人数」と読み替えると、集計対象を誤るおそれがある。

また、利益計上法人と欠損法人の所得金額等は事業年度ごとに区分される一方、法人数の区分には、対象期間中に利益計上事業年度が1つでもあるかという別の取扱いがある。表の注記を確認し、金額の分類基準と会社数の分類基準を分けて読む必要がある。

3 申告所得税標本調査

申告所得税標本調査の対象は、個人の所得税の確定申告をしたすべての人ではない。所定の集計時点までに申告した者のうち、申告納税額がある者を母集団とするため、還付申告者及び申告納税額のない者は含まれない。

所得者の種類や所得階級等に応じて標本を抽出し、抽出率に応じて母集団を推計する。高額所得の層などで全数抽出が行われる場合がある。したがって、標本数の大小だけから、その層の母集団に占める割合又は推計精度を判断することはできない。

(続きを読む...)国税庁の税務統計の読み方―民間給与・会社・申告所得税の標本調査と税務調査事績(AI作成)

更正の請求に返事がないとき―未処理,理由がない旨の通知,裁決の遅延を分ける(AI作成)

目次

第1 最初に,どの段階で止まっているかを確認する第2 提出した更正の請求が確認できるか1 更正の請求と,職権更正を求める相談を分ける2 提出内容と到達の証拠を対応させる第3 税務署長の応答と行政手続法の適用関係1 国税通則法23条4項を出発点とする2 行政手続法7条をそのまま根拠としない第4 処分がない場合の不作為に対する救済1 不作為についての審査請求は,国税庁長官への手続である2 裁判所に求める結果も区別する第5 理由がない旨の通知を受けた場合第6 再調査の決定・審査請求の裁決が遅れている場合1 最初の更正請求の放置とは,適用規定が異なる2 裁決を待たずに原処分の取消訴訟を提起する場合第7 税理士と弁護士の引継ぎ及び納付資金第8 関連記事及び出典
第1 最初に,どの段階で止まっているかを確認する

更正の請求を提出したのに返事がない場合と,更正をすべき理由がない旨の通知を受けた場合,さらにその通知を争う審査請求の裁決を待っている場合では,根拠条文,提出先及び争う対象が異なる。
更正の請求と審査請求を混同し,「3か月待てば認められる」「すべて国税不服審判所へ申し立てればよい」と説明することはできない。

本記事は,令和8年10月9日に確認した現行法と国税庁等の公的資料に基づき,国税の更正の請求について整理する。地方税,税額計算の個別論点及び更正の請求期間の全例外は扱わない。

現在の状態中心となる規定・手続更正の請求にまだ処分がない国税通則法23条4項。不作為についての審査請求は行政不服審査法による。更正をすべき理由がない旨の通知を受けた通知処分を対象とする再調査の請求又は審査請求,その後の取消訴訟を検討する。再調査の請求の決定又は審査請求の裁決がない不服申立て手続内の不作為の除外と,国税通則法75条4項・115条の別の仕組みを確認する。
第2 提出した更正の請求が確認できるか
1 更正の請求と,職権更正を求める相談を分ける

国税通則法23条は,税額等の計算に誤りがある場合等の更正の請求を定める。請求の要件・期間,請求書に記載する事項及び提出先を確認する必要がある。
一般には法定申告期限から5年以内という規定があるが,個別税法の特則,後発的理由による請求及び対象年分を確認せずに期限を断定してはならない。

税務署への問い合わせ,還付を求めるメール又は職権による是正の要望が,すべて法令に基づく更正の請求に当たるわけではない。何を,誰が,どの税目・期間について,どの根拠で提出したかを確定する。

2 提出内容と到達の証拠を対応させる

請求書と添付資料の提出版,対象となる申告書,更正前後の計算,請求理由を裏付ける証憑,提出先及び日付を保存する。電子提出ではe-Taxの受信通知と提出データを対応させ,添付資料を別送した場合はその到達も確認する。
電話で催促した記録だけでは,請求の内容と到達の双方を示せない場合がある。

返送された場合には,形式上の不足の指摘なのか,請求を拒否する通知なのか,別の手続の案内なのかを確認する。受け取った文書,封筒,提出版及びその後の補足資料を残し,元の請求を取り下げた事実の有無も確認する。

第3 税務署長の応答と行政手続法の適用関係
1 国税通則法23条4項を出発点とする

同項は,更正の請求があった場合,税務署長が請求に係る課税標準等又は税額等について調査し,更正をするか,更正をすべき理由がない旨を請求者に通知することを定める。
請求書を受け取ったという事実と,請求どおりの税額に変更する義務があることは別である。求める更正を裏付ける事実・税法上の根拠・計算を示す必要がある。

2 行政手続法7条をそのまま根拠としない

国税通則法74条の14第1項は,通常の国税処分について行政手続法第2章・第3章の多くを適用除外とし,8条及び14条の理由提示を除外対象から外している。酒税法第2章の免許関係には別の取扱いがある。
更正の請求を,一般の許認可申請と同じ理由で行政手続法7条の審査開始義務や6条の標準処理期間に直接結び付けてはならない。

第1項の除外と,行政指導についての同条2項の除外は範囲が異なる。税務署からの追加資料の依頼や取下げに関する働きかけは,その法的性質と適用規定を確認する必要がある。

第4 処分がない場合の不作為に対する救済
1 不作為についての審査請求は,国税庁長官への手続である

行政不服審査法3条は,法令に基づく申請から相当期間が経過したのに処分がない場合,申請者による不作為についての審査請求を認める。更正の請求も,このような申請に含まれる。
税務署長等の不作為については,同法4条に基づく提出先を確認する。国税庁の手続案内H5-3は,税務署長,国税局長又は国税庁長官の不作為について,国税庁長官に提出する手続を示している。

これは,既にされた国税処分を国税不服審判所長への審査請求で争う手続とは異なる。審査請求書(不作為用)の書き方も,更正の請求を記載例に挙げ,申請の内容,趣旨・理由及び添付資料の記載を案内している。

相当期間が経過したかは,請求内容,調査の必要性,資料の提出・補足,税務署の説明及び実際の処理経過を踏まえて検討する。請求から一律3か月が法定の回答期限になるわけではない。
行政不服審査法49条による不作為の違法・不当の宣言と一定の処分を命じる仕組みも,請求どおりの更正が自動的に認められる制度ではない。

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出向者給与負担金の税務―消費税・法人税・退職金負担金の確認事項(AI作成)

目次第1 契約の実態を確定してから税務処理を決める第2 消費税の取扱い1 出向者給与負担金には消費税の課税関係が生じない2 人材派遣の対価は課税対象である第3 法人税上の給与負担金1 出向先の使用人として勤務する場合2 出向先で役員となる場合3 実際の給与を超える負担金に注意する第4 退職金負担金の取扱い1 負担金を支出する三つの時期2 定年退職後も出向先で勤務を続ける場合3 合理的な計算根拠を残す第5 契約書・請求書・会計資料の確認事項第6 関連記事第7 出典・参考資料
第1 契約の実態を確定してから税務処理を決める

出向者給与負担金の税務は,請求書の名称だけで決めることができない。
最初に,出向元との雇用関係を維持しながら出向先でも雇用関係に基づいて勤務する在籍出向なのか,人材派遣会社による役務提供なのか,出向先による直接雇用なのかを区別する必要がある。

国税庁のタックスアンサーは,出向を,出向者が出向元との雇用関係を維持しながら,出向先との間でも雇用関係に基づいて勤務する形態としている。
これに対し,人材派遣では,派遣された使用人の雇用関係は派遣元との間にだけ存在し,派遣先は派遣元から役務の提供を受ける。

したがって,定年後に出向先が本人を直接雇用し,出向元との雇用関係が終了する場合は,定年前と同じ職場で働いても,定年後の金銭負担を当然に「出向者給与負担金」と処理することはできない。
再雇用後も出向元が雇用主として賃金を支払い,在籍出向を継続するのかを,労働契約と出向契約の双方から確認する必要がある。

第2 消費税の取扱い
実態消費税の判断請求書の確認在籍出向の給与負担給与負担金には課税関係が生じない双方の雇用関係,給与台帳,負担額の算式人材派遣サービス派遣元の課税売上げ・派遣先の課税仕入れとなるのが原則派遣契約,役務内容,料金給与負担と別の管理役務が混在給与部分と,対価性のある役務部分を別に判定する給与負担金・役務対価・費用の内訳と契約上の根拠
1 出向者給与負担金には消費税の課税関係が生じない

国税庁のタックスアンサーNo.6475は,在籍出向について,①出向元が給与全額を支払い,全部又は一部を出向先へ請求する方法,②出向先が給与全額を支払い,全部又は一部を出向元へ請求する方法,③出向元と出向先が給与の一部ずつを支払う方法のいずれでも,出向者に対して給与を支給したものとして取り扱い,給与負担金には消費税の課税関係が生じないとしている。

これは,出向先が出向元から課税役務を購入するのではなく,出向先との雇用関係に基づく給与を負担するという整理による。
請求書に「出向料」「業務委託料」等の名称を付けただけで実態は変わらないため,契約書,指揮命令,給与計算及び負担額の算定根拠を一致させる必要がある。

2 人材派遣の対価は課税対象である

人材派遣は,派遣元が派遣先へ役務を提供する取引であるため,派遣元が受け取る派遣料金は課税売上げとなり,派遣先では原則として課税仕入れとなる。
出向と派遣では消費税の結論が逆になるため,名目だけを出向にするのではなく,雇用関係と事業の実態に基づいて区別する必要がある。

例えば,請求合計33万円のうち,双方に雇用関係がある在籍出向の給与負担金30万円と,別途提供する管理業務の対価3万円が区分されている場合,33万円全体を給与負担金と扱うのでも,全体を派遣料金と扱うのでもない。
給与負担金30万円の実態と,管理業務3万円の役務提供・対価性を別に確認する。
これは区分の考え方を示す仮例であり,管理料という名称だけで課税を断定するものではない。

第3 法人税上の給与負担金
1 出向先の使用人として勤務する場合

国税庁のタックスアンサーNo.5245は,出向元が出向者へ給与を支給し,出向先が退職給与を除く給与相当額を給与負担金として出向元へ支出した場合,その負担金を出向先における出向者への給与として取り扱うとしている。
出向者が出向先において使用人である場合は,その給与負担金は,原則として出向先の使用人給与として損金の額に算入される。

給与負担金の月額,賞与の取扱い,社会保険料の事業主負担分,通勤費その他の付随費用をどこまで含めるかは,出向契約で明確にする。
出向元が実際に負担した給与等と出向先の負担額を照合できる明細を保存し,毎月の請求額が契約上の算式と一致するようにする必要がある。

2 出向先で役員となる場合

出向者が出向先で役員となる場合は,給与負担金にも法人税法34条の役員給与に関する規制が及ぶ。

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破産手続開始後の相続放棄と破産法238条――相続不動産の売却・登記・税務(AI作成)

目次

第1 問題と結論1 本記事が扱う時系列2 結論の要旨第2 破産法238条の効力1 破産財団に対する相対的な限定承認効2 破産管財人が放棄の効力を認める場合3 破産財団は相続財産法人ではない第3 破産管財人による分別管理と売却1 破産法242条による分別管理2 不動産の任意売却と裁判所の許可3 後順位相続人の放棄第4 相続不動産の登記1 登記で現れる二つの法律関係2 登記経路の検討と事前照会3 法務局に示す資料4 類似例は同一事案ではない第5 税務及び会計の確認1 破産財団を別の納税主体としない2 個人の譲渡所得と強制換価手続の非課税3 破産法上の限定承認効と所得税法59条4 消費税と取得費・譲渡費用5 不動産取得税・登録免許税・固定資産税を分ける第6 実務チェックリスト第7 資料の裏付けと限界1 一次資料で確認した事項2 一次資料の裏付けが得られていない事項出典・参考資料
第1 問題と結論

1 本記事が扱う時系列

本記事は,被相続人の死亡,相続人の破産手続開始決定,その相続人による相続放棄の順にできごとが生じた場合を扱う。
具体的には,破産手続開始決定前に相続が始まり,決定後に破産者が家庭裁判所で相続放棄をした場合である。

この時系列では,民法上の相続放棄の効力だけで結論を出すことができない。
破産法238条が相続放棄の効力を破産財団との関係で修正し,同法242条が破産管財人に相続財産の分別管理及び処分を求めているからである。

2 結論の要旨

第1に,破産手続開始決定後の相続放棄は,破産財団に対しては限定承認の効力を有するにとどまる。
そのため,破産管財人が放棄の効力を認める手続をとらない限り,相続財産の換価価値を破産手続の外へ出すことはできない。

第2に,この効果は破産財団との関係に限られる。
破産財団が民法951条の相続財産法人になるわけではなく,破産管財人が当然に相続財産清算人の地位を取得するわけでもない。

第3に,相続不動産の任意売却には破産法78条2項1号の裁判所の許可が必要であり,売却後の登記は事案ごとに管轄法務局と事前協議すべきである。
公刊資料の範囲では,この時系列と完全に一致する登記先例を確認できなかったため,本記事の登記申請の構成は確定的な先例ではなく,事前照会のための候補案として示す。

第2 破産法238条の効力

1 破産財団に対する相対的な限定承認効

破産法238条1項は,破産手続開始決定前に破産者のために相続が始まり,破産者が開始決定後に単純承認又は相続放棄をした場合,それぞれ破産財団に対しては限定承認の効力を有するとする。
相続財産が債務超過であるときの単純承認と,資産超過であるときの相続放棄のどちらによっても,破産債権者の配当原資が害されないようにする趣旨である。

ここで重要なのは,条文が「破産財団に対しては」と限定していることである。
民法939条による相続放棄の一般的効果を全面的に否定するのではなく,破産手続の配当原資との関係でのみ,限定承認と同様に扱うものである。

2 破産管財人が放棄の効力を認める場合

破産法238条2項は,破産管財人が相続放棄の効力を認めることを許している。
この場合,破産管財人は,相続放棄があったことを知った時から3か月以内に,その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

したがって,当該相続財産を換価する前に,破産管財人が同項の申述をしたか,その申述が受理されたか,受理の審判が確定したかを確認する必要がある。
この点は,破産者本人の相続放棄申述受理証明書だけでは判断できない。

3 破産財団は相続財産法人ではない

国税庁が公開する名古屋高裁金沢支部平成20年6月16日判決(平成19年(行コ)第17号)は,破産法238条1項は破産手続との関係で限定承認と同様の効力を付与するものにすぎず,破産財団を法人とするものではないと判示した。
破産者は財産の帰属主体たる地位を失わず,破産管財人は管理処分権を専属的に行使するという区別である。

他方,民法951条は,相続人のあることが明らかでないときに相続財産が法人となることを定めている。
これは破産法238条とは根拠も要件も異なる制度であり,両者を同一視してはならない。

第3 破産管財人による分別管理と売却

1 破産法242条による分別管理

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株式交換の反対株主に支払われる株式買取代金の税務―みなし配当,譲渡所得及び収入時期(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論第2 最初に会社法上の当事者を確定する1 完全子会社の反対株主2 完全親会社の反対株主とは区別する第3 通常の株式交換に関する課税繰延べとの関係1 完全親法人等の株式を受け取る場合2 反対株主への買取代金は全体判定から除かれる第4 買取代金を二つの所得に分ける1 みなし配当となる部分2 株式等の譲渡所得等となる部分3 例示第5 収入すべき時期1 原則は株式交換の効力発生日2 協議成立日又は裁判所の決定日第6 上場株式であった場合の注意第7 弁護士・司法書士・税理士の実務分担1 弁護士実務2 司法書士実務3 税理士実務第8 証拠・資料のチェックリスト第9 一次資料と資料の限界
第1 この記事の対象と結論

この記事は,株式交換完全子会社の個人株主が会社法785条に基づく株式買取請求をし,発行法人である完全子会社から金銭の支払を受ける場合の所得税上の取扱いを扱う。

通常の株式交換で完全親法人等の株式だけを受け取る株主には,一定の要件の下で所得税法57条の4による課税繰延べがある。他方,反対株主が買取請求によって発行法人へ自己の株式を買い取らせ,金銭を受け取る場合は,交付金銭の全額を単純な株式売却代金として処理するのではなく,みなし配当となる部分と株式等の譲渡所得等の収入金額となる部分に分ける必要がある。

収入時期は原則として株式交換の効力発生日であるが,国税局の文書回答は,価格が後日の協議で決まった場合は協議成立日,裁判所の決定で決まった場合は決定日を収入時期として差し支えないとしている。ただし,この文書回答は平成23年の個別照会に対するものであり,当時の税率や制度説明を現在の申告へそのまま使うことはできない。

第2 最初に会社法上の当事者を確定する
1 完全子会社の反対株主

会社法785条の株式買取請求では,株式交換完全子会社の反対株主が,自己の株式を発行法人である完全子会社に買い取らせる。買取りの効力は株式交換の効力発生日に生じる(会社法786条5項)。

この場面では発行法人が自己株式を取得するため,所得税法25条1項のみなし配当と株式等の譲渡所得等の区分が問題となる。

2 完全親会社の反対株主とは区別する

会社法797条は,株式交換完全親会社の反対株主の買取請求を定める。最高裁令和8年9月30日決定はこの完全親会社側の価格決定を扱ったものである。

完全親会社側と完全子会社側では,誰が誰の株式を取得するかという法的構造が異なる。大阪国税局の平成23年文書回答は完全子会社側の会社法785条の事例であり,最高裁令和8年決定の当事者へ結論をそのまま移すことはできない。

第3 通常の株式交換に関する課税繰延べとの関係
1 完全親法人等の株式を受け取る場合

国税庁タックスアンサーNo.1526によれば,居住者が旧株を株式交換完全親法人へ譲渡し,完全親法人又はこれと完全支配関係にある法人の株式だけを受け取る一定の株式交換では,その旧株の譲渡がなかったものとみなされる。課税を永久に免除するのではなく,受け取った株式へ旧株の取得価額を引き継ぐ課税繰延べである。

2 反対株主への買取代金は全体判定から除かれる

同タックスアンサーは,株式交換の際に株式以外の資産が交付されないという要件を説明するに当たり,反対株主の買取請求に基づいて支払われる金銭等を除外している。したがって,一部の反対株主へ買取代金を支払ったことだけで,他の株主に係る株式交換全体が直ちに課税繰延べの対象外となるわけではない。

しかし,この除外は,買取請求をした反対株主本人が受け取る金銭まで非課税又は繰延べになるという意味ではない。組織再編全体の要件判定と,金銭を受け取る個々の反対株主の課税を分けて考える必要がある。

第4 買取代金を二つの所得に分ける
1 みなし配当となる部分

発行法人が自己株式を取得し,株主へ金銭を交付した場合,交付金銭のうち,その株式に対応する資本金等の額を超える部分は,所得税法25条1項により配当等とみなされ得る。

大阪国税局の文書回答は,株式交換に反対する個人株主から完全子会社が自己株式を買い取る場合について,株式に対応する連結個別資本金等の額を超える部分を配当等とみなし,それ以外の部分を株式等の譲渡所得等の収入金額とする見解を示した。現行法では用語や参照条文の改正を確認した上で,対象株式に対応する資本金等の額を計算する必要がある。

2 株式等の譲渡所得等となる部分

交付金銭からみなし配当部分を除いた残額が,株式等の譲渡所得等の収入金額となる。譲渡所得等の金額は,この収入金額から取得費及び譲渡費用を控除して計算する。

したがって,裁判所が定めた買取価格と取得費との差額を全て譲渡益とする計算は適切でない場合がある。まずみなし配当部分を切り分け,残部について取得費を対応させる順序で検討する。

3 例示

例えば,買取代金が1000万円で,対象株式に対応する資本金等の額が200万円であると仮定すると,800万円がみなし配当部分となり,残る200万円が株式等の譲渡所得等の収入金額となる。さらに旧株の取得費を譲渡所得等の計算で控除する。

これは構造を示す単純な例である。実際には,資本金等の額の計算,株式数,取得費,口座区分,非居住者該当性,源泉徴収,住民税及び法人株主の場合の取扱いを個別に確認する必要がある。

第5 収入すべき時期
1 原則は株式交換の効力発生日

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領収書がない支出の税務と証拠保存―必要経費・損金,インボイス,カード明細及び出金伝票(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論第2 所得税の必要経費と法人税の損金1 個人事業者の必要経費2 法人の損金3 証拠の強さを組合せで考える第3 消費税の仕入税額控除1 所得税・法人税と消費税は別に判定する2 カード利用明細書は通常それだけでインボイスにならない3 宛名がない領収書でも直ちに無効とは限らない4 支払と具体的な給付の対応を確認する第4 電子取引データはデータのまま保存する1 紙への印刷だけで終わらせない2 電子メール・ウェブサイト・アプリ第5 領収書がないときの具体的な対応1 まず再発行又は再取得を試みる2 外部資料を先に保全する3 同時作成の支出記録を残す4 帳簿と申告まで照合する第6 弁護士・司法書士・税理士事務所の注意点1 弁護士事務所2 司法書士事務所3 税理士事務所第7 税務調査での説明と提出第8 関連記事第9 出典・資料の位置付け1 法令2 国税庁の公表資料
第1 この記事の対象と結論

領収書を紛失した場合,自動販売機等で領収書が発行されない場合又はウェブサイトから領収書データを取得する場合は,次の四つを分けて確認する必要がある。

①所得税の必要経費又は法人税の損金に当たる支出か
②課税仕入れに当たる取引であり,仕入税額控除に必要な帳簿及び請求書等があるか
③電子取引の取引情報をデータのまま保存しているか
④税務調査で,支出の相手方,日付,金額,内容及び業務との関係を説明できるか

領収書がないという一事だけで①の結論が決まるわけではない。しかし,カード明細又は自社作成の出金伝票があれば,②から④までの要件を当然に満たすわけでもない。領収書の再取得を試み,外部資料と同時作成の記録を組み合わせ,帳簿との対応を残すことが基本となる。

第2 所得税の必要経費と法人税の損金
1 個人事業者の必要経費

所得税法37条1項は,事業所得等の必要経費について,総収入金額に係る売上原価,その収入を得るために直接要した費用及びその年に生じた販売費・一般管理費その他業務上の費用を基本としている。

したがって,領収書という一種類の書面の有無だけでなく,実際に支出したか,業務に必要な支出か,家事上の支出が混在していないか,どの年分の費用かを確認する必要がある。国税庁「やさしい必要経費の知識」も,必要経費の範囲と債務確定の時期を分けて説明している。

2 法人の損金

法人税法22条3項は,別段の定めがあるものを除き,売上原価等,販売費・一般管理費その他の費用及び資本等取引以外の損失を損金の額に算入するものとしている。

販売費・一般管理費等は,原則として,事業年度終了の日までに債務が成立し,具体的な給付原因が生じ,金額を合理的に算定できることを確認する必要がある(国税庁「販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定」)。領収書を後から作ることでは,取引の実在又は債務確定の時期を証明したことにはならない。

3 証拠の強さを組合せで考える

領収書がない場合は,契約書,注文履歴,請求書,納品・利用記録,銀行振込記録,カード又は決済アプリの利用明細,電子メール,交通系ICカードの履歴,参加者・訪問先・移動経路の記録等を組み合わせる。

支払の記録だけでは,何を購入したか,業務に使ったか又は家事上の支出ではないかまで分からない場合がある。反対に,契約書又は注文記録だけでは,実際の支払を確認できない場合がある。支出の発生,内容,金額,支払及び業務との関係を,それぞれどの資料で確認するかを整理する必要がある。

第3 消費税の仕入税額控除
1 所得税・法人税と消費税は別に判定する

消費税法30条7項から9項までは,仕入税額控除について,原則として帳簿及び適格請求書等の保存を求め,帳簿のみでよい取引その他の例外も定めている。国税庁「仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項」も,帳簿と請求書等の各記載事項を説明している。

所得税の必要経費又は法人税の損金として認められる可能性があることと,消費税の仕入税額控除を受けられることは,同じ判断ではない。一般課税の事業者は,支出の事実だけでなく,保存する書類又は電磁的記録が適格請求書等に当たるか,帳簿のみの保存でよい例外に当たるかを確認する必要がある。

2 カード利用明細書は通常それだけでインボイスにならない

国税庁のインボイス制度Q&A問103は,クレジットカード会社が交付する利用明細書は,実際に資産又は役務を提供した事業者が作成した書類ではなく,取引内容や適用税率等の記載事項も通常満たさないため,一般的に適格請求書には当たらないと説明している。

カード利用明細書は支払先,利用日及び金額を確認する重要な資料であるが,販売店等が発行する領収書,請求書又は利用証明書等の取得・保存を別に確認する必要がある。

3 宛名がない領収書でも直ちに無効とは限らない

小売業,飲食店業,タクシー業等の一定の事業者は,適格請求書に代えて適格簡易請求書を交付できる。適格簡易請求書では,交付を受ける事業者の氏名又は名称を記載する必要がない(国税庁「インボイス制度について」)。

したがって,「上様」又は宛名のない領収書を一律に無効と判断するのではなく,発行者,登録番号,取引年月日,取引内容,税率ごとの対価及び税率又は消費税額等の必要事項を確認する必要がある。

4 支払と具体的な給付の対応を確認する

帳簿・請求書等の保存に加え,支払に対応する資産の譲受け,借受け又は役務提供を具体的に確認する。

(続きを読む...)領収書がない支出の税務と証拠保存―必要経費・損金,インボイス,カード明細及び出金伝票(AI作成)

YouTuber・配信者の著作権・広告収益に相続税はかかるか―財産評価基本通達148と営業権(AI作成)

目次

第1 結論―チャンネルを一つの財産として評価しない1 権利・収益・アカウントを分ける2 最初に作る五つの一覧第2 動画の著作権と著作者人格権1 アップロードした人が全権利者とは限らない2 著作権は承継できるが著作者人格権は承継しない3 共同相続後の管理を決める第3 Google・YouTube・AdSenseの手続1 法的な承継とログイン権限は同じではない2 ブランドアカウントとチャンネル権限を区別する3 未払AdSense収益の受領手続第4 未払収益と死亡後の収益を分ける1 死亡時までに発生した未払収益2 死亡後に生じる収益第5 著作権の相続税評価―財産評価基本通達1481 著作権は相続税の課税対象となり得る2 通達148の算式3 固定倍率を使い回さない第6 営業権の評価と個人の才能への依存1 個人事業の営業権2 死亡とともに消滅する営業権は評価しない第7 法人運営と非上場株式1 権利者と契約名義を確認する2 二重計上を防ぐ第8 弁護士・税理士が集める資料1 初動で保存する資料2 共同作業の分担第9 裁判例・資料の確認状況1 直接の公表裁判例を前提にしない第10 出典・参考資料1 法令・国税庁資料2 Google・YouTube公式資料3 二次資料
第1 結論―チャンネルを一つの財産として評価しない
1 権利・収益・アカウントを分ける

YouTuber,動画配信者又はインフルエンサーが死亡した場合,「YouTubeチャンネルを相続できるか」だけを検討しても,民事,税務及びプラットフォーム上の手続を整理できない。
少なくとも,①動画等の著作権,②死亡時までに発生した未払収益,③死亡後に著作権又は事業から生ずる収益,④Google・YouTube・ブランドアカウント及びAdSenseの管理権限,⑤法人が事業主体である場合の株式に分ける必要がある。

国税庁は,著作権を含む金銭に見積もることができる経済的価値のある財産が相続税の課税対象になると説明している。
しかし,アカウント名や登録者数そのものを直ちに一つの相続財産として評価するのではなく,死亡時に誰がどの権利を有し,どの将来収益がその権利に帰属するかを確定する必要がある。

2 最初に作る五つの一覧

実務では,次の五つを別々の一覧にすると整理しやすい。
①動画,台本,写真,楽曲,サムネイル,ロゴ等の権利一覧
②AdSense,メンバーシップ,Super Chat,スポンサー料,物販代金等の未払額一覧
③Googleアカウント,ブランドアカウント,YouTube Studio及びAdSenseの権限一覧
④制作費,外注費,出演料,音源利用料,返金その他の債務一覧
⑤個人事業か法人事業か,法人の場合は株主,役員,契約名義及び知的財産の帰属を示す一覧

第2 動画の著作権と著作者人格権
1 アップロードした人が全権利者とは限らない

動画には,映像,台本,写真,音楽,イラスト,ロゴ,出演者の実演その他の複数の素材が含まれ得る。
チャンネルの開設者又は動画の投稿者が,これらすべての著作権者であるとは限らない。

撮影・編集された動画は,映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され,物に固定されていれば,映画の著作物に当たり得る(著作権法2条3項)。
映画の著作物の著作者は,制作,監督,演出,撮影,美術等を担当してその全体的形成に創作的に寄与した者であり(同法16条),撮影や編集を外注した場合は,外注先の撮影者・編集者が著作者となることがある。
もっとも,著作者が映画製作者(映画の著作物の製作に発意と責任を有する者。同法2条1項10号)に対し製作への参加を約束しているときは,その映画の著作物の著作権は映画製作者に帰属する(同法29条1項)。
この場合も著作者人格権は著作者に残るので(同法59条),外注契約の内容から,著作権が投稿者側と外注先のどちらにあるかを確認する。
相続税の課税対象となる著作権の範囲は,この帰属によって決まる。

雇用又は法人名義の制作,外注,著作権譲渡,利用許諾,共同制作及び第三者素材の利用がある場合は,契約書,発注書,請求書,制作データ及び公開時の表示から権利の帰属と利用範囲を確認する。
相続の対象を決める前提として,被相続人が有していた権利だけを特定する必要がある。

2 著作権は承継できるが著作者人格権は承継しない

著作権法61条は著作権の譲渡を予定しており,民法896条による包括承継の対象にもなり得る。
これに対し,著作者人格権は著作者の一身に専属し,譲渡することができないため,相続されない(著作権法59条)。

もっとも,著作者の死後も,著作者が生存していれば著作者人格権の侵害となるべき行為を原則としてしてはならない(著作権法60条)。
相続人が著作権を取得したからといって,故人の氏名表示を変え,内容を自由に改変し,又は第三者の権利を無視して再公開できるわけではない。

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利益はあるのに現金がない会社―内部留保・課税所得・資金繰りを弁護士と税理士が一緒に読む(AI作成)

目次

第1 利益,内部留保,課税所得及び現金を分ける1 四つの数字の役割2 内部留保は現金の別口座ではない3 営業利益,純利益及び調整後EBITDAを区別する第2 黒字でも現金が減る理由と計算例1 売上げを計上しても代金が未回収である2 設備代金の支払と減価償却費は一致しない3 借入元本を返済する4 納税と費用計上の時期が異なる5 利益から返済後の現金までをつなぐ計算例第3 会計利益から課税所得への調整を読む1 支出した額がすべて損金になるわけではない2 利益剰余金の増加だけで所得を計算しない第4 弁護士と税理士が共有する確認資料1 同じ基準日と対象法人で資料をそろえる2 資金繰りを日付で検証する3 法的評価と税務処理を対応させる第5 個別の法律問題へつなげる1 資金不足と破産法上の支払不能は同じではない2 債務者の資金不足だけで貸倒損失としない3 会社の財産を役員個人の現金と扱わない第6 出典・参考資料
第1 利益,内部留保,課税所得及び現金を分ける

会社が黒字であることと,期限までに支払えることは別である。
決算書に利益剰余金が多く計上されていても,その額と同額の現金が銀行口座にあるとは限らない。
反対に,借入れによって預金が増えても,それだけで会社の利益が増えたことにはならない。

本記事は,法人の決算書,法人税申告書及び資金繰りを結び付け,債権回収,支払猶予,事業再建又は役員との取引を検討するときの読み方を整理するものである。
基準日は令和8年10月8日である。
以下の数値例は,違いを説明するための仮定であり,実際の会社の決算又は特定の裁判例を再現したものではない。

1 四つの数字の役割
数字意味主に確認する資料当期の会計利益一定期間の収益から費用を控除した成果損益計算書,月次試算表,売上・費用の元帳利益剰余金過去の利益のうち配当等で社外へ流出せず蓄積された残高貸借対照表の純資産の部,株主資本等変動計算書法人税の課税所得税法上の益金から損金を控除して計算する金額法人税申告書の別表四・別表五(一),調整明細使用できる現預金支払に充てられる資金。使用制限と必要支出も確認する預金明細,資金繰り表,借入返済表,支払予定表

税引前利益と税引後の当期純利益も区別する必要がある。
利益剰余金は一時点の残高であり,当期利益は一定期間の成果であるから,両者をそのまま比較してはいけない。

2 内部留保は現金の別口座ではない

財務省の利益剰余金の解説は,当期純利益から配当金等を控除した額が蓄積されたものを利益剰余金として説明している。
また,その対応する資産は現金・預金に限られず,有形・無形固定資産など様々な形で再投資されるとしている。

したがって,「内部留保が1000万円ある」という説明から,「自由に引き出せる現金が1000万円ある」とは推定できない。
利益剰余金の額を,現預金,売掛金,在庫,設備,不動産及び負債の残高と併せて読む必要がある。
法人税申告書の利益積立金額も税法上の計算に用いるものであり,会社の預金残高を表示する欄ではない。

3 営業利益,純利益及び調整後EBITDAを区別する

経営者や取引先から「黒字」と説明された場合は,営業利益,当期純利益,EBITDA又は調整後EBITDAのどれを指すかを先に確認する。
対象期間と会社単体・連結の別をそろえ,公表主体が採用した定義と調整明細を読む。
同じ名称の調整後指標でも,除外する費用等の範囲が他社と同じとは限らない。

例えば,SpaceXの2026年第2四半期決算資料6頁では,同じAI部門・同じ四半期について,営業損失12億5700万ドルと,調整後EBITDA11億4600万ドルの黒字が併記されている。
同7頁の注記は,調整後EBITDAを会計上の損益の代替として単独で用いず,対応する会計指標との調整表と併読するよう説明する。
この事例は,赤字・黒字という説明に指標の指定が必要であることを示すものであり,同社又は特定のAIサービスの信用力を判定するものではない。

設備投資,運転資金,納税及び借入元本の返済は,これらの指標と別に支払予定へ結び付ける。
調整後EBITDAが黒字でも,同額の現金が自由に使えることや,納税・返済に必要な資金が確保されていることまでは分からない。
第2の5の計算例と実際の入出金明細を対応させ,複数の資料で同じ費用や支払を二重に加減しないようにする。

第2 黒字でも現金が減る理由と計算例
1 売上げを計上しても代金が未回収である

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生成AIの税務回答を申告に使う前の検証手順―事実,適用年度,条文・通達,計算及び税理士の判断記録(AI作成)

目次

第1 下書きから申告までに検証工程を置く第2 事実認定とAIの候補を分ける1 資料の元の値へ戻る2 入金又は異常値だけで課税区分を決めない第3 適用年度と根拠資料の確認1 回答の基準日だけでなく適用時期を特定する2 資料の種類と射程を区別する第4 計算を文章の説明とは独立に照合する1 入力値,計算式及び転記先を確認する2 AIの回答が変わったときの扱い3 帳簿から申告書までを工程ごとに照合する第5 税理士の判断と検証記録1 職員の作業と税理士の確認2 高リスク案件の独立した二次確認3 法定帳簿とAIの詳細ログは同じではない第6 国税庁のAI利用と民間の検証手順
第1 下書きから申告までに検証工程を置く

生成AIは,論点の候補出し,資料の比較又は文章の下書きに使えても,回答の流暢さだけで税務処理の正しさを確認できない。
申告に利用する前に,事実,適用年度,根拠資料及び計算を分けて検証し,最終的な採否を税理士が判断する工程を設ける。
本記事は検証の運用例を示すものであり,個別案件の課税関係を決めるものではない。

顧客資料をAIへ入力する前の守秘義務,個人データ及び有料資料の利用権限は,税理士事務所で生成AIを使うときの入力資料の分け方で整理している。
入力を認めたことと,出力をそのまま申告へ転記してよいことは別である。

第2 事実認定とAIの候補を分ける
1 資料の元の値へ戻る

請求書,契約書,総勘定元帳,入出金記録及び申告書のどの箇所から事実を拾ったかを残す。
OCRで抽出した金額,日付,相手方及び摘要は元資料と照合し,AIが推定で補った情報を確認済みの事実へ昇格させない。
資料同士が食い違う場合は,どちらを採用したかだけでなく,不一致の理由と追加確認の結果を記録する。

例えば,請求書の「1,100,000円」がOCRで「110,000円」になった場合,税法の説明が正しくても計算の出発点が誤っている。
この例は架空の数字によるものであり,原資料の値を独立に確認する必要性を示す。
原資料が不足する場合は,回答を確定せず,顧客への追加質問を具体化する。

金額以外では,否定語,例外,条件同士の「かつ」「又は」,表の脚注の所属及び適用年度の表示も元画像と照合する。
例えば,架空の資料に「登録を受けている場合は対象外」とあるのに,OCRで「外」が落ちれば,判断の意味が変わる。
表の数字が一致していても,注記が別の行に結び付いていたり,旧制度の対象期間が欠けていたりすれば,税務上の判断は誤り得る。

読取りの記録には,原資料の頁,本文・表・脚注の位置,訂正前後の文字,確認者及び確認日時を残す。
二段組みや小さい脚注で読取りが不確かな場合は,該当箇所を原画像で確かめ,確認できない部分を推測で埋めない。
これは検証の運用例であり,この様式の作成が法令で一律に義務付けられているという意味ではない。

2 入金又は異常値だけで課税区分を決めない

多額の入金の候補には売上のほか,借入金,資産の売却代金,前受金等があり得る。
重複とされた仕訳も,取消仕訳,再計上又は別取引である可能性を確認する。
AIの検出結果は調査の端緒として扱い,契約,証憑及び会計処理の対応を確認してから税務上の判断へ進む。

候補を列挙した後は,それぞれを支持する資料,その説明に反する資料及び次に必要な確認を対応させる。
次の表は,一件の入金について確認する資料を整理する架空の例であり,各行の税務処理や課税時期を確定するものではない。
同じ入金に売買代金と貸付け等が混在する場合もあり,一つの候補だけを選ぶ前提にしない。

候補確認する資料・反対方向の事情追加確認と判断保留売上等の対価契約,請求書,納品・役務の記録及び入金の対応。返済約定や預り金の精算記録があれば,対価という説明だけで足りるか点検する。何の対価か,履行・検収の状況はどうか,返金や別取引がないかを質問する。取引資料が未入手なら性質を未確認とする。借入金金銭の交付,返済合意,相手方とのやり取り及びその後の返済記録。契約の表題だけでなく,合意と実際の資金移動を照合する。貸付けの目的,返済条件,残高及び返済実績を確認する。合意又は相手方を確認できなければ,借入と確定しない。前受金・預り金等将来の給付又は精算に関する合意,対象取引,履行状況,返金・精算記録。既に給付が終わっているなど,仮説と合わない事情も比較する。受領の目的,誰に何を給付・精算するか,時期,返還条件及び現在の履行状況を確認する。名称だけで税区分や年度を決めない。

資料名が挙がっただけでは照合済みとしない。

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弁護士・税理士がAI議事録を使うときの確認事項―録音,外部同期,原音声,誤要約及び共有(AI作成)

目次

第1 録音から共有までを別々に確認する第2 録音の説明と秘密情報の外部処理1 録音の告知と個人情報保護法上の義務2 守秘義務と顧客の許諾の範囲第3 自動同期,学習オフ及び削除の確認1 端末内録音とクラウド処理を区別する2 学習に使われないことだけでは足りない第4 原音声,文字起こし及び要約を分ける1 原音声の保全と照合箇所2 発言,要約及び推測を混ぜない3 AI議事録と意思決定記録を分ける第5 共有前の確認と誤りが見つかった場合1 依頼者共有版と内部原本を分ける2 共有版から外した情報も内部記録に残す第6 出典の位置付け
第1 録音から共有までを別々に確認する

法律相談,顧問先との打合せ又は税務相談でAI議事録を使う場合,録音を認めてもらったことだけで,録音の外部送信,AI処理及び第三者への共有まで認められたと扱わない。
録音,端末からの転送,文字起こし,要約,保存及び共有を工程に分け,それぞれの目的,処理先及び確認者を決める。
以下は通常の相談・打合せを対象とする運用例であり,裁判期日,取調べその他特別な規律のある場面は別に検討する。

AIの利用率又は議事録の作成速度は,個別の記録の正確性を証明しない。
採否を判断する際は,原音声へ戻れること,誤りを直せること及び共有先を制限できることを確認する。

第2 録音の説明と秘密情報の外部処理
1 録音の告知と個人情報保護法上の義務

個人情報保護委員会のFAQ・Q1-10は,通話内容から個人を識別できる場合には個人情報に当たり,利用目的の通知又は公表が必要である一方,同法上,録音している旨を伝える義務まではないと説明する。
この説明は,秘密録音がどの場面でも適法であること,又は弁護士・税理士の守秘義務,契約,プライバシー上の問題がなくなることを意味しない。

相談の場では,記録の目的,AIを使う工程,外部への送信の有無,共有先及び保存方針を事前に説明する運用が望ましい。
録音又は外部AI処理を希望しない人には,手書きメモ等で対応できるようにする。
この説明方法は実務上の提案であり,すべての録音に一律の同意取得義務があるという趣旨ではない。

2 守秘義務と顧客の許諾の範囲

弁護士法23条は,職務上知り得た秘密に関する保持の権利及び義務を定め,税理士法38条は,正当な理由のない業務上の秘密の漏えい又は窃用を禁止する。
国税庁の税理士制度Q&A・問6-24は,正当な理由について,本人の許諾がある場合又は法令に基づく義務がある場合と説明する。

顧客の許諾を確認するときは,「議事録を作る」という目的だけでなく,どの情報をどの事業者がどの目的で扱うかを特定する。
顧客の発言には相手方,従業員又は家族の情報も含まれ得るため,顧客の許諾だけで関係者全員の情報の扱いが解決するとは限らない。
必要な部分だけを処理し,医療,家族関係,資産その他の詳細を不用意に送らない。

第3 自動同期,学習オフ及び削除の確認
1 端末内録音とクラウド処理を区別する

録音時にインターネットへ接続していなくても,後でアプリを開いた時点で外部へ同期するサービスがある。
例えば,GensparkのSecond Brain公式説明では,端末での録音後,アプリへの転送・同期を経て文字起こし及び要約を行い,転送後には端末上の録音ファイルが自動削除されると説明している。
これは提供者の仕様説明であり,クラウド上のデータ,複製又はバックアップまで削除されることの確認ではない。

利用開始前に,録音端末,スマートフォン,AI事業者,会議サービス及び連携先の間のデータの流れを図又は台帳にする。
自動同期,メール・CRM等への連携,共有リンクの初期設定も確認し,外部へ送信する前に対象情報を減らせる工程を設ける。

2 学習に使われないことだけでは足りない

学習オフの設定があっても,文字起こしの処理,保存,保守担当者のアクセス又は再委託先への処理がなくなるわけではない。
個人情報保護委員会の生成AI利用に関する注意喚起は,利用目的との関係及び入力した個人データが機械学習等に利用されないこと等の確認を求めている。

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個人事業主の出張費・宿泊費はどこまで必要経費になるか―観光・家族同伴・ポイント利用と証拠保存(AI作成)

目次第1 金額だけでなく業務との関係を確認する第2 必要経費と家事費の基本1 所得税法37条の基準2 私用が混在する支出第3 観光の延泊・家族同伴を区分する1 費目ごとに業務部分を直接確認する2 日数だけの按分を唯一の方法としない第4 高額な宿泊費で残す資料1 宿泊の必要性と選択理由2 領収書と業務記録を組み合わせる第5 ポイント・マイルを使った支払1 取得条件と利用明細を確認する2 値引処理と両建処理3 特典宿泊を自分の評価額で経費にしない4 所得税の経費と消費税の仕入税額控除第6 前払金・保証金・必要経費の時期第7 申告・精算前の確認順序第8 出典
第1 金額だけでなく業務との関係を確認する

個人事業主の出張費・宿泊費では,高額だから当然に経費にならないとも,領収書があるから全額を経費にできるともいえない。業務との関係,私用部分,債務が確定する時期,ポイント等の支払方法を分けて確認する必要がある。
本記事は,令和8年10月8日現在の法令と国税庁資料に基づき,日本の個人事業主の事業所得に係る必要経費を扱う。勤務先から旅費を受け取る給与所得者や,法人が役員・従業員へ支給する旅費は,別の規定・取扱いを確認する必要がある。
国内出張だけでなく海外出張にも関係するが,外国の税務・移住後の課税関係や,ホテル特典宿泊のすべての制度を一律に扱うものではない。

第2 必要経費と家事費の基本
1 所得税法37条の基準

所得税法37条1項は,必要経費について,収入に直接要した費用のほか,「これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」を定めている。
出張という名称ではなく,取引先との面談,裁判所への出頭,業務上の研修,現地調査等の目的と実際の行動を確認する。旅行の一部で仕事のメールを送ったことだけから,全旅費を業務費へ変更することはできない。
個人事業主本人が自分に支払ったという形で日当を定めても,その定額が当然に必要経費になるものではない。実際の支出と業務との関係を確認する必要がある。

2 私用が混在する支出

所得税法45条1項1号は,家事上の経費と政令で定める家事関連費を必要経費に算入しないと定める。
所得税法施行令96条1号は,家事関連費の主たる部分が業務遂行上必要であり,その必要な部分を明らかに区分できる場合の当該部分を規定する。同条2号は,青色申告者について,取引の記録等に基づき業務遂行上直接必要であったことが明らかな部分を規定している。
したがって,仕事と私生活が混在する支出は,申告区分と記録を踏まえて業務部分を説明できるようにする。青色申告であることだけで,観光や家族旅行の費用がすべて業務費になるわけではない。

第3 観光の延泊・家族同伴を区分する
1 費目ごとに業務部分を直接確認する

取引先での打合せに必要な移動・宿泊と,観光のための延泊,観光施設の入場料,家族だけの行動費を分けることが有用である。
宿泊日,移動区間,部屋数,利用者及び支払先が分かる明細から,費目ごとに業務との関係を確認する。家族が同行したという事実だけで本人の業務支出がすべて否認されるとも,同伴分まで全部認められるとも判断しない。
家族が実際に業務を担当した場合には,役割,作業内容,業務上の必要性を資料で確認し,単なる同行と区別する必要がある。

2 日数だけの按分を唯一の方法としない

例えば,業務の宿泊2泊が各2万円,観光の延泊1泊が2万5000円,同伴家族の追加費用が1万円で,各費用を明細で区分できるという仮定であれば,まず業務宿泊の4万円を特定し,残りは業務上の必要性があるかを別に検討する。
これは費目を直接区分する説明例であり,個別の必要経費算入を認定するものではない。
旅行総額に業務日数の割合を掛ける方法を,往復交通費,宿泊費,追加家族費用のすべてへ機械的に用いると,実態とずれることがある。交通費は旅行の直接の目的,業務に必要な経路,観光による追加移動等を確認する必要がある。
国税庁「No.5388 海外渡航費の取扱い」は法人税の資料である。同資料の期間按分や往復旅費の取扱いを,個人事業主の所得税の一律の結論として引用してはならない。

第4 高額な宿泊費で残す資料
1 宿泊の必要性と選択理由

業務上の宿泊が必要かに加え,宿泊地,業務開始・終了時刻,交通事情,予約時の空室,安全上の事情,会場又は面談場所との位置関係,必要な作業環境を確認することが有用である。
宿泊料金だけで結論を決めず,選択時の事情を説明できる資料を残す。部屋のアップグレード,家族の追加料金,業務に関係しないサービス等は,宿泊本体と別に明細を確認する。
税法上の必要経費と,依頼者に請求できる実費の範囲,所属事務所の精算上限は別である。依頼者へ請求する場合は,委任契約・実費合意や事前の説明も確認する必要がある。

2 領収書と業務記録を組み合わせる

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海外で高額な医療費を請求されたとき―海外療養費・旅行保険・医療費控除と必要書類(AI作成)

目次第1 請求額,保険給付及び税の控除を分ける第2 病院で確認し,持ち帰る資料1 治療内容の説明と費用の説明2 領収書だけでなく診療明細も取得する3 請求と支払を照合する第3 日本の公的医療保険の海外療養費1 海外で支払えばすべて給付されるわけではない2 現地の請求額の7割が戻るという計算ではない3 換算日,申請期限及び入金までの時間第4 海外旅行保険・カード付帯保険第5 海外で支払った医療費と医療費控除1 外国の医師への支払も対象になり得る2 外貨で支払った医療費の円換算3 補填金を差し引き,控除額と還付額を区別する4 申告時に保険金が未確定の場合第6 相談・申請前の確認順序第7 出典
第1 請求額,保険給付及び税の控除を分ける

海外旅行中に病気やけがで入院し,高額な請求を受けたときは,①病院への支払,②日本の公的医療保険からの海外療養費,③海外旅行保険等の保険金,④日本の所得税の医療費控除を分けて確認する必要がある。
海外療養費は現地の請求額をそのまま払い戻す制度ではなく,医療費控除も支払額をそのまま還付する制度ではない。
本記事は,令和8年10月8日現在の法令と公表資料に基づき,海外での急な受診後に行う費用精算を整理する。海外療養費の具体的な書類・為替・時効の説明は協会けんぽの案内によるものであり,国民健康保険・健康保険組合等の加入者は自分の保険者の手続も確認する必要がある。

日本からの短期旅行と,海外移住・長期赴任とは,公的医療保険の加入資格や所得税の居住者判定が異なり得る。海外にいる日本人であることだけから,日本の各制度を利用できると判断してはならない。

第2 病院で確認し,持ち帰る資料
1 治療内容の説明と費用の説明

まず診療の必要性と安全を確認し,治療内容,予定される検査・処置,費用の概算,含まれない費用,追加費用が生じる条件を,可能な範囲で医療機関に確認する。
病院費用,医師の手術料,麻酔料,検査料,薬代,個室料等が別々に請求されることがあるため,総額だけでなく請求主体と費目を記録することが有用である。
治療の説明を受けたことと,料金・個室等の追加サービスに同意したことを一つの署名だけから同一視せず,見積書,同意書,請求書,説明時のメール等を保存する。これは費用の確認と証拠整理の提案であり,外国の医療機関の説明義務や請求の適法性を日本法だけで判定するものではない。

2 領収書だけでなく診療明細も取得する

協会けんぽの海外療養費では,申請書のほか,医科の場合の診療内容明細書(様式A),領収明細書(様式B),領収書原本と日本語訳,明細書の日本語訳,渡航期間を確認できる書類及び同意書等が必要となる。歯科の場合には様式Cを用いる。
様式A~Cは,月,受診者,医療機関,入院・外来ごとに分け,担当医に記入・署名を依頼する。申請者自身による記入で代用しない。同じ項目・内容が記載されていれば独自様式も使用できると案内されている。
翻訳文には翻訳者の署名,住所及び電話番号を記載する。退院・帰国後に遠隔で書類を集める負担を減らすため,可能であれば受診中に保険者の様式を病院へ示しておくとよい。

3 請求と支払を照合する

請求書の総額,患者の実際の支払,保険会社による病院への直接支払,保証金・前払金とその返還を区別する。明細と支払記録が対応するかを確認し,同じ治療費を重複して精算表へ載せない。
外貨の領収書には通貨単位,支払日,支払者が分かる資料を添え,カード明細や送金控えも保存する。公的給付の為替換算と所得税の換算は,次に述べるとおり基準が異なる。

第3 日本の公的医療保険の海外療養費
1 海外で支払えばすべて給付されるわけではない

協会けんぽは,海外旅行中や海外赴任中の急な病気・けが等で,やむを得ず現地の医療機関を受診した場合に,申請によって一部の医療費の払い戻しを受けられる制度と説明している。
対象は日本国内で保険診療として認められる医療行為に限られ,治療を目的として海外へ渡航した場合は支給対象とならないと案内されている。保険の加入資格,診療内容及び渡航目的を最初に確認する必要がある。

2 現地の請求額の7割が戻るという計算ではない

給付額は,日本国内で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額と,実際に海外で支払った額を比べ,低い方から自己負担相当額を差し引いて計算される。
例えば,現地で200万円を支払い,日本の基準による額が30万円,自己負担相当額がその3割となるという仮定であれば,給付は21万円となり,現地支払額の7割である140万円にはならない。この数値は制度の違いを示す仮定であり,実際の診療の査定額を示すものではない。
加入者の年齢等によって自己負担割合も異なる。国内の高額療養費の上限額を,海外の請求総額にそのまま当てはめて最終負担を見積もってはならない。

3 換算日,申請期限及び入金までの時間

協会けんぽは,外貨で支払った医療費について,支給決定日の外国為替換算率(売レート)を用いると説明している。
また,治療費を支払った翌日から2年を経過すると時効により申請できなくなると案内している。審査に通常数か月を要するため,返金予定を直近の生活資金と同じに扱わず,書類がそろい次第手続を進めることが有用である。
提出先や電子申請の対応状況は変わり得るので,申請時に加入保険者の公式案内を確認する必要がある。

(続きを読む...)海外で高額な医療費を請求されたとき―海外療養費・旅行保険・医療費控除と必要書類(AI作成)

相続事件の弁護士費用と税務―遺産分割,相続登記,共同売却及び金銭回収の費用区分(AI作成)

目次

第1 弁護士費用は,何の税金で何のための費用かを分ける第2 相続税の債務控除―死亡時の債務と相続人の費用は異なる1 被相続人の債務が対象となる2 死亡前の依頼による未払報酬は事実を確認する第3 取得費―相続登記の費用と遺産分割の費用を分ける1 原則として被相続人の取得費を引き継ぐ2 非業務用不動産の相続登記費用3 遺産分割の訴訟費用等は土地の取得費にならない第4 共同売却と金銭回収―代金から支払うことだけでは決まらない1 売却のために直接要した費用を確認する2 売却代金の回収費用は譲渡費用と区別する第5 賃貸業務等の必要経費は別に検討する第6 委任契約と請求明細で残しておきたい事項1 報酬の合意と税務上の区分をつなぐ資料2 一括報酬を区分する場合第7 関連記事と出典
第1 弁護士費用は,何の税金で何のための費用かを分ける

相続事件の弁護士費用については,「相続で支払った費用だから遺産から差し引ける」「不動産を取得したから取得費になる」「売却代金から払ったから譲渡費用になる」とは一律にいえない。
相続税の債務控除,譲渡所得の取得費・譲渡費用,不動産所得等の必要経費は,それぞれ要件が異なる。

また,委任契約で成功報酬を計算するための「経済的利益」と,税務上の取得費や課税価格は別の概念である。
報酬が取得財産の総額又は回収額の一定割合で計算される場合でも,その計算式だけで税務上の費用区分は決まらない。

本記事は,個人の通常の相続と,相続した土地・建物の売却を中心に整理する。限定承認,法人,非居住者及び国外財産には,別の検討が必要である。
法令・国税庁資料の確認日は令和8年10月7日である。国税庁の説明に加え,契約書や請求明細を整える実務上の提案を示す。

費用の内容検討する税務区分最初に確認する点相続開始後に相続人が依頼した遺産分割の弁護士費用相続税の債務控除・将来の譲渡所得被相続人の死亡時の債務とは異なる。遺産分割の訴訟費用等は土地の取得費にならない。非業務用不動産の相続登記に要する費用譲渡所得の取得費当該不動産に対応する通常必要な費用か。概算取得費5%を用いる場合は別扱いとなる。相続不動産の売却のために直接必要な費用譲渡所得の譲渡費用売却のための業務と,遺産分割・維持管理・代金回収の業務を区別する。売却後の代金回収の弁護士費用譲渡費用との区別代金回収費用は,国税庁の質疑応答では譲渡費用に含まれない。賃貸業務に関する紛争の弁護士費用不動産所得等の必要経費業務との関係,資産取得・譲渡に関する費用との区別,私的な相続紛争との混在を確認する。

各行の根拠と例外は以下のとおりである。表だけで費用の全額を申告書へ転記しないことが重要である。

第2 相続税の債務控除―死亡時の債務と相続人の費用は異なる
1 被相続人の債務が対象となる

相続税法13条1項1号は,控除対象を「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)」と定め,同法14条1項は,控除する債務を確実と認められるものに限る。
国税庁「No.4126 相続財産から控除できる債務」も,死亡時に現に存在する被相続人の借入金・未払金等を説明している。

相続開始後に相続人が遺産分割のため弁護士へ依頼して負担した報酬は,そのことだけで被相続人の死亡時の債務にはならない。
相続人全員で費用を負担したこと,遺産口座から支払ったこと又は協議書で「遺産から控除する」と合意したことだけでも,税法上の債務控除の要件を満たすわけではない。

2 死亡前の依頼による未払報酬は事実を確認する

被相続人自身が死亡前に弁護士へ依頼し,死亡時に未払報酬がある場合は,死亡後の相続人による依頼と区別する。
契約,業務の履行,報酬の発生条件,死亡時の債務の存在・確実性及び誰が負担する部分かを確認する必要がある。
「請求書の発行が死亡後である」という一事だけで結論を決めず,死亡時点の法律関係を調べる。

葬式費用には別の控除の制度があるが,遺産分割の弁護士費用が葬式費用に変わるものではない。

第3 取得費―相続登記の費用と遺産分割の費用を分ける
1 原則として被相続人の取得費を引き継ぐ

所得税法60条1項は,通常の相続等で取得した資産について,譲渡所得の計算上,前所有者から引き続き所有していたものとみなす。
相続した土地・建物を売却するときの取得費は,原則として被相続人の取得費を引き継ぐのであり,相続税評価額をそのまま購入代金のように扱うものではない。
建物では減価償却相当額の調整も必要となる(国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」)。

売買契約書,建築請負契約書,領収書,改良費の資料及び過去の申告資料は,遺産分割の価格交渉とは別の目的でも保存しておく必要がある。

2 非業務用不動産の相続登記費用

国税庁No.3270は,相続等で取得した土地・建物について,相続人が支払った登記費用等を取得費へ算入できることを説明している。ただし,業務用資産について必要経費に算入される費用との区別がある。
所得税基本通達60-2は,相続等による取得のため通常必要と認められる費用のうち,当該資産に対応する金額について定める。

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税務調査・審査請求・租税訴訟における弁護士と税理士の連携―依頼範囲,補佐人,資料及び期限の引継ぎ(AI作成)

目次

第1 連携を考える場面とこの記事の対象1 手続が変わると担当と委任を確認する2 顧問契約だけで次の手続まで受任済みとしない第2 税務代理・不服申立ての代理・訴訟の補佐人1 税務代理と不服申立ての代理2 訴訟の補佐人は訴訟代理人と異なる3 税理士法人の受託と自然人の選任第3 税務調査から処分への移行1 資料,回答及び判断を分けて管理する2 修正申告前に争い方を確認する3 更正の請求が未処理・返送の場合の連携第4 不服申立てと取消訴訟の期間1 一般的な期間と例外2 裁決を待たずに提訴できる場合3 争うことと納付・徴収の停止を分ける第5 資料と期限を引き継ぐための記録1 移行時の引継ぎ項目2 依頼者の判断と費用を明らかにする3 資料を共有する目的と範囲を記録する第6 関連記事第7 出典
第1 連携を考える場面とこの記事の対象
1 手続が変わると担当と委任を確認する

税務調査への対応,課税処分への不服申立て及び裁判所への訴えは,手続も必要な準備も異なる。
帳簿や取引を把握している税理士と,法的争点や裁判手続を担当する弁護士が連携する場合には,誰がどの範囲を受任し,どの期限までに何を行うのかを具体化する必要がある。

本記事は,令和8年10月7日に確認した法令と公的資料に基づき,通常の国税の課税処分に関する連携の基本を整理する。
地方税,国税犯則調査,刑事手続及び滞納処分に固有の不服申立期間を網羅するものではなく,具体的な税額計算や個別事件の勝敗は扱わない。

2 顧問契約だけで次の手続まで受任済みとしない

記帳・申告又は調査対応の依頼が,審査請求や訴訟の受任まで含むかは,契約と委任内容による。
処分通知を受けてから新たな担当を探している間にも期間は進むため,争いが見込まれる段階で,移行先の担当,費用,判断の期限及び資料共有の方法を確認しておくのがよい。

早期に法律相談へつなぐ場面としては,①契約の解釈や取引の実態が課税判断の前提として争われる場合,②新たに見つかった資料と既に税務署へ説明した内容が食い違う場合,③修正申告をするか処分を受けて争うかの判断期限が迫っている場合等が考えられる。
これは,税理士と納税者が把握している取引・計算に,法的争点と証拠の検討を接続するための運用例であり,すべての税務調査で弁護士の関与が必要になるという意味ではない。

以下の担当表や引継ぎ項目は,連携のための運用例である。
法定の様式や,職種ごとの排他的な業務分担を定めるものではない。

第2 税務代理・不服申立ての代理・訴訟の補佐人
1 税務代理と不服申立ての代理

税理士法2条1項1号の税務代理には,税務官公署に対する申告等や不服申立て,調査・処分に関する主張又は陳述についての代理・代行が含まれる。
税務代理をする税理士は,同法30条に基づき,権限を証する書面を提出する必要がある。

国税通則法107条は,不服申立人が弁護士,税理士その他適当と認める者を代理人に選任できると定める。
ただし,不服申立ての取下げと代理人の選任は特別の委任が必要であり,税理士法31条にも同旨の規定がある。
手続上の代理人資格と,税理士業務を業として行う場合の業務制限は,別の問題として確認する必要がある。

弁護士が税理士法51条の通知によって税理士業務を行う場合には,所属弁護士会を経由した国税局長への通知と,管轄区域を含む同条の条件を確認する。
弁護士であることだけを理由に,税務代理の手続や通知の確認を省略することはできない。

2 訴訟の補佐人は訴訟代理人と異なる

税理士法2条の2第1項は,租税に関する事項について,税理士が裁判所で補佐人として,弁護士である訴訟代理人とともに出頭し,陳述することを認めている。
この規定は,税理士が弁護士の訴訟代理人に代わって単独で訴訟を代理する制度ではない。

同条2項によれば,補佐人の陳述は当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなされる。
ただし,当事者又は訴訟代理人が直ちに取り消し,又は更正したときは例外となる。
税額計算の説明も主張の一部になり得るため,出頭前に,帳簿・計算表・準備書面の数値と事実の説明を照合し,確認した事実と推測を分けておくことが重要である。

3 税理士法人の受託と自然人の選任

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前払コンサルティング料・採用支援料の返金と税務―役務提供時期,法人税,消費税及び返還インボイス(AI作成)

目次

第1 返金額を決める前に確認すること1 契約と税務をつなぐ四つの日付2 採用に至らなかったことと役務未提供を分ける第2 法人税―前払いと損金算入を区別する1 まだ提供を受けていない役務2 契約期間が一年なら必ず全額損金となるわけではない第3 返金の実質と元の帳簿を対応させる1 未提供分の返還2 提供済みの役務の値引きと損害賠償3 後の返金合意と当初申告の誤りを分ける第4 消費税―役務提供時期と返還時期を確認する1 前払い時点で課税仕入れになるとは限らない2 提供済みの役務の値引きは返還等を受けた期間に調整する第5 損害賠償,解約手数料及び相殺を分ける1 損害賠償という名称だけで判断しない2 解約手続の対価と逸失利益の補填第6 返還インボイスと訂正した請求書1 返還インボイスが必要な場面2 返金の書類と申告是正を区別する第7 合意前の資料と担当者の確認事項1 契約から帳簿までを一続きにする2 弁護士と税理士が合意前にすり合わせる第8 関連記事と出典
第1 返金額を決める前に確認すること

法人がコンサルティング料又は採用支援料を前払いし,中途終了後に返金を受ける場合は,返金額だけでなく,元の支払を何の対価として,いつ,どの勘定と税区分で処理したかを確認する必要がある。
未提供の役務に対する前払金の返還,提供済みの役務の値引き及び損害賠償では,処理の出発点が異なる。
和解書に「解決金」と書くだけでは,法人税,消費税又は返還インボイスの取扱いは決まらない。

本記事は,国内の法人が事業のために役務を購入する場面を中心に,弁護士と税理士が合意前に確認する順序を整理する。
消費税の仕入税額の調整は原則課税を中心に説明する。簡易課税その他の特例,免税期間をまたぐ取引,海外取引及び個人事業者への適用は,それぞれの前提を別途確認する。

1 契約と税務をつなぐ四つの日付

①契約締結日・支払日,②役務提供日又は対象期間,③返金請求権や減額合意が具体化した日,④実際の返金日を並べる。
決算日と消費税の課税期間も併記し,「支払った年度」「サービスを受けた年度」「返金を受けた年度」を混同しない。

2 採用に至らなかったことと役務未提供を分ける

探索,接触,推薦,選考調整等の役務の対価を支払う契約では,採用が成立しなくても,役務が提供されている場合がある。
成功報酬についても,内定承諾,入社その他のどの時点を報酬発生条件としたかを確認する。
契約上の精算は,ヘッドハンティング・人材スカウト契約の中途解約と返金及び準委任契約の中途終了と報酬精算も参照されたい。

第2 法人税―前払いと損金算入を区別する
1 まだ提供を受けていない役務

国税庁No.5380は,継続的な役務のために支出した費用のうち,期末に未提供の役務に対応する前払費用について,原則として資産計上し,役務提供を受けた時に損金算入すると説明する。
前払いをしたことや請求書を受領したことだけで,未提供分まで当然に損金となるわけではない。

契約書,月次報告,納品物,検収記録及び業務日誌から,期末までに実施された業務と残存業務を確認する。
契約全体が一つの成果物を対象にしているのか,月ごとの継続役務なのか,着手業務と成功報酬を分けているのかにより,配分の前提も異なる。経過月数だけで一律に配分せず,契約と実施内容に対応する根拠を残す。

2 契約期間が一年なら必ず全額損金となるわけではない

同資料の短期前払費用の取扱いは,継続的な役務に係る前払費用について,支払日から一年以内に役務提供を受けること,支払年度の損金に継続して算入していること等を前提とする。
収益との対応が必要な費用については,例外の対象とならないことも説明されている。

したがって,「一年契約」「年度内に全額支払済み」という事情だけで適用を決めない。
成果物の完成に対する前払い,一回限りの業務又は条件付きの成功報酬を,同じ取扱いに当てはめられるかは契約の実質を確認する必要がある。
適用を検討する場合は,提供予定期間,実際の支払日及び過年度からの処理方針を税理士に示す。

第3 返金の実質と元の帳簿を対応させる
1 未提供分の返還

役務を受ける前の支払を前払金又は前払費用として資産計上していた場合は,その返還額と帳簿上の残高を照合する。
未費用化の残高を現金へ戻す部分と,損金算入済みの部分を区別することが出発点である。

(続きを読む...)前払コンサルティング料・採用支援料の返金と税務―役務提供時期,法人税,消費税及び返還インボイス(AI作成)

税理士事務所で生成AIを使うときの入力資料の分け方―顧客資料,国税庁の公表資料及び有料税務解説(AI作成)

目次

第1 同じ税務資料でも確認事項は異なる1 資料の性質と処理の目的を組み合わせる2 下書き,検証及び申告を分ける第2 顧客資料と税理士の守秘義務1 法人の帳簿にも秘密は含まれる2 顧客への説明と対象情報の特定3 顧客資料の内部処理と事例公開を分ける第3 個人データ,学習オフ及び入力範囲1 学習に使われないこと以外の処理を確認する2 必要な情報を残し,不要な識別情報を外す3 給与資料を処理する場合のデータの流れ第4 国税庁の公表資料と有料税務解説1 公表資料の出所と適用年度2 有料解説はその契約を確認する第5 少人数の事務所で実装する運用案1 資料と処理先の台帳2 職員の利用と税理士の確認3 誤入力・誤出力が生じた場合4 出力の検証記録を残す第6 日税連ガイドラインの確認状況第7 出典・参考資料
第1 同じ税務資料でも確認事項は異なる
1 資料の性質と処理の目的を組み合わせる

税理士事務所で生成AIを利用する場合,①顧客から受領した申告書・帳簿・証憑,②法令及び国税庁の公表資料,③有料の税務解説・会員制データベースを分けて考える必要がある。
①では守秘義務や個人情報の取扱い,②では資料の適用時点と利用条件,③では取得・複製・外部送信・成果物利用の権限が,それぞれ主要な確認事項となる。

複数の種類の資料を一つの質問に添付する場合には,それぞれの条件を満たす必要がある。
公表された税務通達に顧客の元帳を添えれば,その入力全体を公開情報として扱うことはできない。
本記事は令和8年10月7日時点で確認した法令・行政資料に基づく一般的な運用の検討であり,特定のAIサービス又はプランを安全と認定するものではない。

2 下書き,検証及び申告を分ける

論点の洗い出し,資料の分類,計算の補助及び説明文の下書きは,AIを利用し得る工程である。
他方,課税要件の当てはめ,適用年度,経過措置,金額及び提出内容は,原資料と実際の事実に照らして担当税理士が確認する必要がある。

AIが示した条文・通達・裁決例は,識別情報が整っていても実在と内容を確認する。
国税庁の公表事例が似ていることと,当該顧客にも同じ税務処理が妥当であることは区別する。

第2 顧客資料と税理士の守秘義務
1 法人の帳簿にも秘密は含まれる

税理士法38条は,税理士業務に関して知り得た秘密について,正当な理由のない漏えい又は窃用を禁じている。
国税庁の税理士制度に関するQ&A・問6-24は,秘密の範囲及び本人の許諾等の正当な理由について,税理士法基本通達38-1~38-3を踏まえて説明している。

個人情報に該当しない法人の売上,資金繰り,取引条件又は調査対応方針にも,守秘義務の対象となる情報は含まれ得る。
氏名を削れば問題がなくなるという評価では,この点を見落とす。

2 顧客への説明と対象情報の特定

顧客資料を外部AIで処理する場合は,利用目的,資料の範囲,処理を行う事業者,保存・閲覧・再委託の条件及び成果物の扱いを確認する。
本人の許諾を根拠とするならば,何をどの目的で処理することへの許諾なのかを説明・記録する必要がある。

顧客が会社である場合も,給与資料等に含まれる従業員その他の個人の情報について,会社の許諾だけで個人情報保護法上のすべての問題が解消するわけではない。
顧客の許諾と,資料に含まれる別の主体の権利・秘密の取扱いを分けて検討する。

3 顧客資料の内部処理と事例公開を分ける

顧客資料を申告,税務相談又は説明文の作成のために事務所内部で処理することと,その内容を事例としてウェブサイトへ公開することは別の利用である。
内部処理について許諾を得ていても,事例広告又は広報への利用まで当然に含まれるとは限らない。

事例公開では,顧客の許諾だけでなく,従業員,取引先,相続人その他の第三者情報,複数情報の組合せによる再識別,所属税理士会の広告規則及び公開後の訂正・削除を確認する。
公開用文章を生成AIで作る場合も,原資料の入力管理と,公開文面の匿名化・広告表示の確認を別工程にする。

具体的な確認手順は,弁護士・税理士が事例をウェブ公開するときの確認事項を参照されたい。

(続きを読む...)税理士事務所で生成AIを使うときの入力資料の分け方―顧客資料,国税庁の公表資料及び有料税務解説(AI作成)

税務調査で従業員の盗難・横領が判明したとき―会社・税理士・弁護士の初動と法定届出(AI作成)

目次第1 税務調査で見つかった不正を,税務だけで処理しない第2 「いつ何を知ったか」を記録する1 外部からの指摘と会社の確認結果を分ける2 帳簿が合う理由を調べる第3 相談・法定届出・被害届・告訴を区別する1 毒物・劇物の盗難・紛失は直ちに警察署へ2 税務署等からの「静観」の要請があった場合第4 会社・税理士・弁護士の役割を明確にする1 共通して行うことと,担当分野の違い2 税理士の助言義務と受任範囲第5 証拠保全と税務上の訂正を並行して進める1 訂正前のデータを残す2 税務調査と刑事捜査の権限を混同しない第6 関連記事と出典1 具体的な調査・是正の進め方2 一次資料
第1 税務調査で見つかった不正を,税務だけで処理しない

税務調査で従業員による原材料の持出しや無断売却を指摘された場合,会社には,安全確保,証拠保全,警察への対応,税務上の訂正及び損害回復という異なる課題が同時に生じる。
全容が判明するまで一切動かないのではなく,法定届出の要否と消失しやすい証拠を先に確認し,調査と是正を並行して進める必要がある。

本記事は,令和8年10月7日現在の法令及び公表資料に基づき,会社・税理士・弁護士が連携する際の実務上の整理を示すものである。
以下の表は一般的な対応例であり,一律の法定手順,専門家の責任を認定する基準又は特定事件の評価ではない。

課題最初に確認すること次につなぐ資料安全・届出物質の危険性,所在不明の状況,適用法令,会社が知った内容品目・数量の判明範囲,連絡記録,応急措置の記録証拠保全映像・ログの保存期限,原帳票の所在,変更権限原本,取得条件,保管者,複製・訂正の履歴税務対象年度,帳簿価額,盗難損失と請求権,既提出申告年度別資料,仕訳案,争点と修正根拠損害回復持出し数量,取得者,残存品,請求先と財産購入・工程・売却資料,財産調査,回収記録

盗難損失・損害賠償請求権の年度帰属及び加算税は,従業員の窃盗・横領で被害を受けた会社の税務で扱っている。
本記事では,その前提となる情報の受取り方と担当者間の引継ぎを中心に説明する。

第2 「いつ何を知ったか」を記録する
1 外部からの指摘と会社の確認結果を分ける

税務署や取引先から「従業員が売却していた」と告げられたことと,会社が特定の在庫の盗難を確認したことは,同一の事実ではない。
他方,帳簿上の不足が見つからないことだけで,具体的な売却情報を抽象的な疑いとして放置することも適切ではない。
情報源,対象物,時期,会社の所有物と結び付く資料及び追加確認の結果を,別々に残す。

記録欄記載例・確認事項情報を受けた時点日時,受領者,相手の所属・氏名,電話・面談等の方法指摘された事実物品名,売却先,期間,数量,資料を実見したか,伝聞か会社の確認所有物との対応,ロット・伝票・在庫の照合,確認できなかった理由法的検討と行動相談・届出の判断,担当者,実施日時,伝えた内容,追加報告の予定

「外部担当者がそう述べた」という記録と,外部資料そのものは区別する。
取得できていない資料は未取得と記載し,後から作成する経緯書では,当時の記録に基づく部分と記憶に基づく部分を分ける。

2 帳簿が合う理由を調べる

持ち出した原材料を「使用済み」と入力できる仕組みでは,払出帳簿と使用帳簿が一致していても,実際に工程へ投入されたことは証明されない。
出力漏れのない会計データを確保する作業と,記載された取引・使用の実在を確かめる作業は分けて行う。

資料確認できること追加確認が必要なこと仕訳・払出台帳会社が記録した処理・移動実際の移動,相手,工程投入投入記録記入者が申告した使用実投入,複数本・部分使用,訂正実棚・残量計測時点の現物過去の流れ,計量方法,未確認場所売却・入金資料外部取引の記録会社の物品との同一性,数量,代金の帰属

原材料数量の立証は,工場の原材料が長期間盗まれていたときの被害立証を参照されたい。

第3 相談・法定届出・被害届・告訴を区別する
1 毒物・劇物の盗難・紛失は直ちに警察署へ

毒物及び劇物取締法17条2項は,取扱いに係る毒物又は劇物が盗難にあい,又は紛失したときに,直ちに警察署へ届け出る義務を定める。
この規定は,同法22条4項・5項により業務上取扱者にも準用される。

盗難・紛失を把握した場合に,被害数量の最終確定,従業員の自認,逮捕又は税務調査の終了を待つという条文上の猶予はない。
現在判明している内容と未確定部分を分けて伝え,追加確認後に補充する対応が考えられる。
抽象的な疑いだけで届出義務が当然に発生すると断定することもできないため,疑いの具体性とその時点の認識を速やかに確認する。

行為主な目的確認すべき違い警察への相談疑いの段階で対応・捜査への影響を相談相談したというだけで法定届出を履行したとは限らない毒劇法17条2項の届出毒物・劇物の盗難・紛失を直ちに知らせる品目・判明数量・状況を伝えた記録を残す被害届犯罪被害の事実を申告する後日の提出日だけで,それ以前の届出の有無・適時性は決まらない告訴犯罪事実を申告し処罰を求める法定の事故届出とは目的・手続が異なる

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損害賠償請求権の貸倒処理と非免責債権―破産,財産調査及び回収記録の実務(AI作成)

目次第1 請求権が残ることと回収できることを分ける第2 貸倒れの三つの取扱いと損害賠償債権第3 逮捕,退職及び破産申立てだけでは足りない第4 破産手続の段階ごとに何を確認するか第5 非免責債権なら貸倒処理できないのか1 故意の不法行為をすべて非免責としない2 法的責任の存続は回収の保証ではない3 税務処理のために権利放棄を先行させない4 現在の給与と未定の再就職を区別する5 年金収入があっても貸倒れを認めた判決の射程6 回収不能は収入の有無だけで判断しない第6 回収不能を説明する記録の作り方第7 仕訳,貸倒引当金及び後日の回収1 帳簿上の債権と税務上の債権を照合する2 貸倒引当金も会社の適用資格から確認する3 貸倒処理後も権利・回収の台帳を管理する第8 法人税の貸倒れと消費税の貸倒税額控除を分ける第9 決算前に税理士と弁護士が確認する順序第10 関連記事と根拠資料
第1 請求権が残ることと回収できることを分ける

会社が犯罪や不法行為の被害に遭い,損害賠償請求権を取得した場合,請求できる権利があることと,その債権を実際に回収できることは別である。
加害者が破産した場合も,破産申立て,手続開始,配当,免責及び非免責債権の判断を分けなければならない。
法人税の貸倒損失は,民事上の請求を続けるかという判断と対応させつつ,税法上の要件と年度を別に確認する。

本記事は,令和8年10月7日に確認した法令,法人税基本通達,国税庁資料及び裁判所の公開資料に基づき,会社の税理士と回収を担当する弁護士の連携を扱うものである。
非免責性の詳しい判断基準は,破産法253条1項2号の「悪意で加えた不法行為」も参照されたい。

第2 貸倒れの三つの取扱いと損害賠償債権
取扱い損害賠償債権で確認する内容法人税基本通達9-6-1法定の切捨て等,又は相当期間の債務超過・弁済不能を伴う書面による債務免除などの要件同9-6-2資産状況・支払能力等から債権全額の回収不能が明らかになった年度,損金経理及び担保の処分同9-6-3対象は一定の売掛債権。純粋な損害賠償債権へ取引停止1年の取扱いをそのまま適用しない

これらの原文は,国税庁「金銭債権の貸倒れ」に掲載されている。
貸倒損失を計上したいからという理由で,賠償債権の勘定科目を売掛金へ付け替えても,債権の発生原因は変わらない。
回収のために分割払の約束を得たことや,和解・公正証書を作ったことだけで,通常の売掛債権と同じ取扱いになるものでもない。

書面で請求を放棄すれば必ず貸倒損失になるわけではない。
9-6-1(4)では,債務超過が相当期間続き,弁済を受けられないことが必要である。
合理的な回収手段を捨てる無償の放棄は,寄附金等の問題も生じ得るため,民事上の合意と税務処理を同時に検討する。

法人税基本通達9-7-16・9-7-17(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_07_04.htm)は,会社が第三者へ損害賠償金を支払った場合の,役員・使用人に対する求償債権等を扱う。
その「全部又は一部」という取扱いを,会社自身が窃盗・横領の被害を受けて取得した賠償債権へ,当然に適用することはできない。
誰が被害者で,誰へ賠償金を支払い,どの原因で社員に請求するのかを確認し,一部貸倒れの根拠を取り違えないようにする。

第3 逮捕,退職及び破産申立てだけでは足りない

加害者が逮捕された,会社を退職した,弁護士から受任通知が届いた,又は破産申立てをしたという事実だけで,賠償債権全額の回収不能が確定するわけではない。
預金,不動産,換価できる財産,収入,先順位の担保,生活状況及び他の債務を確認する。
担保や保証がある場合は,その回収経路を含めて検討する。

国税不服審判所令和元年5月16日裁決(https://www.kfs.go.jp/service/JP/115/11/index.html)の公表裁決書(抄)「4(4)」は,会社の商品を窃取・横領して転売した元従業員に対する損害賠償請求権について,平成25年1月期から平成29年1月期までの全額回収不能を否定した。
対象年度には会社が本人へ給与を支払っており,支払能力が皆無とはいえなかったことや,会社が発覚後直ちに賠償請求訴訟を提起したこと等が考慮されている。
資産に乏しく他の支払義務もあるという事情は,一部の回収が困難であることをうかがわせるにとどまると判断された。

この事案の懲戒解雇は平成29年9月15日であり,対象年度は解雇前である。
裁決は,非免責性や破産後の将来給与を直接判断したものではない。
「給与があれば常に貸倒処理できない」という一般則として読むのではなく,評価した年度と当時の具体的な支払能力を確認する必要がある。

反対に,全額回収不能を検討するため,どの事件でも必ず訴訟と強制執行を最後まで行わなければならないという一律の手順が定められているわけでもない。
財産調査で判明した内容,回収額の見込み,必要な費用・労力及び実行できる回収手段を記録する。

(続きを読む...)損害賠償請求権の貸倒処理と非免責債権―破産,財産調査及び回収記録の実務(AI作成)

従業員の窃盗・横領で被害を受けた会社の税務―盗難損失,損害賠償請求権,修正申告及び加算税(AI作成)

目次第1 被害会社でも申告の修正が必要になることがある第2 転売代金を会社の売上げと決め付けない第3 損失と賠償請求権をどの年度に計上するか1 損失と収益を別々に確認する2 発覚日,示談日及び入金日だけで決めない3 請求権の額と回収可能性を混同しない第4 税務調査はどのように進むか1 対象年度と資料の対応を確かめる2 調査結果の説明を受けて判断する第5 修正申告で直す内容第6 過少申告加算税と重加算税を分ける1 過少申告加算税の基本2 従業員が犯罪を隠したことと会社の隠蔽を分ける第7 消費税は損害賠償金の実質を確認する第8 経理処理と申告調整の組合せ第9 税理士と弁護士が共有する資料第10 関連記事と主な根拠資料
第1 被害会社でも申告の修正が必要になることがある

会社の原材料,商品又は金銭を従業員が盗んだ場合,会社は被害者である。
しかし,被害者であることだけで,法人税の修正申告や加算税の問題がなくなるわけではない。
盗難による損失,加害者に対する損害賠償請求権,実際の回収及び回収不能を,それぞれの事業年度に分けて検討する必要がある。

本記事は,令和8年10月7日に確認した法令,国税庁の公表資料及び国税不服審判所の公表裁決を基に,会社の経理担当者,税理士及び弁護士が共通の資料を作るための確認順序を示すものである。
個別会社の被害額や犯人の資力を仮定した解説ではない。

分ける問題確認する内容盗難損失失われた資産の帳簿価額,既に原価・費用へ算入した額,発生年度損害賠償請求権相手方,権利の存在・内容を客観的に把握できた時期,損害額回収・貸倒れ現物返還,入金,保険金,残高,全額回収不能が明らかになった年度税務調査本税の修正理由,税目・年度,加算税の種類,納付と争う手続
第2 転売代金を会社の売上げと決め付けない

従業員が会社のために販売し,会社の売上代金を着服した場合と,会社の商品を盗み,自分の取引として転売した場合では,検討の出発点が異なる。
販売権限,販売名義,買主の認識,請求書・領収書,入金先及び代金の最終使途を確認する。
会社所有の商品だったことや,在庫管理に不備があったことだけで,転売の主体が会社だったと決まるものではない。

国税不服審判所令和元年5月16日裁決は,元従業員が会社から盗んだ商品を個人の取引として販売した事案で,落札代金の会社への帰属を否定した。
一方,会社の損害賠償請求権については別に益金算入を検討している。
「会社の売上げではない」という結論と,「会社に課税される収益が一切ない」という結論を結び付けてはならない。

転売口座の総入金額には,従業員が自分で購入した品物の代金,返金,口座間振替等が含まれ得る。
会社の被害品との対応を付けて除外・重複を整理し,転売代金,民事上の損害額及び帳簿価額を別の列で管理する。

第3 損失と賠償請求権をどの年度に計上するか
1 損失と収益を別々に確認する

法人税法22条は,各事業年度の収益と損失の計算を定めている。
盗難損失を検討するときは,盗まれた資産が貸借対照表に残っていたか,仕入れや払出しの際に既に原価・費用となっていたかを先に確認する。
既に損金へ算入した取得価額を,発覚時に「盗難損失」としてもう一度損金にしてはならない。

不法行為に基づく損害賠償請求権は,通常,損失の発生時に発生・確定するため,損失と請求権を同じ年度の損金・益金に計上することが問題となる。
ただし,加害者や権利内容を把握することが客観的に困難で,直ちに権利行使を期待できない場合まで,機械的に損害発生年度の益金とするものではない。
上記裁決の「4(3)」は,通常人を基準に権利の存在・内容を把握できたかを判断している。

2 発覚日,示談日及び入金日だけで決めない

代表者が実際に知らなかったことと,通常の在庫照合等をしても権利を把握できなかったことは別である。
棚卸記録,異常値の報告,仕入れと売上げの不一致,調査開始,行為者の特定及び被害数量の判明を時系列にする。
発覚日にまとめて計上する案と過年度へ帰属させる案について,根拠となる資料を対応させる。

東京高裁平成21年2月18日判決も,損害賠償請求権の存在・内容を把握できたかを,会社の主観的な認識だけで決めていない。国税庁公表判決文の7~8頁は,通常人を基準とする判断を示した上で,当該会社が振込依頼書の送金先と金額を確認すれば不正を発見できたなどの具体的事情を検討している。

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出国税(国際観光旅客税)3,000円,宿泊税,免税販売のリファンド方式及びJESTA―訪日客と日本人旅行者が負担する制度(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 対象と基準日2 結論第2 国際観光旅客税1 課税の仕組み2 令和8年7月1日の引上げと経過措置3 日本人の負担4 税収の使途第3 宿泊税1 法定外目的税としての宿泊税2 東京都・大阪府・京都市の現行税率第4 免税販売のリファンド方式1 令和8年10月31日までの制度2 令和8年11月1日からの制度3 免税店の実務上の注意第5 JESTA(電子渡航認証)1 改正法と施行日2 認証の要件と上陸の条件3 手数料第6 動画の主張と一次資料の対応1 制度に関する主張2 統計に関する主張第7 今後の見通しと本記事で扱わない事項1 今後の見通し2 本記事で扱わない事項第8 関連記事第9 出典1 法令2 公的資料3 外国の公表資料4 その他
第1 本記事の対象と結論
1 対象と基準日

世界経済フォーラムの旅行・観光開発指数2026年版で日本が1位になったことを素材にしたYouTube動画(海外Yパパラジオ,令和8年10月3日公開)は,宿代,税金及び混雑という観光の費用が日本人にも回ってきていると指摘し,出国税は日本人も払うこと,免税販売が出国時に持出しを確かめてから税金を返す形に変わること,入国前の審査(JESTA)の機会に日本に住んでいない旅行者から費用を受け取るべきことを述べている。

本記事は,令和8年10月4日を基準日として,e-Gov法令検索で確認した国際観光旅客税法,外国人観光旅客の来訪の促進等による国際観光の振興に関する法律(以下「国際観光振興法」という。),消費税法,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。。未施行の改正後の条文を含む。)及び地方税法の条文と,国税庁・地方公共団体の公表資料を基に,訪日客と日本人旅行者が負担する制度を整理する。
地方公共団体が観光施設やバスの料金を住民と住民以外で分けることの法的な枠組みは,観光施設の「市民料金」と「外国人料金」は許されるか―姫路城の縦覧料改定,京都市バスの市民優先価格,地方自治法244条3項と高根町簡易水道事件で扱う。

2 結論

① 国際観光旅客税の税率は,令和8年7月1日から,本邦からの出国1回につき1,000円から3,000円に引き上げられた(所得税法等の一部を改正する法律〔令和8年法律第12号〕)。
納税義務者は国籍や居住地を問わない「国際観光旅客等」であり,日本人も出国のたびに納める。
同日前に締結された運送契約で同日前に出国の日を定めたものは,運賃と別に徴収するとされている場合を除き,従前の1,000円による。

② 国際観光旅客税の収入見込額に相当する金額は,国際観光振興法12条により,国際観光旅客の円滑かつ快適な旅行のための環境の整備等の国際観光振興施策に充てるものとされている。

③ 宿泊税は,地方公共団体が条例で定め,総務大臣の同意を得て課する法定外目的税であり,宿泊者の国籍を問わない。
京都市は令和8年3月1日から1人1泊の宿泊料金が10万円以上の場合の税額を1万円とし,東京都は令和9年4月1日から定額制を宿泊料金の3%の定率制に改める。

④ 消費税の免税販売(輸出物品販売場制度)は,令和8年11月1日から,免税店が税込価格で販売し,購入日から90日以内の出国時に税関の確認を受けたときに免税が成立し,免税店が消費税相当額を返金する「リファンド方式」に移行する(所得税法等の一部を改正する法律〔令和7年法律第13号〕)。
免税を受けられるのは日本の非居住者である外国人旅行者等であり,ここには居住地による線が既に引かれている。

⑤ JESTA(電子渡航認証)は,令和8年法律第32号による入管法の改正で導入され,査証免除の対象者が短期滞在の活動のために上陸するときは,事前に電子的に情報を提供して出入国在留管理庁長官の認証を受けることが上陸の条件になる。
施行日は令和11年3月31日までの間において政令で定める日である。
認証の手数料は,実費と出入国及び在留の公正な管理に要する費用の額その他の事情を勘案して政令で定めるとされており,動画が提案するように観光地の保全費用を上乗せするには,手数料の趣旨との関係で別の法的手当てが必要になると考えられる(本記事の評価)。

第2 国際観光旅客税
1 課税の仕組み

国際観光旅客税は,国際観光旅客等の国際船舶等による本邦からの出国に課される(国際観光旅客税法5条)。
「国際観光旅客等」は,国際船舶等により本邦から出国する観光旅客その他の者であって,入管法25条1項又は60条1項の規定による出国の確認を受ける者等をいう(同法2条1項3号)。
入管法25条1項は外国人の出国,60条1項は日本人の出国に関する規定であるから,国籍を問わず課税される。

次の出国は非課税である(同法6条)。
① 航空機により本邦を経由して外国に赴く旅客で,入国後24時間以内に出国するもの(乗継ぎ旅客)として政令で定めるもの
② 天候その他やむを得ない理由により本邦に寄港した国際船舶等に乗っていた者として政令で定めるもの
③ 出国する日における年齢が2歳未満の者

航空会社等の国内事業者・国外事業者は,搭乗の時までに国際観光旅客等から国際観光旅客税を徴収して国に納付する(同法16条,17条)。
これらの特別徴収が適用されない場合,国際観光旅客等は搭乗の時までに自ら納付しなければならない(同法18条1項)。

2 令和8年7月1日の引上げと経過措置

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共有物分割と不動産取得税――価値を等しく分けても課税される場合(AI作成)

目次第1 共有物分割なら非課税とは限らない第2 非課税の範囲と税務上の価格1 持分を超える部分は非課税から除かれる2 売買価格や当事者間の評価をそのまま使わない第3 令和2年判決――一体利用する土地の地積按分1 617㎡と566㎡に分けた駐車場の事案2 最高裁が判断した範囲第4 令和4年判決――複数の不動産は個々に比較する1 全体の取り分が釣り合っていても相殺しない2 二つの判決で確認する事項は異なる第5 分割案を合意する前の確認表第6 別に検討すべき取得と税目第7 出典
第1 共有物分割なら非課税とは限らない

共有している土地を分けて各人の単独所有にする場合でも,不動産取得税が生じることがある。
当事者が「双方の取り分は同じ価値である」と合意したことと,税務上,従前の共有持分を超える取得がないことは,同じではない。
分割案を決める前に,分割前後の持分,不動産ごとの価格及び土地の評価単位を確認する必要がある。

本稿は,令和8年10月4日現在の法令と,最高裁判所第一小法廷令和2年3月19日判決及び最高裁判所第三小法廷令和4年3月22日判決を基礎に,この問題を整理する。

第2 非課税の範囲と税務上の価格
1 持分を超える部分は非課税から除かれる

地方税法73条の2第1項は,不動産の取得に対して,その所在地の道府県が取得者に不動産取得税を課する仕組みを定めている。
同法73条の7第2号の3は,共有物の分割による取得を非課税とする一方,取得者の分割前の持分割合を超える部分の取得を除外している。
したがって,「共有物分割」という登記原因や合意書の表題だけでは,取得全部が非課税とは判断できない。

2 売買価格や当事者間の評価をそのまま使わない

同法73条の13第1項は,課税標準を取得時の不動産の価格とし,同法73条の21第1項本文は,固定資産課税台帳に登録された価格により課税標準となるべき価格を決定すると定める。
価格の登録がない不動産や,同条1項ただし書の特別の事情がある不動産については,同条2項により固定資産評価基準に基づいて価格を決定する。

当事者間の売買相場,不動産鑑定による評価,相続税の評価方法を参考にした配分及び固定資産評価による価格を混同しないことが重要である。
共有者間の公平な分配を考える資料と,不動産取得税の課税判断に用いる資料を分けて準備する。

第3 令和2年判決――一体利用する土地の地積按分
1 617㎡と566㎡に分けた駐車場の事案

最高裁判所第一小法廷令和2年3月19日判決(平成31年(行ヒ)第99号,民集74巻3号227頁)は,各2分の1の持分で共有していた土地を分筆し,一方が617㎡,他方が566㎡の土地を単独所有とした事案である。
判決本文は,裁判所公表の判決全文で確認できる。

分筆後の土地も構造物で物理的に区分されず,連続して舗装され,駐車区画の一部等が両土地にまたがっており,全体が駐車場として一体的に利用されていた。
課税庁は,両土地を一画地と認定して価格を算出し,617㎡の土地の価格を,全体の価格に617/1183を乗じて求めた。

この算定では,617㎡の土地の価格が,分筆前の土地の価格の2分の1を超える。
当該事件の持分超過部分に係る課税標準額は101万3000円,税額は3万0300円であった。
この税額は当該事件の処分内容であり,現在の個別案件の税額を示すものではない。

2 最高裁が判断した範囲

最高裁は,隣接する複数の宅地を一画地として認定し,画地計算法を適用する場合,各筆の評点数は,その画地の単位地積当たりの評点数に各筆の地積を乗じて算出すべきであるとした。
持分超過部分の判断のために評価するときや,各筆の所有者が異なるときにも,これと別の評価方法を採る理由はないと判断し,本件処分を適法とした。

この判決は,隣接する土地を常に一画地とするものではない。
形状,利用状況等から一体を成していると認められることが前提であり,「面積が持分割合を超えたら,どの土地でも直ちに課税される」と一般化することはできない。

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遺言による金銭信託の受益権を放棄した場合―代替取得者・遺産分割協議・課税関係(AI作成)

目次第1 問題の所在と結論第2 銀行の遺言信託と遺言による信託第3 信託が効力を生ずる時期第4 受益権放棄と遺言の代替条項第5 相続人全員の協議で変更する場合第6 相続税・贈与税の検討順序第7 設例による整理第8 実務上の確認資料第9 関連記事と出典
第1 問題の所在と結論

遺言に「一定の金銭を信託し,甲を受益者とする」と書かれているとき,甲が受益権を放棄することと,信託銀行に遺言執行を依頼しないことは別の行為である。遺言が「甲が受益権を放棄した場合は信託を設定せず,その金銭を乙らに分ける」と定めていれば,代替条項の文言,信託の効力が生じた時期,受託者への通知と引受け,乙らの取得原因を順に確認する必要がある。受益権の放棄だけで,常に遺産全体が未分割に戻るとはいえない。

税務上も「遺言を執行しなかったから贈与税はない」「全員で協議したから常に相続税だけである」とは決められない。遺言の代替条項による被相続人からの取得なのか,成立後の信託に関する権利の無償移転なのか,信託終了による残余財産取得なのか,別の取得原因なのかを,民事上の経過とともに検討する。本記事は一般的な整理であり,代替条項を伴う遺言による信託の受益権全部放棄について,同一事実関係の税務判断を示した裁決・判決を確認したものではない。

第2 銀行の遺言信託と遺言による信託

銀行の商品名である「遺言信託」は,遺言書の保管・遺言執行等のサービスをいうことがある。他方,信託法3条2号の遺言による信託は,遺言により受託者に財産を管理・処分させ,受益者に受益権を与える制度である。一つの遺言に両方が登場することもあるため,銀行が「遺言執行者」なのか「受託者」なのかを条項ごとに特定する。遺言執行契約を解約しても,それだけで信託の設定条項や代替取得者の指定が消えるわけではない。

第3 信託が効力を生ずる時期

信託法4条2項は,遺言による信託は遺言の効力の発生によって効力を生ずると定める。受託者への送金を信託の成立時点と当然に捉えてはならない。受託者となるべき者が引き受けない場合は信託法5条の手続と遺言の代替条項を確認する。受託者の不引受けと受益者の放棄は当事者も法的効果も異なる。

信託法4条4項は,信託行為に停止条件又は始期が付されている場合,その成就又は到来によって信託が効力を生ずると定める。したがって,遺言の効力発生時に当然に信託が効力を生ずるという原則と,条項に基づく例外を区別する。受託者への送金前であるという事実だけでは,信託が未発効であることの根拠にならない。

第4 受益権放棄と遺言の代替条項

信託法99条1項は,受益者が信託行為の当事者である場合を除き,受託者に対する意思表示によって受益権を放棄できるとし,同条2項は放棄した者が初めから受益権を有しなかったものとみなす。したがって,放棄の相手方,時期,書面の到達を記録する必要がある。もっとも,この民事上の遡及効から,あらゆる税務関係が自動的に相続開始時に遡って決まると即断できない。

遺言に「受益者が放棄した場合は信託を設定しない」とあるときは,その文言が信託設定の条件・失効事由をどう定めるか,既に効力を生じた信託の扱いをどう整理するかが問題となる。さらに,代替条項が指定する取得者と割合を確認する。代替条項により他の相続人が金銭を取得するなら,単に「信託をやめる」案でも,遺産全体の取得割合が変わり得る。

遺言本文に「受益権を放棄した場合は信託を設定せず,金銭を指定した者に取得させる」とある一方,遺言に組み込まれた別紙信託条項に「受益権放棄により信託が終了し,残余財産を指定した者に分配する」とある場合,両条項の整合性を検討しなければならない。前者は遺言者からの直接の代替取得を,後者は効力を生じた信託の終了と残余財産の取得を示す読み方があり,同じ取得者・割合であっても取得原因は同じとは限らない。本文と別紙の一体性,適用順序,信託の効力発生条件,放棄の意思表示の到達及び執行状況を確認する。このような併存条項に対する判断を,文言の一部又は送金の有無だけで確定しない。

第5 相続人全員の協議で変更する場合

遺言と異なる最初の相続人全員の協議を行う場合,預貯金,証券,不動産を財産別に特定し,信託に充てる予定の金銭と受益権の扱いも明記する。遺言執行者への指図だけで,既に生じた受益権や受託者との法律関係を変更したことにはならない。必要な受益者・受託者の意思表示や信託行為の変更・終了の可否を別途検討する。

国税庁No.4176は「特定の相続人に全部の遺産を与える」遺言と異なる全員協議の例であり,金銭信託の代替条項と受益権放棄が組み合わさる事例を直接判断していない。金融資産だけ遺言どおり執行して残りを協議する場合には,財産ごとの取得時点・取得原因・金銭の移動を追える資料を残す。

第6 相続税・贈与税の検討順序

相続税法9条の2第1項は,受益者等が適正な対価を負担せずに信託に関する権利を取得した場合,信託の効力が生じた時に,委託者から贈与又は遺贈により取得したものとみなす。受益者が後に放棄し,別の人が対価なしで利益を受けるなら,同条2項・3項・4項のどの場面に当たるかを調べる。国税庁の相続税法基本通達9の2-4は,一部の権利の放棄・消滅後に他の受益者等が取得したものとみなされる場合を説明する。国税庁の解説は全部放棄にも同様の課税関係が生じ得ると述べる一方,信託の終了事由にもなり得るとする。

遺言の代替条項によって遺言者から直接金銭を取得する場合は,その相続又は遺贈について相続税を検討する。一方,受益者等の存する信託が終了し,他の者が適正な対価を負担せずに残余財産を受けるべき又は帰属すべき者となる場合には,相続税法9条の2第4項により,終了直前の受益者等からの贈与とみなされることが問題となる。終了直前の受益者等であった取得者が,従前の信託に関する権利に相当する残余財産を取得する部分は除かれる。従前の受益者等の死亡に基因する終了の場合は,みなし遺贈となる。遺言者の死亡後に受益者が放棄したというだけで,その終了が受益者等の死亡に基因するものになるわけではない。

相続税法基本通達9の2-5は,同項の対象を,信託行為で指定された残余財産受益者等に限定していない。受益権を他の相続人へ譲渡する契約がなくても,信託終了と残余財産取得によるみなし贈与の問題は残る。信託法99条2項の民事上の遡及効と,税法上の取得時点・移転元の判定を同一視しない。ただし,遺言本文の不設定条項と別紙の終了条項が併存する場合に,どちらの取得原因として取り扱うべきかを直接判断した同一事実関係の裁決・判決は,本記事で確認できていない。上記の一般規定だけから個別事案の贈与税を確定しない。

第7 設例による整理

遺言者が金銭の一部を信託してAを受益者とし,「Aが受益権を放棄するときは信託を設定せず,その金銭をA・B・Cに所定割合で取得させる」と定めたとする。まずAが放棄しなければ,原則としてAの受益権と受託者の地位を確認する。Aが放棄する場合は,放棄の意思表示と到達,代替条項の発動,金銭の帰属を確認する。B・Cが金銭を取得するなら,Aが放棄したこととB・Cが無償で利益を得たことの税法上の関係も検討する。A・B・Cがその後に遺産全体の別の配分を協議する場合は,先の取得と後の協議を時系列で記録する。

例えば,本文が放棄時の金銭の直接取得を定め,別紙が放棄による信託終了と同じ割合の残余財産分配を定める設例では,まず双方の条項を対照して取得原因を確定する。直接の相続・遺贈と整理できる場合は相続税の検討となり,既に効力を生じた信託の終了と整理される場合は相続税法9条の2第4項を検討する。金銭額に分配割合を掛けただけで,各取得者の贈与税の課税価格が直ちに確定するわけではない。信託終了直前の受益者等,従前の権利に相当する部分の除外,財産評価及び取得時点を確認する。

第8 実務上の確認資料

確認する資料は,①遺言全文と変更遺言,②信託設定条項・放棄時の代替条項,遺言本文と別紙信託条項の対応表,停止条件・始期及び終了条項,③遺言執行者と受託者の就職・引受け・辞退資料,④受益権放棄書と受託者への到達記録,⑤信託口座と一般の遺産口座の移動記録,⑥全員協議書案,⑦相続税評価資料と申告書の取得者別内訳である。協議前の段階では,放棄や送金を先行させることで選択肢が変わらないかを確かめる。

第9 関連記事と出典

関連記事:清算型遺言の清算金から信託を設定する場合,遺言を一部執行し残りを遺産分割協議で変更する場合,遺言と異なる遺産分割協議はできるか。

法令:信託法3条,4条,5条,99条,163条,164条,182条。相続税法9条の2。
国税庁:相続税法基本通達9の2関係,同通達9の2関係の解説,信託終了時の課税に関する通達解説,タックスアンサーNo.4176。

東京国税局の税理士専門官だより(令和4年~令和6年)-税理士等情報せん,にせ税理士,国税OB税理士の業務制限及び調査妨害(AI作成)

目次第1 この記事の対象と資料1 税理士専門官だよりとは2 この資料を読むときの注意第2 税理士等情報せん1 作成を求める場面と主な違反行為2 作成の流れ3 情報せんの活用第3 にせ税理士への対応1 にせ税理士とは2 端緒の例3 税理士事務所職員と記帳代行業者ができる業務4 税理士証票の確認5 想定される違反行為と罰則6 にせ税理士に関する裁判例第4 退職した税務職員の業務制限1 税理士法42条の内容と趣旨2 「職の所掌に属すべき事件」の範囲3 期間の数え方と違反の具体例4 違反の効果と広告の表示第5 調査妨害への対応1 調査妨害の類型と税務職員の対応例2 調査非協力との区別3 記録の重視と受忍義務第6 令和4年度改正の紹介第7 弁護士及び依頼者にとっての意味第8 資料確認の範囲と限界第9 出典・関連記事1 検討した資料2 法令及び告示3 裁判例4 関連記事
第1 この記事の対象と資料
1 税理士専門官だよりとは

本記事は,東京国税局の税理士専門官が局内及び管内税務署の職員向けに発行している「税理士専門官だより」のうち,令和4年分から令和6年分までの各号を読み,税務署が税理士法違反をどのように把握し,懲戒処分や告発につなげようとしているかを整理するものである。
調査の基準日は令和8年10月2日である。

当サイトに掲載している写しは,令和4年分(12頁),令和5年分(16頁)及び令和6年分(15頁)の3点である。
各号には,7月の第1号から翌年6月の第5号までの通し番号と,「特別号」又は「号外」があり,文書分類は「共通(法令・通達)」,「情報通信類」とされている。

主な号と題名は次のとおりである。
①令和4年2月第3号「にせ税理士防止月間」,令和4年3月第4号「退職した税務職員に対する税理士業務の制限」,令和4年5月第5号「「税理士事務功績者」への表彰」,令和4年5月特別号「税理士法の一部が改正されました。」,令和4年7月第1号「「税理士等情報せん」を作成しましょう」,令和4年11月第2号「「税理士証票」を確認していますか?」
②令和5年2月第3号「にせ税理士防止月間」,令和5年3月第4号「退職した税務職員に対する税理士業務の制限」,令和5年6月第5号「「税理士事務功績者」への表彰」,令和5年6月特別号(令和5年4月施行の改正の紹介),令和5年7月第1号「「税理士等情報せん」はこうして活用されます!」,令和5年11月第2号「「税理士証票」を確認していますか?」
③令和6年2月第3号「その人、本当に税理士ですか??」,令和6年3月第4号「退職した税務職員に対する税理士業務の制限」,令和6年6月第5号「「税理士事務功績者」への表彰」,令和6年6月号外「税理士の調査妨害には、「毅然とした対応」と「詳細な記録」を!」,令和6年7月第1号「税理士等に対する懲戒処分の実施に向けて」,令和6年11月第2号「調査最盛期!増える調査妨害に向けて」

2 この資料を読むときの注意

税理士専門官だよりは,東京国税局の職員に向けた内部の広報であり,税理士や納税者に対する法令上の義務を定めたものではない。
証拠資料の具体例,表彰を受けた職員が把握した違反の内容,調査妨害に対する税理士調査側の対応等は黒塗りとなっており,その部分は本記事でも扱わない。
表彰を受けた職員の氏名と所属は掲載されているが,本記事では記載しない。

各号に書かれた条文の説明には,現行法と異なる部分がある。
例えば,罰則の「懲役」は,令和7年6月1日から拘禁刑に改められている。
本記事では,税理士専門官だよりの記載と,現行の税理士法及び財務省告示で確認できる事項とを区別して記載する。
本記事で引用した税理士法の条文は,e-Gov法令検索がメンテナンス中であったため,判例秘書の現行法令アーカイブ(令和8年8月1日現在)で確認した。

第2 税理士等情報せん
1 作成を求める場面と主な違反行為

各号に共通する依頼は,税理士法違反行為に関する情報を把握したときは,違反事実に限らず「疑い」も含めて,速やかに「税理士等情報せん」を作成することである。

違反行為を把握する場面として,次の3つが挙げられている。
①調査・滞納整理事務
②面接,電話,投書等による情報提供
③申告書の収受や郵便開封事務(申告書の「控」の送付先が,納税者でも関与税理士でもない第三者の住所である場合など)

主な違反行為として紹介されているのは,次の4類型である。
①脱税相談等をした場合の懲戒(税理士法45条):脱税相談・指示等,事実に反することを知りながら正しくない内容の申告書を作成すること
②信用失墜行為の禁止(同法37条):税理士本人(税理士が代表者である法人を含む。)の脱税や申告漏れ,関与先の書類を預かったまま申告を怠る業務懈怠,令和6年分からは調査妨害
③非税理士に対する名義貸しの禁止(同法37条の2):非税理士が作成した税務書類への署名押印

(続きを読む...)東京国税局の税理士専門官だより(令和4年~令和6年)-税理士等情報せん,にせ税理士,国税OB税理士の業務制限及び調査妨害(AI作成)

税理士の懲戒処分の手続と量定-税理士懲戒処分等事務取扱規程,聴聞事務取扱規程及び税理士事務提要を現行法で読む(AI作成)

目次第1 この記事の対象と資料1 取り上げる資料2 資料を読むときの注意第2 懲戒処分の種類と対象となる行為1 懲戒処分の種類2 脱税相談等をした場合の懲戒(税理士法45条)3 一般の懲戒(税理士法46条)4 税理士法人と通知弁護士第3 端緒の把握から処分までの流れ1 端緒の把握2 実態確認と税理士法上の調査3 税務署長の報告から財務大臣への進達まで4 予告通知と弁明又は聴聞5 国税審議会への諮問と処分6 公告と国税庁の公表第4 処分の量定1 財務省告示の総則2 類型ごとの量定3 量定についての裁判例第5 処分の効力と処分後の措置1 効力の発生時期2 処分を受けた税理士への説明事項3 登録抹消の制限,除斥期間及び税理士であった者に対する決定第6 不服申立てと取消訴訟第7 実務上の着眼点1 税理士の不正を疑う依頼者から相談を受けた場合2 懲戒の手続に付された税理士を代理する場合3 通知弁護士として税理士業務を行う弁護士第8 公開後に確認した事項と確認の範囲1 公開後に確認した事項2 なお確認できていない事項第9 出典・関連記事1 検討した資料2 法令及び告示3 裁判例4 関連記事
第1 この記事の対象と資料
1 取り上げる資料

本記事は,税理士に対する懲戒処分が,税務署での端緒の把握から財務大臣の処分と公告に至るまで,どのような手続で行われるかを,国税当局の内部規程と現行法に沿って整理するものである。
調査の基準日は令和8年10月2日である。

中心となる資料は,当サイトに掲載している次の4点である。
①税理士懲戒処分等事務取扱規程(昭和57年7月8日大蔵省訓令特第13号。平成25年7月時点の写し)
②税理士法聴聞事務取扱規程(平成7年4月13日大蔵省訓令特第8号。平成25年7月現在の写し)
③税理士法事務取扱規程(昭和26年12月22日国税庁訓令特第29号。平成25年7月時点の写し)
④国税庁総務課の税理士事務提要(表紙は平成14年7月。本文は平成20年から平成23年までの事務運営指針等を引用しており,その頃までの改正を反映した版である)

税理士事務提要は,国税局及び税務署で税理士事務を担当する職員の標準的な事務手続を定めたものであり,総則,税理士会,情報の収集,調査等,指導,懲戒処分等,税理士法52条違反への対応,税理士登録に係る確認等,臨時の税務書類の作成等の許可,通知弁護士等,退職予定者に対する指導等,犯罪収益移転防止法及び中小企業等協同組合の各章から成る。
当サイトに別に掲載している「税理士事務提要(平成14年7月)」のPDFも,各頁の画像が④と同じであり,別の版ではない。

2 資料を読むときの注意

上記①から④までは,いずれも平成25年頃までの内容であり,その後の税理士法の改正を反映していない。
本記事では,資料に書かれた手続と,現行の税理士法,行政手続法,行政不服審査法及び財務省告示で確認できる事項とを区別して記載する。

同提要の犯罪収益移転防止法に関する章及び当時の確認表は,令和6年4月1日の確認事項拡充・疑わしい取引届出義務及び令和9年4月1日の本人確認方法改正を反映していない。
現行の義務は,犯罪収益移転防止法及び現在の下位法令,国税庁の公表資料並びに税理士の取引時確認と疑わしい取引の届出によって確認する必要がある。

特に注意すべき違いは,次の4点である。
①税理士業務の停止の上限は,資料では「1年以内」であるが,現行の税理士法44条2号は「二年以内」である。
②処分に対する不服申立ては,資料の通知書様式では財務大臣に対する異議申立てであるが,現行法では審査請求である。
③懲戒処分の公告は,資料では官報によるものとされているが,現行の税理士法47条の4は,財務省令で定める方法により閲覧できる状態に置く措置と官報による公告の両方を求めている。
④税理士であった者に対する「懲戒処分を受けるべきであつたことについての決定」(同法48条)と懲戒の除斥期間(同法47条の3)は,資料の作成後に設けられた制度である。

本記事で引用した税理士法,行政手続法及び行政不服審査法の条文は,e-Gov法令検索がメンテナンス中であったため,判例秘書の現行法令アーカイブ(令和8年8月1日現在)で確認した。

第2 懲戒処分の種類と対象となる行為
1 懲戒処分の種類

税理士法44条は,「税理士に対する懲戒処分は、次の三種とする。」とし,「戒告」,「二年以内の税理士業務の停止」及び「税理士業務の禁止」を掲げる。
処分をするのは財務大臣である(同法45条,46条)。

税理士業務の禁止の処分を受けた者は,処分を受けた日から3年を経過するまで税理士となる資格を有しない(同法4条6号)。
これに対し,業務の停止の処分を受けた者は,停止期間の満了によって税理士業務を再開することができる。

2 脱税相談等をした場合の懲戒(税理士法45条)

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組織再編税制の適格判定と欠損金の引継制限―東京国税局審理課「組織再編税制一問一答」(平成24年6月)の41問と現行法との違い(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 対象とする資料2 結論第2 一問一答の構成第3 共通事項1 支配関係と完全支配関係2 適格か非適格かは選べない3 資産等の移転の取扱い4 「同一の者」と「一の者」第4 適格合併の判定1 3つの類型と対価要件2 外国法人が株主である子会社同士の合併3 合併後に合併法人が他社から資本参加を受ける場合4 無対価合併5 合併後に更に合併を予定している場合6 事業規模要件の比較期間7 三角合併と親法人株式第5 適格分割と現物出資1 無対価分割は分割型分割か分社型分割か2 孫会社への無対価分割は適格にならない3 分割後の資本参加と分割後の合併4 「主要な資産及び負債」の判定5 外国法人による国外資産の現物出資6 共同新設分割は税務と競争法を分けて判定する第6 未処理欠損金額の引継ぎと制限1 引継ぎの原則と繰越期間2 法人税法57条3項の引継制限がかからない3つの場合3 設立日を基準にする場合の除外4 制限される欠損金額5 支配関係の起算は当事者の間で見る6 合併法人自身の欠損金額の使用制限第7 包括的否認規定(法人税法132条の2)1 一問一答の問72 最高裁平成28年2月29日の2判決3 5年を超える支配関係があっても否認された下級審の例4 実務上の意味5 大阪地裁令和8年判決とPGM事件との比較第8 合併後の会計処理・申告・消費税1 棚卸資産の評価方法2 減価償却資産の取得日と償却方法3 申告期限の延長4 消費税第9 一問一答と現行法の主な違い第10 実務上の判断手順と注意点1 判断手順2 注意点第11 本記事で扱わない事項第12 関連記事第13 出典1 本記事で読んだ資料2 法令・通達3 裁判例
第1 本記事の対象と結論
1 対象とする資料

本記事は,当ブログに掲載している次の資料を読んで,組織再編税制(合併,分割,現物出資等に係る法人税等の取扱い)の実務上の要点を整理するものである。
基準日は令和8年10月1日である。

東京国税局課税第一部審理課「組織再編税制一問一答(平成24年6月)」

資料は,冒頭の「組織再編税制関係インデックス」4頁と,41問の一問一答から成る全115頁のスキャンPDFである。
インデックスの各行には,掲載区分として「組織再編税制一問一答(平成24年6月)」,作成部署として「東京国税局課税第一部審理課」と記載されており,インデックスの欄外には「2013/9/11」の印刷日時が付いている。
各問は【質問】【回答】【解説】【関係法令通達】の順で書かれ,末尾に「平成23年7月1日現在の法令・通達に基づいて作成しています。」という注記がある。

以下,この資料を「一問一答」と呼び,問の番号はインデックスの番号(001から041まで)に従って「問1」のように示す。
一問一答は,国税局の職員が作成した解説資料であり,法令でも国税庁長官の通達でもないので,納税者や裁判所を拘束するものではない。
もっとも,課税庁の担当部署が組織再編税制をどのように読んでいるかを具体例で示している点で,実務上の参考になる。

本記事では,一問一答の結論が現在も使えるかを確かめるため,法人税法,法人税法施行令及び消費税法施行令の現行条文を照合した。
照合には,判例秘書の「現行法令アーカイブ」(画面の表示では「令和8年8月1日 現在の現行法令」)を用いた。
本記事の作成時は,e-Gov法令検索がシステムメンテナンス中で利用できなかったため,e-Govでの照合はしていない。

2 結論

結論は次のとおりである。
①組織再編成が適格か非適格かは,法令の要件に当たるかどうかで決まり,納税者が選ぶことはできない(問3)。
②適格要件は,合併等の当事者の関係(完全支配関係,支配関係又は共同事業)ごとに異なり,再編後に資本関係が変わる予定や,再編後に更に合併する予定があるときは,その予定まで含めて判定する(問8,問11,問12,問18から問22まで)。
③未処理欠損金額の引継ぎと合併法人自身の欠損金額の使用は,5年前の日からの支配関係又はみなし共同事業要件がなければ制限され,設立日を基準にする特例にも,制限を免れるための迂回を封じる除外規定がある(問25から問34まで)。
④形式的に要件を満たしても,組織再編成を利用した租税回避と認められると,法人税法132条の2により否認され得る(問7)。
最高裁判所は,平成28年2月29日の2つの判決で,その判断基準を示している。
⑤一問一答は平成23年7月1日現在の法令に基づくので,欠損金額の繰越期間(現在は10年),無対価合併・無対価分割の適格要件,再編後の再編の扱い,親法人株式のみなし譲渡の項番号,減価償却の方法等は,現行法に読み替えて使う必要がある。

第2 一問一答の構成

一問一答の41問は,インデックスの分類によると次のとおりである。

分類問主な内容共通問1~問5支配関係と完全支配関係,適格・非適格の選択の可否,資産等の移転の取扱い,「同一の者」と「一の者」合併問6~問12,問14,問15,問25~問34合併の適格判定,三角合併,未処理欠損金額の引継ぎと制限分割問16~問23,問38無対価分割,分割後の資本参加・合併,主要な資産負債,新設法人の償却率現物出資問24外国法人による現物出資その他問13,問35~問37,問39~問41事業規模要件,棚卸資産・減価償却資産,申告期限の延長,消費税
第3 共通事項
1 支配関係と完全支配関係

一問一答は,「支配関係」を,一の者が法人の発行済株式等の50%を超えて直接又は間接に保有する関係と,一の者との間にその関係がある法人相互の関係であると説明する(問1)。
「完全支配関係」は,これを100%にしたものである(問2)。

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特定財産承継遺言と異なる最初の相続人全員の協議――登記原因と課税関係(AI作成)

目次第1 検討の対象と結論1 「最初の協議」であることの意味2 本記事の資料上の限界第2 まず確認すべき判決・裁決1 最高裁平成3年4月19日判決――遺言による取得の時点2 さいたま地裁平成14年2月7日判決――最初の全員協議の民事上の効力3 最高裁平成22年12月16日判決――中間の権利移転を省略する登記の限界4 国税不服審判所の裁決――後のやり直しを「最初の協議」と混同しない第3 事例別にみた協議の位置付け1 特定財産承継遺言があり、執行・登記前に最初の全員協議をする場合2 全遺産を一人に取得させる遺言を、最初の分割で変更する場合3 一部の財産について遺言を執行し、残部だけを協議する場合4 遺言どおりの取得後、又は最初の分割後に変更する場合5 金銭信託の代替条項がある場合第4 登記原因の検討1 民事上の有効性と登記原因は別の確認事項である2 登記前に確認する資料第5 課税関係の検討1 真正な代償分割である場合2 別個の低額譲渡・贈与と評価される場合3 後の再分割・申告訂正の場合第6 実務上の確認順序1 合意前に作る資料第7 出典
第1 検討の対象と結論
1 「最初の協議」であることの意味

特定の財産を特定の相続人に「相続させる」と定めた遺言がある場合でも、相続開始後、相続人全員がその財産を別の相続人に取得させることについて最初に合意することがある。この合意を、有効な遺産分割として扱えるか、遺言によりいったん取得した相続人からの贈与・交換・譲渡として扱うべきかは、登記と税務の双方に影響する。
結論を先に述べると、「全員による最初の協議」という形式だけで登記原因や課税関係が一律に確定するわけではない。遺言の文言、対象財産の範囲、遺言執行の状況、全員の合意内容、対価の性質及び従前の申告・登記を分けて確認する必要がある。

2 本記事の資料上の限界

本記事で確認した裁判例・裁決には、特定財産承継遺言がある不動産について、最初の全員協議により別の相続人が代償金を支払って取得した事案の登記原因と相続税・贈与税・所得税のすべてを一体として確定したものはない。民事上の協議の効力を認めた判決を、直ちに税務又は登記の先例として扱うことはできない。
以下では、資料が直接判断した事項と、実務上検討すべき事項を区別する。

第2 まず確認すべき判決・裁決
1 最高裁平成3年4月19日判決――遺言による取得の時点

最高裁平成3年4月19日判決は、特定の遺産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言について、特段の事情がない限り、その遺産は被相続人の死亡時に直ちに当該相続人に承継されると判断した。後の協議を検討する出発点は、遺言によるこの権利移転である。
もっとも、この判決自体は、その後の相続人全員による最初の合意の効力、登記原因又は課税関係を判断したものではない。

2 さいたま地裁平成14年2月7日判決――最初の全員協議の民事上の効力

同判決の事案では、土地全部を一人の相続人に相続させる遺言があったが、相続人全員は、別の相続人に土地の74%、残る二人に各13%を帰属させる内容の協議をした。裁判所は、遺言が協議を禁じておらず、第三者の権利も害しないなどの事実関係の下で、協議の効力を認めた。判決は、その合意に贈与や交換を含む混合契約の性質があり得ることにも触れた上で、通常の遺産分割と同様に取り扱うことが適切と述べている。
これは当該協議の民事上の効力に関する判断である。登記申請の原因を一律に「遺産分割」とできることや、贈与税・譲渡所得税が生じないことまで判示したものではない。また、代償金を伴う事案の税務を判断したものでもない。

3 最高裁平成22年12月16日判決――中間の権利移転を省略する登記の限界

同判決は、贈与を受けた者が死亡して相続が生じた事案について、贈与と相続という中間の権利移転を飛ばし、最終取得者に「真正な登記名義の回復」を原因として直接移転登記をすることは認められないとした。
これは特定財産承継遺言と全員協議の事案ではない。したがって、同判決をそのまま当てはめることはできないが、実際に生じた権利移転と異なる登記原因を便宜的に選べないことを検討する資料となる。

4 国税不服審判所の裁決――後のやり直しを「最初の協議」と混同しない

平成17年12月15日裁決では、有効に成立した最初の遺産分割の後で、錯誤を理由に再分割したと主張された事案につき、贈与税の課税が維持された。平成23年12月6日裁決は、全財産を各2分の1とする遺言、相続税申告後の紛争及び遺留分をめぐる和解に関するもので、相続税法55条等の適用が争われた。
両裁決は「遺言と異なる最初の全員協議」そのものを判断したものではない。協議がいつ成立したのか、従前の申告・分割が何を前提にしていたかによって論点が変わることを示す資料である。

第3 事例別にみた協議の位置付け
1 特定財産承継遺言があり、執行・登記前に最初の全員協議をする場合

相続人全員の合意により遺言と異なる帰属を定める協議は、さいたま地裁判決のように民事上有効と評価され得る。ただし、遺言による死亡時の権利承継を踏まえると、合意の法的構成にはなお検討を要する。対象財産の取得者を変更した理由、他の遺産との調整、支払金の位置付け、第三者の権利及び遺言執行者の権限を確認すべきである。
協議書の表題を「遺産分割協議書」としたことだけで、登記及び税務の取扱いは決まらない。

2 全遺産を一人に取得させる遺言を、最初の分割で変更する場合

国税庁タックスアンサーNo.4176は、遺言で財産全部を一人の相続人に取得させることとされていたが、相続人全員の協議で遺言と異なる分割をした場合、取得財産について相続税の課税対象として扱い、相続人間の贈与税の問題は生じないと説明する。関連する質疑応答は、全財産の包括遺贈を題材にしている。
この説明を、特定の土地だけを取得させる遺言と、別途執行される預貯金等がある事案へ無条件に拡張することはできない。個別の遺言と協議の構造を示して税務上の確認を要する。

3 一部の財産について遺言を執行し、残部だけを協議する場合

預貯金等は遺言どおりに払い戻し、土地だけを別の相続人が金銭を支払って取得する場合、土地の移転を遺産全体の分割調整として説明できるかが問題となる。協議書に「代償金」と記載しただけでは、遺言に基づいて土地を承継した者からの別個の移転という評価を排除できない。

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確定申告期の税務署の事務運営-令和5年分の大阪国税局長指示に見る申告相談・還付審査・照会文書(AI作成)

目次第1 この記事の対象と資料1 資料の名称と構成2 この資料を読むときの注意第2 確定申告会場の運営方針1 開設期間,相談受付時間及び入場整理券2 自力作成とスマホ申告の推進3 会場で受けない相談第3 申告相談の場面で税務署が確認していた事項1 納税者を代理する理由のない者2 源泉徴収と印紙税3 納付と還付の口座4 他の税務署の管内に住む納税者第4 インボイス制度と消費税の申告相談1 消費税の申告相談の流れ2 2割特例の選択に関する注意3 登録状況を伝えるときの本人確認第5 還付申告の審査と支払先への照会1 還付までの期間2 還付審査の体制3 支払先への照会と,文書の根拠の表示4 住宅借入金等特別控除の確認第6 提出事実と個人情報の管理1 収受日付印の扱い2 利用者識別番号を誤って送信した場合3 マイナンバーの本人確認第7 依頼者に助言するときの確認事項第8 本記事で扱わない事項第9 出典・関連記事1 検討した資料2 法令3 国税庁の公表資料4 関連記事
第1 この記事の対象と資料
1 資料の名称と構成

本記事は,大阪国税局長が管内の各税務署長に宛てた「令和5年分確定申告期における事務実施上の留意事項について(指示)」(令和5年12月12日付け)を読み,確定申告期に税務署がどのような方針で申告相談,申告書の収受及び還付審査を行っていたかを整理するものである。
調査の基準日は令和8年10月1日である。

当サイトに掲載している写しは全582頁であり,鑑文の後に,本文に当たる「別冊」(目次6頁,本文52頁),別添1から別添18まで,別冊様式(チラシ,チェック表,照会文書の様式等)及び国税庁の公表資料(インボイス制度の手引,Q&A等)が続く。
鑑文によれば,同指示は,令和5事務年度の課税部門の事務運営に関する指示,閉庁日対応に関する指示,個人課税事務提要,資産税事務提要等の通達に定めるところによるほか,別冊のとおり実施するよう求めるものである。

不正還付の未然防止に関する審査の着眼点(別冊45頁から47頁まで)及び別冊様式の一部は黒塗りとなっており,その部分の内容は本記事でも扱わない。

2 この資料を読むときの注意

同指示は,令和5年分の確定申告期(令和6年2月から3月まで)について,大阪国税局管内の税務署に向けた内部の事務運営を示すものである。
現在の法令,全国の税務署の運用又は令和8年現在の会場運営を直接示すものではない。
例えば,申告書等の控えへの収受日付印の押なつは,令和7年1月から取りやめられており,同指示が前提とした取扱いとは異なる。

そのため,本記事では,同指示に書かれた事項と,法令又は国税庁の現行の公表資料で確認できる事項を区別して記載する。
同指示から,税務署が何を重視し,どのような場面で別の部門へ引き継ぐのかを読み取ることは,依頼者に申告や照会への対応を助言するときの背景知識として役立つ。

第2 確定申告会場の運営方針
1 開設期間,相談受付時間及び入場整理券

同指示では,確定申告会場の開設期間を2月16日から3月15日まで,相談受付時間を16時までとし,全署統一としていた(別冊7頁)。
入場には整理券を要し,当日配付のほか,国税庁のLINE公式アカウントを通じたオンラインの事前発行を行い,電話や対面での事前発行は行わないとしていた(別添1)。
オンライン発行は1日当たり発行数の6割から8割を目安とし,申告期限間際は2割程度に減らすとされていた。

京都市内,大阪市内及び神戸市内の3か所には,合わせて20署を対象とする合同会場が置かれた(別冊14頁)。
閉庁日の対応は令和6年2月25日(日曜日)に管内56署で行い,そのうち41署は合同会場で対応するとされていた(別冊44頁)。
同指示は,令和8事務年度の全署を対象とした内部事務のセンター化と次世代システムの運用開始による部内業務のペーパーレス化を見据え,署外会場を署内へ戻すことなどの検討も求めていた(別冊44頁)。

2 自力作成とスマホ申告の推進

同指示の基本的な考え方は,マイナンバーカードを利用した自宅等からのe-Tax申告と,振替納税やスマホアプリ納付を中心とするキャッシュレス納付を強力に推進するというものである(別冊1頁)。
会場でも,来場者が自分でスマホやパソコンを操作して申告書を作成し,職員等は操作補助と税法の質問への対応に回るという「自力作成」の考え方が採られていた。

スマホコーナーについては,故障や破損のトラブルを防ぐため,スマホの操作は来場者本人が行い,職員等は操作しないとされていた(別冊25頁,別添11)。
ID・パスワード方式の発行について,別添11は,配偶者等の親族を含む本人以外の者には発行できないことに留意するとしている。
また,スマホコーナーの利用者については送信前確認を実施せず,事後審査の対象とするとされていた(別添11)。
会場でスマホ申告をしたからといって,職員が内容を確認済みであるとは限らないということになる。

3 会場で受けない相談

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節税目的の養子縁組は無効か―最高裁平成29年1月31日判決と相続税上の養子数制限(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と結論第2 最高裁平成29年1月31日判決1 民法802条1号2 最高裁の判断3 動機と法律行為の意思を分ける第3 養子縁組の民法上の効果第4 相続税上の養子数制限1 民法上の相続人と相続税計算上の人数は同じとは限らない2 実子として扱われる養子がある3 相続税法63条による否認第5 孫養子と相続税額の2割加算第6 縁組意思をめぐる主張立証1 証拠化する事項2 意思能力と縁組意思は別に検討する第7 相続対策として検討する際の注意第8 出典・参考資料
第1 本記事の対象と結論

本記事は,相続税の節税を主な目的として行われた養子縁組が民法上無効となるかを,最高裁平成29年1月31日第三小法廷判決(平成28年(受)第1255号),現行民法及び相続税法から整理するものである。
法令及び国税庁資料の基準日は令和8年10月1日である。

最高裁は,節税の動機と縁組意思は併存し得るため,専ら相続税の節税目的で養子縁組をしたというだけで,直ちに民法802条1号の「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとはいえないとした。

もっとも,民法上の縁組が有効であることと,相続税計算で養子をどの範囲まで法定相続人の数に算入できるかは別問題である。
税務上は養子数の制限,相続税額の2割加算及び相続税法63条による否認可能性を分けて確認する必要がある。

第2 最高裁平成29年1月31日判決

1 民法802条1号

民法802条1号は,人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき,養子縁組を無効とする。
問題は,節税を目的とすることが,親子関係を作る意思と両立するかである。

2 最高裁の判断

最高裁は,養子縁組をすることによる相続税の節税効果を発生させることを動機として縁組をする場合でも,直ちに縁組意思がないとはいえず,節税の動機と縁組意思は併存し得るとした。
そして,専ら相続税の節税目的で縁組をしたというだけで,直ちに民法802条1号の無効事由に当たるとはいえないと判断した。

本判決は,「節税目的の養子縁組は常に有効」と判示したものではない。
個別の事実から当事者間に縁組意思がなかったと認められる場合は,同号による無効が問題となり得る。

3 動機と法律行為の意思を分ける

相続税額を下げたいという動機があっても,当事者が法律上の親子関係を成立させる意思を有していれば,両者は併存し得る。
逆に,届出の外形があり税務資料が作成されていても,当事者が親子関係を作る意思を欠いていたと立証されれば,縁組無効の余地は残る。

したがって,訴訟では「節税目的だったか」だけでなく,「届出時に法律上の親子関係を成立させる意思があったか」を,直接・間接事実から検討する。

第3 養子縁組の民法上の効果

民法809条は,養子が縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得すると定める。
そのため,普通養子は原則として養親の子として相続人となり,実親との親族関係も原則として残る。

養子縁組の有効性を検討するときは,縁組意思だけでなく,年齢,配偶者の同意,未成年者を養子とする場合の家庭裁判所の許可その他の成立要件を個別に確認する。
本判決は,これら他の要件を不要とするものではない。

第4 相続税上の養子数制限

1 民法上の相続人と相続税計算上の人数は同じとは限らない

相続税法15条2項は,遺産に係る基礎控除などの計算に用いる「相続人の数」について,一定の普通養子を算入できる人数を制限している。
国税庁の説明によれば,被相続人に実子がいる場合は1人まで,実子がいない場合は2人までが原則である。

この制限は,人数を超える養子縁組を民法上無効にする制度ではない。
養子が民法上の相続人であることと,相続税の基礎控除,生命保険金・死亡退職金の非課税限度額及び相続税総額の計算で何人を算入するかを分ける必要がある。

2 実子として扱われる養子がある

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固定資産評価審査委員会への審査申出―書面審理・口頭意見陳述・照会と最高裁平成2年1月18日判決(AI作成)

目次

第1 審査申出の対象と期間
第2 現行法上の四つの手続を区別する
第3 最高裁平成2年1月18日判決
第4 平成2年判決を現行法で使う際の注意
第5 申出前に評価のどこを確認するか
第6 書面照会の作り方
第7 申出書と証拠の組立て
第8 決定後の訴訟
第9 出典及び確認状況

固定資産課税台帳に登録された価格に不服がある場合は,固定資産評価審査委員会に対する審査申出が原則的な救済手段となる。もっとも,現在の地方税法は書面審理を原則とし,申出人による口頭意見陳述,市町村長に対する書面照会及び委員会が必要と認める公開の口頭審理を別の手続として定めている。

最高裁平成2年1月18日判決は,旧地方税法下の口頭審理に関する判決である。そのため,判決の手続結論をそのまま現在の審査申出に当てはめることはできない。他方,評価の手順,方法及び根拠を,申出人が不服の対象を特定できる程度に明らかにすべきであるという考え方は,現在の申出書,口頭意見陳述及び書面照会を設計する上でも重要である。

第1 審査申出の対象と期間

固定資産評価審査委員会に申し出ることができるのは,原則として固定資産課税台帳に登録された「価格」に関する不服である。納税義務者,課税標準,税額,住宅用地の認定等,価格以外の事項に関する不服は,市町村長に対する審査請求等,別の手続となる。

申出人は,当該固定資産の納税者である。申出期間は,一般に,固定資産課税台帳に価格等を登録した旨の公示の日から納税通知書の交付を受けた日後3か月までとされるが,価格の修正等があった場合は起算点が異なる。年度,処分の種類,通知日及び公示日を最初に確認すべきである。

登録価格を争う者は,原則として,委員会の決定を経ずに直ちに取消訴訟を提起することができない。期間管理を誤ると実体的な主張以前に救済を失い得るため,相談受任時に納税通知書,課税明細書,縦覧・閲覧資料及び到達日を保存する必要がある。

第2 現行法上の四つの手続を区別する

現行地方税法433条2項は,委員会が審査申出書,市町村長の弁明書及び反論書等を基礎として書面審理を行うことを原則とする。その上で,申出人の求めがあれば,委員会は申出人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。

この口頭意見陳述は,申出人が書面に記載した理由を補充して説明する機会である。大阪市の案内では,この場に市側関係者は出席しないとされている。市側担当者への質問の場と誤解せず,あらかじめ評価内容の説明を担当税務事務所等から受け,なお残る争点を申出書と意見陳述に落とし込むべきである。

同条5項は,申出人が委員会を通じて市町村長に書面で照会できる制度を定める。ただし,照会は具体的かつ個別的であり,重複せず,意見を求めるものではなく,回答に不相当な時間又は費用を要しないこと等が必要である。他の納税者の固定資産に関する事項も対象外となり得る。

同条6項の公開の口頭審理は,委員会が審査のため必要があると認める場合に,申出人と市町村長を出席させて行う手続である。申出人の求めにより与えられる口頭意見陳述とは同じではない。

第3 最高裁平成2年1月18日判決

最高裁第一小法廷平成2年1月18日判決・昭和61年(行ツ)第138号は,旧地方税法下の固定資産評価審査委員会の口頭審理を扱った。

判決は,この審査手続が,簡易迅速に納税者の権利救済を図る行政上の不服審査手続であり,民事訴訟と同程度に厳格な手続が要求されるものではないとした。その上で,委員会は,申出人が不服の対象を特定して反論できるよう,評価の手順,方法及び根拠を合理的に必要な程度で明らかにすれば足りるとした。

また,当時の事案では,宅地の評価を争うために,同一状況類似地域にあるすべての土地の評価額を明らかにする必要はないとされた。委員会が期日外に調査した結果についても,調査記録及び資料を閲覧でき,申出人に反論・反証の機会があるなら,その結果を改めて口頭審理で提示することまでは必要でないと判断された。

第4 平成2年判決を現行法で使う際の注意

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国税庁・e-Taxをかたる詐欺メールとAI自動音声―正規通知の見分け方と事務所対応(AI作成)

目次

第1 結論第2 国税庁が送らない連絡第3 正規のe-Taxメール第4 AI・自動音声電話の見分け方第5 不審な連絡を受けたときの初動第6 証拠保全と相談先第7 事務所の予防ルール第8 出典・参考資料
第1 結論

国税庁・国税局・税務署又はe-Taxを名乗るメール,SMS,LINE若しくは電話を受けても,その連絡だけで支払を決めてはならない。
メール等のリンクではなく,あらかじめ保存したブックマーク又は自分で入力した公式サイトからe-Taxのメッセージボックスへ入り,必要に応じて所轄税務署の公式番号へ折り返して確認する。

第2 国税庁が送らない連絡

国税庁の注意喚起によれば,国税庁・国税局・税務署は,納税者の同意なく,国税の納付を求める旨又は差押えに関するメッセージをSMS,メール又はLINEで送信しない。
SMSにURLを記載して誘導する連絡,差押えを予告して即時決済を迫るメール,ATMの操作又は国税庁が指定する口座への振込みを求める電話は信用すべきでない。
もっとも,国税庁又はe-Taxからの正規メールが一切存在しないという意味ではない。

第3 正規のe-Taxメール

e-Taxの正規の「税務署からのお知らせ」は,登録されたメールアドレスへメッセージボックスに情報を格納した旨などを知らせるものである。
e-Taxの注意喚起によれば,送信元は原則として[email protected]であり,添付ファイルはなく,本文にURLを記載しないのが原則である。
ただし,メールアドレス等の登録情報を変更したときの確認用URLなど,公式に説明された例外があるため,「URLがあるから必ず偽物」「国税庁名だから本物」という一要素だけで判断してはならない。

送信元表示は偽装できる。
正規性は,受信メールのリンクを使わず,e-Taxの公式メッセージボックスへ自分でアクセスし,同じ通知が格納されているかによって確認するのが安全である。

第4 AI・自動音声電話の見分け方

国税庁・国税局をかたるAI又は自動音声の電話が,税金と称して金銭を要求する事例が発生している。
このような着信では,音声案内に従って番号を押したり,個人情報を入力したり,指定先へ送金したりせず,いったん電話を切って公式番号へ折り返すべきである。

他方,国税庁は,納税者が相談窓口へ電話した場合のAI電話相談等も実施している。
したがって,AI音声であること自体を真偽の基準にせず,誰がどの番号へ発信したか,金銭又は認証情報を要求しているか,公式番号への折返しで確認できるかを基準とする必要がある。

第5 不審な連絡を受けたときの初動

不審なメール等を受けたときは,①URL及び添付ファイルを開かない,②返信しない,③個人情報・暗証番号・クレジットカード情報を入力しない,④支払わない,⑤公式サイトから連絡先を確認して折り返す,という順序で対応する。
リンク先で認証情報を入力した場合は,正規サイトからパスワードを変更し,ログイン履歴,登録情報及び二要素認証の状態を確認する。

第6 証拠保全と相談先

被害の有無を問わず,送信日時,送信元表示,実際のメールアドレス,メールヘッダー,本文,リンク先URL,電話番号,留守番電話,SMS画面及び支払記録を削除せず保存する。
スクリーンショットだけでなく,可能であれば原メールをeml形式等で保存し,URLは開かず文字列として記録する。
送金又はカード情報入力がある場合は金融機関・カード会社へ直ちに連絡し,警察,消費生活センター,関係する税務署及び組織内の情報セキュリティ担当者への相談も行う。

第7 事務所の予防ルール

事務所では,①税務連絡を受ける担当窓口を限定する,②e-Taxと国税庁の公式URLをブックマークする,③納付・口座変更・認証情報入力は二人で確認する,④取引先又は官公署の支払先変更は既知の連絡先へ別経路で照会する,⑤不審メールを組織内で共有する,という最低限のルールを定めることが有効である。
e-Taxの通常の利用方法は「e-Taxの利用方法-WEB版・電子納税・令和9年改正(AI作成)」を参照されたい。

第8 出典・参考資料

①国税庁「不審なメールや電話にご注意ください」
②e-Tax「e-Taxを装った不審なメール等にご注意ください」
③e-Tax「税務署からのお知らせメール」
④e-Tax「メッセージボックス」
⑤国税庁「AI電話相談」

育成就労外国人の給与と租税条約―所得税・源泉徴収と研修生免税(AI作成)

目次

第1 結論第2 育成就労制度の開始時期第3 国税庁文書回答の内容第4 国内法上の所得税・源泉徴収第5 租税条約の研修生条項第6 雇用主の確認事項第7 文書回答を利用するときの注意第8 出典・参考資料
第1 結論

育成就労外国人が育成就労実施者との雇用契約に基づいて受ける給与は,国内法上は給与所得であり,国内勤務に対応する給与について源泉徴収が問題となる。
育成就労制度が「人材育成」を目的とすることだけで,租税条約上の研修生等に対する免税が当然に適用されるわけではない。
国内法上の課税関係と,相手国との租税条約による修正を二段階で確認する必要がある。

第2 育成就労制度の開始時期

育成就労制度の施行日は,令和9年4月1日である。
出入国在留管理庁の育成就労制度Q&Aは,施行日及び事前申請の時期を案内している。
技能実習制度からの移行経過,在留資格の申請及び受入れ機関の要件は,税務とは別に確認しなければならない。

受入れの開始時期,監理支援機関の確認及び技能実習の経過措置は,令和9年4月開始の育成就労―受入れ企業の準備,施行日前申請と技能実習の経過措置で整理している。

第3 国税庁文書回答の内容

国税庁が令和8年9月15日に公表した「育成就労外国人が育成就労実施者から支払を受ける給与の課税関係について」は,照会書に記載された事実関係を前提として回答したものである。
同回答は,給与が所得税法28条の給与所得に該当し,支払者に同法183条の源泉徴収義務が生じるとした上で,照会された租税条約の研修生等に関する免税規定は適用されないとしている。

回答の理由では,育成就労が雇用契約に基づく就労を通じた人材育成の制度であり,照会事実の下では,専ら訓練又は技術的経験を得るために滞在する者へ支払われる給付とはいえないことが重視されている。
制度名に「育成」が含まれることと,租税条約上の免税要件を満たすことは同じではない。

第4 国内法上の所得税・源泉徴収

まず,外国人本人が所得税法上の居住者か非居住者か,給与が国内勤務に対応する国内源泉所得か,誰が給与を支払うか及び支払時期を確認する。
雇用契約に基づく労務の対価である限り,支払名目が研修費,手当又は補助金であっても,契約内容及び実態によって給与所得該当性が判断される。
居住者については通常の給与所得の源泉徴収及び年末調整が問題となり,非居住者については国内源泉所得と租税条約を別途確認する。

第5 租税条約の研修生条項

租税条約の研修生・事業修習者等に関する条項は,条約ごとに,対象者,来日の主目的,支払の性質,免税期間及び上限額が異なる。
短期滞在者免税,学生免税及び研修生免税も別の規定である。
出身国の条約本文及び議定書,滞在目的,雇用契約,給与の負担者並びに滞在予定期間を照合し,適用を受ける場合は租税条約に関する届出書の要否及び提出時期も確認する必要がある。
あわせて,その条約が発効して問題の給与等に適用が始まっているか(署名されただけの新条約ではないか)と,BEPS防止措置実施条約による修正の有無も確かめる。
確認の順序は「租税条約を適用する前に確かめる5つのこと―署名と発効,適用開始日,BEPS防止措置実施条約,終了通告及び届出書(AI作成)」で整理している。

第6 雇用主の確認事項

受入れ企業は,①在留資格及び制度の施行時期,②住所・入国日・滞在予定期間,③勤務場所,④雇用契約・賃金台帳・給与の負担関係,⑤租税条約の相手国及び該当条項,⑥租税条約に関する届出書,⑦給与計算,年末調整又は確定申告の要否を確認すべきである。
人事・在留管理資料と給与・税務資料を別々に保管するだけでなく,同一人物について相互に照合できるようにすることが重要である。

第7 文書回答を利用するときの注意

国税庁の文書回答は,公表された照会事実と同一の事実関係が続くことを前提とする行政上の回答であり,法律又は裁判例と同じ一般的拘束力を持つものではない。
国籍,条約,契約,滞在期間,給与の支払者又は研修内容が異なる案件へ結論だけを転用すべきではない。
文書回答制度そのものについては「国税庁の法令解釈通達・事務運営指針・文書回答事例・質疑応答事例(AIリライト)」を参照されたい。

第8 出典・参考資料

①所得税法28条・183条(e-Gov法令検索)
②国税庁「育成就労外国人が育成就労実施者から支払を受ける給与の課税関係について」(令和8年9月15日回答)
③同「照会の内容」
④出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
⑤出入国在留管理庁「育成就労制度」

食料品消費税1%法案とは―いつから・対象品目・外食・5つの特例(AI作成)

目次

第1 食料品消費税1%はいつから,どうなるのか第2 閣議決定・国会提出・成立・施行を区別する第3 1%の対象になる品目と,対象外の取引第4 事業者向けの5つの特例1 本則課税への移行に係る届出2 飲食料品販売に係る簡易課税の計算3 中間申告4 総額表示5 定期供給契約による予約販売・通信販売第5 契約・価格表示・請求書の準備第6 就業者負担軽減支援金との関係第7 よくある疑問1 食品の税率は,今すぐ1%になったのか2 外食や新聞も1%になるのか3 なぜ0%ではなく1%なのか4 食品事業者は,必ず還付を受けられるのか第8 参照資料
第1 食料品消費税1%はいつから,どうなるのか

食料品消費税1%とは,政府法案が令和9年4月1日から令和11年3月31日まで,現在8%の対象飲食料品の税率を地方消費税と合わせて1%へ引き下げようとする制度である。
令和8年10月13日現在は第222回国会への法案提出段階であり,成立,公布又は施行はしていないため,現在の対象飲食料品には8%が適用される。

「食料品消費税1%法案」は,令和8年10月9日に閣議決定され,第222回国会に提出された政府法案の飲食料品税率引下げ部分を指す通称として,本記事で用いている。

正式名称は,「租税及び社会保険料による負担の軽減のための飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の支給に関する法律案」である。飲食料品の税率引下げと,就業者負担軽減支援金の制度を一つの法案に含む。

政府案では,令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間,対象となる飲食料品の消費税率を,地方消費税と合わせて1%に引き下げる。国の消費税率は0.78%であり,地方消費税相当分0.22%を合わせて1%となる。

本記事は,10月9日の提出法案と国税庁の準備資料を解説するものである。法案提出は,成立,公布又は施行と同じではない。以下の予定期間や特例を現在の制度と混同せず,実施前には成立した法律とその後の公式資料を確認する必要がある。

飲食店への影響を先に確認する場合は,食料品消費税1%で飲食店はどうなる?―外食・仕入税額控除・利益への影響(AI作成)を参照されたい。
店内飲食と持ち帰りの税率差,外食離れの懸念,仕入税額控除,利益及び資金繰りを区別して説明している。

第2 閣議決定・国会提出・成立・施行を区別する
段階意味と本記事での確認政府の方針令和8年9月15日の方針は,法案の説明に至る前提である。閣議決定・国会提出内閣官房の10月9日公表資料で,法案の閣議決定と第222回国会への提出を確認できる。法案の成立・法律の公布提出とは別に確認する必要がある。政府法案の説明だけで成立済みとは判断できない。税率引下げの実施政府案の予定は令和9年4月1日である。成立・公布と,税率を実際に切り替える日も分ける。

9月15日の方針と,10月9日に国会へ提出された法案の内容を区別して確認する。国税庁の対応ページとQ&Aは,法案成立等を前提とする準備資料であり,特例を今すぐ利用できる根拠として扱ってはならない。

令和8年10月13日に確認した衆議院の議案審議経過情報では,第222回国会・閣法第1号の衆議院議案受理年月日は令和8年10月9日と表示されている。
確認時点の衆参の審議結果,公布年月日及び法律番号の欄は空欄であり,このページから成立・公布済みであることは確認できない。
空欄の先の進行を推測で補わず,法案が成立した後は成立内容と適用開始日を別に確認する。

第3 1%の対象になる品目と,対象外の取引

現在の標準税率は10%,軽減税率は8%である。軽減税率の対象には,酒類・外食を除く飲食料品の譲渡と,定期購読契約に基づく一定の新聞の譲渡がある。食料品消費税1%法案は,このうち飲食料品の譲渡に係る税率を臨時に引き下げる内容である。

取引現在の税率政府案の引下げ期間対象となる飲食料品の譲渡8%原則1%。一定の予約販売・通販には旧税率の経過取扱いがある。外食・酒類の販売10%飲食料品税率引下げの対象外。定期購読契約に基づく一定の新聞の譲渡8%飲食料品税率引下げの対象外。

「食品を使う取引」ならすべて1%となるわけではない。店舗内で飲食する取引と持ち帰り・宅配,ケータリング,酒類とそれ以外の商品を分け,現在の軽減税率の対象判定と照合する必要がある。一体資産等の個別判断は,国税庁の軽減税率資料も確認する。

例えば,同じ店で購入する弁当でも,持ち帰りの飲食料品の譲渡は現在8%,店内の設備で飲食する外食は現在10%という区分になる。
政府案の1%の対象を確認する場合も,食品の名称だけでなく,飲食料品の譲渡なのか外食なのかを確認する。
酒類は現在10%であり,一定の定期購読新聞は現在8%であるが,いずれも飲食料品1%の対象とは別である。

本体価格1000円の商品,外食・テイクアウト,コンビニ弁当及び家計への影響は,食料品消費税1%で値段,外食・テイクアウト及び家計がどう変わるかで具体例を示している。

第4 事業者向けの5つの特例

自分の課税方式と売上構成を先に確認し,該当する節を読むと,還付・納付ゼロ・届出の混同を避けられる。

(続きを読む...)食料品消費税1%法案とは―いつから・対象品目・外食・5つの特例(AI作成)

優良な電子帳簿・デジタルシームレス保存・青色申告特別控除75万円―令和9年に向けた届出と導入手順(AI作成)

目次

第1 結論第2 三つの制度を区別する第3 優良な電子帳簿第4 デジタルシームレス保存第5 75万円の青色申告特別控除第6 届出と導入時期第7 JIIMA認証の意味第8 導入前チェック第9 出典・参考資料
第1 結論

令和8年度税制改正後の電子帳簿等保存制度では,①優良な電子帳簿に関する過少申告加算税5%軽減,②デジタルシームレス保存に関する重加算税10%加重の不適用,③令和9年分以後の所得税における75万円の青色申告特別控除を区別して確認する必要がある。
いずれも単に会計ソフトを導入すれば適用される制度ではなく,対象,保存要件,届出及び適用開始時期を制度ごとに確認しなければならない。

第2 三つの制度を区別する

優良な電子帳簿は,国税関係帳簿の備付け・保存の品質に着目する制度である。
デジタルシームレス保存は,デジタルインボイスや金融機関の決済データ等と帳簿との連携に着目する制度である。
75万円の青色申告特別控除は個人の所得税の制度であり,対象者,複式簿記,決算書の添付及び期限内申告等の所得税上の要件も別に満たさなければならない。

第3 優良な電子帳簿

電子帳簿保存法上の優良な電子帳簿として,訂正削除履歴,帳簿間の相互関連性,検索機能その他の要件を満たして対象帳簿を保存し,所定の届出をしている場合,その帳簿に記録された事項に関して生じた申告漏れについて,過少申告加算税が通常より5%軽減される。
ただし,隠蔽又は仮装がある場合などは対象外であり,帳簿に関連しない申告漏れまで一律に軽減される制度ではない。

第4 デジタルシームレス保存

デジタルシームレス保存は,国税庁長官の定める基準に適合するシステムを利用し,対象となる電子取引データを所定の要件で保存する制度である。
国税庁の届出書及び解説は,デジタル庁の仕様に従って送受信されたデジタルインボイス及び金融機関等の預貯金口座における決済データを対象例として示している。

要件を満たす対象データについては,電子取引データに係る隠蔽・仮装があった場合の重加算税10%加重の対象から除外される。
個人事業者については令和8年分の所得税及び消費税から適用が始まるが,通常の重加算税そのものが免除される制度ではない。

第5 75万円の青色申告特別控除

令和9年分以後,不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者は,正規の簿記の原則による記帳,貸借対照表及び損益計算書の添付並びに期限内申告等の基礎要件に加え,優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存のいずれか所定の要件を満たすと,75万円の青色申告特別控除を選択できる。
令和8年分までの65万円控除と,令和9年分以後の75万円控除とでは,適用年及び追加要件が異なる。

第6 届出と導入時期

令和9年分から適用を受けるためには,原則として令和9年1月1日から該当要件を満たす運用を開始する必要がある。
届出書の種類及び提出期限は,優良な電子帳簿とデジタルシームレス保存とで異なるため,国税庁の最新の届出書案内を確認する必要がある。
既に優良な電子帳簿による65万円控除等の届出をしている者については,再提出を要しない場合がある。

第7 JIIMA認証の意味

JIIMA認証情報リストに掲載されたソフトは,認証区分に応じた機能要件を満たしている。
しかし,認証は,利用者側の保存期間,入力時期,対象帳簿及び対象データの範囲,検索可能性,届出並びに日々の運用まで当然に充足することを保証するものではない。
ソフト選定と自社の運用設計を分けて確認すべきである。

第8 導入前チェック

導入前には,①利用する制度,②対象税目・対象帳簿・対象データ,③年初から要件を満たせるか,④訂正削除履歴及びデータ連携が機能するか,⑤届出書と提出期限,⑥保存データから原取引・仕訳・申告数値を追跡できるかを確認する必要がある。
電子帳簿保存制度の基礎は「国税実務の基礎-税務調査,予定納税,納付方法及び電子帳簿保存(AIリライト)」,e-Taxとの関係は「e-Taxの利用方法-WEB版・電子納税・令和9年改正(AI作成)」を参照されたい。

第9 出典・参考資料

①電子帳簿保存法(e-Gov法令検索)
②国税庁「電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?」
③国税庁「優良な電子帳簿の要件」
④国税庁「JIIMA認証情報リスト」
⑤国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」
⑥国税庁「電子取引の取引情報に係る電磁的記録に係る重加算税の加重措置の不適用の特例及び75万円の青色申告特別控除の適用を受ける旨の届出書」
⑦財務省「令和8年度税制改正の大綱」

相続した株式を遺言執行者が売却した場合の税金―法定相続分による申告と確定申告の方法(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 この記事の対象2 結論3 最初に確認する順序第2 誰が譲渡所得を申告するか1 国税庁が法定相続分による申告とした事例2 法定相続分が常に結論となるわけではないこと3 遺言執行者本人の所得にはならないこと4 売却後に疑問が生じた場合第3 各相続人の譲渡所得の計算1 基本式と按分2 取得費は相続税評価額ではないこと3 相続税の取得費加算は各人ごとに計算すること4 上場株式等と一般株式等を分けること5 税率第4 遺言執行者が作成・交付する資料1 共通計算書2 各人に渡す資料3 売却代金の分配と所得税第5 各相続人による確定申告の具体的方法1 申告前の準備2 確定申告書等作成コーナー又はe-Taxを利用する場合3 書面で提出する場合4 申告期限と納付第6 計算例1 法定相続分で申告する例2 分配割合と申告割合が異なる可能性第7 特に注意を要する場合1 特定口座と源泉徴収2 NISA口座の株式3 譲渡損失4 相続した非上場株式を発行会社へ売る場合5 限定承認,国外居住者及び外国証券第8 関連する記事1 遺言執行者による換価実務2 換金指定のある遺言と現物取得第9 出典1 法令2 国税庁の質疑応答・解説・手引き3 研究資料
第1 この記事の対象と結論
1 この記事の対象

本記事は,被相続人が所有していた株式を遺言執行者が売却し,その代金を相続人又は受遺者に分配する場面を対象とする。
遺言執行者が売却名義人であるため遺言執行者が一括して申告するのか,各相続人が法定相続分で申告するのか,遺言で定めた分配割合によるのかが問題となる。

2 結論

国税庁の質疑応答事例には,遺言執行者が遺産である不動産及び有価証券を換価した事案について,譲渡所得は法定相続分に応じて各相続人が申告するとしたものがある。
したがって,当該事例と同様に,売却時まで株式が共同相続人に帰属し,遺言執行者の処分の効果が相続人に直接生ずると整理できる事案では,各相続人が法定相続分に応じて確定申告するのが基本となる。遺言執行者が遺言執行者名義で一括申告するものではない。
もっとも,この結論は遺言執行者が売却したという一点だけから常に導かれるものではない。遺言が特定の者に換価代金のみを遺贈する趣旨か,包括遺贈か,相続分又は遺産分割方法を指定したものかによって,売却時の権利帰属と所得の帰属が異なり得る。

3 最初に確認する順序

①遺言の全文と遺言執行者の権限,②売却時に株式が誰に帰属していたか,③譲渡所得の申告者と割合,④各人に配分する売却代金・取得費・売却費用,⑤各人固有の取得費加算・損益通算等の順に確認する。
分配割合をそのまま申告割合と考えたり,相続税評価額を取得費と考えたりすると誤りやすい。

第2 誰が譲渡所得を申告するか
1 国税庁が法定相続分による申告とした事例

国税庁「遺言に基づき遺産の換価代金で特定公益信託を設定した場合の相続税及び譲渡所得の課税関係」は,遺言執行者が遺産である不動産及び有価証券を売却した事例について,遺産の換価処分は遺言執行者の職務として行われ,その権限内の行為は相続人に直接効力を生ずることを理由に,「法定相続分に応じて各相続人が申告する必要があります」と回答している。
この事例に従う場合,各相続人は自分の法定相続分だけを自分の確定申告書に計上する。遺言執行者は,各人が同じ基礎資料に基づいて申告できるように,共通の計算書と証拠資料を交付する。

2 法定相続分が常に結論となるわけではないこと

前記の国税庁ページは,照会された事実関係を前提とする一般的な回答であり,具体的な取引では異なる課税関係が生ずることがあると明記している。
小柳誠「換価遺言が行われた場合の課税関係について」(税務大学校論叢85号)は,換価遺言を一律に捉えず,不特定物である金銭の遺贈,包括遺贈又は相続分・遺産分割方法の指定のいずれと解するかを検討する必要があるとする。そして,金銭の遺贈と解される類型では,受遺者を譲渡所得の納税義務者とする見解を示している。
これは税務大学校の研究論文であり,前記の質疑応答事例と同じ位置付けの公式回答ではない。しかし,遺言の型によって納税義務者の検討が変わることを示す重要な資料である。

3 遺言執行者本人の所得にはならないこと

遺言執行者は,遺言の内容を実現するために株式を管理・処分する者であり,売却代金を自分のために取得する者ではない。
したがって,遺言執行者が注文を出し,売却代金を遺言執行者名義の管理口座で受領したという外形だけで,遺言執行者個人の譲渡所得になるものではない。遺言執行者自身が相続人又は受遺者でもある場合は,その者として帰属する部分を個人の申告に含める。

4 売却後に疑問が生じた場合

既に売却済みでも,まず遺言書,遺言執行者の就職・権限を示す書類,証券会社の相続手続書類,売却報告書,換価代金の分配計算書及び相続関係を揃える。
申告期限前に税理士又は所轄税務署へ事実関係を具体的に示して確認し,誰がどの割合で申告するかを相続人間で統一して記録する。同じ売却について重複申告又は申告漏れが生じないようにする。

第3 各相続人の譲渡所得の計算
1 基本式と按分

国税庁タックスアンサーNo.1463によれば,株式等の譲渡所得等は,譲渡価額から取得費と委託手数料等を差し引いて計算する。
法定相続分で申告する事案では,各人の譲渡価額,取得費及び売却に直接要した費用を同じ法定相続分で按分するのが出発点となる。すなわち,「各人の譲渡所得等=売却代金×申告割合-被相続人の取得費×申告割合-売却手数料等×申告割合」である。

(続きを読む...)相続した株式を遺言執行者が売却した場合の税金―法定相続分による申告と確定申告の方法(AI作成)

過少申告加算税の「正当な理由」―平成18年最高裁判決と税理士不正・通達変更(AI作成)

目次

第1 本記事が扱う「正当な理由」第2 最高裁が示した判断基準第3 税理士の不正だけでは認められなかった事例第4 税務署職員の共謀加担により認められた事例第5 課税庁の取扱変更について認められた事例第6 平成27年判決が示した時間軸の重要性第7 正当な理由を検討する際の確認事項第8 重加算税・本税・信義則との区別第9 税務調査・不服申立てで収集する資料第10 現行法と資料の確認状態第11 出典・関連記事

過少申告加算税は,申告額が結果として少なかったという客観的事実があれば原則として課される。納税者に脱税の意図がなかったことや,税理士に申告を任せていたことだけで当然に免除されるものではない。

「正当な理由」を検討する前に,調査通知,更正予知及び修正申告の時期による不適用又は税率の違いを確認する必要がある。
現行の国税通則法65条6項は,調査による更正予知に基づく修正ではなく,かつ所定の調査通知前に提出された修正申告について同条1項を適用しない。通知後でも更正予知によらない場合は,同条1項の割合が異なる。
自主的に修正したことだけで常に加算税がなくなるとは説明できず,対象税目,期限内・期限後申告,適用年分,帳簿に関する加重及び重加算税の要件を分けて確認する必要がある。
修正申告の時期による違いは,修正申告と加算税―行政指導,調査通知及び更正予知の前後で何が変わるかで詳しく説明している。

もっとも,現行の国税通則法65条5項1号は,税額計算の基礎とされなかったことについて「正当な理由があると認められる」事実に基づく税額を,過少申告加算税の計算対象から控除する。本記事では,この「正当な理由」を扱った最高裁平成18年4月20日,同月25日及び同年10月24日の各判決並びに最高裁平成27年6月12日判決を比較し,実務で必要となる事実と証拠を整理する。

第1 本記事が扱う「正当な理由」

平成18年当時,「正当な理由」に関する規定は国税通則法65条4項に置かれていた。現在は条項の追加等により同条5項1号に移っているため,旧判例を引用するときは,当時条文と現行条文を区別する必要がある。

現行条文は,正当な理由がある場合に本税そのものを免除する規定ではない。正当な理由があると認められる事実に対応する税額を,過少申告加算税の計算の基礎から控除する規定である。したがって,①本税の課税要件,②過少申告加算税の賦課要件,③正当な理由に対応する税額の範囲を分けて検討する。

第2 最高裁が示した判断基準

最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決(平成17年(行ヒ)第9号)は,「正当な理由があると認められる」場合を,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしても,なお納税者にこれを賦課することが不当又は酷になる場合とした。

過少申告加算税は,主観的責任を追及する刑罰ではなく,当初から適正に申告した者との客観的不公平を是正し,適正な申告納税を実現するための行政上の措置である。この制度目的から,納税者の善意,法令の不知,単なる解釈違い又は専門家への委任だけでは足りず,過少申告に至った経過を客観的事情として示す必要がある。

第3 税理士の不正だけでは認められなかった事例

最高裁平成18年4月20日判決では,税理士が納税者に無断で虚偽の申告書を提出し,納税資金を着服した。納税者には脱税の意図がなく,税理士の隠蔽・仮装を予測又は認識することも容易ではなかったため,税理士の行為を納税者本人の行為と同視できず,重加算税の要件は満たさないとされた。

しかし,過少申告加算税については結論が異なった。納税者は,税務署職員等から約800万円と示されていた税額が約550万円で済むとの税理士の説明を信じ,その根拠を調査せず,申告書の内容,控え及び納付の領収書も確認しなかった。他方,申告書を受理した税務署職員が脱税に加担した事実はなかった。最高裁は,このような事情の下では納税者側にも落ち度があり,「正当な理由」は認められないとした。

ここから分かるのは,重加算税の隠蔽・仮装と,過少申告加算税を免れる正当な理由が別の要件であることである。重加算税が取り消されても,過少申告加算税相当額が当然に取り消されるわけではない。

第4 税務署職員の共謀加担により認められた事例

最高裁平成18年4月25日第三小法廷判決(平成16年(行ヒ)第86号・第87号)も,税理士が納税者に無断で架空経費を計上し,過少申告をした事案である。納税者には,事前の税務相談で示された金額より約180万円低い税額を税理士から示されながら根拠や申告書の控えを確認しなかったという落ち度があった。

それでも最高裁は,「正当な理由」を認めた。この事件では,申告書を受理した統括国税調査官が収賄の上で不正行為に積極的に共謀加担し,課税庁職員の関与がなければ不正行為は不可能であったともいえるという,極めて特殊な事情があったためである。

4月20日判決と4月25日判決の分岐は,単に納税者が税理士を信頼したかではない。課税庁側の積極的関与という外部的・客観的事情が加わり,納税者に加算税を課すことが不当又は酷といえるかにある。

第5 課税庁の取扱変更について認められた事例

最高裁平成18年10月24日第三小法廷判決(平成17年(行ヒ)第20号)は,外国親会社から付与されたストックオプションの権利行使益を,一時所得として申告したことが問題となった事案である。

課税庁は,かつて権利行使益を一時所得として取り扱い,課税庁職員が監修等をした公刊物にもその見解が掲載されていた。その後,平成10年分の所得税の確定申告時期以降は給与所得として統一的に扱うようになったものの,取扱変更を通達で明示したのは平成14年6月であった。一時所得説にも相応の論拠があり,最高裁が給与所得と判断したのは平成17年で,それ以前は下級審の判断も分かれていた。

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自己の著作権を会社へ低額譲渡したときの所得税―長期譲渡所得・時価課税・契約実務(AI作成)

目次

第1 結論と検討の順序
第2 譲渡所得か,事業所得・雑所得か
第3 自己の著作に係る著作権は長期譲渡所得
第4 法人への低額譲渡と時価課税
第5 数字で確認する総所得金額への算入額
第6 契約書・時価・申告資料の確認表
第7 射程と別途検討する課税関係
第8 一次資料と関連記事

第1 結論と検討の順序

著作者である個人が,自分で創作した著作物の著作権を会社へ一回限り譲渡する場合,通常の利用許諾料と区別して,まず著作権という資産の譲渡所得に当たるかを調べる。譲渡所得に当たるなら,自己の著作に係る著作権は,保有期間が5年以内でも長期譲渡所得に区分される。

会社への対価が時価の2分の1未満なら,所得税法59条1項2号・同法施行令169条により,譲渡者の譲渡所得は原則として時価で譲渡したものとして計算する。さらに,長期譲渡所得の金額を求めた後,総所得金額へ算入する段階でその2分の1を用いる。「長期譲渡所得の金額」と「総所得金額に加える額」は異なる。

以下は個人の所得税を中心とする整理であり,個別契約の権利範囲,時価,取得費及び他の譲渡所得の有無で結論・金額が変わる。

所得税法59条の「時価の2分の1」は,法人への低額譲渡について譲渡者の収入金額を時価とみなす課税基準であり,取適法,フリーランス法又は独占禁止法上の対価の安全圏ではない。
時価の2分の1以上の価格でも,利用範囲,交渉経緯及び取引上の地位によっては取引適正上の問題が残り,反対に十分に協議した価格であっても税務上の時価が当然に確定するわけではない。

第2 譲渡所得か,事業所得・雑所得か

国税庁は,著作権を譲渡所得の対象となる資産の一つとして挙げている。ただし,著作権が関係する収入をすべて譲渡所得とすることはできない。顧客に著作物の利用を継続的に許諾して受け取る対価と,著作権そのものを移転して受け取る対価は,まず契約の内容で分ける。

また,所得税法33条2項は,棚卸資産の譲渡や営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生じる所得などを譲渡所得から除く。創作物・権利を商品として反復販売する事業では,一件ごとに「著作権」と名付けても譲渡所得と即断できない。事業の取引形態,譲渡頻度,制作・販売の方法及び会計処理を確認する。

第3 自己の著作に係る著作権は長期譲渡所得

総合課税の譲渡所得は,原則として保有期間5年以内の資産を短期,5年超の資産を長期に分ける。しかし,所得税法33条3項1号は一定の資産を短期の範囲から除き,同法施行令82条1号は「自己の著作に係る著作権」をその対象にする。その結果,同条3項2号により,自己の著作に係る著作権の譲渡所得は保有期間を問わず長期譲渡所得となる。国税庁タックスアンサーNo.3152も同じ区分を示す。

適用前に,譲渡者自身が著作者であること,譲渡対象がその著作に係る著作権であることを確認する。共同制作,職務上の創作,過去の譲渡又は第三者から取得した権利が混在する場合には,契約・制作記録をたどり,権利ごとの帰属を確定する必要がある。

プログラムでは,①そもそも著作物性が認められない場合,②著作物性はあるが職務著作により会社が最初から著作者となる場合,③個人が著作権を保有し会社へ譲渡する場合を分ける。
①②では,個人が自己の著作権を会社へ譲渡したという前提自体を検討し直す必要があり,支払金の名目だけで本記事の長期譲渡所得の扱いへ進まない。
支払の実質に応じた所得区分等は別に確認し,権利の不存在から直ちに非課税とも扱わない。

知財高裁平成18年12月26日判決(平成18年(ネ)第10003号)は,プログラムごとに著作物性を判断した上で,職務著作による権利帰属も検討した判決であり,所得税の所得区分を判断したものではない。
弁護士が対象の版,創作的表現,著作者及び権利移転の経路を整理し,税理士が同じ対象と基準時を使って課税関係を検討することが有用である。

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名目上の従業員給与を役員給与と認定された場合―東京地裁令和元年5月30日判決と税務争訟(AI作成)

目次

第1 結論
第2 東京地裁令和元年5月30日判決の事案
第3 誰に経済的利益が帰属したか
第4 仮装経理と損金不算入
第5 源泉徴収・附帯税・期間制限
第6 処分理由と証拠の点検
第7 相談・争訟の実務手順
第8 出典・関連記事

第1 結論

会社が第三者への従業員給与として支払った金銭でも,実際には役員が個人として負担すべき費用を会社が肩代わりしたと認定されれば,役員への経済的利益となり得る。帳簿で支払先・費目を仮装したと認められる場合は,法人税法34条3項の損金不算入に加え,役員給与に係る源泉徴収税,附帯税及び処分期間が争点となる。

税務争訟では,①第三者が会社に提供した労務,②その支払により誰が利益を得たか,③帳簿・給与資料の作成過程,④各課税処分の根拠と計算を分けて検討する。

第2 東京地裁令和元年5月30日判決の事案

会社は,同居する代表者の交際相手に対し,月額45万円を「給与手当」として計上し,おおむね月額40万円を本人名義の口座に振り込んでいた。会社は出勤簿を作成し,社会保険料及び源泉所得税等も本人に係る預り金として処理していた。

東京地裁令和元年5月30日判決は,その支払が会社の従業員としての労務の対価ではなく,代表者が個人として負担すべき費用を会社が負担したものと認定した。そして,代表者への役員給与を第三者への給与手当と仮装して経理したと判断し,法人税の更正,源泉所得税等の納税告知及び附帯税の各処分を適法として会社の請求を棄却した。判決の冒頭には「控訴」と記載されている。ここで紹介するのは第一審の判断であり,控訴審の帰結までは確認していない。

この判決は,第三者名義の従業員給与と代表者への経済的利益が問題となった事例である。第三者への業務委託料や暗号資産による役員退職給与について,同じ事実認定が当然に成り立つと述べるものではない。

第3 誰に経済的利益が帰属したか

法人税法34条4項は,同条の役員給与に債務免除その他の経済的利益を含める。判決は,役員が個人として負担すべき費用を法人が負担して役員が得た利益も,この経済的利益に当たるとした。

裁判所は,かつて第三者が会社事務所で事務をしていたことも認めたが,課税対象期間の活動内容を別に検討した。自宅での家事や代表者の世話が中心で,一部の買物・銀行・郵便局等の用務が会社に関係していても,月額の支払を会社の従業員としての労務の対価とは認めなかった。勤務時間の定め・出退勤管理の実態,出勤簿の作成目的,会社の業務量,代表者個人による同額の支払歴も判断材料とした。

弁護士が会社側を代理する場合,親族・同居人という属性だけで結論を出さず,対象各月の指示,成果物,取引先との連絡,勤務場所・時間,支払額の決め方を客観資料で確認する。課税庁側の認定についても,私的な便益と会社のための役務が混在するときは,その内容と支払額の対応を具体的に点検する。

第4 仮装経理と損金不算入

法人税法34条3項は,事実を隠蔽し,又は仮装して経理することにより役員に支給する給与の額を損金に算入しない。判決は,支払の実質を代表者への役員給与と認定した上で,第三者の給与手当という経理,出勤簿,社会保険の資格及び本人に係る預り金処理を併せ,仮装経理を認定した。

支払の相手方の名義と振込先だけで仮装の有無は決まらない。契約書,出勤簿,給与台帳,振込記録,経理担当者への指示を作成時期順に並べ,誰がどの事実を認識していたかを検討する。実際の役務があるとの主張は,その内容・量・支払額との対応を示す資料と一緒に提出する。

第5 源泉徴収・附帯税・期間制限

法人税の損金不算入と,役員が受けた経済的利益に係る所得税の源泉徴収は別の課税関係である。判決は,会社が第三者への給与として処理した額を代表者の役員給与に加えて源泉徴収・納付すべきだったとして,所得税法183条1項に基づく納税告知を適法とした。

また,第三者への給与と仮装した事実を基に源泉所得税等を納めなかったとして,国税通則法67条・68条に係る不納付加算税及び重加算税の賦課も適法とした。各税目・各期間について,本税額,既納付額,加算税の対象額を別々に照合する必要がある。

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公正証書遺言と異なる遺産分割協議が相続税の申告期限までに成立しない場合の申告方法(AI作成)

目次第1 結論1 申告期限までに協議が成立しなくても申告期限は延びない2 申告内容は「遺言で取得済みか,真に未分割か」で決まる第2 公正証書遺言があっても,その内容を先に分類する1 公正証書という方式だけでは申告方法は決まらない2 遺言によって取得者が確定している財産3 遺言が相続分だけを定め,個々の財産が未分割である場合4 遺言の対象外となる財産第3 申告期限時点の状況別の申告方法1 遺言と異なる協議が成立している場合2 遺言で全部の取得者が確定し,協議が未成立の場合3 取得者が確定した財産と未分割財産が混在する場合4 遺言が相続分又は包括遺贈の割合だけを定める場合第4 未分割申告と分割見込書1 相続税法55条による仮の計算2 配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例3 申告期限後3年以内の分割見込書を付ける範囲第5 申告後に遺言と異なる合意が成立した場合1 真に未分割であった財産の後日分割2 遺言で取得済みであった財産の分け直し3 平成23年12月6日裁決が示す注意点第6 申告期限までに行う実務上の確認第7 設例による整理1 全財産を長男に相続させる遺言2 長男3分の2,長女3分の1とする遺言3 自宅だけを配偶者に相続させる遺言第8 よくある誤解第9 関連記事第10 出典1 法令・裁判例・裁決2 国税庁資料3 文献
第1 結論
1 申告期限までに協議が成立しなくても申告期限は延びない

公正証書遺言と異なる分け方を相続人らが話し合っていても,相続税の申告期限までに合意が成立しなければ,予定している分け方で申告することはできない。

相続税の申告期限は,原則として,相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内である。

協議中であること,遺産分割調停を申し立てたこと又は遺言執行者との調整が続いていることだけでは,この期限は延長されない。

2 申告内容は「遺言で取得済みか,真に未分割か」で決まる

申告期限時点で遺言と異なる合意が成立していない場合には,まず,遺言によって既に取得者が確定している財産と,なお共同相続人間で分割されていない財産とを分ける。

遺言によって取得者が確定している財産は,原則として遺言どおりに取得したものとして申告する。

これに対し,真に未分割である財産は,相続税法55条により,民法に規定する相続分又は包括遺贈の割合に従って各人が取得したものとして課税価格を計算する。

したがって,「協議が成立していないから,遺産全部を一律に法定相続分で申告する」という処理は正確でない。

第2 公正証書遺言があっても,その内容を先に分類する
1 公正証書という方式だけでは申告方法は決まらない

公正証書遺言は遺言の方式であり,公正証書であること自体から相続税申告の取得割合が決まるわけではない。

申告方法を決めるのは,遺言の各条項が,①特定の財産を特定の相続人に相続させる特定財産承継遺言,②特定遺贈,③包括遺贈,④相続分の指定,⑤遺産分割方法の指定,⑥残余財産条項のいずれに当たるかである。

遺言の表題や一部の文言だけでなく,遺言全文,予備的条項,債務・費用の負担及び遺言執行者の権限まで確認する必要がある。

2 遺言によって取得者が確定している財産

最高裁判所第二小法廷平成3年4月19日判決(平成元年(オ)第174号,民集45巻4号477頁)は,特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言について,特段の事情のない限り,何らの行為を要せず,被相続人の死亡時に直ちに当該相続人へ承継されると判示した。

また,特定遺贈は受遺者が放棄すれば遺言者の死亡時に遡って効力を失うが,放棄されていない限り,遺贈の目的財産は遺言に基づいて取得される。

「全財産を長男に相続させる」,「自宅不動産を妻に相続させる」,「全財産を甲に包括遺贈する」など,遺言によって取得者が確定する財産は,単に別の分け方を交渉中であるという理由で未分割財産にはならない。

3 遺言が相続分だけを定め,個々の財産が未分割である場合

「長男の相続分を3分の2,長女の相続分を3分の1とする」など,割合だけを指定し,個々の財産の取得者を定めていない遺言では,個々の遺産はなお未分割となり得る。

その場合,相続税法55条による仮の計算では,遺言による指定相続分を含む民法上の相続分又は包括遺贈の割合を確認する。

法定相続分を機械的に用いるのではなく,遺言による割合指定と包括遺贈の有無を先に確認する必要がある。

4 遺言の対象外となる財産

遺言作成後に取得した財産,記載漏れの預金,遺言条項の解釈上対象に含まれない財産その他の残余財産について,取得者を定める条項がなければ,その部分は未分割となり得る。

他方,死亡保険金,死亡退職金その他の相続税法上のみなし相続財産は,相続税の課税対象となっても,通常の遺産分割の対象とは限らない。

遺言の対象財産,民法上の遺産及び相続税の課税財産の三つを同じ一覧に混在させないことが重要である。

第3 申告期限時点の状況別の申告方法
1 遺言と異なる協議が成立している場合

(続きを読む...)公正証書遺言と異なる遺産分割協議が相続税の申告期限までに成立しない場合の申告方法(AI作成)

令和8年度司法試験租税法第2問の参考答案と予想される評価項目―暗号資産による役員退職給与、廃業後の貸倒れ、青色申告承認の承継(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論(法務省とは関係のない独自の予想)第2 本記事独自の評価項目の示し方と重み付けの基準第3 本問の概要と答案の結論第4 本記事が独自に予想した評価項目と重み(法務省の資料ではない)1 共通の前提2 設問1――暗号資産と役員退職給与3 設問2――廃業後の売掛金の貸倒れ4 設問3⑴――Aの承認5 設問3⑵――Hの承認と信義則第5 参考答案1 答案の前提2 答案3 答案の補足解説4 公開答案の調査第6 関連記事第7 出典及び確認状態1 問題・法令・判例2 確認状態
第1 この記事の対象と結論(法務省とは関係のない独自の予想)

作成日:令和8年9月30日。この記事は法務省とは関係のない独自の予想である。評価項目、重み、解説及び答案は、公式の採点基準や配点を示さない。対象年度の「出題の趣旨」及び「採点実感」は本記事作成時点で公表されておらず、参照していない。本記事の答案は、令和8年の出題の趣旨及び採点実感を踏まえたものではないため、「模範解答」ではなく「参考答案」と呼ぶ。

本記事は、法務省が掲載した令和8年司法試験の問題のうち、論文式選択科目「租税法」第2問を対象とする。答案はCBT試験の文字数に関する解説を踏まえ、一問につき30字×92行を上限とする想定で作成した。問題の条文適用基準日は、問題文の指定に従い、令和8年1月1日とする。租税特別措置法の適用は考慮しない。

本記事が予想する結論は、次のとおりである。

重み5が6項目,重み4が14項目,重み3が13項目,重み2が2項目,重み1が1項目で,合計36項目,重みの合計は130である。
公式配点又は予測得点への換算値ではない。

設問
結論の要旨

設問1
D社がAに暗号資産を現物の役員退職給与として移転した実質を捉える。法人税法61条1項による譲渡益は1,800万円。販売手数料の実体はなく、隠蔽・仮装経理によって支給した役員給与2,000万円は同法34条3項により全額損金不算入。

設問2
B店の売掛金20万円を令和4年分の事業所得に収入計上した処理は維持する。令和5年6月30日に客観的な全額回収不能が生じたと評価し、所得税法51条2項、63条及び所得税法施行令179条の限度内で廃業年の令和4年分の必要経費に算入する。同法152条による更正の請求を検討する。

設問3⑴
Aの青色申告承認は、B店の業務を全部廃止した令和4年の翌年分から、所得税法151条2項により当然に失効する。令和4年分には効力が残る。

(続きを読む...)令和8年度司法試験租税法第2問の参考答案と予想される評価項目―暗号資産による役員退職給与、廃業後の貸倒れ、青色申告承認の承継(AI作成)

家族や代表者が税金を肩代わりした後の破産―租税債権への代位の可否,求償権の扱い及び国税通則法41条(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 結論第2 第三者納付の制度1 本人以外の者も納付できる2 代位できるのは抵当権だけ第3 民法の弁済による代位との関係第4 裁判例1 神戸地方裁判所平成14年1月23日判決(民事再生)2 東京地方裁判所平成17年4月15日判決(民事再生)3 東京高等裁判所平成17年6月30日判決(旧破産法)4 東京地方裁判所平成27年11月26日判決5 東京地方裁判所平成27年11月12日判決(確認の訴え)第5 賃金や前渡金の代位弁済との違い第6 肩代わりした人の求償権1 破産手続での扱い2 免責との関係3 破産手続開始の後に納めた場合第7 相談を受けたときの注意点第8 関連記事第9 出典1 法令2 通達3 裁判例第10 確認状態
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

本記事は,会社の代表者,親会社,保証をした金融機関,同居の家族などが,本人(会社又は個人)に代わって税金を納めた後に本人が破産した場合に,納めた人が本人にどのような請求をでき,その請求が破産手続でどう扱われるかを整理する。
法令は,令和8年9月29日現在の条文をe-Gov法令検索(法令API)で確認した。
最高裁判所の判決は裁判所ウェブサイトの判決全文で確認し,裁判所ウェブサイトに掲載されていない下級審の裁判例は判例秘書で判決本文を確認した。

2 結論

①税金は本人以外の者も納めることができる(国税通則法41条1項,地方税法20条の6第1項)。
②しかし,税法が納めた人に代位を認めているのは,その税金を担保する抵当権がある場合の抵当権だけである(国税通則法41条2項,地方税法20条の6第2項)。
③下級審の裁判例は,税金を納めた人が租税債権そのものの優先的な地位を引き継ぐことを認めていない。
租税債権は性質上私人に移転しないとして代位そのものを否定したもの,代位で取得しても一般の破産債権にとどまるとしたもの,再生手続で一般優先債権として代位することはできないとしたもの,租税債権の優先性は国と納税義務者の間でのみ認められるとしたものがある。
④そのため,肩代わりした人が本人に求めることができるのは,原則として求償権(破産債権)だけであり,破産手続の配当を受けるにとどまる。
⑤この求償権は,租税等の請求権ではないので,本人が個人で免責許可決定を受けると免責の対象になる。
⑥未払賃金や前渡金の返還請求権を代位弁済した場合には,最高裁判所が優先的な地位の行使を認めているので,税金の場合と結論が逆になる。

第2 第三者納付の制度
1 本人以外の者も納付できる

国税通則法41条1項は,「国税は、これを納付すべき者のために第三者が納付することができる。」と定めている。
地方税法20条の6第1項も,「地方団体の徴収金は、その納税者又は特別徴収義務者のために第三者が納付し、又は納入することができる。」と定めている。

2 代位できるのは抵当権だけ

国税通則法41条2項は,「国税の納付について正当な利益を有する第三者又は国税を納付すべき者の同意を得た第三者が国税を納付すべき者に代わつてこれを納付した場合において、その国税を担保するため抵当権が設定されているときは、これらの者は、その納付により、その抵当権につき国に代位することができる。」と定めている。
地方税法20条の6第2項も,地方団体の徴収金について同じ趣旨を定めている。
これらの規定は,代位の対象を,税金を担保する抵当権に限って定めている。
国税の場合,代位しようとする第三者は,正当な利益を有すること又は本人の同意を得たことを証する書面を,納付の日の翌日までに国税局長,税務署長又は税関長に提出しなければならない(国税通則法施行令11条)。
国税庁の国税通則法基本通達(第41条関係2)は,「正当な利益を有する第三者」を,本人が国税を納付しないときに滞納処分を受けるか又は本人に対する法律上の自己の権利の価値を失う地位にある者とし,物上保証人,国税の担保のための抵当権付財産の第三取得者及び後順位担保権者を例に挙げている。
同通達(同3)は,国税の保証人等が履行に基づく求償権を有する場合も,正当な利益を有する第三者として国に代位できるとしている。
同居の家族のように正当な利益を有しない者でも,本人の同意を得て納めれば,同項の代位の対象になり得る。
税法には,納めた人が租税債権そのものを取得し,国と同じ優先的な地位で行使できるとする規定はない。

第3 民法の弁済による代位との関係

民法499条は,「債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。」と定め,同法501条1項は,代位した者は「債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。」と定める。
代位した者が原債権を行使できるのは,自己の権利に基づいて債務者に求償できる範囲内に限られる(同条2項)。

(続きを読む...)家族や代表者が税金を肩代わりした後の破産―租税債権への代位の可否,求償権の扱い及び国税通則法41条(AI作成)

同族会社への外注費は必要経費になるか―契約書・役務の実体・証拠(AI作成)

目次

第1 結論

第2 必要経費の趣旨と要件

1 所得税法37条
2 会社側で売上計上しただけでは足りない

第3 大阪地裁平成30年4月19日判決

1 事案の特徴
2 判決の判断

第4 必要経費を基礎付ける事実

1 会社が独立した役務を提供したこと
2 契約と対価が具体的であること
3 事業主本人の役割と会社の役割を分ける

第5 否認リスクが高い事情

第6 証拠チェックリスト

第7 別の否認規定

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暗号資産で支給する役員退職給与―時価譲渡・原価・過大給与・仮装経理(AI作成)

目次

第1 結論

第2 暗号資産の移転は時価で把握する

1 法人税法61条1項と22条2項
2 設例

第3 役員退職給与の損金算入

1 退職の事実と支給決議
2 不相当に高額な部分

第4 隠蔽又は仮装による役員給与

第5 第三者口座を経由した場合の証拠

第6 仕訳と税務計算を分ける

第7 出典

第1 結論

法人が保有する暗号資産を役員退職給与として移転した場合,現金支給ではないという理由で法人税の所得計算から外れるものではない。
移転時の時価で役員に経済的利益を供与したものとして,①暗号資産の譲渡損益,②役員退職給与の損金算入限度,③隠蔽又は仮装による経理の有無を別々に計算する。

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国庫補助金でソフトウェアを取得した場合の圧縮記帳(AI作成)

目次

第1 結論

第2 圧縮記帳は非課税ではなく課税の繰延べである

第3 法人税法42条の要件

1 国庫補助金等であること
2 目的に適合した固定資産を取得・改良すること
3 返還不要が確定すること
4 確定決算と明細書

第4 設例

1 圧縮記帳を行う場合と行わない場合
2 交付・取得・返還不要の確定が別年度になる場合

第5 ソフトウェア取得で確認する資料

第6 誤りやすい点

第7 出典

第1 結論

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個人事業廃業後の売掛金貸倒れ―所得税法51条・63条・152条(AI作成)

目次

第1 結論

第2 売掛金は廃業年分の売上げになる

第3 所得税法51条2項の貸倒損失

1 回収不能の類型
2 確認資料

第4 廃業後の損失を遡って算入する

1 所得税法63条
2 廃業年分と前年分

第5 更正の請求の特例

1 所得税法152条の期限
2 添付・保存する資料

第6 設例

第7 消費税は別に判定する

第8 出典・関連記事

(続きを読む...)個人事業廃業後の売掛金貸倒れ―所得税法51条・63条・152条(AI作成)

青色申告の承認は事業承継できるか―申請・みなし承認・申告書の受理・信義則(AI作成)

目次

第1 結論

第2 青色申告制度と承認の性質

1 制度の目的
2 一身専属であること

第3 期限内に後継者自身が申請する

1 一般の新規開業・営業譲受け
2 青色申告者から相続した場合
3 被相続人が白色申告者であった場合

第4 みなし承認

第5 申告書の受理と信義則

1 受理は内容の是認ではない
2 租税法上の信義則は限定的である

第6 事業承継時の確認資料

第7 出典・関連記事

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