メインコンテンツへスキップ
       

福利厚生費の税務上の取扱い-給与・交際費との区分と食事・社員旅行の基準(AI作成)

第1 福利厚生費を判断する二つの軸

1 本記事の対象

本記事は,令和8年9月6日現在の公表資料に基づき,会社が役員又は従業員のために支出する食事,レクリエーション旅行,記念品,慶弔金,福利厚生施設及び研修費を主な対象とする。
福利厚生費に含まれ得る支出を網羅するものではなく,個々の支出について給与課税又は交際費等の問題が生じる場面を中心に整理する。

2 給与課税と交際費等を別々に判定する

福利厚生費の税務上の取扱いには,①役員又は従業員が受けた利益を給与として課税するかという所得税の問題と,②会社の支出が交際費等に当たるかという法人税の問題がある。
会社が帳簿上「福利厚生費」としたことだけでいずれの結論も決まらず,受益者,支給方法,対象者の範囲,目的,金額及び内容をそれぞれの基準に当てはめる必要がある。

役員又は従業員が雇用関係等に基づいて受ける金銭以外の経済的利益も,所得税法28条及び36条による給与所得の対象となり得る。
他方,租税特別措置法関係通達61の4(1)-1は,福利厚生費及び給与等の性質を有するものを交際費等に含まれないものとしており,給与に当たることと交際費等に当たることは同じ判定ではない。

第2 給与として課税しない福利厚生の基本的な考え方

1 現物給付でも給与になり得る

会社が費用を直接支払い,従業員が現金を受け取らない場合でも,従業員が自己のための物品又はサービスを無償又は低額で受ければ経済的利益が生じ得る。
福利厚生という目的があることだけで直ちに非課税になるのではなく,法令及び所得税基本通達が定める非課税の取扱いに該当するかを確認することになる。

2 対象者の範囲と社会通念上の相当性

所得税基本通達36-29及び36-30は,福利厚生施設の利用又は社会通念上一般的なレクリエーション行事について,一定の場合に課税しなくて差し支えないとしている。
経済的利益が著しく多額である場合,役員だけを対象とする場合又は私的な利益の性質が強い場合には,この取扱いから外れる可能性が高くなる。

職種,勤務地,勤続年数その他の合理的な基準による区分が直ちに否定されるわけではないが,一部の者だけを恣意的に優遇する支給とは区別する必要がある。
対象者,除外理由及び支給基準をあらかじめ明確にすることは,その区分が合理的であるかを後に確認する資料となる。

3 現金支給と選択可能な給付

現金は受給者が自由に処分できるため,現物による福利厚生と同じ非課税の取扱いを当然には受けない。
レクリエーション行事に参加しなかった者への代替金,記念品に代わる現金又は現金との選択が可能な旅行は,給与課税の対象となる取扱いが示されている。

商品券その他の換金性の高い給付も,単に名称を「記念品」又は「福利厚生」とするだけでは足りない。
給付の方法を設計するときは,現物の内容だけでなく,現金選択の有無及び不参加者への取扱いも確認する必要がある。

第3 食事の支給と月額7,500円の基準

1 令和8年4月1日以後の二つの要件

国税庁タックスアンサーNo.2594によれば,令和8年4月1日以後,役員又は使用人に支給する食事が給与として課税されないためには,①本人が食事の価額の半分以上を負担し,かつ,②食事の価額から本人負担額を控除した会社負担額が1か月当たり7,500円以下であることが必要である。
7,500円以下かどうかは消費税及び地方消費税を除いた金額で判定し,10円未満の端数は切り捨てる。

食事の価額は,弁当等を購入して支給する場合には業者への購入額であり,社員食堂で会社が調理する場合には材料費及び調味料等の直接費の合計額である。
会社負担額だけを見ず,食事の価額と本人負担割合の双方を計算する必要がある。

2 要件を外れたときは会社負担額全体が給与となる

二つの要件のいずれかを満たさない場合,給与として課税されるのは7,500円を超えた部分だけではなく,食事の価額から本人負担額を控除した残額である。
例えば,月額13,000円の食事について本人が6,000円を負担した場合,半額以上の本人負担という要件を満たさないため,会社負担額7,000円の全体が給与として課税される。

3 現金による食事補助と時間外勤務の食事

食事そのものではなく現金で食事代を補助する場合,深夜勤務者に夜食を支給できないため1食当たり650円以下の金額を支給する場合を除き,補助額の全額が給与として課税される。
これに対し,通常の勤務時間外に残業又は宿日直をした者へその勤務のために支給する食事は,無料で支給しても課税しなくて差し支えないとされている。

第4 従業員レクリエーション旅行

1 旅行の内容を総合して判断する

国税庁タックスアンサーNo.2603は,旅行の企画立案,主催者,目的,規模,行程,参加割合,会社と参加者の負担額及び負担割合等を総合的に考慮するとしている。
社会通念上一般に行われるレクリエーション旅行であり,少額の現物給与を強いて課税しないという趣旨を逸脱しないことが中心となる。

原則的な目安として,旅行期間が4泊5日以内であり,参加者が全体の50%以上であることが示されている。
もっとも,この二項目を満たしても,役員だけの旅行,取引先接待,実質的な私的旅行又は金銭との選択が可能な旅行は従業員レクリエーション旅行に当たらない。

2 参加割合50%は絶対的な要件ではない

参加割合が38%となった事例に関する国税庁のQ&Aは,全従業員を対象に募集し,福利厚生規程に基づく会社主催の年1回の行事であること,3泊4日であること,旅行費用15万円のうち会社負担が7万円であること等を踏まえ,給与として課税しなくて差し支えないとしている。
したがって,50%は原則的な判定基準であるが,実際の参加率だけで結論が自動的に決まるものではない。

3 一人当たり10万円という一律の上限は示されていない

国税庁タックスアンサーNo.2603は,会社負担額について一人当たり10万円という一律の非課税上限を記載していない。
同ページの事例では,3泊4日で会社負担7万円の旅行及び4泊5日で会社負担10万円の旅行を原則非課税とする一方,5泊6日で会社負担15万円の旅行を課税対象としており,期間,参加割合及び少額不追求の趣旨を合わせて判断している。

4 高額な旅行を給与とした裁決及び裁判例

国税不服審判所平成10年6月30日裁決は,3回の慰安旅行について,従業員等に係る一人当たりの会社負担額が約192,003円,約449,918円及び約260,332円であり,家族分も会社がほぼ全額負担していたこと等から,従業員への給与等に当たるとした。
国税不服審判所平成22年12月17日裁決も,2泊3日の海外旅行であっても,会社負担による経済的利益が多額であること等を考慮し,従業員への給与に当たるとした。

後者の取消訴訟である東京地裁平成24年12月25日判決(平成23年(行ウ)第385号)は,マカオへの2泊3日の旅行について,従業員10人及び外注先の従業員等21人を含む32人が参加し,会社が総額800万円を負担し,従業員一人当たりの旅行費用が241,300円であったこと,高級ホテルの一人一室利用及び高額な食事等の内容を考慮して,従業員への給与等の支払に当たると判断した。
東京高裁平成25年5月30日判決(平成25年(行コ)第31号)は控訴を棄却しており,旅行が慰安目的であっても,内容及び会社負担額に照らして給与課税される場合があることを示している。

第5 記念品,慶弔金,福利厚生施設及び研修費

1 創業記念品と永年勤続表彰

所得税基本通達36-21及び36-22は,永年勤続表彰について,利益の額が勤続期間等に照らして社会通念上相当であり,おおむね10年以上の勤続者を対象とし,2回以上表彰する場合はおおむね5年以上の間隔を置くことを挙げている。
創業記念品等については,社会通念上記念品としてふさわしく,処分見込価額が1万円以下であり,周期的な記念行事ではおおむね5年以上の間隔を置くことが示されている。

いずれも現物に代えて支給する金銭は対象に含まれない。
記念品の購入額だけでなく,支給の理由,対象者,勤続年数又は記念行事の間隔を確認する必要がある。

2 福利厚生施設と研修費

所得税基本通達36-29は,会社が福利厚生施設の運営費等を負担することによる経済的利益について,利益が著しく多額である場合又は役員だけを対象とする場合を除き,課税しなくて差し支えないとしている。
施設の名称ではなく,利用対象,実際の利用方法及び一人当たりの利益を確認することになる。

同通達36-29の2は,会社の業務遂行上の必要に基づき,職務に直接必要な技術若しくは知識の習得又は免許若しくは資格の取得のために支給する金品について,費用として適正なものに限り課税しなくて差し支えないとしている。
したがって,研修という名称だけでなく,会社の業務上の必要性,受講者の職務との直接の関係及び費用の適正さを確認することになる。

3 慶弔金及び見舞金

租税特別措置法関係通達61の4(1)-10は,従業員等又はその親族等の慶弔若しくは禍福に際し,一定の基準に従って支給する金品を交際費等に含めないとしている。
また,所得税基本通達28-5は,雇用契約等に基づいて支給される結婚祝金品等は給与等に当たる一方,その金額が支給事由,受給者の地位等に照らして社会通念上相当と認められるものは課税しなくて差し支えないとしている。

会社側の交際費等の判定と受給者側の給与課税の判定では,参照する基準が異なる。
慶弔見舞金規程があることだけで結論を出さず,支給事由,対象者,金額及び運用の一貫性を確認する必要がある。

第6 福利厚生費と交際費等との区分

1 従業員を対象とする社内行事

国税庁タックスアンサーNo.5261及び租税特別措置法関係通達61の4(1)-10は,専ら従業員の慰安のために通常要する運動会,演芸会,旅行等の費用並びに従業員等へおおむね一律に社内で供与する通常の飲食費等を交際費等から除いている。
これに対し,役員だけの行事,特定の者への高額な利益又は取引先の接待を主な目的とする行事は,同じ取扱いを当然には受けない。

給与の性質を有する支出も交際費等には含まれないため,福利厚生費に当たらない支出がすべて交際費等になるわけではない。
受益者が従業員か取引先か,給与として扱うべき利益か,交際費等として扱うべき接待等かを順に分けて検討する必要がある。

2 委託先従業員等を含む場合

租税特別措置法関係通達61の4(1)-18は,委託先従業員等への支出を交際費等に含めない例として,工場等での業務上災害に伴う見舞金,同一基準による安全表彰,会社業務の特定部分を継続的に請け負う企業の専属従業員等の慰安行事及び自社従業員と同等の事情にある専属委託先従業員等への慶弔金を挙げている。
同通達は派遣社員への福利厚生費を一般的に定めたものではないため,派遣社員又は委託先従業員であるという一事だけで交際費等から除外できるものではない。

外部の者を行事へ招く場合は,契約関係,業務への専属性,自社従業員との事情の同等性,参加目的及び費用負担の基準を確認することになる。
所得税上の受益者が自社従業員である場合と,委託先従業員又は個人事業者である場合とでは,所得区分及び源泉徴収の検討も同一ではない。

3 「感謝の集い」を交際費等としなかった裁判例

福岡地裁平成29年4月25日判決は,会社及び協力会社等の役員・従業員約1,000人が大型リゾートホテルに集まり,コース料理及びコンサート等を内容とする年1回の「感謝の集い」について判断した。
各年度の参加率は70%を超え,一人当たり費用は21,972円から28,726円であり,判決は,会社の規模,事業状況,開催目的,場所,内容,頻度,移動時間及び参加実績等を具体的に検討した。

同判決は,この行事が福利厚生事業として社会通念上一般に行われる範囲を超え,費用が福利厚生費として認められる程度を超えるとは認め難いとして,その費用を交際費等に当たらないと判断した。
これは法人税上の交際費等該当性を判断した事例であり,個々の従業員に対する給与課税の有無を直接判断した事例ではない点に注意を要する。

第7 福利厚生費として扱えない場合の税務上の分岐

1 給与となる場合の源泉徴収

従業員が受けた経済的利益が給与又は賞与に当たる場合,会社には所得税法183条に基づく源泉徴収及び納付の問題が生じる。
高額な慰安旅行を給与とした裁決及び東京地裁判決でも,会社に対する源泉所得税の納税告知及び不納付加算税が争われた。

実際の追加徴収又は訂正の方法は,給付時期,給与又は賞与の区分,各人別の利益額及び既に行った源泉徴収の内容によって異なる。
源泉徴収制度の概要については,源泉所得税に関するメモ書き(AIリライト)も参照されたい。

2 交際費等又は役員給与となる場合

会社の支出が福利厚生費に当たらないというだけで,一律に交際費等として損金不算入になるわけではない。
従業員給与となる支出,役員への経済的利益となる支出,取引先等への接待等となる支出その他の費用に分けて,それぞれの損金算入及び源泉徴収を判定することになる。

特に役員への経済的利益は,給与課税だけでなく,定期同額給与等に該当しない役員給与として法人税上の損金算入が制限されることがある。
役員だけを対象とする行事又は施設については,国税庁タックスアンサーNo.5202も踏まえて別途確認する必要がある。

第8 支給前後に確認しておく資料

1 制度設計の段階

福利厚生制度を設けるときは,対象者,対象から外れる者とその理由,支給事由,支給方法,会社負担額,頻度,現金選択の有無及び承認手続を整理しておくことが考えられる。
規程の整備は判断資料の一つであるが,実際の運用が規程と異なれば実態に即して判定されるため,就業規則に関する記事も参照しつつ運用記録を残すことが重要である。

2 支出項目ごとの記録

食事については食事の価額,本人負担額,対象月及び税抜判定額を,旅行については企画書,募集範囲,参加者数,行程,会社・参加者別の負担額及び不参加者への対応を確認資料として残すことが考えられる。
記念品及び慶弔金については支給事由,対象者,金額又は処分見込価額,支給間隔及び適用した規程を,研修費については業務上の必要性,職務との直接関係及び費用の内訳を記録しておくことが考えられる。

税務上の結論は,勘定科目又は規程の名称よりも具体的な支給実態によって左右される。
金額が大きい場合,役員又は一部の者だけを対象とする場合,現金との選択を認める場合及び取引先・委託先の関係者を含む場合は,実施前に個別の税務判断を確認することが考えられる。

第9 出典・参考資料

1 法令

所得税法(昭和40年法律第33号)28条,36条及び183条

2 所管行政機関の通達・解説・Q&A

国税庁「所得税基本通達(給与等に係る経済的利益)」36-21,36-22,36-29,36-29の2及び36-30
国税庁「所得税基本通達」28-5
国税庁「租税特別措置法関係通達」61の4(1)-1,61の4(1)-10,61の4(1)-12及び61の4(1)-18
国税庁タックスアンサーNo.2594「食事を支給したとき」
国税庁タックスアンサーNo.2603「従業員レクリエーション旅行や研修旅行」
国税庁Q&A「従業員の参加割合が50%未満である従業員レクリエーション旅行」
国税庁タックスアンサーNo.5261「交際費等と福利厚生費との区分」
国税庁タックスアンサーNo.5202「役員等に対する経済的利益」

3 裁判例・裁決

国税不服審判所平成10年6月30日裁決・裁決事例集No.55・248頁
国税不服審判所平成22年12月17日裁決
東京地裁平成24年12月25日判決(平成23年(行ウ)第385号・所得税納税告知処分等取消請求事件。PDF1頁,13頁~16頁)
東京高裁平成25年5月30日判決(平成25年(行コ)第31号・所得税納税告知処分等取消請求控訴事件。PDF1頁,9頁~10頁)
福岡地裁平成29年4月25日判決(法人税更正処分等取消請求事件・税務訴訟資料第267号-66・順号13015。国税庁公開版では事件番号がマスキングされており,裁判所HP未掲載。PDF1頁,5頁,15頁~17頁)

4 関連記事

源泉所得税に関するメモ書き(AIリライト)
就業規則とは―記載事項・作成届出・周知・変更・懲戒の基本(AIリライト)